(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089469
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】移送システム、水槽設備および移送方法
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20230621BHJP
B65G 53/30 20060101ALI20230621BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
B01D21/24 H
B01D21/24 G
B65G53/30 Z
A01K63/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203976
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】米山 和彦
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA01
2B104CB23
2B104CB30
2B104EA01
2B104EF09
(57)【要約】
【課題】移送性能の高い安価な移送性能の高い移送システム、水槽設備および移送方法を提供する。
【解決手段】液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送システムであって、底部に設けられ、上方に向かって開口した溝SA21を画定するトラフ21と、溝SA21に沿って延在したものであって、上端部分が閉塞した内部空間SA22を形成し、上端部分より下方に溝SA21内で開口しトラフ21から離間した下方開口41aが設けられた空間形成部材41と、内部空間SA22内に流体を吐出する吐出口422aと、吐出口422aよりも流体の吐出方向下流側でトラフ21に連結し、溝SA21内の沈降物を排出する排出部43とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送システムであって、
前記底部に設けられ、上方に向かって開口した溝を画定する溝画定体と、
前記溝に沿って延在したものであって、上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に該溝内で開口し前記溝画定体から離間した吸込口が設けられた空間形成部材と、
前記空間内に流体を吐出する吐出口と、
前記吐出口よりも前記流体の吐出方向下流側で前記溝画定体に連結し、前記溝内の沈降物を排出する排出部とを備えたことを特徴とする移送システム。
【請求項2】
前記吐出口は、前記流体を間欠的に吐出するものであり、
前記排出部は、前記吐出口が流体を吐出しているときに前記溝内の沈降物を排出するものであることを特徴とする請求項1記載の移送システム。
【請求項3】
前記吸込口は、前記溝内に堆積した、比重が1.1以上1.5以下の沈降物を、前記吐出口から流体が吐出されることで前記空間内に吸い込む開口として機能するものであることを特徴とする請求項1または2記載の移送システム。
【請求項4】
液体を貯留する水槽の底部に沈降した沈降物を移送する移送システムを備えた水槽設備であって、
前記水槽の底部に設けられ、上方に向かって開口した溝を形成する溝画定体と、
前記溝に沿って延在したものであって、上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に該溝内で開口し前記溝画定体から離間した吸込口が設けられた空間形成部材と、
前記空間内に流体を吐出する吐出口と、
前記吐出口よりも前記流体の吐出方向下流側で前記溝画定体に連結し、前記溝内の沈降物を排出して前記水槽の外部に送り出す排出部と、
前記溝画定体よりも上方に配置され、前記水槽の上下方向に貫通した複数の孔を有する多孔部材とを備えたことを特徴とする水槽設備。
【請求項5】
前記溝画定体の上縁から斜め上方に延びる傾斜面を備えていることを特徴とする請求項4記載の水槽設備。
【請求項6】
液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送方法であって、
前記底部に設けられた溝に沿って延在したものであって上端部分が閉塞した空間を形成し該上端部分より下方に該溝内で開口した吸込口が設けられた空間形成部材における、該空間内に流体を吐出する吐出工程と、
前記流体の吐出方向下流側で前記溝に連結した排出部によって前記溝内の沈降物を排出する排出工程とを有し、
前記排出工程は、前記吐出工程と同時に行われる期間がある工程であることを特徴とする移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送システム、液体を貯留する水槽の底部に沈降した沈降物を移送する移送システムを備えた水槽設備および液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類の養殖施設では、魚介類が食べ残した残餌や魚介類の糞によって養殖用水槽内の水質が悪化することを防止するために、それらの残餌や糞を除去する作業が定期的に行われる。従来の一般的な除去作業では、養殖用水槽の底部に沈降した残餌や糞を人が網を差し込んですくい取ることで除去している。
【0003】
また、下水処理施設に設けられた沈殿池では、受け入れた汚水に含まれている汚泥を沈降させ、底面に沈降した汚泥を汚泥ピットまで移送し、汚泥ピットに集まった汚泥を汚泥ポンプによって除去している。以下、これらの水槽や池に沈降した残餌、糞および汚泥を沈降物と称することがある。また以下、養殖用水槽と沈殿池などの水を貯留する槽や池を、水槽と称することがある。
【0004】
水槽に用いられる移送システムとして、下方に開口が設けられた空間形成部材と、その空間形成部材によって形成された内部空間内に流体を吐出する吐出口とを備えることで、巻き上がりを抑えつつ沈降した砂を移送する移送システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この移送システムでは、吐出口から内部空間内に流体を吐出すると、空間形成部材の内と外とで圧力差が生じ、底面に沈降した砂が、開口から内部空間内に吸い込まれる。さらに、その内部空間内では、吸い込まれた砂が、流体の流れによって移送方向下流側に移動して集積部まで移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、沈降物(残餌、糞および汚泥)は砂よりも比重が小さいため液体中に巻き上がりやすい。このため、特許文献1の移送システムでは、吐出した流体によってせっかく沈降した沈降物が水槽内で巻き上がってしまう虞がある。一方、沈降物の巻き上がりを抑えるため、吐出口から吐出する流体の量を減少させると、沈降物を十分に移送することができない虞が生じてしまう。従って、特許文献1の移送システムおよびその移送システムが設けられた水槽設備では、沈降物の巻き上がりを抑えつつ十分な距離移送することは困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、移送性能の高い移送システム、水槽設備および移送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の移送システムは、
