IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニューロライテックの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089181
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/22 20060101AFI20230620BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
A61B18/22
A61B18/18 200
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066545
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2020531387の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018137030
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521031567
【氏名又は名称】株式会社ニューロライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏史
(72)【発明者】
【氏名】川村 翔一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】照射対象に密着させることなく、離した状態で照射対象の凝固又は焼灼を行うことができる光照射装置を提供する。
【解決手段】光照射装置1Bは、光源と、光導波路20Aと、反射光学系30Bと、を備える。光導波路20Aは、光源から出射された光束BMを一端から他端に送る。反射光学系30Bは、光束BMを反射して生体組織PLに集光する。光導波路20Aの光軸に沿って入射する光線ILの入射面で切断されたときの反射面31Bの断面形状は、光導波路20Aの光軸AX1に平行な方向から入射した光線ILを焦点Fに集光する凹状の楕円弧である。光導波路20Aの光軸AX1に沿って入射する光線ILの入射位置を含み光軸AX1に直交する平面で切断されたときの反射面31Bの断面形状は、光線ILを、生体組織PLにおける焦点Fを含む線状の領域ARに向けて反射する直線又は凸状の曲線である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を照射して照射対象の凝固又は焼灼を行う光照射装置であって、
前記光束を出射する光源と、
前記光束を全反射する反射面が設けられた内周側面壁を有し、前記光源から出射された前記光束を一端から前記内周側面壁で囲まれた部分に入射して他端に送る光導波路と、
前記光導波路の他端に送られた前記光束を反射して前記照射対象に集光する反射光学系と、
を備え、
前記光導波路の光軸に沿って入射する光線の入射面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面形状は、前記光導波路の光軸に平行な方向から入射した光線を焦点に集光する凹状の楕円弧であり、
前記光導波路の光軸に沿って入射する光線の入射位置を含み前記光導波路の光軸に直交する平面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面形状は、前記光導波路の光軸に平行な方向から入射した光線を、前記照射対象における前記焦点を含む線状の領域に向けて反射する直線又は凸状の曲線である、
光照射装置。
【請求項2】
前記反射光学系の反射面は、
法線方向が互いに異なる複数の平面が連結されることにより形成されている、
請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記光導波路の光軸に直交する平面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面が、折れ線となっている、
請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記光導波路の光軸に沿って入射する光線の入射面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面が、折れ線となっている、
請求項2又は3に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記光導波路の反射面は、前記内周側面壁に形成された金属材料膜の表面であり、
前記金属材料膜の表面には、二酸化ケイ素から成る膜が形成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記二酸化ケイ素からなる膜の厚みは、前記光源から出射される光束に含まれる一部の光線の波長の1/4である、
請求項5に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記光導波路では、
前記内周側面壁が、角柱状に形成されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記光導波路は、中空管である、
請求項1から7のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記光導波路は、石英ロッドである、
請求項1から8のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項10】
前記光導波路の光軸の方向から見たときに、前記反射光学系の反射面の大きさは、前記光導波路から前記反射光学系に入射する光束の断面の大きさ以上である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項11】
