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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088805
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/419 20060101AFI20230620BHJP
   G11C 11/417 20060101ALI20230620BHJP
   G11C 7/20 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G11C11/419
G11C11/417 100
G11C7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203770
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長田 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康治
【テーマコード(参考)】
5B015
【Fターム(参考)】
5B015HH03
5B015JJ21
5B015KA13
5B015KA33
5B015KB25
5B015KB62
5B015KB92
5B015MM05
5B015NN02
5B015PP08
(57)【要約】
【課題】面積の増加を抑制しながら、比較的高速にメモリセルのデータを初期化することが可能な技術を提供することにある。
【解決手段】半導体装置の制御回路は、リセット信号がハイレベルとされたことに基づいて、第1トランジスタをオフ状態、複数のワード線を選択状態、プリチャージ回路をオフ状態、書き込み用カラムスイッチをオン状態、および、前記読み出し用カラムスイッチをオフ状態として、書き込み回路によって第1ビット線をロウレベルとし、第2ビット線をハイレベルとすることにより、複数のメモリセルを初期化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワード線と、
複数対の第1ビット線及び第2ビット線と、
1本のワード線と1対の第1ビット線及び第2ビット線に接続されるように、前記複数のワード線と前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線とに接続された複数のメモリセルと、
前記複数のメモリセルと電源電位との間に設けられた第1トランジスタと、
前記複数のワード線に接続された複数のワード線ドライバと、
前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線のそれぞれに接続された書き込み用カラムスイッチと、
前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線のそれぞれに接続された読み出し用カラムスイッチと、
前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線のそれぞれに接続されたプリチャージ回路と、
各書き込み用カラムスイッチに接続された書き込み回路と、
リセット信号を受ける制御回路と、を含み、
前記制御回路は、前記リセット信号がハイレベルとされたことに基づいて、前記第1トランジスタをオフ状態、前記複数のワード線を選択状態、前記プリチャージ回路をオフ状態、前記書き込み用カラムスイッチをオン状態、および、前記読み出し用カラムスイッチをオフ状態として、前記書き込み回路によって前記第1ビット線をロウレベルとし、前記第2ビット線をハイレベルとすることにより、前記複数のメモリセルを初期化する、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1の半導体装置において、
前記複数のワード線ドライバと電源電位との間に設けられた電流制限用の第2トランジスタを含み、
前記制御回路は、前記リセット信号がハイレベルとされたことに基づいて、前記第2トランジスタをオン状態とする、半導体装置。
【請求項3】
請求項1の半導体装置において、
前記制御回路は、前記リセット信号が前記ハイレベルからロウレベルへ遷移したとき、前記複数のワード線がすべて非選択レベルとなった後、前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線のプリチャージを開始するように、前記プリチャージ回路を制御する、半導体装置。
【請求項4】
請求項1の半導体装置において、
前記制御回路は、書き込み及び読み出し用の内部クロック発生回路を含み、
前記制御回路は、前記リセット信号がハイレベルとされたとき、前記内部クロック発生回路を停止させる、半導体装置。
【請求項5】
請求項1の半導体装置において、
前記制御回路は、
前記リセット信号が前記ハイレベルからロウレベルへ遷移したとき、前記第1トランジスタをオン状態として前記複数のメモリセルへ前記電源電位を供給するように制御し、
その後、前記複数のワード線をすべて非選択レベルとするように制御し、
その後、前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線のプリチャージを開始するように、前記プリチャージ回路を制御する、半導体装置。
【請求項6】
請求項1の半導体装置において、
前記複数のメモリセルに対する書き込み動作または読み出し動作を有し、
前記制御回路は、前記書き込み動作または前記読み出し動作中に、前記リセット信号がロウレベルから前記ハイレベルへ遷移した場合、前記書き込み動作または前記読み出し動作が完了してから、前記複数のメモリセルの初期化を開始させる、半導体装置。
【請求項7】
請求項6の半導体装置において、
前記複数のメモリセル、前記複数のワード線および前記複数対の第1ビット線及び第2ビット線を含むメモリアレイと、
前記メモリアレイ、前記複数のワード線ドライバ、前記書き込み用カラムスイッチ、前記読み出し用カラムスイッチ、前記プリチャージ回路、前記書き込み回路および前記制御回路を含むメモリマクロと、を含み、
