(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089479
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】演算装置、マージン測定方法
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
H04L25/02 302B
H04L25/02 V
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203988
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 亮太
(72)【発明者】
【氏名】荻原 政男
【テーマコード(参考)】
5K029
【Fターム(参考)】
5K029AA02
5K029DD24
5K029KK24
5K029KK27
5K029KK28
(57)【要約】
【課題】演算装置の動作中に動作マージンを測定できる。
【解決手段】演算装置は、第1装置および第2装置と、第1装置および第2装置を相互に接続する差動伝送線路と、差動伝送線路にノイズを印加するノイズ印加部と、ノイズ印加部を制御するノイズ制御部と、第1装置と第2装置との間の通信エラーの発生頻度を測定するマージン測定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1装置および第2装置と、
前記第1装置および前記第2装置を相互に接続する差動伝送線路と、
前記差動伝送線路にノイズを印加するノイズ印加部と、
前記ノイズ印加部を制御するノイズ制御部と、
前記第1装置と前記第2装置との間の通信エラーの発生頻度を測定するマージン測定部と、を備える演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算装置において、
前記マージン測定部による測定結果が記録される記録部をさらに備える、演算装置。
【請求項3】
請求項1に記載の演算装置において、
前記マージン測定部による測定結果を報知する報知部をさらに備える、演算装置。
【請求項4】
請求項1に記載の演算装置において、
前記ノイズ印加部は、前記差動伝送線路に含まれる1対の信号線の少なくとも一方に電圧または電流を印加する、演算装置。
【請求項5】
請求項1に記載の演算装置において、
前記差動伝送線路に含まれる1対の信号線の所定区間において並行に配されるクロストーク試験用配線をさらに備え、
前記クロストーク試験用配線は、前記1対の信号線を構成する第1信号線および第2信号線に対して前記クロストーク試験用配線から前記第1信号線までの距離と前記クロストーク試験用配線から前記第2信号線までの距離が異なり、
前記ノイズ印加部は、前記クロストーク試験用配線に電圧を印加する、演算装置。
【請求項6】
第1装置と、第2装置と、前記第1装置および前記第2装置を相互に接続する差動伝送線路と、を含む演算装置が実行するマージン測定方法であって、
前記差動伝送線路にノイズを印加することと、
前記第1装置と前記第2装置との間の通信エラーの発生頻度を測定することと、を含むマージン測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、およびマージン測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの信号線の電圧差を用いて情報を伝達する差動伝送線路は、ノイズへの耐性が高いことから幅広く用いられている。特許文献1には、相互に接続された第1及び第2の伝送線路と、前記第1の伝送線路のインピーダンスを記憶する第1のインピーダンス記憶回路と、前記第2の伝送線路のインピーダンスと、前記第1のインピーダンス記憶回路に記憶されたインピーダンスとの整合情報を出力する制御回路と、を備えることを特徴とする信号伝送回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、動作中に動作マージンを測定できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による演算装置は、第1装置および第2装置と、前記第1装置および前記第2装置を相互に接続する差動伝送線路と、前記差動伝送線路にノイズを印加するノイズ印加部と、前記ノイズ印加部を制御するノイズ制御部と、前記第1装置と前記第2装置との間の通信エラーの発生頻度を測定するマージン測定部と、を備える。
