(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089432
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】剥離シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20230621BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230621BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20230621BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230621BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20230621BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230621BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230621BHJP
【FI】
B32B7/06
B32B27/00 L
B32B27/38
C09D163/00
C09D133/04
C09D7/63
C08J7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203904
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 泰紀
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB24
4F006AB33
4F006AB34
4F006AB39
4F006AB66
4F006BA12
4F006CA08
4F100AK25
4F100AK25B
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4J038DA162
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4J038NA10
4J038PA01
4J038PB14
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】対象が状態変化する場合(例えば硬化する場合)であっても、状態変化前においては対象からの意図しない剥離を抑制し、状態変化後においては優れた剥離性を発揮する剥離シートを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、前記剥離剤層が、アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、エポキシ基を有するエポキシ基含有成分とを含有する剥離剤組成物から形成されており、前記エポキシ基含有成分のエポキシ当量が、600以上であり、前記剥離剤組成物中における前記エポキシ基含有成分の含有量が、10質量%以上、70質量%以下である剥離シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、
前記剥離剤層が、アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、エポキシ基を有するエポキシ基含有成分とを含有する剥離剤組成物から形成されており、
前記エポキシ基含有成分のエポキシ当量が、600以上であり、
前記剥離剤組成物中における前記エポキシ基含有成分の含有量が、10質量%以上、70質量%以下である
ことを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記剥離剤組成物が、ポリオルガノシロキサンを含有することを特徴とする請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記エポキシ基含有成分のエポキシ当量が、16000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記メラミン樹脂が、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記剥離剤組成物が、酸触媒を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、剥離シート(「工程フィルム」ということもある)は、例えば、紙、プラスチックフィルム、ポリエチレンラミネート紙等の基材と、基材上に設けられた剥離剤層とを有する。剥離剤層は、剥離剤組成物を基材上に塗布し、得られた塗膜を乾燥や硬化させることにより形成される。
【0003】
剥離シートは、例えば、粘着シート等が有する粘着剤層の保護用シート、樹脂シート作製用工程フィルム、セラミックグリーンシート成膜用工程フィルム、合成皮革製造用工程フィルム等として幅広く用いられている(例えば、特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/122984号
【特許文献2】特開2018-104661号公報
【特許文献3】特開2019-171617号公報
【特許文献4】特開2020-146890号公報
【特許文献5】特開2020-153022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、剥離シートの剥離剤層側の面(以下「剥離面」という場合がある。)に積層させる対象に依っては、当該対象の状態の変化等に起因して、当該対象から剥離シートを剥離し難くなる場合がある。
