(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089097
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】車両の乗員室内への設置が意図された放射パネル
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20230620BHJP
【FI】
H05B3/20 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063657
(22)【出願日】2023-04-10
(62)【分割の表示】P 2021517381の分割
【原出願日】2019-09-23
(31)【優先権主張番号】1858821
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、ドビエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】フランク、マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ラウリネ、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】バニア-ダニエラ、エルナンデス-ベッロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ、ド、プルスメーカー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】幾何学的及び熱的制約を克服する、車両、特に自動車、に取り付けられることが意図された放射パネルを提案する。
【解決手段】車両の乗員室内、特に自動車の乗員室内、に設置することが意図された放射パネル(1)であって、前記放射パネル(1)は、極性が異なる少なくとも2つの一次電極を有する少なくとも1つの電極アレイを備え、極性が異なる少なくとも2つの前記一次電極がそれぞれ互いの周りに少なくとも1つの螺旋状の巻回部を画定するように、前記電極アレイが配置されている、放射パネル(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(80)の乗員室(3)内、特に自動車の乗員室内、に設置することが意図された放射パネル(1)であって、
前記放射パネル(1)は、極性が異なる少なくとも2つの一次電極を有する少なくとも1つの電極アレイを備え、
極性が異なる少なくとも2つの前記一次電極がそれぞれ互いの周りに少なくとも1つの螺旋状の巻回部を画定するように、前記電極アレイが配置されている、放射パネル(1)。
【請求項2】
極性が異なる少なくとも2つの前記一次電極(11,12)は、それらの長さの少なくとも一部にわたって互いに等距離にある、請求項1に記載の放射パネル(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記一次電極(11,12)は、少なくとも1つの散逸枝部(21,22)、特に複数の散逸枝部(21,22)、を含み、前記散逸枝部(21,22)は、当該散逸枝部(21,22)と、極性が異なる前記一次電極(11,12)との間に流れる電流を生成するように設計されている、請求項1又は2に記載の放射パネル(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記一次電極(11,12)の少なくとも1つの前記散逸枝部(21,22)は、極性が異なる少なくとも1つの前記一次電極(11,12)の隣接する2つの前記散逸枝部(21,22)の間に配置され、少なくとも1つの前記一次電極(11,12)の前記散逸枝部(21,22)と、極性が異なる少なくとも1つの前記一次電極(11,12)の隣接する2つの前記散逸枝部(21,22)との間で前記電流が確立され得る、請求項3に記載の放射パネル(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの前記一次電極は、その長さの少なくとも一部にわたって変動する断面積又は一定の断面積を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射パネル(1)。
【請求項6】
車両(80)の乗員室(3)内、特に自動車の乗員室内、に設置することが意図された放射パネル(1)であって、
前記放射パネル(1)は、極性が異なる少なくとも2つの一次電極(11,12)を有する少なくとも1つの電極アレイ(10)を備え、
少なくとも1つの前記一次電極(11,12)が、少なくとも1つの前記一次電極(11,12)を通って流れる電流の流れにより発熱可能な散逸領域により、少なくとも局所的にいずれか一方の側で囲まれるように、前記電極アレイ(10)が配置されている、放射パネル(1)。
