(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088938
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】フルオロポリマーの粒子を含む水性ラテックスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 214/26 20060101AFI20230620BHJP
C08F 214/22 20060101ALI20230620BHJP
C08F 216/14 20060101ALI20230620BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08F214/26
C08F214/22
C08F216/14
C08F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039415
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2019555447の分割
【原出願日】2018-04-09
(31)【優先権主張番号】17165867.7
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バッシ, マッティア
(72)【発明者】
【氏名】マラーニ, アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】カペリュシュコ, ヴァレーリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特にコーティング用途での使用に好適である水性ラテックス、及びその使用を提供する。
【解決手段】水性ラテックスであって、(A)少なくとも1種のポリマー(F)であって、60モル%~85モル%の、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位、15モル%~40モル%の、フッ化ビニリデンに由来する繰り返し単位、及び任意選択的に、0~10モル%の、テトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデンと異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、少なくとも1種のポリマー(F)と、(B)少なくとも1種の界面活性剤とを含み、前記水性ラテックス中のポリマー(F)は、ISO 13321によって測定される55~300nmの平均一次粒径を有する一次粒子の形態である、水性ラテックスである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 60モル%~85モル%、好ましくは65モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~40モル%、好ましくは20モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 任意選択的に、0~10モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニリデン(VDF)と異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位
から本質的になるフルオロポリマー[ポリマー(F)]の粒子を含む水性ラテックスを製造する方法であって、
前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものであり、
前記ポリマー(F)は、170℃~300℃に含まれる融点(T
m)を有し、融点は、ASTM D 3418標準方法に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され、
前記方法は、式(II):
(式中、X
1、X
2及びX
3は、互いに等しいか又は異なり、H、F及び1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含んでいてもよいC
1~C
6(ペル)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは、結合又は二価の基であり、R
Fは、二価のフッ素化C
1~C
3架橋基であり、及びYは、アニオン性官能基である)
の少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(F)]を含む水性重合媒体中における乳化重合により、TFE、VDF及び任意選択的に前記フッ素化モノマーを重合することを含み、及び
前記方法は、6バール~20バールに含まれる重合圧力を維持するためにTFEとVDFとのガス状ブレンドを供給することを含む、方法。
【請求項2】
50℃~135℃、好ましくは55℃~130℃に含まれる温度で実施され、且つ/又は10バール~18バール、好ましくは11バール~16バールに含まれる重合圧力を維持するためにTFEとVDFとのガス状ブレンドを供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤(F)は、式(V):
(式中、R
F及びX
aは、上述されたものと同じ意味を有し、X
*、X
*
2は、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、-R’
f又は-OR’
f(ここで、R’
fは、C
1~C
3ペルフルオロアルキル基であり、R
F
1は、F又はCF
3である)であり、及びkは、1~3の整数である)
の環式フルオロ化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー(F)は、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニリデン(VDF)と異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー(F)は、式(I):
CF2=CF-O-Rf (I)
(式中、Rfは、C1~C6アルキル基又はC1~C6(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー(F)は、0.1モル%~5モル%、好ましくは1モル%~5モル%、より好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式(I)の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位を更に含み、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー(F)は、
