(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088820
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20230620BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230620BHJP
【FI】
A63B53/04 B
A63B53/04 C
A63B53/04 F
A63B53/04 J
A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042721
(22)【出願日】2022-03-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】110146953
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501106263
【氏名又は名称】明安國際企業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】謝 硯舟
(72)【発明者】
【氏名】侯 淵仁
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002AA03
2C002AA04
2C002CH01
2C002MM02
2C002MM03
2C002MM04
2C002MM07
2C002PP05
(57)【要約】
【課題】複雑な外形を有しながらより高強度なゴルフクラブヘッドの打撃プレートを製造する。
【解決手段】少なくとも1本の糸材を、ベース材13に積層されるように、ベース材13に縫い付けることにより、ベース材13と糸材とによりベース材13の法線方向Aにおける厚さが不均一であるプレート半製品2を作成する縫い付け工程と、作成したプレート半製品2を金内の成形空間に設置し、成形により厚さが不均一である打撃プレートを作成する成形工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の糸材を、ベース材に積層されるように、前記ベース材に縫い付けることにより、前記ベース材と前記糸材とにより前記ベース材の法線方向における厚さが不均一であるプレート半製品を作成する縫い付け工程と、
作成した前記プレート半製品を金型内の成形空間に設置し、成形により厚さが不均一である打撃プレートを作成する成形工程と、を含むゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項2】
前記成形工程において、作成した前記プレート半製品を前記金型内の前記成形空間に設置した後、前記成形空間から空気を抜いて真空状態にしてから、樹脂を前記成形空間内に注入してから樹脂を硬化して成形することにより前記打撃プレートを作成することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項3】
前記縫い付け工程において使用される前記糸材は、熱可塑性繊維であり、
前記成形工程において、作成した前記プレート半製品を前記金型内の前記成形空間に設置した後、前記金型を用いて熱圧成形を行うことにより前記打撃プレートを作成することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項4】
前記縫い付け工程において、前記少なくとも1本の糸材を前記ベース材に縫い付ける際に、少なくとも1つの埋設部材を前記糸材に包まれるように埋め込んで、前記プレート半製品に前記埋設部材を含ませることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項5】
前記縫い付け工程において、無機繊維と、熱可塑性繊維と、金属繊維と、からなる群より選ばれた材料を用いて作成された前記糸材を使用することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項6】
前記縫い付け工程において、前記少なくとも1本の糸材を前記ベース材に固定するために少なくとも1本のサポート糸材を前記ベース材に縫い付けることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項7】
前記縫い付け工程において、無機繊維と、熱可塑性繊維と、金属繊維と、からなる群より選ばれた材料を用いて作成された前記糸材を使用し、
無機繊維と、熱可塑性繊維と、金属繊維と、からなる群より選ばれ且つ前記糸材と異なる種類の材料を用いて作成された前記サポート糸材を使用することを特徴とする請求項6に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項8】
前記縫い付け工程において、前記糸材により構成されていて、前記埋設部材を包むように互いに重なり合っている複数の重ね層を有する前記プレート半製品を作成し、
前記ベース材の面と略平行する面における繊維角度が-180°~180°の範囲内になるように前記糸材を縫い付けることにより各前記重ね層を構成することを特徴とする請求項4に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項9】
前記縫い付け工程において、前記糸材により構成されていて、前記埋設部材を包むように互いに重なり合っている複数の重ね層を有する前記プレート半製品を作成し、
前記ベース材の面と略平行する面における経路が曲線又は折線になるように前記糸材を縫い付けることにより各前記重ね層を構成することを特徴とする請求項4に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項10】
前記縫い付け工程において、前記プレート半製品を作成した後、前記ベース材を裁ち切って、前記プレート半製品の外形を整えることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項11】
