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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088727
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20230620BHJP
   F16K 21/18 20060101ALI20230620BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
F02M37/00 311K
F02M37/00 311A
F02M37/00 301E
F16K21/18 A
B60K15/035 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203640
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近 拓馬
【テーマコード(参考)】
3D038
3H055
【Fターム(参考)】
3D038CA22
3D038CA27
3D038CA39
3D038CB01
3D038CC03
3D038CC04
3H055AA03
3H055CC02
3H055CC17
3H055DD01
(57)【要約】
【課題】燃料タンク内での流体の流量が所定値以下の場合は、フロート弁を浮き上がりにくくすることができる、弁装置を提供する。
【解決手段】この弁装置10は、ハウジング15とフロート弁80とを有し、ハウジング15は周壁41とその下方に配置される底壁43とを有し、底壁43には、フロート弁80が支持された状態で、フロート弁80の外周よりも外側で、フロート弁80の底面81aよりも上方に突出するように形成された流入抑制壁67が設けられており、該流入抑制壁67は、ハウジング15を径方向から見たときに、周壁側連通孔53と重なるように配置されているか、該流入抑制壁67は、上方に向けて斜め外方に突出するようになっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する開口部が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口部を閉塞するフロート弁とを有しており、
前記ハウジングは、前記燃料タンク内と前記弁室内とを連通する周壁側連通孔が形成された周壁と、該周壁の下方に配置される底壁とを有しており、
前記底壁には、前記フロート弁が支持された状態で、前記フロート弁の外周よりも外側で、前記フロート弁の底面よりも上方に突出するように形成された流入抑制壁が設けられており、該流入抑制壁は、前記ハウジングを径方向から見たときに、前記周壁側連通孔と重なるように配置されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する開口部が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口部を閉塞するフロート弁とを有しており、
前記ハウジングは、前記燃料タンク内と前記弁室内とを連通する周壁側連通孔が形成された周壁と、該周壁の下方に配置される底壁とを有しており、
前記底壁には、前記フロート弁が支持された状態で、前記フロート弁の外周よりも外側で、前記フロート弁の底面よりも上方に突出するように形成された流入抑制壁が設けられており、該流入抑制壁は、上方に向けて斜め外方に突出することを特徴とする弁装置。
【請求項3】
仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する開口部が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口部を閉塞するフロート弁とを有しており、
前記ハウジングは、周壁と、該周壁の下方に配置される底壁とを有しており、
前記底壁には、前記フロート弁が支持された状態で、前記フロート弁の外周よりも外側で、前記フロート弁の底面よりも上方に突出するように形成された流入抑制壁が設けられており、
更に前記底壁には、前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる底壁側連通孔が形成されており、
該底壁側連通孔の内周縁部から前記流入抑制壁が設けられていることを特徴とする弁装置。
【請求項4】
前記流入抑制壁は、上方に向けて斜め外方に突出する請求項1又は3記載の弁装置。
【請求項5】
前記底壁は、スリットを介して撓み変形可能に形成され、前記フロート弁の底面を支持する弾性片を有しており、
該弾性片は、
前記周壁の内周から、前記ハウジングの径方向内方に向けて延びる第1延出部と、
該第1延出部の先端から、前記ハウジングの軸方向上方に向けて延びる第2延出部と、
該第2延出部の先端から、前記ハウジングの径方向内に向けて更に延びる第3延出部とを有しており、
