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特開2023-8924発電設備の業務管理システム、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008924
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】発電設備の業務管理システム、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230112BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104623
(22)【出願日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2021111743
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521296683
【氏名又は名称】大門 敏男
(71)【出願人】
【識別番号】514307660
【氏名又は名称】株式会社エナジービジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】大門 敏男
(72)【発明者】
【氏名】奥山 恭之
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】長期の発電事業の運営継続を容易にする業務管理システムを提供する。
【解決手段】業務管理システム1は、発電設備の発電量を含む稼働データを、メンテナンス担当ユーザのユーザ端末60あるいは遠隔監視システム70を通じて取得するとともに、日射量を気象サーバ80から取得する。そして、所定期間における発電傾向を発電設備毎に解析するとともに所定基準との適合性を発電設備毎に評価し、評価結果を事業者端末50に閲覧させる。その際、解析結果と評価結果とを時系列に記録した電子カルテを発電設備毎に生成し、電子カルテの記録事項を、所定の権限情報に応じた範囲で可視化するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象となる複数の発電設備の発電環境及び発電傾向を発電設備毎に解析し、解析結果データを各発電設備の識別情報と関連付けて出力する解析手段と、
各発電設備において所定の検査項目に従って実施された検査の結果を表す検査実施データを定期又は不定期に取得し、取得した検査実施データと前記解析結果データとに基づいて、リスクコントロールの観点と発電阻害要因除去の観点の少なくとも一方を含む観点で定められた所定の評価基準との適合性を発電設備毎に評価し、評価結果データを当該発電設備の識別情報と関連付けて出力する評価手段と、
前記解析結果データと前記評価結果データとを履歴付で記録した電子カルテを発電設備毎に生成するとともに、各前記電子カルテの記録事項を所定の権限情報に応じた範囲で可視化する電子カルテ管理手段と、
を備えて成る発電設備の業務管理システム。
【請求項2】
前記発電設備は太陽光発電設備であり、
前記解析手段は、各発電設備における発電量及び発電時の日射量を表すデータを取得するとともに、所定期間中における発電設備毎の発電量を当該発電設備への日射量で除算した値の前記所定期間中の移動平均を表す第1変動推移と、当該発電設備と同一とみなされる発電環境で稼働している他の発電設備の発電量との比較情報を時系列に表す第2変動推移との少なくとも一方を、当該発電設備における前記解析結果データの一部として出力する、請求項1に記載の業務管理システム。
【請求項3】
前記解析結果データの一部は、前記第1変動推移又は前記第2変動推移の変動特徴を図化した波形パターンを含む、請求項2に記載の業務管理システム。
【請求項4】
前記解析手段は、前記変動特徴を生じさせた要因が判明している発電設備については、当該要因の情報を前記波形パターンと関連付けて保存し、保存された前記要因の情報を用いていずれかの発電設備において前記第1変動推移又は前記第2変動推移の変動特徴が生じた要因を推定する、請求項3に記載の業務管理システム。
【請求項5】
前記解析手段は、前記変動特徴を生じさせた要因が新たに判明した発電設備については、既存の前記要因の情報を更新する、請求項4に記載の業務管理システム。
【請求項6】
前記解析手段は、前記変動特徴が生じた要因に基づいて追加又は変更する前記検査項目を決定する、請求項4に記載の業務管理システム。
【請求項7】
前記評価基準が、リスクコントロールの観点で定められている場合、
前記評価手段は、損害保険の引受基準を取得するとともに当該発電設備の事故ハザードの状況が前記引受基準に適合するかどうかを判別し、適合する場合は前記引受基準に適合する書証が関連付けられている適合証データを生成する、
請求項1に記載の業務管理システム。
【請求項8】
前記損害保険に割増引ランク又は割増引率が設定されている場合、
前記評価手段は、当該発電設備についての前記検査実施データに基づいて前記割増引ランク又は前記割増引率を導出する、
請求項7に記載の業務管理システム。
【請求項9】
前記電子カルテ管理手段は、当該発電設備の発電環境を図化するとともに、前記発電環境と前記解析結果データ及び前記評価結果データとを1頁に収まるレイアウトの前記電子カルテに編集して出力する、請求項1に記載の業務管理システム。
【請求項10】
前記発電設備のうち検査対象部位の画像を取得し又は生成し、前記画像を含む検査履歴付の報告書を作成する報告書作成手段と、前記解析結果データ又は前記評価結果データに基づいて当該発電設備の維持に関する提案書面を作成する提案書面作成手段と、をさらに備え、
前記電子カルテ管理手段は、前記電子カルテを通じて前記報告書又は前記提案書面の作成を可能にする、
請求項9に記載の業務管理システム。
【請求項11】
外部からアクセスしてきた情報端末の表示画面に、前記電子カルテを表示させる制御手段をさらに備えて成る、
請求項1に記載の業務管理システム。
【請求項12】
通信機能を備えた情報処理装置を請求項1から11のいずれか一項に記載された業務管理システムとして動作させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電設備の維持管理の総費用の削減を図り、発電事業の長期継続を支援する、発電事業の業務管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーによる発電手段の一つとして太陽光発電がある。太陽光発電は、太陽光発電モジュールを含む発電設備を家庭や事業所等に設置することで、光熱費を削減し、災害の時などの停電時にも電気の使用や売電も可能であることから、発電事業を営む者も増えている。しかしながら、太陽光発電は、気候の影響を受けやすい。また、予期しない故障や計画通りの発電量(発電電力量を含む。以下同様)が得られなくなる場合もある。そのため、発電事業を円滑に遂行するためには、設置場所や太陽光設備の日常的な動作監視や検査が不可欠となる。
【0003】
太陽光発電設備の動作監視・検査技術として、例えば特許文献1に開示された太陽光発電検査システムや特許文献2に開示された太陽光発電業務管理システムが知られている。特許文献1に開示された太陽光発電検査システムでは、太陽電池ストリングが並列接続により複数並べて配置された太陽光発電システムの第1の太陽電池ストリングの第1の出力電流と、第2の太陽電池ストリングの第2の出力電流をそれぞれ測定し、測定値に基づいて第2の太陽電池ストリングの第2の温度特性を算出し、この第2の温度特性に基づいて第2の太陽電池ストリングの故障の有無を判定する。
【0004】
特許文献2に開示された太陽光発電業務管理システムは、監視対象となる太陽光発電設備が当初の計画通りの発電を行っているか否を監視するために、計測した実電力量と気象サーバから取得した気象情報に基づいて演算した想定発電量との差または比と異常発電係数として予め設定された値との関係に基づいて発電状況の異常の有無を判定する。
【0005】
