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特開2023-89157口内撮影装置、医療装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089157
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】口内撮影装置、医療装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20230620BHJP
   A61B 1/267 20060101ALI20230620BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61B1/00 650
A61B1/267
A61B1/24
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065907
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2019561542の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017254164
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518000693
【氏名又は名称】アイリス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【弁護士】
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】沖山 翔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】口内の所見に差が出る疾患に関する判断の補助材料を提供することができる口内撮影装置、医療装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】口内の画像を取得する撮像デバイスと、前記撮像デバイスの被写体に光を照射する光源と、所定の疾患の判定ためのアルゴリズムを記憶する記憶装置と、演算装置と、を備える撮影装置であって、前記演算装置は、前記画像及び前記アルゴリズムに基づき、前記所定の疾患の可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の結果を出力する出力処理と、を実行することを特徴とする口内撮影装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口内の撮影のために口腔内に挿入される口内撮影補助具であって、筒状の本体を含み、前記本体は、
撮像デバイスを挿入可能な開口を有する第1端部と、
前記第1端部とは反対側に位置して、前記本体の内側から前記本体の外側への視野を与える窓部を有する第2端部と、
前記第1端部から前記第2端部に向かって延び、前記第1端部から前記第2端部に向かう軸に沿って前記撮像デバイスが移動するのを許容する内周面と、
を含む口内撮影補助具。
【請求項2】
前記第1端部に設けられた鍔部を更に含む、請求項1に記載の口内撮影補助具。
【請求項3】
前記第2端部は、透明な部材により被覆された窓部を含む、請求項1に記載の口内撮影補助具。
【請求項4】
前記本体内の前記撮像デバイスが前記第2端部を超えて移動することを規制する規制部を更に含む、請求項1に記載の口内撮影補助具。
【請求項5】
前記規制部は、前記第2端部から前記本体の内側に向かって、前記本体の周方向に沿うように前記本体の内周面から突出する、請求項4に記載の口内撮影補助具。
【請求項6】
前記規制部は、前記本体の前記内周面において前記第1端部及び前記第2端部の間に設けられた凹部又は溝である、請求項4に記載の口内撮影補助具。
【請求項7】
前記本体は、外周面及び内周面の少なくともいずれかの上に前記本体の長手方向に沿って配置された目盛りを有する、請求項1に記載の口内撮影補助具。
【請求項8】
前記本体は、前記撮像デバイスが前記本体内での回転を抑制されながら前記本体内を前記軸に沿って移動可能とする案内部を有する、請求項1に記載の口内撮影補助具。
【請求項9】
前記内周面は、前記案内部として機能するべく、前記撮像デバイスの外形に対応した断面形状を有する、請求項8に記載の口内撮影補助具。
【請求項10】
前記案内部は、前記本体の前記内周面において凹状又は溝状に形成される、請求項9に記載の口内撮影補助具。
【請求項11】
前記口腔に対する前記本体の位置決めを容易にする指示部を更に含む、請求項1に記載の口内撮影補助具。
【請求項12】
前記指示部は、前記第1端部に設けられた鍔部に設けられる、請求項11に記載の口内撮影補助具。
【請求項13】
前記本体は、前記本体の内側と外側との間を貫通する少なくとも1個の孔を有する、請求項1に記載の口内撮影補助具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口内を撮影するための口内撮影装置、その口内撮影装置と口内撮影補助具とを含む医療装置、及び撮影された口内画像に基づいて所定の疾患を判定するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、咽頭の最深部に出現するリンパ濾胞にはインフルエンザに特有のパターンがあることを報告している。かかるパターンを有するリンパ濾胞をインフルエンザ濾胞と呼ぶことにする。インフルエンザ濾胞は、インフルエンザに特徴的なサインであって、発症後2時間程度で出現するとされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】宮本・渡辺著「咽頭の診察所見(インフルエンザ濾胞)の意味と価値の考察」日大医誌72(1):11-18(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インフルエンザ濾胞の的確な判別は、診断の正確性の飛躍的な向上に繋がると期待される。しかしながら、インフルエンザ濾胞の適切な見定めは、多くの症例を通じた集中的な訓練を必要とし、一般医師にとって決して容易ではない。残念なことに、上記の研究成果は、限られた範囲の医師の間で活用されるに留まっている。