本発明の第2の態様によるマージン測定方法は、第1装置と、第2装置と、前記第1装置および前記第2装置を相互に接続する差動伝送線路と、を含む演算装置が実行するマージン測定方法であって、前記差動伝送線路にノイズを印加することと、前記第1装置と前記第2装置との間の通信エラーの発生頻度を測定することと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、演算装置の動作中に動作マージンを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】
図4に対応する差動伝送線路の第1の実装例を示す図
【
図6】
図4に対応する差動伝送線路の第2の実装例を示す図
【
図7】クロストーク試験における試験用配線を示す図
【
図8】
図7に対応する差動伝送線路の実装例を示す図
【
図9】演算装置1の起動時の処理を示すフローチャート
【
図12】オフセット試験における詳細処理を示すフローチャート
【
図13】クロストーク試験における詳細処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、
図1~
図13を参照して、演算装置の第1の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は、演算装置1の構成図である。演算装置1は、CPU2と、IOモジュール3と、マージン記録部4と、ノイズ制御部5と、ノイズ印加部6と、差動伝送線路Tと、試験用配線Lと、を備える。CPU2およびIOモジュール3は、差動伝送線路Tにより接続される。差動伝送線路Tは、第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2から構成される。第1差動伝送線路T1は、CPU2からIOモジュール3への情報伝達に用いられる。第2差動伝送線路T2は、IOモジュール3からCPU2への情報伝送に用いられる。
【0010】
CPU2は、中央演算装置である。CPU2は、様々な演算処理の実行、および演算装置1に内蔵される別のハードウエアとの通信を行う。CPU2には、この通信におけるエラーを検出する公知の手法が実装されている。この公知の手法はハードウエアとして実装されてもよいし、ソフトウエアとして実装されてもよい。IOモジュール3は、外部信号の入力、および外部への信号の出力を行う装置である。
【0011】
第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2は伝送路の総称であり、CPU2とIOモジュール3との間には複数組の伝送路が存在する。すなわち第1差動伝送線路T1は、CPU2からIOモジュール3へ情報を伝送する伝送路である第1-1差動伝送線路T1-1、第1-2差動伝送線路T1-2、・・、第1-n差動伝送線路T1-nの総称である。また第2差動伝送線路T2は、IOモジュール3からCPU2へ情報を伝送する伝送路である第2-1差動伝送線路T2-1、第2-2差動伝送線路T2-2、・・、第2-n差動伝送線路T2-nの総称である。また、それぞれの差動伝送線路は1対、すなわち2本の信号線を含む。ここでは便宜的にとNの枝番を付して両者を区別する。たとえば第1-1差動伝送線路T1-1は、差動伝送線路T1-1Pと、差動伝送線路T1-1Nとを含む。また以下では、1対の差動伝送線路を「P極」と「N極」とも呼ぶ。
【0012】
第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2は、ノイズに対する耐性を有するものの限度があり、強いノイズを受けると通信に悪影響が生じる。本実施の形態では、ノイズにより通信に影響が生じるまでの猶予である動作マージンを、演算装置1の稼働中に測定する。以下では動作マージンの測定を「マージン測定」とも呼ぶ。
【0013】
CPU2は、マージン測定部11および報知部15を有する。マージン測定部11は、測定実施時間情報12および閾値設定テーブル13を有する。ただしここでいう「有する」とは概念的なものであり、CPU2のハードウエア上、たとえばレジスタ内に測定実施時間情報12および閾値設定テーブル13が記録されることが必須の構成ではなく、CPU2により実現されるマージン測定部11が自由にアクセス可能な保存領域、たとえばマージン記録部4に測定実施時間情報12および閾値設定テーブル13が記録されていればよい。
【0014】
測定実施時間情報12には、マージン測定を行う時間の間隔、たとえば「60分」などの値が予め設定される。閾値設定テーブル13には、マージン測定において参照される値が予め設定される。閾値設定テーブル13の具体例は後述する。マージン記録部4は記憶装置であり、マージン記録部4には、試験結果14が記録される。マージン記録部4は不揮発性の記憶装置、たとえばフラッシュメモリであることが望ましいが、揮発性の記憶装置、たとえばDRAM(Dynamic Random Access Memory)でもよい。
