(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008886
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】抗菌性繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 9/06 20060101AFI20230111BHJP
C25D 5/56 20060101ALI20230111BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20230111BHJP
D06M 11/83 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C25D9/06
C25D5/56 B
C25D7/06 R
D06M11/83
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103528
(22)【出願日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】110123905
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 智翔
(72)【発明者】
【氏名】許 育晟
(72)【発明者】
【氏名】高 堂▲シュン▼
(72)【発明者】
【氏名】周 建旭
(72)【発明者】
【氏名】張 怡娟
(72)【発明者】
【氏名】歐 志軒
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 翰章
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
【テーマコード(参考)】
4K024
4L031
【Fターム(参考)】
4K024AB01
4K024BA13
4K024BB28
4K024BC08
4K024DA10
4L031AA27
4L031AB01
4L031BA04
4L031CB11
4L031DA12
(57)【要約】
【課題】抗菌性繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の抗菌性繊維の製造方法は、含浸工程を行うことで、導電繊維を、金属カチオンを含むイオン化合物を含む溶液に浸す含浸ステップS10と、電気めっき工程を行うことで、溶液により生成された、金属、金属酸化物又はそれらの組み合わせからなる抗菌材料を、導電繊維の表面に付着させる電気めっきステップS15と、を備える。これにより、電気めっきの形態で溶液により生成された抗菌材料を導電繊維の表面に配置し、抗菌材料と導電繊維との間を緊密に結合させることで、抗菌材料が剥離し又は脱離する問題の発生を避けることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸工程を行うことで、導電繊維を、金属カチオンを含むイオン化合物を含む溶液に浸す含浸ステップと、
電気めっき工程を行うことで、前記溶液により生成された、金属、金属酸化物又はそれらの組み合わせからなる抗菌材料を、前記導電繊維の表面に付着させる電気めっきステップと、
を備える抗菌性繊維の製造方法。
【請求項2】
前記溶液は、
1重量部~50重量部の前記イオン化合物と、
50重量部~99重量部の極性溶剤と、
を含む請求項1に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項3】
前記溶液は、0.1重量部~10重量部の修飾剤、界面活性剤又はそれらの組み合わせを更に含み、
前記修飾剤は、クエン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン又はそれらの組み合わせからなる請求項2に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又はそれらの組み合わせである請求項3に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項5】
前記抗菌材料は、銅、銀、亜鉛、鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、鉄、チタンからなる一群の金属のうち何れかの金属の酸化物又はそれらの組み合わせからなる請求項1に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項6】
前記電気めっき工程において、前記抗菌材料は、0.10μm~1.00μmの厚さで前記導電繊維の前記表面に付着される請求項1に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項7】
焼結工程を行うことで、前記抗菌材料を前記導電繊維の前記表面に固着させる焼結ステップを更に備え、
前記焼結工程の焼結温度は80℃~300℃である請求項1に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項8】
