(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089056
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】植物に有益な特性を付与する微生物のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20230620BHJP
A01H 17/00 20060101ALI20230620BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230620BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20230620BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230620BHJP
C12P 1/02 20060101ALI20230620BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
C12Q1/02
A01H17/00
C12N1/00 T
C12N1/02
C12M1/34 D
C12P1/02 Z
A01G7/00 605Z
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060717
(22)【出願日】2023-04-04
(62)【分割の表示】P 2021157636の分割
【原出願日】2013-09-19
(31)【優先権主張番号】602532
(32)【優先日】2012-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(71)【出願人】
【識別番号】515075223
【氏名又は名称】バイオディスカバリー・ニュージーランド・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ウィグリー,ピーター・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,スーザン・ジェーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ,キャロライン・エリザベス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物に有益な特性を付与するために使用する微生物および/もしくは組成物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】植物に1以上の有益な特性を付与可能な1種類以上の微生物を選択するための方法は、a)(その種子、実生、挿し木、及び/又は栄養繁殖体を含む)1以上の植物を1種類以上の微生物の第1の組の存在下で成長培地に供するステップ、b)ステップa)後に、1以上の植物を選択するステップ、c)ステップb)で選択された1以上の植物から1種類以上の微生物の第2の組を取得するステップ、d)ステップa)~ステップc)を1回以上繰り返すステップ、を少なくとも含み、ステップc)で取得した1種類以上の微生物の第2の組は、任意の連続的反復ステップa)において微生物の第1の組として使用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に1以上の有益な特性を付与可能な1種類以上の微生物を選択するための方法であって、
a)(その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物を1種類以上の微生物の第1の組の存在下で成長培地に供するステップ、
b)ステップa)後に、1以上の植物を選択するステップ、
c)ステップb)で選択された前記1以上の植物から1種類以上の微生物の第2の組を取得するステップ、
d)ステップa)~ステップc)を1回以上繰り返すステップ、
を少なくとも含み、ステップc)で取得した1種類以上の微生物の第2の組は、任意の連続的反復ステップa)において微生物の第1の組として使用される、方法。
【請求項2】
前記1種類以上の微生物の第2の組がステップc)において前記1以上の植物から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の植物を成長培地に供するステップが、植物を成長または繁殖させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
2以上、10以上、20以上、100以上、300以上、500以上、または1000以上の植物が、前記微生物の第1の組の存在下で成長培地に供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の植物が、1以上の選択基準に基づいて選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記1以上の植物が1以上の表現型形質に基づいて選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1以上の植物が1以上の遺伝子型形質に基づいて選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上の植物が、1以上の遺伝子型形質および1以上の表現型形質の組み合わせに基づいて選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記方法の別の繰り返しにおいて異なる選択基準が使用される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1種類以上の微生物の第2の組が、(生殖組織を含む)根、茎および/もしくは葉から、または選択された1以上の植物の全植物組織から単離される、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記1種類以上の微生物の第2の組が植物根圏から単離される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1種類以上の微生物の第2の組が未精製の形態で取得される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1種類以上の微生物が、発芽後の任意の時間にステップc)で取得される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
2種類以上の微生物がステップc)において取得される場合、前記方法が、前記2種類以上の微生物を個々の単離株に分離するステップ、2種類以上の個々の単離株を選択するステップ、次いで、前記選択された2種類以上の単離株を組み合わせるステップをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組み合わされた単離株が、前記方法の任意の連続的反復ステップa)において前記1種類以上の微生物の第1の組として使用される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
本発明の2以上の方法が別々に行われてよく、それぞれ別々の方法のステップc)において取得された前記1種類以上の微生物の第2の組が組み合わされる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組み合わされた微生物が、前記方法の任意の連続的反復ステップa)において前記1種類以上の微生物の第1の組として使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)植物材料が、ステップa)のための微生物供給源として使用される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、1種類以上の培養できない微生物または1種類以上の内部寄生菌を選択するために使用される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
植物の成長、品質および/または健康を支持するための組成物を生産するための方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法のステップおよび前記方法によって選択された前記1種類以上の微生物を1種類以上の追加の成分と組み合わせる追加ステップを含む方法。
【請求項21】
植物の成長、品質および/もしくは健康を抑制または阻害するための組成物を生産するための方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法のステップおよび前記方法によって選択された前記1種類以上の微生物を1種類以上の追加の成分と組み合わせる追加ステップを含む方法。
【請求項22】
植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を選択するための方法であって、
a)1以上の培地で請求項1~19のいずれか一項に記載の方法により選択された1種類以上の微生物を培養して、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後に前記1以上の培養物中の前記1以上の培地から前記1種類以上の微生物を分離して、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の前記1以上の組成物に供するステップ、
d)前記1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される場合に、ステップc)からの1以上の組成物を選択するステップ、
を少なくとも含む方法。
【請求項23】
植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を選択するための方法であって、
a)請求項1~19のいずれか一項に記載の方法により選択された1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養して、1以上の培養物を形成するステップ、
b)ステップa)の前記1以上の培養物を不活性化して、1以上の不活性化された微生物を含む1以上の組成物を提供するステップ、
c)(その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をス
テップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)前記1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される場合に、ステップc)からの1以上の組成物を選択するステップ、
を少なくとも含む方法。
【請求項24】
植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を生産することが可能な1種類以上の微生物を選択するための方法であって、
a)1以上の培地で請求項1~19のいずれか一項に記載の方法により選択された1種類以上の微生物を培養して、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後にステップa)からの前記1以上の培養物中の前記1以上の培地から前記1種類以上の微生物を分離して、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)からの前記1以上の組成物に供するステップ、
d)前記1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される1以上の組成物と関係付けられる前記1種類以上の微生物を選択するステップ、
を少なくとも含む方法。
【請求項25】
植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を生産することが可能な1種類以上の微生物を選択するための方法であって、
a)1以上の培地で請求項1~19のいずれか一項に記載の方法により選択された1種類以上の微生物を培養して、1以上の培養物を提供するステップと、
b)ステップa)の前記1以上の培養物を不活性化して、1以上の不活性化された微生物を含む1以上の組成物を提供するステップと、
c)(その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の前記1以上の組成物に供するステップと、
d)前記1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される1以上の組成物と関係付けられる前記1種類以上の微生物を選択するステップと、
を少なくとも含む方法。
【請求項26】
1以上の植物の改良を支援するための方法であって、1種類以上の微生物および/または組成物の存在下で前記植物の評価のために手配することを含み、前記方法は、少なくとも請求項1~25のいずれか一項に記載の方法のステップを含む方法。
【請求項27】
前記植物が第1の領域で成長させるためのものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記微生物が、前記第1の領域に存在しても、しなくてもよい(または少なくとも有意な程度で存在してもよい)、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記評価が第2の領域で行われる、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
手配するステップが
a)評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類の識別情報の受け取りまたは伝達、
b)評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類由来の植物材料の受け取りまたは伝達、
c)前記微生物および/もしくは組成物の特定ならびに/または選択、
d)前記微生物および/または組成物の取得、
e)前記微生物および/または組成物の植物材料との関係付け、
のうちの1以上のために手配するステップを含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、前記微生物および/または組成物の存在下で前記植物を評価することを含む、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記微生物および/または組成物の存在下での前記植物の前記評価のために手配することを含む、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記評価のステップが、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法のステップのうちの1以上を実行することを含む、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ステップが単一の実体によって実行される、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ステップが、要求する第1の実体および前記要求を実行する第2の実体の少なくとも2つの実体によって実行される、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
a)植物材料と組み合わせる場合も含めた、1種類以上の微生物(もしくは少なくともその識別情報)および/または組成物を受け取るステップまたは前記第1の領域に送るステップ、および
b)前記微生物および/もしくは組成物の存在下で前記第1の領域において前記植物または(好ましくは類似の特性を有する)他の植物を成長させるステップ、
の1以上をさらに含む、請求項26~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
第1の実体が、
a)植物の改良の必要性を確認し、
b)その前記識別情報および/または関連する植物材料を任意の関連情報とともに第2の実体に送り、
c)植物材料および/または1種類以上の微生物および/またはその前記識別情報ならびに/または組成物を受け取る、
請求項26~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記受け取るステップが、植物/微生物および/もしくは植物/組成物の関係の評価の後に、またはその結果として行われる、請求項26~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
第2の実体が
a)任意の関連情報とともに第1の実体から植物および/または関連する植物材料の識別情報を受け取り、
b)前記第1の実体に植物材料および/もしくは1種類以上の微生物および/もしくはそれらの識別情報ならびに/または組成物を送る、
請求35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記送るステップが、植物/微生物および/もしくは植物/組成物の関係の評価の後に、またはその結果として行われる、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項26~39のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステム。
【請求項42】
a)評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類の識別情報を受け取るまたは伝達するための手段、
b)評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類から植物材料を受け取るまたは伝達するための手段、
c)微生物および/もしくは組成物を特定ならびに/または選択するための手段、
d)前記微生物および/または組成物を取得するための手段、
e)前記微生物および/または組成物を前記植物材料と関係付けるための手段、
f)前記微生物および/または組成物の存在下で前記植物を評価するための手段、
g)植物材料との組み合わせを含む、1種類以上の微生物(もしくは少なくともその識別情報)および/または組成物を受け取るかまたは前記第1の領域に送るための手段、および
h)前記微生物および/または組成物の存在下で、前記第1の領域において前記植物または(好ましくは類似の特性を有する)他の植物を成長させるための手段、
のうちの1以上を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記システムが、植物の改良の要求を伝達し、その後、植物材料および/もしくは1種類以上の微生物および/もしくはその識別情報、ならびに/または組成物を受け取るように構成された設備によって実施される、請求項41または42に記載のシステム。
【請求項44】
前記システムが、植物および/または関連する植物材料の識別情報を任意の関連する情報と共に受け取り、植物材料および/もしくは1種類以上の微生物および/もしくはその識別情報、ならびに/または組成物を送るように構成された設備によって実施される、請求項41~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
請求項1~19、24、および25のいずれか一項に記載の方法によって取得、選択または単離される1種類以上の微生物。
【請求項46】
請求項45に記載の微生物を含む組成物。
【請求項47】
請求項20もしくは21のいずれか一項に記載の方法によって作製されるか、または請求項22もしくは23のいずれか一項に記載の方法によって選択される組成物。
【請求項48】
1以上の植物に1以上の有益な特性を付与するための請求項45に記載の1種類以上の微生物または請求項46もしくは47に記載の組成物の使用。
【請求項49】
請求項1~40のいずれか一項に記載の方法を含む植物育種プログラム。
【請求項50】
植物育種プログラムにおける請求項1~40のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項51】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法における微生物の第1の組として、請求項24または25に記載の方法によって選択される1種類以上の微生物の使用。
【請求項52】
表4に記載の前記微生物の1種類以上を含む組成物。
【請求項53】
表3に記載の1種類以上の微生物を含む組成物。
【請求項54】
表2に記載の1種類以上の微生物を含む組成物。
【請求項55】
植物バイオマスを増加させるための、表4に記載の1種類以上の微生物または前記微生物を含む組成物の使用。
【請求項56】
前記植物がトウモロコシである、請求項55に記載の使用。
【請求項57】
1以上の植物における炭水化物の濃度を増加させるための表3に記載の1種類以上の微
生物または前記微生物を含む組成物の使用。
【請求項58】
前記植物がバジルである、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
植物バイオマスを増加させるための表2に記載の1種類以上の微生物または前記微生物を含む組成物の使用。
【請求項60】
