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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088976
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】フルオロポリマーハイブリッド複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20230620BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20230620BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20230620BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20230620BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C08L27/12
C08K3/10
C08K5/5415
C08K5/56
C08L71/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023044490
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2019562310の分割
【原出願日】2018-05-08
(31)【優先権主張番号】17305539.3
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フラッチェ, アルベールト
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
(72)【発明者】
【氏名】チステルニーノ, アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー, セゴレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァセッリ, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】カミーノ, ジョヴァンニ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】(i)式(I)の少なくとも1種の金属化合物:
4-mM(OY)(I)
(式中、Mは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属、mは1~4の整数)の少なくとも部分的加水分解及び/又は重縮合によって得られ得るプレゲル化合物、並びに少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマーを溶融相で押し出し加工することにより、プレ複合体を供給すること;
(ii)前記プレ複合体を、式(II):HO-(CHCHRO)-R(II)
(式中、R、Rは、水素原子又はアルキル基、nは、2000~40000の整数)の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)、少なくとも1つの金属塩、と混合し組成物を供給すること;並びに
(iii)前記組成物を溶融相で押し出し加工すること、を含む方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(FH)]の製造方法であって、
(i)
- 液体媒体の存在下での、式(I)の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]:
4-mM(OY) (I)
(式中、Mは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、X及びYは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基から選択され、mは1~4に含まれる整数である)
の少なくとも部分的加水分解及び/又は重縮合によって得られ得るプレゲル化合物[化合物(MP)]、並びに
- 少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマー[ポリマー(FF)]、
を溶融相で加工することにより、好ましくは押し出しにより、プレ複合体[プレ複合体(FP)]を供給すること;
(ii)工程(i)で供給された前記プレ複合体(FP)を、
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R(II)
(式中、Rは、水素原子又はC~Cアルキル基であり、Rは、水素原子又は-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、前記ポリマー(FF)と同じであるか、又は異なる、少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 任意選択的に、1種以上の無機充填剤、
と混ぜ合わせることにより組成物を供給すること;並びに
(iii)工程(ii)で供給された前記組成物を溶融相で加工すること、好ましくは押し出しすること;
を含む方法。
【請求項2】
前記ポリマー(FF)が、少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の、少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー(FF)が、少なくとも1種のモノマー(OH)由来の繰り返し単位を最大20モル%、より好ましくは最大15モル%、さらに好ましくは最大10モル%、最も好ましくは最大3モル%含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記モノマー(OH)が、式(III)の(メタ)アクリルモノマー及び式(IV)のビニルエーテルモノマー:
(式中、R、R及びRのそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
からなる群から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物(MP)が、式-[O-MX4-m*(OY)m*-2]O-(式中、Mは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、X及びYは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基であり、m*は2~4に含まれる整数である)
