(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089324
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】回転子及び電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20230621BHJP
【FI】
H02K1/27 501A
H02K1/27 501M
H02K1/27 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020086968
(22)【出願日】2020-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宇賀治 元
(72)【発明者】
【氏名】前川 猛
(72)【発明者】
【氏名】河村 清美
(72)【発明者】
【氏名】麻生 宜農
(72)【発明者】
【氏名】玉村 俊幸
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA04
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】固定子に向かう磁石の磁束が減ることを抑制しつつ磁石の減磁耐性を向上させることができる回転子等を提供する。
【解決手段】回転子2は、複数の穴21を有する回転子鉄心20と、各々が複数の穴21の各々に配置された複数の永久磁石30と、回転子鉄心20に固定された回転軸21と、を備え、複数の穴21は、回転軸21を中心として放射状に設けられ、かつ、回転子鉄心20の径方向に延在し、回転子鉄心20は、穴21と回転子鉄心20の外周面との間に位置するブリッジ部22を有し、ブリッジ部22は、径方向の長さを幅として第1の長さの幅を有する第1部位22aと、第1の長さよりも長い第2の長さの幅を有する第2部位22bとを有し、ブリッジ部22における第1部位22aと当該ブリッジ部22に対応する穴21に配置された永久磁石30との間に、当該穴21に連通する第1空隙部23aが存在する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の穴を有する鉄心と、
各々が前記複数の穴の各々に配置された複数の磁石と、
前記鉄心に固定された回転軸と、を備え、
前記複数の穴は、前記回転軸を中心として放射状に設けられ、かつ、前記鉄心の径方向に延在し、
前記鉄心は、各々が前記複数の穴の各々と前記鉄心の外周面との間に位置する複数のブリッジ部を有し、
前記複数のブリッジ部の各々は、前記径方向の長さを幅として第1の長さの幅を有する第1部位と、前記第1の長さよりも長い第2の長さの幅を有する第2部位とを有し、
前記鉄心には、前記複数のブリッジ部の各々における前記第1部位と当該ブリッジ部に対応する前記穴に配置された前記磁石との間に、当該穴に連通する第1空隙部が設けられている、
回転子。
【請求項2】
複数の穴を有する鉄心と、
各々が前記複数の穴の各々に配置された複数の磁石と、
前記鉄心に固定された回転軸と、を備え、
前記複数の穴は、前記回転軸を中心として放射状に設けられ、かつ、前記鉄心の径方向に延在し、
前記鉄心は、各々が前記複数の穴の各々と前記鉄心の外周面との間に位置する複数のブリッジ部を有し、
前記複数のブリッジ部の各々は、第1の厚みを有する第1部位と、前記第1の厚みよりも厚い第2の厚みを有する第2部位とを有し、
前記鉄心には、前記複数のブリッジ部の各々における前記第1部位と当該ブリッジ部に対応する前記穴に配置された前記磁石との間に、当該穴に連通する第1空隙部が設けられている、
回転子。
【請求項3】
前記鉄心には、前記複数のブリッジ部の各々における前記第2部位と当該ブリッジ部に対応する前記穴に配置された前記磁石の外周側端面との間に、当該穴に連通する第2空隙部が設けられている、
請求項1又は2に記載の回転子。
【請求項4】
前記第2空隙部は、前記第1空隙部と連通している、
請求項3に記載の回転子。
【請求項5】
前記鉄心には、前記磁石の側面と前記鉄心との間に、前記穴に連通する第3空隙部が設けられている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項6】
前記鉄心は、前記第1空隙部と前記第3空隙部との間に、前記磁石の外周側端面に接する突起を有する、
請求項5に記載の回転子。
【請求項7】
前記第1部位の厚さは、前記第2部位の厚さよりも薄い、
請求項1、3~6のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項8】
前記ブリッジ部及び前記第1空隙部は、前記磁石の中心を通り且つ前記径方向に延在する線を中心にして線対称の形状である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項9】
前記第1部位は、磁気飽和している、
請求項1~8のいずれか1項に記載の回転子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の回転子と、
前記回転子に対向して配置され、前記回転子に作用する磁力を発生させる固定子と、を備える、
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転子及び回転子を備える電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機は、家庭用機器又は産業用機器等の様々な電気機器に用いられている。電動機として、IPM(Interior Permanent Magnet)モータが知られている。IPMモータの回転子は、例えば、回転子鉄心と、回転子鉄心に設けられた複数の磁石配置穴の各々に配置された永久磁石と、回転子鉄心を貫通するようにして回転子鉄心の中心に固定された回転軸とを備える。IPMモータでは、回転子の永久磁石で発生する磁束を固定子に通すことで回転子を回転させるトルクを発生させている。