前記第2延出部は、前記ハウジングを径方向から見たときに、前記周壁側連通孔の領域内に位置するように設けられている請求項1又は2記載の弁装置。
【請求項6】
前記第3延出部は、前記ハウジングを径方向から見たときに、前記底壁と重なるように配置されており、
前記第2延出部は、前記流入抑制壁よりも径方向外方に配置されている請求項5記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料流出防止弁や満タン規制弁等として用いられる、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、自動車が傾いたり横転したりしたときに、
燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置(カットバルブ)や、
燃料タンク内の液面が、予め設定された満タン液面よりも上昇しないように、燃料タンク
内への過給油を防止する弁装置(過給油防止バルブ)が取付けられている。このような弁装置は、一般的に、開口部を有する仕切壁を介して、上方に通気室、下方に弁室を設けたハウジングと、弁室内に昇降可能に配置されたフロート弁とを有する。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、タンク外と通じる通気弁口及び燃料の流入部を備えるケースと、ケース内に昇降配置されるフロート体とを備えた、燃料タンク用弁装置が記載されている。上記ケースは、円筒状をなしたアッパーボディと、同じく円筒状をなしたロアボディとから構成されている。また、ロアボディの下端側には、仕切り壁が形成されており、この仕切り壁には貫通孔が形成されている。更に、ロアボディの下端部であって、貫通孔に整合する箇所には、凹所が形成されている。この凹所は、前記貫通孔を介して、ロアボディの内部空間と連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2013/141220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、燃料タンク内に燃料が給油されると、燃料タンク内の空気や燃料蒸気等の流体が吹き上がって弁室内に流入し、この流体がフロート弁を底面側から押し上げて、フロート弁を浮き上がらせることがある。この際、燃料給油時等に、すぐにフロート弁が浮き上がって、開口部が閉塞されると、カットバルブや過給油防止バルブ等として機能しないため、フロート弁は、燃料タンク内での流体の流量が所定値以下の場合には、浮き上がらないように設定されている。
【0006】
しかし、上記特許文献1の燃料タンク用装置の場合、ロアボディ下端部に形成された凹所は、貫通孔を介してロアボディの内部空間と連通しているので、給油時等に、凹所から入り込み貫通孔を通過してロアボディ内に流入した流体が、フロート体の底面に当たるため、フロート体が浮き上がりやすいという不都合があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、燃料タンク内での流体の流量が所定値以下の場合は、フロート弁を浮き上がりにくくすることができる、弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る弁装置の一つは、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する開口部が形成された、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口部を閉塞するフロート弁とを有しており、前記ハウジングは、前記燃料タンク内と前記弁室内とを連通する周壁側連通孔が形成された周壁と、該周壁の下方に配置される底壁とを有しており、前記底壁には、前記フロート弁が支持された状態で、前記フロート弁の外周よりも外側で、前記フロート弁の底面よりも上方に突出するように形成された流入抑制壁が設けられており、該流入抑制壁は、前記ハウジングを径方向から見たときに、前記周壁側連通孔と重なるように配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る弁装置のもう一つは、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する開口部が形成された、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口部を閉塞するフロート弁とを有しており、前記ハウジングは、前記燃料タンク内と前記弁室内とを連通する周壁側連通孔が形成された周壁と、該周壁の下方に配置される底壁とを有しており、前記底壁には、前記フロート弁が支持された状態で、前記フロート弁の外周よりも外側で、前記フロート弁の底面よりも上方に突出するように形成された流入抑制壁が設けられており、該流入抑制壁は、上方に向けて斜め外方に突出