液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送システムであって、
前記底部に設けられ、上方に向かって開口した溝を画定する溝画定体と、
前記溝に沿って延在したものであって、上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に該溝内で開口し前記溝画定体から離間した吸込口が設けられた空間形成部材と、
前記空間内に流体を吐出する吐出口と、
前記吐出口よりも前記流体の吐出方向下流側で前記溝画定体に連結し、前記溝内の沈降物を排出する排出部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この移送システムによれば、比較的比重が小さい沈降物であっても巻き上げずに十分な距離移送できる。
【0010】
ここで、前記吸込口は、前記吐出口から流体が吐出されることで前記溝内に堆積した沈降物を前記空間内に吸い込む開口として機能するものであり、前記空間形成部材は、該空間内に吸い込まれた沈降物が、該吐出口から流体が吐出されることで該流体の吐出方向下流側に向かって移送される移送経路として機能するものであってもよい。また、前記空間は、前記吸込口につながる下端部分が、該吸込口に近づくほど狭くなったものであってもよい。さらに、前記溝は、該溝の開口につながる上方部分が、該溝の開口に近づくほど狭くなっているものであってもよい。前記溝は、断面形状が多角形形状、円弧状またはU字状をしたものであってもよく、円弧と直線を組み合わせた形状の断面形状をしたものであってもよい。またさらに、前記排出部は、前記溝画定体に連結した排出管を有するものであってもよい。そして、前記排出管は、ポンプおよび弁のうち少なくとも一方が接続されたものであってもよい。
【0011】
この移送システムにおいて、
前記吐出口は、前記流体を間欠的に吐出するものであり、
前記排出部は、前記吐出口が流体を吐出しているときに前記溝内の沈降物を排出するものであってもよい。
【0012】
こうすることで、前記空間および前記溝に流体の滑らかな流れが発生するので、沈降物を巻き上げずに十分な距離移送できる。
【0013】
また、この移送システムにおいて、
前記吸込口は、前記溝内に堆積した、比重が1.1以上1.5以下の沈降物を、前記吐出口から流体が吐出されることで前記空間内に吸い込む開口として機能するものであってもよい。
【0014】
沈降物を前記空間内に吸い込んで移送して前記排出部によって排出することで、比重が1.1以上1.5以下の軽い沈降物であってもより巻き上がることなく移送できる。
【0015】
上記課題を解決する本発明の水槽設備は、
液体を貯留する水槽の底部に沈降した沈降物を移送する移送システムを備えた水槽設備であって、
前記水槽の底部に設けられ、上方に向かって開口した溝を形成する溝画定体と、
前記溝に沿って延在したものであって、上端部分が閉塞した空間を形成し、該上端部分より下方に該溝内で開口し前記溝画定体から離間した吸込口が設けられた空間形成部材と、
前記空間内に流体を吐出する吐出口と、
前記吐出口よりも前記流体の吐出方向下流側で前記溝画定体に連結し、前記溝内の沈降物を排出して前記水槽の外部に送り出す排出部と、
前記溝画定体よりも上方に配置され、前記水槽の上下方向に貫通した複数の孔を有する多孔部材とを備えたことを特徴とする。
【0016】
この水槽設備によれば、前記孔を通過した比較的比重が小さい沈降物であっても巻き上げずに十分な距離移送できる。
【0017】
この水槽設備において、
前記溝画定体の上縁から斜め上方に延びる傾斜面を備えていてもよい。
【0018】
前記傾斜面によって、前記水槽の底部に沈降した沈降物を前記溝に集めて移送することができる。
【0019】
上記課題を解決する本発明の移送方法は、
液体中において底部に沈降した沈降物を移送する移送方法であって、
前記底部に設けられた溝に沿って延在したものであって上端部分が閉塞した空間を形成し該上端部分より下方に該溝内で開口した吸込口が設けられた空間形成部材における、該空間内に流体を吐出する吐出工程と、
前記流体の吐出方向下流側で前記溝に連結した排出部によって前記溝内の沈降物を排出する排出工程とを有し、
前記排出工程は、前記吐出工程と同時に行われる期間がある工程であることを特徴とする。
【0020】
この移送方法によれば、前記吐出工程において吐出する流体の量が少ない量であっても、比較的比重が小さい沈降物を巻き上げずに十分な距離移送できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、移送性能の高い移送システム、水槽設備および移送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に相当する移送システムを備えた水槽設備の概略断面図である。
【
図3】(a)は、
図1におけるB-B断面図であり、(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
【
図4】(a)は、
図1におけるD-D断面図であり、(b)は、同図(a)におけるE-E断面図である。
【
図5】
図1に示した水槽設備の動作を示すフローチャートである。
【
図6】(a)は、第1変形例の水槽設備のトラフ、空間形成部材および吸込部を示す
図4(a)と同様の断面図であり、(b)は、同図(a)におけるF-F断面図である。
【
図8】第2実施形態の水槽設備の概略断面図である。
【
図9】
図8に示した水槽設備の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、アワビなどの魚介類の養殖用水槽に本発明の移送システムを形成した例を用いる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に相当する移送システムを備えた水槽設備の概略断面図である。また、
図2は、
図1に示す水槽設備のA-A断面図である。
【0025】
図1に示すように、水槽設備1は、養殖用水槽2と、仕切板3と、移送装置4とを備えている。養殖用水槽2は、内部で養殖される水生生物に応じた液体を貯留するものである。例えば、水生生物が海の生物である場合には海水が貯留され、川や湖の生物である場合は淡水が貯留される。本実施形態では海水が貯留されている場合を例にして説明する。この海水は、液体の一例に相当する。
