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特開2023-88750インクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088750
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230620BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 205
B41J2/205
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203672
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】日置 渉
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EA20
2C056EB12
2C056EB27
2C056EB29
2C056EB37
2C056EB39
2C056EB59
2C056EC25
2C056EC42
2C056EC70
2C056EC72
2C056EC79
2C056FA10
2C056HA07
2C056HA58
2C057AF61
2C057AG15
2C057AL13
2C057AL36
2C057AM15
2C057AM28
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行う。
【解決手段】インクジェットプリンタである印刷装置12の調整方法であって、テストパターンをスキャナ14で読み取ることで生成されるパターン画像に対する解析を画像解析装置16で行う解析段階と、データベース20に記憶されている制御設定値を更新する設定値更新段階とを備え、主走査方向における同じ位置に対して複数のノズル列からインクを吐出するパターンを含むテストパターンを印刷装置12に印刷させ、解析段階において、パターン画像に基づく画像処理によってそれぞれのノズル列において生じているドット位置ズレ量を検知して、ドット位置ズレ量に対応するドット位置補正値を演算によって算出し、設定値更新段階において、ドット位置補正値を制御設定値の少なくとも一部としてデータベース20に記憶させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタに対する調整を行うインクジェットプリンタの調整方法であって、
媒体に対して所定のテストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させるパターン印刷段階と、
前記パターン印刷段階で前記テストパターンが印刷された前記媒体をスキャナで読み取ることで前記テストパターンを示す画像であるパターン画像を生成するパターン読取段階と、
前記パターン画像に対する解析をコンピュータで行う解析段階と、
前記インクジェットプリンタの動作を制御するための設定値である制御設定値を記憶する設定値記憶部に記憶されている前記制御設定値を更新する段階であり、前記解析段階での解析の結果に基づいて前記制御設定値の少なくとも一部を更新する設定値更新段階と
を備え、
前記インクジェットプリンタは、
所定のノズル列方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列をそれぞれが有する複数のインクジェットヘッドと、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と
を備え、
前記主走査駆動部は、前記設定値記憶部に記憶されている前記制御設定値に基づき、前記複数のインクジェットヘッドに前記主走査動作を行わせ、
前記パターン印刷段階において、前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンを含む前記テストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させ、
前記解析段階は、
前記複数のインクジェットヘッドにおける複数の前記ノズル列のそれぞれに含まれる前記ノズルからインクを吐出することで前記媒体上に形成されるインクのドットの位置について、前記パターン画像に基づいて前記コンピュータで実行する画像処理によって、それぞれの前記ノズル列において生じている前記ドットの位置のズレ量であるドット位置ズレ量を検知するズレ量検知段階と、
前記ズレ量検知段階で検知した前記ドット位置ズレ量に対応する補正値であるドット位置補正値を前記コンピュータで実行する演算によって算出する補正値算出段階と
を有し、
前記設定値更新段階において、前記補正値算出段階で算出される前記ドット位置補正値を前記制御設定値の少なくとも一部として前記設定値記憶部に記憶させることで、前記解析段階での解析の結果に基づいて前記制御設定値の少なくとも一部を更新することを特徴とするインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項2】
前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、複数の前記ノズル列を有し、
前記パターン印刷段階において、いずれか一つの前記インクジェットヘッドにおけるいずれかの一つの前記ノズル列を基準のノズル列として選択し、
前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンとして、前記基準のノズル列と、前記基準のノズル列以外のそれぞれの前記ノズル列とを含む二つの前記ノズル列から前記主走査方向における同じ位置に対してインクを吐出するパターンを前記基準のノズル列以外のそれぞれの前記ノズル列について前記インクジェットプリンタに印刷させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項3】
前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンは、前記主走査方向と直交する方向へ延伸する線をそれぞれの前記ノズル列から吐出されるインクで描くことで前記主走査方向における設計上の同じ位置に複数の線が描かれる多重線のパターンであり、
前記インクジェットヘッドは、それぞれの前記ノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能であり、
前記パターン印刷段階において、前記基準のノズル列以外のそれぞれの前記ノズル列について、前記複数段階のインクの容量毎に前記多重線を前記インクジェットプリンタに描かせることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項4】
前記基準のノズル列以外のそれぞれの前記ノズル列に対応して前記複数段階のインクの容量毎に描かれる前記多重線は、
前記基準のノズル列で描かれる線である基準ノズル線と、
前記基準のノズル列以外の前記ノズル列で描かれる線である調整ノズル線と
を含み、
前記パターン印刷段階において、それぞれのインクの容量に対応する前記多重線として、
前記複数段階のインクの容量のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ前記基準ノズル線と、
1種類のインクの容量に対応するサイズのインクのドットのみが並ぶ前記調整ノズル線と
を前記インクジェットプリンタに描かせることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項5】
前記パターン印刷段階において、前記基準のノズル列以外のそれぞれの前記ノズル列について、当該それぞれの前記ノズル列で描かれる線であり、前記複数段階のインクの容量のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ線を更に前記インクジェットプリンタに描かせることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタは、前記複数のインクジェットヘッドを保持するキャリッジを更に備え、
前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンは、前記ズレ量検知段階で前記ドット位置ズレ量を検知するためのズレ量検知用パターンであり、
前記パターン印刷段階において、
前記ズレ量検知用パターンと、
前記キャリッジに対してそれぞれの前記インクジェットヘッドが取り付けられている状態である取付状態を検知するためのパターンである取付状態検知用パターンと
を含む前記テストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させ、
前記解析段階は、
前記パターン画像における前記取付状態検知用パターンを示す部分に基づいて前記コンピュータで実行する画像処理によって、前記取付状態を示す数値である取付状態数値を算出する数値算出段階と、
前記取付状態数値に対して予め設定された基準の数値範囲内に前記取付状態数値が入っているか否かを判定する判定段階と、
前記判定段階での判定の結果を示すファイルである解析結果ファイルを生成する解析結果ファイル生成段階と
を更に有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項7】
前記判定段階において、前記ドット位置ズレ量に対して予め設定された基準の数値範囲内に前記ドット位置ズレ量が入っているか否かを更に判定し、
前記解析結果ファイル生成段階において、前記ドット位置ズレ量に関する判定の結果を更に示す前記解析結果ファイルを生成することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項8】
前記解析結果ファイル生成段階において、
前記テストパターンの印刷に用いた前記インクジェットプリンタを識別する識別情報を示し、
それぞれの前記ノズル列に対して、
前記判定段階での前記ドット位置ズレ量に対する判定の結果と、
前記ドット位置ズレ量に対して予め設定された基準の数値範囲と、
前記ドット位置ズレ量と
を示し、
それぞれの前記インクジェットヘッドに対して、
前記判定段階での前記取付状態数値に対する判定の結果と、
前記取付状態数値に対して予め設定された基準の数値範囲と、
前記取付状態数値と
を示す前記解析結果ファイルを生成することを特徴とする請求項7に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項9】
前記インクジェットプリンタは、前記複数のインクジェットヘッドにインクを吐出させる駆動信号を出力する駆動信号出力部を更に備え、
前記パターン印刷段階において、前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれが受け取る前記駆動信号の電圧を検知するためのパターンである電圧検知用パターンを更に含む前記テストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させ、
前記数値算出段階において、前記パターン画像における前記電圧検知用パターンを示す部分に基づいて前記コンピュータで実行する画像処理によって、前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれが受け取る前記駆動信号の電圧に対応する数値である電圧対応数値を更に算出し、
前記判定段階において、前記電圧対応数値に対して予め設定された基準の数値範囲内に前記電圧対応数値が入っているか否かを更に判定し、
前記解析結果ファイル生成段階において、前記電圧対応数値に関する判定の結果を更に示す前記解析結果ファイルを生成することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項10】
前記インクジェットプリンタは、前記主走査方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動する副走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部を更に備え、
前記パターン印刷段階において、前記副走査動作において前記媒体に対して相対的に前記複数のインクジェットが移動する移動量である副走査移動量を検知するためのパターンである副走査移動量検知用パターンを更に含む前記テストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させ、
前記ズレ量検知段階において、前記パターン画像における前記副走査移動量検知用パターンを示す部分に基づいて前記コンピュータで実行する画像処理によって、前記副走査移動量のズレ量である副走査ズレ量を更に検知し、
前記補正値算出段階において、前記ズレ量検知段階で検知した前記副走査ズレ量に対応する補正値である副走査補正値を前記コンピュータで実行する演算によって更に算出し、
前記設定値更新段階において、前記補正値算出段階で算出される前記副走査補正値を前記制御設定値の少なくとも一部として前記設定値記憶部に更に記憶させることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項11】
前記パターン読取段階において、読み取り可能な最大の原稿サイズがA4サイズ以下の前記スキャナを用い、
前記パターン印刷段階において、前記インクジェットプリンタに、A4サイズ以下の印刷範囲内へ前記テストパターンを印刷させることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項12】
コンピュータに画像解析を行わせるプログラムであって、
インクジェットプリンタによって媒体に印刷された所定のテストパターンをスキャナで読み取ることで生成された画像であるパターン画像に対する解析を行う解析処理を前記コンピュータに行わせ、
前記インクジェットプリンタは、
所定のノズル列方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列をそれぞれが有する複数のインクジェットヘッドと、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と
を備え、
前記主走査駆動部は、前記インクジェットプリンタの動作を制御するための設定値である制御設定値を記憶する設定値記憶部に記憶されている前記制御設定値に基づき、前記複数のインクジェットヘッドに前記主走査動作を行わせ、
前記テストパターンは、前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンを含み、
前記解析処理において、
前記複数のインクジェットヘッドにおける複数の前記ノズル列のそれぞれに含まれる前記ノズルからインクを吐出することで前記媒体上に形成されるインクのドットの位置について、前記パターン画像に基づいて実行する画像処理によって、それぞれの前記ノズル列において生じている前記ドットの位置のズレ量であるドット位置ズレ量を検知するズレ量検知処理と、
前記ズレ量検知処理で検知した前記ドット位置ズレ量に対応する補正値であるドット位置補正値を演算によって算出する補正値算出処理と
を前記コンピュータに行わせることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
インクジェット方式での印刷を行う印刷システムであって、
インクジェット方式での印刷を行うインクジェットプリンタと、
画像の読み取りを行うスキャナと、
画像に対する解析を行う画像解析装置と、
前記インクジェットプリンタの動作を制御するための設定値である制御設定値を記憶する設定値記憶部と
を備え、
前記インクジェットプリンタは、
所定のノズル列方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列をそれぞれが有する複数のインクジェットヘッドと、
予め設定された主走査方向へ媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と
を有し、
前記主走査駆動部は、前記設定値記憶部に記憶されている前記制御設定値に基づき、前記複数のインクジェットヘッドに前記主走査動作を行わせ、
前記インクジェットプリンタに対する調整を行う調整時において、
前記インクジェットプリンタは、所定のテストパターンを前記媒体に印刷し、
前記スキャナは、前記テストパターンが印刷された前記媒体を読み取り、
前記画像解析装置は、前記テストパターンが印刷された前記媒体を前記スキャナで読み取ることで生成される、前記テストパターンを示す画像であるパターン画像に対する解析を行い、
前記テストパターンは、前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンを含み、
前記画像解析装置は、前記パターン画像に対する解析を行う解析処理において、