ここで、咽頭所見に差が出る疾患は、インフルエンザ以外にも多数存在する。かかる疾患の診断についても、上記と同様の指摘が当てはまり得る。
更には、口腔の所見に差が出る疾患に対しても画像診断は有用である。
【0005】
そこで、本発明は、口内の所見に差が出る疾患に関する判断の補助材料を提供することができる口内撮影装置、医療装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、口内の画像を取得する撮像デバイスと、前記撮像デバイスの被写体に光を照射する光源と、所定の疾患の判定ためのアルゴリズムを記憶する記憶装置と、演算装置と、を備える撮影装置であって、前記演算装置は、前記画像及び前記アルゴリズムに基づき、前記所定の疾患の可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の結果を出力する出力処理と、を実行することを特徴とする口内撮影装置を提供する。
ここで、「口内」は、人はもとより動物全般の口腔内及び咽頭を含むものとする。また、「咽頭」は、咽頭後壁のリンパ濾胞を含む『ワルダイエル咽頭輪』も含むものとする。したがって、本発明における「患者」は人だけでなく動物全般を含む。
また、光源は、撮影という目的を達することができるものを広く含み、可視光を照射してもよいし、例えば近赤外線や赤外線のような非可視光を照射してもよいものとする。
【0007】
上記のような構成を有する本発明の口内撮影装置では、前記撮像デバイスが前記画像として動画像を取得し、前記演算装置が、前記動画像に含まれる複数枚の静止画像の中から、所定の条件を満たす少なくとも1枚の静止画像を抽出する抽出処理を更に実行し、前記抽出処理の結果に基づいて前記判定処理を実行してもよい。ここで、動画像の取得とは、撮像デバイスによる撮影を意味し、撮影された画像の記録媒体への記録を伴ってもよいし、伴っていなくてもよい。また、所定の条件とは、画像の内容に関する条件でもよいし、画像抽出のタイミングに関わる条件でもよい。
【0008】
また、上記のような構成を有する本発明の口内撮影装置は、患者情報の入力を受け付ける入力装置を更に備え、前記演算装置が、更に前記患者情報に基づいて、前記判定処理を実行してもよい。
【0009】
また、上記のような構成を有する本発明の口内撮影装置は、前記撮像デバイスによって取得された画像及び前記抽出処理の結果のうち少なくとも一方を表示する表示装置を更に備えていてもよい。
【0010】
また、上記のような構成を有する本発明の口内撮影装置では、前記撮像デバイスが、前記口内に装着される筒状の口内撮影補助具内で前記口内の画像を取得し、前記記憶装置が、使用済みの口内撮影補助具の識別情報を記憶し、前記演算装置が、新たな判定に使用される口内撮影補助具の識別情報を取得する取得処理と、前記新たな判定に使用される口内撮影補助具の識別情報と一致する前記記憶装置の記録の有無を調べる検索処理と、前記検索処理の結果に応じて前記新たな判定を制限する制限処理と、を更に実行してもよい。
【0011】
本発明は、上述した口内撮影装置と、口内に着脱可能に装着される筒状の口内撮影補助具と、を含み、前記口内撮影補助具は、開口を有する第1端部と、前記第1端部とは反対側に位置して、前記口内撮影補助具の内側から前記口内撮影補助具の外側への視野を与える窓部を有する第2端部と、を含むことを特徴とする医療装置をも提供する。
【0012】
また、本発明は、所定の疾患の判定ためのアルゴリズムを記憶した記憶装置と、演算装置と、を備えるコンピュータに対して、前記撮像デバイスによって取得された口内画像及び前記アルゴリズムに基づき、前記所定の疾患の可能性を判定する判定処理と、前記判定処理の結果を出力する出力処理と、を実行させるためのプログラムをも提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、口内の所見に差が出る疾患に関する判断の補助材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の代表的な実施形態に係る口内撮影装置5及び口内撮影補助具3を含む医療装置1の概略図である。
図2図1の口内撮影補助具3を示す斜視図である。
図3図2の口内撮影補助具3の縦断面図である。
図4図2の口内撮影補助具3を口腔71内に挿入した状態の一例を示す図である。
図5】変形例1に係る口内撮影補助具13を示す斜視図である。
図6図5の口内撮影補助具13を示す縦断面図である。
図7図5の口内撮影補助具13を口腔71内に挿入した状態の一例を示す図である。
図8】変形例2に係る口内撮影補助具23を示す斜視図である。
図9】変形例3に係る口内撮影補助具43の斜視図である。
図10図9の口内撮影補助具43の横断面図である。
図11】包装された口内撮影補助具3を示す概略図である。
図12図1の口内撮影装置5の外観の一例を示す図である。
図13図9の口内撮影装置5のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図14図9の口内撮影装置5の機能構成の一例を示すブロック図である。
図15図9の口内撮影装置5の動作例1を示すフローチャートである。
図16図9の口内撮影装置5の動作例2を示すフローチャートである。
図17】判定アルゴリズムの生成手順を示すフローチャートである。
図18】画像抽出手順の一例を示すフローチャートである。
図19図9の口内撮影装置5の動作例3を示すフローチャートである。
図20】口内撮影装置5の撮影動作の例を示すフローチャートである。
図21】人7の頭部の断面形状の概略図である。
