(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089049
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】CO2利用率を向上させて動作させる燃料電池のための改質触媒パターン
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0637 20160101AFI20230620BHJP
H01M 8/14 20060101ALI20230620BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20230620BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20230620BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20230620BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
H01M8/0637
H01M8/14
H01M8/02
H01M8/04858
H01M8/04791
B01J23/46 301M
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060379
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2021531043の分割
【原出願日】2019-11-26
(31)【優先権主張番号】62/773,485
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/696,821
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502197161
【氏名又は名称】フュエルセル エナジー, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FUELCELL ENERGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オニール, エヴェレット ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ハン, リュ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ, カーラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブランコ グティエッレ, ロドリゴ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー, ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン, カール エー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲゼル-アヤン, ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】ドベック, フランク ジェイ.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CO
2利用率を向上させて燃料電池スタックを動作させるときに、燃料電池スタック内の温度差を低減または最小化することができる、溶融炭酸塩型燃料電池スタックのための改質素子および対応する方法が提供される。
【解決手段】改質素子は、改質触媒が表面上に堆積した少なくとも1つの表面を含むことができる。少なくとも1つの表面の第1の部分上の最小改質触媒密度および/または活性と最大改質触媒密度および/または活性との差は、20%~75%であることができ、最も高い触媒密度および/または活性は、アノード入口およびカソード入口のうちの少なくとも一方に対応する燃料電池スタック120の側に近接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を生成するための方法であって、前記方法が、改質可能な燃料を含む燃料ストリームを、第1の表面を含む燃料スタックに通すことであって、前記第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、前記第1の表面の前記第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が20%~75%である、通すことと、前記改質可能な燃料の少なくとも一部を、前記第1の表面の存在下で改質して、改質された水素を生成することと、前記改質可能な燃料の少なくとも一部、前記改質された水素の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードに導入することと、O2およびCO2を含むカソード入力ストリームを前記溶融炭酸塩型燃料電池のカソードに導入することであって、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記カソード中の流れの方向が、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記アノード中の流れの方向に実質的に直交する、導入することと、前記溶融炭酸塩型燃料電池を、0.97以下の輸率および60mA/cm2以上の平均電流密度で動作させて、電気と、H2、CO、およびCO2を含むアノード排気と、2.0体積%以下のCO2、1.0体積%以上のH2O、および1.0体積%以上のO2を含むカソード排気とを生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記カソード入力ストリームが、5.0体積%以下のCO2を含むか、または前記カソード排気が、1.0体積%以下のCO2を含むか、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気を生成するための方法であって、前記方法が、改質可能な燃料を含む燃料ストリームを、第1の表面を含む燃料スタックに通すことであって、前記第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、前記第1の表面の前記第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒活性と最小触媒活性との差が20%~75%である、通すことと、前記改質可能な燃料の少なくとも一部を、前記第1の表面の存在下で改質して、改質された水素を生成することと、前記改質可能な燃料の少なくとも一部、前記改質された水素の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードに導入することと、O2およびCO2を含むカソード入力ストリームを前記溶融炭酸塩型燃料電池のカソードに導入することであって、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記カソード中の流れの方向が、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記アノード中の流れの方向に実質的に直交する、導入することと、前記溶融炭酸塩型燃料電池を、0.97以下の輸率および60mA/cm2以上の平均電流密度で動作させて、電気と、H2、CO、およびCO2を含むアノード排気と、2.0体積%以下のCO2、1.0体積%以上のH2O、および1.0体積%以上のO2を含むカソード排気とを生成することと、を含む、方法。
【請求項4】
前記輸率が、0.95以下、または0.90以下である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1の表面の前記第1の部分上の前記改質触媒が、単調な触媒密度変動を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記最大触媒密度が、前記アノード入口に近接しているか、または前記最大触媒密度が、前記カソード入口に近接している、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記最小触媒密度が、前記アノード出口に近接しているか、または前記最小触媒密度が、前記カソード出口に近接している、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記燃料電池スタックが、前記アノードと関連付けられる改質素子を含み、前記第1の表面が、前記改質素子の内面を含み、前記改質素子と前記アノードとの間のセパレータプレートにおける前記燃料電池スタック内の温度変動が、任意選択で70℃以下(または40℃以下)である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の表面が、前記アノードの内面を含み、前記アノードと別の素子との間のセパレータプレートにおける前記燃料電池スタック内の温度変動が、任意選択で70℃以下(または40℃以下)である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の表面が、第2の部分をさらに含み、前記第2の部分が、任意選択で、一定の触媒密度および一定の触媒活性のうちの少なくとも一方を含み、前記第2の部分が、前記カソード入口に近接しているか、または前記第2の部分が、前記アノード入口に近接している、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記改質触媒が、複数の触媒粒子線を含み、前記改質可能な燃料の前記少なくとも一部を改質することが、前記改質可能な燃料の前記少なくとも一部を、前記触媒粒子の上に、前記触媒粒子線に実質的に平行な方向で流すことを含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
燃料電池スタックであって、アノードおよびカソードを含む溶融炭酸塩型燃料電池と、前記アノードと関連付けられる改質素子であって、前記改質素子が、第1の表面を含み、前記第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、前記第1の表面の前記第1の部分上の改質触媒密度が、単調に減少する触媒密度を含み、前記第1の表面の前記第1の部分上の前記改質触媒密度は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が20%~75%(または25%~70%、または25%~65%)である、改質素子と、前記アノードと前記改質素子との間のセパレータプレートと、を備え、前記第1の表面が、第2の部分を任意選択でさらに含み、前記任意選択の第2の部分が、前記カソード入口に近接しているか、または前記アノード入口に近接し、前記任意選択の第2の部分が、一定の触媒密度を含む、燃料電池スタック。
【請求項13】
前記最大触媒密度が、前記アノード入口に近接しているか、または前記最大触媒密度が、前記カソード入口に近接している、請求項12に記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
前記最小触媒密度が、前記アノード出口に近接しているか、または前記最小触媒密度が、前記カソード出口に近接している、請求項12または13に記載の燃料電池スタック。
【請求項15】
前記改質触媒が、実質的に平行な触媒粒子線を含む、請求項12~14のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カソード入力ストリームのCO2含量を低くして動作させときにCO2利用率を向上させるための、溶融炭酸塩型燃料電池スタックを動作させるためのシステムおよび方法が提供される。本燃料電池アセンブリは、燃料電池内の温度勾配を低減または最小化する改質触媒分布を有する内部改質アセンブリを含むことができる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、本出願の有効出願日以前に有効であったExxonMobil Research and Engineering CompanyとFuelCell Energy,Inc.との間の共同研究契約の範囲内での活動の結果としてなされた主題を開示し、特許請求する。
【0003】
溶融炭酸塩型燃料電池は、電気を生成するために水素および/または他の燃料を利用する。水素は、メタンまたは他の改質可能な燃料を、蒸気改質器、例えば、燃料電池の上流に位置するかまたは燃料電池内に統合された蒸気改質器内で改質することによって提供されてもよい。燃料はまた、アノード中の燃料の改質に好適な条件を創出するように動作させることができる溶融炭酸塩型燃料電池のアノード電池中で改質することができる。さらに別の選択肢は、燃料電池の外部および内部の両方で何らかの改質を行うことであり得る。改質可能な燃料は、昇温および/または昇圧で蒸気および/または酸素と反応して、水素を含む気体生成物を生成することができる炭化水素系物質を包含し得る。
【0004】
溶融炭酸塩型燃料電池の魅力的な特徴の1つは、CO2を低濃度ストリーム(カソード入力ストリームなど)からより高濃度のストリーム(アノード出力流など)に輸送する能力である。動作中、MCFCカソード中のCO2およびO2が炭酸イオン(CO3
2-)に変換され、これは次に、電荷担体として溶融炭酸塩電解質を横断して輸送される。炭酸イオンは、燃料電池アノード中でH2と反応して、H2OおよびCO2を形成する。このため、MCFCを動作させることの最終的な成果のうちの1つは、電解質を横断するCO2の輸送である。電解質を横断するCO2のこの輸送により、MCFCに電力を生成させると同時に、酸化炭素を様々なCOx含有ストリームから隔離するコストおよび/または困難を低減または最小限にすることが可能となり得る。MCFCを天然ガス火力発電所などの燃焼発生源と組み合わせると、追加の発電を行うと同時に、発電から生じる全体的なCO2排出量を低減または最小限にすることが可能となり得る。
【0005】
内部改質セクションが燃料電池スタック内に位置する燃料電池アセンブリに関しては、様々な種類の触媒分布が既知である。例えば、米国特許第8,822,090号は、改質触媒パターンおよび対応するフロースキームを説明している。この触媒パターンおよびフロースキームは、一部には燃料電池スタックの中心付近で追加の改質を生じさせることによって、改善された温度分布を提供するものとして説明される。
【0006】
米国特許出願公開第2015/0093665号は、カソードでいくらかの燃焼を起こして、燃料電池アノード内で追加の改質(および/または他の吸熱反応)を行うための補助的な熱を供給する、溶融炭酸塩型燃料電池を動作させるための方法を説明する。この公開特許は、CO2濃度が約1.0モル%を下回る際に、炭酸塩型燃料電池によって生成される電圧および/または電力が急速に低下し始める可能性があることに注目している。この公開特許はさらに、CO2濃度が、さらに、例えば、約0.3体積%未満に低下すると、ある時点で、燃料電池を通した電圧が十分に低くなり、炭酸塩のさらなる輸送がほとんど発生しないか、または全く発生しなくなり得、燃料電池が機能しなくなると述べている。
【発明の概要】
【0007】
ある態様では、電気を生成するための方法が提供される。本方法には、改質可能な燃料を含む燃料ストリームを、第1の表面を含む燃料スタックに通すことが含まれ得る。第1の表面は、改質触媒を含む第1の部分を含み得る。いくつかの態様では、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が20%~75%であり得る。いくつかの態様では、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒活性と最小触媒活性との差が20%~75%であり得る。改質可能な燃料の少なくとも一部は、第1の表面の存在下で改質されて、改質された水素を生成し得る。改質可能な燃料の少なくとも一部、改質された水素の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせは、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードに導入され得る。本方法には、O2、H2O、およびCO2を含むカソード入力ストリームを、溶融炭酸塩型燃料電池のカソードに導入することがさらに含まれ得る。溶融炭酸塩型燃料電池のカソード中の流れの方向は、溶融炭酸塩型燃料電池のアノード中の流れの方向と実質的に直交し得る。溶融炭酸塩型燃料電池は、0.97以下の輸率および60mA/cm2以上の平均電流密度で動作して、電気と、H2、CO、およびCO2を含むアノード排気と、2.0体積%以下のCO2、1.0体積%以上のO2、および1.0体積%以上のH2Oを含むカソード排気とを生成し得る。