前記複数のインクジェットヘッドにおける複数の前記ノズル列のそれぞれに含まれる前記ノズルからインクを吐出することで前記媒体上に形成されるインクのドットの位置について、前記パターン画像に基づいて実行する画像処理によって、それぞれの前記ノズル列において生じている前記ドットの位置のズレ量であるドット位置ズレ量を検知するズレ量検知処理と、
前記ズレ量検知処理で検知した前記ドット位置ズレ量に対応する補正値であるドット位置補正値を演算によって算出する補正値算出処理と
を行い、
前記補正値算出処理で算出される前記ドット位置補正値を前記制御設定値の少なくとも一部として前記設定値記憶部に記憶させることで、前記解析処理での解析の結果に基づいて前記制御設定値の少なくとも一部を更新することを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う印刷装置であるインクジェットプリンタが広く用いられている。また、従来、インクジェットヘッドに対する検査を行う様々な方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-62158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドにおける微細なノズルからインクを吐出することで、印刷を実行する。そして、この場合、高い品質で適切に印刷を行うためには、印刷の解像度に応じて設定されるインクの吐出位置に対し、高い精度でインクを着弾させることが必要になる。この点に関し、例えば特許文献1には、液体噴射記録ヘッドを記録装置本体に搭載することなく実行できる液体噴射記録ヘッド着弾点検査方法について、記録媒体に着弾した液体を画像処理用カメラによって認識し、画像処理を行うことが開示されている。また、この画像処理により、着弾液滴と吐出口の座標から両者間の水平距離及び垂直距離を算出して、液滴を構成する主滴及びサテライトの吐出角度を算出することが開示されている。また、このような測定によって算出されるデータについて、記録ヘッド製造工程へのフィートバックすることや、記録ヘッドに記憶させることが開示されている。
【0005】
しかし、継続して高い品質の印刷を行うためには、例えばインクジェットプリンタの出荷後等にも、必要に応じてインクジェットプリンタの調整を行うことが必要になる。そして、この場合、例えば、調整の工数を削減することや、調整を行う調整者の個人差によって調整の結果に差がでることを防止すること等が望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、インクジェットプリンタの調整方法に関し、鋭意研究を行った。そして、インクジェットプリンタによって印刷したテストパターンをスキャナで読み取り、コンピュータで画像処理によって解析をすることを考えた。また、この画像処理により、例えば、インクジェットプリンタの動作の制御に用いる補正値をコンピュータで実行する演算によって算出して、インクジェットプリンタの動作を制御するための設定値を記憶する設定値記憶部にこの補正値を記憶させることを考えた。このように構成すれば、例えばインクジェットプリンタの出荷後等であっても、インクジェットプリンタを使用している通常の印刷環境等でインクジェットプリンタにテストパターンを印刷させることで、インクジェットプリンタの調整を適切に行うことができる。また、この場合、テストパターンを読み取る機能をインクジェットプリンタが有していなくても、例えば市販のスキャナ等を用いて、テストパターンの読み取りを適切に行うことができる。また、コンピュータでの画像処理によって補正値を算出し、その補正値を設定値記憶部に記憶させることで、例えば、調整の工数を削減することや、調整を行う調整者の個人差によって調整の結果に差がでることを防止すること等も可能になる。また、これにより、例えば、よってインクジェットプリンタ毎の印刷結果での画質について、インクジェットプリンタの個体毎に差が生じること等を適切に防止することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行うことができる。
【0007】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このようにして行うインクジェットプリンタの調整方法に関し、より具体的に、媒体上に形成されるインクのドットの位置の補正を適切に行う方法を見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、インクジェットプリンタに対する調整を行うインクジェットプリンタの調整方法であって、媒体に対して所定のテストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させるパターン印刷段階と、前記パターン印刷段階で前記テストパターンが印刷された前記媒体をスキャナで読み取ることで前記テストパターンを示す画像であるパターン画像を生成するパターン読取段階と、前記パターン画像に対する解析をコンピュータで行う解析段階と、前記インクジェットプリンタの動作を制御するための設定値である制御設定値を記憶する設定値記憶部に記憶されている前記制御設定値を更新する段階であり、前記解析段階での解析の結果に基づいて前記制御設定値の少なくとも一部を更新する設定値更新段階とを備え、前記インクジェットプリンタは、所定のノズル列方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶノズル列をそれぞれが有する複数のインクジェットヘッドと、予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記複数のインクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部とを備え、前記主走査駆動部は、前記設定値記憶部に記憶されている前記制御設定値に基づき、前記複数のインクジェットヘッドに前記主走査動作を行わせ、前記パターン印刷段階において、前記主走査方向における同じ位置に対して複数の前記ノズル列からインクを吐出するパターンを含む前記テストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させ、前記解析段階は、前記複数のインクジェットヘッドにおける複数の前記ノズル列のそれぞれに含まれる前記ノズルからインクを吐出することで前記媒体上に形成されるインクのドットの位置について、前記パターン画像に基づいて前記コンピュータで実行する画像処理によって、それぞれの前記ノズル列において生じている前記ドットの位置のズレ量であるドット位置ズレ量を検知するズレ量検知段階と、前記ズレ量検知段階で検知した前記ドット位置ズレ量に対応する補正値であるドット位置補正値を前記コンピュータで実行する演算によって算出する補正値算出段階とを有し、前記設定値更新段階において、前記補正値算出段階で算出される前記ドット位置補正値を前記制御設定値の少なくとも一部として前記設定値記憶部に記憶させることで、前記解析段階での解析の結果に基づいて前記制御設定値の少なくとも一部を更新する。
【0008】
このように構成した場合、例えば、スキャナによってテストパターンを読み取り、所定の画像処理及び演算をコンピュータで実行することで、インクジェットプリンタの状態を容易かつ適切に把握することができる。また、より具体的に、例えば、それぞれがノズル列を有する複数のインクジェットヘッドを用いる場合において、それぞれのノズル列に対応するドット位置ズレ量を適切に検知することができる。また、この場合、例えば、ドット位置ズレ量に基づき、ドット位置ズレ量に対応するドット位置補正値を適切に算出することができる。そして、ドット位置補正値を設定値記憶部に記憶させることにより、例えば、インクジェットプリンタの動作にドット位置補正値を適切に反映させることができる。また、この場合において、ドット位置ズレ量の検知やドット位置補正値の算出について、スキャナで読み取ったテストパターンに基づき、コンピュータでの画像処理及び演算によって行うことで、例えば、調整の工数を削減することや、調整を行う調整者の個人差によって調整の結果に差がでること等を適切に防止することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行うことができる。
【0009】
この構成において、複数のインクジェットヘッドのそれぞれは、例えば、複数のノズル列を有してよい。この場合、パターン印刷段階では、例えば、いずれか一つのインクジェットヘッドにおけるいずれかの一つのノズル列を基準のノズル列として選択する。また、主走査方向における同じ位置に対して複数のノズル列からインクを吐出するパターンとして、例えば、基準のノズル列と、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列とを含む二つのノズル列から主走査方向における同じ位置に対してインクを吐出するパターンを基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列についてインクジェットプリンタに印刷させる。このように構成すれば、例えば、ドット位置ズレ量を検知するためのパターンをインクジェットプリンタに適切に印刷させることができる。
【0010】
また、主走査方向における同じ位置に対して複数のノズル列からインクを吐出するパターンとしては、例えば、設計上の同じ位置に複数の線が描かれる多重線のパターンを用いることが考えられる。この場合、多重線のパターンについては、例えば、主走査方向と直交する方向へ延伸する線をそれぞれのノズル列から吐出されるインクで描くことで主走査方向における設計上の同じ位置に複数の線が描かれるパターン等と考えることができる。また、この構成において、インクジェットヘッドとしては、例えば、それぞれのノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能な構成を用いることも考えられる。この場合、パターン印刷段階では、例えば、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列について、複数段階のインクの容量毎に多重線をインクジェットプリンタに描かせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、インクの容量毎にドット位置ズレ量を検知するためのパターンをインクジェットプリンタに適切に印刷させることができる。
【0011】
また、この場合、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列に対応して複数段階のインクの容量毎に描かれる多重線として、例えば、基準のノズル列で描かれる線である基準ノズル線と、基準のノズル列以外のノズル列で描かれる線である調整ノズル線とを含む複数の線を描くことが考えられる。また、この場合、パターン印刷段階では、それぞれのインクの容量に対応する多重線として、例えば、複数段階のインクの容量のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ基準ノズル線と、1種類のインクの容量に対応するサイズのインクのドットのみが並ぶ調整ノズル線とをインクジェットプリンタに描かせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、インクの容量毎にドット位置ズレ量を検知するためのパターンをインクジェットプリンタに適切に印刷させることができる。
【0012】
また、吐出するインクの容量を複数段階で変更可能なインクジェットヘッドを用いる場合、基準のノズル列以外のノズル列にも、複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ線を更に描かせてもよい。この場合、パターン印刷段階では、例えば、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列について、当該それぞれのノズル列で描かれる線であり、複数段階のインクの容量のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ線を更にインクジェットプリンタに描かせる。このように構成すれば、例えば、同じノズル列で形成するインクのドットについて、ドットサイズの違いの影響等をより適切に確認することができる。
【0013】
また、この構成において、主走査方向における同じ位置に対して複数のノズル列からインクを吐出するパターンについては、例えば、ズレ量検知段階でドット位置ズレ量を検知するためのズレ量検知用パターン等と考えることができる。そして、パターン印刷段階では、例えば、ズレ量検知用パターン以外のパターンを更に含むテストパターンをインクジェットプリンタに印刷させてもよい。より具体的に、この構成において、インクジェットプリンタは、例えば、複数のインクジェットヘッドを保持するキャリッジを更に備える。そして、パターン印刷段階では、例えば、ズレ量検知用パターン及び取付状態検知用パターンを含むテストパターンをインクジェットプリンタに印刷させることが考えられる。
【0014】
この場合、取付状態検知用パターンについては、例えば、キャリッジに対してそれぞれのインクジェットヘッドが取り付けられている状態である取付状態を検知するためのパターン等と考えることができる。取付状態としては、例えば、インクジェットヘッドの傾き、所定の前後方向における位置のズレ、及びスタガ配置での位置のズレの少なくともいずれかを検知することが考えられる。また、この場合、解析段階は、例えば、数値算出段階、判定段階、及び解析結果ファイル生成段階を更に有する。数値算出段階では、例えば、パターン画像における取付状態検知用パターンを示す部分に基づいてコンピュータで実行する画像処理によって、取付状態を示す数値である取付状態数値を算出する。判定段階では、例えば、取付状態数値に対して予め設定された基準の数値範囲内に取付状態数値が入っているか否かを判定する。そして、解析結果ファイル生成段階では、例えば、判定段階での判定の結果を示すファイルである解析結果ファイルを生成する。
【0015】
このように構成した場合、例えば、それぞれのインクジェットヘッドの取付状態の適否を判定することにより、インクジェットプリンタの調整をより適切に行うことができる。また、この場合において、それぞれのインクジェットヘッドの取付状態の適否について、例えば、客観的な数値を基準にして容易かつ適切に判定することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタに対して行う調整の少なくとも一部について、数値基準で調整レベルの適否を判定して、調整レベルを数値的に管理することができる。また、これにより、例えば、調整を行う調整者の個人差によって調整の結果に差がでること等をより適切に防止することができる。また、判定段階では、例えば、ドット位置ズレ量に対して予め設定された基準の数値範囲内にドット位置ズレ量が入っているか否かを更に判定してもよい。この場合、解析結果ファイル生成段階において、例えば、ドット位置ズレ量に関する判定の結果を更に示す解析結果ファイルを生成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、ドット位置ズレ量についても、調整レベルを数値的により適切に管理することができる。
【0016】
また、解析結果ファイル生成段階では、例えば、テストパターンの印刷に用いたインクジェットプリンタを識別する識別情報を示す解析結果ファイルを生成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、解析ファイルを利用して、対応するインクジェットプリンタの状態を容易かつ適切に管理することができる。この場合、解析結果ファイルについて、例えば、インクジェットプリンタに対して所定の仕様範囲に合わせた調整(仕様範囲内のレベルへの調整)が行われていることを示す証明(エビデンス)として用いること等も考えられる。また、このような解析ファイルを用いることで、例えば複数のインクジェットプリンタを使用する場合等において、それぞれのインクジェットプリンタの状態を適切に管理すること等も可能になる。
【0017】
解析結果ファイルとしては、例えば、インクジェットプリンタに対して行う複数の調整項目について、各評価項目の判定結果、判定の基準数値、及び解析結果等をインクジェットプリンタと対応付けて示すファイルを用いることが考えられる。より具体的に、この場合、解析結果ファイル生成段階では、例えば、それぞれのノズル列に対して、判定段階でのドット位置ズレ量に対する判定の結果と、ドット位置ズレ量に対して予め設定された基準の数値範囲と、ドット位置ズレ量とを示し、それぞれのインクジェットヘッドに対して、判定段階での取付状態数値に対する判定の結果と、取付状態数値に対して予め設定された基準の数値範囲と、取付状態数値とを示す解析結果ファイルを生成することが考えられる。このように構成すれば、例えば、解析ファイルを利用して、インクジェットプリンタの状態を容易かつ適切に管理することができる。
【0018】
