(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089473
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】列車制御システムおよび列車制御方法
(51)【国際特許分類】
B61L 25/04 20060101AFI20230621BHJP
B61L 23/00 20060101ALI20230621BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230621BHJP
【FI】
B61L25/04
B61L23/00 Z
B60L3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203982
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 景示
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 究
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125EE51
5H125EE61
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161NN10
5H161NN11
(57)【要約】
【課題】障害物検知のためのセンサの性能低下が、一時的で列車走行の安全性確保の観点から許容可能か、安全上無視できないかを判定し、安全性確保と安定運行の両立を可能とする列車制御システムを構築する。
【解決手段】1以上のセンサと、列車の走行路沿線に存在する1以上の地上設置物の種別、当該地上設置物の位置および当該地上設置物に対して設定される重みを記録したデータベースを有する車上制御装置とを列車に備え、センサは、地上設置物を検知し、車上制御装置は、センサが検知した地上設置物とデータベースに記録された地上設置物とを照合し、データベース上には存在するがセンサで検知できなかった地上設置物を未検知の地上設置物と判定し、当該未検知の地上設置物に対してデータベースの情報に基づいて重みを算出し、未検知の地上設置物が、1つの場合は算出した当該重みが、複数の場合はそれぞれ算出した当該重みの合算値が、所定値以上になるとセンサは異常であると判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のセンサと、
列車の走行路沿線に存在する1以上の地上設置物の種別、当該地上設置物の位置および当該地上設置物に対して設定される重みを記録したデータベースを有する車上制御装置と
を前記列車に備え、
前記センサは、前記地上設置物を検知し、
前記車上制御装置は、前記センサが検知した地上設置物と前記データベースに記録された地上設置物とを照合し、前記データベース上には存在するが前記センサで検知できなかった地上設置物を未検知の地上設置物と判定し、当該未検知の地上設置物に対して前記データベースの情報に基づいて重みを算出し、前記未検知の地上設置物が、1つの場合は算出した当該重みが、複数の場合はそれぞれ算出した当該重みの合算値が、所定値以上となると前記センサは異常であると判定する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の列車制御システムであって、
前記データベースに記録される前記地上設置物に対する重みは、当該地上設置物の検知率に応じて設定される
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の列車制御システムであって、
前記データベースに記録される前記地上設置物に対する重みは、列車走行の安全性に対する当該地上設置物の重要度に応じて設定される
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の列車制御システムであって、
前記地上設置物は、前記列車が走行するレールであり、
前記データベースには、前記種別である前記レールの形状と、当該レールの形状の変化点の位置と、当該レールの形状に対して設定される重みとが記録され、
前記車上制御装置は、前記センサが検知した前記レールの形状と前記データベースに記録された前記レールの形状とを照合し、前記データベース上には存在するが前記センサで検知できなかったレールの形状を未検知のレールの形状と判定し、当該未検知のレールの形状に対して前記データベースの情報に基づいて重みを算出し、前記未検知のレールの形状が、1つの場合は算出した当該重みが、複数の場合はそれぞれ算出した当該重みの合算値が、前記所定値以上となると前記センサは異常であると判定する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の列車制御システムであって、
前記データベースに記録される前記レールの形状に対する重みは、当該レールの形状の検知率に応じて設定される