近年は、特許文献3に開示された太陽電池検査システムのように、カメラとGPS受信機搭載の飛行体(ドローン)と画像処理技術とを用いて屋外設置の太陽電池モジュールの検査を自動化することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6012874号公報
【特許文献2】特許第5636621号公報
【特許文献3】特開2017-215239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2,3に開示された技術は、いずれも設置済の太陽光発電設備における発電阻害要因を特定し、それを早期に除去する上で効果的なものといえる。しかしながら、太陽光発電設備の中には、法令で定める基準に従って適正に建設されたものばかりとは限らず、瑕疵や不具合のあるものも混在する。発電事業を長期にわたって継続するには、適切な設備や商材を使用して適切な施工を行うことや、適切なO&M(Operation(安定的な利用・運転管理)及びMaintenance(保守点検))を実施することが欠かせない。
【0008】
また、多くの太陽光発電設備には、予測困難な潜在リスク、例えば外来事故のリスクがある。外来事故は、過去の事例に照らすと、河川等氾濫、浸水(建屋内浸水)、土砂崩れ(急斜面設置)、風災(基礎・架台の問題)、その他の風災(他の太陽電池モジュール等の飛来等)、飛来物による破損、落雷などの災害事故のほか、盗難などがある。外来事故に起因する損害額は、想定を遙かに超える場合があり、この場合は発電事業の継続が不可能となる。発電事業を長期にわたって継続するには、O&Mのみならず、外来事故等のリスク処理を含むリスクコントールが重要となる。リスクコントロールとは、潜在リスクの回避・移転や、リスクの発生頻度の抑制、リスク回避のための費用の適正化等を可能にすることをいう。
【0009】
特許文献1,2,3に開示された技術は、顕在化し、あるいは顕在化しつつあるリスクを発見することはできるが、リスクコントールを行うことは困難である。また、発電設備のO&Mに関する視点がないため、長期の発電事業の維持管理が困難である。
【0010】
本発明は、発電設備のO&Mやリスクコントロールを適切に支援することにより長期の発電事業の維持管理を容易にする、発電設備の業務管理技術の提供を主たる目的とする。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様となる発電設備の業務管理システムは、管理対象となる複数の発電設備の発電環境及び発電傾向を発電設備毎に解析し、解析結果データを各発電設備の識別情報と関連付けて出力する解析手段と、各発電設備において所定の検査項目に従って実施された検査の結果を表す検査実施データを定期又は不定期に取得し、取得した検査実施データと前記解析結果データとに基づいて、リスクコントロールの観点と発電阻害要因除去の観点の少なくとも一方を含む観点で定められた所定の評価基準との適合性を発電設備毎に評価し、評価結果データを当該発電設備の識別情報と関連付けて出力する評価手段と、
前記解析結果データと前記評価結果データとを履歴付で記録した電子カルテを発電設備毎に生成するとともに、各前記電子カルテの記録事項を所定の権限情報に応じた範囲で可視化する電子カルテ管理手段と、を備えて成る。
【0012】
本発明の他の一態様は、通信機能及びストレージ機能を有するコンピュータを、上記業務管理システムとして動作させるためのコンピュータ読み取り可能なアプリケーションプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期の発電事業の維持管理を容易にする太陽光発電設備の業務管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】PVトレーサビリティシステムの全体構成図。
図2】業務管理システムのハードウェア構成図。
図3】業務管理システムの機能構成例を示す図。
図4】事業者端末のディスプレイに表示される階層画面の遷移例を示す図。
図5】ユーザ端末のディスプレイに表示される階層画面の遷移例を示す図。
図6】ユーザ端末において表示される電子カルテの内容例を示す図。
図7】事業者端末において表示される電子カルテの内容例を示す図。
図8】事業者端末において表示される電子カルテの他の内容例を示す図。
図9図8における解析/評価の説明欄710の記述例を示す図。
図10】ユーザ端末において表示される写真閲覧画面の例示図。
図11】事業者端末において表示される写真閲覧画面の例示図。
図12】履歴形式報告書の例示図。
図13】履歴形式報告書のサブ画面として表示される構内配置図取込画面の例示図。
図14】履歴形式の詳細報告書の例示図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態例を説明する。図1は、本実施形態に係る発電設備の業務管理システム1を有するPV(Photovoltaic)トレーサビリティシステムの全体構成図である。トレーサビリティシステムは、O&Mを通じて、発電設備の設置、稼働、廃棄に至る過程で生じる様々な潜在リスクを追跡可能にするネットワークシステムである。
業務管理システム10は、ネットワークNWに接続される情報処理装置であり、サーバ機能及びストレージ機能を有し、本発明のコンピュータプログラムの一例となる業務管理用アプリケーションプログラム(以下、業務管理AP)を実行することにより、発電設備の円滑な業務管理に関わる後述の機能を実現する。発電設備は、本例では太陽光発電設備であるものとする。以後の説明では、便宜上、太陽光発電設備を「発電所」と称する場合がある。
【0016】
発電所にはPCS(Power Conditioning System)が設けられている。PCSは、主として、発電所で発電された直流電力を交流電力に変換して出力するとともに出力値を一定値に保持するための機器である。発電所の中には、PCSを所定数の太陽光発電モジュールの系統毎に複数設置したり、自律点検アルゴリズムに基づく監視データ、各PCSの出力値、売電状況などを稼働データとして、定期又は不定期に記録し、出力するシステム(例えば遠隔監視システム)を実装する発電所もある。
【0017】
ネットワークNWは、公衆通信回線を使用したネットワークであり、本例ではインターネットである。ネットワークNWには、発電所のオーナーであって業務管理システム1を使用してメンテナンスサービスを提供するユーザに対してO&Mを依頼する1又は複数の事業者の各々が操作する事業者端末50と、業務管理システム1のユーザが操作する複数のユーザ端末60とが接続される。
ユーザ端末60を操作するユーザは、発電所の施工、検査(点検を含む。以下同じ)、メンテナンス(保守、保全等)や修繕を請け負う組織、設備廃棄を請け負う組織、これらの組織の下請け組織、商材の調達組織等に所属する者である。これらの組織は、業務管理システム1に、請け負った作業の進捗に関する情報を集中させ、必要に応じてこれらの情報を互いに共有するとともに、業務管理システム1において分析、解析あるいは評価された情報、あるいは提案された情報に触れることで、自己の作業を円滑に進めることができる。
【0018】
ネットワークNWには、また、上述した発電所の遠隔監視システム70のほか、業務管理システム1とAPI(Application Programming Interface)連携する複数のウエブサイト、例えば、業務管理システム1が任意のタイミングで地域毎の日射量データを含む気象情報を取得できる気象サーバ80が接続されている。
【0019】
事業者端末50とユーザ端末60は、業務管理システム1との双方向通信が可能な据置型コンピュータ、例えばデスクトップパソコンであっても良いが、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコンなどの携帯通信端末であっても良い。後者の場合、ネットワークNWには、無線中継局を介して接続されることになる。
【0020】