の1つ以上のドメインを含む液体組成物の形態である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記プレ複合体(FP)が、式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Z及びZは、互いに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基であり、前記Z及びZの少なくとも一方は、少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含む炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法により得られ得るフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(FH)]。
【請求項8】
前記複合体(FH)が、
- 少なくとも1種のプレ複合体[プレ複合体(FP)]、
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R(II)
(式中、Rは、水素原子又はC~Cアルキル基であり、Rは、水素原子又は-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)、
- 少なくとも1種の金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、前記ポリマー(FF)と同じであるか、又は異なる、少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、並びに
- 任意選択的に、1種以上の無機充填剤、
を含み、好ましくはこれらからなる、請求項7に記載の複合体(FH)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種の複合体(FH)を溶融相で加工することを含む、フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種の複合体(FH)を含むフィルム。
【請求項11】
前記フィルムが高密度フィルムである、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の少なくとも1つのフィルムを含む、電気化学デバイス又は光電気化学デバイス。
【請求項13】
電気化学デバイス、好ましくは二次電池、より好ましくはリチウムイオン電池のためのセパレータとしての、請求項10又は11に記載のフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月12日に出願された欧州特許第17305539.3号に基づく優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体、前記フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体を含むフィルム、並びに様々な用途、特に電気化学及び光電気化学用途における前記フィルムの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム金属ポリマー(LMP)電池は、当技術分野で公知であり、ここでは、アノードは、Li金属箔であり、セパレータは、電解質塩を取り込んだポリ(アルキレンオキシド)とフルオロポリマー、好ましくはフッ化ビニリデンポリマーとの固体電解質ポリマーブレンドである。
【0004】
これらのセパレータは、典型的にはフィルム押出しによって得られる。残念なことに、この技術の欠点の一つは、そのように得られたセパレータの80℃未満の温度での低いイオン伝導率である。
【0005】
したがって、この技術分野における課題は、押出し技術をより魅力的にするためにこれらのセパレータのイオン伝導率を高めることである一方で、電極の良好な分離を保証する安全なセパレータを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、優れたイオン伝導性を備えた高密度フィルムを製造するための当技術分野で公知の方法の、フレキシブル且つ容易な代替手段であり、そのため、電気化学デバイスにおけるセパレータなどの電気化学及び光電気化学用途での使用に適していることが今回見出された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の例において、本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[ポリマー(FH)]の製造方法に関し、前記方法は:
(i)
- 液体媒体の存在下での、式(I)の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]:
4-mM(OY) (I)
(式中、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、X及びYは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基から選択され、mは、1~4に含まれる整数である)
の少なくとも部分的加水分解及び/又は重縮合によって得られるプレゲル化合物[化合物(MP)]、並びに
- 少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマー[ポリマー(FF)]、
を溶融相で加工することにより、好ましくは押し出しにより、プレ複合体[プレ複合体(FP)]を供給すること;
(ii)工程(i)で供給されたプレ複合体(FP)を:
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R (II)
(式中、Rは、水素原子又はC~Cアルキル基であり、Rは、水素原子又は-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、及び
- ポリマー(FF)と同じであるか異なる、任意選択的な少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、及び
- 任意選択的な、1種以上の無機充填剤、
と混ぜ合わせることにより組成物を供給すること;並びに
(iii)工程(ii)で供給された組成物を溶融相で加工すること、好ましくは押し出しすること
を含む。
【0008】
本発明の複合体(FH)の製造方法の工程(i)で供給されるプレ複合体(FP)は、典型的にはペレットの形態である。プレ複合体(FP)は、好ましくは100℃超且つ最大170℃の温度で、典型的には10分間~24時間に含まれる時間、好ましくは後処理される。
【0009】
本発明の複合体(FH)の製造方法の工程(ii)で供給される組成物は、典型的には押出機、好ましくは二軸押出機を使用して、溶融相で加工される。
【0010】
第2の例では、本発明は、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(FH)]に関する。
【0011】
複合体(FH)は、有利にも本発明の方法によって得ることができる。
【0012】
複合体(FH)は、典型的にはペレットの形態である。
【0013】
複合体(FH)は、典型的には:
- 少なくとも1種のプレ複合体[プレ複合体(FP)]、
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R (II)
