(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088742
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】固形筆記体およびそれを用いた筆記具
(51)【国際特許分類】
C09D 11/17 20140101AFI20230620BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20230620BHJP
C09D 11/106 20140101ALI20230620BHJP
B43K 19/00 20060101ALI20230620BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20230620BHJP
B43K 21/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C09D11/17
C09D11/102
C09D11/106
B43K19/00 D
B43K29/02 F
B43K29/02 A
B43K21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203660
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅夫
【テーマコード(参考)】
2C353
4J039
【Fターム(参考)】
2C353FC13
2C353MA06
4J039AB12
4J039AD01
4J039AD06
4J039AE04
4J039AE08
4J039BA23
4J039BE01
4J039BE09
4J039CA09
4J039CA11
4J039DA05
4J039EA29
4J039EA32
4J039GA27
4J039GA30
(57)【要約】
【課題】優れた強度と変色特性を備え、シャープペンシル用にも適用可能な固形筆記体の提供。
【解決手段】可逆熱変色性組成物などの機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料、ワックスなどの賦形材、ポリビニルアルコール樹脂、およびポリアミド樹脂を含んでなる固形筆記体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料、
賦形材、
ポリビニルアルコール樹脂、および
ポリアミド樹脂
を含んでなることを特徴とする固形筆記体。
【請求項2】
前記機能性材料が、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物からなる成分と、
(ロ)電子受容性化合物からなる成分と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体と、
を含んでなる可逆熱変色性組成物である、請求項1に記載の固形筆記体。
【請求項3】
前記賦形材がワックスである、請求項1または2に記載の固形筆記体。
【請求項4】
前記賦形材の重量平均分子量が、1,000~100,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形筆記体。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール樹脂が、ケン化度80モル%以下の部分ケン化ポリビニルアルコールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形筆記体。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂の融点が150℃以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の固形筆記体。
【請求項7】
前記固形筆記体の総質量を基準として、前記ポリビニルアルコール樹脂の含有率が5~30質量%であり、前記ポリアミド樹脂の含有率が1~10質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の固形筆記体。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコール樹脂の含有量に対する、前記ポリアミド樹脂の含有量の比が1/1未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の固形筆記体。
【請求項9】
円柱状の形状を有し、その外径が0.3~3.5mmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の固形筆記体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の固形筆記体が、チャックを介して保持され、必要に応じて前記固形筆記体が繰り出されるように配置されたシャープペンシル。
【請求項11】
摩擦部材をさらに具備してなる、請求項10に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化によって変色する筆跡を形成できる固形筆記体に関するものである。さらに詳しくは、強度および発色性に優れ、かつ変色異常が抑制された固形筆記体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワックスなどを賦形材として用いた色鉛筆など固形筆記体が知られている。これらの固形筆記体の強度や成形性、筆記性を向上するために、タルクなどの無機フィラーを配合し、その性能を向上することが知られている。
