(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089561
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】コンクリート床版の剥離装置及び方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20230621BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E04G23/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204156
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(71)【出願人】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】山浦 明洋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 聖治
(72)【発明者】
【氏名】水越 秀和
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 守
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰二
(72)【発明者】
【氏名】濱口 智哉
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA03
2E176AA07
2E176BB36
2E176DD02
(57)【要約】
【課題】鋼桁のフランジに損傷を与えることなく、コンクリート付着部分だけをフランジから剥離して撤去する装置及び方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート床版10を鋼桁11から剥離破砕するコンクリート床版の剥離装置において、前記鋼桁11から前記コンクリート床版10を切断した残りの前記鋼桁11のフランジ12に付着した前記コンクリート床版10の一部のコンクリート付着部17と、前記フランジ12とを一体に遊嵌するための上部アーム27と下部アーム28と連結部29からなるコ字形アーム26と、前記上部アーム27に取り付けられた鉛直ジャッキ34と、前記鉛直ジャッキ34のピストンロッド39に下向きに取り付けられて前記コンクリート付着部17の上面を押圧して剥離破砕するグリッパ43と、前記下部アーム28の上面に取り付けられ、前記鋼桁11の下面に接して前記グリッパ43の反力を受ける反力受け部材35とからなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床版を鋼桁から剥離破砕するコンクリート床版の剥離装置において、
前記鋼桁から前記コンクリート床版を切断した残りの前記鋼桁のフランジに付着した前記コンクリート床版の一部のコンクリート付着部と、前記フランジとを一体に遊嵌するための上部アームと下部アームと連結部からなるコ字形アームと、
前記上部アームに取り付けられたジャッキと、
前記ジャッキのピストンロッドに取り付けられて前記コンクリート付着部を押圧して剥離破砕するグリッパと、
前記下部アームに取り付けられ、前記フランジに接して前記グリッパの反力を受ける反力受け部材と
からなることを特徴とするコンクリート床版の剥離装置。
【請求項2】
前記コ字形アームは、略同形の2個を、連結材を介在して所定間隔で連結したものからなり、2個の前記上部アームからなる上部隙間に前記ジャッキを位置調整自在に取り付け、2個の前記下部アームからなる下部隙間に前記反力受け部材を位置調整自在に取り付けたことを特徴とする請求項1記載のコンクリート床版の剥離装置。
【請求項3】
前記ジャッキのピストンロッドに圧縮板を取り付け、この圧縮板に着脱自在に1~複数個の前記グリッパを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート床版の剥離装置。
【請求項4】
前記ジャッキは、ジャッキ固定金具とジャッキ支持金具で前記上部アームを挟持して固定したことを特徴とする請求項2又は3記載のコンクリート床版の剥離装置。
【請求項5】
前記ジャッキは、前記上部アームに所定間隔で穿設した位置合わせ孔に位置調整自在に設けたことを特徴とする請求項2、3又は4記載のコンクリート床版の剥離装置。
【請求項6】