また、パターン印刷段階では、例えば、ズレ量検知用パターンや取付状態検知用パターン以外のパターンを含むテストパターンを印刷させること等も考えられる。より具体的に、インクジェットプリンタは、例えば、駆動信号を出力する駆動信号出力部を更に備える。駆動信号については、例えば、複数のインクジェットヘッドのそれぞれにインクを吐出させる信号等と考えることができる。そして、パターン印刷段階では、例えば、複数のインクジェットヘッドのそれぞれが受け取る駆動信号の電圧を検知するためのパターンである電圧検知用パターンを含むテストパターンをインクジェットプリンタに印刷させることが考えられる。また、この場合、数値算出段階では、例えば、パターン画像における電圧検知用パターンを示す部分に基づいてコンピュータで実行する画像処理によって、複数のインクジェットヘッドのそれぞれが受け取る駆動信号の電圧に対応する数値である電圧対応数値を算出する。判定段階では、例えば、電圧対応数値に対して予め設定された基準の数値範囲内に電圧対応数値が入っているか否かを判定する。そして、解析結果ファイル生成段階では、例えば、電圧対応数値に関する判定の結果を示す解析結果ファイルを生成する。このように構成すれば、例えば、それぞれのインクジェットヘッドが受け取る駆動信号の電圧について、数値によって適切に確認することができる。また、これにより、例えば、駆動信号の電圧の調整を行う場合等に、数値基準で調整レベルの適否を適切に判定することができる。
【0019】
また、パターン印刷段階では、例えば、副走査動作において媒体に対して相対的に複数のインクジェットが移動する移動量である副走査移動量を検知するためのパターンである副走査移動量検知用パターンを含むテストパターンをインクジェットプリンタに印刷させてもよい。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、インクジェットプリンタは、例えば、副走査動作を複数のインクジェットヘッドに行わせる副走査駆動部を更に備える。また、この場合、ズレ量検知段階では、例えば、パターン画像における副走査移動量検知用パターンを示す部分に基づいてコンピュータで実行する画像処理によって、副走査移動量のズレ量である副走査ズレ量を検知する。補正値算出段階では、例えば、ズレ量検知段階で検知した副走査ズレ量に対応する補正値である副走査補正値をコンピュータで実行する演算によって算出する。そして、設定値更新段階では、例えば、補正値算出段階で算出される副走査補正値を制御設定値の少なくとも一部として設定値記憶部に記憶させる。このように構成すれば、例えば、副走査ズレ量に対応する副走査補正値を適切に算出して、インクジェットプリンタの動作に副走査補正値を適切に反映させることができる。
【0020】
また、この構成において、パターン読取段階では、例えば、読み取り可能な最大の原稿サイズがA4サイズ以下のスキャナを用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、市販の安価なPC用スキャナ等を用いて、パターン読取段階の動作を適切に実行することができる。また、この場合、パターン印刷段階では、例えば、インクジェットプリンタに、A4サイズ以下の印刷範囲内へテストパターンを印刷させる。このように構成すれば、例えば、パターン読取段階の動作をより適切に実行することができる。また、この場合、パターン印刷段階では、A4サイズ以下の媒体に対してインクジェットプリンタにテストパターンを印刷させることが考えられる。また、必要に応じて、例えば、A4サイズ以下の媒体を複数枚用いて、それぞれの媒体へインクジェットプリンタにテストパターンを印刷させてもよい。このように構成すれば、例えば、1枚のA4サイズの媒体では必要な全てのパターンを印刷できない場合等にも、複数の媒体に分けて、必要な全てのパターンをインクジェットプリンタに印刷させることができる。
【0021】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有するプログラムや印刷システムを用いること等も考えられる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えば、インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの調整方法を実行する印刷システム10について説明をする図である。図1(a)は、印刷システム10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置12の要部の構成の一例を示す。
図2】ヘッド部102の具体的な構成について説明をする図である。図2(a)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。図2(b)は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202の構成の一例を示す。
図3】画像解析ツールの構成の一例を示す図である。
図4】調整項目ライブラリ306で実行する解析の例について説明をする図である。図4(a)は、ズレ量検知用パターン400の一例を示す。図4(b)は、一つの多重線402を拡大して示す。
図5】インクジェットヘッド202毎に分けたパターンで構成される調整パターンについて説明をする図である。図5(a)は、調整パターンの一例を示す。図5(b)は、ヘッド毎パターン部508の構成の一例を示す。
図6】印刷システム10において実行する印刷装置12の調整の動作の一例を示すフローチャートである。
図7図6におけるステップS106での画像解析装置16の動作の一例を示すフローチャートである。
図8】多値ヘッドを用いる場合のズレ量検知用パターン400について説明をする図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの調整方法を実行する印刷システム10について説明をする図である。図1(a)は、印刷システム10の要部の構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、印刷システム10は、公知の印刷システムと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷システム10は、図示した構成以外に、公知の印刷システムと同一又は同様の構成を更に有してよい。
【0025】
本例において、印刷システム10は、インクジェット方式での印刷を行う印刷システムであり、印刷装置12、スキャナ14、画像解析装置16、及びMPC18を備える。印刷装置12は、印刷システム10において印刷を実行するインクジェットプリンタである。また、本例において、印刷装置12は、複数のインクジェットヘッドを有しており、印刷装置12に対する調整を行う調整時において、印刷対象の媒体(メディア)に対して、予め設定されたテストパターンである調整パターンを印刷する。印刷装置12の構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0026】
スキャナ14は、印刷装置12によって媒体に印刷された画像を読み取る画像読取装置である。本例において、スキャナ14は、印刷装置12に対する調整時において、媒体に印刷された調整パターンを読み取る。スキャナ14を用いて調整パターンを読み取ることで、例えば、画像を読み取るための特別な構成等を印刷装置12に持たせることなく、容易かつ適切に調整パターンの読み取りを行うことができる。また、スキャナ14を用いることで、例えば、高解像度での画像の読み取りを容易かつ適切に行うこと等も可能になる。スキャナ14としては、フルカラーでの画像の読み取りが可能なカラースキャナを用いることが好ましい。また、スキャナ14としては、例えば、コンピュータに接続されて、そのコンピュータの制御に従って画像の読み取りを行うスキャナを用いることが考えられる。このようなスキャナ14としては、例えば、読み取り可能な最大の原稿サイズがA4サイズ以下のスキャナ等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば、読み取りの解像度が2400dpi以上(例えば、2400~4800dpi程度、好ましくは、2400~3000dpi程度)のスキャナを用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、市販の安価なPC用スキャナ等を用いて、調整用パターンの読み取りを適切に実行することができる。スキャナ14を接続するコンピュータとしては、例えば、汎用のPC等を好適に用いることができる。また、本例において、このコンピュータとしては、例えば、画像解析装置16を用いる。
【0027】
画像解析装置16は、調整パターンを示す画像であるパターン画像に対する画像解析を行うコンピュータであり、スキャナ14での調整パターンの読み取りによって生成されるパターン画像に対する画像処理を行う。また、これにより、画像解析装置16は、例えば、印刷装置12の動作の制御に用いる補正値の算出や、印刷装置12におけるインクジェットヘッドの状態を示す数値の算出等を行う。より具体的に、本例において、画像解析装置16は、例えばPC等のコンピュータであり、コンピュータを画像解析装置として機能させるプログラムである画像解析ツールに従って、調整パターンに基づき、所定の補正値等の数値の算出を行う。また、画像解析装置16は、算出した補正値について、MPC18へ供給する。更に、本例において、画像解析装置16は、画像処理での解析の結果を示す解析レポートとして、解析結果を示すファイルである解析結果ファイルを生成する。画像解析装置16において算出する数値や画像解析装置16の動作等については、後に更に詳しく説明をする。
【0028】
MPC18は、印刷装置12の動作を制御するコンピュータ(制御PC)であり、印刷装置12の動作を制御するためのプログラムに従って動作することで、印刷装置12の動作を制御する。より具体的に、MPC18は、例えば、制御設定値を記憶するデータベース20を管理し、データベース20が記憶している制御設定値に基づき、印刷装置12の動作を制御する。この場合、制御設定値については、例えば、印刷装置12の動作を制御するための設定値等と考えることができる。また、本例において、データベース20は、制御設定値を記憶する設定値記憶部の一例であり、例えば、MPC18の一部として構成される。この場合、データベース20が記憶する制御設定値は、例えば、MPC18の記憶装置(例えば、HDD又はSSD等)に格納される。また、本例において、データベース20は、印刷装置12における互いに異なる動作にそれぞれが対応付けられた複数種類の制御設定値を記憶している。MPC18及びデータベース20の変形例において、データベース20は、MPC18の外部に置かれてもよい。また、本例において、MPC18は、画像解析装置16から受け取る上記の補正値について、制御設定値の少なくとも一部として、データベース20に記憶させる。また、これにより、MPC18は、画像解析装置16によって算出される補正値を利用して、印刷装置12の動作を制御する。このように構成すれば、例えば、調整パターンに基づいて算出される補正値に基づき、印刷装置12の動作の調整を適切に行うことができる。また、この場合、制御設定値の少なくとも一部については、例えば、データベース20が記憶している少なくともいずれかの制御設定値等と考えることができる。
【0029】
続いて、本例における印刷装置12の構成について、更に詳しく説明をする。図1(b)は、印刷装置12の要部の構成の一例を示す。上記及び以下に説明をする点を除き、印刷装置12は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置12は、図示した構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に有してよい。本例において、印刷装置12は、ヘッド部102、台部104、Yバー部106、主走査駆動部112、副走査駆動部114、駆動信号出力部116、及び制御部120を有する。ヘッド部102は、印刷対象の媒体50に対してインクを吐出する部分である。また、本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドを有し、印刷の解像度に応じて設定される媒体50上の吐出位置に対し、それぞれのインクジェットヘッドから、インクを吐出する。この場合、それぞれのインクジェットヘッドは、印刷の解像度に応じて設定される吐出位置のうち、印刷すべき画像に応じて選択される少なくとも一部の吐出位置へ、インクを吐出する。ヘッド部102の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0030】
台部104は、ヘッド部102と対向する位置に媒体50を保持する台状部材である。本例において、台部104は、フラットベッド型の印刷装置において媒体50を保持する台であり、例えば図中に示すように、上面に媒体50の全体が載せられることで、ヘッド部102と対向させて媒体50を保持する。Yバー部106は、媒体50を挟んで台部104と対向する位置において媒体50の幅方向へ延伸する部材であり、媒体50と対向する位置にヘッド部102を保持する。本例において、媒体50の幅方向は、印刷装置12において予め設定された主走査方向(図中のY方向)と平行な方向である。また、Yバー部106は、例えば主走査方向へのヘッド部102の移動をガイドするガイドレール等を含み、主走査動作時において、主走査方向へのヘッド部102の移動をガイドする。この場合、主走査動作については、例えば、主走査方向へ媒体50に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。
【0031】
主走査駆動部112は、ヘッド部102に主走査動作を行わせる駆動部である。ヘッド部102に主走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに主走査動作を行わせること等と考えることができる。本例において、主走査駆動部112は、Yバー部106に沿ってヘッド部102を移動させつつ、ヘッド部102におけるそれぞれのインクジェットヘッドにインクを吐出させることで、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。この場合、主走査駆動部112は、制御部120の制御に従って、駆動信号出力部116から受け取る駆動信号をそれぞれのインクジェットヘッドに供給して、印刷すべき画像に応じて、それぞれのインクジェットヘッドにおけるそれぞれのノズルからインクを吐出させる。駆動信号については、例えば、複数のインクジェットヘッドのそれぞれにインクを吐出させる信号等と考えることができる。また、駆動信号について、例えば、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズルからインクを吐出させる駆動素子(例えば、ピエゾ素子等)を駆動するための信号等と考えることもできる。
【0032】
副走査駆動部114は、ヘッド部102に副走査動作を行わせる駆動部である。ヘッド部102に副走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに副走査動作を行わせること等と考えることができる。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ媒体50に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、副走査動作について、例えば、媒体50において主走査動作時にヘッド部102と対向する位置を変更する動作等と考えることもできる。副走査駆動部114は、例えば、主走査動作の合間にヘッド部102に副走査動作を行わせることで、媒体50において次の回の主走査動作でインクが吐出される領域を変更する。このように構成すれば、例えば、媒体50の各位置に対する主走査動作をヘッド部102に適切に行わせることができる。また、本例において、副走査駆動部114は、位置が固定されている台部104に対し、制御部120の制御に従って、所定の副走査移動量だけヘッド部102と共にYバー部106を移動させることで、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。副走査移動量については、例えば、副走査動作において媒体50に対して相対的に複数のインクジェットが移動する移動量等と考えることができる。
【0033】
駆動信号出力部116は、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドへ駆動信号を供給する出力部である。本例において、駆動信号出力部116は、主走査駆動部112を介してそれぞれのインクジェットヘッドにおける駆動素子へ駆動信号を供給することで、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズルからインクを吐出させる。
【0034】