図1では、貯留された海水の水位を水面WLで示している。養殖用水槽2の底部には、トラフ21と傾斜面22が設けられている。このトラフ21と移送装置4とが移送システムの一例に相当する。また、トラフ21は、溝画定体の一例に相当する。
図2に示すように、養殖用水槽2は、平面視で長方形をしている。以下、養殖用水槽2の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。
【0026】
トラフ21は、養殖用水槽2の幅方向中央に位置し、養殖用水槽2の長手方向全長にわたって延在している。
図1に示すように、トラフ21および傾斜面22は、養殖用水槽2の底部に設けられている。傾斜面22も、養殖用水槽2の長手方向全長にわたって延在している。傾斜面22は、トラフ21の上縁から養殖用水槽2の幅方向両端の垂直に切り立った側壁まで斜め上方に延びている。すなわち、養殖用水槽2の底面は、トラフ21の内面と傾斜面22によって構成されている。
【0027】
仕切板3は、トラフ21よりも上方であって傾斜面22の上端の高さ位置に配置されており、平面視では養殖用水槽2の内周面に一致した外周形状をしている。この仕切板3は、多孔部材の一例に相当する。仕切板3は、ステンレス製のパンチングメタルであり、厚み方向である上下方向に貫通した複数の孔が形成されている。この孔は、養殖する魚介類が通過不能で、残餌や魚介類の糞は通過可能な程度の大きさをしている。なお、パンチングメタルに代えて金網を用いてもよく、材質は樹脂製などであってもよい。要するに、仕切板3は、養殖用水槽2を上下方向に区分けし、かつ上側と下側をつなぐ複数の孔を有するものであればよい。なお、
図1では、仕切板3と傾斜面22の上端とが区別できるように、仕切板3を傾斜面22の上端から少し上方に描いている。
【0028】
仕切板3によって、養殖用水槽2の内部は、魚介類存在域SA1と汚物沈降域SA2に区分けされている。魚介類存在域SA1は、養殖される魚介類の生活領域である。魚介類存在域SA1にいる魚介類が食べ残した残餌や魚介類の糞は、比重が1.1以上1.5以下である。これらの残餌や糞は、魚介類存在域SA1を沈降して仕切板3の孔を通り抜け、汚物沈降域SA2をさらに沈降する。以下、これらの残餌や糞を沈降物と称する。汚物沈降域SA2を沈降した沈降物は、傾斜面22を滑り落ちてトラフ21によって画定された溝SA21(
図3参照)の下方に堆積する。本実施形態における傾斜面22の傾斜角度は35度である。なお、傾斜面22の傾斜角度は、30度以上60度以下が好ましい。傾斜面22を30度以上にすることで、傾斜面22に向かって沈降してくる沈降物は、傾斜面22を滑り落ちやすくなる。一方、60度を超える角度では、汚物沈降域SA2の高さが高くなるため魚介類存在域SA1の容積が小さくなり、養殖できる魚介類が少なくなってしまう。
【0029】
移送装置4は、空間形成部材41と、流体供給部42と、排出部43とを有している。この移送装置4は、トラフ21によって画定された溝SA21(
図3参照)に堆積した沈降物を養殖用水槽2の外部に移送するためのものである。
図1および
図2では、移送装置4によって沈降物が移送される移送方向を白抜きの矢印で示している。空間形成部材41は、トラフ21によって画定された溝SA21に配置され、トラフ21および溝SA21に沿って延在している。空間形成部材41の全長はトラフ21の全長とほぼ同じであるが、トラフ21に対し移送方向下流側に少しずらして配置されている。空間形成部材41は、その延在方向に離間して2つ配置された支持部材411によって支持されている。
図2に示すように、支持部材411は、トラフ21の幅方向に架け渡され、幅方向両端部は傾斜面22に固定されている。空間形成部材41は、支持部材411の幅方向の中央部分に固定されている。なお、支持部材411の数は、空間形成部材41の延在方向の長さなどに応じて空間形成部材41を支持できる範囲で適宜設定すればよい。
【0030】
図1に示すように、流体供給部42は、給水管421と、ノズル422と、給水ポンプ423とを有している。給水管421は、養殖用水槽2の外部から養殖用水槽2底部の溝SA21(
図3参照)まで延在し、先端部分が移送方向下流に向かって折れ曲がっている。給水管421の後端は、養殖用水槽2の外部で給水ポンプ423に接続されている。なお、給水ポンプ423は、不図示の流体貯留槽内に設置されている。給水管421の先端にはノズル422が固定されている。ノズル422の先端には給水管421を通って供給される流体を吐出する吐出口422aが形成されている。ここで供給される流体は、養殖用水槽2に貯留されている海水と同じものである。ただし、養殖用水槽2に貯留されている海水とは塩分濃度が異なる海水、淡水または液体に気体が混入した気体混合水などを供給してもよい。なお、気体混合水を供給する場合、気体の割合が多すぎると吐出した気体混合水の流れが弱まりやすいので、気体の割合は少ない方が好ましい。
【0031】
排出部43は、排出管431と排出ポンプ432とを有している。排出管431は、養殖用水槽2における移送方向下流端の側壁に接続している。その接続部分の側壁には開口が形成されている。その開口に接続した排出管431の一端には排出口431aが形成されている。排出管431は、排出口431aから養殖用水槽2の外部に向かって突出している。この排出管431は、養殖用水槽2の外部で上方に折れ曲がり、不図示の濾過槽まで延在している。排出ポンプ432は、排出管431の折れ曲がり部分に接続されている。この排出ポンプ432を駆動することで、
図3に示す溝SA21および内部空間SA22における移送方向下流側部分にある沈降物が養殖用水槽2内の海水とともに吸引されて排出管431を通して養殖用水槽2から排出され上述した濾過槽に送り出される。したがって、この排出管431は沈降物を吸引する吸引管または地位鉱物を吸い込む吸込管とも言え、排出部43は吸引部または吸込部とも言える。なお、排出管431によって送り出された沈降物が混入した海水を濾過した後、給水ポンプ423を用いて吐出口422aから養殖用水槽2内に供給することで、海水を循環させてもよい。
【0032】
図3(a)は、
図1におけるB-B断面図である。この
図3(a)では図の左右方向が幅方向になり、図の奥側から図の手前側に向かう方向が移送方向になる。
【0033】
図3(a)には、トラフ21、傾斜面22の下部、空間形成部材41、給水管421の下部およびノズル422が示されている。
図3(a)に示すように、傾斜面22は、トラフ21の幅方向両側に設けられている。上述したように、傾斜面22は、トラフ21の上縁から斜め上方に延びている。換言すれば、傾斜面22は、トラフ21の縁に向かうに従って下方に向かって傾斜し、最下部がトラフ21の上縁に接続している。