前記制御回路は、前記メモリアレイの外周または前記メモリマクロの外周を周回させた配線経路によって、前記複数のメモリセルのリセット開始信号を生成する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、特に、スタティック型ランダムアクセスメモリ(SRAM)を含む半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
データ処理装置などの半導体装置は、データ保持用のメモリ装置としてスタティック型ランダムアクセスメモリ(SRAM)を内蔵するものが多い。このSRAMに重要なデータを格納する場合、耐タンパ観点での対策が必要となる。SRAMに格納した重要なデータの内容が悪意のあるユーザによって読みだされないように、SRAMに格納した重要なデータを瞬時に一括消去または初期化する技術が必要となっている。
【0003】
メモリセルに格納したデータの初期化技術として、特許文献1~特許文献3、および、非特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0046173号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0023521号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0293679号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kevin Self, APPLICATION NOTE 2033, SRAM-Based Microcontroller Optimizes Security,[online], Jun 27, 2003,[2020年11月25日検索],インターネット<URL:https://pdfserv.maximintegrated.com/en/an/AN2033.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、ワード線立上げタイミングを遅延回路の付加によりドミノ式にして、下側から上側のワード線に向かって一ワード線毎にメモリセルの初期化を行う回路の構成を開示している。この構成では、1つのビット線に接続されるメモリセルが多い場合、メモリセルデータの全初期化にかなり時間が掛かる。また、ワード線立上げタイミングをずらす為の遅延回路が必要となり、ワード線デコーダ部(ロウデコーダ部とも言う)の面積増となる。
【0007】
特許文献2は、ビット線に専用の初期化用のビット線制御回路を設ける構成を開示している。この構成では、SRAMの通常の読み及び書き制御用回路にビット線制御回路を付加する為、SRAMマクロの面積が大きくなる。
【0008】
特許文献3は、メモリセルのNFET(3N8,3N9)に接続される線(319,321)を、左右のメモリセルノード毎に分離して電圧制御し、メモリセルデータの初期化を容易にする構成を開示している。この構成では、メモリセルに接続される線319,321の配線レイアウトを、TrueノードとBarノードとに分離する必要があり、メモリセル面積が大きくなる。
【0009】
非特許文献1は、「自己破壊入力をオンにするとSRAMへの電源供給が遮断されるので、プログラムメモリとデータメモリもすべて消去される。」と開示している。しかしながら、低温においては、SRAMのデータが中々消せない。つまり、メモリセルを構成するトランジスタが全てオフしてしまうので、メモリセルのデータ保持ノードの電荷が抜けないためである。
【0010】
本開示の課題は、面積の増加を抑制しながら、比較的高速にメモリセルのデータを初期化することが可能な技術を提供することにある。
【0011】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0013】
一実施の形態に係る半導体装置は、複数のワード線と、複数対の第1ビット線及び第2ビット線と、1本のワード線と1対の第1ビット線及び第2ビット線に接続されるように、複数のワード線と複数対の第1ビット線及び第2ビット線とに接続された複数のメモリセルと、複数のメモリセルと電源電位との間に設けられた第1トランジスタと、複数のワード線に接続された複数のワード線ドライバと、複数対の第1ビット線及び第2ビット線のそれぞれに接続された書き込み用カラムスイッチと、複数対の第1ビット線及び第2ビット線のそれぞれに接続された読み出し用カラムスイッチと、複数対の第1ビット線及び第2ビット線のそれぞれに接続されたプリチャージ回路と、各書き込み用カラムスイッチに接続された書き込み回路と、リセット信号を受ける制御回路と、を含む。制御回路は、リセット信号がハイレベルとされたことに基づいて、第1トランジスタをオフ状態、複数のワード線を選択状態、プリチャージ回路をオフ状態、書き込み用カラムスイッチをオン状態、および、読み出し用カラムスイッチをオフ状態として、書き込み回路によって第1ビット線をロウレベルとし、第2ビット線をハイレベルとすることにより、複数のメモリセルを初期化する。
【発明の効果】
【0014】
上記一実施の形態に係る半導体装置によれば、面積の増加を抑制しながら、比較的高速にメモリセルのデータを初期化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態1に係るメモリ装置の全体構成を説明する図である。
図2図2は、図1のメモリ装置のメモリセル部を説明する図である。
図3図3は、図1のメモリ装置の入出力部を説明する図である。
図4図4は、図1のメモリ装置のワードドライバ部を説明する図である。
図5図5は、図1のメモリ装置の制御部を説明する図である。
図6図6は、通常動作状態時において、リセット信号がオン状態となった場合のタイミングチャートである。
図7図7は、スタンバイ状態時において、リセット信号がオン状態となった場合のタイミングチャートである。
図8図8は、実施形態1のタイミングを説明する図である。
図9図9は、実施形態2のタイミングを説明する図である。
図10図10は、実施形態1のリード・ライト動作中にリセット要求が発生した場合のタイミングを説明する図である。
図11図11は、実施形態2のリード・ライト動作中にリセット要求が発生した場合のタイミングを説明する図である。
図12図12は、実施形態2に係るメモリ装置の全体構成を説明する図である。
図13図13は、図12のメモリ装置のメモリセル部を説明する図である。
図14図14は、図12のメモリ装置の制御部を説明する図である。
