(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089542
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】海苔養殖用肥料散布装置及び海苔養殖用肥料散布方法
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
A01G33/02 101F
A01G33/02 101A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204113
(22)【出願日】2021-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】505455417
【氏名又は名称】株式会社イツワ工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
【テーマコード(参考)】
2B026
【Fターム(参考)】
2B026AA01
2B026AB01
2B026AD02
2B026EA02
(57)【要約】
【課題】海苔養殖用肥料の効用を得られるようにするとともに、海苔養殖用肥料が無駄に消費されてしまうのを防止すること。
【解決手段】本発明では、船体(2)の前側に海苔養殖用肥料(4)を散布するためのノズル(5)を設けるとともに、船体(2)の後側に海苔養殖用肥料(4)を貯留するための上方を開口させたタンク(6)を設けた海苔養殖用肥料散布装置(1)を用い、支柱(9)に昇降自在に吊設した海苔養殖網(12)が海面(14)から離間している時に、海苔養殖網(12)に沿って海苔養殖用肥料散布装置(1)を移動させながら、タンク(6)に貯留した海苔養殖用肥料(4)をノズル(5)から海苔養殖網(12)に向けて散布し、同時に余剰の海苔養殖用肥料(4)をタンク(6)に回収することにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網に向けて下方から海苔養殖用肥料を散布するためのノズルを船体の前側に設けるとともに、海苔養殖用肥料を貯留するとともにノズルから海苔養殖網に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料を回収するための上方を開口させたタンクを船体の後側に設けたことを特徴とする海苔養殖用肥料散布装置。
【請求項2】
船体の前側に海苔養殖用肥料を散布するためのノズルを設けるとともに、船体の後側に海苔養殖用肥料を貯留するための上方を開口させたタンクを設けた海苔養殖用肥料散布装置を用い、
支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網が海面から離間している時に、海苔養殖網に沿って海苔養殖用肥料散布装置を移動させながら、タンクに貯留した海苔養殖用肥料をノズルから海苔養殖網に向けて散布し、同時に余剰の海苔養殖用肥料をタンクに回収することを特徴とする海苔養殖用肥料散布方法。
【請求項3】
前記ノズルから海苔養殖網に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料が全てタンクに回収される速度となるように船体の進行速度を調整することを特徴とする請求項2に記載の海苔養殖用肥料散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網に海苔養殖用肥料を散布するための海苔養殖用肥料散布装置及び海苔養殖用肥料散布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海苔を養殖する際には、海に立設した複数本の支柱に海苔養殖網を昇降自在に吊設し、海苔養殖網に海苔の種を採苗し、潮の干満によって海苔養殖網を昇降させて海苔を育成させ、その後、海苔養殖網から海苔を摘菜する。
【0003】
そして、育成中の海苔の育成不良や色落ちなどを防止して海苔の品質を向上させるために、従来においては、海苔の育成時に海に海苔養殖用肥料を散布している(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のように海苔養殖用肥料を海に散布すると、潮の流れなどによって海苔養殖用肥料が海中に拡散してしまう。
【0006】
