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特開2023-89106細気管支炎を有する乳幼児のための一酸化窒素吸入療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089106
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】細気管支炎を有する乳幼児のための一酸化窒素吸入療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20230620BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230620BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P11/00
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064058
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2021094121の分割
【原出願日】2016-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】518073550
【氏名又は名称】ビヨンド エア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEYOND AIR LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アブ‐ガイ,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】グリーンバーグ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】タル,アッシャー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乳幼児における細気管支炎を治療するための療法、方法、およびデバイスを提供する。
【解決手段】方法は、第一期間の間一酸化窒素を約144~約176ppmの濃度で含むガス混合物を、続いて第二期間の間一酸化窒素を含まないガス混合物を繰り返し乳幼児に投与することを含み、投与は一酸化窒素の反復投与に供されない乳幼児と比べて、a)室内空気中の92%以上の酸素飽和度を達成するのに必要とされる入院期間の長さの短縮、b)5以下の臨床スコアを達成するのに必要とされる入院期間の長さの短縮、c)退院までに必要とされる入院期間の長さの短縮、またはd)これらのいずれかの組み合わせ、のために十分な時間にわたって反復される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
この方法を必要とする乳幼児における細気管支炎を治療するための方法であって、前記方法は、第一期間の間約144~約176ppmの濃度で一酸化窒素を含むガス混合物を、続いて第二期間の間一酸化窒素を含まないガス混合物を、前記乳幼児に繰り返して投与することを含み、
前記投与は
a)一酸化窒素の前記反復投与に供されない乳幼児と比べて、室内空気中の92%以上の酸素飽和度を達成するのに必要とされる入院期間の長さの短縮、
b)一酸化窒素の前記反復投与に供されない乳幼児と比べて、5以下の臨床スコアを達成するのに必要とされる入院期間の長さの短縮、
c)一酸化窒素の前記反復投与に供されない乳幼児と比べて、退院までに必要とされる入院期間の長さの短縮、または
d)これらのいずれかの組み合わせ、
のために十分な時間繰り返される、方法。
【請求項2】
前記第一期間が30分でありかつ前記第二期間が約3~約5時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が1日に6回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一酸化窒素が約1日~3週間の期間の間繰り返して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一酸化窒素が5日間繰り返して投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が前記乳幼児における少なくとも1種類のオンサイトオキシメトリパラメータをモニタリングすることをさらに含み、前記オンサイトパラメータがオキシヘモグロビン飽和度(SpO)、メトヘモグロビン(SpMet)、灌流指数(PI)、呼吸速度(RRa)、オキシヘモグロビン飽和度(SpO2)、総ヘモグロビン(SpHb)、カルボキシヘモグロビン(SpCO)、メトヘモグロビン(SpMet)、酸素含量(SpOC)、および脈波変動指数(PVI)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が前記乳幼児における少なくとも1種類の追加オンサイトスパイロメトリーパラメータをモニタリングすることをさらに含み、前記少なくとも1種類の追加オンサイトパレメータが強制呼気量(FEV1)、最大呼気中間流量(MMEF)、一酸化炭素に対する肺の拡散能力(DLCO)、努力肺活量(FVC)、全肺気量(TLC)、および残気量(RV)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が前記乳幼児によって吸入される前記ガス混合物中の少なくとも1種類のオンサイトパラメータをモニタリングすることをさらに含み、前記オンサイトパラメータが呼気終末CO(ETCO)、二酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、血清亜硝酸塩/硝酸塩、および吸気酸素濃度比(FiO)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が前記乳幼児における少なくとも1種類のオフサイト体液パラメータをモニタリングすることをさらに含み、前記パラメータが細菌および/または真菌量、尿亜硝酸塩、血液メトヘモグロビン、血液pH、凝固因子、血液ヘモグロビン、ヘマトクリット値、赤血球数、白血球数、血小板数、血管内皮活性化因子、腎機能、電解質、妊娠ホルモン、血清クレアチニン、ならびに肝機能からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2015年9月9日出願、米国特許仮出願第62/215,809号、および2015年9月18日出願、米国特許仮出願第62/220,321号の優先権を主張し、その全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
いくつかの実施形態は、乳幼児における細気管支炎を治療するための療法、方法、およびデバイスに関する。いくつかの実施形態は、抗微生物剤を増強するおよび/または抗微生物治療に対して抗微生物剤耐性微生物を感受性化させるための療法、方法およびデバイスに関する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書の下記の実施形態および態様は、システム、ツールおよび方法と結び付けて記載および説明され、例示的および説明的であり、範囲に限定的でないことが意味される。
【0004】
開示されているこれらの有用性および改善のなかで、本発明の他の目的および利点が付属の図と合わせて下記の説明から明確になる。本発明の詳細な実施形態が本明細書で開示されるが、開示される実施形態は、様々な形態で具体化され得る本発明の単なる例示であると理解されるべきである。さらに、本発明の様々な実施形態と関連して示される例のそれぞれは、例示であり、限定的でないことが意図されている。
【0005】
本明細書および請求項の全体を通して、次の用語は、文脈で明確に他が示されない限り、本明細書と明らかに関連する意味を有する。本明細書で使用されるフレーズ「一つの実施形態では」および「いくつかの実施形態では」は、必ずしも同一の実施形態を意味しないが、意味することもあり得る。さらに、本明細書で使用されるフレーズ「別の実施形態では」および「いくつかの他の実施形態では」は、必ずしも異なる実施形態を意味しないが、意味することもあり得る。このため、下記で説明されるように、本発明の様々な実施形態は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、容易に組み合わされ得る。
【0006】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「または」は包括的な「または」演算子であり、文脈で明確に他が示されない限り、用語「および/または」と同義である。用語「基づいた」は排他的ではなく、文脈で明確に他が示されない限り、説明されない付加的な要因に基づいてよい。さらに、明細書全体を通して、「一つの(a、an)」および「本(the)」は複数の意味を含む。「における(in)」の意味は、「における(in)」および「での(on)」を含む。
【0007】
いくつかの実施形態により、本発明はこの方法を必要とする乳幼児における細気管支炎を治療するための方法であり、ここで本方法は乳幼児に、一酸化窒素を約144~約176ppmの濃度で含むガス混合物を第一の期間、続いて一酸化窒素度を含まないガス混合物を第二の期間、繰り返して投与することを含み、ここで投与は、a)一酸化窒素の反復投与が実施されない乳幼児と比べて、室内空気中の92%以上の酸素飽和を達成するのに必要とされる入院期間を短縮する、b)一酸化窒素の反復投与が実施されない乳幼児と比べて、5以下の臨床スコアを達成するのに必要とされる入院期間を短縮する、c)一酸化窒素の反復投与が実施されない乳幼児と比べて、退院するのに必要とされる入院期間を短縮する、またはd)これらのいずれかの組み合わせのために十分な期間繰り返される。
【0008】
いくつかの実施形態では、第一の期間は30分であり、第二の期間は約3~約5時間である。
【0009】
いくつかの実施形態では、投与は1日に6回繰り返される。
【0010】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素は約1日~3週の期間反復投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素は5日間反復投与される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は乳幼児において少なくとも1種類のオンサイト酸化測定パラメータをモニタリングすることをさらに含み、オンサイトパラメータは、オキシヘモグロビン飽和度(SpO)、メトヘモグロビン(SpMet)、灌流指数(PI)、呼吸速度(RRa)、オキシヘモグロビン飽和度(SpO2)、総ヘモグロビン(SpHb)、カルボキシヘモグロビン(SpCO)、メトヘモグロビン(SpMet)、酸素含量(SpOC)、および脈波変動指数(PVI)からなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は乳幼児において少なくとも1種類の追加のオンサイトスパイロメトリーパラメータをモニタリングすることをさらに含み、少なくとも1種類の追加のオンサイトパラメータは、強制呼気量(FEV1)、最大呼気中間流量(MMEF)、一酸化炭素に対する肺の拡散能力(DLCO)、努力肺活量(FVC)、全肺気量(TLC)、および残気量(RV)からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は乳幼児によって吸入されるガス混合物中の少なくとも1種類のオンサイトパラメータをモニタリングすることをさらに含み、オンサイトパラメータは、呼気終末CO(ETCO)、二酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、血清亜硝酸塩/硝酸塩、および吸気酸素濃度比(FiO)からなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は乳幼児において少なくとも1種類のオフサイト体液パラメータをモニタリングすることをさらに含み、パラメータは、細菌および/または真菌量、尿亜硝酸塩、血液メトヘモグロビン、血液pH、凝固因子、血液ヘモグロビン、ヘマトクリット値、赤血球数、白血球数、血小板数、血管内皮活性化因子、腎機能、電解質、妊娠ホルモン、血清クレアチニン、および肝機能からなる群から選択される。
【0016】
本発明の一つの態様のいくつかの実施形態により、病原性微生物と関連する医学的状態を有する被験体を治療する方法が提供され、本方法は、(i)増強化に効果的な量の一酸化窒素量を被験体に投与すること、および(ii)治療上効果的な量の抗微生物剤を被験体に投与することであって、ここで抗微生物剤は一酸化窒素以外であること、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、増強化に効果的な量は、病原性微生物に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低い。
【0018】
いくつかの実施形態では、増強化に効果的な量は、病原性微生物に対する一酸化窒素の1MIC単位よりも低い。
【0019】
いくつかの実施形態では、病原性微生物は増強化に効果的な量の一酸化窒素を投与する前に、抗微生物剤に対して耐性を示す。
【0020】
いくつかの実施形態では、病原性微生物に対する耐性は先天的または後天的である。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗微生物剤は、病原性微生物にそれ自体で使用される場合(NOの投与なし)に不活性である。
【0022】
本発明の一つの態様のいくつかの実施形態により、抗微生物剤による被験体の治療後に抗微生物剤耐性が現れている、病原性微生物と関連する医学的状態を有する被験体を治療する方法が提供され、本方法は、(i)抗微生物剤による治療および抗微生物剤耐性が出現した後で、再感受性化に効果的な量の一酸化窒素を被験体に投与すること、および(ii)治療上効果的な量の抗微生物剤を被験体に投与することによって行われ、ここで抗微生物剤は一酸化窒素以外であり、かつ一酸化窒素の再感受性化に効果的な量は微生物に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低い。
【0023】
本発明の一つの態様のいくつかの実施形態により、抗微生物剤に対して微生物を感受性化または再感受性化するための方法が提供され、(i)感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素と微生物を接触させること、および(ii)治療上効果的な量の抗微生物剤と微生物を接触させることであって、ここで抗微生物剤は一酸化窒素以外であること、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、感受性化または再感受性化に効果的な量は、病原性微生物に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低い。
【0025】
いくつかの実施形態では、感受性化または再感受性化に効果的な量は、病原性微生物に対する一酸化窒素の1MIC単位よりも低い。
【0026】
いくつかの実施形態では、微生物を一酸化窒素と接触させることは、微生物と関連する医学的状態を有する被験体に、感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素を投与することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は被験体に抗微生物剤を投与することをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、(i)は(ii)の前に行われる。
【0029】
いくつかの実施形態では、(ii)は(i)の前に行われる。
【0030】
いくつかの実施形態では、(i)は(ii)と同時に行われる。
【0031】
本発明の一つの態様のいくつかの実施形態により、感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素、治療上効果的な量の抗微生物剤、および少なくとも1種類の医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書で提示される医薬組成物は多部分剤形であり、ここで一酸化窒素が第一部分中にあり、抗微生物剤が第二部分中にある。
【0033】
本発明の一つの態様のいくつかの実施形態により、第一単位投与剤形中に治療上効果的な量の抗微生物剤、および第二単位投与剤形中に感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素を含む医薬組成物単位投与剤形が提供され、感受性化または再感受性化に効果的な量は抗微生物剤に対する病原性微生物の感受性化または再感受性化を達成するような量であり、ここで感受性化または再感受性化に効果的な量は病原性微生物に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低い。
【0034】
本発明の一つの態様のいくつかの実施形態により、包装材料およびこの包装材料中にパッケージされた治療上効果的な量の抗微生物剤を含む医薬キットが提供され、キットは、病原性微生物と関連する医学的状態を治療することに関して、および/または感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素を治療される被験体に併用投与する際に抗微生物剤に対して病原性微生物を感受性化または再感受性化することに関して表示される。
【0035】
いくつかの実施形態では、本キットは感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素をさらに含み、抗微生物剤および一酸化窒素はキット内に個別にパッケージされる。
【0036】
本明細書で提示される方法、組成物、単位投与剤形またはキットのいくつかの実施形態では、抗微生物剤の治療上効果的な量は病原性微生物に対する1MICよりも低い。
【0037】
本明細書で提示される方法、組成物、単位投与剤形またはキットのいくつかの実施形態では、一酸化窒素はガス状一酸化窒素または一酸化窒素放出化合物の剤形で投与または接触される。
【0038】
本明細書で提示される方法、組成物、単位投与剤形またはキットのいくつかの実施形態では、一酸化窒素は吸入によって投与または微生物と接触される。
【0039】
本発明はさらに付属の図を参考にして説明され、ここで構造などはいくつかの図を通した数字などによって参照される。示される図は必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに本発明の原理の説明について強調されている。さらに、いくつかの特徴は特に構成要素の詳細を示すために誇張されていることがある。
【0040】
図は本明細書の一部を構成し、本発明の説明的な実施形態を含み、その様々な目的および特徴を説明する。さらに、図は必ずしも正確な縮尺ではなく、いくつかの特徴が特定の構成要素の詳細を示すために誇張され得る。さらに、図で示されるいずれの測定、仕様などは説明的であり、限定的でないことが意図されている。従って、本明細書で開示される具体的な構造および機能の詳細は限定的なものとは解釈されるべきでなく、単に本発明を様々に使用するように従来技術の当業者に教示するための代表的な基本としてのものである。図を次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明のいくつかの実施形態による試験計画を示す図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された乳幼児の構成を示す図である。N=乳幼児数、ITT=治療意図サブ群、PP=プロトコール遵守サブ群。
図3】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された乳幼児におけるメトヘモグロビン量を示す図である。パネルA:第一治療(ITT、N=43)に関する時間経過における平均(±SE)MetHb量。パネルB:NO治療群(ITT)における治療数による治療前および治療最後の平均(±SE)metHb量。ITT=治療意図サブ群、MetHb=メトヘモグロビン、N=各治療番号における乳幼児数、SE=標準誤差。
図4】本発明のいくつかの実施形態によって治療された乳幼児におけるNOの第一投与でのNO量を示す図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された乳幼児で認められた入院の中央期間(LOS)を、治療群およびサブ群によって示す図である。パネルA:ITT分析(n=43)。パネルB:LOS<24時間におけるITT(n=16)。パネルC:LOS>24時間におけるITT(n=27)。
図6】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された乳幼児におけるLOSのカプランメイヤー分析を、治療群およびサブ群(ITTおよびPP)によって示す図である。パネルA:退院可能までの時間、ITT(n=43)。パネルB:退院可能までの時間、LOS>24時間サブ群(n=27)。パネルC:退院可能までの時間、PP分析(n=39)。パネルD:退院可能までの時間、>24時間のPP(n=24)。
図7】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された乳幼児における初回の持続した92%酸素飽和度までの時間のカプランメイヤー分析を、治療群およびサブ群(ITTおよびPP)によって示す図である。パネルA:初回持続O飽和までの時間、ITT集団(n=42)。乳幼児1名(コントロール群)は、本乳幼児で92%のSpOが認められたため、分析から除外された。パネルB:初回持続O飽和までの時間、LOS>24時間のITT(n=24)。パネルC:初回持続O飽和までの時間、PP集団(n=38)。乳幼児1名(コントロール群)は、本乳幼児で92%のSpOが認められたため、分析から除外された。パネルD:初回持続O飽和までの時間、LOS>24時間のPP(n=24)。
図8】本発明のいくつかの実施形態に従って治療された乳幼児における臨床スコア≦5までの時間のカプランメイヤー分析を、治療群およびサブ群(ITTおよびPP)によって示す図である。パネルA:臨床スコア≦5を達成するまでの時間、ITT集団(n=43)。パネルB:臨床スコア≦5を達成するまでの時間、LOS>24時間のITT(n=27)。パネルC:臨床スコア≦5を達成するまでの時間、PP集団(n=39)。パネルD:臨床スコア≦5を達成するまでの時間、LOS>24時間のPP(n=24)。
図9】背景技術で説明されるセラチア・マルセッセンスに対する一酸化窒素の抗微生物活性を示し、微生物の化学的防御機構を枯渇させるのに必要とされる時間に寄与する抗微生物活性の潜在期間を実証するプロットを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
細気管支炎の治療:炎症は細胞損傷、感染または異物の存在に対する体の一次的または二次的反応である。第一要因として、炎症は非常に多くの疾患および障害と関連し、系の悪化および不全も生じ得、未治療の場合は二次症状の原因となり得る。発熱、腫脹、痛みなどの炎症の典型的な症状とは別に、炎症はまた、特定の内因性因子または炎症性バイオマーカーをモニタリングすることによっても診断され、体におけるこれらの量は炎症の重篤度および病期の指標である。
【0043】
細気管支炎は小気道の感染として定められる。それはまた乳児期における急性下気道感染症(ALRI)の最も一般的な兆候でもあり、世界における小児死亡率の主原因である。ウイルス性細気管支炎は米国における小児の入院で現在最も一般的な原因であり、乳幼児入院のあらゆる原因のほぼ20%を占める。ウイルス性病因が主な原因であり、呼吸器ウイルスの中で、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は幼児にALRIを生じる最も重要なウイルス病原体であると考えられる。この疾患は主に生後1年で一般的である。臨床的徴候および症状は、低酸素症、呼吸困難、鼻感冒、食欲不振、喘息、喘鳴および聴診時の捻髪音、そして場合によっては呼吸不全と一致する。
【0044】
一つの実施形態では、本発明は乳幼児に一酸化窒素を投与し、ここで投与は短期高濃度一酸化窒素であり、細気管支炎を有する乳幼児における肺機能を改善し、一方、肺損傷または有害作用の他の徴候を生じない。
【0045】
本明細書全体を通して、用語「一酸化窒素」が吸入の文脈で使用される場合、一酸化窒素はガス状態で吸入されると理解されるべきである。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態により、この方法を必要とする乳幼児(例えば、細気管支炎を有する乳幼児、または細気管支炎と診断された乳幼児)における細気管支炎を治療する方法が提供される。細気管支炎の診断は従来技術で知られている方法によって行われてよく、下記の例セクションで説明される方法を含む。
【0047】
本明細書で説明される方法は、間欠的吸入に関する実施形態のいずれか1つで説明されるように、一酸化窒素またはその任意の組み合わせを含むガス混合物の間欠的吸入に乳幼児を供することを含む。
【0048】
本発明の実施形態により、細気管支炎を治療する方法は細気管支炎患者で示される任意の有効な治療効果を包含し、例えば、細気管支炎の症状の改善(例えば、肺機能の改善)、細気管支炎と関連する医学的状態の改善(例えば、細気管支炎と関連する微生物感染の低下、細気管支炎と関連する病原性微生物の量の低下、炎症の低下)、および乳幼児の入院期間の短縮を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される細気管支炎を治療する方法は、細気管支炎を有する乳幼児を治療する方法として考えられ、細気管支炎の症状の改善(例えば、肺機能の改善)、細気管支炎と関連する医学的状態の改善(例えば、細気管支炎と関連する微生物感染の低下、細気管支炎と関連する病原性微生物の量の低下、炎症の低下)、および患者の入院期間の短縮の方法を包含する。
【0050】
乳幼児における細気管支炎の治療効能に付随する観点では、肺機能は細気管支炎の症状を改善するための最も簡単で直接的なマーカーの1つであり、従って乳幼児における肺機能の改善は、細気管支炎を有する乳幼児の有効な治療を代表することが一般的に受け入れられている。
