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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088796
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】乾燥食肉製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/40 20230101AFI20230620BHJP
   A23B 4/044 20060101ALN20230620BHJP
【FI】
A23L13/40
A23B4/044 503A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203753
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】白須 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亘
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC04
4B042AC09
4B042AC10
4B042AD39
4B042AE03
4B042AE05
4B042AG03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK06
4B042AK10
4B042AK13
4B042AK20
4B042AP02
4B042AP16
4B042AP17
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することにより、乾燥食肉製品の市場拡大を図ることである。
【解決手段】上記課題を解決するために、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、糖質が0.5質量%未満であることを特徴とする、乾燥食肉製品を提供する。本発明によれば、食後の血糖値の上昇量を低減することができるため、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することができる。また、本発明により、乾燥食肉製品に健康的なイメージを付加し、新たな消費者層を掘り起こすことにより市場の増大を図ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、糖質の含有量が0.5質量%未満であることを特徴とする、乾燥食肉製品。
【請求項2】
前記食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質を含有することを特徴とする、請求項1に記載の乾燥食肉製品。
【請求項3】
前記原料タンパク質は、コラーゲンであることを特徴とする、請求項2に記載の乾燥食肉製品。
【請求項4】
非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、前記食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質としてコラーゲンを含有することを特徴とする、乾燥食肉製品。
【請求項5】
非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品の製造方法であって、糖質の含有量が0.5質量%未満であることを特徴とする、乾燥食肉製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライソーセージなどの非単一肉からなる食肉原料を含有する乾燥食肉製品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥食肉製品とは、食肉を乾燥させることで、保存性を高め、独特の風味や食感を付与した食肉製品をいい、ドライソーセージ、セミドライソーセージ、ビーフジャーキー等を例示することができる。中でも、サラミ、カルパス等のドライソーセージは、保存性が高く、独特の硬い食感を有し、おやつや酒のつまみ等として広く食されている。
乾燥食肉製品では、食肉原料に副原料を添加することにより、様々な風味の乾燥食肉製品が開発されている。例えば、特許文献1には、食肉原料に対して、糖類4.5質量%、食塩2.2質量%、香辛料0.8質量%などの副原料を含有する乾燥食肉製品が開示されている。また、特許文献2には、食肉原料に対して、ブドウ糖1質量%、馬鈴薯澱粉2質量%、食塩2質量%などの副原料を含有する乾燥食肉製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-92605号公報
【特許文献2】特開平4-316464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥食肉製品は、おやつや酒のおつまみとして提供されるため、健康的なイメージを持たれるような食品ではなくても消費者の需要がある。しかしながら、最近の健康志向の高まりから、乾燥食肉製品の市場の縮小が懸念される。
本発明の課題は、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することにより、乾燥食肉製品の市場拡大を図ることである。
【0005】
また、本発明の別の観点では、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品は、保存中に脂肪が漏出し、包材に脂肪が付着して見た目が悪くなるという問題や、風味が変わってしまうという問題がある。
そのため、本発明の別の課題としては、保存中の脂肪の漏出率を低減された乾燥食肉製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、食事における糖質制限が食後の血糖値の上昇量を低減するという点に着目し、糖質の含有量を0.5質量%未満に低減することにより、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品が得られるという知見に至り、本発明を完成した。
【0007】
