(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088884
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】損傷評価のためのバルーンアブレーションカテーテルのインピーダンス測定
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230620BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20230620BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022199230
(22)【出願日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】17/551,952
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】エイド・アダウィ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK12
4C160KK24
4C160KK36
4C160KK63
4C160MM33
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB28
4C267BB40
4C267BB42
4C267CC19
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】医療手技を行うこととともに使用するためのシステムを提供すること。
【解決手段】このシステムは、バルーンカテーテル及び処理装置を備える。このバルーンカテーテルは、患者の解剖学的構造の組織をアブレーションするように構成された複数のアブレーション電極、ステム電極、及びエッジ電極を含む。処理装置は、プロセッサを含み、プロセッサは、バルーンカテーテルのバルーン電極の各々と、バルーンカテーテルのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、バルーンカテーテルのアブレーション電極の各々と、バルーンカテーテルのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、組織のアブレーション中に、第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療手技中に使用するための処理装置であって、前記処理装置が、
データを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、
医療用プローブの複数のアブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、
前記アブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、
患者の解剖学的構造の組織のアブレーション中に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている、処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を表示装置上に表示することによって、前記変化に基づいて前記損傷形成を指示するように構成されている、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記医療用プローブが、バルーンカテーテルである、請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサが、
患者の解剖学的構造の前記組織をアブレーションする前に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値を取得し、かつ
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値をインピーダンスデータとして前記メモリに記憶するように構成されている、請求項1に記載の処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記組織の前記アブレーション中に、前記変化を連続的にモニタリングすることによって、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を決定するように構成されている、請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、単極インピーダンス値に対する変化である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサが、
各アブレーション電極について、第1の単極インピーダンス値と第2の単極インピーダンス値との間の変化を、単極インピーダンス閾値と比較し、
前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化が前記単極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化に基づいて、前記損傷形成を指示するように構成されている、請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、相対双極インピーダンス値に対する変化である、請求項1に記載の処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、
各アブレーション電極について、第1の相対双極インピーダンス値と第2の相対双極インピーダンス値との間の変化を、相対双極インピーダンス閾値と比較し、かつ
前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化が前記相対双極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化を指示するように構成されている、請求項8に記載の処理装置。
【請求項10】
医療手技を行うこととともに使用するためのシステムであって、前記システムが、
患者の解剖学的構造の組織をアブレーションするように構成された複数のアブレーション電極、ステム電極、及びエッジ電極を備える、バルーンカテーテルと、
プロセッサを備える処理装置と、を備え、前記プロセッサが、
前記バルーンカテーテルの前記アブレーション電極の各々と、前記バルーンカテーテルのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、
前記バルーンカテーテルの前記アブレーション電極の各々と、前記バルーンカテーテルのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、
前記組織のアブレーション中に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている、システム。
【請求項11】