図22】口腔71内の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る口内撮影装置及び口内撮影補助具を含む医療装置を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はかかる実施形態及び図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0016】
また、以下の開示は、医療装置をインフルエンザの判定のために使用することを想定しているが、本発明はこれに限られない。例えば、溶連菌感染症、アデノウイルス感染症、EBウイルス感染症、マイコプラズマ感染症等のように、咽頭所見に差が出る疾患は多数存在する。また、これら疾患でも、口腔内に重要な所見が現れることがある。更には、これら疾患以外の疾患でも、口腔内に所見が現れることがある。このように咽頭及び口腔内に所見が現れるいずれかの疾患の判定のために医療装置が使用されてもよい。また、口内撮影補助具は、例えばスマートフォン及びタブレット端末のような他の装置との組合せで使用されてもよい。
【0017】
1 医療装置の概要
図1を参照して、本実施形態の医療装置1の概要を説明する。図示のように、医療装置1は、口内撮影装置5及び口内撮影補助具3を含むものである。口内撮影装置5は、口内撮影補助具3との組合せで使用されることが好適であるが、単独で又は他の補助具との組合せで使用されてもよい。
【0018】
口内撮影装置5は、被写体の画像を取得する撮像デバイス57を含み、また、この装置5には予め専用のソフトウェアがインストールされている。ユーザ(例えば医師)は、インフルエンザの疑いのある判定対象者7(例えば患者)に口内撮影補助具3を咥えさせ、撮影のための視野を確保する。その後に、ユーザは、撮像デバイス57を口内撮影補助具3に挿入し、その対象者7の咽頭72を撮影する。また、ユーザは、口内撮影補助具3の挿入深さ及び挿入角度を調節することで、対象者7の口腔内71を撮影することもできる。あるいは、ユーザは、撮像デバイス57を内部に収納した口内撮影補助部3を判定対象者7の口内に挿入してもよいし、判定対象者7に口内撮影補助部3を口内に挿入させてもよい。
【0019】
撮影された画像は、事前に生成された判定アルゴリズムによって処理される。かかる処理は、口内撮影装置5で行われることを想定しているが、他のコンピュータで行われてもよい。例えば判定がインフルエンザの可能性に関する場合、インフルエンザ濾胞等のインフルエンザ固有の咽頭症状(パターン)を判定アルゴリズムが検出し、インフルエンザらしさを表示する。これにより、例えば経験の浅い医師や研修医でも、正確かつ早期からのインフルエンザ診断が可能となる。また、経験豊かな医師にとっても、有用な判断資料を得ることができる。更には、インフルエンザの正診率が上がることで、患者は一度の受診で通院を終えることができるとともに、適切な治療をより早期から受けることができる。
【0020】
2-1 口内撮影補助具
図2図4を参照して、本実施形態の口内撮影補助具3を詳細に説明する。
口内撮影補助具3は、人7の口内(口腔内71及び咽頭72)の撮影のために使用される補助的な道具である。より具体的には、口内撮影補助具3は、口内の撮影の際に口腔71内に挿入され、口腔内71又は咽頭72を含む撮影領域の良好な視野を得るためのものである。更に良好な視野を得るという観点からは、口内撮影補助具3は透光性を有することが好ましい。本実施形態では、口内撮影補助具3の一例としてマウスピースを想定しているが、これに限られるものではない。
【0021】
図2に示すように、口内撮影補助具3は、本体31、鍔部34及び規制部35を備えている。ただし、口内撮影補助具3は、本体31を有していれば足り、鍔部34及び規制部35の両方又は一方を有していなくてもよい。本実施形態では、口内撮影補助具3として、一体成型された樹脂製品を想定しているが、口内撮影補助具3は、紙や布、金属などの他の素材で作製されてもよいし、複数の素材で作製されていてもよい。また、口内撮影補助具3は、使い捨てタイプであることを想定しているが、再利用可能なタイプでもよい。
【0022】
本体31は、全体として筒状を呈している。本体31は、口腔71内に深く挿入されると、例えば図1図21との比較から分かるように、舌73を下方へ押しやるとともに、軟口蓋74を上方へ押しやる。これにより、例えば図4図22との比較から分かるように、口内撮影補助具3(本体31)の内側から咽頭72の良好な視野を確保できる。
【0023】
本実施形態において、本体31は実質的に略直線状に延びている。つまり、本体31の内径及び外径は長手方向にわたって実質的に一定である。ただし、本体31は、その内周面における撮像デバイス57のスライドを妨げない限り、一部又は全体が湾曲していてもよいし、本体31の内径又は外径が変わってもよい。
【0024】
本体31の断面形状としては、ここでは真円状を想定している。ただし、断面形状は、楕円状でもよいし、四角形のような多角形状の断面でもよいし、例えば略D字状のような非対称な形状でもよい。本体31が楕円状、多角形状又は非対称の断面形状を持つ場合、本体31の形状に対応した撮像デバイス57は、本体31内でのスライドの際、本体31の軸方向を中心とした周方向の移動(つまり回転)を規制又は抑制されるので、判定に適した、向きの揃った口内画像を得ることができる。
【0025】
本体31が真円状の断面形状の場合、図6を用いて後述するように、撮像デバイス57の外面及び本体31の内周面に互いに係合するレール及び突起部を設けることで、撮像デバイス57の本体31内での回転を規制してもよい。
【0026】
図3に示すように、本体31は、互いに反対側に位置する端部32,33を含む。口内撮影補助具3が口腔71に装着されるとき、端部32は外部に露出し、端部33は口腔71内に位置することになる。したがって、端部32は第1端部に、端部33は第2端部に相当する。
【0027】
本体31の外周面は滑らかであり、本体31と端部33も接続面36を介して滑らかに連続して一体的になるよう接続されている。つまり、本体31の外面は、口腔71を傷つけないように滑らかに加工されている。