【請求項7】
前記一次電極(11,12)は互いに平行に延びている、請求項6に記載の放射パネル(1)。
【請求項8】
極性が反対である前記一次電極が互いに交互に配置されている、請求項6又は7に記載の放射パネル(1)。
【請求項9】
前記一次電極は、互いに等距離にある、請求項6~8のいずれか一項に記載の放射パネル(1)。
【請求項10】
前記一次電極には、異なる強度の電流が流れる、請求項6~9のいずれか一項に記載の放射パネル(1)。
【請求項11】
前記一次電極は、平行且つ整列している又は平行且つ互いにオフセットしている、請求項6に記載の放射パネル(1)。
【請求項12】
少なくとも1つの前記一次電極(11,12)は、少なくとも2つの補完枝部(31,32)を有する、請求項6に記載の放射パネル(1)。
【請求項13】
2つの前記補完枝部(31,32)は、同一の又は異なる接合点から始まって前記一次電極(11,12)から分岐する、請求項12に記載の放射パネル(1)。
【請求項14】
2つの前記補完枝部(31,32)は、n’の直線部分から形成されている、請求項12又は13に記載の放射パネル(1)。
【請求項15】
2つの前記補完枝部(31,32)は、実質的に円弧である、請求項12又は13に記載の放射パネル(1)。
【請求項16】
少なくとも1つの前記一次電極(11,12)の各補完枝部(31,32)は、極性が異なる少なくとも1つの前記一次電極(11,12)の前記補完枝部(31,32)から等距離にある、請求項15に記載の放射パネル(1)。
【請求項17】
少なくとも1つの前記補完枝部(31,32)は、少なくとも1つの散逸枝部、特に複数の散逸枝部、を含み、前記散逸枝部は、前記散逸枝部と、極性が異なる補完枝部(31,32)との間に流れる電流を生成するように設計されている、請求項12~16のいずれか一項に記載の放射パネル(1)。
【請求項18】
少なくとも1つの前記補完枝部(31,32)の少なくとも1つの前記散逸枝部は、極性が異なる補完枝部(31,32)の隣接する2つの前記散逸枝部の間に配置され、少なくとも1つの前記補完枝部(31,32)の前記散逸枝部と、極性が異なる補完枝部(31,32)の隣接する2つの前記散逸枝部との間で前記電流が確立され得る、請求項17に記載の放射パネル(1)。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の放射パネル(1)を備える、車両(80)の乗員室(3)、特に自動車の乗員室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、車両の乗員室、特に自動車の乗員室、を暖房する装置、より具体的にはそのような乗員室内に設置された放射パネル、に関する。
【背景技術】
【0002】
放射パネルは、一般に、抵抗を有する導電性要素に電流を供給することによるジュール効果によって熱を伝えるように構成された電気回路を備える装置である。これらは、ワイヤ要素又は表面コーティングであり得る。既存の文献によれば、導電性コーティングは、例えば、炭素粒子及び/又は金属粒子を含む塗料の層であり得る。
【0003】
近年発生している問題の1つは、放射パネルの表面全体にわたる均一な加熱、すなわち放射パネルの表面上のある点から他の点までの変動しない加熱温度、を実現することの困難性である。放射パネルは、乗員室の様々な部分(ルーフ、ドア、ピラー、グローブボックス等)に配置されることが意図されているため、この問題点は幾何学的な制約によって悪化する。
【0004】
現在、放射パネルを含む多くの暖房技術がある。いくつかの製造業者はワイヤ技術を使用するが、熱は不均一に生成される。この問題を克服するために、いくつかの製造業者は、2つの電極間に部分的に抵抗を有する導電性材料を堆積することからなる表面技術を提供している。ジュール効果によって生成される熱出力は、供給電圧Uと2つの電極間の電気抵抗Rに依存し、次の法則を満たす:P=U2/R。抵抗Rは2つの電極間の距離dに比例するため、放射パネルの表面全体で均一な放射熱出力(すなわち均一な熱的快適性)を実現するには、2つの電極を互いに一定の距離に配置する必要がある。さらに、導電性材料の厚さと品質は、放射パネルの表面全体で均一である必要がある。従来技術は2つの構成に言及している:
【0005】
第1の構成では、2つの電極は、平面であり、互いに平行な平面に配置され、小さな距離だけ離れている。2つの電極によって形成される平面の間に、抵抗を有する材料が配置される。この設計には、1つの大きな欠点がある:2つの電極間で予期しない接触が発生した場合、特に2つの電極間で抵抗を有する材料を誤って挟み潰した場合に、短絡が発生し得る。したがって、このような放射パネルは、安全要件を課す自動車産業には特に不適切である。