【0034】
トラフ21は、
図3(a)に示すように、3/4円弧の断面形状をしている。このトラフ21は、傾斜面22と一体にFRP(繊維強化プラスチック)で形成されたものである。なお、トラフ21は、繊維強化されていない樹脂を成形したものであってもよく、ステンレス製などの金属製の板材を曲げ加工することによって形成されたものであってもよい。また、トラフ21は、傾斜面22とは別に成形された後に傾斜面22に接合されたものであってもよい。さらに、トラフ21の内周面21bの形状は円弧状に限られず、多角形形状やV字状であってもよく、U字状等の直線と円弧を組み合わせた形状であってもよい。
図3(a)に示すトラフ21は、内径300mmの円筒体の上方(
図1に示した水面WL側)1/4を切り欠いた形状のものである。したがって、このトラフ21は上方に向かって開口し、そのトラフ21によって画定された溝SA21も上方に向かって開口している。以下、トラフ21の、上方に向かって開口している部分を上方開口21aと称する。トラフ21によって画定された溝SA21のうち、上端の上方開口21aにつながる上側部分は、上方開口21aに近づくほど狭くなっている。すなわち、トラフ21の上方開口21aは、トラフ21の延在方向に直交する幅方向に絞られた開口である。
【0035】
沈降した沈降物は、傾斜面22の上をトラフ21に向かって滑り落ち或いは直接トラフ21の上方開口21aから溝SA21に入り込んでトラフ21の底面21cに堆積する。つまり、養殖用水槽2の底部に沈降してきた沈降物は、まずは自重により溝SA21に集められる。
【0036】
図3(a)に示す空間形成部材41は、円弧の断面形状をしたものである。空間形成部材41の上端は、溝SA21の上端と略一致した位置に配置されている。このため、空間形成部材41は全体が溝SA21内に配置されている。ただし、空間形成部材41の上側部分は溝SA21よりも上方に配置されていてもよい。この空間形成部材41は、ステンレス製の平板材を、断面が円弧状になるように成形したものである。なお、空間形成部材41は、他の材質の板材を加工したものであってもよく、射出成形や押出成形により作製したものであってもよい。また、空間形成部材41の内周面41bの形状は、下側の幅方向中央部が開口した多角形形状等であってもよい。本実施形態の空間形成部材41は、内径150mmの円筒体の下方(底面21c側)を切り欠いた形状のものであり、下部に下方開口41aが設けられている。すなわち、空間形成部材41に形成された下方開口41aは、溝SA21内で開口し、トラフ21の底面21cに対向している。下方開口41aは、溝SA21に集められた沈降物を、空間形成部材41の内周面41bによって画定された内部空間SA22に吸い込む吸込口として機能する。すなわち、下方開口41aは、吸込口の一例に相当する。下方開口41aは、トラフ21の内周面21bから離間している。空間形成部材41は、溝SA21内を仕切るものであって、下端にある下方開口41aより上の部分が閉塞した内部空間SA22を形成するものである。すなわち、溝SA21内は、内部空間SA22とそれ以外の空間に空間形成部材41よって仕切られている。この空間形成部材41上側部分の外周面にも沈降物が沈降してくるが、空間形成部材41に向かって沈降してきた沈降物は、円弧状の外周面をつたって、トラフ21の底面21c側に流れ落ちやすい。また、空間形成部材41の内周面41bも円弧状をしているので、内部空間SA22は、下方開口41aにつながる下側部分が、その下方開口41aに近づくほど狭くなっている。
【0037】
空間形成部材41の径方向の中心位置は、トラフ21の径方向の中心位置と略一致している。したがって、トラフ21の内周面21bと空間形成部材41の外周面がオーバーラップしている部分におけるそれらの最短距離(隙間W)は、ほぼ一定である。ただし、空間形成部材41の径方向の中心位置とトラフ21の径方向の中心位置を異ならせてもよい。
【0038】
内部空間SA22には、その内部空間SA22内に海水を吐出する吐出口422aが配置されている。この吐出口422aから吐出される海水は、流体の一例に相当する。吐出口422aは、内径80mmのパイプ状の給水管421の先端を扁平につぶして形成された長孔形状のものである。吐出口422aの横方向(トラフ幅方向)の最大開口長は117mmである。吐出口422aは真円形状のものを用いても構わない。ただし、吐出口422aをこのような扁平な形状にすることで、真円の形状のものよりも吐出した海水が上下方向に拡散しにくくなるので内部空間SA22から漏れ出にくくなる。
【0039】
図3(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。この
図3(b)では図の左右方向がトラフ21の延在方向になり、図の右側が移送方向下流側になる。
【0040】
図3(b)に示すように、給水管421の先端部分は、空間形成部材41と平行に延びている。また、給水管421の先端に固定されたノズル422は、内部空間SA22内に入り込んでいる。給水管421に供給された海水は、ノズル422の先端にある吐出口422aから、移送方向に向かって吐出される。すなわち、吐出口422aから吐出される海水の吐出方向は、移送方向に一致しており、吐出口422aからは、略水平方向に海水が吐出される。なお、この実施形態では吐出口422aは、内部空間SA22内に配置されているが、内部空間SA22に海水を吐出できる範囲であれば内部空間SA22の外に配置されていてもよく、例えば空間形成部材41の上流端を含む面上に配置されていてもよい。
【0041】
吐出口422aから内部空間SA22内に海水が吐出されることで、空間形成部材41の内(内部空間SA22)と外とで圧力差が生じ、底面21cに堆積した沈降物は、
図3(a)に示す曲線の矢印のように、下方開口41aから空間S2内に吸い込まれる。さらに、その内部空間SA22では、吸い込まれた沈降物が、吐出口422aから吐出された海水の流れによって移送方向に移動する。従って、空間形成部材41は、吐出口422aから海水が吐出された際に、内部空間SA22に吸い込まれた沈降物が海水の吐出方向下流側に向かって移動する移送経路として機能する。
図3(a)に示すように、下方開口41aは、空間形成部材41の延在方向に直交する方向(トラフ幅方向)に絞られた開口であって、内部空間SA22はその下方開口41aから拡がった空間である。このように下方開口41aが絞られた開口であることによって、内部空間SA22において移送されている沈降物が、内部空間SA22から外に出にくくなる。また、内部空間SA22における海水の流れを維持しやすくなり、沈降物を遠くまで移送することができる。
【0042】
図4(a)は、
図1におけるD-D断面図であり、
図4(b)は、同図(a)におけるE-E断面図である。