【0015】
マージン測定部11は、ノイズ制御部5に対して印加するノイズ量を指示する。報知部15は、マージン測定部11による測定結果を報知する。報知部15による報知はたとえば、演算装置1に接続される表示端末901に試験内容とエラー数を表示する。表示端末901がたとえば液晶ディスプレイであれば、報知部15は映像信号を出力する映像出力装置である。表示端末901がたとえば汎用のコンピュータであれば、報知部15はたとえばネットワークインタフェースカードである。
【0016】
ノイズ制御部5は、ノイズ印加部6を制御して、第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2にノイズを印加する。なお
図1ではノイズ制御部5がCPU2の外部に存在するが、ノイズ制御部5がCPU2により実現されてもよい。ノイズ印加部6は、電流電圧源であり、試験用配線Lを用いて第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2にノイズを印加する。なお
図1において一点鎖線で示す試験用配線Lは模式的なものであり、具体的な構成は後述する。
【0017】
マージン測定部11は、第2差動伝送線路T2を通して送られてくる信号のエラー発生頻度を測定する。そしてマージン測定部11は、エラー測定結果をマージン記録部4に記録する。次にマージン測定部11は、ノイズ制御部5を介してノイズ印加部6を介して、第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2へ異なるノイズ量のノイズを印加する。その後、マージン測定部11は再度、第1差動伝送線路T1を通して送られてくる信号のエラー発生頻度を測定し、マージン記録部4に記録する。詳しくは後述するが、本実施の形態では、2種類の試験、すなわちオフセット試験およびクロストーク試験が行われる。
【0018】
図2は、閾値設定テーブル13の一例を示す図である。閾値設定テーブル13には、エラーカウント数の閾値と、マージン測定に用いる、オフセット電流およびパルス振幅の値が予め収められる。オフセット電流の値はオフセット試験において参照され、パルス振幅の値はクロストーク試験において参照される。
図2に示す例では、エラーカウント数の閾値が「1」、オフセット電流が「0.5mA」、パルス振幅が「200mV」に設定されている。
【0019】
図3は、試験結果14の一例を示す図である。試験結果14には、オフセット試験結果とクロストーク試験結果が格納される。オフセット試験結果には、複数回のオフセット試験の結果が含まれる。それぞれのオフセット試験の結果には、開始時刻、終了時刻、オフセット電流、CPUエラーカウント数、およびIOモジュールエラーカウント数が含まれる。
【0020】
開始時刻および終了時刻は、試験を開始した時刻および試験を修了した時刻である。
図3では作図の都合によりそれぞれの時刻を1つの変数で表しているが、たとえば「Ts1s」は、「2021年12月1日3時45分21秒」などの具体的な値である。オフセット電流は、オフセット試験に用いた電流の値である。CPUエラーカウント数は、そのオフセット試験において検出されたCPU2のエラーカウント数である。IOモジュールエラーカウント数は、そのオフセット試験において検出されたIOモジュール3のエラーカウント数である。
【0021】
クロストーク試験結果には、複数回のクロストーク試験の結果が含まれる。それぞれのクロストーク試験の結果には、開始時刻、終了時刻、パルス振幅、CPUエラーカウント数、およびIOモジュールエラーカウント数が含まれる。開始時刻および終了時刻は、試験を開始した時刻および試験を修了した時刻である。パルス振幅は、クロストーク試験に用いた電流の値である。CPUエラーカウント数は、そのクロストークにおいて検出されたCPU2のエラーカウント数である。IOモジュールエラーカウント数は、そのクロストーク試験において検出されたIOモジュール3のエラーカウント数である。
【0022】
図4は、オフセット試験における試験用配線Lを示す図である。
図4では試験用配線Lは他の線と区別するために一点鎖線で示している。オフセット試験では、差動伝送線路に含まれる1対の信号線の両方に電圧が印加される。これを実現するために、各レーンに所定の抵抗、たとえば1kΩの抵抗を介して電圧源であるノイズ印加部6と接続される。具体的には、差動伝送線路T1-1P、差動伝送線路T1-1N、差動伝送線路T2-1P、差動伝送線路T2-2P、差動伝送線路T1-2P、・・・などの全てについて、抵抗を介してノイズ印加部6と接続される。オフセット試験に用いられる試験用配線Lは、抵抗を含む一点鎖線の配線である。