事業者端末50とユーザ端末60は、それぞれディスプレイ、全球測位衛星システムGNSS(Global Navigation Satellite System )のアンテナ及び受信機、カメラ、バーコードリーダ、ストレージ、画像処理機能を備えるものを想定するが、これらを外付けで接続可能な端末であっても良い。事業者端末50及びユーザ端末60には、業務管理システム1と連携して動作する支援アプリケーションプログラム(支援AP)がインストールされている。支援APは、業務管理システム1にアクセスするためのソフトウェアであり、この支援APが起動し、アクセス時に業務管理システム1による認証に成功すると、事業者端末50及びユーザ端末60は、それぞれ業務管理システム1に情報を送出し、あるいは、業務管理システム1において分析、解析、評価あるいは作成された情報に触れる(閲覧、ダウンロード等)ができるようになる。
【0021】
[業務管理システムのハードウェア構成]
次に、業務管理システム1の構成例について説明する。図2は、業務管理システム1のハードウェア構成図である。業務管理システム1は、制御バスB1を介して接続されたCPU10、RAM11、ROM12、GPU13を含む制御コンピュータを備える。CPU(Central Processing Unit)10は、上記業務管理APを実行することにより、事業者端末50及びユーザ端末60との間で様々な情報の受け渡しを行ったり、情報の分析、解析あるいは評価等を行う上で必要な機能を構築する。RAM(Random Access Memory)11は、CPU10の主メモリ、ワークエリア等の一時記憶領域として用いられる書換可能なメモリである。ROM(Read Only Memory)12は、デバイスドライバ及びパラメータデータなどが格納されている読出専用メモリである。GPU(Graphics Processing Unit)13は、動画や画像の処理など、負荷の高い処理についてCPU10を補助するための処理ユニットである。
【0022】
制御バスB1には、ストレージI/F(I/Fはインタフェースの略、以下同じ)14、入出力I/F16、通信I/F15なども接続されている。ストレージI/F14は、大容量記憶装置やUSBメモリなどの外部ストレージSTへの各種情報の格納と格納された各種情報の読み出しを行うためのインタフェースである。外部ストレージSTの大容量記憶装置には、上述の業務管理APなどが格納されている。入出力I/F16は、ディスプレイDPへの情報表示、タッチパネルやキーボードなどの入力デバイスKBからのデータ入力、プリンターPRへの印刷データの出力を行うためのインタフェースである。通信I/F15は、ネットワークNWを介した通信を可能にするインタフェースである。
【0023】
[業務管理システムの機能構成]
次に、監視プログラムを実行する業務管理システム1において実現される各種機能ブロックについて説明する。図3は、業務管理システム1の機能構成例を示す図である。業務管理システム1は、外部ストレージSTのうち大容量記憶装置に、発電所DB(DBはデータベースシステムの略、以下同じ)101、事業者DB102、ユーザDB103、知識DB104、ドキュメントDB105、法令等DB106、契約書DB107を構築する。
【0024】
発電所DB101は、管理対象となる発電所のO&Mに関わる情報を格納する。本実施形態では、発電所毎の個別情報と、複数の発電所のO&Mのための検査マスタ及び解析マスタとを格納する。個別情報は、個々の発電所の設置日時・設置場所のほか、発電環境((設備構造(設備型式、定格値、太陽光パネルの傾斜角度を含む)、設置場所周辺の地理環境、設備稼働状況(稼働時の温度、湿度を含む))、売電状況、定期又は不定期に実施された点検・検査状況、後述する解析結果及び評価結果、各種報告書、提案書等である。
個別情報は、テキスト形式のデータのほか、写真、静止画像(線図、模式図、グラフ等)、動画像、音(デジタル録音データ)と共に、発電所ID(IDは識別情報、以下同じ)と関連付けられて格納されている。
【0025】
O&Mのための検査マスタは、各発電所の検査の実施時に検査担当のユーザが参照すべき検査項目と、検査結果等を記入する帳票データである。O&Mのための解析マスタは、発電量等の解析結果の特徴を抽出するフォーマットと、過去の多くの発電所において生じた発電阻害要因や運転・維持阻害要因等の抽出結果を示す参照用データである。
【0026】
事業者DB102は、業務管理システム1にアクセス可能な事業者の固有情報を格納する。事業者の固有情報は、例えば事業者識別コードが割り当てられた事業者固有の事業者ID、権限情報、事業者名、住所、連絡先等であり、発電所IDと関連付けて格納(登録)される。事業者識別コードは、例えば、後述する電子カルテの記録事項の閲覧範囲を定めるために設定される。
【0027】
ユーザDB103は、業務管理システム1にアクセス可能なユーザの固有情報を格納する。ユーザの固有情報は、例えば、当該組織の業種・業態の識別コードが割り当てられた固有のユーザID、権限情報、ユーザ名、住所、連絡先等である。各組織には担当者の氏名や連絡先も格納される。業種・業態の識別コードは、例えば、後述する電子カルテの記録事項の閲覧範囲を定めるために設定される。
【0028】
知識DB104には、過去の外来事故の情報(事故原因や損害額を含む)、発電所の機種毎の仕様情報のほか、業務管理システム1を関数近似器として動作させるための関数近似プログラムやそのパラメータ、関数近似器の結果、発電所のO&Mに携わった者によるアドバイス情報(経験則)等が格納されている。発電設備の仕様情報は、例えば発電能力、想定される寿命等である。
【0029】
関数近似器は、入力情報に基づく複雑な関数(入力情報に対して出力情報を対応させる規則)を多数のデータを使った深層学習等のアルゴリズムによって再現(近似)するデバイスであり、ニューラルネットワークや深層学習デバイスなどは、関数近似器の一例である。本実施形態の例では、各発電所の発電環境や発電実績、過去に発生した外来事故の事実情報などは、関数近似器の入力情報の一例である。また、過去に発生した障害や外来事故の種類別の分析・解析情報は関数近似器の出力情報の一例となる。分析・解析情報には、障害又は事故の発生しやすさ(発生しにくさ)、障害ないし外来事故の発生時の復旧に要することが推定される作業や事故のリスクコスト等が挙げられる。
【0030】
ドキュメントDB105には、それぞれ後述する、発電所毎の電子カルテ、事業者宛の各種報告書及び評価書、ユーザ宛の指示書等の標準書式データ及びそれらに対応する文例等が格納される。標準書式データは、使用するドキュメントの種別や用途毎に階層的に格納されており、それぞれに書式ID、例えば電子カルテID、報告書ID、評価書ID、指示所ID等が付与されている。
【0031】
法令等DB106には、太陽光発電事業の維持に必要な各種法令あるいは当該法令を扱う公的機関システムのアドレス(URL)のほか、業務管理システム1の利用手順や活用態様などのマニュアルを事業者用とユーザ用とに分けて格納されている。契約書DB107には、各事業者との契約書、各ユーザとのメンテナンス契約書、保険契約書等が、事業者ID、ユーザIDと関連付けて格納されている。
【0032】
業務管理システム1は、また、データ取得部111、アクセス者管理部112、稼働データ管理部113、検査実施データ管理部114、解析部115、評価部116、電子カルテ管理部117、ドキュメント管理部118、編集部119及びこれらの機能の起動・実行・終了を統括的に制御する主制御部120の機能ブロックを有する。
【0033】
データ取得部111は、発電所の維持管理に必要な各種データを取得する。例えば、ネットワークNWに接続されている事業者端末50、ユーザ端末60、遠隔監視システム70、気象サーバ等のウエブサイトとの通信を制御して、通信先からのデータを取得する。データ取得部111は、外部ストレージSTあるいは入力デバイスKBからのデータも適宜取得する。
【0034】
