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特開2023-8912脂肪族酸アミド誘導体を含有する医薬組成物
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  • 特開-脂肪族酸アミド誘導体を含有する医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008912
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】脂肪族酸アミド誘導体を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20230111BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20230111BHJP
   C07D 413/04 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/4545
C07D413/04
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P43/00 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104196
(22)【出願日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021108402
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】相原 佳典
(72)【発明者】
【氏名】ベスナルド,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ベル,アンドリュー シモン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC51
4C063DD10
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086BC80
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA12
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZC42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】精神神経疾患の治療剤として有用な新規化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【解決手段】セロトニン5-HT2A受容体およびセロトニン5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を有する、式(1)[式中、Zは窒素原子等を表し、Yはカルボニル等を表し、mおよびnは1などを表し、R1a~R1d、R2a~R2d、R4a~R4dは水素原子等を表し、Rはアルキル等を表し、Qは所定の二環式環基を表す]で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物とする。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
Zは、窒素原子または-CR-を表し、
Yは、カルボニルまたはスルホニルを表し、
mは、1、2、3、または4を表し、
nは、0、1、2、または3を表し、
ただし、Yがスルホニルの場合、nは0ではなく、
は、水素原子、ヒドロキシ、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシを表し、
1a、R1b、R1cおよびR1dは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン、または同一もしくは異なる1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1-6アルキルを表し、
2a、R2b、R2cおよびR2dは、それぞれ独立して、R2cおよびR2dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキルおよびC1-6アルコキシからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、ここにおいて、R2aおよびR2b、または同一炭素に結合するR2cおよびR2dが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって3~6員の飽和炭素環を形成していてもよく、
は、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C3-8シクロアルキルおよびC1-6アルコキシからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)を表し、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
ただし、Yがスルホニルかつnが1の場合、R4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、Yがスルホニルかつnが2または3の場合、Yに隣接する炭素原子と結合するR4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、
環Qは、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f):
【化2】
{式中、
5a、R5b、R5c、およびR5dは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ(該アルキルおよび該アルコキシは、それぞれ独立して、同一または異なる1~3個のハロゲンで置換されていてもよい)、または同一もしくは異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよいアミノを表し、
は、水素原子、C1-6アルキル、またはC3-8シクロアルキル(該アルキルおよび該シクロアルキルは、それぞれ独立して、同一または異なる1~3個のハロゲンで置換されていてもよい)を表す}で表される基である]で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項2】
1a、R1b、R1cおよびR1dが、水素原子である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
2a、R2b、R2cおよびR2dが、水素原子である、
請求項1または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
mが、1である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
が、C1-6アルキルである、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
Zが、-CR-である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
が、水素原子である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
5a、R5b、R5c、およびR5dが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルである、
請求項1から項7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
5a、R5cおよびR5dが、水素原子である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
5bが、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルである、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
が、水素原子である、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1-6アルコキシからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)である、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
nが、0または1である、
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
Yが、カルボニルである、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
Yが、スルホニルである、
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩が、下記式のいずれかの化合物またはその製薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【化3】
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する、精神疾患または中枢神経系疾患の治療剤。
【請求項18】
精神疾患または中枢神経系疾患が、統合失調症、双極性障害、睡眠障害、自閉症スペクトラム障害、大うつ病、治療抵抗性うつ病、アルツハイマー病またはパーキンソン病に伴う神経症状または認知症である請求項17に記載の治療剤。
【請求項19】
精神疾患または中枢神経系疾患の治療剤を製造するための、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
精神疾患または中枢神経系疾患の治療に使用するための、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の医薬組成物と、自閉症スペクトラム障害・注意欠如多動症などの発達障害治療薬、抗精神病薬および統合失調症治療薬、双極性障害治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、強迫性障害治療薬、心的外傷後ストレス障害などのストレス障害治療薬、気分障害治療薬、摂食障害治療薬、不眠症・ナルコレプシー・睡眠時無呼吸症候群・概日リズム障害などの睡眠障害治療薬、性機能障害治療薬、薬物依存治療薬、アルツハイマー病などの認知症治療薬、認知症に伴う行動・心理症状治療薬、脳代謝・循環改善薬、パーキンソン病などの運動障害改善薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、抗痙攣薬、偏頭痛治療薬、麻酔薬、ならびに中枢興奮薬からなる群から選択される少なくとも一つの薬剤を組み合わせて含有する、精神疾患または中枢神経系疾患の治療剤。
【請求項22】
自閉症スペクトラム障害・注意欠如多動症などの発達障害治療薬、抗精神病薬および統合失調症治療薬、双極性障害治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、強迫性障害治療薬、心的外傷後ストレス障害などのストレス障害治療薬、気分障害治療薬、摂食障害治療薬、不眠症・ナルコレプシー・睡眠時無呼吸症候群・概日リズム障害などの睡眠障害治療薬、性機能障害治療薬、薬物依存治療薬、アルツハイマー病などの認知症治療薬、認知症に伴う行動・心理症状治療薬、脳代謝・循環改善薬、パーキンソン病などの運動障害改善薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、抗痙攣薬、偏頭痛治療薬、麻酔薬、ならびに中枢興奮薬からなる群から選択される少なくとも一つの薬剤と併用して、精神疾患または中枢神経系疾患を治療するための、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン5-HT2A受容体およびセロトニン5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を有する脂肪族酸アミド誘導体またはその製薬学的に許容される塩、および該誘導体を有効成分とする精神神経疾患の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系における主要な神経伝達物質の一つとして知られるセロトニン(5-hydroxytryptamine)(以下、「5-HT」と称することがある。)は、情動反応、認知機能をはじめとする様々な脳機能に関与することが知られている。
【0003】
5-HT受容体のサブタイプの一つである5-HT2A受容体は、Gq/11蛋白共役型受容体であり、大脳皮質、海馬、縫線核などに高発現している。5-HT2A受容体に対するアンタゴニスト活性を有する薬剤としては、抗うつ薬であるミアンセリンやミルタザピンが挙げられる。また、非定型抗精神病薬はいずれも5-HT2A受容体に対するアンタゴニスト活性を有し、統合失調症、双極性障害、大うつ病、自閉症スペクトラム障害などの治療薬として使用されている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
5-HT受容体はGs蛋白共役型受容体であり、視床下部や視床、海馬、縫線核などに幅広く発現している(非特許文献9)。5-HT受容体に対してアンタゴニスト活性を有する薬剤としては、統合失調症や双極性障害の治療薬として用いられるルラシドンや大うつ病の治療に用いられるボルチオキセチンなどが挙げられるが、選択的に5-HT受容体に対してアンタゴニスト活性を示す市販剤は存在しない。ルラシドンは統合失調症や双極性障害、ボルチオキセチンは大うつ病の治療剤として用いられている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。また、いくつかの動物モデルにおいても5-HT受容体を拮抗することで抗うつ、抗不安作用および認知機能改善作用を示すことも知られている(非特許文献6、7)。さらに、5-HT受容体欠損マウスが抗うつ作用を示すことも知られている(非特許文献8)。
【0005】
上述の通り、5-HT2A受容体および5-HT受容体に対するアンタゴニストは、それぞれ単独で様々な精神神経疾患において有用であることが示されているが、5-HT2A受容体と5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を選択的に、かつ、強力に示す薬剤の報告例はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P. Seeman著、Can. J. Psychiatry.4:27-38, 2002
【非特許文献2】C. J. Schmidt著、Life Science.56(25):2209-2222, 1995
【非特許文献3】L. Citrome著、J. Clinical Practice.65(2):189-210, 2011
【非特許文献4】YS. Woo著、Neuropsychiatric Disease and Treatment.9:1521-1529, 2013
【非特許文献5】C. Sanchez著、Pharmacology & Therapeutics.145:43-57, 2015
【非特許文献6】Bonaventure P著、J Pharmacol Exp Ther. 321:690-8, 2007
【非特許文献7】Horisawa T著、Behavioural Brain Research. 220:83-90, 2011
【非特許文献8】M. Guscott著、Neuropharmacology. 48:492-502, 2005
【非特許文献9】T W. Lovenberg著、Neuron. 11:449-458, 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、セロトニン5-HT2A受容体および5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を併せ持ち、精神神経疾患の治療剤として有用な新規化合物を含有する医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究した結果、下記式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩(以下、「本発明化合物」と称することがある。)がセロトニン5-HT2A受容体および5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を併せ持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の通りである。
〔1〕 式(1):
【化1】
[式中、
Zは、窒素原子または-CR-を表し、
Yは、カルボニルまたはスルホニルを表し、
mは、1、2、3、または4を表し、
nは、0、1、2、または3を表し、
ただし、Yがスルホニルの場合、nは0ではなく、
は、水素原子、ヒドロキシ、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシを表し、
1a、R1b、R1cおよびR1dは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン、または同一もしくは異なる1~3個のハロゲンで置換されていてもよいC1-6アルキルを表し、
2a、R2b、R2cおよびR2dは、それぞれ独立して、R2cおよびR2dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C3-8シクロアルキルおよびC1-6アルコキシからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、ここにおいて、R2aおよびR2b、または同一炭素に結合するR2cおよびR2dが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって3~6員の飽和炭素環を形成していてもよく、
は、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C3-8シクロアルキルおよびC1-6アルコキシからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)を表し、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)を表し、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
ただし、Yがスルホニルかつnが1の場合、R4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、Yがスルホニルかつnが2または3の場合、Yに隣接する炭素原子と結合するR4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、
環Qは、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f):
【化2】
{式中、
5a、R5b、R5c、およびR5dは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ(該アルキルおよび該アルコキシは、それぞれ独立して、同一または異なる1~3個のハロゲンで置換されていてもよい)、または同一もしくは異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよいアミノを表し、
は、水素原子、C1-6アルキル、またはC3-8シクロアルキル(該アルキルおよび該シクロアルキルは、それぞれ独立して、同一または異なる1~3個のハロゲンで置換されていてもよい)を表す}で表される基である]で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
【0010】
〔2〕 R1a、R1b、R1cおよびR1dが、水素原子である、
項〔1〕に記載の医薬組成物。
【0011】
〔3〕 R2a、R2b、R2cおよびR2dが、水素原子である、
項〔1〕または項〔2〕に記載の医薬組成物。
【0012】
〔4〕 mが、1である、
項〔1〕から項〔3〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0013】
〔5〕 Rが、C1-6アルキルである、
項〔1〕から項〔4〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0014】
〔6〕 Zが、-CR-である、
項〔1〕から項〔5〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0015】
〔7〕 Rが、水素原子である、
項〔1〕から項〔6〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0016】
〔8〕 R5a、R5b、R5c、およびR5dが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルである、
項〔1〕から項〔7〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0017】
〔9〕 R5a、R5cおよびR5dが、水素原子である、