表示装置を更に備え、前記プロセッサが、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を前記表示装置上に表示することによって、前記変化に基づいて前記損傷形成を指示するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
医療アブレーション手技のための損傷評価の方法であって、前記方法が、
医療用プローブの複数のアブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのステム電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得することと、
前記医療用プローブの前記アブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのエッジ電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得することと、
患者の解剖学的構造の組織をアブレーションすることと、
前記組織のアブレーション中に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定することと、
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、損傷形成を指示することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、前記損傷形成を前記指示することが、前記変化を表示することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記医療用プローブが、バルーンカテーテルを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値が、患者の解剖学的構造の前記組織をアブレーションする前に取得される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を決定することが、前記組織のアブレーション中に、前記変化を連続的にモニタリングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、単極インピーダンス値に対する変化である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
各アブレーション電極について、第1の単極インピーダンス値と第2の単極インピーダンス値との間の変化を、単極インピーダンス閾値と比較することと、
前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化が前記単極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化に基づいて、前記損傷形成を指示することと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、相対双極インピーダンス値に対する変化である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
各アブレーション電極について、第1の相対双極インピーダンス値と第2の相対双極インピーダンス値との間の変化を、相対双極インピーダンス閾値と比較することと、
前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化が前記相対双極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化に基づいて、前記損傷形成を指示することと、を更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医療用プローブを使用する医療診断及び治療の分野に関し、特に多電極心臓アブレーションカテーテルを使用するアブレーション中の損傷形成の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
耳鼻咽喉科(ear, nose and throat、ENT)医師及び心臓専門医師などの医療従事者は、患者の解剖学的構造内で医療手技を行うために医療器具を使用する。多電極心臓アブレーションカテーテルなどの医療器具は、心臓、肺、耳、鼻、喉、又は他の臓器などの機能不全組織の部分をアブレーションするために使用される。例えば、高周波(radio-frequency、RF)カテーテルアブレーション手技には、通常、皮膚の切開部を通してカテーテルを挿入すること、及びそのカテーテルを使用して臓器組織上にアブレーション損傷を作り出すところの臓器に、そのカテーテルを導入することが含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
医療アブレーション手技のための損傷評価の方法が提供され、この方法は、医療用プローブの複数のアブレーション電極の各々と、医療用プローブのステム電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得することと、医療用プローブのアブレーション電極の各々と、その医療用プローブのエッジ電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得することと、患者の解剖学的構造の組織をアブレーションすることと、組織のアブレーション中に、第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定することと、第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対するその変化に基づいて、損傷形成を指示することと、を含む。
【0004】
医療手技中に使用するための処理装置が提供され、この処理装置は、データを記憶するように構成されたメモリと、プロセッサと、を備える。プロセッサは、医療用プローブの複数のアブレーション電極の各々と、医療用プローブのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、アブレーション電極の各々と、その医療用プローブのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、患者の解剖学的構造の組織のアブレーション中に、第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている。
【0005】
