(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089539
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】VII型コラーゲン分泌促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20230621BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20230621BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20230621BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230621BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230621BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230621BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230621BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230621BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230621BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K36/73
A61K36/736
A61P43/00 105
A61P17/00
A61P19/02
A61P17/14
A61P35/00
A61K8/9789
A61Q19/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204100
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】深田 楓子
(72)【発明者】
【氏名】内山 太郎
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018MD61
4B018ME14
4C083AA111
4C083BB51
4C083CC03
4C083EE12
4C083FF01
4C088AB12
4C088AB51
4C088AB52
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
4C088BA07
4C088BA08
4C088CA01
4C088CA04
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA92
4C088ZA96
4C088ZB21
4C088ZB26
(57)【要約】
【課題】新規VII型コラーゲン分泌促進剤の提供。
【解決手段】本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を有効成分として含有するVII型コラーゲン分泌促進剤を提供する。また、本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を有効成分として含有し、TANGO1発現及び/又は活性促進を介してVII型コラーゲン分泌を促進するVII型コラーゲン分泌促進剤も提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を含むVII型コラーゲン分泌促進剤。
【請求項2】
TANGO1の発現及び/又は活性を促進することによりVII型コラーゲン分泌を促進する、請求項1に記載のVII型コラーゲン分泌促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のVII型コラーゲン分泌促進剤を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はVII型コラーゲン分泌促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
VII型コラーゲンは、皮膚の基底膜と真皮との結合に関与することが知られており、VII型コラーゲンの異常や不足等により栄養障害型表皮水疱症(DEB/RDEB)等の皮膚脆弱性障害や、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部の基底膜真皮側・四肢・食道の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、皮膚弾力の低下、爪の変形・喪失等の疾患や障害を引き起こすことが知られている(特許文献1~4、非特許文献1~4)。
【0003】
上記疾患や障害の予防・治療等のため、VII型コラーゲン発現/産生促進剤として各種物質が探索され、VII型コラーゲン遺伝子発現を増加させるためのアンチセンスオリゴマーやベクターの作成などがなされてきた(特許文献1~4)。しかしながら、コラーゲンは巨大な分子であり、小胞体で合成される際にすでに300nmほどの直鎖状の構造を形成するため、直径が60~90nmである通常の輸送小胞によっては分泌されないという問題がある(非特許文献5、6)。したがって、VII型コラーゲンの遺伝子発現やタンパク合成の促進のみならず、合成されたVII型コラーゲンの分泌を促進する剤の探索が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-221739号公報
【特許文献2】特開2006-206571号公報
【特許文献3】特表2018-518167号公報
【特許文献4】特表2019-508454号公報
【特許文献5】特開2007-320891号公報
【特許文献6】特開2005-255527号公報
【特許文献7】特許第6217038号公報
【特許文献8】特開2012-6905号公報
【特許文献9】特開2019-59698号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Experimental Dermatology, 2008, Volume 17, Issue 7,p. 553-568 https://doi.org/10.1111/j.1600-0625.2008.00723.x
【非特許文献2】J Invest Dermatol. 2013 Jul;133(7):1910-3. doi: 10.1038/jid.2013.10. Epub 2013 Jan 15.