【0006】
例えば、剥離シートを、硬化性の接着剤から構成される接着剤層の保護のために使用する場合、当該接着剤層からの剥離シートの剥離を、当該接着剤層の硬化後に行うことがある。この場合における剥離は、硬化前の接着剤層から剥離する場合に比べて困難となることがある。
【0007】
硬化後の接着剤層からも良好に剥離させるためには、剥離性が非常に高い剥離シートを使用することも考えられるが、その場合、硬化前の接着剤層からの意図しない剥離シートの剥離が生じ易くなってしまう。このような意図しない剥離が生じると、接着剤層の保護といった本来の剥離シートの機能を十分に果たすことができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、対象が状態変化する場合(例えば硬化する場合)であっても、状態変化前においては対象からの意図しない剥離を抑制し、状態変化後においては優れた剥離性を発揮する剥離シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、前記剥離剤層が、アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、エポキシ基を有するエポキシ基含有成分とを含有する剥離剤組成物から形成されており、前記エポキシ基含有成分のエポキシ当量が、600以上であり、前記剥離剤組成物中における前記エポキシ基含有成分の含有量が、10質量%以上、70質量%以下であることを特徴とする剥離シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る剥離シートでは、剥離剤層が上述した剥離剤組成物から形成されていることにより、例えば硬化性の接着剤層を対象とする場合であっても、硬化前においては、対象からの意図しない剥離を抑制しつつも、硬化後において、優れた剥離性を発揮することができる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記剥離剤組成物が、ポリオルガノシロキサンを含有することが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)において、前記エポキシ基含有成分のエポキシ当量が、16000以下であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)において、前記メラミン樹脂が、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂であることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明1~4)において、前記剥離剤組成物が、酸触媒を含有することが好ましい(発明5)。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る剥離シートは、対象が状態変化する場合(例えば硬化する場合)であっても、状態変化前においては対象からの意図しない剥離を抑制し、状態変化後においては優れた剥離性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る剥離シートは、基材と、基材の一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えて構成される。
【0017】
本実施形態に係る剥離シートでは、剥離剤層が、アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、エポキシ基を有するエポキシ基含有成分とを含有する剥離剤組成物から形成されている。そして、当該エポキシ基含有成分のエポキシ当量は、600以上であるとともに、剥離剤組成物中における当該エポキシ基含有成分の含有量は、10質量%以上、70質量%以下となっている。
【0018】
本実施形態に係る剥離シートは、剥離剤層が上記剥離剤組成物により形成されていることにより、優れた剥離性を示す。特に、剥離剤組成物が上記エポキシ当量を示すエポキシ基含有成分を上記範囲で含有していることにより、状態変化前(例えば硬化前)の対象に対して過度な剥離性を発揮してしまうことが抑制され、剥離シートが対象から意図せず剥離してしまうことが良好に抑制される。その一方で、剥離剤組成物が上記アクリル樹脂およびメラミン樹脂を含有することで、状態変化後の対象に対する剥離性が向上し、当該対象から容易に剥離することが可能となる。
【0019】
1.基材
本実施形態に係る剥離シートにおける基材としては、特に制限はなく、従来公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば、プラスチックフィルム、紙等を使用することができる。上記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどのプラスチックフィルムが挙げられる。これらのプラスチックフィルムは、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等による塗工不良等を効果的に防止することができる。上記紙の例としては、上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等が挙げられる。
【0020】
また、この基材においては、その表面に設けられる剥離剤層との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
【0021】
基材の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましく、さらには20μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには125μm以下であることが好ましい。