【0006】
第2の構成では、部分的に抵抗を有する導電性材料が2つの細長い電極の間に引き伸ばされて、加熱面を形成する。2つの電極が前記材料に電流を供給し、前記材料がジュール効果によって熱を発する。加熱面は、従来、2つの短辺と2つの長辺を有する長方形の形状であり、2つの電極は長辺に沿って配置されている。この幾何学的な制約により、放射パネルを乗員室のさまざまな部分に組み込むことが複雑になり得る。考慮すべきもう1つの制約は、低電圧では、2つの電極間の距離は、機械的、プロセス、重量及び梱包の制約によって画定される導電性材料の最大厚さによって制限されることである。
【0007】
一定の熱流束密度を保証するためには、ジュール効果によって引き起こされる電極の端子間の電圧損失を制限するか、さらには補償することも必要である。2つの解決策が当業者によく知られている:電極の長さを小さくする又はそれらの断面積を大きくする。しかし、電極の断面積の変動は、視覚的又は触覚的な制約によって制限される。電極は、それらを支持する装飾要素のデザインと品質に悪影響を与えるべきではない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記の幾何学的及び熱的制約を克服する、車両、特に自動車、に取り付けられることが意図された放射パネルを提案することを目的とする。
【0009】
本発明の1つの主題は、車両の乗員室内、特に自動車の乗員室内、に設置することが意図された放射パネルであって、前記放射パネルは、極性が異なる少なくとも2つの一次電極を有する少なくとも1つの電極アレイを備え、極性が異なる少なくとも2つの前記一次電極がそれぞれ互いの周りに少なくとも1つの螺旋状の巻回部を画定するように、前記電極アレイが配置されている、放射パネルである。
【0010】
単独で又は組み合わせて実施され得る1以上の特徴によれば、以下が提供され得る:
-2つの一次電極がある、
-一次電極は、それぞれ単一の螺旋を画定する、
-一次電極は、それぞれ複数の螺旋を画定する、
-少なくとも1つの螺旋の中心は、実質的に放射パネルの中心に位置する、
-少なくとも1つの螺旋は、放射パネルの周りの1周あたり少なくとも数nの直線部分を有する、
-数nは、3、4、5、6に等しいか、それ以上であり得る、
-螺旋は、同じ総数の直線部分を有する、
-螺旋は、異なる総数の直線部分を有する、
-2つの連続する直線部分の間の角度αは、90°未満である、90°より大きい又は90°に等しい、
-一次電極に属する直線部分と、極性が反対である一次電極に属する隣接する直線部分との間で測定される距離Dは、一次電極に沿って一定である、
-一次電極に属する直線部分と、極性が反対である一次電極に属する隣接する直線部分との間で測定された距離Dは、一次電極に沿って変動する、
-同じ一次電極に属する2つの平行且つ連続する直線部分の間で測定された距離D’は、一次電極に沿って一定である、
-同じ一次電極に属する2つの平行且つ連続する直線部分の間で測定された距離D’は、一次電極に沿って変動する、
-少なくとも1つの螺旋は、少なくとも数mの実質的に湾曲した部分を有する、
-数nは、1、2、3に等しいか、それ以上であり得る、
-螺旋は、同じ数mの実質的に湾曲した部分を有する、
-螺旋は、その全長にわたって直線部分で形成される、
-螺旋は、その全長にわたって実質的に湾曲した部分で形成される、
-少なくとも1つの螺旋は、当該螺旋の長さの少なくとも一部にわたって、互いから等距離にある湾曲部を有する、
-少なくとも1つの螺旋は、当該螺旋の全長にわたって、互いから等距離にある湾曲部を有する、
-少なくとも1つの螺旋は、当該螺旋の長さの少なくとも一部にわたって、互いから変動する距離dにある湾曲部を有する、
-距離dは、螺旋の中心から離れるにつれて増加する、
-距離dは、螺旋の中心から離れるにつれて減少する、
-極性が異なる少なくとも2つの一次電極は、それらの長さの少なくとも一部にわたって互いに等距離にある、
-極性が異なる少なくとも2つの一次電極は、それらの全長にわたって互いに等距離にある、
-極性が異なる少なくとも2つの一次電極は、それらの長さの少なくとも一部にわたって互いに変動する距離にある、
-極性が異なる少なくとも2つの一次電極は、それらの全長にわたって互いに変動する距離にある、
-極性が異なる一次電極は、それらの端部でそれぞれ電源に接続される、
-少なくとも1つの一次電極は、少なくとも1つの散逸枝部、特に複数の散逸枝部、を含み、当該散逸枝部は、当該散逸枝部と、極性が異なる少なくとも1つの一次電極との間を流れる電流を生成するように設計される、
-少なくとも1つの一次電極は、極性が同じである複数の散逸枝部を含む、