【0043】
図4(b)に示すように、排出管431は、トラフ21の移送方向下流端に連結している。排出管431は、トラフ21に連結した部分がトラフ21と同一の内径をした管である。また、排出管431は、養殖用水槽2から少し離れた部分で内径が徐々に小さくなる部分があり、その部分より先では一定の内径をしている。その一定の内径をした部分の先に
図1に示した排出ポンプ432が設けられている。排出管431は、トラフ21に連結した部分にフランジを有しており、そのフランジでトラフ21に水密に接合されている。なお、上述したようにトラフ21は円筒体の上方1/4を切り欠いた形状であるので、その切り欠いた部分では、
図4(a)に示すように、排出管431は、養殖用水槽2における移送方向下流端の側壁に水密に接合されている。排出管431は、ステンレス製のものであるが、ステンレス以外の金属製のものであってもよく樹脂製のものであってもよい。
【0044】
図4(b)に示すように、空間形成部材41の移送方向下流端は、排出管431内に入り込んでいる。こうすることで、空間形成部材41によって形成された内部空間SA22において移送されてきた沈降物は、排出管431によって確実に排出される。
図1に示した吐出口422aからの海水の吐出と排出管431による排出が同時に行われると、内部空間SA22において移送されてきた沈降物の多くは、排出管431に直接吸い込まれていく。また、沈降物の一部が下方開口41aから溝SA21の底面21c側に漏れ出ることもあり得るが、その漏れ出た一部も溝SA21から排出管431に吸い込まれていく。一方、吐出口422aからの海水の吐出開始よりも後に排出管431による排出を行った場合には、内部空間SA22において移送されてきた沈降物は、排出口431aの近傍における溝SA21の底面21cに一旦堆積していく。しかし、堆積した沈降物は、排出管431による排出が開始されると、溝SA21から排出管431内に吸い込まれて不図示の濾過槽に送り出される。
【0045】
続いて、今まで説明してきた水槽設備1および移送装置4を用いた沈降物の移送方法について説明する。
【0046】
図5は、
図1に示した水槽設備の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示す動作は、不図示の制御装置によって全て自動的に実行されるが、動作の一部または全部を手動で実行してもよい。
【0047】
水槽設備1では、定期的に沈降物の移送処理を実行する。移送処理の開始時期になったか否かは制御装置が判断し、所定のタイミングで
図5に示した移送処理が開始される。なお、定期的な実行に代えて、沈降物の堆積状況を検出する検出手段を設け、その検出手段の検出結果に基づいて移送処理を実行してもよい。すなわち、移送処理は間欠的に実行される。
【0048】
移送処理では、まず給水ポンプ423の駆動を開始する(ステップS12)。これにより吐出口422aから海水の吐出が開始される。上述したように、空間形成部材41によって形成された内部空間SA22内に吐出口422aから海水が吐出されることで、内部空間SA22とその外との間に圧力差が生じ、底面21cに堆積した沈降物は、下方開口41aから内部空間SA22内に吸い込まれる。さらに、その内部空間SA22では、吸い込まれた沈降物が、吐出口422aから吐出された海水の流れによって吐出方向下流側(移送方向下流側)に向かって移動する。また、給水ポンプ423の駆動と略同時に排出ポンプ432の駆動も開始する(ステップS13)。これにより、沈降物が混入した海水の排出管431による排出が開始される。そして、内部空間SA22に生じた流れと排出管431による排出により、内部空間SA22の全長に滑らかな流れが形成される。さらに、排出口431aの近傍では、空間形成部材41の少し外側部分にも移送方向下流側に向かう流れが発生する。すなわち、排出口431aの近傍における溝SA21と溝SA21よりも少し上方部分に移送方向下流側に向かう流れが発生する。ここで、給水ポンプ423の駆動によって吐出口422aから吐出される海水の単位時間あたりの吐出量と、排出ポンプ432によって排出される海水の単位時間あたりの排出量は概略等しい量であることが好ましい。こうすることで、内部空間SA22の全長に滑らかな流れが形成されやすい。なお、排出ポンプ432の駆動は、給水ポンプ423の駆動より前であってもよく後であってもよいが、略同時に行うことで内部空間SA22に滑らかな移送流が形成される上に養殖用水槽2の水面WLの変化が生じにくく、魚介類存在域SA1にいる魚介類にストレスがかかりにくいため同時に行う方が好ましい。また、給水ポンプ423の駆動後、吐出口422aから吐出された海水が排出管431に到達するまでの時間を考慮して排出ポンプ432の駆動を給水ポンプ423の駆動よりも少し遅らせてもよい。
【0049】
排出ポンプ432の駆動開始から所定時間が経過したら(ステップS14でYES)、給水ポンプ423の駆動を停止する(ステップS15)。この所定時間は、トラフ21の底面21cに堆積した沈降物を内部空間SA22に吸い込んで排出口431a近傍まで移送するのに十分な時間であり、あらかじめ実験によって求めておく。なお、排出ポンプ432の駆動開始に代えて給水ポンプ423の駆動開始を所定時間の起算開始時としてもよい。また、給水ポンプ423の停止と略同時に排出ポンプ432の駆動も停止する(ステップS16)。排出ポンプ432の停止は、給水ポンプ423の停止より前であってもよく後であってもよいが、同時に行うことで内部空間SA22に滑らかな移送流が形成され、かつ養殖用水槽2の水面WLの変化が生じにくいため好ましい。また、1回の移送処理における給水ポンプ423の駆動時間と排出ポンプ432の駆動時間は略等しい時間であることが好ましい。こうすることで、移送処理の前後で養殖用水槽2の水面WLの変化が生じてしまうことを防止できる。以上、ステップS12からステップS15までが吐出工程の一例に相当し、ステップS13からステップS16までが排出工程の一例に相当する。ステップS16を実行したら移送処理が終了する。
【0050】
