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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008908
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】レーザー溶着体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20230111BHJP
   B23K 26/324 20140101ALI20230111BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20230111BHJP
【FI】
B29C65/16
B23K26/324
B23K26/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104092
(22)【出願日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2021108658
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000106221
【氏名又は名称】パナソニック デバイスSUNX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】大田 健史
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】楓 祐二
【テーマコード(参考)】
4E168
4F211
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168BA02
4E168BA56
4E168BA87
4E168BA90
4F211AA24
4F211AA25
4F211AA29
4F211AA34
4F211AB22
4F211AD03
4F211AG01
4F211AP05
4F211TA01
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN27
(57)【要約】
【課題】新規なレーザー接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】非金属部材(A)と金属部材が溶着したレーザー溶着体の製造方法を、非金属部材(A)と、表面に凹凸を有する金属部材の間に樹脂層(B)を介在させて非金属部材(A)側からレーザー光を照射する工程を含み、樹脂層(B)を形成する樹脂(B1)を、融点及び/又はガラス転移温度が210℃以下の熱可塑性樹脂を含むものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属部材(A)と、表面に凹凸を有する金属部材の間に樹脂層(B)を介在させて非金属部材(A)側からレーザー光を照射する工程を含む、非金属部材(A)と金属部材が溶着したレーザー溶着体の製造方法であって、樹脂層(B)を形成する樹脂(B1)が、融点及び/又はガラス転移温度が210℃以下の熱可塑性樹脂を含む製造方法。
【請求項2】
非金属部材(A)と金属部材とを、金属部材より熱伝導率が低い材料(C)を金属部材に接触させて非金属部材(A)側からレーザー光を照射する工程を含む、非金属部材(A)と金属部材が溶着したレーザー溶着体の製造方法。
【請求項3】
非金属部材(A)と金属部材の間に、樹脂層(B)を介在させる請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂層(B)を形成する樹脂(B1)が熱可塑性エラストマーを含む請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂(B1)が、融点及び/又はガラス転移温度が210℃以下の熱可塑性樹脂を含む請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
樹脂層(B)の厚み1mmの波長940nmにおけるレーザー透過率が10%以上である請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項7】
樹脂(B1)がポリエステル系エラストマーを含む請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
樹脂層(B)を形成する樹脂組成物が、ポリエステル系エラストマーと、シランカップリング剤及び/又はポリビニルブチラール樹脂とを含む請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項9】
非金属部材(A)が樹脂部材又はガラス部材である請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項10】
樹脂部材を形成する樹脂(A1)が熱可塑性樹脂である請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
非金属部材(A)の厚み1mmの波長940nmにおけるレーザー透過率が10%以上である請求項1~3のいずれか記載の製造方法。
【請求項12】
樹脂(A1)が、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアミド系樹脂及びABS系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む請求項10記載の製造方法。
【請求項13】
樹脂(A1)がポリブチレンテレフタレートを含む請求項10記載の製造方法。
【請求項14】
樹脂層(B)の厚みが1mm以下である請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項15】
金属部材の熱伝導率が400W/mK以下である請求項1~3のいずれか記載の製造方法。
【請求項16】
材料(C)の熱伝導率と金属部材の熱伝導率の差が10W/mK以上である請求項2又は3記載の製造方法。
【請求項17】
加圧下でレーザー光の照射を行う、請求項1~3のいずれか記載の製造方法。
【請求項18】
金属部材表面にレーザーマーキングを用いて凹凸を形成する工程を含み、当該工程で得られた金属部材を使用する、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
準同時溶着によりレーザー光の照射を行う、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
非金属部材(A)と、レーザーマーキングを用いて形成された凹凸を表面に有する金属部材とが、熱可塑性樹脂で形成された樹脂層(B)を介してレーザー溶着されたレーザー溶着体。
【請求項21】
樹脂層(B)と金属部材の接合面に0.2MPaの流体を作用させた際の、当該接合面からの流体の流量が0.3mL/分以下である、請求項20記載のレーザー溶着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー溶着体の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
非金属部材と金属部材を接合する方法として、レーザー光の照射により接合を行うレーザー溶着法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定のレーザー光吸収剤と特定の溶融粘度等を有する熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物で形成された接着フィルムを介して、樹脂成形体と金属成形体とをレーザー溶着法により接合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-232531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新規なレーザー溶着体の製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、効率よくレーザー溶着しうる、レーザー溶着体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