-散逸枝部は、それらが取り付けられている、極性が同じである一次電極に対して実質的に垂直に配置される、
-少なくとも1つの一次電極の少なくとも1つの散逸枝部は、極性が異なる少なくとも1つの一次電極の隣接する2つの散逸枝部の間に配置され、少なくとも1つの一次電極の散逸枝部と、極性が異なる少なくとも1つの一次電極の隣接する2つの散逸枝部との間で電流が確立され得る、
-散逸枝部は、それらが取り付けられている、極性が同じである一次電極に沿って規則的に間隔が空けられている、
-散逸枝部は、それらが取り付けられている、極性が同じである一次電極に沿って変動する距離L’だけ間隔が空けられている、
-少なくとも1つの一次電極は、その長さの少なくとも一部にわたって変動する断面積を有する、
-少なくとも1つの一次電極は、その全長にわたって一定の断面積を有する、
-極性が異なる一次電極は、異なる断面積を有する、
-極性が異なる一次電極は、同一の断面積を有する、
-散逸枝部は、その長さにわたって変動する断面積を有する、
-散逸枝部は、その長さにわたって一定の断面積を有する、
-極性が異なる散逸枝部は、同一の又は異なる断面積を有する、
-極性が同じ散逸枝部は、同一の又は異なる断面積を有する、
-少なくとも2つの一次電極は、車両の電源供給網に接続される、
-放射パネルは、部分的に抵抗を有する導電性材料で覆われた支持体であって、電極アレイが組み込まれる支持体を含む、
-電極アレイは、放射パネルの表面上、又は、支持体と部分的に抵抗を有する導電性材料との間に組み込まれる、
-部分的に抵抗を有する導電性材料は、炭素粒子及び/又は金属粒子を含む塗料である、
-支持体は、それを車両の乗員室に組み込むことを許容する、実質的に長方形、正方形、台形若しくは円形の形状又はその他の形状を有する、
-電位が、各電極の一方の端部だけに又は各電極の両端に印加され得る、
-放射パネルは、少なくとも2つの電極アレイが前記放射パネルの対向する2辺に設置されるように構成される、
-放射パネルは、実質的に平面の形状を有し得る、
-放射パネルは、凹面若しくは凸面の形状、又は車両への組み込みを容易にする他のより複雑な形をとり得る。
【0011】
本発明の別の主題は、車両の乗員室内、特に自動車の乗員室内、に設置することが意図された放射パネルであって、前記放射パネルは、極性が異なる少なくとも2つの一次電極を有する少なくとも1つの電極アレイを備え、少なくとも1つの前記一次電極が、少なくとも1つの前記一次電極を通って流れる電流の流れにより発熱可能な散逸領域により、少なくとも局所的にいずれか一方の側で囲まれるように、前記電極アレイが配置されている、放射パネルである。
【0012】
単独で又は組み合わせて実施され得る1以上の特徴によれば、以下が提供され得る:
-2、3、4又はそれ以上の一次電極がある、
-一次電極は、互いに平行に延びている、
-一次電極は、実質的に直線である、
-一次電極は、実質的に同じ長さである、
-極性が反対である一次電極が互いに交互に配置されている、
-一次電極は、互いに等距離にある、
-いくつかの一次電極は、極性が異なるいくつかの一次電極に近いか、対照的に、極性が異なるいくつかの一次電極から遠く離れている、
-一次電極には、異なる強度の電流が流れる、
-一次電極は、その長さにわたって一定の断面積を有する、
-一次電極は、その長さにわたって変動する断面積を有する、
-一次電極は、同一の断面積を有する、
-一次電極は、異なる断面積を有する、
-一次電極は、平行且つ整列している、
-一次電極は、平行且つ互いにオフセットしている、
-少なくとも1つの一次電極は、少なくとも2つの補完枝部を有する、
-2つの補完枝部は、同一の接合点から始まって一次電極から分岐する、
-2つの補完枝部は、異なる接合点から始まって一次電極から分岐する、
-1、2、3又はそれ以上の接合点がある、
-接合点は、少なくとも1つの一次電極に沿って規則的に互いに間隔が空けられている、
-接合点は、少なくとも1つの一次電極に沿って不規則に互いに間隔が空けられている、
-少なくとも2つの補完枝部は、実質的に円弧である、
-円弧は同心である、
-2つの補完枝部は、n’の直線部分から形成されている、
-n’は次の値を取ってもよい:2、3、4又はそれ以上、
-2つの連続する直線部分の間の角度αは、90°未満である、90°より大きい又は90°に等しい、
-いくつかの補完枝部は円弧であり、他の補完枝部は直線部分である、
-極性が異なる補完枝部は、互いに交互に配置される、
-少なくとも1つの一次電極の各補完枝部は、極性が異なる少なくとも1つの一次電極の補完枝部から等距離にある、
-極性が異なる補完枝部は、互いに変動する距離にある、
-少なくとも1つの補完枝部は、少なくとも1つの散逸枝部、特に複数の散逸枝部、を含み、散逸枝部は、散逸枝部と、極性が異なる補完枝部との間に流れる電流を生成するように設計されている、
