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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089130
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/36 20060101AFI20230620BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
G01S17/36
G01C3/06 120Q
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023064805
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2018152036の分割
【原出願日】2018-08-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 義行
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で精度よく測距をすることが可能な信号処理装置を提供する。
【解決手段】第1周波数の第1の正弦波より周波数が低い第2周波数の第2の正弦波を振幅変調した光強度を有するレーザ光の反射光を受光して受信信号を取得する取得部と、受信信号に対し、第1の正弦波に基づく第1の演算及び第1の正弦波とは位相が異なる第3の正弦波に基づく第2の演算を行う第1の演算部と、第1又は第2の演算の演算結果に対し、第2の正弦波を演算する第3の演算及び第2の正弦波とは位相が異なる第4の正弦波を演算する第4の演算を行う第2の演算部と、演算結果に対する高周波成分の遮断により、受信信号の第1周波数の余弦成分である第1成分、第1周波数の正弦成分である第2成分、第2周波数の余弦成分である第3成分、及び第2周波数の正弦成分である第4成分を検出する信号成分検出部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数を有する第1の正弦波の振幅を前記第1周波数よりも低い第2周波数を有する第2の正弦波で振幅変調した変調信号に基づいて変化する光強度を有するレーザ光が対象物によって反射された前記レーザ光を受光して得られた受信信号を取得する取得部と、
前記第1の正弦波と前記受信信号を用いた第1の演算と、前記第1周波数を有し且つ前記第1の正弦波とは位相が異なる第3の正弦波と前記受信信号を用いた第2の演算と、を行う第1の演算部と、
前記第1の演算の演算結果及び前記第2の演算の演算結果の少なくとも一方と前記第2の正弦波とを用いた第3の演算と、前記第1の演算の演算結果及び前記第2の演算の演算結果の少なくとも一方と前記第2周波数を有し且つ前記第2の正弦波とは位相が異なる第4の正弦波とを用いた第4の演算と、を行う第2の演算部と、
前記第1の演算の演算結果から前記受信信号の前記第1周波数の余弦成分である第1成分を検出し、前記第2の演算の演算結果から前記受信信号の前記第1周波数の正弦成分である第2成分を検出し、前記第3の演算の演算結果から前記受信信号の前記第2周波数の余弦成分である第3成分を検出し、前記第4の演算の演算結果から前記受信信号の前記第2周波数の正弦成分である第4成分を検出する信号成分検出部と、
前記第1成分、前記第2成分、前記第3成分及び前記第4成分に基づき、前記受信信号と前記第1周波数との位相差を示す第1位相角と、前記受信信号と前記第2周波数との位相差を示す第2位相角と、をそれぞれ算出する位相角算出部と、
前記第1位相角及び前記第2位相角に基づき、物体までの距離を算出する測距部と、
を有することを特徴とする信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置に関し、特に、送信信号及び受信信号の位相を比較して対象物までの距離を測定する測距装置としての信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を対象物に照射し、当該対象物によって反射されたレーザ光を受光して解析することにより、対象物までの距離を計測する測距装置が知られている(例えば、特許文献1)。かかる測距装置では、例えば正弦波によって光強度を変調したレーザ光を対象物に照射し、対象物によって反射されたレーザ光を受光して、その光強度を電気信号に変換する。そして、電気信号に含まれる正弦波の成分と射出時のレーザ光の光強度に含まれる正弦波の成分との位相差を抽出し、抽出した位相差に基づいて対象物との距離を算出する。
【0003】
このように位相差に基づいて距離を算出する方法では、変調する正弦波の1波長(または位相差検出方式によっては1/2波長)分の距離までしか計測することができない。測定距離の範囲を広くするためには波長の長い正弦波を用いることが考えられるが、そうすると細かい距離の差を識別する必要がある場合に、当該距離の差に対応する位相変化量が小さいため、測定精度が悪化してしまう。
【0004】
そこで、広い測定距離の範囲と測定精度とを両立させるため、波長の長い正弦波と波長の短い正弦波とを併用してレーザ光の光強度を変調することが行われている。例えば、レーザ光の光強度を波長の異なる複数の正弦波によって多重変調し、当該レーザ光を1つの光源から対象物に向けて出射する測距装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-129646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、波長の異なる複数の正弦波によって多重変調された光強度を有するレーザ光を出射した場合、対象物によって反射されたレーザ光を受光してその光強度を電気信号に変換した後、当該電気信号(受光信号)に含まれるノイズを分離して位相差の算出に用いる信号成分を抽出するためのBPF(Band Pass Filter)が必要となる。このため、BPFの分だけ回路規模が増大してしまう。
