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特開2023-89054操作されたナチュラルキラー(NK)細胞ならびにその組成物および方法
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  • 特開-操作されたナチュラルキラー(NK)細胞ならびにその組成物および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089054
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】操作されたナチュラルキラー(NK)細胞ならびにその組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230620BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230620BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230620BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20230620BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230620BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230620BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230620BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230620BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230620BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N1/02
C12N1/00 A
C12N15/09 110
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
A61K35/17
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/42
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060549
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2019565165の分割
【原出願日】2018-02-08
(31)【優先権主張番号】62/457,098
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/484,350
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519290345
【氏名又は名称】インダプタ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ディピエッロ ギー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】操作されたナチュラルキラー(NK)細胞および操作されたNK細胞を産生する方法を提供する。
【解決手段】操作されたナチュラルキラー(NK)細胞であって、該細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように遺伝子操作されている、前記操作されたNK細胞を提供する。当該操作されたNK細胞および操作されたNK細胞を含む組成物は、がんなどの疾患を処置するのに有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されたナチュラルキラー(NK)細胞であって、該細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように遺伝子操作されている、前記操作されたNK細胞。
【請求項2】
FcRγ鎖をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/または操作されたNK細胞におけるFcRγ鎖の発現の低減をもたらす遺伝的破壊;
FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはFcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝的破壊; ならびに/あるいは
FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝的破壊
を含む、請求項1に記載の操作されたNK細胞。
【請求項3】
遺伝的破壊が、遺伝子中の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす欠失、変異、および/または挿入を含む、請求項2に記載の操作されたNK細胞。
【請求項4】
FcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の両対立遺伝子が、操作されたNK細胞において破壊されている、請求項2または請求項3に記載の操作されたNK細胞。
【請求項5】
FcRγ鎖の発現の低減、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらすNK細胞における遺伝子を標的とする阻害核酸分子を含む、請求項1に記載の操作されたNK細胞。
【請求項6】
FcRγ鎖、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現が、遺伝子操作されていないNK細胞でのタンパク質の発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減されている、請求項2~5のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項7】
FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質の発現が、操作されたNK細胞において低減されており、該タンパク質が転写因子である、請求項2~6のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項8】
転写因子がPLZF (ZBTB16)またはHELIOS (IKZF2)である、請求項7に記載の操作されたNK細胞。
【請求項9】
FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現が、操作されたNK細胞において低減されており、該タンパク質が下流シグナル伝達分子である、請求項2~6のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項10】
下流シグナル伝達分子が、SYK、DAB2、またはEAT-2である、請求項9に記載の操作されたNK細胞。
【請求項11】
FcRγ鎖の発現が、前記操作された細胞において低減されている、請求項2~6のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項12】
FcRγ鎖をコードする遺伝子における遺伝的破壊を含む操作されたNK細胞であって、FcRγの発現が該細胞において低減されている、前記操作されたNK細胞。
【請求項13】
遺伝的破壊が、遺伝子中の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす欠失、変異、および/または挿入を含む、請求項12に記載の操作されたNK細胞。
【請求項14】
FcRγ鎖をコードする遺伝子の両対立遺伝子が、操作されたNK細胞のゲノムにおいて破壊されている、請求項12または請求項13に記載の操作されたNK細胞。
【請求項15】
FcRγ鎖をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸分子を含む、請求項1、5、または6のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項16】
阻害核酸分子が、FcRγ鎖をコードする遺伝子に相補的な配列を含む、請求項15に記載の操作されたNK細胞。
【請求項17】
FcRγ鎖の発現が、遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減されている、請求項11~16のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項18】
阻害核酸がRNA干渉剤を含む、請求項5~6および15~17のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項19】
阻害核酸が、siRNA、shRNA、またはmiRNAを含む、請求項5~6および15~18のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項20】
FcRγの発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減が、永続性、一過性、または誘導性である、請求項1~19のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項21】
FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達が、遺伝子操作されていないNK細胞での発現、活性、および/またはシグナル伝達と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減されている、請求項1~20のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項22】
前記細胞において発現されるFcRγ鎖の発現が、免疫ブロットアッセイ法で検出不能である、請求項1~21のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項23】
操作されたNK細胞の表面にCD16が発現されている、請求項1~22のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項24】
CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖を発現する、請求項1~23のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項25】
対象から得られた初代細胞に由来する、請求項1~24のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項26】
対象がヒトである、請求項25に記載の操作されたNK細胞。
【請求項27】
クローン細胞株に由来する、請求項1~24のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項28】
クローン細胞株が、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である、請求項27に記載の操作されたNK細胞。
【請求項29】
組み換えもしくは異種CD16遺伝子および/または組み換えもしくは異種CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖を含む、請求項1~28のいずれかに記載の操作されたNK細胞。
【請求項30】
CD16が、CD16活性化変異、IgG1に対するさらに高い親和性をもたらす変異、158V変異および/または158F変異を含む、請求項29に記載の操作されたNK細胞。
【請求項31】
操作されたNK細胞が、改変のないNK細胞と比べてCD16を通じて刺激された場合に活性の増加を示す、請求項1~30のいずれかに記載の操作された細胞。
【請求項32】
改変のないNK細胞と比べてNKp46、NKp30、および/またはNKp44の表面発現が低減されている、請求項1~31のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項33】
NK細胞を遺伝子操作して、該細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させる段階を含む、操作されたNK細胞を産生する方法。
【請求項34】
発現を低減させる段階が、
FcRγ鎖をコードする遺伝子を破壊もしくは抑制すること、および/またはNK細胞におけるFcRγ鎖の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊もしくは抑制すること;
FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子を破壊もしくは抑制すること、および/またはNK細胞におけるFcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊もしくは抑制すること; ならびに/あるいは
FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を破壊もしくは抑制すること、および/またはNK細胞におけるFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊もしくは抑制すること
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記遺伝子に欠失、変異、または挿入を導入する段階を含む、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記遺伝子がFcRγ鎖をコードする、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記遺伝子が、転写因子であるFcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質をコードする、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
転写因子がPLZFまたはHELIOSである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記遺伝子が、下流シグナル伝達分子であるFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
下流シグナル伝達分子が、SYK、DAB2、またはEAT2である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
遺伝子の破壊または抑制が、遺伝子の破壊または抑制を可能にする条件の下で、NK細胞における遺伝子を標的とするエンドヌクレアーゼを導入することにより行われる、請求項33~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
エンドヌクレアーゼが、TALヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Cas9、およびアルゴノートからなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
破壊または抑制が、遺伝子の抑制をもたらす条件の下で、遺伝子を標的とする阻害核酸をNK細胞に導入することにより行われる、請求項33~40のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
阻害核酸分子が、FcRγ鎖をコードする遺伝子に相補的な配列を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
阻害核酸がRNA干渉剤を含む、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項46】
核酸が、siRNA、shRNA、またはmiRNAである、請求項43~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
発現の低減が、永続性、一過性、または誘導性である、請求項33~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達が、遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減される、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
FcRγ鎖の発現レベルが、免疫ブロットアッセイ法で検出不能である、請求項33~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記遺伝子操作の前に、ヒト対象からNK細胞を単離する段階を含む、請求項33~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
末梢血単核細胞(PBMC)からNK細胞を単離する段階を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
NK細胞を単離する段階が、NK細胞マーカーを用いてPBMCからNK細胞を選択することを含む、請求項50または51に記載の方法。
【請求項53】
NK細胞マーカーが、CD56、Cd161、KIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、および/またはNKp46である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
CD16および/またはCD3ζを発現するNK細胞を選択する段階をさらに含む、請求項50~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
表面CD3を発現しないNK細胞を選択する段階をさらに含む、請求項50~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
NK細胞がNK細胞株である、請求項33~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
細胞株が、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
NK細胞株を操作して組み換えまたは異種CD16および/またはCD3ζを発現させる段階をさらに含む、請求項56または請求項57に記載の方法。
【請求項59】
CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞に導入する段階を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
CD16遺伝子が活性化変異および/またはIgGに対するCD16の親和性を増加させる変異を含む、請求項58または請求項59に記載の方法。
【請求項61】
CD16が、158Vである変異を含む、請求項58~60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
CD16が、158Fである変異を含む、請求項58~60のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞にウイルス形質導入する段階を含む、請求項58~62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞にトランスフェクションする段階を含む、請求項58~62のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記NK細胞においてCD16またはCD3ζを一過的に、誘導的に、または永続的に発現させる段階を含む、請求項58~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
操作されたNK細胞を培養する段階または増殖させる段階をさらに含む、請求項33~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
操作されたNK細胞をフィーダー細胞とともに培養する段階を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
操作されたNK細胞をサイトカインとともに培養する段階を含む、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項69】
請求項33~68のいずれか一項に記載の方法によって産生された、操作されたNK細胞。
【請求項70】
請求項1~32または69のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞の有効量を含む、組成物。
【請求項71】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
担体が、生理食塩水溶液、デキストロース溶液、または5%ヒト血清アルブミンである、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
1×105~1×108個の細胞/mLを含む、請求項70~72のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項74】
抗凍結剤を含む、請求項70~73のいずれかに記載の組成物。
【請求項75】
請求項1~32もしくは69のいずれか一項に記載の操作された細胞または請求項70~74のいずれか一項に記載の組成物と、疾患の処置のためのさらなる作用物質とを含む、キット。
【請求項76】
さらなる作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
抗体が腫瘍関連抗原を認識または特異的に結合する、請求項76に記載のキット。
【請求項78】
腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-アルファ、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、散乱因子(scatter factor)受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケラチン(cytokerain)、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2 (HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-アルファ、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7 (CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチン、またはテネイシンである、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
抗体が、全長抗体であり、かつ/またはFcドメインを含む、請求項76~78のいずれか一項に記載のキット。
【請求項80】
請求項1~32もしくは69のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞または請求項70~74のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、状態を処置する方法。
【請求項81】
操作されたNK細胞を投与する段階の前に、該操作されたNK細胞を請求項33~68のいずれかに記載の方法によって産生する、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
個体に1×108~1×1010個の細胞/m2もしくは約1×108~1×1010個の細胞/m2を投与する段階または1×106~1×1010個のNK細胞/kgもしくは約1×106~1×1010個のNK細胞/kgを投与する段階を含む、請求項80または請求項81に記載の方法。
【請求項83】
さらなる作用物質を投与する段階をさらに含む、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
さらなる作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
抗体が腫瘍関連抗原を認識する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-アルファ、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、散乱因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケラチン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2 (HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-アルファ、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7 (CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチン、またはテネイシンである、請求項84または請求項85に記載の方法。
【請求項87】
抗体が、Fcドメインを含み、かつ/または全長抗体である、請求項84~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
さらなる作用物質および操作されたNK細胞が連続的に投与される、請求項83~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
操作されたNK細胞の投与の前にさらなる作用物質が投与される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
さらなる作用物質および操作されたNK細胞が同時に投与される、請求項83~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記状態が、炎症状態、感染症、およびがんからなる群より選択される、請求項80~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