【0022】
2.剥離剤層
2-1.各成分
本実施形態の剥離剤層は、上述の通り、アクリル樹脂と、メラミン樹脂と、エポキシ基を有するエポキシ基含有成分とを含有する剥離剤組成物から形成されている。当該剥離剤組成物は、その他の成分を含有してもよく、特に、剥離性の調整(特に、状態変化後の対象に対する剥離性の向上)の観点から、ポリオルガノシロキサンを含有することも好ましい。また、剥離剤組成物は、メラミン樹脂同士や、メラミン樹脂とその他の成分との反応を促進し、良好に硬化した剥離剤層を形成し易くなる観点から、酸触媒を含有することも好ましい。
【0023】
(1)アクリル樹脂
本実施形態におけるアクリル樹脂としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体を好適に使用することができる。当該(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、分子内にヒドロキシ基を有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)等が挙げられる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用することができ、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの中でも、所望の剥離性を発揮し易いという観点から、(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルの少なくとも一種を使用することが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、10質量%以上含有することが好ましく、25質量%以上含有することがより好ましく、特に30質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを95質量%以下含有することが好ましく、特に90質量%以下含有することが好ましく、さらには85質量%以下含有することが好ましい。これらの範囲であることで、本実施形態に係る剥離シートが所望の剥離性を発揮し易いものとなる。
【0026】
上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらの中でも、所望の剥離性を発揮し易いという観点から、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルを使用することが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ヒドロキシ基含有モノマーを、5質量%以上含有することが好ましく、特に10質量%以上含有することが好ましく、さらには15質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ヒドロキシ基含有モノマーを、90質量%以下含有することが好ましく、特に75質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。これらの範囲であることで、本実施形態に係る剥離シートが所望の剥離性を発揮し易いものとなる。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。かかるモノマーとしては、例えば、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)、N-アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン等の非反応性の窒素原子含有モノマー、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、特に2万以上であることが好ましく、さらに3万以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、100万以下であることが好ましく、特に50万以下であることが好ましく、さらには25万以下であることが好ましい。これらの範囲であることで、本実施形態に係る剥離シートが所望の剥離性を発揮し易いものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0031】
なお、本実施形態におけるアクリル樹脂((メタ)アクリル酸エステル重合体)は、所望の成分により変性されたものであってもよい。この場合の好適な例としては、ポリオルガノシロキサン変性アクリル樹脂が挙げられる。ポリオルガノシロキサン変性アクリル樹脂を使用することで、本実施形態に係る剥離シートの剥離性を所望の範囲に調整し易いものとなる。
【0032】
剥離剤組成物中におけるアクリル樹脂の含有量は、7.5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、65質量%以下であることが好ましく、特に60質量%以下であることが好ましく、さらには55質量%以下であることが好ましい。アクリル樹脂の含有量がこれらの範囲であることで、本実施形態に係る剥離シートが所望の剥離性を発揮し易いものとなる。
【0033】
(2)メラミン樹脂
一般的に、「メラミン樹脂」とは、複数種のメラミン化合物および/または当該メラミン化合物が縮合してできる多核体を含む混合物を意味する。本明細書においては、「メラミン樹脂」という語句は、上記混合物または1種のメラミン化合物の集合物を意味するものとする。
【0034】