【0028】
本体31は、目盛り37を有する。目盛り37は、本体31の長手方向に沿って配置され、本体31が口腔71内にどれぐらい深く挿入されているかの目安として機能する。目盛り37は、本体31の外周面及び内周面のいずれかに設けられればよい。目盛り37が外周面に設けられる場合には、図2に示すように、上唇及び上前歯75が接触する側、つまり上側に設けられるとよい。目盛り37は、所定の間隔(例えば1cm刻み)で配置されるとよい。また、図2に示す目盛り37は本体31の周方向において半周近くの長さを有するが、これに限られるものではなく、短くてもよいし長くてもよい。
【0029】
本実施形態では、目盛り37の一例として、本体31の長手方向に沿って整列する複数の隆起部を想定している。この隆起部の表面は、判定対象者7の口腔を傷付けないように滑らかに加工されているとよい。もっとも、目盛り37は、例えば、本体31の外周面の長手方向に延びる略直線状の凸部であってもよく、また、本体31の外周面又は内周面上に印刷又は表示されてもよい。
【0030】
図3に示すように、端部32は開口32Aを有し、開口32Aには撮像デバイス57を挿入することが可能である。したがって、撮像デバイス57は、開口32Aから本体31内に挿入され、開口32Aから本体31の外へ取出されることになる。
【0031】
端部32には鍔部34が設けられている。鍔部34は、端部32から本体31の径方向の外側に向かって延びている。鍔部34は、本体31が口腔71の奥深くに入り込むと判定対象者7の唇又は前歯に接触し、その判定対象者7が口内撮影補助具3を誤飲することを防止する。つまり、鍔部34は、ストッパとしての機能を果たす。本実施形態では、鍔部34は、端部32の全周に亘って設けられているが、例えば、端部32において上唇と下唇に対応する箇所に部分的に形成されてもよい。また、鍔部34の外縁は、図2のように真円状でもよいし、楕円状でもよいし、更には四角形のような多角形状でもよい。
【0032】
鍔部34には、例えば判定対象者7が咳き込んだときに、判定対象者7の口からの飛沫が当たる。つまり、鍔部34は、医師が判定対象者7からの飛沫を回避することにも役立つ。この飛沫回避機能を持たせるためには、例えば、使用年齢や体格等に応じて、鍔部34の形状及び寸法を適宜選択すればよい。
【0033】
端部33もまた開口し、窓部33Aを形成している。この窓部33Aは、本体31の内側から本体31の外側に視野を与えるためのものであり、ここでは、本体31内の撮像デバイス57のレンズを外部に露出させている。ただし、窓部33Aは、例えば透明な部材で覆われていてもよい。
【0034】
端部33は本体31の内側に向かって突出し、規制部35を形成している。規制部35は、本体31内の撮像デバイス57が接触して、端部33を通過することを規制するために設けられる。もっとも、規制部35は、端部33に設けられていなくてもよい。例えば、追って図6との関係で述べる案内部141(凹部又は溝)は、その終端部において撮像デバイス57の係合突起57Aと接触し、撮像デバイス57の奥側への移動を規制するから、規制部35としての役割をも果たす。
【0035】
上述した口内撮影補助具3を使用して咽頭72を撮影する場合、ユーザは、図1に示すように、判定対象者7の口腔71内に口内撮影補助具3を挿入する。このとき、本体31は、舌73を下方へ、軟口蓋74を上方へ押しやる。その後に又は同時に、ユーザは、撮像デバイス57を本体31内に挿入する。このとき、図4に示すように、撮像デバイス57の視野には舌73も軟口蓋74も入らないか、入るとしても僅かな範囲を占めるに留まる。したがって、咽頭72の良好な視野を得ることができる。
【0036】
また、鍔部34により、判定対象者7による口内撮影補助具3の誤飲を防止することができる。併せて、鍔部34は、判定対象者7の口からユーザへの飛沫の飛散を抑制し、ユーザへのインフルエンザ等の感染症の二次感染のリスクを低減することができる。
【0037】
更に、目盛り37は、口内撮影補助具3を、判定対象者7の体格や撮影部位に応じて適切な口腔深さに配置することを可能にする。このことは、意図する部位の鮮明な画像の撮影に寄与するとともに、本体31を必要以上に深く挿入することによる判定対象者7の不快感及び噎せ込みを抑制することができる。
【0038】
2-2 口内撮影補助具の変形例1
図5図7を参照して、本実施形態の変形例1に係る口内撮影補助具13を説明する。
口内撮影補助具13は、上述した口内撮影補助具3と同種の構成要素を備え、更に略直線状の案内部141を含む。他方、撮像デバイス57は、案内部141に係合する係合突起57Aを含む。したがって、案内部141は、撮像デバイス57が本体131に対して回転することなく、本体131内をスライド可能とする。
【0039】
変形例1では、図6に示すように、案内部141の一例は、撮像デバイス57の外周面上の係合突起57Aと対応するように端部132から端部133に向かって略直線状に延びる溝である。あるいは、案内部141は、本体の内周面から突出する一対のレールでもよい。
【0040】
選択的に、本体131の断面形状が楕円形状、多角形状、又は例えば略D字状のような非対称形状であり、かつ、撮像デバイス57が本体131の断面形状に対応した外形である場合には、撮像デバイス57が本体131に対して回転することなく本体131内をスライド可能であるから、この場合の本体131の内周面は案内部としても機能することになる。
【0041】
図5に示すように、本体131及び鍔部134の外面上には、判定対象者7の口唇に対する本体131の位置決めを容易にするための指示表示142が設けられている。図7に示すように、指示表示142は例えば、判定対象者7の上唇の中央部又は上前歯75に対応する位置、つまり上部の中央に配置されるとよい。ユーザが、例えば指示表示142を判定対象者7の上唇の中央に揃えた状態で口内撮影補助具3を口腔71に装着することで、撮像デバイス57によって撮影される画像の向きがほぼ同じ向きに揃うことになる。これにより、画像を用いた機械学習及び特定の疾患(例えばインフルエンザ)の判定処理が容易になる。