アクセス者管理部112は、業務管理システム1へのアクセス者(組織)の情報を管理する。具体的には、事業者端末50及びユーザ端末60を操作するアクセス者(組織)の情報を登録するとともに、権限情報の設定、設定した権限情報に基づくアクセス者の認証、認証に成功したアクセス者への情報の送出、当該アクセス者から受け容れる情報の選別・該当DBへの格納、当該アクセス者へ提示する情報の範囲の決定等を行う。
【0035】
稼働データ管理部113は、各発電所の発電量を含む稼働データを、各発電所から直接又は間接に取得するとともに、当該発電所の所在地又はその近隣エリアの日射量を表す日射量データを気象サーバ80から取得し、取得した稼働データ及び日射量データを発電所IDと関連付けて時系列に発電所DB101へ格納する。
太陽光発電では、天候その他の環境による影響を大きく受け、発電量等が絶えず変動する。そのため、短期間の稼働データだけでは、発電所の実態解析に適しないおそれがあることから、少なくとも数ヶ月以上にわたる稼働データとその日時における日射量データを含む気象情報とを継続的に取得する必要がある。
【0036】
検査実施データ管理部114は、発電所毎に設定された一又は複数の検査項目に基づいて実施された検査の結果を表す検査実施データを取得し、取得した検査実施データを発電所IDと関連付けて発電所DB101へ時系列に蓄積する。
検査実施データ管理部114は、また、蓄積された検査実施データに基づいて、次の検査項目の追加候補又は削除候補を決定する。例えば、実施済の検査に用いた検査項目のほかに、対象設備に対する新たな検査項目の候補を、例えば当該対象設備と類似の設備を有する他の発電所において実施した検査実施データから抽出する。そして、抽出した検査項目の候補の中で、後述する観点に基づく期待基準に適合しない候補(逸脱が許容される範囲から逸脱する候補、あるいは逸脱が許されない範囲に属する候補)を当該対象設備に対する新たな検査項目として決定する。検査実施データの一部は、例えばテキスト形式データ、表形式データのほか、現場の俯瞰図、模式図、俯瞰写真、あるいは該当部位の写真、音、映像、イラスト、マーキング等と関連付けて発電所DB101に蓄積される。
【0037】
検査実施データ管理部114による検査項目の候補の選定及び検査項目の決定は、例えば以下の観点に基づいて行われる。
(A)リスクコントロール
顕在化しているリスクのみならず、潜在リスクを検査実施データに基づいて追跡し、様々な人的なコントロールや保険等のファイナンス手段を講じてリスクコストの最適化を図るというリスクコントロールの観点である。最適化されるリスクコストは、発電所経営者が負担する、潜在的危険性(=ハザード)によるリスクの解消・軽減に要するコストである。リスクコントロールとは、起こり得るリスクを事前に把握してリスクコストを低減させることをいう。リスクコストは、例えば、ハザードから事故が現実に生じたときの損害額(過去の実績値等から推算)と事故発生確率との関数、例えば所定係数との乗算により定量化することができる。ハザードの一つは、上述した外来事故のハザードである。事故ハザードについてのリスクコントロールは、ハザードコントロールと呼ばれることがある。リスクコントロールの観点に基づく検査項目(又は検査項目の候補)は、例えば、過去の外来事故の主たる原因となった事故ハザードの特徴(予兆を含む)を定量化するために実施する検査の内容とすることができる。
なお、以後のデータ処理の簡略化のため、予め定めた分類に属する小損害・多頻度事故かどうかを判別し、当該分類に属するとされる事故については、維持管理計画の中でハザードをコントロールしつつ自家保険による対応を検討しても良い。
【0038】
(B)発電阻害要因の除去
実際に生じている発電阻害要因を特定し、発電量を回復するための対策へつなげるという、発電効率低下抑制の観点である。例えばJIS8907にある発電量推定の諸要素及びPCS等の仕様上の留意点に、知識DB104に蓄積されている経験則をも加えて初期検査項目とすることができる。その上で、実例の蓄積により発見された新たな視点等を検査項目に追加し、相対的に重要でなくなった検査項目を適宜削除するようにしても良い。
【0039】
(C)維持管理作業の効率性阻害要因の除去
個々の発電所に内在する維持管理作業の効率性の阻害要因を特定し、改善へつなげるという発電事業の経営改善の観点である。知識DB104に蓄積されている経験則をも加えて初期検査項目としても良い。その上で、実例の蓄積により発見された新たな視点等を検査項目に追加するようにしても良い。
【0040】
検査の実施に際しては、上記観点(A)~(C)毎に、検査項目ならびにそれに対応する検査結果の記載要領・記載例文及び確認すべき資料を、検査を担当するユーザ(検査員)が操作するユーザ端末60の画面に表示させる。
検査員は、画面に検査の結果を、例えば記載例文の選択により入力する。これにより、検査員による検査要領及び検査結果の入力表現のバラツキを抑制することができる。なお、検査結果の記載例文は、編集が可能である。検査員が入力した内容は、当該検査員の管理者が確認し、必要に応じて検査員に修正させる。検査員と管理者との間の連絡を記録しておいても良い。
【0041】
上記ユーザ端末60から取得した検査実施データは、複数の行列から成るマトリクスデータとして整理され、上述した検査マスタの一つとして、発電所DB101に格納される。マトリクスデータのうち、行と列の一方は各セルが属するフィールドを識別するIDの欄であり、行と列の他方は、検査の対象、検査の観点、事故ハザードの種別、複数の数値が予め記入された検査結果の欄である。検査の対象の欄は、解析部115による過去の発電阻害要因や事故ハザードの因果関係の解析結果に基づき選定した発電環境の一部要素であり、適宜、増減あるいは変更され得る。一例を挙げれば、発電所の立地、土木・造成・地盤、基礎・架台及びパネル、設備・機器、配線等である。
【0042】
各検査の対象における検査の観点の欄は、例えば検査の対象が「立地」で事故ハザードの種類が「水災」である場合、洪水・高潮浸水想定区域かどうか、あるいはどの程度の影響を受けやすいかの記述文であり、事故ハザードの種別に応じて変わる。その内容は、過去の検証実績等により決定される。
【0043】
検査結果の欄は、検査の対象と事故ハザードに応じて、過去の障害や事故の統計値に基づいて重み付けされた複数の数値のうち、いずれか1つを選択できるようになっている。検査の対象が、上記と同じ「立地」であっても、事故ハザードの種別が「土砂崩れ」、「沈下」等である場合、検査の観点は、急斜面かどうかとなり、検査結果は異なる数値となる。なお、事故ハザードの種別は、ほかにも、火災、風災、塩害、落雷、盗難等がある。
【0044】
検査結果の数値は、発電所毎に合算されるようになっている。合算の際に使用した検査結果の数値については、選定の納得性を被評価者に与える観点から、検証作業の際に、他の数値と異なる態様(例えばマーキング)で表示(印刷)されるようにしても良い。検査結果の数値は、統計値又は関数近似等による推定値に基づいて、検査の対象、事故ハザードの種類、検査の観点に応じて重み付けされる。検査が実施されると、検査員により、上記評点のいずれかが特定されるが、特定された評点は、所定の妥当性基準に従ってその妥当性が検証され、必要に応じて検査の管理者が修正することで、検査結果のブレが抑制される。妥当性の検証は、例えば過去の実測値に基づく検査時点の評価値との適合性の範囲を逸脱するかどうかの判定により自動的に行われるようにしても良い。
【0045】
解析部115は、所定の解析アルゴリズムに従って、稼働データ、気象情報及び検査実施データ等に基づく発電所の状況の解析と、これらの解析結果に基づく発電阻害要因又は維持管理作業の効率性阻害要因の推定とを行う。
【0046】
発電所の状況の解析は、主として、発電所あるいは外部機関から送られてくる稼働データに基づいて、あるいは稼働データと解析対象期間の気象データとに基づいて行う。解析する発電所の状況の一つは、発電所(発電設備)毎の中・長期的な発電傾向と、発電阻害要因又は維持管理作業の効率性阻害要因の推定である。
【0047】
