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特開2023-88936金属管状製品のコラプス抵抗を向上させるための圧縮成形プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088936
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】金属管状製品のコラプス抵抗を向上させるための圧縮成形プロセス
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/06 20060101AFI20230620BHJP
   B21D 3/02 20060101ALI20230620BHJP
   B21J 5/04 20060101ALI20230620BHJP
   B21J 5/00 20060101ALI20230620BHJP
   B21C 37/08 20060101ALI20230620BHJP
   B21C 1/24 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B21J5/06 F
B21D3/02 A
B21J5/04
B21J5/00 G
B21C37/08 C
B21C1/24
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039378
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2019564387の分割
【原出願日】2018-02-14
(31)【優先権主張番号】62/458,838
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/487,016
(32)【優先日】2017-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518399313
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ スチール コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES STEEL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ピーター ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】リン,ビセン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法を開示する。
【解決手段】真直化プロセスを終えた金属管状製品の残留応力プロファイルを、コラプス抵抗を向上させる残留応力プロファイルに変えるために加えられる種類の応力を特定することを含む。金属管状製品は、残留応力プロファイルを制御して、コラプス抵抗を向上させるために、半径方向圧縮処理が行われる。半径方向圧縮処理は、金属管状製品に真直化処理が行われた後に行われる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法であって、
中空の金属管状製品を真直化することにより、外径OD及び内径IDを有する真直化された中空の金属管状製品を作製することと、
前記真直化された金属管状製品を半径方向に圧縮することにより、外径OD’及び内径ID’を有する半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製することと、を含み、
前記真直化された中空の金属管状製品は、製品の内面に隣接して圧縮残留フープ応力を有し、製品の外面に隣接して引張残留フープ応力を有しており、
前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品が、
(a)製品の内面に隣接する圧縮残留フープ応力が実質的に減少しているか、又は
(b)製品の内面に隣接して引張残留フープ応力を有しており、かつ、
前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品が、
(a)製品の外面に隣接する引張残留フープ応力が実質的に減少しているか、又は
(b)製品の外面に隣接して圧縮残留フープ応力を有している、方法。
【請求項2】
真直化は、回転矯正又はギャグ矯正によって行われる、請求項1の方法。
【請求項3】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の外径OD’は、真直化された中空の金属管状製品の外径ODより少なくとも0.002パーセント小さく、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の内径ID’は、真直化された中空の金属管状製品の内径IDより少なくとも0.002パーセント小さい、請求項1の方法。
【請求項4】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の外径OD’は、真直化された中空の金属管状製品の外径ODより0.002~0.2パーセント小さく、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の内径ID’は、真直化された中空の金属管状製品の内径IDより0.002~0.2パーセント小さい、請求項1の方法。
【請求項5】
真直化された中空の金属管状製品は壁厚Twを有し、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は壁厚T’wを有し、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の壁厚T’wは、真直化された中空の金属管状製品の壁厚Twよりも厚さが大きい、請求項1の方法。
【請求項6】
真直化された中空の金属管状製品のD/t比は、10:1より大きいか又は等しく、40:1より小さいか又は等しい、請求項4の方法。
【請求項7】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、該製品の内面に隣接する残留フープ応力が、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の降伏強度の-10乃至+30パーセントである、請求項1の方法。
【請求項8】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、真直化された中空の金属管状製品のコラプス抵抗より少なくとも2パーセント大きいコラプス抵抗を有する、請求項1の方法。
【請求項9】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、該製品の内面に隣接する圧縮残留フープ応力が実質的に低下している、請求項1の方法。
【請求項10】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、該製品の内面に隣接して引張残留フープ応力を有する、請求項1の方法。
【請求項11】
半径方向の圧縮は、真直化された中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で行われ、半径方向の圧縮力が、真直化された中空の金属管状製品の周囲の一方の側に作用し、前記半径方向の圧縮は、真直化された中空の金属管状製品の周囲の反対側に作用する半径方向の圧縮力によって対抗される、請求項1の方法。
