(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089328
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ハンダ回収装置
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
C22B7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021167056
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】520444199
【氏名又は名称】エコ・サイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500292747
【氏名又は名称】湯沢 理
(72)【発明者】
【氏名】湯沢 理
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001BA22
4K001DA05
4K001GA17
(57)【要約】
【課題】ハンダクリームペーストのリサイクルにおいて、有害ガスや燃焼ガスなどを発生、排出しない、環境負荷の少ないハンダ金属の回収、リサイクル方法を提供する。
【解決手段】IHヒーターによる電磁誘導加熱により、ハンダクリームペーストに含まれた油脂、溶剤を分離、洗浄し、ハンダ金属を溶融固化、抽出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリームハンダからハンダ金属を分離、回収するハンダ回収装置において、分離槽に堆積したクリームハンダ内のハンダ金属を溶融させる電磁誘導加熱手段を備え、ハンダ金属を溶融固化、回収することができることを特徴としたハンダ回収装置。
【請求項2】
請求項1記載のハンダ回収装置において、クリームハンダをペースト容器から除去することができるペースト除去手段を備えたことを特徴としたハンダ回収装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2記載のハンダ回収装置において、クリームハンダを撹拌して油脂、溶剤を分離することのできる撹拌手段を備えたことを特徴としたハンダ回収装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハンダ回収装置において、撹拌手段は、ロータリーブレード式としたことを特徴としたハンダ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームハンダ(ハンダペーストともいう)からハンダ金属を分離、回収する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品の小型化、高密度化、微細化に伴い簡便に、かつ、高精度での実装を可能としたクリームハンダは、電子機器、組立工程、特にリフロー槽において必須の資材として広く認知されている。
【0003】
クリームハンダの製造方法は、ハンダインゴットを溶融し各種方法で粒径が数10μm程度の金属粉体を作成し、分級後、松脂成分、チキソ剤、有機溶剤などからなるフラックスを混合して作られ、プラスチック製容器に充填、封入される。
【0004】
一方、クリームハンダのリサイクルに関する発明としては、溶融槽にクリームハンダを投入し加熱することでハンダ材の溶融液を得て、フラックスとハンダ金属を分離する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
上記分離装置は、クリームハンダを物理的に加熱するために、有機性化学成分や松脂などの油分が熱分解してホルムアルデヒドなどの有害ガスが発生し、また、二酸化炭素なども発生するなど人体や環境に悪影響を与えていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにクリームハンダを高温で直接加熱する廃棄クリームハンダの再生方法では、大量の熱エネルギーの消費や有害ガス、二酸化炭素といった環境汚染物質を排出するという問題があった。
【0008】
また、溶融槽が高温となるため、燃えやすい油脂や石油系溶剤を含んだクリームハンダが焦げたり、加熱による着火、燃焼などの恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みて創出されたもので、クリームハンダを水溶液中に浸し、かつ、IHヒーターの高周波による電磁誘導加熱でハンダ金属粉末にうず電流を発生させ、粉末粒子間の電気抵抗により発熱するので溶融し、油脂などは分離し水溶液の液面上層部に浮上する。