【0003】
従来、この種のモータとして、回転子鉄心の複数の磁石配置穴が放射状に設けられた回転子を備えるスポーク型のIPMモータが知られている(特許文献1)。スポーク型のIPMモータでは、径方向の長さが円周方向の長さに比べて長い永久磁石を有しているので永久磁石の表面積を増やすことができる。これにより、固定子を通る永久磁石の磁束、つまりトルクに寄与する永久磁石の磁束を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IPMモータの回転子においては、回転子鉄心の外周面と磁石配置穴との間にブリッジ部が設けられている場合がある。
【0006】
この場合、回転子を高磁束化するとの観点では、ブリッジ部の幅(径方向の長さ)は、できるだけ狭くする方がよい。つまり、仮にブリッジ部の幅を広くすると、永久磁石からの磁束の一部がブリッジ部を通るために漏れ磁束が発生し、永久磁石から固定子に向かう磁束が減ってしまう。
【0007】
一方、IPMモータでは、駆動中に固定子で生成される磁界が逆磁界となって永久磁石に印加される。このため、ブリッジ部の幅を狭くすると、ブリッジ部の幅が広い場合と比べて固定子から回転子に向かう磁束がブリッジ部に通りにくくなるため、固定子によって永久磁石に印加される逆磁界が強くなり、着磁された永久磁石が減磁するおそれがある。特に、IPMモータでは、固定子の巻線コイルに電流を流すことで固定子の磁界を発生させるが、高出力化のために巻線コイルに大電流を流して強い磁界を発生させると、固定子による逆磁界が永久磁石の外周側端部に集中し、永久磁石の減磁が起きやすい。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、回転子の鉄心にブリッジ部を設けた場合であっても固定子に向かう磁石の磁束が減ることを抑制しつつ磁石の減磁耐性を向上させることができる回転子及び電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示に係る回転子の一態様は、複数の穴を有する鉄心と、各々が前記複数の穴の各々に配置された複数の磁石と、前記鉄心に固定された回転軸と、を備え、前記複数の穴は、前記回転軸を中心として放射状に設けられ、かつ、前記鉄心の径方向に延在し、前記鉄心は、各々が前記複数の穴の各々と前記鉄心の外周面との間に位置する複数のブリッジ部を有し、前記複数のブリッジ部の各々は、前記径方向の長さを幅として第1の長さの幅を有する第1部位と、前記第1の長さよりも長い第2の長さの幅を有する第2部位とを有し、前記鉄心には、前記複数のブリッジ部の各々における前記第1部位と当該ブリッジ部に対応する前記穴に配置された前記磁石との間に、当該穴に連通する第1空隙部が設けられている。
【0010】
また、本開示に係る回転子の他の一態様は、複数の穴を有する鉄心と、各々が前記複数の穴の各々に配置された複数の磁石と、前記鉄心に固定された回転軸と、を備え、前記複数の穴は、前記回転軸を中心として放射状に設けられ、かつ、前記鉄心の径方向に延在し、前記鉄心は、各々が前記複数の穴の各々と前記鉄心の外周面との間に位置する複数のブリッジ部を有し、前記複数のブリッジ部の各々は、第1の厚みを有する第1部位と、前記第1の厚みよりも厚い第2の厚みを有する第2部位とを有し、前記鉄心には、前記複数のブリッジ部の各々における前記第1部位と当該ブリッジ部に対応する前記穴に配置された前記磁石との間に、当該穴に連通する第1空隙部が設けられている。
【0011】
また、本開示に係る電動機の一態様は、前記回転子と、前記回転子に対向して配置され、前記回転子に作用する磁力を発生させる固定子と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、回転子の鉄心にブリッジ部を設けた場合であっても固定子を通る磁石の磁束が減ることを抑制しつつ磁石の減磁耐性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】実施の形態に係る電動機における回転子と固定子との境界部分の拡大断面図である。
【
図5】比較例1の電動機における回転子の断面図である。
【
図6】比較例1の電動機における回転子と固定子との境界部分の拡大断面図である。
【
図7】比較例2の電動機における回転子と固定子との境界部分の拡大断面図である。
【
図8】実施の形態に係る電動機における回転子と固定子との境界部分の拡大断面図である。
【
図9】変形例1に係る電動機における回転子の断面図である。
【
図10】変形例2に係る電動機における回転子の一部を拡大して示す拡大平面図と、同拡大平面図のX-X線における断面図である。
【
図11】変形例3に係る電動機における回転子の一部を拡大して示す拡大平面図と、同拡大平面図のXI-XI線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、工程及び工程の順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0016】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る電動機1の概略構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る電動機1の斜視図である。
図2は、同電動機1の断面図である。なお、