前記反力受け部材は、前記下部アームに所定間隔で穿設した位置合わせ孔に位置調整自在に設けたことを特徴とする請求項2、3又は4記載のコンクリート床版の剥離装置。
【請求項7】
前記グリッパは、前記圧縮板に形成した複数個のグリッパ挿着ねじ孔に、1~複数個を螺合し、前記グリッパ挿着ねじ孔の下端部に、1~複数個の突起部を形成したものからなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のコンクリート床版の剥離装置。
【請求項8】
コンクリート床版を鋼桁から剥離破砕するコンクリート床版の剥離方法において、
前記鋼桁のフランジに付着した前記コンクリート床版の一部のコンクリート付着部を残して前記コンクリート床版を切断除去する工程と、
前記フランジとコンクリート付着部を、上部アームと下部アームと連結部からなるコ字形アームの嵌合部に遊嵌する工程と、
前記下部アームに取り付けた反力受け部材で前記フランジに接して反力を受けつつ、前記上部アームに取り付けたジャッキのグリッパで前記コンクリート付着部を押圧し、前記コンクリート付着部を前記鋼桁のフランジから剥離破砕する工程と
からなることを特徴とするコンクリート床版の剥離方法。
【請求項9】
前記コンクリート床版は、前記鋼桁に複数本のジベルを介在して敷設形成したものからなることを特徴とする請求項8記載のコンクリート床版の剥離方法。
【請求項10】
前記コンクリート付着部を前記フランジから剥離破砕する工程は、前記フランジの長さ方向に所定間隔で順次行うようにしたことを特徴とする請求項8又は9記載のコンクリート床版の剥離方法。
【請求項11】
前記フランジとこのフランジに付着した前記コンクリート付着部の長さ方向に、2台またはそれ以上のコンクリート床版の剥離装置を並設し、複数のコンクリート床版の剥離装置を駆動して前記コンクリート付着部を剥離破砕するようにしたことを特徴とする請求項8、9又は10記載のコンクリート床版の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート床版を接合した鋼桁において、老朽化したコンクリート床版を鋼桁から剥離して撤去するためのコンクリート床版の剥離装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート床版には、スラブアンカーなどで鉄筋コンクリート床版と鋼桁とを接合した非合成桁と、スタッドジベルなどで鉄筋コンクリート床版と鋼桁とを一体化した合成桁とに分けられる。
以下の説明では、合成桁を例示するが、本発明は、非合成桁を含む一般的な鋼桁を対象としている。
合成桁は、
図8(a)に示すように、鋼桁11のフランジ12に、多数本のスタッドなどのジベル14を溶接し、このジベル14と一体化するように、鉄筋入りのコンクリート床版10を敷設する。床版は、直接活荷重を受ける床版としての役割の他に、合成桁においては、主桁の一部としての役割を担っている。そのため、床版に損傷が生じた場合、橋梁の機能に与える影響が極めて大きく、補修・補強の事例の最も多い部位である。
前記ジベル14には、
図8(a)に示すようなスタッドジベルの他に、
図8(b)に示すようなチャンネルにループ鉄筋を溶接した馬蹄形型のもの、
図8(c)に示すようなフック型の鉄筋を溶接したもの、
図8(d)に示すような高力ボルトからなるものの他、多数種類存在する。
【0003】
新たなコンクリート床版10を敷設するために老朽化したコンクリート床版10を鋼桁11から撤去しようとすると、合成桁の場合、鋼桁11のフランジ12に多数本のジベル14が溶接され、このジベル14と一体にコンクリート床版10を敷設しているので、古いコンクリート床版10を鋼桁11から容易に撤去することができない。
そこで、
図9に示すように、鋼桁11を傷つけないように、コンクリート床版10をウォーターカッターやワイヤーソー等で切断する。コンクリート床版10を切断するには、ハンチ部分25を水平切断線16に沿って水平に切断する方法、先にフランジ12の両側の垂直切断線15に沿って切断し、次いでフランジ12の上に残った部分を、厚さ数cmの位置の水平切断線16に沿って水平に切断する方法などがある。このような方法で切断すると、フランジ12の上に密着したコンクリート付着部17がジベル14の一部とともに残る。
