(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089143
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】動物健康管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/00 20180101AFI20230620BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230620BHJP
【FI】
G16H10/00
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065222
(22)【出願日】2023-04-12
(62)【分割の表示】P 2022560848の分割
【原出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
(57)【要約】 (修正有)
【課題】飼育者が動物の健康状態を早期に把握できる動物健康管理システム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】管理サーバが、飼い主端末及び医療機関端末とのそれぞれに対して通信ネットワークを介して通信可能に接続され、動物の健康を管理する定期検診システムであって、管理サーバは、動物種に対応付けて動物の健康状態に関連する質問を記憶し、質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された動物の健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶し、動物の動物種に対応する質問を定期的に飼い主端末に送信し、飼い主端末から質問に対する回答を受信し、受信した回答を学習モデルに与えて健康状態を推定し、動物の動物種に対応する学習モデルを特定し、特定した学習モデルに回答内容を与えることで来院の要否を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の健康を管理するシステムであって、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信する回答受信部と、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定する推定部と、
前記健康状態を前記飼い主端末に送信する健康状態送信部と、
を備えることを特徴とする動物健康管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動物健康管理システムであって、
複数の前記質問の少なくとも一部には、前記動物を撮影した画像により回答をするべきものが含まれること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデルは、前記回答及び前記動物種を入力データとした機械学習が行われ、
前記推定部は、前記回答に加えて前記動物の動物種を前記学習モデルに与えること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
前記健康状態は、医療機関への来院要否であること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデル記憶部は、第1の前記学習モデルと、前記質問に対する回答を入力データとし、前記獣医療従事者により判断された前記動物がとるべきアクションを教師データとして機械学習により作成された第2の学習モデルとを記憶し、
前記推定部は、前記回答を前記第1及び第2の学習モデルに与えて、前記健康状態及び前記アクションを推定し、
前記健康状態送信部は、前記健康状態及び前記アクションを送信すること、
を特徴とする動物健康管理システム。
【請求項6】
動物の健康を管理する方法であって、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置が、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定するステップと、
前記健康状態を前記飼い主端末に送信するステップと、
を実行することを特徴とする動物健康管理方法。
【請求項7】
動物の健康を管理するためのプログラムであって、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置が、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定するステップと、