【0051】
いかなる特定の理論によって拘束されることなく、外来のガス状で送達される一酸化窒素は、容易に肺系に入り肺血管拡張によって作用し、病原性微生物量を低下させ、炎症を低下させ、かつ他の臨床症状を緩和する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法は、この実施形態のいずれか一つで、およびこれらのいずれかの組み合わせにおいて、細気管支炎と関連する医学的状態によって悪化する細気管支炎を有する乳幼児における、1種類以上の生理学的パラメータを改善することによって行われる。これらのパラメータのいずれかの改善は、本明細書で説明される実施形態のいずれか一つにより、一酸化窒素の間欠的吸入による治療の有益な効果の指標である。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態により、本方法は、限定されないが、1秒での強制呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、FEV/FVC比またはFEV%および努力呼気流量(FEF)などの、少なくとも1つの肺機能(スパイロメトリーパラメータ)を改善することによって行われる。
【0054】
スパイロメトリーパラメータである努力肺活量(FVC)はリットルで測定される空気容量であり、それは最大限の吸気後に強制的に吐き出され、呼吸機能試験における最も基本的な操作を構成する。
【0055】
スパイロメトリーパラメータである最初の1秒での強制呼気量(FEV)は、最大限の吸気後に、1秒で強制的に吐き出される空気の容量である。FEVの平均値は主に性別および年齢に依存し、一方、平均値の80%と120%の間に収まる値は正常とみなされる。FEVの予測される正常値はオンサイトで計算でき、年齢、性別、身長、体重および民族性ならびにこれらが基づく調査研究に依存する。
【0056】
スパイロメトリーパラメータであるFEV/FVC比(FEV%)は、FVCに対するFEVの比であり、それは約75~80%である。予測FEV%は、その患者に適した集団における平均FEV%によって除された患者のFEV%として定められる。
【0057】
スパイロメトリーパラメータである努力呼気流量(FEF)は、強制呼気の中間部分の間に肺から排出される空気の流量(または速度)である。これは不連続時間で得ることができ、一般的に、努力肺活量(FVC)の残存部分、すなわち、FVCの25%(FEF25)、FVCの50%(FEF50)またはFVCの75%(FEF75)によって定められる。これはまた、ある区間中の流量の平均として得ることができ、また一般的にFVCの特定の残存部分によって範囲が定められ、通常25~75%(FEF25~75)である。平均の50~60%から130%までの範囲で測定された値は正常とみなされ、一方、FEFの予測正常値はオンサイトで計算でき、年齢、性別、身長、体重および民族性ならびにこれらが基づく調査研究に依存する。最近の研究は、FEF25~75%またはFEF25~50%が閉塞性末梢気道疾患の検出において、FEVよりも感度が高いパラメータであり得ることを示唆している。しかし、標準マーカーに同時的な変化がない場合、中央範囲の呼気流量における相違は、有用であるには十分特異的でない可能性があり、現在の実施ガイドラインは、FEV、VC、およびFEV/VCを閉塞性疾患の指標として使用し続けることを推奨している。
【0058】
いくつかの実施形態では、他のスパイロメトリーパラメータが、本明細書で下記で定められ説明されるように、160ppm一酸化窒素の間欠的吸入による細気管支炎治療の進行および効能を追跡するため、および/または治療の安全性パラメータを追跡するために使用され得る。
【0059】
いくつかの実施形態により、FEVは、後述で定められるように、オンサイトパラメータとしてモニターされ、本明細書で提供される一酸化窒素の間欠的吸入の有益な効果の指標である。一般的に、FEV量の増加は細気管支炎を有する乳幼児における所望の効果とみなされ、ここで患者のFEVベースライン量(治療開始前)の少なくとも3%の増加が顕著な改善とみなされる。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書で説明されるように、一酸化窒素の間欠的吸入の間におよび/または後で(たとえば、一酸化窒素の間欠的吸入が行われる全期間の間におよび/または後で)、FEV量が少なくとも3、5、10、15または20%増加するように行われる。
【0060】
本発明の実施形態により、本方法は間欠的吸入治療中に乳幼児における病原性微生物の負荷を1対数単位で少なくとも低下させるように行われる。
【0061】
病原性微生物の負荷における変化を説明するために本明細書で使用される用語「対数単位」は、「対数的減少」または「対数的増加」としても知られており、本明細書で示されるように、一酸化窒素の間欠的吸入の方法を実施することによって系から排除される生きた微生物の相対的な数を示すために使用される数学用語である。例えば、5対数単位の減少は、微生物の数が100,000倍低下することを意味し、すなわち、サンプルがそこに100,000個の微生物を有する場合、5対数単位減少は、微生物の数を1個に減少させる。従って、1対数単位減少は病原性微生物の数が10倍小さくなることを意味し、2対数減少は病原体の数が100倍小さくなることを意味し、3対数減少は病原体の数が1000倍小さくなることを意味し、4対数減少は病原体の数が10,000倍小さくなることを意味するなど、である。
【0062】
細気管支炎は、肺などの少なくとも1つの体部位における炎症症状、あるいは限定されないが病原体感染を含む1つ以上の医学的状態によって生じる急性、慢性、局所または全身の炎症と一般的に関連する。細気管支炎を有する乳幼児における炎症も、細気管支炎に対する二次症状(細気管支炎と関連する医学的状態)と考えることができる。本発明のいくつかの実施形態により、本方法は細気管支炎と関連する炎症の程度を低下することによって行われる。
【0063】
細気管支炎と関連する炎症の低下は、一般的には細気管支炎の治療の有益な効果とみなされる。同様に、細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーの量の低下は、本明細書で示される細気管支炎を有する乳幼児を治療する方法の効能の1つの指標とみなしてよい。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態の文脈では、細気管支炎と関連する炎症または炎症性マーカーは、限定されないが、C-反応性タンパク質(CRP)の血清/血液量、IL-6およびIL-1βなどのインターロイキン、α-1-アンチトリプシン(AAT)、ハプトグロビン、トランスフェリン、種々の免疫グロブリン、グランザイムB(GzmB)、ケモカインC-Cモチーフリガンド18(CCL18/PARC)、サーファクタントタンパク質D(SP-D)、リポポリサッカライド(LPS)結合タンパク質、および可溶性クラスター分類14(sCD14)を含む。
【0065】
用語「サイトカイン」は、本発明の実施形態の文脈で使用される場合、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカインおよび腫瘍壊死因子を含む。
【0066】
細気管支炎と関連する4種の非限定例である炎症性バイオマーカーの簡単な説明を次に示す。
【0067】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、体にシグナルを送って好中性白血球を感染または損傷部位に移動させる。TNFαは、サイトカインまたは細胞シグナリングタンパク質として知られる。TNFαは最も損傷がある体にシグナルを送ることによって、有事の際に「第一応答者」のようにふるまい、これによって免疫系が効果的に反応でき、好中球を送る。
【0068】
核因子カッパB(NFkB)は、特定の遺伝子に対しスイッチとして作用する転写因子タンパク質である。NFkBが核に入ることができる場合、これはTNFαの補助によって行われ、NFkBは細胞が増殖し、成熟し、およびアポトーシス(ブログラム細胞死)による破壊を回避できるようにする遺伝子のスイッチを入れる。これは白血球を複製させ感染したまたは損傷した領域を一掃するそれらの活性を発揮させる。NFkBは、最も素早い応答に利用できるすべてのチャンネルを開くことによる伝達ラインの優先的設定と類似している。
【0069】
インターロイキン-6(IL-6)は、好中球を自ら破壊させて、白血球の別のタイプである単球を感染または損傷領域に代わりに引き寄せるサイトカインである。単球は、食作用によって残屑および病原体を掃討するマクロファージを作り出し、食作用はそれによってマクロファージが死んだ細胞および他の粒子全体を分解する過程である。
【0070】
C-反応性タンパク質(CRP)は、「パターン認識受容体」タンパク質であり、それは除去するよう認識された残屑に印を付けることを意味し、IL-6量に応答して肝臓によって産生され、死んだまたは死につつある細胞の表面に、およびまた特定の型の細菌にも結合する。CRPは、マクロファージが食作用を通して何かを取り込むためのシグナルの形態として作用し、これによって炎症中残屑の最終的な除去に役立つ。
【0071】
いくつかの実施形態により、細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーの濃度をモニタリングすることは、細気管支炎と関連する炎症の治療の経過および効果を判断するのに有用である。いくつかの実施形態では、乳幼児から採取された血清中の細気管支炎と関連するバイオマーカーの濃度は、治療の開始前の乳幼児における血中濃度のベースラインに基づき、治療の間に少なくとも3、5、10、15、20、30、35、40、50または少なくとも60%低減される。
【0072】
いくつかの実施形態では、細気管支炎と関連するバイオマーカーはCRPであり、CRPの血中濃度は、間欠的吸入治療の間に、治療の開始前の乳幼児におけるベースライン濃度と比べて、少なくとも3、5、10、15、20、30、35、40、50または少なくとも60%低減される。
【0073】
いくつかの実施形態では、細気管支炎と関連するバイオマーカーはサイトカインであり、例えば、限定されないがTNFα、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、および/またはIL-12p70であり、サイトカインの血中濃度は治療の開始前の乳幼児におけるベースライン濃度と比べて、少なくとも3、5、10、15、20、30、35、40、50または少なくとも60%低減される。いくつかの実施形態では、本明細書で提示される方法において炎症性バイオマーカーとして使用されるサイトカインは、IL-6およびIL-1βである。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態により、一酸化窒素を少なくとも160ppmの濃度で含むガス混合物の間欠的吸入に乳幼児を供することによって、乳幼児における病原性微生物の負荷を低下する方法が提供される。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるように、病原性微生物は細気管支炎と関連する微生物感染を生じる。いくつかの実施形態により、病原性微生物は、P.アルカリゲネス、非ムコイド型およびムコイド型緑膿菌、A.フミガーツス、ストレプトコッカス・アウレウス、ヘモフィルス・インフルエンザ、セパシア菌群、クレブシエラ・ニューモニエ、大腸菌、メチシリン耐性ストレプトコッカス・アウレウス(MRSA)、メチシリン感受性ストレプトコッカス・アウレウス(MSSA)、ステノトロホモナス・マルトフェリア、アクロモバクター種、アクロモバクター・キシロソキシダンスおよび非結核性抗酸菌(NTM)種からなる群から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態により、病原性微生物は、P.アルカリゲネス、メチシリン感受性ストレプトコッカス・アウレウス(MSSA)、アクロモバクター種、A.フミガーツス、非ムコイド型緑膿菌およびムコイド型緑膿菌からなる群から選択される。
【0077】
前述で考察されたように、いくつかの実施形態では、病原性微生物の負荷は本請求による方法によって、間欠的吸入の間に少なくとも1対数単位で低減される。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態により、一酸化窒素を少なくとも160ppmの濃度で含むガス混合物の間欠的吸入による治療に乳幼児を供することによって、乳幼児における細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーの量を低下する方法が提供される。
【0079】
いくつかの実施形態により、細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカー、および/またはその正常な生理学的な濃度における変化は、嚢胞性線維症とおよび/または細気管支炎と関連する合併症および他の医学的状態と関連する。細気管支炎を有する乳幼児における細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーの濃度を低下することは、炎症(二次医学的状態としての)を治療する指標である。
【0080】
いくつかの実施形態により、細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーは、本請求の方法による低下の標的とされ、C-反応性タンパク質(CRP)、サイトカイン、α-1-アンチトリプシン(AAT)、ハプトグロビン、トランスフェリン、免疫グロブリン、グランザイムB(GzmB)、ケモカインC-Cモチーフリガンド18(CCL18/PARC)、サーファクタントタンパク質D(SP-D)、リポポリサッカライド(LPS)結合タンパク質および可溶性クラスター分類14(sCD14)からなる群から選択される。
【0081】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーはC-反応性タンパク質(CRP)である。間欠的吸入の結果としての低下率は、患者におけるバイオマーカーのベースライン濃度と比べて、少なくとも3、5、10、15、20、30、35、40、50または少なくとも60%である。
【0082】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、細気管支炎と関連する炎症性バイオマーカーはサイトカインであり、TNFα、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10およびIL-12p70からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性バイオマーカーはIL-6およびIL-1βである。治療の結果としてのサイトカインの濃度の低下率は、患者におけるバイオマーカーのベースライン濃度と比べて、少なくとも3、5、10、15、20、30、35、40、50または少なくとも60%である。
【0083】
間欠的吸入
前述で示されるように、本明細書で提供される方法のいずれも、一酸化窒素を少なくとも160ppmの濃度で含むガス混合物の間欠的吸入に乳幼児を供することを含む。
【0084】
用語「間欠的」は、「連続的」の反対語として本明細書および従来技術で使用され、活動を開始することおよび中止すること、および/または活動を間隔をもって実施することを意味する。
【0085】
「間欠的吸入」は、乳幼児が指示濃度の一酸化窒素を含むガス混合物を間欠的に吸い込むことを意味し、従って、吸入されるガス混合物の容量は間欠的吸入の間に著しく変化しないが、本明細書で後述されるように、混合物の化学的組成物は所定の投与計画に従って変化する。乳幼児は従って所定の期間少なくとも160ppmの濃度で一酸化窒素を含むガス混合物を吸入し、これらの期間と期間の間に乳幼児は、一酸化窒素を実質的に欠くガス混合物(例えば、周囲空気または別の一酸化窒素フリー混合物)を吸入する。
【0086】
本明細書全体を通して、「一酸化窒素含有ガス混合物」または「一酸化窒素を含むガス混合物」は、少なくとも160ppmの一酸化窒素を含むガス混合物を説明するために使用される。一酸化窒素含有ガス混合物は160ppm、170ppm、180ppm、190ppm、200ppmおよびさらに高い濃度の一酸化窒素を含んでよい。本明細書で言及される他のガス混合物は、本明細書で定められるように、160ppm未満の一酸化窒素を含むか一酸化窒素を実質的に欠く。
【0087】
「一酸化窒素を実質的に欠く」は、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、1ppm以下およびppb以下を意味し、一酸化窒素が全く存在しないことを含む。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態により、間欠的吸入は1回以上のサイクルを含み、各サイクルは、第一の期間の特定の高濃度(例えば、少なくとも160ppm)で一酸化窒素を含むガス混合物の連続的吸入、続いて第二の期間の一酸化窒素を実質的に欠くガス混合物の吸入を含む。本発明のいくつかの実施形態により、第二の期間中に、乳幼児は周囲空気または、本明細書で定められるような、一酸化窒素を実質的に欠く制御されたガス混合物を吸入し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、第一の期間は10~45分、または20~45分、または20~40分にわたり、およびいくつかの実施形態により、約30分にわたる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態により、第二の期間は3~5時間、または3~4時間の範囲であり、およびいくつかの実施形態により、第二の期間は約3.5時間にわたる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態により、この吸入投与計画は24時間にわたって1~6回繰り返され、第一のおよび第二の期間に依存する。
【0092】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素の間欠的送達のサイクル、例えば、160ppmを30分、続いて一酸化窒素を含まない呼吸を3.5時間、が1日に1~6回繰り返される。いくつかの実施形態により、サイクルは1日に5回繰り返される。あるいは、サイクルは1日に3回繰り返される。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態により、1日あたり1~5回の投与計画は1~21日、または2~14日、または3~10日の間実施される。本発明のいくつかの実施形態により、間欠的吸入は2週間の間行われる。しかし、本明細書で説明されるように、さらに長期の間欠的な一酸化窒素投与も考えられる。
【0094】
安全性
前述で考察されるように、160ppmの一酸化窒素の間欠的吸入は、すべての年齢のヒト被験体において安全であることが示されている。安全性は、本明細書で提示される方法の安全性測定として、乳幼児における1種類以上の生理学的パラメータをモニタリングすることおよび一方でモニタリングされるパラメータに大きな有害変化が生じていないことに注意することによって実証されている。本発明の実施形態のいずれか一つにより、間欠的吸入は乳幼児における1種類以上の生理学的パラメータをモニタリングしながら行われる。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される方法は、所望の投与量および投与計画を維持することに関連する、処置の安全性に関連するおよび治療の効能に関連する様々なパラメータをモニタリングしながら行われる。
【0096】
本発明の実施形態のいずれか一つにより、本方法は、本明細書で示される方法の安全性測定として、乳幼児における1種類以上の生理学的パラメータをモニタリングしながら、およびモニタリングした安全性パラメータに重大な有害変化が生じていないことに注意しながら行われる。
【0097】
いくつかの実施形態では、本方法は、灌流指数(PI)、呼吸速度(RRa)、オキシヘモグロビン飽和度(SpO/SaO/DO)、総ヘモグロビン(SpHb)、カルボキシヘモグロビン(SpCO)、メトヘモグロビン(SpMet)、酸素含量(SpOC)、および脈波変動指数(PVI)などの、体液化学の非侵襲的なモニタリングを含んで測定される安全性を維持しながら実施され、これらの生理学的パラメータは従来技術で知られている。一般的に、これらのオンサイト生理学的パラメータは、パルスオキシメトリによってモニタリングされる。
【0098】
開示される本方法で安全性測定としてまたモニタリングされる他のパラメータは、そのいくつかの実施形態により、非侵襲的(例えば、尿、糞便、または痰サンプル)および侵襲的(例えば、血液またはバイオプシー)方法を用いて体サンプルを収集することによって一般的に測定される、オフサイト生理学的パラメータである。
【0099】
例えば、侵襲的方法によって一般的に測定されるオフサイト生理学的パラメータは、血清亜硝酸塩/硝酸塩(NO /NO )、血液ヘモグロビン、全血球数算定(CBC)、血液化学/生化学(電解質、腎臓および肝臓の機能試験など)および凝固試験を含み得る。
【0100】
非侵襲的方法によって一般的に測定されるオフサイト生理学的パラメータは、亜硝酸塩/硝酸塩(NO /NO )、尿中妊娠試験、および痰、尿または糞便中の細菌および真菌負荷を含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、本方法は、吸入ガス混合物を制御することおよび呼出ガスをモニタリングすることを含む安全性測定を維持しながら実施され、これは、乳幼児が供される、または送達インターフェイスを通して送達される、混合物の含量および/または流量をオンサイトでモニタリングするおよびコントロールするための標準的な手段によって、および/またはオンサイトで呼出ガスをモニタリングしてかつリアルタイムのフィードバックによって取り込みをコントロールしながら行われる。いくつかの実施形態では、本方法は、乳幼児が暴露される、または呼出するガス混合物中の一酸化窒素、O、COおよびNOの濃度をモニタリングしながら行われる。
【0102】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素含有ガス混合物中の一酸化窒素の濃度は、10%を超えて所定濃度から逸脱しないように制御される。例えば、本方法は、160ppmに設定された一酸化窒素の濃度が144ppm~176ppmの境界を実質的に超えずに実施される。
【0103】
同様に、一酸化窒素含有混合物中のNO含量は、NOの濃度が5ppm未満で維持されるように制御される。
【0104】
さらに、一酸化窒素含有ガス混合物中の酸素量は、混合物中のO濃度が約20~約25%の範囲であるように制御される。
【0105】
これに代えて、または追加で、一酸化窒素含有ガス混合物中の酸素量は、吸気酸素濃度比(FiO)が約20~約100%の範囲であるように制御される。
【0106】
語句「吸気酸素濃度比」または「FiO」は、本明細書で使用されるとき、所定のガスサンプル中の酸素の比または割合を指す。例えば、海面レベルで周囲空気は20.9%の酸素を含み、これは0.21のFiOに相当する。酸素が豊富な空気は0.21を超えて、100%酸素を意味する1.00までの高いFiOを有する。本発明の実施形態の文脈では、FiOは1より低く維持される(酸素100%未満)。
【0107】
いくつかの実施形態により、一酸化窒素含有ガス混合物中の吸気酸素濃度比(FiO)は0.20である。代替実施形態では、一酸化窒素含有ガス混合物中のFiOは0.25である。代替実施形態では、一酸化窒素含有ガス混合物中のFiOは0.3である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.35である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.4である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.45である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.5である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.55である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.6である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.65である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.7である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.75である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.8である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.85である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.9である。代替実施形態では、一酸化窒素含有混合ガス中のFiOは0.95である。
【0108】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素含有ガス混合物は、一酸化窒素のストック供給を空気と混合することによって調製され、一酸化窒素のストック供給を所望の濃度に希釈する。いくつかの実施形態では、一酸化窒素のストック供給は空気および酸素と混合されてFiOを0.20超に維持する。一酸化窒素、空気および/または酸素の比は、所望の一酸化窒素濃度およびFiOを得るために変動させてよい。
【0109】
語句「呼気終末CO」または「ETCO」は、本明細書で使用されるとき、呼気呼吸の最後における二酸化炭素(CO)の分圧または最大濃度を指し、COの割合または圧力単位mmHgとして表される。ヒトにおける正常値は5~6%COの範囲であり、これは35~45mmHgに相当する。COは肺から呼気空気中に拡散するため、ETCO値は心拍出力(CO)を反映し、ガスとしての肺血流は静脈系によって心臓の右方に輸送され、そして右心室によって肺に送られる。カプノメーターと呼ばれるデバイスは、呼気の最後にCOの分圧および最大濃度を測定する。本発明の実施形態の文脈において、カプノメーターが使用され、ETCO量がモニタリングされて、ETCOが60mmHgを超える場合に警告のフィードバックがもたらされる。