【0008】
別の態様では、燃料電池スタックが提供される。燃料電池スタックは、アノードおよびカソードを備える溶融炭酸塩型燃料電池を含み得る。燃料電池スタックは、アノードと関連付けられる改質素子をさらに含み得る。改質素子は、第1の表面を含むことができ、第1の表面は、改質触媒を含む第1の部分を含む。第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、単調に減少する触媒密度に対応し得る。加えてまたはあるいは、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が20%~75%であり得る。燃料電池スタックは、アノードと改質素子との間にセパレータプレートをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】溶融炭酸塩型燃料電池、ならびに関連する改質段および分離段の構成の例を示す。
【
図2】溶融炭酸塩型燃料電池、ならびに関連する改質段および分離段の構成の別の例を示す。
【
図3】溶融炭酸塩型燃料電池スタックの一部の例を示す。
【
図4】アノード流の方向がカソード流の方向にほぼ垂直に整列している溶融炭酸塩型燃料電池のフローパターンの例を示す。
【
図6】改質素子における改質触媒密度プロファイルの例を示す。
【
図7】燃料電池挙動のモデリングのための改質触媒密度プロファイルの比較を示す。
【
図8】CO
2利用率を上昇させるための条件下での従来の改質触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池スタックを動作させるための温度プロファイルを示す。
【
図9】CO
2利用率を上昇させるための条件下での改善された改質触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池スタックを動作させるための温度プロファイルを示す。
【
図10】燃料電池挙動のモデリングのための改質触媒密度プロファイルの比較を示す。
【
図11】CO
2利用率を上昇させるための条件下での従来の改質触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池スタックを動作させるための温度プロファイルを示す。
【
図12】CO
2利用率を上昇させるための条件下での別の従来の改質触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池スタックを動作させるための温度プロファイルを示す。
【
図13】CO
2利用率を上昇させるための条件下での改善された改質触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池スタックを動作させるための温度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
概要
様々な態様において、カソード供給のCO2含有量を下げ、CO2利用率を向上させて燃料電池スタックを動作させるときに、燃料電池スタック内の温度差を低減または最小化することができる、溶融炭酸塩型燃料電池スタックのための改質素子が提供される。改質素子は、改質触媒が表面上に堆積した少なくとも1つの表面を含むことができる。燃料電池スタック内の温度差を低減または最小化するために、少なくとも1つの表面の第1の部分上の最小改質触媒密度と最大改質触媒密度との差は、20%~75%、または20%~70%、または25%~65%であることができ、最も高い触媒密度は、アノード入口およびカソード入口のうちの少なくとも一方に対応する燃料電池スタックの側に近接している。加えてまたはあるいは、少なくとも1つの表面の第1の部分上の最小改質触媒活性と最大改質触媒活性との差は、20%~75%、または20%~70%、または25%~65%であることができ、最も高い触媒活性は、アノード入口およびカソード入口のうちの少なくとも一方に対応する燃料電池スタックの側に近接している。例えば、アノード流と整列している触媒密度パターンについては、最大触媒密度および/または活性は、アノード入口に対応する燃料電池スタックの側に最も近い(すなわち、アノード入口に近接している)触媒パターンの端に存在し得る。任意選択であるが好ましくは、改質触媒密度および/または活性は、少なくとも1つの表面の第1の部分にわたって単調に変化し得る。任意選択で、改質素子中の少なくとも1つの表面の第2の部分は、改質素子のカソード入口またはアノード入口側に近接している表面の部分に対応し得る。具体的には、第1の部分の触媒パターンがアノード流パターンに基づいて整列している場合、第2の部分はカソード入口に近接し得る。あるいは、第1の部分の触媒パターンがカソード流パターンに基づいて整列している場合、第2の部分はアノード入口に近接し得る。少なくとも1つの表面の第2の部分は、カソード入口における増加した燃料電池活性を考慮するために、比較的一定の触媒密度プロファイルおよび/または活性プロファイルなどの別個の触媒プロファイルを有し得る。第1の部分および任意選択の第2の部分に対応する改質素子内のこの改質触媒パターンにより、温度差を燃料電池スタック全体で70℃以下、または50℃以下、または45℃以下、または40℃以下にしながら、CO2捕捉を上昇させて、燃料電池スタックを動作させることができるようになる。温度差は、改質素子とアノードとの間のセパレータプレートにおいて測定されてもよい。燃料電池スタック内の温度差を低減または最小化することによって、より高い平均動作温度を使用しながら、燃料電池スタック内の構造を損傷する可能性のある燃料電池スタック内の局所的な「ホットスポット」の存在を低減または最小化することができる。
【0011】
加えてまたはあるいは、様々な態様において、燃料電池のアノードは、改質触媒を含有する少なくとも1つの表面を含み得る。かかる態様では、少なくとも1つの表面の第1の部分は、少なくとも1つの表面の第1の部分上の最小改質触媒密度と最大改質触媒密度との差および/または最小改質触媒活性と最大改質触媒活性との差が、20%~75%、または20%~70%、または25%~65%、または40%~75%、または40%~70%、または40%~65%であり得る。かかる態様では、最高触媒密度および/または活性は、アノード入口に対応する燃料電池スタックの側に近接し得る。任意選択であるが好ましくは、改質触媒密度および/または活性は、少なくとも1つの表面の第1の部分にわたって単調に変化し得る。任意選択で、改質素子中の少なくとも1つの表面の第2の部分は、改質素子のカソード入口側に対応し得る。少なくとも1つの表面の第2の部分は、カソード入口における増加した燃料電池活性を考慮するために、比較的一定の触媒密度プロファイルおよび/または活性プロファイルなどの別個の触媒プロファイルを有し得る。
【0012】
触媒活性に関して、触媒パターンの性質および触媒パターンに対するガス流の配向により、得られる触媒活性が改変され得ることに留意されたい。例えば、表面上に所望の触媒密度をもたらすための1つの選択肢は、触媒を一連の(実質的に)平行な触媒粒子線として提供することであり得る。かかる平行線触媒パターンから得られる活性は、触媒粒子線の方向に対するガス流の配向に応じて変化し得る。具体的には、触媒活性は、触媒粒子線とほぼ整列(実質的に平行であるなど)しているガス流についてはより大きくなり得る一方、触媒粒子線に対して歪んでいるまたは実質的に垂直であるガス流は、触媒活性の様々な量の低減につながり得る。
【0013】
従来の燃料電池動作とは対照的に、様々な態様において、溶融炭酸塩型燃料電池は、0.97以下、または0.95以下の輸率など、上昇したCO2捕捉を有するように動作させることができる。0.97以下、または0.95以下の輸率で動作させると、従来の動作とは異なる燃料電池全体の温度分布につながり得る。具体的には、カソード中のCO2の枯渇に起因して、燃料電池中の電流密度の一部が代替イオン輸送に起因し得ることが発見されている。かかる代替イオン輸送には、典型的には、より大きな廃熱生成が伴う。従来の改質触媒パターンが使用される場合、代替イオン輸送に起因する廃熱は、著しい不測の温度変動を生じさせ得る。
【0014】
代替イオン輸送に起因する追加の廃熱は、カソード出口付近に蓄積し得ることが発見されている。これは、カソード出口付近のCO2の枯渇に一部起因すると考えられる。カソードにおける反応の性質に対する温度プロファイルのこの依存性は、従来の燃料電池動作とは対照的であり、温度パターンは、カソードおよびアノードにおけるフローパターンに大体依存する。その結果、カソード中のCO2消費量の上昇中に従来の改質触媒パターンを使用すると、燃料電池内に不測のホットスポットが生じ得る。例えば、カソードおよびアノード内の流れがほぼ直交するように配向される場合、予想されるアノード反応プロファイルに基づいて改質触媒パターンを使用することで、アノード出口とカソード出口との両方に対応する燃料電池の角付近の燃料電池内の実質的なホットスポットが生じ得ることがさらに発見されている。これは、代替イオン輸送からの過剰な廃熱と、アノード出口およびカソード出口に対応する角付近の従来の触媒パターンからの冷却量の低減との組み合わせに起因する。
【0015】
代替イオン輸送に起因する過剰な廃熱に関連付けられる困難を克服するために、アノード出口付近でより多くの量の改質が生じるように、代替の改質触媒パターンを使用することができる。これは、例えば、最大触媒密度と最小触媒密度との間の変動量が低減した改質触媒パターンを使用することによって達成することができる。例えば、改質触媒密度における最大密度と最小密度との差は、最大触媒密度の20%~75%、または20%~70%、または25%~65%に対応し得る。加えてまたはあるいは、改質触媒パターンは、最大改質触媒活性と最小改質触媒活性との差を最大触媒活性の20%~75%、または20%~70%、または25%~65%にして使用することができる。これにより、アノード出口付近の改質が増加し、その結果、代替イオン輸送に起因して生成される追加の廃熱を軽減することができる追加の冷却が生じ得る。
【0016】
好適な触媒密度プロファイルおよび/または触媒活性プロファイルの例は、単調に減少するプロファイルであり得る。かかる触媒密度/触媒活性プロファイルにおいて、触媒密度および/または触媒活性は、アノード入口で最大値にある。ひいては、触媒密度および/または活性は、ほぼ同じままであるか、アノード入口からアノード出口への方向に沿って減少するかのいずれかである。単調に減少するプロファイルの例には、一定の傾斜を有する触媒密度および/もしくは活性プロファイル(すなわち、一定して減少する、触媒密度および/もしくは活性の量)、または改質触媒密度および/もしくは活性が一連のステップに対応し、触媒密度/活性が各ステップ内でほぼ一定であるプロファイルが挙げられる。さらに他の触媒パターン、例えば、減少する触媒密度および/または活性のステップおよび領域の組み合わせも使用され得る。
【0017】
改善された改質触媒パターンを使用することは、CO2利用率を向上または上昇させるようにMCFCを動作させるときに、有益であり得る。CO2利用率を上昇させてMCFCを動作させる際の1つの困難は、燃料電池動作に必要とされる反応物のうちの1つ以上が少量で存在する場合、燃料電池の動作が動力的に制限される可能性があることである。例えば、カソード入力ストリームを4.0体積%以下のCO2含有量で使用する場合、75%以上のCO2利用率を達成することは、1.0体積%以下のカソード出口濃度に対応する。しかしながら、1.0体積%以下のカソード出口濃度は、必ずしもCO2がカソード全体に均等に分布することを意味するわけではない。代わりに、濃度は、典型的には、アノードおよびカソードにおけるフローパターンなどの様々な要因に起因してカソード内で変化することになる。CO2濃度の変動により、CO2濃度が実質的に1.0体積%未満であるカソードの部分が生じる。
【0018】
溶融炭酸塩型燃料電池の従来の動作条件は、典型的には、代替イオン輸送の量が低減される、最小化される、または存在しない条件に対応する。代替イオン輸送の量は、燃料電池のための輸率に基づいて定量化することができる。輸率は、水酸化物イオンおよび/または他のイオンとは対照的に、炭酸塩イオンに対応する溶融炭酸塩電解質を横断して輸送されるイオンの画分として定義される。輸率を決定するための好都合な方法は、a)カソード入口とカソード出口とでのCO2濃度の測定された変化を、b)燃料電池によって生成される電流密度を達成するのに必要な炭酸塩イオン輸送の量と比較することに基づき得る。輸率についてのこの定義は、アノードからカソードへのCO2の逆輸送が最小限であることを仮定していることに留意されたい。かかる逆輸送は、本明細書に記載の動作条件では最小限であると考えられる。CO2濃度について、カソード入力ストリームおよび/またはカソード出力ストリームをサンプリングすることができ、サンプルは、CO2含有量の決定のためにガスクロマトグラフに転換される。燃料電池の平均電流密度は、任意の好都合な様式で測定することができる。
【0019】
従来の動作条件下では、輸率は、0.98以上など、および/または代替イオン輸送を実質的に有しないなど、比較的1.0に近いものであり得る。0.98以上の輸率は、電解質を横断して輸送されるイオン電荷の98%以上が炭酸塩イオンに対応することを意味する。水酸化物イオンは-1の電荷を有し、一方で炭酸塩イオンは-2の電荷を有するので、1つの炭酸塩イオンの輸送と同じ電荷移動をもたらすためには、2つの水酸化物イオンを、電解質を通して輸送する必要があることに留意されたい。
【0020】
従来の動作条件とは対照的に、0.95以下(または、増加した開放面積および/または減少したブロックされていない流れの断面で動作させる場合、0.97以下)の輸率で、溶融炭酸塩型燃料電池を動作させることにより、燃料電池によって生成される電流密度の一部が炭酸塩イオン以外のイオンの輸送に起因するにもかかわらず、達成される炭酸塩イオン輸送の有効量を増加させることができる。0.97以下、または0.95以下の輸率で燃料電池を動作させるためには、燃料電池カソード内でCO2の枯渇を生じさせる必要がある。カソード内のCO2のかかる枯渇は局在化する傾向があることが発見されている。その結果、燃料電池カソード内の多くの領域が、依然として通常の動作のために十分なCO2を有することができる。これらの領域は、炭素捕捉のためなど、電解質を横断して輸送することが望ましい追加のCO2を含有する。しかしながら、そのような領域におけるCO2は、典型的には、従来の条件下で動作するとき、電解質を横断して輸送されない。輸率が0.97以下、または0.95以下の動作条件を選択することによって、十分なCO2を有する領域を使用して、追加のCO2を輸送し得る一方で、枯渇した領域は、代替イオン輸送に基づいて動作し得る。これにより、カソード入力ストリームから捕捉されるCO2の量の実用限界が増大し得る。
【0021】
電解質を横断して代替イオンを輸送する利点のうちの1つは、十分な数のCO2分子が動力学的に利用可能ではないにもかかわらず、燃料電池が動作を継続できることである。これにより、カソードに存在するCO2の量が従来であれば通常の燃料電池動作に不十分であると見なされ得るにもかかわらず、追加のCO2をカソードからアノードに移すことが可能になり得る。これにより、計算CO2利用率(電流密度に基づく)は、測定CO2利用率よりも少なくとも3%大きい、または少なくとも5%大きい、または少なくとも10%大きい、または少なくとも20%大きくあり得るものの、燃料電池は、100%に近い測定CO2利用率で動作することが可能になり得る。代替イオン輸送により、燃料電池が、100%を超える計算CO2利用率に対応し得る電流密度で動作することが可能になり得ることに留意されたい。
【0022】
代替イオンの輸送により、燃料電池が目標電流密度を維持することが可能になり得るが、電解質を横断する代替イオンの輸送により、溶融炭酸塩型燃料電池の寿命が低減または最小化され得ることがさらに発見されている。このため、燃料電池寿命におけるこの損失を軽減することが望ましい。改質触媒密度および/または活性を変更することにより燃料電池内の温度を管理することで、燃料電池寿命におけるかかる損失を低減または最小限にできることが予想外に発見された。
【0023】
いくつかの態様では、高められたCO2捕捉は、0.97以下、0.95以下、または0.93以下、または0.90以下の輸率などの輸率の量に基づいて定義され得る。また、動作状態を0.97以下の輸率で維持することで、典型的には、カソード出力ストリーム中のCO2濃度が2.0体積%以下、1.5体積%以下、または1.0体積%以下になり得る。カソード出力ストリーム中のCO2濃度がより高いと、典型的には、CO2の局所的枯渇が、より低い輸率値を得るには不十分となる。
