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  • 特開-空中結像装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089314
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】空中結像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/60 20200101AFI20230621BHJP
   G02B 30/30 20200101ALI20230621BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20230621BHJP
   H04N 13/312 20180101ALI20230621BHJP
【FI】
G02B30/60
G02B30/30
G03B35/18
H04N13/312
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020079565
(22)【出願日】2020-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆義
【テーマコード(参考)】
2H059
2H199
5C061
【Fターム(参考)】
2H059AA24
2H059AA35
2H059AB06
2H059AB13
2H199BA09
2H199BA32
2H199BB04
2H199BB08
2H199BB20
5C061AA08
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】立体感を得られる虚像を視認することができる空中結像装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る空中結像装置は、光を照射して情報を表示する表示装置2と、表示装置2からの光を複数回反射させて空中に虚像Kとして情報を表示する空中結像デバイス3と、表示装置2及び空中結像デバイス3の間に配置されており、虚像Kを視認する使用者Mの視線を制御する視線制御マスク5と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射して情報を表示する表示装置と、
前記表示装置からの光を複数回反射させて空中に虚像として前記情報を表示する空中結像デバイスと、
前記表示装置及び前記空中結像デバイスの間に配置されており、前記虚像を視認する使用者の視線を制御する視線制御マスクと、
を備える空中結像装置。
【請求項2】
前記視線制御マスクは、複数のスリットが形成されたパララックスバリアである、
請求項1に記載の空中結像装置。
【請求項3】
前記複数のスリットのピッチは、前記表示装置の画素のピッチよりも広い、
請求項2に記載の空中結像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空中に虚像を結像する空中結像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-74574号公報には、立体画像表示方法及び立体画像表示装置が記載されている。立体画像表示装置は、ディスプレイと、ディスプレイ駆動回路と、ディスプレイよりも観察者側に設けられるパララックスバリアと、バリア駆動回路と、ディスプレイ駆動回路及びバリア駆動回路を制御する画像処理手段とを備える。画像処理手段は、被写体の3次元データ等から構成されている視差画像ソースと通信可能とされている。
【0003】
上記の公報には、パララックス・バリア法が記載されている。パララックス・バリア法では、ディスプレイのストライプ画像よりも観察者側に複数のスリットを有するパララックスバリアを配置する。観察者は、パララックスバリアを介して左右それぞれの眼でそれぞれの眼に対応した視差画像を観察することによって立体感を得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-74574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空中に虚像を結像する空中結像装置は、ディスプレイと、ディスプレイからの光を2回反射して空中に虚像を表示する空中結像デバイスとを備え、空中結像デバイスよりも観察者側に当該虚像が表示される。前述したように、空中結像装置において立体感を得るためにパララックスバリア等の視線制御マスクを空中結像デバイスよりも観察者側に配置した場合、立体感を得られる虚像が表示されないという現状がある。虚像は、通常のディスプレイの画像とは異なり、空中結像デバイスに対してディスプレイの面対称の位置に表示される。従って、空中結像デバイスより観察者側に視線制御マスクを配置しても、観察者は立体感を得られる虚像を視認できないという現状がある。
【0006】
本開示は、立体感を得られる虚像を視認することができる空中結像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る空中結像装置は、光を照射して情報を表示する表示装置と、表示装置からの光を複数回反射させて空中に虚像として情報を表示する空中結像デバイスと、表示装置及び空中結像デバイスの間に配置されており、虚像を視認する使用者の視線を制御する視線制御マスクと、を備える。