【0110】
呼吸NO、NOの濃度およびO濃度(吸い込まれるおよび吐き出される両方の、吸気性および呼気性ガス)は一般的に、電気化学的分析装置を備えた吸入マスクNO、NOおよびOに配置されたマウスピースサンプル口からサンプリングすることによって連続的にモニタリングされる。本発明の実施形態の文脈では、安全性の考慮は、一酸化窒素投与の間にNO濃度が5ppmを超え、一酸化窒素濃度変動が10%を超え、およびFiO/O濃度が20%未満に低下する機会の数の絶対的な最小化を必要とする。
【0111】
炎症性バイオマーカーの急激な上昇は「サイトカインストーム」と呼ばれる現象と関連している可能性があることが知られており、このことは一酸化窒素吸入治療を受けている乳幼児で認められている。従って、本明細書で説明される本方法を実施しながら炎症性バイオマーカーをモニタリングすることは、本発明の実施形態により、本方法に関する安全性考慮における追加的な役割を有し、ここで炎症性マーカーに顕著な増加がないことは安全の指標である。
【0112】
いくつかの実施形態では、1種類以上の生理学的パラメータをモニタリングすることは、非侵襲的測定および/または穏やかな侵襲的測定によって行われる。
【0113】
いくつかの実施形態では、乳幼児における生理学的パラメータをモニタリングすることは、乳幼児のベッドサイドでリアルタイムに乳幼児からオンサイトで単発的に、連続的にまたは定期的に収集されるサンプルに基づいたオンサイト測定および分析技術、および/または後の時点で結果および分析をもたらすオフサイトで処理するために送られる、乳幼児から単発的にまたは定期的に収集されたサンプルに基づいたオフサイト測定および分析によって行われる。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態の文脈では、語句「オンサイト測定および分析技術」または「オンサイト技術」は、分析のためにオフサイト施設へサンプルまたは生データを送る必要がない、リアルタイムで乳幼児の所定の生理学的パラメータを医師に知らせるモニタリング技術を指す。オンサイト技術はしばしば非侵襲性であるが、いくつかは呼吸チューブ、ドレインチューブ、静脈カテーテルあるいは皮下ポートまたはいずれかの他の埋め込み可能なプローブなどの侵襲性医療デバイスからのサンプリングに依存する。このため、語句「オンサイトパラメータ」は、本明細書で使用されるとき、オンライン技術で得ることができる生理学的パラメータを指す。
【0115】
そのいずれかの重大な変化に素早くそしてマニュアルで対応する医師の能力で主に表される、生理学的パラメータのリアルタイムでのオンサイト測定の自明の利点以外に、生理学的パラメータのリアルタイムでのオンライン測定から得られるデータは装置に供給され、装置のリアルタイムフィードバック制御のために使用され得る。本発明の実施形態の文脈では、用語「リアルタイム」はまた、情報を更新してそれらが情報を受けるのとほとんど同時にそれに応答するシステムとも関連する。このようなリアルタイムフィードバックは、治療投与計画を遵守するために、および/または安全性測定として許容可能なパラメータからの重大な逸脱に応答して直ちに自動的に作動するために使用できる。
【0116】
従って、本発明の実施形態により、用語「オンサイトパラメータ」は、乳幼児の場所(例えば、ベッドサイド)またはその付近で比較的短時間で入手可能でありかつ使用または考慮できる、生理学的および/または機械的および/または化学的データを指し、すなわち、そのデータをサンプリングする、試験する、処理するおよび表示する/使用する段階にわたる時間が比較的短い。「オンサイトパラメータ」は、サンプリングから使用するまで、例えば、30分未満、10分未満、5分未満、1分未満、0.5分未満、20秒未満、10秒未満、5秒未満、または1秒未満で得ることができる。例えば、パルスオキシメトリとして知られる技術によってオンサイトパラメータを得るために必要とされる時間はほとんど即時であり、装置が配置および設定されると、例えば、乳幼児の末梢における酸素飽和度に関連するデータは、サンプリングから使用まで1秒未満で利用可能である。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態の文脈では、語句「オフサイト測定および分析技術」または「オフサイト技術」は、サンプルまたは生データをオフラインの、かつ一般的にはオフサイトの施設に送付し、サンプルが得られた後の時には数時間または数日で、分析をオフラインで受けた後に乳幼児の所定の生理学的パラメータに関する情報を提供する技術を指す。オフサイト技術は、炎症性サイトカイン血漿量をモニタリングするための血液採取などの軽度の侵襲的技術、およびバイオプシー、カテーテルまたはドレインチューブなどの侵襲的技術によって収集されたサンプルにしばしば基づいているが、いくつかのオフサイト技術は、オフラインでの尿および糞便化学などの非侵襲性サンプリングおよびオフサイト分析に依存する。語句「オフサイトパラメータ」は、本明細書で使用されるとき、オフサイト検査室技術によって得ることができる生理学的パラメータを指す。
【0118】
従って、本発明の実施形態により、用語「オフサイトパラメータ」は、比較的長時間で入手され使用または考慮できる生理学的および/または機械的および/または化学的データを指し、すなわち、そのデータをサンプリングする、試験する、処理するおよび表示する/使用する段階にわたる時間がオンサイトパラメータと比べて長い。このため、「オフサイトパラメータ」は、サンプリングから使用するまで、1日超、12時間超、1時間超、30分超、10分超、または5分超で得ることができる。
【0119】
「オフサイトパラメータ」は、サンプルを化学的、生物学的、機械的または他の処理に供して一般的に得ることができ、処理は検査室で一般的に実施され、そのため「オンサイト」、すなわち乳幼児の場所のそばまたは付近で実施されない。
【0120】
様々な生理学的パラメータをモニタリングするための非侵襲的測定には、限定されないが、痰、尿および糞便サンプリング、パルスオキシメトリ、非挿管呼吸分析および/またはカプノメトリーが含まれる。様々な生理学的パラメータをモニタリングするための侵襲的測定には、限定されないが、血液採取、連続的な血液ガスおよび代謝物分析、ならびにいくつかの実施形態では、挿管呼吸分析および経皮モニタリング測定が含まれる。厳しい侵襲的測定にはバイプシーおよび他の外科処置が含まれる。
【0121】
用語「パルスオキシメトリ」は、皮膚(指、耳たぶなど)を通るヘモグロビンの光吸収特性を追跡することにより、およびヘモグロビンの酸素化種および非酸素化種、ならびに一酸化炭素(CO)などの他の分子に結合したヘモグロビン種、およびヘモ基中の鉄がFe3+(第二鉄)状態であるメトヘモグロビンで観察される分光学的な差に基づいて、呼吸と関連した生理学的パラメータを測定する非侵襲的なオンサイト技術を指す。パルスオキシメトリによって測定できる生理学的パラメータには、例えば、SpO、SpMetおよびSpCOが含まれる。
【0122】
語句「非挿管呼吸分析」は、本明細書で使用されるとき、スパイロメトリーおよびカプノグラフィーなどの非侵襲性のオンサイト技術の一群を指し、それらは吸気/呼気気流をサンプルリングすることによる、または乳幼児の息を検出器に向けることによる生理学的な肺機能および呼吸ガス化学の測定をもたらし、すべていずれの段階でも乳幼児の気道または他の開口部に侵入することあるいは皮膚を貫通することがない。
【0123】
本明細書で使用される用語「スパイロメトリー」は、非侵襲性のオンサイトスピロメーターによる呼吸関連パラメータおよび肺機能の測定の組み合わせを指す。本発明のいくつかの実施形態の文脈で使用され得る例示的なスパイロメトリーパラメータを次に示す。
【0124】
スパイロメトリーパラメータである一回呼吸量(TV)は、安静時に正常に吸入されるおよび吐き出される空気の量であり、正常値は対象者の理想的な体重に基づく。
【0125】
スパイロメトリーパラメータである全肺気量(TLC)は、肺に存在する空気の最大容量である。
【0126】
スパイロメトリーパラメータである肺活量(VC)は、最大吸入後に肺から排出できる空気の最大量であり、予備吸気量、一回換気量、および予備呼気量の合計に等しい。
【0127】
スパイロメトリーパラメータである静的肺活量(SVC)は、できるだけ深く吸入され、そして完全に吐き出される空気の量であり、乳幼児がどのくらい深く呼吸できるかを測定する。
【0128】
スパイロメトリーパラメータである努力肺活量(FVC)は、リットルで測定される空気の容量であり、最大限の吸気後に強制的に吐き出され、スパイロメトリー試験における最も基本的な処置を構成する。
【0129】
スパイロメトリーパレメータである最初の1秒における強制呼気量(FEV)は、最大限の吸気後、1秒で強制的に吐き出される空気の容量である。FEVの平均値は主に性別および年齢に依存し、一方、平均値の80%と120%の間に収まる値は正常とみなされる。FEVの予測される正常値はオンサイトで計算でき、年齢、性別、身長、体重および民族性ならびにこれらが基づく調査研究に依存する
【0130】
スパイロメトリーパラメータであるFEV/FVC比(FEV%)は、FVCに対するFEVの比であり、成人では約75~80%である。予測FEV%は、その患者に適した集団における平均FEV%によって除された患者のFEV%として定められる。
【0131】
スパイロメトリーパラメータである努力呼気流量(FEF)は、強制呼気の中間部分の間に肺から排出される空気の流量(または速度)である。これは不連続時間で得ることができ、一般的に、努力肺活量(FVC)の残存部分、すなわち、FVCの25%(FEF25)、FVCの50%(FEF50)、またはFVCの75%(FEF75)によって定められる。これはまた、ある区間中の流量の平均として得ることができ、また一般的にFVCの特定の残存部分によって範囲が定められ、通常25~75%(FEF25~75%)である。平均の50~60%から130%までの範囲で測定された値は正常とみなされ、一方、FEFの予測正常値はオンサイトで計算でき、年齢、性別、身長、体重および民族性ならびにこれらが基づく調査研究に依存する。最近の研究は、FEF25~75%またはFEF25~50%が閉塞性末梢気道疾患の検出において、FEVよりも感度が高いパラメータであり得ることを示唆している。しかし、標準マーカーに同時的な変化がない場合、中央範囲の呼気流量における相違は、有用であるには十分特異的でない可能性があり、現在の実施ガイドラインは、FEV、VC、およびFEV/VCを閉塞性疾患の指標として使用し続けることを推奨している。
【0132】
スパイロメトリーパラメータである陰性吸気流速(NIF)は、胸部筋肉が呼吸において及ぼすことができる最大力であり、値は呼吸筋の状態を示す。
【0133】
スパイロメトリーパラメータであるMMEFまたはMEFは、最大(中間)呼気流量を指し、流量曲線から得られる呼気流量のピークであり、秒あたりのリットルで測定される。MMEFはピーク呼気流量(PEF)と関連し、ピーク流量メーターによって一般的に測定され、分あたりのリットルで与えられる。
【0134】
スパイロメトリーパラメータであるピーク呼気流量(PEF)は、最大限の吸気で開始される最大に強制された呼気の間に達成される最大流量(または速度)を指し、分あたりのリットルで測定される。
【0135】
スパイロメトリーパラメータである一酸化炭素拡散能(DCO)は、標準的な時間(通常10秒)における単回吸気からの一酸化窒素取り込みを指す。オンサイト計算装置を利用して、ヘモグロビン量、貧血、肺出血ならびに測定が実施された場所の標高および/または大気圧についてDCOを補正できる。
【0136】
スパイロメトリーパラメータである最大換気量(MVV)は、1分以内に吸入されおよび吐き出され得る空気の最大量の尺度である。一般的にこのパラメータは、15秒間にわたって測定された後でリットル/分として表される1分間の値に外挿される。男性および女性の平均値は、それぞれ分あたり140~180および80~120リットルである。
【0137】
スパイロメトリーパラメータである静肺コンプライアンス(Cst)は、いずれかの所定の加圧に対する肺容量の変化を指す。静肺コンプライアンスは異常な肺機能の検出に関しておそらく最も感度の高いパラメータである。Cstは、それが同一基準集団の平均値の60~140%である場合、正常とみなされる。
【0138】
スパイロメトリーパラメータである努力呼出時間(FET)は、呼気の長さを秒で測定する。
【0139】
スパイロメトリーパラメータである静的肺活量(SVC)は、遅い最大吸気後にゆっくり吐き出され得る空気の最大容量である。
【0140】
スパイロメトリーパラメータである静的内因性呼気終末陽圧(静的PEEPi)は、気道閉塞の間のプラトーな気道開口圧として測定される。
【0141】
スパイロメトリーパラメータである最大吸気圧(MIP)は、ヒトが吸気の間に自ら生じることができる陰圧の最大量を表す値であり、水圧のセンチメートル(cmHO)によって表されマノメーターで測定され、横隔膜強度の指標および独立した診断パラメータとして役立つ。
【0142】
用語「カプノグラフィー」は、呼吸ガス中の二酸化炭素(CO)の濃度または分圧をモニタリングするための技術を指す。呼気終末CO、またはETCOはカプノグラフィーによって測定できるパラメータである。
【0143】
ガス検出技術は多くの医療用および他の産業用デバイスに統合され、そこに流れる、または捕捉されるガスサンプルの化学的組成の定量測定を可能にする。本発明の実施形態の文脈では、このようなガスの化学的測定は、試験のオンサイトでの非侵襲的組み合わせの一部であり、本明細書で示される方法の制御およびモニタリングされる活動である。ガス検出器、ならびにガス混合装置およびレギュレータは、吸入ガス混合物中の吸気酸素濃度比(FiO)および一酸化窒素濃度などのパラメータを測定および制御するために使用される。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態により、脈拍、血圧、呼吸速度および体温などのバイタルサインの測定は、オンサイトおよび非侵襲的測定の組み合わせの一部とみなされる。
【0145】
語句「統合肺指標」またはIPIは、患者の肺指標を指し、カプノグラフィーからの吸入された/吐き出されたガスに関する情報およびパルスオキシメトリからの血液中に溶解したガスに関する情報を使用して、患者の呼吸状態を説明する単一値を与える。IPIは、オンサイトの非侵襲的技術によって得られ、患者モニタリングによって与えられる4種の主要な生理学的パラメータ(カプノグラフィーによって測定される呼気終末CO終末および呼吸速度、ならびにパルスオキシメトリによって測定される脈拍および血液酸素化SpO)を統合し、この情報をアルゴリズムとともに用いてIPIスコアを得る。IPIは、患者の全体的な換気状態のリアルタイム(オンサイト)での単純な指標を、1~10の範囲の整数(スコア)として示す。IPIスコアは本患者の呼吸パラメータとは置き換わらないが、患者の呼吸状態を迅速に評価するために使用して追加の臨床的評価または介入の必要性を決定する。
【0146】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、モニタリングされる生理学的または化学的パラメータは、以下のパラメータ:灌流指数(PI)、呼吸速度(RRa)、オキシヘモグロビン飽和度(SpO)、総ヘモグロビン(SpHb)、カルボキシヘモグロビン(SpCO)、メトヘモグロビン(SpMet)、酸素含量(SpOC)、および脈波変動指数(PVI)の1種類以上、および/または血清亜硝酸塩/硝酸塩(NO /NO )、血清または尿亜硝酸塩/硝酸塩(NO /NO )および血液ヘモグロビンからなる群から選択される少なくとも1種類のオフサイトパラメータの1種類以上を含む。
【0147】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、モニタリングされる生理学的または化学的パラメータは、以下のパラメータ:灌流指数(PI)、呼吸速度(RRa)、オキシヘモグロビン飽和度(SpO)、総ヘモグロビン(SpHb)、カルボキシヘモグロビン(SpCO)、メトヘモグロビン(SpMet)、酸素含量(SpOC)、および脈波変動指数(PVI)の1種類以上、および/または血清亜硝酸塩/硝酸塩(NO /NO )、および皮膚塩分濃度からなる群から選択される少なくとも1種類のオフサイトパラメータを含む。
【0148】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、乳幼児によって吸入されるガス混合物中の以下のオンサイトパラメータ:呼気終末CO(ETCO)、二酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、および吸気酸素濃度比(FiO)の少なくとも1つ以上をモニタリングしながら実施される。
【0149】
本明細書で説明される実施形態のいくつかによりモニタリングされる生理学的または化学的パラメータは、以下のパラメータ:二酸化窒素の尿量(尿亜硝酸塩量)(オフラインパラメータ);脈拍、血圧、呼吸速度および体温からなる群から選択されるバイタルサイン(オンラインパラメータ);限定されないがヘモグロビン量、ヘマトクリット値、赤血球数、白血球数、白血球分画および血小板数などの血液学的マーカー(オフラインパラメータ);限定されないがプロトロンビン時間(PT)、プロトロンビン比(PR)および国際標準化比(INR)などの凝固パラメータ(オフラインパラメータ);血清クレアチニン量(オフラインパラメータ)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)量、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)量、アルカリホスファターゼ量、およびγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)量からなる群から選択される肝機能マーカー(オフラインパラメータ);Ang-1、Ang-2およびAng-2/Ang-1比からなる群から選択される血管内皮活性化因子(オフラインパラメータ)の1種類以上をさらに含む。
【0150】
炎症性バイオマーカーの急激な上昇は「サイトカインストーム」と呼ばれる現象と関連し得ることが知られており、それは一酸化窒素吸入治療を受けている乳幼児で認められている。従って、本明細書で説明されるように本方法を実施しながら炎症性バイオマーカーをモニタリングすることは、本発明の実施形態により、本方法に関する安全性考慮における追加的な役割を有し、ここで炎症性マーカーに顕著な増加がないことは安全の指標である。
【0151】
本明細書のいくつかの実施形態により、本明細書で開示される方法は、上記で示される治療の安全性および効能に関してモニタリングされる生理学的パラメータおよびバイオマーカーの量における著しい変化は認められないものである。
【0152】
本実施形態の文脈では、パラメータまたはバイオマーカー量の変化は、観察の値(測定、試験結果、読み取り、計算結果など)または観察群が正常レベルから顕著に外れている、例えば、正常レベルの上限の約2倍外れている場合、大きいとみなされる。
【0153】
パラメータの「正常な」レベルまたはバイオマーカーの「正常」なレベルは、本明細書では、ベースライン値または単に「ベースライン」と呼ばれる。本実施形態の文脈では、用語「ベースライン」は、一般的なヒト集団、特定のこれらのサブセット(コホート)または場合によっては特定な個人に関する医療行為の数年にわたって収集されている多数の観察および/または測定から統計的に決定されている値の範囲として定められる。ベースラインは、特定の健康状態下の乳幼児について正常であると従来技術で一般的におよび医学的に受け入れられる、パラメータ/バイオマーカー特有の値である。これらのベースラインまたは「正常な」値、およびこれらの正常値を測定する手段は従来技術で知られている。これに代えて、ベースライン値は、本発明で説明されている方法を行う前に、十分知られ受け入れられている方法、処置および技術的手段を用いて特定の乳幼児から、または乳幼児において測定され得る。ベースラインは従って許容値、または許容誤差の範囲と関連し、パラメータ/バイオマーカーの測定とともに測定される。言い換えると、ベースラインは「正常」と考えられる観察の範囲を限定する、許容可能な値の範囲である。ベースラインの幅、またはその上限と下限の間の差は「ベースライン範囲」と呼ばれ、範囲の中央からの差は「許容可能な偏差単位」またはADUと本明細書で呼ばれる。例えば、4~8のベースラインは、4のベースライン範囲および2の許容可能な偏差単位を有する。
【0154】
本実施形態の文脈では、対象のパラメータ/バイオマーカーに関する観察における著しい変動は、所定の許容可能なベースラインから2許容可能偏差単位(2ADU)を超えて外れる変動である。例えば、4~8のベースライン(4のベースライン範囲、および2の許容可能偏差単位の特性を有する)に関して、10の観察は、ベースラインから1許容可能偏差単位、または1ADU外れる。これに代えて、変動は、1.5ADU超、1ADU超または0.5ADU超である場合に大きいとみなされる。
【0155】
本実施形態の文脈では、「統計学的に有意な観察」または「ベースラインからの統計学的に有意な偏差」は、それがランダムな要因、誤差または見込みの結果としては生じていないようなものである。
【0156】
いくつかのパラメータ/バイオマーカーまたはパラメータ/バイオマーカーの群では、その変化の重要性は状況依存的、生物学的系依存的、医学症例依存的、乳幼児依存的、およびさらに測定装置依存的であり得、すなわち特定のパラメータ/バイオマーカーは、その読み取りが重大と考えられるべきかどうか決定するために、より厳密なまたはより緩い基準を必要とするまたは要求し得ることに注意する。本明細書において特定の例では、いくつかののパラメータ/バイオマーカーは患者の状態、年齢または他の理由によって測定できない可能性があることに注意する。この様な場合には、本方法は他のパラメータ/バイオマーカーをモニタリングしながら行われる。
【0157】
ベースラインからの逸脱は従って、パラメータ/バイオマーカーの相当するベースラインと比べて、本明細書で説明される投与計画の投与の全期間または一部の期間の間および/または後に測定されるパラメータ/バイオマーカーの値における統計学的に有意な変動として定められる。本明細書では、いくつかのパラメータ/バイオマーカーの観察はいくつかの理由のために変動し得、そこでの有意な変動の測定はこのような事象を考慮し従って適切なベースラインを補正すべきであることに注意する。
【0158】
メトヘモグロビンおよび血清亜硝酸塩濃度をモニタリングすることは、乳幼児における一酸化窒素吸入の安全性をモニタリングするために必須なものとして従来技術で受け入れられている。だが現在まで、メトヘモグロビンおよび血清亜硝酸濃度が乳幼児による一酸化窒素吸入時にほとんど変化しないままであることの明確な指標はない。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態により、本方法は、前述されたパラメータ/バイオマーカーの少なくとも1つをモニタリングおよび/または改善することを含む。
【0160】
いくつかの実施形態により、モニタリングされるパラメータはメトヘモグロビン濃度である。
【0161】
メトヘモグロビン濃度が非侵襲的測定を用いて測定できるとき、メトヘモグロビン(SpMet)の末梢での飽和率のパラメータを使用して本明細書で示される方法の安定性、安全性および有効性をモニタリングする。従って、本発明のいくつかの実施形態により、監視されるパラメータはSpMetであり、投与の間および後に、SpMet量は5%を超えない、および好ましくは1%を超えない。後述の例セクションで示されるように、本明細書で説明される方法を受けている乳幼児のSpMet量は1%を超えない。
【0162】
いくつかの実施形態により、モニタリングされるパラメータは血清硝酸塩/亜硝酸塩濃度である。
【0163】
乳幼児の血清中の高い亜硝酸塩および硝酸塩濃度は一酸化窒素毒性と関連し、従って血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度を使用して本明細書で提示される方法の有害事象を検出する。本発明のいくつかの実施形態により、試験されるパラメータは血清亜硝酸塩/硝酸塩であり、それは治療中および治療後にモニタリングされ、血清亜硝酸塩の許容可能濃度は2.5マイクロモル/リットル未満であり、血清硝酸塩は25マイクロモル/リットル未満である。
【0164】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、灌流指数(PI)、呼吸速度(RRa)、オキシヘモグロビン飽和度(SpO/SaO/DO)、総ヘモグロビン(SpHb)、カルボキシヘモグロビン(SpCO)、メトヘモグロビン(SpMet)、酸素含量(SpOC)、および脈波変動指数(PVI)を含む少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトパラメータをモニタリングしながら、および/または血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度を含む少なくとも1つのまたはすべてのオフサイトパラメータをモニタリングしながら行われる。
【0165】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は乳幼児によって吸入されるガス混合物中の少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトパラメータをモニタリングしながら行われ、それは呼気終末CO(ETCO)、二酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)および吸気酸素濃度比(FiO)を含む。
【0166】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、一酸化窒素吸入に関する少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトおよび/またはオフサイト安全性パラメータ、例えばメトヘモグロビン生成をモニタリングしながら、および少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトおよび/またはオフサイト効能パラメータをモニタリングしながら行われる。