医療手技を行うこととともに使用するためのシステムが提供され、このシステムは、バルーンカテーテル及び処理装置を備える。このバルーンカテーテルは、患者の解剖学的構造の組織をアブレーションするように構成された複数のアブレーション電極、ステム電極、及びエッジ電極を含む。処理装置は、プロセッサを含み、プロセッサは、バルーンカテーテルのバルーン電極の各々と、バルーンカテーテルのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、バルーンカテーテルのアブレーション電極の各々と、バルーンカテーテルのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、組織のアブレーション中に、第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ第1のインピーダンス測定値及び第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面とともに例として与えられる以下の説明から、より詳細な理解が可能になる。
【
図1】本開示の特徴を実装するためのアブレーションバルーンカテーテルを備える、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステムの例の説明図。
【
図2】本明細書に記載の実施形態とともに使用するための医療システムの例示的な構成要素を示すブロック図である。
【
図3】空洞壁組織と物理的に接触している、
図1に示された例示的なカテーテルの説明図である。
【
図4A】アブレーション電極が組織と部分的に接触している間の、
図3に示されたエッジ電極に電気的に結合されたアブレーション電極の概略図である。
【
図4B】アブレーション電極が組織と完全に接触している間の、
図3に示されたエッジ電極に電気的に結合されたアブレーション電極の概略図である。
【
図5】本開示の特徴による、損傷評価形成の方法を例示するフロー図である。
【
図6】本開示の特徴による、損傷評価として使用するための、異なるタイプの取得されたインピーダンス測定情報の表示を示す。
【
図7】本開示の特徴による、接触十分性のレベルを決定して、相対双極インピーダンス値間の変化を示す例示的な方法を指示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は数値範囲の「約」又は「ほぼ」という用語は、構成要素の部分又は集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「ほぼ」は、値の範囲±列挙値の20%を指し得る。例えば、「約90%」は、71%~99%の値の範囲を示し得る。
【0008】
アブレーションのための領域の正確な決定を容易にするために、患者の解剖学的構造(例えば、臓器)の動的マップが作成される。このマップを見て、臓器の標的アブレーション部位(すなわち、関心領域(region of interest、ROI))が識別される。識別されたアブレーション部位に基づいて、アブレーション手技(1回又は2回以上のアブレーションを含む)が臓器に対して行われる。
【0009】
バルーンアブレーションカテーテル又はバスケットカテーテルなどの多電極アブレーションカテーテルが、アブレーション手技を行うために使用することができる。多電極アブレーションカテーテルは、典型的には、拡張可能なフレーム(例えば、膨張可能なバルーン)を備え、そのフレームは、患者の臓器の空洞部に挿入するためのシャフトの遠位端、及びフレーム上にわたって配設された複数のアブレーション電極に結合される。
【0010】
アブレーション電極の各々がアブレーションされるべき空洞部壁組織と物理的に接触しているときに、正常なアブレーション治療が促進される。例えば、多数のアブレーション電極を有するバルーンカテーテルを使用して肺室(pulmonary ventricle、PV)の心門をアブレーションする場合、通常、カテーテルのアブレーション電極の各々は、それらがPV組織と完全に接触するように位置決めされなければならない。しかしながら、アブレーション電極は、必ずしも組織と完全に接触するとは限らない場合が多く、アブレーション電極の部分は、むしろ血液内に浸され,その結果、血栓形成などの問題をはらんだ副次的作用を引き起こす可能性がある。
【0011】
いくつかの従来技術は、カテーテル上のアブレーション電極とステム電極との間、並びにアブレーション電極とエッジ電極(すなわち、先端電極)との間のインピーダンス測定値に基づいて、アブレーションカテーテルの電極の各々が組織と完全に接触しているかどうかを決定する。これらの従来技術は、アブレーション電極が組織と完全に接触しているという良好な指示を提供するが、これらの技術は、損傷をもたらすアブレーションが形成されているかどうかに関しての指示を提供しない。
【0012】
本開示の特徴は、アブレーション中にインピーダンス特性の変化をモニタリングすることによって、損傷評価を行うための追加の技術を提供する。この損傷評価は、組織と完全に接触していることを決定するためのインピーダンス測定に加えて、測定値(例えば、インピーダンス変化)を含み、損傷が形成されたか否かを予測するための、追加の測定結果を医師に提供する(例えば、表示する)。この損傷評価は、アブレーション前にアブレーション電極と、ステム電極及びエッジ電極の両方との間のインピーダンス測定値を取得し、アブレーション中にアブレーション電極と、ステム電極及びエッジ電極の両方との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、かつアブレーション中に第1のインピーダンス測定値と第2のインピーダンス測定値との間の変化を決定することによって行われる。インピーダンス測定値における変化は、損傷の形成を示す。
【0013】
図1は、本開示の特徴を実装するためのアブレーションバルーンカテーテル40及び計算装置24を備える、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステム20の例の説明図である。典型的には、バルーンカテーテル40は、例えば、左心房において心臓組織のアブレーションなどの治療処置に使用される。システム20は、挿入
図25に示されている、シャフト22の遠位端に結合されたバルーンカテーテル40の位置を決定するために使用される。システム20は、バルーンカテーテル40のアブレーション電極50の各々が組織と接触しているかどうかを(例えば、アブレーションを行う前に)決定するために、更に使用される。
【0014】
図1に示す例示的な計算装置24は、プロセッサ41、及びRF信号及び位置信号などの信号を送受信するためのインターフェース回路44を含む。このインターフェース回路44はまた、表面電極49から、かつ/又はカテーテル40上に配設された任意の電極から、心電図を受信することもできる。
【0015】
いくつかの実施形態では、プロセッサ41は、リレー60を制御して、以下のうちの2つ又はそれ以上の間の電気接続を切り替え、それらは、(i)アブレーション電極と、1つ又は2つ以上の身体表面電極との間のインピーダンスを測定するための、アブレーション電極と表面電極49との間の接続(62)を有する第1の構成、(ii)アブレーション電極と、ステム電極及びエッジ電極との間のインピーダンスを測定するための、バルーンカテーテルのアブレーション電極と、ステム電極及びエッジ電極との間の接続(64)を有する第2の構成であって、接続62及び64が、電極位置、及びその場所における組織との電極接触の程度を互換性があるように測定するために使用される、第2の構成、並びに(iii)アブレーション電極と背面パッチ電極(図示せず)との間で電気信号を駆動することによってアブレーションを行うための、アブレーション電極と背面パッチ電極との間の接続(66)、である。