この残ったコンクリート付着部17は、従来は、はつり工具を人力で操作してコンクリート部分をはつっていた。はつり工具は、人力で操作し、振動と打撃を与えてコンクリートを破砕するものであるが、振動と打撃による騒音が大きく、しかも疲労により人体に悪影響を与えるため、作業時間に制限がある。また、コンクリート破壊時に、はつり工具の刃先がフランジ12まで押し込まれてフランジ12に損傷を与えてしまうという問題があった。
上記の例では、コンクリート床版を水平に切断して残ったコンクリート付着部を破壊する方法について説明したが、水平に切断することなくコンクリート付着部を破砕する方法であってもよい。
【0004】
コンクリート柱やコンクリート壁を破壊するのに、はつり工具に代えて油圧ジャッキにより破壊する装置が知られている(特許文献1)。
この装置は、
図10に示すように、自走シャベルなどにコ字形の上部枠19と下部枠20からなるコ字形枠体18を取り付け、コンクリート柱などの非破壊コンクリート24を反力受け用の下部枠20に配置し、上部枠19に取り付けたねじ軸21を回転して油圧ジャッキ22とともに非破壊コンクリート24に接近させ、続いて油圧ジャッキ22を伸ばし尖鋭具23を非破壊コンクリート24に押し込む。尖鋭具23の進行に伴い非破壊コンクリート24にクラックが発生し、鉄筋部分が引っ張られて応力集中により破断され、非破壊コンクリート24の内部に尖鋭具23が侵入して破壊するとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置をフランジ12に付着したコンクリート付着部17の剥離に適用しようとすると、尖鋭具23がコンクリート付着部17に突き刺さり、さらに、尖鋭具23を押し込むことにより先端がフランジ12に突き刺さり、鋼桁11を破損したり傷つけたりするだけでなく、特に、フランジ12に溶接したスタッド等のジベル14の周りのコンクリート部分の剥離が不十分になるという問題があった。
【0007】
本発明は、鋼桁のフランジに損傷を与えることなく、コンクリート付着部分だけをフランジから剥離して撤去する装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のコンクリート床版の剥離装置は、
コンクリート床版10を鋼桁11から剥離破砕するコンクリート床版の剥離装置において、
前記鋼桁11から前記コンクリート床版10を切断した残りの前記鋼桁11のフランジ12に付着した前記コンクリート床版10の一部のコンクリート付着部17と前記フランジ12とを一体に遊嵌するための、上部アーム27と下部アーム28と連結部29からなるコ字形アーム26と、
前記上部アーム27に取り付けられたジャッキ34と、
前記ジャッキ34のピストンロッド39に取り付けられて前記コンクリート付着部17を押圧して剥離破砕するグリッパ43と、
前記下部アーム28に取り付けられ、前記鋼桁11のフランジ12に接して前記グリッパ43の反力を受ける反力受け部材35と
からなることを特徴とする。
【0009】
前記コ字形アーム26は、略同形の2個を、連結材31を介在して所定間隔で連結したものからなり、2個の前記上部アーム27からなる上部隙間32に前記ジャッキ34を位置調整自在に取り付け、2個の前記下部アーム28からなる下部隙間33に前記反力受け部材35を位置調整自在に取り付けたことを特徴とする。
【0010】
前記ジャッキ34のピストンロッド39に圧縮板41を取り付け、この圧縮板41に着脱自在に1~複数個の前記グリッパ43を設けたことを特徴とする。
【0011】
前記ジャッキ34は、ジャッキ固定金具36とジャッキ支持金具37で前記上部アーム27を挟持して固定したことを特徴とする。
【0012】
前記ジャッキ34は、前記上部アーム27に所定間隔で穿設した位置合わせ孔48に位置調整自在に設けたことを特徴とする。
【0013】
前記反力受け部材35は、前記下部アーム28に所定間隔で穿設した位置合わせ孔49に位置調整自在に設けたことを特徴とする。
【0014】
前記グリッパ43は、前記圧縮板41に形成した複数個のグリッパ挿着ねじ孔44に、1~複数個を螺合し、前記グリッパ挿着ねじ孔44の端部に、1~複数個の突起部45を形成したものからなることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載のコンクリート床版の剥離方法は、
コンクリート床版10を鋼桁11から剥離破砕するコンクリート床版の剥離方法において、
前記鋼桁11のフランジ12に付着した前記コンクリート床版10の一部のコンクリート付着部17を残して前記コンクリート床版10を切断する工程と、