【0010】
つまり、IHヒーターによる発熱で水溶液中でハンダ金属粉末は加熱、溶融しながら水溶液中なので冷やされて金属固形物となり沈下する。
同時にフラックス中の油脂、溶剤などは分離し、水溶液との比重差により上昇、液面に浮上する。
【0011】
また、分離槽自体の底部においてもIHヒーターに適した金属材料なので、うず電流により発熱しハンダ金属粉末及び水溶液の加熱に寄与する。
【0012】
したがって、IHヒーターによりハンダ金属粉末が金属固形物として抽出され、また、油脂、溶剤などは洗浄、分離し液面に浮上する。
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明はクリームハンダからハンダ金属を分離するハンダ回収装置において、分離槽底部に落下沈殿したクリームハンダを加熱溶融する加熱ユニットと、分離槽に水溶液を浸してクリームハンダから分離した油脂、溶剤などを比重差により上昇させ液面から分別、除去し貯留する副水槽を備えたことを特徴とし、クリームハンダのハンダ金属部分を抽出、回収することが可能となる。
【0014】
また、クリームハンダ容器はプラスチック製なので、処理後はリサイクル可能でサイズ的には500グラム入り容器がリフロー槽用に流通している。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のハンダ回収装置において循環ポンプとジェットノズルを配設し、容器内のクリームハンダがスムーズに分離槽の底部に落下することで、効率良くクリームハンダを容器から除去することができることを特徴としたハンダ回収装置。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のハンダ回収装置において、撹拌ユニットを設置し、その型式はスライドバー式とし、それに複数のスティックロッドを配設し、駆動モーターで水平方向に移動することで撹拌効率を上げ、クリームハンダ内の油脂などを効率良く分離、除去することができることを特徴としたハンダ回収装置。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のハンダ回収装置において、撹拌ユニットはロータリーブレード式とし、それに複数のスティックロッドを配設し、駆動モーターで正転、逆転することで撹拌効率を上げ、クリームハンダ内の油脂、溶剤などを効率良く分離、除去することができることを特徴としたハンダ回収装置。
【0018】
【発明の効果】
【0019】
本発明では、クリームハンダの加熱方法に高周波電磁誘導加熱方式、いわゆるIHヒーターを利用する。これはニクロムヒーターなどの直接加熱方式ではないので、クリームハンダの着火燃焼の心配が不要であり、また、水溶液中にて動作するので空気の供給が無く、さらに安全である。
また、燃焼によらないので有害ガス、二酸化炭素などの発生が無く環境負荷を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図11】撹拌ユニット(ロータリーブレード式)の平面図、立面図
【
図12】ロータリーブレード式ステックロッドの移動動線
【発明を実施するための形態】
【実施例0021】
以下、本発明を適用したハンダ回収装置として、ハンダ金属と油脂、溶剤などを分離、回収する装置の一実施形態について図面をもとに説明する。
図1は、本実施形態に係るハンダ回収装置の外観図である。同図において、ハンダ回収装置は4つの車輪を具備し、分離槽1、架台2、IHヒーターユニット3、循環ポンプ4、撹拌ユニット5、カバー6、ドレインパン7などを備える。
【0022】
また、分離槽1の側面には副水槽8を設ける。該副水槽は、クリームハンダから分離された油脂、溶剤などのフラックスをオリフィス9からオーバーフロー水と一緒に流れ出て副水槽8に貯留される。
【0023】
図2は本実施形態に係るハンダ回収装置の
図1のA-A´断面図である。架台2の上部には分離槽1、IHヒーターユニット3、循環ポンプ4、撹拌ユニット5、循環ライン10、容器かご11、カバー6などが配設され、最下部にはドレインパン7が配設される。
【0024】
図3は容器かご11の外観図で、ペースト容器50が個々に収納可能なように区画で仕切られ、装置稼働時に該ペースト容器を固定し脱落、転倒を防止する。なお、該容器かごの側面、仕切面及び底面は金網51が張られる。
但し、該金網のメッシュサイズはジェットノズル41の径より大きいものとする。
