(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088798
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ディスク装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/09 20060101AFI20230620BHJP
G11B 20/10 20060101ALI20230620BHJP
G11B 5/012 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G11B5/09 311A
G11B20/10 311
G11B5/012
G11B5/09 311B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203755
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智和
【テーマコード(参考)】
5D044
5D091
【Fターム(参考)】
5D044BC01
5D044CC04
5D044GK11
5D044GK18
5D091AA10
5D091CC15
5D091HH13
(57)【要約】
【課題】ディスクに記録される情報の信頼性を向上できるディスク装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態によれば、ディスクとヘッドとプリアンプとコントローラとを有するディスク装置が提供される。ヘッドは、ライト電流に応じてディスクに情報をライトする。プリアンプは、ヘッドにライト電流を流す。コントローラは、電流ゼロ制御をプリアンプに行わせることが可能である。電流ゼロ制御は、ライト電流の振幅をゼロに維持する制御である。コントローラは、ライト電流の振幅をゼロに維持する時間をライトデータのパターンに応じて変更可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクと、
ライト電流に応じて前記ディスクに情報をライトするヘッドと、
前記ヘッドに前記ライト電流を流すプリアンプと、
前記ライト電流の振幅をゼロに維持する電流ゼロ制御を前記プリアンプに行わせることが可能であり、前記ライト電流の振幅をゼロに維持する時間をライトデータのパターンに応じて変更可能であるコントローラと、
を備えたディスク装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ライトデータに第1の遅延量を付加して第1の信号を生成し、前記ライトデータのパターンに応じて前記ライトデータに第2の遅延量を付加して第2の信号を生成する
請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記第2の遅延量は、前記第1の遅延量より小さい
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記コントローラは、複数のパターンに対応する複数の候補遅延量のうち前記ライトデータのパターンに対応する候補遅延量を前記第2の遅延量として選択し、前記ライトデータに前記選択された第2の遅延量を付加して前記第2の信号を生成する
請求項2に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記プリアンプは、前記第1の信号に応じて前記ライト電流を生成し、前記第2の信号のエッジタイミングから前記第1の信号の極性反転タイミングまで前記生成されたライト電流の振幅をゼロに維持する
請求項2から4のいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記プリアンプは、
前記第1の信号に応じて前記ライト電流を生成する第1の回路と、
前記電流ゼロ制御を前記第2の信号のエッジタイミングから開始するように前記第1の回路を制御する第2の回路と、
を有し、
前記第1の回路は、前記第1の信号の極性反転タイミングになると前記電流ゼロ制御を解除する
請求項5に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記プリアンプは、
前記第1の信号に応じて前記ライト電流を生成する第1の回路と、
前記第1の信号のレベルと前記第2の信号の状態遷移との組み合わせが第1の組み合わせである場合、前記電流ゼロ制御を前記第2の信号のエッジタイミングから開始するように前記第1の回路を制御し、前記第1の信号のレベルと前記第2の信号の状態遷移との組み合わせが第2の組み合わせである場合、前記電流ゼロ制御を行わないように前記第1の回路を制御する第2の回路と、
を有し、
前記第1の回路は、前記電流ゼロ制御が行われている場合、前記第1の信号の極性反転タイミングになると前記電流ゼロ制御を解除する
請求項5に記載のディスク装置。
【請求項8】
ディスクと、
ライト電流に応じて前記ディスクにライトデータをライトするヘッドと、
前記ヘッドに前記ライト電流を供給し、前記ライト電流の振幅を所定期間の間ゼロに維持可能なプリアンプと、
前記ライトデータのパターンが第1パターンの場合、前記所定期間を第1期間に設定し、前記ライトデータのパターンが前記第1パターンと異なる第2パターンの場合、前記所定期間を前記第1期間と異なる第2期間に設定可能なコントローラと、
を備えたディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリアンプ、ヘッド及びディスクを有するディスク装置では、プリアンプがヘッドにライト電流を流し、ヘッドがライト電流に応じてディスクに情報を記録する。このとき、ディスクに記録される情報の信頼性を向上することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第11031039号明細書