図15図15は、図14のリセット制御回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0017】
(実施形態1)
以下、図面を用いて、本開示を説明する。図1は、実施形態1に係るメモリ装置の全体構成を説明する図である。図2は、図1のメモリ装置のメモリセル部を説明する図である。図3は、図1のメモリ装置の入出力部を説明する図である。図4は、図1のメモリ装置のワードドライバ部を説明する図である。図5は、図1のメモリ装置の制御部を説明する図である。図6は、通常動作状態時において、リセット信号がオン状態となった場合のタイミングチャートである。図7は、スタンバイ状態時において、リセット信号がオン状態となった場合のタイミングチャートである。
【0018】
図1には、メモリ装置であるスタティック型ランダムアクセスメモリ(以下、SRAMという)1の全体構成が示されている。SRAM1は、データ処理装置などの半導体装置に内蔵されるデータ保持用のメモリ装置である。データ処理装置が形成された半導体チップには、中央処理装置CPU、SRAM1、他の周辺装置等が内蔵される。
【0019】
SRAM1は、メモリセルアレイ部AR、ワード線デコーダ部(ロウデコーダ部とも言う)RDE、入出力部IO、制御部(制御回路ともいう)CONT、ビット線デコーダ部(カラムデコーダとも言う)CDE等を含む。
【0020】
(メモリアレイ部AR)
メモリアレイ部ARは、行列状に配置された複数のメモリセルMCと、複数のワード線と、複数対の第1ビット線BTおよび第2ビット線BBと、を含む。各メモリセルは、一対の第1ビット線BT及び第2ビット線BBと、1本のワード線WL(図1では、WL0と記載)とに接続される。各メモリセルは、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタで構成される2つの転送トランジスタN3,N4と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタで構成される2つの負荷トランジスタP1,P2と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタで構成される2つの駆動トランジスタN1,N2と、を含む。負荷トランジスタP1のソースドレイン経路と駆動トランジスタN1のソースドレイン経路とは、メモリアレイ電源電位ARVDDと接地電位VSSとの間に直列に接続されている。負荷トランジスタP2のソースドレイン経路と駆動トランジスタN2のソースドレイン経路とは、メモリセル電源電位ARVDDと接地電位VSSとの間に直列に接続されている。
【0021】
負荷トランジスタP1のゲートと駆動トランジスタN1のゲートは接続されて共通ゲートを構成し、負荷トランジスタP2のドレインと駆動トランジスタN2のドレインとは接続されて共通ドレインを構成し、負荷トランジスタP1と駆動トランジスタN1の共通ゲートが負荷トランジスタP2と駆動トランジスタN2の共通ドレインに接続される。同様に、負荷トランジスタP2のゲートと駆動トランジスタN2のゲートは接続されて共通ゲートを構成し、負荷トランジスタP1のドレインと駆動トランジスタN1のドレインとは接続されて共通ドレインを構成し、負荷トランジスタP2と駆動トランジスタN2の共通ゲートが負荷トランジスタP1と駆動トランジスタN1の共通ドレインに接続される。
【0022】
転送トランジスタN3のソースドレイン経路は、第1ビット線BTと負荷トランジスタP1と駆動トランジスタN1の共通ドレインとの間に接続される。転送トランジスタN3のゲートはワード線WL0に接続されている。転送トランジスタN4のソースドレイン経路は、第2ビット線BBと負荷トランジスタP2と駆動トランジスタN2の共通ドレインとの間に接続される。転送トランジスタN4のゲートはワード線WLに接続されている。
【0023】
第1ビット線BTがハイレベル”1”の書き込みデータとされ、第2ビット線BBがロウレベル”0”の書き込みデータとされた状態で、ワード線WLがハイレベルのような選択レベルとされると、転送トランジスタN3、N4がON状態とされて、ハイレベル”1”のデータがメモリセルMCに格納される。一方、第1ビット線BTがロウレベル”0”の書き込みデータとされ、第2ビット線BBがハイレベル”1”の書き込みデータとされた状態で、ワード線WLがハイレベルのような選択レベルとされると、転送トランジスタN3、N4がON状態とされて、ロウレベル”0”のデータがメモリセルMCに格納される。この明細書において、メモリセルMCがロウレベル”0”のデータを格納する状態を、ロウレベルのデータ書き込み状態、または、メモリセルMCの初期化状態と呼ぶこととする。なお、メモリセルMCがハイレベル”1”のデータを格納する状態を、メモリセルMCの初期化状態と定義しても、もちろん良い。
【0024】
図1図2に示すように、電源電位VDDとメモリアレイ電源電位ARVDDとの間には、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタで構成されるトランジスタ(第1トランジスタ)T1のソースドレイン経路が接続されており、トランジスタT1のゲートには、制御部CONTから、リセット時にハイレベル”H”とされる制御信号RSTEが供給されるように構成されている。図2に示すように、第1ビット線BTと第2ビット線BBとの間に接続された1カラムを構成する複数のメモリセルMCにおいて、各メモリセルMCの負荷トランジスタP1、P2の各ソースがトランジスタT1のソースドレイン経路を介して電源電位VDDに接続されている。不図示の他のカラムも同様に構成されている。これにより、トランジスタT1はリセット時にオフ状態となるので、メモリアレイAR内の全メモリセルMCのメモリ保持能力が無力化されるので、各メモリセルMCの格納データを容易に初期化状態できるように構成されている。また、メモリアレイAR内の全メモリセルMCを一括して一度に初期化状態にすることを可能とする。
【0025】
(ワード線デコーダRDE)