前記光源から出射される光束は、赤外線を含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項12】
前記光源は、
ハロゲンランプ、キセノンランプ、赤外線発熱ヒーター及び赤外線レーザのいずれかである、
請求項11に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生体組織の凝固又は焼灼を可能にする装置が開示されている。この装置では、ハロゲン光源から出力され、光ファイバ部材で伝搬した光が、光ファイバ部材の一端に設けられた金属スリーブから出力されて生体組織に照射される。これにより、生体組織に熱を発生させることで、生体組織の凝固又は焼灼が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010-529885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の装置では、金属スリーブから出力される光は、光ファイバ部の内壁で反射して拡散する。したがって、光によって熱が発生するのは、金属スリーブの周辺だけとなる。このため、上述の装置を用いて生体組織の凝固又は焼灼を行うには、金属スリーブを生体組織(照射対象)に密着させる必要がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、照射対象に密着させることなく、離した状態で照射対象の凝固又は焼灼を行うことができる光照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の光照射装置は、
光束を照射して照射対象の凝固又は焼灼を行う光照射装置であって、
前記光束を出射する光源と、
前記光束を全反射する反射面が設けられた内周側面壁を有し、前記光源から出射された前記光束を一端から前記内周側面壁で囲まれた部分に入射して他端に送る光導波路と、
前記光導波路の他端に送られた前記光束を反射して前記照射対象に集光する反射光学系と、
を備え、
前記光導波路の光軸に沿って入射する光線の入射面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面形状は、前記光導波路の光軸に平行な方向から入射した光線を焦点に集光する凹状の楕円弧であり、
前記光導波路の光軸に沿って入射する光線の入射位置を含み前記光導波路の光軸に直交する平面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面形状は、前記光導波路の光軸に平行な方向から入射した光線を、前記照射対象における前記焦点を含む線状の領域に向けて反射する直線又は凸状の曲線である。
【0007】
前記反射光学系の反射面は、
法線方向が互いに異なる複数の平面が連結されることにより形成されている、
こととしてもよい。
【0008】
前記光導波路の光軸に直交する平面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面が、折れ線となっている、
こととしてもよい。
【0009】
前記光導波路の光軸に沿って入射する光線の入射面で切断されたときの前記反射光学系の反射面の断面が、折れ線となっている、
こととしてもよい。
【0010】
前記光導波路の反射面は、前記内周側面壁に形成された金属材料膜の表面であり、
前記金属材料膜の表面には、二酸化ケイ素から成る膜が形成されている、
こととしてもよい。
【0011】
前記二酸化ケイ素からなる膜の厚みは、前記光源から出射される光束に含まれる一部の光線の波長の1/4である、
こととしてもよい。
【0012】
前記光導波路では、
前記内周側面壁が、角柱状に形成されている、
こととしてもよい。
【0013】
前記光導波路は、中空管である、
こととしてもよい。
【0014】
前記光導波路は、石英ロッドである、
こととしてもよい。
【0015】
前記光導波路の光軸の方向から見たときに、前記反射光学系の反射面の大きさは、前記光導波路から前記反射光学系に入射する光束の断面の大きさ以上である、
こととしてもよい。
【0016】
前記光源から出射される光束は、赤外線を含む、
こととしてもよい。
【0017】
前記光源は、
ハロゲンランプ、キセノンランプ、赤外線発熱ヒーター及び赤外線レーザのいずれかである、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光導波路の他端に送られた光束を反射して集光する反射光学系を備えている。これにより、装置から離れた位置に光束を集光して高熱にすることができる。この結果、照射対象に密着させることなく、離した状態で照射対象の凝固又は焼灼を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1に係る光照射装置の構成を示す上面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】光導波路の光軸に沿った反射光学系の拡大断面図である。
図4】楕円の模式図である。
図5図1のB-B線断面図である。
図6】反射面の3次元形状を示す模式図である。
図7】光導波路の光軸の方向の長さを示す図である。
図8A】本発明の実施の形態2に係る光照射装置の一部の構成を示す斜視図である。
図8B図8Aの光照射装置の正面図である。
図8C図8Aの光照射装置の一部の構成を示す側面図である。
図9図8BのC-C線断面図及び図8CのD-D線断面図である。
図10】反射面の3次元形状を示す模式図である。
図11】管状の生体組織の凝固又は焼灼を行う場合を示す模式図である。
図12A】本発明の実施の形態3に係る光照射装置を構成する光導波路の構成を示す第1図である。
図12B】本発明の実施の形態3に係る光照射装置を構成する光導波路の構成を示す第2図である。