中・長期的な発電傾向とは、解析条件として入力を受け付けた所定期間又は所定日数、例えば連続する100日間あるいは数年間にわたる、発電量、発電量を日射量で除した発電効率等の増減推移である。発電量や日射量のデータそのものだけでは、発電量の増減推移の把握とそれによる発電阻害要因及び維持管理作業の効率性阻害要因の把握が難しいが、例えば、発電効率を12ヶ月移動平均にすると、気象や季節等に起因する変動要素を捨象して傾向を視覚化することができる。
【0048】
発電阻害要因及び維持管理作業の効率性阻害要因の推定は、解析部115が、一例として、各発電所の各々に対して以下の工程を実行することで実現される。
まず、ある発電所(便宜上、第1発電所と呼ぶ)又は第1発電所の発電設備の一つである1PCSの発電量を日射量で除算し、これにより、第1発電所について日射量の影響を捨象した値の所定日数分の移動平均を表す第1変動推移を求める。解析部115は、次に、同一とみなされる設置環境で同時期、同時間帯で稼働している他の発電所(便宜上、第2発電所と呼ぶ)又は第1発電所の他のPCSを基準としたときの相対比較特徴すなわち第1発電所又は1PCSの相対出力値を時系列に表す第2変動推移を求める。第2変動推移により、気象のほか、時間帯、設置されているPCSの数による変動に起因する解析誤差を低減させることができる。
【0049】
解析部115は、第1変動推移と第2変動推移を、各発電所における発電傾向の解析結果を表す解析結果データの一部として、発電所IDと関連付けて発電所DB101に保存する。その際、第1変動推移と第2変動推移を、それぞれ、所定期間、例えば連続する100日間あるいは12ヶ月にわたる変動特徴を表す波形状の線図変化パターン(以下、「波形パターン」)として図化し、これらの波形パターンを解析結果データの一つに含めておくことが望ましい。パターン認識に用いることができるためである。解析部115は、また、第1変動推移と第2変動推移の変動特徴を生じさせた要因が判明している場合は、当該要因の情報を波形パターンと関連付けて保存しておく。
【0050】
その後、解析部115は、発電所DB101を参照して、第1発電所の第1変動推移における変動特徴と第2変動推移における変動特徴の少なくとも一方の変動特徴が同一又は類似し、かつ、上記変動特徴を生じさせた要因が判明している他の発電所(便宜上、第3発電所と呼ぶ)が存在するかどうかを探索する。探索は、上記波形パターンを用いたパターン認識により行う。第3発電所が存在した場合、第3発電所における要因の情報を用いて、第1発電所における発電阻害要因、又は、維持管理作業の効率性阻害要因を推定する。そして、推定された要因を第1発電所の解析結果データの一部に含めて保存する。
【0051】
解析部115は、上記変動特徴を生じさせた要因が新たに判明した発電所については、発電所DB101における既存の要因の情報を更新する。解析部115は、また、発電阻害要因、又は、維持管理作業の効率性阻害要因が推定された発電所については、推定された要因を検査実施データ管理部114に伝達し、追加又は変更する検査項目を決定させる。あるいは、解析部115が、推定された要因に基づいて、自ら追加又は変更する検査項目を決定し、決定した検査項目を検査実施データ管理部114に伝達しても良い。
【0052】
なお、解析結果データに含め、あるいは、波形データとして図化するのは、第1変動推移と第2変動推移のいずれか一方だけであっても良い。
【0053】
解析部115による解析は、知識DB104に格納されている関数近似器を用いて実行する工程を含んでも良い。例えば、第1変動推移又は第2変動推移の変動要因、発電阻害要因、維持管理作業の効率性阻害要因を過去の同様の要因を基に推定しても良い。また、解析部115は、以上の解析結果を用いて、当該発電所の再生工事の提案書、あるいは、運用等変更の提案書の作成支援を行うようにしても良い。
【0054】
評価部116は、各発電所において所定の検査項目に従って実施された検査の結果を表す検査実施データを定期又は不定期に取得し、取得した検査実施データと解析結果データとに基づいて、リスクコントロールの観点(A)と発電阻害要因除去の観点(B)の少なくとも一方を含む観点で定められた所定の評価基準との適合性を発電設備毎に評価し、評価結果データを発電所IDと関連付けて出力する。評価基準は、例えば、上述した検査項目を決定した観点に基づいて定められた、リスク外といえる許容範囲を定めた期待基準とすることができる。
評価基準が、リスクコントロールの観点(A)で定められている場合、評価部116は、損害保険の引受基準を取得するとともに当該発電所の発電環境が引受基準に適合するかどうかを判別する。適合する場合は引受基準に適合する書証が関連付けられている適合証データを生成する。また、損害保険に割増引ランク(割増及び/又は割引のランク)又は割増引率(割増率及び/又は割引率)が設定されている場合、評価部116は、当該発電所についての検査結果データあるいは解析結果データに基づいて割増引ランク又は割増引率を導出する。なお、1発電所において検査の対象が複数となり、それ故に期待基準が複数になる場合、これらを総合した評価とすることができる。期待基準が、知識DB104、あるいは、ネットワークNWを通じてアクセス可能な外部DBにアクセスして取得できる場合、それを評価基準に用いても良い。
【0055】
電子カルテ管理部117は、解析結果データと評価結果データとを履歴付で記録した電子カルテを発電所毎に生成するとともに、各電子カルテの記録事項を所定の権限情報に応じた範囲で可視化する。より詳しくは、当該発電設備の発電環境を図化するとともに、発電環境と解析結果データ及び評価結果データとを1頁に収まるレイアウトの電子カルテに編集する。そして、登録済のユーザ間で、記録項目の共有(閲覧)を可能にする。つまり、主制御部120の制御の下で、外部からアクセスしてきた事業者端末50及びユーザ端末60の表示画面に、電子カルテが表示される。
【0056】
電子カルテは、発電所の施工、維持管理、廃棄に至るまでに判明した、設置環境の調査結果、稼働データ、点検又は検査の結果、分析又は解析の結果、評価、対策のすべての情報を複数の項目に分類して記録される電子書面である。医療機関において用いられている電子カルテ(紙媒体を電子化したもの)とは、記録する項目と閲覧範囲を、発電所毎に、事業者や各ユーザが自由に決定・変更可能である点で相違する。
電子カルテの記録項目を権限情報に応じた範囲で提示する機能は、権限情報に応じて異なる記録項目のレイアウトを編集し(必要に応じて階層化し)、編集されたレイアウトの電子カルテを、事業者端末50又はユーザ端末60の表示画面に表示させたり、印刷させたりすることで実現が可能である。
【0057】
電子カルテ管理部117は、ある態様では、電子カルテ上の発電傾向を表す解析結果データ(グラフ)の所望箇所をクリックすると当該所望箇所における数値がポップアップで表示される。下位層の情報は、その上位層の項目を選択することにより、例えば別ウィンドウで提示される。電子カルテ管理部117は、別の態様では、当該発電所の地図、構内配置図、系統構成図、装置構成図等を階層的に提示する。これらの図において、点検・検査により不具合等が発見された設備や箇所の場所が強調表示されるようにしても良い。
電子カルテ管理部117は、外部からアクセスしてきた事業者端末50又はユーザ端末60に、1頁の電子カルテを通じて、数値化又は図化された解析結果又は評価結果を含む様々な情報をビジュアルに提示することができる。
【0058】
ドキュメント管理部118は、報告書作成手段、提案書面作成手段として機能する。すなわち、発電所毎の点検・検査等の報告書、解析書、評価書、ユーザ宛の指示書等のドキュメントを作成し、それをドキュメントID及び発電所IDと関連付けて発電所DB101に保存する。ドキュメントは、階層的に作成することができる。点検・検査等の報告書は、履歴形式の報告書である。この報告書の作成方法については、後で詳しく説明する。ドキュメントは、例えば電子カルテ管理部117が電子カルテを提示しているときに、当該電子カルテを通じて作成され、閲覧可能なものである。その他、目的に応じた書式で作成、編集され、個別にユーザ等へ提示することもできる。
【0059】