(式中、Rは、水素原子又はC~Cアルキル基であり、Rは、水素原子又は-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)、
- 少なくとも1種の金属塩[塩(M)]、
- ポリマー(FF)と同じであるか異なる、任意選択的な少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、並びに
- 任意選択的な、1種以上の無機充填剤
を含み、好ましくはこれらからなる。
【0014】
本発明の複合体(FH)は、特にフィルムの製造プロセスにおける使用に適している。
【0015】
したがって、第3の例において、本発明は、フィルムの製造方法であって、少なくとも1種の複合体(FH)を溶融相で加工することを含む前記方法に関する。
【0016】
本発明によるフィルムの製造方法は、有利には、少なくとも1種の複合体(FH)を、典型的には押出機、好ましくは単軸押出機を使用して、溶融相で加工することを含む。
【0017】
フィルムは、典型的には、キャストフィルム押出し又はブローンフィルム押出しなどのフィルム押出し技術を使用して、少なくとも1種の複合体(FH)を溶融相で加工することによって製造される。
【0018】
第4の例において、本発明は、本発明の方法によって得られ得るフィルムに関する。
【0019】
本発明のフィルムは、少なくとも1種の複合体(FH)を典型的には含み、好ましくはこれからなる。
【0020】
本発明のフィルムは、典型的には高密度フィルムである。
【0021】
本発明の目的のためには、用語「高密度の(dense)」は、細孔を含まないフィルムを意味することが意図される。
【0022】
本発明のフィルムは、典型的には2μm~300μm、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは10μm~40μmに含まれる厚さを有する。
【0023】
第5の例において、本発明は、本発明の少なくとも1種のフィルムを含む電気化学デバイス又は光電気化学デバイスに関する。
【0024】
本発明のフィルムは、電気化学デバイス又は光電気化学デバイスにおける使用に適する。
【0025】
適切な電気化学デバイスの非限定的な例には、二次電池、好ましくはリチウムイオン電池が含まれる。
【0026】
本発明のフィルムは、有利には、電気化学デバイス、好ましくは二次電池のための構成要素の製造のために使用することができる。
【0027】
本発明のフィルムは、電気化学デバイス、好ましくは二次電池、より好ましくはリチウムイオン電池のためのセパレータとしての使用に特に適する。
【0028】
本発明の目的のためには、用語「フルオロポリマー[ポリマー(F)]」は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むフルオロポリマーを意味することが意図される。
【0029】
ポリマー(F)は、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。
【0030】
ポリマー(FF)は、典型的には、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性モノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位をさらに含む、ポリマー(F)である。
【0031】
ポリマー(FF)は、典型的には、少なくとも1種のフッ素化モノマー、及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性モノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0032】
用語「フッ素化モノマー」により、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することが本明細書で意図される。
【0033】
用語「水素化モノマー」により、少なくとも1個の水素原子を含みフッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを意味することが本明細書で意図される。
【0034】
用語「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、フルオロポリマーが1種又は2種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたようなとおりの1種又は2種以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0035】
用語「少なくとも1個の水素化モノマー」は、フルオロポリマーが1種又は2種以上の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「水素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で理解される、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種又は2種以上の水素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0036】
用語「少なくとも1種のモノマー(OH)」は、フルオロポリマーが、1種又は2種以上のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。本文の残りにおいて、表現「モノマー(OH)」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方で、すなわち、それらが、上で定義されたとおりの1種又は2種以上のモノマー(OH)の両方を意味すると理解される。
【0037】
ポリマー(FF)のモノマー(OH)は、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むフッ素化モノマー、及び少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーからなる群から選択されてよい。
【0038】
フッ素化モノマーが少なくとも1個の水素原子を含む場合、それは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0039】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それは、パー(ハロ)フルオロモノマーと称される。
【0040】
フッ素化モノマーは、1個以上の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含んでもよい。
【0041】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、下記:
- C~Cパーフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレン;