-補完枝部の少なくとも1つは、極性が同じである複数の散逸枝部を含む、
-散逸枝部は、極性が同じである補完枝部に実質的に垂直に配置される、
-少なくとも1つの補完枝部の少なくとも1つの散逸枝部は、極性が異なる補完枝部の隣接する2つの散逸枝部の間に配置され、少なくとも1つの補完枝部の散逸枝部と、極性が異なる補完枝部の隣接する2つの散逸枝部との間で電流が確立され得る、
-極性が異なる一次電極は、電源に接続されたそれらの端部が放射パネルの同じ辺に配置されるように配置される、
-極性が異なる一次電極は、電源に接続されたそれらの端部が放射パネルの対向する2辺に配置されるように配置される、
-一次電極は、一定の断面積を有する、
-一次電極は、変動する断面積を有する。
【0013】
本発明の別の主題は、上記で定義された放射パネルを備える、車両の乗員室、特に自動車の乗員室である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
非限定的な例として添付の図面を参照して与えられる下記の説明を読むことにより、本発明がより理解され、本発明のさらなる詳細、特徴及び利点が明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明及び第1実施形態による放射パネルの正面図を概略的に示す。
【
図5】
図5は、本発明及び第2実施形態による放射パネルの正面図を概略的に示す。
【
図7】
図7は、本発明及び第3実施形態による放射パネルの正面図を概略的に示す。
【
図10】
図10は、本発明による放射パネルを備えた自動車の乗員室の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するために、図が本発明を詳細に説明していることに留意されたい。もちろん、前記図は、必要に応じて本発明をよりよく定義するのに役立つ可能性がある。
【0016】
図1は、導電性コーティング9で覆われた支持体8を備えた放射パネル1を示す。支持体8は、均一な厚さを有し、パネルの表面上にあり、電極アレイ10が組み込まれている。導電性コーティング9は、例えば、炭素粒子及び/又は金属粒子を含む塗料の層であり得る。放射パネル1の電極アレイ10は、以下のように配置される:極性が異なる2つの一次電極11,12は、それぞれ、放射パネル1の寸法に実質的に一致する螺旋を画定する。各一次電極11,12は、第1電極11と第2電極12との間に印加される強度I及び電圧Vの電流を供給することが可能な、車両の電源供給網に接続される。したがって、一次電極11,12は、導電性コーティングに電流を供給し、したがってジュール効果によって熱を供給するように構成される。それらは、例えば、スクリーン印刷によって、又は少なくとも部分的に導電性材料からなるストリップを支持体8に接着結合することによって得られてもよい。
【0017】
支持体8は、有利には、短辺81及び長辺82を有する長方形の形状である。
図1に示される例では、選択された支持体は、短辺81及び長辺82を有する長方形の形状である。
【0018】
本発明は、短辺81及び長辺82に平行な一次電極11,12に限定されない。とりわけ、電極は、アレイ10の全体が放射パネル1の支持体8の辺に対して定義されたある角度で回転して、配置され得る。したがって、電極11,12は、放射パネル1の支持体8の辺と平行ではないことがある。さらに、パネルが台形の形状を有する場合、電極11及び12のそれぞれは、パネルの寸法の変化に適合するために可変の長さを有してもよい。
【0019】
もちろん、放射パネル1の組み込み要件に応じて、支持体8は、正方形又は台形形状等の他の任意の形状、又は長方形、菱形などの他の任意の多角形形状であってもよい。
【0020】
さらに、放射パネル1が組み込まれている乗員室の領域に応じて、形状及び寸法が可変の1つ又は複数の穴40を支持体8に備えることができる。このとき、一次電極11,12によって画定される螺旋を、この追加の幾何学的な制約に適合させる必要がある。
図2に示される例では、放射パネル1は、台形の穴40を有する長方形の支持体8を備える。したがって、前記穴40は、加熱以外の機能を組み込むことを容易にする開口を作成する。
図2の放射パネル1は、例えば、自動車のグローブボックスに組み込むことができ、したがって、グローブボックスを開くためのハンドル用のスペースを残すことができる。
【0021】
図1では、一次電極11,12によって画定される螺旋は、それぞれ放射パネル1の周りの1周あたりの直線部分の数n=4を有している。この例では、螺旋は、16に等しい、同じ総数の直線部分を有する(螺旋は、それぞれ放射パネル1の周りを4周する)。しかし、本発明は、この例示的な実施形態に限定されない。したがって、