感染症がウイルス感染症または細菌感染症である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
がんが白血病またはリンパ腫である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
がんが固形腫瘍を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
個体がヒトである、請求項80~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
操作されたNK細胞が個体に対して同種である、請求項80~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
操作されたNK細胞が対象にとって自己由来である、請求項80~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
NK阻害受容体の発現を低減させるように遺伝子操作されている、請求項1~32のいずれか一項に記載の操作されたNK細胞。
【請求項99】
NK阻害受容体をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはNK阻害受容体の発現の低減をもたらす遺伝的破壊を含む; あるいは
NK阻害受容体をコードする遺伝子を標的とするおよび/またはNK阻害受容体の発現を低減させる阻害核酸を含む、
請求項98に記載の操作されたNK細胞。
【請求項100】
阻害受容体がNKG2AまたはKIR2DL1である、請求項98または請求項99に記載の操作されたNK細胞。
【請求項101】
NK細胞を遺伝子操作して阻害受容体の発現または活性を低減させる段階をさらに含む、請求項32~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
発現または活性を低減させる段階が、NK阻害受容体をコードする遺伝子またはNK阻害受容体の発現の低減をもたらす遺伝子の発現を破壊または抑制することを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
阻害受容体がNKG2AまたはKIR2DL1である、請求項102に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年2月9日付で出願された「ENGINEERED NATURAL KILLER (NK) CELLS AND COMPOSITIONS AND METHODS THEREOF」という名称の米国仮特許出願第62/457,098号および2017年4月11日付で出願された「ENGINEERED NATURAL KILLER (NK) CELLS AND COMPOSITIONS AND METHODS THEREOF」という名称の米国仮特許出願第62/484,350号からの優先権を主張するものであり、それらの内容は参照によりその全体が組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み入れ
本出願は、電子形式の配列表とともに出願されている。配列表は2018年2月6日付で作成された776032000140SeqList.txtという名称のファイルとして提供され、これはサイズが12,126バイトである。配列表の電子形式の情報は、参照によりその全体が組み入れられる。
【0003】
発明の分野
本発明は、操作されたナチュラルキラー(NK)細胞および操作されたNK細胞を産生する方法を提供する。操作されたNK細胞および操作されたNK細胞を含む組成物は、がんなどの疾患を処置するのに有用である。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
NK細胞は40年前に、事前の抗原曝露の必要なしに腫瘍細胞を認識して死滅させる能力によって発見された。それ以来、NK細胞は細胞に基づくがん治療のために有望な作用因子と見なされてきた。ほとんどのがんは、HLAの観点から、同定可能な腫瘍特異的抗原を欠いているため、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球に屈しえない。広範囲のがん細胞がNK細胞傷害性に感受性であるため、NK細胞を使用する主な利点の1つは、移植片対宿主病のリスクなしに、同種という設定でナチュラルキラー(NK)細胞の移植をがん細胞に対して利用できるということである。NK細胞、特に悪性腫瘍細胞または感染細胞を死滅させるための細胞傷害性エフェクタ機能を示すNK細胞の理論的に有効な量を得ることが困難であるため、NK細胞の治療上の有望さは限られていた。したがって、治療用途のために操作されたNK細胞が必要である。そのような必要性を満たす態様が本明細書において提供される。
【発明の概要】
【0005】
FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させた操作されたナチュラルキラー(NK)細胞が本明細書において提供される。一部の態様において、提供される操作された細胞は、対象におけるがん、微生物感染、および/またはウイルス感染の処置の場合を含めて、増強された免疫応答を示す。提供される操作されたNK細胞の治療的有効量の投与による対象の処置方法も提供される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、抗がんモノクローナル抗体、抗ウイルスモノクローナル抗体、または抗微生物モノクローナル抗体に対するような、投与された治療用抗体に対する治療応答を増強するのに有用である。
【0006】
一部の態様において、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるようにNK細胞が遺伝子操作されている、操作されたNK細胞が本明細書において提供される。これらの態様の一部において、操作されたNK細胞は、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減をもたらす遺伝子の遺伝的破壊を含む。場合によっては、遺伝的破壊は遺伝子の欠失または変異をもたらしうる。一部の態様において、操作されたNK細胞は、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減をもたらす遺伝子の発現を低減させる阻害核酸を含む。
【0007】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/または操作されたNK細胞におけるFcRγ鎖の発現の低減をもたらす遺伝的破壊を含む。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはFcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝的破壊を含む。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝的破壊を含む。一部の態様において、操作された細胞は、上記の遺伝的破壊の1つまたは複数を含みうる。一部の態様において、遺伝的破壊は、遺伝子内の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす欠失、変異、および/または挿入を含む。一部の態様において、FcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の両対立遺伝子が、操作されたNK細胞において破壊される。
【0008】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖の発現の低減、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらすNK細胞における遺伝子を標的とする阻害核酸分子を含む。一部の態様において、阻害核酸は、FcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現を妨害または低減する。一部の態様において、阻害核酸はRNA干渉剤を含む。一部の態様において、阻害核酸は、siRNA、shRNA、またはmiRNAを含む。
【0009】
いずれかのそのような態様の一部において、FcRγ鎖、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現は、遺伝子操作されていないNK細胞でのタンパク質の発現と比較して、操作されたNK細胞では50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超だけ低減される。
【0010】
いずれかのそのような態様の一部において、FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質の発現は、操作されたNK細胞において低減される。これらの態様の一部において、FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質は転写因子である。一部の態様において、転写因子はPLZF (ZBTB16)またはHELIOS (IKZF2)である。
【0011】
いずれかのそのような態様の一部において、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現は、操作されたNK細胞において低減される。一部の態様において、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質は、FcRγの下流シグナル伝達分子である。これらの態様の一部において、下流のシグナル伝達分子は、SYK、DAB2、またはEAT-2である。
【0012】
いずれかのそのような態様の一部において、FcRγ鎖の発現は、操作されたNK細胞において低減される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖をコードする遺伝子における遺伝的破壊を含む。これらの態様の一部において、遺伝的破壊は、遺伝子中の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす欠失、変異、および/または挿入を含む。一部の態様において、FcRγ鎖をコードする遺伝子の両対立遺伝子が、操作されたNK細胞のゲノムにおいて破壊される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸分子を含み、それにより細胞内でのFcRγ鎖の発現を低減させる。一部の態様において、阻害核酸分子は、FcRγ鎖をコードする遺伝子に相補的な配列を含む。一部の態様において、阻害核酸はRNA干渉剤を含む。一部の態様において、阻害核酸は、siRNA、shRNA、またはmiRNAを含む。一部の態様において、FcRγ鎖の発現は、遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比較して、操作されたNK細胞において50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超だけ低減される。
【0013】
提供される態様のいずれかの一部において、操作されたNK細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減は、永続性、一過性、または誘導性である。一部の態様において、FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達は、遺伝子操作されていないNK細胞での発現、活性、および/またはシグナル伝達と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超だけ低減される。一部の態様において、細胞において発現されるFcRγ鎖の発現は、免疫ブロットアッセイ法では検出不能である。
【0014】
態様のいずれかの一部において、操作されたNK細胞は、対象から得られた初代細胞に由来する。一部の態様において、対象はヒトである。
【0015】
態様のいずれかの一部において、操作されたNK細胞は、クローン細胞株に由来する。一部の態様において、クローン細胞株は、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である。
【0016】
態様のいずれかの一部において、操作されたNK細胞の表面にはCD16が発現されている。態様のいずれかの一部において、操作されたNK細胞はCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖を発現する。一部の態様において、発現されたCD16および/またはCD3ζ鎖はNK細胞にとって内因性である。一部の態様において、操作されたNK細胞は、NK細胞において組み換えまたは異種CD16および/またはCD3ζ鎖を発現するようにさらに操作される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、組み換えもしくは異種CD16遺伝子および/または組み換えもしくは異種CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖を含む。一部の態様において、組み換えまたは異種CD16はCD16活性化変異を含む。一部の態様において、CD16活性化変異は、IgG1に対するさらに高い親和性をもたらす変異である。一部の態様において、CD16は変異158Vを含む。一部の態様において、CD16は変異158Fを含む。
【0017】
NK阻害受容体の表面発現を低減させた、操作されたNK細胞も提供される。一部の態様において、FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させた、提供される操作されたNK細胞のいずれも、さらにNK阻害受容体の表面発現を低減させることができる。一部の態様において、操作されたNK細胞は、NK阻害受容体をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはNK阻害受容体の発現の低減をもたらす遺伝的破壊を含む。一部の態様において、操作されたNK細胞は、NK阻害受容体をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸を含み、かつ/または細胞におけるNK阻害受容体の発現の低減をもたらす。一部の態様において、阻害受容体はNKG2Aおよび/またはKIR2DL1である。一部の態様において、NKG2Aおよび/またはKIR2DL1のような阻害受容体の発現は、遺伝子操作されていないNK細胞での発現、活性、および/またはシグナル伝達と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%超だけ低減される。
【0018】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、遺伝子操作されていないNK細胞と比べて、CD16により刺激された場合に活性の増加を示す。一部の態様において、抗体のFc部分のCD16への結合により抗体の存在下で起こりうるような、CD16架橋によるCD16連結後に活性の増加が観察される。
【0019】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、改変のないNK細胞と比べてNKp46、NKp30、および/またはNKp44の表面発現を低減させている。一部の態様において、NKp46、NKp30、および/またはNKp44の発現は、遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比べて20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくはそれ以上を超えて、または約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくはそれ以上を超えて、細胞において低減される。
【0020】
NK細胞を遺伝子操作して細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させる段階を含む、操作されたNK細胞を産生する方法も本明細書において提供される。これらの態様の一部において、本方法は、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減をもたらすために遺伝子を破壊する段階または遺伝子の発現を抑制する段階を伴う。場合によっては、遺伝的破壊は遺伝子の欠失または変異をもたらしうる。一部の態様において、本方法は、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減をもたらす遺伝子の発現を低減させる阻害核酸を細胞に導入する段階を伴う。
【0021】
一部の態様において、本方法は、操作されたNK細胞においてFcRγ鎖をコードする遺伝子を破壊する段階、および/またはFcRγ鎖の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊する段階を含む。一部の態様において、本方法は、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子を破壊する段階、および/またはFcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊する段階を含む。一部の態様において、本方法は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を破壊する段階、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊する段階を含む。一部の態様において、遺伝子を破壊する方法は、遺伝子に欠失、変異、または挿入を導入する段階をもたらす。
【0022】
一部の態様において、遺伝子を破壊する方法は、遺伝子をターゲティングするように操作されたエンドヌクレアーゼをNK細胞に導入する段階を含む。一部の態様において、エンドヌクレアーゼは、TALヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPR関連タンパク質9 (Cas9)、またはアルゴノートである。一部の態様において、エンドヌクレアーゼは、遺伝子の標的ドメインまたは領域と相補的である少なくとも1つのガイドRNAとの融合体であるか、またはそれと複合体化したCas9である。一部の態様において、Cas9は黄色ブドウ球菌(S. aureus) Cas9分子である。一部の態様において、Cas9分子は化膿連鎖球菌(S. pyogenes) Cas9である。一部の態様において、本方法は、NK細胞におけるFcRγ鎖をコードする遺伝子を標的とする、Cas9のようなエンドヌクレアーゼを細胞に導入する段階を伴う。
【0023】
一部の態様において、遺伝子の発現を抑制するための方法は、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減をもたらすように遺伝子をターゲティングする阻害核酸を細胞に導入する段階を含む。一部の態様において、FcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の発現の低減をもたらす1つまたは複数の遺伝子を標的とする1つまたは複数の阻害核酸分子が細胞に導入される。一部の態様において、阻害核酸は、FcRγ鎖をコードする遺伝子に相補的な配列を含む。一部の態様において、阻害核酸は、FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子に相補的な配列を含む。一部の態様において、阻害核酸は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子に相補的な配列を含む。一部の態様において、阻害核酸はRNA干渉剤を含む。一部の態様において、核酸は、siRNA、shRNA、またはmiRNAである。
【0024】
いずれかのそのような態様の一部において、本方法は、NK細胞におけるFcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質の発現を低減させるために実施される。これらの態様の一部において、FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質は転写因子である。一部の態様において、転写因子はPLZF (ZBTB16)またはHELIOS (IKZF2)である。
【0025】
いずれかのそのような態様の一部において、本方法は、NK細胞におけるFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現を低減させるために実施される。一部の態様において、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質は、FcRγの下流シグナル伝達分子である。これらの態様の一部において、下流のシグナル伝達分子は、SYK、DAB2、またはEAT-2である。
【0026】
いずれかのそのような態様の一部において、本方法は、NK細胞におけるFcRγ鎖の発現を低減させるために実施される。
【0027】
態様のいずれかの一部において、本方法はインビトロで実施される。態様のいずれかの一部において、本方法は、対象から、例えばヒト患者から単離された細胞などから、エクスビボで実施される。態様のいずれかの一部において、本方法は、発現の低減が、永続性、一過性、または誘導性であるように実施される。
【0028】
一部の態様において、操作されたNK細胞を産生するための方法は、対象から得られた初代NK細胞において、記載される遺伝子の発現の破壊または抑制のような、遺伝子操作を実施する段階を伴う。一部の態様において、対象は哺乳動物であり、例えばヒトである。
【0029】
一部の態様において、本方法は、遺伝子の発現を破壊または抑制する前に、(i) 哺乳動物対象由来のサンプルからNK細胞を単離する段階を含む。一部の態様において、哺乳動物対象はヒトである。これらの態様の一部において、サンプルは末梢血単核細胞(PBMC)を含む。一部の態様において、NK細胞を単離する段階は、NK細胞マーカーの表面発現に基づいてNK細胞を選択する段階を含む。一部の態様において、NK細胞マーカーは、CD56、CD161、KIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、2B4、NTB-A、CRACC、DNAM-1、CD69、および/またはCD25のうちの1つまたは複数である。一部の態様において、本方法は、表面CD3、T細胞抗原受容体(TCR)、および/または表面免疫グロブリン(Ig) B細胞受容体を発現しない細胞を選択することにより、他のリンパ球からNK細胞を選択する段階を含む。一部の態様において、NK細胞は、CD16の表面発現を有するように選択されるか、またはさらに選択される。一部の態様において、NK細胞はCD3ζを発現する。
【0030】
一部の態様において、操作されたNK細胞を産生するための方法は、NK細胞株にて遺伝子操作を実施する段階を伴う。一部の態様において、細胞株は、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である。
【0031】
一部の態様において、本方法は、組み換えまたは異種CD16および/またはCD3ζを発現するようにNK細胞株を操作する段階を含む。一部の態様において、本方法は、CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞に導入する段階を含む。一部の態様において、組み換えまたは異種CD16は活性化変異を含む。一部の態様において、活性化変異は、IgGに対するCD16の親和性を増加させる。一部の態様において、CD16は158V変異を含む。一部の態様において、CD16は158F変異を含む。
【0032】
一部の態様において、本方法は、CD16および/またはCD3ζ遺伝子をコードする核酸をNK細胞にウイルス形質導入する段階を含む。一部の態様において、本方法は、CD16および/またはCD3ζ遺伝子をコードする核酸をNK細胞にトランスフェクションする段階を含む。一部の態様において、本方法は、NK細胞においてCD16またはCD3ζを一過的に、誘導的に、または永続的に発現させる段階を含む。
【0033】
一部の態様において、本方法は、本方法によって遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超または約50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超だけNK細胞においてFcRγ鎖の発現、シグナル伝達、および/または活性が低減されるように実施される。一部の態様において、FcRIγアダプタタンパク質の発現レベルは、免疫ブロットアッセイ法によって検出不能である。
【0034】
NK阻害受容体の表面発現を低減させた操作されたNK細胞を産生する方法も提供される。一部の態様において、FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させた操作されたNK細胞を産生するために提供される方法のいずれも、NK阻害受容体の表面発現を低減させる段階をさらに伴いうる。一部の態様において、そのような操作されたNK細胞は、NK阻害受容体をコードする遺伝子を破壊する段階を含む方法によって産生される。一部の態様において、そのような操作されたNK細胞は、NK阻害受容体をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸をNK細胞に導入することによって産生される。一部の態様において、阻害受容体はNKG2Aおよび/またはKIR2DL1である。一部の態様において、そのような方法は、NKG2Aおよび/またはKIR2DL1のようなNK阻害受容体の発現が、本方法によって遺伝子操作されていないNK細胞における阻害受容体の発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超または約50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%超だけNK細胞において低減されるように実施される。
【0035】