【0008】
この空中結像装置では、情報を表示する表示装置と、当該情報を空中に虚像として表示する空中結像デバイスとを備え、空中結像デバイスは空中結像デバイスよりも使用者側に虚像を表示する。従って、使用者から見て虚像が浮き出たように表示されるので、情報の視認性を高めることができる。この空中結像装置では、使用者の視線を制御する視線制御マスクが表示装置と空中結像デバイスの間に配置される。よって、視線制御マスクが表示装置と空中結像デバイスの間に配置されることにより使用者の左右の両眼視差を生じさせることができ、使用者は左右それぞれの眼によって虚像としての視差画像を視認することができる。従って、立体感を得られる虚像を視認することができる。
【0009】
視線制御マスクは、複数のスリットが形成されたパララックスバリアであってもよい。この場合、パララックスバリアが表示装置と空中結像デバイスの間に配置されることにより、使用者は左右それぞれの眼によって虚像としての視差画像を視認して立体感を得られる画像を視認することができる。
【0010】
複数のスリットのピッチは、表示装置の画素のピッチよりも広くてもよい。この場合、パララックスバリアのスリットのピッチが表示装置の画素のピッチよりも広いことにより、左右それぞれの眼によって虚像としての視差画像をより鮮明に視認することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、立体感を得られる虚像を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る空中結像装置の構成を示す図である。
図2】比較例の視線制御マスクを説明する概念図である。
図3図2の比較例の視線制御マスクにおける使用者の視線について説明する概念図である。
図4】実施形態に係る視線制御マスクにおける使用者の視線について説明する概念図である。
図5図4の視線制御マスクの配置態様を拡大した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る空中結像装置の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0014】
図1は、実施形態に係る空中結像装置1を示している。例えば、空中結像装置1は、光Fを照射して情報を表示するディスプレイを含む表示装置2と、表示装置2からの光Fを受けて虚像Kを表示する空中結像デバイス3とを含む。表示装置2は、例えば、液晶パネルである。表示装置2は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット端末、又は携帯端末等のディスプレイであってもよい。
【0015】
空中結像デバイス3は、表示装置2の画像を、表示装置2及び空中結像デバイス3よりも手前(使用者M側)の位置で虚像Kとして表示する。一例として、空中結像デバイス3は、AI(Aerial Imaging)プレート(登録商標)である。表示装置2から出射して空中結像デバイス3に入射した光Fは、空中結像デバイス3において複数回(例えば2回)反射し、使用者Mから見て空中結像デバイス3よりも手前側の空間に虚像Kを表示する。
【0016】
空中結像装置1は、更に、表示装置2と空中結像デバイス3の間に位置する視線制御マスク5を備える。本開示において、「視線制御マスク」は、虚像を視認する使用者の視線に応じて表示装置からの光を制御し、使用者の右眼及び左眼において互いに異なる像を視認するように使用者の視線を制御する部品を示している。
【0017】
本実施形態に係る視線制御マスク5は、例えば、パララックスバリアである。空中結像装置1では、表示装置2及び空中結像デバイス3の間に視線制御マスク5が配置されることにより、立体的な虚像Kを視認可能としている。視線制御マスク5の説明については後に詳述する。
【0018】
次に、視線制御マスクの詳細を説明する。図2は、空中結像装置ではなく、ディスプレイ101、及びディスプレイ101の手前側(使用者Mの左眼H及び右眼R側)に視線制御マスクとしてのパララックスバリア102が配置される比較例の画像表示装置を示している。
【0019】
図3は、図2のディスプレイ101及びパララックスバリア102を模式的に拡大した図である。図2及び図3に示されるように、以下では、左眼Hと右眼Rとの距離をPeye、ディスプレイ101から左眼H及び右眼Rを通る仮想直線Cまでの距離をL、ディスプレイ101の画素のピッチをPdot、として説明する。
【0020】
一例として、Peyeの値は60mm以上且つ65mm以下であり、Lの値は1000mmである。Pdotの値は、ディスプレイ101の幅が211mmであってディスプレイ101のドットの数が1024である場合には、0.20600mm(=211÷1024)である。
【0021】
図3に示されるように、左眼Hと右眼Rとの中点Aを通り且つディスプレイ101に直交する垂線をy軸、ディスプレイ101の表示面が延びる方向をx軸、そして、y軸とx軸とが互いに交差する交点を原点N(0,0)とすると、右眼Rの座標Pright_eye、及び左眼Hの座標Pleft_eye、は以下のように示される。
【数1】

