(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088803
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】風力自在航行システム
(51)【国際特許分類】
B63H 13/00 20060101AFI20230620BHJP
F03D 3/06 20060101ALI20230620BHJP
F03D 80/00 20160101ALI20230620BHJP
F03D 7/06 20060101ALI20230620BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20230620BHJP
【FI】
B63H13/00
F03D3/06 F
F03D80/00
F03D7/06 C
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203765
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000189589
【氏名又は名称】上野 康男
(72)【発明者】
【氏名】上野 康男
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA15
3H178AA34
3H178AA46
3H178BB07
3H178BB08
3H178CC05
3H178CC16
3H178DD37X
3H178DD70X
3H178EE02
3H178EE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】風の力を利用した航行システムに関するもので、特に回転する回転翼の迎角をサイクリックに制御可能な機構を設けた垂直軸型風車を利用することで、風の速度及び方向が一定ではなく、常に変化していても容易に対応して自在に航行しうるごとき船を具体的に実現するシステムを提供する。
【解決手段】回転する垂直軸風車の回転翼25,29の迎角を、風向き等に対する回転翼25,29の位置に応じてサイクリックに制御することによって回転翼25,29に働く揚力を増加し、風圧抵抗を減少しつつ、風車の回転動力を増加させ、風下方向の抵抗を減少させることで、航行性能を向上させる機構を有する風力自在航行システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面を航行する船体には喫水線に直交する回転軸が、喫水線より上に位置する上部軸受と下にある下部軸受によって回転自在に支持されている。回転軸には水平方向に延びる複数のアームが固着され、該アームには回転軸の回転方向に直角で半径方向に延びる回転アームが回転自在に設けられ、該回転アームの先端には、通常垂直上方を向いたフェザーリング軸が設けられ、付け根付近には軸回動アームが設けられている。該それぞれの軸回動アームには回転継手を介して上下作動バーが結合され、回転軸に対して上下にスライドするパイプ部材の横アームに結合されている。該パイプ部材が上下することで回転アームは約90度回転して先端のフェザーリング軸の角度は垂直から水平状態になり得る如く構成したことを特徴とする風力自在航行システム
【請求項2】
パイプ部材には揺動自在なスイング部材が設けられ、該スイング部材の外周部には曲がりアームが複数設けられ前記回転アームとは図示しない機構で相互の回転を制限された状態で縦横自在にスイングし得る構造とされている。該曲がりアームのそれぞれの先端に自在接手を介してフェザーリングロッドが設けられている。フェザーリング軸には下回転翼が折翼前縁に突き出たヒンジにおいて回動自在に勘合されており、後縁付近の突起においてフェザーリングロッドの他端と結合していることを特徴とする請求項1記載の風力自在航行システム。
【請求項3】
下回転翼の上部の折畳みヒンジ軸には上回転翼が折れ曲がり自在に取り付けられ、中央部前縁のフックと可撓性のワイヤーで結合されている。該上回転翼は、常時図示しないスプリングで下回転翼に対して直線状に延びるように付勢されている。パイプ部材の上下動に応じて回転アームは約90度回転することで、先端のフェザーリング軸が垂直から水平状態になると、該フェザーリング軸にヒンジを介して回動自在に支持された下回転翼が共に回動し、該下回転翼に折れ曲がり自在に取り付けられた上回転翼は、該フックにおいて結合された可撓性のワイヤーの他端に設けたスライド部材が下方にスライドする動きにより
図4及び
図5に示す位置に収納されるごとく構成されたことを特徴とする請求項1記載の風力自在航行システム。
【請求項4】