一部の態様において、遺伝子操作されたNK細胞を産生するために提供される方法は、操作されたNK細胞を増殖させる段階をさらに含むことができる。一部の態様において、操作されたNK細胞を増殖させる段階は、フィーダー細胞またはサイトカインの存在下で操作されたNK細胞を培養する段階またはインキュベートする段階を伴う。一部の態様において、操作されたNK細胞を増殖させる段階は、インビトロで実施される。一部の態様において、操作されたNK細胞を増殖させる段階は、インビボで実施される。
【0036】
上記の方法のいずれかによって産生された操作されたNK細胞も提供される。
【0037】
提供される操作されたNK細胞のいずれかを含む組成物も本明細書において提供される。1つの態様において、組成物は、治療的有効量の本明細書において提供される操作されたNK細胞と薬学的に許容される担体とを含む。一部の態様において、担体は、生理食塩水溶液、デキストロース溶液、または5%ヒト血清アルブミンである。一部の態様において、組成物は1×105~1×108個の細胞/mLを含む。
【0038】
一部の態様において、組成物は、凍結保存された組成物であり、かつ/または操作されたNK細胞と抗凍結剤とを含む。
【0039】
操作されたNK細胞およびさらなる作用物質を含むキットも本明細書で提供される。一部の態様において、キットは、使用のための説明書、例えば、操作されたNK細胞および疾患の処置のためのさらなる作用物質を投与するための説明書をさらに含む。一部の態様において、さらなる作用物質は抗体またはFc融合タンパク質である。一部の態様において、抗体は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、微生物抗原を認識する。一部の態様において、抗体は、抗CD20抗体、抗HER2抗体、抗CD52抗体、抗EGFR抗体、および抗CD38抗体からなる群より選択される。一部の態様において、抗体はFcドメインを含む。
【0040】
提供される操作されたNK細胞のいずれかを、それを必要とする個体に投与する段階を含む、状態を処置する方法も本明細書において提供される。一部の態様において、個体は、ヒト対象などの哺乳動物対象である。一部の態様において、対象は、がんまたは感染症、例えばウイルス感染症または微生物感染症を有する対象である。一部の態様において、本方法は、1×108~1×1010個の細胞/m2を個体に投与する段階を含む。
【0041】
一部の態様において、提供される方法は、さらなる作用物質を投与する段階をさらに含む。一部の態様において、さらなる作用物質は抗体またはFc融合タンパク質である。一部の態様において、抗体は、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、微生物抗原を認識する。一部の態様において、抗体は、抗CD20抗体、抗HER2抗体、抗CD52抗体、抗EGFR抗体、または抗CD38抗体である。一部の態様において、抗体はFcドメインを含む。
【0042】
一部の態様において、さらなる作用物質および操作されたNK細胞は連続的に投与される。一部の態様において、さらなる作用物質は、操作されたNK細胞の投与の前に投与される。一部の態様において、さらなる作用物質および操作されたNK細胞は同時に投与される。
【0043】
一部の態様において、本方法は、炎症状態、感染症、および/またはがんを処置するためにNK細胞を投与する段階を含む。一部の態様において、感染症はウイルス感染症または細菌感染症である。一部の態様において、がんは白血病またはリンパ腫である。一部の態様において、個体は低親和性FcγRIIIAを発現する。一部の態様において、個体はヒトである。
【0044】
一部の態様において、操作されたNK細胞は対象に対して同種である。一部の態様において、操作されたNK細胞は対象にとって自己由来である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】抗CD20抗体リツキシマブの非存在下または存在下での抗体依存性細胞傷害性(ADCC)アッセイ法におけるg-NK細胞および従来のNK細胞の活性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
FcRγ(FcεRIγとしても公知)の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように遺伝子操作されている操作されたナチュラルキラー(NK)細胞が本明細書において提供される。一部の局面において、提供される操作されたNK細胞は、FcRγをコードする遺伝子、転写因子のような、FcRγの発現を制御するタンパク質をコードする遺伝子、またはFcRγの下流シグナル伝達分子のような、FcRγ依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子をノックアウト(例えば、遺伝子破壊により)またはノックダウン(例えば、遺伝子サイレンシングもしくは抑制により)するように遺伝子操作される。
【0047】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、サイトカインおよびケモカイン分泌を通じて、ならびに細胞傷害性顆粒の放出を通じて抗ウイルス免疫および抗がん免疫を媒介するのに重要な先天性リンパ球である(Vivier et al. Science 331(6013):44-49 (2011); Caligiuri, Blood 112(3):461-469 (2008); Roda et al., Cancer Res. 66(1):517-526 (2006))。NK細胞は、3番目に大きなリンパ球集団を構成するエフェクタ細胞であり、腫瘍および病原体感染細胞に対する宿主の免疫監視にとって重要である。
【0048】
しかしながら、Tリンパ球やBリンパ球とは異なり、NK細胞は生殖細胞系列にコードされた活性化受容体を用いた標的認識能力がごく限られていると考えられている(Bottino et al., Curr Top Microbiol Immunol. 298:175-182 (2006); Stewart et al., Curr Top Microbiol Immunol. 298:1-21 (2006))。代わりに、NK細胞は、IgG被覆(IgG-coated)標的細胞を認識する活性化Fc受容体CD16を発現し、それによって標的認識を広げる(Ravetch & Bolland, Annu Rev Immunol. 19:275-290 (2001); Lanier Nat. Immunol. 9(5):495-502 (2008); Bryceson & Long, Curr Opin Immunol. 20(3):344-352 (2008))。場合によっては、NK細胞表面の受容体(CD16など)が細胞の表面に結合したIgG1またはIgG3抗体を認識すると、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)が誘発される。これは、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞質顆粒の放出を誘発し、標的細胞死を引き起こす。ADCCおよび抗体依存性サイトカイン/ケモカイン産生は、NK細胞によって主に媒介される。
【0049】
場合によっては、ADCCは、抗がん抗体を含む治療用抗体の作用機序である。がん抗原に対する抗体の使用によりがん処置において大幅な進歩がなされているが、そのような抗体に対する患者の応答性はさまざまである。そのような可変応答の研究は、典型的には、腫瘍細胞に及ぼすこれらの抗体の直接的な阻害効果(例えば、成長因子受容体の阻害とそれに続くアポトーシスの誘導)に焦点を当てており、これらの抗体の生体内効果はより複雑でありえ、ADCCを通じてなど、宿主免疫系を伴いうる。一部の局面において、NK細胞を投与することによる細胞療法は、治療目的および関連する目的のために抗体と協調して使用することができる。
【0050】
活性化により、NK細胞はサイトカインおよびケモカインを豊富に産生し、同時に強力な細胞溶解活性を示す。NK細胞の活性化は、直接的な腫瘍細胞の死滅に見られるように、標的細胞上のリガンドへのNK細胞受容体の直接結合を通じて、または抗原担持細胞に結合した抗体のFc部分に結合することによるFc受容体(CD 16; FcγRIII)の架橋を通じて起こりうる。いくつかのNK細胞活性化受容体の発現およびシグナル伝達活性には、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を通じてシグナルを伝達する、物理的に関連したアダプタが必要とされる。これらのアダプタの中で、FcRγおよびCD3ζ鎖は、ジスルフィド結合ホモ二量体またはヘテロ二量体のいずれかとしてCD16および天然の細胞傷害性受容体(NCR)と結び付くことができ、これらの鎖は全ての成熟NK細胞によって発現されると考えられている。
【0051】
一部の局面において、CD16結合(CD16架橋)は、CD16関連アダプタ鎖FcRγまたはCD3ζの一方または両方を通じて生成される細胞内シグナルを介してNK細胞応答を開始する。CD16の誘因はγ鎖またはζ鎖のリン酸化をもたらし、これが今度は、チロシンキナーゼsykおよびZAP-70を動員し、シグナル伝達のカスケードが開始して、迅速かつ強力なエフェクタ機能をもたらす。最もよく知られているエフェクタ機能は、傷害性タンパク質を運搬する細胞質顆粒の放出であり、抗体依存性細胞傷害性のプロセスを通じて近くの標的細胞を死滅させる。CD16架橋はまた、サイトカインおよびケモカインの産生を引き起こし、これが今度は、一連の免疫応答を活性化および調整する。
【0052】
サイトカインおよびケモカインのこの放出は、インビボでのNK細胞の抗がん活性で役割を果たしうる。NK細胞はまた、パーフォリンおよびプロテアーゼ(グランザイム)を含有する小さな顆粒をその細胞質中に有する。NK細胞からの放出により、パーフォリンは標的細胞の細胞膜に孔を形成し、そこからグランザイムと関連分子が侵入し、アポトーシスを誘導しうる。NK細胞が標的細胞の壊死ではなくアポトーシスを誘発するという事実は、重要である。ウイルスに感染した細胞の壊死はビリオンを放出するが、アポトーシスは細胞内部でのウイルスの破壊に至る。
【0053】
提供される操作されたNK細胞は、より低いFcRγシグナル伝達アダプタ活性または発現を有するように操作されている細胞を含む。場合によっては、操作された細胞はシグナル伝達アダプタCD3ζ鎖を豊富に発現するが、シグナル伝達アダプタFcRγ鎖の発現が欠損している。一部の態様において、シグナル伝達アダプタFcRγ鎖を発現するNK細胞と比較して、これらの操作されたNK細胞は、抗体の存在下で起こりうるようなCD16の結合により活性化されると劇的に増強された活性を示す。例えば、操作された細胞は、CD16の抗体媒介架橋によりまたは抗体被覆腫瘍細胞により活性化されうる。操作された細胞を産生する方法も提供される。提供される操作されたNK細胞および方法は、対象中の全NK細胞のごく一部としてしか存在しない可能性があり、および/または集団中の全対象に通常存在しない可能性がある特定の表現型のNK細胞の選択または同定に関連する問題に対処する。一部の局面において、提供される態様は、対象から直接単離された類似の表現型のNK細胞と比較して、増強された活性を伴ってNK細胞を操作することができるが、抗体との協調投与の場合を含めて、治療的使用のために十分な量でさらに容易に得ることができる、改善されたNK細胞療法を供与する。
【0054】
特許出願、特許刊行物、ならびに科学文献およびデータベースを含め、本明細書において引用される全ての参考文献は、各個々の参考文献を参照により組み入れられるものと具体的かつ個別的に示した場合と同程度に、全ての目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0055】
限定する目的ではなく、開示を明確にするために、詳細な説明を以下の小区分に分割する。本明細書において用いられる区分の見出しは、組織的な目的のためだけのものであり、記述される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0056】
I. 定義
特に定義されていない限り、本明細書において用いられる全ての技術、表記法、ならびに他の技術的および科学的用語または専門用語の全ての形態が、主張された主題が関係する当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、明確にするためにおよび/またはすぐに参照できるように、一般的に理解されている意味を有する用語が本明細書において定義されるものであり、本明細書においてそのような定義を含めることは、当技術分野において一般に理解されていることに対する実質的な違いを表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0057】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形(a, an, the)は、その内容について別段の明瞭な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つまたはそれを超えるそのような分子の組み合わせなどを含みうる。
【0058】
本明細書において用いられる「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲をいう。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする態様を含む(および記述する)。
【0059】
本明細書において記述される本発明の局面および態様は、局面および態様を「含む」、局面および態様「からなる」、ならびに局面および態様「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0060】
本明細書において使用される場合、「任意の」または「任意で」とは、その後に記述される事象または状況が発生するかまたは発生しないこと、および記述にその事象または状況が発生する事例と発生しない事例が含まれることを意味する。例えば、任意で置換されてもよい基は、その基が置換されていない、または置換されていることを意味する。
【0061】
本明細書において用いられる場合、「抗体」は、天然であろうとも、部分的にまたは完全に合成により、例えば組み換えにより、産生されようとも、抗原結合部位を形成するのに、およびアセンブルされた場合、抗原に特異的に結合するのに十分である免疫グロブリン分子の可変重鎖および/または軽鎖領域の少なくとも一部を含んだ、任意のその断片を含む、免疫グロブリンおよび免疫グロブリン断片をいう。ゆえに、抗体は、免疫グロブリン抗原結合ドメイン(抗体結合部位)と相同または実質的に相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質を含む。典型的には、抗体は、可変重(VH)鎖および/または可変軽(VL)鎖の全部または少なくとも一部を最低限に含む。一般に、VHおよびVLの対合は一緒に抗原結合部位を形成するが、場合によっては、単一のVHまたはVLドメインで抗原結合に十分である。抗体はまた、定常領域の全部または一部を含むことができる。本明細書における抗体への言及には、全長抗体および抗原結合断片が含まれる。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と互換的に用いられる。
【0062】
「全長抗体」、「無傷の抗体」、または「全抗体」という用語は、抗体断片とは対照的に、実質的に無傷の形態の抗体をいうように互換的に用いられる。全長抗体は、典型的には、抗体分泌B細胞により哺乳動物種(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類など)から産生される抗体のような、2つの全長重鎖(例えば、VH-CH1-CH2-CH3またはVH-CH1-CH2-CH3-CH4)と2つの全長軽鎖(VL-CL)とヒンジ領域を有する抗体および合成により産生される同じドメインを有する抗体である。特に全抗体は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変種でありうる。場合によっては、無傷の抗体は1つまたは複数のエフェクタ機能を持ちうる。
【0063】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、無傷の抗体の抗原結合領域および/または可変領域を含む。抗体断片は、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、Fv断片、ジスルフィド結合Fv (dsFv)、Fd断片、Fd'断片; ダイアボディ; 線状抗体(米国特許第5,641,870号の実施例2; Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照のこと); 単鎖Fv (scFv)または単鎖Fab (scFab)を含む、単鎖抗体分子; 上記のいずれかの抗原結合断片および抗体断片からの多重特異性抗体を含むが、これらに限定されることはない。本明細書での目的のために、抗体断片は、典型的には、NK細胞の表面上のCD16を結び付けるまたは架橋するのに十分なものを含む。
【0064】
「自己由来」という用語は、個人の組織内に生じるまたは組織から採取された細胞または組織をいう。例えば、NK細胞の自己由来移入または移植では、ドナーとレシピエントは同一人物である。
【0065】
「同種」という用語は、同じ種に属するか、または同じ種から得られたが、遺伝的に異なる細胞または組織をいい、それゆえ、場合によっては、免疫学的に不適合である。典型的には、「同種」という用語は、同じ種のドナーからレシピエントに移植される細胞を定義するために用いられる。
【0066】
「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(例えばmRNAまたは他のRNA転写産物へ)転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスをいう。転写産物およびコードされたポリペプチドは、集合的に「遺伝子産物」といわれうる。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含みうる。
【0067】
タンパク質または核酸に関して「異種」という用語は、異なる遺伝源に由来するタンパク質または核酸をいう。例えば、細胞に対して異種であるタンパク質または核酸は、それが発現される細胞以外の生物または個体に由来する。
【0068】
本明細書において用いられる場合、「導入する」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで、細胞にDNAを導入する種々の方法を包含し、そのような方法は、形質転換、形質導入、トランスフェクション(例えばエレクトロポレーション)、および感染を含む。ベクターは、DNAをコードする分子を細胞に導入するのに有用である。可能なベクターは、プラスミドベクターおよびウイルスベクターを含む。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターもしくはアデノ随伴ベクターのような他のベクターを含む。
【0069】
「組成物」という用語は、細胞または抗体を含む、2つまたはそれ以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物をいう。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。調製物は一般に、活性成分(例えば抗体)の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態である。
【0070】
「薬学的に許容される担体」とは、対象に対して無毒である、活性成分以外の、薬学的製剤中の成分をいう。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存料を含むが、これらに限定されることはない。
【0071】
本明細書において用いられる場合、組み合わせとは、2つの物品間または2つよりも多い物品間の任意の関連をいう。組み合わせは、2つの組成物もしくは2つの収集物のような、2つもしくはそれ以上の別個の物品であってよく、2つもしくはそれ以上の別個の物品の単一の混合物のような、それらの混合物であってもよく、またはそれらの任意の変化形であってもよい。組み合わせの要素は一般に、機能的に関連付けられているか、または関連している。
【0072】
本明細書において用いられる場合、キットは、治療的使用を含むがこれに限定されない目的のために、さらなる作用物質およびその組み合わせまたは要素の使用説明書のような、他の要素を任意で含んでもよいパッケージ化された組み合わせである。
【0073】
本明細書において用いられる場合、「処置」または「処置する」という用語は、臨床病理学の経過中に処置される個体または細胞の自然経過を変えるようにデザインされた臨床的介入をいう。処置の望ましい効果は、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善を含む。例えば、障害(例えば、好酸球介在性疾患)に関連する1つまたは複数の症状が軽減または排除される場合、個体は成功裏に「処置」される。例えば、処置が、疾患を患っている者の生活の質の向上、疾患を処置するために必要とされる他の薬物の用量の減少、疾患の再発頻度の低減、疾患の重症度の低下、疾患の発症もしくは進行の遅延、および/または個体の生存の延長をもたらす場合に個体は成功裏に「処置」される。
【0074】
「有効量」とは、治療的または予防的結果を含む、望ましいまたは示された効果を達成するために、必要な投与量および期間で、少なくとも有効な量をいう。有効量は、1回または複数回の投与で提供することができる。「治療的有効量」とは、特定の障害の測定可能な改善をもたらすのに必要な細胞の少なくとも最小用量である。本明細書における治療的有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、および体重などの要因によって異なりうる。治療的有効量は、治療的に有益な効果が抗体の任意の毒性作用または有害作用を上回るものであってもよい。「予防的有効量」とは、所望の予防的結果を達成するために、必要な投与量および期間で、有効な量をいう。必ずしもそうではないが典型的には、疾患の前または初期の段階で対象において予防的用量が使用されるため、予防的有効量は治療的有効量より少なくなりうる。
【0075】
本明細書において用いられる場合、「個体」または「対象」は哺乳動物である。治療の目的のための「哺乳動物」には、ヒト、飼育動物および畜産動物、ならびに動物園動物、スポーツ用動物、またはペット動物、例えばイヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどが含まれる。一部の態様において、個人または対象はヒトである。
【0076】
II. 操作されたNK細胞
本明細書において提供されるのは、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように遺伝子操作されている操作されたNK細胞である。細胞を操作するための方法も提供される。一部の態様において、本方法は、遺伝子を破壊しまたは遺伝子の発現を抑制し、NK細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減をもたらす遺伝的破壊または阻害核酸を導入する段階を含む。
【0077】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖の発現または活性を直接的に低減または排除するように遺伝子操作される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγの発現または活性を調節するタンパク質、例えばFcRγの発現を制御する転写因子の発現を低減または排除することによってなど、FcRγ鎖の発現または活性を間接的に低減または排除するように遺伝子操作される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγの下流シグナル伝達に関与する分子の発現または活性を低減または排除するように遺伝子操作される。一部の局面において、操作された細胞は、CD16の結合または架橋結合時などに、CD3ζを通じてシグナルを伝達するように保持されるか、またはさらに操作される。
【0078】
操作のための標的
一部の態様において、NK細胞は、ヒトFcRγ鎖タンパク質の発現または活性を低減または排除するように遺伝子操作される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖をコードする遺伝子の遺伝的破壊またはFcRγ鎖タンパク質の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊を含む。一部の態様において、遺伝的破壊は、読み取り枠内のフレームシフト変異および/または未成熟終止コドンなどの、遺伝子中での挿入、欠失、または変異をもたらす。一部の態様において、一方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、両方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖をコードする遺伝子の発現またはFcRγ鎖タンパク質の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の発現を低減させる、siRNAまたは他の阻害核酸分子のような阻害核酸を含む。
【0079】
FcRγ鎖のアミノ酸配列(ヒト(Homo sapiens)、高親和性免疫グロブリンガンマFc受容体Iとも呼ばれる)は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号NP_004097.1 (GI:4758344)として利用可能であり、以下にSEQ ID NO:1として再現される。
【0080】
FcRγ鎖のNCBIデータベースのゲノム参照配列は、NG_029043.1 RefSeqGeneである。mRNA参照配列は1.NM_004106.1である。
【0081】
操作されたNK細胞は、FcRγシグナル伝達アダプタをコードする遺伝子中での変異、破壊、または欠失、例えばFcRγ鎖遺伝子のエクソンにおける不活性化変異を含みうる。変異、破壊、または欠失は、FcRγ鎖遺伝子の調節要素中、例えばプロモーター中にあることもできる。