前記焼結工程は、不活性ガス、窒素ガス又はそれらの組み合わせからなる雰囲気で行われる請求項7に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項9】
前記電気めっき工程を行うことで、前記導電繊維の前記表面に酸素含有官能基を持たせる請求項1に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【請求項10】
前記酸素含有官能基は、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基又はそれらの組み合わせからなる請求項9に記載の抗菌性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、抗菌性繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、現在の社会生活のレベルが向上するにつれて、人々の機能性紡績品に対する要求は益々高くなり、且つ様々な機能性紡績品が絶えずに現れることに伴って、特定の目的を有する機能性紡績品の発展も日増しに完備になる。
【0003】
現在、抗菌効果を持つ大部分の市販の紡績品は、抗菌効果を備える繊維で直接作られることは普通であり、このような繊維としては、一般的に、金属又は金属酸化物のような抗菌材料を、シリカゲル、セラミック、金属線又は網、活性炭粒子又は粉体、グラフェンのような担体に、ドープ又は塗布するように直接配置する。しかしながら、ドープ又は塗布プロセスは、常に、担体と抗菌材料との間の付着力によって制限され、形成された抗菌材料が厚すぎると、抗菌材料が剥離し又はとれやすくなり、その抗菌効果を安定して維持することには不利である。一方、上記抗菌材料及び担体によってドープ又は塗布プロセスを行う場合、しばしば、プロセスの工程が煩雑で、且つ材料が高価であるため、量産は困難である。そのため、煩雑すぎるプロセスの工程を避けることができ、製作された抗菌性繊維に、良好な抗菌効果及び安定な構造強度を両立させて持たせることのできる抗菌性繊維の製造方法を如何に提供するかは、当業者が積極的に研究している重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示のある実施形態によると、含浸工程を行うことで、導電繊維を、金属カチオンを含むイオン化合物を含む溶液に浸す含浸ステップと、電気めっき工程を行うことで、溶液により生成された、金属、金属酸化物又はそれらの組み合わせからなる抗菌材料を、導電繊維の表面に付着させる電気めっきステップと、を備える抗菌性繊維の製造方法である。
【0005】
本開示のある実施形態において、溶液は、1重量部~50重量部のイオン化合物と、50重量部~99重量部の極性溶剤と、を含む。
【0006】
本開示のある実施形態において、溶液は、0.1重量部~10重量部の修飾剤、界面活性剤又はそれらの組み合わせを更に含み、修飾剤は、クエン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン又はそれらの組み合わせからなる。
【0007】
本開示のある実施形態において、界面活性剤は、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又はそれらの組み合わせである。
【0008】
本開示のある実施形態において、抗菌材料は、銅、銀、亜鉛、鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、鉄、チタンから成る一群の金属のうち何れかの金属の酸化物又はそれらの組み合わせからなっている。
【0009】
本開示のある実施形態において、電気めっき工程において、抗菌材料は、0.10μm~1.00μmの厚さで前記導電繊維の表面に付着される。
【0010】
本開示のある実施形態において、抗菌性繊維の製造方法は、焼結工程を行うことで、抗菌材料を導電繊維の表面に固着させる焼結ステップを更に備え、焼結工程の焼結温度は80℃~300℃である。
【0011】
本開示のある実施形態において、焼結工程は、不活性ガス、窒素ガス又はそれらの組み合わせからなる雰囲気で行われる。
【0012】
本開示のある実施形態において、電気めっき工程を行うことで、導電繊維の表面に酸素含有官能基を持たせる。
【0013】
本開示のある実施形態において、酸素含有官能基は、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基又はそれらの組み合わせからなっている。
【発明の効果】
【0014】
本開示の上記実施形態によれば、本開示の抗菌性繊維の製造方法において、電気めっきの形態で溶液により生成された抗菌材料を導電繊維の表面に配置し、抗菌材料と導電繊維との間を緊密に結合させることで、抗菌材料が剥離し又は脱離する問題の発生を避けることができる。このように、本開示の抗菌性繊維は、安定且つ良好な抗菌効果を提供することができる。一方、抗菌材料は、比較的安価な溶液により生成されるので、コストを効果的に節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示のある実施形態による抗菌性繊維の製造方法の流れ図である。
【