【数2】
【0022】
ここで、右眼Rとディスプレイ101上の点N(nPdot,0)(nは整数)とを結ぶ視線の方程式は下記の式(1)のように表され、左眼Hとディスプレイ101上の点Nn’(n’Pdot,0)(n’は整数)とを結ぶ視線の方程式は下記の式(2)のように表される。
【数3】

【数4】
【0023】
そして、左眼Hと点nPdotとを結ぶ視線、及び右眼Rと点n’Pdotとを結ぶ視線、の交点(パララックスバリア102のスリット102bの端部)の座標を求める。このとき、視点数を1として、右眼Rで視認する点Nと左眼Hで視認する点N’との関係がn’=n-1であるときに立体視効果が得られる。従って、式(2)のn’にn-1を代入して以下の式(3)を得る。
【数5】
【0024】
式(1)と式(3)をx,yについて解くと、後述の式(4)のように交点が求められる。
【数6】
【0025】
以上の式(4)から、交点のy座標はnに依存しない定数であり、ディスプレイ101の画素からパララックスバリア102までの距離が一定であることが分かる。
交点のx座標は、nの一単位の増減で、
【数7】

の幅で変化することが分かり、パララックスバリア102のピッチは一定であることが分かる。
【0026】
眼の間隔Peyeの値を65mm、ディスプレイ101の画素のピッチPdotの値を0.20600mm(=211÷1024)、Lの値を1000mmとすると、上記の式(4)から、ディスプレイ101の画素とパララックスバリア102との間隔である交点(スリット102bの端部)のy座標は3.1592mm、パララックスバリア102のピッチ(スリット102bの間隔)である交点のx座標は0.20535mmと設定でき、これらの条件の場合、ディスプレイ101の画像をパララックスバリア102によって立体視できることを確認した。
【0027】
以上のように、比較例の画像表示装置の場合には、ディスプレイ101の画像の手前側にパララックスバリア102等の視線制御マスクを配置すると、使用者はディスプレイ101の画像を立体的に視認できることが分かった。そこで、本実施形態に係る空中結像装置1のように、虚像Kを表示する空中結像デバイス3を備える場合について、虚像Kを立体的に表示する方法を検討する。
【0028】
しかしながら、図4に示されるように、空中結像デバイス3を経由した使用者Mの視線は、空中結像デバイス3において面対称に反転されるため、比較例のように空中結像デバイス3の手前の位置B1に視線制御マスク5を配置しても、使用者Mは像を立体的に視認することができない。
【0029】
そこで、本実施形態では、表示装置2と空中結像デバイス3の間の位置B2に視線制御マスク5を配置している。以下では、表示装置2と空中結像デバイス3の間の位置B2に視線制御マスク5を配置した場合の使用者Mの視線について図4及び図5を用いて説明する。
【0030】
なお、図5では、理解の容易のため、空中結像デバイス3に対して位置B2の面対称の位置B3にスリット5b付きのパララックスバリアである視線制御マスク5を配置している例を説明する。位置B3に視線制御マスク5を配置した場合と、位置B2に視線制御マスク5を配置した場合とでは視線制御の観点では互いに同一の条件となる。しかしながら、実際には、位置B2に視線制御マスク5が配置される。
【0031】
図4及び図5の場合であっても、前述と同様、右眼Rの座標Pright_eye、及び左眼Hの座標Pleft_eye、が以下のように示される。
【数8】

【数9】
【0032】
そして、右眼Rと結像される虚像K上の点N(nPdot,0)(nは整数)とを結ぶ視線の方程式は下記の式(5)のように表され、左眼Hと虚像K上の点Nn’(n’Pdot,0)(n’は整数)とを結ぶ視線の方程式は下記の式(6)のように表される。
【数10】

【数11】
【0033】
視線制御マスク5のスリット5bの端部における右眼Rと点nPdotとを結ぶ視線、及び左眼Hと点n’Pdotとを結ぶ視線の交点の座標を求める。このとき、左眼Hで視認する点Nと右眼Rで視認する点Nn’との関係がn’=n+1であるときに立体視効果が得られることが分かる。従って、式(6)のn’にn+1を代入して以下の式(7)を得る。
【数12】
【0034】
式(5)と式(7)をx,yについて解くと、後述の式(8)のように交点が求められる。
【数13】
【0035】
以上の式(8)から、y座標は負の定数であり、虚像Kの裏側(使用者Mとの反対側)に視線制御マスク5が位置することが分かる。x座標はnの一単位の増減で、
【数14】