【0007】
また、特に測距をレーザ光の照射面上の複数の位置(以下、複数の画素と称する)について行う場合、測距装置にはこれに対応する複数の受光部が必要となる。したがって、複数の受光部に対応してBPFも複数必要となり、回路規模が大幅に増大してしまうという問題点があった。
【0008】
このように、波長の異なる複数の正弦波によって多重変調したレーザ光を出射し、受光信号に基づいて当該複数の正弦波の各々について位相差を算出して測距を行う場合、受光信号から当該位相差の算出に用いる信号成分を抽出するためのBPFが必要となり、回路規模が増大してしまうということが課題の一例として挙げられる。
【0009】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で精度よく対象物までの距離を算出することが可能な信号処理装置を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、信号処理装置であって、第1周波数を有する第1の正弦波の振幅を前記第1周波数よりも低い第2周波数を有する第2の正弦波で振幅変調した変調信号に基づいて変化する光強度を有するレーザ光が対象物によって反射された前記レーザ光を受光して得られた受信信号を取得する取得部と、前記第1の正弦波と前記受信信号を用いた第1の演算と、前記第1周波数を有し且つ前記第1の正弦波とは位相が異なる第3の正弦波と前記受信信号を用いた第2の演算と、を行う第1の演算部と、前記第1の演算の演算結果及び前記第2の演算の演算結果の少なくとも一方と前記第2の正弦波とを用いた第3の演算と、前記第1の演算の演算結果及び前記第2の演算の演算結果の少なくとも一方と前記第2周波数を有し且つ前記第2の正弦波とは位相が異なる第4の正弦波とを用いた第4の演算と、を行う第2の演算部と、前記第1の演算の演算結果から前記受信信号の前記第1周波数の余弦成分である第1成分を検出し、前記第2の演算の演算結果から前記受信信号の前記第1周波数の正弦成分である第2成分を検出し、前記第3の演算の演算結果から前記受信信号の前記第2周波数の余弦成分である第3成分を検出し、前記第4の演算の演算結果から前記受信信号の前記第2周波数の正弦成分である第4成分を検出する信号成分検出部と、前記第1成分、前記第2成分、前記第3成分及び前記第4成分に基づき、前記受信信号と前記第1周波数との位相差を示す第1位相角と、前記受信信号と前記第2周波数との位相差を示す第2位相角と、をそれぞれ算出する位相角算出部と、前記第1位相角及び前記第2位相角に基づき、物体までの距離を算出する測距部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例の測距装置の構成を示すブロック図である。
図2A】測距装置から出射されるレーザ光の光強度の信号波形を示す図である。
図2B】出射されるレーザ光の光強度に変調される各周波数の信号成分のスペクトラムを模式的に示す図である。
図3A】波長の長い正弦波に基づいて算出される距離のイメージを示す概念図である。
図3B】波長の短い正弦波に基づいて算出される距離のイメージを示す概念図である。
図4】波長の異なる正弦波を組み合わせた測距のイメージを示す概念図である。
図5】測距装置の他の構成例を示すブロック図である。
図6】測距装置が複数の受光処理部を有する場合の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0013】
図1は、本実施例の測距装置100の構成を示すブロック図である。測距装置100は、所定周波数の信号に基づいて光強度を変調したレーザ光を所定領域に向けて出射し、所定領域内の対象物OJTによって反射されたレーザ光を受光して、出射時及び受光時のレーザ光の光強度に含まれる当該所定周波数の信号成分の位相差(位相角)に基づいて対象物OJTまでの距離を計測する信号処理装置である。測距装置100は、基準信号発生部10、出射部11、受光処理部12及び位相角算出部13を有する。
【0014】
基準信号発生部10は、出射時におけるレーザ光の光強度の変調及び受光後における位相差の検出に用いる基準信号を生成する。基準信号発生部10は、互いに周波数の異なる第1周波数信号FS1及び第2周波数信号FS2を基準信号として生成する。第1周波数信号FS1は周波数fo(例えば、50MHz)を有し、第2周波数信号FS2は周波数foよりも低い周波数fd(例えば、1MHz)を有する。以下の説明では、第1周波数信号FS1=cos(2π・fo・t)、第2周波数信号FS2=cos(2π・fd・t)とする。
【0015】
出射部11は、レーザ光を出射するレーザ光源11A、及びレーザ光源11Aを駆動するレーザ発光駆動部11Bを含む。出射部11は、基準信号発生部10から供給された第1周波数信号FS1及び第2周波数信号FS2に基づいて光強度を変調したレーザ光を所定領域に向けて出射する。具体的には、出射部11は、中心周波数foの第1の正弦波の振幅を周波数fdの第2の正弦波で振幅変調した変調信号により変調された光強度を有するレーザ光を出射光OLとして出射する。
【0016】
例えば、周波数foを有する第1の正弦波をcos(2π・fo・t)、周波数fdを有する第2の正弦波をcos(2π・fd・t)、時間をt、Pdc、Pac、及びkを定数とすると、出射光OLの光強度Semit(t)は、次の数式(数1)で表される。
【0017】
【数1】
【0018】
なお、光強度Semit(t)を0以上に保つため、DC的なオフセット値(DCオフセット)として、Pdcを加えている。DCオフセットは光強度Semit(t)のベースレベルを表しており、DCオフセットの値であるPdcが出射光OLの平均の光強度となる。
【0019】