ワード線デコーダRDEは、アドレス信号をデコードし一本のワード線を選択する不図示のロウデコーダ回路と、ロウデコーダ回路の出力を受けるように接続された複数のワード線ドライバWDRを含む。複数のワード線ドライバWDRは複数のワード線WL0-WLnにそれぞれ接続され、選択されたワード線を駆動する。図1及び図4に示すように、複数のワード線ドライバWDRの最終ドライバのVDD側端子と電源電位VDDとの間には、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタで構成されるトランジスタ(第2トランジスタ)T2のソースドレイン経路が接続されており、トランジスタT2のゲートには、制御部CONTから、リセット時にロウレベル”L”とされる制御信号LCM2が供給されるように構成されている。複数のワード線ドライバWDRは、リセット時において、全ワード線WL0-WLnを選択状態とする様に構成されている。トランジスタT2は、全ワード線WL0-WLnを同時に立上げて選択状態とする際に発生するラッシュカレントを低減するために設けられており、ラッシュカレントの電流量を制限する役割を有する電流制限用PMOSトランジスタである。
【0026】
図4に示すように、ワード線ドライバWDRは、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタT3及びNチャネル型MOS電界効果トランジスタT4で構成された最終ドライバFDRと、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタT4のソースと接地電位VSSとの間にソースドレイン経路が接続されたNチャネル型MOS電界効果トランジスタT5と、を有する。最終ドライバFDRに入力は、ロウデコーダ回路からの出力を受けるように接続されている。ワード線ドライバWDRは、さらに、最終ドライバFDRの出力に接続されたワード線WLnとトランジスタT2のソースとの間にソースドレイン経路が接続されたPチャネル型MOS電界効果トランジスタT6と、ワード線WLnと接地電位VSSとの間にソースドレイン経路が接続されたNチャネル型MOS電界効果トランジスタT7と、を有する。トランジスタT5,T6のゲートは制御信号RSTWDを受けるように配線に接続され、トランジスタT7のゲートは制御信号LCMWDを受けるように配線に接続されている。制御信号RSTWDは、インバータIV1によって制御信号RSTWDBACKとされて、制御部CONTへ戻される。ワード線が立下がってから、ビット線BT,BBのプリチャージを開始するため、制御信号RSTWDをインバータIV1によって反転して制御信号RSTWDBACKを生成して、制御部CONTへ戻す。制御部CONTでは、制御信号RSTWDBACKと制御信号RESTEとの論理を取る。つまり、リセット解除時(リセット信号はハイレベルからロウレベルへ遷移した時)、ワード線下げ信号の遠端部分の信号を制御部CONTへフィードバックして、ワード線立ち下げが全て終わった後に、ビット線BT、BBのプリチャージを開始するように構成する。これにより、ワード線WLのハイレベルの活性期間とビット線BT,BBのプリチャージ期間とのオーバーラップによる余分な貫通電力を防止できる為、リセット動作時の動作電流を低減できる。
【0027】
(入出力部IO)
図1に示すように、入出力部IOは、ビット線BT,BB間にソースドレイン経路が接続されたPチャネル型MOS電界効果トランジスタから構成されるイコライズトランジスタEQと、電源電位VDDとビット線BTにソースドレイン経路が接続されたPチャネル型MOS電界効果トランジスタから構成されるプリチャージトランジスタPC1と、電源電位VDDとビット線BBにソースドレイン経路が接続されたPチャネル型MOS電界効果トランジスタから構成されるプリチャージトランジスタPC2と、を含むプリチャージ回路を有する。トランジスタEQ、PC1,PC2の各ゲートは共通に接続されて、制御信号CWSEを受けるように構成されている。トランジスタEQ、PC1、PC2は、ハイレベル”H”の制御信号CWSEによってオフ状態とされ、ロウレベル”L”の制御信号CWSEによって、オン状態とされる。リセット時において、トランジスタEQ、PC1、PC2は、ハイレベル”H”の制御信号CWSEによってオフ状態とされる。制御信号CWSEは、カラムライトセレクト信号ということもできる。
【0028】
入出力部IOは、また、ビット線BTに書き込みデータを供給するための第1書き込み回路(ライトバッファとも言う)WBTと、ビット線BBに書き込みデータを供給するための第2書き込み回路(ライトバッファとも言う)WBBと、を含む。リセット時において、書き込み回路WBTはビット線BTにロウレベル”L”の書き込みデータを供給し、書き込み回路WBBはビット線BBにハイレベル”H”の書き込みデータを供給する。したがって、リセット時において、全カラムの全ビット線BTはロウレベル”L”の電位レベルとされ、全カラムの全ビット線BBはハイレベル”H”の電位レベルとされる。
【0029】
入出力部IOは、また、書き込み用の第1及び第2カラムスイッチCTW、CBWを有する。カラムスイッチCTWは、書き込み回路WBTの出力とビット線BTとの間に接続されたソースドレイン経路を有する。カラムスイッチCBWは、書き込み回路WBBの出力とビット線BTとの間に接続されたソースドレイン経路を有する。カラムスイッチCTW、CBWのゲートには、制御信号CWSEが供給される。入出力部IOは、また、読み出し用の第1及び第2カラムスイッチCTR、CBR(図3参照)を有する。カラムスイッチCTRは、ビット線BTとセンスアンプSAの入力との間に接続されたソースドレイン経路を有する。カラムスイッチCBRは、ビット線BTとセンスアンプSAの入力の間に接続されたソースドレイン経路を有する。リセット時には、全カラムの書き込み用のカラムスイッチCTW、CBWはオン状態とされるように構成され、全カラムの読み出し用のカラムスイッチCTR、CBRはオフ状態とされるように構成されている。
【0030】
つまり、リセット時には、トランジスタT1はオフ状態とされ、全ワード線WLは選択状態とされ、全メモリセルMCの転送トランジスタN3、N4はオン状態とされる。そして、全カラムの書き込み用のカラムスイッチCTW、CBWはオン状態とされ、書き込み回路WBTはビット線BTにロウレベル”L”の書き込みデータを供給し、書き込み回路WBBはビット線BBにハイレベル”H”の書き込みデータを供給する。これにより、全メモリセルの格納データが高速に初期化状態にされる。
【0031】