非金属部材と金属部材とのレーザー溶着では、非金属部材が焦げやすくなる場合があり、非金属部材が焦げないようにレーザー溶着の条件等を調節すると非金属部材と金属部材が溶着しない場合があった。
【0008】
このような中、本発明者らは、レーザー溶着を、非金属部材及び金属部材間の接着層中で発熱させて行うのではなく、金属部材で発熱させるという全く別の観点で行うことに着想した。
そして、本発明者らは、非金属部材と金属部材とのレーザー溶着を特定の条件で行うことによって、効率よくレーザー溶着できること等を見出し、さらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下のレーザー溶着体の製造方法等に関する。
[1]
非金属部材(A)と、表面に凹凸を有する金属部材の間に樹脂層(B)を介在させて非金属部材(A)側からレーザー光を照射する工程を含む、非金属部材(A)と金属部材が溶着したレーザー溶着体の製造方法であって、樹脂層(B)を形成する樹脂(B1)が、融点及び/又はガラス転移温度が210℃以下の熱可塑性樹脂を含む製造方法。
[2]
非金属部材(A)と金属部材とを、金属部材より熱伝導率が低い材料(C)を金属部材に接触させて非金属部材(A)側からレーザー光を照射する工程を含む、非金属部材(A)と金属部材が溶着したレーザー溶着体の製造方法。
[3]
非金属部材(A)と金属部材の間に、樹脂層(B)を介在させる[2]記載の製造方法。
[4]
樹脂層(B)を形成する樹脂(B1)が熱可塑性エラストマーを含む請求項[1]又は[3]記載の製造方法。
[5]
樹脂(B1)が、融点及び/又はガラス転移温度が210℃以下の熱可塑性樹脂を含む[3]~[4]のいずれか記載の製造方法。
[6]
樹脂層(B)の厚み1mmの波長940nmにおけるレーザー透過率が10%以上である[1]及び[3]~[5]いずれか記載の製造方法。
[7]
樹脂(B1)がポリエステル系エラストマーを含む[1]及び[4]~[6]のいずれか記載の製造方法。
[8]
樹脂層(B)を形成する樹脂組成物が、ポリエステル系エラストマーと、シランカップリング剤及び/又はポリビニルブチラール樹脂とを含む[1]及び[3]~[7]のいずれか記載の製造方法。
[9]
非金属部材(A)が樹脂部材又はガラス部材である[1]~[8]のいずれか記載の方法。
[10]
樹脂部材を形成する樹脂(A1)が熱可塑性樹脂である[9]記載の製造方法。
[11]
非金属部材(A)の厚み1mmの波長940nmにおけるレーザー透過率が10%以上である[1]~[10]のいずれか記載の製造方法。
[12]
樹脂(A1)が、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアミド系樹脂及びABS系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む[10]~[11]のいずれか記載の製造方法。
[13]
樹脂(A1)がポリブチレンテレフタレートを含む[10]~[12]のいずれか記載の製造方法。
[14]
樹脂層(B)の厚みが1mm以下である[1]及び[3]~[13]のいずれか記載の製造方法。
[15]
金属部材の熱伝導率が400W/mK以下である[1]~[14]のいずれか記載の製造方法。
[16]
材料(C)の熱伝導率と金属部材の熱伝導率の差が10W/mK以上である[2]~[15]のいずれか記載の製造方法。
[17]
加圧下でレーザー光の照射を行う、[1]~[16]のいずれか記載の製造方法。
[18]
金属部材表面にレーザーマーキングを用いて凹凸を形成する工程を含み、当該工程で得られた金属部材を使用する、[1]~[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]
準同時溶着によりレーザー光の照射を行う、[1]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]
非金属部材(A)と、レーザーマーキングを用いて形成された凹凸を表面に有する金属部材とが、熱可塑性樹脂で形成された樹脂層(B)を介してレーザー溶着されたレーザー溶着体。
[21]
樹脂層(B)と金属部材の接合面に0.2MPaの流体を作用させた際の、当該接合面からの流体の流量が0.3mL/分以下である、[20]記載のレーザー溶着体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規なレーザー溶着体の製造方法を提供できる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、効率よくレーザー溶着可能なレーザー溶着体の製造方法を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例におけるせん断試験方法の模式図である。
図2】実施例13及び14におけるL字形状成形品(A)の上面図(図2A)、正面図(図2B)である。
図3】実施例13及び14における金型である。
図4】実施例15及び比較例2におけるアルミ筐体の斜視図(図4A)、正面図(図4B)、上面図(図4C)である。
図5】実施例15及び比較例2における接合体の概略図である。
図6】実施例における気密性試験の概略図である。
図7】実施例における打ち抜き試験の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法は、非金属部材(A)と金属部材とを、非金属部材(A)側からレーザー光を照射する工程を含む、非金属部材(A)と金属部材が溶着したレーザー溶着体(又は、接合体)の製造方法である。
本発明の製造方法において、非金属部材(A)と金属部材は、直接的に溶着していてもよいし、間接的に溶着してもよい。非金属部材(A)と金属部材が間接的に溶着している場合、非金属部材(A)と金属部材の間に、樹脂層(B)を介在させてもよい。
本発明の製造方法では、金属部材より熱伝導率が低い材料(C)を金属部材に接触させてレーザー光を照射してもよい。
【0014】
[非金属部材(A)]
非金属部材(A)としては、特に限定されず、レーザー光を透過するものであればよい。非金属部材(A)のレーザー透過率は、使用するレーザー光の発振波長[例えば、740~1600nmの範囲から選択される波長(例えば、940nm)]に応じて、例えば、厚み1mmのレーザー透過率が10%以上(例えば、20%以上、30%以上)程度であってもよい。当該レーザー透過率の上限値は、特に限定されず、例えば、100%以下、95%以下程度であってもよい。
なお、厚み1mmのレーザー透過率は、非金属部材(A)の厚み方向の透過率であってよい。
【0015】
非金属部材(A)としては、例えば、樹脂部材、ガラス部材、木材等が挙げられ、好適には、樹脂部材、ガラス部材であってもよい。
【0016】
樹脂部材を形成する樹脂(A1)は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよいが、好適には熱可塑性樹脂であってよい。樹脂(A1)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂[例えば、ポリC2-4アルキレンアリレート(例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)等]、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ABS系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルブチラール樹脂等)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー)等が挙げられ、樹脂層(B)との溶着性(又は、接着性)等の観点から、好ましくは、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ABS系樹脂等であってもよく、より好ましくはポリブチレンテレフタレート等であってもよい。
熱可塑性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