以上説明したトラフ21と移送装置4とからなる移送システム、水槽設備1およびそれらを用いた移送方法によれば、比較的比重が小さい沈降物であっても巻き上げずに十分な距離移送することができる。巻き上がりが生じると、巻き上がった沈降物は移送の流れから外れて移送できなくなってしまうため、沈降物の移送においては巻き上がりを抑制して移送することが重要になる。特に比重が1.1以上1.5以下の沈降物は、空間形成部材41と流体供給部42のみで移送しようとすると巻き上がりやすいが、排出部43によって排出することで、巻き上がりを抑制しつつ移送できる。魚介類は、人や汚物(沈降物)が近くにくることでストレスを感じて品質が低下してしまう。本実施形態の構成では、人手によらず且つ巻き上げずに沈降物を移送することができるので、魚介類存在域SA1にいる魚介類にストレスが加わりにくい。このため、養殖している魚介類の品質を高めることができる。また、本実施形態では、吐出口422aから海水を吐出しているときに、排出部43によって沈降物を海水とともに排出しているので、吐出口422aから吐出する海水の量が少ない量であっても溝SA21および内部空間SA22に滑らかな流れが発生する。このため、沈降物を巻き上げずに十分な距離移送することができる。加えて、給水ポンプ423に性能の低いものを利用できるので、水槽設備1を安価に構成できる。その上、給水ポンプ423の動力も小さくてすむので、水槽設備1の省エネ化ができる。さらに、万一何らかの原因で沈降物が巻き上がっても、巻き上がった沈降物は、仕切板3によって魚介類存在域SA1に到達しにくい。またさらに、養殖用水槽2の下部に、傾斜面22が形成されているので、沈降してきた沈降物を溝SA21に集めることができる。そして、溝SA21に集まった沈降物を移送装置4によってまとめて移送することができる。加えて、筒状の排出管431がトラフ21に連結しているので、空間形成部材41の移送方向下流端部分(排出口431a近傍)においても、溝SA21や内部空間SA22にある沈降物を含む海水を巻き上がらせることなく排出口431aから吸い込んで排出できる。
【0051】
続いて、これまで説明してきた水槽設備1の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して重複する説明は省略することがある。
【0052】
図6(a)は、第1変形例の水槽設備のトラフ、空間形成部材および排出部を示す
図4(a)と同様の断面図であり、
図6(b)は、同図(a)におけるF-F断面図である。
【0053】
図6に示すように、この第1変形例の水槽設備1は、養殖用水槽2における移送方向下流端の側壁に形成された開口の形状と排出管431の形状とが先の実施形態の水槽設備1と異なる。排出管431の一端に形成された排出口431aは、トラフ21と同様に円筒体の上方1/4を切り欠いた形状をしている。排出口431aの上端は、空間形成部材41の上端と略一致している。そして、養殖用水槽2における移送方向下流端の側壁に形成された開口も同様の形状をしている。排出口431aは、その開口に接続している。
【0054】
この第1変形例の水槽設備1においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、空間形成部材41よりも上方から排出口431aに吸い込まれる海水の量が減少する分、排出口431a近傍にある溝SA21や内部空間SA22にある沈降物を含む海水を吸い込む量が増加する。これにより、排出管431を通して排出される沈降物を含む海水の排出量を増加させることができる。
【0055】
【0056】
図7に示すように、この水槽設備1は、排出部43の構成が先の実施形態の水槽設備1と異なる。この第2変形例の排出部43は、排出管431が下方に向かって延びている。また、その排出管431の途中に、排出ポンプ432に代えて排出弁433が設けられている。この排出弁433は電動弁であるが、手動弁を用いてもよい。排出弁433を開放することで、溝SA21における移送方向下流側部分にある沈降物が養殖用水槽2内の海水とともに排出されて排出管431を通して濾過槽に送り出される。この第2変形例の水槽設備1における移送処理では、先に説明した排出ポンプ432の駆動と停止に代えて、排出弁433の開放と閉塞を行えばよい。なお、排出管431が水面WLの最低高さよりも下方で延在していれば、養殖用水槽2内の海水の水頭圧によって沈降物を養殖用水槽2内の海水とともに排出することができる。したがって、排出管431は、必ずしも下方に向かって延びている必要はなく水面WLの最低高さよりも下方で延在していればよい。さらに、サイフォンの原理が利用できる構成であれば、排出管431の一部が水面WLの最低位置よりも上方に位置していてもよい。
【0057】
この第2変形例の水槽設備1においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。その上、排出ポンプ432を用いていないので、水槽設備1を安価に構成でき、水槽設備1の省エネ化も図れる。
【0058】
次に、第2実施形態の水槽設備1について説明する。
【0059】
図8は、第2実施形態の水槽設備の概略断面図である。
【0060】
図8に示すように、この第2実施形態の水槽設備1は、養殖用水槽2の長手方向の長さが長い点と、流体供給部42の構成と、排出部43の構成が先の実施形態と異なる。
【0061】
流体供給部42は、給水主管4210と、第1給水分岐管4211と、第2給水分岐管4212と、第3給水分岐管4213と、第4給水分岐管4214と、第1ノズル4221と、第2ノズル4222と、第3ノズル4223と、第4ノズル4224と、給水ポンプ423とを有している。給水主管4210は、養殖用水槽2よりも上方で長手方向に延在し、その後端は不図示の流体貯留槽内に設置された給水ポンプ423に接続されている。第1給水分岐管4211、第2給水分岐管4212、第3給水分岐管4213および第4給水分岐管4214それぞれは、後端が給水主管4210に接続されて養殖用水槽2底部の溝SA21(
図3参照)内まで垂直方向に延在し、先端部分は移送方向下流に向かって折れ曲がっている。第1給水分岐管4211の途中には、第1給水弁4215が設けられている。同様に、第2給水分岐管4212の途中には第2給水弁4216が設けられ、第3給水分岐管4213の途中には第3給水弁4217が設けられ、第4給水分岐管4214の途中には第4給水弁4218が設けられている。これらの給水弁は電動弁であるが、手動弁を用いてもよい。第1ノズル4221は、第1給水分岐管4211の先端に固定されている。同様に、第2ノズル4222は第2給水分岐管4212の先端に固定され、第3ノズル4223は第3給水分岐管4213の先端に固定され、第4ノズル4224は第4給水分岐管4214の先端に固定されている。そして、第1ノズル4221の先端には給水主管4210および第1給水分岐管4211を通って供給される海水(流体)を吐出する第1吐出口4221aが形成されている。同様に、第2ノズル4222の先端には海水を吐出する第2吐出口4222aが形成され、第3ノズル4223の先端には海水を吐出する第3吐出口4223aが形成され、第4ノズル4224の先端には海水を吐出する第4吐出口4224aが形成されている。
【0062】