項〔1〕から項〔8〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0018】
〔10〕 R5bが、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルである、
項〔1〕から項〔9〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0019】
〔11〕 Rが、水素原子である、
項〔1〕から項〔10〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0020】
〔12〕 R4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1-6アルコキシからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)である、
項〔1〕から項〔11〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0021】
〔13〕 nが、0または1である、
項〔1〕から項〔12〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0022】
〔14〕 Yが、カルボニルである、
項〔1〕から項〔13〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0023】
〔15〕 Yが、スルホニルである、
項〔1〕から項〔13〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0024】
〔16〕 式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩が、下記式のいずれかの化合物またはその製薬学的に許容される塩である、項〔1〕に記載の医薬組成物。
【化3】
【0025】
〔17〕 項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【0026】
〔18〕 項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する、精神疾患または中枢神経系疾患の治療剤。
【0027】
〔19〕 精神疾患または中枢神経系疾患が、統合失調症、双極性障害、睡眠障害、自閉症スペクトラム障害、大うつ病、治療抵抗性うつ病、アルツハイマー病またはパーキンソン病に伴う神経症状または認知症である項〔18〕に記載の治療剤。
【0028】
〔20〕 治療が必要な患者に、治療上の有効量の項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の化合物またはその製薬学的に許容される塩を投与することを含む、精神疾患または中枢神経系疾患を治療するための方法。
【0029】
〔21〕 精神疾患または中枢神経系疾患の治療剤を製造するための、項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【0030】
〔22〕 精神疾患または中枢神経系疾患の治療に使用するための、項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0031】
〔23〕 項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の医薬組成物と、自閉症スペクトラム障害・注意欠如多動症などの発達障害治療薬、抗精神病薬および統合失調症治療薬、双極性障害治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、強迫性障害治療薬、心的外傷後ストレス障害などのストレス障害治療薬、気分障害治療薬、摂食障害治療薬、不眠症・ナルコレプシー・睡眠時無呼吸症候群・概日リズム障害などの睡眠障害治療薬、性機能障害治療薬、薬物依存治療薬、アルツハイマー病などの認知症治療薬、認知症に伴う行動・心理症状治療薬、脳代謝・循環改善薬、パーキンソン病などの運動障害改善薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、抗痙攣薬、偏頭痛治療薬、麻酔薬、ならびに中枢興奮薬からなる群から選択される少なくとも一つの薬剤を組み合わせて含有する、精神疾患または中枢神経系疾患の治療剤。
【0032】
〔24〕 自閉症スペクトラム障害・注意欠如多動症などの発達障害治療薬、抗精神病薬および統合失調症治療薬、双極性障害治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、強迫性障害治療薬、心的外傷後ストレス障害などのストレス障害治療薬、気分障害治療薬、摂食障害治療薬、不眠症・ナルコレプシー・睡眠時無呼吸症候群・概日リズム障害などの睡眠障害治療薬、性機能障害治療薬、薬物依存治療薬、アルツハイマー病などの認知症治療薬、認知症に伴う行動・心理症状治療薬、脳代謝・循環改善薬、パーキンソン病などの運動障害改善薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、抗痙攣薬、偏頭痛治療薬、麻酔薬、ならびに中枢興奮薬からなる群から選択される少なくとも一つの薬剤と併用して、精神疾患または中枢神経系疾患を治療するための、項〔1〕から項〔16〕のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する治療剤。
【0033】
〔25〕 実施例17、77、78、79、または80の化合物の結晶であって、各実施例で測定された粉末XRDのピークから選択される4個以上(好ましくは10個以上)の2θ±0.2を有する粉末XRDパターンを特徴とする結晶。
【発明の効果】
【0034】
本発明化合物は、5-HT2A受容体および5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を有する。したがって、本発明化合物は、精神神経疾患および中枢神経系疾患の治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例17の化合物の恐怖条件付け試験(試験例6)の結果を示す図である。
図2】実施例17の化合物のラット脳内グルタミン酸遊離量測定(試験例7)の結果を示す図である。
図3】実施例78の化合物の粉末XRDの測定チャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書において「置換基」の定義における炭素の数を、例えば、「C1-6」等と表記する場合もある。具体的には、「C1-6アルキル」なる表記は、炭素数1から6のアルキル基と同義である。
【0037】
「ハロゲン」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。好ましくは、フッ素原子または塩素原子が挙げられる。
【0038】
「C1-6アルキル」とは、炭素原子数が1~6の直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基を意味する。「C1-6アルキル」として、好ましくは「C1-4アルキル」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキル」が挙げられる。「C1-3アルキル」の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチルなどが挙げられる。「C1-4アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ブチル、1、1-ジメチルエチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピルなどが挙げられる。「C1-6アルキル」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキル」の具体例として挙げたものに加え、ペンチル、1、1-ジメチルプロピル、1、2-ジメチルプロピル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
本発明において、「アルキルがオキソで置換される」とは、アルキルを構成するいずれかの炭素原子がケト体(C=O)を形成していることを意味する。
【0039】
「C3-8シクロアルキル」とは、炭素原子数3~8の環状の飽和炭化水素基を意味し、一部不飽和結合を有するものおよび架橋された構造のものも含まれる。「C3-8シクロアルキル」として、好ましくは「C3-6シクロアルキル」が挙げられる。「C3-6シクロアルキル」の具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。「C3-8シクロアルキル」の具体例としては、例えば、前記「C3-6シクロアルキル」の具体例として挙げたものに加え、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。
【0040】
「C1-6アルコキシ」とは「C1-6アルキルオキシ」と同義であり、「C1-6アルキル」部分は、前記「C1-6アルキル」と同義である。「C1-6アルコキシ」としては、好ましくは「C1-4アルコキシ」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルコキシ」が挙げられる。「C1-3アルコキシ」の具体例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシなどが挙げられる。「C1-4アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルコキシ」の具体例として挙げたものに加え、ブトキシ、1,1-ジメチルエトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシなどが挙げられる。「C1-6アルコキシ」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルコキシ」の具体例として挙げたものに加え、ペンチロキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、4-メチルペンチロキシ、3-メチルペンチロキシ、2-メチルペンチロキシ、1-メチルペンチロキシ、ヘキシロキシなどが挙げられる。
【0041】
「C1-6アルキルエステル」とは、エステル(-COOR’)のR’部位が、上記「C1-6アルキル」であるエステルを意味する。「C1-6アルキルエステル」として、好ましくは「C1-4アルキルエステル」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキルエステル」が挙げられる。「C1-3アルキルエステル」の具体例としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、1-メチルエチルエステルなどが挙げられる。「C1-4アルキルエステル」の具体例としては、例えば、前記「C1-3アルキルエステル」の具体例として挙げたものに加え、ブチルエステル、1、1-ジメチルエチルエステル、1-メチルプロピルエステル、2-メチルプロピルエステルなどが挙げられる。「C1-6アルキルエステル」の具体例としては、例えば、前記「C1-4アルキルエステル」の具体例として挙げたものに加え、ペンチルエステル、1、1-ジメチルプロピルエステル、1、2-ジメチルプロピルエステル、1-メチルブチルエステル、2-メチルブチルエステル、4-メチルペンチルエステル、3-メチルペンチルエステル、2-メチルペンチルエステル、1-メチルペンチルエステル、ヘキシルエステルなどが挙げられる。
【0042】
「C2-6アルキニル」とは、炭素原子数が2~6の直鎖状または分枝鎖状の三重結合を含む不飽和炭化水素基を意味する。C2-6アルキニルとして、好ましくは「C2-4アルキニル」が挙げられ、より好ましくは「C2-3アルキニル」が挙げられる。「C2-3アルキニル」の具体例としては、例えば、エチニル、プロピニルなどが挙げられる。「C2-4アルキニル」の具体例としては、例えば、前記「C2-3アルキニル」の具体例として挙げたものに加え、ブチニルなどが挙げられる。「C2-6アルキニル」の具体例としては、例えば、前記「C2-4アルキニル」の具体例として挙げたものに加え、ペンチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。
【0043】
「3~6員の飽和炭素環」とは、炭素原子数3~6の環状の飽和炭化水素を意味し、一部不飽和結合を有するものおよび架橋された構造のものを含む。「3~6員の飽和炭素環」として、好ましくは「5または6員の単環式の飽和炭素環」が挙げられる。「5または6員の単環式の飽和炭素環」の具体例としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。「3~6員の飽和炭素環」の具体例としては、例えば、前記「5または6員の単環式の飽和炭素環」の具体例として挙げたものに加え、シクロプロパン、シクロブタンなどが挙げられる。
【0044】
「4~6員の飽和複素環基」とは、炭素原子以外に、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から独立して選択される1または2個の原子を含む、4~6個の原子で構成される飽和環を意味し、一部不飽和結合を有するものおよび架橋された構造のものを含む。「4~6員の飽和複素環基」として、好ましくは「5または6員の単環式の飽和複素環基」が挙げられる。「5員または6員の単環式の飽和複素環基」の具体例としては、例えば、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、オキソイミダゾリジニル、ジオキソイミダゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、テトラヒドロフラニルテトラヒドロピラニルなどが挙げられる。「4~6員の飽和複素環」としては、例えば、前記「5員または6員の単環式の飽和複素環基」の具体例として挙げたものに加え、オキセタニル、アゼチジニルなどが挙げられる。
【0045】
式(1)で表される化合物において、Z、Y、m、n、R、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R、R4a、R4b、R4c、R4d、Q、R5a、R5b、R5c、R5d、およびRの好ましいものは以下のとおりであるが、本発明の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
【0046】
Zの1態様としては、-CR-が挙げられる。また、Zの別の1態様としては、窒素原子が挙げられる。
【0047】
Yの1態様としては、カルボニルが挙げられる。また、Yの別の1態様としては、スルホニルが挙げられる。
【0048】
mの好ましい態様としては、1または2が挙げられる。より好ましい態様としては、1が挙げられる。
【0049】
nの好ましい態様としては、0、1、または2が挙げられる。より好ましい態様としては、0または1が挙げられる。特に好ましい態様としては、1が挙げられる。
【0050】
の好ましい態様としては、水素原子、ヒドロキシ、またはC1-6アルキルが挙げられる。より好ましい態様としては、水素原子またはC1-3アルキルが挙げられる。更に好ましい態様としては、水素原子、エチル、またはメチルが挙げられる。最も好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
【0051】
1a、R1b、R1c、およびR1dの好ましい態様としては、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ、ハロゲン、またはC1-6アルキルが挙げられる。より好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン、またはC1-3アルキルが挙げられる。更に好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、エチル、またはメチルが挙げられる。特に好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、またはメチルが挙げられる。最も好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
【0052】
2a、R2b、R2c、およびR2dの好ましい態様としては、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルが挙げられる。より好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン、またはC1-3アルキルが挙げられる。更に好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、エチル、またはメチルが挙げられる。特に好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、またはメチルが挙げられる。最も好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
【0053】
の好ましい態様としては、C1-6アルキルが挙げられる。より好ましい態様としては、C1-3アルキルが挙げられる。更に好ましい態様としては、エチルまたはメチルが挙げられる。特に好ましい態様としては、エチルが挙げられる。
【0054】
4a、R4b、R4c、およびR4dの好ましい態様としては、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルキニル、または同一もしくは異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよいアミノが挙げられる。より好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル、または同一もしくは異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよいアミノが挙げられる。更に好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルが挙げられる。特に好ましい態様としては、水素原子、またはC1-6アルキルが挙げられる。特に好ましい態様としては、水素原子、メチル、またはメトキシメチルが挙げられる。最も好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
【0055】
Qの好ましい態様としては、(2a)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f)が挙げられる。より好ましい態様としては、(2a)、(2d)、または(2e)が挙げられる。特に好ましい態様としては、(2a)が挙げられる。
【0056】
5a、R5b、R5c、およびR5dの好ましい態様としては、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、または同一もしくは異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよいアミノが挙げられる。より好ましい態様としては、水素原子、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシが挙げられる。更に好ましい態様としては、水素原子、フッ素原子、または塩素原子が挙げられる。特に好ましい態様としては、水素原子またはフッ素原子が挙げられる。
【0057】
の好ましい態様としては、水素原子、C1-6アルキル、またはC3-8シクロアルキルが挙げられる。より好ましい態様としては、水素原子またはC1-6アルキルが挙げられる。更に好ましい態様としては、水素原子またはC1-3アルキルが挙げられる。特に好ましい態様としては、水素原子が挙げられる。
【0058】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(A)が挙げられる。
(A)
Zが、窒素原子または-CR-であり、
Yが、カルボニルまたはスルホニルであり、
mが、1または2であり、
nが、0、1、2、または3であり、
ただし、Yがスルホニルの場合、nは0ではなく、
が、水素原子またはC1-6アルキルであり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルであり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、それぞれ独立して、R2cおよびR2dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルであり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
ただし、Yがスルホニルかつnが1の場合、R4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、Yがスルホニルかつnが2または3の場合、Yに隣接する炭素原子と結合するR4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、
環Qが、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f):