【非特許文献3】https://www.nanbyou.or.jp/entry/5338
【非特許文献4】https://www.dermatol.or.jp/qa/qa31/q02.html
【非特許文献5】東京大学大学院薬学系研究科生理学教室、齋藤健太著、巨大分子VII型コラーゲンの分泌を制御する新規小胞体膜蛋白質の機能解析、https://www.astellas-foundation.or.jp/pdf/research/21/h21_25_saitou.pdf
【非特許文献6】東京大学大学院薬学系研究科生理学教室、齋藤健太著、栄養障害型表皮水疱症の原因遺伝子であるVII型コラーゲンの分泌メカニズムの解析、コスメトロジー研究報告 Vol.20, 2012、https://www.kose-cosmetology.or.jp/research_report/archives/2012/fullVersion/Cosmetology%20Vol20%202012%20p62-65%20Saito_K.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、新規なVII型コラーゲン分泌促進剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、様々な成分についてVII型コラーゲン分泌促進剤としての効果について鋭意研究の結果、カシス、甜茶、及びさくらが、VII型コラーゲン分泌促進剤として特に高い効果を有することを見出し、以下の発明を完成するに至った:
(1)
カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を含むVII型コラーゲン分泌促進剤。
(2)
TANGO1の発現及び/又は活性を促進することによりVII型コラーゲン分泌を促進する、(1)に記載のVII型コラーゲン分泌促進剤。
(3)
(1)又は(2)に記載のVII型コラーゲン分泌促進剤を含む組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤の投与により、VII型コラーゲンの分泌を促進することができる。本発明によれば、VII型コラーゲン分泌促進剤を含有する組成物を提供することができる。VII型コラーゲンの分泌が促進されると、皮膚脆弱性障害、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部基底膜真皮側・四肢・食道等の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、爪の変形・喪失、等の治療/予防、皮膚弾力の維持/改善といった効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例3の結果であり、カシス、甜茶、及びさくらによるTANGO1発現促進効果をこれらの生薬無添加の対照(ctrl)と比較したグラフを示す。対照のTANGO1発現量を100とした相対値(%)として示す(Dunnett検定、#:P<0.1,*:P<0.05,**:P<0.01)。
【
図2】
図2は、比較例1の結果であり、カシス、甜茶、及びさくらによるI型コラーゲン産生促進効果をこれらの生薬無添加の対照(Ctrl)と比較したグラフを示す。対照のI型コラーゲン産生量を100とした相対値(%)として示す(Dunnett検定、#:P<0.1,*:P<0.05,**:P<0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を有効成分として含有するVII型コラーゲン分泌促進剤を提供する。
【0011】
VII型コラーゲンは、COL7A1(Collagen Type VII Alpha 1 Chain)遺伝子によって発現するコラーゲンの一種である。COL7A1遺伝子が変異することにより、栄養障害型表皮水疱症(DEB/RDEB)等の障害を引き起こすことが知られている。また、VII型コラーゲンの異常や不足により、各種皮膚脆弱性障害、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部基底膜真皮側・四肢・食道等の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、爪の変形・喪失といった、疾患や障害が起こることが知られている。また、VII型コラーゲンは、I型コラーゲン、III型コラーゲン等のコラーゲンを皮膚の基底膜に吊り上げることにより皮膚の基底膜と真皮との結合を強固にし皮膚の弾力維持、たるみ予防等に寄与するコラーゲンとしても知られている(特許文献1~4、非特許文献1~4)。
【0012】
上述のように、VII型コラーゲンは巨大なため通常の輸送小胞によっては分泌されないが、かかる巨大なVII型コラーゲンを分泌するための特定の積荷受容体複合体(cTAGE/TANGO1/Sec12)の存在が報告されている。例えば、上記積荷受容体複合体を構成するTANGO1(transport and Golgi orgnization 1)は、小胞体内腔側でVII型コラーゲンと結合することにより、VII型コラーゲン分子の小胞体からの出芽を補助し分泌を促進する役割を担うことが知られている。したがって、VII型コラーゲンの分泌を促進するにはTANGO1等のVII型コラーゲン特異的な分泌補助因子を促進することが有効である。実際、TANGO1遺伝子の発現量が少ないとVII型コラーゲンが小胞体に蓄積し、その分泌が抑制されることが報告されている(非特許文献5、6)。したがって、高いTANGO1発現及び/又は活性促進作用を有することが本発明者らにより発見されたカシス、甜茶、及び/又はさくらによりVII型コラーゲンの分泌を促進することができれば、VII型コラーゲンの有する上記の各種疾患や障害の予防/治療や皮膚弾力の維持/改善等の効果が増強されると考えられる。