【0042】
2-3 口内撮影補助具の変形例2
図8を参照して、本実施形態の変形例2に係る口内撮影補助具23を説明する。
口内撮影補助具23は、上述した口内撮影補助具3と同種の構成要素を備え、更に、本体231に少なくとも1個の孔243を有する。孔243は、本体231の内側と外側との間を貫通している。かかる孔243により、口内撮影補助具23を咥えた判定対象者7が呼吸をすることが容易になり、その判定対象者7に安心感をもたらし得る。なお、孔243の大きさ、数及び配置は、判定対象者7の唾液が入りにくいように適宜設定されてよい。
上述した変形例2の構成要素、例えば案内部は、上記実施形態や変形例1に適用することも可能である。
【0043】
2-4 口内撮影補助具の変形例3
図9及び図10を参照して、本実施形態の変形例3に係る口内撮影補助具43を説明する。口内撮影補助具43は、上述した口内撮影補助具3と同種の構成要素を備えている。
【0044】
口内撮影補助具43の本体431は、透明又は半透明の樹脂成型品である。したがって、口内撮影装置5の撮影領域は、窓部433Aから見える範囲よりも更に広がり、より広い視野を得ることができる。また、本体431の内径は、端部432から端部433に向かって僅かに小さくなっており、これにより、口内撮影補助具43の樹脂成型が容易になる。
【0045】
図10に示すように、目盛り437は本体431の内周面に形成され、これにより本体431の外周面を滑らかにすることができる。目盛り437は、本体431の内周面から突出する突起でもよいし、内周面に表示又は塗布されたマークでもよい。
【0046】
図9に示すように、鍔部434の外縁は上下方向に長い楕円状をなし、これにより口内撮影補助具43を判定対象者7の口唇に対して容易に位置決めすることができる。また、鍔部434の外縁は、端部433に向かって突出し又は他の部分よりも肉厚に形成されている。これにより、鍔部434の材料の量及びコストを減らしながら必要な強度を確保している。
【0047】
2-5 口内撮影補助具の他の変形例
本体31は、端部32から端部33に亘って実質的に同じ内径を有している必要はない。例えば、本体31は、端部32に向かうにつれて内径が拡大するように構成されてもよい。かかるラッパ状の本体31により、複数の口内撮影補助具3を重ねることが可能となり、輸送や保管のための空間を削減することができる。
【0048】
また、撮像デバイス57として、スマートフォン又はタブレット端末に搭載されたカメラが採用されてもよい。このようなカメラと口内撮影補助具3(開口32A)との位置関係を固定するために、本体31又は鍔部34に枠やクリップを設けてもよい。例えば、口内撮影補助具3は、スマートフォンを上縁又は横縁から挟み込むためのクリップや、スマートフォンの角部に押し当てるためのL字状の枠を備えていてもよい。
【0049】
2-6 口内撮影補助具の包装例
口内撮影補助具3は、滅菌され、図11のように、識別子91が表示された袋9で個別に包装されてもよく、これにより口内撮影補助具3の衛生的な管理が可能となる。なお、識別子91は、口内撮影補助具3上に表示されてもよい。
【0050】
識別子91は、例えば口内撮影補助具3の製品IDを含む識別情報を含んでいる。識別子91としては例えばバーコード及びRFタグが挙げられるが、口内撮影装置5による読取り及び医療装置1の医療機関での使用を考慮すれば、バーコードが好ましい。バーコードとしては、一次元バーコード、二次元バーコードのいずれをも利用可能である。
【0051】
例えば、口内の撮影前に、撮影デバイス57で識別子91を撮影し、袋9内の口内撮影補助具3の識別情報を口内撮影装置5に読み込むことで、該当する口内撮影補助具3のロット情報を確認することができる。これにより、口腔に触れることによる患者への有害事象が生じた場合でもトレーサビリティを担保することができ、また、口内撮影補助具3の再利用を検出することも可能となるため、それによる汚染及び二次感染を防止し、衛生面で安全性を確保することができる。
【0052】
3-1 口内撮影装置
図12図20を参照して、口内撮影装置5を詳細に説明する。
口内撮影装置5は、撮像デバイス、演算装置及び記憶装置を含むコンピュータである。ここでは、口内撮影装置5が1台のコンピュータで構成されていることを想定しているが、複数台のコンピュータで構成されていてもよい。例えば、遠隔画像診断では、撮影機能と判定機能とが別個のコンピュータにより実行されてもよい。口内撮影装置5は、図13に示すように、撮像デバイス57、演算装置の一例としての中央処理装置(CPU)51、記憶装置の一例としてのランダムアクセスメモリ(RAM)52及び読み出し専用メモリ(ROM)53、通信インターフェイス54、入力デバイス55、出力デバイス56及び光源58を備える。
【0053】
通信インターフェイス54は、有線又は無線の通信モジュールであり、例えばアプリケーションプログラム及び判定アルゴリズムの取得及び更新、並びに、撮影された画像の回収(送信)のために利用される。無線の通信インターフェイスとしては、例えば、Wi-Fiのような無線LAN規格、BLUETOOTH(商標)のような近距離無線通信規格、第3世代・第4世代移動通信規格のいずれかを満たす機器が想定されているが、これに限られない。
【0054】
入力デバイス55は、ユーザ入力を受け付ける入力装置の一例であり、例えば図12に示すような各種の操作ボタン及び操作キーである。あるいは、入力デバイス55は、タッチパネルやマイクロフォン、操作ダイヤル、スタイラスなどの他の入力手段でもよい。入力デバイス55は口内撮影装置5の本体(筐体)に配置されてもよいし、例えば撮像デバイス57に配置されてもよい。
出力デバイス56は、判定結果を出力する出力装置の一例であり、例えばディスプレイ、スピーカ、プリンタである。
【0055】