【特許文献2】米国特許第10984822号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、ディスクに記録される情報の信頼性を向上できるディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、ディスクとヘッドとプリアンプとコントローラとを有するディスク装置が提供される。ヘッドは、ライト電流に応じてディスクに情報をライトする。プリアンプは、ヘッドにライト電流を流す。コントローラは、電流ゼロ制御をプリアンプに行わせることが可能である。電流ゼロ制御は、ライト電流の振幅をゼロに維持する制御である。コントローラは、ライト電流の振幅をゼロに維持する時間をライトデータのパターンに応じて変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態にかかるディスク装置の構成を示す図。
【
図3】実施形態におけるMPRZ(Main Pole Relaxation Zone)方式の動作を示す波形図。
【
図4】データパターンごとの電流ゼロ時間とビットエラーレートとの関係(外周領域)を示す図。
【
図5】データパターンごとの電流ゼロ時間とビットエラーレートとの関係(中周領域)を示す図。
【
図6】データパターンごとの電流ゼロ時間とビットエラーレートとの関係(内周領域)を示す図。
【
図7】実施形態におけるRWC及びプリアンプの構成を示す図。
【
図8】実施形態における電流ゼロ制御を示す波形図。
【
図9】実施形態の変形例における電流ゼロ制御の切り替え情報を示す図。
【
図10】実施形態の変形例における電流ゼロ制御の切り替えを示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるディスク装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(実施形態)
実施形態にかかるディスク装置は、プリアンプ、ヘッド及びディスクを有し、プリアンプがヘッドにライト電流を流し、ヘッドがライト電流に応じてディスクに情報を記録するが、ディスクに記録される情報の信頼性を向上するための工夫が施される。
【0009】
例えば、ディスク装置1は、
図1に示すように、ホスト100と通信可能に接続され、ホスト100の外部記憶媒体として機能する。
図1は、ディスク装置1の構成を示す図である。ホスト100は、例えば、コンピュータ等の情報端末である。ディスク装置1は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、光磁気ディスクドライブなどのディスク型の記憶媒体である。
【0010】
ディスク装置1は、ヘッドディスクアセンブリ(HDA)2、ドライバ20、プリアンプ30、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、バッファメモリ90、コントローラ130を有する。ドライバ20は、IC(集積回路)として構成され得る。プリアンプ30は、IC(集積回路)として構成され得る。コントローラ130は、SoC(システムオンチップ)として構成され得る。コントローラ130は、ドライバ20、プリアンプ30、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、バッファメモリ90に電気的に接続されている。
【0011】
HDA2は、ディスク10、スピンドルモータ(SPM)12、ヘッド15、アーム13、ホイスコイルモータ(VCM)14を有する。
【0012】
ディスク10は、
図2に示すように、情報が記録されるべき略円盤状の媒体である。
図2は、ディスク10の構成を示す平面図である。ディスク10は、スピンドルを介して筐体(図示せず)に回転可能に支持される。ディスク10は、磁気ディスクでもよいし、光磁気ディスクでもよい。以下では、ディスク10が磁気ディスクである場合を主に例示する。ディスク10は、各記録面において、放射状のサーボ領域に予め書き込まれたサーボ情報によって、半径方向に同心円の複数のトラックTRが規定される。ディスク10の各記録面におけるサーボ領域間の領域は、データをライト可能なデータ領域である。各トラックTRは、円周方向にサーボ領域とデータ領域との組が1以上含まれる。
【0013】
複数のトラックTRは、半径方向における位置(半径位置)に応じて複数の領域に区分され得る。複数の領域は、内周領域IR、中周領域MR、外周領域ORを含み得る。内周領域IRは、半径位置が半径方向内側であるトラックTRを含む。中周領域MRは、半径位置が半径方向内側と外側との中間であるトラックTRを含む。外周領域ORは、半径位置が半径方向外側であるトラックTRを含む。
【0014】
図1に戻って、ヘッド15は、アーム13の一端側に搭載される。アーム13の他端は、軸17に回転可能に支持される。SPM12は、スピンドルを回転中心としてディスク10を回転駆動できる。VCM14は、軸17を回転中心としてアーム13を回転駆動できる。アーム13及びVCM14は、アクチュエータ3として機能する。アクチュエータ3は、ヘッド15をディスク10の面に対して半径方向に沿って移動可能である。
【0015】
ヘッド15は、ライトヘッド15W及びリードヘッド15Rを有する。ライトヘッド15Wは、プリアンプ30から供給されるライト電流に応じてディスク10に情報をライトする。リードヘッド15Rは、ディスク10にライトされた情報をリードしてプリアンプ30へ供給する。
【0016】
コントローラ130は、不揮発性メモリ80又はディスク10に予め記憶されたファームウェアに従って、このディスク装置1の全体的な制御を行う。ファームウェアは、初期ファームウェアおよび通常動作に用いる制御用ファームウェアである。起動時に最初に実行される初期ファームウェアは、例えば、不揮発性メモリ80に記憶されており、通常動作に用いる制御用ファームウェアは、ディスク10に記録されている。初期ファームウェアに従った制御により、ディスク10から一旦バッファメモリ90に読み出され、その後揮発性メモリ70に格納される。
【0017】