図2】本開示の別のある実施形態による抗菌性繊維の製造方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面で本開示の複数の実施形態を開示し、明確に説明するために、多くの実際的な細部を以下の記述で合わせて説明する。
図1~2による説明は、本開示の上記及び他の目的、特徴、メリットと実施例をより分かりやすくするためのものである。しかしながら、理解されるべきは、これらの実際的な細部が、本開示を制限するように適用されるものではない。つまり、本開示の一部の実施形態において、これらの実際的な細部は必ずしも必要なものではなく、また本開示を制限するように適用されるものではない。
【0017】
本開示のある実施形態による抗菌性繊維の製造方法を示す流れ図である
図1を参照されたい。本開示の抗菌性繊維の製造方法は、含浸ステップS10と、電気めっきステップS15と、を備える。含浸ステップS10において、含浸工程を行うことで、導電繊維を、金属カチオンを含むイオン化合物を含む溶液に浸す。電気めっきステップS15において、電気めっき工程を行うことで、溶液により生成された、金属、金属酸化物又はそれらの組み合わせからなる抗菌材料を、導電繊維の表面に付着させる。以下の記述において、上記各工程を更に説明する。
【0018】
まず、含浸ステップS10において、含浸工程を行うことで、導電繊維を、金属カチオンを含むイオン化合物を含む溶液に浸す。
ある実施形態において、後の電気めっき工程に寄与するために、導電繊維は、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、活性炭繊維又はそれらの組み合わせである。上記導電繊維が、高い比強度と比弾性率、良好な耐高温性、耐薬品性と導電性及び低い摩擦係数のような良好な機械特性を有するメリットを持つため、更に、後で形成された抗菌性繊維に良好な靭性及び耐用性を持たせることができる。
ある実施形態において、溶液は、1重量部~50重量部のイオン化合物及び50重量部~99重量部の極性溶剤を含んでいる。上記イオン化合物及び極性溶剤の含有量の範囲であれば、後で形成されためっき層(例えば、抗菌材料を含むめっき層)が好適な構造特性(例えば、粒子サイズ及び粒子分布の均一性等)を有することを確保することができ、不必要な副反応の発生を避けることができ、更に、溶液の安定性を向上させることができる。
ある実施形態において、イオン化合物のカチオン(例えば、金属カチオン)は、銅イオン、銀イオン、亜鉛イオン、鉛イオン、カドミウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、チタンイオン又はそれらの組み合わせからなっている。より具体的には、イオン化合物は、硝酸銀、硝酸ニッケル、塩化第二鉄、二酸化チタン、硫酸銅、硫酸亜鉛、硝酸鉛、塩化カドミウム、硝酸コバルト又はそれらの組み合わせからなっている。
ある実施形態において、上記イオン化合物が好適に溶解されるように、極性溶剤は、水、アルコール類(例えば、アルコール)又はそれらの組み合わせからなっている。
【0019】
ある実施形態において、溶液は、更に、0.1重量部~10重量部のドーパントを含んでいる。詳しく言えば、ドーパントは、修飾剤及び界面活性剤を含んでおり、修飾剤は、後で形成された抗菌性繊維に好適な手触り(例えば、少ない粒状感)を持たせることができ、界面活性剤は、イオン化合物が極性溶剤に均一且つ安定して分散することを確保し、導電繊維に付着されるめっき層の均一性を向上させる。具体的には、修飾剤は、クエン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン又はそれらの組み合わせからなっている。一方、界面活性剤は、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤又はそれらの組み合わせである。具体的には、非イオン界面活性剤はポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアレーンエーテル、ポリオキシエチレンエチレンアレーンエーテル、ポリオキシエチレンポリオールエーテル又はそれらの組み合わせを含んでおり、カチオン界面活はイミダゾリンアンモニウム塩、イミダゾリウム、アルキルメチルアンモニウム塩、エステル類アンモニウム塩、アミド塩又はそれらの組み合わせを含んでおり、アニオン界面活性剤は燐酸塩類、硫酸塩類、スルホコハク酸塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸塩類又はそれらの組み合わせからなっている。
【0020】
次に、電気めっきステップS15において、溶液及び溶液に浸される導電繊維に対して電気めっき工程を行うことで、溶液により生成された、金属、金属酸化物又はそれらの組み合わせからなる抗菌材料を、導電繊維の表面に付着させる。より具体的には、電気めっき工程の期間中、例えば、炭素、チタン、白金等の反応性の低い金属を陰極として電源の負極に接続し、且つ導電繊維を陽極として電源の正極に接続し、約0.2V~約0.5Vの電圧を溶液に印加して、溶液におけるイオン化合物の金属カチオンを抗菌材料に還元させ、且つ導電繊維の表面に堆積させる。