【請求項12】
半径方向の圧縮力は、真直化された中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で、真直化された中空の金属管状製品の外面の180度以上の接触領域の周囲に周方向に加えられる、請求項11の方法。
【請求項13】
真直化された中空の金属管状製品は、少なくとも1セットの対向する圧縮ローラによって半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項14】
真直化された中空の金属管状製品に沿う軸方向位置に、複数の対向する圧縮ローラをさらに含む、請求項13の方法。
【請求項15】
真直化された中空の金属管状製品は、少なくとも1セットの3つの圧縮ローラによって半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項16】
真直化された中空の金属管状製品は、圧縮チャンバーの中で半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項17】
真直化された中空の金属管状製品が半径方向に圧縮される前に、真直化された中空の金属管状製品の内側に、安定化用マンドレルが配置される、請求項16の方法。
【請求項18】
真直化された中空の金属管状製品は、引抜きダイの中で半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品が作製される、請求項1の方法。
【請求項19】
真直化された中空の金属管状製品は、成形ダイの中で半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項20】
真直化された中空の金属管状製品は、高温で半径方向に圧縮される、請求項1の方法。
【請求項21】
真直化された中空の金属管状製品は、常温で半径方向に圧縮される、請求項1の方法。
【請求項22】
中空の金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法であって、
中空の金属管状製品を半径方向に圧縮することにより、外径OD’及び内径ID’を有する半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製することを含み、
中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で、中空の金属管状製品の周囲の一方の側に作用する半径方向の圧縮力は、中空の金属管状製品の周囲の反対側に作用する少なくとも1つの半径方向の圧縮力によって対抗され、前記半径方向の圧縮力は、前記軸方向の位置で中空の金属管状製品の少なくとも180度の接触領域の周囲に周方向に加えられる、方法。
【請求項23】
中空の金属管状製品を半径方向に圧縮する前に、中空の金属管状製品を真直化することをさらに含む、請求項22の方法。
【請求項24】
真直化は、回転矯正又はギャグ矯正によって行われる、請求項23の方法。
【請求項25】
真直化され、かつ、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品であって、内面及び外面を含み、
(a)前記内面に隣接する圧縮残留フープ応力が実質的に減少しているか、又は
(b)前記内面に隣接して引張残留フープ応力を有しており、
真直化され、かつ、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品のコラプス抵抗が、半径方向に圧縮されていない真直化された中空の金属管状製品のコラプス抵抗より大きく、前記金属環状製品の内面に隣接する実質的に減少した圧縮残留フープ応力が、半径方向に圧縮されていない真直化された中空の金属管状製品の圧縮残留フープ応力よりも小さい、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2017年2月14日に出願された米国仮特許出願第62/458,838号の利益を主張し、この出願は参照によって組み込まれる。
【0002】
<発明の分野>
本発明は、金属の管状製品に関し、より具体的には、金属管状製品のコラプス抵抗(collapse resistance)を改善するための処理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
<背景情報>
金属管状製品の製造において、真直度(straightness)の要件は、API、ISO、ASTM、その他の規格で規定されている。これらの規格に適合して、大量生産を維持するために、一般に、従来の回転式又はギャグ矯正プロセスを使用して常温下で真直化される(冷間矯正と称される)。このプロセスは、ある部分を、長手方向及び/又は横断フープ方向に曲げることによって管の寸法特性に変更を加えて、それら部分の壁ファイバーの一部又は全部を降伏(弾性限界を超える応力レベル)させる。管(tube)が矯正プロセスから出て行くと、管体(pipe)の弾性反発があり、新たな寸法に矯正され、典型的には、残留フープ応力プロファイルを生じて、管のコラプス抵抗が低下する。American Petroleum Institute Standards Conference(P. Mehdizadehによる「Casing Collapse Performance」、1974)に報告された研究では、有害な残留応力の無い管の最小コラプス強度特性は、現在のAPI最小コラプス強度より20~30%高くなるであろうことを示している。
【0004】
従来の管状体の製造では、回転式冷間矯正プロセスが、管製造の仕上げ設備における最初の作業として実施されている。最終製品として出荷された管は、内壁ファイバーの領域の圧縮残留フープ応力が大きいと悪影響を受ける。このため、これらの真直化矯正プロセスに基づいた最小コラプス抵抗が基準として示される。
【0005】
残留応力プロファイルを改善してコラプス抵抗を向上させるには、真直化後に追加のプロセスを行うことにより、所定の真直度を保持しつつ、既存の残留応力を、管体のコラプス抵抗が改善/向上するプロファイルに変更する必要がある。
【0006】
これまでにも、回転矯正法によって真直化された金属管状製品の残留応力を低減する試みがなされている。例えば、回転矯正後に金属管状製品を再加熱することが行われている。しかし、より効果的かつ経済的なプロセスにより、金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、金属管状製品のコラプス抵抗(圧壊抵抗)を向上させる方法を提供する。この方法は、例えば真直化プロセスを完了した金属管状製品の残留応力プロファイルを変更するために適用され得る応力の種類を特定して、コラプス抵抗を改善する残留応力プロファイルを得るものである。金属管状製品は、半径方向の圧縮処理(radial compression processing)により、残留応力プロファイルを制御し、コラプス抵抗を向上させる。この半径方向圧縮プロセスは、管状製品に最終的な真直化プロセスが施された後に用いられることができる。
【0008】
