(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008892
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】シャント抵抗器を通る電流を判定するための測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/00 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
G01R15/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022103688
(22)【出願日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】10 2021 116 657.8
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】519075786
【氏名又は名称】バトリオン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Battrion AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マルティン エブナー
(72)【発明者】
【氏名】デニズ ボジギット
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB04
2G025AC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少ない技術的支出で電流を正確に判定するための方法を提案する。
【解決手段】回路分岐2を、不正確であるが電流をロード可能なシャント抵抗器(R
sh)に並列接続することであって、シャント抵抗器(R
sh)と比較して正確である一方、ロード可能な電流の少ないリファレンス抵抗器(R
ref)が、回路分岐2内へ接続され、それにより、回路分岐2が、シャント抵抗器の上流及び下流の節点(K)において各ケースで分岐するように、回路分岐2をシャント抵抗器(R
sh)に並列接続することと、回路分岐2を通る時間可変のリファレンス電流(I
ref,I´
ref,I´´
ref)を生成することと、シャント抵抗器(R
sh)及びリファレンス抵抗器(R
ref)の両端電圧(V´
sh,V´´
sh,V´
ref,V´´
ref)を測定することと、節点(K)の上流及び下流における電流強度(I
in,I
in,0)を判定することと、を含む方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流(Iin,Iin,0)を正確に判定するための方法であって、
回路分岐(2,12)を、不正確であるが電流をロード可能なシャント抵抗器(Rsh)に並列接続することであって、前記シャント抵抗器(Rsh)と比較して正確である一方、ロード可能な電流の少ないリファレンス抵抗器(Rref)が、前記回路分岐(2,12)内へ接続され、前記回路分岐(2,12)が、前記シャント抵抗器の上流及び下流の節点(K)において各ケースで分岐するように、前記回路分岐(2,12)を前記シャント抵抗器(Rsh)に並列接続することと、
前記回路分岐(2,12)を通る時間可変のリファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)を生成することと、
前記シャント抵抗器(Rsh)及び前記リファレンス抵抗器(Rref)の両端電圧(V´sh,V´´sh,V´ref,V´´ref)を測定することと、
前記節点(K)の上流及び下流における電流強度(Iin,Iin,0)を判定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記回路分岐(2,12)を前記シャント抵抗器(Rsh)と並列接続し、再び接続解除することによって、前記リファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)が調整されること、並びに/又は、前記回路分岐(2,12)が接続された状態で、及び、接続されていない状態で、前記電圧(V´sh,V´´sh,V´ref,V´´ref)が測定されることを特徴とする方法。
【請求項3】
先行する請求項のいずれかに記載の方法であって、リファレンス電流源(13)が前記回路分岐(2,12)内へ接続されており、それにより、前記回路分岐(2,12)内の電流(Iref,I´ref,I´´ref)の流れが増大し、前記シャント抵抗器(Rsh)を通る電流(Ish,I´ref,I´´ref)の前記流れが減少することを特徴とする方法。
【請求項4】