【0082】
FcRγ鎖の発現を減少させるために、さまざまな不活性化変異または欠失を用いることもできる。例えば、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)の変異が用いられうる。一部の態様において、操作されたNK細胞は、ITAMチーフに不活性化変異を含みうる。他の態様において、FcRγ鎖の膜貫通領域を変異させて、タンパク質を不活性化することができる。
【0083】
一部の態様において、FcRγ鎖を調節するタンパク質の発現を増加または減少させることによって間接的に、FcRγ鎖の発現または活性を減少させることも可能である。一部の態様において、操作されたNK細胞は転写因子、例えばPLZFまたはHELIOSのような、FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質の発現を低減または排除するように遺伝子操作される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖タンパク質の発現または活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊を含む。一部の態様において、遺伝的破壊は、読み取り枠内のフレームシフト変異および/または未成熟終止コドンなどの、遺伝子中での挿入、欠失、または変異をもたらす。一部の態様において、一方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、両方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、転写因子、例えばPLZFまたはHELIOSのような、FcRγ鎖タンパク質の発現または活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の発現を低減させる阻害核酸を含む。
【0084】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγシグナル伝達アダプタの転写を促進する遺伝子中での遺伝的破壊、欠失、または変異を含みうる。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖の転写を促進する転写因子をコードする遺伝子中での遺伝的破壊、変異、または欠失を有しうる。例えば、操作されたNK細胞は、PLZFまたはHELIOS転写因子をコードする遺伝子中での遺伝的破壊を有しうる。一部の態様において、PLZFおよび/またはHELIOSの一方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、PLZFの両方の対立遺伝子またはHELIOSの両方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγシグナル伝達アダプタの転写を促進する遺伝子の発現を低減させる、siRNAまたは他の阻害核酸分子のような阻害核酸分子を含む。一部の態様において、操作されたNK細胞は、PLZFまたはHELIOS転写因子をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸分子のような、FcRγ鎖の転写を促進する転写因子を標的とする阻害核酸分子を有しうる。
【0085】
PLZFのアミノ酸配列は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号NP_001018011.1として利用可能であり、以下にSEQ ID NO:3として再現される。NCBIデータベースのゲノム参照配列は、NG_012140.1である。mRNA参照配列はNM_001018011.1である。
【0086】
HELIOS (IKZF2)のアミノ酸配列は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号NP_057344.2 (アイソフォーム1)およびNP_001072994.1 (アイソフォーム2)として利用可能である。NCBI遺伝子識別子はNC_000002.12である。mRNA参照配列はNM_016260.2 (アイソフォーム1) NM_001079526.1 (アイソフォーム2)である。遺伝子IDは22807である。
【0087】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質を低減または排除するように遺伝子操作される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達の低減を含む。例えば、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与する下流分子の発現の低減を有しうる。例えば、LeeおよびSchlumsは、改変および/または欠失に適した標的でありうるFcRγシグナル伝達経路の成員について記述している(Lee et al., Immunity 42:431-42 (2015); Schlums et al. Immunity, 42:443-56 (2015))。これらの態様の一部において、下流分子は、SYK、DAB2、またはEAT2を含む。SYKの遺伝子IDは6850である。DAB2のNCBI遺伝子IDは1601である。DAB2のゲノム参照配列はNG_030312.1である。DAB2のアイソフォーム2のmRNAおよびタンパク質配列は001244871.1およびNP_001231800.1である。DAB2のアイソフォーム1のmRNAおよびタンパク質配列は2.NM_001343.3およびNP_001334.2である。EAT2のNCBI遺伝子IDは175072である。
【0088】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子中での遺伝的破壊、変異、または欠失を含みうる。例えば、操作されたNK細胞は、SYK、DAB2、および/またはEAT2をコードする遺伝子中での遺伝的破壊を有しうる。一部の態様において、SYK、DAB2、および/またはEAT2の一方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、SYKの両方の対立遺伝子、DAB2の両方の対立遺伝子、および/またはEAT2の両方の対立遺伝子が破壊される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与する遺伝子の発現を低減させる、siRNAまたは他の阻害核酸分子のような阻害核酸分子を含む。一部の態様において、操作されたNK細胞は、SYK、DAB2、および/またはEAT2をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸分子のような、シグナル伝達分子を標的とする阻害核酸分子を有しうる。
【0089】
NK阻害受容体の発現を低減または排除するように遺伝子操作された操作NK細胞も提供される。一部の局面において、上記のようにFcRγ鎖の発現、シグナル伝達、および/または活性の低減を有するように操作された提供されるもののいずれかをさらに操作して、NK阻害受容体の発現を低減または排除することができる。場合によっては、操作された細胞は、NK阻害受容体をコードする遺伝子の破壊を含む。一部の態様において、操作された細胞は、NK阻害受容体をコードする遺伝子の発現を低減させる、siRNAまたは他の阻害核酸分子のような阻害核酸分子を含む。阻害NK受容体は当技術分野において公知であり、NKG2A (KLRC1としても公知; NCBI遺伝子ID 3821)およびKIR2DL1 (NCBI遺伝子ID 3802)を含む。NK細胞は、本明細書において提供される方法のいずれかを用いて、例えば、終止コドンまたはフレームシフトを生じる遺伝子挿入、変異、または欠失を含め、干渉RNAまたは遺伝的破壊を用いて阻害NK受容体の発現を低下させるように操作されうる。
【0090】
上記の態様において、そのような操作されたNK細胞には、ヌクレオチドの置換、欠失、または付加によって生じる遺伝的破壊を含むものが含まれる。置換、欠失、または付加は、1つまたは複数のヌクレオチドを伴いうる。変種は、コード領域、非コード領域、またはその両方において改変されうる。コード領域の改変は、非保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を生じうる。一部の態様において、遺伝的破壊は、遺伝子中の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす挿入、欠失、または変異を含む。
【0091】
一部の態様において、操作された細胞における、上記のいずれかのような特定の遺伝子産物の発現は、遺伝子操作されていないNK細胞での遺伝子産物の発現と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%超だけ低減される。一部の態様において、操作された細胞における特定の遺伝子産物の発現は、検出できないレベルまで低減される。一部の態様において、操作された細胞における特定の遺伝子産物の発現は、完全に排除される。これらの態様の一部において、遺伝子はFcRγ鎖である。他の態様において、遺伝子は、PLZFまたはHELIOSのような、FcRγ鎖の発現を促進する転写因子のような、FcRγ鎖を調節するタンパク質をコードしうる。他の態様において、遺伝子は、下流シグナル伝達分子SYK、DAB2、またはEAT2のような、FcRγ鎖媒介シグナル伝達に関与するタンパク質をコードしうる。
【0092】
一部の態様において、提供される操作NK細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達は、遺伝子操作されていないNK細胞における遺伝子の発現と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%を超えるだけ低減される。これらの態様の一部において、FcRγ鎖発現のレベルは免疫ブロットアッセイ法を用いて検出不能なレベルまで低減される。
【0093】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、CD16 (CD16AまたはFcyRIIIaともいわれる)を発現しうる。したがって、本明細書におけるCD16への言及は、グリコシルホスファチジルイノシトール固定型(FcγRIIIBまたはCD16B)をいうように意図されない。これらの態様の一部において、CD16はヒトCD16である。ヒトにおいてまたはグリコシルホスファチジルイノシトール固定型(FcγRIIIBまたはCD16B)としてである。典型的には、提供される操作された細胞は、TCR-CD3複合体のζ鎖と結び付くことができるポリペプチド固定CD16型を発現する。CD16は抗体Fc領域に結合し、ADCCを開始する。一部の態様において、他のFc受容体タンパク質の発現は、操作されたNK細胞において維持される。
【0094】
CD16Aのゲノム配列は、NCBIデータベースにおいてNG_009066.1で利用可能である。CD16Aの遺伝子IDは2214である。遺伝子多型を含めて、CD16の配列情報はUniProtアクセッション番号P08637で利用可能である。CD16aの核酸およびタンパク質の配列は公開されている。例えば、GenBankアクセッション番号NM_000569 (SEQ ID NO: 1)、NM_001127596、NM_001127595、NM_001127593、およびNM_001127592は、例示的なヒトCD16a核酸配列を開示し、GenBankアクセッション番号NP_000560 (SEQ ID NO: 2)、NP_001121068、NP_001121067、NP_00112065、およびNP_001121064は、例示的なヒトCD16aタンパク質配列を開示している。当業者は、本明細書において提供されるものとは異なるが、Fc結合活性のような、CD16aの少なくとも1つの活性を保持するさらなるCD16a核酸およびアミノ酸配列を同定することができる。
【0095】
CD16は、IgG分子のFc部分に対して比較的低い結合親和性を有する形態において最も一般的に見られる。より高い結合親和性を示す別の形態が、一部の個体において見られる。CD16の低親和性および高親和性の形態は、ポリペプチド鎖の成熟(プロセッシングされた)形態における位置番号158でのフェニルアラニン(低親和性)に対してのバリン(高親和性)の置換だけが異なる。CD16 (158F)の配列はSEQ ID NO:4に記載されている(残基158Fは太字かつ下線で示されている)。一部の態様において、CD16 (158F)は、
で示されるシグナルペプチドをさらに含む。
【0096】
CD16 158Vの配列(F158Vをもたらす多型)はVAR_003960として公知であり、SEQ ID NO:6に記載された配列を有する(158V多型は太字かつ下線で示されている)。一部の態様において、CD16 (158V)は、
で示されるシグナルペプチドをさらに含む。
【0097】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、活性化変異を含むCD16遺伝子を含みうる。態様の一部において、変異はIgG領域に対するさらに高い親和性をもたらす。これらの態様の一部において、CD16変異は、IgG1、IgG2、またはIgG4に対するCD16のさらに高い親和性をもたらす。一部の態様において、CD16変異はIgG1に対するCD16のさらに高い親和性をもたらす。一部の態様において、CD16は158V変異を含む。一部の態様において、CD16は、SEQ ID NO:6に記載されたアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:6と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示し、かつ158V多型を含むアミノ酸の配列を有する。一部の態様において、CD16の変異は158F変異である。一部の態様において、CD16は、SEQ ID NO:4に記載されたアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:4と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示し、かつ158F多型を含むアミノ酸の配列を有する。
【0098】
一部の局面において、操作されたNK細胞は、組み換えCD16または異種CD16を発現するように操作することができる。一部の態様において、NK細胞がCD16を発現しうるとしても、NK細胞は、遺伝子工学の非存在下でNKによって発現されるよりも高いレベルのCD16をさらに発現するようにおよび/またはCD16の改変型を発現するように操作されうる。そのような例において、細胞は、強力なまたは構成的なプロモーターとそれに続くCD16遺伝子を含む核酸を含むように操作することができる。
【0099】
操作されたNK細胞はまた、他のシグナル伝達アダプタ分子を発現しうる。例えば、FcRγ以外のITAMドメインを有するシグナル伝達分子。一部の態様において、操作されたNK細胞はCD3ζアダプタ鎖を発現する。これらの態様の一部において、CD3ζはヒトCD3ζである。
【0100】
ヒトCD3ζ (ヒト)のアミノ酸配列は、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号ABQ28690.1 (GI:146399947)として利用可能であり、以下にSEQ ID NO:2として再現される。
【0101】
CD3ζ (CD247)のNCBI遺伝子IDは919である。
【0102】
一部の局面において、操作されたNK細胞は、組み換えCD3ζまたは異種CD3ζを発現するように操作することができる。一部の態様において、NK細胞がCD3ζを発現しうるとしても、NK細胞は、遺伝子工学の非存在下でNKによって発現されるよりも高いレベルのCD3ζをさらに発現するようにおよび/またはCD3ζの改変型を発現するように操作されうる。そのような例において、細胞は、強力なまたは構成的なプロモーターとそれに続くCD3ζ遺伝子を含む核酸を含むように操作することができる。一部の態様において、操作された細胞は、活性化変異を有するCD3ζ遺伝子を含みうる。他の態様において、操作されたNK細胞は、操作後にさらに高いレベルでCD3ζを発現しうる。
【0103】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、天然の細胞傷害性受容体を含めて、NK細胞表面受容体の発現の低減を有しうる。操作されたNK細胞は、改変のないNK細胞と比較してNKp46、NKp30、および/またはNKp44の発現の低減を有しうる。これらの態様の一部において、細胞表面受容体の発現は、1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、10倍、100倍または1000倍を超えるだけ低減される。これらの態様の一部において、NK細胞表面受容体は、操作されたNK細胞において検出不能でありうる。他の態様において、NK細胞は、NKp46、NKp30、および/またはNKp44のようなNK細胞表面受容体に対して陰性でありうる。
【0104】
細胞型
当業者は、ヒト組織から得られた初代細胞および既存の細胞株の両方が操作に適していることを理解するであろう。例えば、一部の態様において、操作されたNK細胞は、ヒトなどの対象から得られた初代細胞に由来しうる。
【0105】
初代細胞
本明細書において提供される方法のいずれかを用いて、初代細胞を操作することができる。一部の態様によれば、NK細胞を含む細胞の集団は、ヒト対象などの哺乳動物対象からのサンプルから得られる。サンプルまたは供給源は、臍帯血、骨髄または末梢血であることができる。
【0106】
一部の局面において、1つまたは複数のナチュラルキラー細胞特異的マーカーを発現するナチュラルキラー細胞は、細胞集団から単離される。NK細胞を単離および同定する方法は、当技術分野において周知であり、Dahlberg et al, Frontiers in Immunology, vol. 6 article 605 pp. 1-18 (2015)において論じられているものを含む。
【0107】
NK細胞のインビトロ単離および大規模増殖のための技法が公知である。例示的な手順は、参照により全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2014/0086890号に記述されている。当業者は、例えば、参照により全体が本明細書に組み入れられるChilds et al., Hematol. The Education Program 2013:234-246, 2013に記述されているように、NK細胞を増殖させるためのさらなる方法を特定することができる。
【0108】
一部の態様において、単核細胞が対象(ドナー対象または腫瘍もしくは過剰増殖性疾患を有する対象など)から収集される。いくつかの例では、単核細胞はアフェレーシス手順によって収集される。単核細胞は、例えば免疫磁気ビーズ戦略を用いた負の枯渇により、NK細胞について濃縮される。いくつかの例において、ビオチン化モノクローナル抗体の混合物を利用して、T細胞の単核細胞サンプル、B細胞、単球、樹状細胞、血小板、マクロファージ、および赤血球を枯渇させることによりNK細胞が濃縮される。サンプル中の非NK細胞は、ストレプトアビジンにカップリングされた磁気ビーズで除去され、濃縮されたNK細胞調製物をもたらす。この方法のための例示的な市販のキットは、Dynabeads(登録商標) Untouched(商標) Human NK Cellsキット(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)である。別の例において、NK細胞は、例えば抗CD56抗体に結合された磁気ビーズ(CD56 MicroBeads, Miltenyi Biotec, Inc., Auburn, CAなど)を利用した、CD56+ NK細胞の陽性選択により濃縮される。他の例において、NK細胞を濃縮するために、CD56+ NK細胞の陰性選択(T細胞枯渇など)とそれに続く陽性選択を含む2段階の方法が用いられる。
【0109】
一部の態様において、ナチュラルキラー細胞は、KIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CD56、およびCD161のような典型的なヒトナチュラルキラー細胞マーカーを発現するものとして同定されうる。マウスを伴う研究の場合、ナチュラルキラー細胞は、NK1.1、CD 122、LY49ファミリー(Ly49A、Ly49C、Ly49D、Ly49E、Ly49F、Ly49G、Ly49H、およびLy49I)、またはNKG2A/C/Eのような典型的なマウスマーカーを用いて同定および/または単離することができる。一部の態様において、ある種のマーカーを発現する細胞を同定するために、細胞染色、またはFACSが用いられうる。
【0110】
一部の態様において、陽性選択または陰性選択のいずれかを用いて、NK細胞を選択的に濃縮することができる。例えば、CD3を発現しないNK細胞は、細胞の混合物を固定化抗CD3抗体に曝露し、結合していない細胞を除去することにより選択することができる。本発明の一部の態様によれば、NK細胞はCD56+CD3-細胞を含む。本発明の一部の態様によれば、NK細胞はCD56+CD16+CD3-細胞を含む。
【0111】
1つの態様において、初代NK細胞を単離する前にサイトカインを対象に投与することができる。例えば、初代NK細胞を単離する前にIL-12、IL-15、IL-18、IL-2、および/またはCCL5を対象に投与することができる。
【0112】
また、単離されたNK初代細胞を、CD16およびCD3ζを発現するものについて濃縮することも有益でありうる。当業者は、固相に結合された抗体を用いたある種のマーカーを発現する細胞の蛍光細胞選別、または選択的枯渇のような、存在する集団からある種のマーカーを発現する細胞を選択的に濃縮するための多くの方法が存在することを理解するであろう。
【0113】
一部の態様において、本方法は、医薬品適正製造基準(Current Good Manufacturing Practice; cGMP)の下で実施され、またはそれに適合されることができる。当業者は、濃縮されたNK細胞集団を調製するために使用できる他の方法を同定することができる。
【0114】
一部の態様において、濃縮されたNK細胞(典型的には99%超がCD3陰性および85%超がCD56+)は、細胞を遺伝子操作する前または後にインビトロで増殖させる。
【0115】
1つの非限定的な例において、濃縮されたNK細胞を最大21日間、10%ヒトAB血清および500 IU/mlのインターロイキン-2 (IL-2)を有するX-VIVO(商標) 20培地(Lonza, Basel, Switzerland)中で照射EBV-LCLフィーダー細胞株(SMI-LCL)とともに培養する。この技法を利用して、200倍~1000倍の範囲内でのNK細胞の増殖が達成されうる(増殖したNK細胞は、典型的には、99%超がCD3陰性および90%超がCD56+である)。いくつかの例において、濃縮されたNK細胞の開始集団は約0.8~1.6×108個の全NK細胞であり、これは2~4週間にわたりインビトロで最大で1000倍またはそれ以上に増殖させる。GMP条件を使用したスケールアップ実験において同様の数のNK細胞が増殖されている。いくつかの例において、NK細胞はG-Rex(登録商標)容器(Wilson Wolf, New Brighton, MN)中で増殖させる。G-Rex(登録商標)100容器は、2.5×108個のNK細胞/kgまたはそれ以上の用量へのNK増殖を支持する。G-Rex(登録商標)100容器中で培養されたNK細胞は、最大4×106個のNK細胞/mlの濃度で培養されうる。
【0116】
一部の態様において、免疫磁気ビーズまたは流動選別の使用によるような、さらなる濃縮手順によって単離されたバルクNK細胞またはNK細胞サブセットは、細胞培地、例えば、10%ヒトAB血清、50 U /mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、および500 IU/mL IL-2を含有するCellgro SCGM無血清培地(CellGenix, Gaithersburg, MD)中でまたは10%熱不活性化ヒトAB血清もしくは10%自己由来血清を含有するX-VIVO(商標) 20培地中で増殖されうる。
【0117】
非増殖および増殖NK細胞は、CD56、CD16、TRAIL、FasL、NKG2D、LFA-1、パーフォリン、ならびにグランザイムAおよびBのようなマーカーの発現についてフローサイトメトリーにより分析することができる。いくつかの例において、1つまたは複数のマーカーの発現は、ベースライン時におよびインビトロでの増殖の10日よりも後に測定される。クロム放出アッセイ法を用いて、がん細胞標的に対する新鮮NK細胞 vs 増殖NK細胞の細胞傷害性を評価することができる。当業者は、NK細胞集団(例えば、純度)、生存性、および/または活性を評価する他の方法を同定することができる。
【0118】
一部の態様において、対象に由来する増殖された初代細胞は、遺伝子操作の前に増殖および/または培養されうる。一部の態様において、操作された初代細胞は、操作後におよび患者への投与前に培養および/または増殖される。
【0119】
NK細胞株
一部の態様において、NK細胞株は、本明細書において記述されるように操作することができる。一部の態様において、操作NK細胞は、操作されたNK細胞株を含む。一部の局面において、操作された細胞株は、対象に由来する少数のNK細胞を増殖させる必要なしに、より大量の細胞の産生を可能にする。操作された細胞株は、十分に特徴付けられるという利点も有する。
【0120】
一部の態様において、細胞株はクローン細胞株である。一部の態様において、細胞株は、NK細胞白血病またはリンパ腫を有する患者に由来する。一部の態様において、NK細胞株は、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1を含む。
【0121】