さらには、分離槽1からは脱着可能とすることで、ハンダ金属の回収や撹拌ユニット5の取り出し、分離槽内の清掃、メンテナンスなどを容易にすることができる。
【0025】
ここで、IHヒーターの作動原理を説明する。IHとはインダクションヒーティングの略で、電磁誘導加熱の意味である。金属は交番磁界(高周波)を当てると発熱する特性がある。それは金属内部でうず電流が発生し、金属の電気抵抗によりジュール熱が発生する。これを誘導加熱といい、電磁誘導コイル12aにより行われる。本発明はこれを利用する。
また、該電磁誘導コイルは、高周波インバータ回路12bの出力により動作する。なお、出力周波数は20~90KHzが好ましい。
このIHヒーターユニット3の内部図を
図4に示す。
【0026】
つまり、クリームハンダペースト(以後ペーストという)のIHヒーターによってハンダ金属を加熱、溶融するという物理的作用を利用する。
まず、IHヒーターユニット3により分離槽1の材質はIHに適した金属製なので電磁誘導で加熱され、槽内の水温も上がり、よってペーストも温められるが、ペースト内部においてもハンダ金属粉末が電磁誘導加熱により高温となり、ハンダ金属が溶けて流れ出る。
【0027】
これをくわしく説明すると、水溶液中の分離槽底部にペーストが堆積した場合、IHヒーターユニット3の高周波電磁誘導作用によりハンダ金属内部にうず電流が流れる。ペーストはハンダ金属粉末(スズ、鉛など)と油脂や溶剤を主成分とするフラックスの混合物であるが、ハンダ金属成分は80重量%前後なので電気的に導通しやすく、かつ水溶液中でもあるので、うず電流はハンダ金属粉末粒子の内部及びその粒子間で電流が流れ、その放電電流による熱エネルギーで溶融していき、各金属粉末粒径は徐々に集結、集合化して粒径サイズが大きくなる。
【0028】
溶融が進行すると、ハンダ金属粒子間で引き合って集まり徐々に塊り状になって大きくなり、ちょうどハンダ金属が集結化しながら固形化されていく。一般的にはハンダ金属の溶融温度は200度前後であるが、水溶液中でもその温度帯で加熱、溶融が行われる。
【0029】
但し、時系列的には高周波電磁誘導作用なので、その特性により分離槽底部に接触したハンダペーストの下層部から溶融固化し、上層部に向けて積層的に固化の厚みを増しながら徐々に生成していく。これを
図5に示す。
【0030】
したがって、当初ペースト内部はやわらかい粘度であるので、これを撹拌、切り返しなどして油脂、溶剤などを早めに分離、洗浄しないと溶融、固化が遅れ、積層固形化に相当の時間が必要となる。そこで撹拌する手段が必要となる。
【0031】
撹拌手段の一例としてスライドバー式撹拌ユニット5がある。
図6-1はその平面図で分離槽1の底部にスライドバー14が水平方向に移動可能なように配設し、該スライドバーに複数のステックロッド15を設ける。
また、
図7は、該スライドバーの断面図で内部には垂直方向に吹き抜け部を画成してチャンネル16とし、該チャンネル長より短いカートリッジ17を挿入し、該チャンネルの溝に沿って自在に水平方向に移動可能となるようにする。該カートリッジには複数のインサートホール18を設け、ステックロッド15を垂直方向に挿入する。
図8は、該ステックロッドの押圧手段で、スプリング20を装着し、垂直下側方向に付勢する。これにより溶融固化したハンダ金属表面の凹凸に沿って該ステックロッド先端部が移動動線に沿って移動するので、その上に沈殿、堆積したペーストを粘度に抗してかき分けることができる。
【0032】
また、
図6-1において、スライドバー14の両端部にはスクリューシャフト20a、20bを配設し、回転することで該スライドバーが水平方向(図では上下方向)に自在に移動することができる。
2本のスクリューシャフトのいずれか一方の端部には駆動モーターとしてギアードモーター21を配設し、減速した回転数で正転、逆転を可能とし、かつ該スクリューシャフトのもう一方の端部にはスプロケット22bを設け、もう一方のスクリューシャフトにも同様にスプロケット22aを設けて、2本のスクリューシャフト同士をチェーン25で連結する。
また、該スクリューシャフトは回転自在となるようにベアリング23a、23b、24a、24bで支持される。これらのベアリングは図示しない分離槽1の金具に固定される。そして、該スライドバーの両端部には該スクリューシャフトのネジ山に合ったネジ穴27a、27bが開けられ、自在にスライド可能となる。
【0033】
これにより、ギアードモーター21の正転、逆転により2本のスクリューシャフトは同期して回転するので、スライドバー14は分離槽1の端部から端部に(