本発明の一態様は、中空の金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法を提供することであり、この方法は、中空の金属管状製品を矯正して真直化して、外径OD及び内径IDを有する真直化された中空の金属管状製品を作製することと、真直化された中空の金属管状製品を半径方向に圧縮し、外径OD’及び内径ID’を有する半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製することと、を含み、前記真直化された中空の金属管状製品は、該製品の内面に隣接する側に圧縮残留フープ応力を有し、前記製品の外面に隣接する側に引張残留フープ応力を有しており、前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、(a)製品の内面に隣接する側の圧縮残留フープ応力が実質的に減少しているか、又は(b)製品の内面に隣接する側が引張残留フープ応力であり、かつ、前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、(a)製品の外面に隣接する側の引張残留フープ応力が実質的に減少しているか、又は(b)製品の外面に隣接する側が圧縮残留フープ応力である。
【0009】
本発明の別の態様は、中空の金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法を提供することであり、この方法は、中空の金属管状製品を半径方向に圧縮して、外径OD’及び内径ID’を有する半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製すること、を含み、前記中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で、前記中空の金属管状製品の周囲の一方の側に作用する半径方向の圧縮力が、前記中空の金属管状製品の周囲の反対側に作用する少なくとも1つの半径方向の圧縮力によって対抗され(opposed)、前記半径方向の圧縮力は、前記軸方向の位置で、前記中空の金属管状製品のトータル180度以上接触する領域の周囲に周方向に加えられる。
【0010】
本発明のさらなる態様は、真直化され、かつ、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を提供することであり、前記製品は、内面及び外面を含み、真直化された後、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、(a)製品の内面に隣接する側の圧縮残留フープ応力が実質的に減少しているか、又は(b)製品の内面に隣接する側が引張残留フープ応力であり、真直化された後、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品のコラプス抵抗は、半径方向の圧縮工程が施されなかった製品のコラプス抵抗よりも大きい。
【0011】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、回転式矯正により真直化された中空の金属管状製品の部分概略断面図であって、本発明の実施形態による圧縮成形プロセスを適用する前の図である。
【0013】
図2図2は、本発明の一実施形態による半径方向圧縮ゾーン内の中空の金属管状製品の部分概略断面図であって、の図である。
【0014】
図3図3は、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の部分概略断面図であって、本発明の一実施形態による半径方向圧縮ゾーンを出た後の図である。
【0015】
図4図4は、本発明の一実施形態による圧縮成形プロセスを行う前、行っている間、及び行なった後における典型的な壁厚応力状態を示す。
【0016】
図5図5は、本発明の一実施形態による実施例であって、特定のD/t比及び特定の材料グレードを有する金属管状製品のコラプス改善曲線を示す。
【0017】
図6図6は、本発明の一実施形態に係る液圧又はガス圧縮成形チャンバー内の金属管状製品の部分概略図である。
【0018】
図7図7は、本発明の一実施形態に係る引抜きダイ内の金属管状製品の部分概略図である。
【0019】
図8図8は、本発明の一実施形態に係る長さ成形ダイ内の金属管状製品の部分概略図である。
【0020】
図9図9は、本発明の一実施形態に係る2つの対向ローラを含む成形ミル内の金属管状製品の部分概略図である。
【0021】
図10図10は、本発明の一実施形態に係る3つのローラを含む成形ミル内の金属管状製品の部分概略図である。
【0022】
図11図11は、本発明の一実施形態に係る3セットの対向ローラを含む成形ミル内の金属管状製品の部分概略図である。
【0023】
図12図12は、本発明の実施形態に係る圧縮成形プロセスに供される金属管状製品を含む様々な金属管状製品のコラプス圧力を示すグラフである。
図13図13は、本発明の実施形態に係る圧縮成形プロセスに供される金属管状製品を含む様々な金属管状製品のコラプス圧力を示すグラフである。
図14図14は、本発明の実施形態に係る圧縮成形プロセスに供される金属管状製品を含む様々な金属管状製品のコラプス圧力を示すグラフである。
図15図15は、本発明の実施形態に係る圧縮成形プロセスに供される金属管状製品を含む様々な金属管状製品のコラプス圧力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<詳細な説明>
本発明の制御された半径方向圧縮プロセスに基づいて製造された金属管状製品は、好ましい残留フープ応力プロファイル及びコラプス抵抗の向上を示す。
【0025】
熱処理されていない金属管状製品の場合、未加工のシームレス又は電気溶接された管状シェルは、冷間回転矯正又はギャグ矯正(gag straightening)、表面検査、カットオフ、ねじ切り、カップリング、ハイドロ試験、計量、測定、ステンシリング、コーティング、最終検査、積出し及び出荷を含む仕上げ作業に供され得る。本発明の実施形態において、半径方向圧縮プロセスは、最終の冷間矯正工程後の任意の段階、例えば、表面検査の前、カットオフの前、又はねじ切りの前に実行されることができる。幾つかの実施形態において、熱処理されていない金属管状製品の場合、冷間サイジングミルを冷間矯正プロセスの後に配置することにより、半径方向圧縮プロセスを冷間矯正の直後に行うことができる。
【0026】
熱処理された金属管状製品の場合、未加工のシームレス又は電気溶接された管状シェルは、熱処理、熱間又は冷間サイジング、及び熱間又は冷間回転矯正を含む熱処理工程に供され、次いで、表面検査、カットオフ、ねじ切り、カップリング、ハイドロ試験、計量、測定、ステンシリング、コーティング、最終検査、積出し、出荷を含む仕上げ作業に供されることができる。本発明の一実施形態では、半径方向圧縮プロセスは、最終の矯正プロセス後の任意の段階で実行されることができる。例えば、半径方向の圧縮プロセスは、仕上げ作業中、例えばカットオフ前、又はねじ切り前の任意の時間に実行されることができる。幾つかの実施形態では、熱処理された金属管状製品の場合、熱間又は冷間サイジングミルを熱間又は冷間回転矯正装置の後に配置することにより、半径方向圧縮プロセスを熱間又は冷間回転矯正の直後に行うことができる。
【0027】