撮像デバイス57は画像を取得する。この実施形態では、撮像デバイス57において取得する画像として動画像を想定している。取得される画像サイズは例えば640X480ピクセルで、フレームレートは例えば30fpsで足りる。ただし、画像サイズ及びフレームレートはこれに限られるものではない。
選択的に又は追加的に、撮像デバイス57は静止画像を撮影可能とされていてもよい。静止画像を撮影する場合、撮像デバイス57は連写機能を有することが望ましいが、これに限られない。
【0056】
本実施形態では、図12に示すように、撮像デバイス57は、口内撮影装置5の本体(筐体)とは分離し、単独で口内撮影補助具3内に挿入されることが想定されている。撮像デバイス57はまた、口内撮影補助具3の本体31の内周面に対応した外形(例えば円柱形状)を有することが好ましい。
ただし、撮像デバイス57は、例えばスマートフォン又はタブレット端末のように、口内撮影装置5の本体に組み込まれてもよい。
【0057】
撮像デバイス57は、図示しないオートフォーカス機構を有しており、例えば、レンズの正面に焦点が特定部位に合うように設定されていてもよい。撮像デバイス57はまた、自動で特定部位(例えば咽頭後壁)を認識してそこにフォーカスする機能を有していてもよい。撮像デバイス57は更に、ズーム機能を有しており、例えば、咽頭後壁又は濾胞の寸法に応じて適切な倍率で撮影するように設定されてもよい。
【0058】
撮像デバイス57の作動中には、光源58から被写体に向かって光が照射されてもよく、これにより良質な画像の確保を図っている。ここで、光源58が照射する光は、可視光でもよいし、例えば近赤外線や赤外線のような非可視光でもよいものとする。また、例えば1つの光源が可視光を照射し、他の光源が近赤外線又は赤外線を照射するように、複数の光源58がそれぞれ特定の範囲の波長の光の照射を担当してもよい。
【0059】
これに対して、撮像デバイス57は、光源58が発する光を適切に受光し得る種類及び数の受光素子を有しているとよい。例えば、光源58が可視光を発する場合には、撮像デバイス57は、可視光を受光するのに適した受光素子を有し、光源58が非可視光を発する場合には、撮像デバイス57は、非可視光を受光するのに適した受光素子を有していればよい。光源58は、例えば発光ダイオード(LED)又は有機エレクトロルミネッセンス(OEL)でよい。
【0060】
選択的に、撮像デバイス57の作動中に、出力デバイス56としてのディスプレイに、撮影中の画像と半透明のイラストとが重ねて表示されるようプログラムされていてもよい。ユーザが、イラストとそれに対応する部位(例えば口蓋垂や口蓋扁桃)の画像とが重なるように撮像デバイス57を動かすと、判定のために適切な画像を得ることが可能となる。
【0061】
ROM53は、口内撮影装置5における各種処理を実行するためのアプリケーションプログラム、及び、特定の疾患の判定ためのアルゴリズムを記憶している。ROM53はまた、撮像デバイス57において取得した画像及び口内撮影補助具3の識別情報、入力デバイス55から入力された各種情報(例えば判定対象者7の情報)、判定結果を記憶してもよい。ROM53は、内蔵タイプでも、例えばUSBメモリ又はMicroSDカードのような着脱可能なタイプでもよいし、更には、外部サーバなどの外部コンピュータの記憶装置の記憶領域をも含んでいてもよい。
【0062】
CPU51は、ROM53に記憶されたアプリケーションプログラムをRAM52に読み出し、次の処理(a)~(d)を含む各種処理を実行することができる。なお、撮像デバイス57が取得した画像が1枚の静止画像である場合には、抽出処理は省略されてもよい。
【0063】
3-2 CPUが実行する主な処理
(a)抽出処理
CPU51は、撮像デバイス57から取得した画像から、所定の条件を満たす少なくとも1枚の静止画像を抽出する。例えば撮像デバイス57が動画像を撮影する場合には、CPU51は、動画像に含まれる複数枚の静止画像の中から少なくとも1枚の静止画像を抽出する。動画像の撮影時には所定のフレームレートで静止画像が記録される。その中には撮影条件が良いものとそうでないものとが含まれるはずである。次の判定処理で用いるための画像として、撮影条件が良いもの数枚を選び出すのである。
【0064】
例えば、予め多くの同様の画像データを元に、特定の撮影角度、特定のライトの照射具合、特定の視野の広さ、特定部位(例えば咽頭など)の描出位置、特定部位へのフォーカスの程度の全部又は一部を満たすと特定疾患(例えばインフルエンザ)の診断判定の精度が高い、という条件を見出しておき、これを撮影条件の良し悪しの判断基準とする。このような基準が採用される場合には、抽出処理は、例えば図18のように、撮影対象の描出位置に基づいて画像を順位付けし(ステップS31)、特定部位へのフォーカスの程度に基づいて画像を順位付けし(ステップS32)、光の照射状態に基づいて画像を順位付けし(ステップS33)、最後に、総合順位において上位である数枚の画像を選び出す(ステップS34)という手順を経ることになる。追加的に、総合順位の算出前に、視野の広さ又は撮影角度の基準にしたがって画像を順位付けしてもよい。あるいは、抽出処理には、ディープラーニング(深層学習)機能を用いても良い。
【0065】
(b)判定処理
CPU51は、撮像デバイス57から取得した画像(例えば抽出処理で得た少なくとも1枚の静止画像)及びROM53に記憶された判定アルゴリズムに基づき、特定の疾患の可能性を判定する。特定の疾患は、本実施形態ではインフルエンザである。判定のために、ユーザが入力デバイス55を介して入力した判定対象者7の情報(以下、患者情報という)が併用されてもよい。患者情報は、例えば、年齢、性別、発症からの経過時間、インフルエンザの諸症状(咳、鼻水、寒気ほか)の有無、及び、他のインフルエンザ患者との接触歴を含む。患者情報は、人種や遺伝子情報、日付や季節、位置情報(受診地の緯度経度)及び気象情報(例えば天気、気温など)の全部又は一部を含んでいてもよい。
【0066】
ここで、判定アルゴリズムは、例えば図17に示す手順で生成されてもよい。