図12C】本発明の実施の形態3に係る光照射装置を構成する光導波路の構成を示す第3図である。
図13A】断面形状が円形である光導波路の構成を示す第1図である。
図13B】断面形状が円形である光導波路の構成を示す第2図である。
図13C図13AのC-C線断面図である。
図14】本発明の実施の形態4に係る光照射装置の一部の構成を示す斜視図である。
図15A】本発明の実施の形態5に係る光照射装置の構成を示す上面図である。
図15B図15AのE-E線断面図である。
図16】スペーサの形状を示す断面図である。
図17】スペーサの形状の変形例(その1)を示す断面図である。
図18】スペーサの形状の変形例(その2)を示す断面図である。
図19】本発明の実施の形態6に係る光照射装置の構成を示す斜視図である。
図20】本発明の実施の形態7に係る光照射装置の構成を示す斜視図である。
図21図20の反射光学系を+z方向から見た図である。
図22図21のF-F線断面図である。
図23】焼灼時間に対する焼灼深さの変化を示すグラフである。
図24】焼灼時間に対する焼灼体積の変化を示すグラフである。
図25】反射光学系の反射面の形状(その1)を示す斜視図である。
図26】反射光学系の反射面の形状(その2)を示す斜視図である。
図27】反射光学系の反射面の形状(その3)を示す斜視図である。
図28】本発明の実施の形態7に係る光照射装置の構成を示す図である。
図29】第1の集光光学系周辺の構成を示す図である。
図30A】第2の集光光学系周辺の構成を示す図である。
図30B】第2の集光光学系周辺の構成の変形例を示す図である。
図31】本発明の実施の形態7に係る光照射装置の構成の変形例を示す図である。
図32】反射光学系を取り除いた場合の図28の光照射装置の構成を示す図である。
図33】反射光学系と光導波路から出射される光束BMとの関係を示す模式図である。
図34A】反射面の変形例を示す断面図である。
図34B図34Aの反射面の部分Eの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る光照射装置について、図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。本実施の形態に係る光照射装置は、照射対象である生体組織を装置から離隔した状態で、生体組織の凝固又は焼灼を行う光メスとも言うべきものである。
【0021】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について説明する。図1に示すように、本実施の形態1に係る光照射装置1Aは、細長い円柱状の部材である。図2に示すように、光照射装置1Aは、光源10Aと、光導波路20Aと、反射光学系30Aと、を備える。
【0022】
光源10Aは、面光源であり、光導波路20Aの一端に面する部分から、光線ILの束である光束BMを出射する。光源10Aとしては、例えば赤外線レーザが用いられる。したがって、出射される光束BMの波長域は、主として赤外域、より詳細には近赤外域を含んでいる。
【0023】
光導波路20Aは、その光軸AX1の方向に延びる光学部材である。光導波路20Aは、光源10Aから出射された光束BMを一端から入射し、他端から出射する。
【0024】
本実施の形態では、光導波路20Aは、管状(中空)の部材であり、内周側面壁を有する。その断面形状は円形である。光導波路20Aの内周側面壁には、光束BMを全反射する反射面21Aが設けられている。光源10Aから出射された光束BMの一部は、反射面21Aで全反射しつつ、内周側面壁(反射面21A)で囲まれた部分に入射して他端に送られる。光導波路20Aの筐体は、金属又は樹脂で形成され、反射面21Aは、内周側面壁にアルミ等の金属を蒸着して形成された膜の表面である。
【0025】
反射光学系30Aは、光導波路20Aの他端に送られた光束BMを反射して光軸AX2上の焦点Fに集光する。具体的には、反射光学系30Aの反射面31Aは、光導波路20Aの光軸AX1の方向から入射する光線ILの入射面に沿ったx軸方向に関して、反射した光束BMを集光する。反射光学系30Aの筐体は、金属又は樹脂で形成され、反射面31Aは、アルミ等の金属を蒸着することにより形成されている。
【0026】
反射光学系30Aでは、図3に示すように、光導波路20Aの光軸AX1に沿って入射する光線の入射面IP1で切断されたときの反射面31Aの断面形状(x軸方向に沿った断面形状)が、凹状の楕円弧32となっている。楕円弧32とは、図4に示すような楕円の一部である。図4の楕円では、x’軸方向に沿った長軸の長さを2aとし、y’軸方向に沿った短軸の長さを2bとしている。楕円の焦点をF,Fとしている。このとき、x’軸方向と並行な光はF若しくはFの楕円の焦点に集光される。
【0027】
反射面31Aは、光導波路20Aの光軸AX1の方向から、楕円弧32上の各点に入射した光線ILを、楕円弧32の焦点Fに集光する。この焦点Fは、図4に示す楕円の焦点F,Fと一致する。
【0028】
また、反射光学系30Aでは、図5に示すように、光導波路20Aの光軸AX1に沿って入射する光線ILの入射位置Pを含み、光導波路20Aの光軸AX1に直交する平面IP2で切断されたときの反射面31Aの断面形状は、焦点Fを中心とする凹状の円弧33となっている。反射面31Aは、光軸AX1に平行な方向から、円弧33上の各点に入射した光線ILを焦点Fに集光する。円弧33の半径Rは、光線ILが焦点Fに集光するように決定されている。
【0029】
上述のように、反射光学系30Aの反射面31Aは、x軸方向に沿った断面形状が楕円弧32となり、y軸方向に沿った断面形状が円弧33となる。このような断面形状を有する反射面31Aの3次元形状は、図6に示すようになる。反射面31Aの3次元形状は、楕円弧32上の各点を、焦点Fを中心に回転させたときに形成される曲面となる。これにより、x軸方向に入射した光線ILは、すべて焦点Fに集光するようになる。なお、図6では、反射面31Aの輪郭を矩形としている。