【0003】
また、従来から、常温域など一定の温度域において、変色前後の状態を互変的に記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体が提案されている(例えば特許文献1)。そこに記載された記固形筆記体は、賦形材であるワックス中に添加する着色剤として可逆熱変色性組成物単独又はそのマイクロカプセル封入物を用いることで、温度変化により変色する筆跡を形成するものである。特に、加熱消色タイプの可逆熱変色性組成物を封入するマイクロカプセル顔料を用いた場合、摩擦熱によって筆跡を容易に消去できるため、誤記などの修正などが可能な利便性の高い筆記体となり、例えば、ノートや手帳への筆記や、描画等に利用可能である。
【0004】
しかしながら、そのような固形筆記体では用いる材料が限定されるため、従来の一般的な固形筆記体と比べて強度が劣る傾向にある。このため、強度を改善するために各種の材料の適用が検討されている(例えば特許文献2)。
【0005】
一方、例えばシャープペンシル用の芯体など、細径の芯として用いることができる程度の強度を実現しようとすると、可逆熱変色性組成物が封入されたマイクロカプセルによって得られる変色特性が十分発揮されないという変色異常が起こる場合があることがあった。このため、固形筆記体としての筆記性能や発色性を損なうこと無く、強度と変色特性をさらに改良した固形筆記体の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-166310号公報
【特許文献2】特開2020-105314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの検討によれば、マイクロカプセルを含む固形筆記体において、高い強度を実現するために硬度の高い材料を用いると、それによって変色異常が起きやすくなることがあることがわかった。具体的には、固形筆記体によって形成された筆跡を熱によって変色させたとき、経時によって変色前の色に復元してしまうことがあった。理由は詳細に解明されていないが、硬度の高い材料を用いた場合には芯体中でマイクロカプセルの破壊が起こることが原因と推定される。このため、固形筆記体の強度と変色特性との両立が困難であった。本発明は、このような課題を解決し、強度に優れ、かつ変色異常が抑制された固形筆記体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による固形筆記体は、
機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料、
賦形材、
ポリビニルアルコール樹脂、および
ポリアミド樹脂
を含んでなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明によるシャープペンシルは、前記の固形筆記体が、チャックを介して保持され、必要に応じて前記固形筆記体が繰り出されるように配置されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明による固形筆記体は、固形筆記体に求められる、筆記性能を高いレベルで維持したまま、細径にした場合であっても折れにくい高い強度と、変色異常が抑制された、優れた変色特性とを実現したものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に用いることができる加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[固形筆記体]
本発明による固形筆記体は、マイクロカプセル顔料、賦形材、ポリビニルアルコール樹脂、およびポリアミド樹脂を含んでなる。
【0013】
本発明による固形筆記体は、マイクロカプセル顔料として、機能性材料を内包したものを用いる。
前記機能性材料として好ましいものは、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物からなる成分と、
(ロ)電子受容性化合物からなる成分と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体と、
を含んでなる可逆熱変色性組成物である。
【0014】
本発明に用いることができる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料について以下に説明する。前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料としては、従来知られているものから任意に選択して用いることができる。例えば、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅△Hが比較的小さい特性(△H=1~7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用できる。
【0015】
また、上記のものより大きなヒステリシス特性(△H=8~50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(T1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(T4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔T2~T3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料も適用できる。
