(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089555
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ハンガー
(51)【国際特許分類】
A47G 25/40 20060101AFI20230621BHJP
A47G 25/36 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
A47G25/40 A
A47G25/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204148
(22)【出願日】2021-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】591190689
【氏名又は名称】マルソー産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】山田 修
【テーマコード(参考)】
3K099
【Fターム(参考)】
3K099AA02
3K099BA16
3K099BA23
3K099CB06
3K099CB08
3K099CB23
3K099DA13
(57)【要約】
【課題】より利便性があり、耐久性に優れ、かつ低コスト化を実現し得るハンガーを提供する。
【解決手段】ハンガー100は、本体部10と、本体部10を中心に左右それぞれ開閉する2本のアーム30(30a,30b)を有するハンガーであり、本体部10に設けられる、つまみ部111および係止部112を備えたロック部11と、2本のアーム30(30a,30b)の本体部10に向かう一端にそれぞれ設けられる回転部31と、それぞれの回転部31(31a,31b)に設けられる第一凹凸部311であり、もう一方の回転部31の第一凹凸部311と係合する第一凹凸部311と、それぞれの回転部31(31a,31b)に設けられる第二凹凸部312であり、係止部112と係合する第二凹凸部312と、を有する
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部を中心に左右それぞれ開閉する2本のアームを有するハンガーであり、
前記本体部に設けられる、つまみ部および係止部を備えたロック部と、
前記2本のアームの前記本体部に向かう一端にそれぞれ設けられる回転部と、
前記それぞれの回転部に設けられる第一凹凸部であり、もう一方の前記回転部の第一凹凸部と係合する前記第一凹凸部と、
前記それぞれの回転部に設けられる第二凹凸部であり、前記係止部と係合する第二凹凸部と、
を有するハンガー。
【請求項2】
前記回転部は、前記係止部と接触する平滑部が設けられたものである
請求項1に記載のハンガー。
【請求項3】
前記第二凹凸部の凹凸の大きさが、前記第一凹凸部の凹凸の大きさよりも大きい
請求項1または2に記載のハンガー。
【請求項4】
前記回転部の前記第一凹凸部および前記第二凹凸部が設けられる部分は円弧状であり、
前記第二凹凸部が設けられる円弧部分の半径が、前記第一凹凸部が設けられる円弧部分の半径よりも大きい請求項1~3のいずれか1項に記載のハンガー。
【請求項5】
前記第二凹凸部は、複数の凹凸が設けられたものである
請求項1~4のいずれか1項に記載のハンガー。
【請求項6】
前記本体部に設けられる固定部であり、前記回転部の上方および下方の位置に設けられる固定部を有する
請求項1~5のいずれか1項に記載のハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服を掛ける際に使用する衣料用のハンガーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣料用のハンガーについては、従来、様々な形状のものや、様々な機能を有するものが提案されている。例えば、通常ハンガーには2本のアームが備わっているが、当該アームが開閉する(折り畳まれる)ような機能を有するものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アームの基端部に相互に歯合する歯部を形成し対称的に開閉させる開閉式ハンガーが記載されている。また、この開閉式ハンガーは、フレームの貫通孔に係合するストッパーを設けており、このストッパーの係脱を外部から手指で行うことでアームを固定している。
【0004】
また、特許文献2には、アーム開閉時に互いに噛み合う歯車部分を内方の端部に設けた構成を有するアーム開閉式ハンガーが記載されている。このアーム開閉式ハンガーは、操作レバーが本体に設けられ、操作レバーの係合部と係合可能な係合相手部が歯車部分に設けられている。そして、操作レバーは、係合部と係合相手部との係合が可能な定位置に保持され、かつ、定位置を中心として左方又は右方へ一定の範囲でのみ回転を許容している。
【0005】
また、特許文献3には、アームと繋がる回転部を有するハンガーが記載されている。このハンガーは、切り欠き部が係合部に係合し、固定されるような動きをする。