前記縫い付け工程において、前記プレート半製品を作成した後、前記ベース材を溶融するまたは剥がすことにより除去することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【請求項12】
前記縫い付け工程において、ガラス繊維と、ポリエチレンと、ポリプロピレンと、熱可塑性フィルムと、からなる群より選ばれた材料を用いて作成された前記ベース材を使用することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブヘッドは、長期間の打撃に耐える強度を備えるために、全体が金属で製造される。しかし、金属材料のゴルフクラブヘッドは、コストが高く且つ重量が重いなどの欠点がある。
【0003】
近年、例えば特許文献1に示されるように、重量が軽くて強度が高い炭素繊維を用いて部材が作成されたゴルフクラブヘッドがよくある。炭素繊維で作成された部材でゴルフクラブヘッドの一部の金属構造に替えることにより、同等の強度を維持しながら重量を軽くすることができる。
【0004】
炭素繊維複合材料製の打撃プレートの製造においては、まず複数のプリプレグを積層した後、初回の裁ち切りを行い、そして、裁ち切った積層体に条状の補強部材を重ねて、補強部材の不要な部分を切り取った後、更に熱圧成形を経て半製品を得て、最後にコンピュータ数値制御(CNC)などの機材による加工で半製品の外形を加工してゴルフクラブの打撃プレートを作成する。このような作成方法において、通常、条状の補強部材を異なる角度で互いに重ね合うことにより打撃プレートの強度を上げる。
【0005】
しかしながら、上記の製造方法は、工程が多い上、積層により成形するので、水平方向のみにおいて繊維による強度があり、それにより、得られた半製品は厚さ方向及び多軸方向において力学的な性質が水平方向に比べると弱く、厚さが不均一など複雑な立体的な外形を製造しにくいので、従来の製造方法は、更なる改善を目指す余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複雑な外形を有しながらより高強度なゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を実現するために、本発明は、少なくとも1本の糸材を、ベース材に積層されるように、前記ベース材に縫い付けることにより、前記ベース材と前記糸材とにより前記ベース材の法線方向における厚さが不均一であるプレート半製品を作成する縫い付け工程と、作成した前記プレート半製品を金型内の成形空間に設置し、成形により厚さが不均一である打撃プレートを作成する成形工程と、を含むゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、炭素繊維複合材料を使用して製造されたものと比べて、本発明のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法によれば、糸材をベース材に積層されるようにベース材に縫い付けることにより、プレート半製品の水平方向及び厚さ方向(即ちベース材の面と略平行する方向及び法線方向)において繊維による補強があるので、全体の強度が向上する。また、厚さ方向における繊維で固定して厚さ方向における繊維強度があるので、厚さが不均一など複雑な立体的な外形を有する打撃プレートを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法における実施形態を示す概略図である。
【
図2】縫い付け工程において、
図1の後の工程を示す概略図である。
【
図3】縫い付け工程において、
図1の後の工程を示す概略図である。
【
図4】縫い付け工程により得られたプレート半製品を示す概略図である。
【
図5】上記の実施形態における成形工程を示す概略図である。
【
図6】上記の成形工程により製造された打撃プレートを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
本発明のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法における実施形態は、
図1~
図3に示されるように、縫い付け工程と、成形工程とを含む。
【0013】
前記縫い付け工程において、
図1に示されるように、1本の糸材11及び複数のサポート糸材12をベース材13に縫い付ける。この実施形態において、糸材11としては、無機繊維と、熱可塑性繊維と、金属繊維とからなる群より選ばれた材料を用いて作成されたものを使用し、サポート糸材12としては、無機繊維と、熱可塑性繊維と、金属繊維とからなる群より選ばれ且つ糸材11と異なる種類の材料を用いて作成されたものを使用する。
【0014】
無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ケブラー(登録商標)繊維、セラミック繊維などが挙げられ、熱可塑性繊維としては、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)繊維、ナイロン(登録商標)(Nylon)繊維などが挙げられ、金属繊維としては、チタン糸、銅糸、スチール糸などが挙げられる。
【0015】
糸材11の本数は、必要に応じて複数本であってもよい。
【0016】
ベース材13は、ガラス繊維と、ポリエチレンと、ポリプロピレンと、熱可塑性フィルムとからなる群より選ばれた材料を用いて作成され、最大厚さが4.5mmである。
【0017】
また、前記縫い付け工程において、
図1に示されるように、糸材11をベース材13に積層されるようにベース材13に縫い付けることにより、互いに重なり合った糸材11により複数の重ね層21を構成し、また複数のサポート糸材12を、糸材11のベース材13への固定を強化するためにベース材13に縫い付ける。