コントローラ130は、ホスト100と通信可能に接続され、通常動作において、ホスト100からコマンドを受信すると、コマンドに応じた制御を行うことが可能である。コントローラ130は、リードライトチャネル(RWC)60、マイクロプロセッサ(MPU)40、ハードディスクコントローラ(HDC)50を含む。RWC60、MPU40及びHDC50は、互いに電気的に接続されている。
【0018】
ドライバ20は、MPU40の制御に従って、SPM12及びVCM14の駆動をそれぞれ制御する。
【0019】
プリアンプ30は、リードアンプ31及びライトドライバ32を有する。リードアンプ31は、ディスク10からヘッド15を介してリードされたリード信号を増幅してRWC60へ供給する。ライトドライバ32は、RWC60から受けるデータ信号に応じたライト電流をヘッド15に流す。プリアンプ30は、ヘッド15及びRWC60にそれぞれ配線等を介して電気的に接続されている。
【0020】
MPU40は、ディスク装置1の各部を制御する。MPU40は、リードアドレスを含むリードコマンドをホスト100からHDC50経由で受け、リードアドレスに応じたディスク10内の位置から情報をリードするリード処理を制御する。リード処理の制御において、MPU40は、リードアドレスに応じて、VCM14を介してヘッド15をディスク10の面に対して位置決め制御し、ヘッド15が目標トラックTRに位置決めされた状態でプリアンプ30及びRWC60を介して情報がディスク10からリードされるように制御する。
【0021】
MPU40は、ライトアドレスを含むライトコマンドをホスト100からHDC50経由で受け、ライトデータに応じた情報をライトアドレスに応じたディスク10内の位置へライトするライト処理を制御する。ライト処理の制御において、MPU40は、ライトアドレスに応じて、VCM14を介してヘッド15をディスク10の面に対して位置決め制御し、ヘッド15が目標トラックTRに位置決めされた状態でRWC60及びプリアンプ30を介してライトデータに応じた情報がディスク10にライトされるように制御する。
【0022】
HDC50は、データの転送を制御する。例えば、HDC50は、MPU40からの指示に応じて、ホスト100とRWC60との間のデータの転送を制御する。HDC50は、ホスト100から受信したコマンドをMPU40へ供給したり、MPU40からコマンドに対するレスポンスを受けてホスト100へ送信したりする。
【0023】
RWC60は、プリアンプ30からリード信号を受け、MPU40からの指示に応じて、リード信号からリードデータを復元し、リードデータをHDC50経由でホスト100へ供給する。RWC60は、ホスト100からHDC50経由でライトデータを受け、MPU40からの指示に応じて、ライトデータに応じたデータ信号を生成してプリアンプ30へ供給する。
【0024】
ライト処理では、ライトデータの値(例えば、0又は1)に応じてデータ信号のレベル(例えば、L又はH)が変わり、データ信号のレベルに応じてヘッド15に流れるライト電流の極性が反転し、ライト電流の極性に応じてディスク10に情報としてライトされる磁化の方向が反転する。
【0025】
例えば、
図3(a)に示すt0~t2の期間において、ライトデータの値「1」に対応して、ライト電流の値がIw=I
H(>0)に維持される。t2~t3の期間において、ライトデータの値「0」に対応して、ライト電流の値がIw=I
L(<0)に維持される。タイミングt2は、ライトデータのビット反転位置に対応し、ライト電流の極性反転位置に対応する。
【0026】
ここで、ヘッド15における主極(Main Pole)でライト電流に応じて発生される磁界には、ディスク10を磁化可能な領域(すなわち、瞬間的にライト可能な領域)について、空間的な広がりを有する。この空間的な広がりは、MPRZ(Main Pole Relaxation Zone)とよばれ、
図2に示すようなヘッド15の円周方向の長さLの一部を占めると予想される。
【0027】
このため、MPRZ(Main Pole Relaxation Zone)方式におけるライト電流の波形は、
図3(b)に示すように、ビットの反転位置に対応する電流波形の極性反転位置(タイミングt2)の直前にライト電流Iwがゼロとなる区間(電流ゼロ時間)ΔT
MPRZを含む。ライト電流Iwをゼロに維持するような制御を電流ゼロ制御と呼ぶことにする。
【0028】
電流ゼロ制御は、ライト電流の極性反転位置における磁化応答の遅れの回避が目的である。極性反転位置の直前のライト電流の振幅が大きい場合、ヘッド15内部の磁化を反転させる起磁力が大きくなり、結果として極性反転位置での磁化応答が遅れる可能性がある。極性反転位置の直前のライト電流がゼロであれば、ヘッド15内部の磁化を反転させる起磁力を小さくでき、結果として極性反転位置での磁化応答の遅れを回避できる。
【0029】
電流ゼロ制御は、前提として、ライト電流Iwを電流ゼロ時間でゼロにしてもディスク10に情報を瞬間的に記録可能であるという考え方に基づいている。この考え方では、ライト電流Iwを電流ゼロ時間でゼロにしても、ヘッド15が一定の物理サイズを有していることからその長さ分(フットプリント長)は瞬間的にディスク10に情報が記録され、その記録状態は損なわれることはないとされる。ライトデータの1ビットに対応するデータ信号の単位期間を1Tと呼ぶことにする。主極の長さLが完全にフットプリント長と等しいとすると、電流ゼロ時間ΔT
MPRZは2T~3T程度と予想される。MPRZ方式では、極性反転の1T以上前にライト電流Iwをゼロとするような仕組みで実装されることが多い。
図3は、MPRZ方式の動作を示す波形図である。
【0030】
例えば、元のライトデータにおける同じビット値がnT区間つづく(すなわち、パターン長がnTである)データパターンをnTパターンと呼ぶことにする。MPRZ方式において、元のライトデータにおける4T以上のパターンでビット反転位置の2~3ビット前にダミービットを挿入したダミーデータ信号を生成し、ダミービットの位置を示すマスク信号を生成する。そして、ダミーデータ信号のエッジタイミング(例えば、立ち下がりエッジタイミング)で電流ゼロ制御を開始しつつマスク信号でマスクすることでダミービット位置におけるライト電流の極性反転が行われないようにする。これにより、MPRZ方式のライト電流波形を実現できる。