図2は、回転軸10と直交する平面で切断したときの断面を示している。
【0017】
図1及び
図2に示すように、電動機1は、回転子2と固定子3とを備える。本実施の形態における電動機1は、回転子2が固定子3の内側に配置されたインナーロータ型のモータである。つまり、固定子3は、回転子2を囲むように構成されている。
【0018】
回転子2(ロータ)は、固定子3に生じる磁力によって回転する。具体的には、回転子2は、回転軸10を有しており、回転軸10の軸心Cを回転中心として回転する。
【0019】
回転子2は、固定子3に作用する磁力を発生する。回転子2は、周方向に亘って主磁束となるN極とS極とが複数繰り返して存在する構成になっている。本実施の形態において、回転子2が発生する主磁束の向きは、回転軸10の軸心Cの方向(回転軸方向)と直交する方向である。つまり、回転子2が発生する主磁束の向きは、ラジアル方向(径方向)である。
【0020】
回転子2は、固定子3とエアギャップを介して配置されている。具体的には、回転子2の表面と固定子3の表面との間には微小なエアギャップが存在する。詳細は後述するが、回転子2は、鉄心に永久磁石が埋め込まれた永久磁石埋め込み型のロータ(IPMロータ)である。したがって、本実施の形態における電動機1は、IPMモータである。
【0021】
固定子3(ステータ)は、エアギャップを介して回転子2に対向して配置され、回転子2に作用する磁力を発生させる。具体的には、固定子3は、回転子2の回転子鉄心20を囲むように配置されている。固定子3は、回転子2とともに磁気回路を構成している。
【0022】
固定子3は、エアギャップ面に主磁束としてN極とS極とが周方向に交互に生成されるように構成されている。本実施の形態において、固定子3は、固定子鉄心3a(ステータコア)と巻線コイル3b(ステータコイル)とを有する。
【0023】
固定子鉄心3aには、回転子2の回転子鉄心20に向かって突出する複数のティース3a1が設けられている。具体的には、複数のティース3a1は、回転軸10の軸心Cに向かって突出するように設けられている。また、複数のティース3a1は、周方向に等間隔に設けられている。したがって、複数のティース3a1は、回転軸10の軸心Cと直交する方向(ラジアル方向)に放射状に延在している。
【0024】
固定子鉄心3aは、例えば、回転軸10の軸心Cの方向に積層された複数の鋼板によって構成されている。複数の鋼板の各々は、例えば所定形状に打ち抜き加工された電磁鋼板である。なお、固定子鉄心3aは、複数の鋼板の積層体に限るものではなく、磁性材料によって構成されたバルク体であってもよい。
【0025】
巻線コイル3bは、固定子鉄心3aの複数のティース3a1の各々に巻き回されている。具体的には、巻線コイル3bは、インシュレータを介して各ティース3a1に巻き回されている。各巻線コイル3bは、互いに電気的に120度位相が異なる、U相、V相及びW相の3相それぞれの単位コイルによって構成されている。つまり、各ティース3a1に巻き回された巻線コイル3bは、U相、V相及びW相の相単位でそれぞれに通電される3相の交流によって通電駆動される。これにより、各ティース3a1に固定子3の主磁束が生成される。
【0026】
このように構成された電動機1では、固定子3の巻線コイル3bに通電すると、界磁電流が巻線コイル3bに流れて磁界が生成される。これにより、固定子3から回転子2に向かう磁束が生成される。一方、回転子2では、固定子3に向かう磁束が生成される。つまり、回転子2の永久磁石によって固定子3を通る磁束が生成される。この固定子3で生成される磁束と回転子2で生成される磁束との相互作用によって生じた磁気力が回転子2を回転させるトルクとなり、回転子2が回転する。
【0027】
次に、本実施の形態に係る回転子2の詳細な構成について、
図1及び
図2を参照しつつ、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る回転子2の断面図である。
図4は、実施の形態に係る電動機1における回転子2と固定子3との境界部分の拡大断面図である。なお、
図3及び
図4は、回転軸10と直交する平面で切断したときの断面を示している。
【0028】
図1~
図3に示すように、回転子2は、回転軸10と、回転子鉄心20と、複数の永久磁石30とを備える。
【0029】
回転軸10は、回転子2が回転する際の中心となる長尺状のシャフトである。回転軸10は、例えば金属棒であり、回転子2の中心に固定されている。具体的には、回転軸10は、回転子鉄心20に固定されている。本実施の形態において、回転軸10は、回転子2の両側に突出するように、回転子鉄心20の中心を貫いた状態で回転子鉄心20に固定されている。回転軸10は、回転子鉄心20の中心に形成された貫通孔20aに圧入したり焼き嵌めしたりすることで回転子鉄心20に固定されている。
【0030】
なお、図示しないが、回転子2の一方側に突出する回転軸10の第1部位は、第1軸受けに支持され、回転子2の他方側に突出する回転軸10の第2部位は、第2軸受けに支持されている。回転軸10の第1部位又は第2部位に、電動機1によって駆動される負荷が取り付けられる。
【0031】
回転子鉄心20は、例えば、回転軸10の軸心Cの方向に積層された複数の鋼板によって構成されている。複数の鋼板の各々は、例えば所定形状に打ち抜き加工された電磁鋼板であり、かしめ等によって互いに固定されている。なお、固定子鉄心3aは、複数の鋼板の積層体に限るものではなく、磁性材料によって構成されたバルク体であってもよい。
【0032】