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る弁装置の更にもう一つは、仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室とを連通する開口部が形成された、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容され、前記開口部を閉塞するフロート弁とを有しており、前記ハウジングは、周壁と、該周壁の下方に配置される底壁とを有しており、前記底壁には、前記フロート弁が支持された状態で、前記フロート弁の外周よりも外側で、前記フロート弁の底面よりも上方に突出するように形成された流入抑制壁が設けられており、更に前記底壁には、前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる底壁側連通孔が形成されており、該底壁側連通孔の内周縁部から前記流入抑制壁が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つによれば、周壁側連通孔から弁室内に流入した流体が流入抑制壁にぶつかるので、フロート弁の底面側に、流体を流入しにくくすることができ、給油時等において流体が吹き上がったときに、フロート弁の底面側からの、流体による押上げが抑制されて、フロート弁を浮き上がりにくくすることができる。
【0012】
本発明のもう一つによれば、弁室内に流入した流体が、流入抑制壁にぶつかって、その流動方向を、ハウジングの径方向外方側へと変化させることができるので、フロート弁の底面側に、流体を流入しにくくすることができ、その結果、給油時等において流体が吹き上がったときに、フロート弁の底面側からの、流体による押上げが抑制されるので、フロート弁を浮き上がりにくくすることができる。
【0013】
本発明の更にもう一つによれば、底壁側連通孔から弁室内に流入した流体が流入抑制壁にぶつかるので、フロート弁の底面側に、流体を流入しにくくすることができ、給油時等において流体が吹き上がったときに、フロート弁の底面側からの、流体による押上げが抑制されて、フロート弁を浮き上がりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】同弁装置の斜視図である。
図3】同弁装置の側面図である。
図4図2のA-A矢視線における断面図である。
図5】同弁装置のハウジングを構成するハウジング本体の、拡大斜視図である。
図6】同弁装置のハウジングを構成する下部キャップの、拡大斜視図である。
図7】同弁装置のハウジングを構成する下部キャップの、図6とは異なる方向から見た場合の拡大斜視図である。
図8図2のB-B矢視線における断面図である。
図9】同弁装置の要部拡大断面斜視図である。
図10】流入抑制壁を有しない弁装置の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(弁装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る弁装置の、一実施形態について説明する。
【0016】
図1~4に示すように、この実施形態における弁装置10は、仕切壁23を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室V、上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが設けられ、仕切壁23に弁室Vと通気室Rとを連通する開口部25が形成された、ハウジング15と、弁室V内に昇降可能に収容されて、開口部25を閉塞するフロート弁80と、該フロート弁80を付勢する付勢バネSとを有している。
【0017】
また、この実施形態のハウジング15は、ハウジング本体20と、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40と、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー70とを有している。
【0018】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
【0019】
まず、ハウジング本体20について、図1図4、及び図5等を参照して説明する。
【0020】
このハウジング本体20は、略円筒状をなした周壁21を有しており、その上方に略円板状をなした仕切壁23が配置されている。仕切壁23の径方向中央に、開口部25が形成されている。また、開口部25の内側には複数のリブ25аが形成されており、これらのリブ25аによって、開口部25は格子孔状をなしている。更に、周壁21の上方外周からは、フランジ部26が張り出している。このフランジ部26の内側には、リング装着溝27аが形成されており、このリング装着溝27аに、環状のシールリング27が装着されるようになっている(図4参照)。
