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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000893
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20221222BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101959
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕治
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】村木 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】チェン ティ
(72)【発明者】
【氏名】中原 瑞紀
(72)【発明者】
【氏名】三上 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利文
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】天池 将
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CB03
5H603CB17
5H603CB23
5H603CB26
5H603CC01
5H603CC17
5H603CD06
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE02
5H603CE05
5H603EE02
5H603EE11
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP13
5H615QQ03
5H615QQ07
5H615QQ12
5H615SS04
5H615SS19
5H615SS38
(57)【要約】
【課題】生産工数を増加することなく、ステータコアのスロット内での2つの平角線状のセグメントコイルの接続部の導通信頼性を向上できる回転電機を提供する。
【解決手段】突起部8aを一端に有する第1平角線81と、溝部8bを一端に有する第2平角線82と、突起部8aが溝部8bに嵌合される嵌合部8cとを有するステータコイル8を備え、突起部8a及び溝部8bの横断面8aa、8baの形状は共に矩形であり、前記矩形は、第1辺8a1、8b1と、第1辺8a1、8b1に対向し第1辺8a1、8b1より長い第2辺8a2、8b2と、第1辺8a1、8b1と第2辺8a2、8b2とをそれぞれ接続し互いに対向する第3辺8a3、8b3及び第4辺8a4、8b4とを有し、嵌合部8cでは、突起部8aにおける第1辺8a1及び第2辺8a2と、溝部8bにおける第1辺8b1及び第2辺8b2とが対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起部を一端に有する第1平角線と、
溝部を一端に有する第2平角線と、
前記突起部が前記溝部に嵌合される嵌合部とを有するステータコイルを備え、
前記突起部及び前記溝部の横断面の形状は共に矩形であり、前記矩形は、第1辺と、前記第1辺に対向し前記第1辺より長い第2辺と、前記第1辺と前記第2辺とをそれぞれ接続し互いに対向する第3辺及び第4辺とを有し、
前記嵌合部では、前記突起部における第1辺及び第2辺と、前記溝部における第1辺及び第2辺とが対応するように前記突起部が前記溝部に嵌合されていることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1の回転電機において、
前記嵌合部では、前記突起部における第1辺と前記溝部における第1辺とが対応し、前記突起部における第2辺と前記溝部における第2辺とが対応するように前記突起部が前記溝部に嵌合されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1の回転電機において、
前記嵌合部では、前記突起部における第1辺と前記溝部における第2辺とが対応し、前記突起部における第2辺と前記溝部における第1辺とが対応するように前記突起部が前記溝部に嵌合されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項2または3の回転電機において、
前記矩形は台形であり、前記第1辺と前記第2辺とは互いに平行であることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項2の回転電機において、
前記突起部と前記溝部の横断面形状が略同一であることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項2の回転電機において、
前記突起部の第3辺と第4辺、及び前記溝部の第3辺と第4辺の各々が斜辺となっていることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項3の回転電機において、