【0024】
高められたCO2捕捉の存在は他の要因によっても示され得るが、かかる他の要因自体は、典型的には、高められたCO2捕捉を示すのに十分な条件ではない。例えば、より低いCO2濃度のカソード入力ストリームを使用する場合、高められたCO2捕捉は、いくつかの態様では、70%以上、または75%以上、または80%以上、例えば、最大95%の、または場合によりさらに高いCO2利用率に対応し得る。より低濃度のCO2源の例は、5.0体積%以下、または4.0体積%以下、例えば、1.5体積%までの、または場合によってはより低いCO2を含有するカソード入力ストリームを生じさせるCO2源に対応し得る。天然ガスタービンからの排気は、多くの場合にCO2含有量が5.0体積%以下または4.0体積%以下のCO2であるCO2含有ストリームの一例である。加えてまたはあるいは、高められたCO 2捕捉は、溶融炭酸塩型燃料電池を使用して、60mA/cm2以上、または80mA/cm2以上、または100mA/cm2以上、または120mA/cm2以上、または150mA/cm2以上、または200mA/cm2以上、例えば、最大300mA/cm2、または場合によりさらに高いなど、相当量の電流密度を生成する動作条件に対応し得る。代替イオン輸送のための反応経路は、炭酸塩イオンを使用する反応経路よりも理論電圧が低いため、代替イオン輸送は、燃料電池の動作電圧の低減によっても示され得ることに留意されたい。
【0025】
従来、溶融炭酸塩型燃料電池のカソード排気中のCO2濃度は、比較的高い値、例えば、5体積%以上のCO2、または10体積%以上のCO2、または場合によりさらに高い値で維持される。加えて、溶融炭酸塩型燃料電池は、典型的には、70%以下のCO2利用値で動作する。これらの条件のうちのいずれかが存在する場合、溶融炭酸塩電解質を横断して電荷を輸送するための支配的な機構は、炭酸塩イオンの輸送である。電解質を横断する代替イオン(水酸化物イオンなど)の輸送をかかる従来の条件下で生じさせることは可能であるが、代替イオン輸送の量は僅少であり、2%以下の電流密度(言い換えれば、0.98以上の輸率)に対応する。
【0026】
輸率の観点から動作条件を説明する代わりに、動作条件は、測定CO2利用率、および平均電流密度に基づく「計算」CO2利用率に基づいて説明することができる。この考察では、測定CO2利用率は、カソード入力ストリームから除去されるCO2の量に対応する。これは、例えば、ガスクロマトグラフィーを使用して、カソード入力ストリームおよびカソード出力ストリーム中のCO2濃度を決定することによって決定することができる。これは、実際のCO2利用率、または単にCO2利用率とも称され得る。この考察では、計算CO2利用率は、燃料電池によって生成された電流密度のすべてが、電解質を横断するCO3
2-イオンの輸送(すなわち、CO2に基づくイオンの輸送)に基づいて生成された場合に生じ得るCO2利用率として定義される。測定CO2利用率と計算CO2利用率との差を個別に使用して、代替イオン輸送の量を特徴付けることができ、かつ/またはこれらの値を使用して、上記のように、輸率を計算することができる。
【0027】
いくつかの態様では、溶融炭酸塩型燃料電池の動作に好適な任意の好都合な種類の電解質を使用することができる。多くの従来のMCFCは、62モル%の炭酸リチウムと38モル%の炭酸カリウムとの共晶炭酸塩混合物(62%のLi2CO3/38%のK2CO3)または52モル%の炭酸リチウムと48モル%の炭酸ナトリウムとの共晶混合物(52%のLi2CO3/48%のNa2CO3)などの共晶炭酸塩混合物を炭酸塩電解質として使用する。他の共晶混合物、例えば、40モル%の炭酸リチウムと60モル%の炭酸カリウムとの共晶混合物(40%のLi2CO3/60%のK2CO3)も利用可能である。炭酸塩の共晶混合物は、様々な理由から電解質として好都合であり得るが、炭酸塩の非共晶混合物も好適であり得る。概して、かかる非共晶混合物には、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、および/または炭酸カリウムの様々な組み合わせが含まれ得る。任意選択で、より少量の他の金属炭酸塩、例えば、他のアルカリ炭酸塩(炭酸ルビジウム、炭酸セシウム)、または炭酸バリウム、炭酸ビスマス、炭酸ランタン、もしくは炭酸タンタルなどの他の種類の金属炭酸塩が、電解質中に添加剤として含まれ得る。
【0028】
この考察では、改質素子は、燃料電池スタック内に位置する改質段を指す。改質素子は、改質可能な燃料の燃料供給を受け取り、改質可能な燃料の少なくとも一部を水素に変換することができる。改質可能な燃料を水素に変換した後、水素(加えて任意選択で、残存する改質可能な燃料)は、改質素子に関連付けられた1つ以上のアノードに通され得る。この考察では、燃料電池スタック内の温度均一性は、燃料電池のアノードと、隣接する関連付けられた改質素子との間に位置するセパレータプレートの温度に基づいて決定することができる。
【0029】
この考察では、改質触媒密度は、表面上の単位面積あたりの改質触媒の平均重量として定義される。触媒の粒または粒子を表面上に充填するなど、改質触媒を非連続的に表面上に充填する態様では、ある位置での改質触媒密度を決定するための単位面積は、粒子の代表長さの25倍の辺長を有する正方形であり得る。粒子の代表長さは、粒子の最長軸に沿った平均直径または平均長さであり得る。次に、かかる正方形を使用してテッセレーションを形成することができ、触媒密度は、単位正方形ごとに別個の様式で計算され得る。別個の粒子を有しない触媒パターンについて、または代表長さが他に利用可能でない触媒パターンについては、テッセレーションを定義するための正方形は、片長が1mmであり得る。この考察では、燃料電池にわたって(改質素子内の表面の第1の部分にわたってなど)最小改質触媒密度と最大改質触媒密度との差を決定するとき、この差は、最大密度が100の値に対応するように正規化した改質触媒密度に基づいて差を決定することができる。最大密度と所与の位置における密度との差は、こうして、位置間の改質触媒密度における差のパーセンテージに対応し得る。
【0030】
代替イオン輸送を用いた溶融炭酸塩型燃料電池動作の条件
様々な態様では、溶融炭酸塩型燃料電池(燃料電池スタックの一部としての電池など)の動作条件は、0.97以下の輸率に対応するように選択され、それにより、電池が、炭酸塩イオンと少なくとも1種類の代替イオンとの両方を、電解質を横断して輸送するようになり得る。輸率に加えて、溶融炭酸塩型燃料電池が代替イオンの輸送を用いて動作していることを示し得る動作条件としては、カソード入力ストリームのCO2濃度、カソードのCO2利用率、燃料電池の電流密度、カソードにわたる電圧降下、アノードにわたる電圧降下、およびカソード極入力ストリームのO2濃度が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、アノード内のアノード入力ストリームおよび燃料利用率は、概して、所望の電流密度を提供するように選択することができる。
【0031】
概して、代替イオン輸送を引き起こすためには、カソードの少なくとも一部におけるCO2濃度は、十分に高い電流密度を提供するために、燃料電池の動作中、十分に低い必要がある。カソード中のCO2濃度を十分に低下させることは、典型的には、カソード入力流中の低いCO2濃度、高いCO2利用率、および/または高い平均電流密度の何らかの組み合わせに対応する。しかしながら、0.97以下、または0.95以下の輸率を示すには、かかる条件だけでは十分でない。
【0032】
例えば、カソード開放面積がほぼ33%の溶融炭酸塩型燃料電池を、19体積%のCO2カソード入口濃度、75%のCO2利用率、および160mA/cm2の平均電流密度で動作させた。これらの条件は、計算CO2利用率と測定CO2利用率との1%未満の差に対応した。このため、実質的な代替イオン輸送/0.97以下または0.95以下の輸率の存在は、高いCO2利用率および高い平均電流密度の存在から単純に推測することはできない。
【0033】
別の例として、カソード開放面積が50%~60%の溶融炭酸塩型燃料電池を、4.0体積%のCO2カソード入口濃度、89%のCO2利用率、および100mA/cm2の電流密度で動作させた。これらの条件は、少なくとも0.97の輸率に対応した。このため、0.95以下の輸率/実質的な代替イオン輸送の存在は、カソード入力ストリーム中の低いCO2濃度と組み合わせた高いCO2利用率の存在から単純に推測することはできない。
【0034】
さらに別の例として、カソード開放面積が50%~60%の溶融炭酸塩型燃料電池を、13体積%のCO2カソード入口濃度、68%のCO2利用率、および100mA/cm2の電流密度で動作させた。これらの条件は、少なくとも0.98の輸率に対応した。
【0035】
この考察では、電解質を横断して代替イオンを輸送するためにMCFCを動作させることは、僅少量を上回る代替イオンが輸送されるようにMCFCを動作させることとして定義される。少量の代替イオンを、様々な従来の条件下でMCFC電解質を横断して輸送させることが可能である。従来の条件下でのかかる代替イオン輸送は、0.98以上の輸率に対応し得、これは、燃料電池の電流密度の2.0%未満に対応する代替イオンの輸送に対応する。
【0036】
この考察では、代替イオン輸送を引き起こすようにMCFCを動作させることは、5.0%以上の電流密度(または、計算CO2利用率の5.0%以上)、または10%以上、または20%以上、例えば、最大35%以上、または場合によりさらに高い電流密度が、代替イオンの輸送に基づく電流密度に対応するように、0.95以下の輸率でMCFCを操作することとして定義される。いくつかの態様では、開放面積を増加させて動作させることにより、別様には0.95以下の輸率を生じさせ得る条件下で、代替イオン輸送の量を低減または最小化できることに留意されたい。このため、開放面積を増加させた、および/またはブロックされていない流れの断面を減少させた動作により、高められたCO2捕捉/実質的な代替イオン輸送を伴ういくつかの動作条件は、0.97以下の輸率に対応し得る。
【0037】
この考察では、実質的な代替イオン輸送を引き起こすようにMCFCを動作させること(すなわち、開放面積を増加させて0.95以下または0.97以下の輸率で動作させること)は、発電に好適に、アノードおよびカソードにわたって電圧を降下させてMCFCを動作させることに対応するようにさらに定義される。溶融炭酸塩型燃料電池中の反応の総電気化学ポテンシャル差は、約1.04Vである。実用上の配慮のため、MCFCは、典型的には、0.7V付近または約0.8Vの電圧で電流を生成するように動作させる。これは、カソード、電解質、およびアノード全体の組み合わせた電圧降下ほぼ0.34Vに対応する。安定した動作を維持するためには、燃料電池によって生成される派生電流が0.55V以上または0.6V以上の電圧であるように、カソード、電解質、およびアノード全体の組み合わせた電圧降下は、約0.5V未満であり得る。
【0038】
アノードに関して、実質的な代替イオン輸送を伴って動作させるための1つの条件は、実質的な代替イオン輸送が生じる領域においてH2濃度を8.0体積%以上、または10体積%以上にすることであり得る。態様に応じて、これは、アノード入口付近の領域、アノード出口付近の領域、またはそれらの組み合わせに対応し得る。概して、アノードの領域におけるH2濃度が低すぎると、実質的な代替イオン輸送を生成するための駆動力が不十分となる。
【0039】
アノードに好適な条件には、H2、改質可能な燃料、またはそれらの組み合わせをアノードに提供することと、20%~80%の範囲の燃料利用率を含む、所望の電流密度を生成する任意の好都合な燃料利用率で動作させることとが含まれ得る。いくつかの態様では、これは、従来の燃料利用率、例えば、60%以上、または70%以上、例えば、最大85%、または場合によりさらに高い燃料利用率に対応し得る。他の態様では、これは、H2の上昇した含有量ならびに/またはH2およびCO(すなわち、合成ガス)の上昇した総含有量でアノード出力ストリームを提供するように選択された燃料利用率、例えば、55%以下、または50%以下、または40%以下、例えば、20%まで、または場合によりさらに低い燃料利用率に対応し得る。アノード出力ストリーム中のH2含有量、および/またはアノード出力ストリーム中のH2およびCOの総含有量は、所望の電流密度の生成を可能にするのに十分であり得る。いくつかの態様では、アノード出力ストリーム中のH2含有量は、3.0体積%以上、または5.0体積%以上、または8.0体積%以上、例えば、最大15体積%、または場合によりさらに高くあることができる。加えてまたはあるいは、アノード出力ストリーム中のH2およびCOの総量は、4.0体積%以上、または6.0体積%以上、または10体積%以上、例えば、最大20体積%、または場合によりさらに高くあることができる。任意選択で、燃料電池を低燃料利用率で動作させる場合、アノード出力ストリーム中のH 2含有量は、10体積%~25体積%のH2含有量など、より高い範囲であることができる。かかる態様では、アノード出力ストリームの合成ガス含有量は、15体積%~35体積%のH2およびCOの総含有量など、対応してより高くあることができる。態様に応じて、アノードは、生成される電気エネルギーの量を増加させるように、生成される化学エネルギー(すなわち、アノード出力ストリーム中で利用可能な改質によって生成されるH2)の量を増加させるように動作させるか、または代替イオン輸送を引き起こすように燃料電池を動作させることと両立可能な任意の他の好都合な戦略を使用して動作させることができる。
【0040】
アノード中のH2濃度が十分であることに加えて、炭酸塩イオン輸送のより好ましい経路が容易には利用可能でないように、カソード内の1つ以上の位置のCO2濃度が十分に低い必要がある。いくつかの態様では、これは、カソード出口ストリーム(すなわち、カソード排気)中のCO2濃度が2.0体積%以下、または1.0体積%以下、または0.8体積%以下であることに対応し得る。カソード内の変動に起因して、カソード排気中の2.0体積%以下(または1.0体積%以下、または0.8体積%以下)の平均濃度は、カソードの局所領域におけるさらに低いCO2濃度に対応し得ることに留意されたい。例えば、クロスフロー構成において、アノード入口およびカソード出口に隣接する燃料電池の角では、CO2濃度は、アノード出口およびカソード出口に隣接する同じ燃料電池の角よりも低くなり得る。CO2濃度の同様の局所変動は、並流または逆流構成を有する燃料電池においても生じ得る。
【0041】
CO2の濃度を低くすることに加えて、カソードの局所領域はまた、1.0体積%以上または2.0体積%以上のO2を有し得る。燃料電池では、O2を使用して、代替イオン輸送を可能にする水酸化物イオンを形成する。炭酸塩イオン輸送機構と代替イオン輸送機構との両方がO2の利用可能性に依存するため、十分なO2が存在しないと、燃料電池は動作しない。カソード入力ストリーム中のO2に関して、いくつかの態様では、これは、4.0体積%~15体積%、または6.0体積%~10体積%の酸素含有量に対応し得る。
【0042】
代替イオン輸送を生じさせるには、1.0体積%以上または2.0体積%以上などの十分な量の水が存在すべきであることが観察されている。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、実質的な代替イオン輸送を伴って動作させようとするときにカソード内で水が利用可能でない場合、燃料電池は、十分な水が利用可能な状態での代替イオン輸送に起因して観察される失活速度よりもはるかに速い速度で劣化するように見受けられる。空気がO2源として一般的に使用されるため、またH2Oは燃焼中に生成される生成物のうちの1つであるため、典型的には、十分な量の水がカソード内で利用可能であることに留意されたい。
【0043】
CO2捕捉を高めるために溶融炭酸塩型燃料電池を動作させている間のカソードガスおよび/またはアノードガスの不均一な分布に起因して、溶融炭酸塩型燃料電池の角および/または縁のうちの1つ以上は、典型的には、代替イオン輸送の密度が実質的により高いと考えられる。1つ以上の角は、カソード中のCO2濃度が平均よりも低い場所、またはアノード中のH2濃度が平均よりも高い場所、またはそれらの組み合わせに対応し得る。
【0044】
