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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089523
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】地形模型
(51)【国際特許分類】
   G09B 25/06 20060101AFI20230621BHJP
   G09B 23/40 20060101ALI20230621BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
G09B25/06
G09B23/40
G09B19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204060
(22)【出願日】2021-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-06
(71)【出願人】
【識別番号】521550552
【氏名又は名称】杉本 誠三
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 誠三
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032DC02
(57)【要約】
【課題】
陸域部と水域部の関係を把握できる模型を提供すること。
【解決手段】
側板(止水壁)と底板から成る函体(水槽)に、等高線ごとに分割した板状体を積層して構成する地形模型を収め、そこに水を注ぐことで水域部を実際に水没させる。さらに、各水域部を繋ぎ水の行き来をさせる注水孔、透明な側板に付した目盛り、水道に繋いで給水できる給水弁、水道がなくても給水できるタンク及びポンプ、波を発生させるバイブレータを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸域部と、
複数の分離された水底部と、
止水壁と、を備え、
前記水底部に注水すると水域部が形成され、
前記止水壁は、前記水域部からの漏水を防ぎ、
前記陸域部と前記水底部は等高線ごとに分割された複数の層状部品を積層してなる、
ことを特徴とする地形模型。
【請求項2】
前記各水底部をつなぐ注水孔(注水管)を、さらに備え、
前記地形板を積層させることによって地形模型を形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の地形模型。
【請求項3】
前記止水壁は、透明であって目盛りが設けられた、
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の地形模型。
【請求項4】
バイブレータを、さらに備え、
前記バイブレータは前記水域部に波を生成する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の地形模型。
【請求項5】
液体を貯めておくタンクと、
前記タンクから前記液体を前記地形模型へ注水するポンプを、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の地形模型。
【請求項6】
指定した時間をかけて注水又は排水を行うようにする制御部を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項5に記載の地形模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地形等の理解に寄与する地形模型に関する。より具体的には、板状体を積層することによって模型を形成しそこに注水する函体入りの地形模型に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化による海面上昇が世界的な問題となっている。例えば、太平洋に位置するツバルという島国がある。ツバル全土での最高点は4.5mしかなく、3m以上の土地はほとんどない。さらに、インド洋に位置するモルディブは、世界一低い国として知られ最高点は2.4mしかなく、海面が1m上昇すると国土の80%が海中に沈むと言われている。これらの国に限らず、海を有する国にとっては海面の上昇は国土の減少につながり、深刻な問題である。こうした問題を把握したり伝えたりする手段として、各種模型が従来用いられている。
【0003】
また、学校などでは、地理教育として日本全体を表した地形模型が使われている。等高線の概念をまだ知らない生徒や平面の地形図を読めない生徒なども、模型を提示されることで、感覚的に地理を把握できるわけである。
【0004】
さらに、特許文献1のように、等高線ごとに分割した板を重ねて地形模型を構成する方法が知られている。これは、紙や木の板を各高さの輪郭(等高線)で切り出して重ねることで、積み上がり、模型になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-313584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したような従来の模型では、陸域部のみを表現するか、地上と水中が一体となり、直感的に水域部と陸域部との関係を把握できないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水槽に地形模型を収め、そこに注水することで、水中部分を実際に水没させるという点に着目して開発されたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
【0008】
陸域部と、複数の分離された水底部と、止水壁と、を備え、前記水底部に注水すると水域部が形成され、前記止水壁は、前記水域部からの漏水を防ぎ、前記陸域部と前記水底部は等高線ごとに分割された複数の層状部品を積層してなる、地形模型。