前記嵌合部では、前記突起部と前記溝部が抵抗溶接工法により接合されていることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項2または3の回転電機において、
前記突起部及び前記溝部に金属メッキ処理が施されていることを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8の回転電機において、
前記金属メッキ処理が錫メッキであることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は小型化の要求がある一方で、電気絶縁性の向上が求められる。特に固定子(ステータ)の小型化には、巻線占積率を高めて高出力密度化を図る構造が有効であり、具体的には導線として一般的な丸線に対して、断面が扁平形状の平角線を用いたセグメントコイルで構成する固定子構造が有効である。平角線を用いた固定子を構成する際にセグメントコイルを接続する方式には、大きく分けてコイルエンド接続方式とスロット内接続方式がある。
【0003】
コイルエンド接続方式は、セグメントコイルが概略U字形状であり、一対の直線部とそれらを連続する傾斜部を有しており、その2つの直線部がそれぞれ固定子コア(ステータコア)のスロット内に収納される。傾斜部は、固定子コア軸方向の端部から突き出る構造となる。各直線部は、スロットから突出して固定子コア軸方向の逆側の端部で曲げ加工されて、別セグメントコイルの直線部の曲げ加工された箇所とコイルエンドで溶接されて連続的に接続される構造となる。
【0004】
スロット内接続方式は、セグメントコイルが概略U字形状であり、一対の直線部とそれらを連続する傾斜部を有しており、その2つの直線部がそれぞれ固定子コアのスロット内に収納される。傾斜部は、固定子コア軸方向の端部から突き出る構造となる。ここまでの構成はコイルエンド接続方式とほぼ同じである。しかし、スロット内接続方式では、2つのセグメントコイルの直線部が固定子コア軸方向の両端からスロット内に挿入されてスロット内で接続される構造となっている。特にこの接続方式は、概略U字形状のセグメントコイルを量産して使用できる上、直線部同士の接続にコイルエンドにおける曲げ加工と溶接が不要となるため、コイルエンド接続方式に比べて高生産化、小型化に有利である。なお、スロット内で接続される直線部の端部の形状は、直線部の端部同士の接続工法によって異なる場合がある。
【0005】
このようなスロット内接続方式を用いた回転電機の固定子に関する技術として特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-023771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の回転電機の固定子では、スロット内で対向する2つの導体セグメント(セグメントコイル)の脚部の先端面(直線部の端部)にそれぞれ凹部と凸部が形成されており、当該凹部と当該凸部により形成される凹凸係合部により互いに係合された状態で接合されている。
【0008】
しかし、特許文献1の凸部は概略四角錐で、これに対向する凹部が概略四角錐同等の形状の空間であるため、凹部と凸部の突合せだけでは十分な接合強度が得られず導通信頼性を確保できない。接合強度を補うために、導体セグメント(セグメントコイル)の脚部の先端(直線部の端部)に予め導電性粒子を有するペースト状の結合剤を塗布し、各スロット内で対向する脚部同士を接触させて加圧し加熱することで結合剤を硬化させて接合することも開示されているが、これでは生産工数増となってしまう。
【0009】
本発明の目的は、生産工数を増加することなく、ステータコアのスロット内での2つの平角線状のセグメントコイルの接続部の導通信頼性を向上できる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、突起部を一端に有する第1平角線と、溝部を一端に有する第2平角線と、前記突起部が前記溝部に嵌合される嵌合部とを有するステータコイルを備え、前記突起部及び前記溝部の横断面の形状は共に矩形であり、前記矩形は、第1辺と、前記第1辺に対向し前記第1辺より長い第2辺と、前記第1辺と前記第2辺とをそれぞれ接続し互いに対向する第3辺及び第4辺とを有し、前記嵌合部では、前記突起部における第1辺及び第2辺と、前記溝部における第1辺及び第2辺とが対応するように前記突起部が前記溝部に嵌合されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転電機の生産工数を増加することなく、ステータコアのスロット内での2つの平角線状のセグメントコイルの接続部の導通信頼性を向上できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る回転電機の一部を断面として表した斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るステータの概略斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