(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089503
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】極低温冷却システム及び極低温冷却方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/81 20230101AFI20230621BHJP
F25B 41/42 20210101ALI20230621BHJP
H01F 6/04 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01L39/04
F25B41/42
H01F6/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204031
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政彦
(72)【発明者】
【氏名】栗山 透
(72)【発明者】
【氏名】上野 航生
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA04
4M114AA14
4M114CC03
4M114CC11
4M114DA21
4M114DA26
4M114DA33
4M114DA35
(57)【要約】
【課題】複数の超電導コイルに流す冷媒の流量を制御する制御バルブに不具合が発生した場合でも、超電導コイルを継続して冷却することができること。
【解決手段】極低温冷凍機12と複数の高温超電導コイル11A、11Bとが、高温超電導コイルに対応して複数に分岐された分岐配管部14A、14Bを備える冷却配管13により接続され、各分岐配管部に制御バルブ18A、18Bが配設され、極低温冷凍機から高温超電導コイルに流れる冷媒の流量が制御バルブにより制御される極低温冷却システム10において、複数の分岐配管部は、制御バルブの下流側が、連結バルブ20を備えた連結配管19により連結され、制御バルブに不具合が発生した場合に、この不具合な制御バルブの下流側の連結配管における連結バルブが開放され、この連結バルブを介して、不具合な制御バルブを備えた分岐配管部に、良好な制御バルブを備えた分岐配管部から冷媒を分流するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷凍機と複数の被冷却物とが、前記被冷却物に対応して複数に分岐された分岐配管部を備える冷却配管により接続されると共に、前記各分岐配管部に制御バルブが配設され、
前記極低温冷凍機から前記被冷却物に流れる冷媒の流量が前記制御バルブにより制御されることで前記被冷却物が冷却される極低温冷却システムにおいて、
複数の前記分岐配管部は、前記制御バルブの下流側が、連結バルブを備えた連結配管により連結され、
前記制御バルブに不具合が発生した場合に、この不具合な制御バルブの下流側の前記連結配管に設けられた連結バルブが開放され、この連結バルブを介して、不具合な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部に、良好な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部から冷媒を分流するよう構成されたことを特徴とする極低温冷却システム。
【請求項2】
前記各被冷却物に設けられてその被冷却物の温度を測定する温度測定手段と、この温度測定手段からの温度測定値を入力する制御部と、を更に有し、
前記制御部は、温度測定値の変化率が所定値を超えたときに、この温度測定値を測定した前記温度測定手段が設置された前記被冷却物に冷媒を流す制御バルブに不具合が発生したと判断して、この不具合な制御バルブの下流側の連結配管に設けられた連結バルブの開放を制御するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
【請求項3】
前記各被冷却物に設けられてその被冷却物の温度を測定する温度測定手段と、この温度測定手段からの温度測定値を入力する制御部と、を更に有し、
前記制御部は、温度測定値が所定温度を超えたときに、この温度測定値を測定した前記温度測定手段が設置された前記被冷却物に冷媒を流す制御バルブの不具合の有無に拘らず、この制御バルブの下流側の連結配管に設けられた連結バルブの開放を制御するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
【請求項4】
前記各分岐配管部に設けられてその分岐配管部の内部を流れる冷媒の流量を測定する流量測定手段と、この流量測定手段からの流量測定値を入力する制御部と、を更に有し、