なお、特許文献4,5には、アームが開閉可能なハンガーに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10―323268号公報
【特許文献2】特開2011―229829号公報
【特許文献3】特開2002―248046号公報
【特許文献4】実用新案登録第3091210号公報
【特許文献5】特開2016-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衣料用のハンガーは、一般家庭のみならず、クリーニング店やホテル、小売店など、様々な場所や様々な場面で利用されるものであるが、プラスチック資源循環促進法で、より一層のリユース、リサイクルの改善が求められている。そのため、より利用者にとって使いやすく、耐久性に優れ、かつコストの軽減を図ることができるようなハンガーが求められている。
よって、本発明は、より利便性があり、かつ低コスト化を実現し得るハンガーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のハンガーは、本体部と、本体部を中心に左右それぞれ開閉する2本のアームを有するハンガーであり、本体部に設けられる、つまみ部および係止部を備えたロック部と、2本のアームの本体部に向かう一端にそれぞれ設けられる回転部と、それぞれの回転部に設けられる第一凹凸部であり、もう一方の回転部の第一凹凸部と係合する第一凹凸部と、それぞれの回転部に設けられる第二凹凸部であり、係止部と係合する第二凹凸部と、を有する。
これにより、それぞれの回転部に設けられた第一凹凸部は、もう一方の回転部の第一凹凸部と係合するため、一方の回転部が回転すると、もう一方の回転部も回転する。また、それぞれの回転部に設けられた第二凹凸部は、回転部の回転に合わせて回転して、係止部とかち合う場所で係合する。
【0009】
また、回転部は、係止部と接触する平滑部が設けられたものが好ましい。
これにより、係止部は平滑部に接触するため、係止部は回転する回転部と近い距離にありつつも、回転部の回転を妨げない。
【0010】
また、第二凹凸部の凹凸の大きさが、第一凹凸部の凹凸の大きさよりも大きいことが好ましい。
これにより、第二凹凸部は係止部としっかり係合し、かつ第一凹凸部の凹凸の大きさを抑えることができる。
【0011】
また、回転部の第一凹凸部および第二凹凸部が設けられる部分は円弧状であり、第二凹凸部が設けられる円弧部分の半径が、第一凹凸部が設けられる円弧部分の半径よりも大きいことが好ましい。
これにより、第一凹凸部が設けられる円弧部分は、回転半径の小さい回転となり、第二凹凸部が設けられる円弧部分は、回転半径の大きい回転となる。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明のハンガーは、本体部と、本体部を中心に左右それぞれ開閉する2本のアームを有するハンガーであり、本体部に設けられる、つまみ部および係止部を備えたロック部と、2本のアームの本体部に向かう一端にそれぞれ設けられる回転部と、それぞれの回転部に設けられる第一凹凸部であり、もう一方の回転部の第一凹凸部と係合する第一凹凸部と、それぞれの回転部に設けられる第二凹凸部であり、係止部と係合する第二凹凸部と、を有する構成により、それぞれの回転部に設けられた第一凹凸部は、もう一方の回転部の第一凹凸部と係合するため、一方の回転部が回転すると、もう一方の回転部も回転したり、それぞれの回転部に設けられた第二凹凸部は、回転部の回転に合わせて回転して、係止部とかち合う場所で係合するため、利用者は片方のアームを操作するだけで、両方のアームを操作(左右に開閉)することができたり、左右に開かれたアームを任意の場所(角度)でロック(固定)することができる。
【0013】
(2)また、回転部は、係止部と接触する平滑部が設けられた構成により、係止部は平滑部に接触するため、係止部は回転する回転部と近い距離にありつつも、回転部の回転を妨げず、スムーズなアームの開閉を実現することができる。
【0014】
(3)また、第二凹凸部の凹凸の大きさが、第一凹凸部の凹凸の大きさよりも大きい構成により、第二凹凸部は係止部としっかり係合し、かつ第一凹凸部の凹凸の大きさを抑えることができるため、ハンガーの使用中にアームのロックが外れたりすることがなく、第一凹凸部の凹凸の数(いわば、歯車の数)を十分に確保することができて、細かい、段階的な回転を実現することができる。
【0015】