排出部43は、排出主管4310と、第1排出分岐管4311と、第2排出分岐管4312と、第3排出分岐管4313と、第4排出分岐管4314と、排出ポンプ432とを有している。排出主管4310は、養殖用水槽2の外部で長手方向に延在しており、移送方向の下流側で上方に折れ曲がり、不図示の濾過槽まで延在している。排出ポンプ432は、排出主管4310の折れ曲がり部分に接続されている。第1排出分岐管4311、第2排出分岐管4312および第3排出分岐管4313の一端は、移送方向上流側からこの順にトラフ21の底面21c(
図3参照)に接続している。トラフ21の、第1排出分岐管4311との接続部には開口が形成されている。その開口に連結した第1排出分岐管4311の一端には第1排出口4311aが形成されている。同様に、第2排出分岐管4312とトラフ21との接続部には第2排出口4312aが形成され、第3排出分岐管4313とトラフ21との接続部には第3排出口4313aが形成されている。また、第4排出分岐管4314の一端は、養殖用水槽2における移送方向下流端の側壁に接続している。その接続部分の側壁には開口が形成されている。その開口部分でトラフ21の下流端に連結した第4排出分岐管4314の一端には第4排出口4314aが形成されている。
【0063】
第1排出分岐管4311の途中には、第1排出弁4331が設けられている。同様に、第2排出分岐管4312の途中には第2排出弁4332が設けられ、第3排出分岐管4313の途中には第3排出弁4333が設けられ、第4排出分岐管4314の途中には第4排出弁4334が設けられている。これらの排出弁は電動弁であるが、手動弁を用いてもよい。第1排出分岐管4311、第2排出分岐管4312、第3排出分岐管4313および第4排出分岐管4314それぞれの他端は、排出主管4310の、長手方向に延在した部分に接続している。
【0064】
図9は、
図8に示した水槽設備の動作を示すフローチャートである。
図5のフローチャートに示す動作と同様に、この
図9に示すフローチャートの動作は、不図示の制御装置によって全て自動的に実行されるが、動作の一部または全部を手動で実行させてもよい。
【0065】
第2実施形態の水槽設備1においても、制御装置によって定期的に
図9に示す移送処理が実行される。なお、沈降物の堆積状況を検出する検出手段を設け、その検出手段の検出結果に基づいて移送処理を実行してもよい。
【0066】
移送処理では、まず給水ポンプ423の駆動を開始し、併せて第1給水弁4215を開放する(ステップS21)。これにより、第1吐出口4221aから海水の吐出が開始される。また、ステップS21と略同時に排出ポンプ432の駆動を開始し、併せて第1排出弁4331を開放する(ステップS22)。第1吐出口4221aから海水が吐出されることで、空間形成部材41によって形成された内部空間SA22(
図3参照)に流れが生じる。そして、その流れが生じた部分では、内部空間SA22とその外との間に圧力差が生じてトラフ21によって画定された溝SA21(
図3参照)に堆積した沈降物は、下方開口41a(
図3参照)から内部空間SA22内に吸い込まれる。すなわち、第1吐出口4221aから第1排出口4311aの間の、トラフ21の底面21c(
図3参照)に堆積している沈降物は、内部空間SA22内に吸い込まれる。さらに、吸い込まれた沈降物は、吐出口422aから吐出された海水の流れによって内部空間SA22において吐出方向下流側(移送方向下流側)に向かって移動する。また、排出ポンプ432の駆動によって第1排出口4311aの近傍では、溝SA21から第1排出分岐管4311に向かう流れが発生し、周囲の沈降物が海水とともに排出される。これにより、第1排出口4311aの近傍まで移送された沈降物は第1排出分岐管4311内に吸い込まれて養殖用水槽2から排出され、排出主管4310を通って養殖用水槽2の外部に設けられた濾過槽に送り出される。ここで、内部空間SA22に生じた流れと第1排出分岐管4311による排出により、内部空間SA22の、第1吐出口4221aから第1排出口4311aの間の部分には滑らかな流れが形成される。なお、ステップS21とステップS22は、多少ずれたタイミングでもよいが、略同時に行うことで内部空間SA22に滑らかな移送流が形成される上に養殖用水槽2の水面WLの変化が生じにくいため同時に行う方が好ましい。
【0067】
ステップS22から所定時間が経過したら(ステップS23でYES)、第1給水弁4215を閉塞して第2給水弁4216を開放する(ステップS24)。また、ステップS24と略同時に第1排出弁4331を閉塞して第2排出弁4332を開放する(ステップS25)。これにより、第2吐出口4222aから海水の吐出が開始され、第2排出口4312aの近傍では溝SA21から第2排出分岐管4312に向かう流れが発生して周囲の沈降物が海水とともに排出される。そして、ステップS21とステップS22と同様に、第2吐出口4222aと第2排出口4312aの間の、トラフ21の底面21cに堆積した沈降物は、下方開口41aから内部空間SA22内に吸い込まれて吐出方向下流側に移送され、第2排出分岐管4312内に吸い込まれて養殖用水槽2から排出される。排出された沈降物は、排出主管4310を通って養殖用水槽2の外部に設けられた濾過槽に送り出される。なお、ステップS23における所定時間は、第1吐出口4221aから第1排出口4311aの間の、トラフ21の底面21cに堆積している沈降物を内部空間SA22に吸い込んで第1排出口4311a近傍まで移送するのに十分な時間であり、あらかじめ実験によって求めておく。また、ステップS23においては、ステップS21を所定時間の起算開始時としてもよい。
【0068】
ステップS25から所定時間が経過したら(ステップS26でYES)、第2給水弁4216を閉塞して第3給水弁4217を開放する(ステップS27)。また、ステップS27と略同時に第2排出弁4332を閉塞して第3排出弁4333を開放する(ステップS28)。これにより、第3吐出口4223aから海水の吐出が開始され、第3排出口4313aの近傍では溝SA21から第3排出分岐管4313に向かう流れが発生して周囲の沈降物が海水とともに排出される。そして、ステップS21とステップS22等と同様に、第3吐出口4223aと第3排出口4313aの間の、トラフ21の底面21cに堆積した沈降物は、下方開口41aから内部空間SA22内に吸い込まれて吐出方向下流側に移送され、第3排出分岐管4313内に吸い込まれて養殖用水槽2から排出される。排出された沈降物は、排出主管4310を通って養殖用水槽2の外部に設けられた濾過槽に送り出される。なお、ステップS26における所定時間は、第2吐出口4222aから第2排出口4312aの間の、トラフ21の底面21cに堆積している沈降物を内部空間SA22に吸い込んで第2排出口4312a近傍まで移送するのに十分な時間であり、あらかじめ実験によって求めておく。この第2実施形態では、第1吐出口4221aから第1排出口4311aまでの距離と、第2吐出口4222aから第2排出口4312aまでの距離が等しいため、ステップS26における所定時間と、ステップS23における所定時間は等しい時間である。また、ステップS26においては、ステップS24を所定時間の起算開始時としてもよい。
