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特開2023-88736COPD治療薬およびCOPD治療用飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088736
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】COPD治療薬およびCOPD治療用飲食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4422 20060101AFI20230620BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20230620BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230620BHJP
【FI】
A61K31/4422
A61P11/00
A61K31/353
A61K31/135
A61K31/165
A61K31/17
A61K31/4184
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203651
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】521527602
【氏名又は名称】アクティブペプチド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519297539
【氏名又は名称】ニチモウバイオティックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】天海 智博
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD08
4B018MD18
4B018ME14
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC26
4C086BC62
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA19
4C206GA09
4C206GA22
4C206HA30
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
(57)【要約】
【課題】肺の上皮細胞のアポトーシスを抑制することができるCOPD治療薬およびCOPD治療用飲食品を提供すること。
【解決手段】COPD治療薬およびCOPD治療用飲食品は、ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とするCOPD治療薬。
【請求項2】
ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインを含むアグリコン型イソフラボン混合物を含有し、前記ダイゼインの含有量が、前記アグリコン型イソフラボン混合物中の60~80質量%であることを特徴とする請求項1のCOPD治療薬。
【請求項3】
前記アグリコン型イソフラボン混合物が、AglyMax(登録商標)であることを特徴とする請求項2のCOPD治療薬。
【請求項4】
ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とするCOPD治療用機能性飲食品。
【請求項5】
ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインを含むアグリコン型イソフラボン混合物を含有し、前記ダイゼインの含有量が、前記アグリコン型イソフラボン中の60~80質量%であることを特徴とする請求項4のCOPD治療用飲食品。
【請求項6】
前記アグリコン型イソフラボン混合物が、AglyMax(登録商標)であることを特徴とする請求項5のCOPD治療用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COPD治療薬およびCOPD治療用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、有害な粒子やガスに対する肺の炎症反応が主な原因であり、慢性気管支炎や肺気腫など、気道の狭窄と炎症を伴う進行性慢性疾患である。COPDの特徴的な臨床症状としては、慢性の咳と過剰な痰、労作性呼吸困難(動作時の息切れ)が挙げられる。
【0003】
また、COPDの発症メカニズムのうち、肺の気道上皮細胞のアポトーシスは、COPDの発症において重要な事象の一つと考えられている。また、COPD患者の肺で観察されるアポトーシスを起こした肺胞上皮細胞や内皮細胞の増加は、肺組織の破壊、肺気腫やCOPDの発症に関与していることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
そして、従来より、COPDの治療は、気管支拡張薬やステロイドなどの抗炎症薬を投与することで、COPDの諸症状を緩和し、病気の進行を遅らせる薬物治療が主流である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Demedts, I.K., Demoor, T., Bracke, K.R., Joos, G.F., and Brusselle, G.G. (2006). Role of apoptosis in the pathogenesis of COPD and pulmonary emphysema. Respir Res 7, 53.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、COPDの諸症状を緩和し、病気の進行を遅らせる薬物治療においては、COPDの根本的な治療方法とはならないため、肺の気道上皮細胞のアポトーシスを抑制することができる薬剤の開発が望まれている。また、COPDは、COVID‐19による肺炎の増悪因子であるため、その改善は社会的にも貢献する。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、肺の上皮細胞のアポトーシスを抑制することができるCOPD治療薬およびCOPD治療用飲食品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のCOPD治療薬は、ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有する。
【0009】
本発明のCOPD治療用飲食品は、ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のCOPD治療薬およびCOPD治療用飲食品は、肺細胞のアポトーシスを抑制することができ、COPDを効果的に治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A-H) BEAS-2B細胞を0.5% DMSO(A, B)、0.5% Ploom TECH抽出物(C, D)、0.5% Ploom TECH+抽出物(E, F)、または0.5% 3R4F抽出物(G, H)で処理し、フローサイトメーターによる解析を行った結果を示す図である(Y軸;FITCを用いたTUNELアッセイ、X軸;Alexa Fluor647検出を用いた抗EGR1抗体)。(I-P) BEAS-2B細胞を無処理(I)または1μM Staurosporine(J)、0.5% 3R4F抽出物(K, L)、0.3% 3R4F抽出物(M, N)、0.1% 3R4F抽出物(O, P)で処理し、アネキシンV-PEアッセイを用いてフローサイトメーターによる解析を行った結果を示す図である