【0021】
また、図1及び図5に示すように、周壁21の外周であって、下端部21a寄りの位置には、複数のキャップ側係合突部29が突設されている。更に、周壁21の外周であって、キャップ側係合突部29に整合する位置には、複数のカバー側係合突部31が突設されている。
【0022】
更に図1に示すように、周壁21の外周であって、前記カバー側係合突部31に対して、軸方向にほぼ整合する位置には、一対の位置決め突部33,33が突設されている。
【0023】
また、図1及び図3に示すように、周壁21の上端部側であって、径方向に対向する2箇所には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる流通孔35が形成されている。この流通孔35は、車両が横転したり反転したりした場合を除き、常に液没しない状態が維持され、弁室V内に燃料タンク内の空気を流入させる部分となっている。
【0024】
更に図5に示すように、周壁21の内周には、軸方向に延びるガイドリブ37が、周方向に均等な間隔を空けて設けられている。これらのガイドリブ37によって、フロート弁80の昇降動作がガイドされるようになっている。
【0025】
次に、ハウジング本体20の下方に装着される下部キャップ40について、図1図4、及び図6等を参照して説明する。
【0026】
この下部キャップ40は、略円筒状をなした周壁41と、その軸方向下方である底部側に配置された底壁43とを有する、有底キャップ状をなしている。
【0027】
また、図4に示すように、周壁41の上端部の外側には、軸方向上方に延びる外周壁45が設けられており、二重円筒状壁となっている。これらの外周壁45と、周壁41の上端部との間には、環状をなした環状溝47が設けられている。この環状溝47には、ハウジング本体20の周壁21の軸方向の下端部21aが挿入されるようになっている。
【0028】
更に図1に示すように、外周壁45の上端部には、周方向に均等な間隔を空けて、長孔状をなした係合孔49が複数形成されている。そして、図2に示すように、下部キャップ40の各係合孔49に、ハウジング本体20の、対応する各キャップ側係合突部29をそれぞれ係合させることで、ハウジング本体20の下方に下部キャップ40が装着される。その結果、仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成されるようになっている(図4参照)。
【0029】
また、外周壁45の上端縁部であって、径方向に対向する2箇所には、凹溝状をなした位置決め凹部51,51が切欠いて形成されている。これらの位置決め凹部51の一方に、ハウジング本体20の一対の位置決め突部33,33が嵌入することで、ハウジング本体20の下方に、下部キャップ40が位置決めされると共に回転規制された状態で装着される。
【0030】
また、図3に示すように、周壁41の軸方向の下端部には、周方向に沿って所定長さで延びる略長孔状をなした周壁側連通孔53が、周壁41の径方向に対向する2箇所に形成されている。この周壁側連通孔53は、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させるものである。この周壁側連通孔53が、本発明における「連通孔」をなしている。
【0031】
上記の周壁側連通孔53は、液没していない状態(液体燃料によって閉塞されずに開口した状態)で、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させて、図示しない給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態(液体燃料によって閉塞された状態)では、弁室V内の燃料液面が上昇して、フロート弁80が開口部25を閉塞して、図示しない給油ノズルからの連続給油を停止するように構成されている。
【0032】
底壁43の説明に戻ると、この底壁43は、周壁41の下端部内周から径方向内方に向けて突出した複数の支持突部43aを介して、周壁41の下端部の内側に配置された、略円形板状をなしている(図6参照)。図4に示すように、この底壁43は、フロート弁80の下方に配置されると共に、付勢バネSの下端部を支持する部分となっている。
【0033】
また、底壁43は、周壁側連通孔53の領域内に位置するように配置されている。すなわち、図3に示すように、ハウジング15を径方向外方から見たとき、底壁43は、周壁側連通孔53の下方底面よりも上方に位置するように、周壁側連通孔53の領域内に配置されている。
【0034】
更に、底壁43の上面中央からは、略十字突起状をなすと共に、付勢バネSの基端部を支持する、バネ支持突起55が突設されている。
【0035】
また、図6に示すように、周壁41には、フロート弁80の昇降動作をガイドするガイドリブ57が設けられている。この実施形態では、周壁41の内側面であって、周方向に均等な間隔を空けて、複数のガイドリブ57が設けられている。各ガイドリブ57は、その基端部が前記支持突部43aに位置しており、周壁41の軸方向に沿って延びた略長板状となっている。