るステータコイルを構成する第1平角線と第2平角線が、ステータコアの複数のスロットのいずれかに差し込まれる前の概略斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る第1平角線の一端に有する突起部を示す斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る第2平角線の一端に有する溝部を示す斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るステータコイルに有する嵌合部を示す斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る嵌合部において突起部と溝部が嵌合するときに対応する各辺を示す斜視図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る嵌合部において突起部と溝部が嵌合するときに対応する各辺を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の第1及び第2実施形態による回転電機1について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。また、各図は、互いに直交するXYZ軸により方向を特定し、+Xを「右」、-Xを「左」、+Yを「上」、-Yを「下」、+Zを「前」、-Zを「後」と規定する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る回転電機1の一部を断面として表した斜視図である。回転電機1は、内転型のラジアルギャップ型回転電機で、電力により磁力を発生させるステータ2と、ステータ2から発生する磁力により回転するロータ3と、ロータ3と共に回転するシャフト4と、ステータ2とロータ3を覆い保護するハウジング5と、を備えている。
【0015】
図2は、本実施形態に係るステータ2の概略斜視図である。ステータ2は、複数のスロット6を有するステータコア7と、複数のスロット6の各々に差し込まれ分布巻きされた複数のステータコイル8を備える。
【0016】
図3は、本実施形態に係るステータコイル8を構成する第1平角線81と第2平角線82が、ステータコア7の複数のスロット6のいずれかに差し込まれる前の概略斜視図である。ステータコイル8は、少なくとも一端(本実施形態では両端)に突起部8aを有する第1平角線81と、少なくとも一端(本実施形態では両端)に溝部8bを有する第2平角線82とを備える。第1平角線81と第2平角線82とは突起部8aが溝部8bに嵌合される嵌合部8c(図6参照)にて電気的に接続されるとともに物理的に結合される。
【0017】
第1平角線81は、丸線に比して扁平形状の矩形を断面として有する導線であり、概略U字形状に成形されたセグメントコイルである。また、第2平角線82は、第1平角線81と同様に扁平形状の矩形を断面として有する導線であり、概略U字形状に成形されたセグメントコイルである。
【0018】
図4は、本実施形態に係る第1平角線81の一端に設けられた突起部8aを示す斜視図である。突起部8aは、第1平角線81の端面81aから第1平角線81の軸方向(+Z方向)に沿って突出した角柱状の突起である。本実施形態に係る突起部8aは、長方形状の端面81aから突出している。なお、図4には端面81aのX軸方向における略中央から1つの突起部8aが突出する実施形態を示したがこれに限定されない。例えば、端面81aのX軸方向における中央からずれた位置から突出しても良い。また、端面81aから複数の突起部8aから突出しても良い。
【0019】
突起部8aの横断面8aaは矩形であり、第1辺8a1と、第1辺8a1に対向し第1辺8a1より長い第2辺8a2と、第1辺8a1と第2辺8a2とをそれぞれ接続し互いに対向する第3辺8a3及び第4辺8a4とを有する。なお、本実施形態では、横断面8aaは台形であり、第1辺8a1と第2辺8a2とは互いに平行である。第3辺8a3と第4辺8a4はY軸に対して逆に傾き、その角度は例えば、0.5°から1°となっている。また、突起部8aの横断面8aaの形状は突起部8aの長さ方向(Z軸方向)に沿って同一にすることができ、この場合には突起部8aの先端に横断面8aaと同じ形状の矩形の面(端面)が現れる。
【0020】
図5は、本実施形態に係る第2平角線82の一端に設けられた溝部8bを示す斜視図である。溝部8bは、第2平角線82の端面82aを第2平角線82の軸方向に向かって窪ませて形成した溝であり、第2平角線82の厚み方向(図5の上下方向)において対向する2つの側面(第1側面821と第2側面822)に開口を有している。本実施形態に係る溝部8bは、長方形状の端面82aに設けられている。なお、図6には端面82aのX軸方向における略中央に1つの溝部8bが設けられている実施形態を示したがこれに限定されない。例えば、端面82aのX軸方向における中央からずれた位置に設けても良い。また、端面82aに複数の溝部8bを設けても良い。