樹脂(A1)が融点を有する場合、樹脂(A1)(又は、樹脂部材)の融点は、特に限定されないが、例えば、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、220℃以上、230℃以上等であってもよく、350℃以下、340℃以下、330℃以下、320℃以下、310℃以下、300℃以下等であってもよい。
【0020】
融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定してよい。
融点の測定装置は、特に限定されないが、後述の実施例で使用のティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q100を使用してもよい。融点の測定条件は、測定対象の樹脂に応じて適宜設定してよい。融点は、融解ピークの頂上温度であってよい。
なお、樹脂部材の融点は、樹脂部材(又は、樹脂(A1)を含む樹脂組成物)に含まれる樹脂(A1)のうち、最も含量の多い樹脂の融点であってよい。
【0021】
樹脂(A1)(又は、樹脂部材)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、200℃以上、210℃以上、220℃以上、230℃以上等であってもよく、350℃以下、340℃以下、330℃以下、320℃以下、310℃以下、300℃以下等であってもよい。
なお、樹脂部材のTgは、樹脂部材(又は、樹脂(A1)を含む樹脂組成物)に含まれる樹脂(A1)のうち、最も含量の多い樹脂のTgであってよい。
【0022】
Tgは、動的粘弾性測定(DMA)によって測定してよい。
Tgの測定装置は、特に限定されないが、後述の実施例で使用のティー・エイ・インスツルメント社製RSAIII粘弾性測定装置を使用してもよい。Tgの測定条件は、測定対象の樹脂に応じて適宜設定してよい。Tgは、Tanδのピークトップの温度であってよい。
【0023】
樹脂部材は、樹脂(A1)によって形成されていればよく、樹脂(A1)以外の他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。すなわち、樹脂部材は、樹脂(A1)を含む樹脂組成物によって形成されていてもよい。
他の成分としては、例えば、可塑剤、難燃剤、着色剤、充填剤(例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属フィラー等)、安定剤(例えば、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等)、滑剤、分散剤、発泡剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0024】
樹脂(A1)を含む樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、樹脂(A1)と他の成分を配合して溶融混練する方法等を使用してもよい。
【0025】
樹脂部材の成形方法は、樹脂(A1)の種類に応じて適宜選択することでき、例えば、公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形等)を用いてよい。
【0026】
ガラス部材としては、特に限定されず、例えば、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、フッ化物ガラス、鉛ガラス等が挙げられる。
【0027】
ガラス部材の作製方法は、特に限定されず、慣用の方法を用いてよい。
【0028】
非金属部材(A)の形状は、特に限定されず、二次元的形状[例えば、板状、シート状(又はフィルム状)等]であってもよく、三次元的形状であってもよい。
【0029】
非金属部材(A)の厚みは、特に限定されず、接合体の用途等に応じて適宜設定しうるが、例えば、30μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上等であってもよく、10mm以下、8mm以下、5mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下等であってもよい。
なお、非金属部材(A)が三次元的形状の場合、非金属部材(A)の厚みは、非金属部材(A)において最も厚い箇所の厚みであってよい。
【0030】
[樹脂層(B)]
樹脂層(B)を形成する樹脂(B1)は、通常、熱可塑性樹脂であってよい。
樹脂(B1)が融点を有する場合、樹脂(B1)(又は、樹脂層(B))の融点は、例えば、300℃以下、290℃以下、280℃以下、270℃以下、260℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下等であってもよく、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上等であってもよい。
融点は、上記樹脂(A1)において記載の方法によって測定できる。
なお、樹脂層(B)の融点は、樹脂層(B)(又は、樹脂(B1)を含む樹脂組成物)に含まれる樹脂(B1)のうち、最も含量の多い樹脂の融点であってよい。
【0031】
樹脂(B1)(又は、樹脂層(B))のTgは、例えば、300℃以下、290℃以下、280℃以下、270℃以下、260℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下等であってもよく、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上等であってもよい。
Tgは、上記樹脂(A1)において記載の方法によって測定できる。
なお、樹脂層(B)のTgは、樹脂層(B)(又は、樹脂(B1)を含む樹脂組成物)に含まれる樹脂(B1)のうち、最も含量の多い樹脂のTgであってよい。
【0032】
樹脂(B1)(又は、樹脂層(B))は、樹脂(A1)(又は、樹脂部材)より低温で軟化しやすい樹脂であってもよいし、樹脂(A1)(又は、樹脂部材)より軟化しにくい樹脂であってもよい。
【0033】
樹脂(B1)としては、例えば、上記樹脂(A1)において例示の熱可塑性樹脂の他、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー)等が挙げられ、好ましくは熱可塑性エラストマー、より好ましくはポリエステル系エラストマーであってもよい。
樹脂(B1)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
樹脂(B1)は、樹脂(A1)と共通する骨格を有していてもよいし、有していなくてもよい。
なお、樹脂(B1)は、樹脂(A1)と異なる樹脂であればよい。
【0034】
なお、熱可塑性エラストマーは、通常、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体である。このようなブロック共重合体のブロック数は、特に限定されないが、例えば、ジ乃至デカブロック体等のポリブロック体であってもよい。
【0035】
熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合は、例えば、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)=95/5~5/95(例えば、93/7~7/93)、好ましくは90/10~10/90(例えば、85/15~15/85)であってもよく、80/20~30/70(例えば、75/25~35/65)、75/25~40/60(例えば、70/30~40/60、70/30~43/57)程度であってもよい。
【0036】
(ポリエステルエラストマー)
上記例示の熱可塑性エラストマーのうち、ポリエステルエラストマーについて以下に例示する。
ポリエステルエラストマーは、通常、ハードセグメント(又は、ハードブロック、高融点結晶性重合体セグメント)と、ソフトセグメント(又は、ソフトブロック、低融点重合体セグメント)を含む。
【0037】
(ハードセグメント)
ハードセグメントは、通常、芳香族ジカルボン酸成分を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分を重合成分とするポリエステル単位であってよい。