【0031】
このMPRZ方式の場合、ダミー反転位置をライト電流Iw=0とするタイミングの制御に用いているため、原理的に分解能は1T単位となる。また、ダミーデータ信号とMPRZ信号とを連動して変調しなければならないため、電流ゼロ時間ΔTMPRZを自由に変更することが困難であり、電流ゼロ時間ΔTMPRZの適切化(例えば、最適化)が難しい。
【0032】
一方で、フットプリント長は予想に反して1Tにも満たない可能性もある。これはヘッド15のリーディングエッジ側は磁界強度が弱く、十分なオーバーライト(OW)で記録できる箇所はトレーリングエッジのギャップ付近に限られているためである。その結果、ヘッド15の物理サイズに対して実際のフットプリント長は短くなっていると可能性がある。このことから理想的なMPRZ方式のためには1Tより小さい分解能で電流ゼロ時間ΔTMPRZを調整できることが望まれる。
【0033】
例えば、電流ゼロ時間ΔT
MPRZを可変させた場合の磁化応答の改善効果をBER(ビットエラーレート)で評価した結果を
図4~
図6に示す。
図4、
図5、
図6は、データパターンごとの電流ゼロ時間とビットエラーレートとの関係を、それぞれ、外周領域OR、中周領域MR、内周領域IR(
図2参照)について示す図である。
【0034】
図4に示す外周領域ORの評価結果では、1Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
1である。2Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
2である。3Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
3である。4Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
4である。5Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
5である。大小関係を示すと、次の数式1のようになる。
ΔT
1<ΔT
2<ΔT
4<ΔT
5<ΔT
3・・・数式1
【0035】
図5に示す中周領域MRの評価結果では、1Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
11である。2Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
12である。4Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
14である。5Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
15である。なお、3Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZは、評価可能な範囲では検出されないため、近似的に、外周領域ORと同じΔT
3を用いてもよい。大小関係を示すと、次の数式2のようになる。
ΔT
11<ΔT
12<ΔT
15<ΔT
14<ΔT
3・・・数式2
【0036】
図6に示す内周領域IRの評価結果では、1Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZがΔT
21である。なお、2Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZは、評価可能な範囲では検出されないため、近似的に、中周領域MRと同じΔT
12を用いてもよい。3Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZは、評価可能な範囲では検出されないため、近似的に、外周領域ORと同じΔT
3を用いてもよい。4Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZは、評価可能な範囲では検出されないため、近似的に、中周領域MRと同じΔT
14を用いてもよい。5Tパターンのビットエラーレートが最小になる電流ゼロ時間ΔT
MPRZは、評価可能な範囲では検出されないため、近似的に、中周領域MRと同じΔT
15を用いてもよい。大小関係を示すと、次の数式3のようになる。
ΔT
21<ΔT
12<ΔT
15<ΔT
14<ΔT
3・・・数式3
【0037】
図4~
図6に示されるように、ビットエラーレートの改善効果が適切化される(例えば、最大となる)電流ゼロ時間ΔT
MPRZは、パターン長(nT)毎に異なる傾向にある。なお、
図4~
図6では、1Tは、それぞれ一点鎖線の直線で示す電流ゼロ時間の値に相当し、ビットエラーレートの改善効果が適切化される(例えば、最大となる)電流ゼロ時間ΔT
MPRZが概ね1T近傍か1Tより小さい傾向にある。MPRZ方式による改善効果を適切化する(例えば、最大化する)ためには、各データパターン(例えば、1Tパターン~5Tパターン)に対する電流ゼロ時間ΔT
MPRZが個別に調整できることが望まれる。
【0038】
それに対して、ディスク装置1は、コントローラ130が、電流ゼロ制御をプリアンプ30に行わせることが可能であり、電流ゼロ時間をライトデータのパターンに応じて変更可能である。
【0039】
コントローラ130は、ライトデータから電流ゼロ制御用のMPRZ信号を生成し、パターンごとにMPRZ信号の極性反転位置を指定するエッジタイミングを調整する。コントローラ130は、ライトデータに遅延量DL1を付加してデータ信号を生成する。コントローラ130は、データパターン(例えば、1Tパターン~5Tパターン)に応じてライトデータに遅延量DL2を付加してMPRZ信号を生成する。すなわち、コントローラ130は、複数のデータパターンに対応する複数の候補遅延量のうちの次のデータパターンに対応する1つを遅延量DL2として選択する。複数の候補遅延量は、いずれも、遅延量DL1より小さい。コントローラ130は、その選択された遅延量DL2をライトデータに付加してMPRZ信号を生成する。プリアンプは、データ信号に応じてライト電流を生成するが、MPRZ信号のエッジタイミングで電流ゼロ制御を開始してライト電流の振幅をゼロにし、データ信号の極性反転位置で電流ゼロ制御を解除する。