回転軸の上部軸受より上に設けたギヤーを介して発電機が設けられていることを特徴とする請求項1記載の風力自在航行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風の力を利用した船の航行システムに関するものであり、特に風の方向に左右されずに自在に航行することができる複合的技術を含む風力自在航行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
風の力で航行するいわゆる帆走船は数世紀にわたって利用され、その技術は多岐にわたるものである。帆の形式についても横帆、縦帆と各種の形式がある。
しかし、従来の帆走船では長いマストと重く大きな帆の操作に多くの人手や動力が必要で、特に風上に進むためにはジグザグに航路を選択する必要も有る為、コスト及び人件費を考慮した場合、そのメリットは少なくなっている。
【0003】
新規に開発する風力自在航行システムは従来の帆船の構造にとらわれずに、多くのメリットを備えるものである。
改良される項目として、〈1〉機構の小型、軽量化〈2〉制御の軽便化〈3〉風の方向変化に制限されない走行性能〈4〉強風時の即時退避機能〈5〉用途として高効率発電対応〈6〉風の方向変化への自動最適対応に外部エネルギーを必要としない〈7〉入出港時の高さ制限への対応〈8〉風車の回転時・起動時のデッドポイントの解消〈9〉外部動力による走行時に空気抵抗を生じないなどを含むものである。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために、近年急速に発展しつつある風車技術を利用するものであるが、現在までこの分野では実用化したものは見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-056744公報(01)
【特許文献2】特開2006-177264公報(02)
【特許文献3】特願2015-180277 (03)
【特許文献4】特許第6398095号 (04)上記特許情報において、(01)、(02)においては固定帆に関するもので有り、(03)においては構成要素についてのみの記述でその具体性は不明である。(04)は本出願人らによる特許である。航行システムではないが本件に必要とされる動力装置の前記必要要件をいくつか備えている。すなわち〈3〉風の方向変化に影響されない、〈4〉強風時の即時退避機能、〈5〉用途として高効率発電対応に関しての狙いは共通するものである。後述する回転中のデッドポイントの解消にも有効な構造を含んでいる。このことから本発明が上記文献の構造を参考にしたものとなっているが、航行システムである本発明ではサイクリックピッチ制御の追加など更に発展させたものとなっている。
【発明の概要】
【0006】
風車を使用することは、風車の回転が回転翼に加える相対風速(周速比)を向上させることで、固定帆を使用する場合に比べてエネルギー密度を大幅に向上させることになる。結果的に固定帆に比べて〈1〉風車の翼面積を大幅に縮小することが出来、このことにより〈2〉軽量化及び〈3〉制御力の軽減など、多くの利点を得ることが出来ることになる。
【0007】
又、一般の風車としては回転軸が水平方向でプロペラ型の回転翼を有する水平軸型と、回転軸が垂直軸方向を向いて鉛直方向の直線または曲線状の回転翼を有する垂直軸型がある。
更に、回転翼から船の推進力を得るためには回転翼が風を受ける時の力をそのまま利用するものと、回転翼によって生じる動力を水中のスクリューに伝えて利用するものがある。前者は風によって得られる力の方向を船の推進方向に変換する必要があり、その技術が難しく、実現されているものを知りえていない。
後者は推進方向への変換は自由ではあるが、風車自体が風から直接受ける風圧抵抗が出来るだけ小さく、回転動力が出来るだけ大きいことが望ましく、その比が利用時の有効性を決定する。その相違点を解り易く言えば、追い風時、横風時、向い風時を想定して帆を利用した従来の帆走船と比較した時、本システムが正面からの風を受けた状態でも前に進むことが出来れば、完全に従来の帆走船の能力を上回るものであると云える。従来の固定帆の場合はジグザクに進むことでしか実現できていないので、帆の角度や位置を曲がり角の度に最適値に再設定する作業が伴い、この利便性の差は極めて大きい。〈4〉強風退避、〈5〉発電、〈6〉風の方向による帆走抵抗の変化に個別に対応、〈7〉港への入出時の高さ制限に対応、〈8〉回転中のデッドポイントの解消、〈9〉追い風時に風より速く進めるなどの特性については追って説明する。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は風の力を利用した航行システムに関するもので、特にサイクリックピッチ制御機能を備えた垂直軸型風車を利用することで、風の速度及び方向が一定ではなく常に変化していても容易に対応して自在に航行しうるごとき船を具体的に実現するシステムに関することにある。