【0038】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種等が挙げられる。
【0039】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸)、アントラセンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、3-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸等であってもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を使用してよい。
【0040】
芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、低級アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステル等のC1-4アルキルエステル(例えば、ジメチルテレフタレート)]、アリールエステル、炭酸エステル、酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を使用してよい。
【0041】
ジカルボン酸成分は、必要に応じて、非芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種等を含んでいてもよい。
【0042】
非芳香族ジカルボン酸としては、例えば、脂環族ジカルボン酸(例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸等のシクロアルカンジカルボン酸;4,4'-ジシクロヘキシルジカルボン酸等)、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を使用してよい。
【0043】
また、非芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル等のC1-4アルキルエステル等)、アリールエステル、炭酸エステル、酸ハロゲン化物を含んでいてもよい。これらは、1種単独で又は2種以上を使用してよい。
【0044】
ジオール成分としては、例えば、ジオール及びそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種等が挙げられる。
【0045】
ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等のアルカンジオール、好ましくはC2-12アルカンジオール)、脂環族ジオール(例えば、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のシクロアルカンジメタノール;トリシクロデカンジメタノール等)、芳香族ジオール(例えば、キシレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等)等が挙げられる。これらのジオールは、1種単独で又は2種以上を使用してもよい。
【0046】
ジオールは、例えば、分子量400以下のジオールであってもよい。
【0047】
ジオールは、好ましくは、アルカンジオール(特に、1,4-ブタンジオール)であってもよい。
【0048】
ジオールのエステル形成性誘導体としては、例えば、ジオールのアセチル体、アルカリ金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を使用してよい。
【0049】
ハードセグメントは、アルキレンアリレート単位(例えば、ブチレンテレフタレート単位及び/又はブチレンイソフタレート単位)を含むことが好ましく、ブチレンテレフタレート単位を少なくとも含むことがより好ましい。このようなブチレンテレフタレート単位を少なくとも有するハードセグメントは、ブチレンテレフタレート単位のみで形成されていてもよいし、ブチレンテレフタレート単位とブチレンイソフタレート単位で形成されていてもよい。
【0050】
なお、ポリエステルエラストマーにおいて、ブチレンテレフタレート単位とブチレンイソフタレート単位は、ランダム共重合されていてもよいし、ブロック共重合されていてもよい。
【0051】
ハードセグメントは、代表的には、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるブチレンテレフタレート単位と、イソフタル酸及び/又はジメチルイソフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるブチレンイソフタレート単位を有するものであってもよい。
【0052】
(ソフトセグメント)
ポリエステルエラストマーのソフトセグメントとしては、例えば、ポリエーテル単位、ポリエステル単位等が挙げられる。ソフトセグメントは、1種の単位を単独で又は2種以上の単位を有していてもよく、ポリエーテル単位とポリエステル単位を両方含んでいてもよい。
【0053】
ポリエーテル単位は、通常、脂肪族ポリエーテル単位である場合が多い。
【0054】
脂肪族ポリエーテルとしては、例えば、ポリアルキレングリコール[例えば、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール等]、アルキレンオキシドの共重合体グリコール(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体グリコール、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール等)、ポリアルキレングリコールのアルキレンオキシド付加物[例えば、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物等]等が挙げられ、好ましくは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコール等であってもよい。脂肪族ポリエーテルは、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0055】
ポリエステル単位は、通常、脂肪族ポリエステル単位である場合が多い。
【0056】
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリラクトン類[例えば、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン等]等が挙げられる。これらは、1種単又は2種以上を使用してよい。
【0057】
なお、ソフトセグメントは、熱可塑性エラストマーとしての物性等を損なわない範囲であれば、他の成分(又は他の成分由来の単位)を含んでいてもよい。
【0058】
ソフトセグメントは、ポリエーテル単位を少なくとも含むのが好ましい。すなわち、好ましいポリエステルエラストマーには、ポリエーテルエステルエラストマーが含まれる。ポリエーテルエステルエラストマーは、通常、ソフトセグメントとしてポリエーテル単位を含むポリエステルエラストマーである。
【0059】
なお、ポリエステルエラストマーは、通常、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック共重合体(ポリエステルブロック共重合体)である。このようなブロック共重合体のブロック数は、特に限定されないが、例えば、ジ乃至デカブロック体等のポリブロック体であってもよい。
【0060】
ポリエステルエラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合は、例えば、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)=95/5~5/95(例えば、93/7~7/93)、好ましくは90/10~10/90(例えば、85/15~15/85)であってもよく、80/20~30/70(例えば、75/25~35/65)、75/25~40/60(例えば、70/30~40/60、70/30~43/57)程度であってもよい。
【0061】
ポリエステルエラストマーは、公知の方法で製造しうる。