- 60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 0.1モル%~5モル%、好ましくは1モル%~5モル%、より好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式(I):
CF2=CF-O-Rf (I)
(式中、Rfは、C1~C6アルキル基又はC1~C6(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
を含み、好ましくはそれらからなり、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記式(I)のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)は、式CF2=CF-O-CF3のペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、式CF2=CF-O-CF2-CF3のペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)及び式CF2=CF-O-CF2-CF2-CF3のペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)からなる群から選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって得られ得る水性ラテックス。
【請求項10】
水性ラテックスであって、
(A)少なくとも1種のポリマー(F)であって、
- 60モル%~85モル%、好ましくは65モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~40モル%、好ましくは20モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、
- 任意選択的に、0~10モル%、好ましくは0モル%~5モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニリデン(VDF)と異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位
を含み、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、少なくとも1種のポリマー(F)と、
(B)式(II):
(式中、X
1、X
2及びX
3は、互いに等しいか又は異なり、H、F及び1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含んでいてもよいC
1~C
6(ペル)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは、結合又は二価の基であり、R
Fは、二価のフッ素化C
1~C
3架橋基である)
の少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(F)]と
を含み、前記水性ラテックス中の前記ポリマー(F)は、ISO 13321によって測定される55~300nmの平均一次粒径を有する一次粒子の形態である、水性ラテックス。
【請求項11】
石油及びガス用途並びに自動車用途における、請求項9又は10に記載の水性ラテックスの使用。
【請求項12】
コーティング用途における、請求項9又は10に記載の水性ラテックスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融加工性フルオロポリマーを製造するプロセス、前記プロセスによって入手可能な溶融加工性フルオロポリマー及び様々な用途における前記溶融加工性フルオロポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高い機械的耐性及び高い耐化学性の両方を有し、様々な用途で好適に使用可能な溶融加工性フルオロポリマーが当該技術分野において知られている。
【0003】
溶融加工性フルオロポリマーの中でも、優れた機械的強度及び耐化学性の組み合わせが必要とされる一方、使用分野を処理するのに注目が高まっている材料の具体的な部類は、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)及び第3のコモノマーのターポリマーの部類である。
【0004】
この分野において、例えば、米国特許第8997797号明細書(ダイキン工業株式会社)(2015年4月7日)は、ライザーパイプの製造に好適である、170℃で高い結晶性及び高い貯蔵弾性率を有するフルオロポリマーであって、前記フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)並びにテトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデン以外のエチレン系不飽和モノマーに由来する共重合単位からなる、フルオロポリマーについて開示している。これらのターポリマーの中でも、特に(j)0.1~5.0モル%の、(ペル)フルオロアルキルエチレンモノマー(例えば、CH2=CH-C4F9;CH2=CH-C6F13)に由来する繰り返し単位を有するTFE及びVDFのターポリマーと、(jj)0.1~0.8モル%の、式CF2=CF-ORf
1(式中、Rf
1は、C1~3フルオロアルキル基のC1~3アルキル基である)の(ペル)(フルオロ)アルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を有するTFE及びVDFのターポリマーとについて言及されている。例示された全ての実用実施形態は、有機ペルオキシド反応開始下、水/ペルフッ素化アルカン溶媒のブレンドの存在下において約35℃の温度で懸濁重合によって製造されたポリマーに関する。このような方法論は、安定したフルオロポリマー分散体/ラテックスをもたらすのに好適でない。この結果は、粗大な不規則粒子のスラリーで構成される。
【0005】