【0013】
TANGO1発現及び/又は活性の促進とは、例えば、VII型コラーゲン分泌促進剤を付与していない状態(コントロール)に比べて、VII型コラーゲン分泌促進剤を付与した場合に、TANGO1遺伝子の発現量又はTANGO1タンパク質量を増加させること、例えば有意水準を5%とした統計学的有意差(例えばスチューデントのt検定)をもって亢進していることを意味し得る。または、TANGO1発現及び/又は活性の促進とは、例えばVII型コラーゲン分泌促進剤を付与していない状態(コントロール)に比べて、VII型コラーゲン分泌促進剤を付与した場合に、TANGO1遺伝子の発現量又はTANGO1タンパク質量が、例えば5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、200%以上、300%以上、400%以上、又は500%以上亢進していることを意味し得る。
【0014】
このようなTANGO1発現及び/又は活性の促進作用は、in vivo、in vitro、ex vivo等を含む各種方法で測定できる。例えば、被験物質を肝細胞、乳腺細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、といった細胞に投与し、その細胞におけるTANGO1のmRNA発現量をqPCRなどの方法により求める、あるいはタンパク量をウエスタンブロッティング等の方法により求める等により決定できる。しかしながら測定方法は上記方法に限定されず、他の任意の方法を採用してもよい。例えば、ヒト等の動物に投与した後に肝臓、乳房、脂肪、皮膚組織/モデルなどの試料におけるTANGO1のmRNA発現量又はTANGO1タンパク質量を測定するといったin vivoやex vivoの方法を採用してもよい。
【0015】
VII型コラーゲン分泌促進作用も、in vivo、in vitro、ex vivo等を含む各種方法で測定できる。例えば、上述のようにTANGO1等のVII型コラーゲン特異的な分泌補助因子のTANGO1発現及び/又は活性を測定することによって決定してもよいし、非特許文献6等で報告されているcTAGE5といったVII型コラーゲン分泌に関与することが知られている他の因子の発現及び/又は活性を測定してもよいし、あるいは、小胞体内腔内外のVII型コラーゲン量を測定するといった方法も可能である。
【0016】
よって、本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を有効成分として含有し、TANGO1の発現及び/又は活性促進を介してVII型コラーゲン分泌を促進するVII型コラーゲン分泌促進剤を提供する。また、本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を有効成分として含有するVII型コラーゲン分泌促進剤を含む組成物も提供する。本発明の組成物は、化粧品組成物又は食品組成物であってもよい。また、本発明の組成物は、TANGO1の発現及び/又は活性の促進を介してVII型コラーゲン分泌を促進することにより、皮膚脆弱性障害、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部基底膜真皮側・四肢・食道等の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、爪の変形・喪失、等の治療/予防、皮膚弾力の維持/改善から選択される1又は複数の作用を増強するための組成物であってもよい。
【0017】
本発明で用いられるカシス(クロフサスグリ、ブラックカラント、Ribes nigrum)は、スグリ科スグリ属の低木である。果実を使用することが好ましい。カシスには、皮膚に潤いや張りをもたらす作用や生体コラーゲン合成促進作用が知られている(特許文献5,6等)。
【0018】
本発明で用いられる甜茶(テンヨウケンコウシ、Rubus suavissimus)は、バラ科キイチゴ属の低木である。葉を使用することが好ましい。甜茶には、生体コラーゲン合成促進作用やコラーゲンのCML(糖化反応最終生成物)生成阻害作用が知られている(特許文献6,7等)。
【0019】
本発明で用いられるさくら(Cerasus Mill.)は、バラ科サクラ属又はスモモ属の落葉広葉樹であり、桜の種は特に限定されず、例えば、ソメイヨシノ(Cerasus yedoensis)、ヤマザクラ(Cerasus jamasakura)、オオシマザクラ(Cerasus speciosa)、オオヤマザクラ(Cerasus sargentii)など各種を使用してもよい。花及び/又は葉を使用することが好ましい。さくらには、I型コラーゲン産生遺伝子発現促進作用、コラゲナーゼ遺伝子発現抑制作用、角層水分量抑制、メラニン量増加抑制、しわ、肌弾力改善作用が知られている(特許文献8,9等)。
【0020】
しかしながら、上記生薬のいずれもVII型コラーゲン分泌促進作用やTANGO1の発現/活性促進作用についての報告はない。
【0021】
本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤は、有効成分としてカシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上含有することがある。ある実施形態では、本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬からなることもある。
【0022】
上述の生薬は公知の物質であり、公知の方法により容易に搾汁、乾燥、精製、抽出等ができ、また市販品を容易に入手可能である。生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の観点から、抽出物、乾燥物、乾燥粉末、原料の粉末物、搾汁液等として用いることもできる。原料により、いずれの形態を用いるかは適宜選択することができ、更に必要に応じて殺菌等の処理を施してもよい。
【0023】
抽出物として用いる場合、その抽出物の抽出方法は例えば溶媒抽出により行うことができる。溶媒抽出の場合には、植物の全草あるいは各種部位(果実、葉、花、根等)を必要に応じて乾燥させ、更に必要に応じて細断又は粉砕した後、水性抽出剤、水、例えば冷水、温水、又は沸点若しくはそれより低温の熱水、あるいは含水有機溶媒、有機溶媒、例えばエタノール、メタノール、エーテル、1、3-ブチレングリコール等を原料の性質や組成物の用途等により好ましい溶媒を適宜選択して常温で又は加熱して用いることにより抽出される。しかしながら、抽出方法は溶媒抽出に限定されず、当業界で知られている常用の手法によってもよく、本発明で用いる抽出物の抽出方法や抽出物の形態は、本発明の効果を損なわない限り任意である。上記抽出物の形態は、抽出液自体だけでなく、常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよく、更に、抽出液を乾燥することによって得られる粉状あるいは塊状の固体であってもよく、搾汁液を常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよい。
【0024】
含水有機溶媒の例として、含水エタノール等の含水低級アルコール(たとえば、C1~C4)を用いてもよく、その場合の含水率は、例えば0~10v/v%、10~15v/v%、10~20v/v%、20~30v/v%、30~50v/v%、50~80v/v%、60~85v/v%、70~90v/v%、85~99.5v/v%等であってもよい。
【0025】
乾燥粉末を得る方法としては、植物の全草あるいは各種部位(葉、花、根等)を細断又は粉砕しその後に乾燥する方法や、植物を乾燥した後に細断又は粉砕して乾燥粉末を得る方法がある。また、植物を細断又は粉砕し、発酵や酵素処理を施した後、乾燥し、更に必要に応じて所定の粒径にすべく粉砕する方法等を適宜採ることができる。
【0026】
本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤又は組成物は、医薬品、医薬部外品、食品組成物、化粧品組成物等であってもよい。外用投与または経口投与することができる。外用投与の形態としては、例えば、クリーム、乳液、液体、シート、スプレー、ゲルなど任意に選択することができる。経口投与の形態としては、例えば、錠剤、サプリメント、飲料、粉末など任意に選択することができる。
【0027】
本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤又は組成物におけるカシス、甜茶、及びさくらの配合量は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、外用投与する場合、例えば、カシス、甜茶、及びさくらの配合量は、本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤又は組成物の総重量当たり0.0001~50重量%、0.001~50重量%、0.01~50重量%、0.01~5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.1重量等とすることができる。
【0028】
また、投与頻度は、4週間に1回、2週間に1回、1週間に1回、3日に1回、2日に1回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、都度投与等任意に選択できるがこれらに限定されない。
【0029】
本発明のVII型コラーゲン分泌促進剤又は組成物は、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては賦形剤等を含ませることができる。
【0030】
賦形剤としては、所望の剤型としたときに通常用いられるものであれば何でも良く、例えば、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、シクロデキストリンなどのでんぷん類、結晶セルロース類、乳糖、ブドウ糖、砂糖、還元麦芽糖、水飴、フラクトオリゴ糖、乳化オリゴ糖などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトールなどの糖アルコール類が挙げられる。これら賦形剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
その他の添加剤として、着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、油分、水、アルコール類、キレート剤、シリコーン類、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、中和剤等の公知のものを適宜選択して使用できる。
【0032】