例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、および低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あらかじめ高融点結晶性セグメントを作っておき、これに低融点セグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化させる方法、高融点結晶性セグメントと低融点重合体セグメントを鎖連結剤でつなぐ方法等、いずれの方法をとってもよい。
【0062】
樹脂層(B)は、樹脂(B1)によって形成されていればよく、樹脂(B1)以外の他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。すなわち、樹脂層(B)は、樹脂(B1)を含む樹脂組成物によって形成されていてもよい。
他の成分としては、上記例示の樹脂部材における他の成分等が挙げられ、好適には、シランカップリング剤、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルブチラール樹脂)、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
なお、樹脂層(B)において、レーザー光吸収剤[例えば、ニグロシン又はその塩(例えば、ニグロシン硫酸塩)、アジン系化合物、アニリンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、シアニン系化合物、ペリレン、クオテリレン、アントラキノン、スクエア酸、インモニウム染料等の公知のレーザー光吸収剤]は、含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。樹脂層(B)にレーザー光吸収剤が含まれている場合、レーザー光吸収剤の割合は比較的少なくてもよく、樹脂(B1)100重量部に対して、例えば、0.2重量部以下(例えば、0.2重量部未満)、0.1重量部以下(例えば、0.1重量部未満)、0.05重量部以下等であってもよい。
本発明の一態様によれば、レーザー光吸収剤を使用しなくても(あるいは、レーザー光吸収剤を使用する場合は、レーザー光吸収剤の含量が比較例少なくても)、レーザー溶着しうるため、比較的低いレーザー出力でレーザー溶着を行いうる。このため、本発明の一態様によれば、溶着対象の非金属部材が焦げにくい。
【0063】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、スルフィド基等を有するものであってよく、好適には、エポキシ基を有するものであってよい。シランカップリング剤において、これらの基の数は、1以上であってよい。
【0064】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノ基含有シラン{例えば、アミノ基を有するアルコキシシラン[例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロキルエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン]}、エポキシ基含有シラン{例えば、エポキシ基を有するアルコキシシラン[例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシドキシアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン]}、ビニル基含有シラン{例えば、ビニル基を有するアルコキシシラン[例えば、ビニルアルコキシシラン(例えば、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルモノ乃至トリアルコキシシラン)]}、アリル基含有シラン{例えば、アリル基を有するアルコキシシラン[例えば、アリルトリメトキシシラン等のアリルモノ乃至トリアルコキシシラン]}、(メタ)アクリロイル基含有シラン[例えば、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン(例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン)]、メルカプト基含有シラン[例えば、メルカプト基を有するアルコキシシラン(例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン)]、スルフィド基含有シラン[例えば、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のビス(モノ乃至トリアルコキシシリル)アルキルジ乃至テトラスルフィド]等が挙げられ、好ましくはエポキシ基含有シランであってもよい。これらは1種又は2種以上を使用してよい。
【0065】
シランカップリング剤の配合量は、樹脂(B1)を含む樹脂組成物において、金属部材との接合性や熱安定性等の観点から、例えば、0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%程度であってよい。
【0066】
シランカップリング剤の配合量は、樹脂(B1)100重量部に対して、金属部材との接合性や熱安定性等の観点から、例えば、0.01~8重量部、好ましくは0.05~4重量部、さらに好ましくは0.1~2重量部程度であってよい。
【0067】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられ、好ましくは芳香族アミン系酸化防止剤であってもよい。これらは1種又は2種以上を使用してよい。
【0068】
酸化防止剤の配合量は、樹脂(B1)を含む樹脂組成物において、例えば、0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%程度であってもよい。
【0069】
ポリビニルブチラール樹脂としては、特に限定されず、市販品を使用してもよい。
ポリビニルブチラール樹脂としては、例えば、積水化学工業(株)製エスフレックスBL-1、BL-2、BX-L、BM-S、KS-3、電気化学工業(株)製デンカブチラール3000-1、3000-2、3000-4、4000-2等が挙げられる。
【0070】
ポリビニルブチラール樹脂の配合量は、樹脂(B1)を含む樹脂組成物において、例えば、1~30重量%、好ましくは3~20重量%程度であってもよい。
【0071】
ポリビニルブチラール樹脂の配合量は、樹脂(B1)100重量部に対して、例えば、1~50重量部、好ましくは3~30重量部程度であってよい。
【0072】
樹脂(B1)を含む樹脂組成物は、代表的には、ポリエステル系エラストマーと、シランカップリング剤及び/又はポリビニルブチラール樹脂(さらには、酸化防止剤)を含むものであってもよい。樹脂(B1)を含む樹脂組成物は、ガラス部材と金属部材を溶着させる場合は、ポリビニルブチラール樹脂を好適に含んでいてもよい。
【0073】
樹脂(B1)を含む樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、樹脂樹脂(B1)と他の成分を配合して溶融混練する方法等を使用してもよい。
【0074】
樹脂層(B)の厚みは、接合体の用途等に応じて適宜設定しうるが、比較的薄い方が好ましく、例えば、1mm以下、好ましくは700μm以下(例えば、500μm以下、300μm以下)等であってもよい。樹脂層(B)の厚みの下限値は、特に限定されないが、例えば、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上等であってもよい。
【0075】
非金属部材(A)と樹脂層(B)の厚みの比率は、特に限定されないが、非金属部材(A)の厚み/樹脂層(B)の厚みが、例えば、100/0.1~100/1000、好ましくは100/0.5~100/100等であってもよい。
【0076】
樹脂層(B)は、レーザー光を透過するものが好ましい。
樹脂層(B)のレーザー透過率は、使用するレーザー光の発振波長[例えば、740~1600nmの範囲から選択される波長(例えば、940nm)]に応じて、例えば、厚み1mmのレーザー透過率が10%以上(例えば、20%以上、30%以上)程度であってもよい。当該レーザー透過率の上限値は、特に限定されず、例えば、100%以下、95%以下程度であってもよい。