受光処理部12は、所定領域内の対象物OJTによって反射されたレーザ光である反射光RLに基づいて、アナログの信号処理を行う信号処理部である。受光処理部12は、受光部21、第1演算部22、第2演算部23及びDC成分抽出部24から構成されている。
【0020】
受光部21は、所定領域内の対象物OJTによって反射されたレーザ光である反射光RLを受光し、受光した反射光RLの光強度を電気信号に変換する受光素子21A、及び受光素子21Aにより変換された電気信号から受光信号RSを検出する受光信号検出部21Bを含む。受光素子21Aは、例えばフォトダイオード等の光検出器から構成され、受光した反射光RLの光強度を電気信号に変換する。例えば、受光素子21Aは、APD(Avalanche Photodiode)から構成されている。
【0021】
第1演算部22は、基準信号発生部10から供給された第1周波数信号FS1と、受光部21から供給された受光信号RSと、に基づいて演算を行う演算ブロックである。第1演算部22は、受光信号RSに周波数foの第1の正弦波cos(2π・fo・t)を掛け算する第1の演算を行う。また、第1演算部22は、受光信号RSに周波数foを有し且つ第1の正弦波とは位相が90度異なる第3の正弦波sin(2π・fo・t)を掛け算する第2の演算を行う。
【0022】
第2演算部23は、基準信号発生部10から供給された第2周波数信号FS2と、第1演算部22における演算結果と、に基づいて演算を行う演算ブロックである。第2演算部23は、余弦側演算部23A及び正弦側演算部23Bを含む。
【0023】
余弦側演算部23Aは、第1演算部22における第1の演算の演算結果CR1に周波数fdの第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第3の演算を行う。また、余弦側演算部23Aは、第1演算部22における第1の演算の演算結果CR1に周波数fdを有し且つ第2の正弦波とは位相が90度異なる第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第4の演算を行う。
【0024】
正弦側演算部23Bは、第1演算部22における第2の演算の演算結果CR2に周波数fdの第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第5の演算を行う。また、正弦側演算部23Bは、第1演算部22における第2の演算の演算結果CR2に第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第6の演算を行う。
【0025】
DC成分抽出部24は、第1演算部22及び第2演算部23の演算結果から高周波成分を遮断することにより、第1周波数fo及び第2周波数fdの各々に対応する信号成分を抽出する信号成分検出部である。DC成分抽出部24は、第1抽出部24A、第2抽出部24B、第3抽出部24C、第4抽出部24D、第5抽出部24E及び第6抽出部24Fを有する。第1抽出部24A~第6抽出部24Fの各々は、積分回路又はLPF(Low Pass Filter)から構成されている。
【0026】
第1抽出部24Aは、第1演算部22による第1の演算の演算結果CR1からDC成分を抽出することにより、出力信号Anを得る。出力信号Anは、受光信号RSの周波数foの余弦成分の高周波成分をカットしたDC成分である。
【0027】
第2抽出部24Bは、第1演算部22による第2の演算の演算結果CR2からDC成分を抽出することにより、出力信号Bnを得る。出力信号Bnは、受光信号RSの周波数foの正弦成分の高周波成分をカットしたDC成分である。
【0028】
第3抽出部24Cは、第2演算部23の余弦側演算部23Aによる第3の演算の演算結果CR3からDC成分を抽出することにより、出力信号Cnを得る。出力信号Cnは、受光信号RSの周波数fdの余弦成分と周波数foの余弦成分とを掛け算した結果から高周波成分をカットしたDC成分である。
【0029】
第4抽出部24Dは、第2演算部23の余弦側演算部23Aによる第4の演算の演算結果CR4からDC成分を抽出することにより、出力信号Dnを得る。出力信号Dnは、受光信号RSの周波数fdの正弦成分と周波数foの余弦成分とを掛け算した結果から高周波成分をカットしたDC成分である。
【0030】
第5抽出部24Eは、第2演算部23の正弦側演算部23Bによる第5の演算の演算結果CR5からDC成分を抽出することにより、出力信号Enを得る。出力信号Enは、受光信号RSの周波数fdの余弦成分と周波数foの正弦成分とを掛け算した結果から高周波成分をカットしたDC成分である。
【0031】
第6抽出部24Fは、第2演算部23の正弦側演算部23Bによる第6の演算の演算結果CR6からDC成分を抽出することにより、出力信号Fnを得る。出力信号Fnは、受光信号RSの周波数fdの正弦成分と周波数foの正弦成分とを掛け算した結果から高周波成分をカットしたDC成分である。
【0032】
位相角算出部13は、出力信号An、Bn、Cn、Dn、En及びFnに基づいて、受光信号RSの周波数foの周波数成分と第1周波数信号FS1との位相差を示す位相角、及び受光信号RSの周波数fdの周波数成分と第2周波数信号FS2との位相差を示す位相角をそれぞれ算出する。
【0033】
位相角算出部13の後段には、図示せぬ測距部が設けられており、位相角算出部13により算出された位相角に基づいて対象物OJTまでの距離を算出する。
【0034】
次に、本実施例の測距装置100の動作について、図1図2A図2B図3A図3B及び図4を参照して説明する。
【0035】
基準信号発生部10は、周波数foを有する第1周波数信号FS1を生成し、出射部11及び第1演算部22に供給する。また、基準信号発生部10は、周波数fdを有する第2周波数信号FS2を生成し、出射部11及び第2演算部23に供給する。
【0036】
出射部11は、中心周波数foの第1の正弦波の振幅を周波数fdの第2の正弦波で振幅変調した変調信号により変調された光強度を有するレーザ光を出射光OLとして所定領域に向けて出射する。