図2に示す例のように、部品の形状、ここではとりわけ穴40の存在、に適合するように、螺旋が、異なる総数の直線部分及び1周あたりの可変の数の直線部分を有するようにすることができる。一次電極11,12を形成する各直線部分は、好ましくは、極性が異なる一次電極11,12の少なくとも1つの直線部分に対して平行且つ近くに配置される。
【0022】
図1及び
図2に示される例によれば、一次電極11,12に属する2つの連続する直線部分の間に形成される角度αは、90°に等しい。もちろん、本発明は、すべての角度αが直角であることに限定されない。とりわけ、パネルの寸法の変化に適合するように、一次電極11,12は、90°未満の又は90°を超える異なる値のいくつかの角度αを有してもよい。本発明のこれらの2つの例示的な例によれば、一次電極11,12を形成する直線部分は、放射パネル1の支持体8の長辺82に平行又は短辺81に平行のいずれかである。しかし、螺旋を形成する直線部分が支持体8の短辺81又は長辺82に平行でない、一次電極11,12のアレイを設計することも可能である。
【0023】
図1では、一次電極11に属する直線部分と、一次電極12に属する隣接する直線部分との間で、距離Dが測定される。1つの好ましい実施形態によれば、距離Dは、一次電極11,12の全長に沿って一定であり、導電性コーティングは、放射パネルの表面全体にわたって均一な厚さである。これにより、全て同じ抵抗Rを有する電気双極子が、局所的に形成される。とりわけ、均一な快適性を実現可能な一定の熱流束密度を実現するためには、放射パネルの表面全体にわたって極性+の電極と極性-の電極との間に一定の等価抵抗を有する必要がある。
【0024】
一変形形態によれば、距離Dは変動し、抵抗R自体も局所的に変化し得る。具体的には、特に幾何学的及び機械的制約のために、一定の距離Dを維持することが常に可能であるとは限らない。低電圧のために、2つの一次電極間の距離Dは、機械的、プロセス、重量及び梱包の制約によって画定される加熱材料の最大厚さによって制限される。
【0025】
引き続き
図1を参照して、同じ一次電極11又は12に属する2つの平行且つ連続する直線部分間で、距離D’が測定される。好ましくは、
図1に示されるように、D’は一次電極11,12の全長に沿って一定である。一変形形態によれば、距離D’が一次電極11,12に沿って変動するようにすることができる。
【0026】
一次電極11,12の断面積は、1つの電極と他の電極とで変動し得る。
図2に示されるように、一次電極12の断面積は、特に放射パネル1全体にわたって、一次電極11の断面積よりも大きい。さらに、一次電極12の断面積は、当該電極の全長にわたって変動する。したがって、放射パネル1の中心に近づくと、その断面積は減少する。接続点からの距離の関数として一次電極の断面積を変化させることにより、当該電極の端子間の電圧降下が制限される。電極の断面積は、放射パネルに特有の機械的制約(サイズ、厚さ等)によってさらに制限される。
【0027】
場合によっては、とりわけ幾何学的な理由により、一次電極11,12の別の構成を選択する必要がある。
図3は、一次電極11,12がそれぞれ、その全長にわたって、実質的に湾曲した部分で形成された螺旋を画定する本発明の一実施形態を示す。螺旋の中心は、実質的に放射パネル1の中心に位置している。有利には、各螺旋の湾曲部は、互いに等距離(dは湾曲部間の距離)にある(
図3に示される例)。この幾何学的図形は、アルキメデスの螺旋である。しかし、距離dを変化させることが可能である:したがって、距離dは、螺旋の中心から離れるにつれて、減少するか又は対照的に増加してもよい。
【0028】
図3に示される例によれば、一次電極12の螺旋の湾曲部は、一次電極11の螺旋の湾曲部の間に配置されている。距離Lは、共に隣接する、一次電極12の螺旋の湾曲部と一次電極11の螺旋の湾曲部とを分離する。距離Lは、好ましくは、各電極の全長に沿って一定である。これにより、全て同じ抵抗Rを有する電気双極子が、局所的に形成される。直線部分からなる一次電極の場合に述べたように、一次電極間の一定の距離は、ジュール効果による加熱の均一な分布を促進する。その場合、一定の抵抗Rを得るために、塗料の組成又は塗料の層の厚さを適合させる必要はない。
【0029】
一変形形態によれば、距離Lは変動し、抵抗R自体も局所的に変化し得る。距離Lが可変である場合、一定の抵抗Rを有するために、塗料の組成又は塗料の層の厚さを調整することが常に可能である。
【0030】