前記フランジ12とコンクリート付着部17を、上部アーム27と下部アーム28と連結部29からなるコ字形アーム26の嵌合部30に遊嵌する工程と、
前記下部アーム28に取り付けた反力受け部材35で前記フランジ12に接して反力を受けつつ、前記上部アーム27に取り付けた鉛直ジャッキ34のグリッパ43で前記コンクリート付着部17の上面を押圧し、前記コンクリート付着部17を前記鋼桁11のフランジ12から剥離破砕する工程と
からなることを特徴とする。
【0016】
前記コンクリート床版10は、前記鋼桁11に複数本のスタッド、チャンネルにループ鉄筋を溶接した馬蹄形型のもの、フック型の鉄筋を溶接したもの、高力ボルトからなるものなどからなるジベル14を介在して接合するものからなることを特徴とする。
【0017】
前記コンクリート付着部17を前記フランジ12から剥離破砕する工程は、前記フランジ12の長さ方向に所定間隔で順次行うようにしたことを特徴とする。
【0018】
前記フランジ12とこのフランジ12に付着した前記コンクリート付着部17の長さ方向に、2台またはそれ以上のコンクリート床版の剥離装置を並設し、複数のコンクリート床版の剥離装置を駆動して前記コンクリート付着部17を剥離破砕するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、
コンクリート床版を鋼桁から剥離破砕するコンクリート床版の剥離装置において、
前記鋼桁から前記コンクリート床版を切断した残りの前記鋼桁のフランジに付着した前記コンクリート床版の一部のコンクリート付着部と前記フランジとを一体に遊嵌するための、上部アームと下部アームと連結部からなるコ字形アームと、
前記上部アームに取り付けられたジャッキと、
前記ジャッキのピストンロッドに取り付けられて前記コンクリート付着部を押圧して剥離破砕するグリッパと、
前記下部アームに取り付けられ、前記フランジに接して前記グリッパの反力を受ける反力受け部材と
からなるので、以下の効果を有する。
(1)騒音のない無音の剥離破砕が可能になるため、周辺環境に影響されず、使用制限がなくなる。特に、都市部での使用において、騒音トラブルが低減される。
(2)鋼桁のフランジを傷つけたり損傷を与えたりすることなく、コンクリート付着部分だけをフランジから剥離して撤去することができる。
(3)油圧ホースの長さを選定することで、電動ポンプを据え置いた状態で装置の身を運搬することで作業でき、労力が低減される。
(4)電源設備のないところでは、手動ポンプで動作できる。
(5)グリッパの高さを容易に調整でき、残ったコンクリートの厚さの変化に対応できる。
(6)ジャッキ能力を容易に変更でき、コンクリート強度に適応した仕様ができる。
(7)コンクリート付着部は、水平なフランジに付着したものだけでなく、垂直や角度を持ったフランジに付着したものについても剥離破砕できる。また、平らなコンクリート付着部だけでなく、曲面のコンクリート付着部についても剥離破砕できる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、
前記コ字形アームは、略同形の2個を、連結材を介在して所定間隔で連結したものからなり、2個の前記上部アームからなる上部隙間に前記ジャッキを位置調整自在に取り付け、2個の前記下部アームからなる下部隙間に前記反力受け部材を位置調整自在に取り付けたので、コンクリート付着部の幅や大きさに応じてジャッキと反力受け部材の位置調整が容易にできる。また、コンクリート付着部から剥離破砕したコンクリート片は、フランジの幅方向などのコンクリート自由端側に押し出され、コンクリート付着部に残ることがないので、剥離破砕したコンクリート片を除去する作業が容易である。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、
前記ジャッキのピストンロッドに圧縮板を取り付け、この圧縮板に着脱自在に1~複数個の前記グリッパを設けたので、コンクリート付着部の幅、厚さ、大きさに応じてグリッパの数を最適に設定できる。また、グリッパの先端部をコンクリート付着部の厚さ以下に調整することにより、圧縮板がコンクリート付着部に接触するためグリッパの先端部がフランジに接触することがなく、フランジに損傷を与えることがない。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、