なお、厚み1mmのレーザー透過率は、樹脂層(B)の厚み方向の透過率であってよい。樹脂層(B)のレーザー透過率は、樹脂部材のレーザー透過率との差が小さいものであってよい。
【0077】
樹脂層(B)の成形方法は、樹脂(B1)の種類に応じて適宜選択することでき、例えば、上記例示の樹脂部材の成形方法等を用いてもよい。
【0078】
樹脂層(B)は、あらかじめ成形した樹脂部材上に成形してもよいし、あらかじめ成形した樹脂層(B)上に樹脂部材を成形してもよい。すなわち、樹脂部材及び樹脂層(B)の2色成形体を使用してもよい。
当該成形方法は、特に限定されず、慣用の2色成形方法を使用してよく、上記例示の方法によって成形した樹脂部材上に上記例示の方法によって樹脂層(B)を成形してもよく、上記例示の方法によって成形した樹脂層(B)上に上記例示の方法によって樹脂部材を成形してもよい。
【0079】
[金属部材]
金属部材を形成する金属としては、特に限定されず、遷移金属元素であってもよく、典型金属元素であってもよい。
金属としては、例えば、周期表第4族金属(例えば、チタン、ジルコニウム等)、周期表第5族金属(例えば、バナジウム等)、周期表第6族金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステン等)、周期表第7族金属(例えば、マンガン等)、周期表第8族金属(例えば、鉄等)、周期表第9族金属(例えば、コバルト等)、周期表第10族金属(例えば、ニッケル、白金等)、周期表第11族金属(例えば、銅、銀、金等)、周期表第12族金属(例えば、亜鉛等)、周期表第13族金属(例えば、アルミニウム等)、周期表第14族金属(例えば、スズ、鉛等)等が挙げられる。
金属は、単一の金属であってもよく、二種以上を組み合わせた合金であってもよい。
なお、金属には、金属以外の元素[例えば、半金属(例えば、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン等)]等が含まれていてもよい。
金属の中でも、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金(例えば、ステンレス等)、チタン、チタン合金等を好適に使用してもよい。
【0080】
金属部材(又は、金属部材を形成する金属)の熱伝導率は、特に限定されないが、例えば、400W/mK以下、380W/mK以下、350W/mK以下等であってもよい。金属部材の熱伝導率の下限値は、特に限定されないが、例えば、5W/mK以上、10W/mK以上等であってもよい。
金属部材の熱伝導率は、金属部材中の熱が逃げにくい等の観点から、比較的低くてもよく、例えば、100W/mK以下(例えば、70W/mK以下、50W/mK以下、30W/mK以下、15W/mK以下)等であってもよい。
なお、熱伝導率の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよく、例えば、ホットディスク法(例えば、ISO/CD 22007-2等)等を使用してもよい。
【0081】
金属部材の形状は、特に限定されないが、非金属部材(A)との溶着面においては、非金属部材(A)の形状に対応又は追随した形状を有することが好ましい。
【0082】
金属部材の表面(又は、金属部材における非金属部材(A)との溶着面)は、好ましくは、凹凸を有していてよい。
金属部材の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、例えば、0.05μm以上(例えば、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上)、好ましくは0.5μm以上(例えば、0.6μm以上、0.7μm以上、0.8μm以上、0.9μm以上)、より好ましくは1.0μm以上(例えば、1.5μm以上、2.0μm以上、2.5μm以上、3.0μm以上、3.5μm以上、4.0μm以上、4.5μm以上、5.0μm以上)等であってもよい。
金属部材の表面粗さRaは、例えば、50μm以下、30μm以下等であってもよい。
なお、表面粗さRaの測定方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよく、例えば、後述の実施例に記載のように測定してもよい。
【0083】
樹脂層(B)と金属部材との厚みの比率は、特に限定されないが、樹脂層(B)の厚み/金属部材の厚みが、例えば、0.02/100~500/100等であってもよい。
【0084】
非金属部材(A)と金属部材との厚みの比率は、特に限定されないが、非金属部材(A)の厚み/金属部材の厚みが、例えば、1/100~1000/100等であってもよい。
【0085】
金属部材表面への凹凸の形成方法は、特に限定されず、公知の表面処理方法(例えば、酸エッチング処理、ブラスト処理、レーザーマーキング等)を使用してよく、非金属部材(A)との溶着性向上等との観点から、好適には、レーザーマーキングを使用してもよい。
レーザーマーキングの方法は、公知の方法を使用してよく、例えば、後述の実施例に記載の方法を使用してよい。
【0086】
[材料(C)]
レーザー溶着において、効率良くレーザー溶着を行う等の観点から、金属部材より熱伝導率が低い材料(C)を使用してもよい。
材料(C)を使用する場合、材料(C)は、金属部材から熱が逃げにくいように設置すればよく、金属部材と接触していればよい。代表的には、金属部材が板状の場合、レーザーを照射する側と反対側の面に、材料(C)を設置してもよい。材料(C)は、金属部材を包んでいてもよい。
【0087】
材料(C)は、レーザー溶着装置(さらには、装置の台座)上に設置すればよい。
レーザー溶着装置の金属製台座上では、金属部材から熱が逃げやすいため、断熱材としては、熱を逃げにくくするようなものが好ましい。
【0088】
材料(C)(又は、材料(C)における金属部材との接触箇所)の熱伝導率は、金属部材(又は、金属部材における材料(C)との接触箇所)における材料(C)との接触箇所の熱伝導率より低いものであればよい。
材料(C)(又は、材料(C)における金属部材との接触箇所)と金属部材(又は、金属部材における材料(C)との接触箇所)の熱伝導率の差は、特に限定されないが、例えば、10W/mK以上(例えば、20W/mK以上、30W/mK以上、40W/mK以上)、50W/mK以上(例えば、60W/mK以上、70W/mK以上、80W/mK以上、90W/mK以上)、100W/mK以上(例えば、120W/mK以上、150W/mK以上、180W/mK以上)、200W/mK以上、250W/mK以上等であってもよい。
熱伝導率の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよく、ホットディスク法(例えば、ISO/CD 22007-2等)等を使用してもよい。
【0089】
材料(C)(又は、材料(C)における金属部材との接触箇所)の熱伝導率は、比較的低くてもよく、例えば、15W/mK以下(例えば、10W/mK以下、5W/mK以下等)であってもよい。材料(C)の熱伝導率の下限値は、特に限定されず、例えば、0.001W/mK以上等であってもよい。
【0090】
材料(C)としては、例えば、非金属材料{例えば、無機繊維材(例えば、グラスウール、ロックウール等)、木質繊維材(例えば、セルロースファイバー等)、高分子材料[例えば、発泡プラスチック、熱可塑性樹脂材料、熱硬化性樹脂材料(例えば、ウレタンシート等のポリウレタン材料等)、シリコンシート]、ゴム、木、紙、新聞紙等}等が挙げられる。
【0091】
材料(C)の形状は、特に限定されず、二次元的形状[例えば、板状、シート状等]であってもよく、三次元的形状であってもよい。
【0092】
[レーザー溶着法]
本発明において、レーザー溶着は、非金属部材(A)と金属部材とを、非金属部材(A)側からレーザー光を照射する方法であれば、特に限定されない。
【0093】