【0021】
溝部8bの横断面8baは矩形であり、第1辺8b1と、第1辺8b1より長い第2辺8b2と、第1辺8b1と第2辺8b2とをそれぞれ接続し互いに対向する第3辺8b3及び第4辺8b4とを有する。なお、本実施形態では、横断面8baは台形であり、第1辺8b1と第2辺8b2とは互いに平行である。第3辺8b3と第4辺8b4はY軸に対して逆に傾き、その角度は、例えば0.5°から1°となっている。また、溝部8bの横断面8baの形状は溝部8bの深さ方向(Z軸方向)に沿って同一にすることができ、この場合には溝部8bの底面に横断面8baと同じ形状の矩形の面が現れる。
【0022】
図6は、本実施形態に係るステータコイル8に有する嵌合部8cを示す斜視図である。嵌合部8cは、突起部8aが溝部8bに嵌合される部分である。また、嵌合部8cでは、突起部8aの横断面8aaにおける第1辺8a1及び第2辺8a2と、溝部8bの横断面8baにおける第1辺8b1及び第2辺8b2とが対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合される。
【0023】
図7は、本実施形態に係る嵌合部8cにおいて突起部8aと溝部8bが嵌合するときに対応する各辺を示す斜視図である。嵌合部8cでは、突起部8aにおける第1辺8a1と溝部8bにおける第1辺8b1とが対応し、突起部8aにおける第2辺8a2と溝部8bにおける第2辺8b2とが対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合される。また、突起部8aの横断面8aaと溝部8bの横断面8baの形状は同一とすることが好ましい。ただし、本稿における「同一」とは、完全な形状の一致を限定するものではなく、製作公差や設計公差による誤差の範囲を許容するものとする。
【0024】
図3に示す第1平角線81と第2平角線82の各々の一端は、ステータコア7の所定のスロット6に上下(+Y方向と-Y方向)から差し込まれる。そして、所定のスロット6の内で、第1辺8a1と第1辺8b1、第2辺8a2と第2辺8b2とが対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合されている。これにより、第1平角線81と第2平角線82とは、電気的に接続するとともに物理的に結合する。
【0025】
なお、突起部8aは溝部8bに押し込まれた後に、溝部8bから簡単に抜けることがないように、しまりばめ状態で嵌合しても良い。この場合、突起部8aと溝部8bを嵌り合う寸法(所謂、はめあい公差)はしまりばめ公差の範囲内となる。具体的には、突起部8aの第1辺8a1は、溝部8bの第1辺8b1に対して、しまりばめ公差の範囲内で長い。同様に、突起部8aの第2辺8a2は、溝部8bの第2辺8b2に対して、しまりばめ公差の範囲内で長い。
【0026】
[効果]
本実施形態の回転電機1は、第1平角線81の端部に設けられた突起部8aと、第2平角線82の端部に設けられた溝部8bとをステータコア7のスロット6内で嵌合させ、この突起部8aと溝部8bとが嵌合した嵌合部8cでは、突起部8aにおける第1辺8a1と溝部8bにおける第1辺8b1とが対応し、突起部8aにおける第2辺8a2と溝部8bにおける第2辺8b2とが対応するように嵌合させることとした。これにより突起部8aを溝部8bに押し込んだだけで両者が嵌合され突起部8aと溝部8b(つまり第1平角線81と第2平角線82)を容易に接合できるため、回転電機1の生産工数を増加することなく、スロット6内での2つの平角線状のセグメントコイル(第1平角線81と第2平角線82)の接続部(突起部8aと溝部8b)の導通信頼性を向上できる。
【0027】
特に突起部8aの横断面8aaと溝部8bの横断面8baの形状を同一(だたし上記のように公差を許容する)にすれば、突起部8aを溝部8bにより小さな力で押し込むことができるとともに、突起部8aと溝部8b(つまり第1平角線81と第2平角線82)の接合強度をさらに向上できる。
【0028】
なお、突起部8aの第1辺8a1は、溝部8bの第1辺8b1に対して、しまりばめ公差の範囲内で長くしても良く、同様に、突起部8aの第2辺8a2は、溝部8bの第2辺8b2に対して、しまりばめ公差の範囲内で長くしても良い。この場合には、突起部8aは溝部8bに、容易に押し込めるだけでなく、溝部8bから簡単に抜けることがない。
【0029】
また、本実施形態に係る嵌合部8cでは、突起部8aの第3辺8a3と第4辺8a4、及び溝部8bの第3辺8b3と第4辺8b4の各々が斜辺となっている。つまり、突起部8aと溝部8bは図7に示すように第1平角線81,第2平角線82の厚み方向の同じ向きに向かって幅が狭まるテーパ部を有しており、当該テーパ部を構成する斜面同士で突起部8aと溝部8bが接触(面接触)できる。このように突起部8aと溝部8bにテーパ部を設けると、テーパ部が無い形状に比べて突起部8aと溝部8bの接触面積を大きくできる作用があり、突起部8aと溝部8bの接合強度をさらに向上でき、電気的な導通信頼性を向上できる。