図2】細胞の核染色とAnnexin-V―PE 蛍光染色、May-Giemsa染色を行い、肺の組織像を観察した結果を示した図である。
図3】COPD治療に有用な薬剤のスクリーニングの結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のCOPD治療薬およびCOPD治療用飲食品の一実施形態について説明する。
【0013】
(COPD治療薬)
本発明のCOPD治療薬は、ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有する。これらの芳香族炭化水素構造を有する化合物は、薬剤として既知であり、安全性などが確認されている。これらの芳香族炭化水素構造を有する化合物は、例えばタバコの煙などの有害物質により引き起こされる肺細胞のアポトーシスを抑制することができるため、これらを含む本発明のCOPD治療薬は、根本的にCOPDを治療し得る。
【0014】
そして、本発明のCOPD治療薬の対象となるCOPDの諸症状や疾患は、例えば、慢性の咳と過剰な痰、労作性呼吸困難(動作時の息切れ)、栄養障害、骨格筋機能障害、高血圧や心不全、脳卒中、狭心症、急性心筋梗塞などの心・血管疾患ならびに抑うつなどの合併症が含まれる。
【0015】
また、本発明のCOPD治療薬の一実施形態としては、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインを含むアグリコン型イソフラボン混合物を含有することが好ましい。ここで、「アグリコン型イソフラボン」とは、グリコシド型イソフラボンから糖が外れた形態のものを言う。本発明のCOPD治療薬がアグリコン型イソフラボン混合物を含む場合、ダイゼインが、アグリコン型イソフラボン混合物中の60~80質量%であることが好ましい。このようなアグリコン型イソフラボン混合物は特に限定されず、市販のものを使用することができるが、例えば、ニチモウバイオティックス株式会社製 商品名:AglyMax(登録商標)を好ましく例示することができる。
【0016】
本発明のCOPD治療薬は、上記の芳香族炭化水素構造を有する化合物を有効成分としてそのまま用いてもよいし、薬学的に許容できる成分を加えて製剤化してもよい。
【0017】
本発明のCOPD治療薬は、経口的に使用される剤型であってもよく、非経口的に使用される剤型であってもよい。経口的に使用される剤型としては、例えば粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤エリキシル剤、マイクロカプセル剤等が挙げられる。非経口的に使用される剤型としては、例えば注射剤、吸入剤、点鼻剤、坐剤、貼付剤等が挙げられる。
【0018】
本発明のCOPD治療薬は、薬学的に許容される担体を含むことができる。このような担体としては、例えば、公知の賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、溶剤、増粘剤、粘液溶解剤、湿潤剤、防腐剤などを例示することができる。
【0019】
本発明のCOPD治療薬は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノールの安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤などを例示することができる。
【0020】
本発明のCOPD治療薬は、上述した担体や添加剤などを適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
【0021】
また、本発明のCOPD治療薬の投与量は、患者の体重や年齢、患者の症状、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。例えば、成人1日当たりの投与量が1mg~1000mg、好ましくは10mg~100mgの範囲となるような投与量を目安とすることができる。
【0022】
(飲食品)
本発明のCOPD治療用飲食品(食品および飲料)は、ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンおよびこれらの誘導体のうちの1種または2種以上を含有する。本発明のCOPD治療用飲食品は、これらの芳香族炭化水素構造を有する化合物を含有することで、例えばタバコの煙などの有害物質により引き起こされる肺胞上皮細胞のアポトーシスを抑制することができるため、根本的にCOPDを治療し得る。
【0023】
また、本発明のCOPD治療薬の一実施形態としては、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインを含むアグリコン型イソフラボン混合物を含有することが好ましく、この場合、ダイゼインの含有量が、アグリコン型イソフラボン混合物中の60~80質量%であることが好ましい。このようなアグリコン型イソフラボン混合物は特に限定されず、市販のものを使用することができるが、例えば、ニチモウバイオティックス株式会社製 商品名:AglyMax(登録商標)を好ましく例示することができる。
【0024】
飲食品としては、例えば、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤等の形態を有する健康飲食品(サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品等)、清涼飲料、茶飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルト等)、乳酸菌飲料、乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、アルコール飲料、菓子、ゼリー等の形態を例示することができる
さらに、本発明の「飲食品」は、食品工学の分野において通常用いられる成分を含んでいてよい。具体的には、例えば、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油等の植物油、牛脂、イワシ油等の動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参等)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニン等)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリン等)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群等)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロース等)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等)、精製水、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調製剤、緩衝剤、湿潤剤、溶解補助剤、懸濁化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、香料、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料などを例示することができる。