前記制御部は、前記流量測定値が所定流量よりも低下したときに、この流量測定値を測定した前記流量測定手段が設けられた前記分岐配管部に配設された制御バルブに不具合が発生したと判断して、この不具合な制御バルブの下流側の連結配管に設けられた連結バルブの開放を制御するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
【請求項5】
前記連結バルブは、その上流側と下流側の圧力差が所定圧力差を超えたときに開放される差圧駆動バルブにて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却システム。
【請求項6】
極低温冷凍機と複数の被冷却物とが、前記被冷却物に対応して複数に分岐された分岐配管部を備える冷却配管により接続されると共に、前記各分岐配管部に制御バルブが配設され、
前記極低温冷凍機から前記被冷却物に流れる冷媒の流量が前記制御バルブにより制御されることで前記被冷却物が冷却される極低温冷却システムにおいて、
前記各分岐配管部には、前記制御バルブをバイパスすると共にバイパス弁を備えたバイパス配管が設けられ、
前記バイパス弁は、その上流側と下流側の圧力差が所定圧力差を超えたときに開放される差圧駆動バルブにて構成されたことを特徴とする極低温冷却システム。
【請求項7】
極低温冷凍機と複数の被冷却物とが、前記被冷却物に対応して複数に分岐された分岐配管部を備える冷却配管により接続されると共に、前記各分岐配管部に制御バルブが配設され、
前記極低温冷凍機から前記被冷却物に流れる冷媒の流量が前記制御バルブにより制御されることで前記被冷却物が冷却される極低温冷却システムにおいて、
複数の前記被冷却物が伝熱部材にて熱的に接続されて構成されたことを特徴とする極低温冷却システム。
【請求項8】
極低温冷凍機と複数の被冷却物とが、前記被冷却物に対応して複数に分岐された分岐配管部を備える冷却配管により接続されると共に、前記各分岐配管部に制御バルブが配設され、
前記極低温冷凍機から前記被冷却物に流れる冷媒の流量が前記制御バルブにより制御されることで前記被冷却物が冷却される極低温冷却システムにおいて、
前記分岐配管部は、単一の前記被冷却物に対し複数本が接続されて構成されたことを特徴とする極低温冷却システム。
【請求項9】
極低温冷凍機から冷却配管の複数の分岐配管部を経て複数の被冷却物へ冷媒を流し、前記各分岐配管部に配設された制御バルブにより冷媒の流量を制御することで、前記被冷却物を冷却する極低温冷却方法において、
複数の前記分岐配管部における前記制御バルブの下流側を連結する、連結バルブを備えた連結配管を用いて、
前記制御バルブに不具合が発生した場合に、この不具合な制御バルブの下流側の前記連結配管に設けられた連結バルブを開放し、この連結バルブを介して、不具合な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部に、良好な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部から冷媒を分流することを特徴とする極低温冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、極低温冷却システム及び極低温冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超電導機器は極低温に冷却する必要がある。近年、高温超電導体とこれを用いた高温超電導磁石が開発されており、冷却温度が従来の4K近傍から20K程度まで高くなってきた。この温度域では冷却に必要な動力は絶対温度に概ね反比例して減少するため、高温超電導磁石では熱負荷が大きくなる機器への応用も可能となった。その結果、高温超電導機器の冷却系では大きな冷凍能力が必要になる場合が多い。
【0003】
また、冷却温度が高いので従来の液体ヘリウムを用いる方法は適さない。このため、機械式冷凍機を用いて、伝導冷却方式やガス循環方式で高温超電導磁石を冷却する方式が用いられる。特に、熱負荷の大きい冷却系においては、伝導冷却方式では冷凍機と高温超電導磁石との間の温度差が大きくなってしまい、高温超電導磁石の温度が高くなる問題があるため、ガス循環冷却方式が適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-172813号公報
【特許文献2】特開2005-203704号公報
【特許文献3】国際公開第2019/198266号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、
図7に示すように、複数の高温超電導磁石101を用いる大型の極低温冷却システム100を考える。このような極低温冷却システム100は、ガス冷媒を循環ポンプ102により循環させる冷却配管103を分岐して、複数の並列な分岐配管部104を備える配管構成とし、各分岐配管部104を高温超電導磁石101に接続させる形態である。しかしながら、このような配管構成ではガス冷媒流の不安定性の課題が存在する。