【0016】
医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用して、及び/又はシース23からの偏向を使用して、シャフト22を操作することによって、バルーンカテーテル40を患者28の心臓26内の標的配置に誘導する。バルーンカテーテル40は、シース23を通じて折り畳まれた構成で挿入され、バルーンがシース23から引っ込められた後にだけ、バルーンカテーテル40は、その意図された機能的形状を取り戻す。バルーンカテーテル40を折り畳まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的配置への途中での血管外傷を最小限に抑える働きをする。
【0017】
バルーンカテーテル40は、バルーン膜の外側表面上に配置された細長い大面積アブレーション電極50を備える。ステム電極51は、バルーンの近位で、シャフト22の遠位端上に、配設されている。エッジ電極52は、バルーンの直ぐ遠位で、シャフト22の遠位端上に配置されている。電極51及び52は、アブレーション電極50の各々が組織と完全に接触しているか、又は少なくとも部分的に血液に浸漬されているか否かを決定するために使用される。
【0018】
アブレーション電極50、ステム電極51、及びエッジ電極52は、例えば、シャフト22を通って計算装置24内のインターフェース回路44を通っている電線を介して、互いに電気的に接続されている。追加的に、アブレーション電極50を使用して、ケーブル39を通って患者28の胸部まで通っている電線を介して表面電極49に対するインピーダンスを検出することによって、心臓26内のバルーンカテーテル40の位置を決定することができる。バルーンカテーテル40の位置は、例えば、前進したカテーテル場所(advanced catheter location、ACL)を使用して決定され、これには、アブレーション電極と表面電極との間のインピーダンスを測定して臓器内のバルーンカテーテル上の電極の位置を追跡する位置追跡サブシステムが使用される。ACLは、様々な医療分野、例えば、CARTOシステムに実装されており、これは、Biosense-Webster Inc.(Irvine,California)によって製品化され、米国特許第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号、及び同第8,456,182号に記載されており、これらの開示内容は、参照により本明細書に全て組み込まれる。
【0019】
図2は、本明細書で説明される実施形態とともに使用するための医療システム200の例示の構成要素を示すブロック図である。
図2に示されているように、システム200は、医療器具202(例えば、
図1に示されたバルーンカテーテル40)、計算装置24(例えば、
図1に示された計算装置24)、プロセッサ41を備える処理装置204、表示装置206、及びメモリ212を含む。説明するために、医療器具202は、本明細書では、バルーンアブレーションカテーテルとして記載されるであろう。
【0020】
図2に示すように、処理装置204、表示装置206、及びメモリ212は、例示的な計算装置24の一部である。いくつかの実施形態では、表示装置206は、計算装置24から分離されてもよい。計算装置24はまた、
図1に示されているI/Oインターフェース(例えば、インターフェース回路44)及びリレー60などの他の構成要素も含むことができる。
【0021】
図2に示すように、バルーンアブレーションカテーテル202は、1つ又は2つ以上のセンサ216を含むことができ、それらのセンサには、例えば、カテーテル202の3D位置座標を示すための場所信号を提供するための磁場場所センサ(例えば、
図1のセンサ38)が含まれる。センサ216はまた、例えば、位置センサ、圧力若しくは力センサ、温度センサ、インピーダンスセンサ、又は医療手技中のパラメータ値(例えば、カテーテル位置安定性、インピーダンス、及びTPI)を示す信号を提供する他のセンサも含む。いくつかの手技では、例示のシステム200に示されるように、カテーテル202から分離された1つ又は2つ以上の追加のセンサ210が更に、位置信号を提供するために使用される。
【0022】
カテーテル202はまた、電極208も含む。この電極208は、例えば、
図1に示されたアブレーション電極50、ステム電極51、及びエッジ電極52を含む。カテーテル202は、医療手技中に患者の解剖学的構造内でナビゲートされるように構成されているため、電極208は、組織(例えば、心臓組織)と接触するか又は非常に接近するようになる。アブレーション電極50は、患者の解剖学的構造内の組織にRFエネルギーを印加し、その組織をアブレーションするように構成されている。
【0023】
メモリ212は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、ダイナミックRAM、又はキャッシュなどの不揮発性メモリを含む。メモリ212としては更に、例えば、固定記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ及びソリッドステートドライブ)、及びリムーバブル記憶装置(例えば、光学ディスク及びフラッシュドライブ)などの記憶装置が挙げられる。
【0024】
表示装置206は、患者の解剖学的構造(例えば、心臓)の取得された電気信号(すなわち、電気信号データ)に対応するデータを含む3D空間内の心臓の1つ又は2つ以上のマップを表示するように構成されている。例えば、表示装置206は、心臓の空間的時間的明示を表すマップ、並びにそのマップ上の心臓の領域における電気信号データを表示するように構成されている。表示装置206は、処理装置204と有線又は無線通信してもよい。いくつかの実施形態では、表示装置は、計算装置24から分離されてもよい。表示装置206は、1つ又は2つ以上のマップを表示するように各々構成されている1つ又は2つ以上の表示部を含んでもよい。
【0025】
プロセッサ41は、アブレーション手技中に測定を行うように構成されており、この測定には、アブレーション電極のうちの1つ又は2つ以上と、ステム電極との間の1つ又は2つ以上の第1のインピーダンスを測定すること、アブレーション電極のうちの1つ又は2つ以上と、エッジ電極との間の1つ又は2つ以上の第2のインピーダンスを測定すること、並びに第1のインピーダンス及び第2のインピーダンスに基づいて、1つ又は2つ以上のアブレーション電極の中から少なくとも1つのアブレーション電極について、ブレーション電極が壁組織と物理的に接触しているかどうかを決定すること、が含まれる。
【0026】
プロセッサ41はまた、損傷評価の一部として、追加のインピーダンス計算及び測定も行うように構成されており、それらの結果により、医師が、損傷がアブレーションによって形成されたか否かを予測することが可能になる。