レーザー光源としては、例えば、発振波長193~1600nm程度のレーザー光源を使用してよく、例えば、固体レーザー(Nd:YAG励起、半導体レーザー励起等)、半導体レーザー(650~980nm)、チューナブルダイオードレーザー(630~1550nm)、チタンサファイアレーザー(Nd:YAG励起、690~1000nm)、気体レーザー(例えば、エキシマレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム-ネオンレーザー等)、色素レーザー等が挙げられる。
【0094】
レーザー出力は、非金属部材(A)の種類や物性、金属部材の種類や物性(例えば、熱伝導率等)によって適宜設定できるが、例えば、10W以上、30W以上、50W以上程度であってもよく、500W以下、400W以下、300W以下程度であってもよい。
本発明では、比較的低いレーザー出力(例えば、200W以下、150W以下、100w以下等)であっても、効率良くレーザー溶着しうる。
【0095】
レーザーの照射方法は、特に限定されないが、ムラなく接合しやすい等の観点から、準同時溶着が好ましい。
【0096】
レーザー光の走査速度は、特に限定されず、レーザー出力等に応じて適宜設定しうるが、例えば、0.5~10mm/s程度であってもよい。
【0097】
レーザー溶着は、加圧下で行ってもよい。
圧力としては、非金属部材(A)と金属部材の種類や接合面積等によって適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、0.2~5MPa程度であってもよい。
【0098】
上記のようにして、レーザー溶着体を製造しうる。
【0099】
[レーザー溶着体]
本発明は、レーザー溶着体も含む。このようなレーザー溶着体は、上記方法で得られたものであってもよい。
【0100】
レーザー溶着体を構成する非金属部材(A)、樹脂層(B)及び金属部材は、上記例示のものであってよい。
本発明のレーザー溶着体は、特に、非金属部材(A)と、レーザーマーキングを用いて形成された凹凸を表面に有する金属部材とが、樹脂層(B)を介してレーザー溶着されたレーザー溶着体であってよい。
【0101】
レーザー溶着体において、非金属部材(A)と金属部材間の接合強度(溶着強度)は、せん断強度が、例えば、1MPa以上、好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上、特に好ましくは15MPa以上であってもよい。なお、せん断強度の測定方法は、特に限定されず、例えば、後述の実施例に記載の方法を使用してもよい。
レーザー溶着体は、樹脂層(B)と金属部材が良好な気密性を有していてよく、例えば、樹脂層(B)と金属部材の接合面(又は、接合界面)に0.2MPaの流体(例えば、空気等の気体、水等の液体)を作用させた際の、当該接合面からの流体(例えば、空気等の気体、水等の液体)の流量が、例えば、10mL/分以下(例えば、8mL/分以下、6mL/分以下、4mL/分以下等)、好ましくは実質的に0mL/分[例えば、0.3mL/分以下(例えば、0.2mL/分以下、0.1mL/分以下)又は検出限界、実質的に接合面からの気体の漏れがない]であってもよい。流量の測定方法は、特に限定されず、例えば、流量測定計を使用してもよい。
また、レーザー溶着体は、樹脂層(B)及び金属部材間の打ち抜き強度が、例えば、1MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上程度であってもよい。打ち抜き強度の測定方法は、特に限定されない。
なお、上記接合強度、気密性及び打ち抜き強度の測定に使用するレーザー溶着体の形状(非金属部材(A)、樹脂層(B)及び金属部材の形状)は、特に限定されない。
【0102】
レーザー溶着体は、樹脂層(B)と金属部材の間に、他の部材(又は、他の層)を介していてもよいが、基本的には、他の部材(又は、他の層)を介していないことが好ましい。
【実施例0103】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0104】
<融点>
ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q100を使用し、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で40℃から250℃まで加熱し、250℃で3分間保持した後10℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に10℃/分の昇温速度で250℃まで加熱した際の融解ピークの頂上温度を測定した。
【0105】
<Tg>
ティー・エイ・インスツルメント社製RSAIII粘弾性測定装置を使用し、昇温速度10℃/分、周波数10Hz、窒素雰囲気下で測定した。得られたTanδのピークトップの温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0106】
<レーザー透過率>
試験機は(株)島津製作所製の紫外近赤外分光高度計(UV-3150)を用い、また検出器には積分球を用いた。透過率は透過光量と入射光量の比を百分率で表す。近赤外線940nm波長領域の光線透過率をレーザー透過率とした。なお、レーザー透過率は、測定対象の厚み1mmで測定した。
【0107】
<レーザーマーキング>
レーザーマーキングは、パナソニック社製LP-S200を使用し、P:80%、ss 1000mm/s、f:50μsで実施した。
【0108】
<表面粗さ>
レーザー顕微鏡(キーエンス製VK-X1100)を使用して下記条件で測定し、レーザーマーカーで削られた部分の算術平均粗さ(Ra)を測定した。
使用レンズ:20×
計測種別:線粗さ
カットオフ波長:(λs)2.5μm
:(λc)0.8mm
【0109】
<レーザー溶着>
レーザー溶着は、パナソニック社製VL-W1A00(台座:SUS製)を使用し、溶着条件:70W、スポット径2.0mm、加圧力100N、走査速度10mm/sで実施した。
【0110】
<溶着強度(せん断強度)>
溶着体(接合体)の非金属部材(A)と金属部材間の溶着強度を、イマダ社製デジタルフォースゲージZTS-1000N及び電動スタンドMX2-1000Nを用いて、せん断試験にて測定した。せん断試験は、非金属部材(A)と金属部材を、平行な反対方向に、室温にて一定の引張速度10mm/minで引っ張ることにより行った(図1)。
なお、溶着面積を試験後のサンプルからマイクロスコープを用いて測定し、破壊するときの最大荷重と溶着面積から、溶着強度(破壊するときの最大荷重/溶着面積)を算出した。
【0111】
[実施例1]
(非金属部材(A)(樹脂部材))
東レ株式会社製PBT樹脂トレコン4158G30を、射出成形機(日精樹脂工業射出成型機NEX1000)を用いて、樹脂温度260℃、金型温度80℃の条件で成形を行い、得られた5cm×2cm×厚み1mmの角板を樹脂部材とした。
なお、樹脂部材は、融点225℃、Tg32℃、レーザー透過率37%であった。
【0112】
(樹脂層(B))
東レ・デュポン製ハイトレルR4057N、積水化学工業製エスレックBM-SZ、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製シランカップリング剤OFS-6040を89:10:1の配合比率(質量比)でドライブレンドし、45mmφのスクリューを有する2軸押出機を用いて、220℃の温度設定で溶融混錬し樹脂組成物(b1)を得た。得られた樹脂組成物(b1)を、15mm×15mm×厚さ50μmのフィルムに成形し、樹脂層(B)とした。
なお、樹脂層(B)は、融点163℃、Tg-26℃、レーザー透過率60%であった。
【0113】
(金属部材)
4.5cm×1.8cm×厚さ1.5mmのアルミニウム合金(A5052)(熱伝導率:約137W/mK)の表面に、上記方法によりレーザーマーキングを行い、凹凸を形成した。
【0114】
レーザー溶着機の金属製台座上に、材料(C)(ウレタンシート、厚み1mm、熱伝導率:約0.3W/mK)を設置し、当該材料(C)上に金属部材を載せ、当該金属部材上に樹脂層(B)を載せ、当該樹脂層(B)上に樹脂部材を載せ、樹脂部材側から上記レーザー溶着方法を用いてレーザー照射を行い(溶着距離10mm)、接合体を得た。なお、金属部材、樹脂層(B)及び樹脂部材は、接合体において金属部材と樹脂部材をそれぞれ引っ張ることができるよう、図1に示すように積層した。
