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特開2023-89464食材用ミキサーに装着されたビーター(撹拌子)の構造、及び当該ミキサーの操作方法。
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  • 特開-食材用ミキサーに装着されたビーター(撹拌子)の構造、及び当該ミキサーの操作方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089464
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】食材用ミキサーに装着されたビーター(撹拌子)の構造、及び当該ミキサーの操作方法。
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/07 20060101AFI20230621BHJP
   A47J 43/044 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A47J43/07
A47J43/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203969
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】591150052
【氏名又は名称】株式会社愛工舎製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114568
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 恒之
(72)【発明者】
【氏名】戎嶋 康時
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053AA01
4B053BA12
4B053BA14
4B053BB01
4B053BE06
4B053BJ02
(57)【要約】
【課題】クッキーなどの生地を撹拌する際に、単一のビーター(撹拌子)のみを用いてミキシング処理工程を完了できるようなビーターの構造、及び当該ビーターを装着したミキサーの操作方法を提供する。
【解決手段】ビーターを構成する複数の撹拌枝について、当該ビーターの回転時に被撹拌食材に対向する一方の撹拌枝端面と、当該端面の背面に位置する他の一方の撹拌枝端面との形状が異なり、一方の撹拌枝端面はビーターの回転方向に対し直交する直線で構成され、他の一方の撹拌枝端面はビーターの回転方向に対し所定の曲率を有する曲線で構成されることを特徴とする。撹拌時にミキサーにおいて被撹拌食材の種別に応じ当該ビーターの回転方向を所定の向きに設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材用ミキサーに装着されるビーター(撹拌子)の構造であって、
前記ビーターを構成する複数の撹拌枝について、当該ビーターの回転時に被撹拌食材に対向する一方の撹拌枝端面と、当該端面の背面に位置する他の一方の撹拌枝端面との形状が異なることを特徴とするビーター(撹拌子)の構造。
【請求項2】
前記一方の撹拌枝端面はビーターの回転方向に対して直交する直線で構成され、前記他の一方の撹拌枝端面はビーターの回転方向に対して所定の曲率を有する曲線で構成されていること、を特徴とする請求項1に記載のビーター(撹拌子)の構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のビーター(撹拌子)を装着した食材用ミキサーの操作方法であって、被撹拌食材の種類に応じて当該ビーターの回転方向を切り替え、ビーターの回転時に被撹拌食材に対向する撹拌枝の端面を自在に選択し得る、ことを特徴とする食材用ミキサーの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、食材用ミキサーに装着されるビーター(撹拌子)の構造に関するものであり、より詳細には、クッキーやパウンド・ケーキなどの焼き菓子生地、或いはバターやクリームなど乳製品類の撹拌に用いられるビーターの構造、及び当該ビーターが装着されたミキサーの操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品製造業界においては、添付の第6図に示すような大型の縦型ミキサーが多用される。同図において、aは電動機や減速ギア機構などの回転駆動部、及びミキシング動作をコントロールする各種の電子回路や操作パネル等の制御部を含むミキサー本体、bは食材の撹拌・混練などの動作を直接に担う撹拌子、cはクリームや乳製品、或いはケーキ生地などの被撹拌食材が収容された容器(ボウル)、dは当該ボウルを担持するためのボウル支持腕である。