【0027】
プロセッサ41はまた、取得されたインピーダンス計算及び測定信号(例えば、電極208からの)を電気信号データとして処理し、電極208を介して取得されたその電気信号データをメモリ212に記憶させるようにも構成されている。処理装置204はまた、1つ又は2つ以上のフィルタパラメータ設定値に従って、取得された電気信号データをフィルタリングし、マッピング情報を生成し、表示装置206を駆動し、そのマッピング情報を使用してそれらのマップを表示するようにも構成されている。
【0028】
図3は、空洞部組織48と物理的に接触している、
図1に示された例示的なバルーンカテーテル40の説明図である。バルーンカテーテル40は、バルーンのメンブレン46上に配設されている複数のアブレーション電極50を含む。ステム電極51及びエッジ電極52は、シャフト22の遠位端上に配置され、血液55に浸漬される。
図3に示す例では、メンブレン46の上部に配設されたアブレーション電極50(1)は、組織48と完全に接触している(すなわち、組織48は、電極50の全接触領域と接触している)。対照的に、メンブレン46の底部に配設された電極50(2)は、血液55に浸っている遠位領域50aを有する。したがって、異なるインピーダンス値が、上部及び底部アブレーション電極(50(1)及び50(2))と、エッジ電極52との間で取得され、それらの値は、それぞれ、組織との完全な接触、及び部分的な接触を示している。バルーンカテーテル40はまた、本開示の特徴を簡略化して説明及び明示するために、
図3に示された説明図から省略されている追加の要素(例えば、温度センサ及び灌注孔)も含む。
【0029】
図4Aは、アブレーション電極50が組織48と部分的に接触している間の、
図3に示されたエッジ電極52に電気的に結合されたアブレーション電極50の概略図である。
図4Bは、アブレーション電極50が組織48と完全に接触している間の、
図3に示されたエッジ電極52に電気的に結合されたアブレーション電極50の概略図である。
【0030】
図4Aの図は、
図3に示された領域50aなどの遠位領域を有するアブレーション電極50の例を示し、その領域は、血液55に浸されており、結果として、不十分な組織接触を有する電極50がもたらされる。アブレーション電極50とエッジ電極52との間のインピーダンスは、並列抵抗R
Sに対して並列の血液インピーダンス、すなわちR
Bに等しく、その並列抵抗は、血液、組織、及び/又は別の導電性体内のチャネルからもたらされ得る。この不十分なインピーダンスは、以下の式1に示すように表される。
|Z_insufficient|=R
B||R
S 式1
【0031】
バルーンがほとんど血液中に浸っている場合には、並列抵抗率は、血液抵抗率によって支配的であり、Z_insufficientの最小値は、約RB/2である。並列抵抗率が無限大である場合には、Z_insufficientの最大値は、RBである。ほぼ100オームの典型的な血液抵抗率の値の場合、Z_insufficientは、ほぼ50~ほぼ100オームの範囲に入る。
【0032】
図4Bの図は、組織と完全に接触しているアブレーション電極50の例を示している。図に示すように、アブレーション電極50とエッジ電極52との間のインピーダンスは、並列抵抗R
Sと並列である、組織と直列の血液のインピーダンス、すなわちR
B+R
Tである。この十分なインピーダンスは、以下の式2に示すように表される。
|Z_sufficient|=(R
B+R
T)||R
S 式2
【0033】
組織インピーダンスは、血液インピーダンスよりもかなり大きいため、「十分な」インピーダンスは、通常、測定されるのに十分に大きい値(例えば、少なくとも数オーム)だけ、「不十分な」インピーダンスよりも大きく、したがって、アブレーション電極50が組織と部分的に接触している(すなわち、血液中に浸っている)場合は、例えば、較正された閾値インピーダンス値を使用して、アブレーション電極50が組織48と完全に接触している場合と区別することができる。
【0034】
バルーンがほとんど血液中に浸っているために、並列抵抗率が血液抵抗率によって支配的である場合には、Z_sufficientの最小値は、約RBである。この場合、バルーンは、低い並列抵抗率に起因して、別の場所に移される。Z_sufficientの実用的な閾値は、並列抵抗率が主に組織を介したものである場合を考慮しているRTである。ほぼ100オームの代表的な血液抵抗率の値、及びほぼ300オームの組織抵抗率の値の場合、Z_sufficientは、ほぼ150オームを上回る。しかしながら、例えば、測定の繰り返しによって、Z_sufficientについての閾値として、ほぼ100オームを上回るより低い数を使用することができる。
【0035】
図4A及び
図4Bは、アブレーション電極50とエッジ電極52との間のインピーダンスに関しては上で説明されたが、組織との部分的な接触の場合はまた、アブレーション電極50とステム電極51との間のインピーダンスを測定することによって、組織との完全な接触の場合と区別することもできる。
【0036】
プロセッサ41は、例えば、測定された第1のインピーダンス又は第2のインピーダンスが参照テーブルに保存された所定のインピーダンス値(例えば、閾値インピーダンス値)以上であると決定することによって、アブレーション電極が組織と物理的に接触していると決定する。接触のレベル、及び対応する閾値インピーダンス値を含む参照テーブルの例は、以下の表1に示される。
【0037】
【0038】
アブレーション電極50と、ステム電極51及びエッジ電極52の両方との間のインピーダンスを測定することによって、組織との完全な物理的接触は、細長いアブレーション電極の両端から確認することができる。表1に示されたレベル及びレベルの数は、単なる例である。開示の特徴は、表1に示されたものとは異なるレベル、及び異なる数のレベルを使用して実装することができる。
【0039】
図5は、本開示の特徴による、損傷評価形成の方法500を例示するフロー図である。
図5に示され、かつ以下に説明される方法は、アブレーション中のインピーダンス特性の変化をモニタリングすることによって、損傷がアブレーションから形成されているかどうかを決定する。インピーダンス特性の変化は、損傷が形成されている指示として提供される(例えば、医師に表示される)。すなわち、その指示から、医師は、損傷が形成されているかどうかを予測することができる。視覚的に表示されたインピーダンス情報の様々なタイプの例が、
図6に示されており、以下に更に詳細に説明される。
【0040】
ブロック502に示されているように、部分的に拡張されたバルーンカテーテル(例えば、カテーテル40)は、患者の解剖学的構造の空洞部(例えば、心臓の肺静脈の心門)の内側の標的場所に(例えば、医師30によって)位置決めされる。ブロック504に示されているように、バルーンは、アブレーション電極(例えば、アブレーション電極50)を組織と完全に接触させるように拡張される。