【化4】
{式中、
5a、R5b、R5c、およびR5dが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルであり、
が、水素原子またはC1-6アルキルである}で表される基である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0059】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(B)が挙げられる。
(B)
Zが、窒素原子または-CR-であり、
Yが、カルボニルであり、
mが、1または2であり、
nが、0、1、2、または3であり、
が、水素原子またはC1-6アルキルであり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルであり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、それぞれ独立して、R2cおよびR2dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルであり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)でありし、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
環Qが、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f):
【化5】
{式中、
5a、R5b、R5c、およびR5dが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルであり、
が、水素原子またはC1-6アルキルである}で表される基である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0060】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(C)が挙げられる。
(C)
Zが、窒素原子または-CR-であり、
Yが、スルホニルであり、
mが、1または2であり、
nが、1、2、または3であり、
が、水素原子またはC1-6アルキルであり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルであり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、それぞれ独立して、R2cおよびR2dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルであり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
ただし、nが1の場合、R4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、nが2または3の場合、Yに隣接する炭素原子と結合するR4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、
環Qが、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)または(2f):
【化6】
{式中、
5a、R5b、R5c、およびR5dが、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、またはC1-6アルキルであり、
が、水素原子またはC1-6アルキルである}で表される基である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0061】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(D)が挙げられる。
(D)
Zが、-CR-であり、
Yが、カルボニルであり、
mが、1であり、
nが、0または1であり、
が、水素原子であり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、水素原子であり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、水素原子であり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
環Qが、(2a)である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0062】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(E)が挙げられる。
(E)
Zが、-CR-であり、
Yが、カルボニルであり、
mが、1であり、
nが、0または1であり、
が、水素原子であり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、それぞれ独立して、水素原子であり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、それぞれ独立して、水素原子であり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
環Qが、(2d)である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0063】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(F)が挙げられる。
(F)
Zが、-CR-であり、
Yが、カルボニルであり、
mが、1であり、
nが、0または1であり、
が、水素原子であり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、水素原子であり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、水素原子であり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
環Qが、(2e)で表ある、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0064】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(G)が挙げられる。
(G)
Zが、-CR-であり、
Yが、スルホニルであり、
mが、1であり、
nが、1であり、
が、水素原子であり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、水素原子であり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、水素原子であり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dは、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
ただし、R4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、
環Qが、(2a)である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0065】
式(1)で表される化合物の1態様としては、以下の(H)が挙げられる。
(H)
Zが、-CR-であり、
Yが、スルホニルであり、
mが、1であり、
nが、1であり、
が、水素原子であり、
1a、R1b、R1cおよびR1dが、水素原子であり、
2a、R2b、R2cおよびR2dが、水素原子であり、
が、C1-6アルキルであり、
4a、R4b、R4cおよびR4dが、それぞれ独立して、R4cおよびR4dが複数ある場合はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル(該アルキルは、ハロゲン、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルエステル、および同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキル(該アルキルは、オキソで置換されていてもよい)で置換されていてもよいアミノからなる群より選択される、同一または異なる1~5個の置換基で置換されていてもよい)、C2-6アルキニル、またはアミノ(該アミノは、同一または異なる1もしくは2個のC1-6アルキルで置換されていてもよい)であり、ここにおいて、R4a、R4b、R4cおよびR4dのいずれかの2つが、それぞれ独立して、上記のC1-6アルキルである場合、これらが結合する炭素原子と一緒になって、該C1-6アルキルが置換基を有する場合は、その置換基も環の構成元素として含んでもよく、3~6員の飽和炭素環または4~6員の飽和複素環を形成していてもよく、
ただし、R4cまたはR4dのいずれか一方は水素原子であり、
環Qが、(2e)である、化合物またはその製薬学的に許容される塩。
【0066】
式(1)で表される化合物は、少なくとも一つの不斉炭素原子を有する場合もあり得る。従って、本発明化合物は、式(1)で表される化合物のラセミ体のみならず、これらの化合物の光学活性体も包含する。式(1)で表される化合物が、2個以上の不斉炭素原子を有する場合、立体異性を生じる場合がある。従って、本発明化合物は、これらの化合物の立体異性体およびその混合物も包含する。
【0067】
また、式(1)で表される化合物のいずれか1つまたは2つ以上のHをH(D)に変換した重水素変換体も式(1)で表される化合物に包含される。
【0068】
式(1)で表される化合物およびその製薬学的に許容される塩は、水和物および/または溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物またはエタノール溶媒和物等の溶媒和物も本発明化合物に含まれる。さらに、本発明化合物はあらゆる態様の結晶形のものも包含している。
【0069】
製薬学的に許容される塩としては、式(1)で表される化合物が酸性基を有する場合は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;亜鉛塩等の無機金属塩;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノ酸等の有機塩基塩等が挙げられる。
【0070】
式(1)で表される化合物が塩基性基を有する場合は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、オロト酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0071】
以下に、本発明化合物の製造法について、例を挙げて説明するが、本発明はもとよりこれらに限定されるものではない。
【0072】
製造法
本発明化合物は、下記に示す製造法および公知の合成方法を組み合わせた方法により合成される。
反応式中の化合物はそれぞれ塩を形成している場合も含み、該塩としては、例えば、式(1)で表される化合物の塩と同様のものが挙げられる。なお、これらの反応は単なる例示であり、有機合成に習熟している者の知識に基づき、適宜、他の方法で本発明化合物を製造することもできる。
【0073】
下記において説明する各製造法において、具体的に保護基の使用を明示していない場合であっても、保護が必要な官能基が存在する場合は、当該官能基を必要に応じて保護し、反応終了後または一連の反応を行った後に脱保護することにより目的物を得ることもある。
【0074】
保護基としては、文献(T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, 3rd Ed., John Wiley and Sons, inc., New York (1999))などに記載されている通常の保護基を用いることができる。より具体的には、アミノ基の保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、アセチル、ベンジル等が挙げられる。また、ヒドロキシ基の保護としては、例えば、トリアルキルシリル、アセチル、ベンジル等が挙げられる。
【0075】
保護基の導入および脱離は、有機合成化学で常用される方法(例えば、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, 3rd Ed., John Wiley and Sons, inc., New York (1999)に記載されている方法等)またはそれに準じた方法により行うことができる。
【0076】
製造法1
式(1)で表される化合物のうち、式(1a)で表される化合物は、例えば、下記に示す方法によって製造することができる。
【化7】
〔式中、Z、m、n、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R、R4a、R4b、R4c、R4d、および環Qは、前記〔1〕と同義である。〕
【0077】
化合物(1a)は、化合物(4)を、適当な不活性溶媒中、適当な縮合剤の存在下、式(5)で表されるカルボン酸と反応させることにより製造することができる。当該反応は適当な塩基の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される縮合剤、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0078】
縮合剤の具体例としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソピルカルボジイミド(DIPC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(WSC)、ベンゾトリアゾール-1-イル-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロリン化物塩(BOP)、ジフェニルホスホニルジアミド(DPPA)、N,N-カルボニルジミイダゾール(CDI)、ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン化物塩(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン化物塩(HATU)などが挙げられる。
必要に応じて、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)等の添加剤を加えてもよい。
【0079】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0080】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ピリジン等の塩基性溶媒;もしくはこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0081】
製造法2
式(4)で表される化合物のうち、式(4a)で表される化合物は、化合物は、例えば、下記に示す方法によって製造することができる。
【化8】
〔式中、Z、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R、および環Qは、前記〔1〕と同義であり、lは、0、1、2、または3を表す。〕
【0082】
化合物(8)は、化合物(6)と式(7)で表されるアルデヒドおよび適当な還元剤を用い、適当な不活性溶媒中で還元的アミノ化反応することにより製造することができる。当該反応は必要に応じて適当な塩基または適当な酸の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される還元剤、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0083】
還元剤の具体例としては、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の複合水素化合物;ボラン錯体(ボラン-ジメチルスルフィド錯体またはボラン-テトラヒドロフラン錯体等)等が挙げられる。
【0084】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0085】
酸の具体例としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。
【0086】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、水;アセトニトリル;、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0087】
化合物(4a)は、適当な不活性溶媒中で、化合物(8)を適当な酸で処理することにより製造することができる。反応温度は通常-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される酸、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0088】
酸の具体例としては、例えば、トリフルオロ酢酸等の有機酸;塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。
【0089】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0090】
製造法3
式(8)で表される化合物は、例えば、下記に示す方法によって製造することができる。
【化9】
〔式中、Z、m、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R、および環Qは、前記〔1〕と同義であり、LGは、脱離基(例えば、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、置換スルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基等)等)を表す。〕
【0091】
化合物(8)は、適当な不活性溶媒中で化合物(6)を式(9)で表されるアルキル化剤と反応させることにより製造することができる。当該反応は、必要に応じ適当な塩基の存在下、さらには適当な相関移動触媒の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲の温度である。反応時間は、反応温度、使用される塩基、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分間~48時間である。
【0092】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0093】
相関移動触媒の具体例としては、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0094】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0095】
化合物(11)は、適当な不活性溶媒中で化合物(6)を式(10)で表されるアルキル化剤と反応させることにより製造することができる。当該反応は、必要に応じ適当な塩基の存在下、さらには適当な相関移動触媒の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲の温度である。反応時間は、反応温度、使用される塩基、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分間~48時間である。
【0096】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0097】
相関移動触媒の具体例としては、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0098】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0099】
化合物(8)は、適当な不活性溶媒中で化合物(11)を式(12)で表されるアルキル化剤と反応させることにより製造することができる。当該反応は、必要に応じ適当な塩基の存在下、さらには適当な相関移動触媒の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲の温度である。反応時間は、反応温度、使用される塩基、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分間~48時間である。
【0100】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0101】
相関移動触媒の具体例としては、例えば、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0102】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0103】
製造法4
式(1)で表される化合物のうち、式(1f)で表せられる化合物は、例えば、下記に示す方法によって製造することができる。
【化10】
〔式中、Z、m、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c、R2d、R、R4a、R4b、R4c、および環Qは、前記〔1〕と同義である。〕
【0104】