(4)また、回転部の第一凹凸部および第二凹凸部が設けられる部分は円弧状であり、第二凹凸部が設けられる円弧部分の半径が、第一凹凸部が設けられる円弧部分の半径よりも大きい構成により、第一凹凸部が設けられる円弧部分は、回転半径の小さい回転となり、第二凹凸部が設けられる円弧部分は、回転半径の大きい回転となるため、回転部は本体部内という限られた領域内においてもスムーズな回転を実現することができつつ、第二凹凸部は係止部としっかり係合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るハンガー(内部構造)を示す概略正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図であり、アームを1段階開いた状態を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るハンガー(内部構造)を示す概略正面図であり、アームを1段階開いた状態を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図であり、アームを2段階開いた状態を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るハンガー(内部構造)を示す概略正面図であり、アームを2段階開いた状態を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るハンガーの内部構造の動作を説明するための図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るロック部を示す概略正面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る固定部を示す概略正面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る固定部を示す概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0018】
[ハンガー]
図1は、本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図である。ハンガー100は、本体部10、フック部20、およびアーム30を有する。
【0019】
フック部20は、ハンガーをポールやハンガーラックへ掛ける際に、引っ掛ける部分である。
図1に示す例において、フック部20は本体部10の上部と接続されている。
【0020】
アーム30は、衣服を掛けるものである。
図1に示す例において、ハンガー100は2本のアーム30a,30bを有している。
【0021】
そして、アーム30(30a,30b)は、それぞれが左右に開くことで、衣服を掛けやすい形状となる。例えば、
図3は、本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図であり、アームを1段階開いた状態を説明するための図である。また、
図5は、本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図であり、アームを2段階開いた状態を説明するための図である。このように、アーム30a,30bがそれぞれ段階的に左右に開くことで、ハンガー100に衣服を掛ける者にとって、衣服が掛けやすい形状となる。
【0022】
つまり、ハンガー100は、アームの開閉が段階的に可能なハンガーである。
なお、便宜上、以下の説明において
図1,2に示すハンガーの状態を「閉じた状態」、
図3,4に示すハンガーの状態を「1段階開いた状態」、
図5,6に示すハンガーの状態を「2段階開いた状態」と言う。
【0023】
[閉じた状態]
本体部10は、上述したように、上部にフック部20と接続されるものである。また、ハンガー100は、本体部10の下部にアーム30を有する。
図2は、本発明の実施の形態に係るハンガー(内部構造)を示す概略正面図である。以下、本体部10の構造を
図1,2に基づいて詳細に説明する。
【0024】
本体部10には、ロック部11、支点部12、回転支持部13、および固定部14が設けられている。本体部10およびこれらの部は、樹脂(合成樹脂)で作られる。
【0025】
固定部14は、長期的に衣類をアーム30に掛けていると、本体部10が開いて回転支持部13からアーム30が脱落してしまうおそれがあるため、このような本体部10の開きを防ぐためのものである。固定部に14は、後述するようにリベットを用いることができる。
【0026】
ロック部11は、
図1に示す「閉じた状態」から、
図3,5に示す「1段階開いた状態」、「2段階開いた状態」のように、アーム30a,30bが左右に開かれた状態でアーム30a,30bをロック(固定)するためのものである。ロック部11は、つまみ部111、係止部112、および弾性を持つ板部113を備えている(
図8参照)。本実施の形態において、つまみ部111、係止部112、および板部113を含め、ロック部11は樹脂で一体成形されている。
【0027】
また、ロック部11は、支点部12を中心(支点)として、左右対称に成形されている。なお、
図2に示すように、ロック部11は支点部12を中心に左右がそれぞれ下方向へ折り曲げられている。そして、ロック部11は、下方向へ折り曲げられた左右の一端に、それぞれ係止部112(112a,112b)を備えている。
【0028】
一方、アーム30(30a,30b)は、本体部10に向かう一端に、それぞれ回転部31(31a,31b)が設けられている。回転部31は、回転支持部13を中心として回転可能なものである。具体的には、回転部31aは回転支持部13aを中心として回転可能なものであり、回転部31bは回転支持部13bを中心として回転可能なものである。