の幅で変化することが分かり、視線制御マスク5のスリット5bのピッチが一定であることが分かる。
【0036】
眼の間隔Peyeの値を65mm、虚像Kの画素(表示装置2の画素)のピッチPdotの値を0.20600mm、Lの値を1000mmとすると、上記の式(8)から、虚像Kの画素(表示装置2の画素)と視線制御マスク5のスリット5bの間隔である交点(スリット5bの端部)のy座標は3.17930mm、視線制御マスク5のスリット5bのピッチ(スリット5bの間隔)である交点のx座標は0.20665mmと設定でき、これらの条件の場合、虚像Kを視線制御マスク5によって鮮明に立体視できることを確認した。また、視線制御マスク5のスリット5bの間隔は、虚像Kの画素ピッチ(表示装置2の画素ピッチ)よりも広いことが分かった。
【0037】
次に、本実施形態に係る空中結像装置1の作用効果について詳細に説明する。図4に示されるように、空中結像装置1では、情報を表示する表示装置2と、当該情報を空中に虚像Kとして表示する空中結像デバイス3とを備え、空中結像デバイス3は空中結像デバイス3よりも使用者M側に虚像Kを表示する。従って、使用者Mから見て虚像Kが浮き出たように表示されるので、情報の視認性を高めることができる。
【0038】
空中結像装置1では、使用者Mの視線を制御する視線制御マスク5が表示装置2と空中結像デバイス3の間に配置される。よって、視線制御マスク5が表示装置2と空中結像デバイス3の間に配置されることにより使用者Mの左右の両眼視差を生じさせることができ、使用者Mは左眼H及び右眼Rのそれぞれによって虚像Kとしての視差画像を視認することができる。従って、立体感を得られる虚像Kを視認することができる。
【0039】
視線制御マスク5は、複数のスリット5bが形成されたパララックスバリアであってもよい。この場合、パララックスバリアが表示装置2と空中結像デバイス3の間に配置されることによって、使用者Mは左眼H及び右眼Rのそれぞれによって虚像Kとしての視差画像を視認して立体感を得られる虚像Kを視認することができる。
【0040】
複数のスリット5bのピッチは、表示装置2の画素のピッチよりも広くてもよい。この場合、パララックスバリアである視線制御マスク5のスリット5bのピッチが表示装置2の画素のピッチよりも広いことにより、左眼H及び右眼Rのそれぞれによって虚像Kとしての視差画像をより鮮明に視認することができる。
【0041】
以上、本開示に係る空中結像装置の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し又は他のものに適用されたものであってもよい。すなわち、空中結像装置の各部の構成は、各請求項の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0042】
例えば、前述の実施形態では、パララックスバリアである視線制御マスク5について例示した。しかしながら、パララックスバリア以外の視線制御マスクであってもよい。例えば、空中結像装置は、視線制御マスク5に代えて、レンチキュラーレンズである視線制御マスクを備えていてもよい。パララックスバリアに代えてレンチキュラーレンズを備える場合であっても、左右の両眼視差を生じさせることができるので、立体感を得られる虚像を視認することができる。
【0043】
また、前述の実施形態では、空中結像デバイス3が虚像Kを空中に結像させるAIプレートである例について説明した。しかしながら、空中結像デバイスは、AIプレート以外の素子であってもよい。例えば、空中結像デバイスは、再帰反射シートを使った方式等、使用者M側の空間に虚像を結像する立体結像素子であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…空中結像装置、2…表示装置、3…空中結像デバイス、5…視線制御マスク、5b…スリット、A…中点、B1,B2,B3…位置、C…仮想直線、F…光、H…左眼、K…虚像、M…使用者、R…右眼。

図1
図2
図3
図4
図5