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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089361
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230621BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230621BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20230621BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01L29/78 652B
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652J
H01L29/78 652C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 658A
H01L29/78 658F
H01L29/78 655A
H01L29/78 653C
H01L21/265 F
H01L21/265 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203814
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 志超
(72)【発明者】
【氏名】大形 公士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】トレンチの内部に、ゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GE1を形成する。半導体基板上に形成されているゲート絶縁膜GIを除去する。半導体基板上に、絶縁膜IF1を形成する。半導体基板に、p型のベース領域PBを形成する。ベース領域PBに、n型のエミッタ領域NEを形成する。半導体基板に対して水素アニール処理を施す。ベース領域PBとエミッタ領域NEとの境界10は、トレンチの側面とゲート絶縁膜GIとの間に形成されている絶縁膜IF1よりも深い位置に位置する。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1導電型の半導体基板を用意する工程、
(b)前記(a)工程後、前記半導体基板に、トレンチを形成する工程、
(c)前記(b)工程後、前記トレンチの内部および前記半導体基板上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(d)前記(c)工程後、前記トレンチの内部を埋め込むように、前記ゲート絶縁膜上に、第1導電性膜を形成する工程、
(e)前記(d)工程後、前記トレンチの外部に形成されている前記第1導電性膜を除去することで、前記トレンチの内部に、前記第1導電性膜からなるゲート電極を形成する工程、
(f)前記(e)工程後、前記半導体基板上に形成されている前記ゲート絶縁膜を除去する工程、
(g)前記(f)工程後、前記半導体基板上に、第1絶縁膜を形成する工程、
(h)前記(g)工程後、その底部が前記トレンチの底部よりも浅くなるように、前記半導体基板に、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の第1不純物領域を形成する工程、
(i)前記(h)工程後、前記第1不純物領域に、前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、
(j)前記(i)工程後、前記半導体基板に対して水素アニール処理を施す工程、
を備え、
前記(g)工程では、前記第1絶縁膜は、前記トレンチの側面と前記ゲート絶縁膜との間にも形成され、
前記第1不純物領域と前記第2不純物領域との境界は、前記トレンチの側面と前記ゲート絶縁膜との間に形成されている前記第1絶縁膜よりも深い位置に位置する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記トレンチの内部で前記ゲート電極の側面に接している前記ゲート絶縁膜の一部も除去されることで、前記ゲート電極の側面の一部が露出し、
前記(g)工程では、露出している前記ゲート電極の側面の一部にも、前記第1絶縁膜が形成され、
前記境界は、前記(f)工程で露出した前記ゲート電極の側面の一部よりも深い位置に位置する、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(c)工程では、前記ゲート絶縁膜は、酸素ガスおよび水蒸気を用いた熱酸化処理によって形成され、
前記(g)工程では、前記第1絶縁膜は、酸素ガスを用いた熱酸化処理によって形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板上に形成された第1絶縁膜の厚さは、前記半導体基板上に形成されていた前記ゲート絶縁膜の厚さよりも薄い、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程では、前記ゲート絶縁膜に対して異方性エッチング処理が施された後、前記ゲート絶縁膜に対して等方性エッチング処理が施される、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(i)工程では、砒素およびリンの両方をイオン注入することで、前記第2不純物領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