【0006】
これは、
図8(A)に示す状態から
図8(B)に示すように、高温超電導磁石101に熱負荷のアンバランスが発生した場合(図中矢印の大きさで熱負荷を示す)に、熱負荷の大きな高温超電導磁石101に接続された分岐配管部104の温度が上昇し、この温度上昇により当該分岐配管部104の圧力損失が増加してガス冷媒が流れ難くなり、更に当該分岐配管部104の温度が上昇するという負の連鎖が発生することである。そこで、並列に配置された各分岐配管部104に制御バルブ105を設けて、各分岐配管部104に流れるガス冷媒の流量を制御する方法がとられる。なお、
図7中の符号106は熱交換器を示す。
【0007】
ところが、上述したガス循環方式の極低温冷却システム100においては、循環するガス冷媒中の不純物が制御バルブ105に堆積して、制御バルブ105が閉塞する課題がある。制御バルブ105が閉塞すると、その制御バルブ105が配設された分岐配管部104にガス冷媒が流れ難くなり、この分岐配管部104にて冷却している高温超電導磁石101の温度が上昇してクエンチに至る課題がある。また、制御バルブ105が完全に閉塞していなくても、圧力損失の大幅な増加により制御バルブ105の制御ができなくなる場合や、制御系の故障の場合でも同様の課題が発生する。
【0008】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、複数の超電導コイルのそれぞれに流す冷媒の流量を制御する制御バルブに閉塞等の不具合が発生した場合でも、超電導コイルを継続して冷却することができる極低温冷却システム及び極低温冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態における極低温冷却システムは、極低温冷凍機と複数の被冷却物とが、前記被冷却物に対応して複数に分岐された分岐配管部を備える冷却配管により接続されると共に、前記各分岐配管部に制御バルブが配設され、前記極低温冷凍機から前記被冷却物に流れる冷媒の流量が前記制御バルブにより制御されることで前記被冷却物が冷却される極低温冷却システムにおいて、複数の前記分岐配管部は、前記制御バルブの下流側が、連結バルブを備えた連結配管により連結され、前記制御バルブに不具合が発生した場合に、この不具合な制御バルブの下流側の前記連結配管に設けられた連結バルブが開放され、この連結バルブを介して、不具合な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部に、良好な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部から冷媒を分流するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の実施形態における極低温冷却方法は、極低温冷凍機から冷却配管の複数の分岐配管部を経て複数の被冷却物へ冷媒を流し、前記各分岐配管部に配設された制御バルブにより冷媒の流量を制御することで、前記被冷却物を冷却する極低温冷却方法において、複数の前記分岐配管部における前記制御バルブの下流側を連結する、連結バルブを備えた連結配管を用いて、前記制御バルブに不具合が発生した場合に、この不具合な制御バルブの下流側の前記連結配管に設けられた連結バルブを開放し、この連結バルブを介して、不具合な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部に、良好な前記制御バルブを備えた前記分岐配管部から冷媒を分流することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、複数の超電導コイルのそれぞれに流す冷媒の流量を制御する制御バルブに閉塞等の不具合が発生した場合でも、超電導コイルを継続して冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図。
【
図2】第2実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図。
【
図3】第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図。
【
図4】第4実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図。
【
図5】第5実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図。
【
図6】第6実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図。
【
図8】
図7の一部であり、(A)が各分岐配管部内の冷媒流量が等しい場合を、(B)が、高温超電導コイルの熱負荷の増大により分岐配管部内の冷媒流量が減少する場合をそれぞれ示す管路図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1)