前記ジャッキは、ジャッキ固定金具とジャッキ支持金具で前記上部アームを挟持して固定したので、コンクリート付着部の幅、厚さ、大きさに応じて鉛直ジャッキの位置を調整できる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、
前記ジャッキは、前記上部アームに所定間隔で穿設した位置合わせ孔に位置調整自在に設けたので、コンクリート付着部の幅、厚さ、大きさに応じてジャッキの位置合わせを容易に調整できる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、
前記反力受け部材は、前記下部アームに所定間隔で穿設した位置合わせ孔に位置調整自在に設けたので、コンクリート付着部の幅、厚さ、大きさに応じて反力受け部材の位置合わせが容易にできる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、
前記グリッパは、前記圧縮板に形成した複数個のグリッパ挿着ねじ孔に、1~複数個を螺合し、前記グリッパ挿着ねじ孔の下端部に、1~複数個の突起部を形成したものからなるので、コンクリート付着部の幅、厚さ、大きさに応じてグリッパの数と取り付け位置を選定できる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、
コンクリート床版を鋼桁から剥離破砕するコンクリート床版の剥離方法において、
前記鋼桁のフランジに付着した前記コンクリート床版の一部のコンクリート付着部を残して前記コンクリート床版を切断する工程と、
前記フランジとコンクリート付着部を、上部アームと下部アームと連結部からなるコ字形アームの嵌合部に遊嵌する工程と、
前記下部アームに取り付けた反力受け部材で前記フランジに接して反力を受けつつ、前記上部アームに取り付けたジャッキのグリッパで前記コンクリート付着部の上面を押圧し、前記コンクリート付着部を前記鋼桁のフランジから剥離破砕する工程と
からなるので、請求項1記載の発明と同様の作用効果を有する。
【0027】
請求項9記載の発明によれば、
前記コンクリート床版は、前記鋼桁に複数本のスタッド、その他のジベルを介在して打設形成したものからなるものであっても、フランジに付着したコンクリートを容易に剥離することができる。
【0028】
請求項10記載の発明によれば、
前記コンクリート付着部を前記フランジから剥離破砕する工程は、前記フランジの長さ方向に所定間隔で順次行うようにしたので、コンクリート付着部から剥離破砕したコンクリート片は、所定間隔で連結した2個のアームの隙間に順次押し出され、コンクリート付着部に残ることがなく、作業の効率よくコンクリートを剥離破砕できる。
【0029】
請求項11記載の発明によれば、
前記フランジとこのフランジに付着した前記コンクリート付着部の長さ方向に、2台またはそれ以上のコンクリート床版の剥離装置を並設し、複数のコンクリート床版の剥離装置を駆動して前記コンクリート付着部を剥離破砕するようにしたので、通常は、1台で使用するが、必要に応じて2台またはそれ以上の複数台のコンクリート床版の剥離装置を並設することにより、一度の載荷で広範囲のコンクリートの剥離破砕が可能となり、作業時間を削減し、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるコンクリート床版の剥離装置及び方法の一実施例を示す分解斜視図である。
【
図2】(a)は、圧縮板41の左右又は上下に2個のグリッパ43を取り付けた斜視図、(b)は、圧縮板41の中央に1個のグリッパ43を取り付けた斜視図、(c)は、グリッパ43の先端部に複数個の突起部45を形成した例を示す拡大した正面図と底面図である。
【
図3】(a)は、グリッパ43の先端の片面を30度、45度、60度など所定の角度nのテーパー面にカットして突起部45を形成した斜視図、(b)は、グリッパ43の先端の半分を30度、45度、60度など所定の角度nのテーパー面にカットして突起部45を形成した斜視図、(c)は、グリッパ43の先端の両面を30度、45度、60度、90度など所定の角度nのテーパー面にカットして突起部45を形成した斜視図、(d)は、サイズM16の円柱形のグリッパ43の尖り先を90度の円錐形とし、先端径をΦ4mmの平坦とし、刃高hを6mmとした斜視図、(e)は、サイズM16の円柱形のグリッパ43の先端を、先端径Φ12mmの2段棒先の平坦とし、刃高hを8mmとした斜視図である。
【