本発明に従って製造された半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、好ましい残留フープ応力プロファイル及びコラプス抵抗の向上を有することが見出された。幾つかの実施形態において、金属管状製品は、典型的には2パーセント以上向上したコラプス圧力を有し、そのコラプス圧力の向上は、例えば、5パーセント超、10パーセント超、12パーセント超、又は15パーセント超、又は20パーセント超である。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態であって、矯正によって真直化された中空の金属管状製品10を示す。本明細書で使用する「真直化された(straightened)」という用語は、回転矯正、ギャグ矯正、その他当該分野で既知のあらゆる矯正方法などの手段によって真直化された中空の金属管状製品を意味する。真直化された管10は、外面12、内面14、及び壁厚Twを含む。図1に示されるように、真直化された中空管10は、外径OD及び内径IDを有する円形断面を有することができる。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態であって、半径方向圧縮ゾーン10cの中にある真直化された中空の金属管製品を示す。圧縮ゾーンを有する管10cは、外面12c、内面14c、及び壁厚Twcを含む。図2に示されるように、圧縮ゾーンを有する中空管10cは、外径ODc及び内径IDcを有する円形断面を有することができる。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態であって、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品10’を示す。半径方向に圧縮された管10’は、外面12’、内面14’、及び壁厚T’wを含む。図3に示されるように、半径方向に圧縮された中空管10’は、外径OD’及び内径ID’を有する円形断面を有することができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、金属管状製品の外径と壁厚は、意図された管の用途に応じて変えることができる。例えば、管の外径は、典型的には2~50インチ、例えば3~40インチ、又は4.5~24インチの範囲であり得る。例えば、管の壁厚は、典型的には0.1~5インチ、例えば0.15~3インチ、又は0.25~2インチの範囲であり得る。
【0032】
真直化された中空の金属管状製品10の外径OD及び内径IDが、半径方向の圧縮後、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品10’の外径OD’及び内径ID’に対して変化する割合は、全体の寸法、壁厚、D/t比、材料グレード、処理温度などによって異なる。本明細書で使用される「D/t比」という用語は、中空の金属管状製品の壁厚に対する中空の金属管状製品の外径の比に対応する。本発明の一実施形態によれば、D/t比は10:1乃至40:1、例えば、15:1乃至35:1、又は20:1乃至30:1であってよい。
【0033】
幾つかの実施形態において、半径方向に圧縮された管10’の外径OD’は、真直化された管10の外径ODよりも少なくとも0.002パーセント小さい。例えば、半径方向に圧縮された管10’の外径OD’は、典型的には、真直化された管10の外径ODよりも0.002~0.2パーセント小さくてよい。
【0034】
幾つかの実施形態において、半径方向に圧縮された管10’の内径ID’は、真直化された管10の内径IDより少なくとも0.002パーセント小さい。例えば、半径方向に圧縮された管10’の内径ID’は、典型的には、真直化された管10の内径IDより0.002~0.3パーセント小さくてよい。
【0035】
幾つかの実施形態において、半径方向に圧縮すると、半径方向に圧縮された管10’の壁厚T’wは、真直化された管10の壁厚Twからわずかに厚くなり得る。例えば、半径方向に圧縮された管10’の壁厚は、典型的には、真直化された管10の壁厚Twよりも、0~0.5パーセント大きく、例えば0.0005~0.3パーセント大きくなり得る。
【0036】
本発明の実施形態による半径方向圧縮成形プロセス中、真直化された管は最小直径になるまで半径方向に圧縮され、その後、管10は、外径がOD’で内径がID’の最終的な半径方向圧縮状態にスプリングバックする。半径方向圧縮が最大の位置では、半径方向圧縮ゾーンの管の外径ODcは、真直化された管10の外径ODより少なくとも0.05パーセント小さくなり得る。例えば、半径方向圧縮ゾーンの管の外径ODcは、典型的には、真直化された管10の外径ODより0.05~0.6パーセント小さくなり得る。幾つかの実施形態において、半径方向圧縮ゾーンの管の内径IDcは、真直化された管10の内径IDより少なくとも0.05パーセント小さくなり得る。例えば、半径方向圧縮ゾーンの管の内径IDcは、典型的には、真直化された管10の内径IDよりも0.05~0.8パーセント小さくなり得る。
【0037】
図4は、金属管状製品が本発明の実施形態による半径方向圧縮成形プロセスが行われる前、間、及び後における壁厚の典型的な応力状態を示す。幾つかの実施形態において、真直化された管10は、半径方向圧縮プロセスが行われる前は、内面14に隣接して圧縮残留応力、外面12に隣接して引張残留応力を有する。図4に示されるように、圧縮残留応力は、真直化された管10の内面14に隣接して負のフープ残留応力に対応し、引張残留応力は、真直化された管10の外面12に隣接して正の残留応力に対応する。
【0038】
本発明の実施形態において、半径方向圧縮プロセス中、圧縮力は、半径方向圧縮ゾーン内で先に真直化された管10に加えられ、管の壁厚Twの一部に降伏を生じさせる。この圧縮力は、弾性限界を超える応力レベルである。幾つかの実施形態では、半径方向圧縮プロセスが半径方向に圧縮された管10’の降伏強度に及ぼす影響の結果として、半径方向に圧縮された管10’の最終降伏強度が、半径方向圧縮プロセス後に所定の許容範囲内にあるように制御される。幾つかの実施形態において、半径方向圧縮プロセスによって生じた最終降伏強度の変化は最小であり得る。幾つかの実施形態において、半径方向に圧縮された管10’のコラプス抵抗向上の主な要因は、残留応力プロファイルの変化である。幾つかの実施形態では、半径方向の半径方向の圧縮ゾーンに加えられた圧縮力により、管の内面14に隣接する管のファイバーが降伏する。内部ファイバーの圧縮フープにより、圧縮残留フープ応力が実質的に低下するため、管が半径方向圧縮ゾーンを出た後、ファイバー内が引張残留フープ応力になることもある。
【0039】
幾つかの実施形態において、半径方向圧縮プロセスの後、半径方向に圧縮された管10’は、内面14’に隣接する圧縮残留フープ応力が実質的に低下し、正の引張応力を示すこともあり得る。また、外面12’に隣接する引張残留フープ応力が実質的に低下し、負の圧縮応力を示すこともあり得る。図4に示されるように、圧縮残留フープ応力は、半径方向に圧縮された管10’の外面12’に隣接する負のフープ残留応力に対応し、引張残留フープ応力は、半径方向に圧縮された管10’の内面14’に隣接する正の残留応力に対応する。
【0040】