前記植物がライグラスである、請求項59に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に有益な特性を付与するために使用する微生物のスクリーニング、特定、および/または適用のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選抜育種などの植物に有益な特性を付与する公知のプロセスは、膨大なコストがかかり、長い時間を要し、範囲が制限されており、調節の困難を伴い得る。20年以上、この技術に大規模な投資が行われているが、商業的成功は限られている。
【0003】
従来の生産性の高い作物の育種および遺伝子組換え作物の開発に関する科学的研究は何十年も成功しているものの、他の手段による植物形質の開発に費やされた研究努力は比較的少ない。
【0004】
本明細書で言及する刊行物の書誌詳細を、本明細書の末尾にまとめる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pikovskaya RI(1948).Mobilization of phosphorus in soil connection with the vital activity of some microbial species.Microbiologia 17:362-370
【非特許文献2】Miche,L and Balandreau,J(2001).Effects of rice seed surface sterilisation with hypochlorite on inoculated Burkholderia vietamiensis.Appl.Environ.Microbiol.67(7):p3046-3052
【非特許文献3】Fahraeus,G.(1957).J.Gen Microbiol.16:374-381
【非特許文献4】Ruth Eckford,R.,Cook,F.D.,Saul,D.,Aislabie J.,and J.Foght(2002) Free-living Heterotrophic Bacteria Isolated from Fuel-Contaminated Antarctic Soils.Appl.Environ.Microbiol 68(10):5181
【非特許文献5】Yemm and Willis(Biochem.J.1954,57:508-514)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既知の方法の欠点の少なくとも1つを克服または改善する、1以上の有益な特性を植物に付与するために使用される1種類以上の微生物および/または組成物の選択のための方法を提供することを目的とする。
【0007】
あるいは、1以上の植物の改良を支援するための方法および/またはシステムを提供することを発明の目的とする。
【0008】
あるいは、少なくとも有用な選択を公衆に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の広範な態様において、植物に1以上の有益な特性を付与可能な1種類以上の微生物を選択するための方法であって、
a)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物を1種類以上の微生物の第1の組の存在下で成長培地に供するステップと、
b)ステップa)後に、1以上の植物を選択するステップと、
c)ステップb)で選択された前記1以上の植物と関係付けられる1種類以上の微生物の第2の組を取得するステップと、
d)ステップa)~ステップc)を1回以上繰り返すステップと、を少なくとも含み、ステップc)で取得した1種類以上の微生物の第2の組は、任意の連続的反復ステップa)において微生物の第1の組として使用される方法が提供される。
【0010】
一実施形態において、1種類以上の微生物の第2の組は、ステップc)において前記1以上の植物から単離される。
【0011】
一実施形態において、1種類以上の微生物の第1の組および/または1種類以上の微生物の第2の組は、本明細書で後に詳述する微生物から選択される。
【0012】
一実施形態において、成長培地は、本明細書で後に詳述する成長培地から選択される。
【0013】
一実施形態において、成長培地に1以上の植物を供するステップは、植物を成長または繁殖させることを含む。
【0014】
一実施形態において、2以上の植物が、1種類以上の微生物の存在下で成長培地に供される。他の実施形態において、10~20の植物が、微生物の第1の組の存在下で成長培地に供される。他の実施形態において、20以上、100以上、300以上、500以上、または1000以上の植物が、微生物の第1の組の存在下で成長培地に供される。
【0015】
一実施形態において、1以上の植物は、1以上の選択基準に基づいて選択される。一実施形態において、1以上の植物は、1以上の表現型形質に基づいて選択される。好ましい一実施形態において、1以上の植物は、所望の表現型形質の存在に基づいて選択される。一実施形態において、表現型形質は、本明細書で後に詳述するものの1つである。一実施形態において、1以上の植物は、1以上の遺伝子型形質に基づいて選択される。好ましい一実施形態において、1以上の植物は、所望の遺伝子型形質の存在に基づいて選択される。一実施形態において、1以上の植物は、1以上の遺伝子型形質と1以上の表現型形質との組み合わせに基づいて選択される。一実施形態において、本発明の方法の異なる反復において異なる選択基準が使用されてよい。
【0016】
一実施形態において、1種類以上の微生物の第2の組は、選択された1以上の植物の根、茎および/または葉の(生殖性を含む)組織から単離される。あるいは、1種類以上の微生物の第2の組は、選択された1以上の植物の全植物組織から単離される。別の実施形態において、植物組織は表面殺菌されてよく、次いで、1種類以上の微生物が、1以上の植物の任意の組織から単離されてよい。この実施形態は、内生微生物のターゲット選択を可能にする。別の実施形態において、1種類以上の微生物の第2の組は、選択された植物を取り囲む成長培地から単離されてよい。
【0017】
別の実施形態において、1種類以上の微生物の第2の組は、未精製の形態で取得される。
【0018】
一実施形態において、1種類以上の微生物が、発芽後の任意の時間にステップc)で取
得される。
【0019】
一実施形態において、2種類以上の微生物がステップc)において取得される場合、本方法は、この2種類以上の微生物を個々の単離株に単離するステップ、2種類以上の個々の単離株を選択するステップ、次いで、選択された2種類以上の単離株を組み合わせるステップをさらに含む。
【0020】
別の実施形態において、本方法は、ステップa)~ステップc)を1回以上繰り返すステップをさらに含み、2種類以上の微生物がステップc)において取得される場合、この2種類以上の微生物は個々の単離株に単離され、2種類以上の個々の単離株が選択され、次いで組み合わされ、この組み合わされた単離株は、連続的反復ステップa)において1種類以上の微生物の第1の組として使用される。したがって、ステップc)において取得された1種類以上の微生物を本方法のステップa)において使用することについて言及する場合、本発明のこの実施形態の組み合わせた単離株を使用することを含むと解釈されるべきである。
【0021】
別の実施形態において、本発明の2種類以上の方法が別々に行われてよく、別々の方法のそれぞれのステップc)において取得された1種類以上の微生物の第2の組を組み合わせてもよい。一実施形態において、組み合わされた微生物は、本発明の方法の任意の連続的反復ステップa)において1種類以上の微生物の第1の組として使用される。
【0022】
一実施形態において、本発明の第1の態様の方法は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な1種類以上の内生微生物を特定および/または選択するのに有用であることもある。
【0023】
一実施形態において、植物材料(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)は、ステップa)のための微生物供給源として使用されてよい。好ましい実施形態において、ステップa)において微生物供給源として使用される植物材料は、種子材料である。好ましくは、植物材料は表面殺菌される。
【0024】
別の実施形態において、本発明の第1の態様の方法は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な1以上の培養できない微生物を特定および/または選択するのに有用であることがある。この実施形態において、植物材料(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)は、ステップa)のための微生物供給源として使用されてよい。好ましい実施形態において、ステップa)において微生物供給源として使用される植物材料は、外植片材料(例えば、植物の挿し木)である。好ましくは、植物材料は表面殺菌される。
【0025】
第2の広範な態様において、本明細書に記載の方法による1以上の植物の改良を支援するための方法であって、1種類以上の微生物および/または組成物の存在下で前記植物の評価のために手配することを含む方法を提供する。本方法は、好ましくは、本発明の第1、第7の(ならびに/もしくは関連する)態様、および/または第8の(ならびに/もしくは関連する)態様の方法のステップを少なくとも含む。
【0026】
一実施形態によれば、植物は、第1の領域で成長させるためのものである。微生物は、第1の領域に存在しても、しなくてもよい(または少なくとも有意な程度で存在してもよい)。
【0027】
「領域」および「第1の領域」は、土地の1以上の領域を意味すると広く解釈されるべきである。この土地領域は、地理的/政治的/私有地の境界によって、または気候、土壌
の性質、特定の害虫の存在などの類似の特性を有する土地領域によって定義されてよい。
【0028】
好ましくは、評価は、微生物が存在する第2の領域で行われるが、これは必須では決してない。微生物は、微生物保管所を含む他の供給源から入手されてよく、植物材料および/または土壌に人工的に関係付けられてよい。さらに、植物は、基本的に従来の方法で栽培されるものの、植物に通常関係付けられていない微生物を有する領域で栽培されるが、少なくとも第1の領域において、当業者には理解されるであろうように、人工的に成長する環境が代わりに使用されてよい。したがって、必ずしも通常利用されるとは限らない可能性のある有益な微生物/植物の関係が特定されてよい。
【0029】
好ましくは、手配するステップは、
評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類の識別情報の受け取りまたは伝達、
評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類からの植物材料の受け取りまたは伝達、
微生物および/または組成物の特定ならびに/あるいは選択、
微生物および/または組成物の取得、
微生物および/または組成物の植物材料との関係付け、
のうちの1以上のために手配するステップを含む。
【0030】
好ましくは、本方法は、前記微生物および/または組成物の存在下で前記植物の評価(または前記評価のための手配)を含む。
【0031】
評価ステップは、好ましくは、本明細書に記載の方法、特定の実施形態においては、本発明の第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様または第8の(および/もしくは関連する)態様の1種類以上の方法、のステップの1以上を実行することを含む。
【0032】
要求元の第1の実体と、その要求を実行する第2の実体との少なくとも2つの実体が関与することが好ましいが、上に挙げた様々なステップが、1つの実体によって実行されてよい。様々な媒介物が一方または両方の実体として機能してよくし、様々なレベルの自動化が使用されてよいことに留意されたい。例えば、特定の要求に応答して、オペレーターから要求される入力がほとんどまたは全くない状態で、その植物または類似の植物の既知の微生物との関連に基づくデータベースにクエリーを行うプロセッサによって微生物が選択されてよい。
【0033】
さらに、評価は、要求元の実体によって、かつ/または第1の領域において実行されてよい。第1の領域における評価を行うことで、評価が正確であること、および植物または微生物に影響を及ぼす可能性のある予期せぬ環境要因が考慮されないことが全くないことがより良好に保証される。
【0034】
評価後または評価中に、本方法は、好ましくは、
植物材料と組み合わせる場合も含めた、1種類以上の微生物(もしくは少なくともその識別情報)および/または組成物を受け取るステップまたは第1の領域に送るステップ、ならびに
前記微生物および/または組成物の存在下で第1の領域において前記植物または(好ましくは類似の特性を有する)他の植物を成長させるステップ、
のうちの1以上をさらに含む。
【0035】
第2の態様の方法は、
植物の改良の必要性を特定し、
その識別情報および/または関連する植物材料を任意の関連情報とともに第2の実体に送り、
植物材料および/または1種類以上の微生物および/またはその識別情報および/または組成物を受け取る
第1の実体によって実施されてよい。
【0036】
受け取るステップは、好ましくは、植物/微生物および/または植物/組成物の関係の評価後または評価の結果として実行される。好ましくは、評価は、本明細書に記載の方法、特定の実施形態においては、第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様または第8の(および/もしくは関連する)態様の方法、を用いて行われる。
【0037】
第2の態様の方法は、上記に加えてあるいは上記の代わりに
任意の関連情報とともに第1の実体から植物および/または関連する植物材料の識別情報を受け取り、
植物材料および/または1種類以上の微生物および/またはそれらの識別情報および/または組成物を第1の実体に送る
第2の実体によって実施されてもよい。
【0038】
送るステップは、好ましくは、植物/微生物および/または植物/組成物の関係の評価の後に、または評価の結果として実行される。好ましくは、評価は、本明細書に記載の方法、特定の実施形態においては、第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様または第8の(および/もしくは関連する)態様の方法、を用いて行われる。
【0039】
第3の態様によれば、第2の態様の方法を実施するためのシステムが提供される。
【0040】
第3の態様のシステムは、好ましくは、
評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類の識別情報を受け取るまたは伝達するための手段、
評価対象の1以上の植物もしくは植物の種類からの植物材料を受け取るまたは伝達するための手段、
微生物および/または組成物を特定ならびに/または選択するための手段、
微生物および/または組成物を取得するための手段、
微生物および/または組成物を植物材料に関係付けるための手段、
前記微生物および/または組成物の存在下で前記植物を評価するための手段、
植物材料と組み合わせる場合も含めた、1種類以上の微生物(もしくは少なくともその識別情報)および/または組成物を受け取るための、またはそれらを第1の領域に送るための手段、
前記微生物および/または組成物の存在下で、第1の領域において前記植物または(好ましくは類似の特性を有する)他の植物を成長させるための手段、
のうちの1以上を含む。
【0041】
当業者に公知の手段を用いて、第3の態様のシステムに必要な機能を提供してよい。例えば、インターネットを含む従来の通信手段を用いて、植物/微生物の識別情報を伝達してよく、従来の輸送手段を用いて、植物材料/微生物/組成物を運搬してよく、従来の手段およびプロセスを用いて、微生物および/または組成物を植物材料と関係付けてよく、前記植物および/または植物/微生物および/または植物/組成物の関係を評価するための従来の手段を用いてよい。
【0042】
好ましい実施形態によれば、本発明のシステムは、好ましくは、植物/微生物の関係の評価の後または評価の結果として、植物の改良のための要求を伝達し、その後、植物材料および/または1種類以上の微生物および/またはその識別情報を受け取るように構成された設備によって実施される。好ましくは、評価は、本明細書に記載の方法、特定の実施
形態においては、第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様、または第8の(および/もしくは関連する)態様の方法、を用いて行われる。
【0043】
第2の態様のシステムは、上記に加えてあるいは上記の代わりに、好ましくは、植物/微生物または植物/組成物の関係の評価の後または評価の結果として、任意の関連情報と共に、植物および/または関連植物材料の識別情報を受け取り、植物材料および/または1種類以上の微生物および/またはそれらの識別情報および/または組成物を送るように構成された設備によって実施されてよい。好ましくは、評価は、本明細書に記載の方法、特定の実施形態においては、第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様、または第8の(および/もしくは関連する)態様の方法、を用いて行われる。
【0044】
したがって、本発明の第4の広範な態様によれば、本明細書の前述の方法により取得、選択または単離された微生物が提供される。一実施形態において、この微生物は内部寄生菌である。一実施形態において、この微生物は培養できない。
【0045】
本発明の第5の広範な態様において、植物の成長、品質および/または健康を支持するための組成物、あるいは植物の成長、品質および/または健康を抑制または阻害するための組成物を生産するための方法であって、本明細書の前述の方法のステップおよび本方法によって選択される1種類以上の微生物を1種類以上の追加の成分と組み合わせる追加のステップを含む方法が提供される。
【0046】
本発明の第6の広範な態様において、第4の広範な態様の1種類以上の微生物を含む組成物または第5の広範な態様の方法によって調製される組成物が提供される。
【0047】
本発明の第7の広範な態様において、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を選択するための方法であって、
a)本発明の第1の態様の方法によって選択される1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後に、1以上の培養物中の1以上の培地から1種類以上の微生物を分離し、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される場合に、ステップc)からの1以上の組成物を選択するステップ、
を少なくとも含む方法が提供される。
【0048】
本発明の第7の広範な態様に関連する(がこれとは異なる)本発明の態様において、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を選択するための方法であって、
a)本発明の第1の態様の方法によって選択される1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を形成するステップ、
b)ステップa)の1以上の培養物を不活性化して、1以上の不活性化された微生物を含む1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される場合に、ステップc)からの1以上の組成物を選択するステップ、
を少なくとも含む方法が提供される。
【0049】
本発明の第8の広範な態様において、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を生成可能である1種類以上の微生物を選択するための方法であって、
a)本発明の第1の態様の方法によって選択される1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後に、ステップa)からの1以上の培養物中の1以上の培地から1種類以上の微生物を分離し、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)からの1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される1以上の組成物と関係付けられる(または、言い換えると、1以上の組成物を生産するために使用される)1種類以上の微生物を選択するステップ、
を少なくとも含む方法が提供される。
【0050】
本発明の第8の広範な態様に関連する(がこれとは異なる)態様において、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を生成可能である1種類以上の微生物を選択するための方法であって、
a)1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後に、1以上の培養物中の1以上の培地から1種類以上の微生物を分離し、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される1以上の組成物と関係付けられる(または、言い換えると、1以上の組成物を生産するために使用される)1種類以上の微生物を選択するステップ、
