(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088961
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】アネキシンVの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20230620BHJP
C07K 1/36 20060101ALI20230620BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230620BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230620BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230620BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K1/36 ZNA
C12P21/02 C
A61P7/02
A61P9/00
A61K38/17
【審査請求】有
【請求項の数】68
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023042508
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2021112221の分割
【原出願日】2016-09-16
(31)【優先権主張番号】1516516.0
(32)【優先日】2015-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518088967
【氏名又は名称】アネキシン ファーマシューティカルズ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モクス, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ライヒ, ヤン クリストフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アネキシンA5(AnxA5)の配列を含む組換え的に発現された細胞内タンパク質の、細胞壁を持つ内毒素産生宿主細胞からの回収及び/または精製のためのプロセスを提供する。
【解決手段】プロセスは、細胞内タンパク質を宿主細胞から放出させることを含み、該細胞内AnxA5タンパク質を放出させる工程が、非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施されることを特徴とし、好ましくは、該プロセスは、AnxA5タンパク質の該宿主細胞からの放出後に、その回収及び/または精製のためにいかなる遠心分離工程も含まず、かつ/またはAnxA5タンパク質は、任意のクロマトグラフ樹脂に一時的に結合した場合を除いて該プロセス全体を通して溶液中にとどまる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アネキシンA5(AnxA5)の配列を含む組換え的に発現された細胞内タンパク質の、細胞壁を持つ内毒素産生宿主細胞からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、前記プロセスは、前記細胞内タンパク質を前記宿主細胞から放出させることを含み、
前記細胞内AnxA5タンパク質を放出させる前記工程が、非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施されることを特徴とし、
好ましくは、前記プロセスは、前記AnxA5タンパク質の前記宿主細胞からの放出後に、その前記回収及び/または精製のためにいかなる遠心分離工程も含まず、かつ/または前記AnxA5タンパク質は、任意のクロマトグラフ樹脂に一時的に結合した場合を除いて前記プロセス全体を通して溶液中にとどまる、プロセス。
【請求項2】
前記非イオン性洗剤は、ポリソルベート、好ましくはTween20及びTween80から選択されるポリソルベート、最も好ましくはTween80である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記細胞内AnxA5タンパク質を放出させる前記工程は、アネキシンA5と内毒素との間の前記結合を低減するまたは防止するのに有効な量の非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記細胞内AnxA5タンパク質を放出させる前記工程は、0.01~10%(w/w)非イオン性洗剤、例えば、0.02~5%(w/w)、0.05~2%(w/w)、または約1%(w/w)非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施される、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記プロセスは、前記細胞内AnxA5タンパク質を前記宿主細胞から放出させることを含み、
前記細胞内AnxA5タンパク質を前記宿主細胞から放出させる時点での、または前記細胞内AnxA5タンパク質を前記宿主細胞から放出させた後であるが、いずれのさらなるクロマトグラフ精製が行われる前の、前記ホモジナイゼーション緩衝液中の遊離カルシウムイオン濃度は、10mM未満、好ましくは5mM、1mM未満、より好ましくは500μM未満、または実質的にゼロであり、かつ/あるいは
前記ホモジナイゼーション緩衝液は、前記細胞内AnxA5タンパク質を放出させた後にカルシウム金属イオンキレート剤を含むか、またはそれを含むように改変される、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含む組換え的に発現された細胞内タンパク質の、細胞壁を有する宿主細胞からの回収及び/または精製のための請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAまたはその塩、EGTAまたはその塩から選択され、最も好ましくはEDTAである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
遊離カルシウムイオンのレベル、及び/またはカルシウム金属イオンキレート剤の量は、アネキシンA5と前記宿主細胞の前記細胞壁の構成成分との間の前記結合を低減するまたは防止するのに有効である、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ホモジナイゼーション緩衝液は、(前記AnxA5タンパク質の前記放出の前または後に)0.01~500mM、例えば、0.05~100mM、0.5~20mM、1~15mM、2~10mM、または約4mMカルシウム金属イオンキレート剤を含むか、またはそれを含むように調整され、好ましくは、前記カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAである、請求項5~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記ホモジナイゼーション緩衝液は、請求項2、3または4のいずれかに記載のプロセスに従った非イオン性洗剤を含む、請求項5、6、7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記非イオン性洗剤は、Tween80である、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスは、組換え的に発現された細胞内AnxA5タンパク質の、前記宿主細胞の培養物からの回収及び/または精製を含み、前記培養物は、少なくとも100L、500L、1,000L、5,000L、または10,000Lの体積を有する、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
宿主細胞の前記培養物からのバイオマスを前記ホモジナイゼーション緩衝液中で、ホモジナイゼーション緩衝液1mLあたり約10gのバイオマスの濃度で混合する工程を含む、請求項1~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記細胞内AnxA5タンパク質を前記ホモジナイゼーション緩衝液中で前記宿主細胞から放出させる前記工程は、前記宿主細胞の前記細胞壁及び細胞膜障壁が破壊され、それによって、前記細胞内AnxA5タンパク質を放出するように、前記宿主細胞を溶解させる、分解させる、ホモジナイズする、超音波処理する、または圧力処理することを含み、任意選択で、この工程は、浸透圧ショック及び/または凍結-融解工程の使用を含まない、請求項1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記細胞内AnxA5タンパク質を前記宿主細胞から放出させる前記工程は、高圧ホモジナイゼーション、例えば、約400バール~約2,500バールで1サイクル以上の高圧ホモジナイゼーション、好ましくは約600バールのホモジナイゼーション3サイクル、または約800バールのホモジナイゼーション2サイクルを含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記細胞内AnxA5タンパク質を放出させる前記工程は、前記放出されたAnxA5タンパク質を含むバイオマスホモジネートを作り出す、請求項1~15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記バイオマスホモジネートは、宿主細胞タンパク質、宿主細胞壁構成成分、宿主細胞膜、宿主細胞核酸、及び内毒素からなる群から選択される前記不純物のうちの1つ以上(典型的にはすべて)をさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記バイオマスホモジネートを清澄化し、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む清澄化された生成物を生産する工程をさらに含む、請求項16または17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記バイオマスホモジネートを清澄化する前記工程は、前記ホモジネートのヌクレアーゼ、例えば、ヌクレアーゼA、好ましくはSerratia marescens由来のヌクレアーゼAでの処理を含み、任意選択で、前記ヌクレアーゼは、前記細胞内AnxA5タンパク質の放出の前に前記ホモジナイゼーション緩衝液に含められる、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記バイオマスホモジネートを清澄化する前記工程は(好ましくは、請求項18または19に記載のヌクレアーゼ処理に後続して)、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む前記バイオマスホモジネートをフィルター(セルロースまたはポリプロピレンフィルターなど、好ましくは、前記フィルターは、デプスフィルターであり、かつ/または好ましくは、前記フィルターは、4μm未満のカットオフを有する)に通す工程を含み、前記フィルター流出液は、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む、前記清澄化された生成物である、請求項18または19に記載のプロセス。
【請求項21】
第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、前記放出されたAnxA5タンパク質を陰イオン交換樹脂に供する工程をさらに含む、請求項1~20のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
請求項20に記載の方法によって生産された前記放出されたAnxA5タンパク質を含む、前記清澄化された生成物は、前記第1の陰イオン交換工程に供され、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記第1の陰イオン交換工程の前に、pH、伝導率、カルシウムイオンキレート剤のレベル及び非イオン性洗剤のレベルからなる群から選択される、前記放出されたAnxA5タンパク質の環境の1つ以上のパラメータが調整される、請求項21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記陰イオン交換工程に供される前記放出されたAnxA5タンパク質は、約6.9のpH、約2.8mS/cmの伝導率、約1mMのカルシウムイオンキレート剤濃度で製剤化され、非イオン性洗剤を使用して、例えば、0.01~1%(w/v)、より好ましくは約0.1%(w/v)の最終非イオン性洗剤濃度を得るように希釈される、請求項21~23のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記AnxA5タンパク質は、前記陰イオン交換工程中に結合し、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む前記第1の陰イオン交換生成物は、洗浄液及び/または溶出緩衝液を前記陰イオン交換樹脂に適用して、前記結合したAnxA5タンパク質を放出させることによって生産され、任意選択で、前記溶出緩衝液は、NaCl、例えば約300mM NaClを含む、請求項21~24のいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、前記AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、この方法は、
第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、前記AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む前記溶液を陰イオン交換樹脂に供することと、
前記第1の陰イオン交換生成物を直接または間接的に親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産することと、を含み、
好ましくは、前記AnxA5タンパク質は、任意のクロマトグラフ樹脂に一時的に結合した場合を除いて、いずれの先行または後続の工程も含む前記プロセス全体を通して溶液中にとどまる、プロセス。
【請求項27】
前記親和性クロマトグラフィー工程は、前記AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み、前記結合は、カルシウムイオンの存在によって促進される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記AnxA5タンパク質は、EDTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含有する溶出緩衝液を使用して、前記固定化ヘパリンから溶出される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、前記AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、この方法は、
前記AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む前記溶液を、Tween80の存在下で(好ましくは、0.1%Tween80の存在下で)ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産することを含み、
好ましくは、前記AnxA5タンパク質は、任意のクロマトグラフ樹脂に一時的に結合した場合を除いて、いずれの先行または後続の工程も含む前記プロセス全体を通して溶液中にとどまる、プロセス。
【請求項30】
前記放出されたAnxA5タンパク質を親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産する工程をさらに含む、請求項1~25のいずれかに記載のプロセス。
【請求項31】
請求項21~25のいずれかに記載の方法によって生産される、前記第1の陰イオン交換生成物中のAnxA5タンパク質が、前記親和性クロマトグラフィー工程に供される、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
(a)請求項16または17に記載の放出されたAnxA5タンパク質を含む、バイオマスホモジネートが、請求項18、19または20のいずれかに記載のプロセスによって清澄化され、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む清澄化された生成物を生産する工程と、
(b)請求項21~25のいずれかに従って第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、前記AnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、前記清澄化された生成物中の前記AnxA5タンパク質が、陰イオン交換樹脂に供される工程と、
(c)前記第1の陰イオン交換生成物中の前記AnxA5タンパク質が、請求項30または31に従って親和性クロマトグラフィー工程に供される工程と、を含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記親和性クロマトグラフィー工程は、前記AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み、任意選択で、前記結合は、カルシウムイオンの存在によって促進される、請求項30~32のいずれかに記載のプロセス。
【請求項34】
前記AnxA5タンパク質は、EDTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含有する溶出緩衝液を使用して、前記固定化ヘパリンから溶出される、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記第1の親和性クロマトグラフィー生成物は、前記放出されたAnxA5タンパク質及び、任意選択で、0.1~500mMの範囲の、より好ましくは約10mMのEDTAまたはEGTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含む、請求項30~34のいずれかに記載のプロセス。
【請求項36】
アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、前記AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、
前記プロセスが、陰イオン交換工程を行い、それによって、前記AnxA5タンパク質を前記組成物から回収及び/または精製するために、前記組成物を陰イオン交換樹脂に供することを含むことを特徴とし、
前記陰イオン交換工程が、追加の選択された金属イオンの存在下で実施されることをさらに特徴とし、
前記追加の選択された金属イオンは、前記カルシウム金属イオンキレート剤が前記選択された金属イオンに対して、前記陰イオン交換樹脂に対するその結合親和性よりも大きいが、カルシウムイオンに対するその結合親和性よりは小さい結合親和性を有するように選択され、
好ましくは、前記AnxA5タンパク質は、任意のクロマトグラフ樹脂に一時的に結合した場合を除いて、いずれの先行または後続の工程も含む前記プロセス全体を通して溶液中にとどまる、プロセス。
【請求項37】
前記カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAまたはその塩、EGTAまたはその塩から選択され、最も好ましくはEDTAである、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記カルシウム金属イオンキレート剤は、約0.1mM、0,5mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM以上もしくは少なくとも0.1mM、0,5mM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM以上を超過して、及び/またはその濃度で、前記組成物中に存在する、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記選択された金属イオンは、Mg2+イオンなどの二価陽イオンである、請求項36~38のいずれかのいずれかに記載のプロセス。
【請求項40】
前記選択された金属イオンは、前記陰イオン交換工程中、前記組成物を前記陰イオン交換樹脂に供する前記プロセス中に前記カルシウムイオンキレート剤と前記陰イオン交換樹脂との間の相互作用を低減するまたは防止するのに有効な量で存在する、請求項36~39のいずれかに記載のプロセス。
【請求項41】
前記選択された金属イオンは、前記陰イオン交換工程中、前記カルシウムイオンキレート剤の存在下での前記AnxA5タンパク質の前記陰イオン交換樹脂への結合を増加させるのに有効な量で存在して、それによって、前記陰イオン交換工程の素通り画分におけるAnxA5タンパク質の損失を、選択された金属イオンが前記陰イオン交換工程中に存在しない場合に観察される損失のレベルと比較して低減する、請求項36~40のいずれかに記載のプロセス。
【請求項42】
前記選択された金属イオンは、前記陰イオン交換工程中、(例えば、前記組成物を前記陰イオン交換樹脂に供する前に、前記AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む前記組成物に添加することによって)約1~約100mM、例えば、約2~約50mM、約5~約25mM、約10~約15mMまたは約12.5mMの濃度で存在する、請求項36~41のいずれかに記載のプロセス。
【請求項43】
前記カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAであり、前記選択された金属イオンは、Mg2+イオンであり、好ましくは、Mg2+イオン対EDTAのモル比は、0.5:1~2:1の範囲、最も好ましくは少なくとも1:1以上である、請求項36~42のいずれかに記載のプロセス。
【請求項44】
前記AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含み、前記陰イオン交換樹脂に供される、前記組成物は、
前記AnxA5タンパク質を親和性クロマトグラフィー工程に供し、前記AnxA5タンパク質をカルシウムイオンキレート剤で溶出し、それによって、前記AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物である親和性クロマトグラフィー生成物を生産する前記工程を含む、先行するプロセスの直接または間接的生成物である、請求項36~43のいずれかに記載のプロセス。
【請求項45】
前記先行する親和性クロマトグラフィー工程は、前記AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み、任意選択で、前記結合は、カルシウムイオンの存在によって促進される、請求項44に記載のプロセス。
【請求項46】
前記AnxA5タンパク質は、EDTAまたはEGTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含有する溶出緩衝液を使用して、前記固定化ヘパリンから溶出される、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記直接または間接的生成物の前記陰イオン交換工程への前記適用の前に、前記先行する親和性クロマトグラフィー工程と前記陰イオン交換工程との間に透析工程は存在せず、かつ/または先行する親和性クロマトグラフィー工程の前記生成物からのカルシウムイオンキレート剤の除去は行われない、請求項44~46のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項48】
前記選択された金属イオンは、前記陰イオン交換工程の前に、またはその最中に前記組成物に添加される、請求項36~47のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項49】
前記プロセスは、請求項36~48のいずれか1項に記載の陰イオン交換工程を含む、請求項1~35のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項50】
アネキシンA5(AnxA5)の配列を含む組換え的に発現された細胞内タンパク質の、細胞壁を持つ宿主細胞、または請求項12に記載のその培養物からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、
(a)前記プロセスは、請求項1~4のいずれか1項により、前記細胞内タンパク質を、非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で前記宿主細胞から放出させることを含み、
(b)任意選択で、前記放出工程は、請求項13~17のいずれか1項に従い、
(c)さらに任意選択で、前記プロセスは、請求項18~20のいずれかにより前記バイオマスホモジネートを清澄化する工程を含み、
(d)前記プロセスは、請求項21~25のいずれかに従って第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、前記放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、前記放出されたAnxA5タンパク質を直接または間接的に、任意選択でカルシウムイオンキレート剤の存在下で、陰イオン交換樹脂に供する前記工程をさらに含み、
(e)前記プロセスは、請求項26~35のいずれかに従って、前記放出されたAnxA5タンパク質を直接または間接的に親和性クロマトグラフィー工程に供する前記工程をさらに含み、
(f)前記親和性クロマトグラフィー工程の前記生成物は、前記AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物であり、
(g)前記AnxA5タンパク質及び前記カルシウム金属イオンキレート剤を含む、前記親和性クロマトグラフィー工程の前記直接または間接的生成物は、請求項36~49のいずれかに従って陰イオン交換工程に供され、
好ましくは、工程(a)~(g)のうちで、遠心分離及び/または透析から選択される1つ以上の工程を含むもの、またはそれが介在するものは何もなく、より好ましくは、前記AnxA5タンパク質は、前記プロセス全体を通して、陰イオン交換及び親和性クロマトグラフィー固相に一時的に結合した場合を除いて可溶性のままである、プロセス。
【請求項51】
前記プロセスは、好ましくは請求項1~50のいずれかに記載のプロセスの終わりに、濃縮、緩衝液変更、コンディショニング及び濾過(滅菌濾過など)からなる群から選択される1つ以上のさらなる工程、ならびに任意選択で、前記AnxA5タンパク質含有生成物を滅菌容器中に貯蔵する最終工程を含む、請求項1~50のいずれかに記載のプロセス。
【請求項52】
前記さらなる工程のうちの1つは、透析濾過であり、任意選択で、前記透析濾過工程の前記生成物は、少なくとも約1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、50 100mg/mLまたはそれを超える濃度で前記AnxA5タンパク質を含有する、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
前記濾過は、0.45~0.2μmフィルターまたは0.22μmフィルターを使用し、好ましくは、滅菌濾過工程である、請求項51または52に記載のプロセス。
【請求項54】
滅菌濾過は、前記AnxA5タンパク質含有生成物を滅菌容器中に貯蔵する前の最終精製工程である、請求項51~53のいずれかに記載のプロセス。
【請求項55】
前記プロセスは、約150mM NaCl、約1mM CaCl2、約0.05%(w/w)ポリソルベート(Tween80など)または他の非イオン性洗剤を含む、約pH7.4の無リン酸緩衝液(ビス-トリスまたはトリス緩衝液など)中に最終滅菌AnxA5タンパク質生成物を提供するのに必要とされる工程を含み、任意選択で、最終滅菌AnxA5タンパク質生成物中の前記AnxA5タンパク質の濃度は、約10mg/mLである、請求項1~54のいずれかに記載のプロセス。
【請求項56】
前記プロセスは、存在する前記NaCl濃度がAnxA5タンパク質を主として単量体である形態で維持する、最終滅菌AnxA5タンパク質生成物を提供する、請求項1~55のいずれかに記載のプロセス。
【請求項57】
前記プロセスは、宿主細胞培養物1Lあたり1g超のAnxA5タンパク質、より好ましくは少なくとも約1.5g/L、さらにより好ましくは約2~約4g/Lの範囲の全収率を提供する、請求項1~56のいずれかに記載のプロセス。
【請求項58】
前記プロセスは、前記宿主細胞培養物中からに存在する約24重量%の前記AnxA5タンパク質の、AnxA5タンパク質の全回収率を提供する、請求項1~57のいずれかに記載のプロセス。
【請求項59】
前記プロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり100、90、80、70、60、50、40、30、20ng以下よりも低いレベルの宿主細胞タンパク質(前記組換え的に発現されたAnxA5タンパク質以外の)を含む生成物を提供する、請求項1~58のいずれかに記載のプロセス。
【請求項60】
前記プロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり100、90、80、70、60、50 45、40、35、30、35、20、15未満、好ましくは10、5または1EU未満の内毒素含量を含む生成物を提供し、かつ/あるいは好ましくは、前記プロセスは、単位剤形にある生成物を提供し、前記生成物は、単位用量あたり100、90、80、70、60、50 45、40、35、30、35、20、15未満、好ましくは10、5または1EU未満を含有する、請求項1~59のいずれかに記載のプロセス。
【請求項61】
前記プロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり1,000pg未満、好ましくはAnxA5タンパク質1mgあたり100pg未満、より好ましくはAnxA5タンパク質1mgあたり10pg未満の宿主細胞核酸レベルを含む生成物を提供する、請求項1~60のいずれかに記載のプロセス。
【請求項62】
AnxA5タンパク質を含む組成物であって、請求項1~61のいずれかに記載のプロセスの前記直接または間接的生成物である(またはそれによって直接もしくは間接的に入手可能である)、組成物。
【請求項63】
前記組成物は、請求項50に記載の、または請求項50に従属する場合の請求項51に記載のプロセスの前記直接または間接的生成物である(またはそれによって直接もしくは間接的に入手可能である)、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
少なくとも約1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、50 100mg/mLまたはそれを超える濃度で前記AnxA5タンパク質を含有する、請求項62または63に記載の組成物。
【請求項65】
前記組成物は、滅菌濾過工程に供された、かつ/または滅菌組成物である、請求項62~64のいずれかに記載の組成物。
【請求項66】
滅菌容器中に貯蔵される、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
前記組成物は、約150mM NaCl、約1mM CaCl2、約0.05%(w/w)ポリソルベート(Tween80など)または他の非イオン性洗剤を含む、約pH7.4の無リン酸緩衝液(ビス-トリスまたはトリス緩衝液など)中に滅菌AnxA5タンパク質生成物を含み、任意選択で、最終滅菌AnxA5タンパク質生成物中の前記AnxA5タンパク質の濃度は、約10mg/mLである、請求項62~66のいずれかに記載の組成物。
【請求項68】
存在する前記前記NaCl濃度は、AnxA5タンパク質を主として単量体である形態で維持する、請求項62~67のいずれかに記載の組成物。
【請求項69】
AnxA5タンパク質1mgあたり20ng未満のレベルで宿主細胞タンパク質などの非AnxA5タンパク質を含み、任意選択で、前記宿主細胞は、グラム陽性またはグラム陰性細胞などの原核細胞であり、特に、内毒素産生グラム陰性細菌細胞であり得、さらに任意選択で、前記宿主細胞タンパク質は、前記組成物中で(AnxA5タンパク質1mgあたり20ng未満にもかかわらず)検出可能レベルである、請求項62~68のいずれかに記載の組成物。
【請求項70】
AnxA5タンパク質1mgあたり100、50、20、10、5または1EU未満の内毒素含量を含み、任意選択で、内毒素は、前記組成物中で(AnxA5タンパク質あたり100、50、20、10、5または1EU未満にもかかわらず)検出可能レベルである、請求項62~69のいずれかに記載の組成物。
【請求項71】
単位剤形にある生成物であり、単位用量あたり100、50、20、10、5または1EU未満を含有し、任意選択で、内毒素は、前記組成物中で(単位用量あたり100、50、20、10、5または1EU未満にもかかわらず)検出可能レベルである、請求項62~70のいずれかに記載の組成物。
【請求項72】
AnxA5タンパク質1mgあたり1,000pg、100pg、または10pg未満の、宿主細胞核酸レベルなどの核酸レベルを含み、任意選択で、前記宿主細胞は、グラム陽性またはグラム陰性細胞などの原核細胞であり、特に、内毒素産生グラム陰性細菌細胞であり得、さらに任意選択で、宿主細胞核酸は、前記組成物中で(AnxA5タンパク質1mgあたり1,000pg、100pg、または10pg未満にもかかわらず)検出可能レベルである、請求項62~71のいずれかに記載の組成物。