【0030】
このように、本実施の形態に係る光照射装置1Aでは、光源10Aから出射された光束BMを構成する光線ILのうち、光軸AX1に平行に進む光線ILは、焦点Fに集光する。
【0031】
実際には、光源10Aから出射される光線ILは、光軸AX1に沿って進むものには限られず、光源10Aの各点から拡散するように進む。図7に示すように、光導波路20Aの光軸AX1に対する光線ILの最大出射角度をθとする。θは例えば30度である。
【0032】
ここで、図7に示すように、光導波路20Aの光軸AX1に対する光源10Aからの出射角度が最大出射角度θである光線ILが、反射面21A上の第1の位置P1で反射した後に、反射面21Aの第2の位置P2で反射するものとする。この場合、本実施の形態では、光導波路20Aの光軸AX1の方向の長さを、第1の位置P1と第2の位置P2との間の光軸AX1に関する距離aの4倍の長さLとしている。
【0033】
光源10Aから拡散しつつ出射された光線ILは、x軸方向において、照射対象である生体組織PLにおいて、焦点Fを中心とする領域ARに入射する。光導波路20Aの光軸AX1の方向の長さLが距離aの整数倍となっているので、領域ARに入射する光線ILの強度は、焦点Fが最も強く、焦点Fから離れるにつれて次第に弱くなっている。生体組織PLの光線ILの強度分布は、焦点Fを中心に回転対称となっている。
【0034】
このように、本実施の形態に係る光照射装置1Aは、x軸方向及びy軸方向に光束BMを焦点F上に集光した。これにより、焦点F上の光強度が強くなって発熱量が大きくなる。この結果、照射対象となる焦点Fにある生体組織PLの凝固又は焼灼が可能となる。
【0035】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態に係る光照射装置1Bは、図8A図8B及び図8Cに示すように、反射光学系30Aの代わりに、反射光学系30Bを備えている点が、上記実施の形態1に係る光照射装置1Aと異なる。
【0036】
図9に示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Bにおいて、反射光学系30Bの反射面31Bは、光導波路20Aの光軸AX1の方向から入射する光線ILの入射面に沿ったx軸方向に関して、反射した光束BMを集光するという特徴は、上記実施の形態1に係る反射光学系30Aと同じである。
【0037】
具体的には、反射光学系30Bでは、反射光学系30Aと同様に、図9に示すように、光導波路20Aの光軸AX1に沿って入射する光線の入射面IP1で切断されたときの反射面31Bの断面形状が、凹状の楕円弧32となっている。
【0038】
しかし、本実施の形態では、図9に示すように、反射光学系30Bでは、光導波路20Aの光軸AX1に沿って入射する光線ILの入射位置Pを含み、光導波路20Aの光軸AX1に直交する平面IP2で切断されたときの反射面31Bの断面形状が、凸状の曲線(円弧34)となっている。反射面31Bは、光導波路20Aの光軸AX1に平行な方向から、凸状の曲線(円弧34)上の各点に入射した光線ILを、照射対象となる生体組織PLにおける焦点Fを含む線状の領域ARに向けて反射する。
【0039】
なお、本実施の形態では、x軸方向に直交するy軸方向に沿った反射面31Bの断面形状が、直線となっていてもよい。このようにしても、照射対象となる生体組織PL上の光束BMの断面形状は、線状の領域ARとなる。
【0040】
上述のように、反射光学系30Bの反射面31Bは、x軸方向に沿った断面形状が楕円弧32となり、y軸方向に沿った断面形状が円弧34となる。このような断面形状を有する反射面31Bの3次元形状は、図10に示すようになる。図10に示すように、生体組織PLの線状の領域ARの中心(焦点F)から見て楕円弧32を投影した曲線CL(楕円弧32と相似な曲線)を規定する。そして、楕円弧32上の各点と焦点Fとを結ぶ直線と曲線CLとの交点を中心として楕円弧32上の各点を回転したときに形成される曲面が反射面31Bとなる。なお、図10では、反射面31Bの輪郭を矩形としている。
【0041】
このように、本実施の形態に係る光照射装置1Bは、光束BMを線状の領域AR上に集光した。これにより、領域AR上の光強度が強くなって発熱量が大きくなる。この結果、照射対象となる生体組織PLの凝固又は焼灼が可能となる。
【0042】
本実施の形態に係る光照射装置1Bは、例えば、図11に示すように、管状の生体組織PLの内周壁の凝固又は焼灼を円周に沿って行うのに適している。
【0043】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図12A図12B及び図12Cに示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Cは、光導波路20Aの代わりに、光導波路20Bを用いる点が、上記各実施の形態に係る光照射装置1A,1Bと異なる。
【0044】
光導波路20Bでは、その内周側面壁が、角柱状に形成されている。その断面は、例えば、図12Bに示すように六角形である。
【0045】
図13A図13B及び図13Cには、断面が円形であり、光導波路20Bと同径の光導波路20Cが示されている。図12Cにおける光強度分布と、図13Cにおける光強度分布とを比較するとわかるように、光導波路20Bを角柱状に構成すれば、断面が円形の光導波路20Cに比べ、出力される光束BMの光強度分布を均一なものとすることができる。
【0046】
なお、本実施の形態に係る光照射装置1Cは、反射光学系30Aを備えるようにしてもよいし、反射光学系30Bを備えるようにしてもよい。
