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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088919
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20230620BHJP
   E01D 11/00 20060101ALI20230620BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20230620BHJP
   G06T 7/77 20170101ALI20230620BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G01B11/16 H
E01D11/00
E01D22/00 A
G06T7/77
E04H9/02 331A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033376
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2020509604の分割
【原出願日】2018-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2018058926
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】今川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】日下 博也
(72)【発明者】
【氏名】野田 晃浩
(57)【要約】
【課題】構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測することができる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置120は、構造物70に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された、構造物70を可動可能に支持する支持部材80の複数の画像を取得し、複数の画像に基づいて、支持部材80の変位を計測し、計測された支持部材80の変位に対して主成分を抽出する制御部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された、当該構造物を可動可能に支持する支持部材の複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測し、前記計測された前記支持部材の変位に対して主成分を抽出する制御部を備える
計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記抽出された主成分による前記支持部材の変位を表示させる
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記主成分の変位の向きと変位の距離とを表示させる
請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記抽出された主成分による前記支持部材の変位に基づいて、前記支持部材が規定の動きをしているか否かの判定を行う
請求項2に記載の計測装置。
【請求項5】
前記構造物は、橋桁であって、
前記支持部材は、支承である
請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記構造物は、吊り構造物の橋桁であって、
前記支持部材は、前記吊り構造物のケーブルである
請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記構造物は、吊り構造物の橋桁であって、
前記支持部材は、前記吊り構造物のケーブルであって、
前記制御部は、前記ケーブルの振動数、または、前記振動数から前記ケーブルの張力を求め、
前記制御部は、前記抽出された主成分の振動数または前記張力に基づいて、前記判定を行う
請求項4に記載の計測装置。
【請求項8】
さらに、前記複数の画像を撮像する撮像部を備える
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測する計測方法であって、
前記構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された前記構造物の複数の画像を取得し、
前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測し、
前記計測された前記支持部材の変位に対して主成分を抽出する
計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位の計測に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の外観を調査する技術として、例えば、特許文献1には、カメラを通して得た構造物又は製品の原映像から亀裂幅を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-139285号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tohru SHINKE, et al, ”PRACTICAL FORMULAS FOR ESTIMATION OF CABLE TENSION BY VIBRATION METHOD”, Proc. Jpn. Soc. Civ. Eng., No. 294, 1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物を可動可能に支持する支持部材において、例えその支持部材の外観に問題が無くても、その支持部材が規定通りに可動しないと、構造物又は支持部材に想定外のストレスが掛かり、構造物又は支持部材が破損してしまうことがある。
【0006】
そこで、本開示は、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測することができる計測装置及び計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る計測装置は、構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された、当該構造物を可動可能に支持する支持部材の複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測し、前記計測された前記支持部材の変位に対して主成分を抽出する制御部を備える。