前記境界は、前記半導体基板の上面から300nm以上、500nm以下の位置に位置する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成されたトレンチと、
前記トレンチの内部に形成されたゲート絶縁膜と、
前記トレンチの内部を埋め込むように、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
その底部が前記トレンチの底部よりも浅くなるように、前記半導体基板に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の第1不純物領域と、
前記第1不純物領域に形成された前記第1導電型の第2不純物領域と、
を備え、
前記第1不純物領域と前記第2不純物領域との境界よりも上方における前記ゲート電極と前記第2不純物領域との間の第1距離は、前記境界よりも下方における前記ゲート電極と前記第1不純物領域との間の第2距離よりも広く、
前記第1距離は、前記ゲート電極の上面に近くなるに連れて広くなり、
前記ゲート電極の上面の位置における前記第1距離と、前記第2距離との差は、30nm以上、100nm以下である、半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第2不純物領域は、砒素およびリンの両方を含んで構成されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記境界は、前記半導体基板の上面から300nm以上、500nm以下の位置に位置する、半導体装置。
【請求項11】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記半導体基板上、前記トレンチの側面と前記ゲート絶縁膜との間に形成された第1絶縁膜を更に備え、
前記境界は、前記トレンチの側面と前記ゲート絶縁膜との間に形成されている前記第1絶縁膜よりも深い位置に位置する、半導体装置。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置において、
前記第1絶縁膜は、前記ゲート電極の側面の一部にも形成され、
前記境界は、前記ゲート電極の側面の一部に形成されている前記第1絶縁膜よりも深い位置に位置する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、トレンチの内部にゲート電極を備えた半導体装置と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
オン抵抗の低いIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として、トレンチゲート型のIGBTが広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、GGEE構造のIGBTが開示されている。このようなIGBTでは、n型の半導体基板にトレンチが形成され、トレンチの内部には、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれている。また、半導体基板にはp型のベース領域が形成され、ベース領域の上部にはn型のエミッタ領域が形成されている。ベース領域およびエミッタ領域は、半導体基板上にゲート絶縁膜とは別の絶縁膜を形成した状態で、イオン注入を行うことで形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-140885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、トレンチの内部および半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に多結晶シリコン膜を堆積し、多結晶シリコン膜に対してドライエッチング処理を行うことで、半導体基板上の多結晶シリコン膜が除去される共に、トレンチの内部に多結晶シリコン膜が埋め込まれることが行われている。半導体基板にイオン注入を行う際には、半導体基板へのダメージを低減するために、半導体基板上のゲート絶縁膜をスルー膜として利用する。
【0006】
しかしながら、ゲート絶縁膜の厚さは比較的厚いので、ゲート絶縁膜の形成時、および、多結晶シリコン膜のドライエッチング処理時に、ゲート絶縁膜の厚さにバラつきが生じ易い。それ故、半導体基板上のゲート絶縁膜を除去し、再酸化処理を施すことで、新たに別の酸化シリコン膜を形成する。この酸化シリコン膜をスルー膜としてイオン注入を行うことで、ベース領域およびエミッタ領域を形成することが行われている。なお、再酸化処理は、酸素ガスを用いた熱酸化処理であり、所謂ドライ酸化処理である。
【0007】
ここで、本願発明者らの検討によって、再酸化処理を行うと、界面準位が増加する上に、ゲート絶縁膜中に水素イオンが形成し、PBTI(Positive Bias Temperature Instability)が劣化するということが判った。PBTIが劣化すると、時間の経過と共に、閾値電圧の変動が生じるという不具合が発生する。すなわち、半導体装置の信頼性が低下する。
【0008】