回転支持部13には例えば、本体部10の外部から回転支持部13が設けられる位置に開けられた孔に挿入される、ビスやネジなどのような形状のものを用いることもできる。
【0029】
また、回転部31には、第一凹凸部311が設けられている。第一凹凸部311は、もう一方の回転部31の第一凹凸部311と係合する凹凸部である。つまり、回転部31aには第一凹凸部311aが設けられており、回転部31bには第一凹凸部311bが設けられている。
そして、第一凹凸部311aは第一凹凸部311bと係合する(噛み合う)ものである。回転部31b側から見ると、第一凹凸部311bは第一凹凸部311aと係合する(噛み合う)ものである。
【0030】
さらに、回転部31には、第二凹凸部312が設けられている。第二凹凸部312は、
係止部112と係合する凹凸部である。つまり、回転部31aには第二凹凸部312aが設けられており、回転部31bには第二凹凸部312bが設けられている。
そして、第二凹凸部312aは係止部112aと係合するものである。一方、第二凹凸部312bは係止部112bと係合するものである。
【0031】
また、回転部31は、回転する際に係止部112と接触する平滑部313が設けられている。平滑部313は、上述したような第一凹凸部311や第二凹凸部312などといった凹凸の形状ではなく、これに接触しても係止部112がロックされたりせず、接触した係止部112が平滑部313上を滑って回転部31の回転を妨げないような凸凹のない部分である。
【0032】
以上のように、フック部20やアーム30、および本体部10の構造を
図1,2に基づいて説明したが、
図3~7においては、同様の機能を有する部分は同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0033】
[1段階開いた状態]
図3は、本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図であり、アームを1段階開いた状態を説明するための図である。また、
図4はその際の内部構造を示す図である。
図4に示すように、係止部112aが、第二凹凸部312aの2つある突起(凸)のうちアーム30aから遠い方にある突起と係合することにより、アーム30aが開かれた状態(1段階開かれた状態)で、アーム30aがロックされていることが分かる。
同様に、係止部112bが、第二凹凸部312bの2つある突起のうちアーム30bから遠い方にある突起と係合することにより、アーム30bが開かれた状態(1段階開かれた状態)で、アーム30bがロックされていることが分かる。
【0034】
[2段階開いた状態]
図5は、本発明の実施の形態に係るハンガーを示す概略正面図であり、アームを2段階開いた状態を説明するための図である。また、
図6はその際の内部構造を示す図である。
図6に示すように、係止部112aが、第二凹凸部312aの2つある突起(凸)のうちアーム30aから近い方にある突起と係合することにより、アーム30aが開かれた状態(2段階開かれた状態)で、アーム30aがロックされていることが分かる。
同様に、係止部112bが第二凹凸部312bの2つある突起(凸)のうちアーム30aから近い方にある突起と係合することにより、アーム30bが開かれた状態(2段階開かれた状態)で、アーム30bがロックされていることが分かる。
【0035】
このように、第二凹凸部に複数の凹凸(複数の突起)を設けることにより、アーム30が開いた位置(開いた角度)を複数段階設けることができる。そのため、本発明の実施の形態においては2段階であるが、3段階、またはそれ以上の構成とすることもできる。もしくは、1段階の構成(凹凸が1個)とすることもできる。よって、使用される場所や用途に合わせて、意図的に1段階以上の構成とすることが可能である。
【0036】
こうすることで、例えばジャケットなど肩をあまり上げて掛けたくない衣服の場合は、
図3,4に示す1段階開いた状態で使用すればよい。また、TシャツやYシャツを干す場合、または左右のアーム(アーム30a,30b)に靴下や手袋を引っ掛けて干す場合などは、
図5,6に示す2段階開いた状態での使用が可能である。
【0037】
[回転部の動作]
図7は、本発明の実施の形態に係るハンガーの内部構造の動作を説明するための図である。それぞれ、
図7(A)は「閉じた状態」、
図7(B)は「1段階開いた状態」、
図7(C)は「2段階開いた状態」の本体部10内の構造の動作を示している。また、
図8は、本発明の実施の形態に係るロック部を示す概略正面図である。
本実施の形態において、
図7に示されるように、回転部31の第一凹凸部311および第二凹凸部312が設けられる部分は円弧状である。また、平滑部313は、回転部31が
図7(A)に示す矢印の方向に回転するにつれて、接触した係止部112を上方へ押し上げるような形状となっている。
【0038】
上述したように、回転部31(31a,31b)は、回転支持部13(13a,13b)(
図1~6参照)を中心に回転する。つまり、ハンガー100を使用する者は、アーム30(30a,30b)を手で持って、左右に開く方向に力を加えるため、回転部31a,31bはそれぞれ、