回転子鉄心20(ロータコア)は、複数の穴21を有する鉄心である。複数の穴21は、永久磁石30が配置される磁石配置穴である。具体的には、穴21には永久磁石30が挿入される。つまり、穴21は、永久磁石30が挿入される磁石挿入孔である。各穴21には、1つの永久磁石30が挿入される。一例として、回転子2は、磁極数が10である10極ロータである。したがって、回転子鉄心20には10個の穴21と10個の永久磁石30とが設けられている。
【0033】
また、本実施の形態において、穴21は、回転軸10の軸心Cの方向に沿って回転子鉄心20を貫通する貫通孔である。したがって、回転軸10に直交する平面で切断したときの任意の断面において、穴21の断面形状は、回転軸10の軸心Cの方向において同じになっている。つまり、回転子鉄心20を構成する全ての鋼板には、いずれも同じ形状の穴21が形成されている。なお、穴21は、永久磁石30が配置することができれば、貫通孔でなくてもよい。
【0034】
図3に示すように、複数の穴21は、回転軸10を中心として放射状に設けられている。また、複数の穴21は、回転子鉄心20の周方向(回転軸10の回転方向)に沿って等間隔で設けられている。複数の穴21の各々は、平面視において、回転子鉄心20の径方向(回転軸10の軸心Cの方向に直交する方向)に延在している。つまり、穴21は、回転子鉄心20の径方向に長尺状であり、径方向の長さが回転方向(円周方向)の長さに比べて長くなっている。長尺状の複数の穴21は、回転軸10を中心にスポーク状に形成されている。つまり、回転子2は、スポーク型のIPMロータであり、電動機1は、スポーク型のIPMモータである。本実施の形態において、各穴21の平面視形状は、回転子鉄心20の径方向を長手方向とする略長方形である。また、複数の穴21の各々の平面視形状は、互いに同じである。
【0035】
複数の穴21の各々には、永久磁石30が配置されている。本実施の形態において、永久磁石30は、焼結マグネットである。複数の永久磁石30は、磁極の方向が回転子鉄心20の周方向(回転軸10の回転方向)となるように配置されている。つまり、永久磁石30は、磁極の方向が回転子鉄心20の周方向となるように着磁されている。なお、隣り合う2つの永久磁石30は、S極及びN極の磁極の向きが逆向きになっている。
【0036】
永久磁石30の平面視形状及び大きさは、穴21の平面視形状及び大きさとほぼ同じであり、永久磁石30は、穴21に嵌合されている。したがって、永久磁石30の平面視形状は、長尺状の略長方形である。一例として、永久磁石30は、回転子鉄心20の径方向と直交する方向を厚さとする板状の直方体である。なお、永久磁石30は、複数に分割されていてもよい。
【0037】
各穴21において、永久磁石30の外面と穴21の内面との間には僅かな隙間(クリアランス)が存在していてもよい。この隙間には、永久磁石30を穴21に接着固定するための接着剤が設けられていてもよい。一方、この隙間に接着剤が設けられていなくてもよい。永久磁石30の外面と穴21の内面との間の隙間は、製造上、最低限必要となる寸法公差が確保されていればよい。
【0038】
図3及び
図4に示すように、回転子鉄心20は、複数のブリッジ部22を有する。複数のブリッジ部22の各々は、複数の穴21の各々と回転子鉄心20の外周面との間に位置する。つまり、複数のブリッジ部22の各々は、複数の穴21の各々と一対一に対応して設けられており、対応する穴21に配置された永久磁石30の外周側に位置している。各ブリッジ部22は、回転子鉄心20の外周端部に設けられている。
【0039】
図4に示すように、複数のブリッジ部22の各々は、回転子鉄心20の径方向に直交する方向に延在している。つまり、各ブリッジ部22は、永久磁石30の短手方向に延在している。永久磁石30の短手方向における各ブリッジ部22の長さは、永久磁石30の短手方向の長さよりも長くなっているが、これに限らない。例えば、永久磁石30の短手方向における各ブリッジ部22の長さは、永久磁石30の短手方向の長さと同じであってもよいし、永久磁石30の短手方向の長さよりも短くてもよい。
【0040】
また、複数のブリッジ部22の各々は、回転子鉄心20の径方向の長さを幅とすると、第1の長さの幅を有する第1部位22aと、第1の長さよりも長い第2の長さの幅を有する第2部位22bとを有する。つまり、第1部位22aは、第2部位22bよりも狭い幅を有する幅狭部であり、第2部位22bは、第1部位よりも広い幅を有する幅広部である。本実施の形態において、第1部位22aと第2部位22bとの境界部分は、幅が漸次変化するテーパ部になっているが、これに限らない。つまり、第1部位22aと第2部位22bとの境界部分は、幅が不連続に変化する階段状になっていてもよい。なお、第1部位22a及び第2部位22bの各々の全域において、幅は一定ではないが、第1部位22a及び第2部位22bの各々の全域において、幅は一定であってもよい。
【0041】
各ブリッジ部22は、2つの第1部位22aと、2つの第1部位22aの間に位置する1つの第2部位22bとを有する。つまり、各ブリッジ部22は、幅広部である第2部位22bの両側の各々に、幅狭部である第1部位22aが設けられた構成になっている。本実施の形態において、ブリッジ部22は、永久磁石30の中心を通り且つ回転子鉄心20の径方向に延在する線を中心にして線対称の形状になっている。また、第2部位22bの両側に位置する第1部位22aは、磁気飽和しているが、これに限らない。
【0042】
本実施の形態では、2つの第1部位22aの外周側面と第2部位22bの外周側面とは面一であるが、第2部位22bの内周側面が2つの第1部位22aの内周側面よりも内側に向かって突出するように形成されている。つまり、第2部位22bは、内側に向かって突出する突出部を有している。これにより、第2部位22bは第1部位22aよりも幅広になっている。