本実施形態におけるメラミン樹脂は、具体的には、下記一般式(a)で示されるメラミン化合物、または2個以上の当該メラミン化合物が縮合してなる多核体を含有することが好ましい。
【化1】
【0035】
式(a)中、Xは、-H、-CH2-OH、または-CH2-O-Rを示し、Rは、炭素数1~8個のアルキル基を示すことが好ましい。当該炭素数は、1~6個であることが好ましく、特に1~3個であることが好ましい。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0036】
なお、メラミン化合物には、一般に、全てのXが-CH2-O-Rであるフルエーテル型、少なくとも1個のXが-CH2-OHであり且つ少なくとも1個のXがHであるイミノ・メチロール型、少なくとも1個のXが-CH2-OHであり且つHであるXが存在しないメチロール型、および、少なくとも1個のXがHであり且つ-CH2-OHであるXが存在しないイミノ型といった種類が存在する。本実施形態に係るメラミン樹脂では、これらのいずれの型のメラミン化合物に基づくものであってもよいものの、特に、所望の剥離性を発揮し易いという観点から、フルエーテル型メチル化メラミン樹脂であることが好ましい。
【0037】
本実施形態におけるメラミン樹脂の重量平均分子量は、150以上であることが好ましく、特に300以上であることが好ましく、さらには500以上であることが好ましい。当該重量平均分子量は、10000以下であることが好ましく、特に5000以下であることが好ましく、さらには4000以下であることが好ましい。上記重量平均分子量が150以上であることで、メラミン樹脂同士やメラミン樹脂とその他の成分との反応速度が安定し、より平滑な剥離面を形成することができる。また、重量平均分子量が10000以下であることで、剥離剤組成物の粘度が適度に低いものとなり、基材上に剥離剤組成物の塗布液を塗布し易くなる。
【0038】
剥離剤組成物中におけるメラミン樹脂の含有量は、4質量%以上であることが好ましく、特に6質量%以上であることが好ましく、さらには8質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。メラミン樹脂の含有量がこれらの範囲であることで、本実施形態に係る剥離シートが所望の剥離性を発揮し易いものとなる。
【0039】
(3)エポキシ基含有成分
本実施形態におけるエポキシ基含有成分としては、前述したエポキシ当量を満たすようにエポキシ基を有する成分であれば特に限定されず、特にエポキシ樹脂およびフェノキシ樹脂の少なくとも一種を使用することが好ましい。なお、本明細書において、「エポキシ樹脂」とは、硬化性を有する、すなわち、未硬化のエポキシ樹脂を云う。
【0040】
エポキシ樹脂としては公知のものを使用でき、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
フェノキシ樹脂としては公知のものを使用でき、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を含有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ピレン骨格を含有するフェノキシ樹脂、キサンテン骨格を含有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を含有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を含有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前述の通り、エポキシ基含有成分のエポキシ当量は、600以上であるが、状態変化(特に硬化)後の対象に対する剥離性をより向上させる観点からは、当該エポキシ当量は3000以上であることが好ましく、特に7000以上であることが好ましい。また、エポキシ基含有成分のエポキシ当量は、状態変化前の対象からの剥離シートの意図しない剥離を防ぐ観点からは、17500以下であることが好ましく、特に16000以下であることが好ましく、さらには15000以下であることが好ましい。
【0043】
また、前述の通り、剥離剤組成物中におけるエポキシ基含有成分の含有量は、10質量%以上、70質量%以下となっている。特に、状態変化前の対象からの剥離シートの意図しない剥離を防ぐ観点からは、剥離剤組成物中におけるエポキシ基含有成分の含有量は、15質量%以上であることが好ましく、特に20質量%以上であることが好ましい。また、状態変化後の対象に対する剥離性をより向上させる観点からは、当該含有量は、75質量%以下であることが好ましく、特に70質量%以下であることが好ましい。
【0044】
(4)ポリオルガノシロキサン
本実施形態における剥離剤組成物がポリオルガノシロキサンを含有する場合、当該ポリオルガノシロキサンは、剥離剤層に対して所望の剥離性を付与できるものである限り、特に限定されない。当該ポリオルガノシロキサンとしては、下記の一般式(b)で示されるケイ素含有化合物の重合体を好適に使用することができる。
【化2】
【0045】
式(b)中、mは1以上の整数である。また、式(b)中、R1~R8は、アルキル基、アリール基またはアルケニル基であることが好ましい。なお、R1~R8は同一であっても異なっていてもよい。また、R1およびR2が複数存在する場合、R1およびR2は、繰り返し単位間で同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
上記アルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも、上記アルキル基はメチル基であることが好ましい。