【0016】
以下に前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を
図1のグラフによって説明する。
【0017】
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全に消色した状態に達する温度T
4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色し始める温度T
3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色し始める温度T
2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全に発色した状態に達する温度T
1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
【0018】
また、線分EFの長さ、つまり最高濃度と最低濃度の差が変色のコントラストを示す尺度である。また、線分HGの長さ、つまり、T1とT2の中間温度をTH、T3とT4の中間温度をTGとしたときのTHとTGの差がヒステリシスの程度を示す温度幅△Hであり、この △H値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
【0019】
更に、可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による印像を摩擦により生じる摩擦熱により簡易に変色(消色)させるためには、完全消色温度(T4)が50~95℃であることが好ましく、且つ、発色開始温度(T2)が-50~10℃であることが好ましい。
【0020】
更に、摩擦熱により筆跡を消去する場合、完全消色温度(T4)が95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。
【0021】
前述の完全消色温度(T4)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(T4)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。よって、完全消色温度(T4)は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃である。更に本発明においてヒステリシス幅(△H)は50℃~100℃の範囲であり、好ましくは55~90℃、更に好ましくは60~80℃である。
【0022】
本発明による固形筆記体に用いる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、前記変色温度域よりも高温側に完全消色温度(T4)を有する可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
【0023】
前記可逆熱変色性組成物を用いることで、筆跡が夏場の車内などの高温環境下で放置しても消色することがなく、固形筆記体としての適用範囲を広げることができる。さらに、摩擦部材による擦過により、消去しにくくなることから、書類の真贋を判別することに用いることができる。
【0024】
以下に可逆熱変色性組成物を構成する(イ)、(ロ)、および(ハ)成分について説明する。
【0025】
本発明において(イ)成分は、顕色剤である成分(ロ)に電子を供与し、成分(イ)が有するラクトン環などの環状構造が開環し、成分(ロ)と共鳴構造をとることにより発色する電子供与性呈色性有機化合物からなるものである。このような電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類、ピリジン類、キナゾリン類、ビスキナゾリン類などを挙げることができる。
【0026】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
【0027】
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0028】
前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
【0029】
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満の △T値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物が用いられる。
【0030】
このような化合物としては、種々のものが提案されており、それらから任意に選択して用いることができる。
【0031】
前記(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分の構成成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~50、好ましくは0.5~20、(ハ)成分1~800、好ましくは5~200の範囲である(前記割合はいずれも質量基準である)。また、各成分は各々2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
前記可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として使用される。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0033】