国際公開第2016/099913号パンフレット(W.L.GORE)(2016年6月23日)は、少なくとも3つの融点、より具体的には50℃~300℃の第1の吸熱量、320℃~350℃の第2の吸熱量及び350℃~400℃の第3の吸熱量を有し、この第3の吸熱量は、約380℃である、コア/シェルPTFE様材料から作製された特定の形状化部品に関する。具体的な実施例(実施例1)では、フッ素化界面活性剤の存在下における乳化重合によるTFE/VDFコポリマーの製造について記載されている。開始時にVDFを反応器に導入し、次いでTFEを更に添加する。次に、重合が開始したらTFE(単独)を供給し、12kgのTFEが転換した後にVDFの供給を再び開始する。得られる全体のコア/シェルポリマーは、27.9モル%(19.9重量%)のVDF含有量並びに複数の融点、特に177.73℃;341.83℃及び369.19℃(第1のものは、VDFの擬似ホモポリマーを表し、最後のものは、TFEの擬似ホモポリマーを表す)を示すDSCを有するラテックスとして説明されている。
【0006】
特開2017-057379号公報(ダイキン工業)は、界面活性剤及び水性媒体の存在下においてテトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデンを重合する製造方法であって、界面活性剤は、
(A)式:CX2=CFCF2-O-(CF(CF3)CF2O)n-CF(CF3)-Y(式中、各Xは、同一であるか又は異なり、F又はHを表し、nは、0又は1~10の整数を表し、Yは、-SO3M又は-COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す)によって表されるフッ素含有アリルエーテル化合物;
(B)7~20個の炭素原子を有する直鎖1-アルカンスルホン酸、7~20個の炭素原子を有する直鎖2-アルカンスルホン酸、7~20個の炭素原子を有する直鎖1,2-アルカンジスルホン酸及びこれらの塩;
(C)ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の非フッ素化界面活性剤;
(D)式-CH2CH2O-又は-CH2CH2CH2O-の2~100個の繰り返し単位を有する界面活性剤;
(E)(i)400未満の分子量を有する非フッ素化界面活性剤及びフッ素化界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤と、(ii)フルオロポリオキシアルキレン鎖及び官能基エーテルを含む官能性フルオロポリエーテルとの組み合わせ;及び
(F)0~9.8MPaG(98バール)で変化し得る圧力で非活性の炭化水素含有界面活性剤
からなる群から選択され得る、方法に関する。選択(E)に関連して、官能性ペルフルオロポリエーテルと組み合わせて使用可能な環式フッ素系界面活性剤の使用は、400未満の分子量のフッ素化界面活性剤の可能な実施形態として列挙されている。それでもなお、全体的に、全ての実施例において反応性アリルフッ素系界面活性剤CH2=CFCF2-O-(CF(CF3)CF2O)-CF(CF3)-COONH4が使用される。
【0007】
場合により他のコポリマーを含む、TFEとVDFとのコポリマーを製造するために様々な試みが当該技術分野においてなされているものの、当該技術分野では、効率的且つ費用対効果の高いプロセスにより、より高い重合反応速度を有する、所与のサイズの粒子を含むラテックスの形態でそのコポリマーを製造する方法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
ここで、驚くべきことに、本発明のプロセスは、効率的な方法でTFEとVDFとのポリマーを容易に提供することを有利に可能にすることが発見された。
【0009】
特に、本発明のプロセスは、有利には、それから提供される水性ラテックス中での高い固体含有量及び制御された粒径と組み合わせて高い重合速度を達成しながら、比較的低圧で実施されることが発見されている。
【0010】
本発明の水性ラテックスを例えば他の水性ラテックスと混合して同時に凝固させることにより、様々な用途、特にコーティング用途での使用に好適な均一混合物をもたらし得ることも発見されている。
【0011】
第1の例において、本発明は、
- 60モル%~85モル%、好ましくは65モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~40モル%、好ましくは20モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 任意選択的に、0~10モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニリデン(VDF)と異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位
から本質的になるフルオロポリマー[ポリマー(F)]の粒子を含む水性ラテックスを製造する方法であって、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものであり、
前記ポリマー(F)は、170℃~300℃に含まれる融点(T
m)を有し、融点は、ASTM D 3418標準方法に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定され、
前記方法は、式(II):
(式中、X
1、X
2及びX
3は、互いに等しいか又は異なり、H、F及び任意選択的に1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含むC
1~C
6(ペル)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは、結合又は二価の基であり、R
Fは、二価のフッ素化C
1~C
3架橋基であり、及びYは、アニオン性官能基である)
の少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(F)]を含む水性重合媒体中における乳化重合により、TFE、VDF及び任意選択的に前記フッ素化モノマーを重合することを含み、
前記方法は、6バール~20バールに含まれる重合圧力を維持するためにTFEとVDFとのガス状ブレンドを供給することを含む、方法に関する。
【0012】
第2の例において、本発明は、水性ラテックスであって、
(A)少なくとも1種のポリマー(F)であって、
- 60モル%~85モル%、好ましくは65モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~40モル%、好ましくは20モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、