編集部119は、事業者端末50あるいはユーザ端末60に提示する、階層メニュー画面、各種データ入力画面、検査指示画面、要求に対する応答情報、関係する発電所の電子カルテ、当該電子カルテに関連付けられた情報表示画面などを、提示先に設定されている権限情報に基づいて編集する。
【0060】
[運用形態例]
次に、上記のように構成される業務管理システム1の運用形態例を説明する。
図4は、業務管理システム1が、認証に成功した事業者端末50のディスプレイに表示される階層画面の遷移例を示す図である。事業者端末50には、トップ画面としてポータルメニュー画面500が表示される。本実施形態では、発電所のトレーサビリティ500aと権限情報変更500bとをボタン画像としてポータルメニュー画面500に表示される。権限情報変更500bが操作されると、ディスプレイの画面は、新たなパスワード等を入力する画面(図示省略)に遷移する。
【0061】
トレーサビリティ500aが操作されると、ディスプレイの画面は、トレーサビリティ画面510に遷移する。トレーサビリティ画面510では、発電所リスト511、メンテナンス・スケジュール一覧512、マスタ情報513、マニュアルダウンロード514のボタン画像が表示される。マスタ情報513が操作されると、ディスプレイの画面は、新たな発電所を登録するための登録画面(図示省略)に遷移する。マニュアルダウンロード514が操作されると、ディスプレイの画面は、業務管理システム1の利用マニュアルのダウンロード画面(図示省略)に遷移する。QRコード(登録商標)515は、事業者端末50の操作者が、スマートフォンを用いて業務管理システム1にアクセスするときの情報をコード化した画像である。戻る516は、ポータルメニュー画面500に表示画面を戻すためのボタン画像である。
【0062】
発電所リスト511が操作されると、ディスプレイの画面は、発電所DB101のうち、当該事業者IDが関連付けられている発電所のリスト画面5111に遷移する。リスト画面5111には、一覧エリア5111a、実行5111b、クリア5111c、戻る5111dが表示される。一覧エリア5111aには、発電所IDで識別されるフィールド毎に、発電所固有の情報が表示される。また、各フィールドの先頭には選択欄が表示される。いずれかの選択欄が選択され、実行5111bが操作されると、ディスプレイの画面は、選択された発電所の個別画面5112に遷移する。クリア5111cが操作されると、先に一覧エリア5111aにおいて操作した選択がクリアされる。戻る5111dが操作されると、一つ上の階層の画面に戻る。
【0063】
個別画面5112には、発電所の名称、所在地、所在地周辺の地図を含む書誌情報エリア5112aのほか、契約内容5112b、電子カルテ5112c、報告書5112d、提案書5112e、検査・点検履歴5112f、戻る5112gのボタン画像が表示される。契約内容5112bが操作されると当該発電所に関する契約内容を表す画面に遷移する。電子カルテ5112cが操作されると、電子カルテの画面へ遷移する。報告書5112dが操作されると、ユーザが提出した点検・検査等の実施報告書の選択画面へ遷移する。提案書5112eが操作されると、評価部116が生成した評価結果に基づく事業者宛の提案書の選択画面へ遷移する。検査・点検履歴5112fが操作されると、後述する履歴形式報告書の画面へ遷移する。戻る5112gが操作されると、一つ上の階層の画面に表示が戻る。
【0064】
トレーサビリティ画面510において、メンテナンス・スケジュール一覧512が操作されると、ディスプレイの表示画面は、スケジュール画面5121に遷移する。スケジュール画面5121には、スケジュールエリア512aのほか、クリア512b、選択行表示512c、戻る512dのボタン画像が表示される。スケジュールエリア512aには、メンテIDにより識別されるフィールド毎に、メンテナンスの内容として、メンテナンス契約の名称、その契約日、メンテナンス事項の登録日、現在の状況を表すステータス、作業を行う請負者(組織)、その担当者、メンテナンス契約期間等が表示される。各フィールドの先頭には、選択エリアが設けられている。この選択エリアが操作されると選択指示が入力される。図示の例では、先頭行のフィールドに選択指示5121aが入力されている。クリア512bは、この選択指示をクリアするときに操作される。選択行表示512cは、選択された行のデータを一つの画面全体に拡大表示する際に操作される。戻る512dが操作されると、表示画面がトレーサビリティ画面510に戻る。
【0065】
図5は、業務管理システム1が、登録済のユーザであって業務管理システム1にアクセスし、認証に成功したユーザ端末60のディスプレイに表示される階層画面の遷移例を示す図である。ユーザ端末60には、トップ画面としてポータルメニュー画面600が表示される。本実施形態では、発電所のトレーサビリティ600a、権限情報変更600bのほか、システム運営者情報600cとシステム利用約款600dが、それぞれボタン画像としてポータルメニュー画面600に表示される。
権限情報600bが操作されると、ディスプレイの画面は、新たなパスワード等を入力する画面(図示省略)に遷移する。システム運営者情報600cが操作されると、ディスプレイの表示画面は、業務管理システム1の運営者の情報画面(図示省略)に遷移する。また、システム利用約款600dが操作されると、ディスプレイの表示画面は、約款表示画面及び関係法令の選択画面(図示省略)に遷移する。
【0066】
トレーサビリティ600aが操作されると、ディスプレイの画面は、トレーサビリティ画面610に遷移する。トレーサビリティ画面610では、発電事業者・発電所リスト611、メンテナンス・スケジュール一覧612、マスタ情報613、マニュアルダウンロード614、下請/調達業者リスト616、対応履歴617のボタン画像が表示される。マスタ情報613が操作されると、ディスプレイの画面は、ユーザの本社・拠点情報、下請/調達事業者の情報、メンテナンスの項目、当該システムに保管する書類の分類項目、稼働状態判別のための閾値の設定画面等、当該システムの複数の画面で共通して引き込んで適用する内容を登録し、表示する画面に遷移する。
【0067】
マニュアルダウンロード614が操作されると、ディスプレイの画面は、業務管理システム1の利用マニュアルのダウンロード画面(図示省略)に遷移する。QRコード(登録商標)615は、ユーザ端末60の操作者が、スマートフォンを用いて業務管理システム1にアクセスするときの情報をコード化した画像である。
【0068】
下請/調達業者リスト616は、当該事業者と連携する下請組織又は調達業者の一覧画面(図示省略)に遷移する。対応履歴617が操作されると、当該事業者が対応した内容の履歴画面(図示省略)に遷移する。戻る618は、ポータルメニュー画面600に表示画面を戻すためのボタン画像である。
【0069】
発電事業者・発電所リスト611が操作された場合のディスプレイの表示画面は、事業者ID毎の発電所リスト画面(図示省略)に遷移するが、一事業者における個々の発電所リスト画面は、図4に示した発電所リスト画面511とほぼ同じになる。すなわち、事業者IDに関連付けられている各リスト画面を通じて発電所リスト6111へ遷移した後、個別の発電所の画面6112に遷移した後、後述する電子カルテの表示画面へ遷移する。
【0070】
メンテナンス・スケジュール一覧612の場合も同様であり、図4のメンテナンススケジュール一覧512とほぼ同じになる。例えば各種メンテナンス内容の設定画面6121へ遷移する。
【0071】
ここで、電子カルテの表示態様例について詳しく説明する。電子カルテは、事業者端末50やユーザ端末60のディスプレイ上の電子カルテ画面に表示された内容のものであり、適宜、印刷又はダウンロード可能なものである。電子カルテ画面は、事業者端末50の場合は、例えば図4の電子カルテ5112cのボタン画像の操作によって遷移する。ユーザ端末60の場合も、電子カルテ5112cのようなボタン画像が表示されるので、それが操作されることによって遷移する。
【0072】