この考察では、燃料電池は、アノードとカソードとが電解質によって分離された単一の電池に対応し得る。アノードおよびカソードは、電解質を横断して電荷を輸送し、電気を生成するためのそれぞれのアノードおよびカソード反応を容易にするために、入力ガス流を受け取り得る。燃料電池スタックは、統合ユニット内の複数の電池を表し得る。燃料電池スタックは複数の燃料電池を含み得るが、燃料電池は、典型的には、並列に接続することができ、それらがより大きなサイズの単一の燃料電池を集合的に表すかのように(およそ)機能することができる。入力流が燃料電池スタックのアノードまたはカソードに送達されるとき、燃料電池スタックは、入力流をスタック中の電池の各々の間で分割するためのフローチャネルと、個々の電池からの出力流を組み合わせるためのフローチャネルとを含み得る。この考察では、燃料電池アレイは、直列で、並列で、または任意の他の好都合な様式で(例えば、直列と並列との組み合わせで)配置される複数の燃料電池(複数の燃料電池スタックなど)を指すように使用され得る。燃料電池アレイには、燃料電池および/または燃料電池スタックの1つ以上の段が含まれ得、ここでは、第1の段からのアノード/カソード出力は、第2の段のアノード/カソード入力として機能してもよい。燃料電池アレイ中のアノードをアレイ中のカソードと同じように接続する必要はないことに留意されたい。便宜上、燃料電池アレイの第1のアノード段への入力は、アレイのアノード入力と称されてもよく、燃料電池アレイの第1のカソード段への入力は、アレイへのカソード入力と称されてもよい。同様に、最終アノード/カソード段からの出力は、アレイからのアノード/カソード出力と称されてもよい。燃料電池スタックに別個の改質素子が含まれる態様では、アノード入力流は、改質素子に関連付けられた1つ以上のアノードに進入する前に、まず改質素子を通過してもよいことに留意されたい。
【0045】
本明細書における燃料電池の使用への言及は、典型的には、個々の燃料電池で構成される「燃料電池スタック」を示し、より一般的には、流体連通している1つ以上の燃料電池スタックの使用を指すことを理解すべきである。個々の燃料電池素子(プレート)は、典型的には、「燃料電池スタック」と呼ばれる長方形のアレイにおいて一緒に「スタックする」ことができる。燃料電池スタックには、改質素子などの追加の種類の素子も含まれ得る。この燃料電池スタックは、典型的には、供給ストリームを取り込み、反応物を個々の燃料電池素子のすべての間に分散させることができ、次に、これらの素子の各々から生成物を収集することができる。ユニットとして見ると、動作中の燃料電池スタックは、多くの(多くの場合、数十または数百の)個々の燃料電池素子で構成されているにもかかわらず、総体的に見ることができる。これらの個々の燃料電池素子は、典型的には、類似の電圧を有することができ(反応物および生成物濃度が類似しているため)、総出力は、素子が直列に電気接続しているときに、全電池素子の全電流の合計から得ることができる。スタックはまた、高電圧を生成するために直列配置で配置することができる。並列配置は、電流を引き上げることができる。所与の排気流を処理するのに十分に大容量の燃料電池スタックが利用可能である場合、本明細書に記載のシステムおよび方法は、単一の溶融炭酸塩型燃料電池スタックとともに使用することができる。本発明の他の態様では、複数の燃料電池スタックが様々な理由で望ましいかまたは必要とされ得る。
【0046】
本発明の目的では、別途指定されない限り、「燃料電池」という用語は、典型的に燃料電池が実際に用いられる様式であるように、単一の入力および出力がある1つ以上の個々の燃料電池素子のセットで構成される燃料電池スタックを指すようにも理解されるべきであり、かつ/またはそれへの言及を含むものとして定義される。同様に、燃料電池(複数)という用語は、別途指定されない限り、複数の別個の燃料電池スタックを指すようにも理解されるべきであり、かつ/またはそれを含むものとして定義される。換言すると、本文書内のすべての参照は、別途記述されない限り、燃料電池スタックの「燃料電池」としての動作を同義に指し得る。例えば、商業規模の燃焼発電機によって生成される排気量は、従来のサイズの燃料電池(すなわち、単一のスタック)による処理には大きすぎる場合がある。全排気を処理するために、複数の燃料電池(すなわち、2つ以上の別個の燃料電池または燃料電池スタック)を、各燃料電池が(ほぼ)等量の燃焼排気を処理することができるように、並列に配置することができる。複数の燃料電池を使用することができるものの、各燃料電池は、典型的には、その(ほぼ)等量の燃焼排気を所与として、概して類似した様式で動作させることができる。
【0047】
溶融炭酸塩型燃料電池動作の例:カソードおよびアノードのクロスフロー配向
図3は、溶融炭酸塩型燃料電池スタックの一部の一般例を示す。
図3に示されるスタックの部分は、燃料電池301および関連する改質素子380に対応する。スタック内の隣接する燃料電池および/またはスタック内の他の素子から燃料電池を単離するために、燃料電池には、セパレータプレート310および311が含まれる。例えば、セパレータプレート310は、燃料電池301を改質素子380から分離する。追加のセパレータプレート390は、改質素子380の上に位置する。
図3では、燃料電池301は、電解質342を含有する電解質マトリックス340によって分離されるアノード330およびカソード350を含む。アノードコレクタ320は、アノード330と燃料電池スタック中の他のアノードとの間に電気接点を提供し、一方で、カソードコレクタ360は、カソード350と燃料電池スタック中の他のカソードとの間に同様の電気接点を提供する。加えて、アノードコレクタ320は、アノード330からのガスの導入および排気を可能にし、一方で、カソードコレクタ360は、カソード350からのガスの導入および排気を可能にする。
【0048】
動作中、CO2は、O2とともにカソードコレクタ360に通される。CO2およびO2は、多孔質カソード350内に拡散し、カソード350および電解質マトリックス340の境界付近のカソード界面領域に移動する。カソード界面領域では、電解質342の一部は、カソード350の細孔中に存在し得る。CO2およびO2は、カソード界面領域の付近/中で炭酸塩イオン(CO3
2-)に変換され得、これは次に、電解質342を横断して(したがって、電解質マトリックス340を横断して)輸送されて、電流の生成を容易にし得る。代替イオン輸送が発生している態様では、O2の一部は、電解質342における輸送のために、水酸化物イオンまたは過酸化物イオンなどの代替イオンに変換され得る。電解質342を横断して輸送された後、炭酸塩イオン(または代替イオン)は、電解質マトリックス340およびアノード330の境界付近のアノード界面領域に到達し得る。炭酸塩イオンは、H2の存在下でCO2およびH2Oに戻って変換されて、燃料電池によって生成される電流を形成するために使用される電子を放出し得る。H2および/またはH2の形成に好適な炭化水素は、アノードコレクタ320を介してアノード330に導入される。
【0049】
図3に示される燃料電池スタックの例示的な部分において、H
2および/または炭化水素の少なくとも一部は、改質素子380からアノードコレクタ320に通され得る。改質素子380は、改質触媒を含む1つ以上の表面を含み得る。改質素子中の少なくとも1つの表面の第1の部分にある改質触媒は、本明細書に記載の触媒密度パターンを有する改質触媒に対応し得る。任意選択で、改質触媒は、アノード330内の表面の第1の部分(図示せず)に存在することができ、アノード330中の改質触媒は、本明細書に記載の触媒密度パターンを有する。
【0050】
溶融炭酸塩型燃料電池のアノード内の流れの方向は、カソード内の流れの方向に対して任意の好都合な配向を有することができる。1つの選択肢は、アノード内の流れの方向がカソード内の流れの方向に対してほぼ90°の角度になるように、クロスフロー構成を使用することであり得る。この種類のフロー構成は、クロスフロー構成を使用することで、アノード入口/出口のためのマニホルドおよび/または配管が、カソード入口/出口のためのマニホルドおよび/または配管とは異なる燃料電池スタックの側に位置するようになり得るため、実用的な利益を有し得る。
【0051】
図4は、燃料電池カソードおよび対応する燃料電池アノード内の流れの方向を示す矢印とともに、燃料電池カソードの上面図の例を概略的に示す。
図4では、矢印405はカソード450内の流れの方向を示し、一方で矢印425はアノード(図示せず)内の流れの方向を示す。
【0052】
アノードおよびカソードの流れは、互いに対してほぼ90°で配向されるため、アノードおよびカソードのフローパターンは、反応条件がカソードの様々な部分で異なることの一因であり得る。異なる条件は、カソードの4つの角における反応条件を考慮することによって解説することができる。
図4の解説では、本明細書に記載の反応条件は、CO
2利用率が75%以上(または80%以上)で動作する燃料電池の反応条件と質的に類似している。
【0053】
角482は、カソード入力流とアノード入力流との両方の進入点に近い燃料電池の部分に対応する。その結果、CO2(カソード中)とH2(アノード中)との両方の濃度は、角482において比較的高くなる。この高濃度に基づいて、角482付近の燃料電池の一部は、実質的に電解質を横断する炭酸塩イオン以外のイオンの輸送なく、予想される条件下で動作し得ることが予想される。
【0054】
角484は、カソード入力流の進入点に近く、かつアノード出力流の退出点に近い燃料電池の部分に対応する。角484付近の位置では、燃料利用率に応じて、アノード中のH2の濃度が低いことを理由に、電流密度の量が制限されてもよい。しかしながら、電解質を横断して輸送されるいずれのイオンも炭酸塩イオンに実質的に対応するように、十分なCO2が存在するべきである。
【0055】
角486は、アノード出力流の退出点に近く、かつカソード出力流の退出点に近い燃料電池の部分に対応する。角486付近の位置では、H2(アノード中)およびCO2(カソード中)両方の濃度がより低いことを理由に、燃料電池反応のための駆動力が低いため、電流はほとんどまたはまったくないことが予想され得る。
【0056】
角488は、アノード入力流の進入点に近く、かつカソード出力流の退出点に近い燃料電池の部分に対応する。角488付近の位置における水素の利用可能性が比較的高いことにより、実質的な電流密度が得られることが予想される。しかしながら、CO2の濃度が比較的低いことに起因して、水酸化物イオンおよび/または他の代替イオンの相当量の輸送が生じ得る。態様に応じて、相当量の代替イオン輸送により、計算CO2利用率が、5%以上、または10%以上、または15%以上、または20%以上増加し得る。加えてまたはあるいは、輸率は、0.97以下、または0.95以下、または0.90以下、または0.85以下、または0.80以下であり得る。電解質を横断する相当量の代替イオンの輸送により、一時的に、より高い電流密度が角488付近の位置に維持されるようになり得る。しかしながら、代替イオンの輸送により、カソードおよび/またはアノード構造の劣化も生じ得るため、角488付近の位置における経時的な電流密度はより低くなる(場合により無くなる)。代替イオン輸送の量がより少ない(0.96以上、または0.98以上の輸率など)と、寿命にわたる劣化量はそれほど深刻ではないことに留意されたい。
【0057】
代替イオン輸送が燃料電池内の1つ以上の場所において顕著になると、燃料電池はすぐに劣化し始めることが発見されている。これは、1つ以上の位置が劣化し、さらなる電流密度を提供しないためと考えられる。領域(複数可)が所望の電流密度に寄与しなくなると、燃料電池のための一定の全体(平均)電流密度を維持するために、燃料電池内の残りの位置がより高い電流密度で動作する必要がある。これにより、代替イオンの輸送のための領域が大きくなって燃料電池の膨張部分を生じさせ得、これが劣化して最終的に稼働を停止する。あるいは、燃料電池の一部の劣化により、電池からの総電流密度が低減し得、これもまた望ましくない。改善された改質触媒パターンで燃料電池を動作させることで、代替イオン輸送の不均一な分布に起因する温度変動を低減することができる。これにより、CO2捕捉が高まっている間に生じる代替イオン輸送に起因する劣化の量を低減または最小限にすることができ、より長い燃料電池寿命が可能になる。
【0058】
アノード入力および出力
様々な態様では、MCFCのためのアノード入力ストリームには、水素、メタンなどの炭化水素、CおよびHとは異なるヘテロ原子を含有してもよい炭化水素性もしくは炭化水素様化合物、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。水素/炭化水素/炭化水素様化合物の供給源は、燃料源と称され得る。いくつかの態様では、アノードに供給されるメタン(または他の炭化水素、炭化水素性、または炭化水素様化合物)の大部分は、典型的には、新鮮なメタンであり得る。本記載においては、新鮮なメタンなどの新鮮な燃料は、別の燃料電池プロセスからリサイクルされない燃料を指す。例えば、アノード出口ストリームからアノード入口に戻ってリサイクルされたメタンは、「新鮮な」メタンとは見なされないことがあり、代わりに、再生メタンと記載され得る。
【0059】
使用される燃料源は、カソード入力のためにCO2含有ストリームを提供するために燃料源の一部を使用するタービンなどの他の構成要素と共有することができる。燃料源入力は、水素を生成する改質セクション内の炭化水素(または炭化水素様)化合物を改質するのに適切な燃料に比例した水を含み得る。例えば、メタンが、H2を生成するための改質用の燃料入力である場合、水対燃料のモル比は、約1対1~約10対1、例えば、少なくとも約2対1であり得る。外部改質には4対1以上の比が典型的であるが、内部改質にはより低い値が典型的であり得る。H2が燃料源の一部である程度で、いくつかの任意選択の態様では、燃料中に追加の水を必要としない場合があり、これは、アノードでのH2の酸化が、燃料を改質するために使用することができるH2Oを生成する傾向があり得るためである。燃料源はまた、任意選択で、燃料源に付帯する構成要素を含有することができる(例えば、天然ガス供給は、追加の構成要素としていくらかの含有量のCO2を含有することができる)。例えば、天然ガス供給物は、追加の成分としてCO2、N2、および/または他の不活性(希)ガスを含有することができる。任意選択で、いくつかの態様では、燃料源はまた、アノード排気のリサイクルされた部分に由来するCOなどのCOを含有してもよい。燃料中のCOの燃料電池アセンブリへの追加的または代替的な可能な供給源は、燃料電池アセンブリに進入する前に燃料に対して行われる炭化水素燃料の水蒸気改質によって生成されるCOであり得る。
【0060】
より一般的には、様々な種類の燃料ストリームが、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードのアノード入力ストリームとして使用するのに好適であり得る。いくつかの燃料ストリームは、CともHとも異なるヘテロ原子も含み得る炭化水素および/または炭化水素様化合物を含有するストリームに対応し得る。この考察では、別途指定されない限り、MCFCアノードのための炭化水素を含有する燃料ストリームへの言及は、かかる炭化水素様化合物を含有する燃料ストリームを含むように定義される。炭化水素(炭化水素様)燃料ストリームの例としては、天然ガス、C1~C4炭素化合物(メタンまたはエタンなど)を含有するストリーム、およびより重いC5以上の炭化水素(炭化水素様化合物を含む)を含有するストリーム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。アノード入力において使用するための可能な燃料ストリームのさらに他の追加的または代替的な例としては、有機材料の自然(生物学的)分解から生成されるメタンなどのバイオガス型ストリームを挙げることができる。
【0061】
いくつかの態様では、溶融炭酸塩型燃料電池を使用して、希釈剤化合物の存在によりエネルギー含有量が低い、天然ガスおよび/または炭化水素ストリームなどの入力燃料ストリームを処理することができる。例えば、メタンおよび/または天然ガスのいくつかの供給源は、相当量のCO2、または窒素、アルゴン、もしくはヘリウムなどの他の不活性分子のいずれかを含み得る供給源である。CO2および/または不活性物質の量が上昇しているため、供給源に基づく燃料ストリームのエネルギー含有量は減少し得る。燃焼反応のためにエネルギー含有量が低い燃料を使用すること(例えば、燃焼動力タービンに電力供給するためなど)は、困難をもたらし得る。しかしながら、溶融炭酸塩型燃料電池は、燃料電池の効率に対する影響を低減または最小限にして、エネルギー含有量が低い燃料源に基づいて電力を生成し得る。追加のガス体積があることで、燃料の温度を改質および/またはアノード反応のための温度に上昇させるため、追加の熱が必要となり得る。加えて、燃料電池アノード内の水性ガスシフト反応の平衡性に起因して、追加のCO2があることにより、アノード出力に存在するH2およびCOの相対量が影響を受け得る。しかしながら、それ以外の場合、不活性化合物が改質およびアノード反応に与える直接的な影響は最小限であり得る。溶融炭酸塩型燃料電池の燃料ストリーム中のCO2および/または不活性化合物の量は、存在する場合、少なくとも約1体積%、例えば、少なくとも約2体積%、または少なくとも約5体積%、または少なくとも約10体積%、または少なくとも約15体積%、または少なくとも約20体積%、または少なくとも約25体積%、または少なくとも約30体積%、または少なくとも約35体積%、または少なくとも約40体積%、または少なくとも約45体積%、または少なくとも約50体積%、または少なくとも約75体積%であり得る。加えてまたはあるいは、溶融炭酸塩型燃料電池の燃料ストリーム中のCO2および/または不活性化合物の量は、約90体積%以下、例えば、約75体積%以下、または約60体積%以下、または約50体積%以下、または約40体積%以下、または約35体積%以下であり得る。