本願の主な目的は、PBTIの劣化を抑制することで、半導体装置の信頼性を向上させることにある。その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態における半導体装置の製造方法は、(a)第1導電型の半導体基板を用意する工程、(b)前記(a)工程後、前記半導体基板に、トレンチを形成する工程、(c)前記(b)工程後、前記トレンチの内部および前記半導体基板上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、(d)前記(c)工程後、前記トレンチの内部を埋め込むように、前記ゲート絶縁膜上に、第1導電性膜を形成する工程、(e)前記(d)工程後、前記トレンチの外部に形成されている前記第1導電性膜を除去することで、前記トレンチの内部に、前記第1導電性膜からなるゲート電極を形成する工程、(f)前記(e)工程後、前記半導体基板上に形成されている前記ゲート絶縁膜を除去する工程、(g)前記(f)工程後、前記半導体基板上に、第1絶縁膜を形成する工程、(h)前記(g)工程後、その底部が前記トレンチの底部よりも浅くなるように、前記半導体基板に、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の第1不純物領域を形成する工程、(i)前記(h)工程後、前記第1不純物領域に、前記第1導電型の第2不純物領域を形成する工程、(j)前記(i)工程後、前記半導体基板に対して水素アニール処理を施す工程、を備える。ここで、前記(g)工程では、前記第1絶縁膜は、前記トレンチの側面と前記ゲート絶縁膜との間にも形成され、前記第1不純物領域と前記第2不純物領域との境界は、前記トレンチの側面と前記ゲート絶縁膜との間に形成されている前記第1絶縁膜よりも深い位置に位置する。
【0011】
一実施の形態における半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板に形成されたトレンチと、前記トレンチの内部に形成されたゲート絶縁膜と、前記トレンチの内部を埋め込むように、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、その底部が前記トレンチの底部よりも浅くなるように、前記半導体基板に形成され、且つ、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型の第1不純物領域と、前記第1不純物領域に形成された前記第1導電型の第2不純物領域と、を備える。ここで、前記第1不純物領域と前記第2不純物領域との境界よりも上方における前記ゲート電極と前記第2不純物領域との間の第1距離は、前記境界よりも下方における前記ゲート電極と前記第1不純物領域との間の第2距離よりも広く、前記第1距離は、前記ゲート電極の上面に近くなるに連れて広くなり、前記ゲート電極の上面の位置における前記第1距離と、前記第2距離との差は、30nm以上、100nm以下である。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1における半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1における半導体装置を示す断面図である。
図3】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図4図3に続く製造工程を示す断面図である。
図5図4に続く製造工程を示す断面図である。
図6図5に続く製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く製造工程を示す断面図である。
図9図8に続く製造工程を示す断面図である。
図10図9に続く製造工程を示す断面図である。
図11図10に続く製造工程を示す断面図である。
図12】検討例におけるPBTI劣化を分析した結果を示すグラフである。
図13】検討例におけるPBTI劣化のモデルを示す模式図である。
図14図6および図7の製造工程の詳細を示す拡大断面図である。
図15図12に続く製造工程を示す拡大断面図である。
図16図13に続く製造工程を示す拡大断面図である。
図17図14に続く製造工程を示す拡大断面図である。
図18】各構成の深さ関係を示す拡大断面図である。
図19】各構成の深さ関係を示す拡大断面図である。
図20】実施の形態1におけるPBTI改善のモデルを示す模式図である。
図21】検討例および実施の形態1の閾値電圧の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、本願において、例えば「1~10μm」のような数値範囲を表記した場合、それは、「1μm以上、10μm以下」であることを意味する。他の数値および他の単位についても同様である。
【0016】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造>
以下に図1および図2を用いて、実施の形態1における半導体装置100の構造について説明する。実施の形態1の主な特徴は、トレンチTRの内部に埋め込まれたゲート電極GE1、GE2の上部付近の構造と、その製造方法とにある。そのような特徴は、図12図20を用いて後で詳細に説明する。その前に、半導体装置100の全体的な構造および製造方法について説明する。
【0017】
図1は、半導体装置100である半導体チップを示す平面図である。図1に示されるように、半導体装置100の大部分はエミッタ電極EEで覆われている。エミッタ電極EEの外周には、ゲート配線GWが形成されている。エミッタ電極EEのうち破線で囲まれた領域は、エミッタパッドEPであり、ゲート配線GWのうち破線で囲まれた領域は、ゲートパッドGPである。
【0018】