事業者端末50とユーザ端末60に表示される電子カルテの表示事項は、基本的には同じである。ただし、本実施形態の場合、電子カルテに記録すべき事項の多くが様々なユーザ端末60の入力に起因する点検・検査の結果に基づく解析結果や評価結果であり、事業者端末50では、解析結果や評価結果を閲覧して確認する役割を持たせる例について説明している。そのため、本例では、情報を制御するためのボタン画像は、ユーザ端末60の方が、事業者端末50に表示されるものよりも少し多くなっている。
【0073】
図6は、ユーザ端末60において表示される電子カルテ画面の例示図である。電子カルテ画面700は、上部エリアに発電所毎に固有の名称が表示される。この固有の名称は、発電事業者欄701と連携する発電所欄702において発電所が切り替えられると、切替先の名称に自動的に切り替わる。実施時期欄703には、契約書DB107に格納されている契約で定めた時期が転記される。解析/評価種別欄704は、電子カルテ画面700に表示させる情報の種別を選択する欄であり、解析結果が選択されると解析結果検索705が有効、評価結果検索706が無効となり、評価結果が選択された場合はその逆となる。図示の例では、解析結果が選択されている。
【0074】
解析結果欄707には、データ期間毎の解析種別のフィールドが表示される。それぞれのフィールドの先頭欄は選択指示が入力される。図示の例では、ある時期の総発電量12か月移動平均フィールドの選択指示7071が入力されている。この選択指示7071の入力により、解析/評価結果の説明欄710と解析/評価欄711のグラフ領域711aの内容がそれ以前のものから切り替わる。グラフ領域711aの表示は、スライドボタン711b,711cの操作によりスライドする。説明欄710は、グラフ領域711aに対する所見が記述される。この所見は、ドキュメントDB105に格納されている文例を基に、メンテナンスを担当した組織の担当者が引き込んだものであり、編集ボタン710aで修正可能となり、保存ボタン710bで当該電子カルテと関連付けて保存される。
【0075】
電子カルテ画面700には、さらに、解析結果の印刷720、評価結果の印刷730、写真閲覧740、発電所系統図750、戻る760の各ボタン画像が表示される。各印刷720,730が操作されると、印刷範囲等の設定画面(図示省略)に遷移する。写真閲覧740については、後述する。発電所系統図750が操作されると、当該発電所の系統構成の模式図が電子カルテ画面700のウインドウ画面の形態で表示される。このとき、解析/評価結果が特定のモジュールや設備に関するものである場合、当該モジュール又は設備が強調表示される。戻る760が操作されると、ディスプレイの画面の表示は、一つ上の階層画面に戻る。
【0076】
図7は、事業者端末50において表示される電子カルテ画面の例示図である。事業者端末50の電子カルテ画面800は、その解析/評価結果の説明欄810に、図6に示された編集ボタン710aと保存ボタン710bに対応するものが存在しない点以外は、図6に示した電子カルテ画面700と同じである。そのため、符号のみを先頭を8にすることで、各部の重複説明を省略する。
なお、事業者端末50における電子カルテ画面800のうち、解析/評価種別欄804、解析結果検索805、評価結果検索806は、既に解析結果や評価結果が保存されている場合に有効となる。
【0077】
電子カルテ画面700において、解析結果欄における解析種別が変更された場合の電子カルテ画面700の内容例を図8及び図9に示す。符号は図6において使用したものをそのまま使用している。図8の例では、解析種別欄707が、PCS間相対比較についての選択指示7073に変更されている。この場合、解析/評価欄711のグラフ領域711aの内容が、当該事業者における一定数(本事例では4つ)のPCSの出力値の所定期間中における相対比較結果に切り替わっている。また、図8の例では、4つのPCSの一つが顕著に正常稼働で無くなっている可能性があることから、解析/評価結果の説明欄710が、図9に示すように、次に予定されている検査の検査項目を変更することの提案が示されている。この場合、事業者は、例えば、写真閲覧740を操作したり、発電所系統図750を操作して、現状を確認することができる。あるいは、図4の発電所リスト511の個別画面5112に戻り、検査・点検履歴5112fを操作して、直近の履歴形式報告書の表示画面で現状を確認することができる。
【0078】
ここで、電子カルテの一部となる写真閲覧(図6の写真閲覧740、図7の写真閲覧840)について説明する。図10は、ユーザ端末60のディスプレイに表示される写真閲覧画面例を示す。また、図11は、事業者端末50のディスプレイに表示される写真閲覧画面例を示す。閲覧可能となる写真のアップロードもまた、メンテナンスを請け負うユーザ組織が担当することから、電子カルテ画面700,800の場合と同様、図10のユーザ端末60の写真閲覧画面900の方が、図11の事業者端末50の写真閲覧画面1000よりも制御項目に関するボタン画像等が多くなっている。
【0079】
図10において、ユーザ端末60の写真閲覧画面900の上部エリアには、その操作者であるユーザ組織の名称が表示される。また、当該ユーザには、上述した事業者識別コードによって、閲覧可能な写真の範囲を定める権能が自動的に設定される。図10の写真領域910には、メンテナンス契約を識別するメンテID、メンテナンス名毎に、担当者が撮影した複数の写真のサムネイル画像が、写真番号、撮影日と共に格納されている。操作ボタンは示されていないが、マウス等によるポインティングによりいずれかのサムネイル画像が特定されると、当該サムネイル画像に対応する写真がチェックされ、その開示範囲等をユーザが編集できるようになっている。
【0080】
図10の写真閲覧画面900の一括チェック911は、すべての写真をチェック対象にするためのボタン画像であり、一括チェック解除912は、すべての写真に対するチェックを外すためのボタン画像であり、チェック対象ロック913は、この操作の対象となった写真が他のユーザから誤って削除されないようにロックするためのボタン画像であり、チェック対象ロック解除914は上記ロックを解除するためのボタン画像であり、チェック対象削除915はチェックした写真を個別に削除するためのボタン画像である。
開示範囲設定920は、チェックされた写真について、それぞれ開示を許容するユーザ又は発電事業者を個別的に設定するためのエリアである。チェック対象ダウンロード930はチェックされた写真のダウンロードを許容するためのボタン画像であり、拡大940はサムネイル画像を縮小前の解像度で表示させるためのボタン画像である。戻る950が操作されると、ユーザ端末60のディスプレイの画面の表示が、一つ上の階層に戻る。
【0081】
図10に示された例では、サムネイル画像P21,P31,P32,P33がチェック対象となり、これらのサムネイル画像P21,P31,P32,P33に対応する写真が、当該ユーザの社内と発電事業者にのみ閲覧可能になることを示している。なお、開示範囲設定920で設定される開示先については、それぞれ対象となるサムネイル画像を異なる色になるように発色制御しても良く、あるいは、記号をサムネイル画像に割り当てるようにしても良い。
【0082】
図11に例示される事業者端末50の写真閲覧画面1000は、ユーザ端末60の写真閲覧画面900に比べてシンプルなものとなっている。すなわち、本実施形態における事業者は、写真の開示範囲などを設定する必要がないことから、写真領域1010は、閲覧が開示された4つの写真に対応するサムネイル画像P21,P31,P32,P33だけとなっている。チェック対象ダウンロード1030、拡大1040、戻る1050については、図10に示したものと同じ内容のものである。
【0083】
なお、図6図11に示した電子カルテ画面は、解析結果を表示したものであるが、評価結果(図6の評価結果検索706,図8の評価結果検索806)を表示する場合、解析結果欄707の部分は、以下のような評価結果に対する選択指示ができるようにし、解析/評価欄711のグラフ領域711aには、対応する評価結果が図化され、説明欄710には、その解説が記述されるようにすれば良い。