また、上記別の課題について鋭意検討した結果、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品において、前記食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質としてコラーゲンを含有することにより、保存中の脂肪の漏出率を低減された乾燥食肉製品が得られるという知見に至り、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の乾燥食肉製品及びその製造方法である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の乾燥食肉製品は、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、糖質の含有量が0.5質量%未満であることを特徴とするものである。
本発明の乾燥食肉製品によれば、糖質の含有量が0.5質量%未満であることから、食後の血糖値の上昇量を低減することができる。これにより、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することができる。
【0009】
本発明の乾燥食肉製品の一実施態様としては、食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質を含有することを特徴とする。
この特徴によれば、保存中の脂肪の漏出率が低減された乾燥食肉製品を提供することができる。保存中の脂肪の漏出率を低減することにより、保存中の風味や状態の変化が抑制された乾燥食肉製品を提供することができる。また、この特徴によれば、乾燥食肉製品の硬さが向上し、乾燥食肉製品として適切な噛み応えのある食感を得ることができる。
【0010】
本発明の乾燥食肉製品の一実施態様としては、原料タンパク質は、コラーゲンであることを特徴とする。
この特徴によれば、保存中の脂肪の漏出率が低減された乾燥食肉製品を提供することができるという効果や、適切な噛み応えのある食感を有する乾燥食肉製品を提供することができるという効果を一層発揮することができる。
【0011】
上記課題を解決するための本発明の乾燥食肉製品は、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、前記食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質としてコラーゲンを含有することを特徴とするものである。
本発明の乾燥食肉製品によれば、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品において、保存中の脂肪の漏出率が低減された乾燥食肉製品を提供することができる。保存中の脂肪の漏出率を低減することにより、保存中の風味や状態の変化が抑制された乾燥食肉製品を提供することができる。また、この特徴によれば、乾燥食肉製品の硬さが向上し、乾燥食肉製品として適切な噛み応えのある食感を得ることができる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の乾燥食肉製品の製造方法は、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品の製造方法であって、糖質の含有量が0.5質量%未満であることを特徴とする。
本発明の乾燥食肉製品の製造方法によれば、糖質の含有量が0.5質量%未満であることから、食後の血糖値の上昇量を低減することができる。これにより、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食後の血糖値の上昇量を低減することができるため、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することができる。また、本発明により、乾燥食肉製品に健康的なイメージを付加し、新たな消費者層を掘り起こすことにより市場の増大を図ることができる。
【0014】
また、本発明によれば、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品において、保存中の脂肪の漏出率が低減された乾燥食肉製品を提供することができる。保存中の脂肪の漏出率を低減することにより、保存中の風味や状態の変化が抑制された乾燥食肉製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の乾燥食肉製品及びその製造方法について詳細に説明する。なお、実施態様に記載する事項については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これらに限定されるものではない。また、物の発明についての記載は、実質的に同一とみなせる方法の発明(製造方法又は単純方法)の説明に置き換えるものとする。
また、本発明の乾燥食肉製品の技術的事項に関する説明は、上記の別の観点における課題により特定された乾燥食肉製品の発明にも適用されるものである。
【0016】
[乾燥食肉製品]
本発明の乾燥食肉製品は、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であり、例えば、サラミやカルパスのようなドライソーセージ等が挙げられる。
「乾燥食肉製品」とは、食品衛生法に基づく食肉製品の規格基準に準ずるものであり、乾燥させた食肉製品であって、乾燥食肉製品として販売するものである。
「非単一肉からなる食肉原料」とは、肉塊を細断又はミンチ状にした食肉原料の意味である。
【0017】
本発明の乾燥食肉製品の一実施態様としては、糖質の含有量が0.5質量%未満であることを特徴とするものである。この特徴によれば、糖質の含有量を0.5質量%未満に低減することにより、食後の血糖値の上昇量を低減することができるため、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することができる。
糖質とは、炭水化物のうち、食物繊維ではないものであり、その含有量は、食品表示基準に定義されるとおり、「糖質の含有量=炭水化物の含有量-食物繊維の含有量」で表される。なお、各栄養成分の含有量は、食品表示基準に規定された公定法により測定することができる。
【0018】
また、本発明の乾燥食肉製品の別の一実施態様としては、食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質としてコラーゲンを含有することを特徴とするものである。この特徴によれば、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品において、保存中の脂肪の漏出率が低減された乾燥食肉製品を提供することができる。また、保存中の脂肪の漏出率を低減することにより、保存中の風味や状態の変化が抑制され、安定性に優れた乾燥食肉製品を提供することができる。また、乾燥食肉製品の硬さが向上し、乾燥食肉製品として適切な噛み応えのある食感を得ることができる。