先行する請求項のいずれかに記載の方法であって、前記回路分岐(2,12)を通る前記リファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)が時間的に調整される場合でさえも、前記節点(K)の上流及び下流における前記電流強度(Iin,Iin,0)が一定に保たれることを特徴とする方法。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかに記載の方法であって、前記シャント抵抗器の抵抗及び/又は前記電流強度についての一連の値が、前記シャント抵抗器及び前記リファレンス抵抗器の両端において降下する前記測定された電圧に基づいて判定され、その後、特に平均化フィルタ及び/又はメディアンフィルタ及び/又はローパスフィルタを使用してフィルタリングされることを特徴とする方法。
【請求項6】
電流(Iin)を正確に判定するための測定デバイス(1)であって、
不正確であるが電流をロード可能なシャント抵抗器(Rsh)、並びに、前記シャント抵抗器(Rsh)との並列の取り付け及び/又は並列接続が可能な回路分岐(2,12)を有する回路を備え、
前記シャント抵抗器(Rsh)と比較して正確である一方、ロード可能な電流の少ないリファレンス抵抗器(Rref)と、リファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)を生成するための、少なくとも1つのスイッチ(SW1)及び/又は電流源(13)と、が前記回路分岐(2,12)内へ接続され、それにより、前記回路分岐(2,12)が前記シャント抵抗器(Rsh)と並列接続されている節点(K)における、電流(Iin,Iin,0)の流れが、前記シャント抵抗器(Rsh)及び前記リファレンス抵抗器(Rref)を通る2つの経路内へ分岐するとともに、リファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)が、前記回路分岐(2,12)を通って流れることが可能であり、
前記回路分岐(2,12)が、時間可変のリファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)をもたらすように設計されており、
前記測定デバイス(1)が、前記シャント抵抗器(Rsh)の両端及び前記リファレンス抵抗器(Rref)の両端において各々が降下する電圧(V´sh,V´´sh,V´ref,V´´ref)を測定して、そこから、前記回路分岐(2,12)が分岐する前記それぞれの節点(K)に向かう及び/又は離れる方向に流れる電流強度(Iin,Iin,0)を判定する、ように設計される測定デバイス(1)。
【請求項7】
請求項5に記載の測定デバイス(1)であって、前記回路分岐(2,12)が、前記回路分岐(2,12)を通る電流(Iref,I´ref,I´´ref)の前記流れを遮断する及び/又は活性化させるために、それによって前記時間可変のリファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)を誘発するために、スイッチ(SW1)を有していることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項8】
請求項5及び請求項6のいずれかに記載の測定デバイス(1)であって、前記回路分岐(2,12)が、前記時間可変のリファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)をもたらすために、リファレンス電流源(13)を備えることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項9】
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記リファレンス電流源(13)が、前記時間可変のリファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)をもたらすために、前記回路分岐(2,12)内において前記リファレンス抵抗器(Rref)と直列接続されていることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項10】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記スイッチ(SW1)が、少なくとも1つのトランジスタ(A,A´,B,B´)、特には電界効果トランジスタによって形成されていることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項11】