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の列車制御システムであって、
前記車上制御装置は、前記列車から前記地上設置物までまたは前記レールの形状の変化点までの距離に応じて前記重みを変更する
ことを特徴とする列車制御システム。
【請求項7】
列車の走行路沿線に存在する1以上の地上設置物の種別、当該地上設置物の位置および当該地上設置物に対して設定される重みをデータベースに記録し、
前記列車に搭載した1以上のセンサが、前記地上設置物を検知し、
前記センサが検知した地上設置物と前記データベースに記録された地上設置物とを照合し、前記データベース上には存在するが前記センサで検知できなかった地上設置物を未検知の地上設置物と判定し、
前記未検知の地上設置物に対して前記データベースの情報に基づいて重みを算出し、前記未検知の地上設置物が、1つの場合は算出した当該重みが、複数の場合はそれぞれ算出した当該重みの合算値が、所定値以上になると前記センサは異常であると判定する
ことを特徴とする列車制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の列車制御方法であって、
前記地上設置物は、前記列車が走行するレールであり、
前記データベースに、前記種別である前記レールの形状と、当該レールの形状の変化点の位置と、当該レールの形状に対して設定される重みとを記録し、
前記センサが検知した前記レールの形状と前記データベースに記録された前記レールの形状とを照合し、前記データベース上には存在するが前記センサで検知できなかったレールの形状を未検知のレールの形状と判定し、
前記未検知のレールの形状に対して前記データベースの情報に基づいて重みを算出し、前記未検知のレールの形状が、1つの場合は算出した当該重みが、複数の場合はそれぞれ算出した当該重みの合算値が、前記所定値以上になると前記センサは異常であると判定する
ことを特徴とする列車制御方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の列車制御方法であって、
前記列車から前記地上設置物までまたは前記レールの形状の変化点までの距離に応じて前記重みを変更する
ことを特徴とする列車制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車制御システムおよび列車制御方法に関し、特に障害物検知にセンサを用いる場合に好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、運転士の高齢化に伴う人材不足の懸念やオペレーションコストの低減等の理由により、既設の軌道輸送システムにおいて、運転を自動で行う研究が行われている。
軌道上を輸送用車両が走行する軌道輸送システムでは、軌道上に障害物があった場合、操舵による回避ができないため、軌道上の障害物を検知することは、軌道輸送システムの安全性や運用性を向上させるために重要である。ただし、現状では、運転士が軌道上および経路上の障害物を目視によって検知している。
【0003】
一方、無人運転を行うには、経路上の障害物を自動で検知する仕組みが必要となり、ミリ波レーダー、レーザーレーダーおよびカメラ等のセンサを用いる方法が研究されている。障害物の検知は、これらセンサの性能に依存することになり、センサに何らかの異常が発生し、センサが性能通りの能力を発揮できなくなった場合、障害物の検知を行うことができないという課題がある。
【0004】
したがって、列車走行の安全性を確保するためには、センサの異常を検知できる必要がある。センサの異常検知を行うための技術として、例えば、特許文献1には、地上設置物の設置位置と設置識別子を記録したデータベースを持ち、センサが検出した情報を含むセンサ情報から設置識別子を特定してデータベースを参照することで、センサの精度保障性能として、精度を保障する検知距離を算出し、算出したこの検知距離を用いてセンサの故障を判定する構成、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無人運転においては、センサに何らかの異常が発生し、障害物の検知ができない状態であれば、列車走行の安全が保証できないため、列車を停車させる必要がある。
一方で、センサの実際の性能は、周囲の環境(天候、明るさ、周囲の構造物など)によって変動し得るため、センサに異常がなくても一時的に性能が低下し、その一時的な性能低下をセンサの異常と判定する場合が想定される。
【0007】
そのような周囲の環境による一時的なセンサの性能低下をセンサ異常と判定して列車を停車させるとなると、列車の停車が頻発し、列車の安定した運行が実現できない恐れがある。
特許文献1に記載の技術では、周囲の環境の影響により一時的に精度を保障する検知距離が変動した場合、その状態をセンサの異常と判定する可能性がある。
【0008】