NK-92は、大顆粒リンパ腫を患う対象の血液から最初に単離され、その後に細胞培養で広められたNK様細胞株である。NK-92細胞株は記述されている(Gong et al., 1994; Klingemann, 2002)。NK-92細胞は、NK細胞に特徴的なCD3-/CD56+表現型を有する。それらは、CD16を除く既知のNK細胞活性化受容体の全てを発現するが、低レベルで発現するNKG2A/CD94およびILT2/LIR1を除く既知のNK細胞阻害受容体の全てを欠く。さらに、NK-92は、血液から単離されたポリクローナルNK細胞とは異なり、タイプと細胞表面濃度の両方に関して一貫した形でこれらの受容体を発現するクローン細胞株である。同様に、NK-92細胞は免疫原性ではなく、ヒト対象に治療的に投与される場合に免疫拒絶応答を誘発しない。実際、NK-92細胞はヒトでは耐容性良好であり、正常組織に及ぼす有害な影響は知られていない。
【0122】
NK-92のような、いくつかの既存の細胞株は、CD16を天然には発現しない。一部の態様において、本明細書において提供される方法は、CD16を発現するように、NK-92のようなNK細胞株を操作する段階を含む。Klingemannらはまた、NK92細胞株の利点について論じている。Klingemann et al, Frontiers in Immunology, vol 7, article 91 pp 1-7 (2016)。一部の態様において、本明細書において提供される方法は、CD3ζを発現するように細胞株を操作する段階を含む。一部の態様において、CD16および/またはCD3ζは誘導的にまたは一過的に発現されることができる。そのような態様において、細胞株は、FcRγ鎖を異種発現もしくは組み換え発現するように操作されていないか、または細胞におけるFcRγ鎖の発現を低減もしくは排除するように操作されている。
【0123】
操作されたNK細胞を産生する方法
本明細書において提供されるのは、記述されるように細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように遺伝子操作されている操作されたNK細胞を産生する方法である。例えば、本方法は、記述されるようにFcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγシグナル伝達アダプタの発現もしくは活性を調節するタンパク質(PLZFもしくはHELIOSのような転写因子)をコードする遺伝子、および/またはFcRγ媒介シグナル伝達に関与するタンパク質(例えばSYK、DAP2、もしくはEAT2のような下流シグナル伝達分子)をコードする遺伝子の遺伝的破壊を導入する段階を含みうる。一部の態様において、本方法は、記述されるようにFcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγシグナル伝達アダプタの発現もしくは活性を調節するタンパク質(PLZFもしくはHELIOSのような転写因子)をコードする遺伝子、および/またはFcRγ媒介シグナル伝達に関与するタンパク質(例えばSYK、DAP2、もしくはEAT2のような下流シグナル伝達分子)をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸分子を導入する段階を含みうる。
【0124】
一部の態様において、本明細書において提供される方法は、例えば上記のまたは当業者に公知の方法により、対象からNK細胞を単離する段階、ならびに提供される方法にしたがって細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させる段階を含む。一部の態様において、本明細書において提供される方法は、本明細書において記述されるいずれかのようなNK細胞株を得る段階、ならびに提供される方法にしたがって細胞におけるFcRγの発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように細胞を操作する段階を含む。
【0125】
当業者は、FcRγの発現または活性を減少させる多くの方法があることを理解するであろう。例えば、転写レベルを減少させることができる。FcRγ鎖発現のような、遺伝子発現を減少させる1つの方法は、内在性遺伝子を改変して転写を減少させることを伴う。例えば、FcRγ鎖遺伝子が欠失、破壊、または変異されうる。FcRγ RNAのターゲティング、FcRγ遺伝子の変異、または改変に加えて、FcRγの転写を調節する転写因子のような、FcRγ遺伝子発現または活性を増加させる分子を作用させることにより、FcRγタンパク質レベルを減少させることができる。一部の態様において、FcRγ鎖遺伝子の転写または翻訳を調節する遺伝子が、欠失、破壊、または変異されうる。これらの態様の一部において、遺伝子は、FcRγ鎖遺伝子の発現を調節する転写因子である。具体的には、FcRγ発現を正に調節する転写因子の阻害は、FcRγ発現の減少をもたらす。FcRγ転写を調節する転写因子は、HELIOSおよびPLZFを含む。
【0126】
当業者は、本明細書において記述されるものなどの、FcRγ鎖遺伝子または他の遺伝子を破壊するのに適した多くの方法があることを理解するであろう。例えば、FcRγ遺伝子座などの遺伝子座全体が欠失されうる。場合によっては、遺伝子の一部分、例えばエクソン、またはドメインを欠失することも適当である。具体的には、FcRγのITAMシグナル伝達ドメインが欠失されうる。あるいは、提供される方法は、不活性化変異のような、FcRγ遺伝子座などの遺伝子座に1つまたは複数のアミノ酸置換を導入する段階も含む。一部の態様において、FcRγ mRNAのような、mRNAに終止コドンを導入して、FcRγシグナル伝達アダプタのような発現遺伝子の切断型および/または不活化型を産生することができる。一部の態様において、FcRγシグナル伝達アダプタの発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるために、FcRγ遺伝子などの遺伝子の調節要素も変異または欠失させることができる。
【0127】
一部の態様において、遺伝子破壊は、部位特異的エンドヌクレアーゼを用い哺乳動物細胞において実施することができる。遺伝子の部位特異的欠失を可能にするエンドヌクレアーゼは、当技術分野において周知であり、TALヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Cas9、およびアルゴノートを含みうる。操作された部位特異的エンドヌクレアーゼを産生するための方法は、当技術分野において公知である。部位特異的エンドヌクレアーゼは、FcRγ鎖遺伝子などの特定の遺伝子を認識および欠失または改変するように操作することができる。
【0128】
1つの態様において、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ゲノム中の所定の部位を認識および切断するように操作することができる。ZFNは、Fokl制限酵素のヌクレアーゼドメインに融合されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。ジンクフィンガードメインを合理的または実験的手段により再デザインして、長さが約またはおよそ18塩基対の所定のDNA配列に結合するタンパク質を産生することができる。この操作されたタンパク質ドメインをFoklヌクレアーゼに融合することにより、ゲノムレベルの特異性でDNA切断をターゲティングすることが可能である。ZFNは、広範囲の真核生物における遺伝子の付加、除去、および置換を標的とするために広く使われてきた(S. Durai et al., Nucleic Acids Res 33, 5978 (2005)において概説されている)。
【0129】
他の態様において、TALエフェクタヌクレアーゼ(TALEN)を作製して、ゲノムDNA中の特定の部位を切断することができる。ZFNと同様に、TALENは、Fok1ヌクレアーゼドメインに融合した遺伝子操作された部位特異的DNA結合ドメインを含む(Mak, et al. (2013) Curr Opin Struct Biol. 23:93-9において概説されている)。しかしながら、この場合、DNA結合ドメインは、それぞれが単一のDNA塩基対を特異的に認識するTALエフェクタドメインのタンデムアレイを含む。ZFNおよびTALENはヘテロ二量体であり、細胞内での単一の機能ヌクレアーゼの産生には2つのタンパク質単量体の共発現が必要であるため、コンパクトTALENは二量体化の必要性を回避する代替エンドヌクレアーゼ構成を提供する(Beurdeley, et al. (2013) Nat Commun. 4: 1762)。コンパクトTALENは、I-TevIホーミングエンドヌクレアーゼからのヌクレアーゼドメインに融合した操作された部位特異的TALエフェクタDNA結合ドメインを含む。Foklとは異なり、I-TevIは二本鎖DNA切断を生じるために二量体化する必要がないため、コンパクトTALENは単量体として機能する。
【0130】
一部の態様において、CRISPR/Cas9システムに基づく操作されたエンドヌクレアーゼも当技術分野において公知であり、提供された方法のなかで利用して細胞を操作することができる(Ran, et al. (2013) Nat Protoc. 8:2281-2308; Mali et al. (2013) Nat Methods. 10:957-63)。CRISPRエンドヌクレアーゼは2つの構成要素: (1) カスパーゼエフェクタヌクレアーゼ、典型的には微生物Cas9; および(2) ヌクレアーゼをゲノム内の関心対象の位置へ向かわせる短い「ガイドRNA」を含む。一部の態様において、ガイドRNAはおよそ20ヌクレオチドのターゲティング配列を含む。異なるターゲティング配列をそれぞれが有する、複数のガイドRNAを同じ細胞内で発現させることにより、DNA切断を同時にゲノム内の複数の部位にターゲティングすることが可能である。CRISPR-Cas9を使用する方法は、当技術分野において周知である。
【0131】
一部の局面において、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指令するように、FcRγ、PLZF、HELIOS、SYK、DAB2、またはEAT2をコードする遺伝子のような、標的ポリヌクレオチド配列と十分な相補性を有する配列部分を少なくとも含む任意のポリヌクレオチド配列である。典型的には、CRISPR複合体の形成の文脈において、「標的配列」は一般に、ガイド配列が相補性を有するようにデザインされる配列をいい、ここで標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションはCRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があれば、必ずしも完全な相補性は必要とされない。一部の態様において、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、適当なアライメントアルゴリズムを用いて最適に整列される場合、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%もしくはそれ以上であるか、または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%もしくはそれ以上を超える。一部の態様において、ガイド配列内の二次構造の程度を低減させるようにガイド配列が選択される。二次構造は、任意の適当なポリヌクレオチド折畳みアルゴリズムによって判定されうる。
【0132】
一部の態様において、ガイド配列と組み合わせた(および任意で複合体化されてもよい) CRISPR酵素(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)が細胞に送達される。一部の態様において、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素はI型、II型、またはIII型CRISPRシステムに由来する。一部の態様において、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のような、内因性CRISPRシステムを含む特定の生物に由来する。
【0133】
本発明の1つの態様において、DNA切断誘導剤は、操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(「メガヌクレアーゼ」とも呼ばれる)である。ホーミングエンドヌクレアーゼは、植物および真菌のゲノムにおいて一般的に見られる15~40塩基対の切断部位を認識する天然に存在するヌクレアーゼの群である。それらは、1群自己スプライシングイントロンおよびインテインのような、寄生DNA要素と頻繁に関連付けられている。それらは、細胞DNA修復機構を動員する染色体中に二本鎖切断を生じさせることにより、宿主ゲノムにおける特定の位置で相同組み換えまたは遺伝子挿入を自然に促進する(Stoddard (2006), Q. Rev. Biophys. 38: 49-95)。ホーミングエンドヌクレアーゼは一般に、LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cysボックスファミリー、およびHNHファミリーの4つのファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を与える構造モチーフによって特徴付けられる。例えば、LAGLIDADGファミリーの成員は、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つまたは2つのコピーを有することによって特徴付けられる(Chevalier et al. (2001), Nucleic Acids Res. 29(18): 3757-3774を参照のこと)。LAGLIDADGモチーフの単一コピーを有するLAGLIDADGホーミングエンドヌクレアーゼはホモ二量体を形成するが、LAGLIDADGモチーフの2つのコピーを有する成員は単量体として見出される。
【0134】
FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を減少させる別の方法は、FcRγ PLZF、HELIOS、SYK、DAB2、またはEAT2遺伝子転写産物などの標的遺伝子転写産物を標的とする、例えば標的遺伝子転写産物に相補的である、阻害RNAなどの阻害核酸を細胞へ導入し、それによって遺伝子産物の発現を低減させる段階を伴う。例えば、核酸はFcRγ鎖mRNAを標的としうる。他の態様において、阻害核酸は、転写因子、例えばPLZFまたはHELIOS mRNAのような、FcRγ鎖遺伝子の転写または翻訳を調節する遺伝子のmRNAを標的としうる。一部の態様において、核酸は、SYK、DAB2、またはEAT-2 mRNAのような、FcRγ媒介シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子のmRNAを標的とする。
【0135】
本開示の主題は、RNAi技術(例えば、shRNA、siRNA、およびmiRNA分子、ならびにリボザイム)を利用して、細胞遺伝子の下方調節、つまりRNA干渉(RNAi)といわれるプロセスを引き起こす。本明細書において用いられる場合、「RNA干渉」(RNAi)は、低分子干渉RNA (siRNA)もしくは短ヘアピンRNA (shRNA)分子、miRNA分子、または合成ハンマーヘッドリボザイムによって媒介される配列特異的な転写後遺伝子サイレンシングのプロセスをいう。一般にはFire et al., Nature 391:806-811, 1998、および米国特許第6,506,559号を参照されたい。RNA干渉(RNAi)を介した転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を防ぐために進化した進化的に保存された細胞防御機構であると考えられている(Fire, Trends Genet 15:358-363, 1999)。
【0136】
一部の態様において、RNAをコードする核酸を含む組み換えウイルスを産生することができる。レトロウイルスベクターの操作は、当業者に公知である。そのような当業者は、本明細書におけるさらなる詳細な議論の必要なしに、本開示の主題で使用するための組み換えウイルス産生を最適化するのに必要とされる適切なウイルスおよびベクター構成要素の選択に関与する複数の要因を容易に理解するであろう。1つの非限定的な例として、siRNAを含むshRNAをコードするDNAを含むレトロウイルスを操作することができる。
【0137】
遺伝子発現は、永続的、一過的、または誘導的に低減されうる。適当な誘導システムは周知であり、重金属に応答する真核生物プロモーター、Lac/VP16、およびテトラサイクリンリプレッサシステムを含む。
【0138】
他方、例えば、遺伝子の不活性化を引き起こす欠失、置換、または挿入を有する細胞株を産生することにより、遺伝子の発現を永続的に低減させることが有益でありうる。
【0139】
レトロウイルスシステムを用いて、cDNAをNK細胞に導入することができる。真核細胞のトランスフェクションおよび原核細胞の形質転換の方法は、当技術分野において周知である。宿主細胞の選択により、関心対象のポリヌクレオチドを導入するための好ましい技法が決定付けられる。生物へのポリヌクレオチドの導入はまた、特定の生物に対して、もしあれば、確立された遺伝的技法と同様に、トランスフェクションのインビトロ法を用いるエクスビボ技法で行われうる。
【0140】
他のベクターおよびパッケージング細胞株が、NK細胞の遺伝的に改変された変種の調製において用いられており、本明細書において同等に用いることができる。レトロウイルス形質導入システムは、種々の遺伝子をNK細胞に形質導入するためにも成功裏に用いられている。例として、これらの代替方法は、FLYA13パッケージング細胞と組み合わせたp-JETベクター(Gerstmayer et al., 1999)、プラスミドに基づくkatレトロウイルス形質導入システム、およびDFG-hIL-2-neo/CRIP (Nagashima et al., 1998)を含むが、これらに限定されることはない。パッケージング細胞へのベクターのエレクトロポレーションおよび「遺伝子銃」導入も実践されている。Phoenix-Amphotropicパッケージング細胞株と組み合わせたpBMN-IRES-EGFPベクターの使用は、それがPhoenix-Amphotropic細胞トランスフェクションの高い効率を提供する; Moloney LTRプロモーターの使用が高レベルのCD16発現をもたらす; ウイルスが高力価で産生される; NK形質導入の効率がNK細胞を形質導入するために用いられている他のベクターよりも改善される; およびベクターがCD16 cDNAまたは代替の挿入断片を収容するのに十分な場所を提供するという点で、このおよび以下の実施例の目的に好都合である。pBMN-IRES-EGFPベクターには、遺伝子発現の内因性の代理マーカーとして使用できる強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の遺伝子がさらに組み込まれている。Phoenix細胞株は、このベクターを他のウイルス構成要素の産生とともにエピソーム型で安定的に発現し、かくして細胞が長期間安定してウイルスを産生できるようにする。
【0141】
遺伝子を細胞に導入および発現させる方法は、当技術分野において公知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、当技術分野における任意の方法により、宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0142】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入に好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0143】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒトの細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用される方法になった。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来することができる。例えば、米国特許第5,350,674号および同第5,585,362号を参照されたい。
【0144】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段は、コロイド分散系、例えば高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質に基づく系を含む。インビトロおよびインビボで送達媒体として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0145】
非ウイルス送達系が利用される場合、例示的な送達媒体はリポソームである。脂質製剤の使用は、核酸の宿主細胞への導入(インビトロ、エクスビボ、またはインビボ)のために企図される。別の局面において、核酸は脂質と結び付けられうる。脂質に結び付けられた核酸は、リポソームの水性内部にカプセル封入され、リポソームの脂質二重層内に散在され、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結び付けられる連結分子を介してリポソームに付着され、リポソームに封入され、リポソームと複合化され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中の懸濁液として含有され、ミセルを含むかもしくはミセルと複合化され、またはそれ以外の方法で脂質と結び付けられうる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは二層構造中に、ミセルとして、または「崩壊された」構造とともに存在しうる。それらはまた、単に溶液中に散在され、サイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成する可能性がありうる。脂質は、天然または合成脂質でありうる脂肪物質である。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪滴、ならびに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドのような、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物のクラスが含まれる。
【0146】
使用に適した脂質は、商業的供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma, St. Louis, Mo.から得ることができる; リン酸ジセチル(「DCP」)はK & K Laboratories (Plainview, N.Y.)から得ることができる; コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから得ることができる; ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc. (Birmingham, Ala.)から得られうる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で貯蔵することができる。クロロホルムはメタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として用いられる。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成された種々の単一および多重膜の脂質媒体を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有するものと特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰な水溶液に懸濁されると、自発的に形成される。脂質構成要素は、閉じた構造の形成の前に自己再配列を受け、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を封入する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかしながら、通常の小胞構造とは異なる溶液中構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質はミセル構造をとり、または脂質分子の不均一な凝集体として単に存在しうる。
【0147】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために、またはそうでなければ提供された方法によって細胞を操作するために用いられる方法に関係なく、宿主細胞内の組み換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイ法が行われうる。そのようなアッセイ法は、例えば、サザンおよびノザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRなどの当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ法、または例えば免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)により、特定のペプチドの存在もしくは非存在を検出するような「生化学的」アッセイ法を含む。
【0148】
操作された細胞の特徴
記述されている遺伝子の操作に関連する遺伝子産物の発現は、NK細胞の操作および/または培養に続いて、またはそれに関連して評価することができる。手順によって細胞が損傷されない限り、当業者に公知の任意の利用可能な手順を利用して遺伝子産物を検出することができる。例えば、NK細胞は、FcRγ発現と相関するなど、遺伝子産物の発現と相関する細胞表面マーカーの検出のためのフローサイトメトリーにより検出、同定、および/または単離することができる。FcRγタンパク質などの、記述されている遺伝子操作により発現を調節するための標的は、細胞を処理して、例えば固定および透過処理により、細胞内タンパク質を検出することを可能にしない限り容易に検出されない細胞内タンパク質である。
【0149】