【0008】
また、本開示の一態様に係る計測方法は、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測する計測方法であって、前記構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された前記構造物の複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測し、前記計測された前記支持部材の変位に対して主成分を抽出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る計測装置及び計測方法によれば、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る計測システムの構成例を示す外観図である。
図2図2は、実施の形態に係る支持部材の側面を示す模式図である。
図3図3は、実施の形態に係る測定装置の機能構成を示すブロック図である。
図4A図4Aは、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。
図4B図4Bは、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。
図4C図4Cは、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。
図4D図4Dは、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。
図5図5は、実施の形態に係る計測処理のフローチャートである。
図6図6は、実施の形態における複数の画像の一例を示す図である。
図7図7は、他の実施の形態に係る計測システムの構成例を示す外観図である。
図8図8は、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の概要)
本開示の一態様に係る計測装置は、構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された、当該構造物を可動可能に支持する支持部材の複数の画像を取得する取得部と、前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測する計測部と、を備える。
【0012】
上記構成の計測装置によると、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測することができる。
【0013】
また、さらに、前記計測部によって計測された前記支持部材の変位に基づいて、前記支持部材が規定の動きをしているか否かの判定を行う判定部を備えるとしてもよい。
【0014】
これにより、上記構成の計測装置を利用するユーザは、支持部材が規定の動きをしているか否かを知ることができる。
【0015】
また、さらに、前記計測部によって計測された前記支持部材の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する抽出部を備え、前記判定部は、前記抽出部によって抽出された主成分に基づいて前記判定を行うとしてもよい。
【0016】
これにより、上記構成の計測装置は、支持部材の変位の成分のうち、特徴的な成分に基づいて、支持部材が規定の動きをしているか否かの判定を行うことができるようになる。このため、上記構成の計測装置によると、より精度良く、支持部材が規定の動きをしているか否かを判定し得る。
【0017】
また、前記構造物は、橋桁であって、前記支持部材は、支承であって、前記規定の動きは、回転を含むとしてもよい。
【0018】
これにより、上記構成の計測装置によると、橋桁を回転可能に支持する支承に対して、その支承が規定通りの回転動作をしているか否かを判定し得る。
【0019】
また、前記構造物は、橋桁であって、前記支持部材は、支承であって、前記規定の動きは、並進を含むとしてもよい。
【0020】
これにより、上記構成の計測装置によると、橋桁を並進可能に支持する支承に対して、その支承が規定通りの並進動作をしているか否かを判定し得る。
【0021】
また、前記構造物は、吊り構造物の橋桁であって、前記支持部材は、前記吊り構造物のケーブルであって、前記規定の動きは、前記ケーブルの引張られた方向の垂直方向への動きを含むとしてもよい。
【0022】
これにより、上記構成の計測装置によると、吊り構造物の橋桁を可動可能に支持するケーブルに対して、そのケーブルが、規定通りの、引張られた方向の垂直方向への変位動作をしているか否かを判定し得る。
【0023】
また、前記構造物は、吊り構造物の橋桁であって、前記支持部材は、前記吊り構造物のケーブルであって、前記抽出部は、前記ケーブルの振動数、または、前記振動数から前記ケーブルの張力を求め、前記判定部は、前記抽出部によって抽出された主成分の振動数または前記張力に基づいて、前記判定を行うとしてもよい。
【0024】
これにより、吊り構造物の橋桁を可動可能に支持するケーブルに対して、そのケーブルが振動動作をする際の振動数が規定通りであるか否か、又は、そのケーブルが変位する際の張力が規定通りであるか否かを判定し得る。
【0025】
また、さらに、前記複数の画像を撮像する撮像部を備えるとしてもよい。
【0026】
これにより、上記構成の計測装置によると、外部から画像を取得しなくても、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測することができるようになる。
【0027】
本開示の一態様に係る計測方法は、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測する計測方法であって、前記構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された前記構造物の複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測する。
【0028】
上記計測方法によると、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測することができる。
【0029】