請求項5から請求項9のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記回路分岐(2,12)を通る前記リファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)が時間的に調整される場合でさえも、前記節点(K)の上流及び下流の前記電流強度(Iin,Iin,0)が一定に保たれるように、前記測定デバイス(1)が設計されていることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項12】
請求項5から請求項10のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記リファレンス電流源(13)が、ガルヴァニック絶縁されていることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項13】
請求項5から請求項11のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記回路分岐内における前記リファレンス電流源(13)が、少なくとも1つの太陽電池(34,54,55)、特には、発光ダイオード(LED,31,51)により生成される赤外線放射に曝される太陽電池(34,54,55)を含むことを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項14】
請求項5から請求項12のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記時間可変のリファレンス電流(Iref,I´ref,I´´ref)が、少なくとも1つのスイッチ(SW1)によって、好ましくはトランジスタ、特には電界効果トランジスタ(A,A´,B,B´)、特には、経時的にほとんど変化しない電流源、特には太陽電池(34,54,55)、からなるブリッジ回路内の複数のトランジスタにより生成されることを特徴とする測定デバイス(1)。
【請求項15】
先行する請求項5から請求項13のいずれか一項に記載の測定デバイス(1)であって、前記回路分岐(2,12)内の電流(Iref,I´ref,I´´ref)の前記流れが増大し、前記シャント抵抗器(Rsh)を通る電流(Ish,I´ref,I´´ref)の前記流れが減少するように、前記リファレンス電流源(13)が接続されていることを特徴とする測定デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、特に1000Aを大幅に超えるまでの高い電流強度のケースで、電流を正確に判定するための、測定デバイス及び測定方法に関する。
【0002】
高い電流強度を測定又は判定することができるように、従来技術から様々な方法が知られている。AC電流を判定するために、従来では、例えばロゴスキーコイルとして知られているものが使用され、ロゴスキーコイルでは、判定されるべきAC電流によって流れる導体の交番磁界により、電圧が誘導される。説明された磁界の直接測定に加え、判定もまた磁界補償を通じて達成され得る。DC電流及びAC電流のためのこのような補償電流センサは、DE 42 30 939 A1に開示されるように、例えばホールセンサを用いて動作する。補償原理に従って動作するさらなるセンサが、EP 2 669 688 A1に記載されるようなフラックスゲートセンサであり、最後に言及したセンサは、DCCTセンサとして知られているが、粒子加速器に関連する特定用途に使用されている。
【0003】
この発明の目的は、電流強度の高精度な判定を可能にすると同時に、大きな技術的支出なしに実現することが可能な、デバイス及び方法を提供することである。
【0004】
最初に言及したタイプの方法及びデバイスに基づき、この目的は、請求項1及び請求項6の特徴により、それぞれ達成される。
【0005】
この発明の有利な実施形態及び発展例は、従属請求項において言及した特徴により可能である。
【0006】
以下に記載する発明が使用され得る1つの特定の用途が、リチウムイオンバッテリのクーロン効率を判定するものであり、これにより、電池の耐用寿命を、短い測定期間後でさえも良好に推定することが可能である。クーロン効率を測定することにより、温度、充電電流、動作戦略等の重要な因子が耐用寿命に及ぼす影響を、短時間で把握することができるため、これは特に有利である。シャント抵抗器を電流測定に使用しながら、シャント抵抗器の抵抗を正確に判定することも、一つの典型的な用途である。
【0007】
本発明は、非常に高精度に測定することが可能な変数に基づき、電流強度を定式化することにより、電流強度を判定する思想に基づく。しかしながら、提案デバイス及び提案方法は、100Aを遥かに上回り、1000Aを超えさえもする、非常に高い電流強度の測定が意図されているため、もはや小さな系統誤差が測定の精度を破壊する可能性がある。判定対象の電流強度の大きさのため、直接測定は、ほぼ不可能である。さらに、例えば任意の電流計の内在抵抗の温度ドリフトによる小さな誤差でさえも、もはや容認できない誤差を招いてしまうであろう。本発明を使用すると、例えば、1mAよりも良好な精度で100Aの電流強度を判定することができる。