【0040】
これにより、各データパターン(例えば、1Tパターン~5Tパターン)に応じて電流ゼロ時間ΔTMPRZを個別に調整でき、MPRZ方式によるビットエラーレート改善効果を適切化(例えば、最大化)できる。また、2つの遅延量DL1,DL2の差で電流ゼロ時間を制御できるので、1Tより小さい分解能で電流ゼロ時間ΔTMPRZを調整できる。
【0041】
例えば、ディスク装置1において、RWC60及びプリアンプ30は、ライト処理に関して、
図7に示すように構成され得る。
図7は、RWC60及びプリアンプ30の構成を示す図である。
図7では、簡略化のため、リード処理に関する構成の図示が省略される。
【0042】
RWC60は、ライトデータ生成回路61、WPC(Write Precompensation)回路62、遅延(Delay)回路63、ドライバ64、WPC回路65、ドライバ66、レジスタ67を有する。プリアンプ30は、ライトドライバ32、電流ゼロ制御回路33、ドライバ34を有する。
【0043】
ライトデータ生成回路61は、ホスト100からHDC50経由で受けた信号を処理してライトデータを生成し、生成後のライトデータをWPC回路62へ供給する。
【0044】
WPC回路62はライトデータのエッジタイミングに対して、データパターンごとに個別の遅延量を付加する。WPC回路62は、ライトデータをライトデータ生成回路61から受けると、そのデータパターン(例えば、1Tパターン~5Tパターン)を分析する。コントローラ130は、複数の第1の設定値が格納された装置メモリにアクセスし、複数の第1の設定値のうち分析されたデータパターンに対応する第1の設置値WPC_XXXXを取得してレジスタ67に設定する。
【0045】
装置メモリは、例えば、ディスク10における管理情報を格納する領域であってもよいし、不揮発性メモリ80であってもよい。装置メモリは、データパターンと第1の設定値とが複数のデータパターンについて対応付けられた第1の設定情報を格納する。第1の設定値WPC_XXXXは、NLTS(Non Linear Transition Shift)の補償量の値を示す。NLTSは、ディスク10に記録される情報ビットがその直前や数ビット前の情報ビットの磁界の影響を受け、ビット反転位置が時間に対して非線形的にシフトする現象である。そのため、NLTSの補償量の値は、データパターンに依存して異なり得る。どのデータパターンがどのNLTSの補償量の値に対応するのかは、予め、実験的に決められて、第1の設定情報に含められる。「WPC_XXXX」における「XXXX」は、データパターンに付与すべき補償量の値を示す。第1の設定値WPC_XXXXは、RWC60内部のレジスタ67に格納可能であり、ライト動作時に装置メモリからRWC60内のレジスタ67に設定される。
【0046】
WPC回路62は、ライトデータに対して、第1の設定値WPC_XXXXに応じた補償量でビット反転位置を補正する。WPC回路62は、補正後のライトデータを遅延回路63へ供給するとともに、補正後のライトデータを複製してWPC回路65へ供給する。
【0047】
遅延回路63は、補正後のライトデータを遅延量DL1で遅延させてデータ信号を生成する。遅延量DL1は、通常NLTSの補償量より大きい。遅延回路63は、データ信号をドライバ64へ供給する。ドライバ64は、データ信号をプリアンプ30へ転送する。
【0048】
WPC回路65は、補正後のライトデータのビット反転位置をRWC60内部のレジスタ67に格納された第2の設定値WPC2_XXXXに応じた遅延量DL2で遅延させてMPRZ信号を生成する。コントローラ130は、複数の第2の設定値が格納された装置メモリにアクセスし、複数の第2の設定値のうちWPC回路62で分析されたデータパターンに対応する第2の設置値WPC2_XXXXを取得してレジスタ67に設定する。
【0049】
装置メモリは、データパターンと第2の設定値とが複数のデータパターンについて対応付けられた第2の設定情報を格納する。第2の設定情報は、データパターンと第2の設定値とが複数のデータパターンと複数の領域(例えば、外周領域OR、中周領域MR、内周領域IR)との組み合わせについて対応付けられた情報であってもよい。第2の設定値WPC2_XXXXは、電流ゼロ時間の開始タイミングを調整するための遅延量の値を示す。どのデータパターン(又はどのデータパターンと領域との組み合わせ)がどのNLTSの補償量の値に対応するのかは、予め、実験的に決められて、第2の設定情報に含められる(
図4~
図6参照)。「WPC2_XXXX」における「XXXX」は、データパターンに付与すべき遅延量の値を示す。第2の設定値WPC2_XXXXは、RWC60内部のレジスタ67に格納可能であり、ライト動作時に装置メモリからRWC60内のレジスタ67に設定される。
【0050】
WPC回路65は、WPC回路62によるNLTSの補償量(WPC_XXXX)の付加と独立して、補正後のライトデータへの遅延量DL2(WPC2_XXXX)の付加を行うことができる。MPRZ信号は、そのエッジタイミングで電流ゼロ時間の開始タイミングを示す。これにより、WPC回路65は、電流ゼロ時間をnTパターンごとに個別に調整可能である。
【0051】
このとき、WPC回路65は、少なくとも1T以上の調整幅を確保しておくことが望ましい。そのため、NLTSの補償量が付加された補正後のライトデータに対しては、MPRZ信号との全体の位相調整のために遅延回路63で遅延量DL1が付加される。
【0052】
WPC回路65は、MPRZ信号をドライバ66へ供給する。ドライバ66は、MPRZ信号をプリアンプ30へ転送する。
【0053】
プリアンプ30のドライバ34は、MPRZ信号をWPC回路65から受ける。ドライバ34は、MPRZ信号を電流ゼロ制御回路33へ転送する。電流ゼロ制御回路33は、MPRZ信号に応じてライトドライバ32を制御する。電流ゼロ制御回路33は、ライトドライバ32が電流ゼロ制御を開始するタイミングを制御する。