【請求項73】
前記組成物中のグルコノイル化AnxA5タンパク質のレベルは、前記生成物中のAnxA5タンパク質の全含量の0.5~30%、または0.5~20%、または0.5~15%、または0.5~10%の範囲内である、請求項62~72のいずれかに記載の組成物。
【請求項74】
前記組成物中のグルコノイル化AnxA5タンパク質のレベルは、生成物は、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%未満であり、好ましくは、実質的に0%である、請求項62~73のいずれかに記載の組成物。
【請求項75】
前記AnxA5タンパク質は、Hisタグを含有せず、かつ/または1つ以上のRGDモチーフを含有しない、請求項62~74のいずれかに記載の組成物。
【請求項76】
前記組成物は、薬学的に許容される及び/または獣医学的に許容される組成物である、請求項62~75のいずれかに記載の組成物。
【請求項77】
薬品において使用するための請求項62~76のいずれかに記載の組成物。
【請求項78】
治療を必要とするヒトまたは動物対象に請求項62または76のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、前記治療を必要とするヒトまたは動物対象を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の製造のためのプロセスに関する。より特定すると、本プロセスは、AnxA5タンパク質の、とりわけ細菌宿主細胞などの組換え宿主細胞からの回収及び/または精製のためのものである。本明細書に記載されるプロセスは、非常に効率的かつ費用効果あり、薬品グレードのAnxA5タンパク質生成物を迅速かつ好都合に生産するために商業規模で(例えば、約1000L以上の培養体積を有する組換え宿主細胞培養物で)使用することができる。
【背景技術】
【0002】
先行公開されたと思われる文献の本明細書での列挙または考察は、必ずしも、その文献が最新技術の一部であること、または共通一般知識であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0003】
根底にある動脈硬化巣から形成される、アテローム性血栓症は、急性冠動脈疾患、脳血管及び末梢動脈閉塞症を含む、臨床的に明らかな虚血性心血管疾患の大多数の裏に潜む主要な病原性機構である。Cederholm and Frostegard,2007,Drug News Perspect.,20(5):321-6で考察されるように、アネキシンスーバーファミリーのメンバーである、アネキシンA5(以前はアネキシンVとして知られた)は、強力かつ独特の抗血栓性特性を備えたタンパク質である。アネキシンA5が発揮する抗血栓効果は、リン脂質、特にホスファチジルセリンの機械的遮蔽により、凝固反応へのそれらの可用性を低減することによって、主に媒介されると考えられている。しかしながら、その抗血栓機能に潜在的に寄与するアネキシンA5の他の興味深い特性、とりわけ、表面で発現される組織因子の下方制御、またはスルファチド及びヘパリンなどのホメオスタシスに関与する追加のリガンドとの相互作用、ならびにウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子の上方制御が報告された。大きな脈管構造及び胎盤微小循環に対する体内での内因性抗血栓性系のメンバーとしてのアネキシンA5の生物学的重要性もまた示唆されてきた。
【0004】
実際、アネキシンA5は、薬品において、直接的な治療効果を提供する上での広範な有用性を有することが知られている。例としては、アネキシンA5の下記の使用が挙げられる。
WO2005/099744に記載されるようなアテローム性血栓症及び/またはプラーク破裂の予防のため(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、
WO2009/077764に記載されるような血管機能不全の治療、虚血性疼痛の低減及び/または血管疾患の治療のため(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、
WO2009/103977に記載されるような再狭窄の予防または治療のため(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、
WO2010/069605に記載されるような、酸化カルジオリピン(oxCL)の活性の阻害において使用するため、及び心血管疾患、自己免疫疾患または炎症性病態を治療する、予防する及び/またはその発症のリスクを低減するため(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、ならびに
WO2012/136819に記載されるような、血管手術、とりわけ末梢血管手術後の合併症などの、外科的介入後の周術期または術後合併症の予防及び/または低減のため(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0005】
かくして、アネキシンA5は、治療上の関心及び可能性が高いタンパク質を代表する。したがって、(例えば、アネキシンA5タンパク質を、約1000L以上の培養体積を有する組換え宿主細胞培養物から収集するために)商業規模の生産に合わせて規模拡大し、それに好都合に適用することができる効率的かつ費用効果のあるプロセスによって、治療グレードのアネキシンA5タンパク質を生産するための有効な方法が、差し迫って必要とされている。
【0006】
E.coliなどの標準的な細菌宿主細胞においてアネキシンA5を組換え的に発現させる際の特定の課題は、宿主細胞由来の構成成分による、特に内毒素による汚染である。内毒素は、共有結合によって連結された脂質ならびにO抗原、外部コア及び内部コアで構成される多糖で形成されているリポ多糖(LPS)である。LPSは、グラム陰性菌の外膜において見出され、動物において強力な免疫応答を引き出す。アネキシンA5は、負荷電を持つリン脂質を含有する生体膜への強力な結合を特徴とし、このため、内毒素に対して特に高い親和性を有する。このことは、内毒素産生宿主からのアネキシンA5の商業規模での大規模生産をより困難にしている。
【0007】
現在のところ、(例えば、アネキシンA5タンパク質を、約1000L以上の培養体積を有する組換え宿主細胞培養物から収集するために)商業規模の生産に合わせて規模拡大し、それに好都合に適用することができる効率的かつ費用効果のあるプロセスによって、治療グレードのアネキシンA5タンパク質を生産するようなプロセスは全く提供されておらず、内毒素汚染に対処するやり方でのプロセスはなおさらである。
【0008】
1991年、Kumarは、Annexin A5の生産及び精製のためのプロセスの開発について報告した(Department of Chemical Engineering College of Engineering University of Arkansas(Fayetteville,AR)に提出された 「Expression,Purification,and Large-Scale Production of the Human Recombinant Annexin-V Protein」と題されるUndergraduate Honors College Thesis、https://uarkive.uark.edu/xmlui/handle/10826/981にてオンラインで入手可能)。Kumarのプロセスは、アネキシンA5を100mL培養物フラスコ中で組換えE.coli宿主細胞において発現させ、細胞をペレット化し、pH7.2の50mMトリスHCl、10mM CaCl2からなるホモジナイゼーション/溶解緩衝液の存在下で細胞を再懸濁させ、次いで超音波処理を介して細胞を分解して、アネキシンA5タンパク質を放出させることを伴った。CaCl2の添加により、カルシウム依存性様態で、細胞破片における細胞膜へのアネキシンA5の結合を引き起こし、次いで混合物は、20分間の第1の精製遠心分離工程に供され、その後、上清が破棄され、細胞破片を含有するペレット及び結合したアネキシンA5が回収された。アネキシンA5は、EDTAを使用してペレットから放出され、これに続いて、20分間の第2の精製遠心分離工程及び上清中のアネキシンA5の収集が行われた。次いで、この後に一晩の透析を行って、アネキシンA5用の緩衝液をpH8.0のトリスHClに変更してから、DEAE-セファロースカラムでの陰イオン交換、及び塩勾配を用いたアネキシンA5の溶出のさらなる工程が行われた。
【0009】
本出願者は、Kumarの方法に多数の制限及び欠点があることに気づいた。第1に、それは、100mL培養物を使用して小規模で実証されるにすぎず、精製プロセス中に2つの別個の遠心分離工程を必要とする。これは、高体積培養物(例えば、1000L以上)を使用する商業プロセスには効率的なやり方で規模拡大できない。下記でさらに考察されるように、かかる高体積の流体の遠心分離は、極めて時間を浪費し、費用がかかる。それでも、遠心分離は、細胞破片における膜へのアネキシンA5のカルシウム誘導性結合を用いることに依存するKumarの手法において、予備的捕捉工程として必要とされる。第2に、本出願者は、Kumarの方法が、例えば、第1の精製遠心分離工程の生成物の上清中の結合していない可溶性アネキシンを処分することによって、アネキシンA5タンパク質の高損失につながることに気づいた。第3に、Kumarの方法は、治療的使用に好適なレベルまで内毒素を除去することが全くできず、最終生成物中の内毒素レベルに関して検査が何ら行われないことは注目に値する。かくして、Kumarの方法は、効率的かつ時間効果のある様態で商業的生産に規模拡大することは不可能であり、アネキシンA5タンパク質の高損失(すなわち低収率)につながり、治療的使用に好適でない低グレードのタンパク質精製をもたらす。
【0010】
2008年、University of Washington Medical CenterのDepartment of Laboratory Medicine、Tait Research Laboratoryは、「Production of Recombinant Annexin V from plasmid pET12a-PAPI」と題される文献を公開した。それは、https://depts.washington.edu/labweb/Faculty/Tait/108.pdfにてオンラインで入手可能である。記載された方法は、Kumarによって提案された手法と非常に類似している。この方法は、1L培養物中で組換えE.coli宿主細胞においてアネキシンA5を発現させ、細胞をペレット化し、pH7.2の50mMトリスHCl、10mM CaCl2からなるホモジナイゼーション/溶解緩衝液の存在下で細胞を再懸濁させ、次いで超音波処理を介して細胞を分解して、アネキシンA5タンパク質を放出させる。CaCl2の添加により、カルシウム依存性様態で、細胞破片における細胞膜へのアネキシンA5の結合を引き起こし、次いで混合物は、20分間の第1の精製遠心分離工程に供され、その後、上清が破棄され、細胞破片を含有するペレット及び結合したアネキシンA5が回収された。アネキシンA5は、EDTAを使用してペレットから放出され、続いて、20分間の第2の精製遠心分離工程及び上清中のアネキシンA5の収集が行われた。次いで、この後に透析工程を行って、アネキシンA5用の緩衝液をpH8.0のトリスHClに変更してから、Mono Qカラムでの陰イオン交換、及び塩勾配を用いたアネキシンA5の溶出のさらなる工程が行われた。本出願者は、Kumarの方法における多数の制限及び欠点がこの方法にも当てはまることに気づいた。
【0011】
2014年、アネキシンA5の精製のためのさらなる方法が、「Production of recombinant human annexin V by fed-batch cultivation」と題されるMarder et al.,2014,BMC Biotechnology,14:33において提案された。Marderらは、その方法が、組換えヒトアネキシンVを大規模に生産する流加法であることを報告し、この方法は、組換えヒトアネキシンA5の商業的有用性を、例えば体内画像化研究における用途に拡大し得ることが提案される。
【0012】
それでも再び、Marderらの方法は、Kumarによる1991年の方法及びUniversity of Washington Medical CenterのDepartment of Laboratory Medicineによる2008年の方法と非常に類似している。Marderらは、2L槽に保持された1L培養物中で、組換えE.coli宿主細胞においてアネキシンA5を発現させる。考察されるように(Marderらの「the Methods」の「the Purification」節で)、収集された細胞は、pH7.2の50mMトリスHCl、10mM CaCl2からなるホモジナイゼーション/溶解緩衝液(緩衝液A)の存在下で再懸濁させられ、次いで細胞は、超音波処理を介して分解されて、アネキシンA5タンパク質を放出させた。CaCl2の添加により、カルシウム依存性様態で、細胞破片における細胞膜へのアネキシンA5の結合を引き起こし、次いで混合物は、30分間の第1の精製遠心分離工程に供され、その後、上清が破棄され、細胞破片を含有するペレット及び結合したアネキシンA5が回収された。アネキシンA5は、EDTAを使用してペレットから放出され、続いて、30分間の第2の精製遠心分離工程及び上清中のアネキシンA5の収集が行われた。次いで、この後に透析工程を行って、アネキシンA5用の緩衝液をpH8.0のトリスHClに変更してから、20分間の第3の精製遠心分離工程を行って残留沈殿物を除去し、次いでMono Qカラムでの陰イオン交換、及び塩勾配を用いたアネキシンA5の溶出のさらなる工程が行われた。再び、本出願者は、Kumarの方法における多数の制限及び欠点がこの方法にも当てはまることに気づいた。
【0013】
Kumarによる1997年の方法及びUniversity of Washington Medical CenterのDepartment of Laboratory Medicineによる2008年の方法、及びMarderによる2014年の方法は、当該技術分野がアネキシンA5生成物の商業目的での生産及び精製への手法を開発及び確立したことを明確に示すが、これらの方法における欠点は、容易に利用可能な代替手段がないまま当該技術分野で理解されなかった。
【0014】
アネキシンA5回収のためのこれらの先行技術の方法のすべては、研究室規模のプロセスでのみ実証されたものであり、規模拡大に向けて採用すること、またはより大きな規模で利用可能な業界標準もしくは機器を考慮に入れることができない。本プロセスは、それらを大規模な製造に不適当にする固有の不利益を有する。特に、これらの先行技術のプロセスの非常に制限的な特長は、アネキシンA5が代替的に溶液中にあるかまたは沈殿物としてのものである場合に本プロセスが必要とする2回または(Marderらによる2014年の方法の場合)3回の高G力遠心分離である。2回のみの遠心分離工程を1つの1000Lバッチのプロセシングに適用することは、いかなる装備の整ったバイオ製造施設においても1日12時間のシフトで約12週間を要するであろうプロセスをもたらすことが合理的に推定され得、これは許容されない高い生産費用をもたらす。比較例1を参照されたい。
【0015】
したがって、商業規模で運転される製造プロセスのために(例えば、約1000L以上の培養体積を有する組換え宿主細胞培養物)、効率的かつ費用効果のあるアネキシンA5の精製及び回収のための方法論的工程を提供すること、またさらに、先行技術のプロセスが被る収率損失及び低純度(内毒素汚染を含む)を克服することが、本発明の目的である。
【0016】
本発明の方法によって生産される薬品グレードのアネキシンA5生成物を提供することもまた本発明の目的である。
【発明の概要】
【0017】
本出願者は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の生産のためのプロセスに対して多数の開発及び改善を行ってきて、既存のプロセスを改善するために独立して使用及び/または組み合わせて使用され得るいくつかの非常に効率的な精製工程を考案した。最も好ましくは、アネキシンA5の生産のための本プロセスは、開発されたプロセス工程のすべてを含む。
【0018】
特に、本出願者の開発は、AnxA5タンパク質が好ましくは、(クロマトグラフ樹脂に一時的に結合した場合を除いて)プロセス全体を通して溶液中にとどまる方法を介して、AnxA5タンパク質の回収のための非常に効率的なプロセスの可能性を提供する。つまり、本出願者の開発は、好ましくは、AnxA5タンパク質の宿主細胞からの放出の後にいかなる精製遠心分離工程をAnxA5タンパク質に適用することも要せずに行われ得る、AnxA5タンパク質の回収のためのプロセスを提供する。沈殿物を収集するための高G力遠心分離は、大規模なバイオ薬品製造プラントにおいて適用することが困難で、時間がかかり、かつ高価であるため、これは莫大な工業上の有益性を有する。さらに、これは、アネキシンA5が内毒素などの望ましくない汚染物質とともに共精製されることをしばしば引き起こし得る、膜(例えば宿主細胞膜及び/またはリポソーム)に結合するアネキシンA5の能力に依存することなく、本発明のプロセスがすべて行われ得ることを意味する。
【0019】
したがって、本プロセスは、1つ以上の精製遠心分離工程によって引き起こされる隘路を伴わずに、非常に時間効率的なやり方で宿主細胞の高体積(例えば、約100L、500L、1,000L、5,000L、10,000L、50,000L、100,000Lまたはそれを超える)培養物のプロセシングに適用することができる。例えば、処理される宿主細胞培養物1,000Lあたり精製プロセスが5、4、3、2週間で、またはそれ未満、最も典型的には1週間未満で実施されることが好ましくあり得る。なおもさらに、本プロセスを用いて、驚くべきことに、より時間のかかる効率性の低い先行技術のプロセスと比較して、改善された収率及び/または改善された純度(例えば、改善された内毒素除去を含む)を提供することができる。
【0020】
したがって、本発明の第1の態様は、宿主細胞からのタンパク質放出の改善された工程を提供する。より具体的には、それは、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含む組換え的に発現された細胞内タンパク質の、細胞壁を持つ内毒素産生宿主細胞からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、該プロセスは、細胞内タンパク質を宿主細胞から放出させることを含み、細胞内AnxA5タンパク質を放出させる工程が、非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施されることを特徴とする、プロセスを提供する。好ましくは、非イオン性洗剤は、ポリソルベート、より好ましくはTween20及びTween80から選択されるポリソルベート、最も好ましくはTween80である。
【0021】
本出願者はまた、精製工程の順次の追加に伴い収率の損失が増加し続ける(生成物が各工程で失われるため)従来の方法とは対照的に、陰イオン交換工程及びヘパリン親和性クロマトグラフィー工程の組み合わせが、ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程単独でも得られる高純度を、ただし実質的に増加した収率を伴って(すなわち回収率は、約30~40%から約70~90%に増加する)、達成するという驚くべき有益性を有することを発見した(下記の実施例2でさらに考察される)。これは、精製工程の組み合わせから通常予想されるであろうものとは正反対である。
【0022】
したがって、本発明第2の態様は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液からの回収及び/または精製のためのプロセスを提供し、本方法は、
第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液を陰イオン交換樹脂に供することと、
第1の陰イオン交換生成物を直接または間接的に親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産することと、を含む。
【0023】
好ましくは、本発明の第2の態様のプロセスに従って、親和性クロマトグラフィー工程は、AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み得、任意選択で、この結合は、カルシウムイオンの存在によって促進され、さらに任意選択で、AnxA5タンパク質は、EDTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含有する溶出緩衝液を使用して、固定化ヘパリンから溶出される。
【0024】
それに加えて、実施例3で考察されるように、本出願者は、Tween80がヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に対して特に有利な効果を有する(Tween20などの他のTweensを含めた、他の非イオン性洗剤と比較して)ことを発見した。Tween 80を、ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に使用される緩衝液中に例えば0.1%(w/v)前後で組み込むことは、AnxA5タンパク質の単一ピークでの溶出を補助し、圧力を低減し、沈殿を防止し得る。
【0025】
したがって、本発明第3の態様は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液からの回収及び/または精製のためのプロセスを提供し、本方法は、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物(本明細書で考察される、第1の陰イオン交換クロマトグラフィー捕捉工程の直接または間接的生成物である場合もそうでない場合もある)を含む溶液を、Tween80の存在下で(好ましくは約0.1w/v%Tween80の存在下で)ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産することを含む。
【0026】
本発明の第4の態様は、カルシウム金属イオンキレート剤(例えば、EDTA)が陰イオン交換工程の有効性に悪影響を及ぼし得るという本出願者の気づきに基づく。遊離EDTA(または他のキレート剤)は、陰イオン交換官能基に直接結合し得、それによって、陰イオン交換工程によって達成される容量、及びさらには分離も低減する。他方で、陰イオン交換工程前にカルシウム金属イオンキレート剤を除去しようとする試みは、時間を浪費し、しがたって費用もまた増加させる。したがって、緩衝液交換のために緩徐な透析工程を伴う先行技術の方法は、非効率的である。さらに、陰イオン交換工程中にカルシウム金属イオンキレート剤をAnxA5生成物に組み込む際に、AnxA5タンパク質の、内毒素を含む不純物へのカルシウム媒介性結合を防止するために重要な構成要素であり得る。したがって、カルシウムイオンキレート剤の陰イオン交換樹脂への結合を遮断または低減し、陰イオン交換工程が、透析に関連する不都合及び費用を伴わずに、また陰イオン交換工程中のカルシウム金属イオンキレート剤の有益な効果を阻止することなく行われることを可能にする、添加剤を導入することは、好都合かつ効果的であろう。
【0027】
本出願者は、陰イオン交換の前にAnxA5タンパク質生成物へのまたは1種類以上の追加の選択された金属イオンの組み込みによってこれが達成され得ることに気づき、この追加の選択された金属イオンは、カルシウム金属イオンキレート剤が選択された金属イオンに対して、陰イオン交換樹脂に対するその結合親和性よりも大きいが、カルシウムイオンに対するその結合親和性よりは小さい結合親和性を有するように選択される。適切な追加の金属イオンの選択は、カルシウムイオンキレート剤の性質及び陰イオン交換樹脂の性質に左右されるであろう。例えば、EDTAをカルシウムイオンキレート剤として使用する場合、Mg2+イオンが一般に本発明の目的を達成するのに好適であり、陰イオン交換工程の前にAnxA5タンパク質生成物に添加され得る。
【0028】
したがって、本発明の第4の態様は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、
該プロセスが、陰イオン交換工程を行い、それによって、AnxA5タンパク質を組成物から回収及び/または精製するために、組成物を陰イオン交換樹脂に供することを含むことを特徴とし、
該陰イオン交換工程が、追加の選択された金属イオンの存在下で実施されることをさらに特徴とし、
この追加の選択された金属イオンは、カルシウム金属イオンキレート剤が選択された金属イオンに対して、陰イオン交換樹脂に対するその結合親和性よりも大きいが、カルシウムイオンに対するその結合親和性よりは小さい結合親和性を有するように選択される、プロセスを提供する。
【0029】
本発明の第5の態様は、AnxA5タンパク質を含む組成物を提供し、この組成物は、本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれかによるプロセスの直接または間接的(またはそれによって直接または間接的に得ることができる)生成物である。任意選択で、組成物は、薬学的に許容される及び/または獣医学的に許容される組成物である。
【0030】
本発明の第6の態様もまた、薬品において使用するための本発明の第5の態様の組成物を提供する。別の言い方をすれば、本発明の第6の態様は、治療を必要とするヒトまたは動物に、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0031】
本明細書に記載されるいずれの方法または組成物も、本明細書に記載されるいずれの他の方法または組成物に関して実施され得ることが企図される。
【0032】
特許請求の範囲及び/または本明細書において「含む(comprising)」という用語と併用される場合の「a」または「an」という語の使用は、「1つ」を意味し得るが、それはまた、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つよりも多く」の意味とも一貫している。
【0033】
本発明のこれらの及びさらなる態様は、次の説明及び添付の図面と併せて考慮するときによりよく認識及び理解されるであろう。しかしながら、次の説明は、本発明の種々の態様及び実施形態ならびにそれらの多数の具体的な詳細を示しながらも、限定ではなく例示として与えられていることが理解されるべきである。本発明の範囲内で、その趣旨から逸脱することなく多くの置換、改変、追加及び/または再配置が行われてよく、本発明は、すべてのかかる置換、改変、追加及び/または再配置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1-1】ヒトアネキシンA5の配列である、配列番号1の配列を示す。
【
図1-2】ヒトアネキシンA5の配列である、配列番号1の配列を示す。
【
図2】アネキシンA5の例となる完全な製造プロセスの概略的流れ図を示す。
【
図3】例となるAX捕捉クロマトグラフィーについてのプロセス流れ図を提供する。
【
図4】例となる中間親和性クロマトグラフィーについてのプロセス流れ図を示す。
【
図5】例となるAX精錬クロマトグラフィー工程についてのプロセス流れ図を示す。
【
図6】アネキシンA5の例となる限外/透析濾過及び製剤化についてのプロセス流れ図を示す。
【
図7A】アネキシンA5のヘパリン親和性クロマトグラフィー精製に及ぼすTween80の影響を実証する、実施例3の結果を示し、このうち
図7Aは、試験1(Tween80を含まない)についての結果を示し、
図7Bは、試験2(Tween80を含む)についての結果を示す。
【
図7B】アネキシンA5のヘパリン親和性クロマトグラフィー精製に及ぼすTween80の影響を実証する、実施例3の結果を示し、このうち
図7Aは、試験1(Tween80を含まない)についての結果を示し、
図7Bは、試験2(Tween80を含む)についての結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
A.アネキシンA5タンパク質
本発明は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の精製及び/または回収のための方法、ならびにこのようにして生産された、AnxA5タンパク質を含む生成物及び製剤に関する。
【0036】
本発明の一実施形態において、精製及び/または回収されたAnxA5タンパク質は、N末端メチオニンを含んでも含まなくても、ヒトアネキシンA5(
図1に示される配列番号1)の配列を有するタンパク質を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0037】
別の実施形態において、精製及び/または回収されたAnxA5タンパク質は、N末端メチオニンを含んでも含まなくても、ヒトアネキシンA5(
図1に示される配列番号1)の配列を有するタンパク質のバリアントまたは変異体を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなる。例えば、バリアントまたは変異体は、任意の1つ以上の位置において、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160個またはそれよりも多くの位置において、または最大その個数の位置において、配列番号1とは異なり得る(N末端メチオニンを含んでも含まなくても)。
【0038】
それゆえ、アネキシンA5のバリアントまたは変異体は、保存的であれ非保存的であれ1つ以上の位置においてアミノ酸挿入、欠失、または置換が行われた、タンパク質であり得る。好ましくは、この変化は、アネキシンA5に対して同等の様態で機能する基本的特性が著しく変化させられていないタンパク質をもたらす。この関連における「著しく」とは、バリアントの特性が元のタンパク質の特性と比べて依然として異なり得るが、自明でないこともない、と当業者がいうところの意味である。
【0039】
好ましくは、バリアントまたは変異体の等電位点(pI)は、未修飾タンパク質と比較して変化させられないか、または1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2もしくは0.1pH単位を超えては変更されない。
【0040】
好ましい実施形態において、AnxA5タンパク質は、好ましくは、同じ条件下でヒトアネキシンA5(配列番号1)によって示されるレベルの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または約100%であるレベルで、生体膜上のホスファチジルセリンに結合可能である。生体膜上のホスファチジルセリンへのアネキシンA5結合を測定するのに好適な方法は、当該技術分野で知られている(Vermes et al.(1995)J Immunol Methods,184(1):p.39-51)。
【0041】
「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrなどの意図される組み合わせである。
【0042】
バリアント及び変異体は、当該技術分野で周知のタンパク質工学法及び部位特異的突然変異誘発法を用いて作製され得る。
【0043】
さらなる実施形態において、精製及び/または回収されたAnxA5タンパク質は、N末端メチオニンを含んでも含まなくても、ヒトアネキシンA5(
図1に示される配列番号1)の配列を有するタンパク質、または上述されるようなそのバリアントもしくは変異体を含む、それから本質的になる、またはそれからなるタンパク質の二量体であり得る。
【0044】
さらなる実施形態において、精製及び/または回収されたAnxA5タンパク質は、融合タンパク質であり得、その融合タンパク質は、次のものを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。(a)N末端メチオニンを含んでも含まなくても、ヒトアネキシンA5(
図1に示される配列番号1)の配列を有するタンパク質、または上述されるようなそのバリアントもしくは変異体、または二量体に融合された、融合パートナーの配列を含む1つ以上のタンパク質配列、(b)N末端メチオニンを含んでも含まなくても、ヒトアネキシンA5(
図1に示される配列番号1)の配列を有するタンパク質、または上述されるようなそのバリアントもしくは変異体、または二量体を含む、それから本質的になる、またはそれからなる1つ以上のタンパク質配列。例えば、限定することなく、融合タンパク質は、次のものから選択される一般構造を有してもよい。
-2つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば、H
2N-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-COOH、または
-3つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば、H
2N-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-COOH、または
-4つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば、H
2N-(a)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-(b)-COOH、または