【0003】
ちなみに、係る業務用の大型食材ミキサーが「縦型ミキサー」と呼称される所以は、ミキサーの回転駆動部によって、撹拌子bが垂直方向(縦方向)の回転軸によって駆動されるためである。なお、係る食材用ミキサーの各部位の材質には、その強度性や耐腐食性、更には食品・食材に対する衛生面の観点から主にステンレス鋼材が使用されている。
【0004】
当該ミキサーにおいて、撹拌子bは被撹拌食材を粉砕・破断して、これらを撹拌・混練する役目を担うものであり各種の形状のものが用いられている。すなわち、被撹拌食材の種類や撹拌目的或いは用途に応じて最適な形状の撹拌子が選択され、ミキサー本体aの回転駆動部の回転軸にアタッチメントとして装着される。なお、第6図に示された撹拌子bは、主に、乳製品などの混練や泡立てを目的として使用されるものであり、一般に「ホイッパー」と呼称される撹拌子である。
【0005】
ところで、ミキサーで撹拌する被撹拌食材が、クッキー生地やケーキ生地などの場合には、被撹拌食材を打ち付けて(すなわち「ビート」して)、食材全体を均一に捏ねる必要があるため、一般に「ビーター」と呼称される形状の撹拌子が使用されている。従来技術として開示されているビーターの概略形状を、特許文献1の添付図面の第2図、或いは特許文献2の添付図面の第18図に示す。
【0006】
これらの図面に示されるように、ビーターは、その骨格とも言える複数の撹拌枝を有しており、係る撹拌枝は、主に角張った角柱構造のものと、丸みを帯びた円柱構造のものに大別される。これは、ミキシングする食材毎に独特の風味や食感を作り出す必要があるので、各種の被撹拌食材の種類に応じて、それぞれに適した構造の撹拌枝を備えたビーターを選択することが肝要となるためである。
【0007】
例えば、被撹拌食材がバターや砂糖、或いは乳製品のような場合には、一般的に角柱構造の撹拌枝を有するビーターが適しているとされ、クッキー生地やケーキ生地のように小麦粉などの紛体を加えて撹拌・混練するような場合には、一般に円柱構造の撹拌枝を有するビーターが適していると言われている。これは一つに、撹拌枝の構造の違いによってミキシング時において被撹拌食材に混入される空気の量が異なり、その比重が変化して混練成果物の食感に微妙に影響を与えるからである。
【0008】
それ故、食品製造業界においては、それまでの経験則から被撹拌食材の種類に適した撹拌枝の形状の異なる複数のビーターを備え、各種の被撹拌食材に応じてその都度使い分け、ミキシング処理を行う必要があった。そのため、例えば、クッキー生地やパウンド・ケーキ生地のように、最初にバターやミルクなどの乳製品と砂糖を混練・撹拌し、しかる後に小麦粉などの紛体を投入して混練・撹拌を続行する場合には、ミキシング処理の過程において、撹拌枝の形状が異なる複数のビーターを交換する必要が生じミキシング処理の作業手順が煩雑となる不具合が生じていた。
【0009】
【特許文献1】特開2005-245375号公報
【特許文献2】特開2010-75097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような不具合を解決することを目的としたものであって、大型の縦型食材用ミキサーにおいて、主にクッキーなどの焼菓子の生地を撹拌・混練する際に、単一のビーターのみを用いてミキシング処理工程を完了できるようなビーターの構造、及び当該ビーターを装着したミキサーの操作方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、
食材用ミキサーに装着される撹拌子(ビーター)の構造であって、
前記ビーターを構成する複数の撹拌枝について、当該ビーターの回転時に被撹拌食材に対向する一方の撹拌枝端面と、当該端面の背面に位置する他の一方の撹拌枝端面との形状が異なることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の観点は、
前記第1の観点において、
前記一方の撹拌枝端面はビーターの回転方向に対して直交する直線で構成され、前記他の一方の撹拌枝端面はビーターの回転方向に対して所定の曲率を有する曲線で構成されていること、を特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の観点は、