【0009】
更に他の課題としては非常に大型の船を除いて航行中の揺れを考慮しておく必要がある。
上記の条件から水平軸型風車では回転軸の方向を風向きに対して平行にすることが望ましく、又風速の変化に対して風下方向の風圧抵抗を最低にするために、常に最適なピッチ角度に調整することが必要となる上、船体が縦方向及び横方向に揺れる場合回転翼にはジャイロ効果による大きな曲げモーメントが発生して、極端な場合破損の原因にもなりうる。
従って、これらの複雑な問題に対処して風車のブレードの角度を細かく調整できる機構を備えていなくてはならず、解決していくことは容易ではない。総合的な判断から、風の方向に影響されずに、前後左右の揺れにも強いという条件で考慮すると垂直軸型風車を選択する方が賢明と考え、本発明はその方向で進めるものである。
【0010】
本発明は垂直軸風車の回転動力によって水面下の推進機を駆動するという新しい技術によってこの課題を解決するものである。
更に風向、風速の変化と航行速度による推進力の変化に自動的に対応して風車の羽根の角度をサイクリックに制御する技術を備えたものであり、航行性能を最適化し、航行システムの実用化に極めて大きな効果を有するものである。本明細書の中でサイクリック制御と云う言葉とフェザーリング制御と云う言葉が使われているが、垂直軸型風車の回転翼の制御においては、ほぼ同じ意味であり、1回転の中での角度変化が強調される場合にサイクリック制御と云う表現となり、風の方向に適応するための受動的な動きを強調する場合にフェザーリング制御と云う言葉が使用されると理解してほしい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が上記課題の解決のために用いる手段は、回転する垂直軸風車の回転翼の迎角を、風向き等に対する回転翼の位置に応じてサイクリックに制御することによって回転翼に働く揚力を増加し、風圧抵抗を減少しつつ、風車の回転動力を増加させ、風下方向の抵抗を減少させることで、航行性能を向上させる機構を有するごとき風力自在航行システムを提供することである。
改良されるべき項目として、
【0012】
〈1〉従来の帆船は風の力を充分に受けるために出来るだけ大きな面積の帆を設けることが必要であった。そして該帆を軽量化するために材料として布が主に使われてきた。そして該帆の形状を、風を受け止めるうえで最適の形状とするために棒状のマストが使用され、強風時の過大な風力を避けるためには該マストに該帆を巻き付けるなどの方法を用いてきた。
本案では帆の代わりに垂直方向の回転軸によって支持された風力タービンを使用するものである。該風力タービンの回転翼は一般に自然風の風速より数倍の速さの相対風速を受けて回転する。この速度は周速比と云われており、その為に風速の2乗に比例する風圧を受ける該回転翼は、通常の帆の数倍の風圧を受けることになる。当然強い強度が必要であるが、布ではなく航空機の翼に近い強力な素材が必要となり、逆にその面積は帆の数分の1となる。これが風力タービンを使用する本案の特徴である。
【0013】
該回転翼は、回転中に風との迎角を適正に保つためにいわゆるフェザーリング機構が設けられている。これは、風の方向と回転翼の回転位置により、回転翼がそのスパー方向の軸周りに回転自在に支持され、該回転翼の後縁を風下方向に傾ける機構である。これは外部動力によるものではなく風から受ける力を使用するものである。このフェザーリング機構によって回転翼は常に空気力学的に失速を生じない迎角の範囲で有効に作動することができる。結果的にサイクリックピッチコントロール機構を構成するものである。その構造は図によって詳しく後述する。その効果は風下方向に生じる風圧抵抗を出来るだけ小さくして回転翼から生じる回転翼を最大にする事が出来るものである。
【0014】
また、回転翼の小型化は布製であった帆に比べて流体機器の部材としての形状をより正確に形成することによる性能の向上につながるとともに、フレキシブルなものではなく剛性の高いものとすることで正確な制御を容易に素早く行うことを可能としている。
【0015】
実用状態で風はかなり急速に変化するものであり、突風に対しても素早い退避動作が望まれる。この動作が遅れると風の利用効率が低下するだけでなく、一瞬にして破損して大きな損害を被ることとなる。本案の回転翼は予定外の風圧を受けた時、又は連続的な強風によってタービンの回転数が過大となった時などには外部からの制御で回転翼スパーを、通常の回転軸と平行な方向から円周と平行方向に倒すことができる。この機構を前述のフェザーリング機構の動作と干渉せずに両立させることが出来る。
【0016】