一例として、図4及び図5は、本発明の一実施形態に係る特定のD/t比及び特定の材料グレードを有する金属管状製品について、IDファイバーにおけるコラプス抵抗改善と残留フープ応力との関係(降伏強度のパーセントとして)を示している。コラプス抵抗は、代表的な高温の回転装置で真直化された管状製品のコラプス抵抗によって正規化される(すなわち、IDファイバーでの圧縮残留フープ応力が降伏強度の-20%に等しい)。幾つかの実施形態において、冷間回転装置で真直化された管体については、IDファイバーでの圧縮残留フープ圧力は、降伏強度の-50パーセントにもなり得る。金属管状製品の真直化は、真直化された管10の内面14で、管の降伏強度に関して負の残留フープ応力、すなわち圧縮残留フープ応力を生じさせることがある。本発明の一実施形態に係る半径方向圧縮処理が真直化プロセス後に行われると、コラプス抵抗の向上をもたらすが、それは、管の内面に隣接する壁ファイバーの中で、降伏強度に対する残留フープ応力の効果、例えば、圧縮残留フープ応力の実質的な低下によってもたらされる。幾つかの実施形態では、内面に隣接する壁ファイバーは、引張又は正の残留フープ応力を示し得る。幾つかの実施形態において、半径方向に圧縮された管10’のコラプス抵抗の最大の改善を達成するには、内面14’での残留フープ応力が、典型的には、降伏強度の-15乃至+35パーセント、又は-10乃至+25パーセント、又は-7乃至+20パーセント、又は0乃至+15パーセントであってよい。幾つかの実施形態において、半径方向に圧縮された管10’は、真直化された管10のコラプス抵抗よりも少なくとも2パーセント大きいコラプス抵抗を有し得る。例えば、半径方向に圧縮された管10’のコラプス抵抗は、典型的には、真直化された管10のコラプス抵抗より3~20パーセント大きいか、又は5~15パーセント大きいか、又は7.5~10パーセント大きい。本発明の一実施形態において、半径方向に圧縮された管10’内面14’での残留フープ応力は制限があり、この制限を超えると、製品に過度の張力が作用し、半径方向に圧縮された管10’のコラプス抵抗が低下する。図5に示される実施例では、降伏強度の40%を超える残留フープ応力は、コラプス抵抗を低下させる。
【0041】
本発明の一実施形態において、金属管状製品は、周囲温度から1250°Fの任意の温度で半径方向圧縮プロセスを施すことができる。例えば、スチール金属管状製品は、少なくとも500°F、又は少なくとも800°F、又は例えば1000°F~1200°Fの高温度に加熱され、これらの温度で半径方向の圧縮プロセスが行われる場合がある。これらの温度では、真直化された中空の金属管状製品10は、一般的に降伏強度が低下するので、半径方向圧縮プロセスで用いられる半径方向圧縮力は小さくなる。或いはまた、半径方向圧縮プロセスは、周囲温度又は室温、例えば70°で行われることができる。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態において、半径方向圧縮成形プロセスは、上記のように好ましい機械的特性を有する金属管状製品を製造するのに用いられる。半径方向圧縮成形プロセス中では、半径方向圧縮プロセスを行うための複数の手法(methodologies)を使用することができる。圧縮成形プロセスの例は、図6~11に概略が示されており、以下で説明する。図6は、真直化された金属管状製品10の液体圧又はガス圧縮例を示す。図7及び図8は、圧縮ダイを使用して、真直化された金属管状製品10を半径方向に圧縮する例を示す。図9~11は、圧縮ローラを使用して、真直化された金属管状製品10を半径方向に圧縮する例を示す。本発明の実施形態では、真直化された管10は、半径方向圧縮成形プロセス中は回転しない。
【0043】
幾つかの実施形態において、半径方向の圧縮プロセス中、反対方向の半径方向圧縮力が、管の長さ方向に沿う所定の軸方向位置に加えられ、管の周囲及び厚さの全体に亘ってほぼ等しい半径方向の圧縮が行われる。したがって、管に沿う特定の軸方向位置では、管の一方側に作用する半径方向の圧縮力は、管の残りの周囲に作用する少なくとも1つの半径方向の圧縮力によって対抗される。例えば、中空の金属管状製品の周囲の一方側に作用する半径方向の圧縮力は、中空の金属管状製品の周囲の反対側に作用する少なくとも1つの半径方向の圧縮力によって対抗される。本発明の一実施形態によれば、半径方向圧縮ゾーンに加えられる半径方向圧縮力は、真直化された中空の金属管状製品10の大きな円周線接触又は表面積にもたらされる。幾つかの実施形態において、管の任意の軸方向位置で半径方向圧縮力が機械的に加えられ、前記半径方向圧縮力は、管の外面の各々を少なくとも120度含む2つ以上の区分部(segment)の中に周方向(circumferentially)に加えられる。例えば、管の所定の軸方向位置で管の外面の周囲に周方向に加えられる半径方向の圧縮力は、図10では少なくとも120度、図8、9及び11では180度である。本発明の一実施形態によれば、複数の区分部において、半径方向の圧縮力が、管の所定の軸方向位置の外面周囲で、トータルで少なくとも180度、又は少なくとも270度、又は360度の接触領域に対して周方向に加えられることができる。
【0044】
図6に示されるように、真直化された中空の金属管状製品10は、チャンバー22を有する囲い20の中に配置され、管の外面の周囲360度に液体又はガス負荷を作用させることによって圧縮成形プロセスを実行する。幾つかの実施形態において、金属管状製品に加えられる圧縮荷重は、管の壁厚Twの一部又は全部が降伏するまで、例えば、横方向圧縮モードで、弾性限界を超える応力レベルに達するまで加えられる。幾つかの実施形態によれば、圧縮荷重は、図6に示されるように、管の外面の周囲360度に対して周方向に加えられる。これにより、管の周囲と厚さ全体が対向する圧縮力を受けることができる。圧縮荷重が取り除かれ、管が半径方向の圧縮ゾーンに存在しない場合、管は半径方向に圧縮された管10’まで弾性的に拡張する。半径方向の圧縮とそれに続く膨張により、圧縮残留フープ応力が実質的に低下し、場合によっては、内面に隣接する壁ファイバーに引張残留フープ応力が生成される。
【0045】
本発明の一実施形態において、真直化された金属管状製品10は、内部容積24を有することができる。幾つかの実施形態において、安定化マンドレル30は、図6に示されるように、液圧又はガスによる半径方向圧縮成形プロセスの前に、内部容積24の中に含まれ得る。安定化マンドレル(stabilization mandrel)は、半径方向圧縮成形プロセス中、座屈することなく、壁の厚さを降伏させることができる大きさである。
【0046】
図7に示されるように、真直化された高温又は周囲温度の中空の金属管状製品10は、管に合わせたサイズの引抜きダイ40を用いて、高温又は周囲温度で、機械的な半径方向圧縮成形プロセスを受ける。引抜きダイ40は、真直化された管10を半径方向に圧縮して、管の所定の軸方向長さに沿って半径方向圧縮ゾーンを形成するように構成されている。前述したように、半径方向圧縮ゾーンにおいて、管の残留応力プロファイルを変更させることができ、半径方向圧縮ゾーンを出た後、内面に隣接する壁ファイバーの圧縮残留フープ応力が実質的に低下し、外面に隣接する壁ファイバーの引張残留応力が実質的に低下する。また、幾つかの実施形態において、管の残留応力プロファイルを変更して、内面に隣接する壁ファイバーに引張残留フープ応力をもたらし、及び/又は、外面に隣接する壁ファイバーに圧縮残留フープ応力をもたらすことができる。幾つかの実施形態によれば、引抜きダイは、図7に示されるように、管の所定の軸方向位置で管の外面の周囲360度に圧縮力を加える。これにより、管の周囲及び厚さの全体が反対方向の圧縮力を受けることができる。幾つかの実施形態において、真直化された管10が引抜きダイによって形成された半径方向圧縮ゾーンを出た後、半径方向に圧縮された管10’の内径及び外径は小さくなる。
【0047】