【0036】
そして、複数のガイドリブ57のうち、所定のガイドリブ57が、周壁側連通孔53を、複数の領域に区画するように配置されている。この実施形態の場合、2つのガイドリブ57,57が、周壁側連通孔53の下方底面から上方天井面に亘って延びるように配置されており、図3に示すように、ハウジング15を径方向外方から見たときに、周壁側連通孔53が3つの領域に区画されるようになっている。
【0037】
また、図6に示すように、底壁43には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる、底壁側連通孔59が複数形成されている。各底壁側連通孔59は、周壁41の内周に沿って延びている。具体的には、各底壁側連通孔59は、略円筒状をなした周壁41の内周形状に適合して、周壁41の内周に沿って延びる略円弧状をなしている。
【0038】
更に図6に示すように、底壁43は、スリット61を介して撓み変形可能に形成され、フロート弁80の底面81aを支持する、弾性片63を有している。この実施形態の場合、底壁43の、前記底壁側連通孔59よりも内側に、同底壁側連通孔59と連通する略コ字状をなしたスリット61が形成されており、このスリット61を介して、固定端側(基端側)が周壁41に連結され、自由端側(先端側)がハウジング本体20の径方向内方に向いた、弾性片63が設けられている。
【0039】
図7図9を併せて参照すると、この弾性片63は、周壁41の内周から、ハウジング本体20の径方向内方に向けて延びる第1延出部64と、この第1延出部64の延出方向先端から、ハウジング本体20の軸方向上方に向けて延びる第2延出部65と、この第2延出部65の延出方向先端から、ハウジング本体20の径方向内に向けて更に延びる第3延出部66とを有しており、階段状に屈曲しながら延びる形状となっている。
【0040】
また、第3延出部66の延出方向先端部の上面からは、凸部66aが突設している。図4に示すように、この凸部66aが、フロート弁80の底面81aに当接することで、フロート弁80の底面81aが、底壁43の上面から所定長さ浮いた状態で、底壁43の上方にて支持されるようになっている。すなわち、この弁装置10においては、底壁43に設けた弾性片63を構成する第3延出部66の凸部66aによって、フロート弁80を支持する構成となっている。
【0041】
そして、フロート弁80の下降時に、フロート弁80の底面81aに、第3延出部66の凸部66aが当接して、第1延出部64の基端(固定端)を支点にして、弾性片63全体が下方に撓み変形することで、フロート弁80下降時の打音が抑止されるようになっている。
【0042】
また、図3に示すように、弾性片63を構成する第2延出部65は、ハウジング15を径方向外方から見たときに、周壁側連通孔53の領域内に位置するように設けられている。
【0043】
更に図3に示すように、弾性片63を構成する第3延出部66は、ハウジング15を径方向外方から見たときに、底壁43と重なるように配置されており(図9も併せて参照)、第2延出部65は、後述する流入抑制壁67よりも径方向外方に配置されている。また、図4に示すように、第3延出部66に設けた凸部66аは、周壁側連通孔53の領域内に位置している。
【0044】
そして、図4図8、及び図9に示すように、底壁43には、フロート弁80が支持された状態で、フロート弁80の外周よりも外側で、フロート弁80の底面81aよりも上方に突出するように、且つ、周壁41に対して離間して形成された流入抑制壁67が複数設けられている。
【0045】
図3に示すように、各流入抑制壁67は、ハウジング15を径方向外方から見たときに、周壁側連通孔53と重なるように配置されている。ここでは、図3に示すように、ハウジング15を径方向外方から見たとき、各流入抑制壁67は、周壁側連通孔53の下方底面よりも上方に位置するように、周壁側連通孔53の領域内に配置されている。
【0046】
また、図4図6、及び図8等に示すように、各流入抑制壁67は、上方に向けて斜め外方に突出する構成となっており、更に、各流入抑制壁67は、底壁側連通孔59の内周縁部から設けられた構成ともなっている。
【0047】
より具体的には、図6に示すように、複数の流入抑制壁67のうち、所定の流入抑制壁67は、底壁43の、底壁側連通孔59よりも内側の内周縁部(底壁43の径方向外方側に位置する縁部)であって、スリット61の側縁部とガイドリブ57の外側面との間から、ハウジング15の軸方向上方に向けて、所定角度で斜め外方に真っ直ぐに(直線状に)突出している。
【0048】