エミッタ電極EEおよびゲート配線GWの各々の一部は、図示しない保護膜によって覆われている。この保護膜から露出している領域が、エミッタパッドEPおよびゲートパッドGPになっている。エミッタパッドEP上およびゲートパッドGP上に、ワイヤボンディングまたはクリップ(銅板)などの外部接続用端子が接続されることで、半導体装置100が、他の半導体チップまたは配線基板などと電気的に接続される。
【0019】
図2は、図1に示されるセル領域1Aに対応した断面図である。セル領域1Aには、例えばIGBTのような半導体素子が形成される。図2に示されるIGBTは、GGEE構造のIGBTであり、IE(Injection Enhancement)効果を利用可能としたIE型のIGBTである。
【0020】
IE効果とは、IGBTがオン状態の際にエミッタ電極EE側から正孔が排出され難くすることで、ドリフト領域NVに蓄積される電荷の濃度を高める技術である。このため、半導体装置100は、IGBTの主動作を行うためのアクティブセルACと、アクティブセルAC以外のインアクティブセルIACとを有する。アクティブセルACのゲート電極GE1は、ゲート配線GWに電気的に接続され、IGBTの動作時にゲート電位が供給される。インアクティブセルIACのゲート電極GE2は、エミッタ電極EEに電気的に接続され、IGBTの動作時にエミッタ電位が供給される。
【0021】
半導体装置100は、低濃度のn型のドリフト領域NVを有する半導体基板SUBを備える。ここでは、n型の半導体基板SUB自体がドリフト領域NVを構成している。なお、ドリフト領域NVは、n型のシリコン基板と、シリコン基板上にエピタキシャル成長法によって燐(P)を導入しながら成長させた半導体層との積層体であってもよい。本願では、そのような積層体も半導体基板SUBであるとして説明する。
【0022】
半導体基板SUBの裏面側において、半導体基板SUBには、n型のフィールドストップ領域(不純物領域)NSが形成されている。フィールドストップ領域NSは、IGBTのターンオフ時に、半導体基板SUBの表面TS側のpn接合から延びる空乏層が、p型のコレクタ領域PCに達することを抑制するために設けられている。
【0023】
半導体基板SUBの裏面側において、半導体基板SUBには、p型のコレクタ領域(半導体領域)PCが形成されている。コレクタ領域PCは、フィールドストップ領域NSの下方に位置している。
【0024】
半導体基板SUBの裏面上には、コレクタ電極CEが形成されている。コレクタ電極CEは、コレクタ領域PCに電気的に接続され、これらの領域にコレクタ電位を供給する。コレクタ電極CEは、AlSi膜、Ti膜、NiV膜およびAu膜などの金属膜からなる。
【0025】
半導体基板SUBの表面側において、半導体基板SUBには、トレンチTRが形成されている。トレンチTRは、後述するエミッタ領域NEおよびベース領域PBを貫通し、且つ、半導体基板SUBに達している。トレンチTRの深さは、例えば2~3μmである。
【0026】
トレンチTRの内部には、ゲート絶縁膜GIが形成されている。ゲート電極GE1、GE2は、トレンチTRの内部を埋め込むように、ゲート絶縁膜GI上に形成されている。ゲート絶縁膜GIは、例えば酸化シリコン膜であり、ゲート電極GE1、GE2は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0027】
アクティブセルACにおいて、一対のゲート電極GE1の間の半導体基板SUBには、ホールバリア領域(不純物領域)NHBが形成されている。ホールバリア領域NHBには、p型のベース領域(不純物領域)PBが形成されている。p型のベース領域PBには、n型のエミッタ領域(不純物領域)NEが形成されている。ベース領域PBの底部は、トレンチTRの底部よりも浅く、エミッタ領域NEの底部は、ベース領域PBの底部よりも浅い。
【0028】
インアクティブセルIACにおいて、一対のゲート電極GE2の間の半導体基板SUBには、ホールバリア領域NHBが形成されている。また、ゲート電極GE1とゲート電極GE2との間の半導体基板SUBには、p型のフローティング領域(不純物領域)PFが形成されている。フローティング領域PFには、p型のベース領域PBが形成されている。フローティング領域PFは、高耐圧特性を高めるために、トレンチTRの底部よりも深い位置にまで形成されていることが好ましく、トレンチTRの底部を覆うように形成されていることが、より好ましい。
【0029】
半導体基板SUB上には、層間絶縁膜ILが形成されている。層間絶縁膜ILは、半導体基板SUB上に形成された絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1上に形成された絶縁膜IF2とを含む。絶縁膜IF1は、酸化シリコン膜である。絶縁膜IF2は、ボロンおよびリンを含む酸化シリコン膜であり、BPSG(Boro Phospho Silicate Glass)膜である。
【0030】
アクティブセルACにおいて、コンタクトホールCHは、層間絶縁膜ILおよびエミッタ領域NEを貫通し、且つ、ベース領域PBに達している。コンタクトホールCHは、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに接するように形成されている。プラグPGは、コンタクトホールCHの内部を埋め込み、且つ、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに電気的に接続されている。インアクティブセルIACにおけるコンタクトホールCHおよびプラグPGの構成も、エミッタ領域NEが無い点を除き、アクティブセルACとほぼ同様である。なお、図示はしないが、コンタクトホールCHおよびプラグPGは、ゲート電極GE1、GE2の一部上にも形成されている。