- 任意選択的に、0~10モル%、好ましくは0モル%~5モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニリデン(VDF)と異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位
を含み、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、少なくとも1種のポリマー(F)と、
(B)上で詳述された少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(F)]と
を含み、水性ラテックス中のポリマー(F)は、ISO 13321によって測定される55~300nmの平均一次粒径を有する一次粒子の形態である、水性ラテックスに関する。
【0013】
本発明のポリマー(F)は、有利には、溶融加工性である。用語「溶融加工性」は、本明細書において、従来の溶融加工技術によって加工可能なフルオロポリマーを意味することが意図される。
【0014】
本発明のポリマー(F)は、170℃~300℃、好ましくは200℃~280℃に含まれる融点(Tm)を有し、融点は、ASTM D 3418標準方法に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0015】
本発明の目的に関して、用語「フッ素化モノマー」は、少なくとも1個のフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することを意図する。
【0016】
フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0017】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、ペル(ハロ)フッ素化モノマーと称される。
【0018】
フッ素化モノマーは、1個以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)を更に含み得る。
【0019】
好適なフッ素化モノマーの非限定例としては、とりわけ、以下が挙げられる:
- ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC3~C8ペルフルオロオレフィン;
- フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレンなどのC2~C8水素化フルオロオレフィン;
-式CH2=CH-Rf0(式中、Rf0は、C1~C6ペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ、及び/又はブロモ、及び/又はヨードC2~C6フルオロオレフィン;
- 式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6フルオロ又はペルフルオロアルキル基、例えばCF3、C2F5、C3F7である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF2=CFOX0(ペル)フルオロオキシアルキルビニルエーテル(式中、X0は、C1~C12アルキル基、C1~C12オキシアルキル基又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C12(ペル)フルオロオキシアルキル基、例えばペルフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である);
- 式CF2=CFOCF2ORf2(式中、Rf2は、C1~C6フルオロ又はペルフルオロアルキル基、例えばCF3、C2F5、C3F7又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C6(ペル)フルオロオキシアルキル基、例えば-C2F5-O-CF3である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF2=CFOY0(式中、Y0は、C1~C12アルキル基又は(ペル)フルオロアルキル基、1つ以上のエーテル基を有するC1~C12オキシアルキル基又はC1~C12(ペル)フルオロオキシアルキル基であり、且つY0は、酸、酸ハロゲン化物又は塩形態でカルボキシル基又はスルホン酸基を含む)の官能性(ペル)フルオロオキシアルキルビニルエーテル;及び
- フルオロジオキソール、好ましくはペルフルオロジオキソール。
【0020】
本発明のポリマー(F)は、典型的には、式(I):
CF2=CF-O-Rf (I)(式中、Rfは、C1~C6アルキル基又はC1~C6(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位を更に含む。
【0021】
本発明のポリマー(F)は、0.1モル%~5モル%、好ましくは1モル%~5モル%、より好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式(I):
CF2=CF-O-Rf (I)
(式中、Rfは、C1~C6アルキル基又はC1~C6(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位を含むことが好ましく、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである。
【0022】
本発明のポリマー(F)は、
- 60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 0.1モル%~5モル%、好ましくは1モル%~5モル%、より好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式(I):
CF2=CF-O-Rf (I)
(式中、Rfは、C1~C6アルキル基又はC1~C6(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
から本質的になることが好ましく、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである。
【0023】
式(I)のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)は、典型的には、式CF2=CF-O-CF3のペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、式CF2=CF-O-CF2-CF3のペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)及び式CF2=CF-O-CF2-CF2-CF3のペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)からなる群から選択され、より好ましくはPMVE及びPPVEから選択される。