同じく図6に示すように、上記流入抑制壁67とは異なる、他の流入抑制壁67は、底壁43の、底壁側連通孔59よりも内側の内周縁部であって、ハウジング本体20の周方向に隣接するガイドリブ57,57との間から、ハウジング15の軸方向上方に向けて、所定角度で斜め外方に真っ直ぐに突出している。この場合の流入抑制壁67は、スリット61側縁部とガイドリブ57外側面との間から突出する流入抑制壁67よりも、ハウジング本体20の周方向に長く延びている。
【0049】
また、図8に示すように、流入抑制壁67は、その突出方向の先端部が、周壁側連通孔53の領域内に位置するように突出していると共に、同先端部は丸みを帯びた曲面状をなしている。
【0050】
次に、ハウジング本体20の上方に装着される上部カバー70について、図1図4図8等を参照して説明する。
【0051】
この上部カバー70は、外周が略円形状をなした周壁71と、その上方に配置された天井壁73と、周壁71の下方側から外方に広がるフランジ部75とからなる、略ハット状をなしている。また、図4に示すように、周壁71には、燃料蒸気排出口77aが形成されており、その表側周縁から燃料蒸気排出管77が外径方向に延出している。この燃料蒸気排出管77には、キャニスターに連結される図示しないチューブが接続される。
【0052】
また、図1に示すように、フランジ部75の周方向所定箇所からは、下方に向けて複数の係合片79が延設されている。各係合片79には、係合孔79aが形成されている。そして、図2に示すように、上部カバー70の各係合片79の係合孔79aに、ハウジング本体20の対応するカバー側係合突部31をそれぞれ係合させることで、図4に示すように、リング装着溝27aに装着されたシールリング27が、上部カバー70の周壁71の内周に当接した状態で、ハウジング本体20の上方に上部カバー70が装着される。その結果、仕切壁23を介して、その上方に燃料タンクの外部に連通する通気室Rが形成されるようになっている(図4参照)。
【0053】
次に、弁室V内に昇降可能に収容されるフロート弁80について、図1図4等を参照して説明する。
【0054】
図4に示すように、この実施形態のフロート弁80は、燃料浸漬時に浮力を発生させる、外周が円形状なしたフロート本体81と、該フロート本体81の上方に装着され、フロート本体81に対して相対的に昇降動作し、開口部25に接離するシール部材83とを有している。
【0055】
また、シール部材83の上方には、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料からなるシール弁体85が装着されている。シール弁体85の中央には、上方及び下方が開口した通気孔85aが貫通して形成されている。このシール弁体85が開口部25の裏側周縁部に接離して、開口部25を開閉することで、フロート弁80が満タン規制弁として機能する。また、フロート本体81の軸方向の下端に位置する底面81aに、弾性片63の第3延出部66の凸部66aが当接するようになっている。なお、フロート本体81には、下方が開口したバネ収容凹部81bが形成されており、該バネ収容凹部81b内に付勢バネSが収容される。
【0056】
更に、フロート本体81とシール部材83との間には、中間弁体87が傾動可能に支持されている(図4参照)。この中間弁体87は、常時はシール弁体85の下端部に当接して、通気孔85aを閉塞し(図4参照)、フロート本体81がシール部材83に対して下降したときに、通気孔85aを開くようになっている。
【0057】
なお、フロート弁80は、弁室V内において、下部キャップ40との間で、付勢バネSを介在させた状態で昇降可能に収容配置され、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢バネSの付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降する。
【0058】
(変形例)
本発明を構成するハウジング、該ハウジング本体を構成するハウジング本体、下部キャップ、上部カバー、弾性片、流入抑制壁、フロート弁等の、形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0059】
また、上記実施形態におけるハウジング15は、ハウジング本体20と、下部キャップ40と、上部カバー70とから構成されているが、ハウジングとしては、少なくとも周壁と底壁とを有する構造であればよい。
【0060】
更に、この実施形態におけるハウジング本体20の周壁21や、下部キャップ40の周壁41は、略円筒状をなしているが、例えば、楕円筒状や角筒状等であってもよい。
【0061】
また、この実施形態におけるフロート弁80は、フロート本体81や、シール部材83、中間弁体87等からなる多部品構成となっているが、フロート弁としては、例えば、上方に弾性材料からなるシール部材を装着したフロート弁等であってもよく、開口部25を開閉可能であればよい。
【0062】