【0062】
アノード入力ストリームの可能な供給源のさらに他の例は、精製機および/または他の産業プロセスの出力ストリームに対応し得る。例えば、コークス化は、多くの精製機において、より重い化合物をより低い沸点の範囲に変換するための一般的なプロセスである。コークス化により、典型的には、COおよび様々なC1~C4炭化水素を含む、室温でガスである様々な化合物を含有するオフガスが生成される。このオフガスは、アノード入力ストリームの少なくとも一部として使用することができる。クラッキングまたは他の精製プロセス中に生成される軽留分(C1~C4)などの他の精製機オフガスストリームは、加えてまたはあるいは、アノード入力ストリームに含めるのに好適であり得る。さらに他の好適な精製機ストリームは、加えてまたはあるいは、H2および/または改質可能な燃料化合物も含有するCOまたはCO2を含有する精製機ストリームを含み得る。
【0063】
アノード入力のためのさらに他の可能な供給源は、加えてまたはあるいは、水含有量が増加したストリームを含み得る。例えば、エタノールプラント(または別の種類の発酵プロセス)からのエタノール出力ストリームは、最終蒸留の前には、H2Oのかなりの部分を含み得る。かかるH2Oが燃料電池の動作に対して生じさせる影響は、典型的には、最小限であり得る。このため、アルコール(または他の発酵生成物)と水との発酵混合物は、アノード入力ストリームの少なくとも一部として使用することができる。
【0064】
バイオガス、または消化ガスは、アノード入力のための別の追加的または代替的な可能な供給源である。バイオガスは、主にメタンおよびCO2で構成されてもよく、典型的には、有機物の分解または消化によって生成される。有機物を消化し、バイオガスを生成するために、嫌気性細菌を使用してもよい。アノード入力として使用する前に、硫黄含有化合物などの不純物をバイオガスから除去してもよい。
【0065】
MCFCアノードからの出力ストリームは、H2O、CO2、CO、およびH2を含み得る。任意選択で、アノード出力ストリームは、追加の出力成分として供給物中に未反応燃料(H2またはCH4など)または不活性化合物も有し得る。この出力ストリームを、改質反応用の熱を提供するための燃料源として、または電池を加熱するための燃焼燃料として使用する代わりに、アノード出力ストリーム上で1つ以上の分離を行って、H2またはCOなどの別のプロセスへの入力として価値がある可能性のある成分からCO2を分離することができる。H2および/またはCOは、化学合成のための合成ガスとして、化学反応のための水素源として、および/または温室効果ガス排出量が低減された燃料として使用することができる。
【0066】
アノード排気は、水性ガスシフトおよび成分の互いから分離を含む、様々なガス処理オプションに供され得る。2つの一般的なアノード処理スキームを
図1および
図2に示す。
【0067】
図1は、化学合成プロセスと併せて、溶融炭酸塩型燃料電池の燃料電池アレイを動作させるための反応システムの例を概略的に示す。
図1では、燃料ストリーム105は、燃料電池アレイ中の燃料電池スタックの一部である燃料電池などの燃料電池120のアノード127と関連付けられた改質段(単数または複数)110に提供される。燃料電池120と関連付けられる改質段110は、燃料電池アセンブリの内部であり得る。いくつかの任意選択の態様では、外部改質段(図示せず)を使用して、入力ストリームを燃料電池アセンブリに通す前に、入力ストリーム中の改質可能な燃料の一部を改質することもできる。燃料ストリーム105は、好ましくは、改質可能な燃料、例えば、メタン、他の炭化水素、および/または炭素-水素結合を含有する有機化合物などの他の炭化水素様化合物を含み得る。燃料ストリーム105はまた、任意選択で、H
2および/またはCO、例えば、任意選択のアノード再循環ストリーム185によって提供されるH
2および/またはCOを含有し得る。アノード再循環ストリーム185は任意選択であること、また多くの態様において、直接的に、または燃料ストリーム105もしくは改質された燃料ストリーム115と組み合わせることを介して間接的にアノード排気125からアノード127に戻る再循環ストリームは提供されないことに留意されたい。改質後、改質された燃料ストリーム115を燃料電池120のアノード127に通すことができる。CO
2およびO
2含有ストリーム119も、カソード129に通すことができる。燃料電池のカソード部分129からの炭酸塩イオン122、CO
3
2-の流れにより、アノード燃料電池反応に必要な残りの反応物が提供され得る。アノード127での反応に基づいて、得られるアノード排気125は、H
2O、CO
2、不完全に反応した燃料に対応する1つ以上の成分(H
2、CO、CH
4、または改質可能な燃料に対応する他の成分)、ならびに任意選択で、燃料ストリーム105の一部であるN
2および/または他の汚染物質などの1つ以上の追加の非反応性成分を含み得る。次に、アノード排気125を1つ以上の分離段に通すことができる。例えば、CO
2除去段140は、低温CO
2除去システム、CO
2などの酸性ガスを除去するためのアミン洗浄段、またはCO
2出力ストリーム143をアノード排気から分離するための別の好適な種類のCO
2分離段に対応し得る。任意選択で、アノード排気を、まず水性ガスシフト反応器130に通して、アノード排気に存在するあらゆるCOを(いくらかのH
2Oと併せて)、任意選択で水性ガスシフトしたアノード排気135中でCO
2およびH
2に変換し得る。CO
2除去段の性質に応じて、水出力ストリーム153をアノード排気から除去ために、水分凝縮または除去段150が望ましいことがある。CO
2分離段140の後に
図1に示されているが、これは、任意選択で、代わりにCO
2分離段140の前に位置してもよい。加えて、H
2の分離のための任意選択の膜分離段160を使用して、H
2の高純度透過物ストリーム163を生成することができる。次に、得られた保持物ストリーム166を、化学合成プロセスへの入力として使用し得る。加えてまたはあるいは、ストリーム166を第2の水性ガスシフト反応器131中でシフトさせて、H
2、CO、およびCO
2含有量を異なる比に調整し、化学合成プロセスでさらに使用するための出力ストリーム168を生成することができる。
図1では、アノード排気再循環ストリーム185は、保持物ストリーム166から引き出されるように示されるが、アノード再循環ストリーム185は、加えてまたはあるいは、様々な分離段中またはそれらの間の他の好都合な場所から引き出され得る。分離段およびシフト反応器(複数可)は、加えてまたはあるいは、異なる順序で、および/または並列構成で構成され得る。最後に、CO
2の含有量が低減したストリーム139を、カソード129からの出力として生成することができる。簡素化のために、プロセスで有用であり得る圧縮および熱付加/除去の様々な段、ならびに蒸気付加または除去は図示しない。
【0068】
上述のように、アノード排気に行われる様々な種類の分離は、任意の好都合な順序で行うことができる。
図2は、アノード排気に分離を行うための代替的な順序の例を示す。
図2では、アノード排気125は、最初に、水素含有量の一部263をアノード排気125から除去するための分離段260に通され得る。これにより、例えば、アノード排気のH
2含有量が低減し、H
2とCOとの比が2:1に近い保持物266を提供することができるようになる。次に、H
2とCOとの比をさらに調整して、水性ガスシフト段230における所望の値を達成することができる。その後、水性ガスシフトした出力235を、CO
2分離段240および水除去段250に通して、所望の化学合成プロセスへの入力として使用するのに好適な出力ストリーム275を生成することができる。任意選択で、出力ストリーム275を、追加の水性ガスシフト段(図示せず)に曝露し得る。出力ストリーム275の一部は、任意選択でアノード入力に再循環(図示せず)させ得る。言うまでもなく、分離段のさらに他の組み合わせおよび順序付けを使用して、所望の組成物を有するアノード出力に基づくストリームを生成してもよい。簡素化のために、プロセスで有用であり得る圧縮および熱付加/除去の様々な段、ならびに蒸気付加または除去は図示しない。
【0069】
カソード入力および出力
従来、溶融炭酸塩型燃料電池は、アノードに送達される燃料ストリーム中の燃料のある部分を消費しながら所望の負荷を引き出すことに基づいて動作し得る。次に、燃料電池の電圧が、負荷、アノードへの燃料入力、カソードに提供される空気およびCO2、ならびに燃料電池の内部抵抗によって決定さ得る。カソードへのCO2は、従来、一部にはアノード排気をカソード入力ストリームの少なくとも一部分として使用することによって提供され得る。対照的に、本発明は、アノード入力およびカソード入力に別個の/異なる供給源を使用し得る。アノード入力流の組成物とカソード入力流との間のあらゆる直結を除去することによって、過剰な合成ガスを生成すること、二酸化炭素の捕捉を改善すること、および/または燃料電池の総効率(電気的および化学的電力)を改善することなど、燃料電池を動作させるための追加の選択肢が利用可能になる。
【0070】
様々な態様では、MCFCは、燃料電池のために電解質を横断する代替イオン輸送を引き起こすように動作させることができる。代替イオン輸送を引き起こすためには、カソード入力ストリームのCO2含有量は、5.0体積%以下、または4.0体積%以下、例えば、1.5体積%~5.0体積%、または1.5体積%~4.0体積%、または2.0体積%~5.0体積%、または2.0体積%~4.0体積%であり得る。
【0071】
カソード入力流としての使用に好適なCO2含有ストリームの一例は、燃焼源からの出力または排気流であり得る。燃焼源の例としては、天然ガスの燃焼、石炭の燃焼、および/または他の炭化水素型燃料(生物由来燃料を含む)の燃焼に基づく供給源が挙げられるが、これらに限定されない。追加的または代替的な供給源には、他の種類のボイラー、燃焼加熱器、炉、および/または別の物質(水または空気など)を加熱するために炭素含有燃料を燃やす他の種類のデバイスが含まれ得る。
【0072】
カソード入力ストリームの他の可能な供給源には、加えてまたはあるいは、生物産生CO2の供給源が含まれ得る。これには、例えば、エタノール生産中に生成されるCO2などの、生物由来化合物の処理中に生成されるCO2が含まれ得る。追加的または代替的な例としては、リグノセルロースの燃焼などの生物産生燃料の燃焼によって生成されるCO2を挙げることができる。さらに他の追加的または代替的な可能なCO2源は、鋼、セメント、および/または紙を製造するためにプラントによって生成されるCO2含有ストリームなどの様々な産業プロセスからの出力または排気ストリームに対応し得る。
【0073】
CO2のさらに別の追加的または代替的な可能な供給源は、燃料電池からのCO2含有ストリームであり得る。燃料電池からのCO2含有ストリームは、異なる燃料電池からのカソード出力ストリーム、異なる燃料電池からのアノード出力ストリーム、燃料電池のカソード出力からカソード入力への再循環ストリーム、および/または燃料電池のアノード出力からカソード入力への再循環ストリームに対応し得る。例えば、従来の条件下、スタンドアロンモードで動作するMCFCは、少なくとも約5体積%のCO2濃度でカソード排気を生成し得る。かかるCO2含有カソード排気は、本発明の態様に従って動作するMCFCのカソード入力として使用され得る。より一般的には、カソード排気からCO2出力を生成する他の種類の燃料電池、ならびに「燃焼」反応によっておよび/または燃焼動力発電機によって生成されない他の種類のCO2含有ストリームが、追加的または代替的に使用され得る。任意選択であるが、好ましくは、別の燃料電池由来のCO2含有ストリームは、別の溶融炭酸塩型燃料電池由来であり得る。例えば、カソードに関して直列に接続される溶融炭酸塩型燃料電池には、第1の溶融炭酸塩型燃料電池のカソードからの出力を、第2の溶融炭酸塩型燃料電池のカソードへの入力として使用することができる。
【0074】
CO2に加えて、カソード入力ストリームは、カソード反応に必要な成分を提供するために、O2を含み得る。一部のカソード入力ストリームは、空気を成分として有することに基づき得る。例えば、燃焼排気ストリームは、空気の存在下で炭化水素燃料を燃焼することによって形成され得る。かかる燃焼排気ストリーム、または空気の含有に基づく酸素含有量を有する別の種類のカソード入力ストリームは、酸素含有量が、約20体積%以下、例えば、約15体積%以下、または約10体積%以下であり得る。加えてまたはあるいは、カソード入力ストリームの酸素含有量は、少なくとも約4体積%、例えば、少なくとも約6体積%、または少なくとも約8体積%であり得る。より一般的には、カソード入力ストリームは、カソード反応を行うのに好適な酸素の含有量を有し得る。いくつかの態様では、これは、約5体積%~約15体積%、例えば、約7体積%~約9体積%の酸素含有量に対応し得る。多くの種類のカソード入力ストリームについて、CO2とO2とを組み合わせた量は、入力ストリームの約21体積%未満、例えば、ストリームの約15体積%未満、または約10体積%未満に対応し得る。酸素を含有する空気ストリームを、酸素含有量が低いCO2源と組み合わせることができる。例えば、石炭を燃やすことによって生成される排気ストリームは低い酸素含有量を含んでもよく、これを空気と混合して、カソード入口ストリームを形成することができる。
【0075】
CO2およびO2に加えて、カソード入力ストリームは、N2、H2O、および他の典型的な酸化体(空気)成分などの不活性/非反応性種からも構成され得る。例えば、燃焼反応由来の排気から誘導されるカソード入力については、空気が燃焼反応のための酸化体源の一部として使用される場合、排気ガスは、N2、H2O、および空気中に存在する少量の他の化合物などの空気の典型的な成分を含み得る。燃焼反応のための燃料源の性質に応じて、燃料源に基づく燃焼後に存在する追加の種には、H2O、窒素(NOx)および/または硫黄(SOx)の酸化物、ならびに燃料中に存在する、および/またはCOなどの燃料中に存在する化合物の部分もしくは完全燃焼生成物である他の化合物のうちの1つ以上が含まれてもよい。これらの種は、カソード触媒表面を害さない量で存在してもよいが、全体的なカソード活性を低下させ得る。かかる性能の低下は許容可能であってもよく、あるいはカソード触媒と相互作用する種は、既知の汚染物質除去技術によって許容可能なレベルに低減されてもよい。
【0076】
カソード入力ストリーム(燃焼排気に基づく入力カソードストリームなど)に存在するO2の量は、有利には、燃料電池中のカソード反応に必要な酸素を提供するのに十分なものであり得る。このため、O2の体積率は、有利には、排気中のCO2の量の少なくとも0.5倍であり得る。任意選択で、必要に応じて、追加の空気をカソード入力に添加して、カソード反応に十分な酸化体を提供することができる。酸化体として何らかの形態の空気を使用する場合、カソード排気中のN2の量は、少なくとも約78体積%、例えば、少なくとも約88体積%、および/または約95体積%以下であり得る。いくつかの態様では、カソード入力ストリームは、加えてまたはあるいは、H2SまたはNH3などの一般的に汚染物質と見なされる化合物を含有し得る。他の態様では、カソード入力ストリームは、かかる汚染物質の含有量を低減または最小化するために、洗浄することができる。
【0077】