そのため、従来の海苔養殖用肥料の散布方法では、所要量の海苔養殖用肥料が育成中の海苔に散布されないことになり、十分な効用を得ることができず、海苔養殖用肥料を無駄に消費していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、海苔養殖用肥料散布装置において、支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網に向けて下方から海苔養殖用肥料を散布するためのノズルを船体の前側に設けるとともに、海苔養殖用肥料を貯留するとともにノズルから海苔養殖網に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料を回収するための上方を開口させたタンクを船体の後側に設けることにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、海苔養殖用肥料散布方法において、船体の前側に海苔養殖用肥料を散布するためのノズルを設けるとともに、船体の後側に海苔養殖用肥料を貯留するための上方を開口させたタンクを設けた海苔養殖用肥料散布装置を用い、支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網が海面から離間している時に、海苔養殖網に沿って海苔養殖用肥料散布装置を移動させながら、タンクに貯留した海苔養殖用肥料をノズルから海苔養殖網に向けて散布し、同時に余剰の海苔養殖用肥料をタンクに回収することにした。
【0009】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項2に係る本発明において、前記ノズルから海苔養殖網に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料が全てタンクに回収される速度となるように船体の進行速度を調整することにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、海苔養殖用肥料散布装置において、支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網に向けて下方から海苔養殖用肥料を散布するためのノズルを船体の前側に設けるとともに、海苔養殖用肥料を貯留するとともにノズルから海苔養殖網に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料を回収するための上方を開口させたタンクを船体の後側に設けることにしているために、海苔養殖網の海苔に所要量の海苔養殖用肥料を直接散布することができ、海苔養殖用肥料の効用を十分に得ることができるとともに、海苔養殖用肥料を無駄に消費してしまうのを防止することができる。
【0012】
また、本発明では、海苔養殖用肥料散布方法において、船体の前側に海苔養殖用肥料を散布するためのノズルを設けるとともに、船体の後側に海苔養殖用肥料を貯留するための上方を開口させたタンクを設けた海苔養殖用肥料散布装置を用い、支柱に昇降自在に吊設した海苔養殖網が海面から離間している時に、海苔養殖網に沿って海苔養殖用肥料散布装置を移動させながら、タンクに貯留した海苔養殖用肥料をノズルから海苔養殖網に向けて散布し、同時に余剰の海苔養殖用肥料をタンクに回収することにしているために、海苔養殖網の海苔に所要量の海苔養殖用肥料を直接散布することができ、海苔養殖用肥料の効用を十分に得ることができるとともに、海苔養殖用肥料を無駄に消費してしまうのを防止することができる。
【0013】
特に、ノズルから海苔養殖網に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料が全てタンクに回収される速度となるように船体の進行速度を調整することにした場合には、海苔養殖用肥料が無駄に消費されてしまうのをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る海苔養殖用肥料散布装置を示す説明図。
【
図2】本発明に係る海苔養殖用肥料散布方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る海苔養殖用肥料散布装置及び海苔養殖用肥料散布方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、海苔養殖用肥料散布装置1は、船体2の後端に推進及び操舵可能な船外機3を取付けている。船外機3には、コントローラ(図示省略)が接続されており、コントローラによって海苔養殖用肥料散布装置1(船体2)の推進方向や推進速度を制御することができるようにしている。
【0017】
船体2は、前側に液状の海苔養殖用肥料4を散布するためのノズル5を船体2の左右幅方向に向けて間隔をあけて複数設けている。
【0018】
ノズル5は、海苔養殖用肥料4を上方へ向けて噴射できればよく、噴射する方向や速度を変更できるようにしてもよい。その場合には、ノズル5にコントローラを接続して、コントローラによって海苔養殖用肥料4の噴射方向や噴射速度を制御できるようにする。
【0019】
また、船体2は、後側に海苔養殖用肥料4を貯留するとともにノズル5から散布した余剰の海苔養殖用肥料4を回収するための上方を開口させたタンク6を設けている。
【0020】
タンク6は、海苔養殖用肥料4の濃度を調節するための濃度調節機や異物を除去するための異物除去装置を設けてもよく、また、余剰の海苔養殖用肥料4の回収効率を向上させるために開口部に漏斗状の周壁を設けてもよい。
【0021】
タンク6は、ノズル5にポンプ7を介して接続している。ポンプ7は、コントローラに接続されており、コントローラによってノズル5から噴射される海苔養殖用肥料4の噴射量を制御できるようにしている。