図3には、入出力部IOの詳細な回路構成が示されている。入出力部IOは、カラムセレクタ及びプリチャージ部CPPと、ライトバッファ及びセンスアンプ部WSPと、を含む。カラムセレクタ及びプリチャージ部CPPは、図1で説明したように、プリチャージ回路としてのトランジスタEQ、PC1,PC2と、書き込み用のカラムスイッチCTW、CBWと、読み出し用のカラムスイッチCTR、CBRと、を含む。制御信号CRSEが読み出し用のカラムスイッチCTR、CBRのゲートに供給されている。制御信号CRSEは、カラムリードセレクト信号ということもできる。リセット時には、全カラムの制御信号CRSEはハイレベル”H”とされるように構成されている。
【0032】
カラムセレクタ及びプリチャージ部CPPは、通常の書き込み時および通常の読み出し時において、ビット線デコーダ部CDEから選択信号Yを受けるように構成されている。通常の書き込みモードかつ選択レベル”H”の選択信号Yに基づいて制御信号CWSEはハイレベル”H”とされ、制御信号CRSEはハイレベル”H”とされる。また、通常の読み出しモードかつ選択レベル”H”の選択信号Yに基づいて制御信号CRSEはロウレベル”L”とされ、制御信号CWSEはロウレベル”L”とされる。
【0033】
ライトバッファ及びセンスアンプ部WSPは、通常の書き込み時において選択されたメモリセルに書き込む入力データDinが供給されるデータ入力回路DINと、通常の読み出し時において選択されたメモリセルに格納されたデータを検出して読み出しデータDoutとして出力するセンスアンプSAと、を有する。データ入力回路DINは、通常の書き込み時において、入力データDinに基づいて、ビット線BTへの書き込みデータDTとビット線BBへの書き込みデータDBとを生成する。データDT、BTは、オン状態とされた書き込み用のカラムスイッチCTW、CBWを介してビット線BT、BBへ供給されることになる。DTB、DBBはデータDT、BTの反転信号を示す。
【0034】
図3に示すように、ライトバッファ及びセンスアンプ部WSPは、制御部CONTから制御信号RSTE、LCMN,WTEを受けるようにされている。制御信号RSTEは、リセット時にハイレベル”H”とされる信号である。制御信号WTEは、通常の書き込み時にハイレベル”H”とされる信号である。制御信号RSTEBは制御信号RSTEの反転信号を示す。制御信号WTEBは制御信号WTEの反転信号を示す。制御信号TIEHは、データ入力回路DINの出力側に設けられたNAND回路とOR回路の組み合わせ回路において、制御信号RSTEBとの対照性を保つためのダミー信号である。リセット時において、制御信号RSTEがハイレベル”H”とされると(制御信号RSTEBはロウレベル”L”)、反転データ信号DTBはハイレベル”H”とされ、反転データ信号DBBはロウレベル”L”とされる。これにより、リセット時において、ビット線BTはロウレベル”L”とされ、ビット線BBはハイレベル”H”とされるので、メモリセルMCを初期化状態とすることができる。
【0035】
(制御部CONT)
図1に示す制御部CONTは、リセット時、内部ワンショットクロックを立下げて、書き込み動作および読み出し動作をオフさせ、カラム選択をオフさせるように制御する。また、制御部CONTは、リセット状態から抜ける時(リセット解除時またはリセットモード解除時)は、ワード線WL立ち上げを待ってから、ビット線BT,BBのプリチャージを開始するように制御する。
【0036】
図5には、制御部CONTの詳細な回路構成が示されている。制御部CONTは、スタンバイ信号RSと、リセット信号RESET、クロック信号CLKを受けるように構成されている。スタンバイ信号RSがハイレベル”H”とされると、SRAM1はスタンバイ状態にされる。スタンバイ信号RSがロウレベル”L”とされると、SRAM1は通常の動作モードにされる。通常の動作モードは、読み出しモードと書き込みモードとを含む。
【0037】
リセット信号RESETがハイレベル”H”とされると、SRAM1はリセット状態にされる。SRAM1がリセット状態とされると、SRAM1内の全メモリセルMCが初期化状態とされることになる。
【0038】
制御部CONTは、図5に示す複数の論理回路により構成されている。制御部CONTは、スタンバイ信号RSとリセット信号RESETとから、制御信号LCM2、LCMWD、RSTWDを生成してワード線ドライバWDRへ供給する。また、制御部CONTは、制御信号RSTWDBACKをワード線ドライバWDRから供給される。制御部CONTは、リセット信号RESETと制御信号RSTWDBACKとに基づいて、制御信号RSTEを生成する。制御信号RSTEは、ビット線BT、BBに、メモリセルデータ初期化の電位設定を印加させる為の制御信号、及びメモリセルのVDD側電源をカットオフさせる為(トランジスタT1をオフさせる)の制御信号として利用される。制御信号RSTWDBACKは、リセット解除時に、ワード線が立ち下がってから、ビット線の再プリチャージを開始させる為の、ワード線遠端での立下げ信号の戻り信号である。制御部CONTは、また、書き込み及び読み出し用の内部クロック生成回路CLKGENを内蔵しており、内部クロック生成回路CLKGENはクロック信号CLKを受けて、内部ワンショットクロックのような制御信号TDECを生成する。内部クロック生成回路CLKGENは、制御信号RSTEを受けるようにされ、リセット時において、書き込み及び読み出し動作用の内部クロック(内部ワンショットクロック)の発生を停止させるように構成されている。内部クロック生成回路CLKGENは内部クロック発生回路と言い換えてもよい。
【0039】
(タイミングチャート)
図6には、スタンバイ信号RSはロウレベル”L”とされる通常動作状態時において、リセット信号RESETがロウレベル”L”からハイレベル”H”とされて、SRAM1がリセット状態となった場合のタイミングチャートである。図7には、スタンバイ信号RSはハイレベル”H”とされるスタンバイ状態において、リセット信号RESETがロウレベル”L”からハイレベル”H”とされて、SRAM1がリセット状態となった場合のタイミングチャートである。図6図7とでは、クロック信号CLK、制御信号LCM2、LCMWDの波形が異なっている。
【0040】