e)本発明の第1、第8または第9の態様の方法のステップa)において、ステップd)で選択された1種類以上の微生物を使用するステップ、
を少なくとも含む方法が提供される。
【0051】
関連する態様において、第8の(および/または関連する)態様の方法のステップb)は、1以上の不活性化微生物を含む1以上の組成物を提供し、次いで、プロセスのステップc)においてこの組成物を使用するために、ステップa)の1以上の培養物を不活性化するステップb)と置換することができる。
【0052】
第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様ならびに第8の(および/もしくは関連する)態様の方法が、これらの方法が任意の反復回数で同時にまたは逐次的に実行される場合も含めて、本方法の任意の1つの反復ラウンドで個々に使用されるか、または組み合わせて使用される方法から選択もしくは単離される組成物および/または微生物と、任意の組み合わせで組み合わされてよいことが理解されるべきである。一例として、第7の(および/または関連する)態様の方法が実行され、組成物が選択されてよい。組成物の選択は、ステップb)において培地から分離された1種類以上の微生物が、(1種類以上の微生物が選択された組成物を生産可能であるため)1以上の植物に有益な特性を付与することが望ましいことを示す。次いで、1種類以上の微生物は、第1の態様、第7の(および/もしくは関連する)態様または第8の(および/もしくは関連する)態様の方法の別のラウンドにおいて使用されてよい。あるいは、方法の組み合わせを、逆に実行することができる。これは、任意の順序および組み合わせで任意の回数繰り返すことができる。したがって本発明は、本発明の方法によって取得、選択もしくは単離される1種類以上の微生物、組成物または植物を、本発明の任意の他の方法において使用することを提供する。
【0053】
本発明の第9の広範な態様において、第7の(および/もしくは関連する)態様または第8の(および/もしくは関連する)広範な態様の結果として得られた組成物が提供され
る。
【0054】
本発明の第10の広範な態様において、本明細書の前述の方法によって取得、選択または単離される2種類以上の微生物の組み合わせが提供される。
【0055】
別の態様において、本発明は、1以上の植物に1以上の有益な特性を付与するために、本発明の方法によって取得、選択もしくは単離される1以上の組成物および/または微生物の使用を提供する。
【0056】
また、本発明の方法は、1種に正の効果を、同時に別の種に負の効果を付与することがある微生物の組み合わせを特定するように、植物の2種類以上の異なる種に第1の態様の方法のステップa)~ステップd)を適用することも含むことが理解されるべきである。例えば、食用作物の成長および生存を同時に改善し、競合する作物もしくは雑草の成長を抑制または阻害する可能性がある微生物のグループを特定したい場合がある。これは、ステップa)で2種類以上の異なる植物種を使用することによって、または異なる種に別々の方法を実行して適切な時点でそれらの方法において取得される微生物を組み合わせ、さらに反復を行うことによって達成される可能性がある。
【0057】
また、本発明は、本発明の方法において選択される植物も提供する。
【0058】
また、本発明は、本発明の方法を実施することを含む植物育種プログラムにおける本発明の方法の使用も提供する。
【0059】
別の態様において、本発明は、表4に記載の微生物のうちの1種類以上を含む組成物を提供する。一実施形態において、1種類以上の微生物は内部寄生菌である。
【0060】
別の態様において、本発明は、表3に記載の1種類以上の微生物を含む組成物を提供する。
【0061】
別の態様において、本発明は、表2に記載の1種類以上の微生物を含む組成物を提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、植物バイオマスを増加させるために、表4に記載の1種類以上の微生物またはそれを含む組成物の使用を提供する。一実施形態において、植物はトウモロコシである。一実施形態において、1種類以上の微生物は内部寄生菌である。
【0063】
別の態様において、本発明は、1以上の植物における炭水化物の濃度を増加させるために、表3に記載の1種類以上の微生物またはそれを含む組成物の使用を提供する。一実施形態において、1以上の植物はバジルある。
【0064】
別の態様において、本発明は、植物バイオマスを増加させるために、表2に記載の1種類以上の微生物またはそれを含む組成物の使用を提供する。一実施形態において、1以上の植物はライグラスである。
【0065】
また、本発明は、本願明細書において言及もしくは示される部分、要素および特徴に個々に、もしくは集合的に、前記部分、要素もしくは特徴のうちの2以上の任意のまたは全ての組み合わせで存在すると広く言ってもよく、本発明が関連する技術分野における既知の均等物を有する特定の整数が本明細書で述べられる場合、そのような既知の均等物は、個々に記載されたものとして本明細書に援用されるとみなされる。
【0066】
全ての新規な態様において考慮されるべき本発明のこれらおよび他の態様は、添付の図面を参照しながら、例としてのみ与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るシステムを示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の方法のプロセスフローである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に、一般的な用語で与えられる本発明の好ましい形態について説明する。本発明は、以下に提供される実施例からさらに明らかとなる。
【0069】
本発明者らは、本発明の方法の使用を介して1以上の植物に1以上の有益な特性を付与可能な微生物を容易に特定できることを見出した。本方法は、概して、使用される植物および微生物集団における(例えば、遺伝的変異性、または表現型の変異性などの)変異性の存在に基づいている。本発明者らは、この変異性を用いて、植物に対して使用する1種類以上の微生物の選択および特別な目的に有益である特別な植物/微生物の組み合わせの特定のための、かつ従来の技術を用いて決して認識され得なかった指向プロセスを支持可能であることを特定した。
【0070】
本発明の方法は、植物育種プログラムの一部として使用することができる。本方法は、1以上の植物に1以上の特性を付与可能な微生物および/または組成物を特定することに加えて、微生物叢によって影響される特定の遺伝子型/表現型を有する植物の選択を可能にするか、または少なくとも支援することができる。
【0071】
一態様において、本発明は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な1種類以上の微生物の選択のための方法に関する。本明細書に記載される場合、「植物に有益な特性」とは、人間、他の動物、環境、生息地、生態系、経済に有益であってよい特性、任意の実態もしくはシステムに対する商業効果または任意の他の効果の特性を含む、任意の特定の目的のために有益である任意の特性を意味すると広く解釈されるべきであると理解されるべきである。したがって、この用語は、植物の成長もしくは成長速度を抑制するか、低減させるかまたは阻害することを含め、植物の1以上の特徴を抑制するか、減少させるかまたは阻止することができる特性を包含すると解釈されるべきである。本発明は、1以上の植物に正の効果を特定する、または、植物を改良するという点で、単なる例として、本明細書に記載されてよい。しかし、本発明が、植物に付与可能な負の効果を特定することにも同様に適用可能であることが理解されるべきである。
【0072】
このような有益な特性としては、例えば、成長、健康および/または生存特性、特定の目的についての植物の適合性または品質、構造、色、化学組成もしくはプロファイル、味、香りの改良、品質の改良が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態において、有益な特性としては、例えば、雑草であることが特定された植物の成長を低減、抑制または阻害すること;植物の高さおよび幅を望ましい観賞サイズに制限すること;高速道路および沿道の土手ならびに浸食制御プロジェクトなどの地表植被用途に使用される植物の高さを制限すること;草刈りの必要性を低減するために芝地、ローンボウリング用の芝生およびゴルフコースなどの芝生の用途に使用される植物の成長を遅らせること;観賞用の花が咲く低木の葉/花の比率を低減すること;(周囲の植物群落におけるタンニンの産生を増加させる、および飼料種としての魅力を低下させる)植物フェロモンの産生および/または植物フェロモンに対する応答の調節が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
本明細書において使用される場合、「改善」は、本発明の適用に先立って既に植物に存在し得る植物の特徴の改良、または本発明の適用に先立って植物に存在していなかった特
徴の存在を包含すると広く解釈されるべきである。一例として、「改善された」成長とは、関連する条件下で成長することが以前に知られていなかった植物の成長を包含すると解釈されるべきである。
【0074】
本明細書において使用される場合、「阻害および抑制」等の用語は、広く解釈されるべきであり、これは一部の実施形態では望ましいことがあるが、完全な阻害または抑制を必要とすると解釈されるべきではない。
【0075】
本発明の説明を支援するために、「1種類以上の微生物の第1の組」、および「1種類以上の微生物の第2の組」という用語が本明細書において、本発明の方法のステップa)で適用された微生物の組またはグループと、本発明の方法のステップc)において取得された微生物の組またはグループとを区別するために使用されてよい。特定の実施形態において、微生物の組は異なる。例えば、第2の組は、第1の組と植物を組み合わせて、その後、1以上の選択基準に基づいて1以上の植物を選択した結果としての第1の組のサブセットであってよい。しかし、これは、必ずしもそうでなくてもよく、したがって、この用語の使用は、そのように限定されると解釈されるべきではないと理解されるべきである。
【0076】
特定の実施形態において、本発明の方法は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な1種類以上の微生物を選択することに関する。さらに本明細書で後述するように、そのような微生物は、植物内に、植物上に、および/または植物根圏内に含まれてよい。したがって、1種類以上の微生物の第2の組を植物「から」取得することが本明細書で言及される場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、植物内に、植物上に、および/または植物根圏内に含まれる微生物の第2の組を取得するという言及を包含すると解されるべきである。言及を簡略化するために、「関係付けられる」という文言が、植物内に、植物上に、および/または植物根圏内に含まれる微生物への言及と同義語で使用されてよい。
【0077】
広義には、本方法は、a)1種類以上の微生物の第1の組の存在下で、成長培地において1以上の植物を成長させるステップと、b)ステップa)後に1以上の植物を選択するステップと、c)ステップb)で選択される前記1以上の植物と関係付けられる1種類以上の微生物の第2の組を取得するステップと、を少なくとも含む。この1以上の植物、成長培地および1種類以上の微生物は、ステップa)に先立って別々に提供され、任意の適切な順序で組み合わされてよい。特に、本発明は、ステップa)~c)が1回以上繰り返され得る反復方法を提供し、ステップc)において取得された1種類以上の微生物は、本方法の次のサイクルのステップa)で使用される。一実施形態において、ステップa)~c)は1回繰り返される。別の実施形態において、ステップa)~c)は2回繰り返される。別の実施形態において、ステップa)~c)は3回繰り返される。別の実施形態において、ステップa)~c)は、少なくとも所望の有益な特性が観察されるまで繰り返される。
【0078】
ステップa)~c)の所望の数の反復後に、本方法は、ステップc)からの1種類以上の微生物の組の取得をもって終了することが理解されるべきである。
【0079】
本方法は、ステップc)において取得された集団における微生物の特定も必要とせず、取得された個々の微生物または微生物の組み合わせの特性の決定も必要としないことが理解されるべきである。しかし、必要であれば、有益な特性の評価、特定および/または決定を行うことができる。例えば、場合によって、本発明の方法の最終ステップにおいて微生物を単離および特定して、それらの商業的使用のための安全性を決定し、規制要件を満たすことが好ましいことがある。このような場合には、遺伝子解析および/または表現型解析が行われてよい。
【0080】
一実施形態において、ステップa)は少なくとも2つの植物を用いて行われる。他の実施形態において、10~20の植物が使用される。さらに他の実施形態において、20以上、50以上、100以上、300以上、500以上または1000以上の植物が使用される。前述したように、2以上の植物が本発明の特定の方法において使用される場合、それらは同じ亜種または種である必要はない。例えば、一実施形態において、一方の植物の亜種または種には正の効果を、別の植物の亜種または種には負の効果を付与可能な微生物を選択することが望ましい場合がある。
【0081】
一実施形態において、2種類以上の微生物がステップc)において取得される場合、本方法はさらに、2種類以上の微生物を個々の単離株に分離するステップ、2種類以上の個々の単離株を選択するステップ、次いで、選択された2種類以上の単離株を組み合わせるステップを含んでよい。これは、本発明の方法の終了時に取得される微生物の組を提供し得る。しかし、一実施形態において、組み合わせた単離株は、その後、本方法の連続ラウンドのステップa)において使用されてよい。一例として、2から、3、4、5、6、7、8、9、または10種類の個々の単離株を組み合わせてよい。本発明者らは、ステップa)~c)が、これらの追加の、分離するステップ、選択するステップおよび本方法の各反復と組み合わせるステップを利用して1回以上繰り返されるか、または分散されるか、そうでなければ、個々の単離株が選択も組み合わせもされない方法と組み合わされる反復方法を想定する。
【0082】
これらの組み合わせは、微生物間の相乗的相互作用を(植物の成長などを)促進するこれまで知られていない望ましい特性を検出することが期待される。a)~c)の反復ステップの使用は、2種類以上の微生物の出発集団を、所望の特性または特徴を付与するために植物と相互作用する微生物に至らせる。言い換えると、このプロセスは、植物マイクロバイオーム内での好適な微生物の濃縮を可能にする。
【0083】
個々の単離株の選択は、任意の適切な選択基準に基づいて生じ得る。例えば、それは無作為であってよく、本発明の方法を実行することによって観察された有益な特性に基づいてよく、または微生物の識別情報についての情報が公知の場合には、その微生物が特定の有益な特性を有するとこれまでに認められていることに基づいてもよい。
【0084】
さらに、本発明の2以上の方法は、別々にまたは並行して行われてよく、各方法から得られる微生物を単一組成物に組み合わせてよい。例えば、2つの別々の方法が行われてよく、1つ目の方法は、1以上の第1の有益な特性を付与可能な微生物を特定し、2番目の方法は、1以上の第2の有益な特性を付与可能な微生物を特定する。別々の方法は、同一の有益な特性を有するか、または異なる有益な特性を有する微生物を特定することを目的としてよい。別々の方法において使用される微生物および植物は、同一でも、または異なっていてもよい。微生物のさらなる最適化が望まれる場合には、微生物の単一組成物が、本発明の方法の1以上のさらなるラウンドに適用されてよい。あるいは、微生物の単一組成物は、さらに最適化をすることなく、必要に応じて、作物に関連する特性を付与するために使用されてよい。このように本発明の2種類以上の方法を組み合わせることにより、通常は特定の環境において時間および/または空間によって分離されている可能性のある微生物の選択ならびに組み合わせが可能となる。
【0085】
本発明の特定の実施形態において、本方法は、本発明の方法の終わりか、または本方法の任意の連続的反復のステップa)における1種類以上の微生物の第2の組を使用する前のいずれかに、選択された1以上の植物と関係付けられる1種類以上の微生物の第2の組の集団を成長させるために、本方法のステップc)で選択される1以上の植物を成長または繁殖させることを含んでよい。(関係付けられる微生物と共に)1以上の植物を本発明の方法の終了時に成長または繁殖させる場合には、その後、それらは、その形態で使用ま
たは販売されてよい。あるいは、1種類以上の微生物は、1以上の植物から単離されてよく、あるいは、関係付けられる微生物を有する1以上の植物組織および/または植物部分は、本発明の任意の連続的な反復において1種類以上の微生物の未精製の供給源として使用されるか、または、本方法の終了時に任意の他の目的のために使用されてよい。一実施形態において、成長または繁殖した1以上の植物の(関係付けられる微生物を有する)種子は、本方法の任意の連続的反復における1種類以上の微生物の供給源として取得および使用されてよい。あるいは、本発明の方法の終了時に取得される場合には、種子および関係付けられる微生物は、任意の他の目的のために販売または使用されてよい。
【0086】
本発明のさらなる方法および態様については本明細書で後述する。
【0087】
微生物
本明細書において使用される場合、「微生物」という用語は、広く解釈されるべきである。微生物としては、2つの原核生物ドメインの細菌および古細菌、ならびに真核生物の真菌および原生生物が挙げられるが、これらに限定されない。一例として、微生物には、プロテオバクテリア(シュードモナス属、エンテロバクター属、ステノトロフォモナス属、バークホルデリア属、リゾビウム属、ヘルバスピリルム属、パンテア属、セラチア属、ラーネラ属、アゾスピリルム属、アゾリゾビウム属、アゾトバクター属、デュガネラ属(Duganella)、デルフチア属、ブラジリゾビウム属、シノリゾビウム属およびハロモナス属など)、フィルミクテス門(バチルス属、パエニバチルス属、ラクトバチルス属、マイコプラズマ属、およびアセトバクテリウム属など)、放線菌門(ストレプトマイセス属、ロドコッカス属、ミクロバクテリウム属、およびクルトバクテリウム属など)、ならびに真菌類の子嚢菌門(トリコデルマ属、アンペロマイセス属、コニオチリウム属、ペシロマイセス属、ペニシリウム属、クラドスポリウム属、ボタンタケ属、ボーベリア属、メタリジウム属、バーティシリウム属、冬虫夏草属、ピチア属、およびカンジダ属など)、担子菌門(ヒトヨタケ属、伏革菌属(Corticium)、およびハラタケ属など)ならびに卵菌門(フハイカビ属、ケカビ属、およびモルチエレラ属など)が含まれ得る。
【0088】
特に好ましい実施形態において、微生物は、内部寄生菌もしくは着生菌または植物根圏に生息する微生物である。一実施形態では、微生物は、種子媒介性内部寄生菌である。
【0089】
特定の実施形態において、微生物は培養できない。これは、微生物が培養可能であることが知られていないか、または当業者に公知の方法を用いて培養することが困難であることを意味すると解釈されるべきである。
【0090】
本発明の方法において使用する微生物(例えば、1種類以上の微生物の第1の組)は、任意の供給源から収集もしくは取得されるか、または任意の供給源から収集される材料の中に含まれるか、および/またはその材料と関係付けられてよい。
【0091】
一実施形態において、1種類以上の微生物の第1の組は、土壌、植物、真菌、(無脊椎動物を含む)動物、および、湖および川の堆積物、水ならびに生物相を含む他の生物相、を含む任意の一般的な地球環境から;海洋環境、その生物相および堆積物(例えば、海水、海洋泥、海洋植物、海洋無脊椎動物(例えば、海綿)、海洋脊椎動物(例えば、魚))から;陸性および海の岩圏(レゴリスおよび岩、例えば、破砕された地下の岩、砂および粘土);氷圏およびその雪解け水;大気(例えば、濾過された空中粉塵、雲および雨滴);都市、産業および他の人工の環境(例えば、コンクリート、路傍の排水路、屋根面、路面上に蓄積した有機物および鉱物質)から得られる。
【0092】
別の実施形態において、1種類以上の微生物の第1の組は、適切な微生物の選択を好む