図1は、第1実施形態に係る極低温冷却システムを示す管路図である。この
図1に示す極低温冷却システム10は、被冷却物としての複数の高温超電導コイル(例えば高温超電導コイル11A及び11B)をガス循環方式で冷却するものであり、極低温冷凍機12、複数の分岐配管部(例えば分岐配管部14A及び14B)を備えた冷却配管13、循環ポンプ15、熱交換器16及び17、複数の制御バルブ(例えば制御バルブ18A及び18B)、連結バルブ20を備えた連結配管19、複数の温度測定手段(例えば温度測定手段21A及び21B)、並びに制御部22を有して構成される。
【0014】
極低温冷凍機12は、第1冷却ステージ12N及び第2冷却ステージ12Mを有し、これらの第1冷却ステージ12N及び第2冷却ステージ12Mが冷却配管13に直列に接続される。また、冷却配管13の分岐配管部14A、14Bは、複数の高温超電導コイル11A、11Bに対応して複数並列に配置されたものであり、それぞれが高温超電導コイル11A、11Bに接続される。これにより、極低温冷凍機12と高温超電導コイル11A、11Bが冷却配管13により接続される。
【0015】
循環ポンプ15は、ループ状の冷却配管13にヘリウムガス等のガス冷媒を循環させるものであり、コンプレッサまたはブロア等であってもよい。ガス冷媒は、循環ポンプ15により極低温冷凍機12の第1冷却ステージ12N、第2冷却ステージ12Mに順次送給されて段階的に冷却される。
【0016】
熱交換器16は冷却配管13に配設されて、高温超電導コイル11A及び11Bを冷却した後のガス冷媒により、極低温冷凍機12の第1冷却ステージ12Nから第2冷却ステージ12Mへ流れる冷媒を熱交換により冷却する。また、熱交換器17は冷却配管13に配設されて、熱交換器16から流出したガス冷媒により、極低温冷凍機12の第1冷却ステージ12Nへ流れる冷媒を熱交換により冷却する。
【0017】
制御バルブ18A、18Bのそれぞれは、冷却配管13の分岐配管部14A、14Bのそれぞれに配設される。循環ポンプ15の作用で冷却配管13内を流れ、熱交換器17、極低温冷凍機12の第1冷却ステージ12N、熱交換器16、極低温冷凍機12の第2冷却ステージ12Mにより順次段階的に冷却されたガス冷媒は、冷却配管13の分岐配管部14Aを経て高温超電導コイル11Aへ、分岐配管部14Bを経て高温超電導コイル11Bへ流れ、これらの高温超電導コイル11A及び11Bを冷却する。このとき、高温超電導コイル11A、11Bに熱負荷のアンバランスが生じている場合に、制御バルブ18A、18Bは、分岐配管部14A、14B内を流れるガス冷媒の流量を好適に確保すべく流量制御して、高温超電導コイル11A及び11Bを良好に冷却する。
【0018】
連結配管19は、冷却配管13の複数の分岐配管部14A、14Bにおける制御バルブ18A、18Bの下流側を連結する配管である。例えば、複数の分岐配管部14A、14Bのうちの2本同士を1本の連結配管19が、制御バルブ18A、18Bの下流側において連結する。
【0019】
この連結配管19に配置された連結バルブ20について、制御部22が、温度測定手段21A、21Bからの温度測定値に基づきその開度を制御する。つまり、温度測定手段21Aは高温超電導コイル11Aに設置されて、その高温超電導コイル11Aの温度を測定し、また、温度測定手段21Bは高温超電導コイル11Bに設置されて、その高温超電導コイル11Bの温度を測定する。これらの温度測定手段21A、21Bからの温度測定値が制御部22に入力される。
【0020】
制御部22は、温度測定手段21A、21Bからの温度測定値が急激に上昇、即ち温度測定値の変化率が所定値を超えたときに、この温度測定値を測定した温度測定手段21Aまたは21Bが設置された高温超電導コイル11Aまたは11Bにガス冷媒を流す制御バルブ18Aまたは18Bに閉塞等の不具合が発生したと判断する。そして、制御部22は、この不具合が発生した制御バルブ18Aまたは18Bの下流側の連結配管19に設けられた連結バルブ20を開放(全開)する。
【0021】
即ち、制御部22は、制御バルブ18Aまたは18Bの不具合によりガス冷媒の流れが不良になった分岐配管部14Aまたは14Bと、ガス冷媒の流れが良好な分岐配管部14Bまたは14Aとを連結する連結配管19の連結バルブ20を開放する。これにより、開放された連結バルブ20を介して、不具合な制御バルブ18Aまたは18Bを備えてガス冷媒の流れが不良な分岐配管部14Aまたは14Bに、良好な制御バルブ18Bまたは18Aを備えてガス冷媒の流れが良好な分岐配管部14Bまたは14Aからガス冷媒が供給される。
【0022】