【0008】
本発明によれば、回路分岐が、不正確ではあるが電流をロード可能な(current-loadable)シャント抵抗器と並列接続され、シャント抵抗器の抵抗自体が、判定と同時に判定され得る。この回路分岐は、シャント抵抗器と比較して可能な限り正確であるもののそれほど電流をロード可能ではないリファレンス抵抗器を備えており、つまりは、リファレンス抵抗器は概して、シャント抵抗器にロードされる電流強度よりも低い、特に大幅に低い、電流強度を伝える。
【0009】
- 本発明は、例えば、測定精度が導体に対するコイルのポジショニングに依存しない、従って磁界分布に依存しないという、従来のロゴスキーコイルを凌ぐ利点を有している。
【0010】
- さらに、とりわけロゴスキーコイルによって提供されるような磁界測定を用いる場合、当該測定は、特に地球磁界を含めた他の外部磁界により、歪む傾向が強い。この干渉作用もまた、本発明によれば排除され得る。
【0011】
- 本発明はさらに、誘導ベースで動作する他のセンサとは異なり、誘導電圧を何ら生成する必要がないため、DC電流を測定することが可能である。全体として、本発明における測定結果はまた、概して有利なことに、時間的な電流プロファイルに依存しない。
【0012】
- 本発明は更に、(オフセット)安定性、線形挙動からの逸脱等の、関連する欠点を有する任意の追加的な増幅器回路又は積分器回路から、独立して動作することが可能であるという利点を有する。
【0013】
- 本発明は、電流測定を非常に迅速に行うことが可能であるという利点も有する。
【0014】
並列回路は、シャント抵抗器の上流及び下流に節点を形成する。
【0015】
例えば、節点の上流及び下流の電流強度が、シャント抵抗器の未知の抵抗又は少なくとも正確には知られていない抵抗の値から独立した変数として定式化される方程式系を形成できるようにするために、時間可変のリファレンス電流が回路分岐を通じて生成される。
【0016】
このように、2つの互いに逆向きの電流が、シャント抵抗器を通じて流れる。すなわち、
- 節点において分岐する電流の流れであって、シャント抵抗器を通じて流れる部分がリファレンス抵抗器を通じて流れる部分よりも遥かに大きい電流の流れ、及び、
- リファレンス電流源により生成される電流であって、(節点を通り)再びシャント抵抗器を通じて逆に流れる電流。
【0017】
本発明に係るこの特徴は、例えば、シャント抵抗器及びリファレンス抵抗器の両端において降下する電圧に基づいて、並びに、リファレンス抵抗器の、相対的に正確に知られる抵抗に基づいて、電流強度を定式化することを可能にする。電圧測定は概して、非常に高精度での実施が可能である。電圧計の内在(inherent)抵抗が大変高いため、電圧計を通じた電流の流れにより生じる損失は、無視できるほど小さい。
【0018】
方程式系を解くことができるだけの十分な変数を持つように、リファレンス電流が、本発明に従って調整される。リファレンス電流を調整するための1つの選択肢が、回路分岐を無効化(deactivating)することである。これは、機械スイッチにより実施され得るが、そうである必要はない。代わりに、電子スイッチ、例えばトランジスタ、特に電界効果トランジスタを使用することも可能であり、それにより、スイッチング中の電圧ピーク又は腐食接点等を回避することができる。
【0019】
代わりに、追加のリファレンス電流源が回路分岐内へ接続されてもよい。それにより、ペアのみよりも、より一層多くの値を生成することが可能になり、精度が増大し得る。
【0020】
精度をより一層高めるために、リファレンス電流源をガルヴァニック絶縁することにより、さらなる干渉源が除外され得る。この目的のために、主電源から独立した電流源が使用され得る。また、電流源に、絶縁トランス又は同様の回路を介してエネルギーを供給することも原理上考えられる。しかしながら、独立型電源を可能にする電流源は、完全に独立している。本発明の1つの発展例では、太陽電池がこれに非常に良く適している。安定的な電流源を得るために、太陽電池は、専用の光源により照射され得る。提案されるものは、例えば、回路基板上に予めマウントされる太陽電池と、高輝度赤外線発光ダイオード(IR-LED)と、の組み合わせである。このケースにおいて、電流源は完全にガルヴァニック絶縁される。このような電流源は、短絡条件下を含めて、高電流を送出する。
【0021】
電流強度を調整可能なリファレンス電流を得るために、太陽電池の照射に使用される光源が調整され得る。更に、2つの太陽電池が互いに独立して照らされ、反対にスイッチング又は動作されてもよく、それにより、リファレンス電流強度、更には電流方向が、光源の一方又は両方の明るさの変更により、変更可能であるようにされてもよい。2つの光源は、例えば、交互に照射され得る。電流強度を調整するために、並列接続された回路分岐の接続を解除しようとする場合、この回路分岐は、トランジスタを介して又は電界効果トランジスタを介して経路設定されてもよく、その後、太陽電池の電流の流れによりオフ状態に置かれてもよい。