【0031】
コンタクトホールCHは、第1コンタクトホールCH1と、第1コンタクトホールCH1と連通する第2コンタクトホールCH2とからなる。第1コンタクトホールCH1は、半導体基板SUBに形成され、エミッタ領域NEを貫通し、ベース領域PBに達している。第2コンタクトホールCH2は、絶縁膜IF1および絶縁膜IF2に形成されている。
【0032】
第2コンタクトホールCH2の開口幅は、第1コンタクトホールCH1の開口幅よりも大きい。このため、プラグPGを形成する際に、アスペクト比が改善されるので、コンタクトホールCHの内部にプラグPGを良好に埋め込み易くなる。また、第2コンタクトホールCH2の開口幅が大きいことで、エミッタ領域NEの上面も露出している。従って、プラグPGは、コンタクトホールCHの内部において、エミッタ領域NEの側面に接触するだけでなく、エミッタ領域NEの上面にも接触する。これにより、プラグPGとエミッタ領域NEとの接触抵抗を低減することができる。
【0033】
プラグPGは、バリアメタル膜と導電性膜との積層膜からなる。上記バリアメタル膜は、例えば、チタン膜と、上記チタン膜上に形成された窒化チタン膜との積層膜からなる。上記導電性膜は、例えばタングステン膜からなる。
【0034】
第1コンタクトホールCH1の底部の周囲には、p型の高濃度拡散領域(不純物領域)PRが形成されている。高濃度拡散領域PRは、プラグPGとの接触抵抗を低くするため、および、ラッチアップを防止するために設けられている。
【0035】
なお、ドリフト領域NVの不純物濃度は、1×1013~2×1014cm-3である。フィールドストップ領域NSの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高く、5×1016~5×1017cm-3である。ホールバリア領域NHBの不純物濃度は、ドリフト領域NVの不純物濃度よりも高く、1×1016~1×1017cm-3である。エミッタ領域NEの不純物濃度は、ホールバリア領域NHBの不純物濃度よりも高く、1×1018~1×1021cm-3である。コレクタ領域PCの不純物濃度は、1×1017~1×1021cm-3である。フローティング領域PFの不純物濃度は、1×1015~1×1016cm-3である。ベース領域PBの不純物濃度は、フローティング領域PFの不純物濃度よりも高く、1×1016~1×1018cm-3である。高濃度拡散領域PRの不純物濃度は、ベース領域PBの不純物濃度よりも高く、1×1018~1×1021cm-3である。
【0036】
層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEが形成されている。エミッタ電極EEは、プラグPGを介して、エミッタ領域NE、ベース領域PB、高濃度拡散領域PRおよびゲート電極GE2に電気的に接続され、これらの領域にエミッタ電位を供給する。なお、ここでは図示はしないが、層間絶縁膜IL上には、エミッタ電極EEと同じ工程で形成されたゲート配線GWも形成されている。ゲート配線GWは、プラグPGを介して、ゲート電極GE1に電気的に接続され、ゲート電極GE1にゲート電位を供給する。このようなエミッタ電極EEおよびゲート配線GWは、例えば、TiW膜と、上記TiW膜上に形成されたアルミニウム膜とからなる。上記アルミニウム膜は、エミッタ電極EEおよびゲート配線の主導体膜であり、上記TiW膜よりも十分に厚い。
【0037】
<半導体装置の製造方法>
以下に図3図11を用いて、実施の形態1における半導体装置100の製造方法について説明する。
【0038】
図3に示されるように、まず、n型のドリフト領域NVを有する半導体基板SUBを用意する。次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、半導体基板SUBに、n型のホールバリア領域NHBおよびp型のフローティング領域PFを形成する。
【0039】
図4に示されるように、半導体基板SUBにトレンチTRを形成する。まず、半導体基板SUB上に、例えば酸化シリコン膜からなる絶縁膜を形成し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理によって上記絶縁膜をパターニングすることで、ハードマスクを形成する。次に、上記ハードマスクをマスクとして半導体基板SUBに対して異方性エッチング処理を行うことで、半導体基板SUBにトレンチTRを形成する。その後、ウェットエッチング処理などによって、上記ハードマスクを除去する。
【0040】
図5に示されるように、まず、半導体基板SUBに対して、例えば1000~1200℃の熱処理を施すことで、ホールバリア領域NHBおよびフローティング領域PFに含まれる不純物を拡散させる。この熱処理によって、ホールバリア領域NHBは、トレンチTRの底部付近にまで拡散し、フローティング領域PFは、トレンチTRの底部を覆うように、トレンチTRの底部よりも深い位置まで拡散する。
【0041】
次に、トレンチTRの内部および半導体基板SUB上に、ゲート絶縁膜GIを形成する。ゲート絶縁膜GIの形成は、950℃の雰囲気中で、水蒸気を用いた熱酸化処理(ウェット酸化処理)によって行われる。ゲート絶縁膜GIの厚さは、例えば1000Åである。次に、トレンチTRの内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、ゲート絶縁膜GI上に、n型の不純物が導入された多結晶シリコン膜のような導電性膜PLを形成する。
【0042】