図3に示すように、糸材11をベース材13に縫って複数の重ね層21を構成する際に、埋設部材22を糸材11により包まれるように埋め込んで、複数の重ね層21で埋設部材22を包む。
【0018】
この実施形態において、糸材11をベース材13に縫って複数の重ね層21を構成する過程において、埋設部材22を糸材11により包まれるように埋め込んで、複数の重ね層21で埋設部材22を包み、複数のサポート糸材12を、ベース材13に最も近い糸材11のみ(即ちベース材13に最も近い重ね層21)をベース材13に固定し、ベース材13の面と略平行する面における繊維角度が-180°~180°の範囲内になるように糸材11を縫い付けることにより各重ね層21を構成する。また、各重ね層21を少なくとも2種類の繊維角度に構成することが好ましく、各重ね層21を隣り合っている2つの重ね層21の繊維角度が異なるように構成することがより好ましい。
【0019】
なお、本実施形態においては糸材11を上記の繊維角度のような直線状に縫い付けた経路以外、必要に応じて、ベース材13の面における経路が曲線又は折線又は螺旋状になるように糸材11を縫い付けることにより各重ね層21を構成することができて、これにより外観や繊維の縫い付け方向を自由にアレンジすることができる。
【0020】
そして、前記縫い付け工程において、
図2~
図4に示されるように、複数の重ね層21を構成することにより、ベース材13の法線方向Aにおける厚さが不均一であり且つ埋設部材22が埋め込まれているプレート半製品2を作成した後、ベース材13を裁ち切って、プレート半製品2の外形を整える。また、プレート半製品2を作成した後、ベース材13を裁ち切る以外、ベース材13を溶融や剥がすことにより全部除去することもでき、ベース材13を完全に保留することもできる。
【0021】
埋設部材22は、外形がリブ状、シート状、ブロック状または不規則状などであることができ、材料がチタン、アルミニウム、鉄、タングステン、銅または合金であることができ、数が必要に応じて複数であることもでき、構造を補強する必要に応じて配置することができる。
【0022】
従来の炭素繊維炭素繊維複合材料を使用する製造方法と比べて、本発明のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法は、複数回の積層、裁ち切り及び予備含浸などの工程を省略できる上、機械により前記縫い付け工程を自動的に行うことができ、製造の自動化に有利で、製造にかかる手間及び時間を大幅に省くことができ、且つ、糸材11をベース材13に縫い付けることにより糸材11の一部が法線方向Aにおいてベース材13を貫通している(
図2及び
図3の湾曲矢印のように)ので、糸材11により構成された各重ね層21は厚さ方向(即ち法線方向A)においても繊維による補強があり、更にベース材13の面と略平行する面における繊維経路に合わせて、複数の方向において繊維による補強があり、全体の強度が効果的に向上する。
【0023】
図5及び
図6に示されるように、前記成形工程において、成形空間31がある金型3を用意し、作成したプレート半製品2を金型3内の成形空間31に設置した後型閉じする。そして、成形空間31から空気を抜いて真空状態にしてから、高圧で樹脂を成形空間31に注入する。それにより、樹脂が流動する時に空気による妨害(気圧など)を防止でき、樹脂の流動性が高いので樹脂が成形空間31の細部に均一に届くことができる。そして、樹脂を加熱及び硬化して成形することにより、
図6に示される打撃プレート4を作成する。この成形方法により、プレート半製品2と金型3と合わせて厚さが不均一など複雑な立体的な外形を有する打撃プレート4を作成することができ、また、樹脂が成形空間31の細部に均一に届くことができるので、作成された打撃プレート4の不良率が低く、製造品質が向上する。
【0024】
本発明の打撃プレート4は、厚さ方向において、充分な繊維強度で固定されているので、厚さが不均一であるなど複雑な立体的な外形を有するように作成することができ、また、中に埋め込まれている埋設部材22により支持及び強化の効果をもたらし、打撃プレート4の支持力及び全体の構造強度を上げられる。
【0025】
本発明の打撃プレートの製造方法の他の実施形態は、上記の実施形態と類似し、ここで上記の実施形態と同じ部分の説明を省略し、上記の実施形態との相違点のみ説明する。
【0026】
この実施形態においては、前記縫い付け工程において、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン(登録商標)繊維などの熱可塑性繊維により作成された糸材11及びサポート糸材12を使用し、前記成形工程において、作成したプレート半製品2を金型3内の成形空間31に設置した後型閉じし、そして、金型3を用いて熱圧成形(thermoforming)を行うことにより糸材11及びサポート糸材12を加熱及び硬化して成形して打撃プレート4を作成する。
【0027】
上記の説明によれば、本発明の製造方法により製造された打撃プレート4は、炭素繊維複合材料を使用して製造されたものと比べて、全体的により優れた構造強度を有する上、厚さが不均一であるなど複雑な立体的な外形に構成でき、更に中に埋め込まれている埋設部材22により全体の強度を更に向上することでき、また、製造された打撃プレート4のサイズは、製品のサイズに合うので、コンピュータ数値制御などの機材で外形を加工する必要がなくなって、製造効率が向上して、本発明の目的を達成できる。
【0028】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能である。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の本発明のゴルフクラブヘッドの打撃プレートの製造方法は、打撃プレートの製造に好適である。
【符号の説明】
【0030】
11 糸材
12 サポート糸材
13 ベース材
2 プレート半製品
21 重ね層
22 埋設部材
3 金型
31 成形空間
4 打撃プレート
A 法線方向