前記健康状態を前記飼い主端末に送信するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物健康管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介して問診を行うことが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に問診は患者が自覚症状を感じたときに行われる。しかしながら、獣医療においては飼育者が健康状態を把握する必要がある。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、飼育者が動物の健康状態を早期に把握することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、動物の健康を管理するシステムであって、動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信する回答受信部と、受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定する推定部と、前記健康状態を前記飼い主端末に送信する健康状態送信部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飼育者が動物の健康状態を早期に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の定期検診システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】管理サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態の定期検診システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1]
動物の健康を管理するシステムであって、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信する問診送信部と、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信する回答受信部と、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定する推定部と、
前記健康状態を前記飼い主端末に送信する健康状態送信部と、
を備えることを特徴とする動物健康管理システム。
[項目2]
項目1に記載の動物健康管理システムであって、
複数の前記質問の少なくとも一部には、前記動物を撮影した画像により回答をするべきものが含まれること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目3]
項目1又は2に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデルは、前記回答及び前記動物種を入力データとした機械学習が行われ、
前記推定部は、前記回答に加えて前記動物の動物種を前記学習モデルに与えること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目4]
項目1乃至3のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
前記健康状態は、医療機関への来院要否であること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目5]
項目1乃至4のいずれか1項に記載の動物健康管理システムであって、
前記学習モデル記憶部は、第1の前記学習モデルと、前記質問に対する回答を入力データとし、前記獣医療従事者により判断された前記動物がとるべきアクションを教師データとして機械学習により作成された第2の学習モデルとを記憶し、
前記推定部は、前記回答を前記第1及び第2の学習モデルに与えて、前記健康状態及び前記アクションを推定し、
前記健康状態送信部は、前記健康状態及び前記アクションを送信すること、
を特徴とする動物健康管理システム。
[項目6]
動物の健康を管理する方法であって、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置が、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定するステップと、
前記健康状態を前記飼い主端末に送信するステップと、
を実行することを特徴とする動物健康管理方法。
[項目7]
動物の健康を管理するためのプログラムであって、
動物種に対応付けて前記動物の健康状態に関連する質問を記憶する問診記憶部と、
前記質問に対する回答を入力データとし、獣医療従事者により判断された前記動物の前記健康状態を教師データとして機械学習により作成された学習モデルを記憶する学習モデル記憶部と、を備える情報処理装置が、
前記動物の動物種に対応する前記質問を定期的に飼い主端末に送信するステップと、
前記飼い主端末から前記質問に対する回答を受信するステップと、
受信した前記回答を前記学習モデルに与えて前記健康状態を推定するステップと、
前記健康状態を前記飼い主端末に送信するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【0011】
<システムの概要>
以下、本発明の一実施形態に係る定期検診システムについて説明する。本実施形態の定期検診システムは、動物の定期検診を支援しようとするものである。
【0012】
本実施形態の定期検診システムは、獣医療機関側からペット等の動物の飼い主に対して定期的な問診を行うことにより、動物の健康状態、とくに来院の要否(トリアージ)を判断しようとするものである。本実施形態では、AIを用いてトリアージを行うことができる。AIは、来院の要否を分類する分類器とすることができる。AIには、獣医師等の獣医療機関従事者の判断を学習した学習モデルを用いることができる。また、本実施形態の定期検診システムでは、AIの学習にあたり動物種を入力データとして与えることができる。また、AIの学習にあたり、飼い主が動物の特定部位を撮影した画像を入力データとして与えることができる。