【0025】
飲食品の摂取量は、患者の体重や年齢、患者の症状、投与方法等により変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。
【0026】
飲食品の摂取量は、患者の体重や年齢、患者の症状等により変動するが、当業者であれば適当な摂取量を適宜選択することが可能である。例えば、成人1日当たりの有効成分の摂取量が1mg~1000mg、好ましくは10mg~100mgの範囲となるような投与量を目安とすることができる。
【0027】
本発明のCOPD治療薬およびCOPD治療用飲食品は、以上の実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例0028】
以下、本発明について、実施例とともに説明するが、本発明のCOPD治療薬およびCOPD治療用飲食品は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
<実施例1>抽出液の作製
3R4Fのタバコは、ケンタッキー大学、ケンタッキー・タバコ研究開発センター(Lexington, KY, USA)から入手した。タバコを燃焼させずに加熱するHNB製品であるPloom TECHとそのフレーバーバージョンであるPloom TECH+は、日本たばこ産業株式会社(Japan Tobacco Inc. (東京、日本)から入手した。
【0030】
タバコ抽出液は、Takahashi et al. (2018). Chemical analysis and in vitro toxicological evaluation of aerosol from a novel tobacco vapor product: A comparison with cigarette smoke. Regul Toxicol Pharmacol 92, 94-103.に記載の方法で作製した。
【0031】
<実施例2>TUNEL assay
Ploom TECH抽出液、Ploom TECH+抽出液、3R4F抽出液による正常肺胞上皮細胞BEAS-2BでのEGR1発現の上昇とアポトーシスの有無を検出するためにTUNEL assayを行った。具体的には、0.5% DMSO、Ploom TECH抽出液、Ploom TECH+抽出液、3R4F抽出液を細胞に添加し、6時間後と24時間後に細胞を回収し、DeadEnd Fluorometric TUNEL System(Promega社)を用いてDNAの断片化を調べた。
【0032】
3R4F抽出液で処理したBEAS-2B細胞は、6時間後に2.5%がEGR1陽性となり、77.1%がアポトーシスを起こした。24時間後には、EGR1陽性細胞は0.4%まで低下し、96.4%がアポトーシスを起こした。Ploom TECH抽出物、Ploom TECH+抽出物を投与した細胞では、0.5% DMSOと比較してアポトーシスやEGR1の上昇は認めなかった(図1A-H)。
【0033】
3R4F抽出液を添加することで、BEAS-2B細胞は6時間後にEGR1発現の上昇を認め、同時期よりアポトーシスに陥っており、24 時間後にはEGR1の発現上昇は低下していることが確認された。
【0034】
次に0.1%~0.3%と低濃度の3R4Fでもアポトーシスが起こるかどうか調べるためにTUNEL assayを行った。BEAS-2B細胞に0.1~0.3% 3R4F抽出液処理を行い、48時間後にTUNEL assayを行った。0.1~0.3%の3R4F抽出液処理細胞は、それぞれ2.4%、10.9%、30.9%と濃度依存的にアポトーシス細胞集団が検出された(図1I-L)。
【0035】
<実施例3>肺組織の観察
In vivoでも3R4F抽出液がアポトーシスを引き起こすか調べるため、DMSO、Ploom TECH抽出液、Ploom TECH+抽出液、3R4F抽出液をそれぞれ2匹の正常マウスの胸腔内に注射した後、肺を生理食塩水で洗浄し、その洗浄液中の細胞の核染色とAnnexin-V―PE 蛍光染色、May-Giemsa染色を行い、肺の組織像を観察した。
【0036】
具体的には、マウスの右胸腔内に6%DMSO(A、B、I、M、Q、U)、6%Ploom TECH(PT)抽出物(C、D、J、N、R、V)、6%Ploom TECH+(PT+)抽出物(E、F、K、O、S、W)、6%3R4F抽出物(G、H、L、P、T、X)を100uL注入した(各群n=2匹)。7日後、各条件のマウス2匹の肺をパラフィンに包埋し、ヘマトキシリンとエオシンで染色した。24時間後、各条件のマウス2匹の気管を外科的に露出させ、注射と吸引を3回繰り返して1mlのBALFを得た。BALF中の細胞をAnnexin V-PE(M-P)およびHoechist(I-L)で染色し、サイトスピンにロードして観察した。蛍光観察後、細胞をMay-Giemsaで染色した(Q-X)。
【0037】
1週間後の肺の組織像をホルマリン固定し、パラフィン切片をHE染色して観察すると、3R4F抽出液を注射したマウスでアポトーシスを起こしている肺胞上皮細胞の塊が検出され、一方、Ploom TECH抽出液、Ploom TECH+抽出液で処理した肺胞洗浄液中には肺胞上皮細胞の塊は検出されず、Annexin-V-PE蛍光染色陽性細胞も確認されなかった(図2A-X)。
【0038】
<実施例4>薬剤のスクリーニング
3R4FはAHRを介して制御される EGR1 を介してアポトーシスを引き起こすと考えられるため、AHRに拮抗し、アポトーシスを防ぐ薬剤は、COPD治療薬として有用であると考えられる。そこで、3R4F抽出物による細胞のアポトーシスを阻害するかどうか、芳香族炭化水素構造を持つ既存の薬剤をスクリーニングした。
【0039】
芳香族炭化水素構造を有する代表的な薬剤について、0.1%の3R4Fで阻害されたBEAS-2B細胞の増殖細胞に対する影響を調べた。
【0040】
その結果、図3に示したように、ダイゼイン、ゲニステイン、テクトリゲニン、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、カンデサルタン、アムロジピンは、3R4F抽出物によるアポトーシスを抑制し、細胞増殖を有意に回復させることが確認された。これらの薬剤は、COPD治療薬の有効成分として有用であることが確認された。
【0041】
また、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインを含むアグリコン型イソフラボン混合物であるニチモウバイオティックス株式会社製 商品名:AglyMax(登録商標)についても、3R4F抽出物によるアポトーシスを抑制し、細胞増殖を有意に回復させることから、COPD治療薬の有効成分として有用であることが確認された。
【0042】
一方、クロロキン、タモキシフェン、キヌレン酸、キニーネ、テルビナフィン、フルコナゾール、ビフォナゾール、クロラムフェニコ―ルについては、細胞増殖の回復が確認されなかった。
図1
図2
図3