図4】(a)は、グリッパ43をコンクリート付着部17の自由端に近い上部端縁部Aにセットした場合の側面図、(b)は、グリッパ43をコンクリート付着部17の中間部Bにセットした場合の側面図、(c)は、グリッパ43をコンクリート付着部17の中心部Cにセットした場合の側面図である。
【
図5】(a)は、前記
図4(a)の一方の端縁部Aを順次剥離破砕し、斜線部が破砕されていることを表した平面図、(b)は、前記
図4(b)の中間部Bを順次剥離破砕し、斜線部が破砕されていることを表した平面図、(c)は、前記
図4(a)の他方の端縁部A’を順次剥離破砕し、斜線部が破砕していることを表した平面図、(d)は、前記A、B、A’部を順次剥離破砕した後、中心部Cのジベル14の周りに残った斜線部のコンクリート付着部17を破砕していることを表した平面図である。
【
図6】(a)は、平らなコンクリート付着部17を、グリッパ43で剥離破砕している側面図、(b)は、コンクリート付着部17をある程度剥離破砕した後で、凹凸面が多く残っているときに、
図3(c)に示す45度、90度などの突起部45を持つグリッパ43で剥離破砕している側面図、(c)は、コンクリート付着部17がジベル14の周りに残っているときに、
図3(a)に示す45度などの尖鋭な突起部45を持つグリッパ43で剥離破砕している側面図である。
【
図7】本発明のコンクリート床版の剥離装置を2台並べてセットした状態の側面図である。
【
図8】(a)は、鋼桁11にスタッドのジベル14を用いてコンクリート床版10を敷設したコンクリート合成桁の斜視図、(b)は、鋼桁11にチャンネルにループ鉄筋を溶接した馬蹄形型のジベル14を溶接した例を示す斜視図、(c)は、鋼桁11にフック型の鉄筋のジベル14を溶接した例を示す斜視図、(d)は、鋼桁11に高力ボルトのジベル14を用いた例を示す斜視図である。
【
図9】老朽化したコンクリート床版10を切断してフランジ12の上にコンクリート付着部17を残した状態の断面図である。
【
図10】従来のコンクリート柱等の破壊装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のコンクリート床版の剥離装置は、
コンクリート床版10を鋼桁11から剥離破砕するコンクリート床版の剥離装置において、
前記鋼桁11から前記コンクリート床版10を切断した残りの前記鋼桁11のフランジ12に付着した前記コンクリート床版10の一部のコンクリート付着部17と前記フランジ12とを一体に遊嵌するための、上部アーム27と下部アーム28と連結部29からなるコ字形アーム26と、
前記上部アーム27に取り付けられたジャッキ34と、
前記ジャッキ34のピストンロッド39に取り付けられて前記コンクリート付着部17を押圧して剥離破砕するグリッパ43と、
前記下部アーム28に取り付けられ、前記鋼桁11に接して前記グリッパ43の反力を受ける反力受け部材35と
からなる。
【0032】
前記コ字形アーム26は、略同形の2個を、連結材31を介在して所定間隔で連結したものからなり、2個の前記上部アーム27からなる上部隙間32に前記鉛直ジャッキ34を位置調整自在に取り付け、2個の前記下部アーム28からなる下部隙間33に前記反力受け部材35を位置調整自在に取り付ける。
【0033】
前記ジャッキ34のピストンロッド39に圧縮板41を取り付け、この圧縮板41に着脱自在に1~複数個の前記グリッパ43を設ける。
【0034】
前記ジャッキ34は、ジャッキ固定金具36とジャッキ支持金具37で前記上部アーム27を挟持して固定する。
【0035】
前記鉛直ジャッキ34は、前記上部アーム27に所定間隔で穿設した位置合わせ孔48に位置調整自在に設ける。
【0036】
前記反力受け部材35は、前記下部アーム28に所定間隔で穿設した位置合わせ孔49に位置調整自在に設ける。
【0037】
前記グリッパ43は、前記圧縮板41に形成した複数個のグリッパ挿着ねじ孔44に、1~複数個を螺合し、前記グリッパ挿着ねじ孔44の下端部に、1~複数個の突起部45を形成する。
【0038】
本発明のコンクリート床版10を鋼桁11から剥離破砕するコンクリート床版の剥離方法は、
前記鋼桁11のフランジ12に付着した前記コンクリート床版10の一部のコンクリート付着部17を残して前記コンクリート床版10を切断する工程と、
前記フランジ12とコンクリート付着部17を、上部アーム27と下部アーム28と連結部29からなるコ字形アーム26の嵌合部30に遊嵌する工程と、