【0037】
上記の数式(数1)を単純化してPdc=2、Pac=1、k=1とすると、出射光OLの光強度を表す射出信号Semit(t)は、次の数式(数2)で表される。
【0038】
【数2】
【0039】
図2Aは、出射光OLの光強度の信号波形の例を示す図である。fo+fd=fa、fo-fd=fbとすると、出射光OLの光強度は、中心周波数foに対して、周波数faの正弦波及び周波数fbの正弦波が適当な重み付け(例えば、1/2)を伴って加わった変調信号の信号波形となる。
【0040】
図2Bは、周波数fo、fd、fa及びfbのスペクトラムを模式的に示すグラフである。fd=1MHz、fo=50MHzとすると、fa=51MHz、fb=49MHzとなり、グラフ上では周波数foのスペクトラムが立つとともに、周波数foの近傍且つ両側の左右対称な位置に周波数fa及び周波数fbのスペクトラムが立つことになる。
【0041】
再び図1を参照すると、出射部11により出射されたレーザ光(出射光OL)は、所定領域内の対象物OJTによって反射される。受光部21は、対象物OJTによって反射されたレーザ光である反射光RLを受光する。
【0042】
受光素子21Aは、反射光RLの光量を増倍させ、反射光RLの光強度を電気信号に変換する。受光信号検出部21Bは、変換された電気信号から受光信号RSを検出する。以下の説明では、時間tを変数として受光信号RSを表す信号を、受信信号Srecv(t)とも称する。
【0043】
受信信号Srecvには、射出信号Semit(t)が遅延時間Tだけ遅れた信号となる。すなわち、受信信号Srecv(t)は、次の数式(数3)で表される。
【0044】
【数3】
【0045】
第1演算部22は、受光信号RSに中心周波数foの第1の正弦波cos(2π・fo・t)を掛け算する第1の演算、及び受光信号RSに中心周波数foの第3の正弦波sin(2π・fo・t)を掛け算する第2の演算を行う。以下の説明では、第1演算部22が実行するこれらの演算を総称して「第1段階の演算」とも称する。
【0046】
第1の演算の演算結果CR1として、次の数式(数4)で表されるfo余弦成分Pfocosが抽出される。
【0047】
【数4】
【0048】
また、第2の演算の演算結果CR2として、次の数式(数5)で表されるfo正弦成分Pfosinが抽出される。
【0049】
【数5】
【0050】
次に、第2演算部23は、第1段階の演算の演算結果である演算結果CR1及びCR2の各々に対して、周波数fdの第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する演算、及び周波数fdの第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する演算を行う。以下の説明では、第2演算部23が実行するこれらの演算を総称して「第2段階の演算」とも称する。
【0051】
第2段階の演算において、第2演算部23の余弦側演算部23Aは、第1演算部22により抽出されたfo余弦成分Pfocos(すなわち、演算結果CR1)に対して第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第3の演算を行う。これにより、演算結果CR3として、次の数式(数6)で表されるfd余弦fo余弦成分Pfdcos・focosが抽出される。
【0052】
【数6】
【0053】
また、第2演算部23の余弦側演算部23Aは、第1演算部22により抽出されたfo余弦成分Pfocos(すなわち、演算結果CR1)に対して第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第4の演算を行う。これにより、演算結果CR4として、次の数式(数7)で表されるfd正弦fo余弦成分Pfdsin・focosが抽出される。
【0054】
【数7】
【0055】
第2演算部23の正弦側演算部23Bは、第1演算部22により抽出されたfo正弦成分Pfosin(すなわち、演算結果CR2)に対して第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第5の演算を行う。これにより、演算結果CR5として、次の数式(数8)で表されるfd余弦fo正弦成分Pfdcos・fosinが抽出される。
【0056】
【数8】
【0057】
また、第2演算部23の正弦側演算部23Bは、第1演算部22により抽出されたfo正弦成分Pfosin(すなわち、演算結果CR2)に対して第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第6の演算を行う。これにより、演算結果CR6として、次の数式(数9)で表されるfd正弦fo正弦成分Pfdsin・fosinが抽出される。
【0058】
【数9】
【0059】
次に、DC成分抽出部24の第1抽出部24Aは、第1演算部22により抽出されたfo余弦成分Pfocos(すなわち、演算結果CR1)からDC成分を抽出することにより、出力信号Anを生成する。受信信号Srecv(t)は上記の数式(数3)で表されるため、受信信号Srecv(t)と第1の正弦波cos(2π・fo・t)との積であるfo余弦成分Pfocosの第1項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第1項と第1の正弦波との積)であるPfocos1は、次の数式(数10)で表される。
【0060】
【数10】
【0061】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfocos1Lは次の数式(数11)で表される。
【0062】
【数11】
【0063】