前記第1又は第2の観点による撹拌子(ビーター)を備えた食材用ミキサーの操作方法であって、被撹拌食材の種類に応じて当該ビーターの回転方向を切り換え、ビーターの回転時に被撹拌食材に対向する撹拌枝の端面を自在に選択し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の解決手段を備えた本発明によれば、クッキーやパウンド・ケーキなどの生地を撹拌・混練する際に単一のビーターのみを用いて作業を行うことが可能となり、ミキシング処理工程の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実現するための最良の形態である実施例に関し、本明細書に添付した各々の図面に基づいて以下に説明を行う。
【0016】
(1)本発明に基づくビーター(撹拌子)の構造
本発明に基づくビーター1の構造を添付の第1図に示す。前述のようにビーターは比喩的には、例えば「魚の骨」のような形をしており、その骨格に当たる複数の撹拌枝11が直接に被撹拌食材の混練・撹拌を担うものとなる。なお、ビーター1は、センター軸12を介してミキサー本体の回転駆動部の回転軸に取り付けられる。
【0017】
ビーター1において、撹拌枝11は、略鉛直方向に伸びた柱状体構造を有しており、その柱状体構造の水平方向断面(第1図中の断面A-A)を添付の第2図に示す。同図からも明らかなように、ビーター1が図中のa方向(紙面上の反時計方向)に回転するとき被撹拌食材に対向する撹拌枝11の端面は、直線状の平面になっている(以下、係る端面を「角型端面」と称する)。
【0018】
一方、角型端面の背面となる撹拌枝11の端面は、所定の曲率半径Rを有する曲線で構成されている(以下、係る端面を「丸型端面」と称する)。なお、ビーター1が図中のb方向(紙面上の時計方向)に回転する場合は、係る丸形端面が被撹拌食材に対向する撹拌枝11の端面になることは言うまでもない。
【0019】
丸形端面の曲率半径Rは、撹拌枝11の回転方向と直交する枝幅をLとした場合
R=L/2
以上に設定することが好ましく、本発明実施上の経験則に則れば上式の値が一般的に好適であると考えられる。例えば、撹拌枝の幅がL=10mmの場合は、丸形端面の曲率はR=5mm程度にすることが好適である。参考のため、ビーター1の角形端面と丸形端面の様子を添付の第3図の写真に示す。ちなみに、上段の写真が角型端面を、下段の写真が丸型端面を示している。
【0020】
ところで、流動体(流体)のような被撹拌食材の中を撹拌枝(柱状体構造物)が運動するとき、その前端面(柱状体の長手方向側面)における被撹拌食材(流体)の動きは、概ね、添付の第4図に示すような流れになることが推測される。同図において、図4(a)は角型端面の場合を示し、図4(b)は丸型端面の場合を示す。
【0021】
一般に、流体中において、その流れに対し直角方向に置かれた角柱や円柱などの柱状体構造物が流体から受ける抗力Fは次式によって近似される。
F=(抗力係数C)×(流体密度ρ)×(流体速度v)×(前方投影面積S)÷2
被撹拌食材を流体とみなして、撹拌枝11の角型、丸型の各端面が流体から受ける抗力Fをこれに当てはめて類推する。
【0022】
角型、丸型のそれぞれの端面の場合について、被撹拌食材の流体密度ρ、流体速度vは同一と仮定し、さらに角型・丸型ともにその前方投影面積Sは、図4からも明らかなように同一面積(S=L×柱長(撹拌枝長))となるため、角型、丸型各端面それぞれの受ける抗力Fは、各端面固有の抗力係数Cの違いのみとなる。
【0023】
日本機械学会編の資料によれば、流体中を運動する角柱と円柱のそれぞれの柱状長手方向に関する抗力係数は、下記のような値を示す。
円柱の場合 C=0.7~1.2
角柱の場合 C=1.1~2.0
つまり、撹拌枝11の角型端面の方が丸型端面に較べて、被撹拌食材から1.5~2倍程度の大きな抗力を受け、同時に作用反作用の法則より、被撹拌食材の方も撹拌枝11の各端面から同様の抗力を受けることになる。
【0024】
すなわち、撹拌枝11の角型端面の場合には、被撹拌食材の流れは端面で大きな抗力を受けることによってその動きが抑制され、さらに角型端面の両脇に排除される動きとなる。したがって、被撹拌食材中に空気が含まれていた場合、その空気も被撹拌食材と共に、その流れに沿って移動する。
【0025】