【0047】
上記アリール基としては、炭素数6~8のアリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基等が挙げられる。特に、本実施形態におけるポリオルガノシロキサンでは、所望の剥離性を達成し易いという観点から、上記アリール基としてフェニル基を有することが好ましい。
【0048】
上記アルケニル基の好ましい例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。これらの中でも、上記アルケニル基はビニル基であることが好ましい。
【0049】
また、上記式(b)においては、R1~R8の少なくとも1個が、有機基であってもよい。なお、本明細書における「有機基」とは、上述したアルキル基、アリール基およびアルケニル基を含まない基をいう。このような有機基の例としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン等の繰り返し構造をもつ有機基が挙げられる。このような有機基では、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン等のそれぞれの片末端の原子がポリオルガノシロキサンの末端または鎖中のケイ素原子に結合したものとなる。
【0050】
ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量は、100以上であることが好ましく、特に500以上であることが好ましく、さらには1000以上であることが好ましい。当該重量平均分子量が100以上であることで、ポリオルガノシロキサンが剥離剤層の剥離面における表面自由エネルギーを低下させ易いものとなり、所望の剥離性を達成し易いものとなる。また、当該重量平均分子量は、100万以下であることが好ましく、特に50万以下であることが好ましく、さらには10万以下であることが好ましい。当該重量平均分子量が100万以下であることで、ポリオルガノシロキサンとその他の成分との相溶性がより優れたものとなり、表面状態の優れた剥離剤層を形成し易いものとなる。
【0051】
剥離剤組成物がポリオルガノシロキサンを含有する場合、当該剥離剤組成物中におけるポリオルガノシロキサンの含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、特に0.3質量%以上であることが好ましく、さらには0.5質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましく、さらには10質量%以下であることが好ましい。ポリオルガノシロキサンの含有量がこれらの範囲であることで、本実施形態に係る剥離シートが所望の剥離性を発揮し易いものとなる。
【0052】
(5)酸触媒
本実施形態における剥離剤組成物が酸触媒を含有する場合、当該酸触媒は、メラミン樹脂同士の縮合反応や、メラミン樹脂とその他の成分との反応を促進できるものである限り、特に限定されない。
【0053】
上記酸触媒の例としては、スルホン酸系触媒およびリン酸系触媒少なくとも1種を使用することが好ましい。スルホン酸系触媒の例としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、これらの中でもp-トルエンスルホン酸を使用することが好ましい。リン酸系触媒の例としては、リン酸、亜リン酸等が挙げられる。上述した以外の酸触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸等を使用してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、p-トルエンスルホン酸を使用することが好ましい。
【0054】
剥離剤組成物が酸触媒を含有する場合、当該剥離剤組成物中における酸触媒の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、特に0.25質量%以上であることが好ましく、さらには0.5質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量%以下であることが好ましく、特に7.5質量%以下であることが好ましく、さらには5質量%以下であることが好ましい。酸触媒の含有量がこれらの範囲であることで、メラミン樹脂同士の縮合反応や、メラミン樹脂とその他の成分との反応が効果的に促進され、良好に硬化した剥離剤層を形成し易いものとなる。
【0055】
(6)その他の成分
剥離剤組成物は、前述した成分の他に、フィラー、分散剤、架橋剤、帯電防止剤、反応抑制剤、密着向上剤、滑り剤等を含有していてもよい。
【0056】
2-2.剥離剤組成物の製造
剥離剤組成物は、上述したアクリル樹脂と、メラミン樹脂と、エポキシ基含有成分と、所望により、ポリオルガノシロキサン、酸触媒またはその他の成分とを混合することで製造することができる。得られた剥離剤組成物は、必要に応じて希釈溶媒に希釈し、塗布液としてもよい。
【0057】
上記希釈溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、またはこれらの混合物などが用いられる。
【0058】
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、剥離剤組成物の濃度が3質量%以上、60質量%以下となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶媒等の添加は必要条件ではなく、剥離剤組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶媒を添加しなくてもよい。