- C~C水素化フルオロオレフィン、例えば、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン及びトリフルオロエチレン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキル基である)のパーフルオロアルキルエチレン;
- クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- CF=CFOXの(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C~C12アルキル基、若しくはC~C12オキシアルキル基、又は1個以上のエーテル基を含むC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば、パーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基である);
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-又はパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、C又は-C-O-CFなどの、1個以上のエーテル基を含むC~C(パー)フルオロオキシアルキル基である)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル若しくは(パー)フルオロアルキル基、又はC~C12オキシアルキル基若しくは1個以上のエーテル基を含むC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Yは、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、及び酸ハロゲン化物又は塩形態で含む)の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;並びに
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0042】
フッ素化モノマーが、水素含有フッ素化モノマー、例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニルなどである場合、フルオロポリマーは、前記少なくとも1種の水素含有フッ素化モノマー及び任意選択で、少なくとも1種の他のモノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0043】
フッ素化モノマーが、パー(ハロ)フルオロモノマー、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、などである場合、フルオロポリマーは、少なくとも1種のパー(ハロ)フルオロモノマー及び少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0044】
適切な水素化モノマーの非限定的な例には、特に、エチレン、プロピレン、ビニルモノマー、例えば、酢酸ビニル、及びスチレンモノマー、例えば、スチレン及びp-メチルスチレンが含まれる。
【0045】
ポリマー(F)は、少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する、好ましくは25モル%超、好ましくは30モル%超、より好ましくは40モル%超の繰り返し単位を含む。
【0046】
ポリマー(F)は、少なくとも1種の水素化モノマーに由来する、1モル%超、好ましくは5モル%超、より好ましくは10モル%超の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0047】
ポリマー(F)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0048】
ポリマー(F)は、より好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)由来の繰り返し単位を含み、任意選択的にはVDFとは異なる少なくとも1種のフッ素化モノマー由来の繰り返し単位も含んでいてもよいフルオロポリマーからなる群から選択される。
【0049】
ポリマー(F)は、好ましくは:
(a)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、並びに
(b)任意選択で、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びそれらの混合物からなる群から選択されるフッ素化モノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0050】
ポリマー(F)は、非晶性又は半結晶性であってもよい。
【0051】
用語「非晶性」は、本明細書では、ASTM D3418-08に従って測定される、5J/g未満、好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(F)を意味する。
【0052】
用語「半結晶性」は、本明細書では、ASTM D3418-08に従って測定される、10~90J/g、好ましくは30~60J/g、より好ましくは35~55J/gの融解熱を有するポリマー(F)を意味することが意図されている。
【0053】
ポリマー(F)は好ましくは、半結晶性である。
【0054】
ポリマー(FF)は、好ましくは、上で定義されたとおりの少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する、少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の繰り返し単位を含む。
【0055】
ポリマー(FF)は、好ましくは、上で定義されたとおりの少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する、多くても20モル%、より好ましくは多くても15モル%、さらにより好ましくは多くても10モル%、最も好ましくは多くても3モル%の繰り返し単位を含む。
【0056】
ポリマー(FF)中のモノマー(OH)繰り返し単位の平均モル百分率の決定は、任意の適切な方法によって行うことができる。特に酸-塩基滴定法又はNMR法を挙げることができる。
【0057】
モノマー(OH)は、典型的には、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む水素化モノマーからなる群から選択される。
【0058】
モノマー(OH)は、好ましくは、式(III)の(メタ)アクリルモノマー及び式(IV)のビニルエーテルモノマー:
(式中、R、R及びRのそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して水素原子又はC~C炭化水素基であり、ROHは、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
からなる群から選択される。
【0059】
モノマー(OH)は、好ましくは、上で定義されたとおりの式(III)のものである。