図6に示されるように、まず、ドライエッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されていた導電性膜PLを除去する。トレンチTRの内部に形成されていた導電性膜PLが、ゲート電極GE1、GE2として残される。次に、異方性エッチング処理および等方性エッチング処理によって、トレンチTRの外部に形成されていたゲート絶縁膜GIを除去する。
【0043】
図7に示されるように、半導体基板SUB上に、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1の形成は、950℃の雰囲気中で、酸素ガスを用いた熱酸化処理(ドライ酸化処理)によって行われる。絶縁膜IF1の厚さは、例えば200~500Åである。
【0044】
次に、絶縁膜IF1をスルー膜として、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、半導体基板SUB(フローティング領域PFおよびホールバリア領域NHB)に、p型のベース領域PBを形成する。次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、アクティブセルACのベース領域PBに、n型のエミッタ領域NEを形成する。その後、例えば950℃、30秒の熱処理を行い、各不純物領域に含まれる不純物を活性化させる。
【0045】
図8に示されるように、例えばCVD法によって、絶縁膜IF1上に絶縁膜IF2を形成する。絶縁膜IF2は、ボロンおよびリンを含む酸化シリコン膜であり、BPSG膜である。絶縁膜IF1および絶縁膜IF2は、それぞれ層間絶縁膜ILの一部を構成する。絶縁膜IF2の厚さは、絶縁膜IF1の厚さよりも厚く、例えば1000nmである。次に、絶縁膜IF2に対して、例えば950℃、30分の熱処理(リフロー処理)を行う。このリフロー処理によって、絶縁膜IF2が軟化し、絶縁膜IF2の上面が平坦化される。
【0046】
図9に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理によって、絶縁膜IF2、絶縁膜IF1、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに、第1コンタクトホールCH1を形成する。第1コンタクトホールCH1の底部は、ベース領域PBに位置している。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、第1コンタクトホールCH1の底部において、p型の高濃度拡散領域PRを形成する。その後、各不純物領域を活性化させるための熱処理を行なう。高濃度拡散領域PRのイオン注入は、2回に分けて行われる。1回目のイオン注入は、ボロンを用いて行われ、エネルギーを60keVとし、ドーズ量を3×1015cmとした条件で行われる。2回目のイオン注入は、二フッ化ボロンを用いて行われ、エネルギーを80keVとし、ドーズ量を5×1015cmとした条件で行われる。その後、例えば950℃、30秒の熱処理を行い、各不純物領域に含まれる不純物を活性化させる。
【0048】
図10に示されるように、絶縁膜IF2および絶縁膜IF1に対して等方性エッチング処理を行うことで、絶縁膜IF2および絶縁膜IF1を後退させる。この等方性エッチング処理には、例えばフッ酸を含む水溶液が使用される。これにより、絶縁膜IF2および絶縁膜IF1に、第2コンタクトホールCH2を形成する。第2コンタクトホールCH2の開口幅は、第1コンタクトホールCH1の開口幅よりも大きくなる。なお、等方性エッチング処理による絶縁膜IF2および絶縁膜IF1の後退量は、130nm程度である。
【0049】
図11に示されるように、コンタクトホールCHの内部にプラグPGを形成する。まず、例えばスパッタリング法によってコンタクトホールCHの内部および層間絶縁膜IL上にチタン膜を形成し、例えばスパッタリング法によって上記チタン膜上に窒化チタン膜を形成することで、バリアメタル膜を形成する。次に、コンタクトホールCHの内部を埋め込むように、例えばCVD法によって、バリアメタル膜上に、例えばタングステン膜を形成する。次に、ドライエッチング処理によって、コンタクトホールCHの外部に形成されているタングステン膜およびバリアメタル膜を除去する。これにより、コンタクトホールCHの内部に埋め込まれ、エミッタ領域NEおよびベース領域PBに電気的に接続されるプラグPGを形成する。
【0050】
次に、層間絶縁膜IL上に、エミッタ電極EEを形成する。まず、例えばスパッタリング法によって、層間絶縁膜IL上にTiW膜を形成し、例えばスパッタリング法によって、上記TiW膜上にアルミニウム膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理によって、上記TiW膜および上記アルミニウム膜をパターニングすることで、エミッタ電極EEを形成する。なお、ここでは図示していないが、エミッタ電極EEを形成する工程と同じ工程で、ゲート配線GWも形成される。
【0051】
上記スパッタリング法による金属膜の成膜後に、メタルアロイを形成させるために、水素アニール処理を行う。水素アニール処理は、例えば400~600℃、30分の水素雰囲気中で行われる。
【0052】
その後、半導体基板SUBの裏面側に、フィールドストップ領域NS、コレクタ領域PCおよびコレクタ電極CEを形成することで、図2の構造が得られる。
【0053】