本案の風力自在航行システムの機構は、発電機能と密接に関係する場合が多い。一定速度で航行しようとする場合、風力は多くの場合航行に必要な動力に対して過不足が生じる。風力が不足する状態では、通常の動力船のようにエンジン、モーターなどの外部動力を加算してスクリューを駆動する。もちろんこの場合でも風力を用いない場合に比べて少ない動力で航行することが可能である。
【0017】
風力が航行に使用する動力より大きい場合はその過剰な動力は風力タービンの回転軸からギヤーなどによって容易に発電機の回転軸を駆動することによって発電することが出来る。その電力は蓄電器などに蓄え、必要に応じて使用することができる。
【0018】
更に入出港時には既設の橋をくぐる等の高さ制限を受けることがある。このような場合、従来使用されていた大型の帆船ではマストの高さを変えることは出来ないので、港の外で待機せざるを得ないという不都合が発生する。このような場合でも、前述の回転翼を回転軸と平行な方向から円周と平行方向に倒すことができるので、余裕をもって既存の橋の下をくぐり入港することが出来る。
【0019】
その他、通常の垂直軸風車の欠点としてフェザーリング機構が無い状態では、回転翼と風向きとの角度が大きすぎる場合には、回転翼は失速状態となり回転力を発揮することが出来ずに、振動を生じることがある。この状態ではシステムとしては全く機能せずに、単に風圧を受けて風下に流されるのみである。
このような状態を避けるうえでも上記のフェザーリング機構の効果が大きい。
仮に一時期一枚の回転翼が失速状態となったとしても、他の回転翼が失速状態でなければ充分な回転力を得る事が出来、いわゆるデッドポイントが生じることはない。
【0020】
最終的な機能として、追い風状態で航行しているときに、一時的に風速が弱くなった状態を想像すると、船の航行速度が風速より速くなってしまう。このような時に回転翼に航行速度を減少させるようなマイナスの力が働くことは好ましくない。
【0021】
このような場合では、システムとしては追い風状態が瞬時に迎角状態になったことになる。本案のフェザーリング機構はこのような場合でもその機能に支障はなく、継続して推進力を得る事が出来るものである。従って本案の風力自在航行システムが航行の障害となることは全くないと云えるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の風力自在航行システムの効果は、その上記の特徴を生かしてこれまでの帆走装置の多くの欠点を改善し得るものである。
以下図によってその構造を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下図について説明する。
【
図1】
図1は本発明の1実施形態を示した側面図である。
【
図2】
図2は本発明の1実施形態を示した正面図である。
【
図3】
図3は本発明の1実施形態を示した平面図である。
【
図4】
図4は本発明の1実施形態の他の状態を示した平面図である。
【
図5】
図5は本発明の1実施形態の他の状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の船首波活用装置の機能を損なわない範囲で簡略化して実現するための実施形態を示す。
【実施例0025】
図において船体1には底部に横流れを防ぐキール2と、後部に舵3が設けられ、喫水線4に直交する回転軸5が、喫水線より上に位置する上部軸受6と下にある下部軸受7によって回転自在に支持されている。下部軸受7より下に自在接手8を介して推進機9が後方に向けて水平軸10によって回転自在に支持されている。11は船体の自立安定性を得るための重錘である。
【0026】
上部軸受6より上にギヤー12とギヤー13を介して発電機14が設けられている。回転軸5には水平方向に延びる複数のアーム15が固着され、該アーム15には回転軸5に直角な回転アーム16が設けられ該回転アーム16の先端には、通常垂直上方を向いたフェザーリング軸17が設けられ、付け根付近には軸回動アーム18が設けられている。該それぞれの軸回動アーム18には回転継ぎ手を介して上下作動バー19が結合され、回転軸5に対して上下にスライドするパイプ部材20の横アーム21に結合されている。パイプ部材20が上下することで回転アーム16は約90度回転して先端のフェザーリング軸17の角度は垂直から水平状態になり得る。
【0027】
パイプ部材20には揺動自在なスイング部材22が設けられ、該スイング部材22の外周部には曲がりアーム23が複数設けられ回転アーム16とは図示しない機構で相互の回転を制限された状態で縦横自在にスイングし得る構造とされている。該曲がりアーム23のそれぞれの先端に自在接手を介してフェザーリングロッド24が設けられている。フェザーリング軸17には下回転翼25が折翼前縁に突き出たヒンジ26において回動自在に勘合されており、後縁付近の突起27においてフェザーリングロッド24の他端と結合している。