【0024】
述べたように、界面活性剤(F)は、式(II):
(式中、X
1、X
2及びX
3は、互いに等しいか又は異なり、H、F及び任意選択的に1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含むC
1~C
6(ペル)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは、結合又は二価の基であり、R
Fは、二価のフッ素化C
1~C
3架橋基であり、及びYは、アニオン性官能基である)
の環式フルオロ化合物である。
【0025】
式(II)において、アニオン性官能基Yは、式:
(式中、X
aは、H、一価の金属(好ましくはアルカリ金属)又は式-N(R’
n)
4(式中、R’
nは、それぞれの出現において等しいか又は異なり、水素原子又はC
1~C
6炭化水素基(好ましくはアルキル基)である)のアンモニウム基である)
のものからなる群から選択されることが好ましい。
【0026】
最も好ましくは、アニオン性官能基Yは、上述の式(3”)のカルボキシレートである。
【0027】
第1の変形形態に従うと、界面活性剤(F)は、式(III):
(式中、X
1、X
2、X
3、R
F及びYは、上述されたものと同じ意味を有する)
の環式フルオロ化合物である。
【0028】
より好ましくは、本発明のこの第1の実施形態の第1の変形形態の環式フルオロ化合物は、式(IV):
(式中、X
1、X
2、X
3、R
F及びX
aは、上述されたものと同じ意味を有する)
のものである。
【0029】
第2の変形形態に従うと、界面活性剤(F)は、式(V):
(式中、R
F及びX
aは、上述されたものと同じ意味を有し、X
*
1、X
*
2は、互いに等しいか又は異なり、独立して、フッ素原子、-R’
f又は-OR’
f(ここで、R’
fは、C
1~C
3ペルフルオロアルキル基であり、R
F
1は、F又はCF
3である)であり、及びkは、1~3の整数である)
の環式フルオロ化合物である。
【0030】
本発明のこの第1の実施形態の界面活性剤(F)は、式(VI):
(式中、X
aは、上述されたものと同じ意味を有し、特に、X
aは、NH
4である)
の環式フルオロ化合物であることがより好ましい。
【0031】
本発明の方法は、ポリマー(F)の粒子を含む水性ラテックスをもたらす。表現「水性ラテックス」は、本明細書において、通常の意味に従って用いられ、即ち均一に分散したポリマー(F)の一次粒子を含む水性媒体を意味することを意図する。
【0032】
本発明の方法から得られるポリマー(F)の粒子を含む水性ラテックスは、ISO 13321に従って測定される55nm~300nmの平均一次粒径を有する一次粒子の形態の前記ポリマー(F)を含む。一般に、前記水性ラテックス中のポリマー(F)の平均一次粒径は、ISO 13321に従って測定されて55nm~300nm、好ましくは120nm~280nm、最も好ましくは150nm~250nmに含まれる。
【0033】
本発明の目的に関して、「平均一次粒径」とは、水性乳化重合によって入手可能なポリマー(F)の一次粒子の平均サイズを意味することを意図する。
【0034】
本発明の目的に関して、ポリマー(F)の「一次粒子」は、例えば、ラテックスの凝固によって入手可能な一次粒子のアグロメレートと区別可能であることが意図されるべきである。ポリマー(F)の一次粒子を含む水性ラテックスは、有利には、水性乳化重合によって入手可能である。ポリマー(F)の一次粒子のアグロメレートは、典型的には、水性ポリマー(F)ラテックスの濃縮及び/又は凝固並びにその後の乾燥及び均質化など、それによってポリマー(F)粉末を提供するポリマー(F)製造の回収及びコンディショニング工程によって入手可能である。
【0035】
本発明の方法によって入手可能な水性ラテックスは、そのため、水性媒体にポリマー(F)粉末を分散させることによって調製される水性スラリーと区別可能であることが意図されるべきである。水性スラリーに分散したポリマー(F)粉末の平均粒径は、典型的には、ISO 13321に従って測定されて1.0μmよりも大きい。
【0036】
本発明の方法によって入手可能な水性ラテックスは、有利には、ISO 13321に従って測定される55nm~300nm、好ましくは120nm~280nmに含まれる平均一次粒径を有する少なくとも1種のポリマー(F)の一次粒子がその中に均一に分散している。
【0037】
本発明の方法は、6バール~20バール、好ましくは10バール~18バール、好ましくは11バール~16バールに含まれる重合圧力を維持するためにTFEとVDFとのガス状ブレンドを供給することを含む。
【0038】
当業者は、とりわけ、使用されるラジカル開始剤を考慮して重合温度を選択するであろう。このことから、50℃を超える重合温度が一般に最適効率を達成するために必要とされることが一般に理解される。したがって、本発明の方法は、通常、50℃~135℃、好ましくは55℃~130℃に含まれる温度で重合を行うことを含む。
【0039】
ラジカル開始剤の選択は、特に限定されないものの、水性乳化重合に好適な水溶性ラジカル開始剤が好ましいと理解される。
【0040】
本発明の方法において、重合プロセスを開始及び/又は加速可能な水溶性ラジカル開始剤の中でも、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない無機ラジカル開始剤が好ましい。
【0041】