【0115】
[実施例2]
樹脂層(B)の厚みを200μmとした以外は実施例1と同様にし、接合体を得た。
【0116】
[実施例3]
金属部材表面にレーザーマーキング処理を行わなかった以外は実施例1と同様にし、接合体を得た。
【0117】
[実施例4]
材料(C)を使用しなかった以外は実施例1と同様にし、接合体を得た。
【0118】
[比較例1]
金属部材表面にレーザーマーキング処理を行わず、材料(C)を使用しなかった以外は実施例1と同様にしたが、溶着せず、接合体を得ることができなかった。
【0119】
実施例1~4及び比較例1の評価結果を表1に示す。
なお、実施例3及び比較例1は、金属部材表面のレーザーマーキング処理を行っていないため、金属表面の表面粗さを測定していない。
【0120】
【表1】
【0121】
上記のように、実施例1~4では、金属部材と非金属部材(A)とをレーザー溶着できた。
【0122】
[実施例5]
東レ・デュポン製ハイトレルR4047Nを、15mm×15mm×厚さ50μmのフィルムに成形し、樹脂層(B)とした。
なお、当該樹脂層(B)は、融点182℃、Tg-40℃であった。
この樹脂層(B)を使用した以外は実施例1と同様にして接合体を得た。
【0123】
[実施例6]
ウレタンエラストマー(日本ミラクトン製熱可塑性ウレタンエラストマー「ミラクトンE380」)を15mm×15mm×厚さ200μmのフィルムに成形し、樹脂層(B)とした。
なお、樹脂層(B)は、Tg-60℃であった。
この樹脂層(B)を使用した以外は実施例1と同様にして接合体を得た。
【0124】
[実施例7]
AS樹脂(東レ製トヨラックA25C)を15mm×15mm×厚さ140μmのフィルムに成形し、樹脂層(B)とした。
なお、樹脂層(B)は、Tg100℃であった。
この樹脂層(B)を使用した以外は実施例1と同様にして接合体を得た。
【0125】
[実施例8~9]
表2に記載の表面粗さとなるようにレーザーマーキング条件を調整した以外は実施例1と同様にし、接合体を得た。
【0126】
[実施例10]
東レ株式会社製PBT樹脂トレコン4158G30の代わりに、東レ株式会社製PBT樹脂トレコン1251G-30 HL SG1を用いた以外は実施例1と同様にし、樹脂部材を得た。
なお、樹脂部材は、融点225℃、Tg32℃、レーザー透過率55%であった。
樹脂層(B)を使用せず、金属部材上に上記樹脂部材を載せてレーザー溶着を行った以外は実施例1と同様にし、接合体を得た。
【0127】
[実施例11]
非金属部材(A)として、樹脂部材の代わりに、5cm×2cm×厚み1mmの角板状ガラスを使用した以外は実施例1と同様にし、接合体を得た。
【0128】
[実施例12]
東レ株式会社製PBT樹脂トレコン4158G30の代わりに東レ株式会社製PBT樹脂トレコン1101G30を用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂部材を得た。
なお、樹脂部材は、融点225℃、Tg32℃、レーザー透過率22%であった。
当該樹脂部材を用いた以外は実施例1と同様にして、接合体を得た。
【0129】
[実施例13]
まず、東レ株式会社製PBT樹脂トレコン4158G30を使用して、図2に示す巾20mm、長さ60mm、厚み1mmのL字形状成形品(A)(非金属部材(A))を、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形により作製した。図(2A)は上面図であり、図(2B)は正面図である。成形されたL字形状成形品(A)を図3に示す逆T字形状の金型にセットした。この後、樹脂組成物(b1)を、金型のL字形状成形品(A)がセットされていない部分に入れ、シリンダー温度230℃、金型温度50℃で射出成形し、樹脂組成物(b1)からなる成形品(B)(樹脂層(B))と上記成形品(A)とが接合した複合成形品を得た。この複合成形品の両材料が接していない部分を切断し、角板状の2色成形品(樹脂部材と樹脂層(B)の2色成形体)を得た。
当該2色成形体を金属部材上に載せた以外は実施例1と同様にして、接合体を得た。
【0130】
[実施例14]
まず、東レ株式会社製PPS樹脂トレリナA602XL01(融点278℃、ガラス転移温度93℃、レーザー透過率35%)を使用して、図2に示す巾20mm、長さ60mm、厚み1mmのL字形状成形品(A)を、シリンダー温度320℃、金型温度130℃の条件で射出成形により作製した。成形されたL字形状成形品(A)を、図3に示す逆T字形状の金型にセットした。この後、樹脂組成物(b1)を、金型のL字形状成形品(A)がセットされていない部分に入れ、シリンダー温度230℃、金型温度50℃で射出成形し、樹脂組成物(b1)からなる成形品(B)と上記成形品(A)とが接合した複合成形品を得た。この複合成形品の両材料が接していない部分を切断し、角板状の2色成形品(樹脂部材と樹脂層(B)の2色成形体)を得た。
当該2色成形体を金属部材上に載せた以外は実施例1と同様にして、接合体を得た。
【0131】
実施例5~14の評価結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例5~14では、金属部材と非金属部材(A)とをレーザー溶着できた。
【0132】
【表2】
【0133】
[実施例15]
金属部材として、中心部にM5 X 0.8ピッチの穴を有する23mm×23mm×厚さ2mmの板状のアルミニウム合金(A5052)に、四角柱状の空洞(14mm×14mm×高さ15mm)を有する四角柱状(15mm×15mm×高さ15mm)のアルミニウム合金(A5052)が接合したアルミ筐体を使用した。当該アルミ筐体の斜視図を図4A、正面図を図4B、上面図を図4Cに示す。
このアルミ筐体の上面にレーザーマーキングを行い、凹凸を形成した。
レーザー溶着機の金属製台座上に、材料(C)(ウレタンシート、厚み1mm、熱伝導率:約0.3W/mK)を設置し、当該材料(C)上にアルミ筐体1個を載せ、当該アルミ筐体の上面に、樹脂組成物(b1)を用いて形成された20mm×20mm×厚さ200μmのフィルム(樹脂層(B))を置き、さらにその上に、実施例10と同様にして作製した樹脂部材(東レ株式会社製PBT樹脂トレコン1251G-30 HL SG1使用)(非金属部材(A))を置き(図5)、樹脂部材側から上記レーザー溶着方法を用いてレーザー照射を行い、接合体を得た。なお、図5は、接合体の断面図を示す。
【0134】
[比較例2]
使用するアルミ筐体の上部にレーザーマーキングを行わず、凹凸を形成しなかった以外は実施例15と同様にして、接合体を得た。
【0135】
[気密性試験]
図6のように接合体のアルミ筐体の穴からホースを用いて0.2MPaの空気を入れ、接合体(接合体の樹脂層(B)及びアルミ筐体間)から10秒間空気の漏れが発生しなければ〇(合格)、発生すれば×(不合格)とした。また、実施例15の接合体について、図6のようにアルミ筐体の穴から0.2MPaの空気を入れた際の、樹脂層(B)及びアルミ筐体の接合面からの空気の流量を、流量計を用いて測定したところ、0.1mL/分以下であった。
【0136】
[打ち抜き試験]
図7のように接合体の上側がアルミ筐体となるように設置し、接合体上部(アルミ筐体)の穴から鉄棒を差し込んで押し、打ち抜き強度をイマダ社製デジタルフォースゲージZTS-1000N及び電動スタンドMX2-1000Nを用いて測定した。
【0137】
実施例15及び比較例2の接合体について、気密性試験及び打ち抜き試験を行った結果を表3に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
表3が示すように、実施例15では、接合体の気密性が良好で、金属部材と非金属部材とのレーザー溶着性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法は、金属部材と非金属部材とのレーザー溶着体を効率よく製造しうるため、有用である。
【符号の説明】
【0141】
1 非金属部材(A)
2 樹脂層(B)
3 金属部材
4 アルミ筐体
5 空気
6 鉄棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7