そこで、本発明では、センサの性能低下を検知した場合に、その性能低下が、一時的で列車走行の安全性確保の観点から許容可能な性能低下であるのか、安全上無視できない性能低下であるのかを判定し、安全性の確保と安定した運行の両立を可能とする列車制御システムを構築する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の列車制御システムの一つは、1以上のセンサと、列車の走行路沿線に存在する1以上の地上設置物の種別、当該地上設置物の位置および当該地上設置物に対して設定される重みを記録したデータベースを有する車上制御装置とを列車に備え、センサは地上設置物を検知し、車上制御装置は、センサが検知した地上設置物とデータベースに記録された地上設置物とを照合し、データベース上には存在するがセンサで検知できなかった地上設置物を未検知の地上設置物と判定し、当該未検知の地上設置物に対してデータベースの情報に基づいて重みを算出し、未検知の地上設置物が、1つの場合は算出した当該重みが、複数の場合はそれぞれ算出した当該重みの合算値が、所定値以上になるとセンサは異常であると判定するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、周囲の環境の影響による一時的なセンサの性能低下の場合には、重みの合算値が一定値以下となるように各検知物の重みを設定することより、一時的な性能低下をセンサの異常と判定することを防止し、安定した列車運行の実現が可能となる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る列車制御システムの概要を示す図である。
【
図3】検知物DBに格納されているデータの構成の一例を示す図である。
【
図4】レール形状を検知物とした場合の検知物DBの一例を示す図である。
【
図5】センサ異常判定部によるセンサ異常検知のための処理のフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態として、実施例について図面に基づいて説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例0013】
図1は、本発明の実施例に係る列車制御システムの概要を示す図である。
図2は、実施例に係る列車制御システムの構成要素である、列車101に搭載されている車上制御装置201の構成の一例を示す図である。
【0014】
図2に示す車上制御装置201の動作態様を、
図1を用いて説明する。
列車101は、車上制御装置201およびセンサ205を搭載する。
センサ205を用いて、列車走行路沿線の検知物102を検出する。検知物102の検知は、センサ制御部204で行う。ここで、センサ205は、カメラのような画像撮像装置を想定しているが、ミリ波レーダーやレーザーレーダーなどを用いるセンサでもよい。
【0015】
検知物DB203は、列車101の位置に対して、当該位置で検知可能な検知物102の一覧が格納されているデータベースである。
センサ205が複数搭載されている場合に、センサ毎に異常を検知するのであれば、検知物DB203はセンサ毎に分けて作成してもよい。
【0016】
一方で、複数のセンサを組合せた構成で検知物102を検知した状態を用いて、総合的にセンサの異常を判定する構成としてもよい。その場合は、複数のセンサを用いるとしても検知物DB203は1種類でよい。
【0017】
センサ異常判定部202は、列車制御部206から列車位置を受け取り、受け取った列車位置で検知物DB203を参照し、現在位置において検知可能な検知物102の一覧を得る。
【0018】
センサ異常判定部202は、検知物DB203から得た一覧とセンサ制御部204からの出力である検知した検知物102とを比較する。この比較により、検知した検知物102に不足がある場合に、不足している検知物102を未検知の検知物と判断し、この未検知の検知物が異常判定条件を満足するならば、センサ異常と判定する。
すなわち、センサ異常判定部202は、検知物DB203に格納されているデータに基づいてセンサ異常の判定を行う。
【0019】
図3は、検知物DB203に格納されているデータの構成の一例を示す図である。
検知可能な検知物102は、列車の上りと下りと異なることが想定されるため、上りと下りで検知物DB203をそれぞれ作成することとする。ここで、
図3は、下りの場合の検知物DB203の例を示す。
検知物DB203は、検知物102の種別ごとに、位置、検知距離および重みのデータを有する。
【0020】
位置は、検知物102がある位置の基点からのキロ程を示している。検知距離は、当該検知物102が列車の位置から検知可能となる距離を示している。したがって、例えば、
図3に示す「柱」の検知可能範囲は、キロ程250m~300mである。
【0021】
重みは、各検知物102について設定されている。重みには、最大と最小を定め、最小から最大の範囲で、検知物102までの距離によって変化し、最も接近したときが最大となる。例えば、