ある実施形態において、抗菌材料は、例えば、銅、銀、亜鉛、鉛、カドミウム、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、上記何れの金属の酸化物又はそれらの組み合わせからなっている。具体的には、抗菌材料は、例えば、銅、銀、亜鉛、コバルト、ニッケル、鉛、カドミウム等金属及び二酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物である。上記抗菌材料は、可視光により励起されて自由基を形成しやすいため、良好な抗菌効果を有することができる。
ある実施形態において、抗菌材料は、導電繊維の表面を完璧的に被覆することができ、つまり、導電繊維の表面は露出しないので(例えば、外部環境に露出する)、抗菌効果が向上する。
【0021】
炭素繊維、炭化ケイ素繊維、活性炭繊維等の繊維は、導電性を有し、導電性繊維の1つであり、導電繊維を上記イオン化合物含有の溶液に入れて、電気めっき工程を行うことで、導電繊維の表面に酸素含有官能基を形成させる。酸素含有官能基により、抗菌材料は、金属酸化物の形態で導電繊維の表面にしっかりして付着することができる。
ある実施形態において、金属カチオンと好適に反応できるように、酸素含有官能基は、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基又はそれらの組み合わせからなっている。酸素含有官能基を有しない導電繊維に比べると、電気めっき工程により酸素含有官能基を有する導電繊維は、更に、大きい比表面積、割に一致した孔径サイズ及び割に均一の孔径分布を有することができるので、金属形態の抗菌材料を好適に吸着する。
ある実施形態において、前処理された導電繊維は、500m2/g~3000m2/gの比表面積を有している。
【0022】
ある実施形態において、形成しようとする抗菌材料の厚さに基づいて、電気めっき工程の期間中に印加した電圧を対応的に調整する(即ち、印加した合計電量を調整する)。具体的には、以下の式(1)及び式(2)によって形成しようとする抗菌材料の厚さを制御する。式(1)はW=(I×t)/(Z×F)であり、Wは抗菌材料の重量であり、Iは印加した電流であり、tは電気めっきの時間であり、Zは金属カチオンの価数であり、Fはファラデー定数である。式(2)はW=A×th×pであり、Wは抗菌材料の重量であり、Aは抗菌材料の面積であり、thは抗菌材料の厚さであり、且つpは抗菌材料の密度である。電気めっき工程の期間中、抗菌材料は、0.10μm~1.00μmの厚さで前記導電繊維の表面に付着されることができるので、抗菌効果及び構造強度を両立させる。詳しく言えば、抗菌材料の厚さが0.10μmより小さくなると、抗菌効果は不良になりやすいが、抗菌材料の厚さが1.00μmより大きくなると、抗菌材料が剥落しやすく、且つ後での抗菌性繊維に対する切断に不利である。好適な実施形態において、上記効果を好適に達成させるように、抗菌材料の厚さは、0.15μm~0.30μmである。溶液におけるドーパントは、電気めっき工程の期間中に導電繊維の表面に堆積して、一方、後で形成された抗菌性繊維に好適な手触りを持たせることもできる。
【0023】
本開示の別のある実施形態による抗菌性繊維の製造方法の流れ図である
図2を参照されたい。
図2の実施形態において、抗菌性繊維の製造方法は、含浸ステップS10~焼結ステップS25を備えている。含浸ステップS10において、含浸工程を行うことで、導電繊維を、金属カチオンを含むイオン化合物を含む溶液に浸す。電気めっきステップS15において、電気めっき工程を行うことで、溶液により生成された、金属、金属酸化物又はそれらの組み合わせからなる抗菌材料を、導電繊維の表面に付着させる。超音波振動ステップS20において、超音波振動工程を行うことで、導電繊維の表面の不純物を除去する。焼結ステップS25において、焼結工程を行うことで、抗菌材料を導電繊維の表面に固着させる。以下の記述において、上記各工程を更に説明する。
【0024】
まず、含浸ステップS10及び電気めっきステップS15において、含浸工程を行うことで、導電繊維を溶液に浸し、且つ溶液及び溶液に浸される導電繊維に対して、電気めっき工程を行うことで、溶液により生成された抗菌材料を導電繊維の表面に付着させる。
図2の含浸ステップS10及び電気めっきステップS15は、それぞれ
図1の含浸ステップS10及び電気めっきステップS15と同じであるので、ここでは繰り返して説明しない。
【0025】
その後、超音波振動ステップS20において、超音波振動工程を行うことで、導電繊維の表面の不純物を除去する。詳しく言えば、電気めっき工程を行った後で、抗菌材料の付着された導電繊維を取り出し、この場合、導電繊維の表面に溶液における他の物質(例えば、溶液、ドーパント及び/又は電気めっき工程の期間中に生成された不純物)が更に被覆されてもよい。これにより、超音波振動工程により導電繊維の表面の不純物を除去することができ、不純物が後で形成された抗菌性繊維の抗菌効果に影響を与えることを避けることができる。
ある実施形態において、超音波振動工程によれば、更に、ドーパントの一部を除去することができるが、導電繊維の表面に付着されるドーパントの一部のみを保留しておくこともできる。例としては、クエン酸ナトリウム及び/又はポリビニルピロリドンのようなドーパントを、その後に製作された抗菌性繊維に好適な手触りを持たせるように、導電繊維の表面に保留されるようにする。