【0043】
また、回転子鉄心20には、第1空隙部23aが設けられている。第1空隙部23aは、複数のブリッジ部22の各々における第1部位22aと当該ブリッジ部22に対応する穴21に配置された永久磁石30との間に位置し、当該穴21に連通している。第1空隙部23aは、フラックスバリアとして磁気抵抗となるエアギャップである。本実施の形態において、ブリッジ部22は2つの第1部位22aを有するので、第1空隙部23aも2つ設けられている。
【0044】
本実施の形態では、上記のようにブリッジ部22の第2部位22bが内側に向かって突出する突出部を有しており、2つの第1空隙部23aは、この第2部位22bの突出部を挟むように位置している。
【0045】
また、2つの第1空隙部23aの各々は、永久磁石30を保持するための突起24とブリッジ部22の第1部位22aとの間に位置している。突起24は、永久磁石30を保持するための部位であり、永久磁石30の外周側端面30aに接している。つまり、突起24は、永久磁石30の外周側端面30aを押さえることで永久磁石30を保持している。本実施の形態において、突起24は、各穴21において、2つ設けられている。2つの突起24は、回転子鉄心20の径方向と直交する方向に沿って向かい合う位置に形成されており、また、互いに向かって突出するように形成されている。2つの突起24の一方は、永久磁石30の外周側端面30aの一方の角部分に接しており、2つの突起24の他方は、永久磁石30の外周側端面30aの他方の角部分に接している。
【0046】
なお、
図3に示すように、回転子鉄心20は、外周側に突起24を有するだけではなく、内周側にも突起25を有する。突起25は、突起24と同様に永久磁石30を保持するための部位であるが、突起25は、永久磁石30の内周側端面30bに接している。つまり、突起25は、永久磁石30の内周側端面30bを押さえることで永久磁石30を保持している。本実施の形態において、突起25は、各穴21において、1つ設けられている。突起25は、回転子鉄心20の径方向外側に向かって突出している。このように、各穴21において、永久磁石30は、回転子鉄心20の略径方向に位置する突起24と突起25とに挟持されることで、穴21内で動かないように固定されている。
【0047】
また、
図4に示すように、回転子鉄心20には、第2空隙部23bが設けられている。第2空隙部23bは、複数のブリッジ部22の各々における第2部位22bと当該ブリッジ部22に対応する穴21に配置された永久磁石30の外周側端面30aとの間に位置し、当該穴21に連通している。第2空隙部23bも、フラックスバリアとして磁気抵抗となるエアギャップである。
【0048】
本実施の形態において、第2空隙部23bは、穴21に連通するだけではなく、第1空隙部23aにも連通している。具体的には、第2空隙部23bは、2つの第1空隙部23aと一続きのエアギャップになっている。また、第2空隙部23bは、2つの突起24の間に位置している。各穴21に第2空隙部23bが存在することで、当該穴21に配置された永久磁石30は、ブリッジ部22に接していない。なお、第2空隙部23bが存在せず、ブリッジ部22と永久磁石30とが接していてもよい。
【0049】
また、回転子鉄心20には、第3空隙部23cが設けられている。第3空隙部23cは、永久磁石30の側面と回転子鉄心20との間に位置し、穴21に連通している。第3空隙部23cも、フラックスバリアとして磁気抵抗となるエアギャップである。
【0050】
本実施の形態において、第3空隙部23cは、永久磁石30の側面のうち永久磁石30の外周側端部に設けられている。また、第3空隙部23cは、永久磁石30の対向する2つの側面の各々に設けられている。2つの第3空隙部23cは、永久磁石30を挟んで対向する位置に設けられている。具体的には、各第3空隙部23cは、突起24の根元部分に設けられている。したがって、突起24は、第1空隙部23aと第3空隙部23cとの間に位置している。
【0051】
第1空隙部23a、第2空隙部23b及び第3空隙部23cは、永久磁石30の中心を通り且つ回転子鉄心20の径方向に延在する線を中心にして線対称の形状及び位置関係になっている。
【0052】
次に、本実施の形態に係る回転子2及び電動機1の作用効果について、本開示に至った経緯も含めて、
図5~
図8を用いて説明する。
図5は、比較例1の電動機における回転子2Xの断面図であり、
図6は、比較例1の電動機における回転子2Xと固定子3との境界部分の拡大断面図である。
図7は、比較例2の電動機における回転子2Yと固定子3との境界部分の拡大断面図である。
図8は、実施の形態に係る電動機1における回転子2と固定子3との境界部分の拡大断面図である。なお、
図6~
図8において、実線の矢印は、固定子3で生成される磁束の流れを示しており、破線の矢印は、回転子2で生成される磁束の流れを示している。
【0053】
図5に示すように、比較例1の回転子2Xは、上記実施の形態における回転子2と同様に、スポーク型のIPMロータであり、穴21Xと穴21Xに配置された永久磁石30Xを有する回転子鉄心20Xを有する。また、比較例1における回転子鉄心20Xには、穴21の外周側に位置するブリッジ部22Xが設けられている。
【0054】
図6に示すように、比較例1の回転子2Xでは、高磁束化するために、ブリッジ部22Xの幅(径方向の長さ)を狭くしている。しかしながら、ブリッジ部22Xの幅を狭くすると、
図6に示すように、電動機の駆動中に固定子3によって永久磁石30Xに印加される逆磁界が強くなり、着磁された永久磁石30Xが減磁するおそれがある。
【0055】
しかしながら、