また、fo余弦成分Pfocosの第4項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第4項と第1の正弦波との積)であるPfocos4は、次の数式(数12)で表される。
【0064】
【数12】
【0065】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfocos4Lは次の数式(数13)で表される。
【0066】
【数13】
【0067】
また、fo余弦成分Pfocosの第2項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第2項と第1の正弦波との積)であるPfocos2は、次の数式(数14)で表される。
【0068】
【数14】
【0069】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfocos2Lは次の数式(数15)で表される。
【0070】
【数15】
【0071】
また、fo余弦成分Pfocosの第3項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第3項と第1の正弦波との積)であるPfocos3は、次の数式(数16)で表される。
【0072】
【数16】
【0073】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfocos3Lは次の数式(数17)で表される。
【0074】
【数17】
【0075】
数式(数15)及び数式(数17)から、fo余弦成分Pfocosの第2項部分の低域成分と第3項部分の低域成分との和は、次の数式(数18)で表される。
【0076】
【数18】
【0077】
数式(数11)、数式(数13)及び数式(数18)から、fo余弦成分Pfocosの第1項~第4項までの全部の項の低域成分は、次の数式(数19)で表される。
【0078】
【数19】
【0079】
第1抽出部14Aは、ここからさらにDC成分を抽出した結果を出力信号Anとして出力する。すなわち、次の数式(数20)で示すようなPfocosDCが、出力信号Anとして第1抽出部24Aから位相角算出部13に出力される。
【0080】
【数20】
【0081】
一方、DC成分抽出部24の第2抽出部24Bは、第1演算部22により抽出されたfo正弦成分Pfosin(すなわち、演算結果CR2)からDC成分を抽出することにより、出力信号Bnを生成する。受信信号Srecv(t)は上記の数式(数3)で表されるため、受信信号Srecv(t)と第3の正弦波sin(2π・fo・t)との積であるfo正弦成分Pfosinの第1項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第1項と第3の正弦波との積)であるPfosin1は、次の数式(数21)で表される。
【0082】
【数21】
【0083】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfosin1Lは次の数式(数22)で表される。
【0084】
【数22】
【0085】
また、fo正弦成分Pfosinの第4項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第4項と第3の正弦波との積)であるPfosin4は、次の数式(数23)で表される。
【0086】
【数23】
【0087】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfosin4Lは次の数式(数24)で表される。
【0088】
【数24】
【0089】
また、fo正弦成分Pfosinの第2項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第2項と第3の正弦波との積)であるPfosin2は、次の数式(数25)で表される。
【0090】
【数25】
【0091】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfosin2Lは次の数式(数26)で表される。
【0092】
【数26】
【0093】
また、fo余弦成分Pfosinの第3項部分(すなわち、受信信号Srecv(t)の第3項と第3の正弦波との積)であるPfosin3は、次の数式(数27)で表される。
【0094】
【数27】
【0095】
ここから周波数fd以下の低域成分についての演算結果を抜き出すと、低域成分Pfosin3Lは次の数式(数28)で表される。
【0096】
【数28】
【0097】
数式(数26)及び数式(数28)から、fo正弦成分Pfosinの第2項部分の低域成分と第3項部分の低域成分との和は、次の数式(数29)で表される。
【0098】
【数29】
【0099】
数式(数22)、数式(数24)及び数式(数29)から、fo正弦成分Pfosinの第1項~第4項までの全部の項の低域成分は、次の数式(数30)で表される。
【0100】
【数30】
【0101】
第2抽出部14Bは、ここからさらにDC成分を抽出した結果を出力信号Bnとして出力する。すなわち、次の数式(数31)で示すようなPfosinDCが、出力信号Bnとして第2抽出部24Bから位相角算出部13に出力される。
【0102】
【数31】
【0103】
次に、DC成分抽出部24の第3抽出部24Cは、第2演算部23の余弦側演算部23Aにより抽出されたfd余弦fo余弦成分Pfdcos・focos(すなわち、演算結果CR3)から周波数fdよりもさらに低いDC成分を抽出することにより、出力信号Cnを生成する。ここで、fo余弦成分Pfocosの周波数fd以下の低域部分にのみ着目すると、fo余弦成分Pfocosの低域成分PfocosLは上記の数式(数19)で表されるため、これに第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算したPfdcos・focosLは、次の数式(数32)で表される。