以下、本開示の一態様に係る計測装置の具体例について、図面を参照しながら説明する。ここで示す実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序等は、一例であって本開示を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意に付加可能な構成要素である。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0030】
なお、本開示の包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0031】
(実施の形態)
[検査システムの構成]
まず、実施の形態に係る計測システムの構成例について図1を参照しながら具体的に説明する。図1は、実施の形態に係る計測システムの構成例を示す外観図である。計測システム100は、撮像装置110と計測装置120とを備える。
【0032】
撮像装置110は、例えばイメージセンサを備えるデジタルビデオカメラ又はデジタルスチルカメラである。撮像装置110は、構造物70を可動可能に支持する支持部材80の画像を経時的に撮像する。本実施の形態では、一例として、構造物70が、橋桁であり、支持部材80が、橋脚90の上に設置され、橋桁を駆動可動に支持する支承であるとして説明する。
【0033】
図2は、支持部材80が支承である例における、支持部材80の側面を示す模式図である。
【0034】
図2に例示されるように、支持部材80は、図面に垂直な方向を回転軸とする回転が可能な回転可動部81と、図面の左右方向(水平方向)に並進(スライド)が可能な並進可動部82とを含む。
【0035】
支持部材80は、回転可動部81と並進可動部82とを含んで構成されることで、構造物70(橋桁)を、回転可能に支持し、かつ、並進可能に支持する。このように、支持部材80の行う規定の動きには、回転と並進とが含まれる。
【0036】
なお、構造物70は、必ずしも橋桁に限定される必要はないし、支持部材80は、必ずしも支承に限定される必要はない。一例として、構造物70が、コンプレッサであり、支持部材80が、コンプレッサを建物の壁面に取り付けるダンパーであってもよい。また、他の一例として、構造物70が住宅であり、支持部材80が、基礎と住宅との間に配置される免震機構であってもよい。免震機構は、例えば、積層ゴムであってもよい。
【0037】
再び図1に戻って、計測システム100の説明を続ける。
【0038】
撮像装置110は、具体的には、構造物70に係る荷重が変化しているときに、支持部材80の画像を撮像する。例えば、構造物70が橋桁であり、支持部材80が支承であれば、車両が橋桁を走行しているとき、風などによって橋桁になにがしかの力が掛かっているとき等に複数の画像が撮像される。
【0039】
複数の画像は、支持部材80の同じ部分の画像であり、互いに異なる時刻に撮像された画像である。具体的には、複数の画像は、例えば映像に含まれる複数のフレームである。
【0040】
計測装置120は、例えばコンピュータであり、プロセッサ(図示せず)と、ソフトウェアプログラム又はインストラクションが格納されたメモリ(図示せず)と、を備える。プロセッサがソフトウェアプログラムを実行することによって、計測装置120は、後述する複数の機能を実現する。また、計測装置120は、専用の電子回路(図示せず)で構成されてもよい。この場合、後述する複数の機能は、別々の電子回路で実現されてもよいし、集積された1つの電子回路で実現されてもよい。
【0041】
計測装置120は、撮像装置110と、例えば、通信可能に接続され、撮像装置110によって撮像された複数の画像に基づいて支持部材80の変位を計測する。
【0042】
[計測装置の機能構成]
次に、実施の形態に係る計測装置120の機能構成について図3を参照しながら説明する。
【0043】
図3は、実施の形態に係る計測装置120の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、計測装置120は、取得部121と、計測部122と、抽出部123と、領域特定部124と、判定部125と、規定の動き特定部126とを備える。
【0044】
取得部121は、構造物70に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された、構造物70を可動可能に支持する支持部材80の複数の画像を取得する。例えば、取得部121は、撮像装置110から無線通信によって複数の画像を取得する。また例えば、取得部121は、着脱可能なメモリ(例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ)を介して撮像装置110から複数の画像を取得してもよい。
【0045】
計測部122は、取得部121によって取得された複数の画像に基づいて、支持部材80の変位を計測する。具体的には、計測部122は、支持部材80の表面における各局所領域の変位を計測する。局所領域は、1画素に対応する領域であっても構わないし、複数画素に対応する領域であっても構わない。計測部122は、各局所領域の変位として、例えば、各局所領域の動きベクトルを算出するとしてもよい。この場合、計測部122は、例えば、ブロックマッチング法を利用して、各局所領域の動き推定を行うことで、各局所領域の動きベクトルを算出する。
【0046】
抽出部123は、計測部122によって計測された支持部材80の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する。具体的には、抽出部123は、計測部122によって計測された各局所領域の変位のうち、後述の領域特定部124によって特定される特定領域に含まれる各局所領域の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する。多変量解析の一例としては、例えば、主成分分析が考えられる。
【0047】
図4A図4Dは、領域特定部124によって特定される特定領域が回転可動部81である場合において、抽出部123によって抽出された、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。図4Aは、各局所領域における変位の第1主成分を示し、図4Bは、各局所領域における変位の第2主成分を示し、図4Cは、各局所領域における変位の第3主成分を示し、図4Dは、各局所領域における変位の第4主成分を示す。図4A図4Dの各矢印は、各局所領域の、変位の向きと変位の距離とを示す。
【0048】
図4Dに示されるように、回転可動部81の各局所領域における変位の第4主成分は、回転可動部81の回転を示す。