-5つのアミノ酸配列の融合の場合、例えば、またはH2N-(a)-(a)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(a)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(a)-(b)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(a)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-(b)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(b)-(a)-(a)-COOH、もしくはH
2N-(a)-(b)-(b)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(a)-(b)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(a)-(b)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(b)-(a)-(b)-COOH、もしくはH
2N-(b)-(b)-(b)-(b)-(a)-COOH、
ここで(a)及び(b)は、この段落の上記に定義される通りである。(a)によって定義される複数の融合パートナータンパク質の場合、複数の融合パートナーは、同じであっても、異なってもよい。目的とするいずれの融合パートナーも使用されてよい。例えば、融合パートナーポリペプチド配列(複数可)は、患者の循環系内での分子の半減期を延長させる及び/またはさらなる機能性を分子に付与する、例えば、追加の治療的特性(例えば、抗凝固、細胞阻害及び/または殺傷など)を付与するのに好適であり得る。N末端メチオニンを含んでも含まなくても、ヒトアネキシンA5(
図1に示される配列番号1)の配列、または上述されるようなそのバリアントもしくは変異体、または二量体を有する複数のタンパク質配列を含む、(b)によって定義される融合タンパク質の場合、それらのタンパク質は、同じであっても、異なってもよい。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、精製及び/または回収されたAnxA5タンパク質は、下記から選択されるアネキシンA5の配列またはその機能的バリアントもしくは変異体を含む、それから本質的になる、またはそれからなるタンパク質であり得る。
a)N末端メチオニンを含むまたは含まないヒトアネキシンA5(配列番号1)、
b)ヒトアネキシンA5の哺乳類オルソログ、
c)a)またはb)の対立遺伝子または遺伝子バリアント、
d)a)、b)またはc)のうちのいずれかと50%、60%、70%、75%超、例えば80%、85%超、90%超、またはさらにより好ましくは95%もしくは99%超同一であるタンパク質、
e)a)、b)、c)またはd)の二量体、あるいは
f)a)、b)、c)、d)またはe)のうちのいずれかに融合された、1つ以上の融合パートナーを含む融合タンパク質。
【0046】
特定の実施形態において、AnxA5タンパク質は、N末端メチオニンを含むまたは含まないヒトアネキシンA5、配列番号1と50%、60%、70%、75%超、例えば80%、85%超、90%超、またはさらにより好ましくは95%もしくは99%超同一である、アネキシンA5の機能的バリアントまたは変異体である。
【0047】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、次のように決定される。まず、アミノ酸配列が、BLASTN第2.0.14版及びBLASTP第2.0.14版を含むBLASTZのスタンドアロン版からのBLAST 2 Sequences(Bl2seq)プログラムを用いて、例えば、配列番号1と比較される。このBLASTZのスタンドアロン版は、ncbi.nlm.nih.govにて、米国政府のNational Center for Biotechnology Informationのウェブサイトから入手することができる。Bl2seqプログラムの使用方法を説明する説明書は、BLASTZに付随するreadmeファイルに見出すことができる。Bl2seqは、BLASTPアルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列間の比較を行う。2つのアミノ酸配列を比較するには、Bl2seqのオプションが次のように設定される。-iは、比較対象の第1のアミノ酸配列を含むファイルに対して設定され(例えば、C:\seq1.txt)、-jは、比較対象の第2のアミノ酸配列を含むファイルに対して設定され(例えば、C:\seq2.txt)、-pは、blastpに対して設定され、-oは、任意の所望のファイル名に対して設定され(例えば、C:\output.txt)、すべての他のオプションは、それらのデフォルト設定のままである。例えば、次のコマンドを使用して、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成することができる。C:\Bl2seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastp -o c:\output.txt。2つの比較された配列が相同性を共有する場合、指定の出力ファイルは、整列された配列としてそれらの相同性領域を提示する。2つの比較された配列が相同性を共有しない場合、指定の出力ファイルは、整列された配列を提示しない。いったん整列されると、両配列において同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が提示されている位置の数を数えることによって、一致の数が決定される。
【0048】
同一性パーセントは、一致の数を、特定された配列において示される配列の長さで除し、続いて結果として得られた値に100を乗ずることによって決定される。例えば、配列が配列番号1に示される配列と比較され(配列番号1に示される配列の長さは320である)、一致の数が288である場合、その配列は、配列番号1に示される配列に対して90の同一性パーセントを有する(すなわち、288÷320×100=90)。
【0049】
AnxA5タンパク質は、アネキシンA5の二量体(ダイアネキシンなど)またはその機能的バリアントもしくは変異体であり得る。ダイアネキシンA5は、WO02/067857に開示される。
【0050】
好ましくは、AnxA5タンパク質はHisタグを含まず、その回収及び精製は、Hisタグ配列への親和性結合工程を使用しては達成されない。
【0051】
Hisタグは、少なくとも6つのヒスチジン(His)残基から典型的になり、タンパク質のN末端またはC末端にあることが多い(必ずしもそうではないが)、タンパク質におけるポリヒスチジンアミノ酸モチーフである。ポリヒスチジンタグは、様々な種類で市販されている、結合した二価ニッケルまたはコバルトイオンを含有する親和性樹脂とのインキュベーションによる、Escherichia coli及び他の原核性発現系において発現されるポリヒスチジンタグ付き組換えタンパク質の親和性精製に使用されることが多い。これらの樹脂は、一般に、ポリヒスチジンタグがマイクロモル親和性で結合する、ニッケル用のイミノ二酢酸(Ni-IDA)及びニトリロ三酢酸(Ni-NTA)、ならびにコバルト用のカルボキシメチルアスパラギン酸(Co-CMA)などのキレート剤で官能化された、セファロース/アガロースである。樹脂は次いで典型的に、コバルトまたはニッケルイオンと特異的に相互作用しないタンパク質を除去するために、リン酸緩衝液で洗浄される。Ni系の方法の場合、20mMイミダゾールの添加によって洗浄効率を改善することができる(タンパク質は通常、150~300mMイミダゾールで溶出される)。
【0052】
Hisタグ手法は精製に好都合であるが、AnxA5タンパク質を含めた治療的タンパク質における非天然ポリヒスチジンモチーフの存在は、それが免疫学的反応などの患者の有害反応につながり得るため、望ましくない。代替的に、タンパク質生産後にHisタグモチーフを除去しようと試みることは、煩雑で時間や費用がかかり、実際、Hisタグが除去されたタンパク質調製物は典型的に、1つ以上の異質ヒスチジン残基を保持するであろう。
【0053】
結果として、好ましくは、AnxA5タンパク質はHisタグを含まず、その回収及び精製は、Hisタグ配列への親和性結合工程を使用しては達成されない。
【0054】
本発明のAnxA5タンパク質は、WO2010/140886に開示されるように(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、1つ以上の、例えば最大20個のRGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)モチーフを含むように修飾されている、ヒトアネキシンA5の配列を有するタンパク質のバリアントまたは変異体のバリアントである場合も、そうでない場合もある(好ましくは、そうでない)。WO2010/140886に記載されるように、1つ以上のRGDモチーフの付加を用いて、アポトーシス細胞上のホスファチジルセリン(PS)に結合するAnxA5バリアントを使用することによる食作用を強化し、食作用を阻害する代わりにアポトーシス細胞を飲み込むように食細胞を活性化することができる。
【0055】
B.宿主細胞培養物
AnxA5タンパク質は、宿主細胞培養物中で組換え的に発現され得る。本発明による、AnxA5タンパク質を発現する好ましい宿主細胞培養物は、AnxA5タンパク質生産のために商業規模にある培養物、例えば、約100L、約200L、約300L、約400L、約500L、約600L、約700L、約800L、約900L、約1,000L、約2,000L、約3,000L、約4,000L、約5,000L、約6,000L、約7,0000L、約8,0000L、約9,0000L、約10,000L、約20,000L、約30,000L、約40,000L、約50,000L、約60,000L、約70,0000L、約80,0000L、約90,0000L、約100,000Lまたはそれよりも高い培養体積を有する培養物である。この関連における「約」という用語は、定められた体積の±50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%または1%の意味を含み得る。
【0056】
目的となる遺伝子の組換え発現のための方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0057】
典型的には、AnxA5タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、宿主細胞培養物中で組換え的に発現される。例えば、AnxA5タンパク質をコードする配列は、AnxA5タンパク質をコードする配列を含むプラスミドまたは他のベクターでの宿主細胞の形質転換によって、宿主細胞に導入されてもよく、任意選択で、AnxA5タンパク質をコードする配列は、宿主細胞染色体(またはプラストーム)に組み込まれるか、または複製可能な染色体外ベクター上で維持される。
【0058】
したがって、宿主細胞は、AnxA5タンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドベクター構築物で形質転換され得る。
【0059】
宿主細胞は、原核性または真核性のいずれでもあり得る。
【0060】
細菌細胞が、本発明の関連において好ましい原核性宿主細胞である。細菌宿主細胞は、例えば、グラム陽性であっても、グラム陰性宿主細胞であってもよい(だがグラム中性(gram-neutral)及びグラム不定菌もまた使用されてよい)。グラム陰性菌の例としては、Escherichia coli、Salmonella、Shigella、Pseudomonas、Neisseria、Haemophilus influenzae、Bordetella pertussis及びVibrio choleraが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
少なくとも本発明の第1の態様の関連において、任意選択で、本発明のすべての態様の関連において、宿主細胞は、細胞壁を持つ内毒素産生宿主細胞であり、それゆえ、典型的に、E.coli、例えば、Bethesda Research Laboratories Inc.(Bethesda、MD、USA)から入手可能なE.coli株DH5、及びRockville,MD,USAのAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手可能なRR1(番号ATCC 31343)などのグラム陰性菌である。
【0062】
錯誤回避のために、「細胞壁を持つ内毒素産生宿主細胞」という用語は、Saccharomyces cerevisiaeなどの酵母、及び他の真核細胞を除外するように解釈され得る。
【0063】
E.coliのさらなる特に好ましい内毒素産生株には、(例えば、広く市販されており、Marder et al., 2014, BMC Biotechnology, 14:33に記載されるような)株BL21(DE3)が含まれる。しかしながら、本出願者は、BL21(DE3)から発現されたアネキシンA5が驚くべきことに、アネキシンA5タンパク質の約40%がグルコノイル化されたといった、予想外に高レベルの望ましくない翻訳後グルコノイル化を呈することを見出した。これは、典型的にほんの約5~10%のグルコノイル化のレベルを示す、BL21(DE3)において組換え的に発現されたほとんどの他のタンパク質のグルコノイル化のレベルよりもはるかに高い。したがって、E.coliの内毒素産生株が、例えば、Aon et al.(Appl.Env.Microbiol.,2008,74(4):950-958に記載されるように(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、ホスホグルコノラクトナーゼ(PGL)を過剰発現させ、それによって、組換え的に発現されたタンパク質の翻訳後グルコノイル化を抑制し、ゆえに、AnxA5タンパク質のグルコノイル化バリアントの形成を、40%を下回る、例えば30%、20%、10%、9%8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%を下回る、好ましくは実質的に0%のレベルまで抑制することによって、AnxA5タンパク質のグルコノイル化のレベルを低減するように操作されているBL21(DE3)の株であることが、さらにより好ましい。
【0064】
典型的に、本発明において使用するための細菌宿主細胞は、壁を持つ細菌宿主細胞であり、したがって好ましくは、スフェロプラストなどの(Liu et al,2006,J.Exp.Microbiol.,9:81-85に記載されるものなど(その内容は参照により本明細書に組み込まれる))、細胞壁及び(グラム陰性菌の場合)外膜を欠く細胞を除外する。スフェロプラストは、本出願の関連において、内毒素産生宿主細胞ではなく、細胞壁を有しない。スフェロプラストは、特に、大体積培養物中で生産的に成長させられるそれらの能力を重大に制限する細胞壁の不在によるそれらの感受性及び虚弱性に起因して、商業規模生産に全く適しない。
【0065】
任意選択で、宿主細胞は、浸透圧ショック及び/または凍結/融解処理によって溶解されることのできない細胞壁を持つ、内毒素産生宿主細胞である。
【0066】
さらなる選択肢では、宿主細胞培養物は、宿主細胞が耐性を有しない抗生物質の存在下で、及び任意選択でいかなる抗生物質の存在下でも、宿主細胞が培養されない、または培養されたことのない培養物である。回避すべき具体的な抗生物質は、一実施形態において、アンピシリンなどの、スフェロブラスト(spheroblast)の形成をもたらす抗生物質である。
【0067】
真核性宿主細胞には、酵母、及び哺乳類細胞、好ましくは、マウス、ラット、サルまたはヒト線維芽細胞株由来のものなどの脊椎動物細胞である。酵母宿主細胞には、Stratagene Cloning Systems(La Jolla、CA 92037、USA)から一般に入手可能であるYPH499、YPH500及びYPH501が含まれる。好ましい哺乳類宿主細胞には、CCL61としてATCCから入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CRL1658としてATCCから入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH/3T3、及びCRL1650としてATCCから入手可能なサル腎臓由来COS-1細胞が含まれる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターでトランスフェクトされ得るSf9細胞である。
【0068】
典型的な原核性ベクタープラスミドは、Biorad Laboratories(Richmond、CA、USA)から入手可能なpUC18、pUC19、pBR322及びpBR329、Pharmacia(Piscataway、NJ、USA)から入手可能なpTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540及びpRIT5、pBSベクター、Stratagene Cloning Systems(La Jolla、CA 92037、USA)から入手可能なPhagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46Aである。
【0069】
典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia(Piscataway、NJ、USA)から入手可能なpSVLである。このベクターは、SV40後期プロモータを使用して、クローニングされた遺伝子の発現を誘導し、このうち最も高い発現レベルは、COS-1細胞などのT抗原産生細胞において見出される。誘導性哺乳類発現ベクターの例は、同じくPharmacia(Piscataway、NJ、USA)から入手可能なpMSGである。このベクターは、マウス乳房腫瘍ウイルスの長い末端反復のグルココルチコイド誘導性プロモータを使用して、クローニングされた遺伝子の発現を誘導する。
【0070】
有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406及びpRS413-416であり、これらはStratagene Cloning Systems(La Jolla、CA 92037、USA)から一般に入手可能である。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405及びpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母選択性マーカーHIS3、TRP1、LEU2及びURA3を組み込む。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(YCps)である。
【0071】
当業者に周知の方法を用いて、AnxA5タンパク質コード配列、及び例えば、適切な転写または翻訳制御配列を含有する、発現ベクターを構築することができる。1つのかかる方法は、ホモポリマーテールを介したライゲーションを伴う。ホモポリマーであるポリdA(またはポリdC)テールが、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによって、クローニング対象のDNA断片上の露出した3’OH基に付加される。すると断片は、直鎖状にされたプラスミドベクターの末端に付加されたポリdT(またはポリdG)テールにアニーリング可能である。アニーリングの後に残されたギャップは、DNAポリメラーゼによって埋められ得、遊離末端(free end)がDNAリガーゼによって連結され得る。
【0072】
別の方法は、付着末端を介したライゲーションを伴う。適合性の付着末端は、好適な制限酵素の作用によってDNA断片及びベクター上で生成され得る。これらの末端は、相補的塩基対合により迅速にアニーリングし、残ったニックが、DNAリガーゼの作用によってつなげられ得る。
【0073】
さらなる方法は、リンカー及びアダプターと呼ばれる合成分子を使用する。平滑末端を有するDNA断片が、突出した3’末端を除去し、陥凹した3’末端を埋めるバクテリオファージT4 DNAポリメラーゼまたはE.coli DNAポリメラーゼIによって生成される。規定の制限酵素のための認識配列を含有する平滑末端2本鎖DNAの片である、合成リンカーが、T4 DNAリガーゼによって平滑末端DNA断片にライゲーションされ得る。それらはその後、適切な制限酵素で消化されて付着末端を作り出し、適合性末端を有する発現ベクターにライゲーションされる。アダプターもまた、ライゲーションに使用される1つの平滑末端を含有するが、1つの実施された付着末端も保有する、化学合成されたDNA断片である。
【0074】
多様な制限エンドヌクレアーゼを含有する合成リンカーが、Biotechnologies Inc(New Haven,CN,USA)を含むいくつかの供給源から市販されている。
【0075】
AnxA5タンパク質をコードするDNAを修飾する望ましいやり方は、Saiki et al(1988)Science 239,487-491によって開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を使用することである。この方法において、酵素的に増幅される対象となるDNAには、2つの特定のオリゴヌクレオチドプライマーが隣接し、これらのオリゴヌクレオチドプライマー自体が増幅されたDNAに組み込まれるようになる。該特定のプライマーは、当該技術分野で既知の方法を用いた発現ベクターへのクローニングに使用され得る、制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含有してもよい。
【0076】
適切な細胞宿主の、AnxA5タンパク質をコードする配列を含むDNA構築物での形質転換は、典型的には使用されるベクターの種類に応じた周知の方法によって遂行される。
【0077】
原核性宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69、2110及びSambrook et al(2001)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al(1986)Methods In Yeast Genetics,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY.に記載される。Beggs(1978)Nature 275、104-109の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関しては、かかる細胞をトランスフェクトする際に有用な試薬、例えば、リン酸カルシウム及びDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤は、Stratagene Cloning Systems、またはLife Technologies Inc.(Gaithersburg,MD 20877,USA)から入手可能である。
【0078】
エレクトロポレーションもまた細胞の形質転換に有用であり、酵母細胞、細菌細胞及び脊椎動物細胞の形質転換に関して当該技術分野でよく知られている。
【0079】
例えば、多くの細菌種は、Luchansky et al(1988)Mol.Microbiol.2,637-646に記載される方法(参照により本明細書に組み込まれる)によって形質転換されてもよい。25μFDで1cmあたり6250Vを使用した2.5倍PEBに懸濁させたDNA-細胞混合物のエレクトロポレーションの後に、最大数の形質転換体が一貫して回収される。
【0080】
エレクトロポレーションによる酵母の形質転換のための方法は、Becker & Guarente(1990)Methods Enzymol.194,182に開示される。
【0081】
DNAを動物及び植物細胞に導入するために物理的方法が使用されてもよい。例えば、マイクロインジェクションは、非常に微細なピペットを使用して、DNA分子を直接、形質転換対象の細胞の核に注入する。別の例は、高速ミクロ射出粒子、通常は、DNAでコーティングされた金またはタングステンの粒子での細胞の砲撃を伴う。
【0082】
成功裏に形質転換された細胞、すなわち、AnxA5タンパク質をコードする配列を含むDNA構築物を含有する細胞は、周知の技法によって特定することができる。例えば、1つの選択技法は、発現ベクターに、形質転換された細胞の選択可能な形質をコードするDNA配列(マーカー)を組み込むことを伴う。これらのマーカーは、真核細胞培養物のためにはジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシン耐性、及びE.coli及び他の細菌中での培養のためにはテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリン耐性遺伝子を含む。代替的に、かかる選択可能な形質に対する遺伝子は、所望の宿主細胞の共形質転換に使用される、別のベクター上にあり得る。
【0083】
マーカー遺伝子を使用して形質転換体を特定することができるが、細胞のうちのどれが組換えDNA分子を含有し、どれがセルフライゲーションされたベクター分子を含有するかを決定するのが望ましい。これは、クローニングベクターを使用して達成することができ、ここでDNA断片の挿入が、その分子上に存在する遺伝子のうちの1つの完全性を破壊する、したがって、組換え体が、その遺伝子の機能喪失のゆえに特定され得る。
【0084】
成功裏に形質転換された細胞を特定する別の方法は、AnxA5タンパク質をコードする配列を含む発現構築物の導入からもたらされる細胞を成長させて、本発明のポリペプチドを産生させることを伴う。細胞は採取及び溶解され得、それらのDNA含量が、Southern(1975)J.Mol.Biol.98,503またはBerent et al(1985)Biotech.3,208によって記載される方法などの方法を用いて、そのDNAの存在について検査され得る。代替的に、上清中のタンパク質の存在は、下記に記載されるように抗体を使用して検出することができる。
【0085】
組換えDNAの存在について直接アッセイすることに加えて、組換えDNAがタンパク質の発現を指示可能である場合、成功裏の形質転換は、周知の免疫学的方法によって確認することができる。例えば、発現ベクターで成功裏に形質転換された細胞は、適切な抗原性を呈するタンパク質を産生する。形質転換されていることが疑われる細胞の試料が、採取され、好適な抗体を使用してタンパク質についてアッセイされる。
【0086】
それゆえ、形質転換宿主細胞自体を培養して、AnxA5タンパク質を発現する培養物形質転換宿主細胞を提供することができる。培養物は、栄養培地中の、モノクローナル(クローン的に同種)培養物、またはモノクローナル培養物に由来する培養物であり得る。
【0087】
AnxA5タンパク質を発現する形質転換宿主細胞の培養物は、所望の細胞密度が得られるまで、典型的に生産性と、培養相に関連する時間及び費用との平衡を保つように選択される好適な成長条件下で成長させられ、次いで細胞は、典型的に採取される。細胞採取のための最適な時間は、任意の所与の培養について経験的に決定され得る。
【0088】
採取は、例えば、宿主細胞(典型的に無傷であり、典型的に、細胞内にAnxA5タンパク質の実質的にすべて(例えば、80%、90%、95%もしくは99%超または100%)を保持する)の培地からの収集を伴う。これは一般的に、培養された宿主細胞をバイオマスの形態で収集する、遠心分離または濾過によって達成することができる。遠心分離の場合、上清は破棄され得、細胞ペレットが、細胞培養物ホモジナイゼーション段階に直接または間接的に(例えば、凍結などによる貯蔵の後に)移され得る。
【0089】
C.細胞培養物ホモジナイゼーション
上記で考察されるように、本発明の第1の態様は、宿主細胞からのタンパク質放出の改善された工程を提供する。より具体的には、それは、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含む組換え的に発現された細胞内タンパク質の、細胞壁を持つ内毒素産生宿主細胞からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、該プロセスは、細胞内タンパク質を宿主細胞から放出させることを含み、細胞内AnxA5タンパク質を放出させる工程が、非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施されることを特徴とする、プロセスを提供する。
【0090】
好ましくは、非イオン性洗剤は、ポリソルベート、より好ましくはTween20及びTween80から選択されるポリソルベート、最も好ましくはTween80である。代替的に、それよりは好ましくないものの、他の非イオン性洗剤が使用されてもよいが、タンパク質の吸収極大、すなわち275~280nmと同様の紫外線吸収率λmaxを有する非イオン性洗剤の使用は回避するのが好ましく(細胞培養物ホモジナイゼーション工程、及びまた、本プロセスの任意の他の工程の両方において)、これは、それが回収プロセス中に紫外線吸収率によりタンパク質の存在を監視する能力を妨害し得るためである。この関連において、「同様」とは、λmaxが、精製されているAnxA5タンパク質の吸収極大の10mn、9nm、8mn、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nm、または1nm以内であるという意味を含み得る。それゆえ、例えば、非イオン性洗剤は、λmax=275nmを有するTriton X-100でないことが好ましい場合があり、このため、Triton X-100は、細胞培養物ホモジナイゼーション工程及び/または本発明のプロセスの任意の他の工程に使用されないことが好ましくあり得る。
【0091】
細胞内AnxA5タンパク質を放出させる細胞ホモジナイゼーションの前に、非イオン性洗剤が、細胞に添加されるホモジナイゼーション緩衝液に含められてもよく(例えば、ホモジナイゼーション緩衝液は存在する非イオン性洗剤で「あらかじめ形成」されてもよい)、または細胞が、非イオン性洗剤を含まないホモジナイゼーション緩衝液に懸濁させられてもよく、次いで非イオン性洗剤が、ホモジナイゼーション緩衝液に懸濁させられた細胞に添加され、それと混合され得ることに留意されたい。
【0092】
好ましくは、細胞内AnxA5タンパク質を放出させる工程は、アネキシンA5と内毒素との間の結合を低減する(50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%またはそれを超えてなど)または防止するのに有効な量の非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で実施される。内毒素レベルは、当該技術分野で周知かつ確立された方法によって、例えば、Limulus Amebocyte Lysate(LAL)試験によって、測定されてよい。
【0093】
例えば、ホモジナイゼーション緩衝液は、0.01~10%(w/w)非イオン性洗剤、例えば、0.02~5%(w/w)、0.05~2%(w/w)、または約1%(w/w)非イオン性洗剤を含み得る。この関連における「約」という用語は、±0.5%、0.4%、0.3%、0.2%または0.1%(w/w)の意味を含み得る。
【0094】
カルシウムイオンまたはイオン化できるカルシウム化合物(などのCaCl2)は、ホモジナイゼーション緩衝液に何ら添加されないまたは含められないことが好ましい。したがって、細胞内AnxA5タンパク質の宿主細胞からの放出時点でのホモジナイゼーション緩衝液中の遊離カルシウムイオン濃度は、10mM未満、好ましくは5mM、4mM、3mM、2mMまたは1mM未満、より好ましくは500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、50μM、40μM、30μM、20μM、10μM、5μM、4μM、3μM、2μM、1μm未満または実質的にゼロであることが好ましい。
【0095】
一実施形態において、ホモジナイゼーション緩衝液は、カルシウム金属イオンキレート剤を含み得る。酵素処理を伴い、かかる酵素が補因子としてMg2+を用いる、任意選択による後続の工程に照らして、エチレングリコール四酢酸(EGTA)などの、Mg2+に強力に結合しないカルシウムイオンキレート剤を選択することが好ましくあり得る。代替的に、酵素処理を伴い、かかる酵素が補因子としてMg2+を用いる、任意選択による後続の工程は、Mg2+を必要としない他の工程と置換されてもよい。その場合、EGTAまたはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの任意のカルシウムイオンキレート剤がホモジナイゼーション緩衝液に含められてもよい。
【0096】
任意選択で、ホモジナイゼーション緩衝液中の遊離カルシウムイオンの濃度及び/またはカルシウム金属イオンキレート剤の量は、アネキシンA5と宿主細胞の細胞膜及び/または壁の構成成分との間の結合を、例えば、pH7.2の50mMトリスHCl、10mM CaCl2からなるホモジナイゼーション緩衝液の存在下で観察されるであろう結合のレベルと比較して、低減する(50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%またはそれを超えてなど)または防止するのに有効な量にある。