【0167】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、一酸化窒素吸入に関する少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトおよび/またはオフサイト安全性パラメータ、例えばメトヘモグロビン生成をモニタリングしながら、および肺機能および/または炎症性バイオマーカーを含む、CF症状に関する少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトおよび/またはオフサイト効能パラメータをモニタリングしながら行われる。
【0168】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、一酸化窒素吸入に関する少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトおよび/またはオフサイト安全性パラメータ、例えばメトヘモグロビン生成をモニタリングしながら、および肺機能および/または炎症性バイオマーカーを含む、細気管支炎症状に関する少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトおよび/またはオフサイト効能パラメータをモニタリングしながら行われる。
【0169】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、強制呼気量(FEV)、最大呼気中間流量(MMEF)、一酸化炭素に対する肺の拡散能力(DCO)、努力肺活量(FVC)、全肺気量(TLC)および残気量(RV)などの少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイト肺機能パラメータ(スパイロメトリーパラメータ)をモニタリングしながら行われる。
【0170】
例えば、いくつかの実施形態による方法は、オンサイトパラメータとしてSpMetをモニタリングしながら行われる。あるいは、本方法はオンサイトパラメータとしてSpMetおよびETCOをモニタリングしながら行われる。あるいは、本方法は、オンサイトパラメータとしてSpMet、ETCOおよびSpOをモニタリングしながら行われる。
【0171】
あるいは、いくつかの実施形態による方法は、1つのオンサイトパラメータとしてSpMet、およびNO /NO の血中濃度または尿中濃度などの、1つのオフサイトパラメータをモニタリングしながら行われる。あるいは、本方法は、オンサイトパラメータとしてSpMetおよびSpO、およびオフサイトパラメータとして血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度をモニタリングしながら行われる。あるいは、本方法は、オンサイトパラメータとしてSpMet、およびオフサイトパラメータとして血漿中の炎症性バイオマーカー(効能用)および血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度をモニタリングしながら行われる。あるいは、本方法は、オンサイトパラメータとしてSpO、およびオフサイトパラメータとして細菌負荷および血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度をモニタリングしながら行われる。あるいは、本方法はオンサイトパラメータとしてSpO、ならびに血漿中の炎症性バイオマーカーおよびFEVのような肺機能パラメータをモニタリングしながら行われる。
【0172】
さらにこれに代えて、本方法はオンサイトパラメータとしてSpMet、FEVおよびSpO、オフサイトパラメータとして血漿中の炎症性バイオマーカーおよび血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度をモニタリングしながら行われる。
【0173】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、SpMet、FEVおよびSpOを含む少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイトパラメータをモニタリングしながら、および/または血清亜硝酸塩/硝酸塩濃度および血漿中炎症性バイオマーカーを含む少なくとも1つのまたはすべてのオフサイトパラメータをモニタリングしながら、および尿NO濃度(オフサイトパラメータ)、バイタルサイン(オンサイトパラメータ)、肺機能(オンサイトパラメータ)、血液学的マーカー(オフサイトパラメータ)、凝固パラメータ(オフサイトパラメータ)、血清クレアチニン濃度(オフサイトパラメータ)、腎機能マーカー(オフサイトパラメータ)、肝機能マーカー(オフサイトパラメータ)、血管内皮活性化因子(オフサイトパラメータ)の1つ以上およびいずれかの組み合わせをさらにモニタリングしながら行われる。
【0174】
本明細書で説明される実施形態のいくつかにより、本方法は、FiOおよびNOなどの吸入ガス混合物中の少なくとも1つの、少なくとも2つの、またはすべてのオンサイト化学パラメータをモニタリングしながら行われる。
【0175】
本明細書では、前述の実施形態のいずれかでは、本方法は、本明細書で説明されるモニタリングされるパラメータのいずれか1つ以上またはすべてにおいて著しい変動が認められなくても行われることに注意する。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態により、本方法は、本明細書で提示される方法を実施している間およびその後に尿亜硝酸濃度が実質的に変化しないように、尿亜硝酸濃度をモニタリングしながら行われる。本明細書では、尿亜硝酸塩はいくつかの既知の理由のために変動し得、そこでの有意な変動の測定はそのような事象を考慮し、従って適正なベースラインを補正すべきであることに注意する。
【0177】
本発明のいくつかの実施形態により、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、赤血球数、白血球数、白血球分画および血小板数などの血液学的マーカーは、本明細書で示される方法を実施している間およびその後に実質的に変化しない。
【0178】
本発明のいくつかの実施形態により、Ang-1、Ang-2およびAng-2/Ang-1比などの血管内皮活性化因子、および血清クレアチニン濃度ならびに、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)濃度、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)濃度、アルカリホスファターゼ濃度、およびγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)濃度などの様々な肝機能マーカーは、本明細書で提示される方法を実施している間およびその後に実質的に変化しない。
【0179】
乳幼児の酸素化は、乳幼児の末梢酸素飽和度(SpO)を測定することによって評価できる。このパラメータは、酸素飽和レベルの評価であり、パルスオキシメーター装置などの非侵襲的測定を用いて一般的に測定される。従って、本発明のいくつかの実施形態により、投与の間および後に監視されるパラメータはSpOであり、SpOの量は約89%よりも高い。
【0180】
本発明のいくつかの実施形態により、脈拍、血圧、呼吸速度および体温などの様々なバイタルサイン、ならびにプロトロンビン時間(PT)、プロトロンビン比(PR)および国際標準化比(INR)などの様々な凝固パラメータ(オフサイトパラメータ)は、本明細書で提示される方法を実施している間およびその後に実質的に変化しない。これらのパラメータは、医学的状態および/または治療の結果として乳幼児の全般的健康が悪化していない指標とみなされることに注意する。
【0181】
いくつかの実施形態により、前述の全般的な健康指標は、本明細書で示される方法を実施している間およびその後の改善を示し、その治療が乳幼児に有効であることを示す。
【0182】
このため、本発明のいくつかの実施形態により、本明細書で開示される方法は、本明細書で説明される全般的な健康指標が少なくとも変わらずにいる、または改善されるように行われる。
【0183】
投与方法および吸入デバイス
乳幼児は能動的または受動的手段によって吸入に供される。
【0184】
「能動的手段」は、ガス混合物が乳幼児の気道に投与または送達されることを意味する。これは、例えば、ヒト呼吸器に適応された送達インターフェイスを有する吸入デバイスの手段によって行われる。例えば、送達インターフェイスは乳幼児の呼吸器に間欠的に配置でき、これによってそれが取り外されたときに、本明細書で定められるように、乳幼児は周囲空気または一酸化窒素を欠く任意の他のガス混合物を吸い込む。
【0185】
「受動的手段」は、気道にガス混合物を送達するためのデバイスを用いずに乳幼児が一酸化窒素の指示用量を含むガス混合物を吸入することを意味する。
【0186】
例えば、乳幼児は、本明細書で考察されるガスの一酸化窒素含有混合物で満たされた大気制御された囲いを出入りすることによって、あるいは乳幼児の気道と接触する大気制御された囲いを満たしおよび空にすることによって、間欠的投与計画で160ppm以上の一酸化窒素に供されてよい。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態により、本明細書で提示される治療方法のいずれかでは、一酸化窒素投与は、限定されないが、固定式吸入デバイス、携帯用吸入器、計量式吸入器および挿管式吸入器を含む吸入デバイスによって行われてよい。
【0188】
吸入器は、本発明のいくつかの実施形態により、例えば、米国特許第5,724,986号およびWO2005/046426で提示されるように、経時的にスパイロメトリーデータを生じ、従って治療を調整できる。吸入器は、被験体の吸入波形を調節して特定の肺部位を標的にできる。本発明のいくつかの実施形態により、携帯用吸入器は、乳幼児の選択でまたは特定投与計画によって自動的に、一酸化窒素の臨時追加用量および維持用量の両方を送達できる。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態により、例示的な吸入デバイスは、乳幼児による吸入に適応できる送達インターフェイスを含み得る。
【0190】
本発明のいくつかの実施形態により、送達インターフェイスは、乳幼児の呼吸器への一酸化窒素を含むガス混合物の送達用のマスクまたはマウスピースを含む。
【0191】
本発明のいくつかの実施形態により、吸入デバイスは、送達インターフェイスに流れる一酸化窒素、酸素および二酸化窒素の濃度を測定するために送達インターフェイスと近位に配置される一酸化窒素分析装置をさらに含み、ここで分析装置はコントローラと接続されている。
【0192】
本発明のいくつかの実施形態により、乳幼児を本明細書で説明される方法に供することは、乳幼児の呼吸器に一酸化窒素含有ガス混合物を送達できる任意のデバイスであってよい吸入デバイスの使用によって実施される。吸入デバイスは、本発明のいくつかの実施形態により、限定されないが、タンク、ゲージ、配管、マスク、コントローラ、バルブなどを含む固定式吸入デバイス、携帯用吸入器(前述の構成要素を含む)、計量式吸入器、大気制御された囲い、呼吸装置/システムおよび挿管式吸入/呼吸の装置/システムを含む。大気制御された囲いは、限定されないが、頭部囲い(バブル)、全身囲いまたは部屋を含み、囲いを満たす大気は流量によって、連続的または間欠的な含量交換またはそのガス混合物含量を制御するいずれかの他の方式によってコントロールできる。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態により、間欠的吸入は、呼吸サイクル協調化パルス送達によってガス混合物(吸入剤)に乳幼児を間欠的に供することによって行われ、ガス混合物は指示濃度で一酸化窒素を含む(一酸化窒素含有ガス混合物)。この吸入方式は本明細書では、間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入と呼ばれる。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態の代替態様により、乳幼児を吸入剤の間欠的吸入に供することを含む、乳幼児において細気管支炎を治療する方法が提供され、ここで間欠的吸入は第一の期間について呼吸サイクル協調化パルス送達吸入の少なくとも1サイクル、それに続く第二の期間について一酸化窒素を実質的に含まない吸入を含み、ここで呼吸サイクル協調化パルス送達吸入は少なくとも1サイクルで約80ppm・時間の一酸化窒素を送達するように構成される。
【0195】
方法発明の実施形態の文脈において、用語「一酸化窒素負荷量」(NO負荷量)は、被験体または病原体が吸入治療(例えば、本請求による治療)の間に暴露される一酸化窒素の特定の累積量を指し、それはppm・時、すなわち暴露の全時間によって乗じられる吸入剤中の一酸化窒素の平均濃度で推定される。一酸化窒素負荷量は、治療のサイクルあたり(NO負荷量/サイクル)、または1日(1日NO負荷量)などの時間単位あたりで推定できる。
【0196】
本発明のいくつかの実施形態により、乳幼児への一酸化窒素の間欠的送達は、被験体が1日600~2000ppm・時の範囲にある一酸化窒素負荷量で一酸化酸素を吸い込むように実施され、ここで間欠的送達は、中断されない投与の1セッションを超えて1日の一酸化窒素負荷量が吸入されるように行われる。
【0197】
本発明のいくつかの実施形態により、間欠的送達は、間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入の1回以上のセッションで1日の一酸化窒素負荷量が吸入されるように行われ、一方、各サイクルの一酸化窒素負荷量/サイクルは少なくとも約80ppm・時である。このような一酸化窒素負荷量/サイクルは、例えば、1サイクルの間に、160ppmの一酸化窒素を有する吸入剤を30分間(第一期間)送達するようにパルスを構成することによって得ることができる。少なくとも80ppm・時/サイクルの一酸化窒素負荷量をもたらす他の濃度および他の第一期間も、本発明の実施形態によって検討され包含されることに注意する。
【0198】
「間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入」は、指示濃度の一酸化窒素を含むガス混合物に乳幼児が間欠的に供され、このため、各吸入間に間隔を伴って呼吸サイクル協調化パルス送達によって2回以上このような一酸化窒素含有ガス混合物を吸入することを指す。乳幼児は従って一酸化窒素含有ガス混合物を吸入し、そして呼吸サイクル協調化パルス送達によって一酸化窒素含有ガス混合物の吸入を停止し指示濃度の一酸化窒素を含まないガス混合物(例えば、空気)を代わりに吸入し、ついで呼吸サイクル協調化パルス送達によって一酸化窒素含有ガス混合物を再度吸引する、などである。
【0199】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、「一酸化窒素含有ガス混合物」は、少なくとも160ppmの一酸化窒素を含むガス混合物を説明するために使用される。一酸化窒素含有混合物は、160ppm、170ppm、180ppm、190ppm、200ppmおよびさらに高い濃度の一酸化窒素を含んでよい。本明細書で言及される他のガス混合物は、本明細書で定められるように、160ppm未満の一酸化窒素を含む、または一酸化窒素を実質的に欠く。
【0200】
いくつかの実施形態では、「一酸化窒素含有ガス混合物」は、一酸化窒素を80ppm・時で送達するガス混合物を説明する。
【0201】
「一酸化窒素を実質的に欠く」は、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、10ppm以下、5ppm以下、1ppm以下およびppb以下を意味し、一酸化窒素が全く存在しないことを含む。
【0202】
本発明のいくつかの実施形態により、間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入は1回以上のサイクルを含み、各サイクルは、一酸化窒素/サイクルとも本明細書で言及される、第一の期間の特定濃度(例えば、少なくとも160ppm)で一酸化窒素を含むガス混合物の呼吸サイクル協調化パルス送達吸入、続いて第二の期間の一酸化窒素を含まないガス混合物の吸入を含む。本発明のいくつかの実施形態により、第二の期間中に、乳児は、本明細書で定められるように、周囲空気または一酸化窒素を実質的に欠く制御されたガス混合物を吸入し得る。
【0203】
いくつかの実施形態では、第一の期間は10~45分、または20~45分、または20~40分にわたり、およびいくつかの実施形態では、約30分にわたる。
【0204】
本発明のいくつかの実施形態により、第二の期間は3~5時間、または3~4時間の範囲であり、およびいくつかの実施形態により、第二の期間は約3.5時間にわたる。
【0205】
本発明のいくつかの実施形態により、この吸入投与計画は24時間にわたって1~6回繰り返され、第一のおよび第二の期間に依存する。
【0206】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素の間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入のサイクル、例えば160ppmを30分間、続いて一酸化窒素を吸入しない3.5時間は、1日に1~6回繰り返される。いくつかの実施形態により、サイクルは1日に5回繰り返される。
【0207】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素の間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入のサイクル、例えば80ppm・時/サイクルの一酸化窒素負荷量、続いて一酸化窒素を呼吸しない3.5時間は、1日に1~6回繰り返される。いくつかの実施形態により、サイクルは1日に5回繰り返される。
【0208】
本発明のいくつかの実施形態により、1日あたり一酸化窒素の間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達の1~5回サイクルの投与計画は、1~7日、または2~7日、または3~7日の間、あるいは1、2、3、4または5週連続で実施される。本発明のいくつかの実施形態により、間欠的呼吸サイクル協調化パルス送達吸入は、14日の期間中に行われる。しかし、本明細書で説明されるように間欠的な一酸化窒素投与の長い期間も検討される。
【0209】
本発明の実施形態により、乳幼児が第一期間中に吸入する一酸化窒素含有ガス混合物は、吸入デバイスにおいてその場で産生され、吸入デバイスは乳幼児が速い速度で呼吸するとき、すなわち呼吸サイクルの吸入期間で、1つ以上のパルスで吸入剤中に一酸化窒素が混合されるように、乳幼児の呼吸サイクルに応答するよう構成される。吸入による一酸化窒素の投与のこの方式は、本明細書では「呼吸サイクル協調化パルス送達吸入」と呼ばれる。
【0210】
本発明の実施形態の文脈において、用語「パルス」は一酸化窒素を投与する方式を指し、一酸化窒素は、本明細書では「パルス送達期間」と呼ばれる所定の期間の間に吸入剤中に断続的な濃縮された用量で導入され、ここでパルス送達期間の間に行われる各パルスは、本明細書で「パルスオン期間」と呼ばれる所定の期間にわたり、「パルスオフ期間」によって中断される。
【0211】
本発明の実施形態により、パルス送達期間は、本明細書において「パルス遅延期間」と呼ばれる期間の後で、吸入期間中に始まる。本発明のいくつかの実施形態により、パルス送達期間は吸入期間より一般的に短く、パルス送達期間の終わりと吸入期間の終わりの間の時間は、本明細書において「パルス中断期間」と呼ばれる。
【0212】
本発明のいくつかの実施形態により、ガスハウス一酸化窒素の呼吸サイクル協調化パルス送達吸入を送達するための吸入デバイスは、呼吸サイクルの様々な段階、すなわち吸気および呼気期間の開始を検出するように構成され、従って摂取速度が吸入期間の開始で増加するや否やパルス遅延期間が協調されて開始され、そして摂取速度が吸入期間の最後に近づいて低下するや否やパルス中断期間が協調されて開始されるように、パルスを呼吸サイクルと協調させることができる。
【0213】
いくつかの実施形態では、呼吸サイクル協調化パルス送達吸入計画における様々な期間の長さは、呼吸サイクル期間、すなわち呼吸サイクルの全期間またはその一部の割合と比較して決定および/または計算される。例えば、吸入期の期間は吸入剤の流速を感知することによって決定され、パルス遅延期は吸入期の20%に自動的に設定される。結果として、バルス送達期は吸入期の60%に設定でき、パルス中断期は吸入期の残りの20%である。パルス数、すなわちパルスオンおよびパルスオフ期は、パルス送達期の期間に従って同様に設定できる。例えば、パルス数は1に設定でき、すなわちパルス送達期の全期間にわたるパルスである。この例は、息切れまたは呼吸におけるいずれかの困難を有する乳幼児に適している可能性がある。これに代えて、乳幼児が正常に呼吸している場合には、パルスオン期は200~300ミリ秒(ms)に設定され、パルスオフ期は100msに設定され、一方パルス数は、測定された吸入期から得られるパルス送達期の期間によって自動的に設定される。
【0214】
いくつかの実施形態では、パルス遅延期は0~2500msの範囲である。あるいは、いくつかの実施形態では、パルス遅延期は吸入期の0~80%の範囲である。
【0215】
いくつかの実施形態では、パルス中断期は0~2500msの範囲である。あるいは、いくつかの実施形態では、パルス中断期は吸入期の80~0%の範囲である。
【0216】
いくつかの実施形態では、各パルスオン期は個別に100~5000msの範囲である。あるいは、各パルスオン期は個別に吸入期の10~100%の範囲である。
【0217】
いくつかの実施形態では、各パルスオフ期は個別に0~2500msの範囲である。あるいは、各パルスオフ期は個別にパルスオン期の0~200%の範囲である。
【0218】
いくつかの実施形態では、本方法は吸入期あたり単一パルスに基づいている。いくつかの実施形態では、パルス送達期は、吸入期が始まるときに実質的に始まり(パルス遅延期は実質的に0である)、吸入期が終わるときに実質的に終わる(パルス中断期は実質的に0である)ように行われる。他の実施形態では、本方法は、吸入期開始後に始まり、吸入が終わる前に終了する単一パルスを用いることによって行われる。
【0219】
いくつかの実施形態では、パルス送達の協調は、吸入期の最後に近い摂取速度の低下をデバイスが感知するまで、パルス送達期の間に連続して1つを超えるパルスを送達するように設定される。このような実施形態では、デバイスは、各パルスオン期をパルスオフ期によって中断するように設定される。いくつかの実施形態では、デバイスは、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、または1からいずれかの所定の呼吸サイクルによって決定されるパルス送達期内で実施できるいずれかのパルス数までの範囲である、所定のパルス数を送達するように設定される。それぞれのパルスは異なるパルスオン期にわたり、かつ異なる長さのパルスオフ期によって中断され得ることにさらに注意する。
【0220】
一酸化窒素含有ガス混合物中の一酸化窒素濃度は、吸入剤中に導入される一酸化窒素の濃度、それにより一酸化窒素が吸入剤中に導入されるアウトプット、パルスオン期の期間およびパルス送達期の間に吸入剤中に導入されるパルス数によって制御される。本発明のいくつかの実施形態により、パルス送達期の間、吸入剤は実質的に少なくとも160ppmの一酸化窒素、またはサイクルあたり80ppm・時の一酸化窒素負荷量を含む一酸化窒素含有ガス混合物であり、一方でパルス遅延期およびパルス中断期の間、吸入剤は実質的に一酸化窒素を欠く。
【0221】
いくつかの実施形態により、本方法は1つを超えるパルスを用いて行われ、ここでそれぞれのパルスによって生じる吸入剤は異なる濃度の一酸化窒素を患者に送達する。例えば、本方法は、パルス送達期の間に3つのパルスを、一次パルスに由来する吸入剤は160ppmの一酸化窒素濃度で特徴づけられ、二次パルスに由来する吸入剤は80ppmの一酸化窒素濃度で特徴づけられ、一次パルスに由来する吸入剤は100ppmの一酸化窒素濃度で特徴づけられるように乳幼児に投与することによって実施され得る。従って、少なくとも1回のパルスは少なくとも160ppmの濃度をもたらす。他の例では、パルスのいくつかは160ppmを超える一酸化濃度で特徴づけられる吸入剤を送達し得る。
【0222】
あるいは、パルス数、各パルスにおける一酸化窒素の濃度、およびその間にパルスが生じる第一の期間の持続時間は、80ppm・時の一酸化窒素負荷量/サイクルを送達するように構成される。
【0223】
前述で示されるように、呼吸サイクル協調化パルス送達吸入は、乳幼児が最も高い吸-呼吸速度で吸入する期間中に実質的に、高濃度の一酸化窒素の導入を可能にし、これによって高濃度一酸化窒素への気道の一部の暴露を最少にする。例えば、一酸化窒素は吸入期の開始後および吸入期の終わりの前に導入されるため、上気道の一部、気管および、肺胞毛細管が豊富でない肺における呼吸樹のいくつかは、吸入剤摂取速度によって高濃度一酸化窒素に短期間のみ暴露され、一方、肺胞は高濃度の一酸化窒素に長時間暴露される。
【0224】
本発明のいくつかの実施形態により、本明細書で説明される方法に乳幼児を供することは、一酸化窒素含有ガス混合物を送達できるいずれかのデバイスであってよい吸入デバイスの使用によって実施され、限定されないが、被験体の呼吸器への呼吸サイクル協調化パルス送達を含む。吸入デバイスは、本発明のいくつかの実施形態により、限定されないが、タンク、ゲージ、配管、マスク、コントローラ、バルブなどを含む固定式吸入デバイス;携帯用吸入器(前述の構成要素を含む)、計量式吸入器、呼吸装置/システムおよび挿管式吸入/呼吸の装置/システムを含む。
【0225】