【0060】
モノマー(OH)は、より好ましくは、式(III’):
(式中、R’、R’及びR’は、水素原子であり、R’OHは、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むC~C炭化水素基である)
のものである。
【0061】
モノマー(OH)の非限定的な例には、特に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0062】
モノマー(OH)は、最も好ましくは:
- 式:
のヒドロキシエチルアクリレート(HEA);
- 式:
のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA);
- 及びこれらの混合物
からなる群から選択される。
【0063】
ポリマー(FF)は、より好ましくは:
(a’)少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)、
(b’)任意選択的な、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)及びそれらの混合物からなる群から選択されるフッ素化モノマー;並びに
(c’)0.01モル%~20モル%、好ましくは0.05モル%~15モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の上で定義されたとおりの式(III)の少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー
に由来する繰り返し単位を含む。
【0064】
式(I)の化合物(M)は、基X及び基Yのいずれか、好ましくは少なくとも1個の基X上に、1個以上の官能基を含んでもよい。
【0065】
上で定義されたとおりの式(I)の化合物(M)が少なくとも1個の官能基を含む場合、それは官能性金属化合物[官能性化合物(M)]と称され;基X及び基Yのいずれも官能基を含まない場合、上で定義した式(I)の化合物(M)は非官能性金属化合物[非官能性化合物(M)]と称される。
【0066】
1種以上の官能性化合物(M)と1種以上の非官能性化合物(M)との混合物が、本発明の方法で使用されてもよい。そうでなければ、官能性化合物(M)又は非官能性化合物(M)は、別個に使用されてもよい。
【0067】
式(I)の化合物(M)は、好ましくは式(I-A):
4-m’M(ORm’ (I-A)
(式中、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、R及びRは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含むC1~18炭化水素基からなる群から選択され、m’は、1~4に含まれる整数である)
のものである。
【0068】
官能基の非限定的な例には、エポキシ基、カルボン酸基(酸、エステル、アミド、無水物、塩又はハロゲン化物形態)、スルホン酸基(酸、エステル、塩又はハロゲン化物形態)、ヒドロキシル基、リン酸基(酸、エステル、塩又はハロゲン化物形態)、チオール基、アミン基、第4級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が含まれる。
【0069】
式(I)の化合物(M)が官能性化合物(M)である場合、それは、好ましくは式(I-B):
4-m’’M(ORm’’ (I-B)
(式中、Mは、Si、Ti及びZr,からなる群から選択される金属であり、Rは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を含むC~C12炭化水素基であり、Rは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、C~C直鎖又は分岐アルキル基であり、好ましくはRは、メチル又はエチル基であり、m’’は、2~3に含まれる整数である)
のものである。
【0070】
官能性化合物(M)の例は、特にビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、
式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、
式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、
式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、
式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、及びそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレアミド酸、
式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、及びそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(A)(OR)(式中、Aは、アミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、x及びyは、x+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0071】
非官能性化合物(M)の例は、特にトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0072】
用語「液体媒体」は、大気圧下20℃で液体状態にある媒体を意味することが本明細書で意図される。
【0073】
本発明の複合体(FH)の製造方法の工程(i)では、式(I)の化合物(M)は、液体媒体の存在下で部分的に加水分解及び/又は重縮合されており、前記液体媒体は典型的は水を含有し、それによりプレゲル化合物[化合物(MP)]が供給される。
【0074】
化合物(MP)は、典型的には液体組成物の形態であり、前記液体組成物は典型的には水を含む。
【0075】
式(I)の化合物(M)と水性媒体との重量比は、典型的には50:1~1:50、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10に含まれる。
【0076】
液体媒体は、少なくとも1種の酸触媒をさらに含んでもよい。
【0077】
液体媒体は、典型的には0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~5重量%の少なくとも1種の酸触媒をさらに含む。
【0078】
酸触媒の選択は、特に限定されない。
【0079】
酸触媒は、典型的には、有機酸及び無機酸からなる群から選択される。酸触媒は、好ましくは有機酸からなる群から選択される。
【0080】
非常に良好な結果は、クエン酸で得られた。
【0081】
液体媒体は、1種以上の有機溶媒もさらに含んでいてもよい。
【0082】
適切な有機溶媒の非限定的な例には、特に:
- 脂肪族、脂環式又は芳香族エーテルオキシド類、より特には、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルtertイソブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
- グリコールエーテル類、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、
- グリコールエーテルエステル、例えば、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
- アルコール類、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、
- ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、及び
- 直鎖又は環状エステル類、例えば、イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、γ-ブチロラクトン
が含まれる。
【0083】
水性媒体が1種以上のさらなる有機溶媒を含む実施形態の場合、水性媒体は、好ましくは、化学物質安全性分類によって発がん性、変異原性、又は生殖毒性として適格とされる溶媒(CMR溶媒)を含まず;より具体的には、水性媒体は、有利には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)及びN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)を含まない。
【0084】
液体媒体は、好ましくは少なくとも1種の酸触媒及び1種以上の有機溶媒(S)をさらに含む。
【0085】
液体媒体は、より好ましくは少なくとも1種の酸触媒及び1種以上のアルコールをさらに含む。
【0086】
本発明の複合体(FH)を製造するための方法の工程(i)において、式(I)の化合物(M)及びポリマー(FF)の加水分解及び/又は重縮合は、通常は室温で、又は100℃未満の温度での加熱時に行われる。温度は、水性媒体の沸点及び/又は安定性を考慮して選択される。20℃~90℃、好ましくは20℃~50℃に含まれる温度が、好ましい。
【0087】
本発明の複合体(FH)を製造するための方法の工程(i)において、式(I)の化合物(M)の基Yは、水性媒体中のポリマー(FF)の存在下で部分的に加水分解又は重縮合されて、その結果、プレ複合体[プレ複合体(FP)]を生成すると理解される。
【0088】
これは、当業者によって認識されるとおりに、加水分解及び/又は重縮合反応によって低分子量の副生成物を通常生じさせ、これは、上で定義されたとおりの式(I)の化合物(M)の性質に応じて、特に水又はアルコールであり得る。
【0089】
したがって、本発明の複合体(FH)を製造するための方法の工程(i)において、水性媒体は典型的には1種以上のアルコールをさらに含む。
【0090】
化合物(MP)は、典型的には式-[O-MX4-m*(OY)m*-2]O-(式中、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、X及びYは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基であり、mは、2~4に含まれる整数である)の1つ以上のドメインを含む液体組成物の形態である。
【0091】
プレ複合体(FP)は、典型的には式-[O-M(OZ)(OZ)]O-(式中、Mは、Si、Ti及びZrからなる群から選択される金属であり、Z及びZは、互いに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基であり、前記Z及びZの少なくとも一方は、少なくとも1種のモノマー(OH)に由来する繰り返し単位を含む炭化水素基である)の1つ以上のドメインを含む。
【0092】
本発明の複合体(FH)の製造方法では、工程(ii)で供給される組成物は、典型的には100℃~300℃、好ましくは150℃~250℃に含まれる温度で溶融相で加工される。
【0093】
本発明の複合体(FH)の製造方法の工程(i)で供給される液体媒体は、典型的には、前記液体媒体の総重量を基準として、5重量%~95重量%、好ましくは20重量%~80重量%、より好ましくは30重量%~60重量%の少なくとも1種のポリマー(FF)を含む。
【0094】
本発明の複合体(FH)の製造方法の工程(ii)で供給される組成物は、ポリマー(FF)と同じであるか又は異なる少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、好ましくは非官能性フルオロポリマー[非官能性ポリマー(F)]をさらに含有していてもよい。
【0095】
本発明の目的のためには、用語「非官能性ポリマー(F)」は、少なくとも1種の官能性モノマー、例えば、少なくとも1個のヒドロキシル基を含む官能性モノマー[モノマー(OH)]に由来する繰り返し単位を含まないフルオロポリマーを意味することが意図される。
【0096】
非官能性ポリマー(F)の選択は、特に限定されないが、それがプレ複合体(FP)及び/又は式(II)のPAOと相互作用しないことを条件とする。
【0097】
ポリマー(FH)は:
- 30重量%~99重量%、好ましくは50重量%~95重量%、より好ましくは60重量%~90重量%の、少なくとも1種のプレ複合体(FP)と少なくとも1種の式(II)のPAO、
- 1重量%~70重量%、好ましくは5重量%~50重量%、より好ましくは10重量%~40重量%の少なくとも1種の塩(M)、
- 任意選択的な、1重量%~60重量%、好ましくは5重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%の、ポリマー(FF)と同じであるか又は異なる少なくとも1種のポリマー(F)、及び
- 任意選択的な、0.1重量%~90重量%の1種以上の無機充填剤、
を好ましくは含み、より好ましくはこれらからなり、
これらの量は前記複合体(FH)の総重量基準である。
【0098】
塩(M)は、典型的には、粉末形態で、又はそれを含む水性溶液としてのいずれかで供給される。
【0099】
塩(M)の性質は、特に限定されない。
【0100】
塩(M)は、典型的には、MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](ここで、Rは、C、C又はCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Meからなる群から選択され、ここで、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K、又はCsであり、さらにより好ましくはMeは、Liであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的にはnは、1又は2である。
【0101】