例えばインフルエンザの場合では、まず、医療機関において患者の咽頭画像と、それに付属する、インフルエンザか否かを示す正解ラベルとを収集する(ステップS21)。正解ラベルは、例えば、患者に受けてもらった、スワブによるインフルエンザ迅速検査、PCR検査、ウイルス分離培養検査の結果に基づいて付与される。PCR検査及びウイルス分離培養検査は、結果の判明までに数週間を要するものの、極めて高い正確性を示すため、その結果は正解ラベルとして好適である。また、正解ラベルは、画像データだけでなく、上記の患者情報を含んでいてもよい。
【0067】
次いで、上記のPCR検査またはウイルス分離培養検査の判定結果を正解としてラベル付けした教師データ(画像データ)を生成する(ステップS22)。この教師データに基づいて機械学習を行い、判定アルゴリズムを生成する(ステップS23)。この判定アルゴリズムは、画像を与えるとその画像がインフルエンザらしいか否かを判定するためのアルゴリズムである。これによって、インフルエンザである可能性を数値化して、例えば「98.5%」と示すことができるようになる。
【0068】
選択的に、例えば「判定:インフルエンザ陽性」及び「判定:インフルエンザ陰性」のように、陽性又は陰性を判定してもよい。この場合、陽性又は陰性の判定に加えて、判定の信頼性を数値化したり、高中低などの段階評価で示したりしてもよい。あるいは、インフルエンザである確証度合いを、高中低などの段階評価で示してもよい。
【0069】
(c)出力処理
CPU51は、判定処理の結果を出力する。出力方法の一例は、ディスプレイへの表示、他のコンピュータへの送信である。
【0070】
(d)口内撮影補助具の識別情報の取得
選択的に、CPU51は、新たな判定に先立ち、その判定に使用するための口内撮影補助具3の識別情報の入力をユーザに要求してもよい。例えばユーザが撮像デバイス57で識別子91を撮影すると、CPU51は、識別子91の画像から、対応する口内撮影補助具3の識別情報を取得する。
【0071】
次いで、CPU51は、ROM53内の記録を検索し、該当する口内撮影補助具3と一致する記録の有無を調べる。あるいは、CPU51は、外部サーバ上の口内撮影補助具3の使用記録を調べさせてもよい。
【0072】
一致する記録がない場合、CPU51は、新たな判定を許容する。一致する記録がある場合、CPU51は、該当する口内撮影補助具3は使用済みであると判定する。そして、CPU51は、例えば、ディスプレイにアラームを表示させたり、一連の処理を終了させたりしてもよい。つまり、CPU51は、検索結果に応じて新たな判定を制限することができる。
【0073】
3-3 口内撮影装置の機能構成
図14は、口内撮影装置5の機能構成を示す。口内撮影装置5は、撮像部61、抽出部62、判定部63、カメラ制御64、記憶部65、入力部66、出力部67及び通信部68を含んでいる。口内撮影装置5のハードウェア構成との対応関係を示せば、撮像部61は撮像デバイス57に、抽出部62、判定部63及びカメラ制御64はCPU51に、記憶部65はROM53に、入力部66は入力デバイス55に、出力部67は出力デバイス56に、通信部68は通信インターフェイス54に、それぞれ対応する。ここで、カメラ制御64は、撮像デバイス57を制御して、オートフォーカス機能及びズーム機能等の諸機能を実現するものである。
【0074】
その他の機能として、口内撮影装置5は、撮影が行われた時刻を取得する計時機能、撮影が行われた位置情報を取得する位置情報取得機能、当該位置における気象情報を取得する気象情報取得機能を有していてもよい。計時機能は内蔵の時計として実現されてもよいし、外部の時刻サーバにアクセスする通信インターフェイスの一機能であってもよい。位置情報取得機能は例えば全地球測位システム(GPS)として実現されてもよい。気象情報取得機能は、外部の気象サーバにアクセスする通信インターフェイスの一機能であってもよい。
【0075】
3-4 口内撮影装置の動作例1
図15を参照して、口内撮影装置5の動作例1を説明する。ここでは口内撮影装置5が動画像を撮影する場合の動作を例として挙げる。ただし、口内撮影装置5は静止画像を撮影してもよく、この場合にも口内撮影装置5は同様に動作する。
【0076】
電源が投入されると、口内撮影装置5は、撮像デバイス57による撮影を開始してディスプレイに表示するとともに、ステップS1において、録画ボタン(入力デバイス55の1つ)が押下されたかどうかを判定する。録画ボタンの押下を確認しないときには、口内撮影装置5は、ステップS1を繰り返す。
【0077】
録画ボタンの押下を確認すると、口内撮影装置5は、ステップS2において、録画を開始する。併せて、口内撮影装置5は、光源58を点灯させる。ユーザは、判定対象者7の口腔71に口内撮影補助具3を装着し、その後に口内撮影補助具3に撮像デバイス57を挿入する(図1参照)。撮像デバイス57は、口内撮影補助具3内のスライド中にも判定対象者7の口内(口腔内71又は咽頭72)を撮影する。
【0078】
ステップS3において、口内撮影装置5は、取得した動画像に含まれる複数の静止画像の中から、判定のために適切な静止画像を抽出する。このとき、抽出された静止画像が抽出結果としてディスプレイに表示されてもよい。
【0079】
口内撮影装置5は、ステップS4において、抽出された静止画像及び判定アルゴリズムに基づいて、特定の疾患らしさを判定し、ステップS5において判定結果を例えばディスプレイに出力する。これにより一連の動作が終了する。
【0080】
このように、機械学習により生成された判定アルゴリズムを用いて特定の疾患の可能性を評価しているので、高精度の判定結果を期待することができる。
撮影条件の良い画像が判定のために選ばれるため、判定の精度が向上する。
口内撮影装置5が口内撮影補助具3と組み合わせて使用されることで、視野が広く、鮮明な画像を得ることができる。このことは、判定精度の向上に寄与する。
【0081】
3-5 口内撮影装置の動作例2