制御部120は、例えば印刷装置12のCPUを含む部分であり、印刷装置12のファームウェア等のプログラムに従って、印刷装置12の各部の動作を制御する。制御部120については、例えば、印刷装置12における制御ユニットに対応する構成等と考えることもできる。また、本例において、制御部120は、データベース20に記憶されている制御設定値に基づき、印刷装置12の各部の動作を制御する。また、これにより、制御部120は、印刷装置12の各部について、制御設定値に基づいて動作させる。より具体的に、制御部120は、例えば、データベース20に記憶されている制御設定値に基づき、主走査駆動部112の動作を制御する。また、これにより、主走査駆動部112は、例えば、制御設定値に基づき、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。この場合、例えば、制御設定値としてデータベース20が記憶している補正値に基づき、それぞれのインクジェットヘッドにインクを吐出させるタイミングの調整を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、より高い精度での主走査動作をヘッド部102に適切に行わせることができる。また、制御部120は、更に、例えば、制御設定値としてデータベース20が記憶している補正値に基づき、副走査動作における副走査移動量の調整を行う。このように構成すれば、例えば、より高い精度での副走査動作をヘッド部102に適切に行わせることができる。この場合、副走査移動量の調整用の補正値としては、例えば、インクジェットヘッドにインクを吐出させるタイミングの調整用の補正値とは別の補正値を用いることが考えられる。
【0035】
続いて、印刷装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。図2は、ヘッド部102の具体的な構成について説明をする図である。図2(a)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。図2(b)は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、キャリッジ200及び複数のインクジェットヘッド202を有する。キャリッジ200は、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッド202を保持する保持部材であり、図中に符号202a1~d4として区別して示すような複数のインクジェットヘッド202について、台部104(図1参照)と対向する位置に保持する。この場合、台部104と対向させてインクジェットヘッド202を保持することについては、例えば、台部104上の媒体へ向けてインクが吐出されるようにインクジェットヘッド202を保持すること等と考えることができる。
【0036】
また、本例において、キャリッジ200は、スタガ配置で副走査方向へ複数のインクジェットヘッド202が並ぶインクジェットヘッド202の列が主走査方向へ複数列並ぶ構成により、複数のインクジェットヘッド202を保持する。より具体的に、図示した構成においては、インクジェットヘッド202a1~a4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第1の列になっている。また、インクジェットヘッド202b1~b4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第2の列になっている。インクジェットヘッド202c1~c4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第3の列になっている。インクジェットヘッド202d1~d4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第4の列になっている。複数のインクジェットヘッド202がスタガ配列で並ぶことについては、例えば、主走査方向における位置をずらした複数のインクジェットヘッド202が副走査方向へ並ぶこと等と考えることができる。この場合、複数のインクジェットヘッド202は、例えば、副走査方向において一部が重なるように、副走査方向へ並んでもよい。より具体的に、本例において、スタガ配列で並ぶ4個のインクジェットヘッド202は、例えば図中に示すように、主走査方向における位置を交互にずらしつつ、隣接するインクジェットヘッド202の間で副走査方向において一部が重なるように、副走査方向へ並ぶ。
【0037】
また、この場合、スタガ配列で並ぶ複数のインクジェットヘッド202について、例えば、仮想的な大きな一つのインクジェットヘッドとして用いることが可能になる。より具体的に、この場合、スタガ配列で並ぶ複数のインクジェットヘッド202が有しているノズルを合わせて、仮想的な一つのノズル列を構成すると考えることができる。また、図中に示すように、本例において、インクジェットヘッド202の第1~第4の列は、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並ぶ。この場合、それぞれのスタガ配列に対応する仮想的なノズル列について、主走査方向に並んでいると考えることができる。また、この場合、それぞれのスタガ配列(一つのスタガ配列)に並ぶ複数のインクジェットヘッド202では、同じ色のインクを吐出し、互いに異なるスタガ配列に並ぶインクジェットヘッド202では、互いに異なる色のインクを吐出することが考えられる。より具体的に、例えば、本例のように、第1~第4の列に分けてキャリッジ200が複数のインクジェットヘッド202を保持する場合、第1~第4のそれぞれの列のインクジェットヘッド202によって、プロセスカラーの各色のインクを吐出することが考えられる。プロセスカラーの各色については、例えば、減法混色法での色表現での基本色等と考えることができる。また、プロセスカラーの各色のインクとしては、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の各色のインクを用いることが考えられる。このような各色のインクを用いることで、例えば、高い品質でのカラー印刷を適切に行うことができる。また、印刷装置12(図1参照)の用途等によっては、一つのスタガ配列に並ぶ複数のインクジェットヘッド202の一部により、同じスタガ配列内の他のインクジェットヘッド202と異なる色のインクを吐出してもよい。このように構成すれば、例えば、ヘッド部102において、より多くの色のインクを吐出することができる。また、複数のスタガ配列のインクジェットヘッド202により、同じ色のインクを吐出すること等も考えられる。
【0038】
また、ヘッド部102の構成に関し、インクジェットヘッド202の個数や配置については、図2(a)に図示した例に限らず、様々に変更が可能である。また、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202から吐出するインクに合わせて、他の構成を更に有してもよい。例えば、インクジェットヘッド202から紫外線硬化型のインクを吐出する場合、ヘッド部102は、紫外線光源等を更に有してもよい。
【0039】
また、本例において、それぞれのインクジェットヘッド202は、例えば図2(b)に示すように、複数のノズル列212を有する。ノズル列212については、例えば、所定のノズル列方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶ列等と考えることができる。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。それぞれのノズル列212において、複数のノズルは、主走査方向における位置を揃えて、一定のノズル間隔で副走査方向へ並んでいる。また、それぞれのインクジェットヘッド202において、複数のノズル列212は、例えば、副走査方向における位置をずらして、主走査方向へ並んでいる。この場合、例えば、一つのノズル列212におけるノズル間隔未満の距離だけ、ノズル列212間での副走査方向における位置をずらすことが考えられる。このように構成すれば、例えば、一つのインクジェットヘッド202における副走査方向でのノズル間の距離(インクジェットヘッド202内での副走査方向におけるノズル間の最小距離)について、一つのノズル列212におけるノズル間隔よりも短い距離にすることができる。また、これにより、例えば、高解像度の印刷を高速かつ適切に行うことが可能になる。
【0040】
尚、図2(b)においては、一つのインクジェットヘッド202におけるノズル列212の数が4列の場合について、インクジェットヘッド202の構成の例を簡略化して図示している。一つのインクジェットヘッド202におけるノズル列212の数は、4列以外であってもよい。また、高解像度の印刷を高速かつ適切に行うことを考えた場合、一つのインクジェットヘッド202におけるノズル列212の数について、4列以上(例えば、4~6列程度)にすることが好ましい。
【0041】
続いて、画像解析装置16において実行する画像処理の動作等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、画像解析ツールに従って、調整パターンに基づき、所定の補正値等の数値の算出を行う。そして、この場合、画像解析ツールとしては、例えば、図3に示す構成のプログラムを用いる。
【0042】
図3は、画像解析ツールの構成の一例を示す。本例において、画像解析ツールは、画像解析装置16(図1参照)において実行されるプログラムであり、複数のモジュールによって構成されている。また、画像解析ツールは、複数のモジュールとして、解析ツール本体302、パターン解析ライブラリ304、複数の調整項目ライブラリ306、及びレポート作成ライブラリ308を有する。解析ツール本体302は、画像解析ツールの全体を制御するツール本体となるモジュールである。また、本例において、解析ツール本体302は、実行ファイル形式のファイル(例えば、exe形式のファイル)であり、画像解析ツールに対するデータの入出力処理(I/O処理)や、画像解析ツールにおけるモジュール間でのデータの入出力処理の管理等を行う。
【0043】
より具体的に、本例において、解析ツール本体302は、例えば画像解析装置16のモニタにユーザインターフェイス(UI)を表示し、ユーザによるファイルの選択により、パターン画像及び機種パラメータの読み込みを行う。この場合、上記においても説明をしたように、パターン画像は、媒体に印刷された調整パターンをスキャナ14(図1参照)で読み取ることで生成される画像である。パターン画像は、例えば画像解析装置16の記憶装置に記憶されており、上記のユーザインターフェイスでユーザに選択されることで、画像解析ツールに読み込まれる。この場合、画像解析ツールに読み込まれるパターン画像について、例えば、解析の対象となる解析画像等と考えることができる。また、機種パラメータは、調整パターンの印刷に用いた印刷装置12(図1参照)の機種に応じて設定されるパラメータである。このような機種パラメータを用いることで、例えば、印刷装置12の機種に合わせた動作を画像解析ツールに行わせることができる。また、これにより、例えば、複数種類の機種の印刷装置に対して共通の画像解析ツールを用いること等が可能になる。機種パラメータとしては、例えば、ヘッド部102(図2参照)におけるインクジェットヘッドの配置やインクジェットヘッドの構成等を示すパラメータを用いること等が考えられる。インクジェットヘッドの配置を示すパラメータとしては、例えば、インクジェットヘッドの個数やスタガ配置での配置数を示すパラメータを用いることが考えられる。
【0044】
また、本例において、画像解析装置16は、画像解析ツールに従って実行する動作での出力として、補正値データ及び解析レポートを出力する。この場合、画像解析装置16は、補正値データとして、画像解析装置16において算出する補正値を示すファイルを出力する。また、解析レポートとして、解析結果を示す解析結果ファイルを出力する。この場合、画像解析装置16は、画像解析ツールに従って実行する動作によって、補正値の算出及び解析結果ファイルの生成等を行う。補正値データについては、例えば、補正値を印刷装置12にフィードバックするためのファイル等と考えることもできる。より具体的に、画像解析装置16は、例えば、所定の書式で補正値を示すファイルを生成することで、補正値データを出力する。また、この場合、例えばデータベース20が記憶する情報を管理するプログラム(例えばアジャストツール)を画像解析装置16又は他のコンピュータで実行することで、補正値をデータベース20に記憶させる。また、補正値について、例えば、画像解析ツールに従って実行する画像解析装置16の動作の中で、直接、データベース20に記憶させてもよい。解析結果ファイルとしては、例えばpdf形式や表計算用ファイル形式のファイルを用いることが考えられる。また、解析結果ファイルによって出力する解析レポートについては、例えば、印刷装置12における調整レベルを数値化して、人が見やすい形式にまとめたレポート等と考えることができる。また、解析レポートについては、例えば、調整レベルのエビデンス管理等に用いることが考えられる。
【0045】
パターン解析ライブラリ304、複数の調整項目ライブラリ306、及びレポート作成ライブラリ308のそれぞれは、ライブラリとして機能するモジュールである。本例において、これらのライブラリのモジュールとしては、ダイナミックリンクライブラリ形式(DLL形式)のファイルを用いる。また、これらのライブラリのうち、パターン解析ライブラリ304は、パターン画像を解釈するためのライブラリであり、パターン画像を解釈した結果に基づき、複数の調整項目ライブラリ306の中から、必要なモジュールを呼び出す。また、これにより、パターン解析ライブラリ304は、パターン画像に対する様々な解析を複数の調整項目ライブラリ306に行わせる。複数の調整項目ライブラリ306のそれぞれは、画像解析ツールでの解析の対象となる様々な項目(調整項目)に対する解析を行うライブラリである。本例において、複数の調整項目ライブラリ306のそれぞれは、互いに異なる項目用のライブラリであり、必要に応じてパターン解析ライブラリ304から呼び出されて、対応する項目に関する処理を実行する。また、本例の画像解析ツールは、例えば解析すべき項目が後に増えた場合等に、必要な調整項目ライブラリ306を追加可能に構成されている。
【0046】
より具体的に、本例において、複数の調整項目ライブラリ306としては、図中に示すように、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、ヘッドスタガ解析用、ヘッド電圧解析用、ドット位置解析用、及びフィード解析用のライブラリを用いる。この場合、ヘッド傾き解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、キャリッジ200(図2参照)に対するインクジェットヘッド202(図2参照)の取付角度の解析を行う。インクジェットヘッド202の取付角度については、例えば、所定の正しい向きに対してインクジェットヘッド202の長手方向がずれる角度等と考えることができる。また、ヘッド前後解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、キャリッジ200に保持されているそれぞれのインクジェットヘッド202について、前後方向となる副走査方向での位置の解析を行う。ヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、スタガ配列で並ぶ複数のインクジェットヘッド202について、隣接するインクジェットヘッド202の間での前後方向における位置関係の解析を行う。ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202へ供給される駆動信号の電圧の解析を行う。ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202のノズル列におけるノズルから吐出されるインクで形成されるインクのドットの位置の解析を行う。また、フィード解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、副走査動作での副走査移動量の解析を行う。
【0047】
また、レポート作成ライブラリ308では、複数の調整項目ライブラリ306で行った解析の結果に基づき、解析結果ファイルを生成する。この場合、レポート作成ライブラリ308は、例えば、解析ツール本体302及びパターン解析ライブラリ304を介して、それぞれの調整項目ライブラリ306での解析の結果を受け取る。また、レポート作成ライブラリ308は、例えば、解析ツール本体302を介して、解析結果ファイルを出力する。また、上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、補正値データを出力することで、データベース20に補正値を記憶させる。この場合、複数の調整項目ライブラリ306の少なくとも一部において、実行する解析の結果に合わせて、補正値を算出する。また、解析ツール本体302は、パターン解析ライブラリ304を介して調整項目ライブラリ306から補正値を受け取り、受け取った補正値を示す補正値データを出力する。