本明細書で説明されるいずれかの方法のいずれかの実施形態の遂行に適し得る例示的な吸入デバイスは、例えば、米国仮特許出願第61/876,346号および第61/969,201号、ならびに米国特許第6,164,276号および第6,109,260号によって提供され、その内容は本明細書に参考によって組み込まれる。本明細書で説明される方法のいずれかの実行に適し得る市販吸入デバイスは、Ikaria Australia Pty Ltd,によって開発されたINOpulse(登録商標) DS-C、またはDatex-OhmedaによるOhmeda INOpulse Delivery Systemを含む。
【0226】
吸入器は、本発明のいくつかの実施形態により、例えば、米国特許第5,724,986号およびWO2005/046426で提供され、その内容が本明細書に参考によって組み込まれるように、呼吸機能データを生じ時間経過に従って治療を調整できる。吸入器は被験体の吸入波形を調節して特定の肺部位を標的にできる。本発明のいくつかの実施形態により、携帯用吸入器は、被験体の選択で、または特定の投与計画に従って自動的に一酸化窒素の臨時追加用量および維持用量の両方を送達できる。
【0227】
本発明のいくつかの実施形態により、例示的な吸入デバイスは、乳幼児による吸入に適応可能な送達インターフェイスを含み得る。本発明のいくつかの実施形態により、送達インターフェイスは、乳幼児の呼吸器への一酸化窒素を含むガス混合物の送達のためのマスクまたはマウスピースを含む。
【0228】
本発明のいくつかの実施形態により、吸入デバイスは送達インターフェイスに流れる一酸化窒素、酸素、および二酸化窒素の濃度を測定するために送達インターフェイスに近位に配置される一酸化窒素分析装置をさらに含み、ここで分析装置はコントローラと接続される。
【0229】
炎症性疾患または障害を160ppm以上での一酸化窒素の間欠的吸入によって治療するための他の方法が開発されることが予想され、かつ一酸化窒素の間欠的吸入によって炎症性疾患または障害を治療するという表現の範囲は、先験的にこのような新規技術のすべてを含むことが意図される。
【0230】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は±10%を指す。
【0231】
用語「含む」、「含んでいる」、「含有する」、「含有している」、「有している」およびこれらの同根語は、「含むが限定されない」を意味する。
【0232】
用語「からなる」は、「含んで限定される」を意味する。
【0233】
用語「から実質的になる」は、組成物、方法または構造が追加の原料、段階および/またはパーツを含み得るが、追加の原料、段階および/またはパーツが実質的に請求される組成物、方法または構造の基本的なおよび新規な特性を変えない場合のみである。
【0234】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜的および簡潔さのためであると理解され、本発明の範囲に基づく変更不能な限度として解釈されるべきでない。従って、範囲の記載は、具体的に開示されるすべての可能性がある下位範囲、ならびにこの範囲内の個別数値を有すると考えられるべきである。例えば、1~6のような範囲記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6のような具体的に開示される下位範囲、ならびに例えば1、2、3、4、5、および6などの範囲内の個別数値を有すると考えられるべきである。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0235】
数値範囲が本明細書で示されるときはいつでも、示された範囲内のいずれの引用される数(部分的または全体的)を含むことを意味する。第一指示数と第二指示数のフレーズ「~の範囲である/範囲にある」、および第一指示数「から」第二指示数「までの範囲である/範囲にある」は、本明細書で使用されるとき言い換え可能であり、第一および第二指示数ならびにこれらの間のすべての部分的または全体的数を含むことを意味する。
【0236】
本明細書で使用されるとき、用語「方法」は所定の作業を遂行するためのやり方、手段、技術および手順を指し、限定されないが、化学的、薬理学的、生物学的、生化学的および医学的技術の当業者によって知られている、あるいは既知のやり方、手段、技術および手順から容易に開発されるこれらのやり方、手段、技術および手順を含む。
【0237】
本明細書使用されるとき、用語「治療する」は、症状の進行を抑制する、実質的に阻害する、遅延または逆転すること、症状の臨床的または審美的徴候を実質的に改善することまたは症状の臨床的または審美的徴候を実質的に予防することを含む。
【0238】
参考が特定の配列リスト化のために作成される場合、このような参考はまたその相補的な配列と実質的に一致する配列も包含し、配列エラー、クローニングエラー、あるいは塩基置換、塩基欠失または塩基付加を生じる他の変異などから生じる、わずかな配列変異を含み、このような変異の頻度は50ヌクレオチド中に1つ未満、あるいは100ヌクレオチド中に1つ未満、あるいは200ヌクレオチド中に1つ未満、あるいは500ヌクレオチド中に1つ未満、あるいは1000ヌクレオチド中に1つ未満、あるいは5,000ヌクレオチド中に1つ未満、あるいは10,000ヌクレオチド中に1つ未満である。
【0239】
抗微生物剤の増強:いくつかの実施形態では、本発明は病原性微生物(例えば、細菌または真菌など)と関連する医学的状態および疾患の治療で使用される抗微生物剤(例えば、抗生物質および抗真菌剤)を増強するための方法を提供し、本方法は病原性微生物細胞をNOに暴露することを含み、これによって抗微生物剤に対しこれらの細胞をより感受性にさせる。いかなる特定の理論にも拘束されることなく、本明細書で開示される方法はNOへの病原体微生物細胞の暴露を利用し、抗微生物剤に対するそれらの本来の防御機構を枯渇させることによって、抗微生物剤に対して病原体微生物をより感受性にするおよび/または抗微生物剤に抵抗する能力を低下させるようにする。
【0240】
いくつかの実施形態では、本明細書で提示される抗微生物剤を増強するための方法は、一酸化窒素への標的細胞の暴露による標的細胞中のチオールの枯渇を含む。NOへの暴露のこの方法は、薬剤感受性病原体に対してだけでなく、特定の薬剤によって過去に標的化されたタンパク質中に蓄積した変異を有する薬剤耐性(MDRまたはXDR)微生物株に対しても、広範なスペクトルの抗生物質および抗微生物剤の利用を可能にする。NOへの暴露のこの方法はまた、NOへの暴露前にこれらの薬剤に対して敏感であると特定されていない病原体に対する抗生物質および抗微生物剤の有効性を広げ、すなわち、狭く作用する抗微生物剤を広範囲スペクトルの抗微生物剤にする。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書で提示される方法はまた、抗微生物剤または抗バイオフィルム形成剤(ABF剤)と組み合わせた一酸化窒素へのバイオフィルムの暴露によって、微生物バイオフィルムの形成または持続を予防する、低下するおよび/または除去するために有用である。NOへの暴露のこの方法は、抗生物質、抗微生物剤およびABF剤の効能を増加して、NOへの暴露なしではそれらによりほとんどまたは全く影響されない微生物バイオフィルムを低下および/または除去する。従って、本明細書で全体を通して、病原性微生物と関連する医学的状態の治療に関する説明は、微生物バイオフィルムの形成に対する治療を包含することを意味する。例えば、本明細書で提示される方法は、結核菌(Mtb)を一次抗生物質に対して数年で耐性にする点変異を獲得しているMtbによって生じる結核を治療するために、効果的に使用できる。さらに、これらの細菌は、他の細菌感染に対して既に効果的に使用されている多くの容易に入手可能な抗微生物剤に本来的に耐性であるため、本明細書で提示される方法は、その本来のMSH量を枯渇することによってMtbの本来の耐性を弱化でき、これによって新規MDRおよびXDR TB株に対してこれらの容易に利用可能な抗微生物剤を用いることの可能性を示す。
【0242】
本発明は、このいくつかの実施形態では、医薬品による抗微生物治療に関し、およびより具体的には、排他的でないが、それにより病原性微生物と関連する様々な症状を治療し、ならびに抗微生物剤を増強して微生物バイオフィルムの形成を予防または根絶するための、抗微生物剤を増強するおよび/または抗微生物剤治療に対し抗微生物剤耐性微生物を感受性化するまたは再感受性化する方法に関する。
【0243】
現在実行されている抗微生物剤および療法の利用は、主としてこれらの抗微生物剤に対する耐性の発達によって非常に限定されている。本発明者らは驚くべきことに、一酸化窒素が抗微生物剤感受性化および/または再感受性化活性を示し、効果的な抗微生物剤濃度よりも低い濃度で、すなわち一酸化窒素が微生物を根絶しない濃度および暴露時間で使用されても抗微生物剤の効果的な増強剤としてさらに有利に特徴づけられることを明らかにした。一酸化窒素によるこの増強は、例えば、一酸化窒素による増強なしに抗微生物剤によって微生物を一般的に根絶する濃度より低い濃度で、および/または一酸化窒素による増強なしに抗微生物剤によって微生物を一般的に根絶する時間より短い暴露時間で、抗微生物剤による微生物を根絶することを可能にする。
【0244】
ある抗微生物剤に対する微生物の耐性は、被験体の集団に感染する何世代もの標的微生物がその抗微生物剤に暴露される場合、その抗微生物剤によって治療されるその集団において一般的に発達することが従来技術で知られている。その暴露の間、生存する耐性細胞(耐性になり、ここで耐性は発達している)は他の被験体に感染し得る。耐性微生物に感染しているこれらの被験体の同一抗微生物剤による治療は、もはや効果的ではない。いくつかの例では、耐性はまた、抗微生物による治療の間に被験体1名で発達し得、一般的には、その治療は延長されており、および/または薬剤のベースの準最適化用量であることに注意する。本発明のいくつかの実施形態により、一酸化窒素および抗微生物剤を使用する併用治療は、本明細書で提示されるように、微生物がすでにその同じ抗微生物剤に対して耐性を発達させているときでさえ、その抗微生物剤によって微生物に対する治療を可能にする。提供される本方法はまた、耐性微生物に対する選択圧を防止する。
【0245】
現在実行されている抗微生物剤の使用はまた、微生物バイオフィルムとの戦いにおいて非常に限定されており、これは細胞外ポリサッカライド分泌のコーティングによって微生物細胞に付与される防護に主に起因する。一酸化窒素への微生物バイオフィルムの暴露は、抗微生物剤へのバイオフィルムの暴露と組み合わせて、一酸化窒素なしに使用される場合の抗微生物剤の抗バイオフィルム効能に比べて微生物バイオフィルムに対して役立ち得る。
【0246】
一酸化窒素は、抗生物質とともに投与される場合、耐性微生物を根絶するのに非常に効果的であると認められ、かつ抗生物質に耐性となった微生物を再感受性化できることが示されており、同じ抗生物質が使用される場合に、それはその細菌を効果的に根絶する。一酸化窒素はまた、抗生物質と組み合わせて使用される場合、その抗生物質に対する耐性を発達させると予期される微生物における耐性の出現を、耐性微生物に対する選択圧を防止することよって、予防するために使用され得る。
【0247】
一酸化窒素は従って、(i)そうでなければ効果的でない抗微生物治療と組み合わせて投与される場合に効果的であり、(ii)抗微生物剤と組み合わせて投与される場合、その抗微生物剤に対する耐性の出現を防止するのに効果的であり、および(iii)使用された抗微生物剤に対する耐性の出現が見いだされた際に、その抗微生物剤に対して微生物を再感受性化するのに効果的であることによって、耐性微生物と関連する症状の治療に、および微生物バイオフィルムを減少または根絶するのに非常に有用である。
【0248】
一酸化窒素はまた、そうでなければ効果的でない抗バイオフィルム治療と組み合わせて投与されるまたは適用される場合、微生物バイオフィルムを減少または根絶するのに非常に有用である。従って、本発明の実施形態の文脈では、用語「抗微生物剤」は、抗バイオフィルム形成剤を包含することを意味し、または用語「抗バイオフィルム形成剤」と同義的に使用される。
【0249】
従って、本発明は微生物を、これらに対して効果的でなくなっている、またはそれらの効果を失った抗微生物剤に対してより感受性にするための方法を提供し、この方法は一酸化窒素に微生物を暴露することによって行われる。いかなる特定の理論によって拘束されることなく、本明細書で提示される方法の実施形態に従ってNOに微生物を暴露することは、フリーラジカル、毒素、抗生物質および他の抗微生物剤を含む生体異物に対する微生物の防御の第一線を弱化させると推測される。この微生物の防御の一線は、標的細胞中の低分子量チオールの存在に基づいており、このため本明細書で提示される方法の有益な効果は、一酸化窒素によってこれらのチオールの量を低下させるおよび枯渇させることによってもたらされ、これによって標的細胞を広範囲の抗微生物剤に対してより感受性にする。
【0250】
方法
全般的に、本発明の実施形態は、一酸化窒素の抗微生物剤増強化活性を使用し、これは微生物の防御機構を枯渇させることの文脈で本明細書において前述されている。語句「抗微生物剤増強化活性」は、本発明の実施形態の文脈において本明細書で使用されるとき、3種の実体、すなわち、(i)一酸化窒素、(ii)抗微生物剤、および(iii)微生物、に関連する方法の特性を定め、この微生物は、抗微生物剤に非感受性(敏感でない、耐性である)であると知られている、または抗微生物剤に敏感だったが、微生物のその株における抗微生物剤に対する耐性の発達の結果としてその抗微生物剤にもはや感受性でないという意味で抗微生物剤に耐性となったまたはなり得るものである。このため、本発明の実施形態の文脈では、抗微生物剤増強化活性の存在は、抗微生物剤に対して微生物を感受性化または再感受性化することによって、一酸化窒素が相乗的に作用する、および/または微生物に対する抗微生物剤に効能を付与する、および/または抗微生物剤を増強および/または再増強することができるようにする。
【0251】
本明細書では、本方法の文脈、ならびに本明細書で提示される本発明の他のすべての態様において、いずれかの対象抗微生物剤に対する微生物の耐性は先天的または後天的であり得、すなわち、微生物は、その化学的および生物学的性質によって抗微生物剤に本来的に非感受性であり得、または抗微生物剤への前の世代の微生物の暴露の結果として抗微生物剤に非感受性になり得ることに注意する。例えば、抗微生物剤耐性は、被験体の集団を当該微生物剤で治療する結果として医学的状態を有する被験体集団において抗微生物剤に対して出現し得る。これらの耐性微生物に感染している被験体は、本明細書で提示される方法を実施することにより、すなわち、治療上効果的な量の抗微生物剤と組み合わせて増強化、感受性化または再感受性化するのに効果的な量の一酸化窒素を投与することにより、同じ抗微生物剤で治療され得る。本明細書で提示される方法は、微生物が抗微生物剤に対する耐性を獲得したメカニズムとは関係なく、このような例では効果的である。
【0252】
そのため、本発明の実施形態の態様により、病原性微生物と関連する医学的状態を有する被験体を治療する方法が提供され、それはステップ(i)増強化に効果的な量の一酸化窒素または一酸化窒素放出化合物を被験体に投与すること、およびステップ(ii)治療上効果的な量の抗微生物剤を被験体に投与すること、によって行われる。
【0253】
いくつかの抗微生物剤治療では、標的微生物の耐性はしばしば、それに対して一般的に効果的な抗微生物剤がもはや効果的でないという発見の後で明らかにされる。従って、本発明の実施形態の別の態様により、抗微生物剤耐性が当該微生物剤で被験体を治療した後に明らかにされている、病原性微生物と関連する医学的状態を有する被験体を治療する方法が提供され、この方法はステップ(i)抗微生物剤での治療および当該抗微生物剤耐性が明らかにされた後、再感受性化に効果的な量の一酸化窒素を被験体に投与すること、およびステップ(ii)治療上効果的な量の当該抗微生物剤を被験体に投与すること、によって行われる。
【0254】
本発明の本態様に関する実施形態により、抗微生物剤は一酸化窒素ではなく、一酸化窒素の再感受性化に効果的な量は、微生物に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低い。
【0255】
「増強化」は、抗微生物剤(すなわち、狭いスペクトルの抗生物質)に対して感受性でない、またはわずかに感受性である(敏感でない)微生物が当該微生物剤に感受性(敏感)になることを意味する。このような場合、本明細書で提示される方法は、いくつかの抗微生物剤を、抗微生物剤が従来のように使用される場合、すなわち本明細書で提示される方法のステップ(i)を行わずに使用される場合に当該抗微生物剤に非感受性だったいくつかの微生物種に対して効果的にする、ということができる。
【0256】
「再感受性化」または「再増強化」は、抗微生物剤での治療に通常は感受性(敏感)である微生物が、何らかの理由によってこのような治療に耐性であると認められ、このような治療に再び感受性(敏感)になることを意味する。
【0257】
本明細書で使用されるとき、語句「治療上効果的な量」は、投与される有効成分の量を説明し、それは被験体中の微生物を実質的に減少するまたは実質的に根絶するのに必要とされ、従って標的微生物に対して有害である量で、すなわち殺微生物濃度または被験体中の微生物の増殖を実質的に阻害する、あるいはいくつかの実施形態では被験体中の微生物を実質的に根絶する濃度で投与されることにより、微生物によって生じる症状の1つ以上の徴候をある程度まで緩和する。本実施形態の文脈では、語句「治療上効果的な量」は、一酸化窒素と組み合わせて投与および/または再投与される抗微生物剤の量を説明し、それは一酸化窒素と組み合わせずに同様な結果を達成するのに必要とされる量よりも一般的には低い。本明細書で使用されるとき、「治療上効果的な量」はまた、所与の抗微生物剤への微生物の暴露の期間も包含する。
【0258】
本明細書で使用されるとき、語句「増強化に効果的な量」は、抗微生物増強化活性を付与し、これによって抗微生物剤を微生物に対して増強し、または微生物を抗微生物剤に対して感受性化するのに十分な一酸化窒素の量を説明する。一酸化窒素の増強化に効果的な量は、被験体中の微生物を根絶するには不十分である(微生物の少なくとも50%、70%、80%または100%を死滅させる)と定められる。
【0259】
本明細書で使用されるとき、語句「再感受性化に効果的な量」は、抗微生物剤に対する微生物に出現した耐性を反転させるのに十分である一酸化窒素の量を説明する。一酸化窒素の再感受性化に効果な量は、被験体中の微生物を根絶するには不十分である(微生物の少なくとも50%、70%、80%または100%を死滅させる)と定められる。いくつかの実施形態では、語句「再感受性化に効果的な量」は、医学的状態を生じる病原性微生物における耐性の出現を反転、または予防するのに十分である一酸化窒素の量を説明する。
【0260】
一酸化窒素は殺微生物活性を本来示し得るが、一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、本発明の実施形態により、別の抗微生物剤が存在せずに、排他的に使用される場合に一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、標的微生物のライフサイクルに破壊または混乱を生じるのに十分であるとは予想されないという意味において、一酸化窒素の殺微生物量(治療上効果的な量)とは実質的に異なることに注意すべきである。言い換えると、本発明の実施形態の文脈では、一酸化窒素の増強化、感受性化または再感受性化に効果的な量は、一酸化窒素の治療上効果的な量よりも一般的に低い。
【0261】
本発明のいくつかの実施形態により、一酸化窒素は病原性微生物に対して抗微生物治療活性を示し得る。一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、治療されるべき症状を生じる微生物に対して抗微生物剤として使用される場合、治療上効果的な量の一酸化窒素より一般的に低い。
【0262】
そのため、本発明のいくつかの実施形態により、一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、一酸化窒素がそれ自体で投与される場合/ときに、根絶すべき微生物に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低い。
【0263】
抗微生物剤の効能は、最小発育阻害濃度単位、またはMIC単位の用語でしばしば言及される。MICは、インキュベーション期間後、一般的には24時間後に微生物の増殖を阻害できる抗微生物剤の最も低い濃度であり、一般的にはマイクロモル(μM)またはミリリッターあたりのマイクログラム(μg/ml)単位で測定される。MIC値は、抗微生物剤に対する微生物の耐性を評価するために診断基準として、および対象となっている抗微生物剤の活性をモニタリングするために使用される。MICは標準的な検査方法によって測定され、これらは後述の例セクションで説明され示される。標準的な検査方法は、一般的には、臨床検査標準協会(CLSI)、英国抗生物質治療協会(BSAC)または欧州抗菌薬感受性試験法検討委員会(EUCAST)などの参考機関の標準ガイドラインに従う。臨床診療において、最小発育阻害濃度は、被験体が受ける抗微生物剤の量ならびに使用される抗微生物剤のタイプを決定するために使用される。
【0264】
このため、いくつかの実施形態では、一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、一酸化窒素について1MIC未満である。いくつかの実施形態では、一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、1~1/10MICの範囲である。いくつかの実施形態では、一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、1/2~1/8MICの範囲である。
【0265】
医学的状態
本発明の実施形態の文脈では、語句「病原性微生物と関連した医学的状態」は、被験体中のまたは被験体上の微生物の存在によって、直接的または間接的に起こされるあらゆる医学的状態を包含することを意味する。語句「病原性微生物と関連する医学的状態」は、従って、原核生物、グラム陰性菌、グラム陽性菌、真正細菌、古細菌、真核生物、酵母、真菌、藻類、原虫、および/または他の寄生虫と関連する状態を包含する。
【0266】
病原性微生物と関連する医学的状態は、本発明の実施形態により、病原性微生物による、または病原性微生物の感染、侵襲、汚染および伝染を含む。一般的に、疾患を生じる感染は、病原性微生物によるホスト生物の組織中への侵入である。寄生虫および他のさらに高度な病原性生物による体組織の侵入は、一般的に侵襲と呼ばれる。
【0267】
細菌などの侵入生物は、ホスト組織を損傷して正常な代謝を妨げる毒素を生じ、ある種の毒素はホスト組織を分解する実際に酵素である。他の細菌性物質はホストの食細胞を破壊することによってこれらの損傷を加え得、体を他の病原性微生物による感染に対してより感受性にする。多くの侵入生物によって産生される物質は、ホストにおいてアレルギー過敏性を生じる。感染は呼吸飛沫、直接的接触、汚染した食物、または昆虫などの媒介動物を介して拡散され得る。それらはまた性的におよび母から胎児へと伝播され得る。
【0268】
細菌感染によって生じる疾患は、限定されないが、放線菌症、炭疽、アスペルギルス症、菌血症、細菌性皮膚疾患、バルトネラ感染症、ボツリヌス中毒、ブルセラ症、バークホルデリア感染症、カンピロバクター感染症、カンジダ症、ネコ科の病気、クラミジア感染症、コレラ、クロストリジウム感染症、コクシジオイデス菌症、クリプトコッカス症、 皮膚真菌症、ジフテリア、エールリヒア症、流行性膀胱炎、大腸菌感染症、フソバクテリウム感染症、壊疽、一般的な感染症、一般的な真菌症、淋病、グラム陰性細菌感染症、グラム陽性細菌感染症、ヒストプラズマ症、膿痂疹、クレブシエラ感染症、レジオネラ症、ハンセン病、レプトスピラ症、リステリア感染症、ライム病、マラリア、マデローマ症、メリディオド症、マイコバクテリウム感染症、マイコプラズマ感染症、壊死性筋膜炎、ノカルジア感染症、爪真菌症、喘息、肺炎球菌感染症、肺炎、シュードモナス感染症、Q発熱、ラット咬傷熱、再発性発熱、リウマチ熱、リケッチア感染症、ロッキー山岳熱、サルモネラ感染症、紅斑熱、スクラブチフス、敗血症、性感染性細菌疾患、ブドウ球菌感染症、連鎖球菌感染症、手術部位感染症、破傷風、ダニ媒介性疾患、結核、野兎病、腸チフス、尿路感染症、ビブリオ感染症、イチゴ腫、エルシニア感染症、エルシニア・ペスチス伝染病、人獣共通感染症および接合性菌症を一般的に含む。
【0269】
本明細書で提示される方法によって効果的に治療される微生物感染の例は、限定されないが、ブドウ球菌感染およびレンサ球菌感染などの典型的なグラム陽性菌感染を含み、それらはペニシリンまたはセファロスポリンと組み合わせた一酸化窒素によって治療可能である。クレブシエラ、大腸菌およびシュードモナス種感染などの典型的なグラム陰性菌感染は、ペニシリン、セファロスポリンおよびキノロンと組み合わせた一酸化窒素によって治療可能である。
【0270】
本明細書で提示される方法および組成物によって治療可能である、真菌と関連する医学的状態(真菌感染)は、限定されないが、風土病真菌感染症、日和見真菌感染症、ヒストプラズマ・カプスラツムに関連するヒストプラズマ症、コクシジオイデス・イミチスに関連するコクシジオイデス症、ブラストミセス・デルマチチジスに関連するブラストミセス症、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシスに関連するパラコクシジオイデス症、カンジダ種に関連するカンジダ症、アスペルギルス種に関連するアスペルギルス症、ムコール種に関連するムコール症、アブシディアに関連する感染、リゾプス種に関連する感染、およびクリプトコッカス・ネオフォルマンスに関連するクリプトコッカス症を含む。
【0271】
前述のように、本明細書に提示される方法、ならびに本発明のすべての他の態様によって医学的状態を治療することは、微生物バイオフィルムの予防、低下または根絶を包含することを意味する。
【0272】
相乗作用
本発明の実施形態により、ステップ(ii)で投与される抗微生物剤の治療上効果的な量は、本明細書で示されるように、ステップ(i)を実施せずに投与される抗微生物剤の効果的な量よりも著しく低い。言い換えると、抗微生物剤の効能は、被験体への一酸化窒素の投与の結果として顕著に増加し、これによって一酸化窒素による治療の相乗効果を構成する。一酸化窒素は被験体の系または病原性微生物の細胞からすでに消失されている可能性があるが、微生物の防御メカニズムに対する一酸化窒素の効果は依然として残り続け、これにより、抗微生物剤を微生物に対してより有効にする。