尚、スイング部材22のスイング動作は下回転翼25が受ける風力によって受動的に生じるものであり、図示しない制限機構によるスイング角度の制限によって下回転翼25のフェザーリング角度を制限することができる。従って風の方向によって最適なフェザーリング角度を設定して、効率よく航行する事が出来、この場合にも大きな外力を必要とするものではない。あらかじめ風向きによるスイング角度を設定しておけば、追い風から向かい風に変化するような条件でも該スイング部材22の自動的な動作で下回転翼25のフェザーリング角度は最適値を保つ事が出来る。
【0028】
更に下回転翼25の上部の折畳みヒンジ軸28には上回転翼29が折れ曲がり自在に取り付けられ、中央部前縁のフック30と可撓性のワイヤー32で結合されている。上回転翼29は常時図示しないスプリングで下回転翼25に対して直線状に延びるように付勢されている。パイプ部材20が上下することで回転アーム16は約90度回転して先端のフェザーリング軸17の角度は垂直から水平状態になると、可撓性のワイヤー32で結合された上回転翼29は回転軸5上のスライド部材31が下方にスライドする動きにより
図4及び
図5に示す位置に収納される。
図において回転アーム16及び下回転翼25などを4個に設定した状態を示しているが、これらの数は特定するものではない。
【0029】
〔動作〕
以下上記本発明の風力自在航行システムの動作を説明する。
図3において回転アーム16は反時計方向に回転している。風が矢印方向から(左側から)吹いている場合には、下回転翼25は後縁が風下方向に押される。それに伴い風上側及び風下側の下回転翼25の後縁はスイング部材22によって結合されているので、同時に風下側に押される。回転アーム16が反時計方向に回転していれば下回転翼25の傾きは風と回転方向の合成運動で生じる風の方向に合致することで適度な迎角となり、揚力を発生して回転軸5に回転力を生じさせる。自由な方向にスイングできるスイング部材22の効果によってすべての下回転翼25は同期して風下側に動くので、これが適切なフェザーリング動作を発生することとなる。この動作は風の力による受動的なものであり、人為的な外力を加える必要はない。又、急に風向きが右側から左側に、あるいは追い風から向かい風に変わっても自動的に対応することが出来て動作の遅れは生じない。必要なことは複数の回転翼が同時に任意の方向に動き得る事であり、これまでの帆走システムのように多くの帆を動力、人力を使って操作するのに比べれば比較にならない簡便さである。回転翼の位置と風向きとの関係によるデッドポイントも発生することはない。又、正面からの風に向かって進む時も、回転運動を行いながら前進する回転翼自体の軌跡は自動的にジグザクに進んでいるとみなすことも出来るので、このことから推定すれば、船としては真っすぐに進めると云うことの可能性も容易に納得できるものである。このような優れた動作を可能にする機構はこの種のシステムにおいて他に例を見ない。
【0030】
又、
図4において、パイプ部材20が下方に動くと回転アーム16は約90度回転して先端のフェザーリング軸17の角度は垂直から水平状態になり得る。
図4はこの状態を示す上面図であり、
図5はその平面図である。この時、折畳みヒンジ軸28によって折れ曲がり自在に取り付けらたれた上回転翼29は下回転翼25に取り付けられ、中央部前縁のフック30と回転軸上のスライド部材31と可撓性のワイヤー32で結合されているので、該ワイヤー32に引かれて約90度折れ曲がって下回転翼25とほぼ平行な状態に収納される。
この動作は、外部からの動作を基本とするが極めて操作で複数の上下回転翼25と29が同時に折りたたまれるので緊急時の素早い動作を可能にして、安全性を高める事が出来る。又、この機構は回転翼の保守を行う上でも極めて有効である。現状の風力タービンでは高いところに登っての保守作業が必要であり、危険性も伴うが本発明の風車はいつでも容易に低いところで安全に保守点検を行うことができる。
【0031】
この機構は、強風時に回転翼を風の力から守ることができるため、設計強度を過大に設定する必要もなく、コストダウンに有効な他、入港、出港時に航路上の橋を潜るうえでも利便性が高く帆走システムとしての用途の拡大が可能である。
【0032】
説明が前後するが回転軸5は発電機14との接続は任意なので必要に応じた対応が可能であり、実用状態に応じた負荷を接続すればよいだけである。
本発明の風力自在航行システム従来の帆走船における多くの課題を一期に改善するものであり、内燃機関による航行システムの燃料消費を大幅に削減して、海上輸送の経済性を向上させるだけでなく、洋上における発電装置としての可能性を著しく向上し、地球温暖化防止に大きく貢献するものであり、その産業上の効果・社会的及び経済的効果は極めて著しい。