【0069】
ステップS28から所定時間が経過したら(ステップS29でYES)、第3給水弁4217を閉塞して第4給水弁4218を開放する(ステップS30)。また、ステップS30と略同時に第3排出弁4333を閉塞して第4排出弁4334を開放する(ステップS31)。これにより、第4吐出口4224aから海水の吐出が開始され、第4排出口4314aの近傍では溝SA21から第4排出分岐管4314に向かう流れが発生して周囲の沈降物が海水とともに排出される。そして、ステップS21とステップS22等と同様に、第4吐出口4224aと第4排出口4314aの間の、トラフ21の底面21cに堆積した沈降物は、下方開口41aから内部空間SA22内に吸い込まれて吐出方向下流側に移送され、第4排出分岐管4314内に吸い込まれて養殖用水槽2から排出される。排出された沈降物は、排出主管4310を通って養殖用水槽2の外部に設けられた濾過槽に送り出される。なお、ステップS29における所定時間は、第3吐出口4223aから第3排出口4313aの間の、トラフ21の底面21cに堆積している沈降物を内部空間SA22に吸い込んで第3排出口4313a近傍まで移送するのに十分な時間であり、あらかじめ実験によって求めておく。この第2実施形態では、第1吐出口4221aから第1排出口4311aまでの距離と、第3吐出口4223aから第3排出口4313aまでの距離が等しいため、ステップS29における所定時間と、ステップS23における所定時間は等しい時間である。また、ステップS29においては、ステップS27を所定時間の起算開始時としてもよい。
【0070】
ステップS31から所定時間が経過したら(ステップS32でYES)、給水ポンプ423を停止し、併せて第4給水弁4218を閉塞する(ステップS33)。また、ステップS33と略同時に排出ポンプ432の駆動を停止し、併せて第4排出弁4334を開放する(ステップS34)。なお、ステップS33とステップS34は、多少ずれたタイミングでもよいが、同時に行うことで内部空間SA22に滑らかな移送流が形成される上に養殖用水槽2の水面WLの変化が生じにくいため同時に行う方が好ましい。ステップS32における所定時間は、第4吐出口4224aから第4排出口4314aの間の、トラフ21の底面21cに堆積している沈降物を内部空間SA22に吸い込んで第4排出口4314a近傍まで移送するのに十分な時間であり、あらかじめ実験によって求めておく。この第2実施形態では、第1吐出口4221aから第1排出口4311aまでの距離と、第4吐出口4224aから第4排出口4314aまでの距離が等しいため、ステップS32における所定時間と、ステップS23における所定時間は等しい時間である。また、ステップS32においては、ステップS30を所定時間の起算開始時としてもよい。以上、ステップS21からステップS24までが第1吐出工程の一例に相当し、ステップS24からステップS27までが第2吐出工程の一例に相当し、ステップS27からステップS30までが第3吐出工程の一例に相当し、ステップS30からステップS33までが第4吐出工程の一例に相当する。また、ステップS22からステップS25までが第1吐出工程と対になる第1排出工程の一例に相当し、ステップS25からステップS28までが第2吐出工程と対になる第2排出工程の一例に相当し、ステップS28からステップS31までが第3吐出工程と対になる第3排出工程の一例に相当し、ステップS31からステップS34までが第4吐出工程と対になる第4排出工程の一例に相当する。ステップS34を実行したら移送処理が終了する。
【0071】
この第2実施形態の移送処理においては、第1ノズル4221と第1排出分岐管4311、第2ノズル4222と第2排出分岐管4312、第3ノズル4223と第3排出分岐管4313、第4ノズル4224と第4排出分岐管4314それぞれの組み合わせが一対になって動作する。この組み合わせの数は養殖用水槽2の長手方向の長さに応じて適宜設定すればよい。また、上述した移送工程においては、移送方向上流側の組み合わせから順に吐出工程と排出工程の対を実行することで、排出口よりも下流側に通過してしまった沈降物も次の吐出工程と排出工程の対によって移送することができるという効果がある。ただし、対になる吐出工程と排出工程ごとに動作させれば、多くの沈降物を移送することができるので、多少の沈降物が残ることを許容できる場合は、各吐出工程と排出工程の対ごとの実行順は任意でも構わない。
【0072】
以上説明した第2実施形態の水槽設備1においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。また、養殖用水槽2が長手方向に長いものであっても、その長手方向全長で沈降物を養殖用水槽2の外部に送り出すことができる。またさらに、給水主管4210から分岐した給水分岐管を複数設け、それらの給水分岐管の先端に固定された各ノズルから海水を順に吐出することで、給水ポンプ423が1つで足りるので水槽設備1を安価に構成できる。同様に、排出主管4310に接続した排出分岐管を複数設け、それらの排出分岐管一端の各排出口から沈降物を順に排出することで、排出ポンプ432が1つで足りるので水槽設備1を安価に構成できる。なお、
図7に示した第2変形例と同様にこの第2実施形態の水槽設備1においても、排出主管4310と各排出分岐管を下方に向かって延在させ、または排出主管4310と各排出分岐管を水面WLの最低高さよりも下方で延在させ、若しくはサイフォンの原理を利用し、沈降物が混入した海水が自重や水頭圧で流出するようにして排出ポンプ432を省略してもよい。その場合、排出ポンプ432の駆動と停止が無くなる他は、
図9に示した動作と同様の動作で移送処理を行うことができる。こうすることで、水槽設備1を安価に構成でき、水槽設備1の省エネ化も図れる。
【0073】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態では、移送システムを養殖用水槽に設けた例を用いたが、移送システムは沈殿池などの他の水槽に設けてもよい。また、沈殿池などのように、魚介類存在域SA1と汚物沈降域SA2を分ける必要が無い場合は、仕切板3は省略してもよい。
【0074】
なお、以上説明した実施形態や変更例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の、実施形態や変更例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 水槽設備
2 養殖用水槽
3 仕切板
4 移送装置
21 トラフ
41 空間形成部材
41a 下方開口
43 排出部
422a 吐出口
SA21 溝
SA22 内部空間