【0009】
前記各水底部をつなぐ注水孔(注水管)を、さらに備え、前記地形板を積層させることによって形成した、地形模型。
【0010】
前記止水壁は、透明であって目盛りが設けられた、地形模型。
【0011】
バイブレータを、さらに備え、前記バイブレータは前記水域部に波を生成する、地形模型。
【0012】
液体を貯めておくタンクと、前記タンクから前記液体を前記地形模型へ注水するポンプを、さらに備えた、地形模型。
【0013】
指定した時間をかけて注水又は排水を行うようにする制御部を、さらに備えた、地形模型。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地形模型には、次のような効果がある。
・等高線ごとに分割することで、特定の層だけを取り換えることができる。また、地形への理解を深めることができる。
・注入孔を設けることで、複数の水域部がある場合に、偏りなく同水準に注水できる。
・目盛りを備えることで、水面の高さを定量的に把握できる。
・自動注水手段を備えることで、水面が上下する様子をシミュレーションできる。
・タンクを備えることで、水道がないところでも注水シミュレーションできる。
・バイブレータを備えることで、波の様子をシミュレーションできる。
・制御部を備えることで、所定の時間をかけて水面が上下する様子をシミュレーションできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】地形模型を模式的に表した平面図。
図2】地形模型を模式的に表した斜視図。
図3】地形模型の一部に注水した状態を表す斜視図(注水第1段階)。
図4】地形模型の一部に注水した状態を表す斜視図(注水第2段階)。
図5】地形模型の一部に注水した状態を表す斜視図(注水第3段階)。
図6】地形模型の一部に注水した状態を表す斜視図(注水第4段階)。
図7】地形模型を模式的に表した断面図。
図8】板状体を積層する様子を表した断面図。
図9】側板に目盛りを付した地形模型の側面図。
図10】板状体どうしの間を空けた地形模型の側面図。
図11】地形模型に給排水管、給排水弁を備えた状態を表す模式図。
図12】地形模型に給排水管、給排水弁、ポンプおよびタンクを備えた状態を表す模式図。
図13】バイブレータを側板に備えた状態を表す模式図。
図14】バイブレータを底板に備えた状態を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の地形模型の実施の一例を図に基づいて説明する。
【0017】
<全体概要>
図1は本発明の地形模型全体を表す平面図であり、この図のとおり本発明は主に地形模型Moと函体Boで構成される。地形模型Moには水域部が形成されており、そこに水を注ぐ構成となっている。
図2は本発明の地形模型全体を表す斜視図であり、水が注がれていない状態を表す。
図3は本発明の地形模型全体を表す斜視図であり、一部に水を注いだ状態である。水域部内で、特に深い場所を把握することができる。
図4は本発明の地形模型全体を表す斜視図であり、図3の状態よりさらに水を注いだ状態である。
図5は本発明の地形模型全体を表す斜視図であり、図4の状態よりさらに水を注いだ状態である。
図6は本発明の地形模型全体を表す斜視図であり、水域部全域が水に浸かった状態である。この状態が実際の地形の再現となる。
以下、本発明の地形模型を構成する主な要素ごとに説明する。
【0018】
<函体>
図7のとおり、函体Boは止水壁Wwと1面の底板Bpからなり、上面が空いた直方体となっている。ただし、側板の枚数は4枚に限定する必要はなく3枚以上の任意の枚数で構成することができる。側板の向きも垂直である必要はなく、傾斜させることもできる。また、この形態に限らず、開閉可能もしくは取り外し可能な上板(蓋)を備えることもできる。
止水壁Wwを透明な物とすることもできる。止水壁Wwを透明にすることで、模型の断面を見ることができるようになる。
【0019】
<地形模型>
地形模型Moは、陸域部Grと水底部Bwからなる。陸域部Grは海岸・平野・山岳部等を表し、水底部Bwは海・池・湖・川等を表す。ここで表現されるものは自然の地形に限らず、ダム等の人工物を表すこともできる。
陸域部Grと止水壁Wwに囲まれることによって水底部Bwが形成される。その水底部Bwに注水することで水領域Wfが形成される。複数の水底部Bwが分離して配置されることから、地形模型Moに注水すると分離した複数の水域部Wfが形成される(図3~6)。
【0020】
地形模型の場合は、地形を把握しやすくするために、平面方向の縮尺と比べて高さ方向の縮尺を大きくするのが一般的である。例えば、平面方向の縮尺が1/1000、高さ方向の縮尺が1/500といった具合である。
【0021】
地形模型Moを一つの塊とせず、板状体Pを積層して形成したものとすることもできる。図8では、最下部の第1コンターP1の上に第2コンターP2を重ね、さらに第3コンターP3、第4コンターP4を積み上げていくことで、模型を形成している。
さらに、各板状体を突起Cv及び穴Ccを設けたものとすることもできる。第3コンターP3に設けた穴Cc3―1と、第4コンターP4に設けた突起Cv4-1の位置を合わせて重ねるわけである。こうすることで、穴Cc3-1と突起Cv4-1が噛み合い、重ねられた第3コンターと第4コンターの移動が制限され、相互にずれることがなくなる。
【0022】
<注水孔>
図7のように、注水孔Tuは地形模型Mo上の複数の水底部Bw間に空けられた孔である。注水孔Tuは各陸域部を貫通することで異なる水域部を連結するように設けられる。注水孔Tuが各水域部Wfの底部に設けられることで、水域部Wfに注水された水が各水域部Wfの底部へ移動し、各水域部Wfの水面Wsの高さを等しくすることができる。また、注水孔Tuがあることで、1箇所の水域部Wfに水を注ぐだけで、全ての水域部に注水することができる。