図8に示されるように、真直化された中空の金属管状製品10には、設定長さの成形ダイを使用して、機械的半径方向圧縮成形プロセスを施すことができる。図示の実施形態では、成形ダイは半円形の第1成形ダイ50及び第2成形ダイ52を含む。しかしながら、成形ダイの数及び形状は他のあらゆる適当なものが可能であり、例えば、製品の周囲に1、3、4又はそれ以上の成形ダイがあり得る。成形ダイは、真直化された管10の各軸方向セクションを順次半径方向に圧縮して、管の所定の軸方向長さに沿って半径方向圧縮ゾーンを形成するように構成される。幾つかの実施形態によれば、成形ダイは、図8に示されるように、管の所定の軸方向位置で管の外面の周囲360度に対して圧縮力が周方向に加えられる。これにより、管の周囲及び厚さの全体が反対方向の圧縮力を受けることができる。前述したように、半径方向圧縮ゾーンを出た後、管の残留応力プロファイルを変えることができ、内面に隣接する壁ファイバーの圧縮残留フープ応力が実質的に低下し、外面に隣接する壁ファイバーの引張残留応力が実質的に低下する。幾つかの実施形態では、管の残留応力プロファイルが変えられることで、内面に隣接する壁ファイバーに引張残留フープ応力及び/又は外面に隣接する壁ファイバーに圧縮残留フープ応力がもたらされる。幾つかの実施形態において、第1成形ダイ50及び第2成形ダイ52の軸方向長さは、真直化された管10の軸方向長さよりも短いため、成形ダイ50及び52は、管の軸方向長さに沿って移動し、管の軸方向の全長に沿って半径方向圧縮ゾーンを順次形成して、半径方向に圧縮された管10’が形成される。幾つかの実施形態において、真直化された管10が、成形ダイにより形成された半径方向の圧縮ゾーンを出た後、半径方向に圧縮された管10’の内径及び外径は小さくなる。
【0048】
図9図11に示されるように、真直化された中空の金属管状製品10には、対向する圧縮ローラを使用して機械的な半径方向圧縮成形プロセスが施される。図9に示すように、圧縮プロセスは、対向する圧縮ローラ60及び62の単一セットを含むことができる。図9に示される実施形態において、対向する圧縮ローラは、真直化された中空の金属管状製品10の上下に配置される。圧縮ローラは、真直化された管を半径方向に圧縮して、管の所定の軸長に沿って半径方向の圧縮ゾーンを形成するように構成されている。幾つかの実施形態によれば、各圧縮ローラは、図9に示されるように、所定の軸方向位置で管の外面周囲の少なくとも90度の部分に圧縮力を加える。これにより、管の周囲半分の少なくとも両方が反対方向の圧縮力を受けることができる。前述したように、半径方向圧縮ゾーンにおいて、管の残留応力プロファイルを変えることができ、半径方向圧縮ゾーンを出た後、内面に隣接する壁ファイバーの圧縮残留フープ応力を実質的に低下させ、外面に隣接する壁ファイバーの引張残留応力を実質的に低下させることができる。幾つかの実施形態では、管の残留応力プロファイルが変えられることで、内面に隣接する壁ファイバーに引張残留フープ応力及び/又は外面に隣接する壁ファイバーに圧縮残留フープ応力がもたらされる。幾つかの実施形態では、真直化された管10が、圧縮ローラによって形成された半径方向圧縮ゾーンを出た後、半径方向に圧縮された管10’の内径及び外径は小さくなる。
【0049】
図10に示される実施形態では、圧縮プロセスは、3つの対向する圧縮ローラ70、72及び74からなる単一セットの圧縮ローラを含むことができる。図9に示すように、3つの対向する圧縮ローラは、真直化された中空の金属管状製品10の周囲に配置される。例えば、圧縮ローラは、中空の金属管状製品10の周囲に120度間隔で配置されることができる。圧縮ローラは、真直化された管10を半径方向に圧縮して、管の所定の軸方向長さに沿って半径方向の圧縮ゾーンを形成するように構成されている。幾つかの実施形態によれば、各圧縮ローラは、図10に示すように、所定の軸方向位置で管の外面の周りの少なくとも60度部分に圧縮力を周方向に加える。これにより、管の円周の3つ区画部分のそれぞれが、反対方向の圧縮力を受けることができる。本発明の一実施形態によれば、圧縮ローラは互いに直接には対向していないが、ローラによって加えられる圧縮力は、他の2つのローラに加えられる圧縮力によって対抗される。本発明の一実施形態によれば、管の軸方向長さに沿って隣接する複数の対向圧縮ローラのセットは、例えば、2、3、4、5又はそれ以上であってよい。前述したように、半径方向の圧縮ゾーンにより、管の残留応力プロファイルを変えることでき、半径方向圧縮ゾーンを出た後、内面に隣接する壁ファイバーの圧縮残留フープ応力は実質的に低下し、外面に隣接する壁ファイバーの引張残留応力は実質的に低下する。幾つかの実施形態において、管の残留応力プロファイルを変えることで、内面に隣接する壁ファイバーに引張残留フープ応力及び/又は外面に隣接する壁ファイバーに圧縮残留フープ応力をもたらすことができる。幾つかの実施形態において、真直化された管10が圧縮ローラによって形成された半径方向圧縮ゾーンを出た後、半径方向に圧縮された管10’の内径及び外径は小さくなる。
【0050】
図11に示されるように、圧縮プロセスは、対向する圧縮ローラ80と82、90と92、100と102の3セットを含むことができる。なお、管の軸方向長さに沿って隣接する対向圧縮ローラの数は、例えば、2、4、5、6又はそれ以上であってよい。図10に示される実施形態では、2セットの対向する圧縮ローラが、真直化された中空の金属管状製品10の上下に配置され、1セットの対向する圧縮ローラが、真直化された中空の金属管状製品10の左右に配置される。しかしながら、圧縮ローラの配置は他の適当な配置を用いられることができる。本発明の一実施形態によれば、対向圧縮ローラを複数セットにすることにより、加えられる半径方向の力は、2つのローラが任意の1セットである場合よりも小さくなり、半径方向圧縮力の合計は、合計セット数の間で分割される。圧縮ローラは、真直化された管10を半径方向に圧縮して、管の所定の軸方向長さに沿って半径方向の圧縮ゾーンを形成するように構成される。幾つかの実施形態によれば、各圧縮ローラは、図11に示すように、所定の軸方向位置で管の外面の周囲少なくとも90度に圧縮力を加える。これにより、管の周囲の半分は両方とも反対の圧縮力を受けることができる。前述したように、半径方向圧縮ゾーンにより、管の残留応力プロファイルを変えることができ、半径方向圧縮ゾーンを出た後、内面に隣接する壁ファイバーの圧縮残留フープ応力が実質的に低下し、外面に隣接する壁ファイバーの引張残留応力が実質的に低下する。幾つかの実施形態では、管の残留応力プロファイルを変えることで、内面に隣接する壁ファイバーに引張残留フープ応力がもたらされ、及び/又は、外面に隣接する壁ファイバーに圧縮残留フープ応力がもたらされる。幾つかの実施形態では、真直化された管10が圧縮ローラによって形成された半径方向の圧縮ゾーンを出た後、半径方向に圧縮された管10’の内径及び外径は小さくなる。
【0051】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示することを意図するもので、本発明の範囲を限定することを意図するものでない。
【0052】
<実施例1>