前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与することや、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0034】
ここで、可逆熱変色性組成物とマイクロカプセル壁膜の質量比は、好ましくは7:1~1:1、より好ましくは6:1~1:1の範囲を満たす。
【0035】
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0036】
なお、機能性材料としては、上記した可逆熱変色性組成物のほか、コレステリック液晶、ネマチック液晶などの液晶類、フォトクロミック材料などが挙げられる。前記液晶としては、ヘリコーンHC SLM90020、同90120,同90220,同90320(以上、ワッカーケミー社製)などが挙げられる。
【0037】
本発明による固形筆記体は、さらに賦形材を含んでなる。本発明において、賦形材としては、一般的に固形筆記体に用いることができるものを採用することができる。具体的には、前記賦形剤は、重量平均分子量Mwが、1,000~100,000であるものが好ましく、ワックス、ゲル化剤、粘土などが挙げられる。これらのうち、ワックス、特にポリオレフィンワックスは、筆記体の強度を筆記時に容易に折損しない程度に保ちつつ、筆記時の摩耗性を良好とし、滑らかな筆記感を奏するとともに濃く鮮明な筆跡を形成することができるために好ましく用いられる。
【0038】
前記ポリオレフィンワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等などが挙げられる。なお、前記ポリオレフィンワックスは、スチレンまたは無水マレイン酸等で変性したものであっても良い。
【0039】
ポリオレフィンワックスの分子量は特に限定されないが、賦形材には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC法)による重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000の範囲内であるポリオレフィンワックスが好ましい。ポリオレフィンワックスの重量平均分子量が30,000を越えると、筆記時に固形筆記体が摩耗し難く、筆跡が不鮮明になる傾向が見られる。分子量が1、000を下回ると、筆記体の強度を高めることが難しく、筆記時に筆記体が折損しやすくなり、しかも、擦過消去時に筆跡が紙面上で伸びてしまう(ワックスが薄層化される)ために筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる傾向にある。
【0040】
」
筆記体強度を高めて筆記時に筆記体が折損することを抑制しつつ、滑らかな筆記感を奏し、高い濃度の筆跡を形成するために、ポリオレフィンワックスの重量平均分子量は、1,000~20,000の範囲内であることがより好ましい。
【0041】
また、ポリオレフィンワックスのうち、軟化点が20℃~120℃の範囲にあるものは、筆記体強度と筆記時の摩耗性とのバランスを良好としやすいことから、好ましく用いられる。 ここでポリオレフィンワックスの軟化点の測定方法は、JIS K2207-6(2006)(環球法)に基づいて測定されるものである。
【0042】
本発明に用いることができるポリオレフィンワックスの具体例としては、ネオワックスシリーズ(ヤスハラケミカル株式会社製 ポリエチレン)、サンワックスシリーズ(三洋化成工業株式会社製 ポリエチレン)、ハイワックスシリーズ(三井化学株式会社製 ポリオレフィン)、A-Cポリエチレン(Honeywell社製 ポリエチレン)HSクリスタシリーズ(豊国製油株式会社製 αオレフィン)エルクリスタシリーズ(出光興産株式会社製 αオレフィン)、Licocene PPシリーズ(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0043】
なお、これらのポリオレフィンワックスのうち、側鎖結晶性ポリオレフィンを用いることが好ましい。側鎖結晶性ポリオレフィンとは、結晶化が主としてポリオレフィン主鎖ではなく側鎖で起こり、その結果、融点が低く、また融解が狭い温度範囲で起こるという特徴を有している。このような側鎖結晶性ポリオレフィンは、側鎖に長いアルキル基を有することが特徴である。具体的には、C12~C28の長鎖アルキル基を有しているものが好ましい。また、側鎖の長鎖アルキル基は、直鎖型であっても分岐型でも特に限定されないが、結晶性の観点から直鎖型がより好ましい。なお、この側鎖であるアルキル基は置換基を有してもよいが、それによって結晶性が下がる傾向がある。したがって、結晶性を調整するために、側鎖結晶性ポリオレフィンの側鎖を、例えばスチレンなどによって変性することもできる。また、長鎖アルキル基は、水素結合を形成する官能基を持っていると、長鎖アルキル基が水素結合をおこし、アルキル基同士の凝集が起こり、結晶性が向上するため好ましい。
【0044】
また、側鎖結晶性ポリオレフィンのひとつとして、高度に分岐構造を有するポリオレフィン(以下、簡単のために高分岐ポリオレフィンという)を挙げることができる。すなわち高分岐ポリオレフィンは、単一の主鎖に対して、側鎖が結合した構造とは少し異なった構造を有するが、結晶化の際に主鎖が折りたたまれることが少ないため、融点が低く、また融解が狭い温度範囲で起こる。
【0045】