【0047】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図14に示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Dは、光導波路20Aの代わりに光導波路20Dを用いる点が、上記実施の形態1に係る光照射装置1Aと異なる。さらに、本実施の形態では、光導波路20Dは、光源10Aには直接接続されておらず、光ファイバ40を介して接続されている。
【0048】
上記各実施の形態では、光導波路20A,20B,20Cは、管状の光学部材であったのに対し、図14に示すように、本実施の形態では、光導波路20Dは、石英ロッドである。石英ロッドにおいても、光ファイバ40を介して光源10Aから出射された光束BMを一端から入射し、内周側面璧で全反射しつつ、他端から出射することが可能となる。なお、図14では、反射光学系30Aの図示は省略されている。
【0049】
なお、光導波路20Dの屈折率及び幅は、光源10Aから最大出射角度θについて、光線ILが全反射条件を満たす必要がある。
【0050】
また、光導波路20Dは、断面形状が六角形であるが、三角形、四角形や円形であってもよい。
【0051】
ただし、石英ロッドでは、中空管状の部材に比べ、光源10Aから出射された光線ILの強度が減衰するようになる。このため、光束BMの強度を強くすることが求められる場合には、中空管状の光導波路20A,20Bを用いるのが望ましい。
【0052】
なお、本実施の形態に係る光照射装置1Dは、反射光学系30Aを備えるようにしてもよいし、反射光学系30Bを備えるようにしてもよい。
【0053】
実施の形態5
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図15AのE-E線断面図である図15Bに示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Eは、断熱部50を備える点が、上記各実施の形態と異なっている。
【0054】
断熱部50は、光導波路20A及び反射光学系30Aの外周に設けられている。断熱部50は、外装カバー51と、スペーサ52と、を備える。
【0055】
外装カバー51は、光導波路20A及び反射光学系30Aの外周を囲んでいる。また、スペーサ52は、光導波路20A及び反射光学系30Aと、外装カバー51との間に空隙を設けるために、光導波路20A及び反射光学系30Aと外装カバー51との間に挿入されている。
【0056】
光導波路20A及び反射光学系30Aは、光束BMの反射の際に熱が発生する。その熱が、照射対象でない周辺の生体組織に伝達されるのは望ましいことではない。そこで、本実施の形態に係る光照射装置1Eは、外装カバー51及びスペーサ52によって形成された空気層によって断熱を行い、周辺の生体組織への熱の伝達を抑制する。
【0057】
図16に示すように、スペーサ52は、C字状の部材となっており、反射光学系30Aと外装カバー51との間の断熱空気が内部を移動可能となっている。このため、その断熱空気の回収及び供給、すなわち空気を循環させるようにすれば、断熱効果を高めることができる。
【0058】
なお、スペーサ52の形状には様々なものが考えられる。図17に示すように、例えば、スペーサ52において、光導波路20A及び反射光学系30Aと対向する部分と、外装カバー51と対向する部分とに、複数の突起53を設けるようにしてもよい。このようにすれば、スペーサ52と光導波路20A及び反射光学系30Aとの接触面積と、スペーサ52と外装カバー51との接触面積を少なくして、断熱効果を高めることができる。この場合、光導波路20A及び反射光学系30Aと対向する部分と、外装カバー51と対向する部分の少なくとも一方に、突起53が設けられていればよい。
【0059】
また、図18に示すように、スペーサ52において、光導波路20A及び反射光学系30Aと対向する部分と、外装カバー51と対向する部分とを細くするようにしてもよい。このようにしても、スペーサ52と光導波路20A及び反射光学系30Aとの接触面積と、スペーサ52と外装カバー51との接触面積を少なくして、断熱効果を高めることができる。
【0060】
また、図18に示すように、スペーサ52に貫通孔54を設けるようにしてもよい。貫通孔54により、断熱空気の通り道を形成することができる。
【0061】
なお、外装カバー51及びスペーサ52は、熱伝導性の低い材料で構成するのが望ましい。例えば、外装カバー51及びスペーサ52の材料として、チタンなど生体適合性材料を用いることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、空気層による断熱を行った。この場合、上述のように、空気層内の空気を循環させて、断熱を行うようにしてもよい。また、空隙に冷媒を挿入し、冷媒を循環させるようにしてもよい。
【0063】
なお、本実施の形態に係る光照射装置1Eは、反射光学系30Bを備えるようにしてもよい。
【0064】
実施の形態6
次に、本発明の実施の形態6について説明する。図19に示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Fでは、光源10Bが、光導波路20Aに直接接続されていない点が、上記実施の形態1と異なる。
【0065】
本実施の形態に係る光照射装置1Fは、光源10Bと、棒状の操作部60と、を備える。光源10Bは、ハロゲンランプ又はキセノンランプ、赤外線発熱ヒーターである。光源10Bには、シャッタ65が取り付けられており、シャッタ65が回転することにより、光源10Bからパルス状の光束BMを出力することができるようになっている。
【0066】