また、有機ラジカル開始剤が使用され得、これらに限定されるものではないが、以下のもの:アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド;ジアセチルペルオキシジカーボネート;ジエチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネートなどのジアルキルペルオキシジカーボネート;tert-ブチルペルネオデカノエート;2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル;tert-ブチルペルピバレート;ジオクタノイルペルオキシド;ジラウロイル-ペルオキシド;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル);tert-ブチルアゾ-2-シアノブタン;ジベンゾイルペルオキシド;tert-ブチル-ペル-2エチルヘキサノエート;tert-ブチルペルマレエート;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル);ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)シクロヘキサン;tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;tert-ブチルペルアセテート;2,2’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミルペルオキシド;ジ-tert-アミルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP);p-メタンヒドロペルオキシド;ピナンヒドロペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド;及びtert-ブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0042】
他の適したラジカル開始剤に、はとりわけ、ハロゲン化フリーラジカル開始剤、例えばクロロカーボン系及びフルオロカーボン系アシルペルオキシド、例えばトリクロロアセチルペルオキシド、ビス(ペルフルオロ-2-プロポキシプロピオニル)ペルオキシド、[CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO]
2、ペルフルオロプロピオニルペルオキシド、(CF
3CF
2CF
2COO)
2、(CF
3CF
2COO)
2、{(CF3CF
2CF
2)-[CF(CF
3)CF
2O]
m-CF(CF
3)-COO}
2(式中、m=0~8である)、[ClCF
2(CF
2)
nCOO]
2及び[HCF
2(CF
2)
nCOO]
2(式中、m=0~8である)、ペルフルオロアルキルアゾ化合物、例えばペルフルオロアゾイソプロパン、[(CF
3)
2CFN=]
2、
(式中、
は、1~8個の炭素を有する直鎖又は分岐状ペルフルオロカーボン基である)
、安定な又はヒンダードペルフルオロアルカンラジカル、例えばヘキサフロオロプロピレン三量体ラジカル、[(CF
3)
2CF]
2(CF
2CF
2)C・ラジカル及びペルフルオロアルカンなどがある。
【0043】
ジメチルアニリン-ベンゾイルペルオキシド、ジエチルアニリン-ベンゾイルペルオキシド及びジフェニルアミン-ベンゾイルペルオキシドなど、レドックス対を形成する少なくとも2つの成分を含むレドックス系も重合プロセスを開始させるためのラジカル開始剤として使用され得る。
【0044】
無機ラジカル開始剤の中でも、過硫酸アンモニウムが特に好ましい。
【0045】
有機ラジカル開始剤の中でも、50℃よりも高い自己加速分解温度(SADT)を有するペルオキシド、例えばジ-tert-ブチルペルオキシド(DTBP)、ジtertブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tertブチル(2-エチル-ヘキシル)ペルオキシカーボネート、tertブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエートなどが特に好ましい。
【0046】
上述の1種以上のラジカル開始剤は、有利には、水性重合媒体の重量を基準にして0.001重量%~20重量%の範囲の量で本発明のプロセスの水性重合媒体に添加され得る。
【0047】
本発明の方法において、特定の実施形態に従うと、水性重合媒体は、少なくとも1種の非官能性ペルフルオロポリエーテル(PFPE)油を更に含むことができる。
【0048】
「非官能性ペルフルオロポリエーテル(PFPE)油」とは、(ペル)フルオロポリオキシアルキレン鎖[鎖(Rf)]及び非官能性末端基を含むペルフルオロポリエーテル(PFPE)油を意味することが本明細書により意図される。
【0049】
非官能性PFPE油の非官能性末端基は、一般に、フッ素と異なる1つ若しくは複数のハロゲン原子又は水素原子を任意選択的に含む、1~3個の炭素原子を有するフルオロ(ハロ)アルキル基、例えばCF3-、C2F5-、C3F6-、ClCF2CF(CF3)-、CF3CFClCF2-、ClCF2CF2-、ClCF2-から選択される。
【0050】
非官能性PFPE油は、有利には、400~3000、好ましくは600~1500に含まれる数平均分子量を有する。
【0051】
非官能性PFPE油は、より好ましくは、
(1’)GALDEN(登録商標)及びFOMBLIN(登録商標)という商標名の下でSolvay Solexis S.p.A.から市販されている非官能性PFPE油であって、前記PFPE油は、一般に、ここで、以下の式:
CF3-[(OCF2CF2)m-(OCF2)n]-OCF3
m+n=40~180;m/n=0.5~2
CF3-[(OCF(CF3)CF2)p-(OCF2)q]-OCF3
p+q=8~45;p/q=20~1000
のいずれかに従う少なくとも1種のPFPE油を含む非官能性PFPE油、
(2’)DEMNUM(登録商標)という商標名の下でダイキンから市販されている非官能性PFPE油であって、前記PFPEは、一般に、ここで、以下の式:
F-(CF2CF2CF2O)n-(CF2CF2CH2O)j-CF2CF3
j=0又は>0の整数;n+j=10~150
に従う少なくとも1種のPFPEを含む非官能性PFPE油、
(3’)KRYTOX(登録商標)という商標名の下でDu Pont de Nemoursから市販されている非官能性PFPE油であって、前記PFPEは、一般に、ここで、以下の式:
F-(CF(CF3)CF2O)n-CF2CF3
n=10~60
に従うヘキサフルオロプロピレンエポキシドの少なくとも1種の低分子量のフッ素末端封止ホモポリマーを含む非官能性PFPE油
からなる群から選択される。
【0052】
非官能性PFPE油は、更により好ましくは、上述された式(1’)を有するものから選択される。
【0053】
本発明のプロセスは、典型的には、連鎖移動剤の存在下で実施される。
【0054】
連鎖移動剤は、通常、例えばアセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、メチル-ter-ブチルエーテル、イソプロピルアルコールなど、エタン、ケトン、エステル、エーテル又は3~10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール;任意選択的に水素を含有する、1~6個の炭素原子を有するクロロ(フルオロ)カーボン、例えばクロロホルム、トリクロロフルオロメタン;アルキルが1~5個の炭素原子を有するビス(アルキル)カーボネート(例えば、ビス(エチル)カーボネート、ビス(イソブチル)カーボネート)など、フッ素化モノマーの重合において知られているものから選択される。連鎖移動剤は、開始時に、重合中に連続的に、又は個別的な量で(段階的に)水性媒体に供給され得、連続的又は段階的供給が好ましい。