【0022】
海苔養殖用肥料散布装置1は、以上に説明したように構成されており、海苔の養殖時に、海苔養殖用肥料4を散布するために使用される。
【0023】
海苔の養殖は、海底8に複数本の支柱9を前後及び左右に間隔をあけて立設し、各支柱9に浮動環10を支柱9に沿って昇降自在に設け、各浮動環10に吊綱11を介して海苔養殖網12を取付けている。各浮動環10は、支柱9の上端部に取付けられた取付綱13が取付けられている。これにより、潮の干満に応じて支柱9に沿って浮動環10が昇降し、それに合わせて海苔養殖網12が海面14に張設され、また、干潮時には、浮動環10の下降が取付綱13によって規制され、海苔養殖網12が海面14よりも上方で吊設され、養殖されている海苔の天日による殺菌が行われる。
【0024】
この海苔養殖網12が海面14よりも上方で吊設している状態においては、海苔養殖網12が海面14から離間しており、海面14と海苔養殖網12との間で海苔養殖用肥料散布装置1を移動させることができる。
【0025】
そこで、支柱9に昇降自在に吊設した海苔養殖網12が海面14から離間している時に、
図2示すように、海苔養殖網12に沿って海苔養殖用肥料散布装置1を移動させながら、タンク6に貯留した海苔養殖用肥料4をノズル5から海苔養殖網12に向けて散布し、同時に海苔養殖網12や海苔に付着しなかった余剰の海苔養殖用肥料4をタンク6に回収する。なお、
図2において、白抜き矢印は、ノズル5から海苔養殖用肥料4を散布せずに海苔養殖用肥料散布装置1が移動することを示し、黒塗り矢印は、ノズル5から海苔養殖用肥料4を散布しながら海苔養殖用肥料散布装置1が移動することを示している。
【0026】
その際に、人手やコントローラによって船外機3やノズル5やポンプ7を調整することもでき、ノズル5から海苔養殖網12に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料4が全てタンク6に回収される速度となるように船体2の進行速度やノズル5の噴射速度などを調整することもできる。
【0027】
また、遠隔操作によって海苔養殖用肥料散布装置1を制御するようにしてもよく、GPS信号等を用いて予め設定されたルートで海苔養殖用肥料散布装置1を移動させながら海苔養殖用肥料4の散布及び回収を行わせることもできる。また、海苔養殖用肥料散布装置1に上方の海苔養殖網12を検出するセンサーを設けて、センサーで上方に海苔養殖網12が存在することを検出した場合にノズル5から海苔養殖用肥料4を散布するようにしてもよい。
【0028】
以上に説明したように、上記海苔養殖用肥料散布装置1は、支柱9に昇降自在に吊設した海苔養殖網12に向けて下方から海苔養殖用肥料4を散布するためのノズル5を船体2の前側に設けるとともに、海苔養殖用肥料4を貯留するとともにノズル5から海苔養殖網12に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料4を回収するための上方を開口させたタンク6を船体2の後側に設けた構成となっている。
【0029】
そのため、上記構成の海苔養殖用肥料散布装置1では、海苔養殖網12の海苔に所要量の海苔養殖用肥料4を直接散布することができ、海苔養殖用肥料4の効用を十分に得ることができるとともに、海苔養殖用肥料4を無駄に消費してしまうのを防止することができる。
【0030】
また、上記海苔養殖用肥料散布方法は、船体2の前側に海苔養殖用肥料4を散布するためのノズル5を設けるとともに、船体2の後側に海苔養殖用肥料4を貯留するための上方を開口させたタンク5を設けた海苔養殖用肥料散布装置1を用い、支柱9に昇降自在に吊設した海苔養殖網12が海面14から離間している時に、海苔養殖網12に沿って海苔養殖用肥料散布装置1を移動させながら、タンク5に貯留した海苔養殖用肥料4をノズル5から海苔養殖網12に向けて散布し、同時に余剰の海苔養殖用肥料4をタンク6に回収する構成となっている。
【0031】
そのため、上記構成の海苔養殖用肥料散布方法では、海苔養殖網12の海苔に所要量の海苔養殖用肥料4を直接散布することができ、海苔養殖用肥料4の効用を十分に得ることができるとともに、海苔養殖用肥料4を無駄に消費してしまうのを防止することができる。
【0032】
また、上記海苔養殖用肥料散布方法は、ノズル5から海苔養殖網12に向けて散布した余剰の海苔養殖用肥料4が全てタンク6に回収される速度となるように船体2の進行速度を調整する構成となっている。
【0033】
そのため、上記構成の海苔養殖用肥料散布方法では、海苔養殖用肥料4が無駄に消費されてしまうのをより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 海苔養殖用肥料散布装置 2 船体
3 船外機 4 海苔養殖用肥料
5 ノズル 6 タンク
7 ポンプ 8 海底
9 支柱 10 浮動環
11 吊綱 12 海苔養殖網
13 取付綱 14 海面