光導波路20A及び反射光学系30Bは、操作部60の内部に設けられている。光源10Bと、操作部60との間は、光ファイバ80で連結されている。光源10Bから発せられた光束は、光ファイバ80を介して、光導波路20Aに送られ、反射光学系30Bで反射されて、照射対象の生体組織PLに照射される。
【0067】
操作部60には、把持部61とスイッチ62とが設けられている。術者は、把持部61を持って、光照射装置1Fを操作する。スイッチ62は、光照射装置1Fから照射される光束BMの出力をオンオフするスイッチである。操作部60に対して、光導波路20A及び反射光学系30Bは、伸縮自在及び回転自在となっている。これにより、照射対象となる部位に合わせて、焦点F又は領域ARの位置を調整することができる。
【0068】
調整後、術者は、把持部61を持って、反射光学系30Bの焦点Fを、照射対象となる部位にあわせてスイッチ62をオンにして、光束BMをその部位に照射する。
【0069】
なお、本実施の形態に係る光照射装置1Fは、光導波路20Aに代えて、光導波路20B,20C,20Dを備えるようにしてもよい。また、反射光学系30Bに代えて、反射光学系30Aを備えるようにしてもよい。また、断熱部50を備えるようにしてもよい。
【0070】
実施の形態7
次に、本発明の実施の形態7について説明する。上記各実施の形態に係る光照射装置1A~1Fでは、反射光学系30A,30Bの反射面の形状は、曲面であった。このような反射面は製造に高い技術を必要とするうえ、製造後の反射面の評価にも高い技術を必要とする。そこで、本実施の形態では、高い製造技術及び評価技術を必要としない反射面を有する光照射装置を提供する。
【0071】
図20に示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Gは、光導波路20Eと、反射光学系30Cと、を備えている。光導波路20Eは、断面が六角形の管状の部材であるが、これに限定されず、上記各実施の形態のものを用いることができる。また、光源についても上記各実施の形態のものを用いることができる。
【0072】
本実施の形態に係る光照射装置1Gでは、反射光学系30Cの反射面の形状が、上記各実施の形態と異なる。反射光学系30Cの反射面は、法線方向が互いに異なる複数の平面が連結されることにより形成されている。
【0073】
図21に示すように、反射光学系30Cは、平面ミラー30C1と、平面ミラー30C2と、を備える。図22に示すように、平面ミラー30C1の反射面31C1と、平面ミラー30C2の反射面31C2とは平面である。反射面31C1と反射面31C2とは、それらの法線方向ND1と法線方向ND2とは異なった状態で、より具体的には、反射面31C1と反射面31C2とのなす角度が180°より小さい状態で、xz平面と平行な連結線DLで連結されている。これにより、光導波路20Eの光軸AX1に直交するyz平面で切断されたときの反射面31Cの断面形状は、凹型の折れ線形状となる。反射光学系30Cは、y軸方向の光束に関して、入射した光線を集光する。
【0074】
本実施の形態に係る反射光学系30C(多角平面ミラー)を用いた光照射装置1Gと、その光照射装置1Gの反射面31Cに近似する凹曲面を反射面として用いた光照射装置との生体組織PLの焼灼特性を比較する。なお、光導波路20Eの長さは、同じ(例えば100mm)としている。
【0075】
図23に示すように、焼灼時間に対する生体組織PLの焼灼深さの変化は放物線状に変化している。多角平面ミラーを用いた場合と凹曲面を用いた場合とでは、変化の割合はほぼ同じとなっている。
【0076】
また、図24に示すように、多角平面ミラーを用いた場合も凹曲面を用いた場合と同様、焼灼時間に対する生体組織PLの焼灼体積の変化は放物線状に変化しており、その変化の割合はほぼ同じとなっている。図23及び図24で示される特性は、光照射装置1Gに多角平面ミラーを用いても、反射面が凹曲面である光照射装置と同様に、生体組織PLの凝固又は焼灼が可能であることを示している。
【0077】
なお、本実施の形態に係る光照射装置1Gの反射面31Cとしては、様々なものを採用することができる。例えば、図25に示すように、法線方向が互いに異なる3つの平面を連結した凹状の反射面とすることができる。このようにすれば、反射面31Cの形状を、曲面にさらに近似させることができるので、y軸方向に関する光束(光線IL)の集光度を高めることができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る光照射装置1Gの反射面31Cの形状を、図26に示すように、法線方向が互いに異なる3つの平面を連結しy軸方向に関して凸状とすることができる。このように、反射面31Cの形状は、凹状、凸状には限られない。例えば、反射面31Cの形状は、放物線面であってもよい。
【0079】
また、図27に示すように、光導波路20Eの光軸AX1(x軸方向)に直交するyz平面で切断されたときの反射面31Cの断面を、凹状の折れ線とすることができる。このようにすれば、y軸方向のほか、x軸方向の光線ILが反射面31Cで反射され、z軸方向に進む光線ILを集光することが可能となる。なお、反射面31Cの断面を、凸状の折れ線とするようにしてもよい。この場合、x軸方向においては、法線方向が異なる3つの平面を連結するようにしてもよいし、その折れ線を凹状としてもよい。
【0080】
実施の形態8
次に、本発明の実施の形態8について説明する。図28に示すように、本実施の形態に係る光照射装置1Hは、光源10Dと、光導波路20Eと、反射光学系30Cと、を備える。この光照射装置1Hは、さらに、第1の集光光学系5、フィルタ6及び第2の集光光学系7を備える。なお、図28図29図30A図30B図31及び図32では、光源10D及び光導波路20Eは、光軸AX1を含みxz面に平行な断面で示されている。