【0104】
【数32】
【0105】
さらに、数式(数32)の第2項部分であるPfdcos2・focosLは、次の数式(数33)で表される。
【0106】
【数33】
【0107】
数式(数32)及び(数33)より、次の数式(数34)で表されるようなfd余弦fo余弦低域成分Pfdcos・focosLの全項のDC成分が、出力信号Cnとして第3抽出部24Cから位相角算出部13に出力される。
【0108】
【数34】
【0109】
また、DC成分抽出部24の第4抽出部24Dは、第2演算部23の余弦側演算部23Aにより抽出されたfd正弦fo余弦成分Pfdsin・focos(すなわち、演算結果CR4)から周波数fdよりもさらに低いDC成分を抽出することにより、出力信号Dnを生成する。ここで、fo余弦成分Pfocosの周波数fd以下の低域部分にのみ着目すると、fo余弦成分Pfocosの低域成分PfocosLは上記の数式(数19)で表されるため、これに第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算したPfdsin・focosLは、次の数式(数35)で表される。
【0110】
【数35】
【0111】
さらに、数式(数35)の第2項部分であるPfdsin2・focosLは、次の数式(数36)で表される。
【0112】
【数36】
【0113】
数式(数35)及び(数36)より、次の数式(数37)で表されるようなfd正弦fo余弦低域成分Pfdsin・focosLの全項のDC成分が、出力信号Dnとして第4抽出部24Dから位相角算出部13に出力される。
【0114】
【数37】
【0115】
また、DC成分抽出部24の第5抽出部24Eは、第2演算部23の正弦側演算部23Bにより抽出されたfd余弦fo正弦成分Pfdcos・fosin(すなわち、演算結果CR5)から周波数fdよりもさらに低いDC成分を抽出することにより、出力信号Enを生成する。ここで、fo正弦成分Pfosinの周波数fd以下の低域部分にのみ着目すると、fo正弦成分Pfosinの低域成分PfosinLは上記の数式(数30)で表されるため、これに第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算したPfdcos・fosinLは、次の数式(数38)で表される。
【0116】
【数38】
【0117】
さらに、数式(数38)の第2項部分であるPfdcos2・fosinLは、次の数式(数39)で表される。
【0118】
【数39】
【0119】
数式(数38)及び(数39)より、次の数式(数40)で表されるようなfd余弦fo正弦低域成分Pfdcos・fosinLの全項のDC成分が、出力信号Enとして第5抽出部24Eから位相角算出部13に出力される。
【0120】
【数40】
【0121】
また、DC成分抽出部24の第6抽出部24Fは、第2演算部23の正弦側演算部23Bにより抽出されたfd正弦fo正弦成分Pfdsin・fosin(すなわち、演算結果CR6)から周波数fdよりもさらに低いDC成分を抽出することにより、出力信号Fnを生成する。ここで、fo正弦成分Pfosinの周波数fd以下の低域部分にのみ着目すると、fo正弦成分Pfosinの低域成分PfosinLは上記の数式(数30)で表されるため、これに第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算したPfdsin・fosinLは、次の数式(数41)で表される。
【0122】
【数41】
【0123】
さらに、数式(数41)の第2項部分であるPfdsin2・fosinLは、次の数式(数42)で表される。
【0124】
【数42】
【0125】
数式(数41)及び(数42)より、次の数式(数43)で表されるようなfd正弦fo正弦低域成分Pfdsin・fosinLの全項のDC成分が、出力信号Fnとして第6抽出部24Fから位相角算出部13に出力される。
【0126】
【数43】
【0127】
位相角算出部13は、出力信号An、Bn、Cn、Dn、En及びFnに基づいて、周波数foについての位相角θo、及び周波数fdについて位相角θdをそれぞれ算出する。
【0128】
周波数foについての位相角θoは、次の数式(数44)で表される。
【0129】
【数44】
【0130】
位相角算出部13は、例えば出力信号An及びBnに基づいて位相角θoを算出する。位相角θoは、出力信号An及びBを用いて次の数式(数45)のように表される。
【0131】
【数45】
【0132】
また、周波数fdについての位相角θdは、次の数式(数46)で表される。
【0133】
【数46】
【0134】
位相角算出部13は、例えば出力信号An~Fnの全てを用いて位相角θdを算出する。位相角θdは、次の数式(数47)のように表される。
【0135】
【数47】
【0136】
すなわち、(An・Dn+Bn・Fn)/(An・Cn+Bn・En)は次の数式(数48)で表されるため、数式(数46)に基づいて位相角θdを算出することができる。
【0137】
【数48】
【0138】
位相角算出部13の後段に設けられた測距部(図示せず)は、位相角θo及びθdに基づいて対象物OJTまでの片道の距離Lを算出する。例えば、距離Lは、遅延時間T及び光速cを用いて次の数式(数49)のように表される。
【0139】
【数49】
【0140】
周波数foについての位相角θoは、θo=2π・fo・Tであるため、遅延時間Tは次の数式(50)で表される。
【0141】
【数50】
【0142】
同様に、周波数fdについての位相角θdは、θd=2π・fd・Tであるため、遅延時間Tは次の数式(51)で表される。
【0143】
【数51】
【0144】
したがって、周波数foについて基づいて算出される距離Loは、次の数式(数52)で表される。
【0145】
【数52】
【0146】