なお、固形筆記体の機械的強度や変色特性、製造時の取り扱い性の観点から、側鎖結晶性ポリオレフィンの重量平均分子量Mwが2,000~50,000であるものが好ましく、10,000~30,000であることがより好ましい。また、側鎖結晶性ポリオレフィンの数平均分子量Mnが1,000~10,000であるものが好ましい。ここで、重量平均分子量、および数平均分子量はポリスチレンを基準としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたものである。
【0046】
また、好ましい側鎖結晶性ポリオレフィンとして、融点(m.p.)が20~80℃であるものが挙げられる。より好ましくは、25℃~60℃であり、更に好ましくは、30℃~55℃である。融点がこの範囲より低いと、固形筆記体の強度が小さくなる傾向があり、この範囲より大きいと発色性が悪くなる傾向がある。融点がこのような範囲にあると、実用環境下での安定性を損なわずに筆記の際に摩擦熱によって固形筆記体が柔軟になり、筆記面への転写量が増えるために筆跡濃度を改良することができる。
【0047】
このような側鎖結晶性ポリオレフィンとしては、HSクリスタ4100、HSクリスタ6100(いずれも商品名、豊国製油株式会社製)、エルクリスタ4100、エルクリスタ6100(いずれも商品名、出光興産株式会社製)などが挙げられ、高分岐ポリオレフィンとしては、VYBAR103、VYBAR260、VYBAR343、VYBAR852(いずれも商品名、ベイカーヒューズ社製)などが挙げられる。
【0048】
ポリオレフィンワックスは、1種のみを用いても良く、併用しても良い。
【0049】
また、賦形材としては前記ポリオレフィンワックスとともに、その他のワックス、ゲル化剤、粘土などを用いることが出来る。その他のワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12-ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。
【0050】
賦形材の含有量は、固形筆記体の総質量を基準として0.2~70質量%が好ましく、0.5~40質量%であることがより好ましい。含有量が前記範囲内であると、固形筆記体の強度を高めつつ、筆記時の摩耗性を良好として、筆記時に良好な筆記感を奏するとともに高い濃度の筆跡を形成することが可能な固形筆記体としやすい。
【0051】
また、本発明による固形筆記体はポリビニルアルコール樹脂を含んでなる。このポリビニルアルコール樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化することによって製造されるのが一般的である。固形筆記体にポリビニルアルコール樹脂を用いることで、固形筆記体の成形性や強度が向上させる傾向がある。ポリビニルアルコール樹脂の分子量は特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC法)による重量平均分子量(Mw)が100~4000であるものが好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度が比較的低いポリビニルアルコール部分ケン化物が好ましい。具体的にはポリビニルアルコール部分ケン化物のケン化度が80mol%以下であることが好ましく、3~50mol%であることがより好ましい。このようなポリビニルアルコール部分ケン化物として、具体的にはJMR-10LL(日本酢ビ・ポバール株式会社製、ケン化度5~20mol%)、JMR-10L(日本酢ビ・ポバール株式会社製、ケン化度30~40mol%)、JMR-20L(日本酢ビ・ポバール株式会社製、ケン化度30~40mol%)、LM-10HD(株式会社クラレ製、ケン化度38~42mol%)、LM-20(株式会社クラレ製、ケン化度33~38mol%)、LM-25(株式会社クラレ製、ケン化度33~38mol%)などが挙げられる。
【0052】
ポリビニルアルコール樹脂の含有率は、固形筆記体総質量に対して、好ましくは5質量%~30質量%、より好ましくは、10%~20質量%である。一般的な固形筆記体では、ポリビニルアルコール樹脂を含む場合、その含有率は5質量未満である。本発明による固形筆記体は、その他の成分との相互作用によって、ポリビニルアルコール樹脂を比較的多量に含むことで、優れた特性を実現している。
【0053】
本発明による固形筆記体は、ポリアミド樹脂を含んでなる。ポリアミド樹脂は、アミド結合によって繰り返し単位が多数重合したポリマーであり、繰り返し単位の化学構造によって種々のものがあるが、それらの中から目的に応じて任意に選択して用いることができる。ポリアミド樹脂は、脂肪酸とアミンとの重合物、芳香族カルボン酸とアミンとの重合物に分類されるが、脂肪酸とアミンとの重合物が好ましく用いられる。また、その脂肪酸やアミンの種類、および重合度によって、ポリミド樹脂の結晶性や融点などが変化するが、結晶性の高いものが好ましく、また融点が低いものが好ましい。具体的には融点が150℃以下のポリアミド樹脂が好ましい。筆記性と芯体の強度をともに考慮すると、50℃~150℃であることがより好ましい。なお、ポリアミド樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、エステルなどに由来するその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
具体的には、結晶性の重合脂肪酸ポリアミド樹脂であるPA-100、PA-100A-S(いずれも株式会社T&K TOKA製)、非晶質性ポリエーテルエステルアミド樹脂であるTPAE-12、TPAE-32、PA-201(いずれも株式会社T&K TOKA製)などが挙げられる。