【0013】
図1は、本実施形態の定期検診システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の定期検診システムは、管理サーバ20を含んで構成される。管理サーバ20は、飼い主端末10および医療機関端末30とのそれぞれに対して通信ネットワーク40を介して通信可能に接続される。通信ネットワーク40は、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0014】
飼い主端末10は、動物の介護者(飼い主または世話をしている人)が操作するコンピュータである。飼い主端末10は、たとえば、スマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどである。飼い主端末10は、カメラ(不図示)を備え、撮影が可能となっていることを想定する。
【0015】
医療機関端末30は、獣医療機関での獣医療関係者(動物病院の看護師や医師などが)が操作するコンピュータである。医療機関端末30は、たとえば、タブレットコンピュータである。医療機関端末30は、たとえば、スマートフォンやパーソナルコンピュータなど、任意のコンピュータとすることができる。
【0016】
管理サーバ20は、定期的な問診を行い、動物患者の来院要否を判断するコンピュータである。管理サーバ20は、たとえばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現される仮想コンピュータとしてもよい。
【0017】
図2は、管理サーバ20のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワーク3に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。後述する管理サーバ20の各機能部は、CPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ20の各記憶部は、メモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0018】
<管理サーバ20のソフトウェア構成>
図3は、管理サーバ20のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ20は、問診送信部211、回答受信部212、来院要否判定部213、来院要否送信部214、来院要否取得部215、学習処理部216、飼い主情報記憶部231、動物情報記憶部232、質問記憶部233、問診記憶部234、回答履歴記憶部235、トリアージ履歴記憶部236、学習モデル記憶部237を備える。
【0019】
飼い主情報記憶部231は、獣医療機関を受診する動物(患者動物)の飼い主に関する情報(以下、飼い主情報という。)を記憶する。飼い主情報には、飼い主を特定する飼い主ID、氏名、住所、連絡先を含む。氏名、住所、連絡先以外の飼い主に関する情報を含めてもよい。
【0020】
動物情報記憶部232は、患者動物に関する情報(以下、動物情報という。)を記憶する。動物情報には、患者動物の飼い主を示す飼い主IDおよび患者動物を特定する動物IDに対応付けて、患者動物の名称及び動物種など、患者動物の各種属性を含めることができる。
【0021】
質問記憶部233は、動物の健康状態についての質問に係る情報(以下、質問情報という。)を記憶する。質問情報には、質問を特定する質問IDと、当該質問が該当する動物種とに対応付けて、質問及び提示条件を含めることができる。質問には、フリーテキストでの回答を予定する質問、2択または3択以上の選択肢から1つ以上を選択する回答を予定する質問、所定の範囲内での値(実数または整数)の回答を予定する質問などを含めることができる。質問は、例えば、テキストデータとすることができ、画像や音声を含めるようにすることもできる。本実施形態では、質問には、特定の部位を撮影した画像により回答するべき質問が含まれるものとする。提示条件は、質問を問診に含める条件を設定することができる。提示条件には、一番最初に行う質問であること、当該質問よりも前の質問に対する回答が特定の内容であったこと(たとえば、「食欲があるか」という質問に対する回答として「ない」と回答した場合など)、日付が特定の期間にあたること(たとえば、質問時点の季節が冬である場合など)など、任意の判定可能な条件を設定することができる。
【0022】
問診記憶部234は、1回の問診に関する情報(以下、問診情報という。)を記憶する。問診情報には、問診を識別する問診IDに対応付けて、問診対象とした動物を示す動物ID及び問診に含める質問を示す質問IDを含む。1つの問診IDに対して質問IDは複数設定されてよい。問診情報には、飼い主を示す飼い主ID又は患者動物を示す動物IDを含めて、特定の動物患者に対する問診を設定するようにしてもよい。
【0023】
回答履歴記憶部235は、問診に係る質問に対する飼い主からの回答の履歴を記憶する。回答履歴記憶部235が記憶する回答履歴には、問診ID、動物ID及び問診を行った(又は回答を受け付けた)日時に対応付けて、質問を示す質問IDと、当該質問に対する回答とが含まれる。なお、1つの問診IDに対して、質問の数だけ質問ID及び回答のセットが登録されうる。