また、周波数fdについて基づいて算出される距離Ldは、次の数式(数53)で表される。
【0147】
【数53】
【0148】
位相角算出部13の後段に設けられている測距部(図示せず)は、距離Lo及び距離Ldに基づいて、対象物OJTまでの距離Lを算出する。これについて、図3A図3B及び図4を参照して説明する。
【0149】
図3Aは、周波数fdに基づいて算出される距離Ldのイメージを模式的に示すグラフである。周波数fdの正弦波(例えば、第2の正弦波cos(2π・fd・t)及び第4の正弦波sin(2π・fd・t))は、波長が長いため距離計測範囲が広い。しかし、位相角θdについての誤差が拡大されて距離Ldに現れるため、距離測定の精度が低いという問題がある。
【0150】
一方、図3Bは、周波数foに基づいて算出される距離Loのイメージを模式的に示すグラフである。周波数foの正弦波(例えば、第1の正弦波cos(2π・fo・t)及び第3の正弦波sin(2π・fo・t))は、波長が短い。測定範囲は1波長以内であるため、距離計測範囲が狭い。すなわち、距離測定の精度は高いが、θdが360°(2π)を超えると0°に戻ることになる。
【0151】
図4は、距離Lo及び距離Ldを用いた距離Lの算出を模式的に示す概念図である。測距部は、距離測定の精度が劣る距離Ldを用いて大まかな範囲を距離範囲として指定し、その範囲の中を距離Loに置き換えることにより、対象物OJTまでの距離Lを算出する。
【0152】
以上のように、本実施例の測距装置100は、周波数foを有する第1周波数信号FS1(=cos(2π・fo・t))及び周波数fdを有する第2周波数信号FS2(=cos(2π・fd・t))に基づいて光強度を変調したレーザ光を所定領域に向けて出射する。受光処理部12の受光部21は、所定領域内の対象物OJTによって反射されたレーザ光を受光して電気信号に変換し、受光信号RSを得る。
【0153】
そして、第1演算部22は、受光信号RSに対し、周波数foの第1の正弦波cos(2π・fo・t)を掛け算する第1の演算、及び周波数foを有し第1の正弦波とは位相が90度異なる第3の正弦波sin(2π・fo・t)を掛け算する第2の演算を行う。第2演算部23は、第1の演算の演算結果CR1に周波数fdの第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第3の演算を行う。また、第2演算部23は、第1の演算の演算結果CR1に周波数fdを有し且つ第2の正弦波とは位相が90度異なる第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第4の演算を行う。また、第2演算部23は、第2の演算の演算結果CR2に周波数fdの第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第5の演算を行う。また、第2演算部23は、第2の演算の演算結果CR2に周波数fdを有し且つ第2の正弦波とは位相が90度異なる第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第6の演算を行う。
【0154】
DC成分抽出部24は、第1の演算の演算結果CR1から高周波成分を遮断することにより、周波数foの余弦成分である出力信号Anを抽出する。また、DC成分抽出部24は、第2の演算の演算結果CR2から高周波成分を遮断することにより、周波数foの正弦成分である出力信号Bnを抽出する。また、DC成分抽出部24は、第3の演算の演算結果CR3から高周波成分を遮断することにより、周波数fdの余弦成分である出力信号Cnを抽出する。また、DC成分抽出部24は、第4の演算の演算結果CR4から高周波成分を遮断することにより、周波数fdの正弦成分である出力信号Dnを抽出する。また、DC成分抽出部24は、第5の演算の演算結果CR5から高周波成分を遮断することにより、周波数fdの余弦成分である出力信号Enを抽出する。また、DC成分抽出部24は、第6の演算の演算結果CR6から高周波成分を遮断することにより、周波数fdの正弦成分である出力信号Fnを抽出する。
【0155】
そして、位相角算出部13は、出力信号An及びBnに基づいて周波数foについての位相角θoを算出する。また、位相角算出部13は、出力信号An~Fnに基づいて、周波数fdについての位相角θdを算出する。測距部は、位相角θoに基づいて得られた距離Lo及び位相角θdに基づいて得られた距離Ldから、対象物OJTまでの距離Lを算出する。
【0156】
本実施例の測距装置100によれば、第1演算部22及び第2演算部33による演算(掛け算)によって、周波数foの信号成分及び周波数fdの信号成分に対応する出力信号An~Fnを検出する。このため、受光信号RSから周波数foの信号成分及び周波数fdの信号成分を抽出するためのBPF(Band Pass Filter)が不要である。したがって、回路規模の増大を抑え、簡易な構成で精度よく対象物OJTまでの距離を算出することが可能である。
【0157】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、第1抽出部24Aが第1の演算の演算結果CR1からDC成分を直接抽出し、第2抽出部24Bが第2の演算の演算結果CR2からDC成分を直接抽出する例について説明した。しかし、第1段階の演算の演算結果からいったん周波数fd以下の信号成分を抽出し、その結果に対して第2段階の演算及びDC成分の抽出を行う構成としてもよい。
【0158】
図5は、実施例1の変形例として、かかる構成を有する測距装置200を示すブロック図である。測距装置200は、高域遮断部30A及び高域遮断部30Bを有する。
【0159】
高域遮断部30Aは、第1演算部22による第1の演算の演算結果CR1から高域の周波数成分を遮断することにより、周波数fd以下の低域成分CR1Xを抽出する。高域遮断部30Bは、第1演算部22による第2の演算の演算結果CR2から高域の周波数成分を遮断することにより、周波数fd以下の低域成分CR2Xを抽出する。