また、制御部22は、温度測定手段21A、21Bからの温度測定値が所定値を超えたときに、この温度測定値を測定した温度測定手段21Aまたは21Bが設置された高温超電導コイル11Aまたは11Bにガス冷媒を流す制御バルブ18Aまたは18Bの不具合(例えば閉塞)の有無に拘わらず、この制御バルブ18Aまたは18Bの下流側の連結配管19に設けられた連結バルブ20を開放してもよい。これにより、開放された連結バルブ20を介して、温度測定値が所定値を超えた温度測定手段21Aまたは21Bが設置された高温超電導コイル11Aまたは11Bへ、他の制御バルブ18Bまたは18Aを備えた分岐配管部14Bまたは14Aからガス冷媒を分流して供給することが可能になる。
【0023】
以上のように構成されたことから、第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)極低温冷却システム10では、極低温冷凍機12から冷却配管13の複数の分岐配管部14A、14Bを経て、複数の高温超電導コイル11A、11Bへガス冷媒を流し、各分岐配管部14A、14Bに配設された制御バルブ18A、18Bによりガス冷媒の流量が制御されて高温超電導コイル11A、11Bが冷却される。更に、極低温冷却システム10では、複数の分岐配管部14A、14Bが制御バルブ18A、18Bの下流側で、連結バルブ20を備えた連結配管19により連結されている。そして、制御バルブ18Aまたは18Bに不具合が発生した場合に、この不具合な制御バルブ18Aまたは18Bの下流側の連結配管19に設けられた連結バルブ20が開放され、この連結バルブ20を介して、不具合な制御バルブ18Aまたは18Bを備えた分岐配管部14Aまたは14Bに、良好な制御バルブ18Bまたは18Aを備えた分岐配管部14Bまたは14Aからガス冷媒が分流される。この結果、高温超電導コイル11A、11Bを継続して冷却することができる。
【0024】
[B]第2実施形態(
図2)
図2は、第2実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。なお、
図2では、
図1に示す極低温冷却システムにおける極低温冷凍機よりも下方の構成を示している。
【0025】
本第2実施形態の極低温冷却システム25が第1実施形態と異なる点は、冷却配管13の複数の分岐配管部(例えば分岐配管部14A、14B)のそれぞれに、その内部を流れるガス冷媒の流量を測定する流量測定手段が複数(例えば流量測定手段26A、26B)設けられ、制御部27が、各流量測定手段26A、26Bからの流量測定値を入力して、連結配管19に設けられた連結バルブ20の開度を制御する点である。
【0026】
つまり、制御部27は、流量測定手段26A、26Bからの流量測定値が所定流量よりも低下したときに、この流量測定値を測定した流量測定手段26Aまたは26Bが設けられた分岐配管部14Aまたは14Bに配設された制御バルブ18Aまたは18Bに閉塞等の不具合が発生したと判断する。そして、制御部27は、この不具合が発生した制御バルブ18Aまたは18Bの下流側の連結配管19に設けられた連結バルブ20を開放(全開)する。
【0027】
即ち、制御部27は、制御バルブ18Aまたは18Bの不具合によりガス冷媒の流れが不良になった分岐配管部14Aまたは14Bと、ガス冷媒の流れが良好な分岐配管部14Bまたは14Aとを連結する連結配管19の連結バルブ20を開放する。これにより、開放された連結バルブ20を介して、不具合な制御バルブ18Aまたは18Bを備えてガス冷媒の流れが不良な分岐配管部14Aまたは14Bに、良好な制御バルブ18Bまたは18Aを備えてガス冷媒の流れが良好な分岐配管部14Bまたは14Aからガス冷媒が供給される。
【0028】
以上のように、第2実施形態では、高温超電導コイル11A、11Bへガス冷媒を供給する冷却配管13の分岐配管部14A、14B内を流れるガス冷媒の流量を測定して、この分岐配管部14A、14Bに配設された制御バルブ18A、18Bの不具合を判断し、不具合な制御バルブ18Aまたは18Bの下流側の連結配管19に設けられた連結バルブ20を開放するよう制御している。従って、第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)と同様に、高温超電導コイル11A、11Bを継続して冷却することができる。
【0029】
[C]第3実施形態(
図3)
図3は、第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。なお、
図3では、
図1に示す極低温冷却システムにおける極低温冷凍機よりも下方の構成を示している。
【0030】
本第3実施形態の極低温冷却システム30が第1実施形態と異なる点は、冷却配管13の複数の分岐配管部(例えば分岐配管部14A、14B)における制御バルブ18A、18Bの下流側が連結配管31、32により連結され、この連結配管31に差圧駆動バルブ33が、連結配管32に差圧駆動バルブ34が、それぞれ連結バルブとして配設された点である。