【0022】
本発明の1つの有利な実施形態において、シャント抵抗器の抵抗を判定するために、ブリッジ回路が使用されてもよい。抵抗を判定すべきシャント抵抗器は、ブリッジ分岐内へ接続される。ブリッジ回路はまた、有利には、リファレンス電流の極性を反転させるために使用され得る。抵抗は、サブ分岐における電流強度を判定することによって判定される。それにより、交番極性を有するリファレンス電流を、0Vを中心に高度に対称であるように選択することができ、測定精度を向上させることができる。極性は、特に電界効果トランジスタを使用したスイッチングのケースにおいて、非常に迅速に且つ高精度に反転され得る。
【0023】
ブリッジ回路の利点は、リファレンス電流の極性反転における、より高精度な対称性、又は、より正確な50%のデューティーサイクル、を可能にするというものであり得る。そうすると、原理上、リファレンス電流源には、また、1つのみの太陽電池が必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
[例示的な実施形態]
本発明の例示的な実施形態を、図面に例示するとともに、さらなる詳細及び利点を示しつつ、以下でより詳細に説明する。図には以下のものが含まれる。
【0025】
【
図1】接続可能な回路分岐を有する、本発明に係る測定デバイスの概略回路図を示す。
【
図2】可変のリファレンス電流源を有する、本発明に係る測定デバイスの概略回路図を示す。
【
図3】
図1に従う測定デバイス用のスイッチを実装するための概略回路図を示す。
【
図4】ガルヴァニック絶縁のための太陽電池を有する、
図2に従う測定デバイス用のリファレンス電流源を実装するための概略回路図を示す。
【
図5】ガルヴァニック絶縁のための太陽電池を有する、
図2に従う測定デバイス用のリファレンス電流源を実装するための概略回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、回路分岐2の接続又は接続解除を行うためのスイッチSW
1を有する、本発明に係る測定デバイス1の概略回路図を示す。
【0027】
変数において、回路分岐2が接続されている状況、つまり、スイッチSW
1が閉じられている状況は、「ダッシュ(´)」で示され、スイッチSW
1が開かれている状況は、「2つのダッシュ(´´)」で示される。スイッチSW
1が開いている場合は、次の通りである。
【数1】
【0028】
スイッチSW
1が閉じている場合は、次の通りである。
【数2】
【0029】
抵抗器の抵抗、つまり、シャント抵抗器及びリファレンス抵抗器の抵抗は、スイッチング交番(alternation)間の短い時間に対して一定であると仮定される。
【数3】
【0030】
また、この回路は、シャント抵抗器及びリファレンス抵抗器分岐を含む回路分岐を通る分岐への経路における節点の上流及び下流において、電流強度I
inが一定であるものと仮定することができるように動作する(スイッチング交番が非常迅速に実施される)、つまり、次の通りである。
【数4】
【0031】
閉じたスイッチSW
1の場合には、このようになり、
【数5】
一方、開いたスイッチSW
1の場合には、次の通りである。
【数6】
【0032】
これは、最終的に、I
inについて包括的に、次を与える。
【数7】
【0033】
ここでは、スイッチSW1が、機械スイッチのように振る舞い、開いた状態では実質的に無限大の抵抗を有し、閉じた状態ではオーム抵抗を有さないものと仮定して、計算が行われている。
【0034】
それ以外については、一般的に、高い電流強度Iinを想定しておくべきである。
【0035】
図2は、
図1と同様の一実施形態(測定デバイス11)を示しているが、この実施形態では、回路分岐12を通じた電流の流れが完全に遮断される訳ではなく、むしろ、リファレンス電流I
refの極性が交互に切り替わり(「ダッシュ(´)」で識別される位相1から、「ダッシュ(´´)」で識別される位相2への反転)、つまり、次の通りである。
【数8】
【0036】
この目的のために、リファレンス抵抗器R
refと直列に回路分岐12に接続され、その極性を交互に切り替えることが可能な、電流源13が使用される。電流の流れはさらに、I
inが一定のままであるようにセットされる、つまり、次の通りである。
【数9】
【0037】
回路状況に関わらず、シャント抵抗器及びリファレンス抵抗器の抵抗は、スイッチング交番間の短い時間に対して一定であるものと仮定され、すなわち、次の通りである。
【数10】
【0038】
これは、最終的に、リファレンス電流強度の極性の異なる2つの位相について、次を与える。