(a)発電所の点検・検査の結果と解析部115による解析結果とに基づいて評価された当該発電所の潜在リスクを含む所定基準との適合性の評価結果の図示
(b)事故防止の観点から評価されたハザードコントロール可能な設備等の箇所の図示
(c)発電所の設置環境が当該発電所に内在するハザードを人的にコントロールできる条件を満たすかどうかの判別基準との適合性の図示
(d)ハザードコントロールに要するコスト
(e)発電所、その設置環境あるいは、現在の事故ハザードの状況が損害保険の引受基準にどの程度適合するかを表す図示(各判定項目の充足度を示すグラフ等)
(f)損害保険の引受基準に適合することを証明する適合証の画像
【0084】
次に、図4の検査・点検履歴5112fの操作により確認することができる履歴形式報告書について、詳しく説明する。PVトレーサビリティにおけるこの種の報告書は定型的なものが多い。そのため、近い将来、異常又は近い将来異常となる蓋然性のある不具合の箇所が明確に特定されないことがある。逆に、非定型の報告書の場合、検査・点検毎に独自形式の報告書が作成され、しかも検査・点検の実施者が異なると、文章表現が統一されていなかったり、着眼点が異なったりして、同じ不具合が生じている設備を時系列で把握することが困難になることがある。
【0085】
そこで、本実施形態では、同じ不具合が生じている設備やその細部を時系列に把握できる、図12にその画面レイアウト例が示される履歴形式報告書531を作成し、これを発電所IDを関連付けて発電所DB101へ保存するようにした。履歴形式報告書531は、検査実施データ管理部114により蓄積された検査結果や契約書DB107に保存されている契約書等を用いてドキュメント管理部118が作成するが、検査結果を保存する検査実施データ管理部114がそれを行っても良い。
【0086】
履歴形式報告書531の画面には、構内配置図登録531xと印刷531yのボタン画像が設けられており、印刷531yが操作されると、図示しない履歴形式報告書レイアウト確認画面へ遷移し、さらに印刷設定画面へ遷移して、報告書が印刷される。なお、印刷に際しては、予め定めたレイアウトの表紙を付して印刷することができる。
【0087】
図12において構内配置図登録531xが操作されると、図13に示す構内配置図取込画面がサブ画面として表示される。
構内配置図取込画面は、位置情報が対応付けられたメッシュレイア533と、発電所のうち契約で定めた設備を含む構内配置図が描画された描画レイヤ534とを含んで構成される。構内配置図取込画面には、また、一つの画面内に、メッシュレイア533におけるグリッドの粗さを選択するためのグリッド535と、描画レイヤ534に描画する構内のエリアを構内全体か一部かを選択するエリア指定(図示の例は構内全体)536と、選択したエリアをすべて解除する解除537と、選択したエリアを登録する登録538とが設けられる。構内全体をマス目に分けたときの全体がメッシュであり、マス目の1つ1つがグリッドとなる。グリッドは細かいほど、構内における細かい設備の位置まで指定ないし特定することができる。
【0088】
図13(a)は大中小サイズのうち中サイズのメッシュM1、同(b)は大サイズのメッシュM2、同(c)は小サイズのメッシュM3となる。ここでは、中サイズのメッシュM1が選択され、その中で、横A縦1,2のメッシュ番号で特定されるグリッド534aが描画レイヤ534において指定され、これにより当該グリッドのエリアが強調表示された例が示されている。
【0089】
図12に戻り、履歴形式報告書531には、不具合等を識別するための不具合等ID531a、メンテナンス契約の契約名称531b、不具合等の発見日531c、発見経緯531d、不具合等エリアNo.531e、備考531f、不具合等の設備、部位531gとその補足531h、不具合等の数量531i、不具合等の内容531jとその補足531k、参照写真531lの項目が設けられる。
【0090】
不具合等ID531aの欄には、不具合等が発見される度に、固有の識別番号が作成され、記入される。契約名称531bの欄には、不具合等を発見した契約の名称が、予め契約書DB107において関連付けられている契約の中から選択可能とされる。発見日531cの欄には、不具合等を発見した日が記入される。発見経緯531dの欄には契約で定める点検等がプルダウン表示の中から選択されたものが転記される。不具合等エリアNo.531eの欄には、図13(a)等に示したグリッドが指定されることにより、指定されたグリッドの番号が転記される。図12の3列目のフィールドでは、未だエリアNo.531eの欄が未記入である。そのため、確認・変更5312のボタン画像の操作により、図13(a)に示される(登録された)構内配置図取込画面が表示され、グリッド番号が指定されることで、エリアNo.が転記される。なお、図12の1,2列目のフィールドの確認・変更5312のボタン画像の操作により、既に、指定されたエリアNo.を確認することができる。
【0091】
備考531fの欄は、不具合等が生じている部分の位置情報だけでは不明となるさらに詳細な部位等が記載される。不具合等の設備、部位531gの欄は、契約者との間で認識可能な簡潔な表現で記載される。典型的な内容については、ドロップダウンリストの中から担当者が選択できるようにする。補足531hの欄は、不具合等の設備、部位531gについての補足する実施者所見が簡潔に記載される。不具合等の数量531iは、契約者との間で認識可能な単位で記載される。不具合等の内容531jの欄には予め契約者との間で定めたドロップダウンリストの中から選択できる表現が記載され、補足531kの欄には、実施者所見が記載される。参照写真531lの欄には、新規追加5313,参照追加5314、写真参照5415のボタン画像が設けられている。新規追加5313は担当者が新規に追加しようとする写真があるときに操作される。参照追加5314は担当者が既に保存されている写真を流用するときに操作される。写真参照5415は担当者が既に保存されている写真を確認するときに操作される。
【0092】
点検・検査の実施者は、次回の点検・検査時に、同じ不具合等の現状を入力する際には、前回の不具合ID等のフィールドをクリックすると、その行の下に、前回のフィールドの内容を複写した新たなフィールドが自動的に追加され、その際、不具合等IDが自動的に採番され、相違する箇所だけを修正することになる。そのため、時系列の検査結果を表すデータを容易に作成することができる。
【0093】
また、不具合等のデータ入力に際して、典型的な項目はドロップダウンリストからの選択とすることで、後々ビッグテータとしての集計が容易になり、実施者による表現のバラツキを除去することができる。
【0094】
図14は、図12において、印刷531yが操作されたときに、履歴形式報告書レイアウト確認画面において、詳細報告書が選択されたときの報告書画面の例示図である。この報告書画面には、発電所名称541、報告書作成日542、契約名称543が書誌事項として記載される。また、図12に示された履歴形式報告書531の記載事項544では、不具合等の発見日、エリアNo、不具合等の設備、部位、不具合等の内容、発電への影響、提案等が項目として選ばれている。また、当該不具合等IDに関連付けられ、写真参照5415として参照可能な写真フィールド545が設けられている。図示の例では、不具合等を撮影した写真5451,5452,5453が表示されている。
【0095】
また、その次のフィールドには、もう一つの不具合等ID546に関連付けられた項目と写真フィールド547が設けられている。図示の例では、不具合等を撮影した写真5471,5472,5473,5474,5475が表示されている。
【0096】
なお、本実施形態では、太陽光発電事業を例に挙げて説明したが、風力発電事業やバイオマス発電事業のような再生可能エネルギー事業においても、適用が可能である。
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