【0030】
また、突起部8aの横断面8aaと溝部8bの横断面8baとは台形であり、第1辺8a1と第2辺8a2、第1辺8b1と第2辺8b2とは互いに平行である。そのため、突起部8aと溝部8bの強度を向上できる。
【0031】
また、本実施形態に係る回転電機1のステータコイル8は、2つの平角線の各々の先端に設けられた突起部8aと溝部8bとを嵌合させることにより接合している。そのため、導電性粒子を有するペースト状の結合剤を2つの平角線の各々の先端に塗布し熱硬化させ接合させたステータコイルに比べ、容易に分解することができる。それにより、本実施形態に係る回転電機1は、廃棄時にステータコイル8を容易に分解して取り出すことができ、材料の再利用性に優れる。また、本実施形態に係る回転電機1は、2つの平角線を熱により硬化させて接合させる必要がないため、製造時の環境への負荷を低減できる。
【0032】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る嵌合部8cにおいて突起部8aと溝部8bが嵌合するときに対応する各辺を示す斜視図である。本実施形態に係る回転電機が第1実施形態に係る回転電機1と異なる点は、嵌合部8cにおいて突起部8aと溝部8bが嵌合するときに対応する各辺である。即ち、第2実施形態に係る嵌合部8cでは、突起部8aにおける第1辺8a1と溝部8bにおける第2辺8b2とが対応し、突起部8aにおける第2辺8a2と溝部8bにおける第1辺8b1とが対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合されている。
【0033】
図3に示す第1平角線81と第2平角線82の各々の一端は、ステータコア7の所定のスロット6に上下(+Y方向と-Y方向)から差し込まれる。そして、所定のスロット6の内で、第1辺8a1と第2辺8b2、第2辺8a2と第1辺8b1が対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合され、抵抗溶接工法により接合される。これにより、第1平角線81と第2平角線82とは、電気的に接続するとともに物理的に結合する。
【0034】
[効果]
本実施形態に係る嵌合部8cでは、突起部8aにおける短辺の第1辺8a1と溝部8bにおける長辺の第2辺8b2とが対応し、突起部8aにおける長辺の第2辺8a2と溝部8bにおける短辺の第1辺8b1とが対応するように突起部8aが溝部8bに嵌合される。そのため、突起部8aにおける第2辺8a2の両端部分は、溝部8bの端面82a(図5参照)に突き当り、抵抗溶接工法に適した構造となる。突起部8aが溝部8bに溶接されたステータコイル8は、導通信頼性と接合強度とを向上できる。
【0035】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0036】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であっても良い。即ち、ステータコア7の複数のスロット6の各々に、第1実施形態と第2実施形態のステータコイル8が混在するようにしても良い。また、突起部8aと溝部8bに金属メッキ処理をしても良い。金属メッキは突起部8aと溝部8bの接合部の酸化を軽減でき、導通信頼性を向上できる。また、金属メッキにより突起部8aと溝部8bの寸法公差を適正値に調整することもでき、それにより突起部8aと溝部8bの接合強度を向上できる。なお、金属メッキには、錫、銀、亜鉛、ニッケル、クロム、金等及びこれらの複合物や複合層を使用でき、特に酸化抑制、導通性能、およびコストの観点より錫が好ましい。
【0037】
また、突起部8aが第1平角線81の両端に設けられ、溝部8bが第2平角線82の両端に設けられる実施形態を示した。しかし、これに限定されず、溝部8bが第1平角線81の他端に設けられ、突起部8aが第2平角線82の他端に設けられても良い。
【0038】
また、第1平角線81と第2平角線82をステータコア7の複数のスロット6のいずれかに差し込み嵌合させてステータコイル8を分布巻きする実施形態を示した。しかし、これに限定されず、第1平角線81と第2平角線82をステータコア7の複数のスロット6の隣合う2つのスロット6に差し込み嵌合させてステータコイル8を集中巻きすることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1…回転電機、2…ステータ、3…ロータ、6…スロット、7…ステータコア、8…ステータコイル、8a…突起部、8a1…第1辺、8a2…第2辺、8a3…第3辺、8a4…第4辺、8aa…横断面、8b…溝部、8b1…第1辺、8b2…第2辺、8b3…第3辺、8b4…第4辺、8ba…横断面、8c…嵌合部、81…第1平角線、81a…端面、82…第2平角線、82a…端面、821…第1側面、822…第2側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8