【数11】
【0039】
再整理により、最終的に、次が与えられ、
【数12】
ここから、電流強度I
inについて、次のように結論付けられる。
【数13】
【0040】
従って、これは、1/2のファクタ内で、
図1に従う例示的な実施形態と同様の公式を与える。
【0041】
図1及び
図2に従う例示的な実施形態は、非常に正確に測定することが可能である電圧のみが、必要とされ、測定されなければならないという共通の特徴を有する。リファレンス抵抗器の抵抗も同様に、非常に正確に知られる。
【0042】
2つの位相におけるリファレンス電流の絶対値が同一ではないとき、つまり、
【数14】
であるとき、測定電流I
in,0及びシャント抵抗器の抵抗R
sh,0を正確に判定することも可能である。
【0043】
ここでは、次の関係が適用される。
【数15】
これにより、次が得られる。
【数16】
【0044】
したがって、各スイッチングサイクルについて、シャント抵抗器の電流抵抗は、測定可能な電圧と、リファレンス抵抗器の既知の抵抗と、から純粋に判定され得る。
【0045】
時間t=t
1、t=t
2等において把握される複数のスイッチングサイクルにわたる、シャント抵抗器の抵抗の把握された値を、共にまとめる場合、次のシャント抵抗器信号R
sh,0(t)を形成することが可能である。
【数17】
【0046】
このシャント抵抗器信号が、V´
sh、V´´
sh、V´
ref、及び、V´´
refを判定するための電圧測定におけるノイズに起因して、同様に、ノイズ、つまり、高速で小さなランダム変化を含むと予想されるべきである。しかしながら、電流ロードにより生じるシャント抵抗器の加熱を理由として予想されるべき抵抗変化が、比較的ゆっくりと、例えば数秒という時間間隔にわたり、生じることが予想されるはずであるため、シャント抵抗器信号は、精度向上のためにフィルタリングされてもよい。シャント抵抗器信号R
sh,0(t)にフィルタ関数fを適用することにより、フィルタリングされたシャント抵抗器信号R
*
sh,0(t)が与えられる。
【数18】
【0047】
例えば好適なフィルタ関数fとして、信号処理において一般的な、平均化フィルタ、メディアンフィルタ、ローパスフィルタ、又は他のフィルタ関数が使用されてよい。
【0048】
すると、以下の方程式を使用して、測定電流I
in,0が把握され得る。
【数19】
【0049】
よって、本発明に係る測定デバイスは、
- 非常に正確に電流強度を判定すること、
- 非常に高い電流強度が関与しているときでさえも、非常に正確に電流強度を判定すること、
- また、シャント抵抗器の未知の抵抗を高精度で測定すること、
のために使用され得る。
【0050】
図3は、
図1に従う実施形態において必要とされるスイッチSW
1をどのように実装可能かについての概略図を示す。発光ダイオード31(赤外領域における発光)が電圧源32による供給を受け、回路は、電界効果トランジスタAを介してスイッチされる。
【0051】
完全なガルヴァニック絶縁を実施するために、電流源として、例えば太陽電池が使用されてもよい。オプトカプラ回路と同様の態様で、発光ダイオード31が太陽電池34を照らし、太陽電池34が次に電界効果トランジスタBをスイッチングし、それにより、これがオフ状態又はオン状態のいずれかを引き起こす。
【0052】
最後に、
図4及び
図5の各々は、リファレンス電流源13を、電流の極性を交番させることによって、その電流強度に関して調整可能である例示的な実施形態を示している。
図4に従う変形実施形態は、極性を交番させるためにブリッジ回路(H回路とも呼ばれる)を使用している。電界効果トランジスタのペアA-A´又はペアB-B´がそれぞれ、オン状態にあるか、それともオフ状態にあるか、に応じて、太陽電池の電流は、リファレンス電流強度I
refの増大又は減少に寄与する。このケースにおいても、太陽電池34は、赤外線発光ダイオードにより照らされる。リファレンス電流強度I
refを調整するためのスイッチングは、太陽電池34を更に備える回路分岐内のトランジスタA-A´又はB-B´を通じてのみ実行される。
【0053】
しかしながら、その代わりに、2つの太陽電池54、55が逆並列に接続されることもあり得る。リファレンス電流Irefの観点から、極性は、太陽電池54、55のうちのいずれが照らされるかに依存する。
【符号の説明】
【0054】
[参照符号のリスト]
1…測定デバイス、
2…回路分岐、
11…測定デバイス、
12…回路分岐、
13…リファレンス電流源、
31…発光ダイオード、
32…電圧源、
34…太陽電池、
51…赤外線発光ダイオード、
52…赤外線発光ダイオード、
54…太陽電池、
55…太陽電池、
A…電界効果トランジスタ、
A´…電界効果トランジスタ、
B…電界効果トランジスタ、
B´…電界効果トランジスタ、
【数20】
【数21】
【数22】
【外国語明細書】