【0097】
例えば、本発明の第1の態様におけるホモジナイゼーション緩衝液は、0.01~500mM、例えば、0.05~100mM、0.5~20mM、1~15mM、2~10mM、または約4mMカルシウム金属イオンキレート剤を含み得、好ましくは、カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAまたはEGTAである。
【0098】
上記で考察されるように、本発明の第1の態様における細胞培養物ホモジナイゼーションの工程は、放出されたAnxA5タンパク質の宿主細胞破片からの精製及び分離のために遠心分離工程を含まない。それでも、ホモジナイゼーション緩衝液中の遊離カルシウムイオン及び/または有効量のカルシウム金属イオンキレート剤に対する耐性を確立するために、溶解細胞のアリコートに対して遠心分離工程を用いた単純な試験を実施することができる。細胞ホモジナイゼーションの後に、溶解細胞のアリコート(例えば、100mL)は、遠心分離(例えば、38,900gで30分間)に供され、次いで上清及びペレットが分離される。上清中のAnxA5タンパク質の量が決定されて、「遊離」AnxA5タンパク質のレベルを求める。ペレットは、50mMトリスHCl、20mM EDTA(pH7.2)に撹拌しながら4℃で30分間再懸濁させられて、いずれの結合したAnxA5タンパク質も放出させられ、次いで38,900gで4℃で30分間遠心分離され、上清中に放出された結合したAnxA5タンパク質の量が決定されて、「結合した」AnxA5タンパク質のレベルを求める。この関連において、宿主細胞の細胞膜及び/または壁の構成成分へのAnxA5の結合のパーセンテージ=(「結合した」AnxA5タンパク質のレベル/(「結合した」AnxA5タンパク質のレベル+「遊離」AnxA5タンパク質のレベル))×100である。
【0099】
好ましくは、上述の方法によって決定するとき、結果として生じるバイオマスホモジネート中の結合したAnxA5のパーセンテージは、50%、40%、30%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%未満または実質的に0%である。
【0100】
本明細書において「ホモジナイゼーション緩衝液」と称されるが、この溶液がpH緩衝液であることは必ずしも必須ではない。しかしながら、任意選択で、ホモジナイゼーション緩衝液は、緩衝液(例えば、トリス)を含む追加の構成成分をさらに含んでもよく、任意選択で、例えばpH6~8前後、より好ましくはpH7~8.5の範囲、例えば、約pH7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、または8.5に、必要に応じてpH調整されてもよい。一実施形態において、pH7.4が使用に選択され得る。
【0101】
上記で考察されるように、後続の工程がMg2+などの補因子を必要とする酵素での酵素処理を含む、いくつかの選択肢において、補因子をホモジナイゼーション緩衝液中に含めることもまた望ましくあり得る。
【0102】
例となる一実施形態において、本発明の第1の態様において使用するためのホモジナイゼーション緩衝液は、50mMトリス(pH7.4)、1mM MgCl2及び1%(w/w)Tween80の水溶液を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0103】
本発明の第1の態様のプロセスは、宿主細胞の培養物からのバイオマスをホモジナイゼーション緩衝液中で、ホモジナイゼーション緩衝液1リットルあたり約1g~300gのバイオマス(湿重量)の濃度で、例えば、ホモジナイゼーション緩衝液1リットルあたり約10g~200gのバイオマスの濃度で、混合する工程を含み得る。例となる濃度は、約10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、160g/L、170g/L、180g/L、190g/L、または200g/Lであり得る。ホモジナイゼーション緩衝液1リットルあたり約100gのバイオマスの再懸濁比率が特に好ましい。この関連において、「約」という用語は、定められた値の±5g/L、4g/L、3g/L、2g/L、または1g/Lを含むことを意図する。
【0104】
混合は典型的に、室温前後、すなわち典型的に18℃~28℃前後、例えば、約19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、または27℃で行う。それを上述の列挙項目から選択される温度でまたはその温度前後(例えば、その±5、4、3、2、または1℃)で維持するように、混合プロセス中に温度を制御することが好ましくあり得るが、この段階での動的な温度制御は通常は必要とされない。
【0105】
任意選択で、ホモジナイゼーション緩衝液はまた、バイオマスとの混合の後であるが、宿主細胞ホモジナイゼーションの前に、酵素処理において有用な1つ以上の酵素を含んでもよいか、またはそれがホモジナイゼーション緩衝液に添加されてもよい。例えば、ホモジナイゼーション後に、宿主細胞由来の核酸(DNA及び/またはRNAを含む)の分解を補助する1つ以上のヌクレアーゼ酵素を含めるまたは添加することが好適であり得る。これは、その後に生産されるホモジネートの粘度を低減し、それによって下流プロセシング工程を補助するであろう。任意の好適な酵素が使用されてよい。酵素は、例えば、ヌクレアーゼAなどのヌクレアーゼ、好ましくは、Serratia marescens由来のヌクレアーゼAであり得る。目的となる1つのそのような例となる酵素は、Merck/Novagen、Sigma Aldrichなどを含む商業的供給源から入手可能な、Serratia marcescens由来のエンドヌクレアーゼであるBenzonaseヌクレアーゼであり、これは、タンパク質分解活性を何ら有しない一方で、すべての形態のDNA及びRNAを分解するために使用することができる。それは、広範な条件に対して有効であり、高い特異的活性を保有する。この酵素は、核酸を2~5塩基長(ハイブリダイゼーション限界未満)の5′-一リン酸末端オリゴヌクレオチドまで完全に消化し、これは、組換えタンパク質からの核酸の除去に理想的であり、核酸汚染に関するFDAガイドラインの遵守を可能にする。Benzonase酵素は、活性化に1~2mM Mg2+を必要とし、イオン性及び非イオン性洗剤、還元剤、プロテアーゼ阻害剤PMSF(1mM)、キレート剤EDTA(1mM)ならびに尿素の存在下で活性にとどまる(相対的活性は具体的な条件に左右される)。当業者であれば、かかるヌクレアーゼ酵素の有効な濃度を容易に決定可能であろうが、本出願者は、Benzonaseが、少なくとも、宿主細胞培養物1Lあたり約3.3Uで、または再懸濁させられたバイオマス1Lあたり約1.85Uで予備希釈されて使用されたときに有効であることを特定した。この関連における「約」という用語は、定められた単位数の±90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%を含んでもよい。
【0106】
細胞内AnxA5タンパク質をホモジナイゼーション緩衝液中で宿主細胞から放出させる工程は、細胞ホモジナイゼーションまたは溶解のための任意の好適な手法を伴い得る。例えば、それは、宿主細胞の細胞壁及び細胞膜障壁が破壊され、それによって、細胞内AnxA5タンパク質を放出するように、宿主細胞を溶解させる、分解させるあるいはホモジナイズする、超音波処理する、または圧力処理することを含み得る。本発明の第1の態様のある特定の選択肢において、この工程は、浸透圧ショック及び/または凍結-融解工程の使用を含まない。
【0107】
本発明の第1の態様の好ましい一実施形態において、細胞内AnxA5タンパク質を宿主細胞から放出させる工程は、高圧ホモジナイゼーション、例えば、約400バール~約2,500バールで1サイクル以上の高圧ホモジナイゼーション、好ましくは約600バールのホモジナイゼーション3サイクル、または約800バールのホモジナイゼーション2サイクルを含む。この関連において、「約」という用語は、定められた値の±500、400、300、200、100、50、40、30、20、または10バールを含み得る。
【0108】
任意選択で、例えば、核酸を分解するのにヌクレアーゼ酵素が何ら添加されなかった状況において(例えば、Mg2+キレート剤の組み込みなどにより、ホモジナイゼーション緩衝液中のMg2+の濃度が低すぎる場合)、核酸を分解し、ホモジネートの粘度を低減するために、複数のさらなる回数の高圧ホモジナイゼーション(例えば、約600~2500バールの範囲内の圧力で2~4回)を含めることが有益であり得る。
【0109】
したがって、細胞ホモジナイゼーションの後に、細胞内AnxA5タンパク質を放出させる工程は、放出されたAnxA5タンパク質を含むバイオマスホモジネートを作り出し得る。好ましくは、バイオマスホモジネートは均一であり、均一とは、バイオマスの細胞の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または実質的に100%が分解されるという意味を含む。
【0110】
適用される細胞ホモジナイゼーション手法に応じて、この技法は、ホモジネートの温度の増加を引き起こし得る。温度の望ましくない増加を防止するやり方で細胞ホモジナイゼーション技法を操作する、かつ/または温度の望ましくない増加を防止するように温度制御を適用することが好ましくあり得る。しかしながら、例えば、ホモジネートがBenzonaseなどの酵素処理剤を含有する場合、酵素の最適温度範囲に近づけるように、及び好ましくはその範囲内に入るように温度増加を用いることが有利であり得る。Benzonaseの場合、約36~40℃の範囲の温度が特に好適であり得る。
【0111】
細胞ホモジナイゼーション手順が、金属イオン補因子(例えばMg2+)を必要とする酵素での酵素処理を含む場合、及びさらに、ホモジナイゼーション緩衝液がカルシウム金属イオンキレート剤を除外した場合、1つの選択肢において、カルシウムイオンキレート剤が酵素処理の完了後に添加されてもよい。これは、下記で考察されるように清澄化工程の前または後に行われてもよい。
【0112】
細胞ホモジナイゼーションの後に、バイオマスホモジネートは、典型的に、宿主細胞タンパク質、宿主細胞壁構成成分、宿主細胞膜構成成分、宿主細胞核酸、及び内毒素からなる群から選択される不純物のうちの1つ以上(典型的にすべて)をさらに含む。
【0113】
ホモジネートの粘度は、下流プロセシング工程を補助するのに十分に低いことが好ましい。
【0114】
D.ホモジネートの清澄化
任意選択で、及び好ましい実施形態において、次いでバイオマスホモジネートの生産の後に、それは清澄化工程で処理される。
【0115】
したがって、本発明の第1の態様のさらなる実施形態において、本プロセスは、バイオマスホモジネートを清澄化し、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む清澄化された生成物を生産する工程をさらに含む。この工程は、核酸の含量を低減するため、及びさらに、粒子が低減された溶液を得るために実施され、これは下記でさらに考察される捕捉クロマトグラフィーなどの後続の精製工程に適用され得る。
【0116】
任意の好適な清澄化工程または工程の組み合わせを行うことができる。例えば、清澄化プロセスは(好ましくは、ヌクレアーゼ処理に後続して)、放出されたAnxA5タンパク質を含むバイオマスホモジネートを、セルロースまたはポリプロピレンフィルターなどのフィルターに通す工程を含み得、フィルター流出液は、放出されたAnxA5タンパク質を含む清澄化された生成物である。
【0117】
好ましくは、フィルターは、デプスフィルターであり、かつ/または好ましくは、フィルターは、4μm未満のカットオフ、例えば、3μm、2μmまたは1μm未満のカットオフ、最も好ましくは0.2~0.6μmの範囲内のカットオフを有する。例えば、ホモジネートは、0.6~0.2μmカットオフデプスフィルターを使用した濾過によって清澄化されてもよく、このようなオフデプスフィルターの例は、市販の、例えば、セルロース系Cuno 60 SPデプスフィルターとして入手可能なものなどである。0.6~0.2μmカットオフを有する好ましいセルロースCuno 60 SPデプスフィルターほどではないものの、良好な性能(すなわち、生成物損失を伴わない良好な濾過)を提供することが見出された他のデプスフィルターには、0.5μmカットオフを有するセルロース+kieselguhrフィルター(例えば、Begerowから入手可能なPR12 UP)、1.2μmカットオフを有するポリプロピレンフィルター(例えば、Sartoriusから入手可能なSartopure PP2)、0.1μmカットオフを有するセルロースフィルター(例えば、Sartoriusから入手可能なSartoclear S9)、0.65μmカットオフを有するポリプロピレンフィルター(例えば、Sartoriusから入手可能なSartopure PP2)、及び0.2~0.5μmオフを有するセルロースフィルター(例えば、両方ともPallから入手可能なEK 1PまたはEKM-P、これらは良好だが緩徐である)が含まれる。さらなる試験により、より大きなカットオフ(例えば、4μm超)を有するフィルターは、中程度の粒子除去しか達成しないことが示されたため、それらはあまり好ましくない。
【0118】
正荷電を持つセルロース系フィルターが清澄化されたホモジネート中のDNA含量をさらに低減し、したがって、清澄化工程において使用するのに特に好ましいフィルターの部類を代表し得ることもまた、本出願者によって見出された。
【0119】
その上、セルロース系フィルターは、有効な清澄化を提供するために必要とするフィルター面積が、対応するポリプロピレンフィルターが必要とするものよりもより小さいことが見出された。これは、清澄化工程において使用するためにセルロース系部類のフィルターが特に好ましいさらなる理由であり得る。
【0120】
フィルター面積の選択はまた、使用されるホモジナイゼーションの程度及び性質に左右され得る。例えば、本出願者は、細胞ホモジナイゼーションが約600バールのホモジナイゼーション3サイクルによって行われる場合、ホモジネート1Lあたり約60cm2のフィルター面積が好適であるが、一方で、細胞ホモジナイゼーションが約800バールのホモジナイゼーション2サイクルによって行われる場合、ホモジネート1Lあたり約180cm2フィルター面積が好適であることを見出した。したがって、デプスフィルターは、任意選択で、清澄化されるホモジネート1Lあたり10~500cm2、例えば、30~400cm2/L、40~250cm2/L、50~200cm2/Lもしくは60~180cm2/L、例えば、50~100cm2/L、もしくは60~80cm2/L;または120~240cm2/L、もしくは150~210cm2/Lの面積を有するように選択されてもよい。
【0121】
清澄化後、清澄化された生成物は、後続の工程のための準備として1つ以上のさらなる添加剤の添加によってさらに調整されてもよい。例えば、清澄化された生成物を、(a)ポリソルベート及び最も好ましくはTween80などの非イオン性洗剤、ならびに(b)EDTAなどのカルシウム金属イオンキレート剤(清澄化された生成物が、ホモジナイゼーション緩衝液中へのキレート剤の組み込みに基づいてかつ/または酵素処理工程後のキレート剤の添加によって、十分なレベルのキレート剤をすでに含有するのでない限り)の一方または両方の添加によって、コンディショニングすることが好適であり得る。
【0122】
例となる一実施形態において、清澄化された生成物は、1%非イオン性洗剤(最も好ましくはTween80)で約2倍希釈され、カルシウムイオンキレート剤(最も好ましくは、EDTA)が、約2mMの最終濃度になるように添加される。
【0123】
本発明のプロセスのさらなる有利な特長は、下記で考察される陰イオン交換捕捉などのさらなるクロマトグラフ捕捉工程の前に、清澄化された生成物において時間を浪費するいかなる透析工程の必要性もないことである。したがって、本発明の実施形態において、清澄化された生成物は、AnxA5タンパク質のクロマトグラフ捕捉の前に透析に供されない。
【0124】
E.陰イオン交換捕捉
プロセスは、本発明の第1の態様において、第1の陰イオン交換捕捉工程を行い、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、放出されたAnxA5タンパク質を陰イオン交換樹脂に供する工程をさらに含んでもよい。
【0125】
一般に、陰イオン交換クロマトグラフィーによる細菌(例えば、E.coli)ホモジネート/ライセートからのタンパク質捕捉は、大量の宿主細胞タンパク質(HCP)及びDNAが捕捉樹脂に結合することにより、目標生成物の結合容量に悪影響を及ぼし、さらには樹脂性能に負担をかけるため、第1希望の戦略ではない。しかしながら、本出願者は、本発明の第1の態様による上述の細胞ホモジナイゼーション及び清澄化手順が、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて有効にさらに精製され得るAnxA5タンパク質生成物を提供するのに有効であると決定した。
【0126】
したがって、一実施形態において、上記で考察される、ホモジネート/ライセートの清澄化及び/または核酸の分解の工程によって生産される、放出されたAnxA5タンパク質を含む清澄化された生成物は、第1の陰イオン交換捕捉工程に供されて、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産する。
【0127】
任意選択で、第1の陰イオン交換工程の前に、pH、伝導率、カルシウムイオンキレート剤のレベル及び非イオン性洗剤のレベルからなる群から選択される、放出されたAnxA5タンパク質の環境の1つ以上のパラメータが調整される。例えば、陰イオン交換工程に供されるAnxA5タンパク質組成物は、約6.9、任意選択で±1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1pH単位のpHで製剤化されてもよい(1つの選択肢において、好ましい範囲は、pH6~8.5、より好ましくはpH6.5~7.5、最も好ましくはpH6.9である)。本出願者は、この範囲前後の低pH値(例えば、pH6で)が、溶出された生成物中で検出可能な宿主細胞タンパク質の存在を引き起こす傾向がある一方で、pH8以上では溶解度がいくらか低減されることを見出した。陰イオン交換工程に供されるAnxA5タンパク質組成物は、任意選択で、約2.8mS/cm、±1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1mS/cmの伝導率を有するように調整されてもよい。清澄化後、清澄化された生成物は、後続の工程のための準備として1つ以上のさらなる添加剤の添加によってさらに調整されてもよい。上記ですでに考察されたように、第1の陰イオン交換工程の前に、陰イオン交換工程に供されるAnxA5タンパク質組成物を、(a)ポリソルベート及び最も好ましくはTween80などの非イオン性洗剤、ならびに(b)EDTAなどのカルシウム金属イオンキレート剤(清澄化された生成物が、ホモジナイゼーション緩衝液中へのキレート剤の組み込みに基づいてかつ/または酵素処理工程後のキレート剤の添加によって、十分なレベルのキレート剤をすでに含有するのでない限り)の一方または両方の添加によって、コンディショニングすることが好適であり得る。例となる一実施形態において、陰イオン交換工程に供されるAnxA5タンパク質組成物は、1%非イオン性洗剤(最も好ましくはTween80)で約2倍希釈され、カルシウムイオンキレート剤(最も好ましくは、EDTA)が、約2mMの最終濃度になるように添加される。
【0128】
この関連において、第1の陰イオン交換捕捉工程に供されるAnxA5タンパク質組成物をコンディショニングするために非イオン性洗剤及び/またはカルシウム金属イオンキレート剤を使用することは、第1の陰イオン交換捕捉工程によるAnxA5タンパク質の宿主細胞由来不純物(細胞壁構成成分、細胞膜構成成分、内毒素、核酸などを含む)からの分離を強化する際に非常に有益であり得る。例えば、本出願者は、非イオン性洗剤及びカルシウム金属イオンキレート剤の存在下で実施されたときの第1の捕捉陰イオン交換工程による内毒素の非常に効率的な除去(99%前後の低減)を実証した。
【0129】
第2の陰イオン交換精錬工程の関連において下記で主に考察されるが、第1の陰イオン交換捕捉工程に供されるAnxA5タンパク質組成物中にカルシウム金属イオンキレート剤(例えば、EDTA)が存在する選択肢において、第1の陰イオン交換捕捉工程の操作が、1種類以上の追加の選択された金属イオン(カルシウムでない)を含むこともまた有益であり得、この追加の選択された金属イオンは、カルシウム金属イオンキレート剤が選択された金属イオンに対して、陰イオン交換樹脂に対するその結合親和性よりも大きいが、カルシウムイオンに対するその結合親和性よりは小さい結合親和性を有するように選択される。1つの例となる金属イオンは、Mg2+である。
【0130】
典型的に、陰イオン交換樹脂及びAnxA5生成物の接触の前に、陰イオン交換樹脂は、平衡化される。任意の好適な平衡化が用いられてよい。例えば、陰イオン交換樹脂は、緩衝液(例えば、20mMトリスpH7.4)、非イオン性洗剤(例えば、0.1%ポリソルベート、好ましくはTween80)及び塩(例えば、25mM NaCl)で平衡化され得る。任意の好適な平衡化体積が用いられてよく、限定することなく、本出願者は、例となる実施形態において3カラム体積(CV)が好適な体積であることを見出した。
【0131】
好ましくは、第1の陰イオン交換捕捉工程は、AnxA5タンパク質に関してポジティブモードで実行され、このため、AnxA5タンパク質は、陰イオン交換工程中に陰イオン交換体に一時的に結合し、典型的に洗浄液がカラムに通されて、結合したAnxA5タンパク質から不純物を除去し、次いで、溶出緩衝液を陰イオン交換樹脂に適用して、結合したAnxA5タンパク質を放出させることによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物が生産される。
【0132】
本出願者は、強陰イオン交換樹脂がAnxA5タンパク質捕捉に関して許容される容量を提供した一方で、弱陰イオン交換樹脂での性能があまり許容されるものでなかったことを見出したため、強陰イオン交換樹脂が好ましい。強陰イオン交換樹脂は、当該技術分野でよく知られており、例としては、トリアルキル塩化アンモニウムもしくは水酸化アンモニウムを有するI型樹脂、またはジアルキル2-ヒドロキシエチル塩化アンモニウムもしくは水酸化アンモニウムを有するII型樹脂などの、第四級アンモニウム官能基を含む樹脂が挙げられる(例えば、GE HealthcareによるQ Sepharose XL、GE HealthcareによるCapto Q、BioradによるUnosphere Q、またはMerckによるEshmuno Q)。弱陰イオン交換樹脂は好ましくなく、例としては、ジエチルアミノエチル官能基を含むDEAE樹脂が挙げられる。Q Sepharose XL樹脂(例えば、GE Healthcareによって提供される)が最も好ましくあり得る。
【0133】
陰イオン交換樹脂の上に負荷した後、ポジティブモード下で、AnxA5タンパク質は、樹脂に一時的に結合し、それを洗浄して不純物を低減/除去することができる。任意の好適な洗浄条件が用いられ得る。例えば、洗浄液は、緩衝液(例えば、20mMトリスpH7.4)、非イオン性洗剤(例えば、0.1%ポリソルベート、好ましくはTween80)及び塩(例えば、25mM NaCl)の水溶液を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなる。任意の好適な洗浄体積が使用されてよく、限定することなく、本出願者は、例となる実施形態において10カラム体積(CV)が好適な体積であることを見出した。
【0134】
結合したAnxA5タンパク質は次いで、溶出緩衝液を使用して陰イオン交換樹脂から放出される。任意の好適な溶出緩衝液が用いられ得る。例えば、溶出緩衝液は、緩衝液(例えば、20mMトリスpH7.4)、非イオン性洗剤(例えば、0.01~1%(w/v)より好ましくは0.1%(w/v)ポリソルベート、好ましくはTween80)及び洗浄液よりも高い濃度の塩(例えば、300mM NaCl、任意選択で±100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、または5mM)の水溶液を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなる。任意の好適な溶出体積が使用されてよく、限定することなく、本出願者は、例となる実施形態において9カラム体積(CV)が溶出に好適な体積であることを見出した。
【0135】
したがって、AnxA5タンパク質は、溶出緩衝液中で捕捉され、これは、第1の陰イオン交換生成物を提供する。
【0136】
陰イオン交換樹脂は次いで、再生され、清浄化され得る。再生及び清浄化に好適な方法は、当該技術分野で知られており、1つのかかる好適なプロトコルが実施例で考察される。
【0137】
典型的には、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物は、宿主細胞から放出されたAnxA5タンパク質の50%を実質的に超える分を含有する。好ましくは、第1の陰イオン交換生成物は、宿主細胞から放出されたAnxA5タンパク質の60%、70%または80%超を含む。Marderら(上記参照)のプロセスとの比較の点から、先行技術のプロセスが、およそ50%以上の大きな生成物損失を示したことは明らかである。例えば、Marderら(上記参照)のプロセスは、上清を破棄し、ペレットに結合したアネキシンA5を収集する、最初の精製遠心分離工程を伴う。Marderら(上記参照)の、破棄された上清中のアネキシンA5とペレットから回収されたアネキシンA5との相対的量が、それぞれ
図3、2列目及び3列目に示される。その図から、放出されたアネキシンA5の約半分がMarderら(上記参照)のプロセスにおいて破棄されることにより、低収率の方法につながっていることは明らかである。
【0138】
さらなる比較点として、本出願者は、例となるプロセスの収率が、第1の陰イオン交換クロマトグラフィー捕捉工程の終わりに培養物1リットルあたり約5gのAnxA5タンパク質の収率を提供することを見出しており、これは、培養物1リットルあたり0.983gの精製アネキシンA5タンパク質というMarderら(上記参照)において報告される収率よりもはるかに高い(第2段落「結論」を参照されたい)。
【0139】
したがって、本発明の第1の態様において、第1の陰イオン交換生成物が培養物1リットルあたり1g超、2g超、3g超、4g超、または約5gのAnxA5タンパク質を含むことが好ましい。
【0140】
任意選択で、第1の陰イオン交換生成物は、濾過工程(滅菌濾過工程など)に直接または間接的に供される。例えば、限定することなく、0.45~0.2μM濾過工程が好適であることが見出された。
【0141】
F.親和性クロマトグラフィー
本出願者はまた、精製工程の順次の追加に伴い収率の損失が増加し続ける傾向がある(生成物が各工程で失われるため)従来の方法とは対照的に、陰イオン交換工程及びヘパリン親和性クロマトグラフィー工程の組み合わせが、ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程単独でも得られる高純度を、ただし実質的に増加した収率を伴って(すなわち回収率は、約30~40%から約70~90%に増加する)、達成するという驚くべき有益性を有することを発見した(例えば、下記の実施例2を参照されたい)。精製工程の追加に関連するこの収率の大きな増加は、精製工程の組み合わせから通常予想されるであろうものとは正反対である。
【0142】
したがって、本発明第2の態様は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物(これは上述の清澄化工程の生成物である場合も、そうでない場合もある)を含む溶液からの回収及び/または精製のためのプロセスを提供し、本方法は、
第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、AnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液(この溶液は、上記で考察される細胞ホモジナイゼーション、清澄化及び/または第1の陰イオン交換クロマトグラフィー捕捉工程の直接または間接的生成物である場合も、そうでない場合もある)を陰イオン交換樹脂に供することと、
第1の陰イオン交換生成物を直接または間接的に親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産することと、を含む。
【0143】
好ましくは、本発明の第2の態様のプロセスに従って、親和性クロマトグラフィー工程は、AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み得、任意選択で、この結合は、カルシウムイオンの存在によって促進され、さらに任意選択で、AnxA5タンパク質は、EDTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含有する溶出緩衝液を使用して、固定化ヘパリンから溶出される。
【0144】
それに加えて、実施例3で考察されるように、本出願者は、Tween80がヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に対して特に有利な効果を有する(Tween20などの他のTweensを含めた、他の非イオン性洗剤と比較して)ことを発見した。Tween 80を、ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に使用される緩衝液中に例えば0.1%(w/v)前後で組み込むことは、AnxA5タンパク質の単一ピークでの溶出を補助し、圧力を低減し、沈殿を防止し得る。
【0145】
したがって、本発明第3の態様は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液からの回収及び/または精製のためのプロセスを提供し、本方法は、AnxA5タンパク質及び1種以上の不純物を含む溶液(この溶液は、上記で考察される細胞ホモジナイゼーション、清澄化及び/または第1の陰イオン交換クロマトグラフィー捕捉工程の直接または間接的生成物である場合も、そうでない場合もある)を、Tween80の存在下で(好ましくは0.1%Tween80の存在下で)ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産することを含む。
【0146】
それゆえ、互いから独立してまたは組み合わせてのいずれでも操作され得る、本発明第2及び第3の態様の両方とも(すなわち、本発明の第2の態様におけるヘパリン親和性クロマトグラフィー工程は、ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程において使用される緩衝液中にTween 80(例えば、0.1%(w/v)前後で)を含み得る。
【0147】
より一般には、しかしながら、本発明の第1の態様は、放出されたAnxA5タンパク質を親和性クロマトグラフィー工程に供して、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を生産する工程を含み得る。例えば上述の方法によって生産される、第1の陰イオン交換生成物中のAnxA5タンパク質は、親和性クロマトグラフィー工程に直接または間接的に(例えば、滅菌濾過及び/またはさらなる構成成分の添加後に)供され得ることが特に好ましくあり得る。
【0148】
したがって、本発明の第1の態様の一実施形態において(それは本発明の第2及び第3の態様の特長のいずれかまたは両方と組み合わされ得る)、本プロセスは、
(a)上述の放出されたAnxA5タンパク質を含むバイオマスホモジネートが、上述の清澄化プロセスによって清澄化され、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む清澄化された生成物を生産する工程と、
(b)上述の第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、AnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、清澄化された生成物中のAnxA5タンパク質が、陰イオン交換樹脂に供される工程と、
(c)第1の陰イオン交換生成物中の該AnxA5タンパク質が、親和性クロマトグラフィー工程に(直接または間接的に)供される工程と、を含む。
【0149】
好ましくは、親和性クロマトグラフィー工程は、AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み、任意選択で、結合は、カルシウムイオンの存在によって促進される。
【0150】
したがって、ヘパリン親和性工程の前に、AnxA5生成物は、カルシウムイオン(例えば、CaCl2)、非イオン性洗剤(好ましくはTween80)のうちのいずれか1つ以上の添加によってコンディショニングされ得、任意選択で、緩衝され得る(例えば、pH7.4のトリス緩衝液)。限定することなく、本出願者は、濾過された陰イオン交換生成物が、20mMトリス(pH7.4)、0.1%Tween80及び2mM CaCl2を含有する希釈緩衝液で約8倍希釈される場合の有益な効果を実証した。
【0151】