【0054】
ライトドライバ32は、データ信号をRWC60のドライバ64から受け、データ信号に応じてライト電流を生成するが、電流ゼロ制御回路33から指定されると、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流をゼロにする。そして、ライトドライバ32は、データ信号のエッジタイミング、すなわちライト電流の極性を反転すべきタイミングになると、自律的に、電流ゼロ制御を解除する。
【0055】
電流ゼロ制御の最もシンプルな実装としては、MPRZ信号の状態遷移、言い換えると極性反転位置(Lレベル→HレベルまたはHレベル→Lレベル)でプリアンプ30がライト電流Iwをゼロとするように動作するものになる。遅延回路63により各nTパターンのMPRZ信号の極性反転位置はデータ信号の極性反転位置より時間的に前に設定されている。このMPRZ信号に対してWPC回路65により付加される遅延量DL2を調整することで各nTパターンの電流ゼロ時間の開始タイミングを個別に指定することができる。
【0056】
例えば、電流ゼロ制御は、
図8に示すように行われる。
図8は、電流ゼロ制御を示す波形図である。
図8(a)は、ライトデータ生成回路61で生成されるライトデータのビット系列とそのパターン認識結果(1Tパターン~6Tパターン)と遅延回路63から出力されるデータ信号とを示す。
図8(b)は、WPC回路65から出力されるMPRZ信号を示す。
図8(c)は、ライトドライバ32で生成されるライト電流Iwを示す。
【0057】
図8(a)~
図8(c)の例では、外周領域ORのトラックTRが目標トラックTRである場合が例示される。RWC60のWPC回路65は、前歴3ビットの状態分岐で動作しており、1Tパターン/2Tパターン/3Tパターン/nTパターン(n≧4)の4つのパターンで独立な電流ゼロ時間の制御が可能となっている。なお、必要に応じてWPC回路65の状態分岐を増減して独立に制御するnTパターン数を調整することも可能である。
【0058】
タイミングt9の直前では、データ信号がハイレベルVH1であることに応じて、ライト電流Iw=IHとなっている。データ信号は、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL1が付加された信号となっている。
【0059】
このとき、MPRZ信号は、ハイレベルVH2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが1Tパターン「1」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_xx11に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT1)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち下がりエッジタイミングを1Tパターンに応じたタイミングt9に調整する。
【0060】
タイミングt9では、MPRZ信号がハイレベルVH2からロウレベルVL2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0061】
タイミングt10では、データ信号がハイレベルVH1からロウレベルVL1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が1Tパターンに応じたΔT1に制御される。
【0062】
プリアンプ30は、ライト電流Iwを0からレベルIUSへ遷移させる。
【0063】
このとき、MPRZ信号は、ロウレベルVL2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが1Tパターン「0」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_xx11に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT1)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち上がりエッジタイミングを1Tパターンに応じたタイミングt11に調整する。
【0064】
タイミングt11では、MPRZ信号がロウレベルVL2からハイレベルVH2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0065】
タイミングt12では、データ信号がロウレベルVL1からハイレベルVH1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が1Tパターンに応じたΔT1に制御される。
【0066】
プリアンプ30は、ライト電流Iwを0からレベルIOSへ遷移させる。
【0067】
このとき、MPRZ信号は、ハイレベルVH2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが2Tパターン「11」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_x101に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT2)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち下がりエッジタイミングを2Tパターンに応じたタイミングt14に調整する。
【0068】
タイミングt13になると、プリアンプ30は、レベルIOSに維持すべき期間が経過したとして、ライト電流IwをレベルIOSからハイレベルIHへ遷移させる。
【0069】
タイミングt14では、MPRZ信号がハイレベルVH2からロウレベルVL2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0070】
タイミングt15では、データ信号がハイレベルVH1からロウレベルVL1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が2Tパターンに応じたΔT2に制御される。