一部の態様において、本明細書において提供される方法は、遺伝子操作されていないNK細胞での遺伝子産物の発現と比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%を超えて低減された、操作された細胞における特定の遺伝子産物の発現をもたらす。一部の態様において、本明細書において提供される方法は、遺伝子操作されていないNK細胞でのFcRγ鎖の発現と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%を超えてFcRγ鎖発現を低減させる。これらの態様の一部において、FcRγ鎖発現のレベルは免疫ブロットアッセイ法を用いて検出不能なレベルまで低減される。
【0150】
FcRγ鎖発現などの、記述されている遺伝子産物の発現は、種々の方法で測定することができる。例えば、RNA発現は、ノザンブロット、qPCR、およびFISHにより測定することができる。タンパク質発現も、例えばフローサイトメトリー、ウエスタンブロット、免疫組織化学、ELISAなどを用いて測定することができる。
【0151】
一部の局面において、提供される操作されたNK細胞は、CD16の抗体媒介架橋によりまたは抗体被覆細胞、例えば 抗体被覆腫瘍細胞により起こりうるような、抗体による活性化時に活性の増強を示す。一部の態様において、提供される操作されたNK細胞は、抗体または他のFc含有タンパク質の存在下で特に応答性があり、投与されたモノクローナル抗体、または腫瘍、ウイルス、もしくは微生物細胞に特異的な他のFc含有タンパク質と組み合わせた方法において用いることができる。場合によっては、提供される操作されたNK細胞は、g- NK細胞と同じまたは類似の特性または特徴を示し、これは、個人において少数で存在するが、人口の約3分の1のみにおいて存在するFcRγが欠損した特定のNK細胞サブセットである(例えば公開特許出願番号US2013/0295044を参照されたく; Hwang et al. (2012) Int. Immunol., 24:793-802およびLee et al. (2015) Cell Immunity, 42:431-442)も参照されたい)。
【0152】
一部の態様において、抗体のFc部分のCD16への結合およびADCCの開始により抗体の存在下で起こりうるような、CD16架橋によるCD16連結後に活性の増加が観察される。一部の態様において、活性の増加は、CD3ζ鎖のリン酸化、シグナル伝達分子、CA2+ 流出、細胞によるサイトカイン(例えばIFN-ガンマまたはTNF-α)の発現または分泌、操作された細胞によるケモカイン(MIP-1α、MIP-1β、またはRANTES)の発現または分泌、下方制御応答、グランザイムBの発現、および/または細胞傷害死滅化応答のモニタリングにより決定することができる。いくつかの周知のアッセイ法のいずれかを用いて、操作されたNK細胞の特性または活性を評価することができる(例えば、Hwang et al. (2012) Int. Immunology, 24:793-802; 公開特許出願番号US2013/0295044を参照のこと)。一部の態様において、CD16架橋または連結後の操作されたNK細胞の活性は、同じアッセイ法での、しかしCD16架橋または連結の非存在下での操作されたNK細胞の活性と比較して1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍もしくはそれ以上を超えて、または約1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍もしくはそれ以上を超えて、増加する。
【0153】
抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を評価するために、インビトロのアッセイ法が一般に利用される。1つの例において、標的細胞(例えば、評価されている抗体に適切な抗原を発現する細胞)にインジケータ材料(51Crなど)を負荷し、インジケータが負荷された標的細胞を評価される抗体で処理する。得られた細胞を、本明細書において記述されるようにNKエフェクタ細胞に曝露する。標的細胞の溶解はアッセイ上清へのインジケータ材料の放出により示され、ここでその濃度を、シンチレーションカウンティング(51Cr)または蛍光強度または寿命決定のような適当な方法によって測定することができる。同様に、NK細胞によるサイトカイン放出; CD25、CD69、および/もしくはCD95LなどのNK細胞活性化マーカーの上方制御; NF-ATもしくはNF-κBなどのNK細胞転写因子の活性化; または標的細胞におけるカスパーゼもしくはアポトーシスの他のマーカーの活性化などの代理インジケータの測定によって有効性を評価することができる。親NK細胞(遺伝子操作されていないNK細胞など)は、ADCCを介した細胞傷害性とNK細胞が標的細胞に及ぼす他の細胞溶解効果との区別を可能にするので対照として役立つ。
【0154】
一部の態様において、操作されたNK細胞は個体内で長期間持続することができ、それゆえ、治療効果を有するように細胞を投与する必要がある回数を減らすことができる。一部の態様において、本明細書において提供される操作された細胞は、投与後に少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも数ヶ月持続する。
【0155】
III. 操作されたNK細胞を含む組成物およびキット
提供される操作されたNK細胞を含む組成物が本明細書において提供される。これら組成物には、養子細胞療法のためのような、投与のための薬学的組成物および製剤が含まれる。一部の態様において、操作された細胞は、薬学的に許容される担体とともに製剤化される。
【0156】
薬学的に許容される担体は、薬学的投与に適合した、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことができる(Gennaro, 2000, Remington: The science and practice of pharmacy, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)。そのような担体または希釈剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されることはない。リポソームや、固定油などの非水性媒体も使用されうる。補助的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。薬学的担体は、生理食塩水溶液、デキストロース溶液、またはヒト血清アルブミンを含む溶液のような、NK細胞に適したものでなければならない。
【0157】
ある種の態様において、組成物中の細胞の数は、治療的に有効な量で操作されたNK細胞を提供する。一部の態様において、この量は、動物におけるがん、ウイルス感染症、微生物感染症、または敗血性ショックに関連する重症度、持続期間、および/または症状を低減する量である。ある種の他の態様において、治療的有効量は、組成物を投与されていない患者(もしくは動物)または患者(もしくは動物)の群におけるがんの成長もしくは拡散と比べて本明細書において記述される組成物を投与された患者もしくは動物における少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、がんの成長もしくは拡散の低減をもたらす細胞の用量である。一部の態様において、細胞傷害性の有効量は、がん、ウイルス、および微生物細胞の成長を阻害または低減することができる操作されたNK細胞の量と定義される。一部の態様において、組成物は、105~1012個の細胞、もしくは105~108個の細胞、もしくは106~1012個の細胞、もしくは108~1011個の細胞、もしくは109~1010個の細胞または約105~約1012個の細胞、もしくは約105~約108個の細胞、もしくは約106~約1012個の細胞、もしくは約108~約1011個の細胞、もしくは約109~約1010個の細胞である操作されたNK細胞の用量を含む。一部の態様において、組成物は、105個、106個、107個、108個、109個、1010個、1011個もしくは1012個超または約105個、約106個、約107個、約108個、約109個、約1010個、約1011個もしくは約1012個超の細胞を含む。
【0158】
一部の態様において、組成物の容量は、少なくとももしくは少なくとも約10 mL、50 mL、100 mL、200 mL、300 mL、400 mL、もしくは500 mLであり、例えば、それぞれ両端の値を含めて、10 mL~500 mL、10 mL~200 mL、10 mL~100 mL、10 mL~50 mL、50 mL~500 mL、50 mL~200 mL、50 mL~100 mL、100 mL~500 mL、100 mL~200 mL、もしくは200 mL~500 mL、または約10 mL~500 mL、10 mL~200 mL、10 mL~100 mL、10 mL~50 mL、50 mL~500 mL、50 mL~200 mL、50 mL~100 mL、100 mL~500 mL、100 mL~200 mL、もしくは200 mL~500 mLである。一部の態様において、組成物は、少なくとももしくは少なくとも約1×105細胞/mL、5×105細胞/mL、1×106細胞/mL、5×106細胞/mL、1×107細胞/mL、5×107細胞/mL、または1×108細胞/mLの細胞密度を有する。一部の態様において、組成物の細胞密度は、それぞれ両端の値を含めて、1×105細胞/mL~1×108細胞/mL、1×105細胞/mL~1×107細胞/mL、1×105細胞/mL~1×106細胞/mL、1×106細胞/mL~1×107細胞/mL、1×106細胞/mL~1×108細胞/mL、1×106細胞/mL~1×107細胞/mL、もしくは1×107細胞/mL~1×108細胞/mL、または約1×105細胞/mL~1×108細胞/mL、1×105細胞/mL~1×107細胞/mL、1×105細胞/mL~1×106細胞/mL、1×106細胞/mL~1×107細胞/mL、1×106細胞/mL~1×108細胞/mL、1×106細胞/mL~1×107細胞/mL、もしくは1×107細胞/mL~1×108細胞/mLである。
【0159】
NK細胞を操作する方法に応じて、NK細胞を培養してそれらを増殖させた後に、それらを投与用組成物として製剤化することが必要または望ましくありうる。態様の一部において、操作されたNK細胞を含む組成物を作製する方法は、NK細胞を、それを必要とする個体に投与する前に細胞を治療的有効量に増殖させるためになど、操作されたNK細胞を培養またはインキュベートする段階を含む。
【0160】
NK細胞を培養および増殖させるための適当な方法は公知である。例えば、NK細胞は、フィーダー細胞を用いて、またはサイトカインの存在下で培養して、その成長および/または活性化を増強しうる。本明細書において用いられる場合、「培養する」とは、NK細胞の維持に必要とされる化学的および物理的条件(例えば、温度、ガス)、および成長因子を提供することを含む。1つの態様において、NK細胞を培養することは、NK細胞に増殖のための条件を提供することを含む。NK細胞の増殖を支持しうる化学的条件の例としては、緩衝液、栄養素、血清、ビタミン、および抗生物質、ならびにサイトカインおよび成長(すなわち、培養)培地中に通常提供される他の成長因子が挙げられるが、これらに限定されることはない。1つの態様において、NK培地は、10% FCSを含むMEMαまたは5% Human Serum/LiforCell(登録商標) FBS Replacement (Lifeblood Products)を含むCellGro SCGM (Cell Genix)を含む。本発明での使用に適した他の培地は、グラスコー(Glascow's)培地(Gibco Carlsbad Calif.)、RPMI培地(Sigma-Aldrich, St Louis Mo.)、またはDMEM (Sigma-Aldrich, St Louis Mo.)を含むが、これらに限定されることはない。なお、培地の多くはニコチンアミドをビタミンサプリメントとして含有し、例えば、MEMα (8.19μMニコチンアミド)、RPMI (8.19μMニコチンアミド)、DMEM (32.78μMニコチンアミド)、およびグラスコー培地(16.39μMニコチンアミド)である。
【0161】
細胞がヒト対象に導入(または再導入)される用途の場合などの一部の態様において、リンパ球培養用のAIM V(商標)無血清培地またはMARROWMAX(商標)骨髄培地などの無血清製剤を用いて培養が行われる。そのような培地製剤およびサプリメントは、Invitrogen (GIBCO) (Carlsbad, Calif.)のような商業的供給源から利用可能である。最適な生存性、増殖、機能性、および/または生存を促進するために、培養物にアミノ酸、抗生物質、および/またはサイトカインを補充することができる。
【0162】
一部の態様において、操作されたNK細胞を含む細胞集団の培養は、フィーダー層またはフィーダー細胞なしで達成される。これらの態様の一部において、操作されたNK細胞を成長因子とともに培養することができる。一部の態様によれば、少なくとも1つの成長因子は、SCF、FLT3、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、およびIL-21からなる群より選択される成長因子を含む。一部の態様によれば、少なくとも1つの成長因子は、IL-2またはIL-2およびIL-15である。一部の態様によれば、少なくとも1つの成長因子はIL-2のみである。
【0163】
一部の態様において、提供される組成物は、細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達が低減されている操作されたNK細胞などの遺伝子操作されたNK細胞が、組成物中で、細胞のまたは組成物中のNK細胞の少なくともまたは少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上を構成するものを含む。
【0164】
操作されたNK細胞を凍結保存するのに適した組成物も本明細書において提供される。一部の態様において、組成物は、操作されたNK細胞および抗凍結剤を含む。一部の態様において、抗凍結剤は、DMSOおよび/もしくはグリセロールであり、またはDMSOおよび/もしくはグリセロールを含む。一部の態様において、凍結保存用に製剤化された組成物は超低温のような低温で貯蔵することができ、例えば、温度での貯蔵は、-40℃から-150℃、例えばまたは約80℃±6.0℃に及ぶ。
【0165】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、患者への投与の前に超低温で保存することができる。操作されたNK細胞は、哺乳動物対象からの単離後におよび遺伝子操作の前に超低温で保存することもできる。例えば、リンパ球または操作されたNK細胞の別の供給源を単離し、超低温で貯蔵してから、処理して操作されたNK細胞を得ることができる。あるいは、リンパ球または操作されたNK細胞の別の供給源を単離し、処理して操作されたNK細胞を得てから、超低温で貯蔵することができる。
【0166】
小規模で超低温での保存のための典型的な方法は、例えば、米国特許第6,0168,991号に記述されている。小規模の場合、細胞は、事前に冷却された5%ヒトアルブミン血清(HAS)の低密度懸濁液(例えば、約200×106/mlの濃度で)により超低温で保存することができる。等量の20% DMSOをHAS溶液に添加することができる。混合物のアリコートをバイアルに入れ、約-80℃の超低温チャンバ内で終夜凍結することができる。
【0167】
一部の態様において、凍結保存されたNK細胞は、融解により投与のために調製される。場合によっては、融解直後にNK細胞を対象に投与することができる。そのような態様において、組成物は、さらなる処理なしですぐに使える。他の場合、NK細胞は融解後、例えば薬学的に許容される担体との再懸濁、活性化剤もしくは刺激剤とのインキュベーションによりさらに処理され、または活性化され洗浄され、対象への投与前に薬学的に許容される緩衝液に再懸濁される。
【0168】
操作された細胞を含むキットも本明細書において提供される。例えば、一部の態様において、操作された細胞およびさらなる作用物質を含むキットが本明細書において提供される。一部の態様において、さらなる作用物質はFcドメインを含む。一部の態様において、さらなる作用物質は、Fc融合タンパク質または抗体である。一部の態様において、さらなる作用物質は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。これらの態様の一部において、さらなる作用物質は完全長抗体である。例示的な抗体は以下に記述されている。
【0169】
IV. 処置の方法
一部の態様において、操作されたNK細胞を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、個体における状態を処置する方法が本明細書において提供される。
【0170】
一部の態様において、本方法は、有効量の操作された細胞を個体に投与する段階を含む。一部の態様において、105~1012個の細胞、もしくは105~108個の細胞、もしくは106~1012個の細胞、もしくは108~1011個の細胞、もしくは109~1010個の細胞または約105~約1012個の細胞、もしくは約105~約108個の細胞、もしくは約106~約1012個の細胞、もしくは約108~約1011個の細胞、もしくは約109~約1010個の細胞である。一部の態様において、組成物は、約105、約106、約107、約108、約109、約1010、約1011、または約1012個の細胞を含み、それらが個体に投与される。一部の態様において、106~1010個の操作されたNK細胞/kgまたは約106~1010個の操作されたNK細胞/kgが対象に投与される。
【0171】
一部の態様において、操作されたNK細胞は、NK細胞の単離および操作の直後に個体に投与される。一部の態様において、操作されたNK細胞は、単離および操作から1、2、3、4、5、6、7、14、21、または28日以内に個体に投与される。
【0172】
他の態様において、操作されたNK細胞は、上記の方法によるような、投与および/または操作の前に、貯蔵される、または培養での成長により増殖される。例えば、NK細胞は、操作および/または個体への投与の前に、6、12、18、または24ヶ月超の間、貯蔵することができる。
【0173】
場合によっては、NK細胞のクローン細胞株はがん細胞に由来し、かくして患者への投与時に制御不能に分裂しうる。一部の態様において、クローン細胞株からのものなどの操作されたNK細胞は、制御不能に分裂することを防ぐために、対象への投与の前に照射されうる。
【0174】
操作されたNK細胞は、皮下、筋肉内、静脈内、および/または硬膜外投与経路のような非経口経路を含む任意の好都合な経路によって対象に投与することができる。
【0175】
提供される操作されたNK細胞および組成物は、腫瘍もしくは過剰増殖性障害または微生物感染症、例えばウイルス感染症、酵母感染症、真菌感染症、原虫感染症、および/または細菌感染症を有する個体を処置する方法において用いることができる。操作された細胞で対象を処置する開示された方法は、抗腫瘍抗原または抗がん抗体、抗ウイルス抗体もしくは抗菌抗体のような、治療用モノクローナル抗体と組み合わせることができる。操作されたNK細胞は、哺乳動物、例えばヒト対象のような、動物の処置のために投与することができる。
【0176】
いくつかの例では、本方法は、血液悪性腫瘍または固形腫瘍などの過剰増殖性障害を処置する段階を含む。本明細書において記述される組成物で処置できるがんおよび増殖性障害の種類の例としては、白血病(例えば、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、および慢性リンパ性白血病が含まれるが、これらに限定されない))、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、ユーイング腫瘍、結腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮細胞がん、基底細胞がん、腺がん、腎細胞がん、肝がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星細胞腫、乏突起膠腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、異形成、ならびに過形成が挙げられるが、これらに限定されることはない。がんの処置および/または予防は、がんに関連する1つもしくは複数の症状の緩和、がんの進行の阻害もしくは低減、がんの退縮の促進、ならびに/または免疫応答の促進を含むが、これらに限定されることはない。
【0177】
いくつかの例では、本方法は、体内のウイルスの存在によって引き起こされる感染症などのウイルス感染症を処置する段階を含む。ウイルス感染症は慢性または持続性ウイルス感染症を含み、これは、致命的であることが証明されるまで長時間にわたり、通常は数週間、数ヶ月、または数年にわたり宿主に感染し、宿主の細胞内で複製しうるウイルス感染症である。本発明によって処置されうる慢性感染症を引き起こすウイルスは、例えば、どれもが重要な臨床疾患を生じうる、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペス、および他のヘルペスウイルス、B型およびC型肝炎のウイルス、ならびに他の肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、および麻疹ウイルスを含む。長期感染は、最終的に、例えばC型肝炎ウイルス肝がんの場合、患者にとって致命的でありうる、疾患の誘発につながりうる。本発明によって処置されうる他の慢性ウイルス感染は、エプスタインバーウイルス(EBV)、ならびに腫瘍に関連しうるものなどの他のウイルスを含む。
【0178】
本明細書において記述される組成物および方法で処置または予防できるウイルス感染症の例としては、レトロウイルス(例えば、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス(HTLV) I型およびII型ならびにヒト免疫不全ウイルス(HIV))、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV) I型およびII型、エプスタインバーウイルスならびにサイトメガロウイルス)、アレナウイルス(例えば、ラッサ熱ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルス属ウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、およびニューモウイルス)、アデノウイルス、ブニヤウイルス(例えば、ハンタウイルス)、コルナウイルス、フィロウイルス(例えば、エボラウイルス)、フラビウイルス(C型肝炎ウイルス(HCV)、黄熱ウイルス、日本脳炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス(HBV))、オルソミクソウイルス(orthomyoviruses) (例えば、センダイウイルスならびにインフルエンザウイルスA、B、およびC)、パポバウイルス(例えば、パピローマウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス、エンテロウイルス、およびA型肝炎ウイルス)、ポックスウイルス、レオウイルス(例えば、ロタウイルス)、トガウイルス(例えば、風疹ウイルス)、ならびにラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)によって引き起こされるウイルス感染症が挙げられるが、これらに限定されることはない。ウイルス感染症の処置および/または予防は、感染症に関連する1つもしくは複数の症状の緩和、ウイルス複製の阻害、低減もしくは抑制、および/または免疫応答の増強を含むが、これらに限定されることはない。
【0179】
一部の態様において、組成物は、酵母感染症または細菌感染症を処置する方法において用いられる。例えば、本明細書において記述される組成物および方法は、化膿連鎖球菌、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、淋菌(Neisseria gonorrhoea)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、臭鼻菌(Klebsiella ozaenae)、鼻硬腫菌(Klebsiella rhinoscleromotis)、黄色ブドウ球菌、コレラ菌(Vibrio cholera)、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、カンピロバクター(ビブリオ)胎児(Campylobacter (Vibrio) fetus)、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacterjejuni)、アエロモナス細菌(Aeromonas hydrophila)、セレウス菌(Bacillus cereus)、エドワジェラタルダ(Edwardsiella tarda)、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、フランベジアトレポネーマ(Treponemapertenue)、トレポネーマカラテネウム(Treponema carateneum)、ヴァンサンボレリア(Borrelia vincentii)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、黄だん出血病レプトスピラ(Leptospira icterohemorrhagiae)、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、ニューモシスティスカリニ(Pneumocystis carinii)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ウシ流産菌(Brucella aborts)、ブタ流産菌(Brucella suis)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、マイコプラズマ種(Mycoplasma spp.)、発疹チフスリケッチア(Rickettsiaprowazeki)、オリエンティアツツガムシ(Rickettsia tsutsugumushi)、クラミジア種(Chlamydia spp.)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、またはそれらの組み合わせに関連する感染症を処置することができる。