【0041】
ブロック506に示されているように、方法500は、アブレーション電極50(すなわち、バルーン電極)の各々と、ステム電極51との間のインピーダンス測定値、及びアブレーション電極50の各々と、エッジ電極52との間のインピーダンス測定値を取得することを含む。例えば、アブレーション電極50のうちの各1つについて、エッジ電極52とアブレーション電極50との間のインピーダンスZ1は、以下の式3に示すように表すことができる。
Z1=ZEdge-ZBalloon 式3
【0042】
アブレーション電極50のうちの各1つについて、ステム電極51とアブレーション電極50との間のインピーダンスZ2は、以下の式4に示すように表すことができる。
Z2=ZEdge-ZBalloon 式4
【0043】
ブロック508に示されているように、取得されたインピーダンス測定値に基づいて、アブレーション電極の各々と、組織との間の接触十分性(例えば、完全接触又は部分的接触)のレベルが、(例えば、プロセッサ41を介して)決定される。例えば、プロセッサ41は、測定された単極インピーダンス値を、上の表1に示されたものなどの1つ又は2つ以上の記憶された単極閾値インピーダンス値と比較することによって、各アブレーション電極50の接触レベルを決定する。それらの接触レベルは、その電極が組織と完全に接触しているかどうかを識別するために、医師に指示(例えば、表示)され得る。例えば、医師は、表示された接触レベル(例えば、表1に示された最低限十分である、十分である、良好である、及び優秀である)のいずれかから、その電極が完全に接触していることを決定することができる。
【0044】
追加的又は代替的に、各アブレーション電極による、組織との接触レベルが、相対双極インピーダンスRIに基づいて決定され得、以下の式5に示すように表することができる。
【0045】
【0046】
アブレーション電極50と組織との間に接触がない場合、両方のインピーダンス測定値(Z1及びZ2)は、互いにほぼ等しいであろうし、したがって、相対双極インピーダンスRIは、ゼロに等しいか又はほぼ等しく、以下の式6に示すように表すことができる。
【0047】
【0048】
アブレーション電極50と組織との間に接触がある場合、インピーダンス測定値(Z1及びZ2)は、互いに異なるであろうし、したがって、相対双極インピーダンスRIは、ゼロに等しくなく、以下の式7に示すように表すことができる。
【0049】
【0050】
したがって、アブレーション電極50と組織との間に接触がある場合、相対双極インピーダンスは、ゼロに等しくない値を有する。アブレーション電極50と組織との間に接触がある場合、相対双極インピーダンスは、ゼロに等しい。
【0051】
判断ブロック510において、アブレーション電極50の各々が、例えば、電極によって測定されたように不十分なインピーダンス(表1)に起因して、組織と完全には接触していないと決定された場合(「いいえ」の判断)、カテーテル40は、接触を改善するように別の場所に移され、本方法は、ブロック506に戻り、アブレーション電極50の各々と組織との間の接触十分性のレベルを再評価する。判断ブロック510において、アブレーション電極50の各々が組織と完全に接触していると決定された場合(「はい」の判断)、ブロック514において、組織のアブレーションが開始する。
【0052】
組織のアブレーションは、例えば、アブレーション電極のうちの1つ又は2つ以上によるRFエネルギーを組織48の領域に印加することによって行われる。アブレーション手技中に、インピーダンス特性に対する変化(例えば、単極インピーダンス値に対する変化、及び相対双極インピーダンス値に対する変化)は、ブロック516においてモニタリングされ、インピーダンス変化の指示が、ブロック518において、医師に提供される(例えば、表示される)。この指示された変化は、医師によって使用されて、損傷が組織48上で正常に形成されているかどうかを予測することができる。本明細書に記載のインピーダンス測定は、約10kHz~約500kHzのRF範囲で印加される交流(alternating current、AC)に対応する。
【0053】
組織のインピーダンスは、通常、血液のインピーダンスよりも高い。しかしながら、損傷が組織のアブレーションによって形成されるときに、組織の電気的特性は変化し、損傷が形成される組織48の領域におけるインピーダンスは減少する(例えば、約15~20オーム)。したがって、約15~約20オームのインピーダンス変化は、損傷が組織48の標的部位において正常に形成されていることを示している。
【0054】
例えば、プロセッサ41は、以前に取得された単極インピーダンス値(例えば、アブレーション電極50の各々と、エッジ電極52との間の値)と、アブレーション中に取得された単極インピーダンス値との間の変化をモニタリングし、単極インピーダンス値間の変化は、医師に提供される(例えば、表示される)。場合によっては、以前に取得された単極インピーダンス値は、アブレーションの前に取得される。代替的に、以前に取得された単極インピーダンス値はまた、アブレーション中にも取得される。
【0055】
図7は、本開示の特徴による、インピーダンス変化に基づいて損傷形成を示す例示的な方法700を示すフロー図である。ブロック702に示されているように、一実施形態では、取得されたインピーダンス値は、単極インピーダンス値である。例えば、プロセッサ41は、アブレーション中に以前に取得された単極インピーダンス値(例えば、第1の単極インピーダンス値)を記憶させ、各電極について、ブロック706において、その保存された単極インピーダンス値を、(例えば、
図5のブロック516におけるモニタリングによって)アブレーション前又はアブレーション中に取得された、その後に取得の単極インピーダンス値(例えば、第2の単極インピーダンス値)と比較することによって、インピーダンスの変化を決定する。単極インピーダンス値間の変化は、閾値(例えば、単極インピーダンス閾値)と比較され、単極インピーダンス値間の変化が、判断プロセス708において、閾値(例えば、ほぼ15~ほぼ20オームの範囲の値)以上であると決定されたときに、(例えば、インピーダンス変化が閾値以上である)損傷形成の指示が、ブロック518(
図5及び
図7の両方に示されている)において、医師に提供され、その指示を使用して損傷形成を予測することができる。判断ブロック708において、単極インピーダンス値間の変化が閾値未満であると決定されると、本方法は、ブロック706に戻ってインピーダンス変化をモニタリングする。
【0056】
追加的又は代替的に、プロセッサ41は、上で説明された相対双極インピーダンス値に対する変化をモニタリングする。例えば、ブロック704において破線で示されているように、取得されたインピーダンス値は、双極インピーダンス値である。例えば、組織の領域におけるインピーダンスは、損傷が形成されると、約15~20オームだけ下降するため、相対双極インピーダンス値(上記の式5で示されている)もまた変化する。アブレーションが開始されると、プロセッサ41は、相対双極インピーダンス値を保存することができ、次いで、アブレーション中に取得された相対双極インピーダンス値を、記憶された相対双極インピーダンス値と比較する。上述した単極インピーダンス値と同様に、プロセッサ41は、各電極について、ブロック706において、その記憶された双極インピーダンス値を、(例えば、