塩(M)は、好ましくはMeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](ここで、Rは、C、C又はCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO及びMeからなる群から選択され、ここで、Meは、金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeは、Li、Na、K又はCsであり、さらにより好ましくはMeは、Liであり、nは、前記金属の原子価であり、典型的にはnは、1又は2である。
【0102】
無機充填剤は、存在する場合、典型的には粒子の形態で供給される。
【0103】
無機充填剤は、典型的には、0.001μm~1000μm、好ましくは0.01μm~800μm、より好ましくは0.03μm~500μmに含まれる平均粒子サイズを有する。
【0104】
本発明における使用に適する無機充填剤の中でも、金属酸化物を含む無機酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属硫化物などを挙げることができる。金属酸化物の中では、SiO、TiO、ZnO及びAlを挙げることができる。
【0105】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0106】
本発明は、その目的が本発明の範囲の単に例証となるものであって、限定となるものでない、以下の実施例を参照してこれから説明される。
【実施例0107】
原材料
ポリマー(FF-1):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)。
【0108】
ポリマー(FF-2):3.1g/分(10Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.5モル%)-HFP(2.2モル%)。
【0109】
PAO-1:1000000~1200000に含まれる平均分子量を有するポリ(エチレンオキシド)。
【0110】
ポリマー(1):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF/HFP(93モル%/7モル%)。
【0111】
イオン伝導率の決定
膜を、2つのステンレス鋼ブロッキング電極を収容するセル中に入れた。セルをオーブン中に置き、イオン伝導率の測定前にそれぞれの温度で1時間調整した。
膜の抵抗は、異なる温度で測定した。イオン導電率(σ)は、以下の式:
イオン伝導率[σ]=d/(R×S)
(式中、dは、フィルムの厚さ[cm]であり、Rは、バルク抵抗[Ω]であり、Sは、ステンレス鋼電極の面積[cm]である)
を使用して計算した。
【0112】
ポリマー(FF-1)の製造
300rpmの速度で動作する羽根車を備えた80リットル反応器に、58242gの脱塩水及び11.1gのMETHOCEL(登録商標)K100 GR懸濁化剤を順次導入した。反応器を、真空(30mmHg)及び20℃で窒素の順でパージした。次いで、21.6gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA)及び1873gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)モノマー、続いて、149.9gの、t-アミルパーピバレート開始剤のイソドデカン中75重量%溶液を反応器に導入した。最後に、16597gのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を57℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を110バールに固定した。重合中、240.6gのHEAを含有する13kgの水溶液を供給することによって、圧力を110バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を導入せず、圧力は80バールまで低下し始めた。次いで、大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。概して、モノマーのほぼ75%の変換が得られた。次いで、そのように得られたポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃でオーブン乾燥させた。
【0113】
ポリマー(FF-2)の製造
650rpmの速度で動作する羽根車を備えた4リットル反応器に、2438gの脱塩水、543mmol/kgの濃度のリン酸三ナトリウム溶液90.74g、及び14.2g/kgの濃度のMETHOCEL(登録商標)K100 GRの水溶液59.66gを順次導入した。反応器を、14℃で真空(30mmHg)及び窒素の順でパージした。次いで、5.1重量%の過酸化水素溶液16.42g及び5.35gのクロロギ酸エチルを反応器に導入した。880rpmの速度で15分後、17g/kgのHEA濃度のヒドロキシルアクリレート(HEA)水溶液25.2gと、107gのヘキサフルオロプロピレン(HFP)コモノマーとを導入した。最後に、952gのフッ化ビニリデン(VDF)を反応器に導入した。反応器を45℃での設定点温度まで徐々に加熱し、圧力を120バールに固定した。重合中、HEAを含む水溶液605gを供給することによって、圧力を120バールに常に等しく保った。この供給後、それ以上の水溶液を入れなかったところ、圧力は低下し始めた。大気圧に達するまで反応器を脱気することによって重合を止めた。モノマーの72%で変換に到達した。次いで、そのようにして得たポリマーを回収し、脱塩水で洗浄し、65℃で一晩中乾燥させた。
【0114】
複合体(FH)の製造-基本手順
プレ複合体(FP)の調製
プレゲル化合物を以下の通りに形成した:
a)適度な速度で動作する磁気式撹拌機を備えた500mlビーカー中に、以下の成分を順次導入した:
- TEOS(オルトケイ酸テトラエチル塩): 200g、
- 水:69.45g(モル比TEOS:HO=1:4)、
- エタノール:50g(重量比TEOS:EtOH=4:1)、
- クエン酸: 2.69g(1重量%のTEOS+HO)。
各バッチで生成したSiOの理論量は57.68g(出発成分の17.91%)である;及び
b)激しく撹拌しながら、系を室温で約3時間放置した。
【0115】
ポリマー(FF)を、メインホッパーから二軸同方向かみ合い押出機(スクリュー径D18mm、スクリュー長720mm(40D)のLeistritz 18 ZSE 18 HP)に供給した。押出機は、主供給装置及び2つの脱気ユニットを備えている。バレルは、目標とする温度プロファイルに設定することが可能な、8つの温度制御ゾーンと冷却ゾーン(供給装置で)とから構成されている。溶融ポリマーは、それぞれ直径3mmの2つの穴から構成されるダイから排出される。引き続き、材料はプルローラーによって同時に引っ張られ、機械によりペレットへと切断される直前に空冷される。
【0116】
同時に、プレゲル化合物もメインホッパーを介して押出機に供給した。プレ複合体(FP)の組成は、ポリマー(FF)とプレゲル化合物との供給比によって決定される(実施例を参照)。
【0117】