【0180】
V. 併用療法
一部の態様において、本操作NK細胞は、抗体またはFc含有タンパク質によって活性化される場合に増強された活性を示す。例えば、操作された細胞は、CD16の抗体媒介架橋により、または抗体被覆腫瘍細胞により活性化することができる。
【0181】
一部の態様において、操作されたNK細胞および抗体を投与する段階を含む、個体における状態を処置する方法が本明細書において提供される。当業者は、適切な治療用(例えば、抗がん)モノクローナル抗体を選択して、個体の特定の疾患または状態に応じてなど、本明細書において記述される操作されたNK細胞とともに対象に投与することができる。適当な抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、断片(Fab断片のような)、単鎖抗体、および他の形態の特異的結合分子を含みうる。
【0182】
Abはさらに、ヒト化AbまたはヒトAbを含みうる。非ヒトAbのヒト化型は、非ヒトIgに由来する最小配列を含むキメラIg、Ig鎖または断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2またはAbの他の抗原結合部分配列のような)である。一部の態様において、抗体はFcドメインを含む。
【0183】
一般に、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は「インポート」残基といわれることが多く、これは通常「インポート」可変ドメインから取得される。ヒト化は、げっ歯類CDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応配列に置き換えることによって達成される(Jones et al., 1986; Riechmann et al., 1988; Verhoeyen et al., 1988)。そのような「ヒト化」AbはキメラAb (1989)であり、無傷に実質的に満たないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。実際には、ヒト化Abは通常、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFc残基がげっ歯類Ab中の類似部位からの残基で置換されているヒトAbである。ヒト化Abは、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、マウス、ラット、またはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基で置き換えられたヒトIg (レシピエント抗体)を含み、所望の特異性、親和性、および能力を有する。場合によっては、対応する非ヒト残基がヒトIgのFvフレームワーク残基に取って代わる。ヒト化Abは、レシピエント抗体にも、インポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含みうる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの、可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全てではないとしてもほとんどが非ヒトIgのものに対応し、FR領域の全てではないとしてもほとんどがヒトIgコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、Ig定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒトIgのものを最適に含む(Jones et al., 1986; Presta, 1992; Riechmann et al., 1988)。
【0184】
ヒトAbは、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom et al., 1991; Marks et al., 1991)およびヒトmAbの調製(Boerner et al., 1991; Reisfeld and Sell, 1985)を含む、さまざまな技法を用いて産生することもできる。同様に、内因性Ig遺伝子が部分的または完全に不活性化されたトランスジェニック動物へのヒトIg遺伝子の導入は、ヒトAbを合成するために活用することができる。抗原投与により、ヒト抗体の産生が観察され、これは遺伝子再構成、アセンブリ、および抗体レパートリーを含めて、あらゆる点でヒトに見られるものとよく似ている(1997a; 1997b; 1997c; 1997d; 1997; 1997; Fishwild et al., 1996; 1997; 1997; 2001; 1996; 1997; 1997; 1997; Lonberg and Huszar, 1995; Lonberg et al., 1994; Marks et al., 1992; 1997; 1997; 1997)。
【0185】
具体的には、本発明の細胞は、腫瘍関連抗原を認識する抗体とともに投与することにより、腫瘍をターゲティングすることができる。当業者は、本発明の操作されたNK細胞が、腫瘍関連抗原を認識する多種多様な抗体とともに用いるのに適していることを理解するであろう。腫瘍関連抗原の非限定的な例としては、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-アルファ、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、散乱因子(scatter factor)受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケラチン(cytokerain)、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2 (HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-アルファ、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7 (CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチン、またはテネイシンが挙げられる。場合によっては、抗体は、抗CD20抗体、抗HER2抗体、抗CD52抗体、抗EGFR抗体、および抗CD38抗体である。例示的な抗体としては、リツキシマブ、トラスツズマブ、アレツズマブ、サーツキシマブ、ダラツムマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ユブリツキシマブ、オカラツズマブが挙げられる。選択されたがん型に特異的な抗体を選択することができ、それにはがんの処置のために承認されている抗体が含まれる。例としては、乳がん用のトラスツズマブ(ハーセプチン)、リンパ腫用のリツキシマブ(リツキサン)、および頭頸部扁平上皮がん用のセツキシマブ(エルビタックス)が挙げられる。当業者は、特定の腫瘍または疾患抗原に結合することができるFDA承認のモノクローナル抗体に精通しており、そのいずれも腫瘍または疾患を処置するために提供された方法に従って用いることができる。
【0186】
操作されたNK細胞およびさらなる作用物質は、連続的にまたは同時に投与することができる。一部の態様において、さらなる作用物質は、操作されたNK細胞の投与前に投与することができる。一部の態様において、さらなる作用物質は、NK細胞の投与後に投与することができる。例えば、操作されたNK細胞は、選択されたがん型に特異的な抗体と同時に投与することができる。あるいは、操作されたNK細胞は、選択されたがん型に特異的な抗体が投与される時間とは異なる選択された時間に投与することができる。
【0187】
特定の例において、対象は、操作されたNK細胞の集団の前に、後に、またはそれと実質的に同時に抗体の有効用量を投与される。いくつかの例において、対象は約0.1 mg/kg~約100 mg/kgの抗体(約0.5~10 mg/kg、約1~20 mg/kg、約10~50 mg/kg、約20~100 mg/kg、例えば、約0.5 mg/kg、約1 mg/kg、約2 mg/kg、約3 mg/kg、約4 mg/kg、約5 mg/kg、約8 mg/kg、約10 mg/kg、約16 mg/kg、約20 mg/kg、約24 mg/kg、約36 mg/kg、約48 mg/kg、約60 mg/kg、約75 mg/kg、または約100 mg/kgなど)を投与される。熟練した臨床医は、特定の抗体、特定の疾患または状態(例えば腫瘍または他の障害)、対象の一般的な状態、対象が受けているまたは以前に受けていた任意のさらなる処置、および他の関連因子を考慮して、抗体の有効量を選択することができる。対象には、本明細書において記述される改変されたNK細胞の集団も投与される。抗体と改変NK細胞集団の両方が、典型的には非経口的に、例えば静脈内に投与される; しかし、腫瘍もしくは腫瘍の近くへの注射もしくは注入(局所投与)または腹腔への投与を用いることもできる。当業者は、適切な投与経路を決定することができる。
【0188】
操作されたNK細胞は、抗菌剤、抗ウイルス剤、および他の治療薬と同時にまたは連続的に投与することもできる。本発明の一部の態様において、操作された細胞は、サイトカインおよび/または成長因子と組み合わせて個体に投与することができる。本発明の一部の態様によれば、少なくとも1つの成長因子は、SCF、FLT3、IL-2、IL-7、IL-15、IL-12、およびIL-21からなる群より選択される成長因子を含む。一部の態様において、操作されたNK細胞およびサイトカインまたは成長因子は連続的に投与される。例えば、操作されたNK細胞が最初に投与され、続いてサイトカインおよび/または成長因子の投与が行われうる。一部の態様において、操作されたNK細胞は、サイトカインまたは成長因子と同時に投与される。
【0189】
一部の態様において、NK細胞の生存および/または成長を支持するために、対象に1種または複数種のサイトカイン(IL-2、IL-15、IL-21、および/またはIL-12など)が投与される。サイトカインは、NK細胞の前に、後に、またはそれと実質的に同時に投与することができる。いくつかの例では、サイトカインはNK細胞の後に投与することができる。1つの特定の例では、サイトカインはNK細胞の投与の約1~8時間以内に(例えば、約1~4時間、約2~6時間、約4~6時間、または約5~8時間以内に)対象に投与される。
【0190】
一部の態様において、提供される方法は、化学療法剤と組み合わせて、操作されたNK細胞を個体に投与する段階を含むこともできる。一部の態様において、化学療法剤は、シクロホスファミド、フルダラビン、メチルプレドニゾンを含みうる。一部の態様において、化学療法剤は、サリドマイド、シスプラチン(シス-DDP)、オキサリプラチン、カルボプラチン、アントラセンジオン、ミトキサントロン; ヒドロキシ尿素、メチルヒドラジン誘導体、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン, MM)、副腎皮質抑制剤、ミトタン(.オミクロン., rho.'-DDD)、アミノグルテチミド、RXRアゴニスト、ベキサロテン、チロシンキナーゼ阻害剤、イマチニブ、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、クロラムブシル、エチレンイミン、メチルメラミン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、セムスチン(メチル-CCNTJ)、ロムスチン(CCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、DNA合成アンタゴニスト、リン酸エストラムスチン、トリアジン、ダカルバジン(OTIC, ジメチル-トリアゼノイミダゾールカルボキサミド)、テモゾロミド、葉酸類似体、メトトレキサート(アメトプテリン)、ピリミジン類似体、フルオロウラシン(fiuorouracin) (5-フルオロウラシル、5-FU、5FTJ)、フロクスウリジン(フルオロデオックス > 'ウリジン、FUdR)、シタラビン(シトシンアラビノシド)、ゲムシタビン、プリン類似体、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)、ペントスタチン(2'-デオキシコホルマイシン、デオキシコホルマイシン)、クラドリビンおよびフルダラビン、トポイソメラーゼ阻害剤、アムサクリン、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル(アブラキサン(登録商標))、ドセタキセル(タキソテール(登録商標)); エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンC)、イダルビシン、エピルビシン、ブセレリン、アドレノコルチコステロイド、プレドニゾン、プロゲスチン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール、タモキシフェン、アナストロゾール; プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、フルタミド、ビカルタミド、ならびにロイプロリドからなる群より選択される。
【0191】
一部の態様において、がん薬はサリドマイドまたはその誘導体である。一部の態様において、がん薬は、シスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンからなる群より選択される。ある種の態様において、がん薬は、パクリタキセル、アブラキサン(登録商標)、およびタキソテール(登録商標)からなる群より選択される。1つの態様において、化学療法剤は、アスパラギナーゼ、ベバシズマブ、ブレオマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、5-フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、ストレプトゾシン、および6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ならびにゲムシタビンからなる群より選択される。
【0192】
VI. 例示的態様
本明細書で提供される態様には以下が含まれる。
1. 操作されたナチュラルキラー(NK)細胞であって、該細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させるように遺伝子操作されている、前記操作されたNK細胞。
2. FcRγ鎖をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/または操作されたNK細胞におけるFcRγ鎖の発現の低減をもたらす遺伝的破壊;
FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはFcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝的破壊; ならびに/あるいは
FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝的破壊
を含む、態様1の操作されたNK細胞。
3. 遺伝的破壊が、遺伝子中の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす欠失、変異、および/または挿入を含む、態様2の操作されたNK細胞。
4. FcRγ鎖をコードする遺伝子、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子の両対立遺伝子が、操作されたNK細胞において破壊されている、態様2または態様3の操作されたNK細胞。
5. FcRγ鎖の発現の低減、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらすNK細胞における遺伝子を標的とする阻害核酸分子を含む、態様1の操作されたNK細胞。
6. FcRγ鎖、FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質、および/またはFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現が、遺伝子操作されていないNK細胞でのタンパク質の発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減されている、態様2~5のいずれかの操作されたNK細胞。
7. FcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質の発現が、操作されたNK細胞において低減されており、該タンパク質が転写因子である、態様2~6のいずれかの操作されたNK細胞。
8. 転写因子がPLZF (ZBTB16)またはHELIOS (IKZF2)である、態様7の操作されたNK細胞。
9. FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現が、操作されたNK細胞において低減されており、該タンパク質が下流シグナル伝達分子である、態様2~6のいずれかの操作されたNK細胞。
10. 下流シグナル伝達分子が、SYK、DAB2、またはEAT-2である、態様9の操作されたNK細胞。
11. FcRγ鎖の発現が、前記操作された細胞において低減されている、態様2~6のいずれかの操作されたNK細胞。
12. FcRγ鎖をコードする遺伝子における遺伝的破壊を含む操作されたNK細胞であって、FcRγの発現が該細胞において低減されている、前記操作されたNK細胞。
13. 遺伝的破壊が、遺伝子中の未成熟終止コドンまたは遺伝子の読み取り枠のフレームシフトをもたらす欠失、変異、および/または挿入を含む、態様12の操作されたNK細胞。
14. FcRγ鎖をコードする遺伝子の両対立遺伝子が、操作されたNK細胞のゲノムにおいて破壊されている、態様12または態様13の操作されたNK細胞。
15. FcRγ鎖をコードする遺伝子を標的とする阻害核酸分子を含む、態様1、5、または6のいずれかの操作されたNK細胞。
16. 阻害核酸分子が、FcRγ鎖をコードする遺伝子に相補的な配列を含む、態様15の操作されたNK細胞。
17. FcRγ鎖の発現が、遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減されている、態様11~16のいずれかの操作されたNK細胞。
18. 阻害核酸がRNA干渉剤を含む、態様5~6および15~17のいずれかの操作されたNK細胞。
19. 阻害核酸が、siRNA、shRNA、またはmiRNAを含む、態様5~6および15~18のいずれかの操作されたNK細胞。
20. FcRγの発現、活性、および/またはシグナル伝達の低減が、永続性、一過性、または誘導性である、態様1~19のいずれかの操作されたNK細胞。
21. FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達が、遺伝子操作されていないNK細胞での発現、活性、および/またはシグナル伝達と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減されている、態様1~20のいずれかの操作されたNK細胞。
22. 前記細胞において発現されるFcRγ鎖の発現が、免疫ブロットアッセイ法で検出不能である、態様1~21のいずれかの操作されたNK細胞。
23. 操作されたNK細胞の表面にCD16が発現されている、態様1~22のいずれかの操作されたNK細胞。
24. CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖を発現する、態様1~23のいずれかの操作されたNK細胞。
25. 対象から得られた初代細胞に由来する、態様1~24のいずれかの操作されたNK細胞。
26. 対象がヒトである、態様25の操作されたNK細胞。
27. クローン細胞株に由来する、態様1~24のいずれかの操作されたNK細胞。
28. クローン細胞株が、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である、態様27の操作されたNK細胞。
29. 組み換えもしくは異種CD16遺伝子および/または組み換えもしくは異種CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖を含む、態様1~28のいずれかの操作されたNK細胞。
30. CD16が、CD16活性化変異、IgG1に対するさらに高い親和性をもたらす変異、158V変異および/または158F変異を含む、態様29の操作されたNK細胞。
31. 操作されたNK細胞が、改変のないNK細胞と比べてCD16を通じて刺激された場合に活性の増加を示す、態様1~30のいずれかの操作された細胞。
32. 改変のないNK細胞と比べてNKp46、NKp30、および/またはNKp44の表面発現が低減されている、態様1~31のいずれかの操作されたNK細胞。
33. NK細胞を遺伝子操作して、該細胞におけるFcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達を低減させる段階を含む、操作されたNK細胞を産生する方法。
34. 発現を低減させる段階が、
FcRγ鎖をコードする遺伝子を破壊もしくは抑制すること、および/またはNK細胞におけるFcRγ鎖の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊もしくは抑制すること;
FcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質をコードする遺伝子を破壊もしくは抑制すること、および/またはNK細胞におけるFcRγ鎖の発現もしくは活性を調節するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊もしくは抑制すること; ならびに/あるいは
FcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする遺伝子を破壊もしくは抑制すること、および/またはNK細胞におけるFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質の発現の低減をもたらす遺伝子を破壊もしくは抑制すること
を含む、態様33の方法。
35. 前記遺伝子に欠失、変異、または挿入を導入する段階を含む、態様33または態様34の方法。
36. 前記遺伝子がFcRγ鎖をコードする、態様33~35のいずれかの方法。
37. 前記遺伝子が、転写因子であるFcRγ鎖の発現または活性を調節するタンパク質をコードする、態様33~35のいずれかの方法。
38. 転写因子がPLZFまたはHELIOSである、態様37の方法。
39. 前記遺伝子が、下流シグナル伝達分子であるFcRγ鎖依存性シグナル伝達に関与するタンパク質をコードする、態様33~35のいずれかの方法。
40. 下流シグナル伝達分子が、SYK、DAB2、またはEAT2である、態様38の方法。
41. 遺伝子の破壊または抑制が、遺伝子の破壊または抑制を可能にする条件の下で、NK細胞における遺伝子を標的とするエンドヌクレアーゼを導入することにより行われる、態様33~40のいずれかの方法。
42. エンドヌクレアーゼが、TALヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Cas9、およびアルゴノートからなる群より選択される、態様41の方法。
43. 破壊または抑制が、遺伝子の抑制をもたらす条件の下で、遺伝子を標的とする阻害核酸をNK細胞に導入することにより行われる、態様33~40のいずれかの方法。
44. 阻害核酸分子が、FcRγ鎖をコードする遺伝子に相補的な配列を含む、態様43の方法。
45. 阻害核酸がRNA干渉剤を含む、態様43または態様44の方法。
46. 核酸が、siRNA、shRNA、またはmiRNAである、態様43~45のいずれかの方法。
47. 発現の低減が、永続性、一過性、または誘導性である、態様33~46のいずれかの方法。
48. FcRγ鎖の発現、活性、および/またはシグナル伝達が、遺伝子操作されていないNK細胞での発現と比較して50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、または約50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を超えて、低減される、態様33~47のいずれかの方法。
49. FcRγ鎖の発現レベルが、免疫ブロットアッセイ法で検出不能である、態様33~48のいずれかの方法。
50. 前記遺伝子操作の前に、ヒト対象からNK細胞を単離する段階を含む、態様33~49のいずれかの方法。
51. 末梢血単核細胞(PBMC)からNK細胞を単離する段階を含む、態様50の方法。
52. NK細胞を単離する段階が、NK細胞マーカーを用いてPBMCからNK細胞を選択することを含む、態様50または51の方法。
53. NK細胞マーカーが、CD56、Cd161、KIR、NKG2A、NKG2D、NKp30、NKp44、および/またはNKp46である、態様52の方法。
54. CD16および/またはCD3ζを発現するNK細胞を選択する段階をさらに含む、態様50~53のいずれかの方法。
55. 表面CD3を発現しないNK細胞を選択する段階をさらに含む、態様50~54のいずれかの方法。
56. NK細胞がNK細胞株である、態様33~49のいずれかの方法。
57. 細胞株が、NK-92、NK-YS、KHYG-1、NKL、NKG、SNK-6、またはIMC-1である、態様56の方法。
58. NK細胞株を操作して組み換えまたは異種CD16および/またはCD3ζを発現させる段階をさらに含む、態様56または態様57の方法。
59. CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞に導入する段階を含む、態様58の方法。
60. CD16遺伝子が活性化変異および/またはIgGに対するCD16の親和性を増加させる変異を含む、態様58または態様59の方法。
61. CD16が、158Vである変異を含む、態様58~60のいずれかの方法。