図5のブロック516におけるモニタリングによって)アブレーション前又はアブレーション中に取得された、その後に取得の相対双極インピーダンス値(例えば、第2の単極インピーダンス値)と比較することによって、インピーダンスの変化を決定する。相対双極インピーダンス値間の変化が、判断プロセス708において、閾値(例えば、双極インピーダンス閾値)以上であると決定された場合、(例えば、インピーダンス変化が閾値以上である)損傷形成の指示が、ブロック518(
図5及び
図7に示されている)において、医師に提供され、その指示を使用して損傷形成を予測することができる。判断ブロック708において、双極インピーダンス値間の変化が閾値未満であると決定された場合、本方法は、ブロック706に戻ってインピーダンス変化をモニタリングする。
【0057】
インピーダンス値に対して表示された変化は、異なるタイプの視覚的に表示された情報を含むことができ、その結果、医師は、損傷が正常に形成されていると予測することができる。
【0058】
図6は、医療手技中に経時的に取得された、異なるタイプの視覚的に表示されたインピーダンス情報の例を示しており、それらのインピーダンス情報は、医師によって使用されて、損傷が形成されているかどうかを予測することができる。
図6に示されたインピーダンス測定情報は、ベースライン相対インピーダンス情報、血液プールアブレーションを示す相対インピーダンス情報、損傷形成を示す相対インピーダンス情報、及び閾値を含む。X軸は、時間を表し、Y軸は、アブレーション電極50とエッジ電極52との間の双極相対インピーダンス値を表す。
図6に示された情報はまた、他のアブレーション電極50の各々についても表示にすることができる。
【0059】
ベースライン相対インピーダンスは、時間t1におけるアブレーション手技の開始前に、時間t0と時間t1との間で取得される。
図6に示されたベースライン相対インピーダンスは、アブレーション電極50と組織48との間の完全な接触を示している。組織の一部は、時間t1において、
図3に示されたバルーンカテーテルのアブレーション電極50の1つ又は2つ以上によってアブレーションされる。
【0060】
図6に示された水平の破線は、閾値を表す。この閾値は、例えば、時間t1におけるベースライン相対インピーダンス、及び、上述したように損傷形成から生じる約15~20オームのインピーダンス降下に基づいて決定される。
図6に示されている上の曲線は、血液プールアブレーションを表す。すなわち、アブレーション中に、ベースライン相対インピーダンスと相対インピーダンスとの間の変化がほとんど又は全くないときに、血液プールアブレーションの視覚的指示がある。
図6に示されている下の曲線は、損傷形成を表す。すなわち、アブレーション中に、ベースライン相対インピーダンスと相対インピーダンスとの間の顕著な変化(閾値よりも大きい変化)があるときに、損傷形成の視覚的指示がある。
【0061】
本方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおいて実施することができる。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ又は2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)回路、任意のその他のタイプの集積回路(integrated circuit、IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。そのようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(hardware description language、HDL)命令及びネットリストなどのその他の中間データ(そのような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶させることが可能である)の結果を使用して製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。そのような処理の結果はマスクワークであり得、このマスクワークをその後半導体製造プロセスにおいて使用して、本開示の特徴を実装するプロセッサを製造する。
【0062】
本明細書に提供される方法又はフロー図は、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実施のために非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実施することができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体の例としては、読み取り専用メモリ(read only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(digital versatile disk、DVD)が挙げられる。
【0063】
本明細書の開示に基づいて、多くの変形が可能であることを理解されたい。特徴及び要素は、特定の組み合わせで上述されているが、各特徴又は要素は、他の特徴及び要素なしで単独で、又は他の特徴及び要素を伴う若しくは伴わない様々な組み合わせで使用することができる。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 医療アブレーション手技のための損傷評価の方法であって、前記方法が、
医療用プローブの複数のアブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのステム電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得することと、
前記医療用プローブの前記アブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのエッジ電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得することと、
患者の解剖学的構造の組織をアブレーションすることと、
前記組織のアブレーション中に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定することと、
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、損傷形成を指示することと、を含む、方法。