MCFCの動作に好適な温度は、例えば、入口温度が約550℃、出口温度が約625℃で、少なくとも約500℃など、約450℃~約750℃であり得る。カソードに進入する前に、熱は、所望であれば、カソード入力ストリームに加えられるかまたはそれから除去されて、例えば、アノードのための燃料入力を改質するなどの他のプロセスのために熱を提供する。例えば、カソード入力ストリームのための供給源が燃焼排気ストリームである場合、燃焼排気ストリームは、温度が、カソード入口に所望される温度より高くてもよい。かかる態様では、熱は、カソード入力ストリームとして使用する前に燃焼排気から除去され得る。あるいは、燃焼排気は、例えば石炭火力ボイラー上の湿式ガス洗浄器の後で、非常に低い温度にあり得、この場合、燃焼排気は、約100℃未満であり得る。あるいは、燃焼排気は、追加の発電用に蒸気タービンを運転するために蒸気を立ち昇らせることによってガスを冷却することができる複合サイクルモードで動作するガスタービンの排気に由来し得る。この場合、ガスは約50℃未満であり得る。所望以上に冷却された燃焼排気には、熱を加えることができる。
【0078】
追加の溶融炭酸塩型燃料電池の動作戦略
いくつかの態様では、代替イオン輸送を引き起こすためにMCFCを動作させる場合、燃料電池のアノードは、ほぼ60%~80%の伝統的な燃料利用率値で動作させることができる。電力を生成しようとするとき、燃料電池のアノードを比較的高い燃料利用率で動作させることが、電気効率(すなわち、燃料電池によって消費される化学エネルギーの単位あたりに生成される電気エネルギー)を改善するために有益であり得る。
【0079】
いくつかの態様では、アノード出力流に提供されるH2の量の増加などの他の利益をもたらすために、燃料電池の電気効率を低減することが有益であってもよい。これは、例えば、追加の改質を行うことおよび/または別の吸熱反応を行うことによって、燃料電池(または燃料電池スタック)中で生成された過剰な熱を消費することが望ましい場合に有益であり得る。例えば、溶融炭酸塩型燃料電池を動作させて、合成ガスおよび/または水素の生成の増加をもたらすことができる。吸熱改質反応を行うために必要な熱は、発電のためにアノード中の発熱電気化学反応によって提供され得る。発熱燃料電池反応(複数可)によって生成された熱を燃料電池から離して輸送しようとするのではなく、この過剰な熱を、改質および/または別の吸熱反応のための熱源として原位置で使用することができる。これにより、熱エネルギーのより効率的な使用、および/または追加の外部もしくは内部熱交換の必要性の低減が生じ得る。本質的には原位置でのこの熱エネルギーの効率的な生成および使用により、有利な動作条件を維持しながら、システムの複雑性および構成要素を低減することができる。いくつかの態様では、改質または他の吸熱反応の量は、先行技術で典型的に説明されているように必要熱量よりも有意に少ないのではなく、発熱反応(複数可)によって生成される過剰な熱の量に相当する、またはさらにはそれよりも大きい必要吸熱量を有するように選択され得る。
【0080】
加えてまたはあるいは、アノード入口とアノード出口との温度差が正ではなく負であり得るように、燃料電池を動作させ得る。このため、アノード入口とアノード出口との間の温度を増加させる代わりに、十分な量の改質および/または他の吸熱反応を行って、アノード出口からの出力ストリームをアノード入口温度よりも冷たくすることができる。さらに加えてまたはあるいは、アノード入力とアノード出力との間の温度差が、吸熱反応(複数可)の相対需要、ならびに電力を生成するためのカソード燃焼反応とアノード反応との組み合わせた発熱生成に基づいて予想される差よりも小さくなり得るように、追加の燃料を燃料電池および/または内部改質段(または他の内部吸熱反応段)のための加熱器に供給することができる。改質を吸熱反応として使用する態様では、過剰な燃料を改質するように燃料電池を動作させることで、熱交換および改質のためのシステムの複雑性を最小限にしながら、従来の燃料電池動作と比べて増加した合成ガスおよび/または増加した水素の生成が可能になり得る。こうして、追加の合成ガスおよび/または追加の水素を、「クリーン」燃料として使用するための化学合成プロセスおよび/または水素の収集/再利用を含む、様々な用途で使用することができる。
【0081】
アノードでの発熱反応によって酸化した水素1モルあたりの生成される熱の量は、改質反応によって生成される水素1モルあたりの消費される熱の量よりも実質的に大きくなり得る。溶融炭酸塩型燃料電池中の水素の正味反応(H2+1/2 O2=>H2O)は、約-285kJ/モルの水素分子の反応エンタルピーを有し得る。このエネルギーの少なくとも一部は、燃料電池内の電気エネルギーに変換され得る。しかしながら、反応エンタルピーと、燃料電池によって生成される電気エネルギーとの差(およそ)は、燃料電池内の熱になり得る。このエネルギー量は、代替的に、燃料電池の理論最大電圧と実際の電圧との差を乗じた電池の電流密度(単位面積あたりの電流)、または<電流密度>*(V最大-V実際)として表すことができる。このエネルギー量は、燃料電池の「廃熱」として定義される。改質の一例として、メタンのための改質のエンタルピー(CH4+2H2O=>4H2+CO2)は、約250kJ/モルのメタン、または約62kJ/モルの水素分子であり得る。熱バランスの観点から、電気化学的に酸化した各水素分子は、改質によって1個超の水素分子を生成するのに十分な熱を生成することができる。従来の構成では、この過剰な熱により、アノード入口からアノード出口までの実質的な温度差が生じ得る。この過剰な熱を燃料電池中の温度を増加させるために使用することを許容する代わりに、過剰な熱は、一致量の改質反応を行うことによって消費することができる。アノードで生成された過剰な熱は、燃料電池中の燃焼反応によって生成された過剰な熱で補充され得る。より一般的には、過剰な熱は、燃料電池アノードにおいておよび/または燃料電池と統合された吸熱反応段において吸熱反応を行うことによって消費され得る。
【0082】
態様に応じて、改質および/または他の吸熱反応の量は、燃料電池の所望の温度比を達成するために、アノードで反応した水素の量に対して選択することができる。本明細書で使用されるとき、「温度比」は、燃料電池アセンブリでの発熱反応(アノードとカソードとの両方での発熱反応を含む)によって生成される熱を、燃料電池アセンブリ内で発生する改質反応の吸熱熱需要で除したものとして定義される。数学的に表現すると、温度比(TH)=Q発熱/Q吸熱であり、Q発熱は、発熱反応によって生成される熱の合計であり、Q吸熱は、燃料電池内で発生する吸熱反応によって消費される熱の合計である。発熱反応によって生成される熱は、カソードにおける改質反応、水性ガスシフト反応、燃焼反応(すなわち、燃料化合物の酸化)、および/または電池における電気化学反応に起因する任意の熱に対応し得ることに留意されたい。電気化学反応によって生成される熱は、電解質を横断する燃料電池反応の理想電気化学ポテンシャルから燃料電池の実際の出力電圧を減じたものに基づいて計算することができる。例えば、MCFC中の反応の理想電気化学的ポテンシャルは、電池で生じる正味反応に基づいて約1.04Vであると考えられる。MCFCの動作中、電池は、典型的には、様々な損失に起因して、出力電圧が1.04V未満であり得る。例えば、共通の出力/動作電圧は、約0.7Vであり得る。生成される熱は、電池の電気化学ポテンシャル(すなわち、約1.04V)から動作電圧を減じたものと等しくてもよい。例えば、燃料電池中で約0.7Vの出力電圧が達成されると、電池中の電気化学反応によって生成される熱は約0.34Vであり得る。このため、この状況では、電気化学反応により、約0.7Vの電気および約0.34Vの熱エネルギーが生成され得る。かかる例では、約0.7Vの電気エネルギーは、Q発熱の一部として含まれない。換言すると、熱エネルギーは電気エネルギーではない。
【0083】
様々な態様では、温度比は、燃料電池スタック、燃料電池スタック内の個々の燃料電池、改質段が統合されている燃料電池スタック、吸熱反応段が統合されている燃料電池スタック、またはそれらの組み合わせなどの任意の好都合な燃料電池構造に対して決定することができる。温度比はまた、燃料電池または燃料電池スタックのアセンブリなどの燃料電池スタック内の異なるユニットについて計算されてもよい。例えば、温度比は、熱統合の観点から統合される燃料電池(複数可)に十分に近接した統合された改質段および/または統合された吸熱反応段素子とともに、燃料電池スタック内の燃料電池(または複数の燃料電池)について計算されてもよい。
【0084】
熱統合の観点から、燃料電池スタックにおける代表幅は、個々の燃料電池スタック素子の高さであり得る。別個の改質段および/または別個の吸熱反応段は、スタックにおける高さが燃料電池とは異なり得ることに留意されたい。かかる状況では、燃料電池素子の高さを代表高さとして使用することができる。この考察では、統合された吸熱反応段は、1つ以上の燃料電池と熱統合され、その結果、統合された吸熱反応段が燃料電池からの熱を改質のための熱源として使用することができる段として定義され得る。かかる統合された吸熱反応段は、燃料電池からスタック素子の高さの10倍未満で位置決めされ、統合された段に熱を提供するものとして定義され得る。例えば、統合された吸熱反応段(改質段など)は、熱統合されたいずれかの燃料電池からスタック素子の高さの10倍未満、またはスタック素子の高さの8倍未満、またはスタック素子の高さの5倍未満、またはスタック要素の高さの3倍未満で位置決めされ得る。この考察では、燃料電池素子に隣接するスタック素子を表す統合された改質段および/または統合された吸熱反応段は、高さが、隣接する燃料電池素子から約1スタック素子以下であると定義される。
【0085】
約1.3以下、または約1.15以下、または約1.0以下、または約0.95以下、または約0.90以下、または約0.85以下、または約0.80以下、または約0.75以下の温度比は、MCFC燃料電池の使用において典型的に求められる温度比よりも低くあり得る。本発明の態様では、温度比を低減して、合成ガス生成、水素生成、吸熱反応を介した別の生成物の生成、またはそれらの組み合わせを増加させるおよび/または最適化することができる。
【0086】
本発明の様々な態様では、燃料電池の動作は、温度比に基づいて特徴付けることができる。燃料電池が所望の温度比を有するように動作する場合、溶融炭酸塩型燃料電池は、約1.5以下、例えば、約1.3以下、または約1.15以下、または約1.0以下、または約0.95以下、または約0.90以下、または約0.85以下、または約0.80以下、または約0.75以下の温度比を有するように動作し得る。加えてまたはあるいは、温度比は、少なくとも約0.25、または少なくとも約0.35、または少なくとも約0.45、または少なくとも約0.50であり得る。さらに加えてまたはあるいは、いくつかの態様では、燃料電池は、アノード入力とアノード出力との間の温度上昇が、約40℃以下、例えば、約20℃以下、または約10℃以下であるように動作し得る。なおさらに加えてまたはあるいは、燃料電池は、アノード出口温度が、アノード入口の温度よりも約10℃低い~約10℃高いように動作し得る。またさらに加えてまたはあるいは、燃料電池は、アノード入口温度が、アノード出口温度よりも高い、例えば、少なくとも約5℃高い、または少なくとも約10℃高い、または少なくとも約20℃高い、または少なくとも約25℃高いように動作し得る。なおさらに加えてまたはあるいは、燃料電池は、アノード入口温度が、アノード出口温度よりも、約100℃以下、または約80℃以下、または約60℃以下、または約50℃以下、または約40℃以下、または約30℃以下、または約20℃以下高いように動作し得る。
【0087】
温度比を1未満にして燃料電池を動作させると、燃料電池全体の温度降下が生じ得る。いくつかの態様では、アノード入口からアノード出口までの温度降下が、約100℃以下、例えば、約80℃以下、または約60℃以下、または約50℃以下、または約40℃以下、または約30℃以下、または約20℃以下であり得るように、改質および/または他の吸熱反応の量を制限してもよい。アノード入口からアノード出口への温度降下を制限することは、例えば、アノード中の燃料の完全または実質的に完全な変換(改質による)を可能にするのに十分な温度を維持するために有益であり得る。他の態様では、吸熱反応によって消費される熱と燃料電池に供給される追加の外部熱とのバランスに起因して、アノード入口温度がアノード出口温度よりも、約100℃以下、例えば、約80℃以下、または約60℃以下、または約50℃以下、または約40℃以下、または約30°C℃以下、または約20℃以下高いように、追加の熱を燃料電池に供給する(熱交換または追加燃料の燃焼によってなど)ことができる。
【0088】
改質の量は、加えてまたはあるいは、改質可能な燃料の利用可能性に依存し得る。例えば、燃料がH2のみを含む場合、H2は既に改質されており、さらに改質可能ではないため、改質は発生しない。燃料電池によって「生成された合成ガス」の量は、アノード入力における合成ガスの低位発熱量(LHV)値とアノード出力における合成ガスのLHV値の差として定義することができる。生成された合成ガスLHV(正味sg)=(LHV(出口sg)-LHV(入口sg))、式中、LHV(入口sg)およびLHV(出口sg)は、それぞれ、アノード入口ストリームまたは入口流中の合成ガスのLHVおよびアノード出口ストリームまたは出口流中の合成ガスのLHVを指す。相当量のH2を含有する燃料を与えた燃料電池は、可能な合成ガス生成の量が制限され得、これは、燃料が、追加の改質可能な燃料を含有するのではなく、既に改質された相当量のH2を含有するためである。低位発熱量は、気相の完全に酸化した生成物(すなわち、気相CO2およびH2O生成物)への燃料成分の燃焼エンタルピーとして定義される。例えば、アノード入力ストリームに存在するいずれのCO2も、CO2がすでに完全に酸化しているため、アノード入力の燃料含有量に寄与しない。この定義では、アノード燃料電池反応に起因してアノードで生じる酸化の量は、アノード中の電気化学反応の一部としてのアノード中のH2の酸化として定義される。
【0089】
温度比を低減して燃料電池を動作させるための方法の例は、燃料電池中の熱の生成と消費とのバランスをとり、かつ/または生成されるよりも多くの熱を消費するために、燃料の過剰な改質を行う方法であり得る。H2および/またはCOを形成するために改質可能な燃料を改質することは吸熱プロセスであり得る一方、アノード電気化学酸化反応およびカソード燃焼反応(複数可)は、発熱であり得る。従来の燃料電池動作中、燃料電池動作のための供給成分を供給するために必要な改質の量は、典型的には、アノード酸化反応によって生成される熱の量よりも少ない熱を消費し得る。例えば、約70%または約75%の燃料利用率での従来の動作は、実質的に1より大きい温度比、例えば、少なくとも約1.4以上、または1.5以上の温度比をもたらす。その結果、燃料電池の出力ストリームは、入力ストリームよりも高温であり得る。この種類の従来の動作の代わりに、アノードに関連付けられる改質段で改質される燃料の量を増加させることができる。例えば、追加の燃料を改質して、発熱性燃料電池反応によって生成される熱が、改質で消費される熱によって(ほぼ)バランスをとること、および/または生成されるよりも多くの熱を消費することができるようにし得る。これにより、水素が、発電のためのアノード中の酸化した量と比べて実質的に過剰になり、温度比が、約1.0以下、例えば、約0.95以下、または約0.90以下、または約0.85以下、または約0.80以下、または約0.75以下となり得る。
【0090】
水素または合成ガスのいずれかを化学エネルギー出力としてアノード排気から引き出すことができる。水素は、燃やす(burn)または燃焼させる時に温室効果ガスを発生させることなく、クリーン燃料として使用することができる。代わりに、炭化水素(または炭化水素性化合物)の改質によって生成される水素については、CO2は、アノードループに既に「捕捉」されていることになる。加えて、水素は、様々な精製プロセスおよび/または他の合成プロセスのための貴重な入力であり得る。合成ガスは、様々なプロセスのための貴重な入力でもあり得る。燃料的価値を有することに加えて、合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ合成および/またはメタノール合成プロセスのための入力として合成ガスを使用することによってなど、他のより高価値の製品を生成するための原料として使用され得る。
【0091】