更に、この実施形態では、ハウジング15内に形成された一つの弁室V内に、一つのフロート弁80が収容配置された構造となっているが、例えば、一つの弁室内に複数のフロート弁を収容配置したり(満タン規制弁のほか、燃料カット弁や圧力調整弁等として機能する)、ハウジング内に複数の弁室を画成して、各弁室内にフロート弁を収容配置したりしてもよい。
【0063】
また、この実施形態における流入抑制壁67は、ハウジング15を径方向外方から見たときに、周壁側連通孔53と重なるように配置され、且つ、上方に向けて斜め外方に突出する構成となっているが(すなわち、2つの特徴を兼ね備えている)、流入抑制壁としては、ハウジングを径方向外方から見たときに、周壁側連通孔と重なるように配置された構成のみか、又は、上方に向けて斜め外方に突出する構成のみであってもよい。
【0064】
また、この実施形態の流入抑制壁67は、底壁43の、底壁側連通孔59よりも内側の内周縁部から、ハウジング15の軸方向上方に向けて、所定角度で斜め外方に真っ直ぐに突出しているが、流入抑制壁としては、例えば、底壁の内周縁部から、(1)湾曲形状や曲面形状を描きながら上方に向けて且つ斜め外方に突出したり、(2)所定角度で直線状に突出する部分を異なる角度で複数設けて、流入抑制壁全体として上方に向けて且つ斜め外方に突出した形状としたり(例えば、基端部側を緩やかな角度で突出させ、先端部側を急角度で突出させる)してもよい。更に、この実施形態の流入抑制壁67は、その先端が周壁側連通孔53の領域内に位置しているが、流入抑制壁としては、その先端が周壁側連通孔の上方天井面を超えて突出していてもよい。
【0065】
また、この実施形態における弾性片63は、第1延出部64と、第2延出部65と、第3延出部66とを有し、階段状に屈曲しながら延びる形状となっているが、弾性片としては、例えば、周壁内周から径方向内方に向けて上方に真っ直ぐに延びる形状としたり、周壁内周から径方向内方に向けて湾曲形状や曲面形状を描きながら延びる形状としたりしてもよく、撓み変形可能でフロート弁底面を支持可能であればよい。
【0066】
(作用効果)
次に、上記構造からなる弁装置10の作用効果について説明する。
【0067】
図4に示すように、燃料タンク内へ燃料が十分に給油されておらず、フロート弁80が燃料に浸漬していない状態では、フロート弁80は自重で下降して、開口部25が開くため、開口部25を通じて弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。
【0068】
この状態で燃料タンク内に燃料が給油されると、主として、燃料タンク内の空気が、下部キャップ40の底壁側連通孔59から、弁室V内に流入して、フロート弁80と、下部キャップ40の周壁41及びハウジング本体20の周壁21との隙間を通過して、上方へと流れていき、開口部25から通気室R内に流入して、燃料タンク外のキャニスターへと排出される。このように、燃料タンク内の空気が、燃料タンク外へ排出されることで、燃料タンク内に燃料を給油可能となっている。
【0069】
上記の図4に示す状態から、燃料タンク内に燃料が給油されていくと、燃料が、下部キャップ40の底壁側連通孔59から弁室V内に流入し、フロート弁80のフロート本体81に燃料が浸漬していく。そして、燃料タンク内の燃料液面が設定された満タン液面に達したとき、すなわち、周壁側連通孔53が閉塞されて液没した状態となると、付勢バネSの付勢力及びフロート弁80のフロート本体81自体の浮力によって、フロート弁80が上昇して、そのシール弁体85が開口部25の裏側周縁部に当接して、開口部25が閉塞される。その結果、開口部25を通じての、弁室Vと通気室Rとの空気流通が遮断される。すると、燃料タンク内の燃料が燃料タンクに設けた給油管を上昇して、給油口に差し込まれた給油ノズルの満タン検知センサに燃料が接触して満タンを検知するので、燃料タンク内への給油が停止されて満タン規制を図ることができる。
【0070】
ところで、図4図8の矢印F1に示すように、燃料タンク内に燃料が給油される際には、燃料タンク内の空気や燃料蒸気等の流体が、周壁側連通孔53から弁室V内に流入することがある。
【0071】
これに関し、この弁装置10においては、図4図8、及び図9に示すように、底壁43には、フロート弁80が支持された状態で、フロート弁80の外周よりも外側で、フロート弁80の底面81aよりも上方に突出するように形成された流入抑制壁67が複数設けられており、この流入抑制壁67は、図3に示すように、ハウジング15を径方向から見たときに、周壁側連通孔53と重なるように配置されている。
【0072】
そのため、周壁側連通孔53から弁室V内に流入した流体が、流入抑制壁67にぶつかるので、フロート弁80の底面81a側に、流体を流入しにくくすることができる。その結果、給油時等において流体が吹き上がったときに、フロート弁80の底面81a側からの、流体による押上げが抑制されるため、フロート弁を80浮き上がりにくくすることができる。
【0073】