【0081】
光源10Dは、複数の光ファイバから成るライトガイドである。第1の集光光学系5は、光源10Dから出射された光束BMを集光して光導波路20Eの一端に入射する。図29に示すように、光源10Dから出射された光束BMは、拡散光となる。第1の集光光学系5は、拡散する光束BMを集光して、より平行に近い光束BMに変換する。これにより、光束BMに含まれる光線ILの光導波路20E内での反射回数を少なくすることができるので、光線ILの強度の低下を抑制することができる。
【0082】
フィルタ6は、第1の集光光学系5から出射された光束BMから可視光域の光を除去する。これにより、例えば手術室に居る術者等の眼をできるだけ保護することができる。
【0083】
図30Aに示すように、第2の集光光学系7は、光導波路20Eの他端から出射された光束BMを集光して反射光学系30Cに入射させる。この場合、反射光学系30Cと第2の集光光学系7との距離L1は、第2の集光光学系7の焦点距離f1より大きくなるように設定されている。
【0084】
この場合、反射光学系30Cの反射面31Cに入射する光束BMは、拡散光または集光となる。このため、反射光学系30Cで反射する光束BMは、第2の集光光学系7が設けられていない光照射装置1A(図3参照)に比べ、より平行光束に近くなる。このことは、光軸AX2の方向に関する広い範囲で、光束BMの強度が均一になることを意味している。光軸AX2の方向に関する方向に、光束BMの強度が均一になる範囲を長くすることができれば、その範囲に、生体組織PLを合わせやすくすることができる。
【0085】
なお、光導波路20Eの光軸AX1に沿って入射する光線ILの入射面で切断されたときの凹状の反射面31Cの断面形状を、放物線で近似し、その放物線の焦点f2に、第2の集光光学系7の焦点位置Cが一致するように反射面31Cを配置し、光軸AX1に対する反射面31Cの傾斜角度を45°とすれば、反射面31Cで反射した光線ILは、光軸AX2に平行な平行光となる。なお、光軸AX1に対する反射面31Cの傾斜角度を45°としなかった場合には、反射面31Cの反射光が、光軸AX2に平行とはならないが、光軸AX2に沿った平行光に近づけることができる。
【0086】
また、図30Bに示すように、反射光学系30Cを3枚の平面ミラー30D1,30D2,30D3が連結された反射光学系30Dで代用した場合には、反射光学系30Dで反射した光線ILは、厳密には平行光にはならないが、光軸AX2に沿った平行光に近づけることができる。
【0087】
なお、図31に示すように、第1の集光光学系5、フィルタ6及び第2の集光光学系7は、光導波路20Eの内部に設けられてもよい。もっとも、光源10Dから出射される光束BMの有効径が大きい場合には、第1の集光光学系5等を光導波路20Eの外部に設け、第1の集光光学系5の有効径を光束BMの有効径よりも大きくすることにより、光源10Dから出射される光束BMの全てを光導波路20E内に導くことができるようになる。
【0088】
また、光束BMには、赤外線を含む様々な波長の光が含まれているが、光の波長によって第1の集光光学系5、第2の集光光学系7での光線ILの光路は異なったものとなる。このため、光線ILのうち、反射光学系30Cで反射して平行光となるのは、赤外光等の有用な特定の波長の光のみになる。この結果、有用な特定の波長の光の減衰を最小限に留めることができる。
【0089】
さらに、反射光学系30Cを脱着可能としてもよい。反射光学系30Cを取り外せば、図32に示すように、光導波路20Eの光軸AX1上で光線ILを集光させることができる。この集光位置に生体組織PLを置けば、生体組織PLの凝固又は焼灼が可能となる。
【0090】
図23及び図24には、反射光学系30Cを取り外した場合での焼灼時間に対する焼灼深さの変化と、焼灼時間に対する焼灼体積の変化とが示されている。図23に示すように、焼灼時間に対する焼灼深さの変化は放物線状に変化している。また、その変化の割合は、反射光学系30Cを用いた場合に比べて大きくなっている。また、図24に示すように、焼灼時間に対する焼灼体積の変化も放物線状に変化している。その変化の割合は、反射光学系30Cを用いた場合に比べて大きくなっている。
【0091】
なお、図33に示すように、光導波路20Eの光軸AX1の方向から見たときの、反射光学系30Cの反射面31Cの大きさは、光導波路20Eから出射される光束BMの断面の大きさよりも大きくなっている。このようにすれば、光導波路20Eから出射された光束BMをあますことなく、反射光学系30Cで反射させることができる。通常は、光導波路20Eと反射光学系30Cとを近接配置すれば、光軸AX1の方向から見て、反射光学系30Cの反射面31Cの大きさを、光導波路20Eの断面の大きさより大きくすることで達成される。なお、光導波路20Eから出射される光束BMが平行光束である場合には、反射光学系30Cの反射面31Cの大きさは、光導波路20Eの光軸AX1に直交する断面の大きさ以上であればよい。
【0092】
なお、本実施の形態では、光源10D、光導波路20E又は反射光学系30Cの代わりに、他の実施の形態で用いられるものを用いてもよいし、光源10Dの光束が平行光に近ければ、第1の集光光学系5を無くし、第2の集光光学系7のみで構成することも可能である。
【0093】
以上詳細に説明したように、上記各実施の形態によれば、光導波路20Aの他端に送られた光束BMを反射して集光する反射光学系30A等を備えている。これにより、反射光学系30Aによって集光された位置を高熱にし、その集光した位置で生体組織PLの凝固又は焼灼を行うことができる。この結果、光照射装置1A等を生体組織PLに密着させることなく、離した状態で、焦点F、領域ARにある生体組織PLの凝固又は焼灼を行うことができる。
【0094】