図6図7において、リセット信号RESETのハイレベル”H”に基づいて、制御信号RSTEがハイレベル”H”へ遷移する。制御信号RSTEのハイレベル”H”へ遷移に基づいて、トランジスタT1がオフ状態とされ、全ワード線が選択レベル”H”とされ、全ビット線BTがロウレベルとされ、全ビット線BBがハイレベルとされる。これにより、メモリセルMCの記憶ノードMEMTがロウレベルとされ、メモリセルMCの記憶ノードMEMBがハイレベルとされ、全メモリセルMCが初期化状態とされる。記憶ノードMEMTは、メモリセルMCのトランジスタP1とトランジスタN1の共通ドレインのノードである。記憶ノードMEMBは、メモリセルMCのトランジスタP2とトランジスタN2の共通ドレインのノードである。
【0041】
図6図7において、リセット信号RESETがハイレベル”H”からロウレベル”L”にされると、トランジスタT1がオン状態、全ワード線が非選択レベル”L”、全ビット線BTおよび全ビット線BBがハイレベルのようなプリチャージレベルにされる。なお、メモリセルMCは初期化状態を維持する。
【0042】
実施形態1によれば、以下の1または複数の効果を得ることができる。
【0043】
1)メモリセルアレイARのVDD側を、スイッチT1を介してVDDに接続する。リセット時に、このスイッチT1をオフ状態とする回路構成とした。スイッチT1のオフ状態により、全メモリセルのメモリ保持能力を無力化し、一度に初期化できる。これにより面積増加無しに、全メモリセルの初期化時間を短くできる。
【0044】
2)リセット時に、全てのワード線を同時に選択する(立ち上げる)回路構成とした。ワード線を同時に立ち上げ、メモリセルの初期化を1度で同時に行えるため、全メモリセルの初期化時間を短くできる。
【0045】
3)リセット時に、SRAM内の通常のデータ書き込み回路(WBT、WBB)を用いて、全てのビット線BT、BBに、初期化のためのロウレベル及びハイレベルを印加する回路構成とした。通常のメモリセルへのデータ書き込み回路(WBT,WBB)を流用する為、面積増加が無い。
【0046】
4)リセット信号により、Write/Read用の内部クロック発生回路CLKGENの1ショットクロックをオフ状態とする回路構成とした。内部クロック発生回路CLKGENをオフ状態とするので、どのようなタイミングでリセット信号RESETがハイレベルへ遷移しても、即座に全メモリセルの初期化動作に移行できる為、SRAMの動作モードによらず、全メモリセルを短時間で初期化状態にできる。
【0047】
5)ワード線立上げ用Inverter(最終ドライバFDR)のPMOS(T3)のソースを、電流制限用MOS(T2)を介して、電源電位VDDに接続する回路構成とした。電流制限用PMOS(T2)により、全ワード線が同時に立ち上がる事によるラッシュカレントを制限および抑制する為、リセット時のワード線ドライバWDRのピーク電流を低減できる。
【0048】
6)リセットモード解除時に、ワード線を先に立ち下げてから、ビット線BT,BBのプリチャージをトランジスタEQ,PC1,PC2で開始するようなタイミングを生成する回路構成とした。ワード線WLのハイレベルの活性期間とビット線BT,BBのプリチャージ期間とのオーバーラップによる余分な貫通電力を防止できる為、リセット動作時の動作電流を低減できる。
【0049】
(実施形態2)
次に、実施形態2について図面を説明する。理解を容易とするために、まず、図8から図11を用いて、本開示者の検討事項について説明する。
【0050】
図8は、実施形態1のタイミングを説明する図である。図9は、実施形態2のタイミングを説明する図である。図10は、実施形態1のリード・ライト動作中にリセット要求が発生した場合のタイミングを説明する図である。図11は、実施形態2のリード・ライト動作中にリセット要求が発生した場合のタイミングを説明する図である。リセットはリセットモードと言い換えてもよい。
【0051】
図8には実施形態1では、リセット解除時(リセット信号RESETがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移)に、メモリセルMCへの電源VDDの供給がオフ状態(トランジスタT1のオフ状態により、電源電位VDDが未供給の状態)で、ワード線WLがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移する。このため、メモリセルMCの転送トランジスタN3,N4が閉じてしまうので、メモリセルMCのハイレベル”H”側(記憶ノードMEMB側)のデータ保持能力DHが不十分な状態(弱い状態:W)となる可能性が考えられる。このため、リセット動作中にメモリセルMC内に書き込んだデータがメモリセルMC内に保持されない可能性が考えられる。あるいは、リセット動作中にメモリセルMC内に書き込んだデータが破壊されてしまう可能性も考えられる。なお、図8において、データ保持能力DHにおいて、Sは記憶ノードMEMB側のデータ保持能力が十分な状態を示している。
【0052】
図9では、図8で説明したリセット動作中に書き込んだデータがメモリセルMC内に保持されない可能性を低減するため、リセット解除時(リセット信号RESETがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移)に、メモリセルMCへの電源VDDの供給がオン状態(トランジスタT1のオン状態により、電源電位VDDが供給されている状態)で、ワード線WLがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移するように、タイミングを変更する。これにより、メモリセルMCのハイレベル”H”側(記憶ノードMEMB側)のデータ保持能力DHが十分な状態(S)になり、リセット動作中にメモリセルMC内に書き込んだデータがメモリセルMC内に確実に保持されるように構成することができる。
【0053】
したがって、制御部CONTが、リセットモード解除時(リセット信号RESETがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移の後)に、メモリアレイARのVDD側のトランジスタT1をオン状態とした後、ワード線WLをロウレベル”L”に立ち下げてから、トランジスタEQ、PC1,PC2をオン状態としてビット線BT,BBのプリチャージを開始するようなタイミングを生成するように構成される。このようなタイミングを生成可能な制御部CONTについては、以下において図を用いて説明する。