図6-1では上側から下側へ、または下側から上側へ)任意に移動することができる。該ギアードモーターはモーターの回転を減速させ、その駆動トルクをスクリューシャフト20a、20bに伝達し、図示しないコントローラにより、起動、回転速度、正転、逆転、停止などを制御する。
【0034】
スライドバー14に配設したステックロッド15は、該スライドバーの折り返し位置で切り替えピン26によりカートリッジ17は
図6-1では右側に移動する。
この動きをくわしく説明すると、該スライドバーが分離槽1の端部に位置した時に、(
図6-1では上側)該切り替えピンの傾斜部が該カートリッジの左側端部に当たり、該スライドバーは右側に移動する。
【0035】
また、スライドバー14がもう一方の端部(
図6-1では下側)に位置した時に切り替えピン28は該カートリッジの右側端部に当たり、該カートリッジは左側に移動する。
さらには、スライドバー14内部のカートリッジ17の両端部にマグネット29、30を装着し、該端部に位置した時に相対する金属(鉄製)に吸着して作動を確実なものとする。これを
図6-2に示す。
したがって、連続的に稼働するとカートリッジ17の移動動線は
図9のようにループ状になるので、ペーストを効率良く撹拌可能となり油脂、溶剤などが分離しやすくなる。
あるいは、ステックロッド15の下側先端部は
図10のように径の大きいサイズ、形状とすることで、ペーストとの接触面積が増えるので撹拌効率を上げることができる。
【0036】
以上のことにより、ステックロッド15は垂直下方への押圧手段によりペーストの溶融固化されつつあるハンダ金属表面の凹凸に沿って上下動し、前記移動動線に沿ってペーストをかき分けながら移動するので、結果的にペーストの粘性を利用して撹拌、混練が効率良く行われる。
【0037】
また、別の方法としてロータリーブレード式がある。
図11はこの平面図でロータリブレード31に複数のステックロッド15を配設し、回転軸を中心に回転することで撹拌が行われる。
【0038】
ステックロッド15の本数は
図11では一例として右側4本、左側3本とし移動動線が重複しないように配設する。
この時のステックロッド15の移動動線を
図12に示す。
【0039】
図13は、支持アングル32、33で、分離槽1端部のブラケット34にて脱着可能とした構造とし分離槽側4ケ所で支持される。よって、ロータリーブレード31が安定して回転可能な支持強度と構造を構成する。
また、該支持アングルは、ハンダ金属の取り出しやメンテナンスの際は、ブラケット34から取り外しすることができる。
さらには、該ブラケットは、分離槽1の内壁面4ケ所に図示しない金具で固定される。
該ロータリーブレードの中心部にはギア35を設け、ウォームギア36をかみ合わせて駆動シャフト37に連結し、ギアードモーター38の駆動トルクをギア35に伝達する。
【0040】
駆動シャフト37はユニバーサルジョイント39を介してギアードモーター38により駆動され、該モーターは図示しないコントローラーで回転数、正転、逆転、停止などを制御することで撹拌状況に応じた稼働が可能となる。
また、該ユニバーサルジョイントは、ハンダ金属の取り出しなどの際に折りたたむことができるので、取り出しスペースが確保できる。
【0041】
以上のように構成することで、前記スライドバー14と同様にロータリーブレード31のステックロッド15はペーストの溶融固化されつつあるハンダ金属表面の凹凸に沿って上下動し、移動動線に沿ってペーストをかき分けながら移動するので、結果的にペーストの粘性を利用した撹拌、混練が効率良く行われ油脂、溶剤などの分離、洗浄が促進される。
よって、溶融固化が進行すると積層固化物の厚みが増し、逆に撹拌するペースト量が徐々に減少することとなる。つまり、ペーストが全量、溶融固化するまで連続的に撹拌作業を行うことが好ましい。
また、水溶液の水温は80度程度に保持できるので、油脂などの分離、洗浄はさらに促進される。
【0042】
図14は分離槽1の循環ライン10で循環ポンプ40によりジェットノズル41に圧送され、分離槽1の水を循環させ噴出後は分離槽1に還流する。
つまり、該循環ポンプにより水は加圧、圧送し該ジェットノズルから噴出排出される。これを循環させることで水の消費量を最小とすることができ、かつ水温の低下を防ぐこともできる。但し、稼働時の水温は安全上及びエネルギー効率上90度以下を保持することが好ましい。
【0043】
図15はペースト容器50に挿入されるジェットノズル41の拡大図で、噴出口は垂直上方に向けられ、かつ、しぼり加工をされる。該ノズルの先端部は該ペースト容器の底部(図面では上側)の近くに位置し、粘度の低いペーストまたは粘度の高いペースト並びに固化したペーストを水圧により除去、剥離、落下させる。