【0048】
また、本例において、複数の調整項目ライブラリ306によって実行する様々な解析のうち、ヘッド傾き解析、ヘッド前後解析、及びヘッドスタガ解析については、例えば、機械的な調整(メカ調整)に関する解析等と考えることができる。これに対し、ヘッド電圧解析、ドット位置解析、及びフィード解析については、例えば、メカ調整以外の印刷の動作の調整(プリント調整)に関する解析等と考えることができる。そして、本例においては、例えば、プリント調整に関する調整項目ライブラリ306のうち、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306、及びフィード解析用の調整項目ライブラリ306において、補正値の算出を行う。また、この場合、補正値の算出を行わない調整項目ライブラリ306での解析の結果については、例えば、解析結果ファイルに反映する。また、本例においては、例えば、補正値の算出を行う調整項目ライブラリ306での解析の結果も含めて、全ての調整項目ライブラリ306での解析の結果について、解析結果ファイルに反映する。
【0049】
続いて、調整項目ライブラリ306で実行する解析の例について、更に詳しく説明をする。図4は、調整項目ライブラリ306で実行する解析の例について説明をする図であり、画像解析ツールにおける複数の調整項目ライブラリ306のうち、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306で行う解析の一例を示す。
【0050】
本例において、画像解析装置16(図1参照)での画像の解析を行う場合、実行する解析の内容に合わせた調整パターンを印刷装置12(図1参照)に印刷させる。そのため、例えば、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306での画像の解析を行う場合、印刷装置12に、ズレ量検知用パターン400を含む調整パターンを印刷させる。この場合、ズレ量検知用パターン400については、例えば、ドット位置ズレ量を検知するためのパターン等と考えることができる。ドット位置ズレ量については、例えば、印刷装置12のヘッド部102(図2参照)における複数のノズル列のそれぞれにおいて生じているドットの位置のズレ量等と考えることができる。ドットの位置については、例えば、ヘッド部102における複数のノズル列のそれぞれに含まれるノズルからインクを吐出することで媒体上に形成されるインクのドットの位置等と考えることができる。ヘッド部102における複数のノズル列については、例えば、ヘッド部102におけるキャリッジ200(図2参照)に保持されている複数のインクジェットヘッド202(図2参照)が有する複数のノズル列等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、この複数のノズル列については、16個のインクジェットヘッド202が有している64個のノズル列等と考えることができる。また、ドットの位置については、例えば、複数のインクジェットヘッド202における複数のノズル列のそれぞれに含まれるノズルからインクを吐出することで媒体上に形成されるインクのドットの位置等と考えることができる。
【0051】
また、本例において、ズレ量検知用パターン400としては、例えば、図4(a)に示すパターンを用いる。図4(a)は、ズレ量検知用パターン400の一例を示す。本例において、ズレ量検知用パターン400は、主走査方向における同じ位置に対して複数のノズル列からインクを吐出するパターンである。また、より具体的に、調整パターンの印刷時には、印刷装置12における複数のインクジェットヘッド202のうち、いずれか一つのインクジェットヘッド202におけるいずれかの一つのノズル列を基準のノズル列として選択する。そして、主走査方向における同じ位置に対して複数のノズル列からインクを吐出するパターンとして、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列を順次選択して、基準のノズル列と、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列とを含む二つのノズル列から主走査方向における同じ位置に対してインクを吐出するパターンを印刷装置12に印刷させる。また、これにより、例えば図4(a)に示すように、印刷装置12が有するノズル列の数に対応する数の多重線402を含むズレ量検知用パターン400を印刷装置12に印刷させる。
【0052】
多重線402については、例えば、同じ位置に描かれた複数の線等と考えることができる。また、本例において、多重線402については、例えば、二つのノズル列から主走査方向における同じ位置へインクを吐出することで描かれる2重線等と考えることができる。この場合、同じ位置へインクを吐出することについては、例えば、設計上の同じ位置へインクを吐出すること等と考えることができる。そのため、実際に描かれる多重線402において、互いに異なるノズル列から吐出されるインクによって形成されるインクのドットの位置は、主走査方向においてずれていてもよい。また、このような多重線402を含む多重線のパターンについては、例えば、副走査方向へ延伸する線をそれぞれのノズル列から吐出されるインクで描くことで主走査方向における設計上の同じ位置に複数の線が描かれるパターン等と考えることもできる。
【0053】
また、本例においては、印刷装置12における複数のインクジェットヘッド202が有している64個のノズル列に対応して、図中に数字1~64を付して区別するように、64個の多重線402が描かれることになる。そして、上記の説明等から理解できるように、それぞれの多重線402については、例えば、基準のノズル列と、それ以外のノズル列とで描くライン等と考えることができる。しかし、本例のように、印刷装置12におけるノズル列の数と等しい数の多重線402を描く場合、いずれか一つの多重線402は、基準のノズル列に対応することになる。この場合、基準のノズル列に対応する多重線402については、例外的に、基準のノズル列のみで描くライン等と考えることができる。より具体的に、例えば、図中の番号1に対応するノズル列を基準のノズル列として用いる場合、数字1を付して示す多重線402については、基準のノズル列のみで描くラインになる。また、数字2~64のそれぞれを付して示すラインについては、基準のノズル列と、それ以外のいずれかのノズル列とを用いて描くラインになる。
【0054】
また、このような多重線402を描く場合、一つの多重線402を描く二つのノズル列の間でドットの位置のズレが生じていなければ、それぞれのノズル列によって描かれる線が主走査方向における同じ位置で重なることになる。この場合、二つのノズル列の間でドットの位置のズレが生じていないことについては、例えば、基準のノズル列で形成するドットの位置を基準とした相対的なドットの位置にズレが生じていないこと等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、一つの多重線402を描く二つのノズル列の間でドットの位置のズレが生じていないことについては、例えば、主走査方向において、基準のノズル列で形成するドットの位置に対し、他のノズル列で形成するドットの位置のズレが生じていないこと等と考えることができる。また、この場合、ドットの位置のズレが生じていないことについて、例えば、ドットの位置のズレ量が所定の許容範囲内であること等と考えることもできる。これに対し、一つの多重線402を描く二つのノズル列の間でドットの位置のズレが生じている場合、多重線402を拡大して観察すると、例えば図4(b)に示すように、それぞれのノズル列によって描かれる線の位置が主走査方向にずれることになる。
【0055】
図4(b)は、一つの多重線402を拡大して示す図である。上記のように、本例において、印刷装置12は、基準のノズル列と、それ以外のノズル列とを用いて、それぞれの多重線402を描く。そのため、それぞれの多重線402については、例えば図中に示すように、基準ノズル線412及び調整ノズル線414によって構成されると考えることができる。この場合、基準ノズル線412は、基準のノズル列によって描かれる線である。また、調整ノズル線414は、基準ノズル列以外のノズル列によって描かれる線である。基準ノズル線412及び調整ノズル線414のそれぞれについては、例えば、一つのノズル列に含まれる複数のノズルで主走査方向における同じ位置へ吐出するインクで形成されるインクのドットの並びにより描かれる線等と考えることができる。また、この場合、一つのノズル列に含まれる複数のノズルで主走査方向における同じ位置へインクを吐出することについては、例えば、主走査動作時における同じタイミングでインクを吐出すること等と考えることができる。
【0056】
また、本例の画像解析ツールにおいて、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306は、ズレ量検知用パターン400から得られるパターン画像に基づき、ズレ量検知用パターン400に含まれるそれぞれの多重線402に対し、画像処理によって、基準ノズル線412と調整ノズル線414との間の主走査方向における距離を測定する。この場合、ズレ量検知用パターン400から得られるパターン画像については、例えば、ズレ量検知用パターン400を含む調整パターンをスキャナ14(図1参照)で読み取ることで生成されるパターン画像等と考えることができる。また、基準ノズル線412と調整ノズル線414との間の主走査方向における距離については、例えば図中に示す測定距離のように、所定の向きを正の方向とし、その反対側を負の方向として、基準ノズル線412に対して相対的な調整ノズル線414の位置に対応する距離を画像処理で算出する。
【0057】
また、この場合、この測定距離について、例えば、一つの多重線402を描く二つのノズル列の間でのドットの位置のズレ量に対応していると考えることができる。そして、この場合、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列に対応する多重線402に対し、上記の測定距離に基づき、それぞれのノズル列について、一つの基準のノズル列を基準にして、ドット位置ズレ量を算出することができる。より具体的に、本例において、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306は、パターン画像に基づき、印刷装置12におけるそれぞれのノズル列に対し、一つの基準のノズル列を基準にして、ドット位置ズレ量を算出する。また、算出したドット位置ズレ量に基づき、更に、ドット位置ズレ量に対応する補正値であるドット位置補正値を算出する。本例において、ドット位置補正値は、補正値データが示す補正値の一例である。このように構成すれば、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306において、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202のノズル列におけるノズルから吐出されるインクで形成されるインクのドットの位置の解析を適切に行うことができる。
【0058】
ここで、本例において、基準ノズル線412及び調整ノズル線414のそれぞれは、一つのノズル列における一部のノズルで形成される線であってよい。より具体的に、基準ノズル線412については、例えば、基準のノズル列における一部の複数のノズルを基準ノズルとして選択して、その基準ノズルからインクを吐出することで描くことが考えられる。また、調整ノズル線414については、例えば、基準のノズル列以外のノズル列(調整対象のノズル列)における一部の複数のノズルを調整ノズルとして選択して、その調整ノズルからインクを吐出することで描くことが考えられる。このように構成した場合、基準ノズル線412及び調整ノズル線414のそれぞれを構成するインクのドットについて、副走査方向における距離を空けて形成することが可能になる。また、これにより、例えば、それぞれのインクのドットの位置を高い精度でより適切に識別することが可能になる。また、基準ノズル線412及び調整ノズル線414を構成するインクのドットの位置を高い精度で識別することで、例えば、基準ノズル線412及び調整ノズル線414の主走査方向における位置をより高い精度で決定すること等も可能になる。
【0059】
また、印刷装置12では、複数のインクジェットヘッド202に対し、例えば、往復の主走査動作を行わせることが考えられる。往復の主走査動作をインクジェットヘッド202に行わせることについては、例えば、主走査方向における一方の向きでインクジェットヘッド202を移動させる往路の主走査動作と、主走査方向における他方の向きでインクジェットヘッド202を移動させる復路の主走査動作とをインクジェットヘッド202に行わせること等と考えることができる。そして、この場合、ドット位置ズレ量について、例えば、往路の主走査動作時と復路の主走査時とで異なることも考えられる。そのため、ドット位置ズレ量については、往路及び復路の主走査動作でのインクジェットヘッド202の移動の向き毎に、個別に算出することが好ましい。また、この場合、インクジェットヘッド202の移動の向き毎に、印刷装置12にズレ量検知用パターン400を印刷させることが考えられる。
【0060】
また、上記においても説明をしたように、本例において、ズレ量検知用パターン400は、印刷装置12におけるノズル列の数に対応する数の多重線402を含む。しかし、印刷装置12におけるノズル列の数は、印刷装置12の機種や仕様等によって様々に異なることが考えられる。そのため、ズレ量検知用パターン400としては、例えば、印刷装置12の構成に合わせて動的に決定したパターンを用いることが考えられる。また、この場合、画像解析ツールでは、例えば、機種パラメータに基づき、印刷装置12の構成に合わせて、ズレ量検知用パターン400に対する解析を行う。このように構成すれば、例えば、様々な構成の印刷装置12に対し、共通の画像解析ツールを適切に用いることができる。また、本例の画像解析ツールについては、例えば、対象となるノズル列の数が多い場合に特に好適に使用できると考えることもできる。この場合、解析の対象となるノズル列の総数について、例えば20以上、好ましくは30以上等と考えることができる。解析の対象となるノズル列の総数については、例えば、ズレ量検知用パターン400が含む複数の多重線402に対応するノズル列の数や、印刷装置12が有するノズル列の数等と考えることができる。また、インクジェットヘッド202としては、例えば、それぞれのノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能な構成を用いること等も考えられる。そして、この場合、ドット位置ズレ量について、インクの容量によって差が生じること等も考えられる。そのため、この場合、インクの容量毎に個別の多重線402を含むズレ量検知用パターン400を印刷装置12に描かせてもよい。また、この場合、画像解析装置16では、例えば、インクの容量毎にドット位置ズレ量及びドット位置補正値を算出することが考えられる。
【0061】
また、上記において説明をしたように、本例において、画像解析ツールは、ドット位置解析用以外の解析用の調整項目ライブラリ306を更に有している。そして、この場合、ドット位置解析用以外の解析用の調整項目ライブラリ306での解析を行うために、調整パターンとして、ズレ量検知用パターン400以外のパターンを含むパターンを印刷装置12に印刷させることが考えられる。この場合も、印刷装置12の構成等に合わせて動的に決定したパターンを用いることが考えられる。また、複数種類の調整項目ライブラリ306に対応するパターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させる場合、例えばインクジェットヘッド202毎に分けたパターンを媒体に印刷させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、媒体に印刷されるパターンとインクジェットヘッド202との対応関係を容易かつ適切に把握することができる。また、この場合、ズレ量検知用パターン400を構成するそれぞれの多重線402についても、図4(a)に示す並べ方と異ならせて、それぞれのインクジェットヘッド202におけるノズル列に対応する多重線402をインクジェットヘッド202毎のパターン内に描くこと等が考えられる。また、この場合、インクジェットヘッド202毎に分けたパターンとしては、例えば図5に示す調整パターンを用いることが考えられる。
【0062】