また、本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を投与することによりTANGO1の発現及び/又は活性促進を介してVII型コラーゲンの分泌を促進するための方法も提供する。また、本発明は、カシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬を投与することによりTANGO1の発現及び/又は活性促進を介してVII型コラーゲンの分泌を促進することにより、皮膚脆弱性障害、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部基底膜真皮側・四肢・食道等の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、爪の変形・喪失、等の治療/予防、皮膚弾力の維持/改善から選択される1又は複数の作用を増強するための方法も提供する。本発明の方法は、美容を目的とする方法であり、医師や医療従事者による治療ではないことがある。
【0033】
さらに、本発明は、皮膚脆弱性障害、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部基底膜真皮側・四肢・食道等の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、爪の変形・喪失、等の治療/予防、皮膚弾力の維持/改善から選択される1又は複数の作用を増強するための医薬の製造におけるカシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬の使用も提供する。本発明は、TANGO1の発現及び/又は活性促進を介してVII型コラーゲンの分泌を促進することにより、皮膚脆弱性障害、びらん、関節拘縮、脱毛、真皮表皮接合部基底膜真皮側・四肢・食道等の局所性水疱、全身性水疱、扁平上皮癌、爪の変形・喪失、等の治療/予防、皮膚弾力の維持/改善から選択される1又は複数の作用を増強する方法に使用するためのカシス、甜茶、及びさくらからなる群より選択される1つ又は複数の生薬も提供する。
【実施例0034】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0035】
実施例1:試料の調製
VII型コラーゲン分泌促進剤の候補試料として、カシス、甜茶、及びさくらを以下の表のように調製した。
【表1】
その他動植物の抽出物といった天然由来成分や合成成分を含め、合計15種類の候補試料を調製した。試料はDMSOを用いて調整し、適宜、培養液で希釈して評価検体として10μg/mlとなるように調整した。対照として評価検体を含まない同量のDMSOを用いた。
【0036】
実施例2:ヒト皮膚線維芽細胞の培養
成人ヒト皮膚線維芽細胞(Thermo Fisher Scientific社)を40,000cells/cm2の密度で細胞培養ディッシュに播種し、10%FBS(Fetal Bovine Serum)を含むDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)で37℃、5%CO2雰囲気下で一晩培養し実施例3及び比較例1に供した。
【0037】
実施例3:TANGO1発現促進作用の評価
試料の添加
実施例2で一晩培養した細胞の培地を0.5%FBSを含むDMEMに交換し、24時間後に各試料を10μg/mLになるように添加し、更に24時間培養した。対照にはDMSOを同量添加した。
【0038】
細胞からのRNAの抽出
試料を添加してから24時間後に培地を除去し、市販のRNA抽出試薬(RNeasy Mini Kit.Qiagen)を用いて、細胞の溶解とRNAの抽出を行なった。
【0039】
qPCRによるTANGO1発現量の評価
抽出したRNAを鋳型として、市販のPCR試薬(TaqMan RNA-to CT 1step Kit、Cat No.4392938)(ライフテクノロジーズ社製)とPCR装置(LightCycler 480 System)(Roche社製)を用いて定量PCRを実施し、TANGO1遺伝子の発現量を測定した。内部標準としてβactin遺伝子の発現量も同時に測定した。PCR用プライマーには各遺伝子に特異的な市販のPCR用プライマー(Thermo Fisher Scientific社、Cat No.Hs01558382_m1(TANGO1)、Hs01060665_g1(βactin))を用いた。
【0040】
結果を
図1に示す。各試料を添加した場合のTANGO1遺伝子発現量を、対照のTANGO1遺伝子発現量を100とした比較として示す。
図1より、カシス、甜茶、及びさくらには、これらの生薬を含まない対照と比較して有意なTANGO1の発現が促進されたことが確認された。したがって、カシス、甜茶、及びさくらにはTANGO1発現促進を介してVII型コラーゲンの分泌を促進する作用があることが示唆される。
【0041】
比較例1:I型コラーゲン産生促進作用の評価
試料の添加
実施例2で一晩培養した細胞の培地を0.5%FBSを含むDMEMに交換し、24時間後に各試料を10μg/mLになるように添加し、更に72時間培養した。対照にはDMSOを同量添加した。
【0042】
ELISAによるI型コラーゲン量の測定
試料を添加してから72時間後に培養上清を回収し、Procollagen Type I C-peptide (PIP) EIA Kit(タカラバイオ株式会社)を用いて、I型コラーゲン量を測定した。
【0043】
結果を
図2に示す。
図2より、カシス、甜茶、及びさくらを添加したところ、I型コラーゲン量は増加しておらず、むしろ対照よりも減少する傾向にありI型コラーゲン産生促進作用は認められなかった。したがって、カシス、甜茶、及びさくらの作用はVII型コラーゲンに特異的である可能性が示唆される。