【0024】
トリアージ履歴記憶部236は、問診結果(質問に対する回答)に対して獣医療従事者(本実施形態では獣医師を想定する。)が判断した動物患者の来院要否の判断に係る履歴(以下、トリアージ履歴)を記憶する。診断履歴には、問診ID、来院要否、アクション及びコメントが含まれる。来院要否は、必要又は不要のいずれかである。アクションは、動物に対する介入情報であり、例えば、「散歩をさせましょう」「食事をさせましょう」といった、動物が取るべき行動を示す情報である。アクションの選択肢は事前に設定しておくことができる。アクションに来院が必要であることを含めるようにしてもよい。コメントは、獣医師による問診結果に対するコメントである。コメントは、例えば、テキストデータとすることができる。コメントには、可能性のある病気を含めるようにしてもよい。
【0025】
学習モデル記憶部237は、問診結果に基づいて来院要否を判定する為の学習モデルを記憶する。学習モデル記憶部237は、動物種に対応付けて学習モデルを記憶することができる。なお、学習モデルの入力データ(特徴量)として動物種を与えるようにしてもよい。学習モデルは、後述する学習処理部216により作成及び更新される。
【0026】
問診送信部211は、問診を定期的に飼い主端末10に送信する。問診送信部211は、患者動物の動物種に対応する質問記憶部233に記憶されている質問事項を1つ又は複数選択して1つの問診を作成することができる。問診送信部211は、患者動物の動物種に対応する質問事項のうち、提示条件が満たされているものを、例えば、ランダムに所定数選択することができる。また、問診送信部211は、例えば、事前に設定された所定のルールに従って質問を選択するようにしてもよい。
【0027】
回答受信部212は、問診の各質問に対する回答を飼い主端末10から受信する。回答受信部212は、質問事項に、特定の部位を撮影した画像により回答するべき質問が含まれていた場合には、画像のアップロードを受け付けることができる。回答受信部212は、受信した回答を回答履歴記憶部235に登録することができる。
【0028】
来院要否判定部213(動物の健康状態を推定する推定部)は、問診結果を学習モデルに与えて来院要否を判定することができる。来院要否判定部213は、患者動物の動物種に対応する学習モデルを学習モデル記憶部237から特定し、特定した学習モデルに回答内容を与えることにより、来院の要否を判定することができる。
【0029】
なお、来院要否判定部213は、学習モデルにより求めた来院要否の確度を求めることができ、この確度が所定値未満である場合には、後述する来院要否取得部215が来院要否を獣医療関係者に問い合わせることができる。
【0030】
来院要否送信部214は、問診結果に基づいて判断された来院要否を飼い主端末10に送信する。
【0031】
来院要否取得部215は、医療機関端末30に対して来院要否の判断を求めるメッセージを送信することができる。来院要否取得部215は、上述したように、学習モデルを用いて推定した来院要否の確度が所定値未満である場合に、メッセージを送信することができる。来院要否判定部213は、問診結果(質問に対する回答、すなわち、選択肢の選択結果や画像などを含めることができる。)をメッセージに含めて医療機関端末30に送信することができる。医療機関端末30では、問診結果を出力して、獣医等の医療関係者から来院要否の判断の入力を受け付けることができる。医療機関端末30では、問診結果に応じた動物に対する介入情報(アクション)及びコメントを入力することもできる。
【0032】
また、来院要否取得部215は、定期的に、所定のルールにより決定されたタイミングに、又はランダムに、回答履歴記憶部235に登録されている回答の全部又は一部を含めて上記のメッセージを医療機関端末30に送信して、来院要否の判定を求めるようにすることができる。
【0033】
来院要否取得部215は、医療機関端末30から取得した来院要否と、問診結果に対応する問診を示す問診IDとを含むトリアージ履歴を作成して、トリアージ履歴記憶部236に登録することができる。また、医療機関端末30からアクション及びコメントが送信された場合には、トリアージ履歴にアクション及びコメントを含めることもできる。
【0034】
学習処理部216は、来院要否の判断を学習する学習モデルを作成及び更新する。学習処理部216は、動物種ごとに、当該動物種に対応する問診内容を入力データとし、回答履歴の問診IDに対応するトリアージ履歴の来院要否を教師データとして機械学習を行い、機械学習により作成又は更新された学習モデルを学習モデル記憶部237に登録することができる。
【0035】
学習処理部216はまた、来院要否取得部215が来院要否を取得したことを契機に、定期的に、又は、所定のルールにより決定されるタイミングに、学習モデルを更新することができる。この場合、学習に用いた回答履歴及びトリアージ履歴を記憶する使用履歴記憶部を設けるようにし、学習処理部216は、使用履歴記憶部に記憶されていない回答履歴及びトレイアージ履歴を用いて機械学習を行って学習モデルを更新することができる。
【0036】
<動作>
図4は、本実施形態の定期検診システムの動作を説明する図である。
【0037】