ある実施形態において、良好な不純物除去効果を達成させるように、超音波振動工程の振動頻度は、20Hz~50Hzである。
【0026】
次に、焼結ステップS25において、焼結工程を行うことで、抗菌材料を導電繊維の表面に固着させる。詳しく言えば、超音波振動のされた導電繊維(少なくとも抗菌材料が被覆される導電繊維)を焼結炉に入れて、焼結工程を行う。
ある実施形態において、焼結工程は、不活性ガス、窒素ガス又はそれらの組み合わせからなる雰囲気で行われ、焼結工程の安定性を向上させ、不必要な副反応の発生を避け、不純物が更に生成して抗菌材料の構造強度を破壊することを避ける。
ある実施形態において、抗菌材料と導電繊維との間の緊密な結合を実現して、抗菌材料が導電繊維の表面にしっかりして付着(固着)されることを確保するため、焼結工程の焼結時間は1分間~60分間であり、且つ焼結温度は80℃~300℃である。詳しく言えば、焼結時間が1分間より短くなり、及び/又は焼結温度が80℃より低くなると、焼結エネルギーが不足で抗菌材料が脱落しやすくなる。焼結時間が60分間より長くなり、及び/又は焼結温度が300℃より高くなると、オーバーヒートの欠陥が発生する可能性がある。
ある実施形態において、焼結工程を行う前に、先に超音波振動のされた導電繊維に対して乾燥工程を行うことで、導電繊維の表面に被覆される溶液を除去する。
ある実施形態において、超音波振動のされた導電繊維が乾燥工程を始めたばかりの期間中に瞬時に温度差の過大により構造欠陥が発生することを避けるため、乾燥工程の乾燥温度は、焼結工程の焼結温度より低くする。
【0027】
上記各工程を経った後で、少なくとも導電繊維及び導電繊維の表面に固着される抗菌材料を含む本開示の抗菌性繊維が得られる。本開示の抗菌性繊維の製造方法によれば、抗菌材料が剥離し又はとれること等の問題を効果的に避け、抗菌材料と導電繊維とを緊密的に結合させて、本開示の抗菌性繊維に良好な構造強度及び抗菌効果を両立させることができる。
【0028】
以下、各実施例の抗菌性繊維及び比較例の繊維を参照して、本開示の特徴及び効果をより具体的に述べる。理解されるべきは、本開示の範囲から逸脱せずに、用いられる材料、その量及び比率、処理細部及び処理流れ等を適当に変えてもよい、ということである。そのため、本開示について、以下で述べられた各実施例によって限定的に解釈すべきではない。各実施例及び比較例の詳しい説明を、表1に示す、また、各実施例の何れも前述の工程により製造される。
【0029】
【0030】
<実験例:抗菌効果のテスト>
本実験例において、各実施例及び比較例に対して抗菌効果のテストを行った。テスト方法としては、約30~50cmの(抗菌)繊維を切り取って培養皿に入れ、(抗菌)繊維の表面に大腸菌を塗り、一カ月静置した後で、大腸菌の残りの数を検測した。次に、「繊維の抗菌率=(テスト前の大腸菌の初期の数-テスト後の大腸菌の残りの数)/(テスト前の大腸菌の初期の数)」という式によって、(抗菌)繊維の抗菌率を算出した。テスト結果を表2に示す。
【0031】
【0032】
表2に示す抗菌結果から、本開示の抗菌性繊維の製造方法により作られた抗菌性繊維は、しばらく静置された後でも相当高い抗菌率を有することが判明し、導電繊維の表面に配置される抗菌材料は経時的に明らかに剥離し又はとれることはないことが判明した。これにより、本開示の抗菌性繊維は、一定程度の構造強度を維持し、良好な抗菌効果を達成させることができることが示された。
【0033】
本開示の上記実施形態によれば、本開示の抗菌性繊維の製造方法において、電気めっきの形態で溶液により生成された抗菌材料を導電繊維の表面に配置するために、抗菌材料と導電繊維との間を緊密に結合させることができ、抗菌材料が剥離し又は離脱する問題の発生を避けることができる。このように、本開示の抗菌性繊維は、安定且つ良好な抗菌効果を提供することができる。一方、抗菌材料は、比較的安価な溶液により生成されるため、コストを効果的に節約することができる。また、導電繊維自体の特性(例えば、大きい比表面積)に基づき、また導電繊維の表面に適当な官能基を形成することで、導電繊維は、抗菌材料を好適に吸着することができるようになるため、抗菌材料の固着に更に有利である。なお、導電繊維の表面に形成される抗菌材料の厚さを更に制御することで、抗菌材料が重すぎることで剥離し又は脱離することを避けることができ、抗菌性繊維の構造強度及び耐用性を向上させる。
【0034】
本開示は、実施形態により前述の通りに開示されたが、この実施形態は、本開示を限定するものではない。当業者であれば、本開示の趣旨と技術的範囲から逸脱しない限り、多種多様の変更や修飾を行ってもよい。従って、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲において特定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0035】
S10:含浸工程を行う含浸ステップ
S15:電気めっき工程を行う電気めっきステップ
S20:超音波振動工程を行う超音波振動ステップ
S25:焼結工程を行う焼結ステップ