【0023】
図5は、
図4に対応する差動伝送線路の第1の実装例を示す図である。
図5の上段には1対の差動伝送線路の全体を示し、
図5の中段にはA部の拡大図を示し、
図5の下段にはA部の深さ方向の概略図を示す。
図5においてドットのハッチングは表面層配線、すなわち基板の表面に存在する配線を示す。
図5において斜線のハッチングは内層配線、すなわち基板の内部に存在する配線を示す。ハッチングが意味するものは
図6以下でも同様である。表面層配線と内層配線は、
図5の下段に示すように、ビアVにより接続される。
【0024】
図5の中段に示すように、作動伝送路を構成する各レーンには、チップキャパシタTCが基板の表面に実装される。また、試験用配線Lに含まれる抵抗は、チップ抵抗TRとして基板の表面に実装される。チップキャパシタTCおよびチップ抵抗TRは、パッドPを介して表面層配線と接続される。チップキャパシタTCからパッドPおよび表面層配線を介して接続されるビアVは、CPU2に接続される。チップ抵抗TRからパッドPおよび表面層配線を介して接続されるビアVは、ノイズ印加部6に接続される。
図5に示す実装例では、チップキャパシタTCおよびチップ抵抗TRが、CPU2に対して並んで配置される。そのため、CPU2に接する側に広い領域を必要とする代わりに、差動伝送線路T1-1Pと差動伝送線路T1-1Nの幅、言い換えると太さの制限が緩い。
【0025】
図6は、
図4に対応する差動伝送線路の第2の実装例を示す図である。ここでは、
図5との相違点を主に説明する。
図6の上部には1対の差動伝送線路の全体を示し、
図6の下部にはA部の拡大図を示す。深さ方向の概略図は、
図5と略同一なので省略する。
図6は
図5と同様に
図4に対応するため、チップ抵抗TRを介してノイズ印加部6と接続される点は
図5と同様である。ただし
図6では、チップ抵抗TRがCPU2に対してチップキャパシタTCと直列に配される。そのため、CPU2に接する側に広い領域を必要としないが、差動伝送線路T1-1Pと差動伝送線路T1-1Nの幅、言い換えると太さが制限される。
【0026】
図7は、クロストーク試験における試験用配線Lを示す図である。
図7では試験用配線Lは他の線と区別するために一点鎖線で示している。クロストーク試験に用いられる試験用配線Lは、差動伝送線路に含まれる1対の信号線の所定区間において並行に配される。この試験用配線Lの一端はノイズ印加部6に接続され、他端は所定値の抵抗、たとえば50Ωの抵抗を介してグランド電位に接続される。1対の差動伝送線路を構成する2本の信号線それぞれから、試験用配線Lまでの距離を異ならせることにより、一方の信号線にだけ強い影響を与えることでクロストークを生じさせる。
図7に示す例では、試験用配線LはP側よりもN側の配線の近くに配されるので、試験用配線LはN側の配線に強い影響を及ぼす。
【0027】
図8は、
図7に対応する差動伝送線路Tの実装例を示す図である。
図8の上部には1対の差動伝送線路の全体を示し、
図8の下部にはC部の拡大図を示す。
図8の上部において、破線で示すC部は、たとえば差動伝送線路T1-1Pと試験用配線Lの一部を含む。C部において、差動伝送線路T1-1Pと、差動伝送線路T1-1Nと、試験用配線Lとは平行に配される。3つの配線のうち差動伝送線路T1-1Nが真ん中に配されるので、差動伝送線路T1-1Pから試験用配線Lまでの距離よりも、差動伝送線路T1-1Nから試験用配線Lまでの距離の方が必ず短い。そのため、差動伝送線路T1-1Nは試験用配線Lからの影響を受けやすい。
【0028】
図9は、演算装置1の起動時の処理を示すフローチャートである。ステップS201ではCPU2は、測定実施時間情報12を参照してマージン測定用の割り込みタイマーの設定処理を行う。このタイマーの設定により、所定時間ごと、たとえば「60分」ごとにマージン測定が行われる。続くステップS202ではCPU2は、ステップS201において設定した割り込みタイマーを開始して
図9に示す処理を終了する。
【0029】
図10は、マージン測定処理を示すフローチャートである。ステップS301ではマージン測定部11はエラーカウンタを初期化する。続くステップS302ではマージン測定部11は、ノイズ制御部5およびノイズ印加部6を用いてノイズ印加を開始させる。具体的なノイズ印加の方法は後述する。続くステップS303では_は所定時間だけ待機する。続くステップS304ではマージン測定部11は、CPU2およびIOモジュール3におけるエラーを計測する。具体的には、CPU2およびIOモジュール3が備えるエラー検出手法を用いてそれぞれのエラーを計測する。