【0273】
相乗作用はまた、バイオフィルムに対して本明細書で提示される方法を用いる場合にも示される。
【0274】
本方法を実施する方式
一般的に、本方法はステップ(i)によって行われ、ここでは被験体における医学的状態に影響を与える標的微生物病原体の細胞が、標的細胞中の低分子量チオールを実質的に低下または枯渇するのに十分である量で、および期間の間一酸化窒素に暴露される。本方法はステップ(ii)によってさらに行われ、ここでは被験体中の病原性微生物を実質的に根絶するために抗微生物剤が被験体に投与される。
【0275】
本明細書で説明されるいずれかの実施形態のいくつかでは、被験体がNOで治療される期間、すなわちステップ(i)の期間は潜在期に相当し、それは標的病原性細胞中の低分子量チオールが、細胞を、少なくともある程度まで、抗微生物剤の効果に耐えさせる量で存在する期間として定められる。潜在期の持続時間は、標的病原性細胞の種/株、被験体中の病原性細胞の量、分布および局在、NOの投与方式ならびに被験体に投与されるNOの効果的濃度に依存する。様々な細菌種/株についてインビトロで測定された潜在期のリスト、ならびに微生物負荷における2.5倍低下(-2.5Log10)および微生物の根絶(LD100)の期間を、次の例セクションで表4に示す。
【0276】
いくつかの実施形態により、ステップ(i)の持続時間は、潜在期の持続時間と実質的に等しい。いくつかの実施形態により、ステップ(i)の持続時間は潜在期よりも少なくとも10%、20%、50%または少なくとも100%だけ長く、いくつかの実施形態では、潜在期はステップ(i)の持続時間より50%未満、20%または10%未満だけ長い。
【0277】
いくつかの実施形態により、ステップ(i)は後に続くステップ(ii)の前に行われ、これによって被験体に抗微生物剤を導入する前に潜在期を実質的に経過させることができる。いくつかの実施形態では、被験体中の標的細胞への一酸化窒素の送達および分配は、潜在期を経過させることができるようにステップ(ii)とステップ(ii)の間の中断後にステップ(ii)が行われる。
【0278】
いくつかの実施形態により、ステップ(i)はステップ(ii)と同時に行われ、これによって潜在期が経過する間に被験体中に抗微生物剤を送達および分配させることができる。いくつかの実施形態では、抗微生物剤の投与および分配は、ステップ(ii)がステップ(i)の前に行われ、これによって潜在期の最後に抗微生物剤を標的細胞に到達させることができる。
【0279】
本明細書で提示される方法は、用語が本明細書で定められるように、キャリアガス中のガス状NO(gNO)の形態で、または一酸化窒素(NO)を供与/放出する化合物の形態でNOを被験体に投与することによって行われる。
【0280】
吸入による一酸化窒素の使用
NOはガスであるため、吸入によって直接的に投与され得る。本実施形態の文脈に適しているgNOの投与方式は、NO含有ガス混合物への被験体(全身またはその一部)の暴露による局所的投与、およびNO含有ガス混合物の吸入による全身投与を含む。
【0281】
本発明の実施形態の文脈では、NO含有ガス混合物中のNOの濃度は80~5000ppmの範囲であり、ほとんど投与の方式に依存するが、他の濃度範囲が本発明の実施形態に従って検討される。例えば、NO含有ガス混合物中のNOの濃度は、少なくとも約80ppm、90ppm、100ppm、120ppm、140ppm、160ppm、180ppm、200ppm、240ppm、280ppm、320ppm、400ppm、500ppmまたは1000ppmである。
【0282】
NOは吸入によって投与される場合、NOの毒性を考慮しながらNOが投与されることに注意する。例えば、被験体の安全性は、吸入剤中のNOの濃度および血液メトヘモグロビン(SpMET)濃度をモニタリングしながら吸入によってNOを投与することにより達成でき、例えば5ppmおよび好ましくは2.5ppmより低いNO濃度、および5%を超えない、好ましくは1%を超えないSpMET濃度を維持する。
【0283】
NO含有ガス混合物が被験体による吸入に意図される本発明のいくつかの実施形態により、用語「NO含有ガス混合物」はNO、酸素および空気または窒素のガス混合物を指し、それはキャリアガス(すなわち、空気または窒素)中に一緒に混合されるNOおよび02の所定の制御された一定濃度によって特徴付けられる。
【0284】
本発明のいくつかの実施形態により、ステップ(i)は1回以上のサイクルにおいて実施され得、ここで各サイクルは、第一期間について特定のNO濃度(例えば、約80~200ppmNO、または少なくとも160ppm)でのNO含有ガス混合物の連続吸入、その後の第二期間について空気またはgNO無含有ガス混合物の吸入を特徴とする。本発明のいくつかの実施形態により、第二期間中に、被験体は周囲空気、あるいは本明細書ではキャリア混合物と呼ばれるNOを実質的に欠く制御されたガス混合物を吸入し得る。
【0285】
いくつかの実施形態では、第一期間は10~45分、または20~45分、または20~40分にわたり、いくつかの実施形態により、約30分にわたる。
【0286】
本発明のいくつかの実施形態により、第二期間は3~5時間、または3~4時間の範囲であり、いくつかの実施形態により、第二期間は約3.5時間にわたる。
【0287】
混合物を吸入することを含まない被験体への局所投与にNO含有ガス混合物が意図される本発明のいくつかの実施形態により、用語「NO含有ガス混合物」は、NOの所定の制御された一定濃度によって特徴付けられる、NOとキャリアガスのガス混合物を指す。
【0288】
NO放出化合物の使用
gNOの吸入によるNO投与の効果が低い例では、一酸化窒素が標的器官および/または生物学的系に到達しない場合、ならびに、例えば、メトヘモグロビン血症および直接的な肺損傷を含む生物学的および医学的合併症の両方と関連する場合であり得、本明細書で定められるように、一酸化窒素前駆体またはNO放出化合物を用いて一酸化窒素投与が実施される。このため、本発明の実施形態により、ステップ(i)において、NOはプロドラックによってその部位に送達され発生される。NOプロドラッグはNO供与体として知られ、それはNOを生理学的条件下で自発的に発生し、および/または活性NOを産生または放出するように酵素代謝によって代謝される。従って、本発明の実施形態により、NO供与体はまた、本明細書および従来技術で、NOプロドラッグまたはNO放出化合物と互換的に称され、NOまたはその酸化還元同属種を自発的に放出する、またはこれらへと代謝される薬理学的に活性な物質である。いくつかの実施形態では、NO放出化合物は生理学的な条件下で一酸化窒素を自発的に生じる。
【0289】
NO放出化合物の形態での一酸化窒素前駆体の投与方式は、本実施形態の文脈に適しており、局所投与および全身投与を含み、そして限定されないが、経口投与、直腸投与、静脈内投与、局所投与(経眼、経膣、経直腸、鼻腔内)、鼻腔内投与、皮内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、吸入による投与または髄腔内カテーテルによる投与を含む。
【0290】
本明細書で使用されるとき、用語「一酸化窒素(NO)供与/放出化合物」または「NO放出化合物」は、一酸化窒素を放出できる有機化合物または無機化合物を指す。いくつかの実施形態では、NO放出化合物は小分子であり、600g/molよりも小さい分子量を有する分子として一般的に説明される。
【0291】
有機硝酸塩などのいくつかのクラスが、NO放出化合物として治療に数十年使用されている。有機NO放出化合物のいくつかの非限定例は、硝酸の有機エステル(硝酸エステル)を含み、例えば、ニトログリセリン、エチレングリコールジニトラート、硝酸イソプロピル、グリセリル1-モノニトラート、グリセリル1,2-ジニトラート、グリセリル1,3-ジニトラート、ニトログリセリン、ブタン-1,2,4-トリオールトリニトラート、エリトリチルテトラニトラート、ペンタエリスリチルテトラニトラート、およびイソソルビドモノニトラートが挙げられ、次にイソソルビド2-モノニトラート、イソソルビド5-モノニトラートおよびイソプロビドジニトラートを含む。
【0292】
ジアゼニウムジオレートは、「NONOアート」(1-置換ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオラート、例えばDETA NONOアート)としても知られており、[N(O)NO]-官能基を含むNO放出化合物の別クラスを構成する。ジアゼニウムジオレート基を有するNO放出化合物が、NO放出剤として、例えば、米国特許第4,954,526号、第5,039,705号、第5,155,137号および第5,208,233号に開示されており、そのすべてが本明細書に参考によって組み込まれる。これらのNO放出化合物の利点は、ジアゼニウムジオレート基を有するアミンの構造に依存するそれらの広範囲の半減期である。
【0293】
NOを放出するC-ベースのジアゼニウムジオレート分子が、例えば、米国特許第6,232,336号、第6,511,991号および第6,673,338号に開示されており、そのすべてが本明細書に参考によって組み込まれる。
【0294】
S-ニトロソ化合物を含むNO放出化合物の非ジアゼニウムジオレート型もまた、例えば、米国特許第5,536,723号および第5,574,068号、ならびにC-ニトロソ化合物が、例えば、米国特許第6,359,182号に開示されており、そのすべてが本明細書に参考によって組み込まれる。
【0295】
NO放出化合物は、本発明の実施形態により、NO放出イミダート、メタントリスジアゼニウムジオラート、および1,4-ベンゾキノンジオキシム由来のビスジアゼニウムジオラート、ならびに本明細書で参考によって組み込まれる米国特許第6,673,338号に開示されるNO放出イミダートおよびチオイミダートを含む。
【0296】
本発明の実施形態の文脈に適した他のNO放出化合物が、例えば、欧州特許第1004294号、ならびに米国特許第7,569,559号、第7,763,283号、第7,829,553号、第8,093,343号、第8,101,589号および第8,101,658号で開示されており、そのすべてが本明細書に参考によって組み込まれる。
【0297】
いくつかの実施形態により、NO放出化合物の増強化または再感受性化に効果的な量は、約0.01~約50mg/kg体重(被験体の体重1kgあたりのNO放出化合物のmg)の範囲である。
【0298】
病原性微生物
本明細書全体を通して、語句「病原性微生物」は、全般的に哺乳動物、特にヒトなどの高等生物において疾患または障害を生じさせ得るいずれかの微生物を説明するために使用される。病原性微生物は、限定されないが、原核生物、グラム陰性菌、グラム陽性菌、真正細菌、古細菌、真核生物、酵母、真菌、藻類、原虫、および他の寄生虫などの生物のいずれかの科に属し得る。病原性微生物の非限定例は、熱帯熱マラリア原虫および関連マラリア原虫寄生虫、アカントアメーバおよび他の自由生活性アメーバ、アエロモナス・ヒドロフィラ、アニサキスおよび関連虫であり、および限定されないが、セラチア種、エンテロバクター種、アシネトバクター種、アシネトバクター・バウマニイ、回虫、バシルス・セレウス、ブレバンディモナス・デミニュータ、カンピロバクター・ジェジュニ、クロストリジウム・ボツリヌム、ウェルシュ菌、クリプトスポリジウム・パルバム、シクロスポラ・カエタネンシス、ジフィロボトリアム、赤痢アメーバ、大腸菌のある種の株、線虫、ジアルジア・ランブリア、クレブシエラ・ニューモニエ、リステリア・モノサイトゲネス、住血吸虫、マイコバクテリウム・スメグマチス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・アビウムイントラセルラーレ、プレシオモナス・シゲロイデス、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、サルモネラ、セラチア・オドリフェラ、赤痢菌、黄色ブドウ球菌、ステノトロホモナス・マルトフィリア、ストレプトコッカス、ヒト鞭虫、コレラ菌、腸炎ビブリオ、ビブリオ・ブルニフスカスおよび他のビブリオ、エルシニア・エンテロコリチカ、エルシニア・シュードツベルクローシスならびにエルシニア・クリステンセニイをさらに含む。
【0299】
従って、病原性微生物と関連する症状は、被験体中の微生物の存在から生じる感染症状を表す。感染症状は、例えば、細菌感染症、真菌感染症、原生動物感染症などであり得る。
【0300】
病原性微生物と関連する症状を治療することは、感染症状の徴候を予防する、低下させる、改善するまたは消失させるための手段を説明する。本治療は、増殖を阻害することおよび/または病原性微生物を根絶することによって一般的に行われる。
【0301】
抗微生物剤
語句「抗微生物剤」は、本明細書で使用されるとき、すべての抗微生物剤を包含するが、抗微生物剤自体としての一酸化窒素は除外する。前述で示される微生物の定義に従い、語句「抗微生物剤」は、抗生剤(本明細書では抗生物質とも呼ばれる)ならびに抗真菌剤、抗原生動物剤、抗寄生虫剤などを包含する。
【0302】
いくつかの実施形態により、抗微生物剤は抗生剤である。一般的に、しかしいかなる特定の理論にも拘束されることなく、本発明の実施形態による抗微生物剤の抗微生物活性のメカニズムは、本発明の実施形態により、ポリマーの活性のメカニズムと異なる。
【0303】
語句「抗微生物剤」は、本明細書では抗微生物剤の任意の組み合わせを意図することに注意し、および本発明の実施形態の文脈では、一酸化窒素は語句「抗微生物剤」の範囲から除外されることにさらに注意する。
【0304】
いくつかの抗微生物剤の既知の組み合わせ例は、本発明の実施形態の文脈で「抗微生物剤」とみなされ、ペニシリンまたはセファロスポリンと、ゲンタマイシンなどのアミノグリコシドの追加物との組み合わせである。
【0305】
本発明のこの文脈における使用に適している抗微生物剤の非限定例は、限定されないが、マンデル酸、2,4-ジクロロベンゼンメタノール、4-[ビス(エチルチオ)メチル]-2-メトキシフェノール、4-エピ-テトラサイクリン、4-ヘキシルレソルシノール、5,12-ジヒドロ-5,7,12,14-テトラザペンタセン、5-クロロカルバクロール、8-ヒドロキシキノリン、アセタルゾール、アセチルキタサマイシン、アクリフラビン、アラトロフロキサシン、アンバゾン、アンフォマイシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アミノアクリジン、アミノサリチル酸カルシウム、アミノサリチル酸ナトリウム、アミノサリチル酸、アンモニウムスルホビツミナト、アモロルフィン、アモキシシリン、アモキシシリンナトリウム、アモキシシリン三水和物、アモキシシリン-クラブラン酸カリウム組み合わせ、アンホテリシンB、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アンピシリン三水和物、アンピシリン-スルバクタム、アパルシリン、アルベカシン、アスポキシシリン、アストロマイシン、硫酸アストロマイシン、アベルマイシン、アザニダゾール、アジダムフェニコール、アジドシリン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズトレオナム、バカンピシリン、バシトラシン、バシトラシン亜鉛、ベカナマイシ、ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンゾキソニウム、塩酸ベルベリン、ビアペネム、ビブロカトール、ビクロチモール、ビフォナゾール、次サリチル酸ビスマス、ブレオマイシン抗生物質複合体、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、ブロジモプリム、ブロモクロロサリチルアニリド、ブロノポール、ブロキシキノリン、ブテナフィン、塩酸ブテナフィン、ブトコナゾール、ウンデシレン酸カルシウム、カンジシジン抗生物質複合体、カプレオマイシン、カルベニシリン、カルベニシリン二ナトリウム、カルフェシリン、カリンダシリン、カルモナム、カルジノフィリン、酢酸カスポファンギン、セファセトリル、セファクロル、セファドロキシル、セファレキシン、塩酸セファレキシン、セファレキシンナトリウム、セファログリシン、セファロリジン、セファロチン、セファロチンナトリウム、セファマンドール、セファマンドールナフェート、セファマンドールナトリウム、セファピリン、セファピリンナトリウム、セファトリジン、セファトリジンプロピレングリコール、セファゼドン、セファゼドンナトリウム塩、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフブペラゾン、セフブペラゾンナトリウム、セフカペン、塩酸セフカペンピボキシル、セフジニル、セフジトレン、セフジトレンピボキシル、セフェピム、塩酸セフェピム、セフェタメット、セフェタメットピボキシル、セフィキシム、セフィネノキシム、セフィネタゾール、セフィネタゾールナトリウム、セフィニノックス、セフィニノックスナトリウム、セフモレキシンjh、セフォジジム、セフォジジムナトリウム、セフォニシド、セフォニシドナトリウム、セホペラゾン、セホペラゾンナトリウム、セフォラニド、硫酸セフォセリス、セフォタキシム、セフォタキシムナトリウム、セフォテタン、セフォテタン二ナトリウム、セフォチアム、塩酸セフォチアムヘキセチル、塩酸セフォチアム、セフォキシチン、セフォキシチンナトリウム、塩酸セフォゾプラン、セフピラミド、セフピラミドナトリウム、セフピロム、硫酸セフピロム、セフポドキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフキノム、セフラジン、セフロキサジン、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテラムピボキシル、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソン、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムナトリウム、塩化セタルコニウム、セトリミド、セトリモニウム、セチルピリジニウム、クロラミンT、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、クロラムフェニコールコハク酸ナトリウム、クロルヘキシジン、クロルミダゾール、塩酸クロルミダゾール、クロロキシレノール、クロルフェネシン、クロルキナルドール、クロルテトラサイクリン、塩酸クロルテトラサイクリン、シクラシリン、シクロピロックス、シノキサシン、シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、クエン酸、クラリスロマイシン、クラブラン酸カリウム、クラブラン酸ナトリウム、クラブラン酸、クリンダマイシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、クリオキノール、クロコナゾール、クロコナゾール一塩酸塩、クロファジミン、クロホクトール、クロメトシリン、クロモサイクリン、クロトリマゾール、クロキサシリン、クロキサシリンナトリウム、コリスチン、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、硫酸コリスチン、シクロセリン、ダクチノマイシン、ダノフロキサシン、ダプソン、ダプトマイシン、ダウノルビシン、DDT、デメクロサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、デカリニウム、ジベカシン、硫酸ジベカシン、ジブロムプロパミジン、ジクロロフェン、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ジヒドロストレプトマイシン、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ジヨードヒドロキシキノリン、ジメトリダゾール、ジピリチオン、ジリスロマイシン、DL-メントール、D-メントール、臭化ドデシルトリフェニルホスホニウム、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドキシサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、エコナゾール、硝酸エコナゾール、エニルコナゾール、エノキサシン、エンロフロキサシン、エオシン、エピシリン、エルタペネムナトリウム、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンコハク酸エチル、ラクトビオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、エタクリジン、乳酸エタクリジン、エタンブトール、エタン酸、エチオナミド、エチルアルコール、オイゲノール、エキサラミド、ファロペネム、フェンチコナゾール、硝酸フェンチコナゾール、フェザチオン、フレロキサシン、フロモキセフ、フロモキセフナトリウム、フロルフェニコール、フルクロキサシリン、フルクロキサシリンマグネシウム、フルクロキサシリンナトリウム、フルコナゾール、フルシトシン、フルメキン、フルリスロマイシン、フルトリマゾール、ホスホマイシン、ホスホマイシンカルシウム、ホスホマイシンナトリウム、フラマイセチン、硫酸フラマイセチン、フラギン、フラゾリドン、フサファンギン、フシジン酸、フシジン酸ナトリウム塩、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、ゲンタマイシン抗生物質複合体、ゲンタマイシンcla、硫酸ゲンタマイシン、グルタルアルデヒド、グラミシジン、グレパフロキサシン、グリセオフルビン、ハラゾン、ハロプロギン、ヘタシリン、ヘタシリンカリウム、ヘキサクロロフェン、ヘキサミジン、ヘキセチジ、ヒドラグラフェン、ヒドロキノン、ハイグロマイシン、イミペネム、イセパマイシン、硫酸イセパマイシン、イソコナゾール、硝酸イソコナゾール、イソニアジド、イソプロパノール、イトラコナゾール、ジョサマイシン、プロピオン酸ジョサマイシン、カナマイシン、硫酸カナマイシン、ケトコナゾール、キタサマイシン、乳酸、ラノコナゾール、レナンピシリン、ロイコマイシンA1、ロイコマイシンA13、ロイコマイシンA4、ロイコマイシンAS、ロイコマイシンA6、ロイコマイシンA7、ロイコマイシンA8、ロイコマイシンA9、レボフロキサシン、リンコマイシン、塩酸リンコマイシン、リネゾリド、リラナフタート、1-メントール、ロメフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、ロラカルベフ、リメサイクリン、リゾチーム、酢酸マフェニド、マグネシウムモノペルオキソフタル酸六水和物、硫酸エチルメセトロニウム、メシリナム、メクロサイクリン、スルホサリチル酸メクロサイクリン、メパルトリシン、メルブロミン、メロペネム、塩化メタルコニウム、メタンピシリン、メタサイクリン、メテナミン、サリチル酸メチル、塩化メチルベンゼトニウム、塩化メチルロザニリン、メチシリン、メチシリンナトリウム、メトロニダゾール、安息香酸メトロニダゾール、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ミコナゾール、硝酸ミコナゾール、ミクロノマイシン、硫酸ミクロノマイシン、ミデカマイシン、ミノサイクリン、塩酸ミノサイクリン、ミオカマイシン、塩化ミリスタルコニウム、マイトマイシンc、モネンジン、モネンジンナトリウム、モリナミド、モキサラクタム、モキサラクタム二ナトリウム、モキシフロキサシン、ムピロシン、ムピロシンカルシウム、ナジフロキサシン、ナフシリン、ナフシリンナトリウム、ナフチフィン、ナリジクス酸、ナタマイシン、ネオマイシンa、ネオマイシン抗生物質複合体、ネオマイシンC、硫酸ネオマイシン、ネチコナゾール、ネチルミシン、硫酸ネチルミシン、ニフラテル、ニフロキサジド、ニフルトイノール、ニフルジド、ニモラゾール、ニリダゾール、ニトロフラントイン、ニトロフラゾン、ニトロキソリン、ノルフロキサシン、ノボビオシン、ナイスタチン抗生物質複合体、オクテニジン、オフロキサシン、オレアンドマイシン、オモコナゾール、オルビフロキサシン、オルニダゾール、オルト-フェニルフェノール、オキサシリン、オキサシリンナトリウム、オキシコナゾール、硝酸オキシコナゾール、オキソフェリン、オキソリン酸、オキシクロロセン、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンカルシウム、塩酸オキシテトラサイクリン、パニペネム、パロモマイシン、硫酸パロモマイシン、パズフロキサシン、ペフロキサシン、メシル酸ペフロキサシン、ペナメシリン、ペニシリンG、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ペニシリンVカルシウム、ペニシリンVカリウム、ペンタミジン、ジイセチオン酸ペンタミジン、ペンタミジンメシラス、ペンタマイシン、フェネチシリン、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルメルクリボラト、PHMB、フタリルスルファチアゾール、ピクロキシジン、ピペミド酸、ピペラシリン、ピペラシリンナトリウム、ピペルシリンナトリウム-タゾバクタムナトリウム、ピロミド酸、ピバンピシリン、ピブセファレキシン、ピブメシリナム、塩酸ピブメシリナム、ポリクレスレン、ポリミキシン抗生物質複合体、ポリミキシンB、硫酸ポリミキシンB、ポリミキシンB1、ポリノキシリン、ポビドンヨード、プロパミジン、プロペニダゾール、プロピシリン、プロピシリンカリウム、プロピオン酸、プロチオナミド、プロチオフェート、ピラジナミド、ピリメタミン、ピリドマイシン、ピリチオン、ピロイニトリン、キノリン、キヌプリスチン-ダルホプリスチン、レゾルシノール、リボスタマイシン、硫酸リボスタマイシン、リファブチン、リファンピシン、リファマイシン、リファペンチン、リファキシミン、リチオメタン、ロキタマイシン、ロリテトラサイクリン、ロソクサシン、ロキシスロマイシン、ルフロキサシン、サリチル酸、セクニダゾール、セレンジスルフィド、セルタコナゾール、硝酸セルタコナゾール、シッカニン、シソマイシン、硫酸シソマイシン、チオ硫酸ナトリウム、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、塩酸スペクチノマイシン、スピラマイシン抗生物質複合体、スピラマイシンb、ストレプトマイシン、硫酸ストレプトマイシン、スクシニルスルファチアゾール、スルバクタム、スルバクタムナトリウム、スルベニシリン二ナトリウム、スルベンチン、スルコナゾール、硝酸スルコナゾール、スルファベンザミド、スルファカルバミド、スルファセタミド、スルファセタミドナトリウム、スルファクロルピリダジン、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファジアジンナトリウム、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファグアニジン、スルファレン、スルファマゾン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメタジンナトリウム、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾール-トリメトプリム、スルファメトキシピリダジン、スルファモノメトキシン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファ
フェナゾール、スルファピリジン、スルファキノクサリン、スルファスクシンアミド、スルファチアゾール、スルファチオ尿素、スルファトラミド、スルファトリアジン、スルフィソミジン、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールアセチル、スルホンアミド、スルタミシリン、トシル酸スルタミシリン、タクロリムス、塩酸タランピシリン、テイコプラニンA2複合体、テイコプラニンA2-1、テイコプラニンA2-2、テイコプラニンA2-3、テイコプラニンA2-4、テイコプラニンA2-5、テイコプラニンA3、テイコプラニン抗生物質複合体、テリスロマイシン、テマフロキサシン、テモシリン、テン酸、テルビナフィン、テルコナゾール、テリジドン、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、メタリン酸テトラサイクリン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトロキソプリム、チアベンダゾール、チアンフェニコール、チアフェニコールグリシネートヒドロクロリド、チオメルサール、チラム、チモール、ヨウ化チベゾニウム、チカルシリン、チカルシリン-クラブラン酸混合物、チカルシリン二ナトリウム、チカルシリン一ナトリウム、チルブロキノール、チルミコシン、チミダゾール、チオコナゾール、トブラマイシン、硫酸トブラマイシン、トルシクラート、トリンデート、トルナフタート、トロコニウムメチルサルファット、トルトラズリル、トスフロキサシン、トリクロカルバン、トリクロサン、トリメトプリム、硫酸トリメトプリム、トリフェニルスチビンスルフィド、トロレアンドマイシン、トロバフロキサシン、タイロシン、チロスリシン、塩化ウンデコイリウム、ウンデシレン酸、バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、バイオマイシン、バージニアマイシン抗生物質複合体、ボリコナゾール、キサントシリン、キシボモールおよびウンデシレン酸亜鉛を含む。
【0306】
本発明のいずれかの他の態様で有効に使用される抗真菌剤は、限定されないが、ポリエン、アンホテリシンB、リポソームアンホテリシン、ナイスタチン、およびピマリシン;アゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール;アニデュラファンギン、カスポファンギンおよびミカファンギンなどのアキノカンジン;ナフチフィンおよびテルビナフィンならびにアモロルフィンなどのアリルアミンおよびモルホリン;5-フルオロシトシンなどの代謝拮抗剤を含む。
【0307】
いくつかの実施形態では、抗微生物剤は抗生物質である。例示的な抗生物質は、限定されないが、オキサシリン、ピペラシリン、ペニシリンG、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、バンコマイシンおよびメチシリンを含む。これらの抗生物質は、これらに対する耐性の出現と関連することが知られている。
【0308】
医薬組成物
本明細書で説明される方法のいずれかにおいて、ガス状NOとしてのまたはNO放出化合物の形態での一酸化窒素、および/または抗微生物剤は医薬組成物の一部として投与されてよく、医薬組成物は、本明細書で説明されるように、医薬品として許容可能な担体をさらに含む。
【0309】
前述で示された方法のステップ(i)およびステップ(ii)が同時に行われない実施形態では、医薬組成物は2つ以上の部分を含み、ここで少なくとも1つの部分は一酸化窒素を含み、別の部分は抗微生物剤を含む。
【0310】
NOが吸入さもなければガスとして使用され、かつ抗微生物剤が固体、液体、ペースト、軟膏または懸濁液/エマルションとして投与される実施形態では、医薬組成物は一酸化窒素用の少なくとも1つのガス部分および抗微生物剤用の別の非ガス部分を含む。一酸化窒素を含む部分中の担体は、投与方式(吸入または局所投与)に従って選択できる。
【0311】
NOがNO放出化合物として投与される実施形態では、一酸化窒素および/または抗微生物剤は、限定されないが、経口、吸入、または非経口を含むいずれかの投与経路を介して投与でき、例えば、静脈点滴あるいは腹腔内、皮下、筋肉内または静脈内注射、あるいは局所による。組成物のいずれかの部分用の担体は、投与の選択された経路に適して選択される。
【0312】
本発明の別の態様により、医薬品の製造における抗微生物剤の使用が提供され、前述された治療方法について説明されたように、それは病原性微生物と関連する医学的状態を治療するために、一酸化窒素をさらに含む。あるいは、医薬品の製造における一酸化窒素の使用が提供され、前述された治療方法について説明されたように、それは病原性微生物と関連する医学的状態を治療するために、抗微生物剤をさらに含む。
【0313】
本発明の実施形態により、抗微生物剤および/またはその量は、増強化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素が使用される場合、抗微生物剤の治療上効果的な量が、一酸化窒素なしに使用される場合の抗微生物剤の治療上効果的な量よりも実質的に低いように選択される。本明細書で提示されるいくつかの他の態様におけるように、およびいくつかの実施形態により、一酸化窒素は抗微生物剤と組み合わせて使用されてよく、これは一酸化窒素を投与するのと同時にまたはその後に投与され得る。
【0314】
従って、本発明の実施形態の別の態様により、有効成分として、感受性化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素、治療上効果的な量の抗微生物剤および医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態により、組成物は包装材料中にパッケージされ、病原性微生物と関連する医学的状態の治療における使用のため、包装材料の中でまたは上で、プリントで識別される。他の実施形態により、組成物は包装材料中にパッケージされ、前述のような耐性病原性微生物と関連する医学的状態の治療における使用のため、包装材料の中でまたは上で、プリントで識別される。
【0315】
本発明で使用されるとき、語句「医薬組成物」または用語「医薬品」は、本明細書で説明される一酸化窒素および1種類以上の抗微生物剤の、医薬品として許容可能で適切な担体または添加剤などの他の化学成分との調製物を指す。医薬組成物の目的は、被験体への一酸化窒素および/または抗微生物剤の投与を容易にすることである。
【0316】
以下において、用語「医薬品として許容可能な担体」は、生物に対する著しい刺激を生じず、かつ投与される化合物の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を指す。非ガス担体の例は、限定されないが、空気、窒素、アルゴンおよび、吸入粉末、蒸気またはガスとして投与される場合に一酸化窒素および/または抗微生物剤に対して実質的に不活性である他のキャリアガスを含む。非ガス担体の例は、限定されないが、ポリエチレングリコール、生理食塩水、エマルションおよび有機溶媒と水の混合物を含む。
【0317】
本明細書では、用語「添加剤」は、医薬組成物に添加されてさらに化合物の投与を容易にする不活性物質を指す。添加剤の例は、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン型、セルロース誘導体、ゼラチン、植物オイルならびにポリエチレングリコールを含む。
【0318】
薬剤の製剤化および投与に関する技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミングトンの薬科学)」、Mack Publishing Co.,Easton,PA,最新版に認めることができ、それは本明細書に参考として組み込まれる。
【0319】
医薬組成物のいずれかの部分は、局所または全身の治療または投与のいずれが選択されるか、および治療される領域に応じて、1つまたはそれより多い経路における投与のために製剤化され得る。投与は、経口、吸入、または非経口によってなされ得、例えば静脈点滴あるいは腹腔内、皮下、筋肉内または静脈内注射、あるいは局所(眼科的、経膣、経直腸、鼻腔内を含む)による。
【0320】
局所投与用製剤は、限定されないが、ローション、軟膏、ジェル、クリーム、坐薬、液滴、液体、スプレーまたは粉末を含み得る。従来の医薬用担体、水性、粉末または油性ベース、増粘剤などが必要であるか望ましいであろう。
【0321】
経口投与用組成物は、粉末または顆粒、水または非水性メディアにおける懸濁液または溶液、一回用量袋、ピル、カプレットあるいは錠剤を含む。増粘剤、希釈剤、香料、分散補助剤または結合剤が望ましいであろう。
【0322】
非経口投与用製剤は、限定されないが、緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤も含み得る滅菌溶液を含み得る。遅延放出組成が治療用に想定される。
【0323】
投与される組成物の量は、当然、治療される被験体、病苦の重篤度、投与方法、処方する医師の判断などに依存する。
【0324】
本発明の実施形態による使用のための医薬組成物のいずれかの部分は、添加剤および補助剤を含む1種類以上の医薬品として許容可能な担体を用いて従来方法で製剤化されてよく、医薬品として使用できる調製物への一酸化窒素のいずれかの剤形および抗微生物剤のいずれかの剤形の処理を容易にする。適正な製剤は選択される投与経路に依存する。
【0325】
抗微生物剤の毒性および治療効能、ならびに本明細書で説明される一酸化窒素の増強化および再感受性化効能は、実験動物における標準的な医薬手順によって測定でき、例えば、抗微生物剤と一酸化窒素のいずれかの組み合わせについて、MIC、EC50、IC50、LD50(試験した動物の50%に死を生じる致死用量)および/またはLD100を測定することによる。これらの活性測定および動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲を定式化するのに使用できる。
【0326】
用量は、使用される投与剤形および利用される投与経路に応じて変動し得る。正確な製剤化、投与経路および用量は、患者の症状の観点で個別の医師によって選択され得る(例えば、Finglら,1975,「The Pharmacological Basis of Therapeutics(治療剤の薬理学的基本)」,Ch.1 p.1を参照する)。一般的に、用量は有効成分の効能と関連し、これは本発明の実施形態の文脈において、その最小阻害濃度(MIC)ならびに吸収、分布、代謝、排出および毒性(ADMETox)パラメータに関するその特定の薬物動態および薬理学と関連する。抗微生物剤について、治療上効果的な量は、しばしば抗微生物剤のMICの約10倍である。一酸化窒素の増強化または再感受性化に効果的な量は、一酸化窒素といずれかの対象微生物に関する1MIC単位よりも低く、本明細書で説明される一酸化窒素と組み合わせて使用されるいずれかの対象の抗微生物剤の治療上効果的な量は、抗微生物剤といずれかの対象微生物に関する1MIC単位以下であり得る。
【0327】
投与される組成物の量は、当然、治療される被験体、病苦の重篤度、投与方法、処方する医師の判断などに依存する。
【0328】
本発明の組成物は、必要に応じて、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなどのパックまたは分配デバイスで提供され得、それは有効成分を含有する1回以上の単位投与剤形を含み得る。パックは、例えば、金属またはプラスチックホイルを含み、限定されないが、ブリスターパックまたは加圧容器(吸入用)などである。パックまたは分配デバイスは、投与のための取扱説明書を伴い得る。パックまたは分配デバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた様式で容器と関連する注意書を伴い得、注意書はヒトまたは動物投与のための組成物の剤形の当局による承認を反映する。このような注意書は、例えば、処方薬に関する米国食品薬品局によって承認されたラベル、または承認された製品インサートであり得る。適合性のある医薬担体中に製剤化される、単独でまたは抗微生物剤との組み合わせでのいずれかで、一酸化窒素のいずれかの剤形を含む組成物はまた、本明細書で詳述されるように、調製され、適切な容器中に配置され、および指示された条件の治療のために表示され得る。
【0329】
医薬品キット
前述で示されるように、一酸化窒素は抗微生物剤と組み合わせた使用で指示され、さらに示されるように、2種の有効成分は別々の組成物として同時にまたは連続的に投与され得る。従って、ヘルスケア提供者または自己投与する被験体に、必要とされる組成物をすべて1つのパッケージに含むキットを提供することにおける利点がある。
【0330】
ガスの形態である場合、医薬品キットはキャリアガス中にgNOを含む容器またはキャニスターを含み、それは吸入または局所適用のために構成される。
【0331】
また、本発明のさらに別の態様により、パッケージ材料内部に本明細書で説明されるいずれかの形態での一酸化窒素および個別にパッケージされる抗微生物剤を含む医薬品キットが提供される。そしてキットはその目的とする使用に従って表示され、病原性微生物と関連する医学的状態を治療するため、または前述のような耐性病原性微生物と関連する医学的状態を治療するため、および/または抗微生物剤に対する耐性の発達後に抗微生物剤に対して耐性病原性微生物を再感受性化するため、などの、その目的とする使用を実施するための取扱説明書を含む。
【0332】
この態様の実施形態により、キットは治療上効果的な量の抗微生物剤を含み、これは一酸化窒素なしに使用される場合に何らかの理由によって特定の微生物に対して効果的でない。
【0333】
単位投与剤形
前述で説明されるように、一酸化窒素は、それが増強化および/または再感受性化剤として使用されることを可能にする独自の特性を有し、それらの特性は一酸化窒素なしで一般的に実施される用量よりも低い用量で抗微生物剤を使用することを可能にする。
【0334】
従って、本発明の実施形態の別の態様により、抗微生物剤の医薬組成物単位投与剤形が提供され、それは治療上効果的な量の抗微生物剤を含み、それは一酸化窒素と組み合わせて使用することが意図される。
【0335】
一酸化窒素の医薬組成物単位投与剤形もまた提供され、それは増強化または再感受性化に効果的な量の一酸化窒素を本明細書で説明されるいずれかの剤形で含む。ガスの形態の場合、NOの単位投与剤形は、吸入または局所適用のために構成される容器またはキャニスターで提供され得る。
【0336】
用語「単位投与剤形」は、本明細書で使用される場合、物理的に分離した単位を説明し、各単位は、少なくとも1種類の抗微生物剤、および他の医薬品として許容可能な担体、希釈剤、添加剤、およびこれらの組み合わせと併せて、所望の増強化または再感受性化効果を生じるように計算された1種類以上の有効成分の所定量を含む。
【0337】
本明細書で説明される単回単位投与剤形は、本明細書で説明されるいずれかの投与方式用に製剤化できる。
【0338】
この態様の実施形態により、抗微生物剤の医薬組成物単位投与剤形は治療上効果的な量の抗微生物剤を含み、これは一酸化窒素なしに使用される場合に何らかの理由によって特定の微生物に対して効果的でない。
【0339】
本発明のすべての態様に関するいくつかの実施形態では、一酸化窒素はそのMICよりも低い量で使用される。いくつかの実施形態では、単位投与剤形中の一酸化窒素の量は、本明細書で説明されるように、一酸化窒素の約1MIC単位~約1/10MIC単位である。いくつかの実施形態では、単位投与剤形は、抗微生物剤の0.5~20MIC単位、または1/2MIC単位、2/3MIC単位、3/4MIC単位、1MIC単位、2MIC単位、5MIC単位、10MIC単位、およびそれより多い抗微生物剤の量を含む。
【0340】
理解し易くするため、別々の実施形態の文脈で説明されている本発明のある種の特徴は、ただ一つの実施形態で組み合わせても提供され得ると認識される。逆に、簡潔さのために、ただ一つの実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々、またはいずれかの適切な下位組み合わせで、あるいは本発明のいずれか他で説明される実施形態で適切なものとしても提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がこれらの要素なしでは効力がない場合を除き、これらの実施形態の必須な特徴であると考えられるべきではない。
【0341】
本発明の多くの実施形態が説明されているが、これらの実施形態は説明のためのみであり、限定的でなく、多くの変更が従来技術の当業者によって明白になり得ると理解される。さらにまた、様々なステップがいずれかの所望の順序で実施され得る(そしていずれかの所望のステップが追加および/またはいずれかの所望のステップが排除され得る)。
【0342】
前述で説明および後述の請求項で請求される本発明の様々な実施形態および態様は、次の例で実験的な裏付けを得る。
【0343】

例1:一酸化窒素吸入による細気管支炎治療
試験は南イスラエルのソロカ大学メディカルセンターで実施され、Institutional and National Human Ethics Committee(施設および国立ヒト倫理委員会)によって承認された。詳細な試験概要がオンライン補足として添付される。本試験は臨床試験番号NCT01768884によって登録されている。
【0344】
試験は、急性細気管支炎を有する2~11ヶ月齢の入院した乳幼児の無作為、前向き、単一施設、二重盲検試験だった(図1)。組み入れ基準および除外基準を表1にまとめる。
【0345】
被験者を入院4時間以内にスクリーニングして、最大25回の吸入について、標準的治療とともに160ppmのNOの間欠的吸入(NO群)またはO/空気混合物の間欠的吸入および標準的治療(コントロール群)を受けるように無作為に分類した(1:1)。
【0346】
標準的支持療法:この治療は、加湿した酸素、必要時の鼻腔吸引および水分補給(経口、静脈内または経鼻胃管流体)を含んだ。他の付随的医薬品の使用は、病棟の一般的実施に従って許可された。
【0347】
一酸化窒素治療:被験者はフェイスマスクを介して固定流量モードで160ppmNOを自発的に吸入した。99.999%純度の窒素(N)で平衡化した800ppm(0.08%)NOの一酸化窒素(Maxima、イスラエル)を、O/空気の吸気送達ラインに用量設定した。患者呼吸回路において吸入されたNO、NOおよびO濃度を、専用ガス分析装置(AeroNox、International medical、米国)を用いて連続的にモニタリングした。
【0348】
結果の測定
一次結果:NO治療と関連する%MetHbおよびNO産生、出血症状およびいずれかの有害事象(AE)を含む安全性測定。NOおよびMetHbについての試験閾値は、それぞれ5ppmおよび5%に設定された。
【0349】
一次結果は、急性細気管支炎を有する2~11ヶ月の新生児に供された160ppmNOの間欠的吸入の安全性および耐容性だった。安全性測定は、NO治療と関連する%MetHb(安全性閾値は、MetHbについて>5%、NOについて>5ppmとして測定した)、ならびに他のAEを含んだ。耐容性測定は、何らかの理由で試験を早期に中止した被験者の比率、および重篤なSAEによって治療を早期に中止した被験者の比率を含んだ。
【0350】
二次結果:効能パラメータ:最初の吸入から開始して、1)室内空気中の酸素飽和度(SpO)≧92%、2)臨床スコア≦5(15、16)、および3)「退院可能」の盲検医師決定、まで、時間で計算されたLOS。
【0351】
二次結果は効能測定であり、LOS、≧92%SaOを達成する時間、および≦5の臨床スコアを達成する時間を含んだ。時間でのLOSは、最初の治療と、1.≧92%の室内空気飽和度、2.≦5の臨床的重篤度徴候スコア(表E1)、3.盲検医師によってなされる臨床的決定、として定められる乳幼児が「退院可能」だった時点との間の時間として定められた。
【0352】
重篤度徴候スコアを使用して、各乳幼児の重篤度を決定した(表E1)。スコアは4つの構成要素である、呼吸速度、補助筋の使用、喘鳴および聴診における捻髪音、ならびに室内空気酸素飽和度(SpO)から構成された。各構成要素は0~3ポイントが与えられ、可能な合計スコアは12である。<6のスコアを有する乳幼児は軽度と決定され、試験に組み込まれず、一方>10のスコアを有する乳幼児は非常に重篤と決定され、やはり除外された。
【0353】
試験の概要
試験スタッフは「盲検」と「非盲検」群に分けられた。非盲検スタッフは乳幼児に吸入を投与して、%MetHb、%SpO(co-オキシメーター、RAD57/RAD87、Masimo Corporation、米国)、吸気酸素濃度比O(FiO)、NO、NO濃度をモニタリングした。盲検群は、治験責任医師および患者の看護に直接的に含まれるすべての他のスタッフを含んだ。NOおよびMetHbの安全性閾値は、それぞれ5ppmおよび5%に設定された。NO/O(NO治療)ならびにO/空気混合物(コントロール)の両治療は同じデバイスを介して与えられ、したがって、患者も治療群について知らされなかったことは、強調されるべきである。
【0354】
各患者は、最大25回の吸入(第I相安全性データに基づく)について、標準的な支持療法とともに、NO(治療群)または酸素(コントロール群)の1日に5回の吸入を受けた。各被験者は毎朝(午前9時および午後3時)、盲検小児科医によって重篤徴候スコアを用いて検査および評価された。室内空気SpOが92%に達し、スコアが≦5であり、かつ患者が「退院可能」と評価された場合、治療を中止した。
【0355】
最初の評価は臨床スコアによる疾患重篤度決定を含んだ(表E1)。(臨床スコアのさらに詳細な説明は、オンライン補足を参照する)。被験者は、スコアを用いて1日2回検査および評価された。経過観察を、入院の日から14日目、21日目および30日目に実施した(より詳細な試験監視はオンライン補足を参照する)。
【0356】
統計的分析
データは、独立した統計専門家グループによってSAS(登録商標)バージョン9.1(SAS Institute、ケーリー、ノースカロライナ州)を用いて処理および分析された。ペアードT検定が量的変数についてベースラインからの変動を検定するために適用され、2サンプルT検定/ノンパラメトリックウィルコクソン順位和検定または中央値検定が量的パラメータにおける試験群間の差を分析するために使用され、カイ二乗検定が試験群間のカテゴリー変数の頻度における差を検定するために適用され、カプランメイラー生存時間関数曲線が効能のエンドポイントに関する試験群間の差を検定するために適用され、コックスモデルがカプランメイヤー曲線およびハザード比評価の比較分析のために適用された。
【0357】
前臨床試験に基づき、NOの抗微生物治療効果が約2.5時間の暴露(すなわち24時間治療)を要することが予測されるため、LOS≦24時間および>24時間を有する被験者の事後サブ群分析も主要な事後二次エンドポイントについて実施された。被験体の3分の1は、病院を24時間未満で退院した。より長いLOSは高い疾患重篤度と相関すると予測され、従っていずれかの治療効果はLOS>24時間のサブ群でより明白なはずである。
【0358】
LOSは最初の吸入治療から、退院に対する医師の決定として定められる「退院可能」までの時間で計算された。「退院可能」時は、適用可能な最終臨床スコアから、および特別な状況における被験者の医療記録から得られた(すなわち、試験の間に≦5の臨床スコアに達しなかった被験者について、および細気管支炎関連事象が疑われるために病院に残った被験者について)。
【0359】
退院にいたる≧92%の室内空気SpOを達成する(酸素化の改善)時間は、最初の治療~退院まで持続された≧92%の室内空気SpOの最初の時間で計算された。≦5の臨床スコアまでの時間は、最初の吸入~被験者が≦5の臨床スコアに到達した最初の時間で計算された。
【0360】
すべての測定した変数および派生パラメータを記述統計によって作表した。カテゴリー変数を、試験群ごとおよび全体で、サンプルサイズ、絶対および相対頻度を含む要約表に示した。
【0361】
連続変数を試験群ごとに、サンプルサイズ、算術平均、SD、標準誤差、中央値、最小および最大を含む表にまとめた。
【0362】
次の統計学的検定を本試験で示されたデータの分析で使用した。1.ペアードT検定を各試験群内の量的変数についてベースラインからの変動の統計学的有意を検定するために適用した。2.2サンプルT検定またはノンパラメトリックウィルコクソン順位和検定または中央値検定を量的パラメータにおける試験群間の差を分析するのに適切なものとして使用した。3.カイ二乗検定を試験群間のカテゴリー変数の頻度における差の統計学的有意を検定するために適用した。4.カプランメイラー生存時間関数曲線を用いる生存分析を以下のエンドポイント:最初の吸入から退院可能までのLOS、退院にいたる92%飽和を達成する時間、および臨床スコア≦5を達成する時間、における試験群間の差の統計学的な有意を検定するために適用した。コックスモデルをカプランメイヤー曲線の比較分析のために適用した。ハザード比をコックス回帰モデルによって評価した。
【0363】
適用したすべての検定は両側検定であり、5%以下のP値を統計学的に有意とみなした。データはSAS(登録商標)バージョン9.1(SAS Institute、ケーリー、ノースカロライナ州)を用いて分析した。
【0364】