まず、半導体基板SUBの裏面側からイオン注入を行うことで、n型のフィールドストップ領域NSおよびp型のコレクタ領域PCを形成する。フィールドストップ領域NSのイオン注入は、燐を用いて行われ、エネルギーを700~1600keVとし、ドーズ量を2×1012cmとした条件で行われる。コレクタ領域PCのイオン注入は、ボロンを用いて行われ、エネルギーを60keVとし、ドーズ量を2×1013cmとした条件で行われる。また、これらのイオン注入の後に、レーザアニールを行うことで、フィールドストップ領域NSおよびコレクタ領域PCに含まれる不純物を活性化させる。
【0054】
次に、半導体基板SUBの裏面側で露出しているコレクタ領域PC上に、例えばスパッタリング法によって、AlSi膜、Ti膜、NiV膜およびAu膜などの金属膜を形成する。この金属膜が、コレクタ電極CEとなる。
【0055】
以上により、実施の形態1における半導体装置100が製造される。
【0056】
<本願発明者らによる検討>
上述のように、ゲート絶縁膜GIの厚さは比較的厚いので、ゲート絶縁膜GIの形成時、および、導電性膜PLのドライエッチング処理時に、ゲート絶縁膜GIの厚さにバラつきが生じ易い。それ故、均一で薄い厚さの絶縁膜IF1を形成し直し、絶縁膜IF1をイオン注入のスルー膜として適用している。
【0057】
また、ゲート絶縁膜GIの形成にはウェット酸化処理を用い、絶縁膜IF1の形成にはドライ酸化処理を用いている。ウェット酸化処理では、水蒸気の溶解度が大きく、HO分子の拡散速度が大きいので、ドライ酸化処理よりも酸化レートが早くなる。ドライ酸化処理では酸化レートが遅いが、均一な厚さの膜を形成するという点において、絶縁膜IF1の形成には、ドライ酸化処理を用いることが適している。
【0058】
本願発明者らの検討によれば、ドライ酸化処理を行うと、界面準位が増加し、水素イオンが形成され、PBTIが劣化するということが判った。元々、界面準位は、界面にあるSiH接合が切断される状態である。ウェット酸化処理はHO雰囲気で行われるので、界面準位はHOの中の水素と再接合し、SiH接合が再生され易くなる。そのため、ウェット酸化処理は、界面準位を低減させ易いと推測される。一方で、ドライ酸化処理は酸素ガス雰囲気で行われるので、SiH接合が再生され難い。そのため、ドライ酸化処理は、界面準位を低減させ難いと推測される。
【0059】
また、水素アニール処理は、メタルアロイを形成させるために使用されているが、再酸化処理(ドライ酸化処理)との組み合わせによって、水素イオンを形成させると推測される。
【0060】
図12は、検討例におけるPBTI劣化を分析した結果を示すグラフである。図13は、検討例におけるPBTI劣化のモデルを示す模式図である。
【0061】
図12に示される従来技術(〇)は、ゲート絶縁膜GIの除去とドライ酸化処理とを行わず、ゲート絶縁膜GIをイオン注入のスルー膜として用いたものである。なお、検討例のエミッタ領域NEは、実施の形態1のエミッタ領域NEよりも浅く形成されている。検討例のエミッタ領域NEを形成するためのイオン注入は、砒素を用いて行われ、エネルギーを100keVとし、ドーズ量を1×1015~5×1015cmとした条件で行われている。
【0062】
図12に示されるように、検討例では、PBTI劣化(●)によって、時間の経過と共に、閾値電圧が変動している。本願発明者らは、成分分離法を用いて、PBTI劣化(●)には、界面準位成分(▲)と、ゲート絶縁膜中の水素イオンによるトラップ成分(■)とが含まれることを明らかにした。
【0063】
PBTIストレスによって拡散してきた水素イオンが界面準位を終端し、閾値電圧が減少する。一方で、正電荷である水素イオンがゲート絶縁膜GIとベース領域PBとの界面に近づくと、水素イオンが膜中トラップとして機能し、閾値電圧が減少すると推測される。すなわち、界面準位がある箇所および水素イオンが分布している箇所をチャネル領域として使用すると、閾値電圧の変動が発生することになる。
【0064】
<実施の形態1の主な特徴>
以下に図14図21を用いて、実施の形態1の主な特徴について説明する。図14図19は、図6および図7で説明した製造工程の詳細を示す拡大断面図である。
【0065】
図14は、ゲート絶縁膜GIおよび導電性膜PLを形成した後、トレンチTRの外部に形成されていた導電性膜PLを除去し、ゲート電極GE1を形成した状態を示している。なお、ここではゲート電極GE1の周辺について説明するが、ゲート電極GE2の周辺でも、エミッタ領域NEの形成を除いて同様の工程が行われる。
【0066】
図15に示されるように、異方性エッチング処理を施すことで、ゲート絶縁膜GIの厚さを薄くする。半導体基板SUB上ではエッチングの進行が速く、ゲート絶縁膜GIが薄くなり易いが、トレンチTRの内部のゲート絶縁膜GIは、あまりエッチングされない。ここで、異方性エッチング処理によって半導体基板SUB上のゲート絶縁膜GIを全て除去しようとすると、オーバーエッチング時に、半導体基板SUB中にエッチングによるダメージが発生する。そこで、ゲート絶縁膜GIの大部分を異方性エッチング処理によって除去するが、残存したゲート絶縁膜GIを等方性エッチング処理によって除去する。
【0067】
図16に示されるように、等方性エッチング処理を施すことで、トレンチTRの外部に形成されていたゲート絶縁膜GIを除去する。この際、ゲート電極GE1の上面側からもエッチングが進行するので、トレンチTRの内部でゲート電極GE1の側面に接しているゲート絶縁膜GIの一部も除去される。これにより、ゲート電極GE1の側面の一部が露出する。すなわち、ゲート電極GE1の上部が露出する。
【0068】