【0059】
2-3.剥離剤層の厚さ
本実施形態に係る剥離シートでは、剥離剤層の厚さが、30nm以上であることが好ましく、特に70nm以上であることが好ましく、さらには100nm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、5μm以下であることが好ましく、特に3μm以下であることが好ましく、さらには1μm以下であることが好ましい。剥離剤層の厚さがこれらの範囲であることで、所望の剥離性を発揮し易いものとなる。
【0060】
3.剥離シートの物性等
本実施形態に係る剥離シートでは、(硬化前の)エポキシ系接着剤層に対する剥離力が、200mN/50mm以上であることが好ましく、特に300mN/50mm以上であることが好ましく、さらには400mN/50mm以上であることが好ましい。これらの範囲であることで、対象からの意図しない剥離シートの剥離を抑制し易いものとなる。一方、上記剥離力は、20000mN/50mm以下であることが好ましく、特に18000mN/50mm以下であることが好ましく、さらには15000mN/50mm以下であることが好ましい。これらの範囲であることで、状態変化前の対象から剥離シートを剥離する際にも、容易に剥離することが可能となる。なお、当該剥離力の測定方法は、後述する試験例に記載の通りである。
【0061】
一方、本実施形態に係る剥離シートでは、硬化後のエポキシ系接着剤層に対する剥離力が、500mN/50mm以下であることが好ましく、特に400mN/50mm以下であることが好ましく、さらには300mN/50mm以下であることが好ましい。これらの範囲であることで、状態変化後の対象から剥離シートを容易に剥離し易いものとなる。なお、上記剥離力の下限値は特に限定されず、例えば150mN/50mm以上であってよく、特に100mN/50mm以上であってよく、さらには50mN/50mm以上であってよい。なお、当該剥離力の測定方法は、後述する試験例に記載の通りである。
【0062】
上述した(硬化前の)エポキシ系接着剤層に対する剥離力および硬化後のエポキシ系接着剤層に対する剥離力に基づいて、以下の式に基づいて算出される剥離力低減率(%)は、50%以上であることが好ましく、特に60%以上であることが好ましく、さらには70%以上であることが好ましい。本実施形態に係る剥離シートによれば、前述した剥離剤組成物から剥離剤層が形成されていることにより、このような剥離力低減率を実現することができる。なお、上記剥離力低減率の上限値については特に限定されず、例えば100%未満であってよく、特に99%以下であってよく、さらには98%以下であってよい。
剥離力低減率(%)=(剥離力A-剥離力B)/剥離力A×100
式中、剥離力Aは、(硬化前の)エポキシ系接着剤層に対する剥離力を表し、剥離力Bは、硬化後のエポキシ系接着剤層に対する剥離力を表す。
【0063】
4.剥離シートの製造方法
本実施形態における剥離シートの製造方法は、前述した剥離剤組成物から剥離剤層を形成することを含む限り、特に制限されない。例えば、基材の一方の面に、前述した剥離剤組成物および所望により有機溶剤を含有する塗布液を塗工した後、得られた塗膜を乾燥および加熱することで剥離剤組成物を硬化させて剥離剤層を形成し、これにより剥離シートを得ることが好ましい。
【0064】
上述した塗工の具体的な方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0065】
上記有機溶剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびこれらの混合物等が用いられる。特に、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合液を使用することが好ましい。
【0066】
上記のように塗工した剥離剤組成物は、熱硬化させることが好ましい。この場合の加熱温度は70℃以上であることが好ましく、特に100℃以上であることが好ましい。また、当該加熱温度は220℃以下であることが好ましく、特に200℃以下であることが好ましい。熱硬化させる場合の加熱時間は、5秒以上であることが好ましく、特に15秒以上であることが好ましい。また、当該加熱時間は、120秒以下であることが好ましく、特に90秒以下であることが好ましい。
【0067】
5.剥離シートの使用方法
本実施形態に係る剥離シートは、例えば、粘着シート等の各種粘着体の保護シートとして使用可能である。また、各種樹脂シート、セラミックグリーンシート、合成皮革、各種複合材料等を作製するときの工程フィルムとしても使用可能である。さらに、電磁波シールドフィルム等を作製するときの転写シートとしても使用可能である。
【0068】
本実施形態に係る剥離シートを工程フィルムや転写シートとして使用する場合には、剥離シートの剥離層側の面に接着剤組成物や樹脂等を塗布等して形成した各種のシート材料を剥離シートから剥離する工程にて使用する。
【0069】
本実施形態に係る剥離シートは、前述の通り、対象が状態変化を生じた場合であっても良好な剥離が可能となる。そのため、本実施形態に係る剥離シートは、そのような状態変化を生じ得る対象に使用することが好適である。例えば、硬化性の接着剤や粘着剤に対して使用することが好適であり、特に、熱硬化性の接着剤や粘着剤に使用することが好適である。具体的な、対象の例としては、エポキシ系接着剤や、ウレタン系接着剤が挙げられる。
【0070】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0071】
例えば、剥離シートにおける基材における剥離剤層の反対側の面や、基材と剥離剤層との間には、帯電防止層等の他の層が設けられてもよい。