化合物(14)は、化合物(4)を、適当な不活性溶媒中、式(13)で表される塩化スルホニルと反応させることにより製造することができる。当該反応はさらに適当な塩基の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0105】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0106】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ピリジン等の塩基性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0107】
化合物(1f)は、化合物(14)を、適当な不活性溶媒中、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物と反応させることにより製造することができる。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0108】
不活性溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0109】
製造法5
式(6)で表される化合物のうち、式(6a)で表される化合物は、例えば、下記に示す方法によって製造することができる。
【化11】
〔式中、R5a、R5b、R5c、およびR5dは、前記〔1〕と同義であり、Aはヨウ素原子、臭素原子、または塩素原子を表す。〕
【0110】
化合物(15)は、1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-カルボキシリックアシッドを、適当な縮合剤の存在下、適当な不活性溶媒中、N,O-ジメチルヒドロキシアミンあるいはその塩酸塩と反応させることにより製造することができる。当該反応は適当な塩基の存在下で行ってもよい。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される縮合剤、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0111】
また、化合物(15)は、N,O-ジメチルヒドロキシアミンあるいはその塩を、適当な塩基の存在下、適当な不活性溶媒中、1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-カルボキシリックアシッドから誘導される酸ハロゲン化物または酸無水物等と反応させることによっても製造することができる。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される縮合剤、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0112】
縮合剤の具体例としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソピルカルボジイミド(DIPC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(WSC)、ベンゾトリアゾール-1-イル-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロリン化物塩(BOP)、ジフェニルホスホニルジアミド(DPPA)、N,N-カルボニルジミイダゾール(CDI)、ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン化物塩(HBTU)等が挙げられる。必要に応じて、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)等の添加剤を加えて当該反応を行うことができる。
【0113】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウム tert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0114】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;ピリジン等の塩基性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0115】
化合物(17)は、適当な不活性溶媒中で化合物(16)をn-ブチルリチウム等の有機リチウムで処理することで発生されるリチオ化物と化合物(15)を反応させることにより製造することができる。反応温度は通常約-78℃から用いた溶媒の沸点までの範囲の温度である。反応時間は、反応温度、使用される試薬、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分間~48時間である。
【0116】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0117】
化合物(18)は、化合物(17)をヒドロキシルアミンあるいはその塩と、必要に応じて適当な塩基存在下で反応させることにより製造することができる。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲の温度である。反応時間は、反応温度、使用される塩基、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分間~48時間である。
【0118】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド;酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0119】
溶媒の具体例としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン等の非プロトン性極性溶媒;水;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0120】
化合物(19)は、適当な不活性溶媒中で化合物(18)を適当な塩基で処理することにより製造することができる。反応温度は通常約-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲の温度である。反応時間は、反応温度、使用される塩基、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分間~48時間である。
【0121】
塩基の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基;ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0122】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0123】
化合物(6a)は、適当な不活性溶媒中で、化合物(19)を適当な酸で処理することにより製造することができる。反応温度は通常-20℃から用いた溶媒の沸点までの範囲である。反応時間は、反応温度、使用される酸、原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常10分から48時間である。
【0124】
不活性溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒;およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0125】
酸の具体例としては、例えば、塩酸や硫酸等の無機酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸等が挙げられる。
【0126】
上記の製造法を適宜組み合わせることにより、所望の位置に所望の置換基を有する本発明化合物を得ることができる。上記製造法における中間体および生成物の単離、精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することもできる。
【0127】
上記の製造法における原料化合物または中間体は、反応条件等により、例えば、塩酸塩等の塩の形態で存在し得るものもあるが、そのまま、または遊離の形で使用することができる。原料化合物または中間体が塩の形態で得られ、原料化合物または中間体を遊離の形で使用または取得したい場合には、これらを適当な溶媒に溶解または懸濁し、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液等の塩基等で中和することにより遊離の形へと変換できる。
【0128】
式(1)で表される化合物またはその製薬学的に許容される塩の中には、ケトエノール体のような互変異性体、位置異性体、幾何異性体または光学異性体のような異性体が存在し得るものもあるが、これらを含め可能な全ての異性体および該異性体のいかなる比率における混合物も本発明に包含される。
【0129】
また、光学異性体は前記製造法の適切な工程で、光学活性カラムを用いた方法、分別結晶化法などの公知の分離工程を実施することで分離することができる。また、出発原料として光学活性体を使用することもできる。
【0130】
式(1)で表される化合物の塩を取得したい場合は、式(1)で表される化合物の塩が得られる場合はそのまま精製すればよく、また式(1)で表される化合物が遊離の形で得られる場合は、式(1)で表される化合物を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて塩を形成させればよい。
【0131】
本発明化合物は、5-HT2A受容体に対するアンタゴニスト活性と5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を併せ持ち、既存の精神疾患治療薬とは異なる作用機序を有することから、種々の精神疾患において薬物治療の新たな選択肢を提供することができる。すなわち、本発明化合物は精神疾患の治療に有効である。また、本発明化合物は中枢神経系疾患にも有効である。
【0132】
有効性が期待される精神疾患または中枢神経系疾患としては、例えば、国際疾病分類第10版(ICD-10)におけるF00-F09:症状性を含む器質性精神障害、F10-F19:精神作用物質使用による精神および行動の障害、F20-F29:統合失調症,統合失調症型障害および妄想性障害、F30-F39:気分[感情]障害、F40-F48:神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害、F51:非器質性睡眠障害、F52:性機能不全,器質性障害または疾病によらないもの、F84:広汎性発達障害、F90-F98:小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害、G20-G26:錐体外路障害および異常運動、G30-G32:神経系のその他の変性疾患、G47:睡眠障害等が挙げられる。
F00-F09:症状性を含む器質性精神障害には、例えば、アルツハイマー病や血管性認知症、レビー小体型認知症、パーキンソン病の認知症や脳損傷などの疾患に伴う精神障害や脳機能不全および身体疾患による他の精神障害などが含まれる。
F10-F19:精神作用物質使用による精神および行動の障害には、種々の物質使用による振戦せん妄、精神病性障害や健忘症候群などが含まれる。
F20-F29:統合失調症,統合失調症型障害および妄想性障害には、妄想型統合失調症、単純統合失調症、妄想性障害などが含まれる。
F30-F39:気分[感情]障害には、例えば、躁病エピソードや双極性感情障害、うつ病エピソードなどが含まれる。
F40-F48:神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害には、例えば、恐怖症性不安障害や強迫性障害、身体表現性障害などが含まれる。
F51:非器質性睡眠障害には、例えば、非器質性不眠症や睡眠性遊行症、悪夢などが含まれる。
F52:性機能不全,器質性障害または疾病によらないものには、例えば、性欲欠如または性欲喪失、詳細不明の性機能障害などが含まれる。
F84:広汎性発達障害には、例えば、自閉症や精神遅滞および常同運動に関連した過動性障害などが含まれる。
F90-F98:多動性障害小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害には、例えば、多動性障害、行為障害や行為および情緒の混合性障害などが含まれる。
G20-G26:錐体外路障害および異常運動には、例えば、パーキンソン病や続発性パーキンソン症候群などが含まれる。
G30-G32:神経系のその他の変性疾患には、例えば、アルツハイマー病、前頭側頭葉型認知症、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症や老人性脳変性などが含まれる。
G47:睡眠障害には、例えば、睡眠の導入および維持の障害[不眠症]や睡眠・覚醒スケジュール障害、ナルコレプシーおよびカタプレキシーなどが含まれる。
本発明化合物は、これらの疾患に伴う種々の症状(精神病症状、睡眠障害、うつ症状、不安症状、認知機能障害など)の治療または再発予防に有用である。
【0133】
中枢神経系における主要な神経伝達物質の一つとして知られるセロトニン(5-hydroxytryptamine:5-HT)は、情動反応、認知機能をはじめとする様々な脳機能に関与することが知られている。5-HT受容体のサブタイプの一つである5-HT2A受容体は、大脳皮質、海馬、縫線核などに高発現している。また、前頭前皮質に発現する5-HT2A受容体は腹側被蓋野のドパミン神経経路を正に制御することが知られている(非特許文献2)。すなわち、前頭前皮質の5-HT2A受容体を阻害することで精神病症状に対して抑制作用を示すと考えられる。
【0134】
また、5-HT受容体は、床下部や視床、海馬、縫線核などに幅広く発現しており、哺乳類の概日リズムの調節に関与している(非特許文献9)。概日リズムの破壊は、特に、うつ病、季節性情動障害、睡眠障害、交代勤務症候群および時差ぼけを含む、多くのCNS障害に関係していることが分かっている。また、5-HT受容体に対してアンタゴニスト活性を有する薬剤としては、統合失調症や双極性障害の治療薬として用いられるルラシドン、大うつ病の治療に用いられるボルチオキセチンなどが知られているが、選択的に5-HT受容体に対してアンタゴニスト活性を示す薬剤は存在しない。
【0135】
また、いくつかの動物モデルにおいて、5-HT受容体を拮抗することで抗うつ、抗不安作用および認知機能改善作用を示すことも知られている(非特許文献6、7)
【0136】
以上の薬理学的観点から5-HT2A受容体を阻害すると同時に、5-HT受容体を阻害することで、うつ、睡眠障害、精神病症状などの様々な精神神経疾患において有用であることが期待される。また、5-HT2A受容体と5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を選択的に、かつ、強力に示す薬剤の報告例はない。
【0137】
本発明化合物は、5-HT2A受容体と5-HT受容体に対して強い結合親和性を持ち(試験例1)、5-HT2A受容体と5-HT受容体に対してアンタゴニスト活性を有する。本発明の好ましい態様としては、5-HT2A受容体および5-HT受容体への結合親和性が、D受容体の結合親和性と比較して100倍以上強いため、D拮抗作用に起因すると考えられる錐体外路症状や高プロラクチン血症といった副作用が発現しない血中濃度で、5-HT2A受容体アンタゴニスト性および5-HT受容体アンタゴニスト性に基づいた薬理作用を発揮することができる。
【0138】
また、本発明化合物の好ましい態様においては、QT延長による不整脈の発現指標であるhERGチャネル阻害濃度と、期待する薬理作用の発現濃度とが乖離しているため(試験例5)、心血管系に対する影響が小さいことが期待できる。
【0139】
薬剤における消失半減期(T1/2)は、その効果を持続させるための服薬回数を決定する要素である。短いT1/2に伴う1日複数回の投薬は、飲み忘れや飲み残しに繋がり、適切な薬物治療の妨げになると考えられる。また、投薬回数が増えることで副作用発現率の上昇、もしくは高用量投与への制限に伴って忍容性が低下することが懸念される。以上の観点から、長いT1/2を達成することで、上記した懸念の小さい長時間作用型薬剤を創出し、服薬する患者の負担軽減に繋がることが期待できる。
本発明化合物の好ましい態様においては、予測ヒト消失半減期(T1/2)が8時間以上と長いことから(試験例4)、薬効がヒトの生体内において長い持続性を有し、薬物治療患者の服薬アドヒアランスを改善させ、投薬時に高い忍容性を示すことが期待される。
【0140】
本発明化合物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口的に投与する場合、通常用いられる投与形態で投与することができる。非経口的には、局所投与剤、注射剤、経皮剤、経鼻剤等の形で投与することができる。経口剤または直腸投与剤としては、例えば、カプセル、錠剤、ピル、散剤、カシェ剤、座剤、液剤等が挙げられる。注射剤としては、例えば、無菌の溶液または懸濁液等が挙げられる。局所投与剤としては、例えば、クリーム、軟膏、ロ-ション、経皮剤(通常のパッチ剤、マトリクス剤)等が挙げられる。
【0141】
上記の剤形は通常の方法で、薬学的に許容される賦形剤、添加剤とともに製剤される。薬学的に許容される賦形剤、添加剤としては、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤等が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロ-ス、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。カプセルは、本発明化合物を薬学的に許容される担体と共に中に入れることにより製剤できる。本発明化合物は薬学的に許容される賦形剤と共に混合し、または賦形剤なしにカプセルの中に入れることができる。カシェ剤も同様の方法で製造できる。
【0142】
注射用液剤としては、溶液、懸濁液、乳剤等が挙げられる。例えば、水溶液、水-プロピレングリコール溶液等が挙げられる。液剤は、水を含んでもよい、ポリエチレングリコールまたは/およびプロピレングリコールの溶液の形で製造することもできる。経口投与に適切な液剤は、本発明化合物を水に加え、着色剤、香料、安定化剤、甘味剤、溶解剤、増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。また、経口投与に適切な液剤は、本発明化合物を分散剤とともに水に加え、粘重にすることによっても製造することができる。増粘剤としては、例えば、薬学的に許容される天然または合成ガム、レジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたは公知の懸濁化剤等が挙げられる。
【0143】
用量は、個々の化合物により、また患者の疾患、年齢、体重、性別、症状、投与経路等により変化するが、通常は成人(体重50kg)に対して、本発明化合物を、0.1~1000mg/日、好ましくは1~300mg/日を1日1回または2ないし3回に分けて投与する。また、数日~数週に1回投与することもできる。
【0144】
本発明化合物は、その効果の増強および/または副作用の軽減を目的として、他の薬物と併用して用いることができる。例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤等の抗不安薬と併用することができる。以下、本発明化合物と併用し得る薬物を、併用薬剤と略記する。
【0145】
併用薬剤の具体例としては、例えば、自閉症スペクトラム障害・注意欠如多動症などの発達障害治療薬、抗精神病薬および統合失調症治療薬、双極性障害治療薬、抗うつ薬、抗不安薬、強迫性障害治療薬、心的外傷後ストレス障害などのストレス障害治療薬、気分障害治療薬、摂食障害治療薬、不眠症・ナルコレプシー・睡眠時無呼吸症候群・概日リズム障害などの睡眠障害治療薬、性機能障害治療薬、薬物依存治療薬、アルツハイマー病などの認知症治療薬、認知症に伴う行動・心理症状治療薬、脳代謝・循環改善薬、パーキンソン病などの運動障害改善薬、鎮痛薬、抗てんかん薬、抗痙攣薬、偏頭痛治療薬、麻酔薬、中枢興奮薬などが挙げられる。
【0146】
本発明化合物および併用薬剤の投与期間は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、本発明化合物と併用薬剤の合剤としてもよい。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01~100重量部用いればよい。また、その副作用抑制の目的として、制吐剤、睡眠導入剤、抗痙攣薬などの薬剤(併用薬剤)と組み合わせて用いることができる。
【実施例0147】
以下に本発明を、参考例、実施例および試験例により、更に具体的に説明するが、本発明はもとよりこれらに限定されるものではない。尚、以下の参考例および実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。なお、記載の簡略化のために略語を使用することもあるが、これらの略号は前記記載と同義である。
化合物の同定は、プロトン核磁気共鳴吸収スペクトル(H-NMR)、LC-MS等を用いて行った。なお、参考例および実施例におけるアミノクロマトグラフィーは、山善株式会社製のアミノカラムを用いた。LC-MSは下表に示す種々の条件を用いて測定を行った。リテンションタイム(R.T.)は、LC-MS測定におけるマススペクトルピークが現れた時間を表す。
【表1】