【0071】
プリアンプ30は、ライト電流Iwを0からレベルIUSへ遷移させる。
【0072】
このとき、MPRZ信号は、ロウレベルVL2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが3Tパターン「000」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_1001に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT3)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち上がりエッジタイミングを3Tパターンに応じたタイミングt17に調整する。
【0073】
タイミングt16になると、プリアンプ30は、レベルIUSに維持すべき期間が経過したとして、ライト電流IwをレベルIUSからロウレベルILへ遷移させる。
【0074】
タイミングt17では、MPRZ信号がロウレベルVL2からハイレベルVH2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0075】
タイミングt18では、データ信号がロウレベルVL1からハイレベルVH1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が3Tパターンに応じたΔT3に制御される。
【0076】
プリアンプ30は、ライト電流Iwを0からレベルIOSへ遷移させる。
【0077】
このとき、MPRZ信号は、ハイレベルVH2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが4Tパターン「1111」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_0001に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT4)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち下がりエッジタイミングを4Tパターンに応じたタイミングt20に調整する。
【0078】
タイミングt19になると、プリアンプ30は、レベルIOSに維持すべき期間が経過したとして、ライト電流IwをレベルIOSからハイレベルIHへ遷移させる。
【0079】
タイミングt20では、MPRZ信号がハイレベルVH2からロウレベルVL2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0080】
タイミングt21では、データ信号がハイレベルVH1からロウレベルVL1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が4Tパターンに応じたΔT4に制御される。
【0081】
プリアンプ30は、ライト電流Iwを0からレベルIUSへ遷移させる。
【0082】
このとき、MPRZ信号は、ロウレベルVL2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが5Tパターン「00000」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_0001に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT4)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち上がりエッジタイミングを5Tパターンに応じたタイミングt23に調整する。
【0083】
タイミングt22になると、プリアンプ30は、レベルIUSに維持すべき期間が経過したとして、ライト電流IwをレベルIUSからロウレベルILへ遷移させる。
【0084】
タイミングt23では、MPRZ信号がロウレベルVL2からハイレベルVH2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0085】
タイミングt24では、データ信号がロウレベルVL1からハイレベルVH1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が5Tパターンに応じたΔT4に制御される。
【0086】
プリアンプ30は、ライト電流Iwを0からレベルIOSへ遷移させる。
【0087】
このとき、MPRZ信号は、ハイレベルVH2になっている。WPC回路62は、次のデータパターンが6Tパターン「111111」であるとの認識結果に対応する第2の設定値WPC2_0001に応じて、WPC回路62による補正後のライトデータに対して遅延量DL2(=DL1-ΔT4)が付加されている。これにより、RWC60は、MPRZ信号の立ち下がりエッジタイミングを6Tパターンに応じたタイミングt26に調整する。
【0088】
タイミングt25になると、プリアンプ30は、レベルIOSに維持すべき期間が経過したとして、ライト電流IwをレベルIOSからハイレベルIHへ遷移させる。
【0089】
タイミングt26では、MPRZ信号がハイレベルVH2からロウレベルVL2に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を開始し、ライト電流Iw=0とする。
【0090】
タイミングt27では、データ信号がハイレベルVH1からロウレベルVL1に遷移する。これに応じて、プリアンプ30は、電流ゼロ制御を解除する。これにより、電流ゼロ時間が4Tパターンに応じたΔT4に制御される。
【0091】
以上のように、実施形態では、ディスク装置1において、RWC60が、電流ゼロ制御を行う際に、電流ゼロ時間をデータパターンに応じて変更し、プリアンプ30が、その変更に応じて電流ゼロ時間を設定する。これにより、各データパターン(例えば、1Tパターン~5Tパターン)に応じて電流ゼロ時間ΔTMPRZを個別に調整でき、MPRZ方式によるビットエラーレート改善効果を適切化(例えば、最大化)できる。すなわち、ディスク10に記録される情報の信頼性を向上できる。