図17に示されるように、半導体基板SUB上に、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1の形成は、950℃の雰囲気中で、酸素ガスを用いた熱酸化処理(ドライ酸化処理)によって行われる。また、半導体基板SUB上に形成される絶縁膜IF1の厚さは、図14で半導体基板SUB上に形成されていたゲート絶縁膜GIの厚さよりも薄く、ゲート絶縁膜GIの厚さの半分以下であり、例えば200~500Åである。
【0069】
上記ドライ酸化処理によって、絶縁膜IF1は、バーズビークのように、トレンチTRの側面とゲート絶縁膜GIとの間にも形成される。また、露出しているゲート電極GE1の側面の一部にも、絶縁膜IF1が形成される。すなわち、ゲート電極GE1の上部が酸化され、ゲート電極GE1の上面とゲート電極GE1の側面とで構成される角部が酸化される。なお、ゲート絶縁膜GIと絶縁膜IF1とは一体化するが、ここでは説明を判り易くするために、これらを分けて図示している。
【0070】
次に、図18に示されるように、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法によって、半導体基板SUBにベース領域PBを形成し、ベース領域PBにエミッタ領域NEを形成する。これらのイオン注入は、絶縁膜IF1をスルー膜として行われる。ベース領域PBのイオン注入は、ボロンを用いて行われ、エネルギーを110keVとし、ドーズ量を1×1013~2×1013cmとした条件で行われる。その後、例えば1000℃、100~200分の熱処理を行い、ベース領域PBに含まれる不純物を拡散させる。
【0071】
エミッタ領域NEのイオン注入は、2回に分けて行われる。1回目のイオン注入は、砒素を用いて行われ、エネルギーを100keVとし、ドーズ量を1×1015~5×1015cmとした条件で行われる。2回目のイオン注入は、燐を用いて行われ、エネルギーを70keVとし、ドーズ量を1×1014~1×1015cmとした条件で行われる。
【0072】
検討例では、エミッタ領域NEのイオン注入は、1回で行われ、砒素を用いて行われていた。実施の形態1では、砒素およびリンの両方をイオン注入することで、エミッタ領域NEを形成している。このため、実施の形態1のエミッタ領域NEは、検討例のエミッタ領域NEよりも深く形成される。例えば、ベース領域PBとエミッタ領域NEとの境界10は、半導体基板SUBの上面から300nm以上、500nm以下の位置に位置している。
【0073】
符号D1は、トレンチTRの側面とゲート絶縁膜GIとの間に形成されている絶縁膜IF1の深さ位置を示している。符号D2は、ゲート電極GE1の側面の一部に形成されている絶縁膜IF1の深さ位置を示している。境界10は、これらの絶縁膜IF1の深さD1、D2よりも深い位置に位置している。また、図19に示されるように、境界10は、図16で露出したゲート電極GE1の側面の一部(深さD3)よりも深い位置に位置している。なお、深さD3は、深さD2とほぼ同じである。
【0074】
絶縁膜IF1よりも境界10が深い位置に位置することを、例えば以下のように言い換えることもできる。図18および図19に示されるように、ドライ酸化処理によって、境界10よりも上方におけるゲート電極GE1とエミッタ領域NEとの間の距離L1は、境界10よりも下方におけるゲート電極GE1とベース領域PBとの間の距離L2よりも広くなっている。また、距離L1は、ゲート電極GE1の上面に近くなるに連れて広くなる。言い換えれば、境界10よりも上方において、ゲート電極GE1の幅は、ゲート電極GE1の上面に近くなるに連れて狭くなる。ゲート電極GE1の上面の位置における距離L1と、距離L2との差は、30nm以上、100nm以下である。
【0075】
このように境界10の位置を深くしていることで、図20に示されるように、PBTI劣化によって閾値電圧の変動が発生し易い箇所をチャネル領域に使用せず、PBTI劣化の発生が少ない箇所をチャネル領域に使用できる。このため、半導体装置100の信頼性を向上できる。
【0076】
図21は、検討例および実施の形態1の閾値電圧の変動を示すグラフである。検討例(〇)では、時間の経過と共に閾値電圧の変動が起こっていたが、実施の形態1(●)では、このような変動が抑制されていることが判る。なお、図21に示される閾値電圧の変動は、図12で説明したような、界面準位成分と、ゲート絶縁膜中の水素イオンによるトラップ成分とを含んだものである。
【0077】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0078】
例えば、上記実施の形態では、セル領域1Aに形成されるデバイスとしてIGBTを例示したが、上記実施の形態で開示した技術は、IGBTに限られず、縦型のトレンチゲートを有するパワーMOSFETにも適用できる。
【符号の説明】
【0079】
10 境界
100 半導体装置
1A セル領域
AC アクティブセル
CE コレクタ電極
CH コンタクトホール
CH1 第1コンタクトホール
CH2 第2コンタクトホール
EE エミッタ電極
EP エミッタパッド
GE1、GE2 ゲート電極
GI ゲート絶縁膜
GP ゲートパッド
GW ゲート配線
IAC インアクティブセル
IF1、IF2 絶縁膜
IL 層間絶縁膜
NE エミッタ領域
NHB ホールバリア領域
NS フィールドストップ領域
NV ドリフト領域
PB ベース領域
PC コレクタ領域
PF フローティング領域
PG プラグ
PL 導電性膜
PR 高濃度拡散領域
SUB 半導体基板
TR トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21