図5は、インクジェットヘッド202毎に分けたパターンで構成される調整パターンについて説明をする図である。図5(a)は、調整パターンの一例を示す。画像解析ツールにおいて、複数種類の調整項目ライブラリ306(図3参照)を用いた解析を行う場合、例えば、図中に示す構成の調整パターンを媒体50に印刷することが考えられる。この場合、調整パターンは、例えば、スキャナセットマーク502、傾き補正線504、トンボ506、及び複数のヘッド毎パターン部508を有する。また、これらのうち、スキャナセットマーク502、傾き補正線504、及びトンボ506は、スキャナ14(図1参照)での調整パターンの読み取りによって生成されるパターン画像の位置や傾き等の補正を行うための構成である。より具体的に、スキャナセットマーク502は、スキャナ14での画像の読み取り時に位置の基準として用いるマークである。スキャナセットマーク502については、例えば、スキャナ14でスキャンされる画像の原点(スキャン画像原点)となるマーク等と考えることもできる。傾き補正線504は、スキャナ14での調整パターンの読み取りによって生成されるパターン画像に対して傾きの補正を行うために用いる線である。トンボ506は、複数のヘッド毎パターン部508に対する位置の基準として用いるマークである。トンボ506については、例えば、複数のヘッド毎パターン部508の位置情報を定義するためのマーク等と考えることもできる。
【0063】
また、調整パターンにおいて、複数のヘッド毎パターン部508は、インクジェットヘッド202毎に分けたパターンに対応する部分である。この場合、例えば、印刷装置12におけるそれぞれのインクジェットヘッド202に対応して、それぞれのヘッド毎パターン部508を媒体50に印刷する。また、それぞれのヘッド毎パターン部508として、例えば図5(b)に示すように、複数のパターン510を印刷する。図5(b)は、ヘッド毎パターン部508の構成の一例を示す図であり、一つのインクジェットヘッド202に対して、図中にパターン510a~eとして区別して示す複数のパターン510を含むヘッド毎パターン部508を印刷する場合について、ヘッド毎パターン部508の構成の例を示す。パターン510a~eのそれぞれとして、例えば、それぞれの調整項目ライブラリ306で解析しようとする項目に合わせたパターンを用いることが考えられる。また、この場合、一つの調整項目ライブラリ306に対して、パターン510a~eのうちの複数のパターンを用いることも考えられる。
【0064】
例えば、上記においても説明をしたように、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306でドット位置ズレ量を算出する場合、ドット位置ズレ量について、往路及び復路の主走査動作でのインクジェットヘッド202の移動の向き毎に、個別に算出することが好ましい。そのため、この場合、パターン510a~eのうちのいずれか一つのパターンを復路でのドット位置ズレ量を算出に用い、他のいずれか一つのパターンを往路でのドット位置ズレ量を算出に用いることが考えられる。より具体的に、図5(b)に示す構成のヘッド毎パターン部508を用いる場合、例えば、パターン510a、bとして、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンを印刷することが考えられる。また、この場合、例えば、パターン510aを復路でのドット位置ズレ量の算出に用い、パターン510bを往路でのドット位置ズレ量の算出に用いることが考えられる。この場合、パターン510a、bとして、例えば、図4を用いて説明をしたズレ量検知用パターン400(図4参照)のうち、ヘッド毎パターン部508に対応するインクジェットヘッド202のノズル列の分の多重線402(図4参照)を含むパターンを印刷することが考えられる。
【0065】
また、この場合、パターン510a、b以外のパターン510c~eについては、ドット位置解析用以外の調整項目ライブラリ306での解析に用いることが考えられる。この場合、パターン510c~eのそれぞれについて、例えば、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、ヘッドスタガ解析用、ヘッド電圧解析用、及びフィード解析用のうちのいずれかの調整項目ライブラリ306での解析に用いることが考えられる。より具体的に、図5(b)に示す構成のヘッド毎パターン部508を用いる場合、パターン510cとして、例えば、ヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンを印刷することが考えられる。また、パターン510dとして、例えば、ヘッド傾き解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンを印刷することが考えられる。パターン510eとして、例えば、ヘッド前後解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンを印刷することが考えられる。また、この場合、パターン510c~eのいずれかとして、ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンを印刷することも考えられる。また、パターン510a~eに加えて、ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンを更に含むヘッド毎パターン部508を印刷すること等も考えられる。
【0066】
また、この場合、ヘッド傾き解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとしては、例えば、間に副走査動作を挟む2回の主走査動作により、副走査方向におけるインクジェットヘッド202の一端側と他端側と(奥側と手前側と)で線が重なるパターンを印刷することが考えられる。より具体的に、この場合、1回目の主走査動作において、それぞれのインクジェットヘッド202のいずれかのノズル列の少なくとも一部のノズル(例えば、奥側のノズル)で同時にインクを吐出することで、副走査方向と平行な線を描く。この場合、副走査方向と平行な線については、例えば、主走査動作時の所定のタイミングでノズル列中の複数のノズルから同時にインクを吐出することで媒体50上に描かれる線等と考えることができる。また、副走査方向と平行な線について、例えば、インクジェットヘッド202が傾いていない場合に副走査方向と平行になる線等と考えることもできる。そして、間に副走査動作を挟んで行う2回目の主走査動作において、1回目の主走査動作で用いたのと同じノズル列の少なくとも一部のノズル(例えば、手前側のノズル)で同時にインクを吐出することで、1回目の主走査動作で描いた線と重なる位置に、更に線を描く。この場合、2本の線を描いたインクジェットヘッド202が傾いていなければ、2本の線が正しく重なることになる。しかし、インクジェットヘッド202が傾いている場合、傾きの大きさに応じて、2本の線の間での位置のズレが大きくなる。そのため、例えば、2本の線の間の距離を測定することで、インクジェットヘッド202の傾きを検出することが可能になる。また、本例において、ヘッド傾き解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、このような2本の線の間の距離を画像処理によって測定し、測定結果に基づき、インクジェットヘッド202の傾きの大きさを算出する。また、一つのインクジェットヘッド202の傾きの大きさについては、例えば、互いに異なる複数の位置(例えば、4箇所程度の位置)で上記の測定を行った結果に基づいて算出することが好ましい。
【0067】
また、ヘッド前後解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとしては、例えば、主走査方向へ並べて配置されている複数のインクジェットヘッド202での同じノズルにより主走査方向へ延伸する線を描くパターンを印刷することが考えられる。この場合、主走査方向へ並べて配置されている複数のインクジェットヘッド202については、例えば、インラインに配置されているインクジェットヘッド202等と考えることができる。また、複数のインクジェットヘッド202での同じノズルについては、例えば、副走査方向における位置が同じ位置になっているノズル等と考えることができる。この場合、2本の線を描いたインクジェットヘッド202の副走査方向における位置(前後方向の位置)が揃っていれば、それぞれのインクジェットヘッド202における同じノズルで描いた線が正しく重なることになる。しかし、インクジェットヘッド202の前後方向における位置がずれている場合、ズレの大きさに応じて、それぞれのインクジェットヘッド202で描いた線の間で、副走査方向における位置のズレが大きくなる。そのため、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202のノズルで描いた線の間の距離を測定することで、インクジェットヘッド202の前後方向における位置のズレ量を検知することが可能になる。また、本例において、ヘッド前後解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、このような線の間の距離を画像処理によって測定し、測定結果に基づき、インクジェットヘッド202の前後方向における位置のズレ量を算出する。この場合、例えば、いずれかのインクジェットヘッド202を基準にして、他のインクジェットヘッド202の位置のズレ量を算出することが考えられる。また、それぞれのインクジェットヘッド202の位置のズレ量については、例えば、複数の線(例えば、12個程度の線)から求められるズレ量の平均値によって算出することが考えられる。この場合、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202における互いに異なる複数のノズルで複数の線を描き、それぞれの線に対してインクジェットヘッド202の位置のズレ量を算出し、更にその平均値を算出することが考えられる。
【0068】
ヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとしては、例えば、スタガ配置で副走査方向において隣接して並ぶ二つのインクジェットヘッド202でのオーバーラップ部分のノズルを使用するパターンを印刷することが考えられる。この場合、オーバーラップ部分については、例えば、副走査方向において隣接する二つのインクジェットヘッド202でインクを吐出可能な副走査方向の範囲のうち、両方のインクジェットヘッド202でインクを吐出可能な部分等と考えることができる。また、この場合、それぞれのインクジェットヘッド202におけるオーバーラップ部分にあるノズルで主走査方向へ延伸する線を描くことが考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、二つのインクジェットヘッド202のうちの一方を基準のインクジェットヘッド202として、基準のインクジェットヘッド202においてオーバーラップ部分にあるノズルに、主走査方向へ延伸する所定の長さの第1の線を描かせる。また、基準のインクジェットヘッド202以外のインクジェットヘッド202においてオーバーラップ部分にあるノズルに、第1の線と異なる長さで、主走査方向へ延伸する第2の線を描かせる。この場合、第1の線として、所定の長さの長線を描かせることが考えられる。また、第2の線として、第1の線よりも短い短線を描かせることが考えられる。長線については、例えば、短線よりも相対的に長い所定の長さの線等と考えることができる。短線については、例えば、長線よりも相対的に短い所定の長さの線等と考えることができる。
【0069】
この場合、2個のインクジェットヘッド202の副走査方向における位置関係がスタガ配置における正しい位置関係になっていれば、それぞれのインクジェットヘッド202で描いた線(例えば長線及び短線)の間の距離(副走査方向における距離)は、所定の距離になる。しかし、2個のインクジェットヘッド202の副走査方向における位置関係にズレが生じている場合、ズレの大きさに応じて、それぞれのインクジェットヘッド202で描いた線の間の距離のズレが大きくなる。そのため、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202で描いた線の間の距離を測定することで、スタガ配置における正しい位置関係からのズレ量を検知することが可能になる。また、本例において、ヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、このような線の間の距離を画像処理によって測定し、測定結果に基づき、スタガ配置における正しい位置関係からのズレ量を算出する。この場合、例えば、いずれかのインクジェットヘッド202を基準にして、他のインクジェットヘッド202の位置のズレ量を算出することが考えられる。それぞれのインクジェットヘッド202の位置のズレ量については、複数の線(例えば、8個程度の線)から求められるズレ量の平均値によって算出することが考えられる。この場合、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202におけるオーバーラップ部分にある複数のノズルで複数の線を描き、それぞれの線に対してインクジェットヘッド202の位置のズレ量を算出し、更にその平均値を算出することが考えられる。また、この場合、複数の線が狭い範囲に描かれることで、線の密度が高くなり、個別の線を識別することが難しくなること等も考えられる。このような場合には、例えば、複数の線が描かれる部分を矩形のパターンと見なして、矩形のパターン間の副走査方向の距離を求めることで、平均化された位置のズレ量を算出してもよい。
【0070】
ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとしては、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202によって印刷がされる領域の色の濃さを確認できるパターンを印刷することが考えられる。この場合、インクジェットヘッド202に供給される駆動信号の電圧が適正であれば、そのインクジェットヘッド202によって印刷がされる領域の色の濃さは、予め設定された所定の濃さになる。しかし、駆動信号の電圧が不適正な場合、電圧のズレに応じて、そのインクジェットヘッド202から吐出するインクによって形成されるインクのドットのサイズにズレが生じることになる。また、この場合、適切にインクが吐出されずに、インクがミスト状になること等も考えられる。そのため、駆動信号の電圧が不適正な場合、そのインクジェットヘッド202によって印刷がされる領域の色の濃さについて、所定の濃さからのズレが生じることになる。また、本例において、ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202によって印刷がされる領域の色の濃さを画像処理によって測定し、測定結果に基づき、そのドットを形成したインクジェットヘッド202に供給されている駆動信号の電圧が適正であるか否かを判定する。また、必要に応じて、駆動信号の電圧のズレ量を示す数値を算出する。
【0071】
フィード解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとしては、例えば、副走査動作での副走査移動量を確認できるパターンを印刷することが考えられる。また、このようなパターンとしては、例えば、副走査動作を挟んで行う2回の主走査動作を行い、各回の主走査動作でインクが吐出可能な領域(バンド)の端がつながるパターンを描くことが考えられる。この場合、副走査移動量が適正であれば、バンドの端が目立たない状態で、適切に印刷を行うことができる。これに対し、副走査移動量が不適正であると、バンドの端の位置に、例えば、主走査方向へ延伸する黒スジ又は白スジが生じることになる。この場合、黒スジについては、例えば、2重に印刷がされることで周囲よりも濃い状態で印刷がされるスジ状の部分等と考えることができる。白スジについては、例えば、インクが吐出されないことで媒体50の色が目立つスジ状の部分等と考えることができる。また、本例において、フィード解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、黒スジ又は白スジの有無や、その幅(副走査方向における幅)の測定を画像処理によって行うことで、副走査移動量のズレ量を算出する。この場合、副走査移動量のズレ量を算出する動作について、副走査移動量を算出する動作の一例と考えることもできる。
【0072】
また、それぞれの調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとしては、上記のパターンに限らず、様々なパターンを用いることが考えられる。例えば、それぞれの調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターンとして、同一又は同様の目的で用いられる公知のパターンと同一又は同様のパターンを用いてよい。また、この場合、公知のパターンは、本例のように画像処理での測定に用いるパターンではなく、ユーザの目視等で状態を確認するパターンであってもよい。
【0073】