【0148】
粉末X線回折測定(粉末XRD)は、下表に示す種々の条件を用いて測定を行った。
【表2】


【0149】
示差走査熱量測定(DSC)は、下表に示す種々の条件を用いて行った。
【表3】


【0150】
本明細書において次の略語を使用することもある。
参考例および実施例のNMRデータにおいては、以下の略語を使用する。
Me:メチル
DMF:N、N-ジメチルホルムアミド
THF:テトラヒドロフラン
tert-:ターシャリー
CDCl:重クロロホルム
DMSO-d:重ジメチルスルホキシド
【0151】
プロトン核磁気共鳴スペクトルは、JEOL社製FT-NMR測定装置(300MHzまたは400MHz)を用いて測定した。ケミカルシフト値はδ値(ppm)にて記載した。NMRに用いられる記号としては、sは一重線、dは二重線、ddは二重の二重線、dtは二重の三重線、tは三重線、qは四重線、mは多重線、brは幅広い、brsは幅広い一重線、およびJは結合定数を意味する。
【0152】
実施例1
(2R)-N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化12】
参考例1の化合物(20.0 mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(0.5 mL)に、D-乳酸(6.18 mg)、トリエチルアミン(20.8 mg)とヘキサフルオロリン酸 2-(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウム(33.8 mg)を加えた。室温で16時間攪拌後、反応混合物に水(4.0 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣を高速液体クロマトグラフィー(カラム;SEMIPREPARATIVE C-18 column,分離条件;アセトニトリル/トリフルオロ酢酸:水/トリフルオロ酢酸)で分離精製し、MP-Carbonate resinで脱塩処理することで、表題化合物(9.73 mg)を得た。
LC‐MS:R.T. = 1.433 min ObsMS = 364 [M+1]
【0153】
実施例2
N-エチル-N-{2-[4-(5-フルオロ-1H-インダゾール-1-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-3-ヒドロキシプロパンアミド
【化13】
参考例2の化合物(50.0 mg)のジクロロメタン懸濁液(1.0 mL)に、トリエチルアミン(0.077 mL)、30% 3-ヒドロキシプロピオン酸水溶液(0.046 mL)とヘキサフルオロリン酸 2-(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウム(67.9 mg)を加えた。室温で2時間攪拌後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(43.2 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.89-7.86 (1H, m), 7.37-7.30 (1H, m), 7.29-7.24 (1H, m), 7.11-7.04 (1H, m), 4.44-4.27 (1H, m), 3.87-3.77 (2H, m), 3.72-3.57 (1H, m), 3.51-3.42 (1H, m), 3.42-3.27 (3H, m), 3.17-2.96 (2H, m), 2.59-2.47 (4H, m), 2.36-2.17 (4H, m), 2.05-1.89 (2H, m), 1.18-1.05 (3H, m).
【0154】
実施例3
(2R)-N-エチル-N-{2-[4-(5-フルオロ-1H-インダゾール-1-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化14】
参考例2の化合物(50.0 mg)のジクロロメタン懸濁液(1.0 mL)に、トリエチルアミン(0.077 mL)、D-乳酸(14.9 mg)とヘキサフルオロリン酸 2-(1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルイソウロニウム(67.9 mg)を加えた。室温で4時間攪拌後、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(13.9 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.93 (1H, s), 7.42-7.28 (2H, m), 7.18-7.08 (1H, m), 4.50-4.20 (2H, m), 3.80-3.62 (1H, m), 3.59-2.88 (4H, m), 2.68-2.53 (1H, m), 2.44-2.20 (3H, m), 2.11-1.94 (1H, m), 1.67-1.44 (5H, m), 1.37-1.10 (6H, m).
【0155】
実施例4~15
実施例3に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物より、実施例4~15の化合物を得た。
【表4】




【0156】
実施例16
(2S)-N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化15】
参考例1の化合物(400 mg)のテトラヒドロフラン懸濁液(1.1 mL)に、トリエチルアミン(0.763 mL)、L-乳酸(0.098 mL)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(0.501 mg)を加えた。室温で4時間攪拌後、反応混合物にメタノール(6.0 mL)、2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(3.0 mL)と水(1.0 mL)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。その後、反応混合物に水(30 mL)を加え、クロロホルム(30mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(279 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.72-7.56 (1H, m), 7.17 (1H, dd, J = 8.5, 1.8 Hz), 6.99 (1H, td, J = 8.8, 1.8 Hz), 4.48-4.32 (1H, m), 3.75-3.59 (1H, m), 3.52-2.86 (7H, m), 2.58-2.44 (2H, m), 2.32-2.11 (2H, m), 2.09-1.87 (4H, m), 1.32-1.25 (3H, m), 1.17 (2H, t, J = 7.0 Hz), 1.09 (1H, t, J = 7.0 Hz).
【0157】
実施例17
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-3-ヒドロキシプロパンアミド
【化16】
参考例1の化合物(3.97 g)のアセトニトリル懸濁液(50 mL)に、トリエチルアミン(6.08 mL)、3-ヒドロキシプロピオン酸(4.91 g)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(6.22 g)を加えた。室温で2時間攪拌後、反応混合物にメタノール(50 mL)と炭酸セシウム(14.2 g)を加え、70℃で2時間攪拌した。その後、反応混合物をろ過した後、濃縮した。残渣にクロロホルム(50 mL)を加え、不溶物をろ別し、ろ液を濃縮した。濃縮残渣をアミノシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチルおよびクロロホルム/メタノール)で精製後、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(2.97 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD) δ: 7.93-7.84 (1H, m), 7.42-7.33 (1H, m), 7.20-7.12 (1H, m), 3.88-3.79 (2H, m), 3.62-3.37 (4H, m), 3.23-3.04 (4H, m), 2.69-2.54 (4H, m), 2.42-2.26 (2H, m), 2.15-1.95 (4H, m), 1.29-1.07 (3H, m).
粉末XRD(°, 2θ±0.2)
8.32, 9.72, 13.30, 13.62, 13.83, 14.24, 16.77, 17.81, 19.89, 19.95, 21.58, 22.02, 24.03, 26.77, 26.84(これらのうち、特徴的な10個のピークは 8.32, 9.72, 13.83, 14.24, 16.77, 19.89, 19.95, 21.58, 22.02, 24.03、更に特徴的な4個のピークは 8.32, 9.72, 13.83, 16.77であった。)
DSC
Enthalpy (normalized): 71.71 J/g
Onset x: 67.55℃
【0158】
実施例18
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシ-3-メトキシプロパンアミド
【化17】
参考例1の化合物(70.0 mg)のテトラヒドロフラン懸濁液(1.9 mL)に、トリエチルアミン(0.134 mL)、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピオン酸(27.7 mg)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(88.0 mg)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(51.7 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.78-7.62 (1H, m), 7.24-7.19 (1H, m), 7.03 (1H, td, J = 8.9, 2.2 Hz), 4.58-4.47 (1H, m), 3.82-2.89 (13H, m), 2.64-2.48 (2H, m), 2.39-1.96 (6H, m), 1.26-1.08 (3H, m).
【0159】
実施例19
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1H-インダゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化18】
参考例6の化合物(400 mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(4.0 mL)にジイソプロピルエチルアミン(0.577 mL)、DL-乳酸(0.082 mL)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(628 mg)を加えた。室温で1時間攪拌後、反応混合物に2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(3.0 mL)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。その後、反応混合物に水(10 mL)を加え、クロロホルム(5.0 mL×3回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(217 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 10.01-9.79 (1H, m), 7.74-7.63 (1H, m), 7.06 (1H, dd, J = 9.1, 1.8 Hz), 6.88 (1H, t, J = 7.9 Hz), 4.52-4.37 (1H, m), 3.88-3.74 (2H, m), 3.74-3.59 (2H, m), 3.58-3.14 (3H, m), 3.11-2.93 (3H, m), 2.65-2.49 (2H, m), 2.36-1.95 (5H, m), 1.38-1.30 (3H, m), 1.26-1.10 (3H, m).
【0160】
実施例20
(2S)-N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1H-インドール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化19】
参考例7の化合物(30.0 mg)のテトラヒドロフラン懸濁液(0.83 mL)に、トリエチルアミン(0.0575 mL)、L-乳酸(8.95 mg)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(37.8 mg)を加えた。室温で2時間攪拌後、反応混合物にメタノール(0.8 mL)と2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(0.4 mL)を加え、さらに、室温で30分間攪拌した。反応混合物を濃縮後、クロロホルム(10 mL)を加え、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(24.3 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.01 (1H, s), 7.45 (1H, dd, J = 8.5, 5.5 Hz), 6.97 (1H, dd, J = 9.8, 2.4 Hz), 6.87 (1H, s), 6.82-6.77 (1H, m), 4.47-4.32 (1H, m), 3.77-2.87 (6H, m), 2.79-2.68 (1H, m), 2.60-2.44 (2H, m), 2.30-2.13 (2H, m), 2.06-1.67 (4H, m), 1.33-1.25 (3H, m), 1.22-1.06 (3H, m).
【0161】
実施例21
(2S)-N-エチル-N-{2-[4-(5-フルオロ-1H-インダゾール-1-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化20】
参考例2の化合物(400 mg)のテトラヒドロフラン懸濁液(4.0 mL)に、トリエチルアミン(0.768 mL)、L-乳酸(161 mg)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(786 mg)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物に15%水酸化ナトリウム水溶液(4.0 mL)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。その後、反応混合物がpH 7になるまで濃塩酸を加え、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(269 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.88 (1H, s), 7.38-7.24 (2H, m), 7.12-7.04 (1H, m), 4.48-4.29 (2H, m), 3.77-3.56 (2H, m), 3.50-2.93 (5H, m), 2.72-2.48 (2H, m), 2.38-2.18 (3H, m), 2.12-1.88 (2H, m), 1.32-1.25 (3H, m), 1.23-1.06 (3H, m).
【0162】
実施例22
N-エチル-2-ヒドロキシ-N-{2-[4-(1H-インドール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}プロパンアミド
【化21】
参考例8の化合物(300 mg)のテトラヒドロフラン懸濁液(8.7 mL)に、トリエチルアミン(0.606 mL)、DL-乳酸(94.0 mg)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(398 mg)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物にメタノール(6.0 mL)と2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(3.0 mL)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。その後、反応混合物を濃縮後、残渣にクロロホルム(30 mL)を加え、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(258 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.93-7.85 (1H, m), 7.57 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.29 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.12 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.03 (1H, t, J = 7.0 Hz), 6.91 (1H, s), 4.47-4.33 (1H, m), 3.80-3.08 (4H, m), 3.05-2.87 (2H, m), 2.83-2.73 (1H, m), 2.59-2.43 (2H, m), 2.30-2.13 (2H, m), 2.06-1.93 (2H, m), 1.83-1.66 (2H, m), 1.29 (3H, t, J = 6.4 Hz), 1.21-1.06 (3H, m).
【0163】
実施例23
(2S)-N-エチル-2-ヒドロキシ-N-{2-[4-(1H-インドール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}プロパンアミド
【化22】
参考例8の化合物(300 mg)のテトラヒドロフラン懸濁液(8.7 mL)に、トリエチルアミン(0.606 mL)、L-乳酸(94.0 mg)とヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(398 mg)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物にメタノール(6.0 mL)と2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(3.0 mL)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。その後、反応混合物を濃縮後、残渣にクロロホルム(30 mL)を加え、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(258 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 8.06-7.92 (1H, m), 7.61 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.35 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.17 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.08 (1H, t, J = 7.6 Hz), 6.99-6.94 (1H, m), 4.51-4.36 (1H, m), 3.82-1.74 (16H, m), 1.34 (3H, t, J = 6.1 Hz), 1.26-1.11 (3H, m).
【0164】
実施例24~50
実施例23に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物より、実施例24~50の化合物を得た。
【表5】



【0165】
実施例51
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシエタン-1-スルホンアミド
【化23】
参考例23の化合物(636 mg)のテトラヒドロフラン溶液(20 mL)に、10% 水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(17.3 m)を加えた。60℃で2時間攪拌後、反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製後、さらに、アミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(330 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.79 (1H, dd, J = 8.9, 5.2 Hz), 7.22 (1H, dd, J = 8.5, 2.4 Hz), 7.04 (1H, td, J = 8.9, 2.2 Hz), 5.94 (1H, br s), 4.03-3.95 (2H, m), 3.60-3.53 (2H, m), 3.33-3.24 (4H, m), 3.21-3.09 (3H, m), 2.59-2.52 (2H, m), 2.31-2.13 (4H, m), 2.11-2.00 (2H, m), 1.25 (3H, t, J = 7.0 Hz).
【0166】
実施例52~64
実施例51に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物より、実施例52~64の化合物を得た。
【表6】