一方、丸型端面の場合は被撹拌食材受ける抗力が比較的に小さいため、その流れがあたかも流体中を移動する滑らかな物体の表面に沿って生じる層流のように、丸型端面の両脇をスムーズに流れて行く。したがって、被撹拌食材の中に含まれている空気が被撹拌食材のスムーズな流れによって、被撹拌食材の流れの中から絞り出されるように動くものと類推される。
【0026】
また、小麦粉などの紛体物が被撹拌食材に加えられた場合には、液状の流動体に含まれてコロイド状になっている紛体粒子が、被撹拌食材のスムーズな流れに沿い一体となって動き、より一層、被撹拌食材の中に取り込まれていくものと類推される。つまり、紛体物がさらに被撹拌食材中に混練され易くなるものと考えられる。
【0027】
参考のため、角型と丸型のビーターの撹拌枝端面形状による被撹拌食材の比重の変化に関する実証試験の結果を以下に示す。なお、当該試験の手順は、被撹拌食材として無塩バターのブロック1.35(kg)をペースト状になるまで撹拌・混練を行うものであり、ミキサーへのバター・ブロックの投入後、ミキサーの回転速度320(rpm)で1分間の撹拌を行った。今回は係る試験を3回実施し、その都度ミキシング終了後の被撹拌食材の比重を測定した。
【0028】
(比重測定結果)
[丸型端面] [角型端面]
1回目測定 0.977 0.960
2回目測定 0.941 0.929
3回目測定 0.902 0.864
平 均 0.940 0.918
【0029】
上表の測定結果にも示されるように、攪拌枝の角型端面により撹拌を行った方が、被撹拌食材の比重が下がる、すなわち、被撹拌食材の中に空気が取り込めることが明らかである。また、角型端面を用いて撹拌を行った場合は、ミキサーにおいて被撹拌食材を入れたボウルの振動が激しいことが確認された。これは、角型端面を備えた撹拌枝の方が撹拌・混練時に、より大きな抗力が被撹拌食材に対して働くことを意味するものと言える。
【0030】
(2)本発明によるビーターを使用した場合のミキサーの運用・操作方法
次に、ビーター1を大型の食材用縦型ミキサーに装着して、クッキーなどの焼菓子の生地を撹拌・混練する際の具体的な運用・操作方法について以下に説明を行う。
【0031】
(2-1)第1ステップ
先ず、ミキサー本体のボウルの中に、被撹拌食材として無塩バター1.35(kg)のブロック(被撹拌食材の温度は摂氏13~15度程度とする。)を投入してミキシング処理を開始した。この場合、被撹拌食材中に空気をより多く取り込み、その比重を下げて撹拌成果物の食感を高めるべく、撹拌枝11の角型端面が被撹拌食材に対向するようにビーター1の回転方向を設定した。すなわち、当該ミキサーにおいて、ビーター1が添付の第2図に示すaの方向(反時計方向)に回転するように設定を行った。
【0032】
(2-2)第2ステップ
バター・ブロックの投入後、ミキサーの回転速度320(rpm)にて1分間ミキシング処理を行い、ブロック状のバターがペースト状に変化することを確認し、さらにグラニュー糖675(g)、食塩10(g)などをボウルに追加して投入した。なお、追加材料投入後の回転方向及び回転速度は上述の通り、反時計方向に回転、320(rpm)を維持するものとして、追加材料投入後4分30秒間に亘りミキシング処理を継続した。
【0033】
(2-3)第3ステップ
第2ステップのミキシング処理の終了後に、小麦薄力粉1.935(kg)を投入するが、このときにミキサーの回転方向を切り換える。すなわち、小麦粉のような粉状の混練物を被撹拌食材中に一層取り込み易くするため、回転枝11の丸型端面が被撹拌食材に対向・当接されるように、ビーター1の回転方向を添付の第2図に示すb方向(時計方向)に切り換えるのである。回転方向切換後、回転速度を120(rpm)に設定して1分20秒間に亘りミキシング処理を継続した。
【0034】
(3)ミキシング成果物の状態比較評価及び官能評価
以上に説明を行ったミキシング処理により撹拌・混練されたクッキー生地を用いて、これを成型し、焼き上げ完成させたクッキー菓子(焼き菓子)の様子を添付の第5図の写真に示す。
【0035】
なお、同図の写真では比較のため、従来の角型端面のみを有するビーター(以下「角ビーター」と称する。)と、丸型端面のみを有するビーター(以下「丸ビーター」と称する。)を用いて同様のミキシング処理を行い、撹拌・混練した生地によって焼き上げたクッキーの例も示すものとした。
【0036】