【0019】
本発明の乾燥食肉製品には、非単一肉からなる食肉原料のほか、脂肪、原料タンパク質、食塩、発色剤(亜硝酸塩等)、調味料(香辛料、アミノ酸、有機酸等)、水などが含まれる。その他、リン酸塩、保存料(ソルビン酸塩等)、酸化防止剤(アスコルビン酸塩等)、甘味料、着色料、品質改良剤(pH調整剤、乳化剤等)などを添加してもよい。また、本発明の効果を奏する範囲において、糖類、澱粉、糖アルコールなどの糖質を添加してもよい。
【0020】
(食肉原料)
本発明の乾燥食肉製品に用いる食肉原料の動物種は、特に限定されないが、例えば、豚、牛、羊、馬などの家畜、鶏、鴨、七面鳥、アヒルなどの家禽、猪、鹿、熊などの野生鳥獣、サケ、サンマ、マグロなどの魚類、イカ、タコなどの魚介類、クジラなどの海洋哺乳類等でもよい。好ましくは豚肉、牛肉、鶏肉である。これらの食肉原料は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0021】
本発明の乾燥食肉製品に用いる食肉原料の形状は、「非単一肉からなる食肉原料」であり、肉塊を細断又はミンチ状にした食肉原料である。食肉原料中の肉塊の大きさは、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは8mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下である。なお、肉塊の大きさの測定は、所定の目開きの篩を通過すれば、当該目開き以下の大きさであるとする。
【0022】
本発明の乾燥食肉製品中における食肉原料の含有量は、特に制限されないが、例えば、50~80質量%である。食肉原料の含有量の上限値は、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
【0023】
(脂肪)
脂肪は、動物由来の固形脂であり、添加することにより乾燥食肉製品のジューシーさを向上することができる。脂肪の特性は、常温(20℃)で固体であり、かつ、口中で軟化又は溶解するものである。脂肪の融点は、例えば20~45℃である。脂肪の融点の下限値は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは35℃以上である。脂肪の融点の上限値は、好ましくは40℃以下である。脂肪の融点が高い場合には、保存時の脂肪の漏出が抑制され、保存安定性に優れる乾燥食肉製品を提供することができる。一方、脂肪の融点が低い場合には、喫食時に油脂のジューシーさを感じることができる。
なお、脂肪の融点の測定方法は、基準油脂分析試験法の「融点(上昇)」に準じて測定することができる。
【0024】
脂肪の動物種は特に制限されないが、例えば、豚、牛、鶏などが挙げられ、風味や、入手の容易さ、適切な融点という観点から、好ましくは豚(ラード)、牛(牛脂)である。脂肪の形状としては、食肉原料と混合できればよく、例えば、食肉の脂肪部を細断又はミンチ状としたものや、精製油や、エステル交換処理や水素添加処理された加工油脂等でもよい。
【0025】
本発明の乾燥食肉製品中における脂肪の含有量は、特に制限されないが、例えば、5~50質量%である。脂肪の含有量の下限値は、好ましくは10質量%以上である。脂肪の含有量の上限値は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。脂肪の含有量が少ない場合には、脂肪の漏出率を低減することができる。一方、脂肪の含有量が多い場合には、喫食時のジューシーさを向上することができる。
【0026】
(原料タンパク質)
原料タンパク質は、食肉原料由来のタンパク質以外のタンパク質又はそれらの分解物であり、食肉原料と混合して用いるものである。原料タンパク質の種類は、特に制限されないが、例えば、大豆タンパク質、トウモロコシタンパク質、小麦タンパク質などの植物性タンパク質や、コラーゲン、乳タンパク質、卵タンパク質などの動物性タンパク質が挙げられる。脂肪の漏出率を低減する作用に優れるという観点から、好ましくは、コラーゲンである。
コラーゲンは、豚や牛、魚などの皮や骨から抽出することにより得ることができる。コラーゲンの原料の由来は特に制限されないが、風味などの観点から、豚又は牛の皮から得られたコラーゲンが好ましい。
【0027】
原料タンパク質を添加することにより、本発明の乾燥食肉製品における脂肪の漏出率を低減するという効果を得ることができる。また、糖質の含有量を低減すると脂肪の漏出が多くなるため、糖質の含有量を低減した乾燥食肉製品においては、原料タンパク質の効果が特に発揮される。
【0028】
原料タンパク質による脂肪の漏出率の低減作用は、原料タンパク質の保水性により得られると推察される。原料タンパク質が水分を保持しながら、食肉原料の間に入り込むことにより、脂肪の流れる経路が塞がれるため、脂肪の漏出を抑制すると考えられる。原料タンパク質は、乾燥食肉製品のpHと原料タンパク質の等電点が異なる条件で使用することにより保水性を有する。保水性を向上するという観点から、乾燥食肉製品のpHと原料タンパク質の等電点の差は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上である。
【0029】
また、本発明の乾燥食肉製品では、原料タンパク質を添加することにより、硬さを向上することができる。これにより、乾燥食肉製品として適切な噛み応えのある食感を得ることができる。糖質の含有量を低減すると軟化して食感が悪くなるという現象が認められるため、糖質の含有量を低減した乾燥食肉製品においては、原料タンパク質の効果が特に発揮される。
【0030】
原料タンパク質の分子量は、特に制限されないが、例えば1000以上である。好ましくは5000以上であり、より好ましくは10000以上であり、さらに好ましくは30000以上であり、特に好ましくは50000以上である。分子量が大きい場合、保水された原料タンパク質が大きな物質として脂肪の流れる経路を塞ぐため、脂肪の漏出を抑制するという効果や食感を向上するという効果がより発揮される。
【0031】