【0054】
図10には、実施形態1の通常の読み出しモードまたは通常の書き込みモードにおいて、リード動作中またはライト動作中にリセット要求が発生した場合のタイミングが示されている。図10において、メモリ動作MC_OPは、待機(wait)とリード動作またはライト動作(Re_Wri_OP)とを含ものとして示す。リセット動作RST_OPは、待機(wait)とリセット書き込み(Reset write)とを含ものとして示す。
【0055】
図10に示すように、リード動作またはライト動作Re_Wri_OP中に、リセット信号RESETがロウレベル”L”からハイレベル”H”へ遷移してリセット要求が発生した場合、リセット信号RESETのハイレベル”H”への遷移に基づいて、メモリ動作MC_OPがリード・ライト動作Re_Wri_OPから待機wait状態へと遷移して、リード・ライト動作Re_Wri_OPが終了され、また、リセット動作RST_OPは待機wait状態からリセット書き込みReset writeへ遷移して、リセット書き込みReset writeが開始される様に構成されている。
【0056】
しかしながら、リセット信号RESETのハイレベル”H”への遷移から、通常のリード・ライト動作Re_Wri_OPを停止するが、通常のリード・ライト動作Re_Wri_OPの停止までに一定時間TCが必要である。この一定時間TCの間、リード・ライト動作Re_Wri_OPが残った状態(継続している状態)なので、リード・ライト動作Re_Wri_OPとリセット書き込みReset writeとが競合する可能性が考えられる。リード・ライト動作Re_Wri_OPとリセット書き込みReset writeとの競合が発生すると、貫通電流パスの発生につながり、大電流が流れる危険性が考えられる。
【0057】
図11には、実施形態2のリード・ライト動作中にリセット要求が発生した場合のタイミングが示されている。図10と同様に、メモリ動作MC_OPは、待機(wait)とリード動作またはライト動作(Re_Wri_OP)とを含ものとして示す。リセット動作RST_OPは、待機(wait)とリセット書き込み(Reset write)とを含ものとして示す。
【0058】
図11に示すように、リード・ライト動作Re_Wri_OP中に、リセット信号RESETがロウレベル”L”からハイレベル”H”へ遷移してリセット要求が発生した場合、リセット信号RESETのハイレベル”H”への遷移に基づいて、まず、メモリ動作MC_OPがリード・ライト動作Re_Wri_OPから待機wait状態へ遷移して、リード・ライト動作Re_Wri_OPが終了される。次に、リード・ライト動作Re_Wri_OPが終了した後、リセット動作RST_OPは待機wait状態からリセット書き込みReset writeへ遷移して、リセット書き込みReset writeが開始される。
【0059】
このように、リード・ライト動作Re_Wri_OPとリセット書き込みReset writeとが、時間的に重なる期間がないので、貫通電流パスの発生を防止できる。これにより、大電流が流れる危険性を排除できる。このようなタイミングを生成可能な制御部CONTについては、以下において図を用いて説明する。
【0060】
図12から図15を用いて、実施形態2のメモリ装置について説明する。図12は、実施形態2に係るメモリ装置の全体構成を説明する図である。図13は、図12のメモリ装置のメモリセル部を説明する図である。図14は、図12のメモリ装置の制御部を説明する図である。図15は、図14のリセット制御回路を説明する図である。
【0061】
図12図13図1図2と異なる点は、図12図13において、トランジスタT1のゲートに、制御信号RSTASWが供給されるように構成されている点である。図12図13の他の構成は、図1図2の他の構成と同じであるので、重複する説明は省略する。制御信号RSTASWは、制御部CONTにより生成され、メモリセルMCへの電源電位VDDの供給をカットオフさせる為の信号である。制御信号RSTASWは、リセット時にハイレベル”H”とされる。リセット解除時は、最初に、トランジスタT1をオン状態とする様に、制御信号RSTASWがハイレベルからロウレベルへ遷移するように構成する。これにより、メモリセルMCへ電源電位VDDがメモリアレイ電源電位ARVDDとして供給されるので、メモリセルMCにリセット書き込みReset writeで書き込まれた初期化データのロウレベル”L”およびハイレベル”H”がメモリセルMC内に確実に保持される。その後、全ワード線WLがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移するように制御される。制御部CONTは、図14で説明する詳細に説明する。
【0062】
図14には、実施形態2にかかる制御部CONTの詳細な回路構成が示されている。図14の制御部CONTが図5の制御部CONTと異なる点は、以下の点である。
【0063】
1)内部クロック生成回路CLKGENが、制御信号RSTEではなく、リセット信号RESETを受ける点である。内部クロック生成回路CLKGENは、リード動作およびライト動作用内部クロック生成回路であり、リセット開始またはリセット期間中において、リード動作およびライト動作用の内部クロックを止めるように構成とされている。
【0064】
2)リセット制御回路RSCNTが設けられている点である。リセット制御回路RSCNTは、リセット信号RESETを受けるようにされており、リード動作およびライト動作が完了してから、リセット開始信号IRESETを生成するように構成される。リセット開始信号IRESETは、制御信号RSTASWとしてトランジスタT1のゲートに供給される。
【0065】
3)制御信号RSTEが、リセット開始信号IRESETと制御信号RSTWDBACKとの否定論理和回路(NOR)により生成される様に構成されている点である。
【0066】
リセット開始信号IRESETは、図15に示すように、メモリアレイ部ARの外周またはメモリマクロ外周を周回させるように形成された配線経路LLに供給して生成する。これにより、リード動作およびライト動作時にリセット信号RESETが発生した場合において、リード動作およびライト動作が完了してからメモリセルMCのリセット書き込みを開始できるように、リセット開始信号IRESETのタイミングを構成することができる。メモリマクロとは、図12図15に示すメモリセルアレイ部AR、ワード線デコーダ部(ロウデコーダ部)RDE、入出力部IO、制御部CONT、ビット線デコーダ部(カラムデコーダ部)CDE等を含むSRAM1の全体的な領域部分を示している。