図7(A)に示す矢印の方向に回転する。
【0039】
この際、係止部112(112a,112b)は、平滑部313(313a,313b)に接触しつつも、上述したように平滑部313は接触した係止部112が平滑部313上を滑って回転部31の回転を妨げないような凸凹のない部分であるため、利用者は回転部31をスムーズに回転させることができる。つまり、利用者はアーム30をスムーズに左右に開くことができる。
【0040】
一方、平滑部313は回転部31の回転を妨げないが、
図7(A)に示す矢印の方向に回転するにつれて、接触した係止部112を上方へ押し上げる。係止部112と接合される板部113は弾性を持っているため、回転部31が当該矢印の方向に回転するにつれて
図8に示す板部113(113a,113b)が変形し、それぞれ(係止部112a,112b)が上方へ押し上げられる。
【0041】
また、この際、
図7(B),(C)の中央の点線枠に示されるように、回転部31aには第一凹凸部311bと係合する第一凹凸部311aが、回転部31bには第一凹凸部311aと係合する第一凹凸部311bが設けられるため、歯車の原理により、回転部31aが
図7(A)に示す矢印の方向へ回転すると、回転部31bも
図7(A)に示す矢印の方向へ回転する。
そのため、利用者は片方のアーム(30aまたは30b)を操作するだけで、両方のアームを操作(左右に開く)することができる。
【0042】
回転部31a,31bがそれぞれ
図7(A)の矢印に示す方向に回転すると、係止部112(112a,112b)は、第二凹凸部312(312a,312b)の2つある突起のうちアーム30(30a,30b)から遠い方にある突起と係合する(
図7(B)の左右の点線枠参照)。つまり、平滑部313により上方へ押し上げられた係止部112は、回転部31が第二凹凸部312のところまで回転することにより、元の位置に戻る力が働いて、第二凹凸部312の突起と係合する。
このように、係止部112と第二凹凸部312とがしっかりと係合されるため、その結果、アーム30はその位置(開いた位置)で動かないようにロックされる。
【0043】
ここで、本実施の形態において、第二凹凸部312の凹凸の大きさ(突起の大きさ)は、第一凹凸部311の凹凸の大きさよりも大きい。これにより、第二凹凸部312は係止部112としっかり係合し、ハンガー100の使用中にアーム30のロックが外れたりすることはない。
また、第一凹凸部311の凹凸の大きさは、用途に合わせて小さくすることもできるため、回転部31同士(回転部31aおよび回転部31b)の回転をスムーズなものにすることができる。つまり、第一凹凸部311の凹凸の大きさが大き過ぎると、回転部31に設けられる凹凸の数(いわば、歯車の数)が少なくなるため、細かい、段階的な回転が難しくなる。
【0044】
さらに、回転部31a,31bがそれぞれ
図7(A)の矢印に示す方向に回転すると、係止部112(112a,112b)は、第二凹凸部312(312a,312b)の2つある突起のうちアーム30(30a,30b)から近い方にある突起と係合する(
図7(C)の左右の点線枠参照)。
【0045】
そして、「1段階開いた状態」や「2段階開いた状態」から「閉じた状態」へ戻す際は、例えば利用者がつまみ部111(111a,111b)を指でつまんで、中央方向(
図8に示す矢印1の方向)へ力を加えることにより、係止部112が第二凹凸部312から外れてアーム30のロックが解除される。
つまり、本実施の形態において、つまみ部111および係止部112を含め、ロック部11は樹脂で一体成形されているため、つまみ部111aとつまみ部111bが中央方向へ引っ張られることにより、係止部112aと係止部112bはそれぞれ、回転部31a(第二凹凸部312a)と回転部31b(第二凹凸部312b)から離れる方向(
図8に示す矢印2の方向)へと引っ張られる。よって、係止部112が第二凹凸部312から外れる。
【0046】
つまみ部111は、
図1,3,5などに示されるように、本体部10の上部に設けられているため、衣類を取り外す際に邪魔にならない。例えば、消費者がネットクリーニングを利用した場合、クリーニング店は自分たちでハンガーを衣類から外して消費者に返却する必要がある。つまり、クリーニング店はクリーニングを施して消費者へ郵送または運送会社に委託して発送する際に、段ボールまたは袋に梱包して送付するが、その際にハンガーは不必要であるため、衣類から外す必要がある。この作業は、非常に手間がかかる。
一方、本発明によれば、上部に設けられたつまみ部111(111a,111b)を操作することにより、第二凹凸部312(312a,312b)から係止部112(112a,112b)が解放されてアーム30(30a,30b)が閉じるため、容易に衣類からハンガー100を取り外すことができる。
【0047】
なお、本実施の形態において、
図7に示されるように、回転部31の第一凹凸部311および第二凹凸部312が設けられる部分は円弧状である。そして、第二凹凸部312が設けられる円弧部分の半径は、第一凹凸部311が設けられる円弧部分の半径よりも大きい。これにより、第二凹凸部312は係止部112としっかり係合し、よりハンガー100の使用中にアーム30のロックが外れたりすることはない。