【0031】
差圧駆動バルブ33及び34は、ばね等の弾性体による付勢力で通常時には閉弁状態にあるが、その上流側と下流側の圧力差が所定圧力差を超えたときに開放されるものである。
【0032】
つまり、差圧駆動バルブ33は、例えば制御バルブ18Aに閉塞等の不具合が発生して分岐配管部14A内の圧力が分岐配管部14B内の圧力よりも所定圧力値を超えて低くなったときに開放され、分岐配管部14B内のガス冷媒を、連結配管31及び差圧駆動バルブ33を介して分岐配管部14A内へ流す。また、差圧駆動バルブ34は、例えば制御バルブ18Bに閉塞等の不具合が発生して分岐配管部14B内の圧力が分岐配管部14A内の圧力よりも所定圧力差を超えて低くなったときに開放され、分岐配管部14A内のガス冷媒を、連結配管32及び差圧駆動バルブ34を経て分岐配管部14B内へ流す。
【0033】
以上のように、第3実施形態では、高温超電導コイル11A、11Bへガス冷媒を供給する冷却配管13の分岐配管部14A、14B内の圧力差が所定圧力差を超えた際に、分岐配管部14A、14Bを連結する連結配管31の差圧駆動バルブ33、または連結配管32の差圧駆動バルブ34が開放される。従って、分岐配管部14Aが備える制御バルブ18A、または分岐配管部14Bが備える制御バルブ18Bに閉塞等の不具合が発生した場合にも、ガス冷媒が、分岐配管部14Bから連結配管31及び差圧駆動バルブ33を経て分岐配管部14Aへ、また、分岐配管部14Aから連結配管32及び差圧駆動バルブ34を経て分岐配管部14Bへ流れる。この結果、第1実施形態の効果(1)と同様に、高温超電導コイル11A、11Bを継続して冷却することができる。
【0034】
[D]第4実施形態(
図4)
図4は、第4実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図である。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。なお、
図4では、
図1に示す極低温冷却システムにおける極低温冷凍機よりも下方の構成を示している。
【0035】
本第4実施形態の極低温冷却システム40が第1実施形態と異なる点は、連結配管及び連結バルブが存在せず、冷却配管13の複数の分岐配管部(例えば分岐配管部14A、14B)には、例えば分岐配管部14Aに制御バルブ18Aをバイパスするバイパス配管41が、分岐配管部14Bに制御バルブ18Bをバイパスするバイパス配管42がそれぞれ設けられ、バイパス配管41、42のそれぞれに、バイパス弁として機能する差圧駆動バルブ43、44がそれぞれ配設された点である。
【0036】
差圧駆動バルブ43、44は、ばね等の弾性体による付勢力で通常時には閉弁状態にあるが、その上流側と下流側の圧力差が所定圧力差を超えたときに開放されるものである。
【0037】
つまり、差圧駆動バルブ43は、例えば制御バルブ18Aに閉塞等の不具合が発生して、分岐配管部14A内における制御バルブ18A下流側の圧力が上流側の圧力よりも所定圧力差を超えて低くなったときに開放されて、分岐配管部14Aの制御バルブ18A上流側のガス冷媒を、バイパス配管41を経て制御バルブ18Aの下流側に流す。また、差圧駆動バルブ44は、例えば制御バルブ18Bに閉塞等の不具合が発生して、分岐配管部14B内における制御バルブ18B下流側の圧力が上流側の圧力よりも所定圧力差を超えて低くなったときに開放されて、分岐配管部14Bの制御バルブ18B上流側のガス冷媒を、バイパス配管42を経て制御バルブ18Bの下流側に流す。
【0038】
以上のように、第4実施形態では、高温超電導コイル11A、11Bへガス冷媒を供給する冷却配管13の分岐配管部14A、14Bのそれぞれに設けられた制御バルブ18A、18Bの上流側と下流側の圧力差が所定圧力差を超えたときに、バイパス配管41、42にそれぞれ設けられた差圧駆動バルブ43、44が開放する。従って、制御バルブ18Aまたは18Bに閉塞等の不具合が発生した場合に差圧駆動バルブ43または44が開放されて、バイパス配管41または42を経てガス冷媒が高温超電導コイル11Aまたは11Bへ供給される。この結果、第1実施形態の効果(1)と同様に、制御バルブ18A、18Bに不具合が生じた場合においても、高温超電導コイル11A、11Bを継続して冷却することができる。
【0039】
[E]第5実施形態(
図5)
図5は、第5実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図である。この第5実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。なお、
図5では、
図1に示す極低温冷却システムにおける極低温冷凍機よりも下方の構成を示している。
【0040】