可能性が高い供給源から得られる。一例として、供給源は、他の植物が成長することが所望される、または土壌に関連すると考えられている特定の環境であってよい。別の例では、供給源は、1種類以上の望ましい形質を有する植物、例えば、特定の環境または目的の特定の条件下で自然に成長する植物であってよい。一例として、特定の植物は、砂質土もしくは高塩分の砂において、または極端な温度下において、またはほとんど水が無い状態で、自然に成長することができるか、または環境中に存在する特定の害虫もしくは病気に耐性を示すことが可能であり、特に、例えば、条件が特定の地理的場所で利用可能な唯一の条件である場合には、商品作物がそのような条件で成長することが所望され得る。さらなる例として、微生物は、このような環境で成長した商品作物、またはより詳細には、任意の特定の環境で成長した作物、例えば、塩類制限土壌中で成長した作物の中で最も急速に成長している植物、深刻な虫害もしくは疾患の流行に曝された作物の中で損傷が最も少ない植物、または繊維含量および油含量等を含む所望の量の特定の代謝産物および他の化合物を有する植物、または所望の色、味または匂いを呈する植物、の中で興味深い形質を最もよく示す個々の作物植物、から収集することができる。微生物は、真菌および他の動物および植物の生物相、土壌、水、堆積物、ならびに前述の環境の他の要素を含む、目的の植物または目的の環境において発生する任意の材料から収集することができる。
【0093】
特定の実施形態において、微生物は、ステップc)で単離された微生物の第2の組から分離された個々の単離株の組み合わせ、または2以上の別々に実行された本発明の方法から得られる微生物の組み合わせを含め、以前に行われた本発明の方法(例えば、本方法のステップc)において取得された微生物)から供給される。
【0094】
本発明は、特定の植物種に対して微生物の所望の性質についての既存の知識を不要とするが、一実施形態において、本発明の方法において使用する微生物または微生物の組み合わせは、植物に対して可能性のあるもしくは予測される効果についてのいくつかの知識に基づいて個々の微生物種または株の既存のコレクションから選択することができる。例えば、微生物は、窒素固定を向上させること、土壌有機物からリン酸塩を放出すること、リン酸(例えば、岩石のリン酸塩)の無機形態からリン酸塩を放出すること、根のマイクロスフェアにおける「炭素を固定する」こと、植物の根圏に生息することによって、植物が周囲の土壌から栄養分を吸収するのを支援し、これらをより容易に植物に提供すること、植物の根における根粒の数を増やすことによって、植物あたりの共生窒素固定細菌(例えば、リゾビウム種)の数および植物によって固定される窒素量を増加させること、植物が病原微生物の侵入および伝播に抵抗するのを助けるISR(全身誘導抵抗性)もしくはSAR(全身獲得抵抗性)などの植物防御反応を誘発すること、拮抗作用もしくは栄養素などの資源または空間の競合的利用によって植物の成長もしくは健康に有害な微生物と競合すること、植物の1以上の部分の色を変化させるか、または植物の化学プロファイル、その匂い、味、もしくは1種類以上の他の品質を変化させることが予測され得る。
【0095】
一実施形態において、微生物または微生物の組み合わせ(1種類以上の微生物の第1の組)は、植物に対して可能性のあるもしくは予測される効果についての知識を提供しない個々の微生物の種または株の既存のコレクションから選択される。例えば、植物の成長または健康を改善する能力についての情報が全くない状態で植物組織から単離された未特定の微生物のコレクション、または薬剤の開発につながり得る化合物を製造するための潜在能力を探求するために収集された微生物のコレクションが挙げられる。
【0096】
一実施形態において、微生物は、それらが天然に存在する供給源材料(例えば、土壌、岩石、水、空気、粉塵、植物または他の生物)から単離される。微生物は、本発明の方法におけるその意図された使用を考慮して、任意の適切な形態で提供され得る。しかし、ほんの一例として、微生物は、水性懸濁液、ゲル、ホモジネート、顆粒、粉末、スラリー、生きた生物または乾燥材料として提供され得る。微生物は、実質的に純粋培養または混合
培養で単離され得る。微生物は、濃縮、希釈または供給源材料中に見出される天然の濃度で提供され得る。例えば、塩類堆積物由来の微生物は、堆積物を淡水に懸濁し、堆積物が底に落ちるようにすることによって、本発明における使用のために単離され得る。微生物の大部分を含む水は、沈降の適切な期間後にデカンテーションにより除去され、植物成長培地に直接適用されるか、または濾過もしくは遠心分離によって濃縮され、適切な濃度に希釈され、塩の大部分を除去して植物成長培地に適用され得る。さらなる例として、ミネラル化供給源または毒性供給源由来の微生物は、植物への損傷の可能性を最小限に抑えるために植物成長材料へ適用するための微生物を回収するために同様に処理され得る。
【0097】
別の実施形態において、(1種類以上の微生物の第1の組および/または1種類以上の微生物の第2の組を含む)微生物は、それらが天然に存在する供給源材料から単離されていない未精製の形態で使用される。例えば、微生物は、それらが存在する供給源材料、例えば、土壌、または植物の根、種子もしくは葉と組み合わされて提供される。
【0098】
この実施形態において、供給源材料は、微生物の1種以上を含んでよい。
【0099】
微生物の混合集団が本発明の方法で使用されることが好ましい。
【0100】
本発明の実施形態において、微生物が、供給源材料(例えば、それらが天然に存在する材料)から単離される場合に、当業者が容易に知る多くの標準技術のいずれか1つまたはそれらの組み合わせが使用され得る。しかし、一例として、これらは一般に、単一の微生物の固体培養または液体培養を、通常は、固体微生物成長培地の表面上での物理的分離によって、または液体微生物成長培地への体積希薄単離(volumetric dilu
tive isolation)によって、実質的に純粋な形態で得ることができるプロ
セスを利用する。これらのプロセスは、材料が、適切な固体ゲル成長培地を覆う薄層、または無菌培地として作られた材料の連続希釈物中に広がっており、かつ液体または固体培地に接種される、乾燥材料、液体懸濁液、スラリーまたはホモジネートからの単離を含み得る。
【0101】
必須ではないが、一実施形態において、微生物を含む材料は、微生物栄養素(例えば、硝酸塩、糖類、または植物、微生物もしくは動物の抽出物)を有する材料を濃縮するか、あるいは材料内における微生物の多様性の一部のみの選択的生存を保証する手段を適用することによって(例えば、10~20分間、60℃~80℃で試料を低温殺菌して、熱への暴露に耐性を示す微生物(例えば、桿菌)を選択するか、または低濃度の有機溶媒もしくは滅菌剤に試料を暴露して(例えば、25%エタノールで10分間)、放線菌類および胞子形成微生物もしくは溶媒耐性微生物の生存を高めることによって)、材料中の全ての微生物を増殖させるか、あるいは微生物集団の一部を選択するために、単離プロセスの前に前処理してよい。次いで、微生物は、上記のように、濃縮された材料または選択的生存のために処理された材料から単離され得る。
【0102】
本発明の好ましい実施形態において、内部寄生性微生物または着生微生物は、植物材料から単離される。当該技術分野で公知の任意の数の標準的技術を使用してよく、微生物は、例えば、根、茎および葉、ならびに植物の生殖組織を含む植物の任意の適切な組織から単離されてよい。一例として、植物から単離するための従来の方法には、典型的には、目的の植物材料(例えば、根または長茎、葉)の無菌切除、適切な溶液(例えば、2%次亜塩素酸ナトリウム)での表面殺菌が含まれ、その後、植物材料は微生物の増殖用の栄養培地上に置かれる(例えば、Strobel G and Daisy B(2003)Bioprospecting for microbial endophytes and t
heir natural products. Microbiology and Mo
lecular Biology Reviews 67(4):491-502;Zin
niel DK et al.(2002) Isolation and characterisation of endophytic colonising bacteria
from agronomic crops and prairie plants. A
pplied and Environmental Microbiology 68(5):2198-2208を参照されたい)。本発明の好ましい一実施形態において、微生物は、根組織から単離される。植物材料から微生物を単離するためのさらなる方法については本明細書で後述する。
【0103】
本明細書において使用される場合、「単離する」および「単離された」等の用語は、広い意味で解釈されるべきである。これらの用語は、1種類以上の微生物が、特定の環境(例えば、土壌、水、植物組織)において関係付けられている材料のうちの少なくとも1つから少なくとも部分的に分離されていることを意味すると意図される。「単離する」および「単離された」等の用語は、微生物が精製されている程度を示すと解釈されるべきではない。
【0104】
本明細書において使用される場合、「個々の単離株」は、1種類以上の他の微生物から分離した後の、単一の微生物の属、種、または株が優勢である組成物または培養物を意味すると解釈されるべきである。この語句は、微生物が単離または精製された程度を示すと解釈されるべきではない。しかし、「個々の単離株」は、好ましくは、実質的にただ一つの微生物の属、種または株を含む。
【0105】
一実施形態において、最終的に選択された植物が、所望の特性を有する可能性の高い微生物群集を有する確率を高めるために、微生物集団が(本方法の前、または本方法の任意の段階で)選択圧に曝される。例えば、植物成長培地(好ましくは無菌)への添加前に、微生物を低温殺菌に曝すことは、所望の形質について選択された植物が、有害な条件において、商業的貯蔵において、またはコーティングとして種子に適用される場合には有害な環境において、より容易に生存可能な胞子形成微生物と関係付けられる確率を高める可能性がある。
【0106】
本発明の方法のステップc)において取得される微生物の第2の組は、本明細書に記載の技術を含むが、これらに限定されない当該技術分野で公知の任意の適切な技術を用いて、植物または選択された植物に関係付けられる植物の材料、表面もしくは成長培地から単離されてよいことが理解されるべきである。しかし、特定の実施形態において、本明細書で前述したように、微生物は、未精製の形態で使用されてよく、植物または培地から単離される必要はない。例えば、選択された植物に有益であることが特定された微生物を含む植物材料または成長培地は、本方法の次のラウンドのための微生物の未精製の供給源として、または本方法の終了時における微生物の未精製の供給源として取得および使用されてよい。例えば、全植物材料が取得され、任意選択で、マルチングまたは破砕などの処理をされ得る。あるいは、選択された植物の個々の組織または部分(葉、茎、根、および種子など)が、植物から分離され、任意選択で、マルチングまたは破砕などの処理をされ得る。特定の実施形態において、1種類以上の微生物の第2の組に関係付けられる植物の1以上の部分が、1以上の選択された植物から除去され、本方法の任意の連続的反復が行われるべき場合には、ステップa)で使用される1以上の植物に接ぎ木されてよい。
【0107】
本発明の方法は、それらの供給源材料から単離されている1種類以上の微生物の第2の組の観点から本明細書に記載され得る。しかし、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、これは、供給源材料から単離されていない未精製の形態における微生物の使用についての言及も包含すると解釈されるべきである。
【0108】
植物
コケおよび地衣類ならびに藻類を含む、任意の数の様々な異なる植物を本発明の方法において用いることができる。好ましい実施形態において、植物は、経済的、社会的および/または環境的価値を有する。例えば、植物には、食用作物として、繊維作物として、油料作物として、林業において、パルプおよび製糸工業において、バイオ燃料生産のための原料として、ならびに/または、観賞用植物として、使用されるものが包含されてよい。他の実施形態において、植物は、雑草などの経済的、社会的および/または環境的に望ましくないものであってよい。本発明の方法が適用されてよい植物の種類の非限定的な例の一覧を以下に示す。
【0109】
食料作物:
穀類(トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ソルガム、キビ、オートムギ、ライムギ、ライコムギ、ソバ);
葉物野菜(キャベツ、ブロッコリー、チンゲン菜、ロケットなどのアブラナ科の植物類;ほうれん草、クレス、レタスなどのサラダ野菜);
果実および開花野菜(例えば、アボガド、スイートコーン、アーティチョーク、カボチャ属、例えば、スカッシュ、キュウリ、メロン、ズッキーニ、カボチャ;ナス科の野菜/果物、例えば、トマト、ナス、トウガラシ);
マメ科の野菜(落花生、ピーナッツ、エンドウ、大豆、豆、レンズ豆、ヒヨコマメ、オクラ);
球根および茎の野菜(アスパラガス、セロリ、ネギ属の作物、例えば、ニンニク、タマネギ、ニラ);
根および塊茎野菜(ニンジン、テンサイ、タケノコ、キャッサバ、ヤムイモ、ジンジャー、キクイモ、パースニップ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、タロイモ、カブ、ワサビ);
サトウダイコン(Beta vulgaris)、サトウキビ(Saccharum officinarum))を含む糖料作物;
ノンアルコール飲料および刺激物質の生産用に栽培される作物(コーヒー、紅茶、ハーブおよび緑茶、ココア、タバコ);
真のベリーフルーツ(例えば、キウイフルーツ、ブドウ、スグリ、グーズベリー、グアバ、フェイジョア、ザクロ)、柑橘類(例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ)、子房果物(例えば、バナナ、クランベリー、ブルーベリー)、集合果(ブラックベリー、ラズベリー、ボイセンベリー)、複合果(例えば、パイナップル、イチジク)、核果作物(例えば、アプリコット、桃、サクランボ、プラム)、ピップフルーツ(例えば、リンゴ、ナシ)ならびにイチゴ、ヒマワリの種などの他のもの、などの果物作物;
料理用ハーブおよび薬草、例えば、ローズマリー、バジル、月桂樹、コリアンダー、ミント、ディル、オトギリソウ、ジギタリス、アロエベラ、ローズヒップ);
スパイスを生産する作物植物、例えば、黒胡椒、クミン、シナモン、ナツメグ、ジンジャー、クローブ、サフラン、カルダモン、メース、パプリカ、マサラ、スターアニス;
ナッツの生産用に栽培される作物、例えば、アーモンドおよびクルミ、ブラジルナッツ、カシューナッツ、ココナッツ、栗、マカダミアナッツ、ピスタチオナッツ、ピーナッツ、ピーカンナッツ;
ビール、ワインおよび他のアルコール飲料の生産用に栽培される作物、例えば、ブドウ、ホップ;
油料作物、例えば、大豆、ピーナッツ、綿、オリーブ、ヒマワリ、ゴマ、ルピナス種およびアブラナ科の作物(例えば、キャノーラ/ナタネ);ならびに、
食用菌類、例えば、ホワイトマッシュルーム、シイタケおよびヒラタケ;
【0110】
牧畜業で使用される植物:
マメ科植物:シャジクソウ属、メディカゴ種、およびミヤコグサ種;シロツメクサ(T.repens);レッドクローバー(T.pratense);コーカサスクローバー
(T.ambigum);サブタレニアンクローバー(T.subterraneum);アルファルファ/ルツェルン(Medicago sativum);一年生植物のメデ
ィック;バレルメディック、ブラックメディック;イガマメ(Onobrychis v
iciifolia);バーズフットトレフォイル(Lotus corniculat
us);グレーターバーズフットトレフォイル(Lotus pedunculatus
);
エンドウ(Pisum sativum)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ソラマメ(Viciafaba)、緑豆(Vigna radiata)
、ササゲ(Vigna unguiculata)、ヒヨコマメ(Cicer arietum)、ルピナス(ルピナス種)を含む豆類/食用豆類の種子;
トウモロコシ/コーン(Zea mays)、ソルガム(ソルガム種)、アワ(Pan
icum miliaceum、P.sumatrense)、イネ(Oryza sativa indica、Oryza sativa japonica)、コムギ(Tri
ticum sativa)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ライムギ(Secale cereale)、ライコムギ(Triticum X Secale)、
カラスムギ(Avena fatua)を含む穀類;
飼料用および観賞用の芝(Forage and Amenity grass):ロリ
ウム属などの温帯草;ウシノケグサ属;コヌカグサ属、ペレニアルライグラス(Lolium perenne);ハイブリッドライグラス(Lolium hybridum);一年生ライグラス(Lolium multiflorum)、トールフェスク(Fes
tuca arundinacea);メドウフェスク(Festuca pratensis);レッドフェスク(Festuca rubra);フェスツカ・オビナ、フェス
トロリウム属(Lolium X Festuca crosses);カモガヤ(Dac
tylis glomerata);ケンタッキーブルーグラスのPoa pratensis、Poa palustris、Poa nemoralis、Poa trivia
lis、Poa compresa、スズメノチャヒキ属;クサヨシ属(フレウム属); Arrhenatherum elatius;カモジグサ属;Avena strigosa;Setaria italic;
熱帯草、例えば:ファラリス種;ビロードキビ属;スズメガヤ属;バヒアグラス(Paspalum notatum);ヤマカモジグサ属;および
スイッチグラス(Panicum virgatum)およびススキ種などのバイオ燃
料生産のために使用される草;
【0111】
線維作物:
綿、麻、ジュート、ココナッツ、サイザル麻、亜麻(アマ属)、ニュージーランド麻(マオラン属);針葉樹林および広葉樹林の種などの紙および工学処理された木質繊維製品用に収穫された植林ならびに自然林の種;
【0112】
植林およびバイオ燃料作物に使用される木ならびに低木種:
マツ(マツ属);モミ(トガサワラ属);エゾマツ(トウヒ属種);イトスギ(イトスギ属);アカシア(アカシア属);アルダー(ハンノキ属);オーク種(コナラ属);セコイア(セコイアスギ属);ヤナギ(ヤナギ属);カバノキ(カバノキ属);ヒマラヤスギ(ヒマラヤスギ属);アッシュ(トネリコ属);カラマツ(カラマツ属);ユーカリ属;タケ(タケ連(Bambuseae)種)およびポプラ(ポプラ属);
【0113】
抽出処理、生物学的処理、物理的処理または生化学的処理によるエネルギー、バイオ燃料または工業製品への変換のために栽培される植物:
アブラヤシ、ジャトロファ、ダイズ、綿、亜麻仁などの産油植物;
パラゴムの木のHevea brasiliensisおよびパナマゴムの木のCas
tilla elasticaなどのラテックス産生植物;
バイオ燃料の生産のための直接的または間接的な供給原料として使用される植物、すなわち、バイオ燃料、工業用溶剤または化学製品、例えば、エタノールもしくはブタノール、プロパンジオール、他の燃料、あるいは、糖作物(例えば、テンサイ、サトウキビ)、澱粉生産作物(例えば、C3およびC4穀物および塊茎作物)、森林樹(例えば、マツ、ユーカリ)などのセルロース系作物ならびにタケ、スイッチグラス、ススキなどのイネ科(Graminaceous)およびイネ科(Poaceous)植物を含む工業材料、の製造中の化学的、物理的(例えば、熱もしくは触媒)、生化学的(例えば、酵素による前処理)または生物的(例えば、微生物発酵)変換後に使用される植物;
バイオ炭の生成の有無に関わらず、ガス化による、および/または、バイオ燃料への、あるいは、溶剤もしくはプラスティックなどの他の工業原料へのガスの微生物変換もしくは触媒変換によるエネルギー、バイオ燃料または工業化学製品の製造に使用される作物(例えば、針葉樹、ユーカリ、熱帯樹林もしく広葉樹林の木などのバイオマス作物、タケ、スイッチグラス、ススキ、サトウキビ、または麻などのイネ科(Graminaceous)およびイネ科(Poaceous)作物、またはポプラ、柳などの軟木;ならびに バイオ炭の生成に使用されるバイオマス作物;
【0114】
医薬品、農業栄養補助食品および薬用化粧品業界に有用な天然産物を生産する作物:
医薬品の前駆体もしくは化合物、または、栄養補助食品および薬用化粧品の化合物ならびに材料、を生産する作物、例えば、スターアニス(シキミ酸)、イタドリ(レスベラトロール)、キウイ(水溶性食物繊維、タンパク質分解酵素);
【0115】
美的または環境特性のために栽培される草花栽培植物、花卉植物、および観賞用植物:
バラ、チューリップ、菊などの花;
ツゲ属、ヘーベ属、ローザ属、ツツジ属、ヘデラなどの装飾用低木;
プラタナス、チョイシア、エスカロニア、ユーフォルビア、スゲなどの観賞用植物;
ミズゴケなどのコケ;
【0116】
バイオレメディエーションのために栽培される植物:
ヒマワリ属、アブラナ属、ヤナギ属、ポプラ、ユーカリ。
【0117】
植物は、種子、実生、挿し木、栄養繁殖体、または成長可能な他の任意の植物材料もしくは植物組織の形態で提供されてよいことが理解されるべきである。一実施形態において、種子は、表面汚染微生物を除去するために次亜塩素酸ナトリウムまたは塩化第二水銀などの材料で表面殺菌されてよい。一実施形態において、栄養繁殖体を、例えば組織培養における無菌小植物として、植物成長培地に配置する前に純粋培養で成長させる。