【0160】
第1抽出部24Aは、第1の演算の演算結果の低域成分CR1XからDC成分を抽出することにより、出力信号Anを得る。第2抽出部24Bは、第2の演算の演算結果の低域成分CR2XからDC成分を抽出することにより、出力信号Bnを得る。
【0161】
第2演算部23の余弦側演算部23Aは、第1の演算の演算結果の低域成分CR1Xに第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第3の演算を行い、演算結果CR3を出力する。また、余弦側演算部23Aは、第1の演算の演算結果の低域成分CR1Xに第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第4の演算を行い、演算結果CR4を出力する。
【0162】
第2演算部23の正弦側演算部23Bは、第2の演算の演算結果の低域成分CR2Xに第2の正弦波cos(2π・fd・t)を掛け算する第5の演算を行い、演算結果CR5を出力する。また、正弦側演算部23Aは、第2の演算の演算結果の低域成分CR2Xに第4の正弦波sin(2π・fd・t)を掛け算する第6の演算を行い、演算結果CR6を出力する。
【0163】
かかる構成の測距装置200によれば、第1演算部22による第1段階の演算の演算結果から周波数fdよりも高域の成分を遮断する過程を経ることにより、より精度の高い測距を行うことが可能となる。
【0164】
また、上記実施例では、位相角算出部13が出力信号An~Fnの全てを用いて位相角θdを算出する場合を例として説明した。しかし、出力Cn及びDnの組み合わせ、又は出力En及びFnの組み合わせのいずれか一方の組み合わせのみを用いて位相角θdを算出する構成とすることも可能である。
【0165】
例えば、位相角算出部13が出力信号Cn及びDnを用いて位相角θdを算出する場合、位相角θdは、次の数式(数54)のように表される。
【0166】
【数54】
【0167】
また、例えば位相角算出部13が出力信号En及びFnを用いて位相角θdを算出する場合、位相角θdは、次の数式(数55)のように表される。
【0168】
【数55】
【0169】
したがって、DC成分抽出部24は、第3抽出部24C、第4抽出部24D、第5抽出部24E及び第6抽出部24Fの全てを備えている必要はなく、第1抽出部24A及び第2抽出部24Bの他には、第3抽出部24C及び第4抽出部24Dの組み合わせ、又は第5抽出部24E及び第6抽出部24Fの組み合わせのいずれかを有していれば良い。かかる構成によれば、より簡易な構成で対象物OJTまでの距離を算出することが可能となる。
【0170】
また、本実施例の測距装置100の構成を、レーザ光の照射面上の複数の位置について距離の計測を行う測距装置に適用することも可能である。
【0171】
図6は、かかる構成を有する測距装置300を示すブロック図である。測距装置300は、複数の受光処理部12(1)~12(k)と、シリアル読出部14と、を有する。ここで、kは2以上の整数である。また、以下の説明では、上記複数の位置を「複数の画素」と称する。
【0172】
受光処理部12(1)~12(k)は、複数の画素に対応して設けられている。受光処理部12(1)~12(k)の各々は、上記実施例で説明した受光処理部12と同様の構成を有する。すなわち、受光処理部12(1)~12(k)の各々は、受光部21と、第1演算部22と、第2演算部23と、DC成分抽出部24と、を含む。受光処理部12(1)~12(k)の各々のDC成分抽出部24は、それぞれ出力信号A1~F1、A2~F2、・・・Ak~Fkを抽出する。
【0173】
シリアル読出部14は、受光処理部12(1)~12(k)の各々において抽出された出力信号A1~Ak、B1~Bk、C1~Ck、D1~Dk、E1~Ek、及びF1~Fkを順次読み出し、それぞれシリアルのデータ系列として位相角算出部13に供給する。位相角算出部13は、各データ系列に含まれる出力信号に基づいて、対象物OJTまでの距離の算出に用いる位相角θo及びθdを画素ごとに算出する。
【0174】
かかる構成によれば、位相角の算出に用いる出力信号の抽出を画素ごとに行っているため、信号の周波数帯域あるいはデータレートを、シリアル読出部14による順次読み出しが可能なレベルまで落とすことができる。従って、パラレルに読み出しを行う場合と比べて配線数を減らすことができ、簡易な構成で多画素のLiDAR(Light Detection and Ranging)装置を実現することが可能となる。
【0175】
また、各受光処理部にBPFが不要であるため、回路規模の増大を抑制する効果が大きい。また、A/D変換及びデジタル信号処理の手法を使用したり、高速クロック及びTDC(Time to Digital Converter)を使用したりする場合と比べて、回路規模を抑えることができる。これにより、回路をLSI化することが容易となり、且つ小さい画素サイズに容易に付随させることができる。
【0176】
また、上記実施例で説明した一連の処理は、例えばROMなどの記録媒体に格納されたプログラムに従ったコンピュータ処理により行うことができる。
【符号の説明】
【0177】
100 測距装置
10 基準信号発生部
11 出射部
11A レーザ光源
11B レーザ発光駆動部
12 受光処理部
13 位相角算出部
14 シリアル読出部
21 受光部
21A 受光素子
21B 受光信号検出部
22 第1演算部
23 第2演算部
23A 余弦側演算部
23B 正弦側演算部
24 DC成分抽出部
24A 第1抽出部
24B 第2抽出部
24C 第3抽出部
24D 第4抽出部
24E 第5抽出部
24F 第6抽出部
30A 高域遮断部
30B 高域遮断部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6