図7に示される比較例2の回転子2Yのように、穴21Yと穴21Yに配置された永久磁石30Xとを有する回転子鉄心20Yに設けられたブリッジ部22Yの幅を広くすると、固定子3によって永久磁石30Xに印加される逆磁界を弱めることができるものの、永久磁石30Xの外周側端部からの磁束がブリッジ部22Yに向かってしまう。つまり、永久磁石30Xからの磁束の一部がブリッジ部22Yを通るために漏れ磁束が発生する。この結果、固定子3を通る永久磁石30Xの磁束、つまりトルクに寄与する永久磁石30Xの磁束が低下する。
【0056】
そこで、本願発明者らが鋭意検討した結果、ブリッジ部を有するスポーク型のIPMロータであっても、ブリッジ部の形状を工夫することで、固定子を通る永久磁石の磁束が減ることを抑制しつつ永久磁石の減磁耐性を向上させることができる構造を見出した。
【0057】
具体的には、本実施の形態に係る回転子2では、
図8に示すように、回転子鉄心20のブリッジ部22に、相対的に幅が狭い第1部位22aと幅が広い第2部位22bとが設けられているとともに、ブリッジ部22の第1部位22aと永久磁石30との間に、穴21に連通する第1空隙部23aが設けられている。
【0058】
このようにブリッジ部22に幅が広い第2部位22bを設けることで、
図8に示すように、固定子3による逆磁界を意図的にブリッジ部22に通している。これにより、固定子3による逆磁界が永久磁石30に印加されることを抑制できる。つまり、永久磁石30に印加される逆磁界を弱めることができる。したがって、着磁された永久磁石30が減磁することを抑制することができる。つまり、永久磁石30の減磁耐性を向上させることができる。
【0059】
さらに、ブリッジ部22に幅が狭い第1部位22aを設けるとともに、この第1部位22aと永久磁石30との間に第1空隙部23aが設けられている。これにより、永久磁石30からブリッジ部22に向かう磁束に対する磁気抵抗を大きくすることができるので、永久磁石30からブリッジ部22への漏れ磁束を抑制できる。したがって、固定子3を通る永久磁石30の磁束、つまりトルクに寄与する永久磁石30の磁束が低下することを抑制することができる。
【0060】
以上のとおり、本実施の形態に係る回転子2及び電動機1によれば、回転子鉄心20にブリッジ部22を設けた場合であっても固定子3を通る永久磁石30の磁束が減ることを抑制しつつ永久磁石30の減磁耐性を向上させることができる。
【0061】
したがって、例えば、回転子2の高磁束化と永久磁石30の減磁耐性の向上との両立を図ることができるので、高性能で高出力の電動機1を実現することができる。あるいは、回転子2の永久磁石30の減磁耐性が向上するので、永久磁石30の数を減らして省磁石化したとしても回転子2から固定子3への磁束(つまりトルクに寄与する永久磁石30の磁束)を維持することができる。これにより、電動機1の小型化を図ることもできる。
【0062】
また、本実施の形態に係る回転子2において、回転子鉄心20には、ブリッジ部22における第2部位22bと永久磁石30の外周側端面30aとの間に、穴21に連通する第2空隙部23bが設けられている。
【0063】
これにより、ブリッジ部22における幅が広い第2部位22bと永久磁石30との間の磁気抵抗を大きくすることができるので、ブリッジ部22と永久磁石30との間に生じる磁束のループを軽減することができる。したがって、固定子3を通る永久磁石30の磁束が低下することを一層抑制することができる。
【0064】
また、ブリッジ部22と永久磁石30との間の第2空隙部23bは、本実施の形態のように、第1空隙部23aと連通しているとよい。
【0065】
これにより、永久磁石30からブリッジ部22への漏れ磁束を一層抑制することができる。したがって、固定子3を通る永久磁石30の磁束が低下することを一層抑制することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る回転子2において、永久磁石30の側面と回転子鉄心20との間には、穴21に連通する第3空隙部23cが設けられている。
【0067】
これにより、永久磁石30からブリッジ部22への漏れ磁束をさらに抑制することができる。したがって、固定子3を通る永久磁石30の磁束が低下することをさらに抑制することができる。
【0068】
なお、ブリッジ部22における磁束の入り口となる第1部位22aは、磁気飽和しているとよい。これにより、永久磁石30からブリッジ部22への漏れ磁束をさらに抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態に係る回転子2において、回転子鉄心20は、第1空隙部23aと第3空隙部23cとの間に、永久磁石30の外周側端面30aに接する突起24を有する。
【0070】
この構成により、フラックスバリアとなる第1空隙部23aと第3空隙部23cと設けたとしても、接着剤ではなく突起24による回転子鉄心20の構造によって永久磁石30を保持することができる。
【0071】
本実施の形態に係る回転子2において、ブリッジ部22及び第1空隙部23aは、永久磁石30の中心を通り且つ回転子鉄心20の径方向に延在する線を中心にして線対称の形状になっている。
【0072】
この構成により、回転子2が左回転及び右回転の両方に回転する場合であっても、漏れ磁束を減少させることができる。なお、回転子2が左回転及び右回転のいずれか一方のみにしか回転しないような場合には、ブリッジ部22及び第1空隙部23aは、線対称になっていなくてもよい。例えば、ブリッジ部22は、1つの第1部位22aと1つの第2部位22bとによって構成されていてもよい。
【0073】
(変形例)