【0118】
成長培地
本明細書において使用される場合、「成長培地」という用語は、植物の成長を支持するのに好適な任意の培地を意味すると広く解釈されるべきである。一例として、培地は、単独の、土壌、ポッティングミックス、樹皮、バーミキュライト、水耕溶液を含むが、これらに限定されない天然培地または人工培地であり、固体植物支援システム、および組織培養ゲルに適用されてよい。培地は、単独でまたは1種類以上の他の培地と組み合わせて使用されてよいことが理解されるべきである。また、培地は、外来の栄養分ならびに根および葉のための物理的支持システムの付加の有無にかかわらず使用されてもよい。
【0119】
一実施形態において、成長培地は、土壌、砂、泥、粘土、腐植、表土、岩、または水などの天然に存在する培地である。別の実施形態において、成長培地は人工培地である。そのような人工成長培地は、天然に存在する培地の条件を模倣するように構成されてよいが、これは必須ではない。人工成長培地は、砂、鉱物、ガラス、岩、水、金属、塩、栄養素、水を含む任意の数の材料および材料の組み合わせのうちの1以上から作製され得る。一
実施形態において、成長培地は無菌である。別の実施形態において、成長培地は無菌ではない。
【0120】
培地は改質されるか、または追加の化合物もしくは成分、例えば、特定のグループの微生物と植物ならびに微生物同士の相互作用および/または選択を支援する可能性のある成分、を濃縮されてよい。
【0121】
本発明の特定の実施形態において、成長培地は、特定の微生物の生存および/または選択を支援するために前処理されてよい。例えば、培地が、その中に存在し得る内在性微生物の増殖を促進するために濃縮培地中でインキュベートすることによって前処理されてよい。さらなる例として、培地が、微生物の特定のグループの増殖を促進するために選択培地中でインキュベートすることによって前処理されてよい。さらなる例としては、その中の微生物集団の特定の要素を排除するために前処理されている成長培地、例えば、(胞子形成細菌および胞子形成真菌を除去するために)低温殺菌されるか、または有機溶媒材料に感受性の微生物を除去するが、例えば、放線菌類および胞子形成細菌の生存を許容するために様々なアルコールなどの有機溶媒で処理された成長培地、が挙げられる。
【0122】
前処理または濃縮のための方法は、存在する微生物または微生物群の識別情報に関する情報を提供する培養とは独立した微生物群のプロファイリング技術によって通知されてよい。これらの方法としては、ハイスループットシークエンシングを含むシークエンシング技術および系統発生解析、もしくはrRNAオペロンまたは他の分類学的に有益な遺伝子座の構成要素をコードする核酸のマイクロアレイベーススクリーニングを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0123】
生育条件
本発明の方法によれば、1以上の植物が、1種類以上の微生物および成長培地に供される。植物は、好ましくは、1種類以上の微生物および成長培地の存在下で成長するかまたは繁殖可能である。微生物は、さらなる微生物を添加することなく、成長培地中に、例えば、自然土壌中に天然に存在していてよい。成長培地、植物および微生物は、任意の適切な順序で組み合わされるか、または相互に暴露されてよい。一実施形態において、植物、種子、実生、挿し木、または栄養繁殖体等は、1種類以上の微生物が事前に接種された成長培地に植えられるかまたは播種される。あるいは、1種類以上の微生物は、植物、種子、実生、挿し木、または栄養繁殖体等に適用されてよく、その後、(さらなる微生物を含んでも含まなくてもよい)成長培地に植えられるかまたは播種される。別の実施形態において、植物、種子、実生、挿し木、もしくは栄養繁殖体等を、最初に成長培地に植えるかまたは播種して、成長させ、しばらく経ってから、1種類以上の微生物を植物、種子、実生、挿し木、もしくは栄養繁殖体等に適用するか、および/または成長培地それ自体に1種類以上の微生物を接種する。
【0124】
微生物は、当該技術分野で公知の任意の適切な技術を用いて、植物、実生、挿し木、もしくは栄養繁殖体等および/または成長培地に適用されてよい。しかし、一例として、一実施形態において、1種類以上の微生物が、噴霧または散布により植物、実生、挿し木、もしくは栄養繁殖体等に適用される。別の実施形態において、微生物は、播種前に(例えば、コーティングとして)種子に直接適用される。さらなる実施形態において、微生物または微生物の胞子は、顆粒に配合され、播種時に種子と一緒に適用される。別の実施形態において、根または茎を切断して、微生物の液体懸濁液、ゲル、もしくは粉末を噴霧、浸漬または他の方法で適用することにより植物表面を微生物に曝すことによって、微生物が植物中に接種されてよい。別の実施形態において、微生物は、葉もしくは根組織に直接注射されてよいか、もしくは切断された葉または根の中あるいはそれらの上、もしくは切除された胚、あるいはは幼根または鞘内に別の方法で直接接種されてよい。これらの接種さ
れた植物は、その後、さらなる微生物を含む成長培地にさらに曝露されてよいが、これは必須ではない。特定の実施形態において、微生物は、植物材料(例えば、微生物が関係付けられる植物材料)に関係する植物、実生、挿し木、もしくは栄養繁殖体等および/または成長培地に適用される。
【0125】
他の実施形態において、特に、微生物が培養できない場合に、植物細胞または細胞間隙に侵入する機会を微生物に提供する接ぎ木、外植片の挿入、吸引、エレクトロポレーション、創傷、根の剪定、気孔開口の誘導、または任意の物理的、化学的もしくは生物学的処理のうちのいずれか1つまたはそれらの組合せによって、微生物が植物に移されてよい。当業者であれば、使用可能な多数の代替技術を容易に理解することができるであろう。
【0126】
このような技術は、本方法の連続的反復ステップ(a)で使用される場合、1種類以上の微生物の第1の組および微生物の第2の組の適用に同等に適用できることが理解されるべきである。
【0127】
一実施形態において、微生物は、根、茎、葉および/または生殖植物部分などの植物の部分に侵入し(内部寄生菌となり)、および/または根、茎、葉および/または生殖植物部分の表面上で成長し(着生菌になり)および/または植物の根圏で成長する。好ましい一実施形態において、微生物は、植物との共生関係を形成する。
【0128】
当業者が理解するように、使用される生育条件は、植物の種類に応じて変更されてよい。しかし、一例として、クローバーに関しては、生育室において、典型的には約1/3の泥炭の形態の有機物質、1/3の堆肥、および1/3のふるいにかけた軽石を含み、典型的には硝酸塩、リン酸塩、カリウム塩、およびマグネシウム塩ならびに微量栄養素を含む肥料が補われ、pHが6~7の土壌で植物を成長させる。植物は、22~24℃の温度にて、日光:暗闇の時間が16:8である条件で生育してよく、自動的に給水されてよい。
【0129】
例えば、北半球で主に播種される冬コムギ品種の場合には、早く分げつを出すことは、冬季の生存、生育、および最終的な夏の穀粒収量に関連する形質であるため、北半球で冬コムギ種子が経験するのと同様の光および温度の条件下で、微生物を含む成長培地に種子を曝露した後に早く分げつを出す植物を選択することが重要である可能性がある。または、これらの形質は、本発明を用いる非現実的な期間の製品開発である10年後の木の健康および成長速度ならびに大きさに関連するため、樹種は、4~6ヶ月での成長および健康の改善のために選択され得る。
【0130】
選択
典型的には、1種類以上の微生物の存在下での1以上の植物の成長後に、1以上の植物が、1以上の選択基準に基づいて選択される。一実施形態において、植物は、1以上の表現型形質に基づいて選択される。当業者は、そのような形質が、例えば、成長速度、高さ、重さ、色、味、香り、(例えば、代謝産物、タンパク質、薬物、炭水化物、油類、および任意の他の化合物を含む)植物による1種類以上の化合物の生産の変化を含む植物の任意の観察可能な特性を含むことを容易に理解するであろう。(例えば、微生物、遺伝子型、遺伝子マーカーの存在に応答した植物遺伝子の発現パターンを含む)遺伝子型情報に基づく植物選択も想定される。特定の実施形態において、植物は、(所望の特徴もしくは形質などの)特定の特徴または形質の存在とは対照的に、(望ましくない特徴もしくは形質などの)特定の特徴もしくは形質の非存在、抑制または阻害に基づいて選択されてよいことが理解されるべきである。
【0131】
1種類以上の遺伝的マーカーの存在が評価される場合には、1種類以上のマーカーは、すでに公知であるか、かつ/または植物の特定の特徴と関係付けられてよい。例えば、増
大した成長速度または代謝産物プロファイルと関係付けられるマーカー。この情報は、所望であってよい異なる植物特性の組み合わせについて選択するために、本発明の方法において他の特性に基づく評価と組み合わせて使用することができる。そのような技術を用いて、特定の微生物叢と望ましい植物形質を関連づける、例えば植物の遺伝子型をマイクロバイオームの種にマッチングさせる、新規のQTLを特定することができる。
【0132】
一例として、植物は、本明細書に前述されるように、成長速度、(植物の重量、高さ、葉のサイズ、茎のサイズ、分枝パターン、または任意の部分のサイズを含むがこれらに限定されない)サイズ、健康状態、および生存ならびに他の特徴に基づいて選択されてよい。さらなる非限定的な例としては、種子発芽の速度;生成されるバイオマスの量;収量(牧草、穀物、繊維もしくは油)またはバイオマス生産を増加させる根および/もしくは葉/シュートの成長の増加;コムギ、オオムギ、カラスムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガムなどの穀物類、ダイズ、キャノーラ、ワタ、ヒマワリなどの脂肪種子作物、ならびにエンドウ豆、豆類などのマメ科植物の種子に特に関連し得る作物の種子収量を増加させる植物成長に及ぼす影響;ダイズ、キャノーラ、ワタ、ジャトロファ属およびヒマワリなどの油種子作物に特に関連し得る油収量を増加させる植物成長に及ぼす影響;(例えば、綿、亜麻および亜麻仁における)線維収量の増加、またはジャガイモおよびテンサイなどの作物における塊茎収量を増加させる影響;飼料用マメ科植物(アルファルファ、クローバー、メディック)、飼料用の草(ロリウム属;フェスツカ属;スズメノヒエ属;ビロードキビ属;スズメガヤ属の種)、トウモロコシなどの貯蔵牧草のために栽培した飼料用作物および飼料用穀物(コムギ、オオムギ、カラスムギ)などの飼料作物に特に関連し得るバイオマスの吸収率を増加させる植物成長に及ぼす影響;(リンゴ、ナシなどの)小さい種の果樹、(イチゴ、ラズベリー、クランベリーなどの)ベリーフルーツ、(ネクタリン、アプリコットなどの)核果、および柑橘類、ブドウ、イチジク、ナッツの木に特に関連し得る果実収量を増加させる植物成長に及ぼす影響;損傷が、細菌もしくは真菌による病変の発生などの葉の症状または損傷を受けた葉の領域の減少、または植物の根における線虫による嚢胞もしくは虫こぶの数の低下、またはそのような植物の害虫および病気の存在下での植物収量の向上によって測定される、真菌性、ウイルス性もしくは細菌性の病気を含む病気に対する、または昆虫、ダニもしくは線虫などの害虫に対する抵抗性または耐性を増加させる植物成長に及ぼす影響;例えば、抗インフルエンザ薬のオセルタミビルの製造に重要なシキミ酸の生成のために栽培されたスターアニスなどの植物、レスベラトロールの抽出のためのイタドリの生成、キウイフルーツからの可溶性繊維および食物酵素産物の生成、例えば、「縮合型タンニン」の収量の増加、または放牧動物におけるメタンなどの温室効果ガスの生成を阻害するのに有用な他の代謝産物に特に関連し得る医薬品、栄養補助食品、または薬用化粧品の目的のために栽培される植物における代謝産物収量を増加させる植物成長に及ぼす影響;例えば、形、色または味、例えば、装飾用花の色強度および形、果実もしくは野菜の味、または微生物で処理されたブドウのワインの味のために栽培される植物において特に重要であってよい美観を改善させる植物成長に及ぼす影響;ならびにバイオレメディエーションのために栽培される植物によって取り込まれるか、または解毒される毒性化合物の濃度を改善させる植物成長に及ぼす影響、に基づく植物選択が挙げられる。
【0133】
表現型または遺伝子型情報に基づく植物の選択は、限定するものではないが、植物由来の化学成分のハイスループットスクリーニング、遺伝物質のハイスループットシークエンシングを含むシークエンシング技術、ディファレンシャルディスプレイ法(DDRT-PCR、およびDD-PCRを含む)、核酸マイクロアレイ技術、RNA-seq(全トランスクリプトームショットガンシークエンシング)、qRT-PCR(定量的リアルタイムPCR)などの技術を用いて行うことができる。
【0134】
本発明の特定の実施形態において、植物形質の組み合わせの選択が望ましいことがある
。これは、いくつかの方法により行うことができる。一実施形態において、1つの形質、例えば、優れた成長についての複数ラウンドの反復改善は、許容レベルの成長が達成されるまで維持される。例えば、花の色の改良のために少なくとも異なる所望の形質を付与可能な微生物を特定するために、同様ではあるが、完全に別々のラウンドの選択が行われる。このような別々のラウンドの選択は、単一の組成物に組み合わされる別々のラウンドまたは方法から生じる微生物を用いて、使用され得る別々の方法の反復方法もしくは積層法または別々の方法の組み合わせを使用して行われてよい。この時点で、微生物は、異なる植物属性を改良することが示されている別々に発酵された微生物のそれぞれの組合せを含む製品に開発され得る。さらなる実施形態において、微生物の別々に選択された組は、2以上の組に組み合わされるか、または本発明のさらなる方法において使用されてもよい。別の実施形態において、微生物の別々に選択された組は、個々の単離株に分離され、その後、個々の単離株は、2種類以上の組に組み合わされるか、または本発明のさらなる方法において使用されてもよい。一実施形態において、組み合わされた微生物は、同じ反復サイクル中に植物および/または成長培地に適用される。例えば、一実施形態において、植物の成長を向上させることができる微生物は、花の色を増強することができる微生物と組み合わされる。組み合わされた微生物は、その後、植物成長培地に添加され、その中で植物は適切な条件下で、適切な期間にわたって成長する。成長および花の色の度合いが評価され、後続の反復で使用するために、最高評価を得た植物から微生物が単離される。許容レベルの植物成長および花の色が達成されるまで、同様の反復ラウンドが継続されてよい。このアプローチは、植物の能力を相乗的に向上させる微生物の選択、非限定的な例としては、微生物が単に2つの別々に選択された組の組み合わせとして適用される場合に達成される程度よりも優れた程度にまで植物成長および花の色を向上させる微生物の選択を補助する。
【0135】
収集
選択後、1以上の植物が収集され、植物組織が、植物との関係(例えば、内生、着生または根圏の関係)を形成する微生物を検出するために検査され得る。
【0136】
本明細書に記載の技術は、本発明の方法の終了時に微生物の第2の組を取得するために使用されるか、または本発明の方法の任意の連続的反復で使用され得る。
【0137】
1種類以上の微生物は、選択された植物の任意の適切な組織;例えば、植物全体、葉面組織、茎組織、根組織、および/または種子から単離されてよい。好ましい実施形態において、微生物は、選択された1以上の植物の根組織、茎もしくは葉の組織および/または種子から単離される。
【0138】
本発明の特定の実施形態において、微生物は、(植物組織または成長培地などの)微生物が存在する供給源材料から微生物が単離されていない未精製の形態で取得されてよい。
【0139】
微生物の単離が生じる場合には、微生物は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて植物から単離されてよい。しかし、一例として、内部寄生微生物を単離するための方法は、対象の植物材料(例えば、根、長茎、種子)の無菌切除、適切な溶液(例えば、2%次亜塩素酸ナトリウム)での表面殺菌が含まれ得、その後、植物材料は、微生物成長のための栄養培地、特に糸状菌上に置かれる。あるいは、表面殺菌された植物材料は、無菌の液体(通常は水)および液体懸濁液中で破砕され、適切な固体寒天培地、または選択的であっても、そうでなくてもよい(例えば、唯一のリン源としてフィチン酸を含む)培地の表面上に広げられた破砕植物材料の小片を含み得る。このアプローチは、分離したコロニーを形成し、公知の方法によって栄養培地の別々のプレートに個別に採取され、さらに単一種に精製され得る細菌および酵母に特に有用である。あるいは、単離プロセスで、植物の根または葉の試料は、表面殺菌はされないが、穏やかに洗浄されることによって表
面に生息する着生微生物を含むか、または寒天培地の表面上に植物の根、葉の茎の小片をインプリンティングし、持ち上げ、その後、上記のように個々のコロニーを単離することによって、着生微生物は別々に単離され得る。このアプローチは、例えば、細菌および酵母に特に有用である。あるいは、根は、根に付着した少量の土壌を洗浄せずに処理してもよく、したがって、植物の根圏にコロニーを形成する微生物を含む。別の方法で、根に付着した土壌は、除去され、希釈され、根圏微生物の個々のコロニーを単離するのに適する選択培地および非選択培地の寒天上に広げられ得る。さらなる例示的な方法は、Strobel GおよびDaisy B(2003)「Bioprospecting for microbial endophytes and their natural prod
ucts」(Microbiology and Molecular Biology Reviews 67(4):491-502;Zinniel DK et al.(2002))、「Isolation and characterisation of endophytic colonising bacteria from agronomic
crops and prairie plants」(Applied and Environmental Microbiology 68(5):2198-2208)、「Manual of Environmental Microbiology」(Hur
st et al., ASM Press、ワシントンDC)に記載されている。
【0140】
単離のための方法は、所定の試料中に存在する微生物の識別情報および活動に関する情報を提供する培養に依存しないコミュニティプロファイリング技術によって通知され得る。それらの方法としては、ハイスループットシークエンシングを含むシークエンシング技術および系統発生解析、またはrRNAオペロンの構成要素もしくは他の分類学的に有益な遺伝子座をコードする核酸のマイクロアレイに基づくスクリーニングを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0141】
本発明の実施形態において、2種類以上の微生物が植物材料から単離され、その後、個々の単離株に分離される場合には、1種類以上の微生物を互いから分離するための任意の適切な方法を使用してもよい。しかし、一例として、植物材料から調製される微生物抽出物を寒天プレート上に広げ、適切な時間、適切な温度で成長させ、その後、得られた微生物コロニーを選択し、適切な培地で成長させる(例えば、新鮮なプレート上に画線するかまたは液体培地中で成長させる)ことができる。コロニーは、当該技術分野で理解されるように、形態また任意の他の適切な選択基準に基づいて選択され得る。さらなる例として、選択培地を使用することができる。
【0142】
1種類以上の微生物は、任意の適切な時点で(本明細書に前述したように根圏を含む)植物から(単離形態または未精製の形態を含め)収集されてよい。一実施形態において、1種類以上の微生物が、植物の発芽後の任意の時点で収集される。例えば、1種類以上の微生物は、発芽直後の期間から単離することができ(発芽後の最初の数日間の生存は、例えば、細菌および真菌による根ならびに襟(collar)の腐敗に関する問題であり)、その後、植物集団から選択可能な特徴的効果を証明するために(例えば、仮に、トップ10~200種の植物を区別するために)、植物が成長するのに必要なタイミングに応じて、その後の任意の段階で単離されてよい。
【0143】
本発明者らは、異なる微生物が植物の一生の異なる段階で植物と関係付けられ得ることを観察した。したがって、異なる時点で植物を収集することは、微生物の異なる集団を選択させ得る。このような微生物は、その寿命の間の重要な時期に植物の状態、生存および成長の向上に特に有益であってよい。
【0144】
本発明の別の実施形態において、1つの世代または栄養繁殖体から次の世代または栄養繁殖体に垂直伝播を可能にする植物との関係(例えば、種子との共生もしくは着生関係、
または植物/植物的に繁殖させた栄養繁殖体との共生および着生関係)を形成する微生物の場合において、微生物は、植物から単離されなくてもよい。本発明の方法の終了時に、目的のまたは選択された植物自体は、次の世代もしくは繁殖段階の「娘」植物に効果を付与するために、種子でまたは(関係付けられる微生物と共に)植物的に増えてもよい。同様に、本方法の連続的反復が所望される場合には、1種類以上の微生物の組を含む植物材料(植物全体、植物組織、植物の一部)は、任意の連続的反復ステップa)で使用することができる。