【0054】
ポリアミド樹脂の含有率は、固形筆記体の総質量に対して、1~10質量%であることが好ましく、2~7質量%であることがより好ましい。本発明者の検討により、ポリアミド樹脂は、比較的硬度の高い芯体に配合したときに、変色異常を改善する効果があることが見出されたが、配合量が少なければその効果は十分とならず、また過剰に配合してもその効果は飽和してしまう。
【0055】
本発明による固形筆記体は、特にポリビニルアルコール樹脂とポリアミド樹脂との相互作用によって優れ得た特性を実現しているものと考えられている。このため、その相対的な配合比が特定の範囲であるときに、特に優れた効果が得られる傾向にある。具体的には、ポリビニルアルコール樹脂の含有量に対する、ポリアミド樹脂の含有量の比が1/1未満であることが好ましい。さらには、1/2~1/10であることがより好ましく、1/3~1/7であることが特に好ましい。
【0056】
本発明による固形筆記体は、必要に応じて、そのほかの各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、フィラー、その他の樹脂、非変色性着色剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定剤、香料などが挙げられる。
【0057】
フィラーは、固形筆記体の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。本発明において適用されるフィラーとしては、例えば、タルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、およびガラスフレークなどが挙げられる。特に、成形性や、マイクロカプセル顔料を用いた場合の変色性能への影響などの点から、タルクや炭酸カルシウムが好ましい。
【0058】
フィラーの含有率は、固形筆記体全質量に対し、10~65質量%が好ましい。この範囲より小さいと強度が低下する傾向がみられ、この範囲より大きいと、発色性が低下したり、書き味が劣る傾向がみられることがある
【0059】
その他の樹脂としては、固形筆記体の強度などを向上する目的で配合されるが、天然樹脂、合成樹脂を用いることができる。具体的には、セルロース系樹脂、ピロリドン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩基性基含有樹脂などが挙げられる。
【0060】
本発明による固形筆記体は、マイクロカプセル以外に染料や顔料などの非熱変色性着色剤を含むこともできる。そのような非熱変色性着色剤を組み合わせるにより、有色から無色、あるいは無色から有色の色変化だけで無く、有色から別の有色への変化を実現することができる。
【0061】
また、本発明による組成物には、ヒンダードアミン化合物を添加することができる。ヒンダードアミン化合物を添加することにより、筆跡を消去した箇所の残像がいっそう視認され難くなるという特徴がある。このため被筆記面の見栄えを損なうことなく、しかも、再筆記性を満足させることができ、商品性を高めることができるので好ましい。
【0062】
前記ヒンダードアミン化合物の分子量が1,000以下であることにより他の成分との相溶性に富み、ブリードアウトし難くなるため、経時後も明瞭な筆跡を形成することができるので好ましい。
【0063】
なお、前記ヒンダードアミン化合物の融点は120℃以下であることが好ましい。融点が低いことにより、製造時に過度の熱を加えることなく熱可逆性変色組成物や、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、それを用いた固形筆記体を製造することができるため、組成物の成分などが劣化することを防止できる。
【0064】
本発明による固形筆記体は、有色から別の有色への変化を実現するために、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を含むこともできる。
【0065】
なお、本発明による固形筆記体は、単独で筆記体として使用が可能であるが、この筆記体の外側を樹脂などを含む外殻で被覆することもできる。このような外殻は、内部にある固形筆記体が物理的接触によって損傷を受けることを防ぐほか、固形筆記体全体の機械的強度の向上に寄与することもできる。このような外殻は、一般にフィラーや賦形材を含んでなる。このような外殻は筆跡形成に寄与する着色剤を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0066】
本発明による固形筆記体は、その外径が0.3~3.5mmであることが好ましい。外径が前記範囲であると、シャープペンシルに代表される、チャックで芯体を保持し、芯体を繰り出す方式の筆記具に用いることができ、芯体のみを繰り返し用いるため、また、芯体をごく一部の残芯まで使用することができ、環境に配慮することができるため好ましい。そして、従来のシャープペンシルと比較し、消しゴムによる消しカスが出ないことは利便性の面で優れている。外径について、より好ましくは、0.5~2.0mmの外径であり、さらに好ましくは、0.7~1.3mmの外径である。本発明による固形筆記体は、優れた強度を有しており、具体的には、0.9mmの外径としたときに、30MPa以上の曲げ強度を実現できる。
【0067】
本発明の固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
【0068】