したがって、AnxA5生成物がポリソルベート80でコンディショニングされることが好ましくあり得、より好ましくは、ポリソルベート80は、約0.01%超~最大約10%(w/v)、例えば、約0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の最終濃度にある。この関連における「約」という用語は、定められた値の±50%、40%、30%、20%、10%、または5%を指す。
【0152】
カルシウムでの希釈は、アネキシンA5が固定化ヘパリンクロマトグラフィーに結合することを可能にする。この相互作用は、イオン性相互作用と比較して、緩徐である。接触時間は重要であり、したがってこのクロマトグラフィーは、好ましくは、100cm/h以下で行われる。
【0153】
親和性クロマトグラフィーカラム(例えば、ヘパリン親和性クロマトグラフィーカラム)の負荷において使用される条件は、AnxA5タンパク質のヘパリンへの結合を許容する。つまり、親和性クロマトグラフィーは、典型的に、AnxA5タンパク質に関してポジティブモードで実行される。
【0154】
親和性クロマトグラフィーカラム(例えば、ヘパリン親和性クロマトグラフィーカラム)には、所望のレベルのAnxA5生成物を負荷することができる。例えば、負荷は、カラム樹脂体積1リットルあたり約5gで、またはそれを超えて、例えば、約10g/L、約15g/L、約20g/L、約25g/L、約30g/L以上で実施されてもよい。この関連における「約」という用語は、定められた値の±50%、40%、30%、20%、10%、または5%を指す。実際、本出願者は、カラム樹脂体積1リットルあたり約20~30gのAnxA5生成物の負荷が、プロセス効率ならびに生成物精製及び回収の点で、非常に満足のいく結果を提供することを見出した。かかる高負荷量の関連において、本出願者は、負荷される混合物中のポリソルベート80の存在が、AnxA5タンパク質沈殿または不溶性を回避する上で特に有益であることを見出した。ポリソルベート80の使用の不在下では、沈殿及び背圧の増加が観察され、親和性クロマトグラフィー工程は、効率性が低下する。実施例3及び4を参照されたい。
【0155】
AnxA5タンパク質の負荷後、カラムは、典型的に1回以上洗浄されて、不純物が除去される。任意の好適な洗浄プロトコルが使用されてよい。本出願者は、限定することなく、好適な洗浄プロトコルが2段階洗浄を含むことを見出した。例えば、第1の洗浄段階において、洗浄は、カルシウムを含有する第1の洗浄緩衝液(例えば、20mMトリスpH7.4、0.1%Tween80、2mM CaCl2)を使用して行われ得る。第1段階の洗浄の体積は、所望の結果及び使用される洗浄液の厳密な性質に応じて変えられてもよい。限定することなく、本出願者は、例えば、上述の例となる洗浄緩衝液が、15CVの洗浄の場合に成功裏に使用され得ることを見出した。第2段階の洗浄において、洗浄緩衝液は、カルシウムを、第1の洗浄よりも低い量で含有し得るか、または好ましくは、カルシウムを含有しない(例えば、20mMトリスpH7.4、0.1%Tween80)。第2段階の洗浄の体積は、所望の結果及び使用される第2段階の洗浄液の厳密な性質に応じて変えられてもよい。限定することなく、本出願者は、例えば、上述の例となる洗浄緩衝液が、2CVの洗浄の場合に成功裏に使用され得ることを見出した。
【0156】
それ以降、AnxA5タンパク質は、溶出緩衝液を使用して親和性クロマトグラフィーカラムから溶出され、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の親和性クロマトグラフィー生成物を提供する。ヘパリン親和性クロマトグラフィーカラムを使用する場合、EDTAまたはEGTAなどのカルシウム金属イオンキレート剤を含む溶出緩衝液を使用することが好ましくあり得る。
【0157】
例えば、限定することなく、本出願者は、好適な溶出緩衝液が20mMトリスpH7.4、0.1%Tween80、10mM EDTA、25mM NaClであることを見出しており、これはカルシウムイオンをキレートする。キレート反応は、カルシウムの存在下でのみヘパリンに結合し得るアネキシンA5を特異的に溶出する。
【0158】
生成物の濃度を増加させるために、溶出中に流速を100cm/h未満にまで低減することが好ましくあり得る。例えば、限定することなく、実施例において、本出願者は、溶出において流速を60cm/h以下にまで低減することによって濃縮溶出を可能にした。完全な溶出ピークは、例えば、0.05AUでUVシグナルの上昇から開始して、下行ピークにおける0.05AUまでで収集され得、これはおよそ7CVに相当する。好ましくは、溶出プロファイルは、単一ピークを示し、これは最も理想的には鋭いピークである。
【0159】
したがって、第1の親和性クロマトグラフィー生成物は、放出されたAnxA5タンパク質及びEDTAまたはEGTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含み、任意選択で、このカルシウムイオンキレート剤は、約0.1mM~500mM、例えば、約1mM~約100mMの範囲で、より典型的には約2mM~約50mMの範囲で、より好ましくは約5mM~約15mMの範囲で存在し、最も好ましくは約10mMである。この関連において「約」という用語は、定められた濃度(複数可)の±50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%の意味を含み得る。
【0160】
親和性クロマトグラフィー工程は、本プロセススキームにおいて最も有力な精製工程であり得る。AnxA5タンパク質は、カルシウムイオンに結合し、このカルシウムに結合した状態において、生成物は、ヘパリンとの高度に特異的な結合を形成できる。典型的には、カルシウムと錯化する能力を有する正しく折り畳まれたAnxA5タンパク質形態のみがヘパリンに結合できる。それによって、親和性クロマトグラフ工程は、正しく折り畳まれた生成物と誤って折り畳まれた生成物との間の識別を補助するのに有用であり得る。それに加えて、中間工程は、高度に特異的な相互作用が、カルシウムのEDTAでのキレート反応による特異的な溶出モードと組み合わされるとき、高い除去係数に達する。したがって、DNA含量の中程度の低減と組み合わせて、内毒素及びHCPの強力な低減が観察される。内毒素は、先行する陰イオン交換捕捉工程中に典型的にすでに低減されているが(好ましくは約97%)、さらに低減され(好ましくは約99%)、これは、好ましくは、内毒素レベルを、第1の陰イオン交換捕捉工程の前の清澄化された生成物中のレベルの約0.03%まで推移させる。
【0161】
G.陰イオン交換精錬
本発明の第1、第2及び/または第3の態様のさらなる実施形態において、AnxA5生成物(例えば、親和性クロマトグラフィー工程によって生産された)は、陰イオン交換精錬工程によって直接または間接的にさらに精製されてもよい。
【0162】
親和性クロマトグラフィー工程によって生産されたAnxA5生成物が陰イオン交換精錬工程によって間接的にさらに精製される場合、親和性クロマトグラフィーの工程及び陰イオン交換精錬工程は、1つ以上のコンディショニング添加剤の、親和性クロマトグラフィー工程の生成物への添加によって分離されてもよい。
【0163】
好適な添加剤には、例えば、親和性クロマトグラフィー生成物の生成物中のAnxA5タンパク質をさらに希釈するための希釈剤(例えば、水)、緩衝液(例えば、トリス、例えば、35mM及びpH8で)、非イオン性洗剤(例えば、ポリソルベート、より好ましくはTween80、約0.1w/v%の濃度などで)、及び/または下記で考察される本発明の第4の態様に基づく1つ以上のさらなる添加剤が含まれ得る。
【0164】
換言すれば、本発明の第4の態様は、カルシウム金属イオンキレート剤(例えば、EDTA)が陰イオン交換工程の有効性に悪影響を及ぼし得るという本出願者の気づきに基づく。遊離EDTA(または他のキレート剤)は、陰イオン交換官能基に直接結合し得、それによって、陰イオン交換工程によって達成される容量、及びさらには分離も低減する。これは、ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程の生成物に対して陰イオン交換を行う場合に特に問題であり、この場合、AnxA5タンパク質がカルシウムイオンの存在下でヘパリンに結合しており、するとカルシウム金属イオンキレート剤(例えば、EDTA)は、結合したAnxA5タンパク質を溶出するのに使用される。結果として、溶出されたヘパリン親和性クロマトグラフィー工程のAnxA5生成物は高レベルのカルシウムイオンキレート剤を含有する。AnxA5生成物をさらなる陰イオン交換工程でさらに精製できることが一般に望ましいが、カルシウムイオンキレート剤は、そのさらなる陰イオン交換工程中に問題となる構成成分である。他方で、陰イオン交換工程前にカルシウム金属イオンキレート剤を除去しようとする試みは、時間を浪費し、しがたって費用もまた増加させる。したがって、例えば、緩衝液交換のために透析工程を伴う先行技術の方法は、緩徐で非効率的であり、このため生産費用を増加させる。さらに、陰イオン交換工程中にカルシウム金属イオンキレート剤をAnxA5生成物に組み込むことは、AnxA5タンパク質の、内毒素を含む不純物へのカルシウム媒介性結合を防止するために重要な構成要素であり得る。したがって、カルシウムイオンキレート剤の陰イオン交換樹脂への結合を遮断または低減するが、それでも陰イオン交換工程が、透析に関連する不都合及び費用を伴わずに、また陰イオン交換工程中のカルシウム金属イオンキレート剤の有益な効果を阻止することなく行われることを可能にする、添加剤を導入することは、好都合かつ効果的であろう。
【0165】
本出願者は、陰イオン交換の前にAnxA5タンパク質生成物へのまたは1種類以上の追加の選択された金属イオンの組み込みによってこれが達成され得ることに気づき、この追加の選択された金属イオンは、カルシウム金属イオンキレート剤が選択された金属イオンに対して、陰イオン交換樹脂に対するその結合親和性よりも大きいが、カルシウムイオンに対するその結合親和性よりは小さい結合親和性を有するように選択される。適切な追加の金属イオンの選択は、カルシウムイオンキレート剤の性質及び陰イオン交換樹脂の性質に左右されるであろう。例えば、EDTAをカルシウムイオンキレート剤として使用する場合、Mg2+イオンが一般に本発明の目的を達成するのに好適であり、陰イオン交換工程の前にAnxA5タンパク質生成物に添加され得る。
【0166】
したがって、本発明の第4の態様は、アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物からの回収及び/または精製のためのプロセスであって、
該プロセスが、陰イオン交換工程を行い、それによって、AnxA5タンパク質を組成物から回収及び/または精製するために、組成物を陰イオン交換樹脂に供することを含むことを特徴とし、
該陰イオン交換工程が、追加の選択された金属イオンの存在下で実施されることをさらに特徴とし、
この追加の選択された金属イオンは、カルシウム金属イオンキレート剤が選択された金属イオンに対して、陰イオン交換樹脂に対するその結合親和性よりも大きいが、カルシウムイオンに対するその結合親和性よりは小さい結合親和性を有するように選択される、プロセスを提供する。
【0167】
好ましくは、追加の選択された金属イオンは、組成物に陰イオン交換樹脂に供される前に、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物と混合される。後続の陰イオン交換工程において使用される溶液(例えば、洗浄液及び/または溶出緩衝液)は、追加の選択された金属イオンもまた含む場合も、含まない場合もある。したがって、本発明のこの態様の一実施形態において、追加の選択された金属イオンの存在下で陰イオン交換工程を実施する工程は、組成物に陰イオン交換樹脂に供される前に、追加の選択された金属イオンを、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物に添加すること指す。
【0168】
本発明の第4の態様の一実施形態において、カルシウム金属イオンキレート剤は、EDTAまたはその塩、EGTAまたはその塩から選択され、最も好ましくはEDTAである。
【0169】
カルシウム金属イオンキレート剤は、約0.1mM~500mM、例えば、約1mM~約100mMの範囲、より典型的には約2mM~約50mMの範囲を超過して、及び/またはその濃度で、例えば、約0.1mM、0,5mM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM以上または少なくともその濃度で、組成物中に存在し得る。この関連において、「約」という用語は、定められた値の±0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1mMの意味を含み得る。上述の関連において、「超過」という用語は、先行する親和性クロマトグラフィー工程におけるカラム上の固定化ヘパリンへのAnxA5タンパク質の結合に寄与し得るいずれの二価イオンも除去するのに十分な量のカルシウム金属イオンキレート剤が存在し、それによって、AnxA5タンパク質がカラムから溶液に放出され、次いで陰イオン交換精錬工程において直接または間接的に使用されることを可能にする、という意味を含み得る。
【0170】
本発明の第4の態様の例となる一実施形態において、選択された金属イオンは、Mg2+イオンなどの二価陽イオンである。
【0171】
選択された金属イオンが、陰イオン交換工程中、組成物を陰イオン交換樹脂に供するプロセス中にカルシウムイオンキレート剤と陰イオン交換樹脂との間の相互作用を低減する(約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%以上など)または防止するのに有効な量で存在することが好ましくあり得る。例えば、選択された金属イオンは、陰イオン交換工程中、組成物の陰イオン交換樹脂への負荷中及び/またはAnxA5タンパク質が陰イオン交換樹脂に結合し、不純物が洗浄によって除去される1つ以上の洗浄工程中に、カルシウムイオンキレート剤と陰イオン交換樹脂との間の相互作用を低減するまたは防止するのに有効な量で存在し得る。
【0172】
選択された金属イオンが、陰イオン交換工程中、カルシウムイオンキレート剤の存在下でのAnxA5タンパク質の陰イオン交換樹脂への結合を増加させるのに有効な量で存在して、それによって、陰イオン交換工程の素通り画分におけるAnxA5タンパク質の損失を、選択された金属イオンが陰イオン交換工程中に存在しない場合に観察される損失のレベルと比較して低減する(約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%以上など)ことが好ましくあり得る。
【0173】
選択された金属イオンが、陰イオン交換工程中、約1~約100mM、例えば、約2~約50mM、約5~約25mM、約10~約15mMまたは約12.5mMの濃度で存在することが好ましくあり得る。
【0174】
さらに、カルシウム金属イオンキレート剤が、EDTAであり、該選択された金属イオンは、Mg2+イオンであり、より好ましくは、Mg2+イオン対EDTAのモル比は、0.5:1~2:1の範囲、最も好ましくは少なくとも1:1または1:1超であることが好ましくあり得る。
【0175】
本発明の第4の態様の関連において、さらなる実施形態では、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含み、陰イオン交換樹脂に供される組成物は、AnxA5タンパク質を親和性クロマトグラフィー工程に供し、AnxA5タンパク質をカルシウムイオンキレート剤で溶出し、それによって、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物である親和性クロマトグラフィー生成物を生産する工程を含む、先行するプロセスの直接または間接的生成物であり得る。例えば、先行する親和性クロマトグラフィー工程は、AnxA5タンパク質の固定化ヘパリンへの結合を含み得、任意選択で、この結合は、カルシウムイオンの存在によって促進され、さらに任意選択で、AnxA5タンパク質は、EDTAなどのカルシウムイオンキレート剤を含有する溶出緩衝液を使用して、固定化ヘパリンから溶出される。
【0176】
直接または間接的生成物の陰イオン交換工程への適用の前に、先行する親和性クロマトグラフィー工程と陰イオン交換工程との間に透析工程は存在せず、かつ/または先行する親和性クロマトグラフィー工程の生成物からのカルシウムイオンキレート剤の除去は行われないことがさらに好ましくあり得る。
【0177】
本発明の第4の態様の関連において、さらなる実施形態では、選択された金属イオンは、陰イオン交換工程の前に、またはその最中に組成物に添加される。
【0178】
好ましい実施形態において、本発明の第1、第2または第3の態様のいずれかによる親和性クロマトグラフィー工程の生成物は、本発明の第4の態様における陰イオン交換工程などの、さらなる陰イオン交換工程で処理される。
【0179】
任意選択で、(第2の)精錬陰イオン交換工程の前に、AnxA5タンパク質の濃度、pH、伝導率、カルシウムイオンキレート剤のレベル及び非イオン性洗剤のレベル、または選択された追加の金属イオンのレベル(本発明の第4の態様において)からなる群から選択される、放出されたAnxA5タンパク質の環境の1つ以上のパラメータが調整される。
【0180】
典型的に、精錬工程の(第2の)陰イオン交換樹脂及びAnxA5生成物の接触の前に、陰イオン交換樹脂は、平衡化される。任意の好適な平衡化が用いられてよい。例えば、陰イオン交換樹脂は、緩衝液(例えば、20mMトリスpH7.4)、非イオン性洗剤(例えば、0.1%ポリソルベート、好ましくはTween80)及び塩(例えば、25mM NaCl)で平衡化され得る。任意の好適な平衡化体積が用いられてよく、限定することなく、本出願者は、例となる実施形態において3カラム体積(CV)が好適な体積であることを見出した。
【0181】
好ましくは、(第2の)陰イオン交換精錬工程は、AnxA5タンパク質に関してポジティブモードで実行され、このため、AnxA5タンパク質は、陰イオン交換工程中に陰イオン交換体に一時的に結合し、典型的に洗浄液がカラムに通されて、結合したAnxA5タンパク質から不純物を除去し、次いで、溶出緩衝液を陰イオン交換樹脂に適用して、結合したAnxA5タンパク質を放出させることによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第2の陰イオン交換生成物が生産される。
【0182】
強陰イオン交換樹脂が好ましい。強陰イオン交換樹脂は、当該技術分野でよく知られており、例としては、トリアルキル塩化アンモニウムもしくは水酸化アンモニウムを有するI型樹脂、またはジアルキル2-ヒドロキシエチル塩化アンモニウムもしくは水酸化アンモニウムを有するII型樹脂などの、第四級アンモニウム官能基を含む樹脂が挙げられる。限定することなく、第2の精錬工程に好適な陰イオン交換樹脂の一例としては、Source15 Qが挙げられる。Source 15Q陰イオン交換樹脂は、ポリマー強陰イオン交換体として定義され得、第四級アンモニウムリガンド、約15μmの累積体積分布による粒度中央値(d50v)、ポリスチレン/ジビニルベンゼンマトリックス、及び/またはベッド高さ10cmでのFineLine 100カラムとして評価したときに約400cm/h、1000kPaの圧力/流動規格を有するものとして、さらに特徴付けられ得る。
【0183】
限定することなく、第2の精錬工程に好適な陰イオン交換樹脂のさらなる例としては、Capto Q ImpResが挙げられる。Capto Q ImpResは、強陰イオン交換体として定義され得、第四級アミンリガンド、高流速アガロースマトリックス、約36~44μmの粒度中央値(d50v)、約0.15~0.18mmol Cl-/溶媒mlのイオン容量、55mg超のBSA及び48mg超のβ-ラクトグロブリンの結合容量/クロマトグラフィー溶媒ml、及び/またはベッド高さ20cmでの1m直径カラムとして評価したときに少なくとも220cm/hで約300kPaの圧力/流動規格を有するものとして、さらに特徴付けられ得る。
【0184】
理論に拘束されることなく、本出願者は、精製対象のAnxA5タンパク質が、組換え源(例えば、細菌が発現するAnxA5タンパク質のグルコノイル化をなくす、またはグルコノイル化を低くする、Aonら(Appl.Env.Microbiol.,2008,74(4):950-958(その内容は参照により本明細書に組み込まれる))に記載されるような、PGLを過剰発現するようにさらに操作されているE.coli BL21(DE3)に由来する場合、(第2の)陰イオン交換精錬工程にCapto Q ImpRes陰イオン交換樹脂を使用することが特に有利であり得ることを見出した。この関連において「低い」とは、次いで、グルコノイル化のレベルが、E.coli株BL21(DE3)(例えば、広く市販されており、Marder et al.,2014,BMC Biotechnology,14:33に記載されるようなもの)において発現されるAnxA5タンパク質のグルコノイル化のレベル未満(そのレベルの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満など)である、という意味を含み得る。例えば、(第2の)陰イオン交換精錬工程のためにCapto Q ImpRes陰イオン交換樹脂に適用される生成物中のグルコノイル化AnxA5タンパク質のレベルは、適用される生成物中のAnxA5タンパク質の全含量の0.5~30%、または0.5~20%、または0.5~15%、または0.5~10%の範囲内であることが可能である。Anx5のグルコニル化(guluconylated)バリアントは、例えば、適切な陰イオン交換または逆相カラムを使用した超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)クロマトグラフィー器具を使用することによって、測定及び定量することができる。様々なピークを、質量分析法(MS)を用いてさらに特定及び特徴付けすることができる。
【0185】
本出願者は、Capto Q ImpRes陰イオン交換樹脂が高結合容量を有し、背圧を伴わずに高流速に耐え、より高いベッド高さで充填され得、より低い価格を有することから、精製対象のAnxA5タンパク質のグルコノイル化がないか、またはそのレベルが低い場合、(第2の)陰イオン交換精錬工程のためのCapto Q ImpRes陰イオン交換樹脂の使用が、さらにより効率的なプロセスをもたらす(例えば、(第2の)陰イオン交換精錬工程のためのSource 15Q陰イオン交換樹脂の使用と比較して)ことを見出した。最終生成物の品質及び純度は、Source 15Qが使用されるかCapto Q ImpRes陰イオン交換樹脂が使用されるかとは無関係に維持される。しかしながら、Source 15Q陰イオン交換樹脂(15μm粒度を有する)からCapto Q ImpRes陰イオン交換樹脂(40μm粒径を有する)への切り替えが、全プロセスの操作に必要とされる時間を削減することによって(特に、精錬に使用される第2の陰イオン交換工程は、最も時間を浪費する工程のうちの1つであるため)、約5倍(5×)を超え得る生産性増加を提供し、また全体的な製造費用を約50%を超えて削減可能であり得ることが推定される。非常に小さなビーズ径(30μm未満)を有する樹脂の回避は、高流速を可能にし、クロマトグラフィーカラムが、許容できない背圧を引き起こすことなくより高い樹脂ベッド高さで充填されることを可能にする。これは、所与の床面積(カラム直径)に対して、より多くの樹脂がカラムに充填され得、したがってより多くのタンパク質が結合され得るため、生産性を増加させ、それと同時に、より高い流速に起因してより高速の操作を可能にする。
【0186】
精錬のために(第2の)陰イオン交換樹脂の上に負荷した後、ポジティブモード下で、AnxA5タンパク質は、樹脂に一時的に結合し、それを洗浄して不純物を低減/除去することができる。任意の好適な洗浄条件が用いられ得る。例えば、洗浄液は、緩衝液(例えば、20mMビス-トリス、pH7)、及び塩(例えば、25mM NaCl)、及び任意選択で、非イオン性緩衝液(例えば、約0.1w/vのレベルなどでのポリソルベート、好ましくはTween80)の水溶液を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなる。任意の好適な洗浄体積が使用されてよく、限定することなく、本出願者は、例となる実施形態において3カラム体積(CV)が好適な体積であることを見出した。
【0187】
結合したAnxA5タンパク質は次いで、溶出緩衝液を使用して陰イオン交換樹脂から放出される。任意の好適な溶出緩衝液が用いられ得る。例えば、溶出緩衝液は、緩衝液(例えば、20mMビス-トリス、pH7)、洗浄液よりも高い濃度での塩(例えば、180mM NaCl、任意選択で±100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、または5mM)及び任意選択で、非イオン性緩衝液(例えば、約0.1w/vのレベルなどでのポリソルベート、好ましくはTween80)の水溶液を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなる。任意の好適な溶出体積が使用されてよく、限定することなく、本出願者は、例となる実施形態において、溶出緩衝液の濃度を直線勾配で0から100%にまで増加させながらの33カラム体積(CV)が、溶出に好適であることを見出した。
【0188】
このようにして、AnxA5タンパク質は溶出緩衝液中に放出され、これは、(第2の)精錬された陰イオン交換生成物を提供する。実施例1で考察されるように、0.1%Tween80を用いて実施されたプロセスは、中間プロセス後の生成物収率をおよそ30%増加させた。
【0189】
(第2の)陰イオン交換樹脂は次いで、再生され、清浄化され得る。再生及び清浄化に好適な方法は、当該技術分野で知られており、1つのかかる好適なプロトコルが実施例で考察される。
【0190】
精錬工程は、生成物に関連する不純物の低減、例えば、様々なアネキシンA5アイソフォームの分離のために、主に実施される。それに加えて精錬工程は、残留DNAに対するプロセスにおいて最も高い除去係数に達し、HCPを強力に低減する。内毒素は、中間工程後にすでに低レベルにあるが、約99%さらに低減され、これは(先行する細胞ホモジナイゼーション、ヌクレアーゼ処理、清澄化、捕捉陰イオン交換、濾過(滅菌濾過工程など)、及びヘパリン親和性工程と組み合わせて用いられるとき)、内毒素レベルを、第1のAX工程の前の清澄化された生成物中のレベルの約0.0003%まで推移させる。
【0191】
したがって、本発明の第1、第2、第3の及び/または第4の態様のさらなる実施形態において、組換え的に発現され細胞内アネキシンA5(AnxA5)の配列を含むタンパク質の、細胞壁を持つ宿主細胞、または本発明の第1の態様における培養物からの回収及び/または精製のためのプロセスが提供され、好ましくは、本プロセスは、組換え的に発現された細胞内AnxA5タンパク質の、宿主細胞の培養物からの回収及び/または精製を含み、この培養物は、少なくとも約100L、約200L、約300L、約400L、約500L、約600L、約700L、約800L、約900L、約1,000L、約2,000L、約3,000L、約4,000L、約5,000L、約6,000L、約7,0000L、約8,0000L、約9,0000L、約10,000L、約20,000L、約30,000L、約40,000L、約50,000L、約60,000L、約70,0000L、約80,0000L、約90,0000L、約100,000Lまたはそれよりも高い体積を有し、
(a)本プロセスは、本発明の第1の態様に従って、細胞内タンパク質を、非イオン性洗剤を含むホモジナイゼーション緩衝液の存在下で宿主細胞から放出させることを含み、
(b)任意選択で、放出工程は、小節Cに上述される本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上に従い、
(c)さらに任意選択で、本プロセスは、小節Dに上述される実施形態のうちのいずれか1つ以上によりバイオマスホモジネートを清澄化する工程を含み、
(d)本プロセスは、小節Eに上述される実施形態のうちのいずれか1つ以上に従って第1の陰イオン交換工程を行い、それによって、放出されたAnxA5タンパク質を含む第1の陰イオン交換生成物を生産するために、放出されたAnxA5タンパク質を直接または間接的に陰イオン交換樹脂に供する工程をさらに含み、
(e)本プロセスは、小節Fに上述される本発明の第1、第2及び/または第3の態様のうちのいずれかに従って、放出されたAnxA5タンパク質を直接または間接的に親和性クロマトグラフィー工程に供する工程をさらに含み、
(f)親和性クロマトグラフィー工程の生成物は、AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む組成物であり、
(g)AnxA5タンパク質及びカルシウム金属イオンキレート剤を含む、親和性クロマトグラフィー工程の直接または間接的生成物は、この節(すなわち節G)に上述される実施形態のいずれかに従って陰イオン交換工程に供される。
【0192】
H.生成物製剤化
本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれかのプロセスは、好ましくは本プロセスの終わりに、濃縮、緩衝液変更、コンディショニング及び濾過(滅菌濾過工程など)からなる群から選択される1つ以上のさらなる工程、ならびに任意選択で、AnxA5タンパク質含有生成物を滅菌容器中に貯蔵する最終工程をさらに含んでもよい。
【0193】
例えば、生成物製剤化に使用されるさらなる工程のうちの1つは、限外濾過/透析濾過(UF/DF)であり得、任意選択で、UF/DF工程の生成物は、少なくとも約1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、125mg/mLまたはそれを超える濃度でAnxA5タンパク質を含有する。
【0194】
別の例において、生成物製剤化に使用されるさらなる工程のうちの1つは、非イオン性界面活性剤、好ましくはポリソルベート、及びより好ましくはTween80の添加であり得る。非イオン性界面活性剤は、最終生成物のために所望される量で、例えば、約0.05%(w/w)(例えば、±0.05、0.04、0.03、0.02または0.01w/v%)の最終濃度になるように、添加され得る。
【0195】
別の例において、生成物製剤化に使用されるさらなる工程のうちの1つは、例えば、0.45~0.2μmフィルターまたは0.22μmフィルターを使用した、濾過工程(滅菌濾過工程など)であり得る。
【0196】
上記に示されるように、本発明の第1、第2、第3または第4の態様に記載のプロセスは、滅菌濾過工程、及び滅菌濾過されたAnxA5タンパク質含有生成物を滅菌容器に入れる工程で完結してもよい。
【0197】
充填された容器中のAnxA5タンパク質の最終濃度は、必要に応じて調整されてもよい。限定することなく、本出願者は、10mg/mLの最終濃度を例として示した。好適な濃度は、例えば、1~125mg/mL、2~100mg/mL、5~50mg/mL、7~30mg/mLまたは約10~20mg/mLであり得る。
【0198】
任意選択で、本発明のプロセスは、約150mM NaCl(例えば、±50、40、30、20または10mM)、約1mM CaCl2(例えば、±500、400、300、200、100、または50μM)、約0.05%(w/w)(例えば、±0.05、0.04、0.03、0.02または0.01w/v%)のTween80などのポリソルベート、または他の非イオン性洗剤を含む、約pH7.4(例えば、±0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1pH単位)の無リン酸緩衝液(ビス-トリスまたはトリス緩衝液など)中に、最終滅菌AnxA5タンパク質生成物を提供し得る。約7.4のpHは、それがヒトの血液中のpHに一致し、良好な溶解度とともに安定なAnxA5タンパク質を提供するため、ヒトにおける使用に(とりわけ静脈内送達に)意図される製剤に関する典型的な目標pHである。pH7を下回ると、特にpH6前後まで低下すると、AnxA5タンパク質は溶解度を失い、沈殿し始める可能性がある。
【0199】
NaClは、貯蔵中にAnxA5生成物を単量体形態で維持するのに有用であり得る。したがって、本発明のプロセスは、存在するNaCl濃度がAnxA5タンパク質を主として(つまり、約50%超、例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または実質的に100%)単量体である形態で維持する、最終滅菌AnxA5タンパク質生成物を提供し得る。単量体レベルパーセンテージは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの、当該技術分野で周知の技法を用いて容易に決定することができる。
【0200】
一実施形態において、本発明のプロセスは、宿主細胞培養物1Lあたり1g超、より好ましくは少なくとも約1.5g/L、さらにより好ましくは約2~約4g/Lの範囲のAnxA5タンパク質の全収率で、治療上許容される最終滅菌AnxA5タンパク質生成物を提供する。この関連において、「約」という用語は、定められた値の±0.4、0.3、0.2または0.1g/Lを含み得る。
【0201】
別の実施形態において、本発明のプロセスは、宿主細胞培養物中からに存在するAnxA5タンパク質の少なくとも約24重量%(例えば、±10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%)、またはそれよりも多くのAnxA5タンパク質の全回収率で、治療上許容される最終滅菌AnxA5タンパク質生成物を提供する。これは、例えば、最初のホモジネート中(これは、ホモジネートのアリコートを遠心分離し、上清中のAnxA5のレベルを試験することによって捕捉及び測定することができる)及び最終精製生成物中の可溶性AnxA5タンパク質を測定することによって、決定することができる。