【0055】
上で詳述した水性乳化重合プロセスは、当該技術分野において説明されてきた(例えば、米国特許第4990283号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(1991年2月5日)、米国特許第5498680号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(1996年3月12日)及び米国特許第6103843号明細書(AUSIMONT S.P.A.)(2000年8月15日)を参照されたい)。
【0056】
本発明の水性ラテックスは、20重量%~30重量%の少なくとも1種のポリマー(F)を含むことが好ましい。
【0057】
本発明の水性ラテックスは、当該技術分野で公知の任意の技術に従って濃縮され得る。
【0058】
一般に、本発明の水性ラテックスは、少なくとも1種の非イオン性含水素界面活性剤[界面活性剤(NS)]を添加することで更に配合される。
【0059】
好適な界面活性剤(NS)の非限定例としては、特に長鎖置換フェノールアルコキシレート(例えば、オクチルフェノールエトキシレート)及び脂肪族脂肪アルコールアルコキシレート、特にアルコキシル化により、一般に6~15単位、好ましくは6~10単位の量において、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドに由来する繰り返し単位を含む長鎖(C11~C13)脂肪族アルコールが挙げられる。
【0060】
界面活性剤(NS)は、通常、EN 1890規格(方法A:1重量%の水溶液)に従って測定されて有利には50℃以上、好ましくは55℃以上の曇点を有する。
【0061】
界面活性剤(NS)は、好ましくは、商標名TRIXON(登録商標)X及びPLURONIC(登録商標)で商業的に入手可能な非イオン性含水素界面活性剤からなる群から選択される。
【0062】
第4の例において、本発明は、様々な用途における本発明のポリマー(F)の使用に関する。
【0063】
本発明のポリマー(F)は、特に石油及びガス用途並びに自動車用途での使用に好適である。
【0064】
第5の例において、本発明は、様々な用途における本発明の水性ラテックスの使用に関する。
【0065】
本発明の水性ラテックスは、特にコーティング用途での使用に好適である。
【0066】
本発明は、ここで、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
ポリマー(F-1)を製造するための一般的手順
バッフル及び180rpmで稼働する撹拌棒を装着したAISI 316鋼の縦型オートクレーブに64リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を80℃の反応温度にし、この温度に達したとき、上述の式(VI)の環式界面活性剤(式中、Xa=NH4である)の34%w/w水溶液600グラム及び2バールのフッ化ビニリデンを導入した。
【0068】
続いて、名目モル比が60:40であるTFE-VDFのガス状混合物を、圧縮機を介して12バールの圧力に到達するまで添加した。
【0069】
次いで、開始剤として過硫酸ナトリウム(NaPS)の3重量%水溶液500mLを供給した。上述したTFE-VDF混合物を供給することにより、重合圧力を一定に維持した。10000gの混合物を供給した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出した。次に、ラテックスを48時間凍結させ、解凍したら、凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させた。
【0070】
ポリマー(F-2)を製造するための一般的手順
バッフル及び180rpmで稼働する撹拌機を装着したAISI 316鋼の縦型オートクレーブに64リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を80℃の反応温度にし、この温度に達したとき、上述の式(VI)の環式界面活性剤(Xa=NH4)の34%w/w水溶液600グラム及び2バールのフッ化ビニリデンを導入した。0.1バールのエタン及び0.15バールのPMVEを続いて添加した。
【0071】
続いて、名目モル比が69:30:1であるTFE-VDF-PMVEのガス状混合物を、圧縮機を介して12バールの圧力に達するまで添加した。
【0072】
次いで、開始剤として過硫酸ナトリウム(NaPS)の3重量%水溶液600mLを供給した。上述したTFE-VDF-PMVE混合物を供給することにより、重合圧力を一定に維持した。10000gの混合物を供給した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出した。次に、ラテックスを48時間凍結させ、解凍したら、凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させた。
【0073】
ポリマー(F-3)を製造するための一般的手順
バッフル及び570rpmで稼働する撹拌機を装着したAISI 316鋼の縦型オートクレーブに3.5リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を80℃の反応温度にし、選択量の上述した式(VI)の環式界面活性剤(Xa=NH4)の34%w/w水溶液及び2バールのVDFを導入した。
【0074】
続いて、名目モル比が60:40であるTFE-VDFのガス状混合物を、圧縮機を介して12バールの圧力に到達するまで添加した。
【0075】
次いで、開始剤として過硫酸ナトリウム(NaPS)の3重量%水溶液500mLを供給した。上述したTFE-VDF混合物を供給することにより、重合圧力を一定に維持した。1000gの混合物を供給した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出した。
【0076】
水性ラテックス中のポリマー(F-3)の平均一次粒径は、ISO 13321に従って測定されて267nmであった。
【0077】