図3に示す「柱」であれば、キロ程250m地点では重み0.1、キロ程300m地点では重み0.5となる。また、最大と最小の間はセンサ205の特性によって補間すればよく、例えば、距離に応じて線形補間してもよい。
【0022】
また、重みは、各センサにおける各検知物102の検知率によって決定され、検知率が高い場合には、重みも大きく設定する。このように重みを設定することで、検知率が低い場合には、センサ205に異常がなくても、周囲の環境の影響により検知物102を見逃しても、すぐにセンサ異常と判定することはなく、列車運行の安定性を向上させることが可能となる。
【0023】
さらにまた、重みは、列車走行の安全性に対する検知物102の重要度によって決定してもよい。例えば、
図3に示す「信号機」は、列車走行の安全上重要であるので、重みを大きく設定してもよい。なお、距離に依存せず検知物102の重みを一定にする場合は、重みの最大値と最小値を同じ値に設定すればよい。
【0024】
なお、
図3では、検知物102の種別としては、「柱」および「信号機」を例として掲げたが、他にも、例えば、「器具箱」や「駅ホーム」などを採用することも想定される。
【0025】
センサ異常判定部202は、検知物DB203を参照し、現在位置で検知可能な検知物102とセンサ制御部204が検知した検知物102とを比較して、センサ制御部204が検知できなかった未検知の検知物102を抽出する。
【0026】
そこで、センサ異常判定部202は、抽出した未検知の検知物102の重みをそれぞれ算出し、算出した重みを合算して異常検知指数を算出する。その結果、異常検知指数が1以上となった場合に、センサ異常と判定する。例えば、キロ程300m地点において、
図3に示す「柱」と「信号機」の両方が検知できなかった場合、柱の重みは最大の0.5で信号機の重みは線形補間すると0.8であるので、合算すると1.3となるため、センサ異常と判定する。どちらか一方が検知できていれば、センサ異常とは判定しない。
【0027】
さらに、センサ異常判定部202は、異常検知指数を時系列で累積する。未検知の検知物102がある状態で、その検知物102の位置を列車が通過した場合、当該検知物102は列車の前方に存在しないため、未検知の検知物102とは判定されなくなる。しかしながら、センサ異常を判定する観点からすると、検知物102が未検知であったことは重みとして考慮されるべきである。
【0028】
そこで、センサ異常判定部202は、異常検知指数を毎周期リセットせずに、検知物DB203にある検知物102を新たに検知した場合に、新たな検知物102を検知したことからセンサは正常であると判定できるため、異常検知指数を0にリセットする。
【0029】
これにより、未検知の検知物102の位置を未検知のまま通過した場合には、異常検知指数はリセットされず、その未検知の検知物102の最大の重みが異常検知指数に残る。例えば、
図3に示す「柱」と同じ条件の検知物102が複数離れた位置にあったとして、2本連続して柱が検知できなかった場合は、異常検知指数が1となるためセンサ異常と判定する。ただし、柱を1本検知して次の1本を検知できないという状態が繰り返されれば、検知するたびに異常検知指数は0にリセットされるため、結局異常検知指数としては柱1本分の0.5となるので、センサ異常とは判定しない。
【0030】
複数のセンサ205があり、それらのセンサ205の異常を個別に判定する場合には、異常検知指数はセンサ毎に算出される。
【0031】
他方で、常時検知できる検知物102として、軌道上のレールを対象としてもよい。その場合、レール形状のデータを検知物DB203に格納し、検知したレールの形状が検知物DB203にあるレール形状と一致するかを判定する。
この場合には、検知物DB203の構成は、
図3に示す構成と同じにすることができる。レール形状の変化点、つまりは、直線と曲線の変化点を位置に設定し、変化点を検知できる検知距離とし、各レール形状の検知率を用いて重みを設定すればよい。
【0032】
図4は、レール形状を検知物とした場合の検知物DB203の一例を示す図である。
例えば、
図4では、レールの直線区間がキロ程300m~500mであり、直線区間に入る前の300m手前の地点からレール形状が直線であることが検知できることを示している。キロ程300m地点を超えて直線区間に入った後は、直線の認識については区間内であるため、最大の重みを適用する。ここで、各レール形状の重みは、当該レール形状の検知率で決定すればよい。例えば、半径の小さい曲線であれば、曲線であることの認識が容易になり検知率が高くなるので、重みを大きく設定すればよい。
【0033】
さらに、曲線区間において列車正面の車両限界内に位置する検知物の重みを大きくする構成としてもよい。安全上、車両限界内の障害物を検知できることは重要である。そこで、曲線区間においては、線路脇にある検知物が仮想的に車両限界内の検知物として検知可能であることを利用し、そのような仮想的に車両限界内に位置する検知物の重みを大きくすることで、車両限界内の障害物を検知する性能が低下しているときにセンサ異常と判定することが容易となり、安全性を向上することができる。