【0202】
それに加えて、本プロセスの任意の時点で(関連性があれば、滅菌容器を充填する前に)、及び典型的に上述の最終精製工程の後に、AnxA5タンパク質は、化学修飾され得る。例えば、AnxA5タンパク質は、PEG化され得る。PEG化アネキシンA5は、WO02/067857に開示される。PEG化は、当業者に周知の方法であり、ここにおいてポリペプチドまたはペプチド模倣化合物(本発明においては、AnxA5タンパク質)は、1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)分子が、1つ以上のアミノ酸またはその誘導体の側鎖に共有結合するように修飾されている。それは、最も重要な分子変化構造化学技法(MASC)のうちの1つである。他のMASC技法が使用されてもよく、かかる技法は、例えば、分子の体内半減期を延長するなど、分子の薬カ学的特性を改善し得る。PEG-タンパク質複合体は、まずPEG部分を、それが本発明のタンパク質またはペプチド模倣化合物と反応して、それにカップリングするように活性化することによって形成される。PEG部分は、分子量及び立体配座において相当に異なり、このうち初期の部分(一官能性PEG、すなわちmPEG)は分子量が12kDa以下の線状であり、より後期の部分は増加した分子量のものである。PEG技術における最近の革新であるPEG2は、30kDa(またはそれ未満)のmPEGのリジンアミノ酸へのカップリングを伴い(とはいえPEG化は、PEGの他のアミノ酸への付加に拡張され得る)、それがさらに反応させられて、はるかにより大きな分子量の線状mPEGのような挙動を示す分岐状構造を形成する(Kozlowski et al.,2001)。PEG分子をポリペプチドに共有結合させるために使用され得る方法が、Roberts et al.(2002)Adv Drug Deliv Rev,54,459 - 476、Bhadra et al.(2002)Pharmazie 57,5 - 29、Kozlowski et al.(2001)J Control Release 72,217 - 224、及びVeronese(2001)Biomaterials 22,405 - 417ならびに同文献中で言及される参考文献にさらに記載される。PEG化の利点には、低減された腎クリアランスが含まれ、これは一部の生成物に関して、投与後のより持続される吸着ならびに制限された分布をもたらすことにより、一定で持続される血漿中濃度、及びそれゆえに臨床効果の増加につながる可能性がある(Harris et al.(2001)Clin Pharmacokinet 40,539 - 551)。更なる利点には、治療化合物の低減された免疫原性(Reddy(2001)Ann Pharmacother,34,915 - 923)、及びより低い毒性(Kozlowski et al.(2001),Biodrugs 15,419 - 429)が含まれ得る。AnxA5タンパク質が化学修飾される場合、例えば、未反応の構成成分を低減するもしくは除去するため、及び/または最終生成物への組み込み用に化学修飾AnxA5タンパク質の均一集団を選択するために、1つ以上の追加の精製工程を行うことが好適であり得る。化学修飾タンパク質の、反応プロセスからの精製に好適な技法は、当業者に知られている。
【0203】
最終生成物は、薬学的もしくは獣医学的組成物であり得るか、またはそれを形成するようにその後製剤化され得る。
【0204】
最終生成物は、単位剤形で提示されてもよい。例えば、単位剤形は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mgのAnxA5タンパク質(「約」という用語は、±0.5、0.4、0.3、0.2または0.1mgを指す)、または例えば、0.1~1000mg、または1~100mgの範囲内でそれよりも多くを含有し得る。
【0205】
薬学的または獣医学的組成物は、AnxA5タンパク質を、薬学的にまたは獣医学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混和して含み得、これらは典型的に、意図される投与経路及び標準的な薬務に関して選択される。組成物は、即時放出、遅延放出または制御放出用途の形態にあってもよい。好ましくは、製剤化は、活性成分の1日用量もしくは単位、1日部分用量もしくはその適切な割合を含有する単位用量である。
【0206】
「薬学的または獣医学的許容される」という語句は、適宜、動物またはヒトに投与されたときに、有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を引き起こさない組成物への言及を含む。かかる薬学的または獣医学的組成物の調製は、本開示に照らして当業者に知られており、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990に例として示される通りである。その上、動物またはヒト投与に関して、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって要求される滅菌状態、発熱性、全般的安全性及び純度の基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0207】
本明細書で使用されるとき、「薬学的にまたは獣医学的に許容される担体」は、当業者には知られていようが、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌薬剤)、等張剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、賦形剤、崩壊剤、そのような同様の材料及びそれらの組み合わせを含む。任意の従来の担体が活性成分と不適合性である限りを除いて、治療的または薬学的組成物におけるその使用が企図される。
【0208】
本発明による薬学的または獣医学的組成物は、非経口投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、眼内投与、頭蓋内投与、脳内投与、骨内投与、脳室内投与、髄腔内投与または皮下投与に、薬物溶出ステントからの投与に、輸注技法による投与に、または局所投与に(表皮に好適な形態、例えば、クリームもしくは軟膏、吸入、点眼薬/目薬、点耳薬/耳薬、または体内の粘膜を通してなど)意図され、それゆえ、それに好適な様態で製剤化される場合も、そうでない場合もある。滅菌注射液は、所要量の活性化合物を、上記に列挙された種々の他の成分とともに適切な溶媒に組み込み、続いて滅菌することによって調製され得る。薬学的組成物は、他の物質、例えば、溶液を血液と等張性にするのに十分な塩またはグルコースを含有し得る、滅菌水溶液の形態で使用されるのが最善であり得る。必要な場合、水溶液は、好適に(好ましくは、3~9のpHに)緩衝され得る。滅菌条件下での好適な薬学的製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技法によって容易に遂行される。
【0209】
本発明による薬学的または獣医学的組成物は、代替的に、凍結乾燥粉末であり得る滅菌粉末などの、粉末の形態で製剤化されてもよい。
【0210】
ヒト患者などの患者への投与用のAnxA5タンパク質の治療上有効量は、1日投薬量レベルに基づいて、単回または分割用量で投与して、成人につき0.01~1000mgのAnxA5タンパク質(例えば、患者の体重1kgあたり約0.001~20mg、例えば、0.01~10mg/kg、例としては0.1mg/kg超かつ20、10、5、4、3または2mg/kg以下、例えば、約1mg/kg)であり得る。
【0211】
いずれにしても、医師は、任意の個々の患者に最も好適であろう実際の投薬量を決定し、それは特定の患者の年齢、体重及び応答により異なるであろう。上記の投薬量は、平均的な実例を例として示している。当然のことながら、より高いまたはより低い投薬量範囲が有利である個々の事例があり得、そのような事例は本発明の範囲内にある。
【0212】
獣医学的使用の場合、本発明の化合物は、通常の獣医学的実務に従って好適に許容される製剤として投与され、獣医は、特定の動物に最も適切であろう投薬レジメン及び投与経路を決定する。
【0213】
I.生成物特質
本発明のプロセスは、上記に定義されるAnxA5生成物を提供する。したがって、特許請求されるプロセスによって生産される生成物はまた、本発明のさらなる第5の態様である。
【0214】
さらなる実施形態において、本発明の態様のいずれかのプロセスは、ヒトにおいて使用するための注射用医薬品に好適な純度を有するAnxA5タンパク質を含む生成物を提供し得る。本明細書に記載されるプロセスは、典型的に、プロセスに関連する不純物を、許容されるレベルを優に下回るまで、例えば、宿主細胞タンパク質をAnxA5タンパク質1mgあたり20ng未満、DNAをAnxA5タンパク質1mgあたり10pg未満、及び内毒素をAnxA5タンパク質1mgあたり1EU未満まで、除去する。
【0215】
さらなる実施形態において、本発明の態様のいずれかのプロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5ng未満未満(less than less than)またはそれ未満のレベルで非AnxA5タンパク質、特に宿主細胞タンパク質(組換え的に発現されたAnxA5タンパク質以外)を含む、生成物を提供し得る。FDA及びEMAは、宿主細胞タンパク質が100ng/mg未満であるよう要求し、本出願者は、宿主細胞タンパク質が20ng/mg未満であることを実証した。宿主細胞タンパク質含量は、例えば、ELISAサンドイッチ技法または他のEMA及びFDA承認の方法により、抗宿主細胞タンパク質抗体を使用することによって、測定することができる。
【0216】
さらなる実施形態において、本発明の態様のいずれかのプロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり100、90、80、70、60、50 45、40、35、30、35、20、15未満、好ましくは10、5または1EU未満の内毒素含量を含む生成物を提供し得、かつ/または好ましくは、本プロセスは、単位剤形にある生成物を提供し、この生成物は、単位用量あたり100、90、80、70、60、50 45、40、35、30、35、20、15未満、好ましくは10、5または1EU未満を含有する。FDA及びEMAは、内毒素が100EU/用量未満であるよう要求し(最大許容量は350EU/用量である)、この要求される量は、10mg用量で10EU/mg未満に相当する。これらのパラメータ内で、単位剤形は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mgのAnxA5タンパク質またはそれよりも多く(例えば、0.1~1000mg、または1~100mgの範囲内)を含有し得る。内毒素は、例えば、LALに基づく技法または他のEMA及びFDA承認の方法を使用することによって、測定することができる。
【0217】
さらなる実施形態において、本発明の態様のいずれかのプロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり1,000pg未満、好ましくは、AnxA5タンパク質1mgあたり500pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり400pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり300pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり200pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり100pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり50pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり40pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり30pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり20pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり15pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり10pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり9pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり8pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり7pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり6pg未満、AnxA5タンパク質1mgあたり5pg未満、例えば、AnxA5タンパク質1mgあたり約4pgの宿主細胞核酸(例えば、DNA)レベルなどの核酸(例えば、DNA)レベルを含む、生成物を提供し得る。DNAは、例えば、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)技法または他のEMA及びFDA承認の方法を使用することによって、測定することができる。
【0218】
特に好ましい実施形態において、本発明の態様のいずれかのプロセスは、次のものからなる列挙項目から選択される任意の1つ以上の特質を有する生成物を提供し得る。
-典型的に8~12g/L前後のAnxA5タンパク質の濃度、
-100ng/mg以下、より好ましくは20ng/mgの宿主細胞タンパク質レベル(ELISAによって決定)、
-100pg/mg以下、より好ましくは10pg/mgの宿主細胞DNAレベル
-35EU/mg以下、より好ましくは1EU/mgの内毒素、
-サイズ排除クロマトグラフィーによって決定して95%超の純度、
-1cfu/mL未満のバイオバーデン(Ph.Eur.2.6.12によって決定)、
-可視的粒子のない無色透明の外観、及び
-ウェスタンプロット解析によって検出されるメインバンドが、アネキシンA5参照に対応する。
【0219】
さらなる特に好ましい実施形態において、生成物中のAnxA5タンパク質は、低レベルのグルコノイル化を有し得る。この関連において「低い」とは、次いで、グルコノイル化のレベルが、E.coli株BL21(DE3)(例えば、広く市販されており、Marder et al.,2014,BMC Biotechnology,14:33に記載されるようなもの)において発現されるAnxA5タンパク質のグルコノイル化のレベル未満(そのレベルの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満など)である、という意味を含み得る。 例えば、生成物中のグルコノイル化AnxA5タンパク質のレベルは、生成物中のAnxA5タンパク質の全含量の0.5~30%、または0.5~20%、または0.5~15%、または0.5~10%の範囲内であることが可能である。別の言い方をすれば、生成物中のグルコノイル化AnxA5タンパク質のレベルは、40%を下回る、例えば、30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%を下回る、好ましくは実質的に0%であることが可能である。Anx5のグルコノイル化バリアントは、例えば、適切な陰イオン交換または逆相カラムを使用したUPLCまたはHPLCクロマトグラフィー器具を使用することによって、測定及び定量することができる。
【0220】
したがって、本発明の第5の態様は、AnxA5タンパク質を含む組成物を提供し、この組成物は、本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれかによるプロセスの直接または間接的(またはそれによって直接または間接的に得ることができる)生成物である。任意選択で、組成物は、薬学的に許容される及び/または獣医学的に許容される組成物である。
【0221】
J.医療的及び獣医学的使用
本発明の第6の態様もまた、薬品において使用するための本発明の第5の態様の組成物を提供する。別の言い方をすれば、本発明の第6の態様は、治療を必要とするヒトまたは動物に、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0222】
本発明の第6の態様のある特定の実施形態において、本発明の第5の態様の組成物は、下記のために使用され得る。
(a)血栓症(アテローム性血栓症などの)及び/またはプラーク破裂の予防またはそのリスクの低減のため、あるいは全身性紅斑性狼瘡(SLE)患者及び/または抗リン脂質関連抗体の増加したレベルを引き起こす恐れのある上気道感染もしくは他の感染(肺炎球菌感染を含む)を有するもしくは有したことのある(またはそのリスクがある)患者が含まれるが、これらに限定されない、リスク群に属する患者への投与のため、あるいは血栓塞栓症、出血性もしくは血管炎性脳卒中、心筋梗塞、狭心症もしくは間欠性跛行、不安定狭心症、他の形態の重度の狭心症、または一過性脳虚血発作(TIA)、例えば、WO2005/099744にさらに記載されるようなもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)を治療する(能動的にまたは予防的にのいずれでも)またはそのリスクを低減するため、
(b)血管機能不全、狭心症、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、収縮期高血圧、偏頭痛、2型糖尿病及び勃起不全の治療、予防またはそのリスクの低減のため、虚血性疼痛を低減する及び/または血管疾患破裂、例えば、WO2009/077764に記載されるようなもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の治療のため、
(c)再狭窄(特に新生内膜形成または肥厚)、または血管炎症、例えば、WO2009/103977に記載されるようなもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の予防または治療のため、
(d)酸化カルジオリピン(oxCL)の活性の阻害において使用するため、ならびに哺乳動物における次の疾患、すなわち、心血管疾患(CVD)、II型糖尿病、アルツハイマー病、認知症全般、リウマチ病、アテローム硬化症、高血圧、急性及び/または慢性炎症性病態、心筋梗塞、急性冠症候群、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、跛行(claudiction)、狭心症、I型糖尿病、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、ライター症候群、全身性紅斑性狼瘡、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、紅斑性狼瘡、多発性硬化症、重症筋無力症、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨関節炎を含む関節炎、特発性炎症性筋疾患(IIM)、皮膚筋炎(DM)、多発性筋炎(PM)、封入体筋炎、アレルギー障害及び/または骨関節炎を含むが、これらに限定されない、心血管疾患、自己免疫疾患または炎症性病態、例えば、WO2010/069605に記載されるようなもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)を治療する、予防する及び/またはその発症のリスクを低減するため、ならびに
(e)血管手術、とりわけ末梢血管手術後の合併症などの、外科的介入後の周術期または術後合併症、例えば、WO2012/136819に記載されるようなもの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の予防及び/または低減のため。
【0223】
本発明の第6の態様のさらなる実施形態において、本発明の第5の態様の組成物は、鎌状赤血球貧血を含むが、これらに限定されない血液学的障害を治療する、予防するまたはそのリスクを低減する予防的または治療的方法において使用され得る。
【0224】
本発明の第6の態様のさらなる実施形態において、本発明の第5の態様の組成物は、自己免疫要素を伴う血管炎、及び/または薬物誘発性血管炎を含むが、これらに限定されない、急性及び慢性血管炎症、原発性または続発性血管炎を治療する、予防するまたはそのリスクを低減する予防的または治療的方法において使用され得る。したがって、本発明はまた、血管炎、ベーチェット病、皮膚血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)、巨細胞性動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、免疫グロブリンA関連血管炎(IgAV)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、結節性多発性動脈炎(PAN)、多発筋痛リウマチ、及び高安動脈炎を治療する、予防するまたはそのリスクを低減する予防的または治療的方法も提供する。多発筋痛リウマチが特に対象となり得る。
【0225】
本発明の第6の態様のさらなる実施形態において、本発明の第5の態様の組成物は、網膜静脈閉塞を治療する、予防するまたはそのリスクを低減する予防的または治療的方法において使用され得る。
【0226】
本発明の第6の態様のさらなる実施形態において、本発明の第5の態様の組成物は、(i)ウイルス感染の伝染を予防する、もしくはその率を低減する、(ii)ウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護する、あるいは(iii)対象におけるウイルス感染を治療する、予防的または治療的方法において使用され得、このウイルス感染は、次のものからなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。
(a)出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)、ならびに
(b)ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルス。
【0227】
したがって、さらなる一実施形態において、本発明は、対象におけるウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低減する予防的または治療的方法において使用するための本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされる。
【0228】
換言すれば、本発明は、対象におけるウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低減する予防的または治療的方法を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされ、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0229】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、対象におけるウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低減することによる予防法または療法用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされる。
【0230】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低減する予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0231】
換言すれば、本発明は、対象におけるウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低減する予防的または治療的方法を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされ、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0232】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、対象におけるウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低減することによる予防法または療法用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0233】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護する予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされる。
【0234】
換言すれば、本発明は、対象におけるウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護する予防的または治療的方法を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされ、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0235】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、対象におけるウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護することによる予防法または療法用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされる。
【0236】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護する予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0237】
換言すれば、本発明は、対象におけるウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護する予防的または治療的方法を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされ、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0238】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、対象におけるウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護することによる予防法または療法用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0239】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるウイルス感染を治療する予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされる。
【0240】
換言すれば、本発明は、対象におけるウイルス感染を治療する予防的または治療的方法を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされ、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0241】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、対象におけるウイル感染を治療することによる予防法または療法用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)によって引き起こされる。
【0242】
別の実施形態において、本発明は、対象におけるウイルス感染を治療する予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0243】
換言すれば、本発明は、対象におけるウイルス感染を治療する予防的または治療的方法を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされ、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0244】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、対象におけるウイルス感染を治療することによる予防法または療法用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0245】
本発明のさらなる実施形態により、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる対象を治療する方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物が提供される。
【0246】
別の言い方をすれば、この実施形態は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる対象を治療するための方法を提供し、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0247】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる対象の治療用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供する。
【0248】
本発明の別の実施形態により、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがある対象を治療する方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物が提供される。
【0249】
別の言い方をすれば、この実施形態は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがある対象を治療するための方法を提供し、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0250】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがある対象の治療用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供する。
【0251】
本発明のさらなる実施形態により、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがある対象を治療する方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物が提供される。
【0252】
別の言い方をすれば、この実施形態は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがある対象を治療するための方法を提供し、本方法は、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を対象に投与することを含む。
【0253】
なおも別の言い方をすれば、この実施形態は、出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがある対象の治療用の薬の製造において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供する。
【0254】
本発明のこれらの上述の実施形態において、出血熱を引き起こすことが可能な病原体は、VHFであり得る。
【0255】
ウイルス出血(VHF)は、少なくとも5つの明確に異なるRNAウイルスのファミリー、すなわちArenaviridae、Filoviridae、Bunyaviridae、Flaviviridae、及びRhabdoviridaeファミリーによって引き起こされ得る多様な動物及びヒト疾病群である。すべての種類のVHFが、熱及び出血障害を特徴とし得、すべてが、多くの症例において高熱、ショック及び死へと進行し得る。
【0256】
出血熱を引き起こすことが可能なウイルス(VHF)または出血熱を引き起こすことが可能な細菌(BHF)などの、出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染していることが疑われる対象は、過去にこの疾患に接触した対象であり得(例えば、医療従事者としての雇用に基づいてまたは家族員の感染に起因して)、かつ/または確認的診断の前に感染している1つ以上の徴候または症状を呈する対象であり得る。
【0257】