以上、本開示に係る回転子2及び電動機1について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施の形態において、回転子鉄心20には、1種類の永久磁石30が配置される1種類の穴21が設けられていたが、これに限らない。
【0075】
具体的には、
図9に示される回転子2Aのように、回転子鉄心20Aには、スポーク状に配置された穴21(第1穴)に加えて、永久磁石40が配置された磁石配置穴として穴26(第2穴)が設けられていてもよい。
【0076】
穴26は、穴21と同様に、回転軸10を中心として放射状に複数設けられている。複数の穴22は、穴21と同様に、回転子鉄心20Aの周方向に沿って等間隔で設けられている。また、穴21と穴26とは、周方向に沿って交互に設けられている。複数の穴26の各々において、回転子鉄心20Aの径方向の長さは、穴21の回転子鉄心20の径方向の長さよりも短くなっている。つまり、穴21は、穴26よりも長尺状である。具体的には、長尺状の穴21の外周側端部は、穴26の外周側端部よりも外周側に位置している。
【0077】
穴26に配置される永久磁石40は、焼結マグネットであり、穴26に挿入される。永久磁石40は、磁極の方向が回転子鉄心20の径方向(回転軸10と直交する方向)となるように配置されている。なお、隣り合う2つの永久磁石40は、S極及びN極の磁極の向きが逆向きになっている。本実施の形態において、第1磁石である永久磁石30は、回転子2における主磁石であり、第2磁石である永久磁石40は、補助磁石である。
【0078】
このように、永久磁石30と永久磁石40との2種類の磁石を用いることで、回転子2Aから固定子3への磁束を大きくすることができるので、高性能で高出力の電動機を実現することができる。
【0079】
また、本変形例において、複数の穴26の各々は、突出部26aを有する。突出部26aは、穴26に連通する空隙部であり、各穴26の両側の各々に設けられている。穴26の平面視形状は、縦横比が小さい矩形の辺に突出部26aが付加された形状になっている。各穴26において、突出部26aは、回転子鉄心20Aの径方向の内側寄りに位置し、且つ、回転子鉄心20Aの周方向外側に向かって突出している。
【0080】
このような形状の穴26に突出部26aを設けることで、穴26における回転子鉄心20Aの径方向の外側寄りにおいては、穴26と穴21との幅を大きくしつつ、穴26における回転子鉄心20Aの径方向の内側寄りにおいては、穴26と穴21との幅を狭めることができる。つまり、穴26における回転子鉄心20Aの径方向の内側寄りにおいてのみ、穴26(突出部26a)と穴21との間の部分の幅を狭めることができる。これにより、穴26を設けたことで磁束の流れを阻害してしまうことを抑制することができるとともに、永久磁石30の磁束と永久磁石40の磁束とが干渉して固定子に鎖交する磁束が減少してしまうことを抑制することができる。したがって、漏れ磁束を低減させて固定子に鎖交する鎖交磁束を増加させることができる。
【0081】
なお、
図9では、永久磁石30を主磁石とし、永久磁石40を補助磁石としたが、これに限らない。例えば、永久磁石40を主磁石とし、永久磁石30を補助磁石としてもよい。また、
図9では、穴26の全てが突出部26aを有していたが、これに限らず、複数の穴26の中に突出部26aを有していないものが含まれていてもよい。また、
図9において、突出部26aは、穴26の両側の各々に設けられているが、これに限らず、穴26の片側のみに設けられていてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態において、ブリッジ部22の長手方向の両端は切断されていなかったが、これに限らない。例えば、
図10に示される回転子2Bのように、回転子鉄心20Bのブリッジ部22Bの一方の端部が切断されていてもよい。ブリッジ部22Bは、1つの第1部位22aと1つの第2部位22bとによって構成されている。このように、ブリッジ部22Bの一方の端部が切断されていることで、回転子鉄心20Bには、回転子鉄心20Bの外周面に連通する第4空隙部23dが形成される。第4空隙部23dは、第2空隙部23b及び穴21に連通している。このように、本変形例によれば、永久磁石30からブリッジ部22Bへの漏れ磁束を一層抑制することができる。なお、本変形例において、回転子鉄心20を構成する電磁鋼板100Bは、全て同じ形状である。
【0083】
また、上記実施の形態において、回転子鉄心20を構成する電磁鋼板は、全て同じであったが、これに限らない。例えば、
図11に示される回転子2Cのように、電磁鋼板100Bと電磁鋼板100Cとの2種類の電磁鋼板が積層されていてもよい。電磁鋼板100Bは、一方側が切断されたブリッジ部22Bを有し、電磁鋼板100Cは、他方側が切断されたブリッジ部22Cを有する。つまり、ブリッジ部22Bとブリッジ部22Cとは逆方向が切断されている。また、ブリッジ部22B及びブリッジ部22Cは、いずれも、1つの第1部位22aと1つの第2部位22bとによって構成されている。このように、本変形例によれば、
図10に示される回転子鉄心20Bと同様に永久磁石30からブリッジ部22Bへの漏れ磁束を抑制することができるとともに、
図10に示される回転子鉄心20Bと比べて回転子鉄心20Cの強度を向上させることができる。なお、
図11では、電磁鋼板100Bと電磁鋼板100Cとを交互に積層したが、これに限らない。
【0084】
また、上記実施の形態における回転子2では、
図4に示すように、回転子鉄心20の外周部分に、平面視において直線状をなす平坦面が形成されている。具体的には、穴21と対向する位置、つまり永久磁石30の外周側端面30aと対向する位置に、平坦面が形成されている。この構成により、トルクリップルを低減することができる。特に、