管理サーバ20は、問診を作成する(S301)。問診は、質問記憶部233に記憶されている質問のうち、患者動物の動物種に対応し、提供条件が満たされているものを所定数読み出すことにより作成することができる。管理サーバ20は、作成した問診を飼い主端末10に送信する(S302)。
【0038】
飼い主端末10では問診が表示される。問診は例えばチャット形式により行うようにしてもよいし、Webページのフォームにより行うようにしてもよい。また、画像により回答することが求められている質問については、飼い主端末10が備えるカメラ(不図示)を起動してカメラの撮影画像を回答として取得することもできる。飼い主端末10は、入力された回答を管理サーバ20に送信する。
【0039】
管理サーバ20は、飼い主端末10から回答を受信し(S303)、受信した回答を回答履歴記憶部235に登録することができる。管理サーバ20は、患者動物の動物種に対応する学習モデルを学習モデル記憶部237から読み出し、読み出した学習モデルに回答を与えて来院要否を判定する(S304)。
【0040】
ここで学習モデルによる予測精度(判定の信頼度)を示す確率が所定の閾値未満である場合は(S305:YES)、回答を設定したメッセージを医療機関端末30に送信して、来院要否を問い合わせる(S306)。メッセージには、飼い主情報や動物情報を含めるようにしてもよい。医療機関端末30では、獣医等の医療関係者から来院要否の入力を受け付けて管理サーバ20に送信し、管理サーバ20は、医療機関端末30から来院要否を受信する(S307)。管理サーバ20は、回答及び来院要否を用いて機械学習を行い学習モデルを更新することができる(S308)。
【0041】
管理サーバ20は、来院要否を飼い主端末10に送信し(S309)、定期的な問診の送信を行う期間が終了するまで(S310:NO)、定期的にS301からの処理を繰り返す。なお、2回目以降のステップS301では、問診の内容を変更することができる。
【0042】
以上のようにして、本実施形態の定期検診システムでは、獣医療機関側が主体的に、定期的に問診を患者動物の飼育者に対して送信し、患者動物の健康状態を確認することができる。また、AI(学習モデル)を用いて問診結果に基づいて来院要否を自動的に判断することができる。AI(学習モデル)は、問診内容と医療機関における判断とを学習することができる。
【0043】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0044】
例えば、本実施形態では、動物種ごとに学習モデルを作成するものとしたが、全体で1つ又は複数の学習モデルを用いるようにして、特徴量として動物種を与えるようにしてもよい。
【0045】
また、学習モデルには飼い主端末10において撮影した画像を学習モデルの特徴量に含めることができる。これにより、例えば、皮膚病などの発症部位を撮影した写真や動画等に基づいて来院要否を判定することができ、必要に応じて適切なタイミングで患者動物に医療処置を施すことができる。
【0046】
また、本実施形態では、学習モデルは来院が必要か否かを判定する分類器であるものとしたが、来院が必要な度合を求める予測器であってもよい。この場合、医療機関端末30からは来院要否に代えて来院必要度の入力を受け付けるようにし、トリアージ履歴の来院履歴も来院必要度に変更することができる。また、来院必要度が所定の閾値以上であるか否かにより来院要否を判定するようにすることもできる。
【0047】
また、来院要否に限らず、患者動物の健康が良好である度合を推定するようにしてもよい。この場合、学習モデルは、健康が良好である度合を予測する予測器とすることができ、医療機関端末30からは健康が良好である度合の入力を受け付けて教師データとし、機械学習を行うことができる。
【0048】
また、来院要否に限らず、患者動物がとるべきアクションを学習モデルを用いて推定するようにすることもできる。この場合、来院要否を推論する学習モデル(来院要否モデル)に加えて又は代えて、アクションを推論する学習モデル(アクションモデル)を学習モデル記憶部237に記憶することができる。学習処理武216は、アクションモデルを作成及び更新することができる。学習処理部216は、動物種に対応する問診内容を入力データとし、回答履歴の問診IDに対応するトリアージ履歴のアクションを教師データとして機械学習を行い、機械学習により作成又は更新されたアクションモデルを学習モデル記憶部237に登録することができる。
【0049】
また、本実施形態では、1回の問診結果を学習モデル(来院要否モデル)に与える特徴量であるものとしたが、来院要否モデル及びアクションモデルに与える特徴量として、問診結果に加えて、当該問診結果に先行する問診結果(動物IDが同一であり、問診IDが異なり、かつ日時が先行するもの)を与えるようにしてもよい。例えば、特定の質問に対して同じ回答が連続した場合などを特徴量とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 飼い主端末
20 管理サーバ
30 医療機関端末
211 問診送信部
212 回答受信部
213 来院要否判定部
214 来院要否送信部
215 来院要否取得部
216 学習処理部
231 飼い主情報記憶部
232 動物情報記憶部
233 質問記憶部
234 問診記憶部
235 回答履歴記憶部
236 トリアージ履歴記憶部
237 学習モデル記憶部