同図において下部に示した写真が、上記3種類のビーターによりミキシング処理を行った生地によって焼き上げたクッキーを横一列に並べて写したものである。ちなみに、写真右端の「MIX」と書かれたクッキーが、本発明に基づくビーター1を使用して撹拌・混練処理を行ったものであり、写真中央の「角」と書かれたクッキーが角ビーターを用いて撹拌・混練を行ったもの、写真左端の「丸」と書かれたクッキーが丸ビーターを用いて撹拌・混練を行ったものである。
【0037】
また、同図の上部に示した3枚の写真は、この3種類のクッキーの断面を拡大して示ししたものである。すなわち、上端の写真が角ビーターによるもの、右端の写真が丸ビーターによるもの、そして、中程の「角丸ビーター」と書かれているのが本発明に基づくビーター1を用いて撹拌・混練を行ったものである。
【0038】
これらの写真から類推されるように、ビーター1(角丸ビーター)を用いたミキシング処理によるクッキーは、その断面が比較的に均一であることが観察される。これは、小麦粉の粉状添加物が被撹拌食材中に均一に混練され、クッキー生地が比較的に滑らかに仕上がったためと考えられる。
【0039】
なお、本発明に基づくビーター1を用いてミキシング処理を行った場合は、前述の(2)に示した操作処理手順に基づいて被撹拌食材の撹拌・混練が行われたものである。また、従来の角ビーター及び丸ビーターを用いてミキシング処理を行った場合も回転速度や撹拌時間については、ビーター1の場合と同様に前述の(2)の(2-1)~(2-3)に示した操作手順に基づいて撹拌・混練を行っている。
【0040】
しかし、既存ビーターの場合はミキシング中にビーターの交換は行わず、最初に取り付けた角または丸のビーターのみを用いて一貫してミキシング処理を継続した。したがって、これらの角及び丸ビーターの場合は、当然のことながらミキシング処理中におけるミキサーの回転方向を転換してはいない。
【0041】
ところで、(一般財団法人)日本食品分析センターの指標によれば、クッキーやパウンド・ケーキなどの焼菓子の官能評価に際しては、そのテクスチャー(食感)を以って主要評価項目とする旨が示されている。これに則れば、上記の各種ビーターによりミキシング処理を行って焼成したクッキーの食感の官能評価が重要となる。
【0042】
そのため、添付の第5図の写真に示した3種類のクッキーについて、複数の被験者(本発明の発明者、及び開発関連者を含む。)によってその食感に関する官能評価を行った。その結果、本発明によるビーター1を用いて被撹拌食材の撹拌・混練を行ったクッキーに関しては、「他のクッキーに比較して、割るのに若干の力が必要であった。」との回答結果が得られた。
【0043】
これは、前述のように小麦粉の粉状添加物が被撹拌食材中に均一に混練され、クッキー生地の全体が滑らかに仕上がり、生地の組織が比較的に緻密となってクッキー全体が崩れにくくなったためと考えられる。
【0044】
以上に説明したように、本発明によるビーター、並びに当該ビーターを装着したミキサーの操作方法を用いれば、クッキー生地やケーキ生地の撹拌・混練を行う際に単一のビーターのみを用いてミキシング処理を遂行することが可能となり、作業の簡素化や作業効率の向上などのメリットが期待できる。
【0045】
なお、本発明の実施形態は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、各々の実施例を構成する各部位の形状や配置或いはその素材等は、本発明の趣旨を逸脱することなく、現実の実施態様に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の構成は、乳製品製造業界や製菓業界をはじめとして、食材の撹拌・混練を必要とする各種の食品製造業界においてその利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明によるビーター(撹拌子)の構造を示す図である。
図2図1に示すビーターのA-A方向の水平方向断面図である。
図3図1に示すビーター撹拌枝の角型及び丸型の各端面を示す写真である。
図4】撹拌枝の角型・丸型各端面における被撹拌食材の動きを示す模式図である。
図5】各種ビーターで撹拌された生地により焼成したクッキーの比較写真である。
図6】一般的な業務用の大型食材用縦型ミキサーの様子を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 …ビーター
11 …撹拌枝
12 …センター軸
a …食材用縦型ミキサー本体
b …回転子
c …ボウル
d …ボウル保持腕
図1
図2
図3
図4
図5
図6