図4に示されるように、一次電極11,12は、一次電極11及び12にそれぞれ関連づけられた複数の散逸枝部21,22を有し得る。散逸枝部21は、当該散逸枝部21と、それに隣接する極性の異なる一次電極12との間に流れる電流を生成するように設計されている。この例では、散逸枝部21は、隣接する2つの散逸枝部22の間に配置され(逆もまた同様)、散逸枝部21と、隣接する散逸枝部22との間に電流が確立され得る。換言すると、1つの散逸枝部21が2つの散逸枝部22の間に挿入され、1つの散逸枝部22が2つの散逸枝部21の間に挿入される。このとき、第1の散逸枝部21及び第2の散逸枝部22から形成される一対の電極21,22を画定することができ、逆もまた同様である。2つの隣接する散逸枝部21,22は、抵抗R’の電気双極子を形成する。
【0031】
図4で選択された例では、各一次電極11,12の散逸枝部21は、それらが取り付けられている一次電極に対して実質的に垂直に配置されている。
【0032】
図4に示される例示的な実施形態では、散逸枝部21,22は、一次電極11,12に沿って規則的に間隔を空けられている。隣接する2つの散逸枝部21,22間の距離L’は、好ましくは一定である。したがって、図示された例示的な実施形態によれば、一対の散逸枝部21,22は、全て同じ抵抗Rを有する電気双極子を形成する。
【0033】
一変形形態によれば、隣接する散逸枝部21,22は、1つの対と他の対との間で変動する距離L’により互いから間隔を空けられており、抵抗R’は、散逸枝部21,22の1つの対と散逸枝部21,22の他の対との間で異なる。
【0034】
したがって、放射パネル内の接続数を増加させることにより、熱流束密度に影響を与える電流密度の減少の原因となる電圧降下が制限される。分岐のない単純な回路の場合、電圧降下を制限するために、一次電極の断面積は、接続点からの距離の関数として変動してもよい。
【0035】
図4からの放射パネル1の一変形形態によれば、散逸枝部21,22は、それらの長さにわたって変動する断面積を有する。さらに、前記散逸枝部21,22は、一方では所望の技術的効果に応じて、他方では電極アレイ10を放射パネル1に組み込むための制約に応じて、同じ断面積を有しなくてもよい。
【0036】
図5は、本発明の別の実施形態を示す。放射パネル1は、4つの一次電極を備えた電極アレイ10を備える。2つの一次電極は極性+(一次電極11a,11b)を有し、2つの一次電極は極性-(一次電極12a,12b)を有する。電極アレイは、2つの一次電極が、これらの2つの一次電極のそれぞれを流れる電流の流れにより熱を発生することができる散逸領域によって少なくとも局所的にいずれかの側で囲まれるように、配置される。
【0037】
図5の4つの一次電極(11a,11b,12a,12b)は:
-互いに平行に伸び、
-実質的に直線であり、
-実質的に同じ長さL”であり、
-互いに交互に配置される。したがって、
図5に示される矢印F1の方向において、極性+の一次電極11aの後に極性-の一次電極12aが続き、次に極性+の一次電極11bが続き、次に極性-の一次電極12bが続く。ここで、極性が反対である隣接する一次電極の3つの対を定義することができる:(11a,12a)、(12a,11b)及び(11b,12b)。一次電極アレイ10は、好ましくは、極性が異なる一次電極の複数の対を含む。
【0038】
共に隣接する一次電極11a,11bと一次電極(12a,12b)との間の距離Dは、抵抗Rの電気双極子を局所的に形成する。
図5に示される例示的な実施形態によれば、距離Dは、極性が反対の全ての隣接する一次電極の間で一定である。
【0039】
図示されない一変形形態によれば、極性が反対である隣接する一次電極は、1つの対と別の対との間で変動する距離Dだけ間隔が空けられる。これは、いくつかの一次電極は、極性が異なるいくつかの一次電極に近く、他の一次電極は、極性が異なるいくつかの一次電極から離れていることを意味する。
【0040】
図5では、一次電極11a,11b,12a,12bには、異なる強度の電流が流れる。放射パネル1の対向する2辺に位置する一次電極11a,12bには強度Iの電流が流れ、一次電極12a,11bには強度2Iの電流が流れる。換言すると、放射パネル1内の一次電極の数を変化させることにより、パネル内の電流Iの強さ、したがって当該パネル内の加熱力も、局所的に変化させることが可能である。
【0041】
図6は、
図5に記載された放射パネル1の一変形形態を示し、これによれば、アレイ10は、異なる断面積を有する3つの一次電極11a’,12’,11b’を備えている。極性-の一次電極12’は、極性+の2つの一次電極11a’,11b’の間に配置されている。電極12’を流れる電流I
1+I
2は、
図6に示される構成において、一次電極11a’及び一次電極11b’をそれぞれ流れる電流I
1及びI
2の合計に対応する。
【0042】
したがって、放射パネル1の電極アレイ10を形成する一次電極の数とそれらのそれぞれの断面積の両方を適合させることによって、それらを流れる電流Iの値を調節することが可能である。