この工程のためのスクリュープロファイルは、ピッチの規則的減少(ゾーン0からゾーン1)を有する搬送要素の領域、次いで、2つの混練要素により構成される混練ブロック(ゾーン2)、次いで、長い搬送ゾーン(ゾーン3からゾーン4)から構成され;この一連の要素の後、3つの混練要素により構成され、且つ2つの搬送要素と互い違いにされた2つの混練ブロックが置かれた(ゾーン4からゾーン6)。最後に、4つの搬送要素及び脱気ユニットが、ダイ出口の前に位置した(ゾーン6からゾーン8)。使用した温度プロファイルは、以下の表1に報告する。ポリマー(FF-1)とポリマー(FF-2)のためにプロファイルAを使用した。押出機回転速度は300rpmであった。得られたペレットは150℃のオーブン中で40分間寝かせた。
【0118】
【0119】
複合体(FH)の調製
プレ複合体(FP)、PAO、及びLiTFSI水溶液(80重量%)を、メインホッパーから以下に記載する押出機に供給した。ペレット及びPAOを重力測定式供給装置で、及びLiTFSI水溶液を蠕動ポンプでそれぞれ投入した。
【0120】
この工程のためのスクリュープロファイルは、第1の搬送ゾーン(ゾーン0及びゾーン1)、次いで、3つの混練要素により形成された混練ブロック(ゾーン2)により構成され;これらのブロックの後、スクリューのピッチが最大である長い搬送ゾーン(ゾーン3)があった。このゾーンに、大気圧下で、脱気ユニットが存在した。次いで、2つの混練要素及び逆流要素により構成された混練ブロックがあった(ゾーン5)。このブロックの後、スクリューは、最大ピッチを有する搬送ゾーンにより構成され(ゾーン6);このゾーンで、-400ミリバールでの脱気ユニットが、LiTFSI溶液中に存在する水蒸気を主として排気するために存在した。スクリューの最後の部分(ゾーン7及びゾーン8)は、搬送要素から構成された。
【0121】
使用した温度プロファイルBは下の表2に報告されている。押出機回転速度は350rpmであった。
【0122】
【0123】
複合体(FH)のフィルム押し出し
フィルムを作製するために単軸押出機(スクリュー径D25mm、スクリュー長75cmのEurotech)を使用した。押出機は主供給機を備えている。バレルは、140℃~180℃に設定された6つの温度制御ゾーンから構成されている。溶融ポリマーは、0.2mmの開口を有する20cmのフラットダイから排出される。続いて、材料を引っ張り、3本のカレンダー系及びそれに続くローラーで加圧する。カレンダーを90℃で加熱し、最初の2本のカレンダーの間に2枚の非粘着性支持フィルムを供給して、約30~100μmの押出フィルムを導いた。
【0124】
実施例1
プレ複合体(FP)を、0.450Kg/hのポリマー(FF-1)の速度と0.833Kg/hのプレゲル化合物の速度で製造した。得られた名目上の組成は、FF-1/SiO: 75/25重量%であった。
複合体(FH):プレ複合体(FP)0.525Kg/h、PAO 0.875Kg/h、及びLiTFSI水溶液0.4375Kg/h。
【0125】
複合体(FH)の最終組成は:50重量%のPAO、22.5重量%のポリマー(FF-1)、20重量%のLiTFSI、及び7.5重量%のSiOであった。
【0126】
この材料のイオン伝導率を、約100μmの圧縮成形フィルムで測定した。結果は表3に示されている。
【0127】
実施例2
ポリマー(FF-2)を使用した以外は、実施例1で詳述したのと同じ手順に従った。結果は表3に示されている。
【0128】
実施例3
ポリマー(FF-1)の速度0.525Kg/h及びプレゲル化合物の速度0.417Kg/hで製造したプレ複合体を使用した以外は、実施例1で詳述したのと同じ手順に従った。得られた名目上の組成は、FF-1/SiO: 87.5/12.5重量%であった。
【0129】
複合体の最終組成は:50重量%のPAO、26.25重量%のポリマー(FF-1)、20重量%のLiTFSI、及び3.75重量%のSiOであった。結果は表3に示されている。
【0130】
実施例4
ポリマー(FF-2)から得られたプレ複合体(FP)を使用した以外は、実施例3で詳述したのと同じ手順に従った。
この材料は、欠陥の存在なしに厚さ30μmのフィルムへと押し出すことに成功した。結果は表3に示されている。
【0131】
比較例1
プレゲル化合物を使用せずに、複合体の製造のための基本手順に従って、ポリマー(1)、PAO、及びLiTFSIを以下の比率で混合した:50重量%のPAO+30重量%のポリマー(1)、及び20重量%のLiTFSI。
【0132】
この材料のイオン伝導率を、約150μmの押出フィルムで測定した。結果は表3に示されている。
【0133】
【0134】
上の事項を考慮すると、驚くべきことに、最新技術のフィルムと比較して優れたイオン伝導性を有するフィルムをもたらす複合体(FH)を容易に得ることを本発明の方法が可能にすることが見出された。
【0135】
また、驚くべきことに、本発明の複合体(FH)が、典型的にはキャスト押出により、フィルムセパレータへと容易に加工できることも見出された。このように、本発明の方法は、電気化学デバイスと光電気化学デバイスの両方のためのセパレータの製造を成功裏に可能にする。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体[複合体(FH)]の製造方法であって、
(i)
- 液体媒体の存在下での、式(I)の少なくとも1種の金属化合物[化合物(M)]:
4-mM(OY) (I)
(式中、Mは、Si、Ti、及びZrからなる群から選択される金属であり、X及びYは、互いに及び出現するごとに等しいか又は異なり、1個以上の官能基を任意選択で含む炭化水素基から選択され、mは1~4に含まれる整数である)
の少なくとも部分的加水分解及び/又は重縮合によって得られ得るプレゲル化合物[化合物(MP)]、並びに
- 少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種の官能性フルオロポリマー[ポリマー(FF)]、
を溶融相で加工することにより、好ましくは押し出しにより、プレ複合体[プレ複合体(FP)]を供給すること;
(ii)工程(i)で供給された前記プレ複合体(FP)を、
- 式(II):
HO-(CHCHRO)-R(II)
(式中、Rは、水素原子又はC~Cアルキル基であり、Rは、水素原子又は-CHアルキル基であり、nは、2000~40000、好ましくは4000~35000、より好ましくは11500~30000に含まれる整数である)
の少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)(PAO)、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]、
- 任意選択的に、前記ポリマー(FF)と同じであるか、又は異なる、少なくとも1種のフルオロポリマー[ポリマー(F)]、
- 任意選択的に、1種以上の無機充填剤、
と混ぜ合わせることにより組成物を供給すること;並びに
(iii)工程(ii)で供給された前記組成物を溶融相で加工すること、好ましくは押し出しすること;
を含む方法。
【外国語明細書】