回転矯正により真直化された14”×0.820”の125グレードのサンプル鋼管に、本発明の一実施形態に係る半径方向圧縮プロセスを施した。得られた製品のコラプス圧力を図12に示す。図12に示されるように、最も下の破線は、現在入手可能なAPI Q125グレード管の最小コラプス圧力9,230psiを表し、その上の破線は、3年前から入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力10,530psiを表し、その上の破線は現在入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力11,580psiを表し、最も上の破線は、本発明の実施形態による半径方向圧縮プロセスを施した125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力12,540psiを表す。それゆえ、図12の最も上の破線が、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスによって達成される目標コラプス圧力に対応する。これから分かるように、全てのサンプルのコラプス圧力の結果は、従来の方法によって達成可能なコラプス圧力よりも有意に高く、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスで達成される目標コラプス圧力を上回っている。
【0053】
<実施例2>
回転矯正により真直化された16.25”×0.817”の125グレードのサンプル鋼管に本発明の一実施形態に係る半径方向圧縮プロセスを施した。得られた製品のコラプス圧力を図13に示す。図13に示されるように、最も下の破線は、現在入手可能なAPI Q125グレード管の最小コラプス圧力5,960psiを表し、その上の破線は、3年前から入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力7,510psiを表し、その上の破線は現在入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力8,210psiを表し、最も上の破線は、本発明の実施形態による半径方向圧縮プロセスを施した125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力8,860psiを表す。それゆえ、図13の最も上の破線が、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスによって達成される目標コラプス圧力に対応する。これから分かるように、全てのサンプルのコラプス圧力の結果は、従来の方法によって達成可能なコラプス圧力よりも有意に高く、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスで達成される目標コラプス圧力を上回っている。
【0054】
<実施例3>
回転矯正により真直化された11.875”×0.582”のサンプル鋼管に、本発明の一実施形態に係る半径方向圧縮プロセスを施した。得られた製品のコラプス圧力を図14に示す。図14に示されるように、最も下の破線は、現在入手可能なAPI Q125グレード管の最小コラプス圧力5,630psiを表し、その上の破線は、3年前から入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力7,070psiを表し、その上の破線は現在入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力8,720psiを表し、最も上の破線は、本発明の実施形態による半径方向圧縮プロセスを施した125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力8,310psiを表す。それゆえ、図14の最も上の破線が、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスによって達成される目標コラプス圧力に対応する。これから分かるように、全てのサンプルのコラプス圧力の結果は、従来の方法によって達成可能なコラプス圧力よりも有意に高く、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスで達成される目標コラプス圧力を上回っている。
【0055】
<実施例4>
回転矯正により真直化された16.15”×0.723”のサンプル鋼管に、本発明の一実施形態に係る半径方向圧縮プロセスを施した。得られた製品のコラプス圧力を図15に示す。図15に示されるように、最も下の破線は、現在入手可能なAPI Q125グレード管の最小コラプス圧力4,510psiを表し、その上の破線は、3年前から入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力5,650psiを表し、その上の破線は現在入手可能な125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力6,120psiを表し、最も上の破線は、本発明の実施形態による半径方向圧縮プロセスを施した125高コラプスグレード管の最小コラプス圧力6,560psiを表す。それゆえ、図15の最も上の破線が、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスによって達成される目標コラプス圧力に対応する。これから分かるように、全てのサンプルのコラプス圧力の結果は、従来の方法によって達成可能なコラプス圧力よりも有意に高く、本発明の一実施形態による半径方向圧縮成形プロセスで達成される目標コラプス圧力を上回っている。
【0056】
上記説明の目的について、本発明は、特に明示的に記載されている場合を除き、代替となる様々な変形及び工程シーケンスが可能であることは理解されるべきである。さらに、実施例の記載以外は、他に示されている場合を除き、例えば本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量を表す数字は全て、用語「約」によって修正されるものと理解されるべきである。したがって、特に示されない限り、示された数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、通常の丸め手法を適用することにより、報告された有効数字の数を考慮して解釈されるべきである。
【0057】
本明細書に記載されたどの数値範囲についても、そこに含まれる全ての部分的範囲を含むことを意図していることを理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10の間のすべての範囲を含むことを意図しており、最小値が1に等しいか又は1より大きく、最大値は10に等しいか又は10より小さい。
【0058】
この出願では、特に明記しない限り、単数形の使用は複数を含み、複数形の使用は単数を包む。さらに、この出願では、「及び/又は」が明示的に使用されていても、特に明記しない限り、「又は」の使用は、「及び/又は」を意味するものとする。この出願では、「a」、「an」、及び「the」という冠詞が付されている対象は、明示的かつ明確に1つに限定されていない限り、複数の対象を含む。
【0059】
本発明の幾つかの実施形態を例示目的で説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された発明から逸脱することなく、本発明の詳細について多くの変形を行うことができることは明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法であって、