【0049】
なお、抽出部123は、計測部122によって計測された支持部材80の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する構成であれば、必ずしも、計測部122によって計測された各局所領域の変位のうち、領域特定部124によって特定される特定領域に含まれる各局所領域の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する構成の例に限定される必要はない。例えば、抽出部123は、支持部材80の表面における各局所領域の変位全てに対して多変量解析を行って主成分を抽出してもよい。
【0050】
領域特定部124は、抽出部123が行う主成分の抽出の対象とする局所領域を含む特定領域を特定する。領域特定部124は、例えば、ユーザインターフェース(例えば、タッチパネル)を含み、計測装置120を利用するユーザによる入力操作に基づいて、ユーザによって指定される領域を特定領域として特定してもよい。また、領域特定部124は、例えば、取得部121によって取得された複数の画像に対して、画像認識処理を含むAI処理を行うことで、支持部材80のうちの可動可能部分含む領域を、特定領域として特定してもよい。
【0051】
判定部125は、計測部122によって計測された支持部材80の変位に基づいて、支持部材80が規定の動きをしているか否かを判定する。具体的には、判定部125は、抽出部123によって抽出された主成分に基づいて、支持部材80が規定の動きをしているか否かを判定する。判定部125は、例えば、抽出部123によって抽出された主成分の中に、後述の規定の動き特定部126によって特定される既定の動きを示す主成分が存在する場合に、支持部材80が規定の動きをしている旨の判定を行い、既定の動きを示す主成分が存在しない場合に、支持部材80が規定の動きをしていない旨の判定を行ってもよい。一例として、判定部125は、規定の動き特定部126によって特定される既定の動きが、回転可動部81の回転である場合において、抽出部123によって抽出された、各変位領域における変位の主成分の中に、図4Dに例示されるような、回転可動部81の回転を示す主成分が含まれる場合に、支持部材80が規定の動きをしている旨の判定を行う。
【0052】
なお、判定部125は、計測部122によって計測された支持部材80の変位に基づいて、支持部材80が規定の動きをしているか否かを判定する構成であれば、必ずしも、抽出部123によって抽出された主成分に基づいて行う構成の例に限定される必要はない。
【0053】
規定の動き特定部126は、支持部材80が行う規定の動きを特定する。規定の動き特定部126は、例えば、ユーザインターフェース(例えば、タッチパネル)を含み、計測装置120を利用するユーザによる入力操作に基づいて、ユーザによって指定される動きを、支持部材80が行う規定の動きとして特定してもよい。また、領域特定部124は、例えば、取得部121によって取得された複数の画像に対して、画像認識処理を含むAI処理を行うことで、支持部材80が行う規定の動きを特定してもよい。
【0054】
[計測装置の動作]
以下、上記構成の計測装置120が行う動作について説明する。
【0055】
計測装置120は、その特徴的な動作として、計測処理を行う。ここでは、計測装置120が行う計測処理の詳細について、図5図6を参照しながら説明する。
【0056】
図5は、計測装置120が行う検査処理のフローチャートである。図6は、実施の形態における複数の画像の一例を示す図である。
【0057】
計測処理は、撮像装置110によって撮像された複数の画像に基づいて、構造物70を可動可能に支持する支持部材80を計測する処理である。
【0058】
計測処理は、例えば、計測装置120が、計測装置120のユーザによって計測処理を開始する旨の操作がなされることで開始される。
【0059】
計測処理が開始されると、取得部121は、構造物70に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された、構造物70を可動可能に支持する支持部材80の複数の画像を取得する(ステップS101)。
【0060】
例えば、図6に示すように、取得部121は、支持部材80の同じ部分を含み、互いに異なる時刻に撮影された画像11~14を取得する。
【0061】
複数の画像が取得されると、計測部122は、取得された複数の画像に基づいて、支持部材80の変位を計測する(ステップS102)。より具体的には、計測部122は、取得された複数の画像に基づいて、支持部材80の表面における各局所領域の変位を計測する。
【0062】
支持部材80の変位が計測されると、領域特定部124は、抽出部123が行う主成分の抽出の対象とする局所領域を含む特定領域を特定する(ステップS103)。領域特定部124は、例えば、ユーザによって指定される領域を特定領域として特定してもよいし、例えば、取得部121によって取得された複数の画像に対して、画像認識処理を含むAI処理を行うことで、支持部材80のうちの可動可能部分含む領域を、特定領域として特定してもよい。
【0063】
なお、ステップS103の処理は、必ずしもステップS102の処理の後に行われる必要はない。ステップS103の処理は、例えば、ステップS102の処理と並列に行われてもよいし、ステップS102の処理の前に行われてもよい。
【0064】
特定領域が特定されると、抽出部123は、支持部材80の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する(ステップS104)。より具体的には、抽出部123は、計測部122によって計測された各局所領域の変位のうち、領域特定部124によって特定された特定領域に含まれる各局所領域の変位に対して多変量解析を行って主成分を抽出する。
【0065】
主成分が抽出されると、規定の動き特定部126は、支持部材80が行う規定の動きを特定する(ステップS105)。規定の動き特定部126は、例えば、ユーザによって指定される動きを規定の動きとして特定してもよいし、取得部121によって取得された複数の画像に対して、画像認識処理を含むAI処理を行うことで、規定の動きを特定してもよい。
【0066】
なお、ステップS105の処理は、必ずしもステップS104の処理の後に行われる必要はない。ステップS105の処理は、例えば、ステップS104の処理と並列に行われてもよいし、ステップS104の処理の前に行われてもよい。
【0067】