【0167】
実施例65
3-アミノ-N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化24】
3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-ヒドロキシプロピオン酸(40.6 mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(2.0 mL)に、ヘキサフルオロリン酸 O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(75.0 mg)を加えた。室温で1時間攪拌後、トリエチルアミン(0.053 mL)と参考例1の化合物(60.0 mg)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応混合物に水(10 mL)を加え、クロロホルム/メタノール(10 mL×6回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製した。続いて得られた化合物(50 mg)に4 mol/L 塩酸-酢酸エチル(2.0 mL)を加え、室温で1時間攪拌後、反応混合物を濃縮した。濃縮残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(37.0 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.77-7.58 (1H, m), 7.20 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.08-6.91 (1H, m), 4.76-4.24 (1H, m), 3.86-2.69 (9H, m), 2.69-2.41 (4H, m), 2.41-1.74 (7H, m), 1.35-0.89 (3H, m).
【0168】
実施例66~70
実施例65に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物より、実施例66~70の化合物を得た。
【表7】



【0169】
実施例71
3-アセトアミド-N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-2-ヒドロキシプロパンアミド
【化25】
実施例65の化合物(20.0 mg)のテトラヒドロフラン溶液(2.0 mL)に無水酢酸(0.00598 mL)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、反応混合物に2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(0.1 mL)を加え、さらに室温で10分間攪拌した。反応混合物を濃縮後、アミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(10.1 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.77-7.55 (1H, m), 7.19-7.14 (1H, m), 7.05-6.97 (1H, m), 6.19-6.01 (1H, m), 4.49-4.34 (1H, m), 4.03-3.47 (4H, m), 3.47-2.84 (6H, m), 2.72-2.48 (2H, m), 2.43-2.19 (2H, m), 2.16-1.97 (4H, m), 1.96-1.90 (3H, m), 1.24-1.06 (3H, m).
【0170】
実施例72~74
実施例71に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物より、実施例72~74の化合物を得た。
【表8】


【0171】
実施例75
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-4-ヒドロキシ-1-メチルピロリジン-3-カルボキサミド
【化26】
実施例66の化合物(10.0 mg)のメタノール溶液(0.5 mL)に、37%ホルムアルデヒド水溶液(0.002 mL)、シアノホウ素化水素ナトリウム(1.09 mg)と酢酸(0.003 mL)を加え、室温で16時間攪拌した。その後、反応混合物に水(10 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×2回)で抽出し、濃縮した。濃縮残渣を高速液体クロマトグラフィー(カラム;semipreparative C-18 column,分離条件;アセトニトリル/トリフルオロ酢酸:水/トリフルオロ酢酸)で分離精製し、MP-Carbonate resinで脱塩処理することで、表題化合物(6.88 mg)を得た。
LC‐MS:R.T. = 1.083 min ObsMS = 419 [M+1]
【0172】
実施例76
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-4-ヒドロキシ-1-メチルピペリジン-3-カルボキサミド
【化27】
実施例75と同様の手法により、実施例67の化合物から表題化合物を得た。
LC‐MS:R.T. = 1.092 min ObsMS = 433 [M+1]
【0173】
実施例77
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-3-ヒドロキシプロパンアミド オロト酸塩
実施例17で得た化合物(30 mg)のメタノール溶液(0.4 mL)にオロト酸(14.4 mg)を加え、60℃で1時間攪拌した。その後、反応混合物に酢酸エチル(2.0 mL)を加えた。室温で1時間攪拌後、析出した固体をろ取することで表題化合物(27.3 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ: 11.02 (1H, s), 9.94 (1H, brs), 8.03 (1H, dd, J = 8.8, 5.2 Hz), 7.74-7.68 (1H, m), 7.35-7.27 (1H, m), 5.79 (1H, d, J = 1.8 Hz), 4.53 (1H, brs), 3.65 (2H, t, J = 6.7 Hz), 3.62-3.49 (3H, m), 3.48-3.19 (6H, m), 3.18-2.62 (4H, m), 2.28-2.13 (2H, m), 2.13-1.91 (2H, m), 1.12 (2H, t, J = 7.0 Hz), 1.02 (1H, t, J = 7.0 Hz).
粉末XRD(°, 2θ±0.2)
4.87, 7.24, 15.27, 15.75, 16.02, 16.39, 16.73, 17.62, 19.51, 20.04, 21.24, 22.05, 22.34, 24.23, 24.80(これらのうち、特徴的な10個のピークは 4.87, 7.24, 15.27, 15.75, 16.02, 17.62, 19.51, 20.04, 21.24, 22.05、更に特徴的な4個のピークは 4.87, 19.51, 20.04, 21.24であった。)
DSC
Enthalpy (normalized): 62.81 J/g
Onset x: 157.09℃
【0174】
実施例78
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-3-ヒドロキシプロパンアミド 臭化水素酸塩のフォームA
実施例17で得た化合物(6.03 g)のアセトニトリル溶液(77 mL)に、10-20% HBr-EtOH(14.1 g)を滴下し、室温で1時間攪拌後、固体の析出を確認した。混合物を80℃で攪拌し、析出した固体が完全に溶解したことを確認後、1時間攪拌した。その後、徐々に冷却し室温で12時間攪拌した。析出した固体をろ取し、アセトニトリル(10 mL)で洗浄後、乾燥し白色固体(7.0 g)を得た。得られた白色固体(7.0 g)とテトラヒドロフラン(15 mL)の混合物を80℃で3.5時間攪拌した。その後、徐々に冷却し室温で12時間攪拌後、固体をろ取し、テトラヒドロフラン(10 mL)で洗浄後、乾燥し、表題化合物(6.20 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ: 9.48 (0.2H, brs), 9.19 (0.8H, brs), 8.11-7.99 (1H, m), 7.78-7.70 (1H, m), 7.40-7.30 (1H, m), 4.53 (1H, brs), 3.78-3.56 (6H, m), 3.55-3.09 (8H, m), 2.40-2.18 (3H, m), 2.15-1.97 (2H, m), 1.19-0.97 (3H, m).
粉末XRD(°, 2θ±0.2)
4.48, 8.98, 12.40, 13.63, 15.23, 16.35, 17.07, 17.88, 18.06, 21.19, 23.13, 23.83, 24.48, 25.22, 25.98(これらのうち、特徴的な10個のピークは 4.48, 12.40, 15.23, 17.07, 17.88, 21.19, 23.13, 24.48, 25.22, 25.98、更に特徴的な4個のピークは 12.40, 15.23, 17.07, 21.19であった。)
DSC
Enthalpy (normalized): 82.83 J/g
Onset x: 163.64℃
【0175】
実施例79
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-3-ヒドロキシプロパンアミド 臭化水素酸塩のフォームB
実施例17で得た化合物(100 mg)のアセトニトリル溶液(2.0 mL)に、10-20% HBr-EtOH(0.2 mL)を滴下した。室温で1時間攪拌後、析出した固体をろ取することで表題化合物(67.0 mg)を得た。
粉末XRD(°, 2θ±0.2)
7.25, 7.65, 9.90, 11.17, 12.48, 15.34, 15.71, 22.36, 23.36, 23.74, 24.62, 25.05, 25.18, 25.26, 29.36(これらのうち、特徴的な10個のピークは 7.25, 7.65, 9.90, 15.34, 15.71, 23.36, 24.62, 25.05, 25.18, 25.26、更に特徴的な4個のピークは 7.25, 7.65, 9.90, 15.34であった。)
DSC
Enthalpy (normalized): 86.51 J/g
Onset x: 164.04℃
【0176】
実施例80
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}-3-ヒドロキシプロパンアミド トシル酸塩
実施例17で得た化合物(66.7 g)のアセトン溶液(200 mL)に、p-トルエンスルホン酸一水和物(41.9 g)のアセトン溶液(150 mL)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌後、析出した固体をろ取し、アセトン(60 mL)で洗浄後、乾燥し、白色固体(78.8 g)を得た。得た白色固体(78.8 g)、アセトン(608 mL)と水(33.4 mL)の混合物を70℃で攪拌し、白色固体が完全に溶解したことを確認後、徐々に冷却し室温で12時間攪拌した。0℃で1時間攪拌した後、得られた固体をろ取し、0℃に冷やした5%水-アセトン混合溶媒(70 mL)で洗浄し、乾燥することで表題化合物(69.4 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ: 9.39-9.00 (1H, m), 8.08-7.99 (1H, m), 7.77-7.71 (1H, m), 7.46 (2H, d, J = 7.9 Hz), 7.39-7.30 (1H, m), 7.10 (2H, d, J = 7.9 Hz), 4.53 (1H, brs), 3.76-3.56 (6H, m), 3.54-3.11 (8H, m), 2.38-2.17 (6H, m), 2.12-1.96 (2H, m), 1.16-0.98 (3H, m).
粉末XRD(°, 2θ±0.2)
6.87, 7.03, 9.64, 13.74, 15.19, 15.37, 15.68, 16.22, 19.82, 21.60, 21.67, 22.10, 23.15, 23.88, 27.67(これらのうち、特徴的な10個のピークは 7.03, 9.64, 15.19, 15.37, 15.68, 16.22, 21.60, 21.67, 23.15, 23.88、更に特徴的な4個のピークは 7.03, 9.64, 15.19, 15.68であった。)
DSC
Enthalpy (normalized): 99.47 J/g
Onset x: 162.26℃
【0177】
参考例1
N-エチル-2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エタン-1-アミン 二塩酸塩
【化28】
6-フルオロ-3-(4-ピペリジニル)-1,2-ベンゾイソキサゾール(5.78 g)のクロロホルム溶液(131 mL)に、tert-ブチルエチル(2-オキソエチル)カーバメイト(4.91 g)とトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(11.1 g)を加え、室温で5時間攪拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)を加え、クロロホルム(100 mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製した。得られた生成物のクロロホルム溶液(131 mL)に4 mol/L 塩酸-酢酸エチル(60 mL)を加え、室温で2時間攪拌した。析出した固体をろ取し、酢酸エチル(20 mL×2回)で洗浄後、乾燥し、表題化合物(6.24 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ: 9.31 (2H, brs), 8.18 (1H, dd, J = 8.5, 5.5 Hz), 7.74 (1H, dd, J = 8.9, 2.1 Hz), 7.35 (1H, ddd, J = 9.0, 9.0, 2.2 Hz), 3.81-3.72 (2H, m), 3.55-3.46 (5H, m), 3.28-3.15 (2H, m), 3.08-2.97 (2H, m), 2.43-2.23 (4H, m), 1.25 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0178】
参考例2~13
参考例1に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物あるいは試薬より、参考例2~13の化合物を得た。
【表9】