【0092】
また、実施形態では、ディスク装置1において、RWC60が、ライトデータに遅延量DL1を付加してデータ信号を生成し、データパターンに応じてライトデータに遅延量DL2を付加してMPRZ信号を生成する。プリアンプ30が、MPRZ信号のエッジタイミングで電流ゼロ制御を開始してライト電流の振幅をゼロにし、データ信号の極性反転位置で電流ゼロ制御を解除する。これにより、2つの遅延量DL1,DL2の差で電流ゼロ時間を調整できるので、1Tより小さい分解能で電流ゼロ時間ΔTMPRZを調整できる。
【0093】
なお、実施形態の変形例として、ディスク装置1は、電流ゼロ制御の実行の有無を切り替え可能に構成されてもよい。例えば、プリアンプ30における電流ゼロ制御回路33には、
図9に示すような電流ゼロ制御の切り替え情報331が設定されてもよい。
図9は、実施形態の変形例における電流ゼロ制御の切り替え情報331を示す図である。
【0094】
プリアンプ30における電流ゼロ制御回路33は、
図9に示すように、データ信号のレベル(Lレベル又はHレベル)とMPRZ信号の状態遷移(Lレベル→Hレベルの遷移又はHレベル→Lレベルの遷移)の組み合わせに応じて、電流ゼロ制御を行うか否かを決定する。
【0095】
図9の場合、電流ゼロ制御回路33は、データ信号がロウレベルV
L1で且つMPRZ信号の状態遷移がロウレベルV
L2→ハイレベルV
H2の場合、又は、データ信号がハイレベルV
H1でかつMPRZ信号の状態遷移がハイレベルV
H2→ロウレベルV
L2の場合に、選択的に、電流ゼロ制御を行う。これは、MPRZ信号はライトデータをもとに複製されているため正常な動作においてはこの組み合わせが期待されるという考えに基づいている。
【0096】
それ以外の組み合わせとなっている場合は、ジッタノイズや調整ミス等により想定外のタイミングでMPRZ信号の状態遷移が起こっているとみなすことができる。電流ゼロ制御回路33は、データ信号がロウレベルVL1で且つMPRZ信号の状態遷移がハイレベルVH2→ロウレベルVL2の場合、又は、データ信号がハイレベルVH1でかつMPRZ信号の状態遷移がロウレベルVL2→ハイレベルVH2の場合に、電流ゼロ制御を行わない。
【0097】
例えば、
図4、
図5に示すように、外周領域OR、中周領域MRでは、1Tパターンでビットエラーレートが最小となる電流ゼロ時間ΔT
MPRZが他のデータパターンでビットエラーレートが最小となる電流ゼロ時間ΔT
MPRZに比べて小さい。このため、1Tパターンに対しては電流ゼロ時間が比較的小さい値に制御される。
【0098】
電流ゼロ時間が比較的小さい値に制御されても、データ信号の位相とMPRZ信号の位相が適正であれば、
図10(a)~
図10(c)に示すように、電流ゼロ時間が適正に設定され得る。MPRZ信号における1Tパターンに対応したエッジタイミングt11は、1Tパターンのデータ信号に対応したt10~t12の期間内に位置する。なお、
図10(a)~
図10(c)は、実施形態の変形例における電流ゼロ制御の切り替えを示す波形図であり、
図8(a)~
図8(c)のタイミングt9~t21の部分に対応する。
【0099】
MPRZ信号における1Tパターンに対応したエッジタイミングt11において、データ信号がロウレベルV
L1でありMRPZ信号の状態遷移がロウレベルV
L2→ハイレベルV
H2であるので、切り替え情報(
図9参照)に従い、電流ゼロ制御が開始され、ライト電流Iw=0となる。その後のタイミングt12において、データ信号のロウレベルV
L1→ハイレベルV
H1の遷移に応じて電流ゼロ制御が解除される。これにより、1Tパターンに対応したライト電流の極性反転位置の直前に電流ゼロ時間が適正に設定され得る。
【0100】
一方、電流ゼロ時間が比較的小さい値に制御されることで、ジッタ等の影響により、
図10(d)~
図10(f)に示すように、データ信号の位相とMPRZ信号の位相とが前後する可能性がある。MPRZ信号における1Tパターンに対応したエッジタイミングt11aは、1Tパターンのデータ信号に対応したt10a~t12aの期間経過後、すなわち2Tパターンのデータ信号に対応したt12a~t15aの期間内に位置する。なお、
図10(d)~
図10(f)は、実施形態の変形例における電流ゼロ制御の切り替えを示す波形図であり、
図8(a)~
図8(c)のタイミングt9~t21の部分に対応する。
【0101】
仮に、エッジタイミングt11aで電流ゼロ制御を開始してしまうと、2Tパターンに対応した期間t12a~t15aの大部分でライト電流Iwがゼロになってしまい、本来記録されるべき2Tパターン「11」がディスク10に記録されない可能性がある。
【0102】
それに対して、実施形態の変形例では、MPRZ信号における1Tパターンに対応したエッジタイミングt11aにおいて、データ信号がハイレベルV
H1でありMRPZ信号の状態遷移がロウレベルV
L2→ハイレベルV
H2であるので、切り替え情報(
図9参照)に従い、電流ゼロ制御が開始されない。ライト電流Iwは、ロウレベルI
LからレベルI
OSへ遷移する。これにより、不用意なタイミングで電流ゼロ制御が行われることを回避できる。
【0103】
あるいは、RWC60において、遅延回路63の遅延量DL1が1Tパターン用のWPC回路65の遅延量DL2より小さく且つ他のパターン(2T以上のパターン)用のWPC回路65の遅延量DL2より大きくなるように設定されてもよい。この場合、
図9の切り替え情報331を併用することで、1Tパターンに対して選択的に電流ゼロ制御が行われず、他のパターン(2T以上のパターン)に対して電流ゼロ制御が行われるようにすることができる。これにより、ジッタ等の影響を回避しながら、ライト電流に応じてディスク10にライトされる情報についてビットエラーレート改善効果を適切化(例えば、最大化)できる。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 ディスク装置、10 ディスク、15 ヘッド、30 プリアンプ、130 コントローラ。