既定の動きが特定されると、判定部125は、計測部122によって計測された支持部材80の変位に基づいて、支持部材80が規定の動きをしているか否かを判定する。より具体的には、判定部125は、抽出部123によって抽出された主成分の中に、規定の動き特定部126によって特定された既定の動きを示す主成分が存在する場合に、支持部材80が規定の動きをしている旨の判定を行い、既定の動きを示す主成分が存在しない場合に、支持部材80が規定の動きをしていない旨の判定を行う。
【0068】
最後に、判定部125は、計測結果として、支持部材80の変位と、支持部材80が規定の動きをしているか否かの判定結果とを出力する(ステップS106)。例えば、判定部125は、ディスプレイ(図示せず)に計測結果を表示する。また例えば、判定部125は、他の装置(例えばスマートフォン又はタブレットコンピュータなど)に計測結果を送信してもよい。
【0069】
[考察]
上述したように、計測装置120は、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測する。そして、計測装置120は、支持部材が規定の動きをしているか否かを判定する。このため、計測装置120を利用するユーザは、構造物又は支持部材に想定外のストレスが掛かることに起因した、構造物又は支持部材の破損の可能性に係る知見を得ることができる。
【0070】
(他の実施の形態)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る計測装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0071】
例えば、構造物が橋桁で、支持部材がケーブルの斜張橋について説明する。図7は、他の実施の形態に係る計測システムの構成例を示す外観図である。図7において、斜張橋700は、構造物が橋桁711で、支持部材が主塔712に張られたケーブル701~710である。抽出部123は、斜張橋700を撮像した画像から、画像認識を用いてケーブル701~710の領域を検出し、ケーブル701~710が橋桁711と主塔712で引張られた方向と垂直の方向への動きを求め、ケーブルごとに主成分の振動数を抽出する。
【0072】
図8は、各局所領域における変位の主成分の一例を示す模式図である。図8に1本のケーブルの変位の第1主成分802と第2主成分803を抽出した結果を示す。図8において破線801は静止状態のケーブル位置を示す。規定の動きとしては、振動の振幅値を用いても良いし、各主成分の振動数を求め振動数が規定の数値範囲に含まれるかを判断してもよい。荷重の変化は橋桁711の上を通過する車両の荷重や、ケーブル701~710へのハンマーや手動等の強制加振を用いても良い。
【0073】
更に、抽出部123は、主成分の振動数からケーブルの張力を算出し、ケーブルごとの張力が規定の値の範囲内か否かを判断してもよい。ケーブルの振動数から張力を算出する方法は、非特許文献1に記載の方法などを用いることができる。
【0074】
さらに、斜張橋以外にもケーブルを有する構造物として吊り橋などの吊り構造物や送電構造物などを対象としても良い。
【0075】
また、本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0076】
例えば、上記実施の形態では、計測装置は、撮像装置を含んでいなかったが、撮像装置を含んでもよい。この場合には撮像装置は、計測装置の一部である撮像部として機能する。
【0077】
また、計測装置に含まれる複数の機能構成(取得部、計測部、抽出部、領域特定部、判定部及び既定の動き特定部など)は、分散コンピューティング又はクラウドコンピューティングによって実現されてもよい。
【0078】
なお、上記各実施の形態では、動き推定でブロックマッチングを用いる例を説明したが、これに限定されない。例えば、他の局所画像特徴量(例えばHOG(Histogram of Oriented Gradients)、SIFT(Scaled Invariance Feature Transform))をマッチングすることにより動き推定が行われてもよい。
【0079】
また、上記実施の形態における計測装置が備える構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。例えば、計測装置120は、取得部121と、計測部122と、抽出部123と、領域特定部124と、判定部125と、規定の動き特定部126とを有するシステムLSIから構成されてもよい。
【0080】
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0081】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0082】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0083】
また、本開示の一態様は、このような計測装置だけではなく、計測装置に含まれる特徴的な構成部をステップとする計測方法であってもよい。また、本開示の一態様は、計測方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。また、本開示の一態様は、そのようなコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。
【0084】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記各実施の形態の検査装置などを実現するソフトウェアは、次のようなプログラムである。
【0085】
すなわち、このプログラムは、コンピュータに、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測する計測方法であって、前記構造物に掛かる荷重が変化しているときに互いに異なる時刻に撮像された前記構造物の複数の画像を取得し、前記複数の画像に基づいて、前記支持部材の変位を計測することを実行させる。
【0086】
本開示は、構造物を可動可能に支持する支持部材の変位を計測する計測装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
70 構造物
80 支持部材
100 計測システム
110 撮像装置
120 計測装置
121 取得部
122 計測部
123 抽出部
124 領域特定部
125 判定部
126 既定の動き特定部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8