【0179】
参考例14
6-フルオロ-5-メチル-3-(ピペリジン-4-イル)-1,2-ベンゾイソオキサゾール 一塩酸塩
【化29】
a)tert-ブチル 4-[メトキシ(メチル)カルバモイル]ピペリジン-1-カルボキシレート(化合物IN-1-1)の製造
1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-カルボキシリックアシッド(5.00 g)、N,O-ジメチルヒドロキシアミン塩酸塩(3.19 g)、N1-((エチルイミノ)メチレン)-N3,N3-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン塩酸塩(5.02 g)、トリエチルアミン(4.41 g)とN,N-ジメチルホルムアミド(100 mL)の混合物を室温で1.5時間攪拌した。その後、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液で2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して濃縮し、表題化合物(4.52 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.03-4.24 (2H, m), 3.72 (3H, s), 3.19 (3H, s), 2.70-2.86 (3H, m), 1.63-1.76 (4H, m), 1.46 (9H, s).
【0180】
b)tert-ブチル 4-(2,4-ジフルオロ-5-メチルベンゾイル)ピペリジン-1-カルボキシレート(化合物IN-1-2)の製造
1-ブロモ-2,4-ジフルオロ-5-メチルベンゼン(2.28 g)のテトラヒドロフラン溶液(36 mL)に-78℃で、1.63 mol/L n-ブチルリチウム/ヘキサン(7.43 mL)を3分間で滴下した。-78℃で1時間攪拌後、化合物IN-1-1(1.50 g)を加え、-78℃で2.5時間攪拌した。その後、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で分離精製し、表題化合物(2.01 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.17-7.25 (1H, m), 6.80-6.87 (1H, m), 1.83-1.92 (2H, m), 1.59-1.69 (2H, m), 1.45 (9H, s).
【0181】
c)tert-ブチル 4-(6-フルオロ-5-メチル-1,2-ベンゾオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-カルボキシレート(化合物IN-1-3)の製造
化合物IN-1-2(731 mg)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(599 mg)、酢酸ナトリウム(707 mg)とエタノール(10 mL)の混合物を60℃で4時間攪拌した。その後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で分離精製した。得られた生成物(335 mg)、炭酸セシウム(615 mg)とアセトニトリル(9.0 mL)の混合物を封管中130℃で3.5時間攪拌した。その後、反応混合物をろ過し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で分離精製し、表題化合物(90.8 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.47 (1H, d, J = 7.1 Hz), 7.21 (1H, d, J = 9.0 Hz), 4.11-4.36 (2H, m), 3.16-3.26 (1H, m), 2.89-3.03 (2H, m), 2.38 (3H, d, J = 1.7 Hz), 2.01-2.10 (2H, m), 1.87-1.99 (2H, m).
【0182】
d)6-フルオロ-5-メチル-3-(ピペリジン-4-イル)-1,2-ベンゾイソオキサゾール 一塩酸塩(参考例14)の製造
化合物IN-1-3(131 mg)のジクロロメタン溶液(1.0 mL)に4 mol/L 塩酸/酢酸エチル(1.0 mL)を加え、室温で1.5時間攪拌した。その後、反応混合物を濃縮し、表題化合物(114 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.30 (1H, d, J = 7.3 Hz), 7.11 (1H, s), 7.06 (1H, d, J = 9.1 Hz), 4.12-4.04 (2H, m), 3.09-3.01 (1H, m), 2.84-2.75 (2H, m), 2.22 (3H, d, J = 1.8 Hz), 1.93-1.86 (2H, m), 1.84-1.71 (2H, m).
【0183】
参考例15
5-メチル-3-(ピペリジン-4-イル)-1,2-ベンゾイソオキサゾール 一塩酸塩
【化30】
参考例14と同様の手法により、1-フルオロ-2-ヨード-4-メチルベンゼンから表題化合物を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.48-7.43 (2H, m), 7.38-7.34 (1H, m), 4.29-4.20 (2H, m), 3.28-3.18 (1H, m), 3.02-2.92 (2H, m), 2.48 (3H, s), 2.11-2.03 (2H, m), 2.03-1.90 (2H, m).
【0184】
参考例16
N-(シクロプロピルメチル)-2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エタン-1-アミン
【化31】
2-(4-(6-フルオロベンゾ[d]イソキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル)エタン-1-アミン(50.0 mg)のクロロホルム溶液(2.0mL)に、シクロプロパンカルボアルデヒド(16.0 mg)を加え、室温で30分間攪拌した。その後、反応混合物に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(60.4 mg)を加えた。室温で1時間攪拌後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)を加え、クロロホルム(30 mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮し表題化合物(26.0 mg)を得た。
LC‐MS:R.T. = 1.250 min ObsMS = 318 [M+1]
【0185】
参考例17
N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}プロパン-2-アミン
【化32】
参考例16と同様の手法により、アセトンから表題化合物を得た。
LC‐MS:R.T. = 1.176 min ObsMS = 306 [M+1]
【0186】
参考例18
({2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}アミノ)アセトニトリル
【化33】
55%水素化ナトリウム(7.92 mg)のN,N-ジメチルホルムアミド懸濁液(2.0 mL)に、参考例20の化合物(60.0 mg)を加え、室温で30分間攪拌後、反応混合物に、2-ヨードアセトニトリル(41.3 mg)を加えた。室温で1時間攪拌後、反応混合物に、水(30 mL)を加え、クロロホルム(30 mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣に4 mol/L 塩酸/酢酸エチル(3.0 mL)を加え、室温で1時間攪拌後、反応混合物を濃縮した。濃縮残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で分離精製し、表題化合物(25.0 mg)を得た。
LC‐MS:R.T. = 0.530 min ObsMS = 303 [M+1]
【0187】
参考例19
N-エチル-3-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]プロパン-1-アミン 二塩酸塩
【化34】
参考例18と同様の手法により、参考例21の化合物から表題化合物を得た。
【0188】
参考例20
tert-ブチル {2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}カルバメート
【化35】
6-フルオロ-3-(ピペリジン-4-イル)ベンゾ[d]イソキサゾール(2.89 g)のクロロホルム溶液(60 mL)に、tert-ブチル(2-オキソエチル)カーバメイト(2.30 g)を加え、室温で30分間攪拌した。水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(3.34 g)を加え、室温で3時間攪拌後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)を加え、クロロホルム(100 mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(3.98 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.67 (1H, dd, J = 8.8, 5.2 Hz), 7.24-7.20 (1H, m), 7.04 (1H, ddd, J = 8.8, 8.8, 2.0 Hz), 5.02 (1H, s), 3.29-3.20 (2H, m), 3.10-2.98 (3H, m), 2.53-2.46 (2H, m), 2.22-2.13 (2H, m), 2.09-2.00 (4H, m), 1.45 (9H, s).
【0189】
参考例21
tert-ブチル {3-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]プロピル}カルバメート
【化36】
6-フルオロ-3-(ピペリジン-4-イル)ベンゾ[d]イソキサゾール(2.00 g)のアセトニトリル溶液(50 mL)に、水(12.5 mL)、tert-ブチル(3-ブロモプロピル)カーバメイト(2.59 g)と炭酸カリウム(3.76 g)を加えた。60℃で3.5時間攪拌後、反応混合物に水(200 mL)を加え、酢酸エチル(200 mL×2回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(3.46 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.67 (1H, dd, J = 8.8, 5.2 Hz), 7.22 (1H, dd, J = 8.5, 2.4 Hz), 7.02 (1H, ddd, J = 8.8, 8.8, 2.2 Hz), 5.50 (1H, s), 3.23-3.17 (2H, m), 3.12-3.00 (3H, m), 2.46 (2H, t, J = 6.7 Hz), 2.16-1.99 (6H, m), 1.72-1.64 (2H, m), 1.43 (9H, s).
【0190】
参考例22
N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}プロパン-1-アミン
【化37】
a)3-[1-(2-クロロエチル)ピペリジン-4-イル]-6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール(化合物IN-2-1)の製造
6-フルオロ-3-(ピペリジン-4-イル)ベンゾ[d]イソキサゾール(3.00 g)のテトラヒドロフラン溶液(25 mL)に、水(6.3 mL)、水酸化カリウム(1.68 g)と1-ブロモ-2-クロロエタン(5.65 mL)を加え、室温で24時間攪拌した。反応混合物に水(15 mL)を加え、クロロホルム(10 mL×3回)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過して濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/メタノール)で分離精製し、表題化合物(1.94 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.70 (1H, dd, J = 8.5, 5.3 Hz), 7.25 (1H, dd, J = 8.9, 2.5 Hz), 7.06 (1H, ddd, J = 8.8, 8.8, 2.1 Hz), 3.64 (2H, t, J = 6.9 Hz), 3.01-3.15 (3H, m), 2.81 (2H, t, J = 6.9 Hz), 2.24-2.39 (2H, m), 2.02-2.18 (4H, m).
【0191】
b)N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}プロパン-1-アミン(参考例22)の製造
化合物IN-2-1(80.0 mg)のアセトニトリル溶液(1.4 mL)に、n-プロピルアミン(0.0349 mL)、炭酸カリウム(117 mg)とヨウ化カリウム(9.39 mg)を加え、90℃で4時間攪拌した。反応混合物をろ過後、濃縮し、濃縮残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(50.9 mg)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.66 (1H, dd, J = 8.8, 5.2 Hz), 7.22 (1H, dd, J = 8.5, 2.4 Hz), 7.03 (1H, ddd, J = 8.8, 8.8, 2.2 Hz), 3.10-2.99 (3H, m), 2.72 (2H, t, J = 6.1 Hz), 2.58 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.53 (2H, t, J = 6.4 Hz), 2.21-1.99 (6H, m), 1.56-1.46 (2H, m), 0.91 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0192】
参考例23
N-エチル-N-{2-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]エチル}エテンスルホンアミド
【化38】
参考例1の化合物(1.00 g)のジクロロメタン溶液(40 mL)に、トリエチルアミン(2.39 mL)と2-クロロエタンスルホニルクロライド(0.433 mL)を加え、室温で4時間攪拌した。反応混合物を濃縮後、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で分離精製し、表題化合物(0.670 g)を得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.65 (1H, dd, J = 8.5, 4.9 Hz), 7.22 (1H, dd, J = 8.5, 2.4 Hz), 7.04 (1H, ddd, J = 8.9, 8.9, 2.2 Hz), 6.54 (1H, dd, J = 16.5, 9.8 Hz), 6.20 (1H, d, J = 16.5 Hz), 5.89 (1H, d, J = 9.8 Hz), 3.31 (2H, t, J = 7.0 Hz), 3.25 (2H, q, J = 7.1 Hz), 3.11-3.00 (3H, m), 2.61 (2H, t, J = 6.7 Hz), 2.32-2.17 (2H, m), 2.10-1.97 (4H, m), 1.20 (3H, t, J = 7.3 Hz).
【0193】
参考例24~36
参考例23に記載の方法に準じ、対応する参考例の化合物より、参考例24~36の化合物を得た。
【表10】


【0194】
参考例37
3-[4-(1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペリジン-1-イル]-N-エチルプロパン-1-アミン 二塩酸塩
【化39】
参考例18および参考例21と同様の手法により、3-(ピペリジン-4-イル)ベンゾ[d]イソキサゾールから表題化合物を得た。
【0195】
参考例38
N-エチル-3-[4-(6-フルオロ-1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル)ピペラジン-1-イル]プロパン-1-アミン 二塩酸塩
【化40】
参考例18および参考例21と同様の手法により、6-フルオロ-3-(ピペラジン-1-イル)ベンゾ[d]イソキサゾール 一塩酸塩から表題化合物を得た。
【0196】
試験例1:ヒト型5-HT 2A 受容体、ヒト型5-HT 受容体、およびヒト型D 受容体に対する結合活性評価
本発明化合物のヒト型5-HT2A受容体、ヒト型5-HT受容体、およびヒト型D受容体に対する結合親和性を、以下の方法により測定した。
ヒト型5-HT2A受容体、ヒト型5-HT受容体、およびヒト型D受容体を発現させたCHO細胞膜画分はパーキンエルマー社より購入した。結合評価試験においては、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物、緩衝液にて希釈した各種受容体膜標本、および5-HT2A受容体については[3H]Ketanserin、5-HT受容体については[3H]SB-269970、D受容体については[3H]Spiperone(以上、全てパーキンエルマー社製)を混合し、それぞれ室温にて60分インキュベーションした。受容体への非特異的結合は、それぞれ10μmol/L 8-OH-DPAT 10μmol/L Mianserin、10μmol/L Spiperoneの存在下での競合結合試験より求めた。液体シンチレーションカウンター(パーキンエルマー社製)を用いて受容体に結合した放射活性を測定した後、50%阻害濃度を算出し、飽和結合試験より算出した解離定数、および基質濃度からKi値を評価し、結合親和性として使用した。結果を下表に示す。
【表11】






【0197】
試験例2:ヒト型5-HT 2A 受容体、ヒト型5-HT 受容体に対するアンタゴニスト活性評価
エクオリン、Gα16蛋白、各々の受容体を一過的にCHO-K1細胞(Chinese hamster ovary)に発現させ一晩COインキュベータ内で37℃にて培養した後に、384穴プレートに播種し、室温にて2時間以上静置した。DMSOに溶解した各種化合物を添加し、発光量の変化をFDSS/μCELL創薬スクリーニング支援システム(浜松ホトニクス社製)で測定した。アンタゴニスト活性については、10μmol/L内因性リガンドを添加したウェルの発光量を100%として、各種化合物の阻害活性を算出した。結果を下表に示す。
【表12】