本第5実施形態の極低温冷却システム50が第1実施形態と異なる点は、連結配管及び連結バルブが存在せず、複数の高温超電導コイル(例えば高温超電導コイル11A、11B)11が伝熱部材51により熱的に接続されると共に、高温超電導コイル11A、11Bの温度が温度測定手段21A、21Bにより測定され、更に、制御バルブ18A、18Bの開度を制御する制御部52が設けられた点である。
【0041】
つまり、制御部52は、まず、制御バルブ18Aまたは18Bに閉塞等の不具合が発生して高温超電導コイル11Aまたは11Bが温度上昇したときに、温度測定手段21Aまたは21Bの温度測定値に基づいて、上記不具合の発生を判断する。次に、制御部52は、不具合が発生していない良好な制御バルブ18Bまたは18Aの開度を増大させることで、高温超電導コイル11Bまたは11Aにより多くのガス冷媒を供給し、伝熱部材51による熱伝導によって、不具合が発生した制御バルブ18Aまたは18Bに接続された高温超電導コイル11Aまたは11Bを冷却する。
【0042】
以上のように、高温超電導コイル11A、11Bが伝熱部材51により熱的に接続されたことから、制御バルブ18A、18Bに不具合が発生した場合においても、伝熱部材51の熱伝導によって、第1実施形態の効果(1)と同様に、高温超電導コイル11A、11Bを継続して冷却することができる。
【0043】
[F]第6実施形態(
図6)
図6は、第6実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す管路図である。この第6実施形態において第1及び第2実施形態と同様な部分については、第1及び第2実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。なお、
図6では、
図1に示す極低温冷却システムにおける極低温冷凍機よりも下方の構成を示している。
【0044】
本第6実施形態の極低温冷却システム60が第1及び第2実施形態と異なる点は、連結配管及び連結バルブが存在せず、複数の高温超電導コイル(例えば高温超電導コイル11A、11B)のそれぞれ、つまり、単一の高温超電導コイル11Aに複数の分岐配管部(例えば分岐配管部14A-1及び14A-2)が接続され、また、単一の高温超電導コイル11Bに複数の分岐配管部(例えば分岐配管部14B-1及び14B-2)が接続された点である。
【0045】
更に、極低温冷却システム60では、各分岐配管部14A-1、14A-2、14B-1、14B-2のそれぞれに流量測定手段26A-1、26A-2、26B-1、26B-2がそれぞれ配設される。また、極低温冷却システム60では、分岐配管部14A-1、14A-2、14B-1、14B-2にそれぞれ設けられた制御バルブ18A-1、18A-2、18B-1、18B-2のそれぞれの開度を制御する制御部62が設けられている。
【0046】
つまり、制御部62は、まず、流量測定手段26A-1、26A-2、26B-1、26B-2の流量測定値に基づいて、制御バルブ18A-1、18A-2、18B-1、18B-2に閉塞等の不具合が発生したことを判断する。仮に、制御バルブ18A-1と制御バルブ18B-1に不具合が発生したとすると、制御部62は、次に、不具合が発生していない良好な制御バルブ18A-2、18B-2の開度を増大させて、分岐配管部14A-2、14B-2のそれぞれを流れる冷媒流量を増加させ、これにより、高温超電導コイル11A、11Bの冷却を継続して確保する。
【0047】
以上のように、単一の高温超電導コイル11Aが複数の分岐配管部である分岐配管部14A-1及び14A-2に接続され、また、単一の高温超電導コイル11Bが複数の分岐配管部である分岐配管部14B-1及び14B-2に接続されている。従って、例えば分岐配管部14A-1、14A-2のそれぞれに設けられた制御バルブ18A-1、18A-2のいずれかに不具合が発生しても、不具合が発生していない良好な制御バルブ18A-2または18A-1を備える分岐配管部14A-2または14A-1から高温超電導コイル11Aへガス冷媒を供給することができる。この結果、第1実施形態の効果(1)と同様に、高温超電導コイル11A、11Bを継続して冷却することができる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10…極低温冷却システム、11A、11B…高温超電導コイル、12…極低温冷凍機、13…冷却配管、14A、14A-1、14A-2、14B、14B-1、14B-2…分岐配管部、18A、18B…制御バルブ、19…連結配管、20…連結バルブ、21A、21B…温度測定手段、22…制御部、25…極低温冷却システム、26A、26B…流量測定手段、27…制御部、30…極低温冷却システム、31、32…連結配管、33、34…差圧駆動バルブ、40…極低温冷却システム、41、42…バイパス配管、43、44…差圧駆動バルブ、50…極低温冷却システム、51…伝熱部材、52…制御部、60…極低温冷却システム、62…制御部