【0030】
続くステップS305ではノイズ印加を終了し、続くステップS306では計測したエラー情報をマージン記録部4に記録する。そしてステップS307ではマージン測定部11は、ステップS304において計測したエラーの数、すなわちエラーカウントが閾値を超えたか否かを判断する。本ステップにおける閾値は、閾値設定テーブル13に記載されている値である。マージン測定部11は、閾値を超えると判断する場合はステップS308に進んで、報知部15を用いて報知を行う。マージン測定部11は、閾値を超えないと判断する場合、およびステップS308の処理が完了した場合に
図10に示す処理を終了する。
【0031】
図11は、
図10に対応するタイムチャートである。
図11では図示上部から下部に向かって時間が経過している。また
図11では、
図10に対応するステップ番号を付している。まずステップS301では、CPU2がマージン測定部11にエラーカウンタの初期化を指令する。続くステップS302では、CPU2がマージン測定部11にノイズ印加を指示し、マージン測定部11はノイズ制御部およびノイズ印加部6を介して差動伝送線路にノイズを印加する。続くステップS303では所定時間待機し、ステップS304ではエラーを計測する。具体的にはステップS304では、CPU2がマージン測定部11にエラー計測の開始を指示し、マージン測定部11がIOモジュール3およびCPU2のエラーを計測する。
【0032】
続くステップS305ではCPU2がマージン測定部11に印加終了を指示し、ノイズ制御部5およびノイズ印加部6を介して差動伝送線路へのノイズ印加が停止される。その後、マージン測定部11はマージン記録部4の試験結果14にエラー情報を記録する。続くステップS306においてマージン測定部11は、エラーがあればアラートを上げ、報知部15により報知をし、最後にステップS307においてマージン測定の終了を報告する。
【0033】
図12は、オフセット試験における詳細処理を示すフローチャートである。
図12に示す処理は、
図10におけるステップS302~S305に相当する。ステップS341ではマージン測定部11は、ノイズ制御部5およびノイズ印加部6を有効化、すなわち動作を開始させる。本オフセット試験におけるオフセット電流の値は、閾値設定テーブル13に記載されており、たとえば
図2に示した例によれば「0.5mA」に設定される。続くステップS342ではマージン測定部11は、P極の差動伝送線路Tにオフセットを設定して所定時間待機する。続くステップS343ではマージン測定部11は、CPUとIOモジュールのエラー数を測定する。続くステップS344ではマージン測定部11は、P極の差動伝送線路のオフセットを初期値に戻す。
【0034】
続くステップS345ではマージン測定部11は、N極の差動伝送線路にオフセットを設定して所定時間待機する。続くステップS346ではマージン測定部11は、CPUとIOモジュールのエラー数を測定する。続くステップS347ではマージン測定部11は、N極の差動伝送線路のオフセットを初期値に戻す。続くステップS348ではマージン測定部11は、ステップS343およびステップS346において計測したエラー数をCPU2とIOモジュール3のそれぞれで合算して
図12に示す処理を終了する。
【0035】
図13は、クロストーク試験における詳細処理を示すフローチャートである。
図13に示す処理は、
図10におけるステップS302~S305に相当する。ステップS351ではマージン測定部11は、ノイズ制御部5およびノイズ印加部6を有効化、すなわち動作を開始させる。続くステップS352ではマージン測定部11は、クロストーク試験用の試験用配線Lに所定のパルスを印加させて所定の時間待機する。本ステップにおいて印加するパルスの振幅は閾値設定テーブル13に記載されており、
図2の例によれば「200mV」が設定される。続くステップS353ではマージン測定部11は、CPUとIOモジュールのエラー数を測定して
図13に示す処理を終了する。
【0036】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)演算装置1は、CPU2およびIOモジュール3と、CPU2およびIOモジュール3を相互に接続する差動伝送線路Tと、差動伝送線路Tにノイズを印加するノイズ印加部6と、ノイズ印加部6を制御するノイズ制御部5と、CPU2とIOモジュール3との間の通信エラーの発生頻度を測定するマージン測定部11と、を備える。そのため、演算装置1の動作中に動作マージンを測定できる。
【0037】