LOS≦24時間および>24時間を有する被験者の事後サブ群分析も主要な事後二次エンドポイントについて実施された。これらの事後分析は、前臨床試験に基づき、NOの抗ウイルス/抗微生物治療効果が少なくとも2.5時間の暴露(すなわち24時間治療)を要すると予測されるという理由のため実施された。被験者の約1/3は、病院を24時間未満で退院した。LOS<24時間を有する被験者は「非常に軽度な疾患」を有するとみなされ、彼らの改善はいずれの治療とも関連しないようだった。より長いLOSは高い疾患重篤度と相関すると予測され、従っていずれかの治療効果はLOS>24時間のサブ群でより明白なはずである。
【0365】
計画されたサンプルサイズは被験者40名であり、各試験群に20名だった。約10%の予測脱落率を考慮し、試験を完了する患者40名のサンプルサイズを有するために、被験者44名の採用を計画した。
【0366】
結果
被験者
全63名の乳幼児をスクリーニングし(図2)、20名の親が同意を辞退し、そのため被験者43名を、NO群に21名およびコントロール群(O/空気)に22名で無作為に割り当てて、「治療意図(intention of treat)」群(ITT)に組み入れた。「プロトコール遵守(per protocol)」(PP)群は、NO群に被験者19名(90.5%)およびコントロール群に被験者20名(90.0%)を含んだ。
【0367】
人口統計学的特性およびベースライン特性
治療群は人口統計学的特性およびベースライン特性に十分適合した(性別、民族性、年齢、スクリーニング時体重、出生時の在胎期間、およびスクリーニング時MetHb値)(表2)。平均(±標準偏差[SD])齢は、NO群およびコントロール群でそれぞれ4.8±2.3ヶ月および5.6±2.8ヶ月だった。それぞれの平均ベースラインMetHb値は0.7±0.4%および0.7±0.30%、平均臨床スコアは7.9±1.1および8.1±1.3だった。両群のすべての試験した乳幼児は、スコアによる細気管支炎の中度の重篤度を有した。
【0368】
両治療群において、大部分の被験者はRSVについて陽性だった(NO群およびコントロール群でそれぞれ71.4%および63.6%)。他の検出されたウイルスは、コロナウイルス(群あたり4名)、アデノウイルス(コントロール群で2名)、メタニューモウイルス(NO群で2名、コントロール群で1名)、およびインフルエンザA(コントロール群で6名)を含んだ。人口統計学的およびベースライン特性は、LOS>24時間およびLOS≦24時間のサブ群でも同様だった(表E2)。
【0369】
全部で156回のNO吸入が投与され、198回のO/空気混合物がコントロール群に与えられた。吸入の平均数はNO群(7.4±3.2、最大16)でコントロール群(9.0±6.5、最大25)に比べて低かった。
【0370】
付随的医薬品
両治療群におけるすべての被験者が1種類以上の付随的医薬品を有し、治療群は付随的医薬品の全体的な頻度およびタイプに関して十分バランスがとれていた。最も高頻度の医薬品タイプは:β作用剤、パラセタモール、アトロピン様物質、高張生理食塩水、全身性ステロイド、および抗生物質だった(表E3)。
【0371】
安全性評価
AEは被験者23名(53.5%)で報告され、NO群では被験者10名(47.6%)でAEが22件、コントロール群では被験者13名(59.1%)でAEが22件だった(表3、E4)。
【0372】
NO治療と関連する可能性があると考えられるAEは、MetHb>5%、NO上昇>5ppm、および出血だった(17)。吸入治療と関連する可能性または恐れがあると考えられるAEは、NO群およびコントロール群において、それぞれ被験者5名(23.8%)および2名(9.1%)で報告された。重大なAE(SAE)は、NO群およびコントロール群において、それぞれ被験者4名(19.0%)および4名(18.2%)で報告された。NO群では治療関連SAEはなく、これに対してコントロールでは被験者1名だった。試験中に出血症状または死亡はなかった。
【0373】
第一安全性エンドポイント-吸入NOと関連するMetHbの割合
NO群では、被験者6名(28.5%)が試験治療期間中に>5%のMetHb測定を有し、これらの被験者の3名において、>5%の値は一回を超えて>5%を認めた(最大値は被験者2名における5.6%だった)。MetHb値は各NO吸入で増加し、吸入の最後でピーク値を有し(平均3.3±0.9%)、ついで徐々に低下して治療前の量に近づいた(図3a)。吸入の前および最後でMetHb濃度を比較し、治療期間にわたるMetHb濃度の累積的影響はなかった(図3b)。
【0374】
NO群における被験者1名が増加した>5ppmのNO濃度(5.5ppm)を一度経験した。乳幼児21名で最初の吸入の最後での平均ピークNO2は1.55(SD=0.55)ppmであり、これは5ppmの安全性閾値より十分低い(図4)。
【0375】
耐容性:NO群における2名(9.5%)およびコントロール群における2名(9.1%)の被験者4名が試験/試験治療を中止した。被験者2名(各群1名)が親の同意取り消しまたは親の非遵守によって治療を中止し、3番目の被験者(NO群)はMetHb>5%の二次的AEのため試験を中止し、4番目の被験者(コントロール群)は呼吸不全のSAEのために治療を中止して小児集中治療室に移された。
【0376】
第二結果-効能評価
入院期間(LOS):ITT分析では被験者43名だった。平均±SDのLOSは、コントロール群における50.0±46.2時間に対してNO群では43.3±32.95時間だった(P=0.86)。<24時間以内に退院した軽度細気管支炎を有する乳幼児16名を含めてLOSを分析した場合、LOS中央値はNO群およびコントロール群でそれぞれ40時間および24.5時間だった(P=0.65)。事後分析(ITT)をLOS>24時間およびLOS≦24時間に基づいて実施した場合、LOS中央値はコントロール群(62.50時間)に比べてNO群(41.92時間)で有意に短かった(P=0.014)(図5)。LOSに関するITTおよびPPのカプランメイヤー分析を図6で説明する。
【0377】
退院まで持続された最初の92%O飽和度までの時間:退院まで持続された最初の92%O飽和度までの時間は、ITT(N=42)ではコントロール群における45.75±44.43時間に対してNO群では35.50±33.73時間だった(P=0.517)。PPについてのLOS>24時間のカプランメイヤー分析は、NO群に有利に統計学的有意差を示した(HR=0.358、95%CI=0.139、0.921、P=0.028)(図7)。
【0378】
≦5の臨床スコアまでの時間:ITT(N=43)に関する分析は、コントロール群における43.10±43.91時間に対してNO群で32.83±30.61時間のより短いが統計学的に有意ではない≦5の臨床スコアに達する平均時間を示した(P=0.621)。しかしLOS>24時間を有する被験者のカプランメイヤー分析に基づき、統計学的な有意差がNO群に有利に示された(HR=0.391、95%CI:0.161、0.949、ログランクP値=0.033)(図8AおよびB)。PPに関するカプランメイヤー分析もまた、LOS>24時間を有する被験者についてNO群に有利に統計学的有意差を示した(HR=0.273、95%CI:0.093、0.799、ログランクP値=0.013)(図8CおよびD)。
【0379】
考察
細気管支炎を有する2~11ヶ月齢の乳幼児43名の本試験の一次結果は安全で耐容性であり、有望な結果を有した。本試験は効能に力点が置かれていなかったが、二次効能結果を評価した。本発明者らは、NOとコントロール治療群(ITT、PP)の間に統計学的に有意な安全性および耐容性の差を認めなかった。LOS>24時間(>2.5時間NO暴露)を有する被験者のサブ群において、事後分析はLOS短縮、室内空気SpO2≧92%までの時間短縮、および臨床スコア≦5までの時間短縮に関して、標準的治療に対してNOの統計学的に有意な臨床的有利性を示した。
【0380】
NOは、平滑筋の血管拡張、神経伝達、抗炎症効果、創傷治癒の調節および、様々な生物に向けられる殺菌作用などの感染に対する免疫応答を含む、様々な生物学的機能において重要な役割を演じる。NOはまた、単純ヘルペスウイルス1型の阻害を含む、抗ウイルス剤としても作用する。ウイルス感染を排除するNOの能力にはいくつかの機構および経路が考えられ:ウイルスプロテイナーゼおよびリボヌクレオチドレダクターゼ、宿主細胞中へのRNA侵入、ウイルス感染およびウイルスタンパク質蓄積に必要とされる転写因子、およびウイルス複製サイクルの第1段階の間のウイルス複製、感染細胞からのウイルス放出、ならびに感染に対する宿主応答の調節、の阻害が挙げられる。
【0381】
NOは満期新生児および予定日近く出生の新生児の治療について20ppmの用量で承認されており、14日まで連続送達で維持される。80ppmまでの用量は臨床試験中に使用された(NDA20~86INOmax一酸化窒素ガスのFDA承認、1999年)。
【0382】
吸入されたNO治療の安全性の問題は、MetHb蓄積、NO生成、および出血を含む。吸入された一酸化窒素はヘモグロビンと結合してニトロシルヘモグロビンを形成でき、これは直ちにメトヘモグロビン(metHb)に酸化される。チアノーゼは、metHb濃度が15~20%になるまで出現せず、低酸素症の臨床的徴候は、約30%未満のヘモグロビンの濃度では一般的に重大とならない。新生児の試験では、5~10%のMethb濃度が、5%未満の濃度に低下するまでは、NOの濃度を半減させることによって管理された。さらに、試験中のMetHg%の相当する上昇によって、血流に吸収されて代謝されるのに十分なNOが気道中に存在することが確証された。
【0383】
新生児試験では、吸入されるNOはNOが7ppmを超えた場合に中止された。高用量では、NOの主な毒物学的影響は肺浮腫である(疾病管理センター、1988年)。しかし、過去の試験では、80ppm未満のNO用量で、測定されたNO量の有意な上昇ないしNO毒性の臨床的証拠のいずれもなかった。同様に、本試験では、1日に5回30分吸入された160ppmNOは、NOの有意な上昇あるいは毒性の臨床的証拠のいずれとも関連しなかった。
【0384】
間欠的投与方法が、NOの抗ウイルスおよび抗細菌効果ならびに抗炎症性および血管拡張剤特性の追加治療効果を最大限にしながら有害事象の可能性を最小限にするために選択され、さらに気道クリアランスを促進する。MetHbの蓄積がなく、有意なNO上昇の事象がなく、かつ出血症状がないという本試験の結果は、ヒトにおける間欠的な160ppm吸入療法の根拠を裏付ける。抗細菌剤としてのNOの用量および時間要求事項は、プランクトン懸濁液およびバイオフィルムの両方で測定され効果的であることが示された。インフルエンザウイルスまたは感染細胞を間欠的(4時間おきに30分)な160ppm外因性ガスNOで処理することは、ウイルス複製だけでなく、感染のメイディンダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞モデルにおいてその感染力を低下した。160ppmNOの30分1日5回、連続5日の吸入は、健康な個人において安全で十分耐容性である。
【0385】
本試験は効能に注力されなかったが、効能と関連する二次結果を評価した。少なくとも2.5時間のNO暴露が抗微生物効果が認められるまでに必要とされることを示した、過去のインビトロおよび動物試験に基づき、事後分析を行い、>24時間入院し続けた乳幼児のサブ群(30分の5回を超える治療)でNO治療をコントロールと比較した。このサブ群では、効能の差は、NO群:より短いLOS(ITT)、より短いスコア≦5(ITT)までの時間およびSpO≧92%までの時間、に有利に、統計学的に有意だった。
【0386】
細気管支炎を有する乳幼児における平均入院滞在は短く、従って、ウイルス負荷などの結果で有意な低下を示すことは難しい。本発明者らは主な効能結果として時間でのLOSを選択する。この結果は最近のいくつかの研究(11、23、24)で使用された。LOSは2つの重要な結果測定、すなわち、臨床的改善の速度および酸素治療の必要性に依存する。重篤度スコア化システムが群間の臨床的な差を検出するのに、特にプラセボが使用される場合に高い能力を有する(11)。改良Talスコア(15)は内部整合性がありおよび優れた評価者間信頼性を有することが示されている(16)。本発明者らは最近、改良Talスコアの内部検証試験を実施しており、乳幼児50名を入院中に1日に2回スコア化し、異なる経験レベルを有する小児科医17名の間で高い有意なクラス内相関係数を有した(非公開データ)。
【0387】
RSV細気管支炎について、特定の治療はまだ承認されていない。最近、いくつかの選択的RSV子ウイルス化合物が全臨床試験で特定された(25)。現在のところ、酸素、流体および鼻咽頭吸引などの支持療法のみが推奨されている(12)。本発明者らの予備的結果は、従って、NO吸入がRSV転帰の改善のための妥当なツールを提供し得ることを示唆する。本試験において示唆されるNO吸入の治療の可能性は、安全性/耐容性および複数の効能エンドポイントの両方を見ることに注力される、より大規模な二重盲検プラセボコントロール試験によってさらに試験される必要がある。
【0388】
結論として、急性細気管支炎を有する入院した乳幼児の本試験において、160ppmNOの間欠的吸入治療の安全性および耐容性が、標準的な支持療法のものと比較された。LOS>24時間の被験者のサブ群の二次診査的分析は、標準的な支持療法に対するNOの、LOSの低下および92%飽和に達するまでの時間に関する統計学的に有意な治療有効性、ならびに加速された臨床的改善を示した。本試験サンプルは小さいが、効能の結果は有望であり、LRTIにおける間欠的160ppmNO吸入の抗ウイルスの可能性を裏付ける。より大規模な試験が、ウイルス性細気管支炎における吸入NOの有利な効果を確証するために必要とされる。
【0389】
例2:抗微生物剤の能力:背景技術
微生物に対する200ppmのgNOの効果を測定するため、200ppmのgNOへの暴露に対する、これらの細菌と関連する医学的状態を有する患者から分離された細菌の応答を、臨床的に感染性である(10)10ECFU/mlの濃度にて一連の実験で試験した[Chris C. Miller, PhD thesis,ブリティッシュコロンビア大学、カナダ、2004]。各試験は少なくとも1回、各時点の最小2サンプルで実施した。すべての実験において、コントロール(空気暴露)は、最初の接種と比べて試験期間中に100%以上の生存率を有した。各gNO暴露した生物についてのCFU/mlの低下は4~6対数単位であり、200ppmのgNOの著しい殺細菌効果を示した。
【0390】
各細菌について、CFU/mlを単位とした生存曲線を時間の関数としてプロットした。各グラフは200ppmのgNOおよびコントロール(空気暴露)について細菌の生存曲線をプロットした。
【0391】
簡単に説明すると、例示的な細菌であるセラチア・マルセッセンスの細胞5×10個を試験管中の2mLの生理食塩水中に懸濁させ、窒素中の200ppmのgNOに1L/分の流速で暴露した。生存率を、生菌数計数および連続希釈によって1時間毎に培養中に残存する細菌細胞の数を決定することにより測定し、結果を図9に要約する。図9はプロットを表し、前述の背景技術の提示で説明されるように、セラチア・マルセッセンスに対する一酸化窒素の抗微生物活性を示し、かつ微生物の化学的防御機構を枯渇するのに必要とされる時間に起因すると考えられる、抗微生物活性の潜在期間を示し、ここで曲線11は200ppmNOへの暴露時間の関数としての細胞数であり、曲線12はコントロール状況であり(細菌の空気への暴露)、ポイント13は細菌を100%殺す致死用量(LD100)を示し、ポイント14は細菌集団が安定であるまたは1対数未満の低下として定められる潜在期間(LP1)を示し、ポイント15は-2.5Log10量を印しポイント16は潜在期の最後を印し、ポイント18はNOが中止された場合でさえ細菌が死に続けて回復しないポイントを印し、ポイント20に一致する現象はコロニー形成単位における50%低下の量(CFU50)を示し、一方ポイント22はCFU100を示しポイント24は1対数単位を示す。
【0392】
同様なデータが、S.アウレウス(ATCC25923)、P.アエルギノサ(ATCC27853)、MRSA、ならびにS.アウレウス、S.マルセッセンス、クレブシエラ・ニューモニエ種、S.マルトフィリア、エンテロバクター・アエロゲネス種、アシネトバクター・バウマニイ、B群連鎖球菌および大腸菌の臨床株について収集されおよびプロットされた。試験された他の微生物は、カンジダ・アルビカンス、マイコバクテリウム・スメグマチスおよびシュードモナス・アエルギノサの多剤耐性株であり、結果を後述の表4に要約する。
【0393】
表4は様々な細菌種/株についてインビトロで測定した潜在期間、ならびに微生物負荷における2.5倍低下(-2.5Log10)および微生物の根絶(LD100)が認められた期間を示す。
【0394】
例3:高スループット相乗作用スクリーニング
一酸化窒素の標的細胞への暴露によって高度な増強を示す抗微生物剤をスクリーニングするため、治療すべき特定の疾患をもたらす病原性微生物を用いて、抗微生物剤ライブラリーの高スループット相乗作用スクリーニング(HTSS)アッセイを実施する。病原性微生物を、一酸化窒素またはNO放出化合物の準阻害濃度(準MIC量)の存在下または不在下において寒天培地で増殖させた。
【0395】
ライブラリー中のくつかの抗微生物剤はNOの存在なしで抗微生物活性を示し得るが、アッセイは一酸化窒素の存在下または不存在下で阻害のゾーンを比較しながら実施される。この比較は、一酸化窒素の存在下でさらに活性になる抗微生物剤を特定することを可能にする。試験される病原性微生物の増殖動態を一酸化窒素の濃度範囲の存在下でモニタリングして、抗微生物剤の最小阻害濃度を特定する。
【0396】
抗生物質の相乗活性を厳密に確認するために使用される標準的な方法である「チェッカーボードアッセイ」(Ramon-Garcia Set.ら,AAAC,2011)を使用する。このアッセイを96ウェルプレート中で増殖する培養物で実施する。2種の試験化合物(一酸化窒素および特定した抗微生物剤)の連続濃度の二次元アレイを、対数増殖培養物についで導入する。2種の化合物の様々な比を示すウェルにおける相対的なMIC濃度に基づいた計算を使用して、薬剤の対となる組み合わせが、それらの単独の効果の合計を超える阻害効果(相乗作用)を発揮することを実証する。
【0397】
例4:治療投与計画
細菌などの呼吸器病原体と関連する、ヒト被験体における呼吸器感染は、本明細書で提示される方法を用いて、すなわち適切な抗生物質および一酸化窒素(NO)の組み合わせを用いて治療可能である。
【0398】
2群の患者を比較する:肺炎などの呼吸器感染を有し、例えば、160ppmのNOの間欠的吸入を1日に3回、約10日間を標準的な抗生物質と組み合わせて治療される患者と、同型の肺炎を有すると診断されるが標準的な抗生物質治療のみで治療される患者の群を比較する。
【0399】
NOおよび標準的な抗生物質治療の組み合わせで治療される患者は、標準的な抗生物質のみによって治療される患者と比べて、体温(より急速な正常化)、酸素消費、呼吸速度および肺機能などの臨床パラメータにおける有意な改善を示すはずである。
【0400】
NOおよび標準的な抗生物質治療の組み合わせで治療される患者は、標準的な抗生物質のみによって治療される患者と比べて、試験したパラメータに基づく総体的な臨床スコアにおける有意な改善を示すはずである。
【0401】
さらに、呼吸器細菌フローラは、病原性微生物集団の減少を伴う指示された治療によって変化するはずである。
【0402】
NOおよび標準的な抗生物質治療の組み合わせで治療される患者は、日単位での入院期間の短縮、呼吸不全のため集中治療室への入室を必要とする患者のより少ない悪化事象、および/または全般的に抗生物質の使用低下を経験するはずである。
【0403】
本文書全体を通して引用される刊行物は、本明細書によってこれらの全体が参考として組み込まれる。本発明の様々な態様が例および好ましい実施形態を参考にして先に説明されているが、本発明の範囲は前述の説明によってではなく、特許法の原則に基づいて適切に解釈される後述の請求項によって定められると認識される。
【0404】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌と関連する医学的状態を有する被験体を治療する方法に使用するための、一酸化窒素および抗生剤を含む医薬組成物であって、前記方法は、
(i)感受性化に効果的な量の一酸化窒素を前記被験体に投与すること、および
(ii)治療上効果的な量の抗生剤を前記被験体に投与することを含み、
前記抗生剤は一酸化窒素以外であり、前記抗生剤は、前記細菌に使用される場合、不活性であるか、または前記細菌は前記感受性化に効果的な量の一酸化窒素を投与する前に、前記抗生剤に対して耐性を示し、前記感受性化に効果的な量は、前記細菌に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低く、かつ前記感受性化に効果的な量は、前記細菌の細胞中の低分子量チオールを枯渇させるのに効果的な量でありかつ前記細菌を根絶しないものであり、前記感受性化に効果的な量の一酸化窒素と組み合わせて使用される前記抗生剤の治療上効果的な量は、前記細菌に対する一酸化窒素の1MICよりも低い、医薬組成物。
【請求項2】
前記感受性化に効果的な量は、前記細菌に対する一酸化窒素の1~1/10MICの範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
抗生剤耐性が前記抗生剤で被験体を治療した後に明らかにされており、前記方法は、
(i)前記抗生剤での治療を行い、前記抗生剤耐性が明らかにされた後、感受性化に効果的な量の一酸化窒素を被験体に投与すること、および
(ii)治療上効果的な量の抗生剤を被験体に投与すること、を含み、
前記抗生剤は一酸化窒素ではなく、前記一酸化窒素の感受性化に効果的な量は、前記細菌に対する一酸化窒素の治療上効果的な量よりも低く、かつ前記感受性化に効果的な量は、前記細菌の細胞中の低分子量チオールを枯渇させるのに効果的な量でありかつ前記細菌を根絶しないものであり、前記感受性化に効果的な量は、前記細菌に対する一酸化窒素の1MIC単位よりも低い、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(i)は(ii)の前に行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
(i)は(ii)と同時に行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
(ii)は(i)の前に行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記一酸化窒素は、ガス状一酸化窒素または一酸化窒素放出化合物の剤形である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記一酸化窒素は、吸入または局所投与によって投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
少なくとも1種類の医薬品として許容可能な担体をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
多部分剤形であり、前記一酸化窒素が第一部分中にあり、前記抗生剤が第二部分中にある、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記細菌が、非結核性抗酸菌(NTM)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗生剤が、アモキシシリン、アモキシシリンナトリウム、アモキシシリン三水和物、アモキシシリン-クラブラン酸カリウム組み合わせ、アズトレオナム、アジスロマイシン、アズロシリン、クロファジミン、クロキサシリン、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリン、セフジニル、セフジトレン、セフジトレンピボキシル、セフェピム、塩酸セフェピム、コリスチン、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、硫酸コリスチン、クラリスロマイシン、セフプロジル、セファクロル、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフロキシムナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム、アミカシン、硫酸アミカシン、フルクロキサシリン、フルクロキサシリンマグネシウム、フルクロキサシリンナトリウム、ドキシサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、イミペネム、レボフロキサシン、リネゾリド、ミノサイクリン、塩酸ミノサイクリン、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ナフシリン、ナフシリンナトリウム、オキサシリン、ピペラシリン、ペニシリンG、シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、エリスロマイシン、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールアセチル、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾール-トリメトプリム、タゾバクタム、タゾバクタムナトリウム、テトラサイクリン、トブラマイシン、硫酸トブラマイシン、チカルシリン、チカルシリン-クラブラン酸混合物、チカルシリン二ナトリウム、チカルシリン一ナトリウム、ゲンタマイシン、バンコマイシン、およびメチシリンのうちの1つまたは複数から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
包装材料、ならびに前記包装材料中にパッケージされた請求項1~11のいずれかに記載の医薬組成物を含む医薬キットであって、前記医薬組成物は、感受性化に効果的な量の一酸化窒素および治療上効果的な量の抗生剤を含み、前記抗生剤および前記一酸化窒素は、前記医薬キット内に個別にパッケージされ、前記医薬キットは、細菌と関連する医学的状態を治療することに関して、および/または感受性化に効果的な量の一酸化窒素を治療される被験体に併用投与する際に前記抗生剤に対して細菌を感受性化することに関して表示される取扱説明書を含む、医薬キット。