感受性VHFの徴候または症状は特徴的に、熱及び易出血性の増加(出血傾向)を含む。VHFの症状発現はまた、顔面及び胸部の紅潮、小さな赤いまたは紫色の斑点(点状出血)、明らかな出血、浮腫によって引き起こされる膨張、低血圧(low blood pressure)(低血圧(hypotension))、及びショック含むことが多い。疲労、筋肉痛(muscle pain)(筋肉痛(myalgia))、頭痛、嘔吐、及び下痢が頻繁に生じる。症状の重症度は、ウイルスの種類によって異なり、このうち「VHF症候群」(毛細血管漏出、出血傾向、及び循環不全によりショックにつながる)が、フィロウイルス出血熱(例えば、エボラ及びMarburg)、CCHF、及び南米出血熱を有する患者の大多数で現れるが、患者デング熱、RVF、及びラッサ熱を有する患者の少数においても現れる。
【0258】
本発明の第6の態様において、VHFはエボラであり得、対象は、過度のもしくは多量の発汗、発熱、筋肉痛、全身疲労、及び/もしくは悪寒などの初期の臨床症状;ならびに/または任意選択で胃腸症状を伴うインフルエンザ様の症状;斑点状丘疹、点状出血、結膜出血、鼻出血、下血、吐血、ショック及び/もしくは脳症;白血球減少症(例えば、増加したリンパ系細胞アポトーシスに関連する)、血小板減少症、増加したアミノトランスフェラーゼのレベル、トロンビン及び/もしくは部分トロンボプラスチン時間、血中で検出可能なフィブリン分解産物、及び/または播種性血管内凝固(DIC)から選択される症状などの、エボラの1つ以上の症状を呈し得る。
【0259】
確定診断は、通常、高度な生物学的封じ込め能力を有する基準検査室で行われる。検査室調査の所見は、ウイルス間でいくらか異なるが、一般に、総白血球数(特にリンパ球)の減少、血小板数の減少、血清肝酵素の増加、ならびにプロトロンビン(PT)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(PTT)の両方の増加として測定される血液凝固能力の低下がある。ヘマトクリットは亢進し得る。血清尿素及びクレアチンは上昇し得るが、これは患者の水分補給状態に左右される。出血時間は、長期化される傾向がある。
【0260】
例えば、BSL-4病原体であるためエボラウイルス感染の急性期中のウイルス血症の確認された臨床検査室診断は、好適な検査室施設で可能である。利用され得るアッセイは、疾患の病期に基づく。
【0261】
急性疾患の間、アッセイは、a)VeroまたはVero E6細胞株を使用したウイルス単離、b)適切な偽陰性及び偽陽性対照とともにしたRT-PCR及びリアルタイム定量PCRアッセイ、c)抗原捕捉ELISA、ならびにd)IgM ELISAを含む。
【0262】
疾患経過中のより後では、利用され得る試験は、a)真正ウイルス抗原を使用したIgM及びIgG ELISAを含み、死亡症例では、剖検組織が、a)免疫染色技法を用いた抗原検出、b)免疫組織化学補助によるエボラ抗原の検出(Zaki et al,J Infect Dis,1999;179(Suppl.1):S36e47.(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))、及びc)ウイルスRNAの検出のためのインサイチュハイブリダイゼーション技法、に利用され得る。
【0263】
これらの技法の各々の詳細は、Saijo et al,Clin Vaccine Immunol 2006;13:444e51に要約されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0264】
ELISAに基づくアッセイは、エボラウイルス特異的抗体の検出のためにCDCによって標準化されている。このアッセイは、高感度を有し、10年前にエボラに曝露されたヒトの血清中の抗体を検出可能であることが示された。細胞系プラークアッセイ及びエンドポイント滴定アッセイ(TCID50)もまた、前臨床研究において使用するためのフィロウイルスを検出及び定量するために開発された(Shurtleff et al,Viruses 2012;4:3511e30、Smither et al,J Virol Methods 2013;193:565e71(その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。
【0265】
例えば、VHFは、Filoviridae、Arenaviridae、Bunyaviridae、FlaviviridaeまたはRhabdoviridaeから選択されるファミリーのウイルスであり得る。
【0266】
Arenaviridaeファミリーは、ラッサ熱、Lujoウイルス、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、及びベネズエラ出血熱の原因となるウイルスを含む。
【0267】
Bunyaviridaeファミリーは、腎症候性出血熱(HFRS)を引き起こすHantaウイルス属、Nairoウイルス属由来のクリミア‐コンゴ出血性熱(CCHF)ウイルス、Orthobunyaウイルス由来のGarissaウイルス及びIleshaウイルス、ならびにPhleboウイルス属由来のリフトバレー熱(RVF)ウイルスのメンバーを含む。
【0268】
Filoviridaeファミリーは、エボラウイルス及びMarburgウイルスを含む。
【0269】
Flaviviridaeファミリーは、デング、黄熱病、及びVHFを引き起こすダニ媒介性脳炎グループにおける2つのウイルス、すなわちOmsk出血熱ウイルス及びKyasanur森林病ウイルスを含む。
【0270】
コンゴ共和国のBas-Congo地区における出血熱の2つの致死的症例及び2つの非致死的症例の原因となるRhabdoviridaeのメンバーの単離もまた報告された。非致死的症例は、他の2人の治療に従事していた医療従事者に生じたことから、人から人への伝染の可能性が示唆される。
【0271】
したがって、例えば、特に目的とする一実施形態において、本発明は、エボラウイルス及びMarburgウイルスなどのFiloviridaeファミリーのウイルスに適用され得る。特に目的とする別の実施形態においては、本発明は、デングウイルスなどのFlaviviridaeファミリーのウイルスに適用され得る。
【0272】
したがって、本発明は、(i)エボラ感染の伝染を予防する、もしくはその率を低減する、(ii)エボラ感染を予防する、もしくはそれから保護する、あるいは(iii)エボラウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる、またはエボラウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがあるもしくは接触することが予想される、またはエボラウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがあるもしくは接触することが予想される、対象におけるエボラ感染を治療するための、上述の予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を実現する。
【0273】
したがって、本発明は、(i)Marburg感染の伝染を予防する、もしくはその率を低減する、(ii)Marburg感染を予防する、もしくはそれから保護する、あるいは(iii)対象が、Marburgウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる、またはMarburgウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがあるもしくは接触することが予想される、またはMarburgウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがあるもしくは接触することが予想される、Marburg感染を治療するための、上述の予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を実現する。
【0274】
したがって、本発明は、(i)デング熱ウイルス感染の伝染を予防する、もしくはその率を低減する、(ii)デング熱ウイルス感染を予防する、もしくはそれから保護する、あるいは(iii)対象が、デング熱ウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる、またはデング熱ウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがあるもしくは接触することが予想される、またはデング熱ウイルスに感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがあるもしくは接触することが予想される、デング熱ウイルス感染を治療するための、上述の予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を実現する。
【0275】
本発明はまた、対象のVHFまたはBHFによる感染を治療する、その発症を遅延させる及び/または進行を遅延させるための、上述の方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0276】
本発明はまた、BHFまたはVHFによって引き起こされる、対象における免疫及び/または血管系に対する直接及び/または間接的細菌ウイルス被害を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させるための、上述の方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0277】
例えば、本発明は、例えば、エボラ感染の関連において、対象における免疫系に対する直接及び/または間接的細菌またはウイルス被害を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させるために使用されてよい。例えば、細菌またはウイルス被害は、先天性免疫応答への被害、獲得体液性応答への被害、樹状細胞への被害、インターフェロン産生(IL1産生を含む)などの炎症性因子の産生の調節機能への被害、マクロファージへの被害、及び/または単球への被害から選択され得る。
【0278】
本発明は、対象における血液漏出(出血)、低血圧、血圧の低下、ショックまたは死を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させるために使用されてよい。
【0279】
本発明は、ウイルスにより誘発される対象の血管内皮への酸化窒素損傷を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させるために使用されてよい。
【0280】
本発明は、VHFまたはBHFなどの出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる対象における、血管内皮またはその内皮細胞の損傷、活性化、死、及び/またはその完全性の破壊を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させる方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供する。血管内皮またはその内皮細胞の完全性は、例えば、細胞もしくは血管上皮漏出の程度によって、及び/あるいは対象の1件以上の出血事象、または浮腫の形成及び/もしくは脱水症状の検出によって、決定されてもよい。
【0281】
本発明は、VHFまたはBHFなどの出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象と接触したことがあるもしくは接触することが予想される対象における、血管内皮またはその内皮細胞の損傷、活性化、死、及び/またはその完全性の破壊を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させる方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供する。
【0282】
本発明は、VHFまたはBHFなどの出血熱を引き起こすことが可能な病原体に感染したもしくは感染していることが疑われる別の対象において存在するもしくはその対象によって産生される生体材料と接触したことがあるもしくは接触することが予想される対象における、血管内皮またはその内皮細胞の損傷、活性化、死、及び/またはその完全性の破壊を予防する、低減する、その発症を遅延させる、またはその進行を遅延させる方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を提供する。
【0283】
本発明のさらなる実施形態は、本発明の種々の実施形態を参照して上述された、予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物を実現し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。代替的に、ウイルス感染は、アネキシンA5が結合する1つ以上の他の種類のリン脂質及び/またはアネキシンA5が結合する他の部分を提示する、ウイルスよって引き起こされ得る。
【0284】
ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスには、特に、ウイルスのエンベロープ内、とりわけ外層内にホスファチジルセリン(PS)を含む封入ウイルスが含まれ得る。ウイルスによるPSの提示は、当該技術分野で既知の方法によって、例えば、アネキシンA5のウイルスへの結合を測定するELISA研究を用いて、決定することができる。好適な方法には、例えば、Moller-Tank,et al,2013,J.Virol.,87(15),8327-8341に記載されるものなどの(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、抗-HA抗血清へのヘマグルチニン(HA)タグ付きアネキシンA5結合のELISA測定が含まれ得る。
【0285】
本発明が特に目的とするウイルスの群には、ホスファチジルセリン媒介性ウイルス侵入促進受容体(phosphatidylserine-mediated virus entry enhancing receptor(PVEER))との結合を介して細胞感染及び/または内部移行を媒介するものが含まれる。PVEERは、Moller Tank,et al,2013,J.Virol.,87(15),8327-8341で考察され、その一例は、T細胞免疫グロブリン及びムチン1(TIM-1)受容体である。さらなる例としては、TIM-4、Gas6またはプロテインS/Axl、Mer、及びTyro3、ならびにMFG-E8/インテグリンαvβ3またはαvβ5が挙げられ得る。
【0286】
エボラは、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、TIM-1とのPS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介する、特に目的とする1つのウイルスの例である。Moller Tank,et al,2013,J.Virol.,87(15),8327-8341。
【0287】
本発明は、アネキシンA5、及び本発明の第5の態様の組成物が、エボラウイルスなどのウイルスの、TIM-1などのPVEERを介したPS媒介性細胞感染及び/または内部移行を阻害するまたは遮断するために使用され得、それによって、(i)ウイルス感染の伝染を予防する、またはその率を低する、(ii)ウイルス感染の伝染を予防する、またはそれから保護する、あるいは(iii)対象におけるウイルス感染治療する、予防的または治療的方法において有用であり得ることを認識し、このウイルス感染は、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PS結合を介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによって引き起こされる。
【0288】
ホスファチジルセリン(PS)を提示するウイルスは、例えば、Filoviridaeファミリーのウイルス(エボラ及びMarburgなど)、Flaviviridaeファミリー、A型肝炎、アルファウイルス、バキュロウイルス、及びアレナウイルスからなる群から選択され得る。ウイルスは、ヒトにおいて、またはヒトにおいてのみ感染性であり得る。ウイルスは、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、齧歯動物、ラクダ、家畜動物、及び野生動物から選択される動物のうちのいずれか1つ以上などの非ヒト動物において、または非ヒト動物においてのみ感染性であり得る。
【0289】
TIM-1などのPVEERは、ウイルスの、種々の細胞型への内部移行に関与し得る。一実施形態において、本発明における保護及び/または治療の特に目的となる細胞型には、上皮細胞(血管上皮細胞を含む)、肥満細胞、B細胞、ならびにCD4+細胞またはCD8+細胞及び特に活性化CD4+細胞などのT細胞からなる群から選択される、1つ以上の細胞型が含まれ得る。
【0290】
TIM-1、別名HAVCR1及びKIM-1は、ヒト喘息の感受性遺伝子として同定された(Mclntire et al,2003,Nature 425:576)。1つの公開されたヒトTIM-1タンパク質のアミノ酸配列は、次のように示される。
MHPQVVILSLILHLADSVAGSVKVGGEAGPSVTLPCHYSGAVTSMCWRGSC SLFTCQNGIVWTNGTHVTYRKDTRYKLLGDLSRRDVSLTIENTAVSDSGVYC CRVEHRGWFNDMKITVSLEIVPPKVTTTPIVTTVPTVTTVRTSTTVPTTTTVPMTTVPTTTVPTTMSIPTTTTVLTTMTVSTTTSVPTTTSIPTTTSVPVTTTVSTFVPP MPLPRQNHEPVATSPSSPQPAETHPTTLQGAIRREPTSSPLYSYTTDGNDTVTE SSDGLWNNQTQLFLEHSLLTANTTKGIYAGVCISVLVLLALLGVIIAKKYFF KKEVQQLSVSFSSLQIKALQNAVEKEVQAEDNIYIENSLYATD(配列番号2)。
【0291】
TIM-1は、IgVドメイン、ムチンリッチドメインを含有する細胞外領域、及びN結合グリコシル化部位を含有する膜近位の短い茎(short membrane-proximal stalk)を持つ、I型膜タンパク質である(Ichimura et al,1998,J,Biol,Chem.273(7):4135-42)。ΤIΜ-1 IgVドメインは、ジスルフィド依存性立体配座を有し、ここでCC’ループは、GFC β鎖に折り重なって、CC’及びFGループによって形成される特有の間隙をもたらす(Santiago et al,2007,Immunity 26(3):299-310)。CC’及びFGループによって構築された間隙は、ホスファチジルセリンのための結合部位である(Kobayashi et al,2007,Immunity 27(6):927-40)。TIM-1 IgVドメインのCC’/FG間隙に向けられた抗体は、ホスファチジルセリン及び樹状細胞へのTIM-1結合を阻害し、アレルギー性喘息のヒト化マウスモデルにおいて体内で治療活性を呈する(Sonar et al,2010,J.Clin.Invest.120:2767-81)。
【0292】
本発明のさらなる実施形態は、TIM-1のIgVドメイン、及び他のPVEERが、それに提示されたPSに結合する能力を予防する、阻害するまたは低減するための、本発明の第5の態様の組成物の使用に基づく。本発明の第5の態様の組成物におけるAnxA5タンパク質は、好ましくは、PSに結合する能力も有し、本発明のこの実施形態において、PSに結合するためにPVEERと競合可能である。
【0293】
したがって、さらなる一実施形態において、本発明の第5の態様の組成物は、TIM-1(または他のPVEER)へのホスファチジルセリン結合を阻害する方法において使用され得る。
【0294】
例えば、これは、ホスファチジルセリン(PS)を提示して、PSを介して細胞感染及び/または細胞内移行を媒介するウイルスによる細胞の感染を阻害する、低減するまたは予防する関連において、予防上または治療上有用であり得る。
【0295】
代替的に、これは、PSのTIM-1(または他のPVEER)への結合が関与する他の病状に対処する関連において、予防上または治療上有用であり得る。TIM-1関連障害は、下記でさらに考察される。
【0296】
したがって、別の実施形態において、本発明は、TIM-1または他のPVEERのホスファチジルセリンへの結合を阻害するまたは低減する方法を提供し、本方法は、TIM-1または他のPVEERを発現する第1の細胞を、細胞表面上にホスファチジルセリンを含有する第2の細胞への、または表面上にホスファチジルセリン(PS)を提示するウイルスへの第1の細胞の結合を阻害するまたは低減するのに有効な量の本発明の第5の態様の組成物と接触させることを含む。本方法は、体内方法であっても体外方法であってもよい。体内方法の場合、それは、PSのTIM-1または他のPVEERへの結合が関与する病態を治療するまたは予防することであり得る。
【0297】
換言すると、本発明のこの実施形態はまた、治療を必要とする患者における、TIM-1または他のPVEERのホスファチジルセリンへの結合を阻害するまたは低減するための予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0298】
別の実施形態において、本発明は、PSの、樹状細胞上のTIM-1または他のPVEERへの結合を阻害するまたは低減する方法を提供し、本方法は、TIM-1または他のPVEERを発現する樹状細胞を、PSの樹状細胞への結合を阻害するまたは低減するのに有効な量の本発明の第5の態様の組成物と接触させることを含む。本方法は、体内方法であっても体外方法であってもよい。体内方法の場合、それは、PSの、樹状細胞上のTIM-1または他のPVEERへの結合が関与する病態を治療するまたは予防することであり得る。
【0299】
換言すると、本発明のこの実施形態はまた、治療を必要とする患者における、PSの、樹状細胞上のTIM-1または他のPVEERへの結合を阻害するまたは低減するための予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0300】
また、炎症性病態または自己免疫病態を治療するまたは予防する方法も開示され、本方法は、炎症性病態または自己免疫病態を有する哺乳動物に、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0301】
換言すると、本発明のこの実施形態はまた、炎症性病態または自己免疫病態を予防する、治療するまたは低減するための予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0302】
また、喘息を治療するまたは予防する方法も開示され、本方法は、喘息を有する哺乳動物に、本発明の第5の態様の組成物を含む薬学的組成物を投与することを含む。
【0303】
換言すると、本発明のこの実施形態はまた、喘息を予防する、治療するまたは低減するための予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0304】
また、アトピー性障害を治療するまたは予防する方法も開示され、本方法は、アトピー性障害を有する哺乳動物に、治療上有効量の本発明の第5の態様の組成物を含む薬学的組成物を投与することを含む。アトピー性障害は、例えば、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、血管浮腫、ラテックスアレルギー、またはアレルギー性肺障害(例えば、喘息、アレルギー性気管支アスペルギルス症、または過敏性肺臓炎)であり得る。
【0305】
換言すると、本発明のこの実施形態はまた、アトピー性障害を予防する、治療するまたは低減するための予防的または治療的方法において使用するための、本発明の第5の態様の組成物も提供する。
【0306】
本明細書に記載されるように、炎症性障害及び自己免疫障害などの免疫学的障害を含む、多様なTIM-1関連障害、及び他のPVEER関連障害を治療するまたは予防するために使用される、本発明の第5の態様の組成物。
【0307】
「治療する」という用語は、本明細書に記載される物質または組成物を、統計的に有意な程度まで、または当業者が検出可能な程度までのいずれかで、障害に関連する病態、症状、もしくはパラメータを改善するのに、または障害(障害によって引き起こされる続発性損傷を含む)の進行もしくはその悪化を予防するのに有効な量、様態、及び/または様式で、投与する意味を含む。
【0308】
これらの障害のうちの1つのリスクがある、そうであると診断された、またはそれを有する対象に、本発明の第5の態様の組成物が、全体的な治療効果を提供する量で及びそのような時間にわたって投与され得る。本発明の第5の態様の組成物は、単独で(単剤療法)、あるいは他の薬剤(併用療法)と組み合わせて、混和してまたは別個、同時もしくは順次の投与によってのいずれかで投与され得る。併用療法の場合、投与の量及び時間は、例えば、相加的または相乗的治療効果を提供するようなものであり得る。さらに、本発明の第5の態様の組成物(第2の薬剤を含むまたは含まない)投与は、一次治療、例えば第一選択治療として、または二次治療として、例えば、以前に施与された療法(すなわち、AnxA5タンパク質での療法以外の療法)に対して不十分な応答を有する対象のために、使用され得る。
【0309】
本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物で治療可能な疾患または病態には、例えば、虚血再灌流損傷(例えば、肝臓または腎虚血再灌流損傷などの臓器虚血再灌流損傷)、アレルギー、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、移植拒絶、膵炎、及び遅延型過敏症(DTH)が含まれる。
【0310】
本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物で治療可能な追加の疾患または病態には、例えば、自己免疫障害が含まれる。
【0311】
全身性(Systematic)紅斑性狼瘡(SLE、狼瘡)は、2本鎖DNA、1本鎖DNA、及びヒストンなどの細胞内抗原に対して向けられた高レベルの自己抗体を特徴とするTH-2媒介性自己免疫障害である。
【0312】
本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物での治療に好適な他の臓器特異的または全身性自己免疫性疾患の例としては、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、シャーガス病、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、ウェグナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎及び急速進行性半月体性糸球体腎炎が挙げられる。例えば、Benjamini et al.,1996,Immunology,A Short Course,Third Ed.(Wiley-Liss,New York)を参照されたい。それに加えて、関節リウマチ(RA)が、本明細書に記載されるアネキシンA5での治療に好適である。
【0313】
本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物で治療可能な追加のTIM-1関連疾患または病態には、例えば、移植片対宿主病(GVHD)が含まれる。GVHDは、本明細書に記載されるアネキシンA5を使用して治療され得るT細胞媒介性病態の例となる。GVHDは、ドナーT細胞が宿主抗原を異質として認識するときに発動される。ヒト患者における骨髄移植(BMT)の致死的結果であることが多いGVHDは、急性でも慢性でもあり得る。急性及び慢性型のGVHDは、それぞれ抗原特異的Th1及びTh2応答の発達の例となる。急性GVHDは、BMT後の最初の2カ月以内に生じ、皮膚、腸、肝臓、及び他の臓器へのドナー細胞傷害性T細胞媒介性損傷を特徴とする。慢性GVHDは、より後(BMT後100日を超えて)に現れ、自己抗体を含む、免疫グロブリン(Ig)の過剰産生、ならびにIg沈着によって引き起こされる皮膚、腎臓、及び他の臓器への損傷を特徴とする。急性GVHD患者の90%近くが慢性GVHDの発症に進む。慢性GVHDは、Th2 T細胞媒介性疾患のように思われる(De Wit et al,1993,J.Immunol.150:361-366)。急性GVHDは、Th1媒介性疾患である(Krenger et al,1996,Immunol.Res.15:50-73、Williamson et al,1996,J.Immunol.157:689-699)。T細胞による細胞傷害活性は、急性GVHDの特徴である。ドナー抗宿主細胞傷害活性の結果は、種々の様態で見られ得る。第1に、急性GVHDを経験するマウスが深刻に免疫抑制されるといったように、宿主リンパ球が急速に破壊される。第2に、ドナーリンパ球が生着するようになり、宿主脾臓内で増殖し、それらの細胞傷害活性は、ドナー細胞によって(異質として)認識され得る宿主抗原を発現する細胞株を活用することによって、体外で直接測定され得る。第3に、疾患は、さらなる組織及び細胞集団が破壊されるにつれて致死的となる。
【0314】
本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物で治療可能な追加のTIM-1関連疾患または病態には、例えば、アトピー性障害が含まれる。アトピー性障害は、活性化T細胞及びAPCを含めた免疫系細胞による、サイトカイン、ケモカイン、ならびに、とりわけIL-4、IL-5及びIL-13サイトカインなどの、Th2応答に特徴的である他の分子の発現を特徴とする。かかるアトピー性障害は、したがって、本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物での治療に応じやすい。アトピー障害には、気道過敏症及び窮迫症候群、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、血管浮腫、ラテックスアレルギー、及びアレルギー性肺障害(例えば、喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び過敏性肺臓炎)が含まれる。
【0315】
本明細書に記載される本発明の第5の態様の組成物で治療可能な追加のTIM-1関連疾患または病態には、例えば、多数の免疫または炎症性障害が含まれる。免疫または炎症性障害には、アレルギー性鼻炎;自己免疫性溶血性貧血;黒色表皮腫、アジソン病;円形脱毛症;全身性脱毛症;アミロイド症;アナフィラキシー様紫斑病;アナフィラキシー様反応;再生不良性貧血;強直性脊椎炎;頭蓋動脈炎;巨細胞動脈炎;高安動脈炎;側頭動脈炎;毛細血管拡張性運動失調;自己免疫性卵巣炎;自己免疫性睾丸炎;自己免疫性多腺内分泌不全;ベーチェット病;ベルジェ病;バージャー病;気管支炎;水疱性類天疱瘡;慢性皮膚粘膜カンジダ症;カプラン症候群;心筋梗塞後症候群;心膜切開後症候群;心炎;セリアックスプルー;シャーガス病;チェディアック・東症候群;チャーグ・ストラウス病;コーガン症候群;寒冷凝集素疾患;CREST症候群;クローン病;クリオグロブリン血症;特発線維性肺胞炎;疱疹状皮膚炎;皮膚筋炎;真正糖尿病;ダイヤモンドブラックファン症候群;ディジョージ症候群;円板状紅斑性狼瘡;好酸球性筋膜炎;上強膜炎;持久性隆起性紅斑;輪状紅斑;多形紅斑;結節性紅斑;家族性地中海熱;フェルティ症候群;肺線維症;アナフィラキシー様糸球体腎炎;自己免疫性糸球体腎炎;連鎖球菌感染後糸球体腎炎;移植後糸球体腎炎;膜性糸球体症;グッドパスチャー症候群;免疫媒介性顆粒球減少症;環状肉芽腫;アレルギー性肉芽腫症;肉芽腫性筋炎;グレーブス病;橋本甲状腺炎;新生児の溶血性疾患;特発性ヘモクロマトーシス;ヘノッホ・シェーンライン紫斑病;慢性活動性肝炎及び慢性進行性肝炎;組織球増殖症X;好酸球増加症候群;特発性血小板減少性紫斑病;ヨブ症候群;若年性皮膚筋炎;若年性関節リウマチ(若年性慢性関節炎);川崎病;角膜炎;乾性角結膜炎;ランドリー・ギラン・バレー症候群;らい腫性ハンセン病;レフラー症候群;狼瘡;ライエル症候群;ライム病;リンパ腫様肉芽腫症;全身性肥満細胞症;混合性結合組織疾患;多発性単神経炎;マックル・ウェルズ症候群;皮膚粘膜リンパ節症候群;皮膚粘膜リンパ節症候群;多中心性網組織球症;多発性硬化症;重症筋無力症;菌状息肉腫;全身性壊死性血管炎;ネフローゼ症候群;オーバーラップ症候群;脂肪織炎;発作性寒冷血色素尿症;発作性夜間血色素尿症;類天疱瘡;天疱瘡;紅斑性天疱瘡;落葉状天疱瘡;尋常性天疱瘡;鳩ブリーダー病;結節性多発動脈炎;リウマチ性多発筋痛;多発筋炎;特発性多発神経炎;ポルトガル家族性多発神経炎;子癇前症/子癇;原発性胆汁性肝硬変;全身性進行性硬化症(強皮症);乾癬;乾癬性関節炎;肺胞蛋白症;肺線維症、レイノー現象/症候群;リーデル甲状腺炎;ライター症候群、再発性多発軟骨炎;リウマチ熱;関節リウマチ;サルコイドーシス;強膜炎;硬化性胆管炎;血清病;セザリー症候群;シェーグレン症候群;スティーブンス・ジョンソン症候群;スティル病;亜急性硬化性全脳炎;交感性眼炎;全身性紅斑性狼瘡;移植拒絶(yransplant rejection);潰瘍性大腸炎;未分化結合組織疾患;慢性蕁麻疹;寒冷蕁麻疹;ブドウ膜炎;白斑;ウェーバー・クリスチャン病;ウェゲナー肉芽腫症、またはウィスコット・アルドリッチ症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0316】
本発明はこれより、1つ以上の非限定的な実施例を参照して説明される。
【実施例0317】