(2)演算装置1は、マージン測定部11による測定結果が記録されるマージン記録部4を備える。そのため、システムトラブル時にマージン記録部4のログを解析することで、差動伝送線路Tに問題があるか否かを切り分けることができる。
【0038】
(3)演算装置1は、マージン測定部11による測定結果を報知する報知部15を備える。そのため、測定結果をユーザに報知することで、問題発生前にマージンの余裕が少ないことを知らせることができる。またこの予防保守により、未然に通信不良を防ぐことができ、データ破壊のリスクを低減させることが可能となる。
【0039】
(4)ノイズ印加部6は、差動伝送線路Tに含まれる1対の信号線の少なくとも一方に電圧または電流を印加する。そのため演算装置1は、演算装置1の動作中にオフセット試験が実行できる。
【0040】
(5)演算装置1は、差動伝送線路Tに含まれる1対の信号線の所定区間において並行に配されるクロストーク試験用配線を含む試験用配線Lを備える。
図8に示すように、クロストーク試験用配線は、1対の信号線を構成する第1信号線および第2信号線に対してクロストーク試験用配線から第1信号線までの距離とクロストーク試験用配線から第2信号線までの距離が異なる。ノイズ印加部6は、クロストーク試験用配線に電圧を印加する。そのため演算装置1は、演算装置1の動作中にクロストーク試験が実行できる。
【0041】
(変形例1)
上述した実施の形態では、CPU2はIOモジュール3と第1差動伝送線路T1および第2差動伝送線路T2により接続された。しかし差動伝送線路におけるマージン余裕の測定は、CPU2とIOモジュール3との間に限定されず、様々な差動伝送線路に適用できる。
【0042】
(変形例2)
上述した実施の形態では演算装置1は、マージン測定部11による測定結果をマージン記録部4に記録することと、マージン測定部11による測定結果を報知部15により外部に報知することの両方を実行した。しかし演算装置1は、マージン測定部11による測定結果をマージン記録部4に記録することと、マージン測定部11による測定結果を報知部15により外部に報知することの少なくとも一方を行えばよい。この場合には、実行しない機能に対応する構成を備えなくてもよい。たとえば、演算装置1がマージン測定部11による測定結果を記録しない場合には、演算装置1はマージン記録部4を備えなくてよい。たとえば、演算装置1がマージン測定部11による測定結果を外部に報知しない場合には、演算装置1は報知部15を備えなくてよい。
【0043】
(変形例3)
上述した実施の形態では演算装置1は、ノイズ制御部5はオフセット試験およびクロストーク試験の両方を実行する指令をノイズ印加部6に出力した。しかしノイズ制御部5は、オフセット試験およびクロストーク試験の少なくとも一方を実行する指令をノイズ印加部6に出力すればよい。この場合には、演算装置1に内蔵される試験用配線Lは、ノイズ制御部5が出力する試験に対応するものだけでよい。
【0044】
(変形例4)
上述した実施の形態では演算装置1は、マージン測定用の割り込みタイマーを設定した。しかしタイマーを使用することは必須の構成ではなく、たとえば起動するたびに1回のみマージン測定を行ってもよい。
【0045】
(変形例5)
オフセット試験において、一対の作動伝送路の片側にだけオフセット電圧を印加してもよい。具体的には、
図12に示したフローチャートのうち、ステップS342~S344およびステップS345~S347のいずれか一方のみを実行してもよい。
【0046】
(変形例6)
一対の差動伝送線路のP側の経路近くにクロストーク試験用の試験用配線Lを配して、クロストーク試験を行ってもよい。さらに、クロストーク試験用の配線をP側とN側の両側に設け、両者に順番に電圧を印加してもよい。すなわち、両者に同時に電圧を印加するとクロストーク試験とならないので、同一ではないタイミングで両者に電圧を印加することでP側とN側のそれぞれに対してクロストーク試験を行ってもよい。
【0047】
上述した各実施の形態および変形例において、機能ブロックの構成は一例に過ぎない。別々の機能ブロックとして示したいくつかの機能構成を一体に構成してもよいし、1つの機能ブロック図で表した構成を2以上の機能に分割してもよい。また各機能ブロックが有する機能の一部を他の機能ブロックが備える構成としてもよい。
【0048】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…演算装置
2…CPU
3…IOモジュール
4…マージン記録部
5…ノイズ制御部
6…ノイズ印加部
11…マージン測定部
12…測定実施時間情報
13…閾値設定テーブル
14…試験結果
15…報知部
L…試験用配線
T…差動伝送線路
T1…第1差動伝送線路
T2…第2差動伝送線路