【0048】
一方、第一凹凸部311が設けられる円弧部分の半径は、第二凹凸部312が設けられる円弧部分の半径よりも小さいため、回転部31同士(回転部31aおよび回転部31b)の回転をよりスムーズなものにすることができる。
【0049】
要するに、回転部31の第一凹凸部311が設けられる円弧状の部分と、第二凹凸部312が設けられる円弧状の部分との湾曲度合を変えることにより、回転部31同士のスムーズな回転と、アーム30のしっかりとしたロックとを同時に実現することができる。
【0050】
また、本実施の形態におけるハンガー100は、バネや金属などを使用していない。そのため、製造が容易であり、かつ低コスト化を実現することができる。
【0051】
[固定部]
図9は、本発明の実施の形態に係る固定部を示す概略正面図であり、
図10は、その概略左側面図である。上述したように、固定部14(
図1参照)は、長期的に衣類をアーム30に掛けていると、本体部10が開いて回転支持部13からアーム30が脱落してしまうおそれがあるため、このような本体部10の開きを防ぐためのものである。
【0052】
固定部14は、例えば、リベットを用いることができる。具体的には、
図9に示すように、固定部用孔14aHに、
図10に示すようなリベットオス14aMとリベットメス14aFとを結合させる。固定部用孔14bH、リベットオス14bM、リベットメス14bFについても同様である。
【0053】
なお、
図9に示すように、回転部31(
図7参照)の上方および下方の位置にそれぞれ固定部14aおよび固定部14bを設けることにより、本体部10内で回転部31が回転しても、しっかりと本体部10を安定した構造とすることができる。安定した構造とは、本体部10が開いたりせずに、回転部31の位置がズレたり、外れたりしない構造などのことである。
【0054】
以上のように説明した本発明の実施の形態はあくまで一例であり、例えば、係止部112と、それに係合する第二凹凸部312の形状は、アーム30が外れないようにしっかりと係合する形状のものであれば、
図7などに記載された形状に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、利便性があり、耐久性に優れ、かつ低コスト化を実現し得るハンガーとして、一般家庭のみならず、クリーニング店やホテル、小売店など、様々な場所や様々な場面で利用することができ、かつアームが閉じた状態では通常のハンガーと比較してコンパクトになることで、収納スペースの有効化と持ち運び(移動時の携帯)に便利なハンガーとして利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0056】
10 本体部
11 ロック部
111,111a,111b つまみ部
112,112a,112b 係止部
113,113a,113b 板部
12 支点部
13,13a,13b 回転支持部
14,14a,14b,14aH,14bH,14aM,14aF,14bM,14bF 固定部
20 フック部
30,30a,30b アーム部
31,31a,31b 回転部
311,311a,311b 第一凹凸部
312,312a,312b 第二凹凸部
313,313a,313b 平滑部
100 ハンガー
【手続補正書】
【提出日】2022-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部を中心に左右それぞれ開閉する2本のアームを有するハンガーであり、
前記本体部に設けられる、つまみ部および係止部を備えたロック部と、
前記2本のアームの前記本体部に向かう一端にそれぞれ設けられる回転部と、
前記それぞれの回転部に設けられる第一凹凸部であり、もう一方の前記回転部の第一凹凸部と係合する前記第一凹凸部と、
前記それぞれの回転部に設けられる第二凹凸部であり、前記係止部と係合する第二凹凸部と、を有し、
前記回転部は、前記係止部と接触する平滑部であって、前記回転部が回転すると前記係止部がその上を滑る平滑部が設けられたものであり、
前記係止部は、前記それぞれの回転部に設けられる第二凹凸部をそれぞれ左右から挟み込むことで前記回転部をロックするものである
ハンガー。
【請求項2】
前記第二凹凸部の凹凸の大きさが、前記第一凹凸部の凹凸の大きさよりも大きい
請求項1に記載のハンガー。
【請求項3】
前記回転部の前記第一凹凸部および前記第二凹凸部が設けられる部分は円弧状であり、
前記第二凹凸部が設けられる円弧部分の半径が、前記第一凹凸部が設けられる円弧部分の半径よりも大きい請求項1または2に記載のハンガー。
【請求項4】
前記第二凹凸部は、複数の凹凸が設けられたものである
請求項1~3のいずれか1項に記載のハンガー。
【請求項5】
前記本体部に設けられ、前面および背面から当該本体部を押圧して固定する固定部であり、前記回転部の上方および下方の位置に設けられる固定部を有する
請求項1~4のいずれか1項に記載のハンガー。