【0043】
図5及び
図6に記載されている一次電極のそれぞれは、特定の強度の電流を供給することが可能な電源に電気的に接続された少なくとも1つの端部を有する。
【0044】
図5及び
図6に示される放射パネル1は、導電性コーティング9で覆われた支持体8を含み、支持体8には一次電極アレイ10が組み込まれている。
【0045】
図7によれば、放射パネル1は、異なる極性+/-の2つの一次電極11,12を有する電極アレイ10を備える。選択された構成では、一次電極11,12は:
-実質的に直線であり、
-互いに平行に配置され、
-互いの延長上に配置されている、すなわち、一次電極11の端部が一次電極12の端部に面して配置されている。
【0046】
図7に示される例では、一次電極11は、6つの補完枝部31を備える。一次電極11上に位置する同一の接合点J
iから始まって一次電極11から分岐する3対の補完電極31を画定することができる。
図7に示される例示的な実施形態では、3対の補完電極31は、一次電極11に沿って互いに規則的に間隔を空けられた3つの接合点J
1、J
2及びJ
3の配列を画定することを可能にする。第1電極12は、交互に4つの補完枝部32を有する。一次電極12上に位置する同一の接合点K
iから始まって一次電極12から分岐する2対の補完電極32を画定することができる。2対の補完電極32は、一次電極12に沿って互いに規則的に間隔を空けられた2つの接合点K
1、K
2の配列を画定することを可能にする。
【0047】
本発明は、それぞれ6つ及び4つの補完枝部を有する一次電極11及び12に限定されない。とりわけ、一次電極11及び12は、パネルの寸法上の制約に応じて、
図7に示される例よりも、より多くの補完枝部を有するか、又は対照的により少ない補完枝部を有してもよい。これにより、電極間の距離を減少させる、又は表面をよりよく覆うことができる。
【0048】
図7では、補完枝部31及び32は:
-実質的に円弧であり、
-同心であり、
-一定の距離d”で互いに分離されている。
【0049】
図7に記載される本発明の実施形態では、極性が異なる一次電極11,12は、電源に接続されるそれらの端部が放射パネル1の支持体8の対向する2辺に配置されるように、配置される。しかしながら、とりわけ放射パネル1を車両の乗員室に組み込むために制約がある場合、そのような構成を達成することが常に可能であるとは限らない。したがって、
図8に記載される一変形形態では、極性が異なる一次電極11,12は、電源に接続されたそれらの端部が放射パネル1の支持体8の同じ辺に配置されるように、配置される。
【0050】
図9に示される変形形態によれば、各補完枝部31,32は、n’=3の直線部分から形成される。隣接する直線部分は、互いに直角αを形成する。
【0051】
図示されない一変形形態によれば、補完枝部31及び32は、当該散逸枝部と、それに隣接する極性が異なる一次電極31,32との間に流れる電流を生成するように設計された複数の散逸枝部を有してもよい。散逸枝部は、隣接する2つの散逸枝部の間に配置されてもよく(逆もまた同様)、散逸枝部と、極性が異なる隣接する2つの散逸枝部との間で、電流が確立され得る。各一次電極11,12の散逸枝部は、好ましくは、それらが取り付けられている補完枝部31及び32に実質的に垂直に配置される。
【0052】
示されていない別の変形形態によれば、円弧部分及び直線部分を有する補完枝部を選択することができる。
【0053】
図10は、上記の放射パネル1を自動車80の乗員室3に組み込む一例を示す。放射パネル1は、自動車80の1以上のユーザに占有されることが意図された領域の方向に局所的に熱を発生させるために、乗員室3に分散されている。
図10に示される例示的な実施形態によれば、放射パネル1は、車両の屋根、ウィンドウピラー、フットウェル等のダッシュボードの下部、又はシートの背面等の、乗員室3の異なる内側表面に配置される。もちろん、乗員室3の構成に応じて及び/又は車両80のユーザのニーズに応じて、車両の床又はドアの壁等の他の内側表面に放射パネル1を備えることができる。内側表面とは、利用者が占有する乗員室3の領域に対面する表面を意味すると理解される。
【0054】
もちろん、相互に互換性があり又は排他的でなく提供された本発明の特徴、変形例及び異なる実施形態は、様々な組み合わせで互いに組み合わせることができる。とりわけ、記載される他の特徴から分離して以下に記載される特徴の選択のみを含む本発明の変形を考え出すことは、この特徴の選択が技術的利点を与える又は本発明を先行技術から区別するのに十分である場合に、可能であり得る。とりわけ、記載された全ての変形例及び全ての実施形態は、この組み合わせを妨げる技術的観点から何もなければ、互いに組み合わせることができる。
【外国語明細書】