【0067】
次に、通常モード1(待機状態)->リセット状態へのエントリ->リセット状態からの解除->通常モード2(待機状態)と遷移するSRAM1の動作について、説明する。
【0068】
(1)通常モード1(待機状態):
この状態では、ワード線WLはロウレベル”L”とされ、ロウレベル”L”の制御信号RSTASWによりトランジスタT1がオン状態とされ、接地電位VSSが0Vのようなロウレベルにされている。また、制御信号CWSEがロウレベル”L”にされており、第1ビット線BTおよび第2ビット線BBがプリチャージされてハイレベルのようなプリチャージレベルにされている。メモリセルMCには、所定のデータが保持されている状態である。
【0069】
(2)リセット状態へのエントリ:
(2-1)
リセット状態へのエントリでは、リセット信号RESETがロウレベル”L”からハイレベル”H”へ遷移する。そして、制御信号RSTASWがハイレベル”H”とされ、制御信号CWSEがハイレベル”H”にされ、全カラムの書き込み用のカラムスイッチCTW、CBWはオン状態とされる。そして、書き込み回路WBTはビット線BTにロウレベル”L”の書き込みデータを供給し、ビット線BTがロウレベル”L”にされる。書き込み回路WBBはビット線BBにハイレベル”H”の書き込みデータを供給する。ここで、ビット線BBがハイレベルは、H-Vtn(Vtn:カラムスイッチCBWのしきい値)とされる。
【0070】
(2-2)
次に、全ワード線WLがハイレベル”H”とされ、ビット線BTのロウレベル”L”とビット線BBのハイレベル”H-Vtn”とが初期化データとして全メモリセルMCに書き込まれる。れにより、全メモリセルの格納データが高速に初期化状態にされる。
【0071】
(3)リセット状態からの解除:
(3-1)
リセット状態からの解除では、リセット信号RESETがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移する。その後、最初に制御信号RSTASWがハイレベル”H”からロウレベル”L”とされる。全ワード線WLはハイレベル”H”を維持し、制御信号CWSEはハイレベル”H”を維持している。制御信号RSTASWがロウレベル”L”により、全メモリセルMCのハイレベルの記憶ノードMEMBのレベルがハイレベル”H-Vtn”からハイレベル”H”へ変化する。
【0072】
(3-2)
次に、全ワード線WLがハイレベル”H”からロウレベル”L”に遷移させる。制御信号RSTASWはロウレベル”L”であり、制御信号CWSEはハイレベル”H”を維持している。
【0073】
(4)通常モード2(待機状態):
通常モード2では、制御信号CWSEがハイレベル”H”からロウレベル”L”へ遷移する。制御信号RSTASWはロウレベル”L”を維持し、全ワード線WLはロウレベル”L”を維持する。これにより、ビット線BTおよびビット線BBがプリチャージされてハイレベルのようなプリチャージレベルにされ、全カラムの書き込み用のカラムスイッチCTW、CBWはオフ状態とされる。全メモリセルMCには、リセット状態で書き込まれた初期化データが格納されている。
【0074】
以上の様に、実施形態2に係るSRAM1の動作の遷移が行われる。
【0075】
実施形態2によれば、以下の1または複数の効果を得ることができる。
【0076】
(1)リセットモード解除時に、メモリセルMCへ電源電位VDDを供給するスイッチ(第1トランジスタ)T1をオン状態にしてから、ワード線WLを先に立ち下げ、最後にビット線BT,BBのプリチャージを開始するようなタイミングを生成する回路(CONT)を設ける。
【0077】
(2)上記(1)により、リセット解除時に、メモリセルMCへ電源電位VDDを供給し、メモリセルMCの内部データを確実なロウレベル”L”とハイレベル”H”とにしてから、全ワード線WLを選択レベル(ハイレベル”H”)から非選択レベル(ロウレベル”L”)へ遷移されることで、メモリセルMCの内部データの反転を防止することができる。
【0078】
(3)上記(1)により、全ワード線WLの活性とビット線BT、BBのプリチャージのオーバーラップによる余分な貫通電力の発生を防止する。これにより、リセット動作時の動作電流を低減できる。
【0079】
(4)リード・ライト動作中にリセット信号が発生した場合、リード・ライト動作が完了してから、メモリセルMCのリセット(リセット書き込み)を行う回路を設ける。
【0080】
(5)上記(4)により、リード・ライト動作を停止する信号(TDEC)とメモリセルのリセットを開始する信号(IRESET)を持つことで、リード・ライト動作に阻害されることなく、リセット動作を行うことができる。
【0081】
(6)メモリセルMCのリセット開始信号(IRESET)を生成する回路(制御回路CONT)は、リセット開始信号(IRESET)の配線経路を、SRAM1のメモリアレイARの外周もしくはSRAM1のマクロセルの外周を周回させることで、リセット開始信号(IRESET)のタイミングを生成する。つまり、制御回路CONTは、メモリアレイARの外周またはメモリマクロの外周を周回させた配線経路によって、リセット開始信号(IRESET)を生成する。リード・ライト動作中にリセット信号が発生した場合、メモリアレイARのワード線WLのレイアウト方向およびワード線本数やビット線BT,BBのレイアウト方向やビット線本数に合わせて、リセット開始信号(IRESET)のタイミングを生成できるので、メモリアレイARのリセット書き込みの開始時間を最適化できる。これにより、メモリセルMCの初期化時間が短くできる。
【0082】
以上、本開示者によってなされた開示を実施形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
1:SRAM
AR:メモリセルアレイ部
RDE:ワード線デコーダ部(ロウデコーダ部)
IO:入出力部
CONT:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15