62. CD16が、158Fである変異を含む、態様58~60のいずれかの方法。
63. CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞にウイルス形質導入する段階を含む、態様58~62のいずれかの方法。
64. CD16および/またはCD3ζをコードする核酸をNK細胞にトランスフェクションする段階を含む、態様58~62のいずれかの方法。
65. 前記NK細胞においてCD16またはCD3ζを一過的に、誘導的に、または永続的に発現させる段階を含む、態様58~64のいずれかの方法。
66. 操作されたNK細胞を培養する段階または増殖させる段階をさらに含む、態様33~65のいずれかの方法。
67. 操作されたNK細胞をフィーダー細胞とともに培養する段階を含む、態様66の方法。
68. 操作されたNK細胞をサイトカインとともに培養する段階を含む、態様66または態様67の方法。
69. 態様33~68のいずれかの方法によって産生された、操作されたNK細胞。
70. 態様1~32または69のいずれかの操作されたNK細胞の有効量を含む、組成物。
71. 薬学的に許容される担体をさらに含む、態様70の組成物。
72. 担体が、生理食塩水溶液、デキストロース溶液、または5%ヒト血清アルブミンである、態様71の組成物。
73. 1×105~1×108個の細胞/mLを含む、態様70~72のいずれかの組成物。
74. 抗凍結剤を含む、態様70~73のいずれかの組成物。
75. 態様1~32もしくは69のいずれかの操作された細胞または態様70~74のいずれかの組成物と、疾患の処置のためのさらなる作用物質とを含む、キット。
76. さらなる作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、態様75のキット。
77. 抗体が腫瘍関連抗原を認識または特異的に結合する、態様76のキット。
78. 腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-アルファ、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、散乱因子(scatter factor)受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケラチン(cytokerain)、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2 (HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-アルファ、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7 (CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチン、またはテネイシンである、態様77のキット。
79. 抗体が、全長抗体であり、かつ/またはFcドメインを含む、態様76~78のいずれかのキット。
80. 態様1~32もしくは69のいずれかの操作されたNK細胞または態様70~74のいずれかの組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、状態を処置する方法。
81. 操作されたNK細胞を投与する段階の前に、該操作されたNK細胞を態様33~68のいずれかの方法によって産生する、態様80の方法。
82. 個体に1×108~1×1010個の細胞/m2もしくは約1×108~1×1010個の細胞/m2を投与する段階または1×106~1×1010個のNK細胞/kgもしくは約1×106~1×1010個のNK細胞/kgを投与する段階を含む、態様80または態様81の方法。
83. さらなる作用物質を投与する段階をさらに含む、態様80~82のいずれかの方法。
84. さらなる作用物質が抗体またはFc融合タンパク質である、態様83の方法。
85. 抗体が腫瘍関連抗原を認識する、態様84の方法。
86. 腫瘍関連抗原が、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD52、CD56、CD70、CD74、CD140、EpCAM、CEA、gpA33、メソテリン、α-フェトプロテイン、ムチン、PDGFR-アルファ、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合タンパク質、散乱因子受容体キナーゼ、ガングリオシド、サイトケラチン、frizzled受容体、VEGF、VEGFR、インテグリンαVβ3、インテグリンα5β1、EGFR、EGFL7、ERBB2 (HER2)、ERBB3、フィブロネクチン、HGF、HER3、LOXL2、MET、IGF1R、IGLF2、EPHA3、FR-アルファ、ホスファチジルセリン、シンデカン1、SLAMF7 (CD319)、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、ビメンチン、またはテネイシンである、態様84または態様85の方法。
87. 抗体が、Fcドメインを含み、かつ/または全長抗体である、態様84~86のいずれかの方法。
88. さらなる作用物質および操作されたNK細胞が連続的に投与される、態様83~87のいずれかの方法。
89. 操作されたNK細胞の投与の前にさらなる作用物質が投与される、態様88の方法。
90. さらなる作用物質および操作されたNK細胞が同時に投与される、態様83~87のいずれかの方法。
91. 前記状態が、炎症状態、感染症、およびがんからなる群より選択される、態様80~90のいずれかの方法。
92. 感染症がウイルス感染症または細菌感染症である、態様91の方法。
93. がんが白血病またはリンパ腫である、態様92の方法。
94. がんが固形腫瘍を含む、態様92の方法。
95. 個体がヒトである、態様80~94のいずれかの方法。
96. 操作されたNK細胞が個体に対して同種である、態様80~95のいずれかの方法。
97. 操作されたNK細胞が対象にとって自己由来である、態様80~95のいずれかの方法。
98. NK阻害受容体の発現を低減させるように遺伝子操作されている、態様1~32のいずれかの操作されたNK細胞。
99. NK阻害受容体をコードする遺伝子の遺伝的破壊および/またはNK阻害受容体の発現の低減をもたらす遺伝的破壊を含む; あるいは
NK阻害受容体をコードする遺伝子を標的とするおよび/またはNK阻害受容体の発現を低減させる阻害核酸を含む、
態様98の操作されたNK細胞。
100. 阻害受容体がNKG2AまたはKIR2DL1である、態様98または態様99の操作されたNK細胞。
101. NK細胞を遺伝子操作して阻害受容体の発現または活性を低減させる段階をさらに含む、態様32~68のいずれかの方法。
102. 発現または活性を低減させる段階が、NK阻害受容体をコードする遺伝子またはNK阻害受容体の発現の低減をもたらす遺伝子の発現を破壊または抑制することを含む、態様101の方法。
103. 阻害受容体がNKG2AまたはKIR2DL1である、態様102の方法。
【実施例0193】
VII. 実施例
以下の実施例は、例示のみを目的として含まれており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0194】
実施例1: 増殖させたg-NK細胞および従来のNK細胞の細胞死滅化の評価
健常ヒトドナーから25×106個の末梢血単核細胞(PBMC)を得て、蛍光活性化選別を特定の細胞表面表現型に基づき用いておよそ2×105個のFcRγ欠損(g- NK)細胞を濃縮した。g-NK細胞は、フィーダー細胞(10 ng/mL OKT3で刺激された照射自己由来PBMC) 0.5 mL (1×106個)を選別されたg-NK細胞0.5 mL (2×105個)と混合することにより、14日間で250倍に増殖された。増殖物に2日おきに10 ng/mL IL-2をスパイクし、7日目に増殖g-NK細胞に5:1のフィーダー:g-NK細胞比にて照射フィーダー(10 ng/mL OKT3で予め活性化)で細胞を再供給した。従来のNK細胞も得て、増殖させた。
【0195】
増殖させたg-NK細胞の抗体介在性の活性を評価するために、濃縮されたg-NK細胞の連続希釈液(E/T比が50:1から1:1の範囲)を抗CD20抗体リツキシマブ(5μg/mL)の存在下または非存在下において51Cr標識Rajiリンパ腫細胞とともに96ウェルプレート中でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、1ウェルあたりの51Cr活性を決定することにより抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を評価した。図1に示されるように、結果から、リツキシマブおよびRajiリンパ腫細胞と共培養された場合、従来のNK細胞よりもg-NK細胞はADCCを媒介する能力が高いことが示された。
【0196】
本発明は、例えば、本発明のさまざまな局面を例示するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されるよう意図されるものではない。記述した操作された細胞、組成物および方法に対するさまざまな修正は、本明細書の説明および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および趣旨から逸脱することなく実践することが可能であり、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【0197】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> INDAPTA THERAPEUTICS, INC.
<120> ENGINEERED NATURAL KILLER (NK) CELLS AND
COMPOSITIONS AND METHODS THEREOF
<150> US 62/457,098
<151> 2017-02-09
<150> US 62/484,350
<151> 2017-04-11
<160> 6
<170> FastSEQ for Windows Version 4.0

<210> 1
<211> 86
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> High affinity immunoglobulin gamma Fc receptor I
<300>
<308> NCBI NP-004097.1
<309> 2017-12-27
<400> 1
Met Ile Pro Ala Val Val Leu Leu Leu Leu Leu Leu Val Glu Gln Ala
1 5 10 15
Ala Ala Leu Gly Glu Pro Gln Leu Cys Tyr Ile Leu Asp Ala Ile Leu
20 25 30
Phe Leu Tyr Gly Ile Val Leu Thr Leu Leu Tyr Cys Arg Leu Lys Ile
35 40 45
Gln Val Arg Lys Ala Ala Ile Thr Ser Tyr Glu Lys Ser Asp Gly Val
50 55 60
Tyr Thr Gly Leu Ser Thr Arg Asn Gln Glu Thr Tyr Glu Thr Leu Lys
65 70 75 80
His Glu Lys Pro Pro Gln
85

<210> 2
<211> 82
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD3zeta
<300>
<308> NCBI ABQ28690.1
<309> 2016-07-23
<400> 2
Ala Ile Leu Gln Ala Gln Leu Pro Ile Thr Glu Ala Gln Ser Phe Gly
1 5 10 15
Leu Leu Asp Pro Lys Leu Cys Tyr Leu Leu Asp Gly Ile Leu Phe Ile
20 25 30
Tyr Gly Val Ile Leu Thr Ala Leu Phe Leu Arg Val Lys Phe Ser Arg
35 40 45
Ser Ala Asp Ala Pro Ala Tyr Gln Gln Gly Gln Asn Gln Leu Tyr Asn
50 55 60
Glu Leu Asn Leu Gly Arg Arg Glu Glu Tyr Asp Val Leu Asp Lys Arg
65 70 75 80
Arg Gly

<210> 3
<211> 673
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> PLZF
<300>
<308> NCBI NP_001018011.1
<309> 2017-12-28
<400> 3
Met Asp Leu Thr Lys Met Gly Met Ile Gln Leu Gln Asn Pro Ser His
1 5 10 15
Pro Thr Gly Leu Leu Cys Lys Ala Asn Gln Met Arg Leu Ala Gly Thr
20 25 30
Leu Cys Asp Val Val Ile Met Val Asp Ser Gln Glu Phe His Ala His
35 40 45
Arg Thr Val Leu Ala Cys Thr Ser Lys Met Phe Glu Ile Leu Phe His
50 55 60
Arg Asn Ser Gln His Tyr Thr Leu Asp Phe Leu Ser Pro Lys Thr Phe
65 70 75 80
Gln Gln Ile Leu Glu Tyr Ala Tyr Thr Ala Thr Leu Gln Ala Lys Ala
85 90 95
Glu Asp Leu Asp Asp Leu Leu Tyr Ala Ala Glu Ile Leu Glu Ile Glu
100 105 110
Tyr Leu Glu Glu Gln Cys Leu Lys Met Leu Glu Thr Ile Gln Ala Ser
115 120 125
Asp Asp Asn Asp Thr Glu Ala Thr Met Ala Asp Gly Gly Ala Glu Glu
130 135 140
Glu Glu Asp Arg Lys Ala Arg Tyr Leu Lys Asn Ile Phe Ile Ser Lys
145 150 155 160
His Ser Ser Glu Glu Ser Gly Tyr Ala Ser Val Ala Gly Gln Ser Leu
165 170 175
Pro Gly Pro Met Val Asp Gln Ser Pro Ser Val Ser Thr Ser Phe Gly
180 185 190
Leu Ser Ala Met Ser Pro Thr Lys Ala Ala Val Asp Ser Leu Met Thr
195 200 205
Ile Gly Gln Ser Leu Leu Gln Gly Thr Leu Gln Pro Pro Ala Gly Pro
210 215 220
Glu Glu Pro Thr Leu Ala Gly Gly Gly Arg His Pro Gly Val Ala Glu
225 230 235 240
Val Lys Thr Glu Met Met Gln Val Asp Glu Val Pro Ser Gln Asp Ser
245 250 255
Pro Gly Ala Ala Glu Ser Ser Ile Ser Gly Gly Met Gly Asp Lys Val
260 265 270
Glu Glu Arg Gly Lys Glu Gly Pro Gly Thr Pro Thr Arg Ser Ser Val
275 280 285
Ile Thr Ser Ala Arg Glu Leu His Tyr Gly Arg Glu Glu Ser Ala Glu
290 295 300
Gln Val Pro Pro Pro Ala Glu Ala Gly Gln Ala Pro Thr Gly Arg Pro
305 310 315 320
Glu His Pro Ala Pro Pro Pro Glu Lys His Leu Gly Ile Tyr Ser Val
325 330 335
Leu Pro Asn His Lys Ala Asp Ala Val Leu Ser Met Pro Ser Ser Val
340 345 350
Thr Ser Gly Leu His Val Gln Pro Ala Leu Ala Val Ser Met Asp Phe
355 360 365
Ser Thr Tyr Gly Gly Leu Leu Pro Gln Gly Phe Ile Gln Arg Glu Leu
370 375 380
Phe Ser Lys Leu Gly Glu Leu Ala Val Gly Met Lys Ser Glu Ser Arg
385 390 395 400
Thr Ile Gly Glu Gln Cys Ser Val Cys Gly Val Glu Leu Pro Asp Asn
405 410 415
Glu Ala Val Glu Gln His Arg Lys Leu His Ser Gly Met Lys Thr Tyr
420 425 430
Gly Cys Glu Leu Cys Gly Lys Arg Phe Leu Asp Ser Leu Arg Leu Arg
435 440 445
Met His Leu Leu Ala His Ser Ala Gly Ala Lys Ala Phe Val Cys Asp
450 455 460
Gln Cys Gly Ala Gln Phe Ser Lys Glu Asp Ala Leu Glu Thr His Arg
465 470 475 480
Gln Thr His Thr Gly Thr Asp Met Ala Val Phe Cys Leu Leu Cys Gly
485 490 495
Lys Arg Phe Gln Ala Gln Ser Ala Leu Gln Gln His Met Glu Val His
500 505 510
Ala Gly Val Arg Ser Tyr Ile Cys Ser Glu Cys Asn Arg Thr Phe Pro
515 520 525
Ser His Thr Ala Leu Lys Arg His Leu Arg Ser His Thr Gly Asp His
530 535 540
Pro Tyr Glu Cys Glu Phe Cys Gly Ser Cys Phe Arg Asp Glu Ser Thr
545 550 555 560
Leu Lys Ser His Lys Arg Ile His Thr Gly Glu Lys Pro Tyr Glu Cys
565 570 575
Asn Gly Cys Gly Lys Lys Phe Ser Leu Lys His Gln Leu Glu Thr His
580 585 590
Tyr Arg Val His Thr Gly Glu Lys Pro Phe Glu Cys Lys Leu Cys His
595 600 605
Gln Arg Ser Arg Asp Tyr Ser Ala Met Ile Lys His Leu Arg Thr His
610 615 620
Asn Gly Ala Ser Pro Tyr Gln Cys Thr Ile Cys Thr Glu Tyr Cys Pro
625 630 635 640
Ser Leu Ser Ser Met Gln Lys His Met Lys Gly His Lys Pro Glu Glu
645 650 655
Ile Pro Pro Asp Trp Arg Ile Glu Lys Thr Tyr Leu Tyr Leu Cys Tyr
660 665 670
Val

<210> 4
<211> 238
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD16 (158F)
<400> 4
Gly Met Arg Thr Glu Asp Leu Pro Lys Ala Val Val Phe Leu Glu Pro
1 5 10 15
Gln Trp Tyr Arg Val Leu Glu Lys Asp Ser Val Thr Leu Lys Cys Gln
20 25 30
Gly Ala Tyr Ser Pro Glu Asp Asn Ser Thr Gln Trp Phe His Asn Glu
35 40 45
Ser Leu Ile Ser Ser Gln Ala Ser Ser Tyr Phe Ile Asp Ala Ala Thr
50 55 60
Val Asp Asp Ser Gly Glu Tyr Arg Cys Gln Thr Asn Leu Ser Thr Leu
65 70 75 80
Ser Asp Pro Val Gln Leu Glu Val His Ile Gly Trp Leu Leu Leu Gln
85 90 95
Ala Pro Arg Trp Val Phe Lys Glu Glu Asp Pro Ile His Leu Arg Cys
100 105 110
His Ser Trp Lys Asn Thr Ala Leu His Lys Val Thr Tyr Leu Gln Asn
115 120 125
Gly Lys Gly Arg Lys Tyr Phe His His Asn Ser Asp Phe Tyr Ile Pro
130 135 140
Lys Ala Thr Leu Lys Asp Ser Gly Ser Tyr Phe Cys Arg Gly Leu Phe
145 150 155 160
Gly Ser Lys Asn Val Ser Ser Glu Thr Val Asn Ile Thr Ile Thr Gln
165 170 175
Gly Leu Ala Val Ser Thr Ile Ser Ser Phe Phe Pro Pro Gly Tyr Gln
180 185 190
Val Ser Phe Cys Leu Val Met Val Leu Leu Phe Ala Val Asp Thr Gly
195 200 205
Leu Tyr Phe Ser Val Lys Thr Asn Ile Arg Ser Ser Thr Arg Asp Trp
210 215 220
Lys Asp His Lys Phe Lys Trp Arg Lys Asp Pro Gln Asp Lys
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<210> 5
<211> 16
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD16 (158F) signal peptide
<400> 5
Met Trp Gln Leu Leu Leu Pro Thr Ala Leu Leu Leu Leu Val Ser Ala
1 5 10 15

<210> 6
<211> 238
<212> PRT
<213> Homo sapiens
<220>
<223> CD16 (158V)
<400> 6
Gly Met Arg Thr Glu Asp Leu Pro Lys Ala Val Val Phe Leu Glu Pro
1 5 10 15
Gln Trp Tyr Arg Val Leu Glu Lys Asp Ser Val Thr Leu Lys Cys Gln
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Gly Ala Tyr Ser Pro Glu Asp Asn Ser Thr Gln Trp Phe His Asn Glu
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Ser Leu Ile Ser Ser Gln Ala Ser Ser Tyr Phe Ile Asp Ala Ala Thr
50 55 60
Val Asp Asp Ser Gly Glu Tyr Arg Cys Gln Thr Asn Leu Ser Thr Leu
65 70 75 80
Ser Asp Pro Val Gln Leu Glu Val His Ile Gly Trp Leu Leu Leu Gln
85 90 95
Ala Pro Arg Trp Val Phe Lys Glu Glu Asp Pro Ile His Leu Arg Cys
100 105 110
His Ser Trp Lys Asn Thr Ala Leu His Lys Val Thr Tyr Leu Gln Asn
115 120 125
Gly Lys Gly Arg Lys Tyr Phe His His Asn Ser Asp Phe Tyr Ile Pro
130 135 140
Lys Ala Thr Leu Lys Asp Ser Gly Ser Tyr Phe Cys Arg Gly Leu Val
145 150 155 160
Gly Ser Lys Asn Val Ser Ser Glu Thr Val Asn Ile Thr Ile Thr Gln
165 170 175
Gly Leu Ala Val Ser Thr Ile Ser Ser Phe Phe Pro Pro Gly Tyr Gln
180 185 190
Val Ser Phe Cys Leu Val Met Val Leu Leu Phe Ala Val Asp Thr Gly
195 200 205
Leu Tyr Phe Ser Val Lys Thr Asn Ile Arg Ser Ser Thr Arg Asp Trp
210 215 220
Lys Asp His Lys Phe Lys Trp Arg Lys Asp Pro Gln Asp Lys
225 230 235
図1
【配列表】
2023089054000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
この出願の明細書に記載された発明