【0034】
図5は、センサ異常判定部202によるセンサ異常検知のための処理のフローチャートの一例を示す図である。センサ205が複数ある場合には、
図5に示すフローチャートは、センサ毎に実行されることになる。
センサ異常判定部202は、
図5に示すフローチャートの処理を周期的に実行する。以下に、各ステップの処理態様を説明する。各ステップの処理主体は、センサ異常判定部202であるが、以下ではその主体表記を省略する。
【0035】
<ステップ501>
センサ異常判定部202は、センサ制御部204より、センサ205が現在検知している検知物102の一覧を取得する。
【0036】
<ステップ502>
センサ異常判定部202は、ステップ501で取得した検知物102の一覧と前回検知した検知物102の一覧とを比較し、新たな検知物102を検知したか否かを判定する。検知すれば(Yes)、異常検知指数をリセットするために、ステップ503へ進み、検知しなければ(No)、異常検知指数をリセットする必要がないため、ステップ504へ進む。
【0037】
<ステップ503>
センサ異常判定部202は、センサ205が新たに検知物102を検知したので、センサ205に異常はないと判定し、異常検知指数を0にリセットする。
【0038】
<ステップ504>
センサ異常判定部202は、列車制御部206から取得した現在の列車位置を用いて検知物DB203を参照し、現在位置で検知可能な検知物102のリストを作成する。
【0039】
<ステップ505>
センサ異常判定部202は、ステップ501で取得した検知物102の一覧とステップ504で作成した検知可能な検知物102のリストとを比較し、未検知の検知物102、つまり、検知可能な検知物102のリストにはあるがセンサ205が検知した検知物102の一覧にはない検知物102があるか否かを判定する。ある場合(Yes)は、未検知の検知物102について異常検知指数を更新するために、ステップ506へ進む。無い場合(No)は、異常検知指数を更新する必要がないため、ステップ508へ進む。
【0040】
<ステップ506>
センサ異常判定部202は、未検知の検知物102について異常検知指数を更新する。未検知の検知物102の重みは、列車の現在位置に応じて算出する。異常検知指数の更新は、今までは未検知の新たな検知物、つまり、前回は検知可能リストに含まれていない検知物である場合には、算出した重みをそのまま異常検知指数に加算する。前回も未検知であった検知物の場合には、前回位置における重みと現在位置における重みとの差分を算出し、この差分のみを異常検知指数に加算する。
【0041】
<ステップ507>
センサ異常判定部202は、ステップ505で未検知と判定された検知物102すべてについて、ステップ506による異常検知指数の更新が行われたか判定する。残っている未検知の検知物102があれば(Yes)、当該検知物102についてステップ506の処理を実行する。残っている未検知の検知物102がなければ(No)、異常検知指数の更新は完了しているのでステップ508へ進む。
【0042】
<ステップ508>
センサ異常判定部202は、異常検知指数が1より小さいか否かを判定する。1以上の場合(Yes)は、センサ異常と判定するためステップ509へ進む。1より小さい場合(No)は、センサ異常はないと判定して処理を終える。
【0043】
<ステップ509>
センサ異常を検知したと判定し、予め定められた異常処理を実行する。異常処理としては、例えば、列車走行に支障をきたす場合はブレーキ出力とし、列車運行が継続可能である場合は警報出力のみとしてもよい。すなわち、異常処理の内容は、異常と検知したセンサの重要度を考慮して予め定めておけばよい。
【0044】
以上の処理態様により、検知物毎に設定された重みを用いてセンサの異常を判定することが可能となる。また、重みを適切に設定することで、周囲の環境による一時的なセンサの性能低下をセンサ異常と判定することを防止し、安定した列車運行の実現が可能となる。
【0045】
ここで、周囲の環境によるセンサの性能低下が広範囲にわたって発生した場合、例えば、濃霧が広範囲に発生した場合には、本発明の技術を適用しても、周囲の環境による性能低下ではなく、センサ異常と判定される可能性がある。
【0046】
しかしながら、障害物の検知という観点からは、センサによる障害物検知が安全に行えない状態であるということに変わりはないから、そのような状態でセンサ異常と判定し、列車を停車させたとしても、それは安全上必要な措置であると考えることができる。つまり、周囲の環境によるセンサの性能低下が広範囲にわたって発生した場合に、センサ異常と誤判定しても列車運行に与える影響は同じであることから、本発明の実用に当たって問題となることはない。
【0047】
以上、本発明に係る実施例について説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。