本発明の乾燥食肉製品中における原料タンパク質の総含有量は、特に制限されないが、例えば、0.1~30.0質量%である。原料タンパク質の総含有量の下限値は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、特に好ましくは2.0質量%以上である。原料タンパク質の総含有量の上限値は、好ましくは20.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以下であり、さらに好ましくは8.0質量%以下であり、特に好ましくは5.0質量%以下である。原料タンパク質の総含有量が高い場合には、脂肪の漏出を抑制するという効果や食感を向上するという効果がより発揮され、原料タンパク質の総含有量が低い場合には、乾燥食肉製品の食肉の風味が向上するという効果が発揮される。
【0032】
本発明の乾燥食肉製品中におけるコラーゲンの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.1~30.0質量%である。コラーゲンの含有量の下限値は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%以上である。コラーゲンの含有量の上限値は、好ましくは20.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以下であり、特に好ましくは3.0質量%以下である。コラーゲンの含有量が高い場合には、脂肪の漏出を抑制するという効果や食感を向上するという効果がより発揮され、原料タンパク質の含有量が低い場合には、乾燥食肉製品の食肉の風味が向上するという効果が発揮される。
【0033】
食肉原料と原料タンパク質の含有量の比(食肉原料/原料タンパク質)は、特に制限されないが、例えば1~100である。食肉原料と原料タンパク質の含有量の比の下限値は、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上である。食肉原料と原料タンパク質の含有量の比の上限値は、好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは20以下である。当該比が大きい場合には、乾燥食肉製品の風味が向上し、当該比が小さい場合には、脂肪の漏出を抑制するという効果や食感を向上するという効果が一層発揮される。
【0034】
(水分)
本発明の乾燥食肉製品中の水分量は、特に制限されないが、例えば、5~35質量%である。水分量の下限値は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。水分量の上限値は、好ましくは33質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは28質量%以下である。水分量が高い場合には、脂肪の漏出を抑制するという効果や食感を向上するという効果がより発揮され、水分量が低い場合には、保存性に優れるという効果がある。なお、水分量は、乾燥減量法により測定することができる。
【0035】
[乾燥食肉製品の製造方法]
本発明の乾燥食肉製品の製造方法は、上記の乾燥食肉製品を得ることができれば特に制限されないが、例えば、各原料をミキサーで混合して混練物を得る混合工程、混練物をケーシングに充填する充填工程、混練物を加熱する熱処理工程、及び、混練物を乾燥する乾燥工程を備える。また、乾燥処理の前又は後に、必要に応じて混練物に燻煙処理を行う燻煙工程を設けてもよい。その他、得られた乾燥食肉製品を所定の大きさにカットするせん断工程を設けてもよい。
【0036】
[乾燥食肉製品の脂肪の漏出防止方法]
本発明の乾燥食肉製品の脂肪の漏出防止方法は、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、前記食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質を含有することを特徴とする。
これにより、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品において、保存中の脂肪の漏出率が低減された乾燥食肉製品を提供することができる。保存中の脂肪の漏出率を低減することにより、保存中の風味や状態の変化が抑制された乾燥食肉製品を提供することができる。
【0037】
[乾燥食肉製品の食感改善方法]
本発明の乾燥食肉製品の食感改善方法は、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品であって、前記食肉原料由来のタンパク質以外の原料タンパク質を含有することを特徴とする。
これにより、非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品において、硬さが向上し、乾燥食肉製品として適切な噛み応えのある食感を得ることができる。
【実施例0038】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1、2、比較例1)
表1に示す配合にて、カルパスを製造した。具体的には、食肉原料及び脂肪を孔径5mmのカットプレートをセットしたグラインダーで処理し、ミンチ状の食肉原料を調製した。次に、表1に記載のすべての原料をミンチ状にした食肉原料と合わせて、ミキサーにより混合し、混練物を得た。得られた混練物を、直径約1.5cmの円筒形状のコラーゲンケーシングに充填し、スモークハウスで50℃~80℃で熱処理をした。次に、乾燥庫内で水分活性が0.87未満となるまで乾燥し、棒状のカルパスを得た。その棒状のカルパスを長さ4cmにカットした。
なお、表1に記載の「コラーゲン」の分子量は、2.5万以上であり、「脂肪(豚)」の融点は、38℃である。
【0039】
<脂肪漏出率>
長さ4cmにカットしたカルパスを、さらに縦に2分割した。カルパス11本分(22片)を、脱酸素剤と共にフィルムパックに包装し、18℃で2日間保管した。保管後にフィルムパックに付着した脂肪の重量を、脂肪の漏出量として測定した。脂肪の漏出量について、以下の式(1)により脂肪漏出率を算出した。
脂肪漏出率(質量%)=(脂肪の漏出量/包装前のカルパスの重量)×100
…式(1)
【0040】
【表1】
【0041】
実施例1、2は、糖質の含有量が0.5質量%未満であり、食後の血糖値の上昇量を低減することができるため、健康的なイメージが付加された乾燥食肉製品を提供することができた。
また、実施例1、2及び比較例1を対比すると、コラーゲンを添加することにより、脂肪漏出率の低下が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の乾燥食肉製品及びその製造方法、乾燥食肉製品の脂肪の漏出防止方法は、ドライソーセージなどの非単一肉からなる食肉原料を含む乾燥食肉製品に好適に利用することができる。