【0198】
試験例3-1:ヒト肝ミクロソーム代謝安定性試験
本発明化合物のヒト肝ミクロソーム代謝安定性を、以下の方法により評価した。ヒト肝ミクロソームはXenontech社製を使用した。ヒト肝ミクロソーム、NADPH、被験物質を25mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)中で以下の濃度になるように混合し、37℃で30分間インキュベーションした。
・ヒト肝ミクロソーム:0.1mg/mL
・NAPDH:3.2mmol/L、
・被験物質:0.1μmol/L
30分後のサンプル中の被験物質の残存率をLC-MSにて測定し、以下の式からヒト肝ミクロソーム代謝安定性を算出した。
ヒト肝ミクロソーム代謝安定性(mL/min/mg protein)=-LN(残存率)/30/0.1
結果を下表に示す。
【表13】


【0199】
試験例3-2:ヒト肝ミクロソーム代謝安定性試験
ヒト肝ミクロソーム代謝安定性をより正確に評価するため、適切なヒト肝ミクロソーム濃度にて本発明化合物のヒト肝ミクロソーム代謝安定性を、以下の方法により評価した。ヒト肝ミクロソームはXenontech社製を使用した。ヒト肝ミクロソーム、NADPH、被験物質を25mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)中で以下の濃度になるように混合し、37℃で60分間インキュベーションした。
・ヒト肝ミクロソーム:0.5または1.0mg/mL
・NAPDH:3.2mmol/L
・被験物質:0.1μmol/L
30または60分後のサンプル中の被験物質の残存率をLC-MSにて測定し、以下の式からヒト肝ミクロソーム代謝安定性を算出した。
ヒト肝ミクロソーム代謝安定性(mL/min/mg protein)=-LN(残存率)/反応時間/ヒト肝ミクロソーム濃度
結果を下表に示す。
【表14】


【0200】
試験例4:ヒト半減期予測試験
本発明化合物のヒトにおける消失半減期を、以下の方法により予測した。
ラットに対して、本発明化合物を0.01mol/L塩酸水溶液にて静脈投与し、投与後5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、および24時間で血液を採取した。採取した血液から血漿を得、LC-MSにて血漿中薬物濃度を測定し、この濃度推移からラット分布容積を算出した。
本発明化合物のヒトおよびラットの血清中非結合形分率を、平衡透析法を用いて測定した。
ラット分布容積、ヒトおよびラットの血清中非結合形分率、試験例3-2により得たヒト肝ミクロソーム代謝安定性の結果を用いてヒトにおける半減期を以下の式に当てはめることにより算出した。
・ヒト分布容積=ラット分布容積× ヒト血清中非結合形分率 / ラット血清中非結合形分率
・ヒト肝クリアランス=
(ヒト肝血流量×ヒト血清中非結合形分率×56.7×ヒト肝ミクロソーム代謝安定性)
/(ヒト肝血流量+ヒト血清中非結合形分率×56.7×ヒト肝ミロソーム代謝安定性)
・ヒト半減期=0.693×ヒト分布容積/ヒト肝クリアランス
結果を下表に示す。
【表15】


【0201】
試験例5:hERGチャネル阻害活性の評価
本発明化合物のhERGチャネル阻害活性を、ヒト急速活性型遅延整流カリウム電流(IKr)に関与するhERGチャネルを強制発現させたCHO細胞を用い、オートパッチクランプシステムを用いたホールセルパッチクランプ法により測定した。
(細胞懸濁液の調製)
ChanTest社より購入したhERG-CHO細胞を、COインキュベータ内で37℃で培養し、hERG電流測定直前にトリプシンを用いてフラスコから剥離し、細胞懸濁液を調製した。
(溶液調製)
測定に使用する細胞外液、細胞内液を以下の通り調製した。
細胞外液:2mmol/L CaCl、1mmol/L MgCl、10mmol/L HEPES、4mmol/L KCl、145mmol/L NaCl、10mmol/L Glucose
細胞内液:10mmol/L HEPES、10mmol/L EGTA、20mmol/L KCl、130mmol/L KF
被験物質溶液:被験物質を2mmol/Lまたは20mmol/LとなるようにDMSOに溶解し、被験物質溶液を調製した。さらに被験物質溶液は細胞外液で200倍希釈し、それを細胞外液で段階希釈することによりhERG阻害IC50値の算出に必要な各濃度の被験物質溶液を調製し、適用した。
(電流値測定およびデータ解析)
オートパッチクランプシステムに、細胞懸濁液、細胞外液、細胞内液、および測定用プレートを設置し、ホールセルパッチクランプ法によるhERG電流測定を実施した。電圧プロトコールは、保持電位を-80mVとし、脱分極パルスを-50mVから+20mVで5秒間加えた後、再分極パルスを-50mVで5秒間加え、保持電位に戻した。各パルス間隔は15秒とした。データ解析には、Qube用解析ソフトウェア(Sophion Sophion社製)を使用した。各被験物質ごとに4濃度を漸増的に適用し、各適用濃度の最終3回の刺激で得られる最大外向き電流(Peak tail current)の平均値を評価データとした。また、適用前値に対する各被験物質の各濃度における電流の阻害率から、当該ソフトウェアを用いてヒルの式(Hill equation)によりIC50値を算出した。
結果を下表に示す。
【表16】





【0202】
試験例6:恐怖条件付け試験
SD系雄性ラットを使用した。試験化合物の投与液調製には溶媒として0.01mol/L塩酸溶液を用い溶解して使用した。
恐怖条件付け試験は、小原医科産業株式会社製のImage J FZ2 for Contextual and cued fear conditioning testを利用し、以下のように実施した。
前述のImage J FZ2 for Contextual and cued fear conditioning test付属のチャンバーに動物を入れ、10秒間0.5mAの電気刺激を7回与えた。その後、静かにラットをチャンバーから取り出し、翌日化合物投与液(溶媒または試験化合物溶液)を皮下投与し、30分後に動物をチャンバーに入れた。チャンバーに入れてから300秒後までのすくみ反応時間の割合を試験結果として用いた。
試験結果の解析は以下の通り実施した。
試験化合物投与群と溶媒投与群において、パラメトリックDunnett型多重比較(有意水準:両側5%)を行った。試験化合物投与群において、溶媒投与群と比較して有意なすくみ反応時間の抑制を示した場合、抗不安作用を有すると判断した。
実施例17の化合物を用いた上記試験の結果を図1に示す。
【0203】
試験例7:ラット脳内グルタミン酸遊離量測定
Wister系雄性ラットの前頭前皮質部位にカニューレを留置し、1週間以上回復期間を置いた後に実験に供した。
バイオセンサーのキャリブレーションには5 mMグルタミン酸溶液および100 mMアスコルビン酸溶液を用いた。キャリブレーションを実施したバイオセンサーを用いてグルタミン酸の遊離を測定した。測定はバイオセンサーをガイドカニューレに刺入後12時間以上経過してから開始した。被験物質を投与後、2時間以上測定した。
投与前30分間の平均グルタミン酸遊離量を基準に、投与後2時間の曲線化面積を算出し、溶媒投与群のデータと化合物投与群のデータを比較した。
各群の平均値についてパラメトリックDunnett型多重比較検定を用いて比較し、溶媒投与群に対して、被験物質投与群が有意に高値であった場合、グルタミン酸遊離促進作用ありと判断した(有意水準両側5%)。
実施例17の化合物を用いた上記試験の結果を図2に示す。
【0204】
試験例8:副作用関連受容体に対する結合活性評価
本発明化合物の副作用関連受容体(例えば、アドレナリンα1A受容体)に対する結合親和性は、以下の方法により測定することができる。
ヒト型の標的受容体を発現させたCHO細胞膜画分を用い、以下の通り結合評価試験を実施する。ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した被験化合物、緩衝液にて希釈した各種受容体膜標本、および各標的受容体に強い結合活性を有する[3H]標識リガンドを混合し、それぞれ室温にてインキュベーションした後、ガラス繊維フィルタープレート(Multiscreen FB, ミリポア社製)上に速やかに添加し減圧濾過する。液体シンチレーションカウンター(パーキンエルマー社製)を用いてフィルター上に残存する放射活性を測定する。結合阻害率は次式による算出する。受容体膜標本に対する非特異的結合量の算出には、被験物質の代わりに標的受容体に強い結合活性を有するコントロール化合物を用いる。
【0205】
標的受容体に対する結合阻害率(%)=100-100×{(被験物質存在下での[H]標識リガンド結合量)}-(10μmol/L コントロール化合物存在下での[H]標識リガンド結合量)}/{(被験物質非存在下での[H]標識リガンド結合量)}-(10μmol/L コントロール化合物存在下での[H]標識リガンド結合量)}
【0206】
試験例9:脳内移行性の評価(ラット脳内移行性試験)
本試験では、本発明化合物の脳内移行性を以下の方法により評価できる。SD系あるいはWKY系7週齢のラットに対して、本発明化合物を生理食塩水溶液にて皮下投与またはメチルセルロース懸濁溶液にて経口投与し、投与後0.5時間後あるいは1時間後あるいは2時間に血漿および脳を採取し、LC-MSにて血漿中および脳内薬物濃度を測定した。
本発明化合物の血清および脳タンパク結合率を、平衡透析法を用いて測定した。
上記の試験により得られた血漿中および脳内化合物濃度および血漿中および脳内タンパク結合率を下記の式にあてはめることにより、Kp,uu,brain(脳/血漿間非結合型薬物濃度比)を算出することができる。
Kp,uu,brain=(脳内化合物濃度×(100-脳内タンパク結合率(%))/100)/(血漿中化合物濃度×(100-血漿中タンパク結合率(%))/100)
【0207】
試験例9の結果を下表に示す。
【表17】


【0208】
試験例10:肝毒性リスクの評価(ダンシル化グルタチオン(dGSH)トラッピングアッセイ)
以下の方法により、本発明化合物を肝ミクロソームで代謝させ、生成した代謝物からダンシル化グルタチオン(dGSH)と反応する反応性代謝物を検出し定量した。代謝反応はスクリーニングロボット(Tecan社製)を用い、代謝物-dGSH結合物濃度は蛍光検出UPLCシステム(Waters社製)を用いて測定した。
【0209】
(溶液調製)
本発明化合物をDMSOに溶解し、10mmol/Lの被験物質溶液を調製した。リン酸カリウムバッファー(500mmol/L、pH7.4)7.6mL、ヒト肝ミクロソーム(Xenotech社製、20mg protein/mL)1.9mL、および純水1.27mLを混合して、ミクロソーム溶液を調製した。ミクロソーム溶液3.78mLに純水0.67mLを加えてミクロソーム(dGSH(-))溶液を調製した。ミクロソーム溶液6.48mLにdGSH溶液(20mmol/L)1.14mLを加えてミクロソーム(dGSH(+))溶液を調製した。NADPH80.9mgを純水30mLに溶解してcofactor液を調製した。Tris(2-carboxyethyl)phosphin(TECP)33mgをメタノール 115mLに溶解して反応停止液を調製した。
【0210】
(反応)
被験物質溶液12μLを純水388μLと混合し、96ウェルプレートに50μLずつ6ウェルに分注した。上記6ウェルを2ウェルずつ3群に分け、それぞれ「反応群」、「未反応群」および「dGSH未添加群」とした。「反応群」および「未反応群」にミクロソーム(dGSH(+))溶液を、「dGSH未添加群」にミクロソーム(dGSH(-))を50μLずつ添加した。「反応群」および「dGSH未添加群」にcofactor液を、「未反応群」に純水を50μLずつ添加した。37℃で60分間インキュベートした後、反応停止液を450μLずつ添加して反応を停止した。「反応群」および「dGSH未添加群」に純水を、「未反応群」にcofactor液を50μLずつ添加し、プレートを-20℃で1時間冷却後、遠心分離(4000rpm、10分間)を行った。上清を別プレートに回収し、分析に供した。
【0211】
(分析)
蛍光検出UPLCシステム(Waters社製)を用いて、以下の条件で代謝物-dGSH結合物濃度を測定した。
カラム:Waters ACQUITY UPLC BEHC18 1.7μm 2.1 × 10 mm
溶出溶媒: A, 0.2%ギ酸水溶液;B, 0.2%ギ酸/アセトニトリル
グラジエント:B, 20%(0 min)→70%(9.33 min)→90%(10.63 min)→20%(11 min)→20%(14 min)
蛍光強度は有機溶媒組成によって変化するため、溶出時の有機溶媒組成で補正を行った。
【0212】
試験例10の結果を下表に示す。
【表18】


【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明化合物は、セロトニン5-HT2A受容体およびセロトニン5-HT受容体に対するアンタゴニスト活性を示すことから、精神神経疾患の治療剤として有用である。
図1
図2
図3