上記各実施の形態によれば、反射光学系30Aの反射面31A等の形状により、光束BMの断面形状を点状(焦点F)又は線状(領域AR)などに変換することができる。このようにすれば、光束BMの断面形状を、凝固又は焼灼する組織の形状に応じたものとすることができるので、光を、治療したい生体組織PLにのみ照射することができるようになり、効率の良い治療が可能となる。
【0095】
上記各実施の形態によれば、ヒトや動物の生体組織PLに対する透過率が高い赤外域の光を用いるので、生体組織PLの深い場所まで、凝固又は焼灼を行うことができる。
【0096】
上記各実施の形態によれば、装置を患部から離した状態で、患部の治療を行うことができるので、光照射装置1A等を使用する際に、患部への押し付け力の調整などの高度なスキルや経験を必要としない。
【0097】
なお、上記各実施の形態では、光導波路として、管状の部材や、石英ロッドを用いたが、本発明はこれには限られない。光導波路として光ファイバ又は光ファイバの束を用いるようにしてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態では、角柱状の光導波路の断面形状を六角形としたが、本発明はこれには限られない。三角形としてもよいし、四角形、五角形、七角以上の角形としてもよい。
【0099】
上記各実施の形態では、光導波路20A,20Bの光軸AX1の方向に関する反射光学系30A,30Bの反射面31A,31Bの断面形状を楕円弧32としたが、本発明はこれには限られない。光軸AX1の方向に光束BMを集光できる凹面形状となっていればよい。
【0100】
また、上記各実施の形態では、光軸AX1に対する反射光学系30A,30Bの反射面31A,31Bの平均傾斜角度を45度程度としたが、本発明はこれには限られない。平均傾斜角度は、45度以外であってもよい。
【0101】
上記各実施の形態では、光源10A,10Bから出射される光束BMが赤外域の光であるものとしたが、本発明はこれには限られない。赤外域以外の波長域の光であってもよい。また、赤外域と他の帯域の波長の光を含んでいてもよい。
【0102】
また、上記各実施の形態では、光照射装置1A等は、生体組織PLの凝固又は焼灼を行う光メスであったが、本発明はこれには限られない。照射対象は、生体組織PLでなく、無機有機を問わず、他の材料を照射対象とするものであってもよい。
【0103】
また、上記各実施の形態では、光導波路20A~20E等の反射面21Aとして、アルミ等の金属材料を蒸着することにより形成されたものを用いたが、本発明はこれには限られない。反射面21Aとして、金属材料をスパッタリングにより付着させることにより形成された金属材料膜の表面を用いてもよい。反射面21Aは、金属材料で形成された金属材料膜の表面であればよく、製法には限定されない。
【0104】
さらに、図34Aに示すように、反射面21Aの上に、二酸化ケイ素(SiO)からなる反射制御膜22Aを形成するようにしてもよい。二酸化ケイ素は、表面の反射率が比較的高く、また、赤外光に対する透過率も比較的高いため、反射制御膜22Aにより、反射面21Aでの反射による光束BMの減衰を抑制することができる。
【0105】
また、図34Bに示すように、反射制御膜22Aは、その厚みを、光源10A,10Bから出射される光束BMに含まれる一部の光線ILの波長λの1/4、すなわちλ/4としてもよい。一部の光線は、例えば照射対象PLにおける熱の発生に寄与することのない不要な波長の光線である。この場合、以下のような作用により、照射対象PLに照射される光線ILのうち、特定の波長λの光線(例えば、青色の光線、緑色の光線)ILの反射強度を低くすることができる。
【0106】
すなわち、光源10A,10Bから出射される光束BMに含まれる波長λの光線ILでは、その一部は、光線IL’として反射制御膜22Aを通って反射面21Aで反射され、残りは、光線ILとして反射制御膜22Aの表面で反射される。反射制御膜22Aを通った光線IL’は、反射制御膜22Aの表面で反射された光線ILに対して逆位相となって、反射制御膜22Aの表面で反射された光線ILに合成され、互いに打ち消し合う。その結果、照射対象PLに照射される光束BMにおいて、特定の波長λの光線ILの強度を他の波長の光線ILよりも低くすることができる。このように、SiOからなる反射制御膜22Aを設けることで、光導波路20A~20Eに特定の波長λの光線ILの強度を抑圧するフィルタ機能を持たせることができる。
【0107】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、照射対象となる生体組織等の凝固又は焼灼を行うのに適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H 光照射装置(光メス)、5 第1の集光光学系、6 フィルタ、7 第2の集光光学系、10A,10B,10C,10D 光源、20A,20B,20C,20D,20E 光導波路、21A 反射面、22A 反射制御膜、30A,30B,30C,30D 反射光学系、30C1,30C2,30D1,30D2,30D3 平面ミラー、31A,31B,31C 反射面、31C1,31C2 反射面、32 楕円弧、33,34 円弧、40 光ファイバ、50 断熱部、51 外装カバー、52 スペーサ、53 突起、54 貫通孔、60 操作部、61 把持部、62 スイッチ、65 シャッタ、80 光ファイバ、AR 領域、AX1,AX2 光軸、BM 光束、CL 曲線、DL 連結線、F 焦点、IL,IL’ 光線、IP1 入射面、IP2 平面、P 入射位置、PL 生体組織(照射対象)、P1 第1の位置、P2 第2の位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30A
図30B
図31
図32
図33
図34A
図34B