【0044】
また、容器かご11は分離槽1上部に脱着可能に設置され、水位はペースト容器50の上部まで満たされ、オリフィス水位を維持する。
【0045】
ジェットノズル41は該容器かごの底部から突き出す形となり、各区画ごとに配設される。
また、配管の一部をフレキシブル管42とし、ハンダ金属の取り出しやメンテナンスの際は該フレキシブル管を自在に曲げることで、その作業を容易にすることができる。そして、分離槽1壁面に設置した図示しないブラケットで該フレキシブル管は脱着可能に支持される。
【0046】
循環ポンプの一例として、ターボ式ポンプを
図16に示す。これはインペラー43の回転による遠心力で水を圧送し該ジェットノズルから噴出される。構造がシンプルなのでハンダドロスなどによる詰まりを起こし難いという利点がある。そして、循環ポンプの出口側にサージタンク53を設け水圧の変動を平均化する。また、図示しないリリーフバルブを備え、規定圧力以上になった場合はバルブを開いて圧力を逃がす。
【0047】
また、ターボ式以外には図示しないギア式、ルーツ式、ベーン式、うず巻式なども使用可能である。
【0048】
ここで、分離槽内の水溶液の流れ、つまり流体の動きを説明する。装置稼働中の水溶液は上層部と下層部の水温の温度差により対流、拡散の状態にあり、ペースト中の油脂、油分などが除去される過程でハンダ粉末は溶融化される前にあるものは酸化、結合、析出し、砂状にドロス化して沈殿したり、粒径サイズの小さいものは液中に浮遊するか、滞留した状態にある。
このように、ペーストが溶融化する過程でハンダドロスが析出、浮遊、滞留するものもあるので、これらを捕集、濾過するためにストレーナ44やフィルター45を設け、循環ライン10やジェットノズル41の配管内の詰まりを防ぐ。
【0049】
図17はフィルター45で循環ポンプの排出側に設ける。前記ストレーナ44のメッシュサイズよりも細目とし、ハンダドロスなどを濾過し配管内の詰まりを防止する。
また、該フィルターは分解カートリッジ式とすることで、清掃、メンテナンスを容易にすることができる。
図18はストレーナ44の側面図で、粗目のメッシュで構成してポンプロスを低減させ、ハンダドロスの粒径サイズが大きいものをキャッチする。
【0050】
容器かご11の上部にはカバー6を設け、分離槽1本体に開閉可能なように図示しないヒンジで取付けられる。該カバーの内側には区画ごとに押圧棒46を取り付け、該カバーを閉めた際にペースト容器51を上から押さえることで転倒、脱落を防ぐ。これを
図19に示す。
【0051】
安全装置としては、分離槽下部13に図示しない温度ヒューズを装着し、該下部の金属温度が規定値以上になった場合は電流をしゃ断し、稼働を停止する。
また、常時、水温を監視、測定するために図示しない温度計を設置する。好ましくは熱電対式が良い。そして、この温度データをIHヒーターユニット3にリアルタイムでフィードバックし、水温は設定温度に保たれる。
【0052】
また、スクリューシャフト20aには図示しないトルクセンサーを設け、異常なトルクが発生した場合はギアードモーター38を停止させる。
【0053】
分離槽1及び副水槽8のドレインは排水バルブ47を開けると排水管48から流れてドレインパン7に貯留する。該ドレインパンの排水はドレインバルブ49を開けて行う。
【0054】
以上のように構成することで、ペーストはジェットノズル41の噴流圧力と重力により落下し、分離槽底部に堆積してIHヒーターユニット3により溶融固化する。さらに、撹拌ユニット5により油脂などは分離、洗浄が促進され、溶融が進行する。そして、分離した油脂などは分離槽1のオリフィス9から副水槽8に流れ水面上に浮遊、貯留される。溜まった油脂は適宜廃棄すれば良い。
溶融固化したハンダ金属の取り出しは、撹拌ユニット5、容器かご11などを分離槽1から外し回収スペースを確保し、へらなどを使用して回収する。この時、該分離槽の水溶液は全量ドレインしなくても良い。
また、ドレイン水の廃棄は排水基準に従い処理することが好ましい。
【0055】
分離槽1の水溶液は水を基材として、酸性、アルカリ性水溶液や界面活性剤、アルコール水溶液などを適当な比率で混合し濃度を調整して使用すると良い。各種ペーストの物理的、化学的特性に合わせて油脂、溶剤などのフラックスが分離、洗浄する最適な液剤と比率で調製することが好ましい。
【0056】
クリームハンダペーストからハンダ金属を比較的簡単に分離、抽出、回収することができ、かつ、燃焼などによる有害ガス、二酸化炭素などを排出しないので、環境負荷の少ないハンダのリサイクルを実現することができる。