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、簡便に変色可能な手段として摩擦部材が用いられることが好ましい。
【0069】
前記摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー等の弾性体が好ましく用いられる。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。前記摩擦部材は固形筆記体と別体の任意形状の部材である摩擦部材とを組み合わせて固形筆記体セットを得ることもできるが、固形筆記体または、固形筆記体を外装収容物に収容した固形筆記具の外装に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。
【0070】
本発明による固形筆記体は、所謂鉛筆形状の木軸の外装を組み合わせて用いることができるが、固形筆記体の強度と筆記時の筆跡の濃度の両方を向上することができることから、所謂シャープペンシルなどの細い芯径の固形筆記体を用いる筆記具に用いることが好ましい。また、本発明による固形筆記体は、シャープペンシルに代表される、チャックで芯体を保持し、芯体を繰り出す方式の筆記具に用いることができる。
【0071】
本発明による固形筆記体の製造方法としては、従来知られている、組成物を加熱混練した後、押し出しや、射出成形などにより製造することができる。また、組成物を加熱混練する際に、酸変性ポリオレフィンワックスと架橋可能な樹脂を架橋して、架橋物を得ることができる。
【実施例0072】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0073】
(マイクロカプセル顔料の製造)
(イ)成分として3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2.0質量部、(ロ)成分として2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン8.0質量部、(ハ)成分としてカプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー25.0質量部、助溶剤50.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
【0074】
なお、前記マイクロカプセル顔料の粒子径はMultisizer 4e(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定したところ、0.5~5.0μmの範囲であり、完全消色温度は60℃、完全発色温度は-10℃であり、温度変化により青色から無色、無色から青色へ可逆的に色変化する。
【0075】
(実施例1~6および比較例1~5)
表1に示す配合物をニーダーにて加熱混練し、得られた混練物をプレスにて圧縮成形を行い、外径φ0.9mm、長さ60mmに成形して固形筆記体を得た。表中の数値は質量%である。
【0076】
各例で得た混練物について、下記要領にて評価を行った。結果を(表1)に示す。
【0077】
得られた固形筆記体について、以下のとおり評価を行った。
【0078】
曲げ強度:各例の固形筆記体をJIS-S6005:2007に準じて曲げ強度を測定した。数値が大きいほど、強度が高いことを示す。
【0079】
変色特性:固形筆記体によって得られた筆跡を摩擦消去具にて消去して消去跡を作成した。得られた消去跡を0℃にて24h放置し、24h後の消去跡を目視により評価した。
A:消去跡の再発色は見られず、良好な変色特性が得られた。
B:消去跡の再発色はほとんどなく、良好な変色特性を維持していた。
C:消去跡に一部再発色があり、変色特性にわずかな劣化が見られるが、実用上問題のないレベルであった。
D:消去跡の再発色が確認され、変色異常が認められた。
【0080】
【0081】
表中:
FH105: タルク(メディアン径 D50=5μm、富士タルク株式会社製)
HW2203A:酸変性ポリエチレンワックス(ハイワックス2203A、三井化学株式会社製)
HS-4100:α-オレフィン誘導体(HSクリスタ4100、豊国製油株式会社製)
JMR-10LL: 超低ケン化ポリビニルアルコール樹脂(JMR-10LL、日本酢ビ・ポバール株式会社製)
LM-10HD: 低ケン化ポリビニルアルコール樹脂(LM-10HD、株式会社クラレ製)
EP1010N: エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体(アルコックスEP1010N、明成化学工業製)
S400: 低分子量ポリプロピレン(エルモーデュS400、出光興産株式会社製)
TPAE-12: ポリアミドエラストマー(TPAE-12、重合脂肪酸系ポリアミドブロック共重合体、ポリエーテルエステルアミド、株式会社T&K TOKA製)
PA-100A-S: 特殊ポリアミド樹脂(PA-100-AS、重合脂肪酸ポリアミド、融点136℃、株式会社T&K TOKA製)
SB305: スチレンアクリルエステル樹脂(三洋化成工業株式会社製、数平均分子量4000)
770DF: ヒンダードアミン系光安定剤(チヌビン770DF、BASFジャパン株式会社製)
【0082】
この結果より、ポリビニルアルコール樹脂またはポリアミド樹脂のいずれかがない場合(比較例)に比較して、それらの組み合わせを含む実施例の固形筆記体は、優れた曲げ強度と変色特性を示すことがわかる。また、ポリアミド樹脂に代えてポリスチレン樹脂を見合わせた場合(比較例1)に比べても、本発明による固形筆記体が優れた特性を実現していることがわかる。