次に、ラテックスを48時間凍結させ、解凍したら、凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、160℃で24時間乾燥させた。
【0078】
ポリマー(F-4)、(F-5)、(F-6)及び(F-7)を製造するための一般的手順
バッフル及び570rpmで稼働する撹拌機を装着したAISI 316鋼の縦型オートクレーブに3.5リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を80℃の反応温度にし、選択量の上述した式(VI)(式中、Xa=NH4である)の環式界面活性剤の34%w/w水溶液を添加した。VDF、PMVE及びエタンを、表1に報告する選択した圧力のバリエーションに導入した。
【0079】
続いて、以下の名目モル比のTFE-VDF-PMVEのガス状混合物を、圧縮機を介して12バールの圧力に到達するまで添加した:
ポリマー(F-4):TFE(69.0モル%)-VDF(29.4モル%)-PMVE(1.6モル%)、
ポリマー(F-5):TFE(68.6モル%)-VDF(29.0モル%)-PMVE(2.4モル%)、
ポリマー(F-6):TFE(77.0モル%)-VDF(20.0モル%)-PMVE(3.0モル%)、
ポリマー(F-7):TFE(69.0モル%)-VDF(30.0モル%)-PMVE(1.0モル%)。
【0080】
次に、選択量の3重量%の過硫酸ナトリウム(NaPS)水溶液を開始剤として供給した。上述したTFE-VDF-PMVE混合物を供給することにより、重合圧力を一定に維持した。1000gの混合物を添加した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出し、48時間凍結させ、解凍したら、凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、160℃で24時間乾燥させた。
【0081】
プロセス条件を表1に示す。
【0082】
【0083】
第2の溶融温度の測定
ASTM D 3418標準方法に従って示差走査熱量計(DSC)によって融点を測定した。第2の加熱期間中に観察した吸熱ピークとして定義される第2の溶融温度を記録し、本明細書ではポリマーの融点(Tm)と呼ぶ。
【0084】
本発明のポリマー(F-1)、(F-2)、(F-3)、(F-4)、(F-5)、(F-6)及び(F-7)に関する結果をここで下の表2に記載する。
【0085】
【0086】
ポリマー(F-8)を製造するための一般的手順
バッフル及び570rpmで稼働する撹拌機を装着したAISI 316鋼の縦型オートクレーブに3.5リットルの脱塩水を導入した。次に、温度を80℃の反応温度にし、選択量の上述したXa=NH4の式(VI)の環式界面活性剤の34%w/w水溶液を添加した。VDF及びエタンを、表1に報告する選択圧力のバリエーションに導入した。
【0087】
表3に報告する名目モル比のTFE-VDFのガス状混合物を、次に圧縮機を介して20バールの圧力に達するまで添加した。次に、選択量の3重量%の過硫酸ナトリウム(NaPS)水溶液を開始剤として供給した。表3に示す総量に達するまで、規則的な間隔でPPVEモノマーを添加しながら、上述したTFE-VDFを供給することにより、重合圧力を一定に維持した。
【0088】
1000gの混合物を添加した際、反応器を室温で冷却し、ラテックスを排出し、48時間凍結させ、解凍したら、凝固したポリマーを脱塩水で洗浄し、160℃で24時間乾燥させた。
【0089】
NMRにより測定されると、得られたポリマー(F-8)の組成は、融点Tm=218℃及びMFI=5g/10’であるポリマー(F-8)(693/99):TFE(69.6モル%)-VDF(27.3モル%)-PPVE(2.1モル%)であった。
【0090】
表3の2番目の縦列に示す成分の量を導入して、(F-9)を製造するために、ポリマー(F-8)をもたらす手順を繰り返した。NMRにより測定されると、得られたポリマー(F-8)の組成は、融点Tm=219℃及びMFI=1.5g/10’であるポリマー(F-8)(693/100):TFE(68モル%)-VDF(29.8モル%)-PPVE(2.2モル%)であった。
【0091】
表3の3番目の縦列に示す成分の量を導入して、ポリマー(Fー10)を製造するために、ポリマー(F-8)をもたらす手順を繰り返した。NMRによって測定されると、得られたポリマー(F-10)の組成は、融点Tm=249℃及びMFI=5g/10’であるポリマー(F-10)(693/67):TFE(71モル%)-VDF(28.5モル%)-PPVE(0.5モル%)であった。
【0092】
【0093】
【手続補正書】
【提出日】2023-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ラテックスであって、
(A)少なくとも1種のポリマー(F)であって、
- 60モル%~85モル%、好ましくは65モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~40モル%、好ましくは20モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、
及び
- 任意選択的に、0~10モル%、好ましくは0モル%~5モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)及びフッ化ビニリデン(VDF)と異なる少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位
を含み、前記繰り返し単位のモル量は、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対するものである、少なくとも1種のポリマー(F)と、
(B)式(II):
(式中、X
1、X
2及びX
3は、互いに等しいか又は異なり、H、F及び1つ以上のカテナリー又は非カテナリー酸素原子を含んでいてもよいC
1~C
6(ペル)フルオロアルキル基からなる群から独立して選択され、Lは、結合又は二価の基であり、R
Fは、二価のフッ素化C
1~C
3架橋基である)
の少なくとも1種の界面活性剤[界面活性剤(F)]と
を含み、前記水性ラテックス中の前記ポリマー(F)は、ISO 13321によって測定される55~300nmの平均一次粒径を有する一次粒子の形態である、水性ラテックス。
【請求項2】
石油及びガス用途並びに自動車用途における、請求項1に記載の水性ラテックスの使用。
【請求項3】
コーティング用途における、請求項1に記載の水性ラテックスの使用。
【外国語明細書】