【実施例0072】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0073】
〔実施例1〕
(1)アクリル樹脂の作製
メタクリル酸n-ブチル60質量部と、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル30質量部と、メタクリル酸メチル10質量部とを溶液重合法により重合させて、アクリル系共重合体(アクリル樹脂)を得た。当該アクリル樹脂の重量平均分子量を、次の方法で測定したところ、50000であった。
【0074】
上述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0075】
(2)剥離剤組成物の調製
上記工程(1)で得られたアクリル樹脂28.0質量部(固形分換算,以下同じ)と、メラミン樹脂としてのフルエーテル型メチル化メラミン樹脂(へキサメトキシメチル化メラミン)12.0質量部と、ポリオルガノシロキサンとしてのフェニル変性ポリオルガノシロキサン(側鎖にフェニル基が導入されたポリオルガノシロキサン)1.20質量部と、エポキシ基含有成分としてのエポキシ樹脂(三菱化学社製,「YX7200B35」,フェノキシタイプ,特殊タイプ,エポキシ当量:9500)60.0質量部と、酸触媒としてのp-トルエンスルホン酸(信越化学社製,製品名「CAT-PS-80」)1.5質量部とを、アノンとメチルエチルケトンとの混合溶媒(質量比1:1)中で混合し、固形分濃度4.0質量%の剥離剤組成物の塗布液を得た。
【0076】
(3)剥離シートの作製
得られた剥離剤組成物の塗布液を、マイヤーバー#4を用いて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル社,製品名「PET50T-100」)の片面に塗布し、塗膜を形成した。当該塗膜を、150℃で1分間乾燥させることで硬化させ、厚さ100nmの剥離剤層を形成した。これにより、基材と剥離剤層とが積層されてなる剥離シートを得た。
【0077】
〔実施例2~7および比較例1~4〕
アクリル樹脂の配合量、メラミン樹脂の配合量、ポリオルガノシロキサンの配合量、ならびに、エポキシ基含有成分の種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして剥離シートを製造した。なお、比較例4では、エポキシ基含有成分を使用しなかった。
【0078】
〔試験例1〕(剥離力の測定)
実施例および比較例で得られた剥離シートを、40℃の高温環境下に7日間暴露した。そして、エポキシ系接着剤層を備えるシート(リンテック社製,製品名「LE4777H」)を幅50mmに裁断した上で、当該シートのエポキシ系接着剤層を、上記暴露後の剥離シートにおける剥離面に対して熱ラミネーター機(加熱条件:60℃,1m/min)を用いて転写した。続いて、転写されたエポキシ系接着剤層における剥離シートとは反対側の面に、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製,製品名「カプトン 100PI」)を貼付し、当該ポリイミドフィルムと、エポキシ系接着剤層と、剥離シートとからなる積層体を得た。
【0079】
続いて、上記積層体における剥離シート面側を、両面テープで平板に固定した。そして、剥離試験機(島津製作所社製、製品名「オートグラフAGS-20NX」)に地面に対し垂直に設置した。次いで、JIS K6854:1999に準拠して、180°方向に引張速度0.3m/分の速度で、剥離シートを残して、ポリイミドフィルムおよびエポキシ系接着剤層のみを剥離させ、その際の剥離力(mN/50mm)を測定した。その結果を、「常態」における剥離力として表1に示す。なお、剥離力が20000mN/50mm以上となった場合は、表1に「剥離不可」と記載した。
【0080】
また、上記と同様に作製した積層体を、熱プレス機を用いて熱プレスした(加熱条件:150℃,30min)。当該熱プレス後の積層体についても、上記と同様に剥離力(mN/50mm)を測定した。その結果を、「熱プレス後」における剥離力として、表1に示す。
【0081】
上述の通り測定された「常態」における剥離力および「熱プレス後」における剥離力に基づいて、以下の式から剥離力低減率(%)を算出した。その結果も表1に示す。
剥離力低減率(%)=(「常態」における剥離力-「熱プレス後」における剥離力)/「常態」における剥離力×100
【0082】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[エポキシ基含有成分]
YX7200B35:エポキシ樹脂(三菱化学社製,「YX7200B35」,フェノキシタイプ,特殊タイプ,エポキシ当量:9500)
1256B40:エポキシ樹脂(三菱化学社製,「1256B40」,フェノキシタイプ,ビスAタイプ,エポキシ当量:7350)
YX7553BH30:エポキシ樹脂(三菱化学社製,「YX7553BH30」,フェノキシタイプ,特殊タイプ,エポキシ当量:12500)
872X75:エポキシ樹脂(三菱化学社製,「872X75」,可撓性タイプ,エポキシ当量:650)
YX8034:エポキシ樹脂(三菱化学社製,「YX8034」,高純度水添エポキシ樹脂,エポキシ当量:270)
YX8000:エポキシ樹脂(三菱化学社製,「YX8000」,高純度水添エポキシ樹脂,エポキシ当量:205)
【0083】
【0084】
表1から明らかなように、実施例で得られた剥離シートは、「常態」において意図しない剥離を抑制しながらも、「熱プレス後」においては容易に剥離可能であるという優れた剥離性を発揮することがわかった。