【0145】
積層
本発明者らは、本発明の方法の反復ラウンドで植物の選択手段(または選択基準)を積層することにより得られる利点を想定する。これは、例えば、いくつかの異なる所望の形質を有する植物を支援することができる微生物集団の取得を可能にし得る。
【0146】
本発明のこの実施形態において、前述のように選択された1以上の植物から得られる1種類以上の微生物は、本方法の第2のラウンドまたはサイクルで使用される。第1のラウンドでは、1以上の植物は、バイオマスに基づいて選択されてもよい。第2ラウンドでは、1以上の植物は、特定の化合物の生成に基づいて選択されてもよい。その後、本方法の第2ラウンドから単離される微生物は、その後のラウンドで使用されてもよい。所望の場合または必要に応じて、任意の数の異なる選択基準を、本方法の連続ラウンドで使用してもよい。
【0147】
一実施形態において、本方法の各反復に適用される選択基準は異なる。しかし、本発明の他の実施形態において、各ラウンドに適用される選択基準は同じであってもよい。選択基準は同じであるが、各ラウンドで異なる強度で適用することもできる。例えば、選択基準は繊維レベルであってよく、選択される植物に必要な繊維のレベルは、本方法の連続ラウンドと共に増加してもよい。選択基準は、直鎖状、階段状または曲線状であってよいパターン中の連続ラウンドで増加または減少してよい。
【0148】
本発明の特定の実施形態において、1種類以上の微生物が、1つの世代または栄養繁殖体から次の世代または栄養繁殖体に垂直伝播を可能にする植物との共生もしくは着生関係を形成する場合において、微生物は、植物から単離される必要はない。本発明の方法の終了時に、目的のまたは選択された植物自体は、次の世代もしくは繁殖段階の「娘」植物に効果を付与するために、種子でまたは(関係付けられる微生物と共に)植物的に増えてもよい。同様に、本方法の連続的反復が所望される場合には、1種類以上の微生物の組を含む植物材料(植物全体、植物組織、植物の一部)は、連続的反復ステップa)で使用することができる。
【0149】
さらに、2以上の選択基準が、本方法の各反復に適用され得ることが理解されるべきである。
【0150】
微生物およびそれを含有する組成物
本明細書に記載の方法に加えて、本発明は、そのような方法により選択、取得または単離された微生物ならびにそのような微生物を含む組成物に関する。その最も単純な形態において、1種類以上の微生物を含む組成物は、生きている微生物、または生きているが凍結、凍結乾燥または乾燥培養を含む不活性状態にある微生物の培養物を含む。しかし、これらの組成物は、後述するように他の成分を含んでもよい。
【0151】
また、本発明は、植物の成長、品質および/もしくは健康を支持するための組成物、または植物の成長、品質および/もしくは健康を抑制または阻害するための組成物を生成するための方法であって、本明細書に前述した方法のステップならびに1種類以上の微生物
を1種類以上の追加の成分と組み合わせる追加ステップを含む方法を含むと理解されたい。
【0152】
「植物の成長、健康および/もしくは品質を支持するための組成物」は、植物の成長、一般的な健康および/もしくは生存、植物の状態を支援するか、または任意の所望の特徴、品質、および/もしくは形質の維持または促進を支援することができる組成物を含むと広く解釈されるべきである。これは、植物による1種類以上の代謝産物もしくは他の化合物の生成の維持または変更、ならびに遺伝子発現の変更などを含むと解釈されるべきである。この語句は、組成物が、それ自体で植物の成長、品質および/または健康を支持することができることを意味すると解釈されるべきではない。しかし、一実施形態において、組成物はこの目的に適している。本発明のこの態様の例示的な組成物としては、植物成長培地、植物のミネラルサプリメントおよび微量栄養素、堆肥、肥料、ポッティングミックス、殺虫剤、殺菌剤、病虫害の感染もしくは侵入から保護するための培地、組織培養培地、種子コーティング、水耕培地、干ばつまたは金属毒性などの非生物的ストレスに対する耐性を付与する組成物、土壌pHを変化させる組成物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0153】
「植物の成長、健康、および/もしくは品質を阻害または抑制するための組成物」は、植物の成長、一般的な健康および/もしくは生存を含む植物の1種類以上の特性、品質および/もしくは形質の抑制または阻害を支援することができる組成物を含むと広く解釈されるべきである。これは、植物による1種類以上の代謝産物または他の化合物の生成の維持または変更、ならびに遺伝子発現の変更などを含むと解釈されるべきである。この語句は、組成物が、それ自体で植物の成長、品質および/もしくは健康を抑制または阻害することができることを意味すると解釈されるべきではない。しかし、一実施形態において、組成物はこの目的に適している。本発明のこの態様の例示的な組成物としては、植物の成長抑制培地、除草剤、肥料、ポッティングミックス、植物ミネラルサプリメントおよび微量栄養素、堆肥、混合剤、殺虫剤、殺菌剤、組織培養培地、種子コーティング、水耕培地、干ばつまたは金属毒性などの非生物的ストレスに対する耐性を付与する組成物、土壌pHを変化させる組成物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0154】
当業者は、作製される組成物の性質、使用される微生物、および/または植物もしくはその環境への組成物の送達法を考慮して、1種類以上の微生物と組み合わせることができる追加成分の種類を容易に理解するであろう。しかし、一例として、これらの成分は、液体および/または固体の担体、抗菌防腐剤、特定の代謝活性を誘導する微生物活性化剤、(ゲルおよび粘土などの)微生物の寿命を延ばすための添加剤、水和剤、顆粒化担体、土壌、砂、微生物の生存ならびに植物の成長および一般的健康に有益であると知られる薬剤、泥炭、有機物、有機および無機充填剤、他の微生物、湿潤剤、有機および無機栄養分、ならびにミネラルを含んでよい。
【0155】
このような組成物は、使用する成分の性質を考慮して、標準的な方法を用いて作製することができる。
【0156】
本発明の方法から開発される組成物は、当業者に公知の任意の数の方法によって植物に適用することができる。これらとしては、例えば、噴霧剤;散布剤;顆粒剤;種子コーティング剤;適用時の種子用噴霧剤または散布剤;発芽前に適切な濃度の組成物を含むベッドで種子を発芽させ、実生木を移植すること;播種もしくは植え付け中に隣接種子もしくは植物に適用されるか、または直接ドリルなどのプロセスを経て既存作物に適用される小粒もしくは顆粒;植え付け前に液体または粉末の微生物基質に切断面もしくは栄養繁殖体を浸漬することによる植物の挿し木または他の栄養繁殖体への適用;作物の播種または植え付け前後に植物の肥料に適用されても、されなくてもよい噴霧剤、散布剤、顆粒剤また
は堆肥化組成物の形態での「土壌処理」としての土壌への適用;水耕成長培地への適用;植物に効果を提供する共生微生物と共に植物が従来の農業的実践を介して繁殖できるように、種子もしくは繁殖組織に及ぶ植物とのその後の共生関係の確立のための、組成物の注射を介する純粋培養条件下での植物組織への接種またはそのような組織の切断を介する他の方法での接種、が挙げられる。
【0157】
一実施形態において、本発明は、表4に記載の微生物の1種類以上を含む組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、表3に記載の1種類以上の微生物を含む組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、表2に記載の1種類以上の微生物を含む組成物を提供する。
【0158】
代替組成物の生成法
微生物は培養されると、1種類以上の代謝産物を生成することができ、この代謝産物が微生物の存在する培地に移動する。このような代謝産物は、植物に有益な特性を付与することが可能である。
【0159】
したがって、本発明は、例えば、植物の成長、品質および/もしくは健康を支持するか、植物の成長、品質および/もしくは健康を抑制または阻害するか、またはそのような組成物を生成することができる微生物を特定するために、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を選択または生成するための方法も提供する。一実施形態において、この組成物は実質的に微生物を含まない。
【0160】
一実施形態において、本方法は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物の選択のための方法であり、少なくとも
a)本明細書で前述した方法によって選択される1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後に1以上の培地から1種類以上の微生物を分離し、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される場合に、ステップc)の1以上の組成物を選択するステップ、
を含む。
【0161】
別の実施形態において、本方法は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物の選択のための方法であり、
a)本発明の第1の態様の方法によって選択される1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を形成するステップ、
b)ステップa)の1以上の培養物を不活性化し、1以上の不活性化微生物を含む1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される場合に、ステップc)からの1以上の組成物を選択するステップ、
を含む。
【0162】
一実施形態において、本方法は、植物に1以上の有益な特性を付与可能な組成物を生成することができる1種類以上の微生物の選択のための方法であり、少なくとも
a)本発明の第1の態様の方法によって選択される1種類以上の微生物を1以上の培地中で培養し、1以上の培養物を提供するステップ、
b)一定期間後に、ステップa)の1以上の培養物中の1以上の培地から1種類以上の微生物を分離し、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップ、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップ、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される1以上の組成物と関係付けられる(または言い換えると、1以上の組成物を生成するために使用される)1種類以上の微生物を選択するステップ、
を含む。
【0163】
本発明の別の方法は、
a)1以上の培地中で1種類以上の微生物を培養し、1以上の培養物を提供するステップと、
b)一定期間後に、1以上の培養物中の1以上の培地から1種類以上の微生物を分離し、微生物を実質的に含まない1以上の組成物を提供するステップと、
c)(例えば、その種子、実生、挿し木、および/または栄養繁殖体を含む)1以上の植物をステップb)の1以上の組成物に供するステップと、
d)1以上の植物に1以上の有益な特性を付与することが観察される1以上の組成物と関係付けられる(または言い換えると、1以上の組成物を生成するために使用される)1種類以上の微生物を選択するステップと、
e)本発明の第1または第8の(および/もしくは関連する)態様の方法のステップa)において、ステップd)で選択される1種類以上の微生物を使用するステップと、
を少なくとも含む。
【0164】
前2段落の方法の一実施形態において、本方法のステップb)は、ステップa)の1以上の培養物を不活性化するb)のステップと置換されて、1以上の不活性化微生物を含む1以上の組成物を提供し、その後、このプロセスのステップc)においてこの組成物を使用することができる。
【0165】
本明細書において使用される場合、1以上の培養物を「不活性化すること」および「不活性化微生物」等の用語は、微生物を実質的に不活性化、固定、死滅、そうでなければ破壊することを意味すると広く解釈されるべきである。この用語は、全ての微生物を不活性化、死滅または破壊することを意味すると解釈されるべきではないが、それが好ましい場合がある。一実施形態において、微生物は、当業者に公知の技術を使用して、自立複製がもはや測定可能ではない程度まで不活性化、固定、死滅、または破壊される。
【0166】
当該技術分野で公知の任意の適切な技術を使用して、微生物は、不活性化、固定、死滅、または破壊され得る。しかし、一例として、そうするために、化学剤および/または物理的手段を使用してもよい。一実施形態において、細胞は溶解される。別の実施形態において、細胞は、生物を生きられない状態にするために化学的手段によって固定されるが、それらの構造的完全性は保たれている。
【0167】
本明細書において使用される場合、「微生物を実質的に含まない組成物」は、広く解釈されるべきであり、微生物が全く存在しないことを意味すると解釈されるべきではないが、それが好ましい場合がある。
【0168】
これらの方法の特定の実施形態において、微生物は、多種類の微生物の成長を支持することができる培地を用いて2種類以上(好ましくは多数、例えば、少なくとも約10から最大約1000種類まで)の混合培養物として培養される。当該技術分野で公知の任意の適切な培地を使用することができる。しかし、一例として、成長培地はTSB(トリプシン大豆ブロス)、ルリア-ベルターニ(LB)ブロス、またはR2Aブロスを含んでもよ
い。別の実施形態において、別々であるが、所望の特性のアレイを使用して微生物の成長を支持することができる選択培地または濃縮培地を使用することができる。一例として、本明細書の他の箇所で言及する濃縮培地を使用してもよい。
【0169】
微生物は、任意の所望の期間、培地中で培養することができる。培養後、微生物は培地から分離され、後の使用のために保存される。また、別の組成物も生じる。その後、(任意の既知の方法、または本明細書の前述の方法を用いて)適切な成長培地中の1以上の植物がこの組成物に供される。一定期間後、(例えば、本明細書に前述したように)植物の成長が評価され、植物が選択される。植物は、好ましくは、サイズに基づいて選択される。しかし、本明細書で言及するような他の選択基準を使用してもよい。
【0170】
一実施形態において、選択された植物と関係付けられる組成物のサブセットを生成する微生物が貯蔵から回収される。その後、微生物の2種類以上の別々の培養物が混合され、2種類以上の異なる培地で成長させた2種類以上のサブ培養物に分離され得る。
【0171】
このプロセスは、組成物の生成のための標準的な出発接種原として特定、成長、および無期限に保存され得る微生物の混合物を用いて、成長植物に対する所望の効果が達成されるまで、ほとんど培地を含まない多様性の低い微生物にまで精製する漸進的なステップを用いて、有効とみなされるまで何回も反復して繰り返すことができる。
【0172】
本発明のこの態様の組成物は、それ自体で、または1種類以上の追加の成分と組み合わせて使用または処方され得る。
【0173】
本明細書の前述の一般的な方法は、成長培地、植物、微生物、タイミング、反復処理、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない本発明のこの態様に適用可能であってよいことを理解されたい。
【0174】
追加の方法
以下の方法は、本明細書の前述の1種類以上の微生物を特定するための本発明の方法に適用することができる。
【0175】
図1は、本発明の実施形態によるシステム10を示す。システム10は、要求部11、要求処理部12、成長設備13、データベースまたはライブラリ14および保管所15を含む。
【0176】
図2は、本発明の実施形態による方法20を示すフローチャートを提供する。
図2に示すステップを、
図1に示すシステム10を参照して説明する。
【0177】
本発明のこの態様を、本発明の第1または第8(および/もしくは関連する)態様を特に参照して、1以上の植物に1以上の所望の特性を付与可能な1種類以上の微生物の特定の観点から説明する。しかし、これは、本明細書に前述し、本発明の第7の(および/または関連する)態様ならびに第8の(および/または関連する)態様にまとめたように、1以上の植物に1以上の所望の特性を付与可能な組成物を生成する1以上の組成物、または1以上の植物に1以上の所望の特性を付与可能な組成物を生成する1種類以上の微生物の特定に等しく適用可能であることを理解されたい。したがって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書のこのセクションで本発明の実施形態を説明する場合、本発明の第1の態様への言及は、本発明の第7の(および/または関連する)態様ならびに第8の(および/または関連する)態様への言及も含むと解釈されるべきであり、1種類以上の微生物への言及は、1以上の組成物への言及を含むと解釈されるべきである。
【0178】
本方法は、植物(または植物のクラスまたはグループ)を特定する要求部11によりステップ21から開始される。特定の植物または植物の種類を特定することができる理由は、当業者には明らかであろう。しかし、一例として、一般的に高い成長率を有すると認められる植物が、より低い速度で成長しているか、または全く成長していないことが見いだされていることがあり、単に既存の成長率を改善したいという要望があるか、または異なる気候/環境/地理的地域に植物を導入したいという要望があることがある。本発明は、特定の植物に改良を与えることに限定されるものではなく、成長を抑制するか、またはそうでなければ植物(複数可)に悪影響を及ぼすために使用されてもよい。
【0179】
ステップ22において、要求部11は、要求処理部12に植物および/またはその識別情報を送る。要求部11は、さらに、改良することが求められる理由または特性などの関連情報を提供することができる。要求処理部12が1つのみ図示されているが、2以上の要求処理部がシステム10に備えられてもよいことを理解されたい。
【0180】
要求部11が植物のクラスまたはグループを特定する際に、2種類以上の植物品種が評価され得る。上記に代えてまたは上記に加えて、本発明の方法による異なる微生物の使用を含む異なる品種の以下の評価を含め、特定されるグループまたはクラスに基づいて、1以上の植物品種の選択がシステム10内の他の箇所で行われてもよい。
【0181】
要求は、ウェブブラウザを介してインターネット上で便利に受信されてよいが、本発明はこれに限定されない。上記に加えてあるいは上記の代わりに、ウェブブラウザが、要求に応じて行われる進捗状況に関するレポートを要求部11が表示できるように使用されてもよい。例えば、成長度合いを提供することができる。
【0182】
ステップ23において、要求処理部12は、基本的に、本発明の第1の態様による1種類以上の微生物の選択のために本方法の実施を開始することによって、要求を受信して処理する。要求処理部12は、第1の態様の方法を積極的に実行してもしなくてもよく、またはその一部のみを実行してもよいことに留意されたい。特定の実施形態によれば、要求処理部12は、要求部11と第1の態様の方法を実行することができる実体との間で、媒介者または仲介者として機能してもよい。また、異なる要求に応じて、異なる手配を行ってもよい。例えば、一つの要求に対して、要求処理部12の周囲の環境が、特定の植物を評価するのに適するが、別の植物には適さず、第3の実体の設備の援助を必要とし得る。これは、特定の土壌の種類、標高または気候の中で試験したいという要望によるものであってよい。他の要因も明らかであるが、「人工的な」環境を使用してもよいことを理解されたい。さらに、様々な程度のユーザー相互作用が要求処理部12で生じてもよい。一実施形態によれば、コンピュータのプロセッサが、要求部11によって入力されたデータに基づいて研究のためのパラメータまたは条件を選択する。理解されるように、構造化された情報要求の提供がこれを達成するために役立ち、必要に応じて、データベース14を含むデータベースを参照してもよい。
【0183】
ステップ24において、評価プロセスのパラメータが選択される。例えば、植物における所望の改善を提供することができる微生物についてデータベース14を参照してもよい。当該技術分野において、特定の植物品種と有益な関係を有する微生物についてのデータはほとんど提供されていないが、これは、本発明の方法の継続的な実施を通して改良され、データベース14に保管される。植物の種類および環境条件などの他のパラメータも選択され得る。
【0184】
ステップ25において、要求(またはその一部)および評価パラメータが成長設備13に送られ、保管所15から適切な微生物を得ることができる。これらは、事前に特定されていてもいなくてもよい。唯一の成長設備13および唯一の保管所15が示されているが
、本発明はそのように限定されないことを理解されたい。
【0185】
さらに、要求処理部12、成長設備13、データベース14および保管所15の任意の2以上が、同一場所に配置されるか、かつ/または同一の制御下にあってよい。