(2) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、前記損傷形成を前記指示することが、前記変化を表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記医療用プローブが、バルーンカテーテルを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値が、患者の解剖学的構造の前記組織をアブレーションする前に取得される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を決定することが、前記組織のアブレーション中に、前記変化を連続的にモニタリングすることを含む、実施態様1に記載の方法。
【0065】
(6) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、単極インピーダンス値に対する変化である、実施態様1に記載の方法。
(7) 各アブレーション電極について、第1の単極インピーダンス値と第2の単極インピーダンス値との間の変化を、単極インピーダンス閾値と比較することと、
前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化が前記単極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化に基づいて、前記損傷形成を指示することと、を更に含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、相対双極インピーダンス値に対する変化である、実施態様1に記載の方法。
(9) 各アブレーション電極について、第1の相対双極インピーダンス値と第2の相対双極インピーダンス値との間の変化を、相対双極インピーダンス閾値と比較することと、
前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化が前記相対双極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化に基づいて、前記損傷形成を指示することと、を更に含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 医療手技中に使用するための処理装置であって、前記処理装置が、
データを記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、
医療用プローブの複数のアブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、
前記アブレーション電極の各々と、前記医療用プローブのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、
患者の解剖学的構造の組織のアブレーション中に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている、処理装置。
【0066】
(11) 前記プロセッサが、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を表示装置上に表示することによって、前記変化に基づいて前記損傷形成を指示するように構成されている、実施態様10に記載の処理装置。
(12) 前記医療用プローブが、バルーンカテーテルである、実施態様10に記載の処理装置。
(13) 前記プロセッサが、
患者の解剖学的構造の前記組織をアブレーションする前に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値を取得し、かつ
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値をインピーダンスデータとして前記メモリに記憶するように構成されている、実施態様10に記載の処理装置。
(14) 前記プロセッサが、前記組織の前記アブレーション中に、前記変化を連続的にモニタリングすることによって、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を決定するように構成されている、実施態様10に記載の処理装置。
(15) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、単極インピーダンス値に対する変化である、実施態様10に記載の処理装置。
【0067】
(16) 前記プロセッサが、
各アブレーション電極について、第1の単極インピーダンス値と第2の単極インピーダンス値との間の変化を、単極インピーダンス閾値と比較し、
前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化が前記単極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の単極インピーダンス値と前記第2の単極インピーダンス値との間の前記変化に基づいて、前記損傷形成を指示するように構成されている、実施態様15に記載の処理装置。
(17) 前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化が、相対双極インピーダンス値に対する変化である、実施態様10に記載の処理装置。
(18) 前記プロセッサが、
各アブレーション電極について、第1の相対双極インピーダンス値と第2の相対双極インピーダンス値との間の変化を、相対双極インピーダンス閾値と比較し、かつ
前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化が前記相対双極インピーダンス閾値以上であるときに、前記第1の相対双極インピーダンス値と前記第2の相対双極インピーダンス値との間の前記変化を指示するように構成されている、実施態様17に記載の処理装置。
(19) 医療手技を行うこととともに使用するためのシステムであって、前記システムが、
患者の解剖学的構造の組織をアブレーションするように構成された複数のアブレーション電極、ステム電極、及びエッジ電極を備える、バルーンカテーテルと、
プロセッサを備える処理装置と、を備え、前記プロセッサが、
前記バルーンカテーテルの前記アブレーション電極の各々と、前記バルーンカテーテルのエッジ電極との間の第1のインピーダンス測定値を取得し、
前記バルーンカテーテルの前記アブレーション電極の各々と、前記バルーンカテーテルのステム電極との間の第2のインピーダンス測定値を取得し、
前記組織のアブレーション中に、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する変化を決定し、かつ
前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの少なくとも1つに対する前記変化に基づいて、損傷形成を指示するように構成されている、システム。
(20) 表示装置を更に備え、前記プロセッサが、前記第1のインピーダンス測定値及び前記第2のインピーダンス測定値のうちの前記少なくとも1つに対する前記変化を前記表示装置上に表示することによって、前記変化に基づいて前記損傷形成を指示するように構成されている、実施態様19に記載のシステム。
【外国語明細書】