図16を参照して、口内撮影装置5の動作例2を説明する。この動作例2は、先に述べた動作例1と同種のステップを含み、更にユーザによる抽出画像の確認ステップ(S14)、患者情報の入力ステップ(S16)、及び総合判定(S17)を含んでいる。
【0082】
具体的には、口内撮影装置5は、電源が投入されると、録画ボタンの押下を確認し(ステップS11)、録画を開始し(ステップS12)、判定のための画像を抽出する(ステップS13)。そして、口内撮影装置5は、抽出した画像を例えばディスプレイに表示し、ユーザに対して、当該画像を判定のために使用するか否かの確認を求める(ステップS14)。もしユーザが「NO」を選択すると、再度ステップS12,S13を実行し、新たな判定用の画像をユーザに提示する。
【0083】
ステップS14においてユーザが「YES」を選択すると、口内撮影装置5は、抽出された画像に基づいて特定の疾患らしさを判定する(ステップS15)。
【0084】
次いで、口内撮影装置5は、ユーザに対して患者情報の入力を求める(ステップS16)。ここで、患者情報は、例えば受診時の体温やワクチン接種の有無といった、定型化されたシンプルな情報である。かかる患者情報は、図9に例示するように、ソフトウェアが一律に処理できる形で入力される。例えば、プルダウンメニューや、半角数字以外を拒否するような入力フォーム設定が利用されてもよい。あるいは、口内撮影装置5は、有線又は無線回線を介して、外部コンピュータ(例えば電子カルテシステム)から患者情報を取得してもよい。なお、ステップS16は、ステップS11に先立って実行されてもよい。
【0085】
そして、上記の患者情報と、画像に基づく特定の疾患らしさの評価の両方を統合して、全体としてその疾患らしさを計算する(ステップS17)。計算結果は、例えばディスプレイに表示され(ステップS18)、一連の手順が終了する。
【0086】
このように、口内撮影装置5が、ユーザによる確認済みの画像に基づいて特定の疾病の可能性を評価することで、判定の精度及び信頼性が向上する。
更に患者情報に基づいて判定を行えば、判定の精度及び信頼性が更に向上することが期待される。
【0087】
3-6 口内撮影装置の動作例3
図19を参照して、口内撮影装置5の動作例3を説明する。この動作例3は、口内撮影補助具3の識別情報を取得する手順(ステップS41)を含んでいる。
【0088】
具体的には、口内撮影装置5は、電源が投入されると、ステップS41において、例えばディスプレイへの表示を介して、ユーザに対して口内撮影補助具3の識別情報の入力を求める。例えばユーザが撮像デバイス57で袋9上の識別子91を撮影したり、入力デバイス55を介して識別情報を入力したりすると、口内撮影装置5は、口内撮影補助具3の識別情報を取得する。
【0089】
口内撮影装置5は、識別情報を用いて、当該の口内撮影補助具3のロット情報を調べてもよい。例えば、口内撮影装置5は、ROM53内の記録に当該口内撮影補助具3の製品IDが含まれるかどうかを検索してもよいし、外部コンピュータに当該製品IDの有無を調べさせてもよい。
【0090】
該当する製品IDが内部又は外部の記録にある場合には、口内撮影装置5は、アラームを出力したり、一連の処理を終了させたりしてもよい。アラームとしては、例えば当該の口内撮影補助具3が使用済みである旨のディスプレイへの表示が挙げられる。これにより口内撮影補助具3の再利用を制限し、二次感染の予防を含む口内撮影補助具3の安全性を高めている。また、口内撮影補助具3とそれを利用した判定対象者7とを1対1に対応させることが可能になるため、将来における追跡調査が容易になる。
【0091】
その後、口内撮影装置5は、ステップS42において口内の撮影を行う。ここで、口内の撮影処理は、上述した動作例1,2と同じでもよいし、追って述べる手順で行われてもよい。そして、口内撮影装置5は、ステップS43において特定の疾患らしさを判定し、ステップS44において判定結果を出力し、一連の処理を終了する。
【0092】
3-7 口内撮影の他の例
図20を参照して、口内撮影の他の手順を説明する。ここで述べる手順は、上述した動作例1~3における画像取得手順に代替可能できる。また、この手順は、機械学習用の訓練データの収集のために利用できる。
【0093】
まずステップS51において、口内撮影装置5は患者登録を行う。患者登録は、例えばユーザが口内撮影装置5に入力し又は撮影した患者IDを記録することで行われる。
【0094】
次いで、ステップS52において、口内撮影装置5は画像を取得する。ここでいう画像は静止画像であり、例えば、撮像デバイス57において撮影された画像の中から、所定の時間間隔(例えば1秒ごと)に抜き出された一組の静止画像で構成されてもよい。
【0095】
そして、ステップS53において、口内撮影装置5は、取得した画像を例えばディスプレイに表示し、ユーザに確認を求める。ステップS54においてユーザから承認が得られると、口内撮影装置5は、ステップS55において承認された画像を保存し、一連の撮影処理を終了する。ユーザの承認が得られない場合には、ステップS52に戻って再び画像を取得する。
【0096】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。上記のように、例えば、溶連菌感染症、アデノウイルス感染症、EBウイルス感染症、マイコプラズマ感染症等、咽頭又は口腔内の所見に差が出る疾患の判定のために適用することもできる。
【符号の説明】
【0097】
1・・・医療装置、
3,13,23,43・・・口内撮影補助具、
5・・・口内撮影装置、
31,131,231,431・・・本体、
34,134,234,434・・・鍔部、
35,135,235,435・・・規制部、
37,137,237,437・・・目盛り、
55・・・入力デバイス、
56・・・出力デバイス、
57・・・撮像デバイス、
58・・・光源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図20
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