いくつかの態様では、アノードに送達されるおよび/またはアノードに関連付けられる改質段に送達される入力ストリーム中の改質可能な燃料の改質可能な水素の含有量は、アノードで反応した水素の正味量よりも、少なくとも約50%多く、例えば、少なくとも約75%多く、または少なくとも約100%多くあり得る。加えてまたはあるいは、アノードに送達されるおよび/またはアノードに関連付けられる改質段に送達される入力ストリーム中の燃料の改質可能な水素の含有量は、アノードで反応した水素の正味量よりも、少なくとも約50%多く、例えば、少なくとも約75%多く、または少なくとも約100%多くあり得る。様々な態様では、燃料流中の改質可能な燃料の改質可能な水素の含有量と、アノード中で反応した水素の量との比は、少なくとも約1.5:1、または少なくとも約2.0:1、または少なくとも約2.5:1、または少なくとも約3.0:1であり得る。加えてまたはあるいは、燃料流中の改質可能な燃料の改質可能な水素の含有量と、アノード中で反応した水素の量との比は、約20:1以下、例えば、約15:1以下、または約10:1以下であり得る。一態様では、アノード入口ストリーム中の改質可能な水素の含有量の100%未満が水素に変換され得ることが企図される。例えば、アノード入口ストリーム中の改質可能な水素の含有量の少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%、または少なくとも約90%が、アノード中および/または関連付けられる改質段(複数可)中に水素に変換され得る。加えてまたはあるいは、アノードに送達される改質可能な燃料の量は、アノード中の酸化した水素の低位発熱量(LHV)に対する改質可能な燃料のLHVに基づいて特徴付けられ得る。これは、改質可能な燃料の余剰比と称され得る。様々な態様において、改質可能な燃料の余剰比は、少なくとも約2.0、例えば、少なくとも約2.5、または少なくとも約3.0、または少なくとも約4.0であり得る。加えてまたはあるいは、改質可能な燃料の余剰比は、約25.0以下、例えば、約20.0以下、または約15.0以下、または約10.0以下であり得る。
【0092】
比較例-従来の触媒パターン
溶融炭酸塩型燃料電池の従来の動作中、カソードは、典型的には、カソード入力供給中のCO2濃度が8体積%以上および/またはCO2利用率が70%以下で動作する。かかる動作は、典型的には、5.0体積%以上のCO2を含むカソード排気に対応する。かかる従来の動作中、アノードは、燃料利用率60%以上で過剰な燃料を用いて動作する。かかる従来の条件下での動作のためには、燃料電池の動作を改善するため、様々な改質触媒パターンが開発されている。これらの触媒パターンは、従来の燃料電池動作中の予想される温度プロファイルに基づく。予想される温度プロファイルは、燃料電池内で反応が起こる場所の対応する予想に基づく。特に、60%~70%の典型的なまたは従来の燃料利用率では、燃料がアノード入口からアノード出口へとアノード内で移動するにつれて、いくらかの燃料の枯渇が生じることになる。同様に、40%~60%のCO2利用率については、CO2がカソード入口からカソード出口へと移動する際に失われるため、反応に利用可能なCO2の量がいくらか低減することになる。アノードとカソードとの両方における反応成分の濃度は、燃料電池中の反応の駆動力に寄与し得るため、反応の量は、カソード入口および/またはアノード入口付近で最も高くなり、アノード出口の方向およびカソード出口の方向に減低することが予想される。これに基づいて、従来の触媒パターンは、カソード入口およびアノード入口付近で追加の改質を提供すると同時に、アノード出口およびカソード出口付近で改質を低減または最小限にするように設計される。これにより、燃料電池中の発熱反応の位置と、改質素子内の吸熱反応とのバランスがとれる。
【0093】
従来の改質触媒パターン、ならびに燃料電池中のアノード流およびカソード流に対する関係を解説するために、
図5は、改質素子内のフローパターンの例を示す。
図5に示すフローパターンでは、改質可能な燃料521は、最初に改質素子510の脇にあるチャネル530を通過する。チャネル530は、燃料電池スタックのカソード入口に近接している。チャネル530は、障壁535によって、改質素子510の残りの部分または第1の部分から分離している。チャネル530中の触媒密度は、例えばチャネル530中に改質触媒がないことに起因して、比較的均一であり得る。より典型的には、チャネル530は、第1の部分540における平均改質触媒密度、第1の部分540における最小触媒密度、または任意の他の好都合な触媒密度に対応する改質触媒密度などの非ゼロ改質触媒密度を有し得る。
図5に示す例では、チャネル530を下降(矢印507の方向に)した後、改質可能な燃料521は、チャネル530から改質素子510の第1の部分540に通され545、ここで、矢印508の方向に第1の部分540を通って流れる。次に、改質燃料および/または改質されていない燃料の残りの部分によって生成される水素が、改質要素(図示せず)を出て、1つ以上のマニホルドまたは導管を介してなど任意の好都合な方法によって(アノードコレクタを介して)1つ以上のアノードへと通され得る。矢印550は、改質素子510と関連付けられたアノード内の流れの方向を示し、一方で矢印560は、改質素子510と関連付けられるカソード内の流れの方向を示す。
【0094】
図6は、改質触媒を含む表面で使用するのに好適な改質触媒パターンの例を示す。触媒パターンは、平行な触媒粒子線に基づいて形成され、流れの方向は、流れ経路の大部分で触媒粒子線に実質的に平行である。
図6に示すパターンは、改質素子全体の改質触媒、または改質素子中の第1の部分510などの一部分のいずれかに好適なパターンに対応する。
図6では、改質触媒密度は、左端で最も高く、右端で触媒密度がなくなるように減少する。矢印550によって示すように、
図6に示す改質触媒パターンは、アノード入口付近の改質触媒の濃度が上昇し、アノード出口付近の改質触媒はほとんどまたはまったくないことに対応する。
図6と同様のフローパターンについては、これは、改質可能な燃料が最初に触媒密度にほとんどまたはまったく遭遇しないことを意味し、触媒密度は、改質可能な燃料が改質素子から出る直前に最も高くなる。これにより、発生する改質の量が、アノード入口付近で最大になり、アノード出口付近で最小になり得る。過剰な燃料がアノードに存在し、過剰なCO
2がカソードに存在する動作については、アノード中の燃料の酸化は、アノード入口付近で最大になり得る。このため、吸熱改質の最大量(改質素子内)は、アノード中の発熱酸化の最大量付近で発生する。
図5の初期チャネル510などのカソード入口に近接した初期チャネルで平均触媒密度が使用される場合、
図6の触媒パターンにより、アノード入口とカソード入口との両方に近接した実質的な改質が提供され得ることに留意されたい。
【0095】
米国特許第8,822,090号は、別の種類の改質触媒パターンを説明している。米国特許第8,822,090号の触媒パターンには、触媒密度変動が別個に2つあり、一方はカソード流と整列し、他方はアノード流と整列する。米国特許第8,822,090号では、燃料は、燃料電池スタックのカソード出口側に近接している側にある改質素子に進入する。燃料が改質素子のカソード出口側からカソード出口側に向かって移動するにつれて、触媒密度が増加する。触媒パターンの例は、改質触媒粒子の配置に基づく改質触媒密度の変動を伴って示される。最大触媒密度は、2つの可能な配置部位あたり1粒子の頻度、および64の可能な配置部位あたり1粒子の最小触媒密度での粒子の配置に対応する。これは、本明細書に提供する定義のもとで、最大から最小への変動が90%超であることに対応する。カソード流の方向に沿った変動に加えて、改質素子に関連付けられたアノードにおけるアノード流の方向に沿った第2の勾配が存在することに留意されたい。
【0096】
実施例2-上昇したCO
2利用率で使用するための触媒パターンの改質
燃料電池内の流体の流れおよび熱伝達を表す態様を含む溶融炭酸塩型燃料電池モデルを使用して、燃料電池内の温度差に対する触媒パターンの影響を決定した。このモデルは、市販のプロセスモデリングプラットフォームを使用して構築した。この実施例で使用するモデルについて、本モデルは、改質素子、アノードおよびカソードを有する関連する燃料電池、ならびに改質素子と関連付けられる燃料電池との間のセパレータプレートを有するシステムを示した。改質素子のフローパターンは、
図5に示すフローパターンに対応する。
図5と同様に、改質素子は、一定の触媒密度(第1の部分の平均に対応する)を有するカソード入口に近接する初期チャネルと、アノード中のフローパターンと整列した触媒パターンを有する第1の部分とを含んだ。
【0097】
この実施例では、モデリング結果は、改質素子の第1の部分について2つの異なる種類の触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池について提供される。1つの種類の触媒パターンは、
図5に示す触媒パターンに対応する。第2の種類の触媒パターンは、最大触媒密度と最小触媒密度との差がほぼ63%である触媒パターンに対応する。
【0098】
図7は、改質素子の第1の部分についての3種類の触媒密度プロファイルを示す。
図7では、x軸はアノード中の流れの軸に対応し、0はアノード入口に対応し、1はアノード出口に対応する。線910は、
図5に示す従来の触媒プロファイルに対応する。線920は、モデリングした第2の燃料電池に使用する触媒プロファイルに対応する。
図7に示すように、線920は、最小触媒密度と最大触媒密度との比が、60/160、または3/8である。これは、最大と最小との62.5%の差に対応する。対照的に、線910の最大と最小との差は、線910のアノード出口で触媒密度がゼロに降下するため、事実上100%である。
図7はまた、線920におけるプロファイルに類似するが、線920に示す触媒密度の段階的な単調減少とは対照的に、触媒密度の連続的な単調減少を伴う、線930を示す。
【0099】
本モデルでは、改質素子内の表面の第1の部分に対して線910によって説明される触媒プロファイルを使用する燃料電池を、CO2利用率の上昇をもたらす条件下でモデリングした。モデル条件は、3.8体積%のカソード入口CO2濃度、50%の燃料利用率、約81%の実際のCO2利用率、ほぼ903.15°K(630℃)の平均カソード温度、および90mA/cm2の電流密度であった。改質器への入力ストリームには、29体積%のH2、9.0体積%のCO2、41体積%のH2O、および20体積%のCH4が含まれ、残余分は窒素に対応した。これにより、51体積%のH2、9体積%のCO2、24体積%のH2O、9体積%のCH4、および6体積%のCOを含む、各燃料電池のアノード入力への入力ストリームが得られた。各燃料電池のカソード入力ストリームには、3.8体積%のCO2、11体積%のO2、および10体積%のH2Oが含まれた。
【0100】
本モデルでは、改質素子内の表面の第1の部分に対して線920によって説明される触媒プロファイルを使用する燃料電池を、CO2利用率の上昇をもたらす条件下でモデリングした。モデル条件は、4.5体積%のカソード入口CO2濃度、50%の燃料利用率、約86%の実際のCO2利用率、ほぼ903.15°K(630℃)の平均カソード温度、および90mA/cm2の電流密度であった。改質器への入力ストリームには、29体積%のH2、9.0体積%のCO2、41%のH2O、および20体積%のCH4が含まれ、残余分は窒素に対応した。これにより、53体積%のH2、9体積%のCO2、23体積%のH2O、8体積%のCH4、および8体積%のCOを含む、各燃料電池のアノード入力への入力ストリームが得られた。各燃料電池のカソード入力ストリームには、4.5体積%のCO2、11体積%のO2、および10体積%のH2Oが含まれた。
【0101】
図8は、
図7の線910に対応する比較改質触媒密度でモデル化した燃料電池のセパレータプレートにおける温度変動を示す。
図8では、x軸はアノード流の方向に対応し、y軸はカソード流の方向に対応する。
図8に示すように、燃料電池全体の温度勾配は、80°Kを超えるか、または80℃を超える。これは、カソード出口およびアノード出口に対応する燃料電池の角における代替イオン輸送によって生成される過剰な廃熱に起因する。線910に対応する触媒パターンに基づいて、触媒密度は、カソード出口およびアノード出口に対応する角付近でゼロに近い。このため、代替イオン輸送に起因して生成された追加の廃熱のバランスをとるために利用可能な吸熱改質反応の量は最低限しかない。
【0102】
図9は、
図7の線920に対応する改質触媒密度でモデル化した燃料電池のセパレータプレートにおける温度変動を示す。最小改質触媒密度と最大改質触媒密度との差を低減することにより、燃料電池全体の温度変動は、約37°Kまたはほぼ約37℃に低減される。
【0103】
実施例3-上昇したCO
2利用率で使用するための触媒パターンの改質
実施例2と同様に、燃料電池内の流体の流れおよび熱伝達を表す態様を含む溶融炭酸塩型燃料電池モデルを使用して、燃料電池内の温度差に対する触媒パターンの影響を決定した。このモデルは、市販のプロセスモデリングプラットフォームを使用して構築した。この実施例で使用するモデルについて、本モデルは、改質素子、アノードおよびカソードを有する関連する燃料電池、ならびに改質素子と関連付けられる燃料電池との間のセパレータプレートを有するシステムを示した。改質素子のフローパターンは、
図5に示すフローパターンに対応する。
図5と同様に、改質素子は、一定の触媒密度(第1の部分の平均に対応する)を有するカソード入口に近接する初期チャネルと、アノード中のフローパターンと整列した触媒パターンを有する第1の部分とを含んだ。
【0104】
この実施例では、モデリング結果は、改質素子の第1の部分について3つの異なる種類の触媒パターンを有する溶融炭酸塩型燃料電池について提供される。1つの種類の触媒パターンは、
図5に示す触媒パターンに対応する。第2の種類の触媒パターンは、この実施例の第1の種類の触媒パターンのように、最大触媒密度と最小触媒密度との差がほぼ100%である触媒パターンに対応する。第3の種類の触媒パターンは、最大触媒密度と最小触媒密度との差がほぼ43%である触媒パターンに対応する。
【0105】
図10は、改質素子の第1の部分についての4種類の触媒密度プロファイルを示す。
図10では、x軸はアノード中の流れの軸に対応し、0はアノード入口に対応し、1はアノード出口に対応する。線910は、上記の実施例2からの
図5および
図7に示す従来の触媒プロファイルに対応する。上述のように、この触媒プロファイルの最大触媒密度と最小触媒密度との差は、線910のアノード出口で触媒密度がゼロに降下するため、事実上100%である。同様に、線1010は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が事実上100%の別の触媒プロファイルに対応し、これは、ここでも、線1010のアノード出口で触媒密度がゼロに降下するためである。
図10に示すように、線1020は、最小触媒密度と最大触媒密度との比が、約80/160、または1/2である。これは、最大と最小との約50%の差に対応する。
図10はまた、線1020におけるプロファイルに類似するが、線1020に示す触媒密度の段階的な単調減少とは対照的に、触媒密度の連続的な単調減少を伴う、線1030を示す。
【0106】
本モデルでは、改質素子内の表面の第1の部分に対して線1010によって説明される触媒プロファイルを使用する燃料電池を、CO2利用率の上昇をもたらす条件下でモデリングした。モデル条件は、4.3体積%のカソード入口CO2濃度、50%の燃料利用率、約85%の実際のCO2利用率、ほぼ903.15°K(630℃)の平均カソード温度、および110mA/cm2の電流密度であった。改質器への入力ストリームには、7体積%のH2、2体積%のCO2、60体積%のH2O、および30体積%のCH4が含まれ、残余分は窒素に対応した。これにより、50体積%のH2、9体積%のCO2、10体積%のH2O、10体積%のCH4、および5体積%のCOを含む、各燃料電池のアノード入力への入力ストリームが得られた。各燃料電池のカソード入力ストリームには、4.3体積%のCO2、11体積%のO2、および10体積%のH2Oが含まれた。
【0107】
本モデルでは、改質素子内の表面の第1の部分に対して線1020によって説明される触媒プロファイルを使用する燃料電池を、CO2利用率の上昇をもたらす条件下でモデリングした。モデル条件は、4.4体積%のカソード入口CO2濃度、50%の燃料利用率、約85%の実際のCO2利用率、ほぼ903.15°K(630℃)の平均カソード温度、および150mA/cm2の電流密度であった。改質器への入力ストリームには、10体積%のH2、3体積%のCO2、58%のH2O、および29体積%のCH4が含まれ、残余分は窒素に対応した。これにより、51体積%のH2、9体積%のCO2、25体積%のH2O、10体積%のCH4、および6体積%のCOを含む、各燃料電池のアノード入力への入力ストリームが得られた。各燃料電池のカソード入力ストリームには、4.3体積%のCO2、11体積%のO2、および10体積%のH2Oが含まれた。
【0108】