続いて、印刷システム10(図1参照)において実行する印刷装置12(図1参照)の調整(インクジェットプリンタの調整方法)の動作について、更に詳しく説明をする。図6は、印刷システム10において実行する印刷装置12の調整の動作の一例を示すフローチャートである。上記においても説明をしたように、印刷システム10において、印刷装置12の調整を行う場合、媒体に対して調整パターンを印刷装置12に印刷させる(S102)。本例において、ステップS102の動作は、パターン印刷段階の動作の一例である。また、本例のステップS102において、印刷装置12は、MPC18(図1参照)の指示に応じて、調整パターンの印刷を実行する。この場合、MPC18は、例えば、印刷装置12の構成に合わせて動的に生成された調整パターンを印刷装置12に印刷させる。また、本例において、MPC18は、このような調整パターンとして、実行しようとする調整の項目に合わせて生成された調整パターンを印刷装置12に印刷させる。また、これにより、MPC18は、例えば、実行しようとする調整の項目に応じて、その調整の項目に対応するパターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させる。例えば、画像解析装置16(図1参照)において、画像解析ツールのドット位置解析用の調整項目ライブラリ306(図3参照)での画像の解析を行う場合、MPC18は、印刷装置12に、ズレ量検知用パターン400を含む調整パターンを印刷させる。
【0074】
また、この場合、例えば図5等を用いて上記においても説明をしたように、複数の調整の項目のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のパターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させることが考えられる。例えば、MPC18は、このような調整パターンとして、ズレ量検知用パターン及び取付状態検知用パターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させる。この場合、取付状態検知用パターンについては、例えば、取付状態を検知するためのパターン等と考えることができる。取付状態については、例えば、印刷装置12のヘッド部102(図2参照)において、キャリッジ200(図2参照)に対してそれぞれのインクジェットヘッド202(図2参照)が取り付けられている状態等と考えることができる。また、本例において、取付状態は、画像解析ツールにおける複数の調整項目ライブラリ306によって実行する様々な解析のうち、機械的な調整(メカ調整)に関する解析であるヘッド傾き解析、ヘッド前後解析、及びヘッドスタガ解析で検知する状態である。この場合、取付状態検知用パターンについて、例えば、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、及びヘッドスタガ解析用のうちの少なくともいずれかの調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターン等と考えることができる。また、この場合、画像解析装置16では、取付状態として、例えば、インクジェットヘッドの傾き、所定の前後方向における位置のズレ、及びスタガ配置での位置のズレの少なくともいずれかを検知する。
【0075】
更に、ステップS102において、MPC18は、実行しようとする調整の項目に応じて、副走査移動量検知用パターンや電圧検知用パターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させてもよい。この場合、副走査移動量検知用パターンについては、例えば、副走査移動量を検知するためのパターン等と考えることができる。電圧検知用パターンについては、例えば、印刷装置12における複数のインクジェットヘッド202のそれぞれが受け取る駆動信号の電圧を検知するためのパターン等と考えることができる。また、本例において、副走査移動量検知用パターンについては、例えば、フィード解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターン等と考えることができる。電圧検知用パターンについては、例えば、ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306での解析に用いるパターン等と考えることができる。
【0076】
また、ステップS102において、印刷装置12は、媒体に対し、例えば、A4サイズ以下の印刷範囲内へ調整パターンを印刷する。このように構成すれば、例えば、スキャナ14(図1参照)として、市販の安価なPC用スキャナ等を適切に用いることができる。また、本例において、印刷装置12は、台部104で保持可能な最大サイズの媒体よりも小さなA4サイズ以下の媒体に対して、調整パターンを印刷する。より具体的に、本例のステップS102において、印刷装置12は、例えば、A4サイズの媒体に対して、調整パターンを印刷する。このような動作については、例えば、印刷装置12における印刷可能範囲よりも狭い印刷範囲内に調整パターンを印刷する動作の一例等と考えることもできる。この場合、印刷装置12における印刷可能範囲については、例えば、印刷装置12における台部104(図2参照)上で印刷が可能な最大の範囲等を考えることができる。
【0077】
ここで、上記においても説明をしたように、スキャナ14としては、例えば、読み取りの解像度が2400dpi以上のスキャナを用いることが考えられる。そして、この場合、調整パターンのサイズが例えばA3サイズ以上等に大きくなると、スキャナ14での画像の読み取りで生成されるファイルのサイズが極めて大きくなることが考えられる。そのため、この点でも、調整パターンを印刷する範囲について、A4サイズ以下にすることが好ましい。また、この場合、実行しようとする調整の項目の種類や、項目の数によっては、A4以下のサイズの1枚の媒体に対して必要な調整パターンの全てを印刷することが難しいこと等も考えられる。そのため、このような場合には、必要に応じて、例えば、A4サイズ以下の媒体を複数枚用いてもよい。この場合、MPC18は、複数の媒体のそれぞれに対し、印刷装置12に調整パターンを印刷させる。また、この場合、それぞれの媒体に印刷されるパターンについて、調整パターンの一部と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、1枚のA4サイズの媒体では必要な全てのパターンを印刷できない場合等にも、複数の媒体に分けて、必要な全てのパターンを印刷装置12に印刷させることができる。
【0078】
また、ステップS102において印刷装置12に調整パターンを印刷させた後には、調整パターンが印刷された媒体をスキャナ14で読み取ることで、調整パターンを示すパターン画像を生成し(S104)、画像解析装置16において、パターン画像に対する解析を行う(S106)。本例において、ステップS104の動作は、パターン読取段階の動作の一例である。ステップS106の動作は、解析段階の動作の一例である。また、ステップS106の動作は、コンピュータに解析処理を行わせる動作の一例でもある。ステップS104でのスキャナ14による画像の読み取りについては、例えば、スキャナ14で画像を読み取る公知の方法と同一又は同様に行うことが考えられる。また、ステップS106において、画像解析装置16は、パターン画像に対する解析として、所定の画像処理及び演算等を実行する。また、これにより、上記においても説明をしたように、画像解析装置16は、例えば、印刷装置12の動作の制御に用いる補正値の算出や、印刷装置12におけるインクジェットヘッドの状態を示す数値の算出を行う。
【0079】
また、ステップS106において補正値の算出等を行った後には、補正値に基づき、データベース20(図1参照)に記憶されている制御設定値の更新を行う(S108)。本例において、ステップS108の動作は、設定値更新段階の動作の一例である。設定値更新段階については、例えば、解析段階での解析の結果に基づいて制御設定値の少なくとも一部を更新する段階等と考えることができる。また、本例において、画像解析装置16は、ステップS106での解析の結果に基づき、補正値データ及び解析結果ファイルを出力する。そして、例えば、上記においても説明をしたように、データベース20が記憶する情報を管理するプログラムを画像解析装置16又は他のコンピュータで実行することで、補正値データに基づき、補正値をデータベース20に記憶させる。本例によれば、例えば、スキャナ14によって調整パターンを読み取り、所定の画像処理及び演算を画像解析装置16で実行することで、印刷装置12の調整に用いる補正値の算出等を適切に行うことができる。また、算出した補正値をデータベース20に記憶させることで、例えば、印刷装置12の調整を容易かつ適切に行うことができる。
【0080】
また、上記において説明をしたステップS102~S108の動作のうち、ステップS106での解析の動作については、例えば、図7に示すように行うことが考えられる。図7は、図6におけるステップS106での画像解析装置16(図1参照)の動作の一例を示すフローチャートであり、ステップS106において画像解析装置16が算出する数値や画像解析装置16の動作の例について、より具体的に示す。上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、スキャナ14(図1参照)での調整パターンの読み取りによって生成されるパターン画像に対する画像処理を行うことでパターン画像に対する画像解析を行うコンピュータであり、画像解析ツールにおける様々な調整項目ライブラリ306(図3参照)によってパターン画像の解析を行うことで、補正値の算出や解析結果ファイル(解析レポート)の生成を行う。また、図7においては、図3に具体的に示した複数の調整項目ライブラリ306の全てを用いてパターン画像の解析を行う場合の画像解析装置16の動作の例を図示している。画像解析装置16の動作の変形例においては、印刷システム10で実行する調整の項目等に応じて、図7に示す動作の一部のみを実行してもよい。
【0081】
また、図7のフローチャートに示す動作において、画像解析装置16は、パターン画像及び機種パラメータに基づき、画像解析ツールにおけるヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、ヘッドスタガ解析用、ヘッド電圧解析用、ドット位置解析用、及びフィード解析用のそれぞれの調整項目ライブラリ306での解析を実行する。より具体的に、この場合、画像解析装置16は、先ず、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306により、ドット位置のズレ量に関する解析を行う(S202)。また、本例のステップS202において、画像解析装置16は、パターン画像におけるズレ量検知用パターンを示す部分に基づき、例えば図4等を用いて上記において説明をした画像処理を行うことで、媒体上に形成されるインクのドットの位置について、ドット位置ズレ量を検知する。また、ステップS202での動作に続いて、画像解析装置16は、フィード解析用の調整項目ライブラリ306により、副走査移動量(フィード量)に関する解析を行う(S204)。また、本例のステップS204において、画像解析装置16は、パターン画像における副走査移動量検知用パターンを示す部分に基づいて実行する画像処理によって、副走査移動量のズレ量である副走査ズレ量を検知する。本例において、ステップS202及びS204の動作は、ズレ量検知段階の動作の一例である。また、ステップS202及びS204の動作は、例えば、コンピュータにズレ量検知処理を行わせる動作の一例でもある。
【0082】
また、ステップS204での動作に続いて、画像解析装置16は、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、及びヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306により、キャリッジ200(図2参照)に対する複数のインクジェットヘッド202(図2参照)の取付状態に関する解析を行う(S206)。この場合、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、及びヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306については、例えば、取付状態を検知するための調整項目ライブラリ306等と考えることができる。また、本例のステップS206において、画像解析装置16は、パターン画像における取付状態検知用パターンを示す部分に基づいて実行する画像処理によって、取付状態を示す数値である取付状態数値を算出する。また、より具体的に、この場合、画像解析装置16は、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、及びヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306により、キャリッジ200に対するインクジェットヘッド202の取付角度の解析、前後方向となる副走査方向でのそれぞれのインクジェットヘッド202の位置の解析、及びスタガ配置において隣接するインクジェットヘッド202の間での前後方向における位置関係の解析を行う。また、取付状態数値として、これらの解析の結果を示す数値を算出する。更に、ステップS206での動作に続いて、画像解析装置16は、ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306により、それぞれのインクジェットヘッド202へ供給される駆動信号の電圧の解析を行う(S208)。また、本例のステップS208において、画像解析装置16は、パターン画像における電圧検知用パターンを示す部分に基づいて実行する画像処理によって、複数のインクジェットヘッド202のそれぞれが受け取る駆動信号の電圧に対応する数値である電圧対応数値を算出する。本例において、ステップS206及びS208の動作は、数値算出段階の動作の一例である。また、ステップS206及びS208の動作は、コンピュータに数値算出処理を行わせる動作の一例でもある。
【0083】
また、ステップS202~S208での動作に続いて、画像解析装置16は、解析の結果に対する判定を行う(S210)。本例において、ステップS210の動作は、判定段階の動作の一例である。また、ステップS210の動作は、コンピュータに判定処理を行わせる動作の一例でもある。本例のステップS210において、画像解析装置16は、ステップS202での解析の結果に基づき、ドット位置ズレ量の基準の数値範囲内にドット位置ズレ量が入っているか否かを判定する。ドット位置ズレ量の基準の数値範囲については、例えば、ドット位置ズレ量に対して予め設定された基準の数値範囲等と考えることができる。また、画像解析装置16は、ステップS204での解析の結果に基づき、副走査移動量の基準の数値範囲内に副走査移動量が入っているか否かを判定する。副走査移動量の基準の数値範囲については、例えば、副走査移動量に対して予め設定された基準の数値範囲等と考えることができる。また、画像解析装置16は、ステップS206での解析の結果に基づき、取付状態数値の基準の数値範囲内に取付状態数値が入っているか否かを判定する。取付状態数値の基準の数値範囲については、例えば、取付状態数値に対して予め設定された基準の数値範囲等と考えることができる。また、この場合、画像解析装置16は、例えば、インクジェットヘッド202の取付角度、前後方向でのそれぞれのインクジェットヘッド202の位置、及びスタガ配置において隣接するインクジェットヘッド202の間での前後方向における位置関係のそれぞれについて、取付状態数値が基準の数値範囲内に入っているか否かを判定する。また、画像解析装置16は、ステップS208での解析の結果に基づき、電圧対応数値の基準の数値範囲内に電圧対応数値が入っているか否かを判定する。電圧対応数値の基準の数値範囲については、例えば、電圧対応数値に対して予め設定された基準の数値範囲等と考えることができる。
【0084】
また、ステップS210で解析結果に対する判定を行った後、画像解析装置16は、少なくとも一部の調整項目ライブラリ306での解析の結果に基づいて実行する演算によって、印刷装置12の動作の制御に用いる補正値を算出する(S212)。本例において、ステップS212の動作は、補正値算出段階の動作の一例である。また、ステップS212の動作は、コンピュータに補正値算出処理を行わせる動作の一例でもある。本例のステップS212において、画像解析装置16は、ステップS202及びS204で実行した解析の結果に基づき、ステップS202で検知したドット位置ズレ量に対応する補正値であるドット位置補正値と、ステップS204で検知した副走査ズレ量に対応する補正値である副走査補正値とを算出する。この場合、ドット位置補正値及び副走査補正値については、例えば、ドット位置ズレ量及び副走査ズレ量を低減するように印刷装置12の動作を制御するための補正値等と考えることができる。また、ドット位置補正値としては、例えば、ノズル列からインクを吐出するタイミングを調整するための補正値を算出することが考えられる。副走査補正値としては、副走査移動量を調整するための補正値を算出することが考えられる。また、補正値を算出した後、画像解析装置16は、所定の書式で補正値を示すファイルを生成することで、補正値データを出力する(S214)。上記においても説明をしたように、補正値データは、補正値を示すファイルである。本例において、画像解析装置16は、ステップS212で算出されるドット位置補正値及び副走査補正値を少なくとも示す補正値データを出力する。