中空の金属管状製品を真直化することにより、外径OD及び内径IDを有する真直化された中空の金属管状製品を作製することであって、前記中空の金属管状製品の内面側に圧縮残留フープ応力を有し、前記中空の金属管状製品の外面側に引張残留フープ応力を有する、真直化された中空の金属管状製品を作製することと、
前記真直化された金属管状製品の外周面を半径方向に圧縮することであって、
前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品が、
(a)製品の内面側の圧縮残留フープ応力が減少しているか、又は
(b)製品の内面側に引張残留フープ応力を有し、かつ、
前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品が、
(a)製品の外面側の引張残留フープ応力が減少しているか、又は
(b)製品の外面側に圧縮残留フープ応力を有するように、前記真直化された金属管状製品の外周面を半径方向に圧縮することと、を含み、
前記半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、外径OD’及び内径ID’を有し、
前記外径OD’は、前記真直化された中空の金属管状製品の外径ODより少なくとも0.002パーセント小さく、前記ID’は、前記真直化された中空の金属管状製品の内径IDより少なくとも0.002パーセント小さい、方法。
【請求項2】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の外径OD’は、真直化された中空の金属管状製品の外径ODより0.002~0.2パーセント小さく、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の内径ID’は、真直化された中空の金属管状製品の内径IDより0.002~0.2パーセント小さい、請求項1の方法。
【請求項3】
真直化された中空の金属管状製品は壁厚Twを有し、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は壁厚T’wを有し、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の壁厚T’wは、真直化された中空の金属管状製品の壁厚Twよりも厚さが大きい、請求項1の方法。
【請求項4】
真直化された中空の金属管状製品のD/t比は、10:1より大きいか又は等しく、40:1より小さいか又は等しい、請求項2の方法。
【請求項5】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、該製品の内面側の残留フープ応力が、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品の降伏強度の-10乃至+30パーセントである、請求項1の方法。
【請求項6】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、真直化された中空の金属管状製品のコラプス抵抗より少なくとも2パーセント大きいコラプス抵抗を有する、請求項1の方法。
【請求項7】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、該製品の内面側の圧縮残留フープ応力が低下している、請求項1の方法。
【請求項8】
半径方向に圧縮された中空の金属管状製品は、該製品の内面側に引張残留フープ応力を有する、請求項1の方法。
【請求項9】
半径方向の圧縮は、真直化された中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で行われ、半径方向の圧縮力が、真直化された中空の金属管状製品の周囲の一方の側に作用し、前記半径方向の圧縮は、真直化された中空の金属管状製品の周囲の反対側に作用する半径方向の圧縮力によって対抗される、請求項1の方法。
【請求項10】
半径方向の圧縮力は、真直化された中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で、真直化された中空の金属管状製品の外面の180度以上の接触領域の周囲に周方向に加えられる、請求項9の方法。
【請求項11】
真直化された中空の金属管状製品は、少なくとも1セットの対向する圧縮ローラによって半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項12】
真直化された中空の金属管状製品に沿う軸方向位置に、複数の対向する圧縮ローラをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項13】
真直化された中空の金属管状製品は、少なくとも1セットの3つの圧縮ローラによって半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項14】
真直化された中空の金属管状製品は、圧縮チャンバーの中で半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項15】
真直化された中空の金属管状製品が半径方向に圧縮される前に、真直化された中空の金属管状製品の内側に、安定化用マンドレルが配置される、請求項14の方法。
【請求項16】
真直化された中空の金属管状製品は、引抜きダイの中で半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品が作製される、請求項1の方法。
【請求項17】
真直化された中空の金属管状製品は、成形ダイの中で半径方向に圧縮され、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製する、請求項1の方法。
【請求項18】
真直化された中空の金属管状製品は、高温で半径方向に圧縮される、請求項1の方法。
【請求項19】
真直化された中空の金属管状製品は、常温で半径方向に圧縮される、請求項1の方法。
【請求項20】
中空の金属管状製品のコラプス抵抗を向上させる方法であって、
中空の金属管状製品を半径方向に圧縮することにより、外径OD’及び内径ID’を有する半径方向に圧縮された中空の金属管状製品を作製することを含み、
中空の金属管状製品に沿う軸方向位置で、中空の金属管状製品の周囲の一方の側に作用する半径方向の圧縮力は、中空の金属管状製品の周囲の反対側に作用する少なくとも1つの半径方向の圧縮力によって対抗され、前記半径方向の圧縮力は、前記軸方向の位置で中空の金属管状製品の少なくとも180度の接触領域の周囲に周方向に加えられる、方法。
【請求項21】
中空の金属管状製品を半径方向に圧縮する前に、中空の金属管状製品を真直化することをさらに含む、請求項20の方法。
【請求項22】
真直化は、回転矯正によって行われる、請求項1又は21の方法。
【請求項23】
真直化され、かつ、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品であって、内面及び外面を含み、
(a)前記内面側の圧縮残留フープ応力が減少しているか、又は
(b)前記内面側に引張残留フープ応力を有しており、
真直化され、かつ、半径方向に圧縮された中空の金属管状製品のコラプス抵抗が、半径方向に圧縮されていない真直化された中空の金属管状製品のコラプス抵抗より大きく、前記金属環状製品の内面側の減少した圧縮残留フープ応力が、半径方向に圧縮されていない真直化された中空の金属管状製品の圧縮残留フープ応力よりも小さい、製品。
【外国語明細書】