本モデルでは、改質素子内の表面の第1の部分に対して線1030によって説明される触媒プロファイルを使用する燃料電池を、CO2利用率の上昇をもたらす条件下でモデリングした。モデル条件は、4.4体積%のカソード入口CO2濃度、50%の燃料利用率、約85%の実際のCO2利用率、ほぼ903.15°K(630℃)の平均カソード温度、および150mA/cm2の電流密度であった。改質器への入力ストリームには、10体積%のH2、3体積%のCO2、58%のH2O、および29体積%のCH4が含まれ、残余分は窒素に対応した。これにより、51体積%のH2、9体積%のCO2、25体積%のH2O、10体積%のCH4、および6体積%のCOを含む、各燃料電池のアノード入力への入力ストリームが得られた。各燃料電池のカソード入力ストリームには、4.3体積%のCO2、11体積%のO2、および10体積%のH2Oが含まれた。
【0109】
図11は、
図10の線910に対応する比較改質触媒密度でモデル化した燃料電池のセパレータプレートにおける温度変動を示す。
図11では、x軸はアノード流の方向に対応し、y軸はカソード流の方向に対応する。
図11に示すように、燃料電池全体の温度勾配は、100°Kを超えるか、または100℃を超える。これは、カソード出口およびアノード出口に対応する燃料電池の角における代替イオン輸送によって生成される過剰な廃熱に起因する。線910に対応する触媒パターンに基づいて、触媒密度は、カソード出口およびアノード出口に対応する角付近でゼロに近い。このため、代替イオン輸送に起因して生成された追加の廃熱のバランスをとるために利用可能な吸熱改質反応の量は最低限しかない。
【0110】
図11と同様に、
図12は、
図10の線1010に対応する改質触媒密度でモデル化した燃料電池のセパレータプレートの温度変動を示す。
図12に示すように、燃料電池全体の温度勾配は、約70°Kまたは70℃であり、これは、カソード出口およびアノード出口に対応する燃料電池の角における代替イオン輸送によって生成される過剰な廃熱に起因する。線1010に対応する触媒パターンに基づいて、触媒密度は、カソード出口およびアノード出口に対応する角付近でゼロに近い。このため、代替イオン輸送に起因して生成された追加の廃熱のバランスをとるために利用可能な吸熱改質反応の量は最低限しかない。
【0111】
図13は、
図10の線1030に対応する改質触媒密度でモデル化した燃料電池のセパレータプレートにおける温度変動を示す。最小改質触媒密度と最大改質触媒密度との差を低減することにより、燃料電池全体の温度変動は、約38°Kまたはほぼ約38℃に低減される。
【0112】
追加の実施形態
実施形態1.電気を生成するための方法であって、本方法が、改質可能な燃料を含む燃料ストリームを、第1の表面を含む燃料スタックに通すことであって、第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が20%~75%である、通すことと、改質可能な燃料の少なくとも一部を、第1の表面の存在下で改質して、改質された水素を生成することと、改質可能な燃料の少なくとも一部、改質された水素の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードに導入することと、O2およびCO2を含むカソード入力ストリームを溶融炭酸塩型燃料電池のカソードに導入することであって、溶融炭酸塩型燃料電池のカソード中の流れの方向が、溶融炭酸塩型燃料電池のアノード中の流れの方向に実質的に直交する、導入することと、溶融炭酸塩型燃料電池を、0.97以下の輸率および60mA/cm2以上の平均電流密度で動作させて、電気と、H2、CO、およびCO2を含むアノード排気と、2.0体積%以下のCO2、1.0体積%以上のH2O、および1.0体積%以上のO2を含むカソード排気とを生成することと、を含む、方法。
【0113】
実施形態2.カソード入力ストリームが、5.0体積%以下のCO2を含むか、またはカソード排気が、1.0体積%以下のCO2を含むか、またはそれらの組み合わせである、実施形態1に記載の方法。
【0114】
実施形態3.電気を生成するための方法であって、本方法が、改質可能な燃料を含む燃料ストリームを、第1の表面を含む燃料スタックに通すことであって、第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒活性と最小触媒活性との差が20%~75%である、通すことと、改質可能な燃料の少なくとも一部を、第1の表面の存在下で改質して、改質された水素を生成することと、改質可能な燃料の少なくとも一部、改質された水素の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードに導入することと、O2およびCO2を含むカソード入力ストリームを溶融炭酸塩型燃料電池のカソードに導入することであって、溶融炭酸塩型燃料電池のカソード中の流れの方向が、溶融炭酸塩型燃料電池のアノード中の流れの方向に実質的に直交する、導入することと、溶融炭酸塩型燃料電池を、0.97以下の輸率および60mA/cm2以上の平均電流密度で動作させて、電気と、H2、CO、およびCO2を含むアノード排気と、2.0体積%以下のCO2、1.0体積%以上のH2O、および1.0体積%以上のO2を含むカソード排気とを生成することと、を含む、方法。
【0115】
実施形態4.輸率が、0.95以下、または0.90以下である、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
【0116】
実施形態5.第1の表面の第1の部分上の改質触媒が、単調な触媒密度変動を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0117】
実施形態6.最大触媒密度が、アノード入口に近接しているか、または最大触媒密度が、カソード入口に近接している、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0118】
実施形態7.最小触媒密度が、アノード出口に近接しているか、または最小触媒密度が、カソード出口に近接している、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
【0119】
実施形態8.燃料電池スタックが、アノードと関連付けられる改質素子を含み、第1の表面が、改質素子の内面を含み、改質素子とアノードとの間のセパレータプレートにおける燃料電池スタック内の温度変動が、任意選択で70℃以下(または40℃以下)である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0120】
実施形態9.第1の表面が、アノードの内面を含み、アノードと別の素子との間のセパレータプレートにおける燃料電池スタック内の温度変動が、任意選択で70℃以下(または40℃以下)である、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
【0121】
実施形態10.第1の表面が、第2の部分をさらに含み、第2の部分が、任意選択で、一定の触媒密度および一定の触媒活性のうちの少なくとも一方を含み、第2の部分が、カソード入口に近接しているか、または第2の部分が、アノード入口に近接している、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
【0122】
実施形態11.改質触媒が、複数の触媒粒子線を含み、改質可能な燃料の少なくとも一部を改質することが、改質可能な燃料の少なくとも一部を、触媒粒子の上に、触媒粒子線に実質的に平行な方向で流すことを含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
【0123】
実施形態12.燃料電池スタックであって、アノードおよびカソードを含む溶融炭酸塩型燃料電池と、アノードと関連付けられる改質素子であって、改質素子が、第1の表面を含み、第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度が、単調に減少する触媒密度を含み、第1の表面の第1の部分上の改質触媒密度は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が20%~75%(または25%~70%、または25%~65%)である、改質素子と、アノードと改質素子との間のセパレータプレートと、を備え、第1の表面が、第2の部分を任意選択でさらに含み、任意選択の第2の部分が、カソード入口に近接しているか、またはアノード入口に近接し、任意選択の第2の部分が、一定の触媒密度を含む、燃料電池スタック。
【0124】
実施形態13.最大触媒密度が、アノード入口に近接しているか、または最大触媒密度が、カソード入口に近接している、実施形態12に記載の燃料電池スタック。
【0125】
実施形態14.最小触媒密度が、アノード出口に近接しているか、または最小触媒密度が、カソード出口に近接している、実施形態12または13に記載の燃料電池スタック。
【0126】
実施形態15.改質触媒が、実質的に平行な触媒粒子線を含む、実施形態12~14のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【0127】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲内のすべての数値は、「約」または「およそ」の表示値によって修飾され、当業者によって予想され得る実験誤差および変動を踏まえたものである。
【0128】
本発明は、特定の実施形態に関して説明されてきたが、必ずしもそれに限定されるものではない。特定の条件下での動作に好適な変更/修正が当業者には明らかであろう。したがって、以下の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨/範囲内に入るすべてのかかる変更/修正を網羅するものとして解釈されることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気を生成するための方法であって、前記方法は、
改質可能な燃料を含む燃料ストリームを、第1の表面を含む燃料電池スタックに通すことであって、前記第1の表面が、改質触媒を含む第1の部分を含み、前記第1の表面の前記第1の部分上の改質触媒が、(a)最大触媒密度と最小触媒密度との差が当該最大触媒密度の20%~75%であるような当該最大触媒密度と当該最小触媒密度、または(b)最大触媒活性と最小触媒活性との差が当該最大触媒活性の20%~75%であるような当該最大触媒活性と当該最小触媒活性、の少なくとも一方を有し、ここで、前記最大触媒密度もしくは前記最大触媒活性が、溶融炭酸塩型燃料電池のアノードの入口に近接しているか、または前記最大触媒密度もしくは前記最大触媒活性が、前記溶融炭酸塩型燃料電池のカソードの入口に近接している、通すことと、
前記改質可能な燃料の少なくとも一部を前記第1の表面の存在下で改質して、改質された水素を生成することと、前記改質可能な燃料の少なくとも一部、前記改質された水素の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせは、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記アノードに導入することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の表面の前記第1の部分上の前記改質触媒が、単調な触媒密度変動を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最小触媒密度が、前記アノードの出口に近接しているか、または前記最小触媒密度が、前記カソードの出口に近接している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記改質触媒が、複数の平行な触媒粒子線を含み、
前記改質可能な燃料の前記少なくとも一部を改質することが、前記改質可能な燃料の前記少なくとも一部を、前記触媒粒子線の上に、前記触媒粒子線に実質的に平行な方向で流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アノードと別の素子との間のセパレータプレートにおける前記燃料電池スタック内の温度変動が70℃以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
O
2
およびCO
2
を含むカソード入力ストリームを前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記カソードに導入することをさらに含み、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記カソード中の流れの方向が、前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記アノード中の流れの方向と実質的に直交する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融炭酸塩型燃料電池を、0.97以下の輸率および60mA/cm
2
以上の平均電流密度で動作させて、電気を発生させることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融炭酸塩型燃料電池が、0.95以下の輸率で動作する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カソード入力ストリームが、5.0体積%以下のCO2を含み、
カソード排気が、1.0体積%以下のCO2
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融炭酸塩型燃料電池を動作させることが、H
2
、CO、およびCO
2
を含むアノード排気と、2.0体積%以下のCO
2
、1.0体積%以上のH
2
O、および1.0体積%以上のO
2
を含むカソード排気と、を生成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
燃料電池スタックであって、
アノードおよびカソードを含む溶融炭酸塩型燃料電池と、
改質触媒を含む第1の部分を含む第1の表面と、を含み、前記第1の表面の前記第1の部分上の前記改質触媒は、最大触媒密度と最小触媒密度との差が前記最大触媒密度に対して20%~75%であるような当該最大触媒密度と当該最小触媒密度を有し、前記最大触媒密度は前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記アノードの入口に近接しているか、または、前記最大触媒密度が前記溶融炭酸塩型燃料電池の前記カソードの入口に近接している、燃料電池スタック。
【請求項12】
前記第1の表面の前記第1の部分上の前記改質触媒は、単調な触媒密度変動を含む、請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項13】
前記最小触媒密度が、前記アノードの出口に近接しているか、または、前記最小触媒密度が、前記カソードの出口に近接している、請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項14】
前記改質触媒が、複数の平行な触媒粒子線を含む、請求項11に記載の燃料電池スタック。
【請求項15】
前記第1の表面が、第2の部分をさらに含み、前記第2の部分が、一定の触媒密度を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項16】
前記第2の部分が、前記カソードの入口または前記アノードの入口に近接している、請求項15に記載の燃料電池スタック。
【請求項17】
前記燃料電池スタックが、前記アノードと関連付けられる改質素子を含み、前記第1の表面が、前記改質素子の内面を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項18】
前記改質素子と前記アノードとの間に配置されたセパレータプレートをさらに有する、請求項17に記載の燃料電池スタック。
【請求項19】
前記第1の表面が、前記アノードの内面を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項20】
前記最大触媒密度または最大触媒活性が、前記溶融炭酸塩型燃料電池のアノードの入口に近接している、請求項11~14のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項21】
前記最大触媒密度または最大触媒活性が、前記溶融炭酸塩型燃料電池のカソードの入口に近接している、請求項11~14のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【外国語明細書】