【0085】
また、上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、画像解析装置16において実行する解析の結果を示す出力として、更に、ステップS202~S212において実行した解析、判定、及び補正値の算出の結果等に基づき、解析結果ファイル(解析レポート)を生成する(S216)。本例において、ステップS216の動作は、解析結果ファイル生成段階の動作の一例である。また、ステップS216の動作は、コンピュータに解析結果ファイル生成処理を行わせる動作の一例でもある。ステップS216において、画像解析装置16は、例えば、解析レポートとして、印刷装置12に対して行う複数の調整項目について、各評価項目の判定結果、判定の基準数値、及び解析結果等を示す解析結果ファイルを生成する。また、本例において、画像解析装置16は、調整パターンの印刷に用いた印刷装置12を識別する識別情報を示す解析レポートを生成する。また、より具体的に、解析レポートは、例えば、ドット位置ズレ量に関し、印刷装置12における複数のノズル列のそれぞれに対して、ステップS210でのドット位置ズレ量に対する判定の結果と、ドット位置ズレ量の基準の数値範囲と、ドット位置ズレ量とを示す。また、解析レポートは、例えば、副走査移動量に関し、ステップS210での副走査移動量に対する判定の結果と、副走査移動量の基準の数値範囲と、副走査移動量とを示す。また、解析レポートは、例えば、取付状態に関し、それぞれのインクジェットヘッド202に対して、ステップS210での取付状態数値に対する判定の結果と、取付状態数値の基準の数値範囲と、取付状態数値とを示す。更に、解析レポートは、例えば、駆動信号の電圧に関し、それぞれのインクジェットヘッド202に対して、ステップS210での電圧対応数値に対する判定の結果と、電圧対応数値の基準の数値範囲と、電圧対応数値とを示す。
【0086】
以上の動作により、本例において、画像解析装置16は、図6におけるステップS106での動作を完了する。また、上記においても説明をしたように、本例の印刷システム10では、ステップS106での動作に続いて、画像解析装置16又は他のコンピュータにより、データベース20に記憶されている制御設定値の更新を行う。より具体的に、本例において、画像解析装置16又は他のコンピュータは、ステップS214で出力される補正値データに基づき、ドット位置補正値及び副走査補正値等の補正値について、制御設定値の少なくとも一部として、データベース20に記憶させる。また、これにより、画像解析装置16において実行した解析の結果に基づき、制御設定値の少なくとも一部を更新する。このように構成すれば、例えば、画像解析装置16で実行する画像処理及び演算によって得られる補正値について、印刷装置12の動作に適切に反映させることができる。また、これにより、例えば、印刷装置12の調整を適切に行うことができる。また、上記のように、本例では、ドット位置ズレ量及び副走査移動量等の検知や、ドット位置補正値及び副走査補正値等の算出について、スキャナ14で読み取った調整パターンに基づき、ユーザによる手作業等を要することなく、画像解析装置16での画像処理及び演算によって行う。そのため、本例によれば、これらの補正値に対応する調整について、例えば、調整の工数を削減することや、調整を行うユーザ(調整者)の個人差によって調整の結果に差がでること等を適切に防止することができる。
【0087】
また、上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、補正値データに加えて、解析レポート(解析結果ファイル)を生成する。このように構成した場合、解析レポートを利用することで、例えば、印刷装置12の状態をより容易かつ適切に管理することができる。また、より具体的に、この場合、調整パターンの印刷に用いた印刷装置12を識別する識別情報を示す解析レポートを生成することで、例えば、複数の印刷装置12を使用する場合等において、それぞれの印刷装置12の状態をより適切に管理することができる。また、解析レポートについては、例えば、印刷装置12に対して所定の仕様範囲に合わせた調整(仕様範囲内のレベルへの調整)が行われていることを示す証明(エビデンス)として用いること等も考えられる。
【0088】
また、このような解析レポートを用いることで、例えば、補正値を自動的にデータベース20に記憶させる方法ではなく、ユーザの手作業等で印刷装置12の調整を行う調整項目等についても、より適切に印刷装置12の調整を行うことが可能になる。より具体的に、本例において、インクジェットヘッド202の取付状態の調整については、例えばユーザの手作業での調整を行うことが考えられる。そして、この場合、例えば、上記のようにそれぞれのインクジェットヘッド202の取付状態の適否を判定し、その結果を示す解析レポートを生成することで、それぞれのインクジェットヘッド202の取付状態の適否について、客観的な数値を基準にして、容易かつ適切に判定することができる。そのため、本例によれば、例えば、印刷装置12に対して行う調整の少なくとも一部について、数値基準で調整レベルの適否を判定して、調整レベルを数値的に管理することができる。また、これにより、例えば、調整を行う調整者の個人差によって調整の結果に差がでること等をより適切に防止することができる。また、本例においては、例えばそれぞれのインクジェットヘッド202に供給される駆動信号の電圧の調整についても、ユーザの手作業での調整を行うことが考えられる。そして、本例においては、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202が受け取る駆動信号の電圧についても、数値によって適切に確認することができる。また、これにより、例えば、駆動信号の電圧の調整を行う場合等に、数値基準で調整レベルの適否を適切に判定することができる。
【0089】
更に、本例において、解析レポートは、上記のように、ドット位置ズレ量及び副走査移動量のように補正値の算出の対象となる調整項目についても、判定の結果、基準の数値範囲、及び調整パターンから算出される数値を示している。そして、この場合、ドット位置ズレ量や副走査移動量についても、単に補正値をデータベース20に記憶させて調整を行うのではなく、調整レベルを数値的に管理することができる。そして、この場合、例えば解析レポートを調整のエビデンス等と用いる場合等において、印刷装置12の状態をより適切に示すこと等も可能になる。
【0090】
このように、本例によれば、例えば、印刷装置12に対する調整を容易かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、印刷装置12において、高速な印刷や高解像度での印刷等を、より適切に行うことが可能になる。また、より具体的に、本例によれば、例えば、幅の広い媒体に対して高速に印刷を行う場合や、被浸透性の媒体に対して高画質な印刷を行う場合等のような、それぞれのノズル列からのインクの吐出のタイミングがあっていることが特に重要な場合等にも、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。また、本例においては、スキャナ14での画像の読み取りによって生成したパターン画像に対する画像処理を行い、補正値を自動的にデータベース20に記憶させることで、それぞれのインクジェットヘッド202にインクを吐出させるタイミングの調整等を短時間で適切に行うこと等も可能になる。
【0091】
また、印刷システム10及び印刷装置12の各部の構成や動作については、上記において説明をした具体的な構成や動作に限らず、様々な変更を行うことも可能である。例えば、図7に示すフローチャートの動作について、必要とされる調整項目に応じて、一部の調整項目に対応する解析のみを行うように変形をしてもよい。また、それぞれの調整項目に対応する解析を行う順番について、上記において説明をした順番と異ならせてもよい。また、複数の調整項目に対応する解析について、同時に行うこと等も考えられる。また、画像解析装置16について、例えば、複数のコンピュータで構成すること等も考えられる。
【0092】
また、様々な解析で用いるためのパターンについても、印刷システム10や印刷装置12の各部の構成等に合わせて、適宜変更することが考えられる。より具体的に、上記においても説明をしたように、印刷装置12におけるインクジェットヘッド202としては、例えば、それぞれのノズルから吐出するインクの容量を複数段階で変更可能な構成(以下、多値ヘッドという)を用いること等も考えられる。そして、この場合、例えば、インクの容量毎に、個別の多重線402を含むズレ量検知用パターン400を印刷装置12に描かせることも考えられる。また、この場合、ズレ量検知用パターン400において、それぞれのノズル列毎に、例えば図8に示す構成のパターンを印刷装置12に描かせることが考えられる。
【0093】
図8は、多値ヘッドを用いる場合のズレ量検知用パターン400について説明をする図であり、ズレ量検知用パターン400において一つのノズル列に対応して描くパターンの一例を示す。図8に示すパターンについては、例えば、ズレ量検知用パターン400の変形例の一部を構成するパターン等を考えることもできる。図8に示すパターンを用いる場合、媒体に対して調整パターンを印刷装置12(図1参照)に印刷させる動作では、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列について、複数段階のインクの容量毎に多重線をインクジェットプリンタに描かせる。より具体的に、図8では、3段階の容量でインクの容量を変更可能なインクジェットヘッド202を用いる場合について、一つのノズル列に対応して印刷装置12に描かせるパターンの例を示している。この場合、インクジェットヘッド202は、互いに異なる3段階の容量でインクの吐出を行うことで、それぞれのインクの容量に応じたインクのドットとして、小サイズのドット422S、中サイズのドット422M、及び大サイズのドット422Lを媒体上に形成する。また、インクの容量毎の多重線としては、図中に示すように、複数の多重線402S、M、Lを印刷装置12に描かせる。
【0094】
この場合、多重線402Sは、基準ノズル線412及び調整ノズル線414Sを含む。多重線402Mは、基準ノズル線412及び調整ノズル線414Mを含む。また、多重線402Lは、基準ノズル線412及び調整ノズル線414Lを含む。また、印刷装置12は、多重線402S、M、Lのそれぞれにおける基準ノズル線412として、基準のノズル列により、複数段階のインクの容量のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ線を描く。基準ノズル線412については、例えば、図中に示すドット422S、ドット422M、及びドット422Lのような、複数種類のサイズのインクのドットを用いて描かれる線等と考えることができる。また、印刷装置12は、調整ノズル線414S、M、Lのそれぞれとして、基準のノズル列以外のノズル列により、1種類のインクの容量に対応するサイズのインクのドットのみが並ぶ線を描く。より具体的に、図8に示す場合において、多重線402Sにおける調整ノズル線414Sは、小サイズのドット422Sのみが並ぶ線である。また、多重線402Mにおける調整ノズル線414Mは、中サイズのドット422Mのみが並ぶ線である。多重線402Lにおける調整ノズル線414Lは、大サイズのドット422Lのみが並ぶ線である。このように構成すれば、例えば、インクの容量毎にドット位置ズレ量を検知するためのパターンを印刷装置12に適切に印刷させることができる。また、この場合、画像解析装置16(図1参照)では、インクの容量毎に、ドット位置ズレ量の検知や、ドット位置補正値の算出等を行う。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッド202として多値ヘッドを用いる場合において、印刷装置12の調整等をより適切に行うことができる。
【0095】
また、図8に示すパターンでは、インクの容量毎の多重線402S、M、Lに加えて、多重線402S、M、Lにおける調整ノズル線414S、M、Lを描くノズル列により、混合線416を更に描いている。この場合、混合線416は、調整ノズル線414S、M、Lを描くノズル列によって描かれる、複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ線である。混合線416については、例えば、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列で描かれる線であり、複数段階のインクの容量のそれぞれにそれぞれが対応する複数種類のサイズのインクのドットが並ぶ線等と考えることができる。また、この場合、例えば、基準のノズル列以外のそれぞれのノズル列により、インクのドットのサイズの種類よりも一つ多い4本の線を描かせていると考えることもできる。このような混合線416を印刷装置12に描かせることで、例えば、同じノズル列で形成するインクのドット422S、M、Lについて、サイズの違いの影響等をより適切に確認することができる。また、混合線416は、例えば、同じサイズのドットが複数個連続して副走査方向に並ぶように、複数種類のサイズのドットを含む。このように構成すれば、例えば、インクのドットのサイズの違いの影響等をより適切に確認することができる。
【0096】
また、印刷システム10及び印刷装置12等においては、その他の点においても、様々に変更を行うことができる。例えば、上記においては、主に、印刷装置12で媒体に印刷した調整パターンの読み取りについて、スキャナ14を用いる構成及び動作について、説明をした。この場合、上記においても説明をしたように、例えば、画像を読み取るための特別な構成等を印刷装置12に持たせることなく、容易かつ適切に調整パターンの読み取りを行うことができる。また、例えば、市販の安価なPC用スキャナ等を用いること等も可能になる。しかし、印刷システム10の変形例においては、例えば、スキャナ14以外の画像読み取り装置を用いて、調整パターンの読み取りを行うこと等も考えられる。例えば、画像を読み取るための構成を備えている印刷装置12を用いる場合等には、この構成で調整パターンの読み取りを行うこと等も考えられる。また、調整に求められる精度等によっては、調整パターンの読み取りについて、デジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能を用いて行うこと等も考えられる。
【0097】
また、上記のように、本例において、印刷装置12は、インクジェットプリンタである。この場合、印刷装置12について、例えば、媒体に対してインクを吐出することで2次元(2D)の画像を描く構成等と考えることができる。印刷装置12の変形例においては、印刷装置12として、例えば、立体的な造形物を造形する3Dプリンタ(3D印刷装置)等を用いることも考えられる。この場合、印刷装置12に対する調整を行う場合にのみ印刷対象の媒体を用いて、媒体上に2次元の画像を描く動作を印刷装置12に行わせることが考えられる。このように構成した場合も、印刷装置12の調整を適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えばインクジェットプリンタの調整方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0099】
10・・・印刷システム、102・・・ヘッド部、104・・・台部、106・・・Yバー部、112・・・主走査駆動部、114・・・副走査駆動部、116・・・駆動信号出力部、12・・・印刷装置、120・・・制御部、14・・・スキャナ、16・・・画像解析装置、18・・・MPC、20・・・データベース、200・・・キャリッジ、202・・・インクジェットヘッド、212・・・ノズル列、302・・・解析ツール本体、304・・・パターン解析ライブラリ、306・・・調整項目ライブラリ、308・・・レポート作成ライブラリ、400・・・ズレ量検知用パターン、402・・・多重線、412・・・基準ノズル線、414・・・調整ノズル線、416・・・混合線、422・・・ドット、50・・・媒体、502・・・スキャナセットマーク、504・・・傾き補正線、506・・・トンボ、508・・・ヘッド毎パターン部、510・・・パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8