【0186】
ステップ26において、選択プロセスは、好ましくは、第1の態様の選択方法により実行される。
【0187】
ステップ27において、応答が要求に送信される。応答は、要求部11および/または第3の実体に送られ、好ましくは、少なくともステップ26で生成された結果のサブセット、植物の特定、植物、微生物の特定、微生物、または微生物と関係付けられる植物、すなわち、ステップ26で効果を提供することが示されているものの少なくとも1つを含む。
【0188】
ステップ28において、データベース14は、ステップ26の選択処理の結果を用いて更新されてもよい。このステップは、定期的に、または選択プロセスを実施する他の様々な段階を含め、ステップ27の前に実行されてもよい。好ましくは、少なくとも植物と微生物との間の新しい有益な関係の詳細が記録される。好ましくは、不適合または有益ではない関係も記録され、それによって、時間の経過とともに、植物および微生物の知識フレームワークを構築することを理解されたい。
【0189】
図2のステップの1以上を省略または繰り返してもよいことを理解されたい。例えば、成長設備13はステップ26で結果を生成してもよく、それに応答して、ステップ21~26の1以上を繰り返してもよい。
【0190】
したがって、本発明は、植物(またはその成長もしくは他の特性)を改良するための手段および方法を提供する。これは、第1の地理的領域(例えば、国)または別の方法で定義された環境(例えば、土壌の塩分もしくは酸性などの生育条件に影響を与えるパラメータまたは特性)で、第1または別の領域における植物改良の目的のために第1の領域に存在しないか、または存在が限定されている微生物の種の多様性を要求部11が利用できるようにすることによって達成される。他の領域は、外国に存在してもよいが、そうでなければ、政治的な境界によって定義される場合よりも植物に影響を与える環境の特性によって定義されてもよい。その結果、本発明は、第1の領域における特定の植物上の特定の微生物の有益な効果を要求部が取得するのを可能にするが、そのような微生物は、第1の領域に存在しなくても、または存在が限定されていてもよい。
【0191】
本発明の例示的な実施としては以下が挙げられる。
1.例えば、ニュージーランドにある会社(ホーム会社)が、第2の、例えば、海外にある会社(海外の会社)との契約関係を締結する。
2.海外の会社は、外来品種と有益な植物-微生物関係を形成することができるニュージーランドの陸上および海洋微生物の生物多様性の要素にアクセスするために、その国のまたは他の外国の環境に適合した植物品種の種子、挿し木または植物の他の栄養繁殖体(外来品種)をホーム会社に送ることに同意する。
3.利点の性質には、例えば、限定するものではないが、根もしくは葉の質量の増加、クレブシエラ属もしくは根粒菌などのジアゾ栄養生物による窒素固定を介する栄養利用の効率の増加、微生物のフィターゼの生成を介するリン酸遊離土壌などの土壌からの植物栄養素の放出、植物の表現型の改善、例えば、開花日、もしくは物理的形態、例えば、色、根もしくは葉の分枝の頻度における変化、または特定の目的に適する植物にさせる味、香りもしくは特性と関係付けられる化合物を含む化学プロファイルの変化、の任意の1以上による植物の生産性の増加が含まれてよい。
4.ニュージーランドにおいて、ホーム会社は、植物に及ぼす可能性のある影響の知識の有無に関わらず、種子コーティング、種子への直接接種、実生の発芽および/または成長培地の汚染を介して、成長中に土着微生物と植物の接触を確実にする成長物質の中で種子を発芽させ、植物を栽培する方法により、種子を微生物に曝露することによって、土着の微生物が外来植物との関係を形成することができることを特定する。本発明は、このような構成または方法に限定されるものではない。例えば、ニュージーランド以外の土壌中に存在する微生物が利益をもたらし、ニュージーランドに加えてまたはその代わりにそのような領域で試験を行ってもよいことが明らかになり得る。また、人工的な環境を作ってもよい。直前の例を参照すると、これは、そのような領域から土壌および/または微生物を取得し、例えば、ニュージーランドで試験を実施することによって達成されてもよい。明らかであるように、そのような実施形態は、他のパラメータの気候条件の人工的制御の提供を含んでよい。したがって、本発明は、その土着の微生物に基づく領域で試験を行うことに限定されず、微生物は、微生物の自然環境よりも他の場所で試験を実施するために人工的に導入されてもよい。
5.成長の期間およびそれらが行われる物理的条件は、海外の会社によって所望または指定されたパラメータに基づいて、植物種および特定の植物改良形質に応じて大幅に変化してよい。植物成長の関連期間後に、可能性のある植物-微生物関係の性質は、微生物が外国の作物と共生、着生または根圏の関係を形成しているかどうかを決定するために微生物学的評価によって決定され得る。
6.そのような関係が証明される場合、微生物は、(例えば、外国の)作物または植物と関係付けられ得る(例えば、ニュージーランドの土着の)微生物のコレクションを形成する。
7.本発明の一実施形態において、コレクションの微生物単離株は、例えば、種子上にコーティングされるか、種子もしくは実生中に接種されるか、無菌に関わらず成長培地に接種されてよい。
8.適当な期間後に、植物は、根および葉の成長の改善、または海外の会社が望む方法で植物に最も利益をもたらし得る植物-微生物関係を特定するように設計された他の所望の特性について評価される。
9.選択基準の例が本明細書の前述に提供されているが、第2の海外の環境の同一パラメータがホームまたは試験領域内(すなわち、例えばニュージーランド)に存在しない場合には、海外の環境のものと最も類似しているパラメータ、および海外の会社に許容されると考えられ得るパラメータが選択され得る。上記4で述べたように、本発明は、外来物質を導入し、別の方法でホームまたは試験領域において人工条件を作成することも含む。
10.1種類以上の微生物の存在下で1以上の植物を成長させ、所望の特性を有する1以上の植物を選択し、植物と関係を形成する微生物を取得することを含むステップは、1回以上繰り返される。
11.外来品種の成長に商業的に重要な利益をもたらすエリート微生物が、このプロセスによって特定され、外国の環境でのさらなる試験および選択のために海外の会社に出荷され得る。
12.さらなる実施形態において、海外の会社は、その品種または他の会社から同様のテストのために受領した他の外来品種の両方で使用するためのコレクションを拡大するために、外来品種の種子、挿し木もしくは栄養繁殖体上またはそれらの中で見出される微生物がホーム会社のコレクションに追加されることを同意するだろう。
【0192】
別の実施形態において、外来品種、すなわち、コレクション、と植物-微生物関係を形成することができる微生物単離株は、試験および選択のために第2の会社に送られ、その結果、上記の項目7~11は、第2の会社によって、および/または第2の会社の敷地の中で実行される。これは、第1の会社によって、または第1の会社の制御下で実行されてもよい。
【0193】
さらなる代替法として、植物に及ぼす可能性のある影響の知見の有無にかかわらず、所定の微生物(複数可)のコレクションを特定するのではなく、所定の微生物(複数可)のコレクションを使用して、ホーム会社は、例えば、種子コーティング、種子への直接接種、実生の発芽および/もしくは成長培地の汚染または別の方法を介して、成長中に土着微生物と植物の接触を確実にする成長物質の中で種子を発芽させ、植物を栽培する方法により、単に種子を土着微生物に暴露してよい。明らかであるように、ホーム会社は、上記に加えてあるいは上記の代わりに、同じもしくは異なる微生物が存在し得る他の領域での同様の試験のために準備してもよい。成長の期間およびそれらが行われる物理的条件は、海外の会社が望む植物種および特定の植物の形質に応じて大幅に変化し得る。植物の成長の期間後に、可能性のある植物-微生物関係の性質が上記と同様の方法で決定され得る。
【実施例0194】
以降、本発明を以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0195】
実施例1
ライグラスなどの飼料作物の糖度を向上させることができる微生物の特定:
ステップ1.未処理のライグラスの種子を小さなポットの中の多種多様な土壌に植える。土壌は、微生物の純粋培養、微生物の混合物または他の供給源由来の微生物を含む材料を含む追加の改質を含んでよい。
ステップ2.適切な成長期間後、例えば、1ヶ月後に、植物を洗浄して土壌を取り、微生物を純粋培養の個々の単離株として、または混合集団、例えば、水性の根の圧搾物および/または茎/葉の圧搾物の微生物懸濁液として、根および/または茎/葉から単離する。
ステップ3.その後、微生物を、未処理ライグラスの種子が植えられた植物の成長培地に添加する。あるいは、微生物を、適切な種子コーティング物質、例えば、ゲル中に混合し、種子上にコーティングして、同様の植物培地に植える。あるいは、種子を発芽させ、その後、短期間(通常1~24時間、微生物が発芽植物と共生または着生関係を形成することができる可能性を最大にするために)微生物に暴露し、その後、同様の成長培地に植える。これらの場合の各々において、成長培地は最初に滅菌されてもよいが、これは必須ではない。
ステップ4.適切な成長期間後、例えば、4~6週間後に葉の成長を評価し、圧搾した葉の糖度を屈折計または当業者に公知の他の方法を用いて決定する。葉の収量および/または糖度の両方について最高値を有する植物を選択し、ステップ2のように、それらの根および葉の微生物を単離および調製する。その後、葉の収量に対する糖度の選択基準の変更の有無にかかわらず、ステップ2~ステップ3のプロセスを反復的に繰り返してよい。
ステップ5.この反復プロセスを、糖度の向上が十分であるとみなされる時点まで実施した後、最高の能力を発揮する植物を選択して、それらと関係付けられる微生物を単離し、それを用いて、ライグラスの糖度を改善する商品を開発する。
【0196】
実施例2
コムギなどの穀物の分げつを向上させることができる微生物の特定:
主に北半球で播種される冬コムギ品種の場合には、早く分げつを出すことは冬の生存、成長および最終的な夏の穀物収量に関連する形質であるので、北半球の冬コムギの種子が経験するのと同様の光および温度の条件下で、微生物を含む成長培地に種子を曝露した後に早く分げつを出す植物を選択することが重要であってよい。
ステップ1.未処理のコムギの種子を小さなポットの中の多種多様な土壌または微生物基質に植える。土壌は、微生物の純粋培養、微生物の混合物または他の供給源由来の微生物を含む材料を含む追加の改質を含んでよい。
ステップ2.適切な成長期間後、例えば、1ヶ月後に、植物を洗浄して土壌を取り、微生物を純粋培養の個々の単離株として、または混合集団、例えば、水性の根の圧搾物およ
び/または茎/葉の圧搾物の微生物懸濁液として、根および/または茎/葉から単離する。
ステップ3.その後、微生物を、未処理コムギの種子が植えられた植物の成長培地に添加する。あるいは、微生物を、適切な種子コーティング物質、例えば、ゲル中に混合し、種子上にコーティングして、同様の植物培地に植える。あるいは、種子を発芽させ、その後、短期間(通常1~24時間、微生物が発芽植物と共生または着生関係を形成することができる可能性を最大にするために)微生物に暴露し、その後、同様の成長培地に植える。これらの場合の各々において、成長培地は最初に滅菌されてもよいが、これは必須ではない。
ステップ4.適切な成長期間後に、分げつを評価する。特定の期間にわたって、最初の分げつおよび/または最高数の分げつを有する植物を選択し、ステップ2のように、それらの根および葉の微生物を単離および調製する。その後、最終的な穀物収量に対する分げつの選択基準の変更の有無にかかわらず、ステップ2~ステップ3のプロセスを反復的に繰り返してよい。
ステップ5.この反復プロセスを、分げつの改良が十分であるとみなされる時点まで実施した後、最高の能力を発揮する植物を選択して、それらと関連する微生物を単離し、それを用いて、コムギ分げつの速度および割合を改善する商品を開発する。
【0197】
実施例3:
有益な作物形質を伝播する種子媒介性内部寄生菌を選択するためのプロセスの使用
種子媒介性の真菌ネオティホディウム属の株を介する耐虫および生物的および非生物的ストレスの両方に対する耐性の改善などの有益な形質を示す飼料用草は、ニュージーランドおよび他の場所の農場で広く採用されている。この種子媒介性真菌および真菌ファミリーの他の同様の種によって示されるものと類似する形質の効果をより広範囲の種子媒介性共生微生物にまで広げ、それによってはるかに広範囲の有益な作物形質へのアクセスを提供することが望ましい。
ステップ1.未処理のライグラスの種子を小さなポットの中の多種多様な土壌に植える。土壌は、微生物の純粋培養、微生物の混合物または他の供給源由来の微生物を含む材料を含む追加の改質を含んでよい。
ステップ2.適切な成長期間後に、植物を洗浄して土壌を取り、エタノールおよび次亜塩素酸ナトリウムの組み合わせまたは当業者に公知の他の方法によって表面殺菌し、共生微生物(内部寄生菌)を純粋培養の個々の単離株として、または混合集団、例えば、水性の根の圧搾物および/または茎/葉の圧搾物の微生物懸濁液として、根および/または茎/葉ならびに種子の内部組織から単離する。
ステップ3.その後、この共生微生物を、表面殺菌した発芽前のライグラス種子(栄養寒天プレート上で発芽させることにより無菌についてチェックした種子)が植えられた植物成長培地に添加する。あるいは、微生物を、適切な種子コーティング物質、例えば、ゲル中に混合し、表面殺菌した種子上にコーティングして、同様の植物培地に植える。あるいは、表面殺菌した種子を栄養寒天プレート上で発芽させ、無菌についてチェックし、その後、短期間(通常1~24時間、微生物が発芽植物と共生または着生関係を形成することができる可能性を最大にするために)微生物に暴露し、その後、同様の成長培地に植える。これらの場合の各々において、成長培地は最初に滅菌されてもよいが、これは必須ではなく、さらに微生物を成長培地および/または植物に添加してもよい。
ステップ4.適切な成長期間後、例えば、4~6週間後に、植物を所望の表現型の発現について評価する。表現型は、改善された色、植物形、または代謝産物発現などを含み得る。
ステップ5.選択した植物を、種子の設定したポイントまで成長させる。この段階で、各植物からの種子のサブセットを、培養依存的または非依存的な方法を使用して内部寄生菌の保因についてスクリーニングしてよい。ステップ3~5で説明したように、スクリーニングで陽性結果が得られた植物の残りの種子を発芽させ、微生物を添加せずに、内部寄
生菌の保因および所望の表現型を伝達する能力を高めるためのさらなる選択ラウンドにおいて植える。
あるいは、共生微生物を、表面殺菌種子からの単離株として、もしくは外植片として、または、例えば、水溶液中で表面殺菌種子を圧搾することによって調製した微生物懸濁液として各植物由来の種子のサブセットから取得してよい。ステップ3で説明したように、単離株および調製物を、表面殺菌した種子由来の植物用の接種原として使用する。
本方法のさらなる変形では、形質の種子伝達についての選択は、(事前スクリーニングの有無にかかわらず)前の世代の選択植物由来の種子のサブセットを表面殺菌し、それらを発芽させることにより発芽後に行い、ステップ3および4に概説したように表現型スクリーニングを行う時点(すなわち、種子設定の前)までしばらく成長させる。この世代において(すなわち種子伝達によって)所望の表現型を示す植物を選択し、組織外植片を調製するか、かつ/または微生物を植物組織から単離するか、かつ/または水溶液中で表面の葉もしくは根を破砕することによって微生物の粗懸濁液を作製する。ステップ3~5で説明したように、成長および選択ならびに種子収集のさらなる反復ラウンドのために、これらの調製物の1つまたはそれらの組み合わせを接種原として使用する。あるいは、ステップ3~5で説明したように、所望の種子媒介性形質を示す植物の残りの種子を発芽させ、微生物を添加せずに、内部寄生菌の保因および所望の表現型を伝達する能力を高めるためのさらなる選択ラウンドにおいて植える。
ステップ6.所望の種子媒介性表現型の発生によって決定されるように、この反復プロセスの連続ラウンドの終了時に、商業的評価および栽培品種の開発のために最高の種子系統を選択する。
【0198】
実施例4:
ライグラス(Lolium perenne)の成長を向上させることが可能な微生物を
取得するためのプロセスの使用
ライグラスは、多くの場合、肥沃な土壌で栽培され、飼料生成において重要な作物である。したがって、実験的に課された選択圧なしに、肥沃な基板でライグラスのバイオマスを増加させることができる微生物のグループを特定するために定方向選択プロセスを使用することが望ましい。
【0199】
ニュージーランドのノースアイランドの73種類の土壌試料(処理物(treatment))を、プロセスの開始のための微生物多様性の供給源として使用した。土壌試料を、必要に応じて、水はけおよび容積を増加させるために、砂:バーミキュライト(1:1または1:2)を混合した。試料を10個の再現用28ml試験管に入れ、ライグラス種子(Lolium perenne品種 One50、内部寄生菌なし)と共に植えた。
種子が発芽するまでミストホースで水やりを行い、その後、実生の乾燥を防ぐために必要に応じて毎週3回飽和するまで追加の水やりを行った。標準的な生育条件については表1を参照されたい。
【表1】
【0200】
選択ラウンド1
播種後60日(DAS)の時点で、各試料から4つの植物を選択し、選択の第1ラウンドのための微生物接種原を提供するために処理した。葉を基質上で2cmに切断し、廃棄した。根および茎に付着している土壌を振り落とし、洗浄してほとんどの土壌フラグメントを除去し、排水して、根および茎をビニール袋の中で組み合わせた。次いで、この物質を、水が10ml入っているバッグ内で潰し、根物質を懸濁した。得られた懸濁液の液体部分を、初期微生物接種原として使用した。表面殺菌した種子を、各試料の根の懸濁液1mlに1時間浸漬した。次いで、浸漬した種子を、水道水で湿らせたポッティングミックス(Kings Plant Barn、ニュージーランド;粒状の樹皮、ピートモス、軽石、および徐放性肥料)を含む28ml試験管に植えた(各処理を15回繰り返した)。十分な最終体積になるまで残りの根の懸濁液にSDWを加え、その2mlを植えた種子の上にピペットで移した。植え付け後、薄い新鮮な乾燥基質で種子を覆った。その後、週3回、水道水でポットに水やりをした。
【0201】
選択ラウンド2
118DASの時点で葉を収集し、秤量し、選択の第2ラウンドのための微生物接種原を提供するために処理物を選択した。元の73の処理物のうち葉の平均重量が最大である21の処理物のそれぞれからの8個の最大植物のみを処理のために選択した。さらに、4つの植物の4つの複合処理物のそれぞれを、葉のバイオマスが最大である16の個々の植物から作製した。基質レベルを上回る2cmに葉を切断し、秤量した。各処理に対して30個の再現物を植え、接種原の最終体積が65mlであることを除いて、選択ラウンド1に記載したのと同じ方法で、各植物の根および基底茎から基質を振り落とし、洗浄して、ビニール袋の中で組み合わせ、潰して、第2の選択ラウンドの接種に用いた。
【0202】
選択ラウンド3
第2の選択ラウンドからの植物を39DASに収集した。葉を基質上で2cmに切断し、秤量して、廃棄した。トップ15の処理物からの3つの最大植物を選択し、選択ラウンド3のための接種原を作製した。上記のように根および茎を潰し、各処理につき30回の再現のために使用した。
【0203】
微生物の単離
選択ラウンド3で得た葉を収集し、63DASで秤量し、葉の平均重量が最大である5つの処理物から最大植物を選択し、微生物単離のための接種原を得た。根および2cmの茎を洗浄し、次いで、前述のようにビニール袋で圧搾した。少量の接種原を取り、10倍希釈系列を作って、R2A上にプレーティングした。調製のそれぞれからの圧搾した根の小片も、10mlのN欠損半固体リンゴ酸(NDSM)培地に接種した(Eckford
et al,2002)。室温での2~4日のインキュベーション後に、得られた菌膜をはがし、個々のコロニーを単離するためにR2A寒天上に広げた。25%の最終濃度でエタノールを根の懸濁液に添加し、室温(RT)で30分間インキュベートし、次いで、R2A上にプレーティングするという放線菌の選択的単離ステップを行った。真菌の単離のために、圧搾した根の小片を(45℃まで冷却した)溶融したPDAに包埋した。25℃での24~72時間のインキュベート後に、R2AおよびPDAプレートを解剖顕微鏡下で調べた。存在量について細菌および真菌コロニーを評価し、形態に従ってグループ化し、代表的な単離株を収集して、新鮮なR2AまたはPDAプレート上に画線した。標準的な方法を用いて、16S rRNA遺伝子(細菌)またはITSS領域(真菌)のDNA抽出、PCR増幅および配列決定により、種レベルに対する単離株を特定した。
【0204】
微生物評価
存在量、多様性および種の特性に基づいて選択した61個の個々の単離株および28個の集合体にて微生物評価を実施した。選択した単離株をR2A(細菌)またはPDA(真