図9のように、永久磁石30及び永久磁石40を用いるとともに穴26に突出部26aを設けると、漏れ磁束を低減させた結果としてトルクリップルが増加するおそれがあるが、回転子鉄心20の外周部分に平坦面を形成することで、トルクリップルの増加を抑制することができる。なお、回転子鉄心20の外周部分に、平坦面だけではなく外方に突出する膨出面を形成することで、さらにトルクリップルを低減することができる。膨出面は、例えば外側に膨らむように湾曲した湾曲面であり、隣り合う2つの平坦面の間に形成される。
【0085】
また、上記実施の形態において、固定子3は、固定子鉄心3aにおける隣り合う2つのティース3a1の先端同士の間に開口部が設けられたオープンスロットステータであったが、これに限らない。例えば、固定子鉄心3aにおける隣り合う2つのティース3a1の先端同士が繋がったクローズドスロットステータであってもよい。この構成により、トルクリップルを低減することができる。特に、
図9のように、永久磁石30及び永久磁石40を用いるとともに穴26に突出部26aを設けると、漏れ磁束を低減させた結果としてトルクリップルが増加するおそれがあるが、固定子3としてクローズドスロットステータを用いることで、トルクリップルの増加を抑制することができる。
【0086】
また、上記実施の形態において、回転子鉄心20のブリッジ部22における第1部位22aと第2部位22bとの厚さは同じであったが、これに限らない。例えば、第1部位22aの厚さが第2部位22bの厚さよりも薄くなっていてもよい。一例として、第1部位22aに対応する箇所にプレス加工等を施すことで第1部位22aの厚さを第2部位22bの厚さよりも薄くすることができる。例えば、回転子鉄心20を構成する複数の電磁鋼板のそれぞれを積層する前に予めプレス加工しておいてもよいし、複数の電磁鋼板を積層してからプレス加工してもよい。このように、ブリッジ部22における第1部位22aの厚さを薄くすることで、永久磁石30からブリッジ部22への漏れ磁束をさらに軽減することができる。
【0087】
この場合、上記実施の形態においては、第1部位22aと第2部位22bとの幅が異なっていたが、これに限るものではなく、第1部位22aの幅と第2部位22bの幅とは同じであってもよい。つまり、複数のブリッジ部22の各々は、第1の幅及び第1の厚みを有する第1部位22aと、第1の幅と同じ幅の第2の幅及び第1の厚みよりも厚い第2の厚みを有する第2部位22bとを有していてもよい。言い換えると、第1部位22aは、第2の部位22bの幅と同じ幅を有するとともに、第2の部位22bの厚さよりも薄い厚さを有していてもよい。この形態の場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏する。具体的には、相対的に厚さが厚い第2の部位22bをブリッジ部22に設けることで、固定子3による逆磁界を意図的にブリッジ部22に通すことができ、固定子3による逆磁界が永久磁石30に印加されることを抑制することができる。これにより、着磁された永久磁石30が減磁することを抑制することができる。つまり、永久磁石30の減磁耐性を向上させることができる。また、相対的に厚さが薄い第1部位22aをブリッジ部22に設けるとともに、この第1部位22aと永久磁石30との間に第1空隙部23aを設けることで、永久磁石30からブリッジ部22に向かう磁束に対する磁気抵抗を大きくすることができ、永久磁石30からブリッジ部22への漏れ磁束を抑制できる。したがって、固定子3を通る永久磁石30の磁束、つまりトルクに寄与する永久磁石30の磁束が低下することを抑制できる。これにより、回転子鉄心20にブリッジ部22を設けた場合であっても固定子3を通る永久磁石30の磁束が減ることを抑制しつつ永久磁石30の減磁耐性を向上させることができる。
【0088】
また、上記実施の形態における回転子2では、磁極数が10であったが、これに限らない。例えば、磁極数は8であってもよい。なお、回転子2の磁極数は、8、10以外であってもよく、回転子2の磁極数は、2n(nは自然数)であれば、任意の数が適用される。
【0089】
なお、上記実施の形態において、第1空隙部23a、第2空隙部23b及び第3空隙部23cは、空気が存在する空気層になっていたが、これに限らない。例えば、第1空隙部23a、第2空隙部23b及び第3空隙部23cの一部又は全部には、接着剤等の樹脂材料が存在していてもよい。
【0090】
また、上記各実施の形態における回転子を備える電動機は、種々の電気機器に用いることができる。例えば、電気掃除機、エアコン、冷蔵庫等の家庭用電気機器、又は、自動車用機器、ロボット等の産業用電気機器に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の技術は、例えばIPMロータ等の回転子に利用することができる。また、本開示の技術は、回転子だけではなく、回転子を備える電動機及び電動機を備える電気機器等の種々の製品に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 電動機
2、2A、2B、2C 回転子
3 固定子
3a 固定子鉄心
3a1 ティース
3b 巻線コイル
10 回転軸
20、20A、20B、20C 回転子鉄心
20a 貫通孔
21、26 穴
22、22B、22C ブリッジ部
22a 第1部位
22b 第2部位
23a 第1空隙部
23b 第2空隙部
23c 第3空隙部
23d 第4空隙部
24、25 突起
26a 突出部
30、40 永久磁石
30a 外周側端面
30b 内周側端面
100B、100C 電磁鋼板