次の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明を実施する上で良好に機能すると発明者によって発見された技法を代表するものであり、ゆえに、その実施のために好ましい様式を構成するようにみなされ得ることが、当業者には理解されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される具体的な実施形態において多くの変更を行うことができ、それでも同様または類似の結果が得られることを理解するはずである。
【0318】
比較例1
Marder et al.,2014,BMC Biotechnology,14:33のプロセスは、1L培養物のプロセシングについて報告しており、これは、30分間持続期間で2回の38,900g遠心分離からなり、このうち第1の遠心分離工程においては、細胞破片に結合したアネキシンA5を沈殿させ、第2の遠心分離工程においては、アネキシンA5を溶液中で維持しながら細胞破片を沈殿させる。
【0319】
Marderらのプロセスを1Lから、商業的に関連性のある1000Lの培養体積に規模拡大する影響を算出するために、次の分析が提供される。
【0320】
最大スループットのために最良のローターを備えた、現在利用可能な最良の遠心分離機の選択に基づいて、それらは6×250ml=1.5リットルを収容することができ、30,200~38,400gを達成することができる。例としては、Thermo Scientific(商標)Sorvall(商標)LYNX超高速遠心分離機において使用するための高価な炭素繊維製軽量ローター(Fiberlite F14-6×250y 固定角ローター)、またはBeckmancoulters Avanti JXN-26において使用するためのJLA-16.250ローター、固定角、アルミニウム、バイオセーフティリッド、6×250mL、38,400xgがある。かかるハイエンド高性能遠心分離機を使用した場合、遠心分離機に負荷し、始動し、要求される速度まで加速し、最大G力で30分間費やし、次いでペレットを撹乱しないように静止するまで注意深く破砕させ(breaking)、次いでローターを空にするには、約45分間かかるであろう。
【0321】
つまり、現在利用可能な最良の遠心分離機は、45分間あたり1.5リットルのプロセシングを可能にする。
【0322】
Marderらは(「Purification」と題される節で)、3gの湿重量の細胞を30mLの緩衝液に懸濁させてから、超音波処理及び遠心分離を行うと報告している。したがって、遠心分離中にMarderらが使用した細胞湿重量(WCW)濃度は、(3グラムを30ml緩衝液に入れる)=9.1%WCWであった。
【0323】
Marderらはまた(2ページ目の「Bioreactor cultivation」の見出しの下で)、バイオマス濃度について27.48g(DCW)L-1の平均値(SD=1.96)を報告している。したがって、Marderの発酵槽中の細胞乾燥重量(DCW)濃度は、27.48グラム/L=2.748%であった。1グラムDCW=約4グラム細胞湿重量(WCW)であることが知られている。したがって、細胞濃縮発酵槽中、2.748×4=11.0%のWCW濃度が存在した。これを最大1000L培養物体積に規模拡大し、1000Lから採取する間に5%細胞損失があると保守的に仮定する場合、Marderの方法を用いた1000L槽中のWCWは、1000×11%×0.95=104.5kg WCWとなろう。
【0324】
Marderの遠心分離方法は、遠心分離工程中に9.1%WCW濃度を使用した。したがって、1000L培養物からの104.5kg WCWを9.1%WCW濃度に希釈する必要があり、これは1148Lの遠心分離総体積を要する。
【0325】
そのバイオ製造施設が2つのハイエンド高性能遠心分離機を有すると寛容に仮定して、このうちの一方は、細胞破片とともにアネキシンをペレット化するのに使用することができ(第1の遠心分離)、その間、他方は、アネキシンが溶液中にあり、細胞破片がペレット化されているときの第2の遠心分離と並行して作動できるとすると、下記の通りである。
【0326】
1148L溶液を遠心分離するための総時間(遠心分離機は45分間あたり1.5リットルを処理可能である)は、1148/1.5=各々45分で766回の遠心分離=34,470分間=574,5時間である。
【0327】
そのバイオ製造施設が1日あたり12時間稼働したと仮定すると、Marderらの方法を用いた1000L槽からのWCWのプロセシングは、48日間の作業、または(1週間あたり5日の作業日数を仮定して)遠心分離だけで10週間かかる。
【0328】
総じて、発酵、下流プロセシング及び他の操作にさらにおよそ2週間が必要とされるであろう。そのバイオ製造施設がその1つのプロセスに完全に占有されており、このため、その間に同じ施設内で他の生産を行うことができないと仮定して、これは、1000L培養物からの細胞の調製及びプロセスのために製造プラントにおいて12週間かかることになる。これは、2つの遠心分離機が利用可能であるという寛容な仮定にもかかわらずである。1つのみの遠心分離機が使用される場合、製造は、1つの1000Lバッチにつき22週間となろう。
【0329】
対照的に、下記で考察されるように、本発明の方法は、1000L培養物をたった2週間で、すなわち約6倍より迅速にプロセスすることができる(そしてまた、Marderらプロセスの生成物よりもはるかにより高い収率で、はるかにより高品質の生成物を提供する)。
【0330】
製造プラントが占有されており、その間に同じプラント内で他の生産を行うことができないため、製造費用は、製造時間に正比例する。
【0331】
本発明のプロセスにおけるアネキシンA5の収率は、Marderらによって生産される生成物よりも、バッチあたり2~3倍高いと算出される。これは、アネキシンA5タンパク質1グラムあたりの製造費用が、Marderのプロセスにおいて(6×2-3=)12~18倍高いということである。
【0332】
さらに、Marderのプロセスからのタンパク質の純度は、ヒト使用に好適でないであろう。入念な遠心分離にもかかわらず、1つの陰イオン交換クロマトグラフィー工程のみが使用され、これは、インプロセス関連の不純物(とりわけ内毒素)及び生成物関連のバリアントの両方に関して、十分な純度に達するための要件をはるかに下回る。Marderは、内毒素レベルまたは他の不純物に関していかなるデータも示しておらず、薬学的使用における好適性の欠如がさらに示唆される。
【0333】
それに加えて、Marderのプロセスの非常に緩徐な遠心分離操作は、アネキシンA5タンパク質を不安定な環境に長期間さらすことを必要とする。これは、生成物分解または生成物変性をもたらす可能性が高く、生成物品質に関してマイナスの影響を伴う長時間の製造操作のさらなる欠点である。
【0334】
【0335】
導入:
組換え約36kDaタンパク質アネキシンA5を含有する320アミノ酸を、E.coli BL21/pHIP.ANXA5の細胞質において発現させる。組換えアネキシンA5を、主にその可溶性形態で生産する。アネキシンA5のコード配列を有する、熱誘導性発現プラスミドpHIPを使用する。選択的マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子である。それぞれのクローンのMCBは樹立され、広範に特徴付けられている。
【0336】
製造プロセスは、3L発酵体積に匹敵する実験室規模から、100L発酵体積に匹敵する大規模まで規模拡大する。
【0337】
開発されたプロセスは、粗ライセートからの効率的な陰イオン交換捕捉、続いてカルシウムの存在下での固定化ヘパリンによる親和性工程を含む。この中間親和性工程は、アネキシンA5に高度に特異的である。最終精錬工程として、高溶解度陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する。精錬工程は、生成物関連不純物の分離を可能にする。10kDのNMWCOカセットを用いた限外-透析濾過によって製剤化を実施する。
【0338】
この実施例は、製造プロセスにおける計画された適合/変更を説明及び評価し、移入の成功を保証するための操作上のパラメータ及び必要な措置を決定し、その成功を決定するための十分な基準を定義する。移入の成功は、同等の収率及び品質のDSをもたらす、規模拡大に関して実験室規模の手順への適合を実装する下流プロセス運転の性能によって示される。
【0339】
全体的なプロジェクトの目的は、アネキシンA5のためのcGMP製造プロセスの開発である。
【0340】
手順-プロセス比較及び評価
この節では、使用したプロセスパラメータ、原材料、消耗品、緩衝液及び機器を評価する。
【0341】
図2は、アネキシンA5の製造のための完全なプロセスの概略的全体図を示す。
【0342】
表1は、3L及び100Lプロセスによって使用された原材料を比較及び評価する。
表1:3L及び100Lプロセスによって使用された原材料の比較
【0343】
表2は、3L及び100Lプロセスによって使用された消耗品を比較及び評価する。消耗品(試料採取デバイス、及び管類)は、DSPプロセスの生成物品質及び収率に影響を及ぼすべきではない。使用したすべての材料は、要求される規格を満たす。
表2:消耗品の一覧
【0344】
総説:
●使用したすべての消耗品は、単回使用または生成物専用の素材である。
●緩衝液貯蔵用に及び中間生成物容器として使用したバッグは、プロセス全体を通してPE/EVOH層(CX5-14フィルム)を備えたSartoriusからのものである。例えば、滅菌性、低い内毒素ならびに漏出性物質及び抽出性物質に関して、同製造業者によって検証されたバッグ。
●管類、コネクタ、試料採取システムまたは試料容器などの生成物と接触する素材を含む、使用したすべての他の消耗品は、本プロセスのそれぞれの工程において目的に適合する。これには、通常、USPクラスVI認定、滅菌性及び/または該当する場合には低い内毒素が含まれる。バッグと一体化されたC-Flex管類を除いて、DSP全体を通して白金硬化シリコーン管類を使用する。使用したすべての消耗品は、動物由来の構成成分を含まないか、またはTSE認定が入手可能である。
【0345】
表3は、アネキシンA5の製造のための3L及び100Lプロセスによって使用された機器を比較する。
表3:使用した機器の一覧
【0346】
媒体、緩衝液及び溶液は表4に示される通り。緩衝液の規格は、伝導率に関してのみ適用され、試験緩衝液調製に基づく。緩衝液は、本プロセス前に調製し、それらの規格に従って試験し、精密濾過し(0.2μmフィルター)、貯蔵する(室温で3カ月以下の保持時間)。使用時点で緩衝液の試料採取(参照として;分解:内毒素、バイオバーデン)を行う。
表4:媒体及び溶液の一覧
【0347】
規模変更可能な供給バッチ発酵プロセスを開発し、生産単位で規模拡大した。下流精製プロセスは、3つのクロマトグラフィー工程を含む。ベンゾナーゼ処理後、濾過及び希釈した供給流を第1の捕捉工程としてAXクロマトグラフィー(QセファロースXL、GE Healthcare)に適用する。溶出液を希釈によってコンディショニングして、親和性クロマトグラフィー(Heparin Hyper D M、Pall)を用いた中間精製を可能にする。AFプールを希釈し、最終AXクロマトグラフィー工程(Source15 Q、GE Healthcare)に適用する。最後に、濃縮及び緩衝液交換をUF/DFによって実施する。
【0348】
3L発酵体積に匹敵するDSPで成功裏の試運転を実行して、すべてのプロセス工程のために十分なプロセス性能を実証した。
【0349】
目標範囲を小規模なプロセスによって定義し、これを用いて規模拡大の結果を評価する。
【0350】
プロセスの比較
次の節では、実験室規模の下流プロセス(DSP)を、3L発酵体積に匹敵するプロセス規模で行った試運転に基づいて詳述する。一般に、第1の捕捉工程への負荷は別として、クロマトグラフ工程は、AektaExplorerシステムを用いて実験室規模で行う。大規模において、すべてのクロマトグラフ工程は、Bioprocessシステムで実施する。DSPの規模拡大係数は、33である(3LUSPから100LUSPまで)。
【0351】
1.1.1 バイオマスの再懸濁、ベンゾナーゼ処理及び細胞破壊
発酵後、バイオマスを遠心分離によって採取し、-20℃で貯蔵する。下流プロセシングをバイオマスの融解及びホモジナイゼーション緩衝液1中への再懸濁により開始する。ホモジナイゼーションの前に、ホモジナイゼーション緩衝液(3.300U/LUSPまたは1.850U/L再懸濁させたバイオマス)中に予備希釈したベンゾナーゼを、再懸濁させた細胞に添加する。再懸濁比率は、1gバイオマス/10mLに設定する。ホモジナイゼーションを600バールで3サイクル行って、次の捕捉工程に有益である高度な均一性を達成する。核酸のベンゾナーゼによる最適な消化を可能にするために最大40℃の昇温が望まれるため、ホモジナイゼーション内で能動的冷却は何ら必要とされない。小規模では、36~40℃の温度範囲を得た。
【0352】
バイオマスの再懸濁、ベンゾナーゼ処理及び細胞破壊についてのプロセス流れ図が下記に示される。
【0353】
1.1.2 清澄化、コンディショニング及び捕捉クロマトグラフィー
ホモジナイゼーションに後続して、ライセートを、Cuno 60 SP(0.6~0.2μm)デプスフィルターを使用した濾過によって清澄化する。この工程は、核酸の含量を低減するため、及び、捕捉クロマトグラフィーに適用可能な、粒子が低減された溶液を得るために実施する。製造業者の指示に従ってデプスフィルターを水で予備洗浄する。
【0354】
濾過後、ライセートを1%Tween80で2倍希釈する。EDTAを、2mMの最終濃度になるように添加する。
【0355】
このコンディショニングしたプールをペリスタルティックポンプにより、オフラインでAX捕捉クロマトグラフィーに適用する。AX捕捉カラムを2カラム体積(CV)(20mMトリスpH7.4、0.1%Tween80、25mM NaCl)で、200cm/hの線形ポンプ速度で平衡化する。
【0356】
負荷後、カラムを平衡化緩衝液により5CVでオフラインで洗浄し、その後、クロマトグラフィー系に移して、さらに5CVの洗浄を行う。アネキシンA5溶出を、高濃度の塩(20mMトリスpH7.4;0.1%Tween80;300mM NaCl)を使用して段階溶出により9CVで実施する。分別は、0.1吸収単位(AU)刻みでUV280nmシグナルの上昇から、下行ピークにおける0.2AUまでで定義する。全溶出ピークをさらにプロセスする。
【0357】
2工程CIP手順を実施して、カラムを再生及び清浄化する(工程1:2M NaClで3CV、100cm/h;上向流/工程2:1M NaOH、3CV;インキュベーションを15時間超、40cm/h上向流)。カラムを20mMのNaOHにおいて最終的に貯蔵する。
【0358】
図3は、AX捕捉クロマトグラフィーについてのプロセス流れ図を提供する。
【0359】
一般に捕捉工程は、中間工程の性能を強化するコンディショニング工程とみなすことができる。それは、生成物を濃縮し、負荷物のマトリックスを著しく変化させる。その上、内毒素の強力な低減(約97%)ならびにDNA及びHCPの中程度の低減が観察された。
【0360】
1.1.3 中間親和性クロマトグラフィー
得られたAX溶出プール(250mL/LUSP)を、中間クロマトグラフィーの前に濾過した(Sartopore2 0.45~0.2μm)。
【0361】
濾過されたAXプールをその後、8倍希釈した(希釈緩衝液:20mMトリスpH7.4;0.1%Tween80;2mM CaCl2)。カルシウムでの希釈は、アネキシンA5が固定化ヘパリンクロマトグラフィーに結合することを可能にする。この相互作用は、イオン性相互作用と比較して、緩徐である。接触時間は重大であり、したがってクロマトグラフィーは、100cm/h以下で行われる。
【0362】
2つの洗浄工程を実施する。洗浄工程1を15CV(20mMトリスpH7.4;0.1%Tween80;2mM CaCl2)で実施し、続いて第2の洗浄工程を2CVで、カルシウムを含有しない緩衝液(20mMトリスpH7.4;0.1%Tween80)を用いて行う。
【0363】
溶出を、カルシウムイオンをキレートするEDTA(20mMトリスpH7.4;0.1%Tween80;10mM EDTA;25mM NaCl)を含有する緩衝液を使用した段階溶出により行う。キレート反応は、カルシウムの存在下でのみヘパリンに結合し得るアネキシンA5を特異的に溶出する。濃縮溶出を可能にするために、溶出において流速を60cm/h以下にまで低減した。完全な溶出ピークは、例えば、0.05AUでUVシグナルの上昇から開始して、下行ピークにおける0.05AUまでで収集し、これはおよそ7CVに相当する。溶出プロファイルは、単一の鋭いピークを示す。
【0364】
2工程CIP手順を実施して、カラムを再生及び清浄化する(工程1:2M NaClで3CV、100cm/h;上向流/工程2:0.1M NaOH、3CV;インキュベーションを15時間超、40cm/h上向流)。カラムを25%EtOH中1M NaClにおいて最終的に貯蔵する。
【0365】
図1は、中間親和性クロマトグラフィーについてのプロセス流れ図を示す。
【0366】
中間工程は、は、本プロセススキームにおいて最も有力な精製工程である。アネキシンA5は、カルシウムイオンに結合する。このカルシウムに結合した状態において、生成物は、ヘパリンとの高度に特異的な結合を形成できる。カルシウムと錯化する能力を有する正しく折り畳まれたアネキシンA5形態のみがヘパリンに結合できる。それによって、親和性クロマトグラフ工程は、正しく折り畳まれた生成物と誤って折り畳まれた生成物とを識別することができる。それに加えて、中間工程は、高度に特異的な相互作用が、カルシウムのEDTAでのキレート反応による特異的な溶出モードと組み合わされるとき、高い除去係数に達する。したがって、DNA含量の中程度の低減と組み合わせて、内毒素(さらにおよそ99%の低減)及びHCPの強力な低減が観察される。
【0367】
第1のAX捕捉工程(約97%)及び中間親和性クロマトグラフィー工程(約99%)の内毒素低減効果の組み合わせは、内毒素レベが第1のAX工程の前の清澄化された生成物中のレベルの約0.03%まで低減された、アネキシンA5生成物を提供する。
【0368】
1.1.4 精錬AXクロマトグラフィー
得られたAF溶出プール(300mL/LUSP)を2倍希釈し(35mMトリスpH8;0.1%Tween80;12.5mM MgCl2)、精錬クロマトグラフィーの前に濾過する(Sartopore2 0.45~0.2μm)。希釈は、AX負荷物の伝導率を低減するが、さらには遊離EDTA分子をMgイオンと錯化もさせる。さもなければ、遊離EDTAはカラムに結合し、それによって、この工程における容量を主として低減するが、さらには分離も低減する。
【0369】
精錬樹脂は、15μmの平均樹脂直径を有するSource15 Qである。それは、高背圧の不都合を有する高溶解度精錬樹脂である。したがってクロマトグラフィーは、100cm/hで行われる。適切な溶解度を可能にするために、負荷量は16g/L樹脂未満であるべきである。
【0370】
負荷後の洗浄を緩衝液A(20mMビス-トリスpH7;25mM NaCl)により3CVで実施する。溶出を、33CV中、100%B(20mMビス-トリスpH7;180mM NaCl)までの直線勾配を用いて行う。このクロマトグラフ工程は、生成物関連不純物の除去のために主に設計される。様々な形態のアネキシンA5が、主ピークにより開始して40~100%Bから溶出し、第2の低減されたピーク及びいくつかのより小さなピークがこれに続く。
【0371】
0.05AUで開始し、ピーク1とピーク2の間の谷まで(およそ7CVに相当する)の第1の主ピークが収集される。
【0372】
2工程CIP手順を実施して、カラムを再生及び清浄化する(工程1:2M NaClで3CV、100cm/h;上向流/工程2:1M NaOH、3CV;インキュベーションを15時間超、40cm/h上向流)。カラムを25mM NaClにおいて最終的に貯蔵する。
【0373】
小規模実験で得られた最近の結果は、Tween80のプラスの効果を示唆した。0.1%Tween80を用いて実施されたプロセスは、中間プロセス後の生成物収率をおよそ30%増加させた。適切な溶解度を確実にするために、精錬工程への負荷量は16g/L樹脂までに制限する。収率の改善もまた、規模拡大シナリオに影響を有する。精錬工程における算出したカラム寸法を2サイクルで設計した。100LUSP規模からの総量をプロセスする場合、増加した収率には、4~5サイクルのシナリオが必要となる。
【0374】
図2は、AX精錬クロマトグラフィー工程についてのプロセス流れ図を示す。
【0375】
精錬工程は、生成物に関連する不純物の低減、例えば、様々なアネキシンA5アイソフォームの分離のために、主に実施される。それに加えて精錬工程は、残留DNAに対するプロセスにおいて最も高い除去係数に達し、HCPを強力に低減する。内毒素は、中間工程後にすでに低レベルにあるが、約99%さらに低減され、これは、内毒素レベルを、第1のAX工程の前の清澄化された生成物中のレベルの約0.0003%まで推移させる。
【0376】
1.1.5 アネキシンA5の限外/透析濾過及び製剤化
生成物濃度を上昇させ、緩衝液変更を行うために、AXプールをUF/DFに直接移す。緩衝液変更に続いて、Tween80を、0.05%の最終濃度になるように添加し、原薬を滅菌濾過する。
【0377】
第1のプロセス工程において、AXプールを6~8倍濃縮する。これに続いて、緩衝液変更を、Tweenを含有しない製剤緩衝液(20mMビス-トリス、150mM NaCl、1mM CaCl2 pH7またはpH7.4)中、8~10透析濾過体積で実施する。緩衝液変更後、第2の濃縮を実施して、12g/Lの最終濃度を得る。これは、0.05%の最終濃度へのカセットの第1の洗浄液の添加及びTween80の添加により、滅菌濾過後の10g/Lの最終濃度に達することを可能にする。被覆層形成を最小限にするために、UF/DF工程を0.9~1.1バールの低TMPで実施する。
【0378】
図3は、アネキシンA5の限外/透析濾過及び製剤化についてのプロセス流れ図を示す。
【0379】
2つの目標値及び許容基準
本プロセスの性能及び規模拡大を小規模DSP実行と比較して評価するために、次の目標値及び許容基準を定義する。目標値は、試運転のIPC/バルク分析に基づいて定義する。重要なプロセス工程を指定し、プロセス性能の信頼性を強化するために、重要なプロセスパラメータを特徴付けた。
【0380】
2.1 主要なプロセスパラメータ
表5は、主要なプロセスパラメータを示す。本プロセス実施中の目標範囲の達成は、成功裏のプロセス規模拡大を示す。
表5:プロセス工程のプロセスパラメータ及びそれぞれの目標値
【0381】
2.2 重要なプロセスパラメータ
捕捉クロマトグラフィー前の懸濁液の高度な均一性は重要である。これを達成するために、ホモジナイゼーション3サイクルの使用が好適である。その上、37℃の範囲のライセートの温度を得るために、ホモジナイゼーション内の温度増加が好適である。これは、濾過工程及び捕捉性能への直接的影響を有するベンゾナーゼの活性に重要である。
【0382】
精錬工程からのプーリングもまた、この工程が生成物関連不純物の分離に使用されるため、重要である。被覆層の形成を最小限にするために、UF/DF工程をTMPに関して中程度の条件下で行う。
表6:重要なプロセスパラメータ
【0383】
2.3 インプロセス制御
表7は、インプロセス制御を示す。本プロセス実施中に目標範囲が達成されることは、成功裏のプロセス規模拡大を示す。目標範囲を、実装された変更により行ったにすぎない、先の小規模実行における観察に基づいて設定する。
【0384】
3 結論
上述の製造プロセスは、必要とされる場合、10,000L以上の規模のために、隘路を伴わずに大規模製造によく適合される。
【0385】
GMP試験的プラントにおいて規模拡大した200Lを用いた試運転の後に、本プロセスは、AnxA5タンパク質1mgあたり1.8pg宿主細胞DNA、AnxA5タンパク質1mgあたり16.6ng宿主細胞タンパク質、及びAnxA5タンパク質1mgあたり0.1EUを有する生成物を送達した。
【0386】
本製造プロセス全体を通して、アネキシンA5タンパク質は、クロマトグラフィー樹脂に一時的に結合していない場合、その活性形態で溶液中に維持される。
【0387】
1,000L培養物に適用するとき、製造プラントにおける全体的なプロセス時間は、クロマトグラフィーの前の発酵、採取、細胞破壊及び処理で1週間、ならびに下流プロセシングで連続した1週間であろう。GMPにおける全プロセスは2週間であろう。これは、規模とは独立しており、工業規格に完璧に適合され、いずれのCMOまたは医薬品製造業者にも順応するであろう。
【0388】
上述のように、比較すると、Marderらのプロセスは、1,000L培養物をプロセスするのに12週間前後かかるであろう。
【0389】
その上、本発明のプロセスにおける収率は、Marderらの収率よりも、バッチあたりで2~3倍高い。これは、アネキシンA5原薬1グラムあたりの製造費用が、Marderのプロセスにおいて(6-8×2-3=)12~24倍高いということである。
【0390】
さらに、Marderらのプロセスよりも高速、かつより高い収率での精製プロセスを提供することに加えて、本発明のプロセスはまた、より高純度の生成物も提供する。比較例1において上記で考察されるように、Marderのプロセスからのタンパク質の純度は、ヒト使用に好適でないであろう。入念な遠心分離にもかかわらず、Marderのプロセスにおいては1つの陰イオン交換クロマトグラフィー工程のみが使用され、これは、インプロセス関連の不純物(とりわけ内毒素)及び生成物関連のバリアントの両方に関して、十分な純度に達するための要件をはるかに下回る。Marderは、内毒素レベルまたは他の不純物に関していかなるデータも示しておらず、薬学的使用における好適性の欠如がさらに示唆される。
【0391】
対照的に、本出願のプロセスは、次のような列挙される特質を有する、純度の高いアネキシンA5タンパク質生成物を提供する。
-典型的に8~12g/L前後の濃度、
-100ng/mg以下、より典型的には20ng/mg未満の宿主細胞タンパク質レベル(ELISAによって決定)、
-100pg/mg以下、より典型的には10pg/mg未満の宿主細胞DNAレベル、
-35EU/mg以下、より典型的には1EU/mg未満の内毒素、
-サイズ排除クロマトグラフィーによって決定して95%超の純度、
-1cfu/mL未満のバイオバーデン(Ph.Eur.2.6.12によって決定)、
-可視的粒子のない無色透明の外観、及び
-ウェスタンプロット解析によって検出されるメインバンドが、アネキシンA5参照に対応する。
【0392】
本プロセスを、第2の精錬工程のために、Source 15Qの代わりにCapto Q ImpResを用いて反復した。これは、Capto Q ImpRes陰イオン交換樹脂が高結合容量を有し、背圧を伴わずに高流速に耐え、より高いベッド高さで充填され得、より低い価格を有することから、さらにより効率的なプロセスを提供した。最終生成物の品質及び純度は、維持された。
【0393】
Source 15Qと比較して、Capto Q ImpRes樹脂は、下記を有する。
●グラム/リットル樹脂の単位で2倍を超える容量
●同じ背圧で2倍を超えてより高い流速に耐える
●典型的に約35~60%高い、より高いベッド高さで充填され得、これは、任意の所与のカラム床面積につきより高い容量を提供する、ならびに
●樹脂1リットルあたりの購入価格の半分未満の費用。
【0394】
実施例2
この実施例は、ヘパリンクロマトグラフィーによる陰イオン交換(AX)捕捉及び親和性捕捉の比較を例示した。
【0395】
AX捕捉及びヘパリン親和性捕捉クロマトグラフィーを、捕捉溶出液中のアネキシンA5工程収率及び純度に関して比較した。両戦略を、最適化した条件下でバッチ実験において比較した。
【0396】
試験パラメータ:
AXクロマトグラフィー:
バッチモード500μl樹脂(75%スラリー)
緩衝液AX A:20mMリン酸ナトリウムpH7、5mM EDTA、250mM NaCl
緩衝液AX B:20mMリン酸ナトリウムpH6.5、5mM EDTA
AXクロマトグラフィー:負荷:10mLの事前濾過したライセート
CIP:1M NaOH
ヘパリン親和性クロマトグラフィー:
バッチモード500μl樹脂(75%スラリー)
負荷:10mLの事前濾過したライセート;+10mM CaCl
2
緩衝液AF A:50mMトリスpH7.4、5mM CaCl
2
緩衝液AF B:50mMトリスpH7.4、40mM EGTA、50mM NaCl
CIP:3M NaCl
表7:AX及びヘパリン親和性クロマトグラフィー捕捉の比較
【0397】
これらの結果は、親和性クロマトグラフィーの前にAX捕捉を行うことが、純度を著しくは改善しないが、ヘパリン工程の収率にはかなりの影響を有することを実証する。その上、費用のかかる親和性樹脂は、中間工程として使用される場合、長期の寿命を有する。収率は、非常に重要である。
【0398】
AXによる捕捉は、ヘパリンクロマトグラフィーによる高度に特異的な親和性工程の有効な使用を可能にするコンディショニング工程とみなされ得る。
【0399】
実施例3
部分的に精製したアネキシンA5生成物を、第1の陰イオン交換クロマトグラフィー捕捉工程まで実施例1と同様の方法を用いて得た。
【0400】
簡潔に述べると、アネキシンA5を発現する組換えE.coliを、3200Uのベゾナーゼ(Bezonase)とともにホモジナイゼーション緩衝液(50mMトリス、1mM MgCl、1%Tween20 pH7.5)に再懸濁させ、600バール圧力で3サイクルにより均一化した。ホモジナイゼーション後の温度は、36℃と測定された。Cuno 60 SP0.6~0.2μmを使用した清澄化工程を行い、清澄化された溶液を1%Tween20中でEDTAの添加により1:2希釈した。捕捉のためのコンディショニング後、溶液は、pH6.9及び2.7mS/cmの伝導率を有した。陰イオン交換を、QセファロースXL(GE)を使用して行い、緩衝液A(20mMトリス、25mM NaCl、0,1%Tween20、pH7.4)で洗浄し、次いで緩衝液B(20mMトリス、300mM NaCl、0,1%Tween20、pH7.4)溶出した。結果として得られた生成物を次いで0.2μmフィルターで滅菌濾過した。
【0401】
結果として得られた滅菌濾過された陰イオン交換生成物を、ヘパリン親和性クロマトグラフィーを用いて精製し、様々な条件を試験した。
【0402】
使用したヘパリン親和性クロマトグラフィー条件は次の通りであった。
【0403】
捕捉溶出プールの滅菌濾過をSartopore 2 0.45~0.2μmで行った。このプールをヘパリンクロマトグラフィーからの(1050mL)緩衝液Aで8倍希釈した。結果として生じたプールは、7.4のpH及び6.8mSの伝導率を有した。60cm/hの低減した流速を用いて溶出を実施した。
【0404】
Tween80の影響を決定するために、洗浄には緩衝液Aを及び溶出には緩衝液Bを使用して、試験1及び2を行った。
試験1:
緩衝液A 20mMトリス、25mM NaCl、2mM CaCl2、0.1%Tween20、pH7.4
緩衝液B 20mMトリス、10mM EDTA、25mM NaCl、0.1%Tween20、pH7.4
試験2:
緩衝液A 20mMトリス、25mM NaCl、2mM CaCl
2、0.1%Tween20、0.1%Tween80 pH7.4
緩衝液B 20mMトリス、10mM EDTA、100mM NaCl、0.1%Tween20、0.1%Tween80 pH7.4
試験1についての結果は
図7Aに示され、試験2についての結果は
図7Bに示される。
【0405】
結果は、標準条件下で分離させた溶出液とは対照的に(試験1)、Tween80の添加が溶出液を単一ピークへと推移させたことを示す。Tween80は、アネキシンA5を安定化させるように思われる。この溶出挙動の変化についての考えられる説明は、カラム上への理論上の沈殿が防止されるということである。ヘパリン親和性クロマトグラフィー工程におけるTween80の使用に関して、次の2つの主要なプラスの効果が記載され得る。
-低減された圧力:負荷において0.5から2~3バールまで増加した、カラムにかかる圧力は、0.5バールまで明らかに低減された。これは大規模に対してとりわけ有益である。長期のインキュベーション後に見られる若干の沈殿が、この圧力増加の理由であり得る。
-沈殿の防止:第2のプラスの効果は、溶出において見られる。溶出液の分別のうち、高度に濃縮された主ピーク溶出画分は、沈殿する傾向を有する。この効果が主ピークにおける非常に高濃度のアネキシンA5と関係すると仮定すると、溶出画分のプーリング後、沈殿はもはや何も観察されず、その上、沈殿は、可逆的なようである。主ピークにおける沈殿は、溶出液中の塩濃度の上昇によっても防止することができなかった。これとは対照的に、Tween80の添加はまた、主ピーク溶出画分における沈殿物の形成も防止した。
これらの結果に基づいて、すべての中間クロマトグラフィー緩衝液中にTween80を追加的に添加することは、それがアネキシンA5に対して安定化効果を有するため、有利であると思われる。
【0406】
実施例4
部分的に精製したアネキシンA5生成物を、第1の陰イオン交換クロマトグラフィー捕捉工程まで実施例1と同様の方法を用いて得た。
【0407】
陰イオン交換工程の1.25mLの生成物を次いで、8.75mLの様々な形態の試験希釈緩衝液と混合した。混合物を次いで周囲温度でインキュベートし、30分後、18時間後、及び4日後に目視評価した。
【0408】
【0409】
これらの結果は、試料中の生成物沈殿を回避する上でTween 80(すなわちポリソルベート80)を添加することの有益性を示した。これは、沈殿を低減し、カラムに送液するときの背圧の増加を予防するために、親和性クロマトグラフィーカラムなどのクロマトグラフカラムへの適用の前にAnxA5生成物をコンディショニングする関連において重要である。