【0023】
2か所の水域部を繋ぐだけでなく、図9のように、3か所以上の水域部がある場合は、各水域部をすべて繋ぐこととする。また、各水域部の底の高さが異なる場合には、注水孔Tuが斜めになり、複数の板状体Pに跨って空けることも考えられる。
【0024】
さらに、図10のように、注水孔Tuに代えて(あるいは加えて)上下に隣接するコンター部材(第2コンターP2や第3コンターP3など)の間に空間を設けることで、異なる水域部Wfどうしで水が流通する構造とすることもできる。具体的には、下層側のコンター部材(第2コンターP2など)に支柱等を設置するとともに、その支柱によって上層側のコンター部材(第3コンターP3など)を支持することによって、いわば地中空洞(支柱のみが存在する空間)を形成する。
【0025】
<目盛り>
図9のように、止水壁Wwに目盛りScを付すことができる。実施例では、図6のような実際の基準水面(T.P.(Tokyo Peil)やO.P.(Osaka Peil)など)の高さを「0」として、水面が原寸で1m上がった状態を「+1」、2m上がった状態を「+2」とし、逆に水面が1m下がった状態を「―1」、2m下がった状態を「―2」としている。以上の例に限らず、水域部の底を「0」として、水面が1m上がったら「+1」、2m上がったら「+2」のように付すこともできる。原寸において1m間隔で目盛りを付す場合、縮尺が1/500だと、2mm感覚で目盛りを付すことになる。
目盛りScを付すことで、水面の高さを数値で把握できる。数値で把握することで同じ高さを再現したり、水面の高さを調整したりできる効果がある。また、透明な材料で止水壁Wwを形成すると、外側からも目盛りScを確認することができてより効果的となる。
【0026】
<自動給水装置>
図11のように、水域部に繋がる給排水管Piおよび給排水弁Vaを設けることもできる。給排水弁Vaは三方弁である。給排水管Piを備えることで、水域部Wfの底部から注水することができ、水面が上がっていく様子を確認することができる。給排水弁Vaを水道に繋いで給排水弁Vaを右向きに開くことで、容易に注水することができる。排水する場合は、給排水弁Vaを下向きに開くことで中の水を出すことができる。
【0027】
また、給排水弁Vaを函体Boの底部(底板Bp上もしくは止水壁Ww下部)に設けることで、地形模型Moの隙間を伝って函体Boの底部に溜まった水を排水することができる。
図12のように、タンクTa及びポンプPuを備えることもできる。タンクTa及びポンプPuを備えることで、水道がない場所でも給排水弁Vaから注水することができる。
さらに、給排水制御部Coを備えることもできる。給排水制御部Coは処理装置(CPU)やメモリ(RAM)等を備え、例えばラズベリーパイ(登録商標)のようなものが考えられる。給排水制御部Coで給排水バルブVaおよびポンプPuを制御して給水速度を調整することで、徐々に水面が上がっていく様子を観察することができる。また、給排水バルブVaの開度、ポンプPuの出力および注水時間を記憶しておくことで、自動で何度も同じ高さの水面を再現することができる。この場合、当該時期の満潮となる水量や干潮となる水量をあらかじめ計算しておき、オペレータが満潮や干潮を指定するだけで相当の水量が注水される仕様とすることもできる。
【0028】
<バイブレータ>
バイブレータViを備えることもできる。図13のように、バイブレータViを止水壁Wwに取り付けることで水面Wsに波を生成することができる。波を生成することで、岸に波が押し寄せる様子を観察できる効果がある。
また、図14のように、バイブレータViを底板Bpに取り付けることも考えられ、地形模型(陸域部や水底部)に取り付けることもできる。バイブレータViを地形模型Moの下に設けることで、直下型地震が起きた場合の波の再現ができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の地形模型は、教育目的での使用が想定される。地形図の読めない生徒等は本発明の地形模型によって地形を視覚及び触覚を通じて把握できる。また、温暖化による海面上昇の懸念など、現代の抱える環境問題を考察する教育機会を提供できる。教育目的以外では、建築や土木の設計では、本発明の模型を用いることで、水場と設計物の関係の把握に役立てることができるなど、社会上・産業上、大きな貢献を期待しうる発明である。
【符号の説明】
【0030】
Mo 模型(Model)
Gr 陸域部(Ground)
Bw 水底部(Bottom of the water)
Wf 水域部(Water field Section)
Ws 水面(Water Surface)
P 板状体
P1 第1コンター
P2 第2コンター
P3 第3コンター
P4―1 第4コンター(1)
P4―2 第4コンター(2)
P4-3 第4コンター(3)
Bo 函体(BOX)
Ww 止水壁(Watertight wall)
Tu 注水孔(Tunnel)
Bu 突起(Bump)
Pi 給排水管(Pipe)
Va 給排水弁(Valve)
Pu ポンプ(Pump)
Ta タンク(Tank)
Co 給排水制御部(Control Unit)
Vi バイブレータ(Vibrator)
Cv 突起(Convex)
Cc 穴(Concave)
Sc 目盛り(Scale)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記各水底部をつなぐ注水孔(注水管)を、さらに備え、地形板を積層させることによって形成した、地形模型。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記各水底部をつなぐ注水孔(注水管)を、さらに備え、
地形板を積層させることによって地形模型を形成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の地形模型。