菌)上に広げ、72時間25℃でインキュベートし、次いで、寒天表面から掻き取り、滅菌容器にSDWを添加した。細菌を2mlのSDWに収集した。真菌を5~10mlのSDWを用いて無菌茶こしを通してふるい分けし、菌糸の塊および付着寒天の破片を除去した。収集した細胞の段階希釈物をプレーティングし、24時間、25℃でインキュベートし、各懸濁液中のコロニー形成単位(CFU)の数を推定した。これらのプレートカウントから、1ml当たり1×10
7(細菌)および1×10
3(真菌)CFUに対応する希釈体積を計算した。ライグラスの種子(One50、内部寄生菌なし)を微生物懸濁液に1時間浸漬し、次いで、湿らせたポッティングミックスを含む28ml試験管に個々に植えた。単離株懸濁液2mlを種子上にピペットで移し、次いで基質で覆った。その後、全ての植物に週3回水道水で水やりを行った。41DASに葉を切断し、秤量した。根を洗浄し、ブロット乾燥し、秤量した。微生物を含まない対照に対して少なくとも5%の植物バイオマス増加率を与えた微生物処理物を表2に示す。
【表2】
【0205】
葉の重量を有意に増加させた3つの微生物処理物(フィッシャーのLSD)の全てを、第3の選択ラウンドで葉の重量を最も増加させた部位から単離した。
【0206】
これらの結果は、本発明に記載の微生物の定方向選択の方法が、有利な条件下で成長させたライグラスの成長を著しく改善する微生物の組を識別することができるという証拠を提供する。
【0207】
実施例5
バジル(Ocium basilicum)の水溶性炭水化物含有量を向上させることが
できる微生物を特定するためのプロセスの使用
ニュージーランドのノースアイランドの43箇所からの土壌試料を、このプロセスのための微生物多様性の供給源として使用した。
【0208】
試料を、必要に応じて、水はけおよび容積を増加させるために、砂:バーミキュライト(1:2)を混合した。各試料を用いて、1試験管あたり3~5個のバジル種子(Oci
um basilicum、様々なスウィートジェノベーゼ(Sweet Genovese))を植えた5本の再現用28ml試験管に充填した。実生を表1に記載の条件下で、植物生育室で発芽させた。しおれないように、必要に応じて、水道水で水やりを行った。
【0209】
約14DASに、植物を収集し、葉を切断し、廃棄した。各試料について、基底茎および根の土壌を振り落とし、滅菌蒸留水(SDW)ですすぎ、それらをビニール袋の中で組み合わせた。次いで、植物材料をビニール袋内で十分に潰した。10mlのSDWを潰した根に加え、得られた懸濁液を第1の選択ラウンドの微生物接種原として使用した。
【0210】
バジルの種子を根の抽出物に最低1時間浸漬し、次いで、6mlの液体肥料(Miracle-Gro,Scotts Australia Pty Ltd)で湿らせたポッテ
ィングミックス(40%v/vの泥炭、30%の堆肥松樹皮、30%の細かい軽石、石灰でpHを6.1に調整した)を含む28ml試験管に植えた。残りの根の懸濁液を40m
lのSDWで希釈し、種子上に2mlをピペットで移した。滅菌蒸留水に浸した種子を用いて調製した微生物を含まない20個の対照の組と共に、10個の再現用試験管を各試料について調製した。全ての試験管を、ラックを超えて無作為化した。上記の条件下で、実生を植物生育室で発芽させた。発芽後、各試験管の除草を行い、1つの無作為に選択した実生を残した。
【0211】
選択ラウンド1
20DASに、各処理からの植物の半数を収集のために無作為に選択した。これらの植物の残りを、第2の選択ラウンドに接種するための抽出物の調製のために生育室で保持した。収集のために選択した植物をポットから取り除き、接着性ポッティングミックスを除去するために洗浄し、ペーパータオル上で乾燥させ、秤量し、単一のステンレス鋼製ボールベアリングを含む2ml試験管内に置いた。次いで、水溶性炭水化物についての分析まで、試料を-20℃で凍結させた。
【0212】
植物抽出物中の水溶性炭水化物(WSC)の濃度を、YemmおよびWillis(Biochem.J.1954,57:508-514)に概説されているようなアンスロン法を用いて決定した。全植物抽出物を、22hzで2分間、ビーズビーティングにより調製した。次いで、滅菌蒸留水1mLを各試料に添加した。混合後、液体懸濁液0.5mLを、30分間沸騰水浴中に入れた96ウェルマイクロ試験管ブロックに移した。次いで、各ブロックを5分間冷水浴に移し、その後、10分間、3000rcfで遠心分離してデブリをペレット化した。上清を回収し、SDWで1:25に希釈し、試料40μLを新しい96ウェルマイクロ試験管ブロックに移した。次いで、試料に、新たに調製したアントロン溶液(70%硫酸中2mg/mL)200μLを重層した。ブロックを、氷冷水浴中で5分間冷却し、反転により混合し、60秒間、沸騰水浴中に入れ、次いで、直ちに冷水浴に戻した。冷却後、各反応液の試料100μlを、平底マイクロタイタートレイに移
し、吸収をSpectraMax M5e分光光度計にて600nmで測定した。グルコ
ース標準を超純水で調製し、植物抽出物と同様に処理して、較正曲線を生成した。結果を、植物組織1グラム当たりのグルコース当量(mg)で報告する。
【0213】
43個の処理物中20個が、微生物を含まない対照に対して糖度の中央値を正に増加させた。
【0214】
選択ラウンド2
糖度の最大中央値を与えた13個の処理物を、第2の選択ラウンドのために選択した。再現の数を、各処理については30個および微生物を含まない対照については60個まで増加させたことを除いて、微生物抽出物を各処理の残りの5個の植物から調製し、上記の手順に従ってバジル種子に適用した。
【0215】
播種後15日(DAS(days after sowing))の時点で、各処理からの植物を15個収集した。植物の残りを、その後の単離実験のために生育室で保持した。析出物の形成を減少させるためにアントロン溶液を80%硫酸で調製したことを除いて、上記のように、収集のために選択した植物をポットから取り出し、水溶性炭水化物の分析のために処理した。
【0216】
13個の処理物中8個が、微生物を含まない対照に対して糖度の中央値を正に増加させた。この時点で、反復選択ラウンドを終了し、微生物の単離を行った。
【0217】
微生物単離
細菌および真菌を、最大の中央値WSCを有する7個の処理物のそれぞれからの残りの植物の最大5個から単離した。各処理では、各植物からの根および1cm未満の茎物質から基質を振り落とし、滅菌蒸留水ですすぎ、次いで、2つの部分に分けた。一方の部分を1分間、6.6%Dettol(登録商標)(活性成分:クロロキシレノール4.8%)で表面殺菌し、その後、それぞれ1分間、SDWで3回すすいだ。表面殺菌した根を、滅菌鋏を使用して断片(約1~2cm長)に切断し、NDSM培地を含む試験管に入れた(Eckford et al.,2002)。室温で2~4日間インキュベートした後、試験管を観察し、明らかな菌膜を取り除き、R2A寒天(Difco社)上で継代培養することによって精製した。
【0218】
もう一方の部分からの根をビニール袋の中で組み合わせ、バッグ内で潰し、水10mlを添加して、根物質を懸濁した。潰した根の小片を回収し、PDAプレートに配置するか、または45℃の溶融したPDAに包埋した。この懸濁液の10倍連続希釈をSDWで調製し、R2A寒天プレート(Difco社)上に広げた。R2AおよびPDAプレートを25℃でインキュベートし、24~72時間のインキュベーション後、解剖顕微鏡下で調べた。コロニーを存在量について評価し、形態学に基づいてグループ化して、代表的な単離株を取得し、新鮮なR2AまたはPDAプレート精製のために画線した。標準的な方法を用いて、16S rDNA(細菌)またはITSS領域(真菌)のDNA抽出、PCR
増幅および配列決定により種レベルに単離株を特定した。
【0219】
微生物評価
微生物評価を2ラウンド、存在量、多様性および種の特性に基づいて選択した単離株で実施した。第1の評価ラウンドでは、68個の個々の単離株および12個の集合体を含む80個の処理物を試験した。
【0220】
実施例4で概説したように、選択した細菌および真菌の単離株をそれぞれR2AおよびPDAプレート上で培養し、懸濁液を種子の接種のためにSDWで調製した。
【0221】
懸濁液を、個々の処理物として使用するために、1ml当たり1×107(細菌)および1×103(真菌)に希釈した。集合体を、等量の個々の微生物懸濁液を用いて調製した。バジルの種子を微生物懸濁液に1時間浸漬し、次いで、水道水6mlで湿らせた(実施例4に記載の)市販のポッティングミックスを含む28ml試験管に植えた。微生物懸濁液2mlを各種子上にピペットで移した。各処理について30個の再現物を調製し、微生物を含まない対照については45個の再現物を調製した。
【0222】
13DASに、各処理からの15個の植物および22個の微生物を含まない対照を、収集およびWSC決定のために選択した。ビーズビーティング後、SDW0.8mlを各試
験管に添加し、ビーズビーティングの第2ラウンドを行ったことを除いて、上記のように試料調製を行った。次いで、得られた混合懸濁液の試料0.5mLを、96ウェルマイク
ロ試験管希釈ブロックに移し、-20℃で保存した。ブロックを解凍し、上記のように炭水化物についてアッセイした。
【0223】
合計36個の微生物処理物は、微生物を含まない対照よりも高い炭水化物濃度の中央値を与えた。このデータを用いて、微生物評価の第2ラウンド用の34個の個々の単離株および10個の集合体を含む44個の処理物の精製された組を作製した。増加したWSCの結果に基づいて処理物を選択し、集合体ならびに上位にランクした微生物から調製した新たな集合体で十分に機能した個々の単離株を含めた。
【0224】
処理の再現数を45に増加し、微生物を含まない対照の再現数を90に増やしたことを除いて、上記のように、微生物処理物を調製し、バジル種子を浸漬し植えた。
【0225】
最初の30分の加熱ステップ後にブロックを一晩凍結させたことを除いて、全ての植物を播種後14日目に収集し、上記のようなWSC分析のために処理した。次いで、上記のように試料を融解し、処理した。単一バジル試料の希釈系列を、内部対照として機能させ、ブロック間の変化の正規化を可能にするために全てのブロックに添加した。
【0226】
合計20個の微生物処理物は、微生物を含まない対照よりも高いWSC濃度の平均値を与え、11個の処理物は、対照よりも5%を上回る増加を与えた(IOC;表3)。炭水化物濃度の最高の中央値を与えた処理物は、微生物評価の第1ラウンドからのトップ3にランクする個々の単離株の新しい集合体であった。
【表3】
【0227】
これらの結果は、本発明に記載の微生物の定方向選択の方法が、バジル中で水溶性炭水化物の生成を改善する微生物の組を生成することができる証拠を提供する。
【0228】
実施例6
トウモロコシ(Zea mays)の成長を改善する共生微生物の特定
共生微生物は植物組織と密接に関連するか、または植物組織内に含まれており、したがって、植物の根圏と関係付けられる微生物よりも競争およびストレス因子に曝される場合が少ない。植物バイオマスまたは穀物収量の増加などの手段によってトウモロコシの成長
を促進することが可能な共生微生物のグループを作製することが望ましい。この実施例では、共生微生物を、6.6%Dettol(登録商標)(活性成分:クロロキシレノール
4.8%)によるトウモロコシ植物組織の1分間の表面殺菌後に、依然として生存可能で
あるものとして定義する。
【0229】
ニュージーランドのノースアイランドから37個の土壌試料を、微生物多様性の供給源として使用した。必要に応じて、水はけおよび容積を増加させるために、土壌試料(処理物)を、滅菌砂:バーミキュライト(1:1または1:2)と混合した。得られた混合物を28mlの試験管に入れ、各処理においてトウモロコシ(パイオニアトウモロコシハイブリッド種子の37Y12)の15個の再現物と共に植えた。発芽するまで、ミスティングホースで実生に水やりを行い、その後、必要に応じて、飽和するまで追加の水やりを週3回行った。残りの標準生育条件については、表1を参照されたい。
【0230】
播種後60日目(DAS)に、各処理から3個の植物を選択した。トウモロコシ植物の茎を土壌上で5cmに切断し、廃棄した。根および茎に付着した土壌を振り落とし、洗浄して土壌フラグメントを除去し、排水してから根および茎をビニール袋の中で組み合わせた。次いで、この物質を袋内で潰し、水10mlを添加して根物質を懸濁させた。得られた懸濁液の液体部分を、非選択的濃縮ラウンドのための微生物接種原として使用した。この追加ラウンドの目的は、トウモロコシの組織内で成長している微生物の存在量を増加させるためであった。表面殺菌トウモロコシ(37Y12)種子を、各試料の根の懸濁液1mlに1時間浸漬した。その後、浸漬した種子を、(滅菌蒸留水で1/450(v/v)
に希釈した)Phostrogen(登録商標)水溶性植物性食品6mlで湿らせた滅菌砂およびバーミキュライトを1:2で含む28ml試験管(各処理について15個の再現物)に植えた。残りの根の懸濁液を、滅菌蒸留水(SDW)を使用して最終体積40mlまでメスアップし、その2mlを播種した種子上にピペットで移した。
【0231】
選択ラウンド1
播種後60日(DAS)に、各処理において5個の最大植物を選択し、選択の第1ラウンドのための微生物接種原を提供するために処理した。選択した植物の各葉を、基質レベルを上回る5cmに切断し、廃棄した。残りの基底茎および根を水道水で十分に洗浄し、全ての付着した土壌を除去した後、ビニール袋の中で処理物と組み合わせ、1分間、6.
6%Dettol(登録商標)で表面殺菌し、共生微生物について選択した。次いで、根を撹拌しながら1、5、10分間SDWで3回すすいだ。すすいだ根を、上記のようにビニール袋の中で潰し、最終容量20mlのSDWに懸濁した。得られた懸濁液を用いて、接種原10mlに1時間浸漬することによって15個の表面殺菌したトウモロコシ種子(パイオニアトウモロコシP9400)に接種し、その後、無菌合成肥料(Fahraeus,1957)で湿らせた1:3の滅菌砂:バーミキュライトの中に植えた。残りの懸濁液を各処理について最終容量40mlまでメスアップし、その2mlを播種した各種子上にピペットで移した。微生物を含まない対照の種子を再現用の30個の試験管の中でSDWに浸漬し、微生物接種原を含まない重複処理において試験管あたり水2mlをピペットで移した。播種後、種子を新鮮な乾燥基質で覆った。無菌状態を維持するために播種後の最初の1週間はポットにSDWで水やりを行い、次いで、週3回水道水で水やりした。
【0232】
選択ラウンド2
植物を26DASに収集した。上記のように葉を切断し、秤量した。各植物の残りの基底茎および根をきれいにすすぎ、新鮮なペーパータオルでブロットドライした後、秤量し、個別に袋詰めした。第2の選択ラウンドのための接種原を、バイオマスの最大平均値を与えた20個の処理物から調製し、5個の個々の最大植物を全処理物から調製した。選択された各処理物から10個の最大植物の根および基底茎をプールし、上記のように表面殺菌して、潰した。5個の個々の最大植物を個々に処理した。25個の処理物のそれぞれに
対して30個の再現(パイオニアP9400種子)を、無菌の合成肥料で湿らせた1:3の滅菌砂:バーミキュライトの中に植えた。
【0233】
選択ラウンド3
上記のように植物を26DASに収集し、処理した。バイオマスの最大平均値を与えた7個の処理物から6個の最大植物を選択して、第3の選択ラウンドのための接種原を作製した。前のラウンドについて記載したように植物を28日間成長させ、収集し、評価した。トップ3の処理物からの3個の最大植物の根および基底茎をプールし、実験で2個の最大植物を個々に選択し、微生物の単離のための接種原を提供した。
【0234】
微生物単離
R3選択を接種するために用いた根の懸濁液および上記で選択したR3植物から調製した懸濁液において微生物単離を行った。R2A、PDAおよびNDSM培地を用いて、上記で概説したように細菌および真菌の単離を行った。25%の最終濃度でエタノールを根の懸濁液に添加し、室温(RT)で30分間インキュベートし、次いで、R2A上にプレーティングするという放線菌の選択的な単離ステップを行った。25℃で1~7日のインキュベート後にプレートを調べた。存在量についてコロニーを評価し、形態に従ってグループ化し、代表的な単離株を収集して、R2A上で継代培養した。標準的な方法を用いて、16S rRNA遺伝子(細菌)またはITSS領域(真菌)のDNA抽出、PCR増幅および配列決定により、種レベルに単離株を特定した。
【0235】
微生物評価ラウンド
微生物評価を2ラウンド行った。第1の評価ラウンドでは、存在量、多様性および種の特性に基づいて79株を選択した。トウモロコシ種子(P9400)を使用したことを除いて、実施例4に記載したように細菌単離株を調製し、表面殺菌した種子に接種するのに用いた。真菌株をPDA上にプレーティングし、7日間25℃でインキュベートし、SDW5~10mLを用いてプレートから掻き取り、茶こしを通してふるい分けして、菌糸の塊および寒天が付着した小片を除去した。胞子/菌糸の数を、ノイバウアー改良型血球計算器および複合顕微鏡を用いて決定し、5×102、1×l03および2×103の希釈系列を調製した。次いで、各希釈物を植えた10個を上回る種子、すなわち、3用量レベルでそれぞれの1再現あたり合計30個の種子上にピペットで移した。真菌および細菌の両方について、表面殺菌したトウモロコシ種子(パイオニアP9400)を、フォーレウス溶液(Fahraeus、1957)で湿らせた無菌のポッティングミックス(40%の泥炭、30%の堆肥松樹皮、30%の細かい軽石、石灰でpHを6.1に調整した)を
含む28ml試験管に植え、新鮮な乾燥基質で覆った。その後、全ての植物を週3回、水道水で水やりを行った。
【0236】
植物を24DASに収集し、葉および根の両方を秤量した。第2の評価ラウンドのために、微生物を含まない対照を上回る葉および/または根の平均重量を増加させた微生物単離株を選択した。種子を浸漬し、3つの希釈液よりも1×10
3の濃度で真菌株を接種し、全株について15個の再現物を植えたことを除いて、上記のように選択した株を処理し、植えた。葉および根を収集し、20DASに秤量した。結果を表4に示す。単離株の4個が、微生物を含まない対照よりも有意に高いバイオマスを与えた。
【表4】
【0237】
これらの結果は、本発明に記載の微生物の定方向選択の方法が、トウモロコシの成長を改善する共生微生物の組を生成することができる証拠を提供する。
【0238】
本発明を、過度の実験を行うことなく読者が本発明を実施することを可能にするために、特定の好ましい実施形態を参照して、本明細書に記載してきた。しかし、当業者であれば、構成要素およびパラメータの多くが、本発明の範囲から逸脱することなくある程度まで変更もしくは改変が可能であるか、または既知の均等物と置換することができることを容易に認識するであろう。そのような改変および等価物は、個別に記載されたように本明細書に組み込まれることを理解されたい。さらに、タイトルまたは見出しなどは、この文書の読者の理解を高めるために提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0239】
上記および下記に引用した全ての出願、特許および刊行物の全開示(存在する場合)は参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書における全ての出願、特許および刊行物への言及は、それらが世界中の全ての国における共通の一般知識の有効な先行技術もしくは形態部分を構成するという自認または任意の形態の示唆として解釈されず、かつ解釈されるべきでもない。
【0240】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、本明細書および以下の特許請求の範囲にわたって、「含む(comprise)」、および「含む(comprising)」などの用語は、排他的な意味ではなく、包括的な意味、すなわち、「含むが、これらに限定されない」の意味で解釈されるべきである。
【0241】
参考文献一覧
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phorus in soil connection with the vital ac
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f rice seed surface sterilisation with hypochlorite on inoculated Burkholderia vietamiensis.Appl.Environ.Microbiol.67(7):p3046-3052
Fahraeus,G.(1957).J.Gen Microbiol.16:37
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Ruth Eckford,R.,Cook,F.D.,Saul,D.,Aisla
bie J.,and J.Foght(2002) Free-living Heterotrophic Bacteria Isolated from Fuel-Contaminated Antarctic Soils.Appl.Environ.Microbiol 68(10):5181
Yemm and Willis(Biochem.J.1954,57:508-514)