なお、図10に示すような、流入抑制壁67を有しない弁装置10´の場合は、流入抑制壁67から弁室V内に流入した流体は、フロート弁80の底面81aと底壁43の上面との間の隙間に入り込みやすくなり(図10の矢印参照)、フロート弁80を底面81a側から押し上げて、フロート弁80を浮き上がらせやすい。
【0074】
また、この弁装置10においては、図4図8、及び図9に示すように、底壁43には、フロート弁80が支持された状態で、フロート弁80の外周よりも外側で、フロート弁80の底面81aよりも上方に突出するように形成された流入抑制壁67が複数設けられており、この流入抑制壁は、上方に向けて斜め外方に突出するものとなっている。
【0075】
そのため、例えば、ハウジング本体20の流通孔35や、下部キャップ40の周壁側連通孔53等から、弁室V内に流入した流体が、流入抑制壁67にぶつかって、その流動方向を、図4図8の矢印F2に示すように、ハウジング15の径方向外方側へと変化させることができるので、フロート弁80の底面81a側に、流体を流入しにくくすることができる。その結果、給油時等において流体が吹き上がったときに、フロート弁80の底面81a側からの、流体による押上げが抑制されるため、フロート弁80を浮き上がりにくくすることができる。
【0076】
更に、この弁装置10においては、図4図8、及び図9に示すように、底壁43には、フロート弁80が支持された状態で、フロート弁80の外周よりも外側で、フロート弁80の底面81aよりも上方に突出するように形成された流入抑制壁67が複数設けられており、底壁43には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる底壁側連通孔59が形成されており、該底壁側連通孔59の内周縁部から流入抑制壁67が設けられている。
【0077】
そのため、図8の矢印F3に示すように、底壁側連通孔59から弁室V内に流入した流体が、流入抑制壁67にぶつかるので、フロート弁80の底面81a側に、流体を流入しにくくすることができる。その結果、給油時等において流体が吹き上がったときに、フロート弁80の底面81a側からの、流体による押上げが抑制されるため、フロート弁を80浮き上がりにくくすることができる。
【0078】
更に、この実施形態においては、図4図6、及び図8に示すように、底壁43は、スリット61を介して撓み変形可能に形成され、フロート弁80の底面81aを支持する弾性片63を有しており、該弾性片63は、周壁41の内周から、ハウジング15の径方向内方に向けて延びる第1延出部64と、該第1延出部64の先端から、ハウジング15の軸方向上方に向けて延びる第2延出部65と、該第2延出部65の先端から、ハウジング15の径方向内に向けて更に延びる第3延出部66とを有しており、第2延出部65は、図3に示すように、ハウジング15を径方向から見たときに、周壁側連通孔53の領域内に位置するように設けられている。
【0079】
上記態様によれば、底壁43は、撓み変形可能に形成され、フロート弁80の底面81aを支持する弾性片63を有しているので、フロート弁80の下降時における打音を抑制することができると共に、弾性片63の第2延出部65は、ハウジング15を径方向から見たときに、周壁側連通孔53の領域内に位置するように設けられているので、周壁側連通孔53から弁室内に流入した流体が、流入抑制壁67のみならず、弾性片63の第2延出部65にもぶつかることになって、周壁側連通孔53から弁室V内に流入した流体を、、フロート弁80の底面81a側に、より流入しにくくすることができる。
【0080】
また、この実施形態においては、図3に示すように、弾性片63を構成する第3延出部66は、底壁43と重なるように配置されており、第2延出部65は、後述する流入抑制壁67よりも径方向外方に配置されている。
【0081】
上記態様によれば、第3延出部66は、底壁43と重なるように配置されており、第2延出部65は、流入抑制壁67よりも径方向外方に配置されているので、弾性片63を構成する第2延出部65及び第3延出部66が、底壁43及び該底壁43に形成した流入抑制壁67と協働して、周壁側連通孔53から弁室V内に流入した流体の流動を阻害することができ、周壁側連通孔53から弁室V内に流入した流体を、フロート弁80の底面81a側に、更に効果的に流入しにくくすることができる。
【0082】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10 弁装置
15 ハウジング
20 ハウジング本体
21 周壁
23 仕切壁
25 開口部
40 下部キャップ
41 周壁
43 底壁
53 周壁側連通孔
59 底壁側連通孔
61 スリット
63 弾性片
64 第1延出部
65 第2延出部
66 第3延出部
67 流入抑制壁
70 上部カバー
80 フロート弁
V 弁室
R 通気室
S 付勢バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10