前記下部アーム28に取り付けた反力受け部材35で前記フランジ12に接して反力を受けつつ、前記上部アーム27に取り付けたジャッキ34のグリッパ43で前記コンクリート付着部17を押圧し、前記コンクリート付着部17を前記コンクリート床版10から剥離破砕する工程と
からなる。
【0039】
前記コンクリート床版10は、前記鋼桁11に複数本のスタッド、チャンネルにループ鉄筋を溶接した馬蹄形型のもの、フック型の鉄筋を溶接したもの、高力ボルトからなるものなどからなるジベル14を介在して打設形成したものからなる。
【0040】
前記コンクリート付着部17を前記フランジ12から剥離破砕する工程は、前記フランジ12の長さ方向に所定間隔で順次行う。
【0041】
前記フランジ12とこのフランジ12に付着した前記コンクリート付着部17の長さ方向に、2台またはそれ以上のコンクリート床版の剥離装置を並設し、複数のコンクリート床版の剥離装置を駆動して前記コンクリート付着部17を剥離破砕するようにする。
【実施例0042】
図1において、2個のコ字形アーム26は、それぞれ上部のアーム27と連結部29と下部のアーム28とでコ字形に形成され、これら2個のコ字形アーム26は、前記連結部29の部分で間に筒状の連結材31を挟んでボルトで相互の間隔を例えば70mmに固定している。前記2個の上部のアーム27の先端部分には、上部の隙間32が形成され、前記2個の下部のアーム28の先端部分には、下部の隙間33が形成されている。前記上部の隙間32には、鉛直に伸縮する鉛直ジャッキ34が下向きに取り付けられる。また、前記下部のアーム28の上縁部には、それぞれ上面にチップ35aを有する反力受け部材35が取り付けられる。
【0043】
前記鉛直ジャッキ34のシリンダー34aの下端には、前記2個の上部のアーム27の下方から嵌合するように両端に鍔付きのジャッキ固定金具36が宛がわれ、このジャッキ固定金具36の下からジャッキ固定リング38を嵌め込み固定し、下方からピストンロッド39が突出する。前記シリンダー34aの上部には、ジャッキ支持金具37が嵌め込まれ、これらのジャッキ固定金具36とジャッキ支持金具37で前記上部のアーム27の上下から挟み付けて位置調整してボルトで固定する。
前記シリンダー34aの側面上下には、圧油口53と圧油口54が設けられる。
前記ピストンロッド39の下端には、ジャッキヘッドプレート40が嵌め込まれ、このジャッキヘッドプレート40の下端部は、円盤状の圧縮板41の嵌合穴42に嵌め込まれる。この圧縮板41には、中心部とその外周の90度間隔の垂直なグリッパ挿着ねじ孔44が設けられている。この圧縮板41のグリッパ挿着ねじ孔44には、
図2(a)に示すように、2本のグリッパ43が180度間隔をおいて下から所定距離だけ突出して螺着される。又は、
図2(b)に示すように、1本のグリッパ43が中心部のグリッパ挿着ねじ孔44に下から後述する所定距離だけ突出して螺着される。グリッパ43の本数と螺着位置は、図示例に限らず適宜設定される。
【0044】
前記グリッパ43は、一例として
図2(c)に示すように、下端部に、複数個の4角錐の突起部45が形成されている。また、上端部には、六角ボルト穴46が形成されている。
前記鉛直ジャッキ34に圧縮板41を取り付けた状態で、上部の隙間32に側方からジャッキ固定金具36とジャッキ支持金具37で上部のアーム27を上下から挟むようにして嵌合し、嵌合後、鉛直ジャッキ34の両側から2本の位置決めピン47を位置合わせ孔48に差し込んで位置決めし、位置決め後、ジャッキ固定金具36とジャッキ支持金具37をボルトで締め付けて上部のアーム27に固定する。
前記鉛直ジャッキ34の圧油口53と圧油口54には、電動ポンプ51の圧油パイプが連結される。前記電動ポンプ51は、発電機50に連結され、操作用リモコン52で圧油の切り替えを制御する。前記電動ポンプ51は、手動ポンプとすることもできる。
前記下部のアーム28の上縁部には、それぞれ反力を受ける反力受け部材35の舌片35bが嵌合され、位置合わせ孔49のいずれかに位置決めしてボルトで取り付けられる。
【0045】
前記グリッパ43の異なる形状の例は、
図3に示される。
(a)のグリッパ43は、先端の片面を30度、45度、60度など所定の角度nのテーパー面にカットして突起部45を形成した例を示している。
(b)のグリッパ43は、先端の半分を30度、45度、60度など所定の角度nのテーパー面にカットして突起部45を形成した例を示している。
(c)のグリッパ43は、先端の両面を30度、45度、60度、90度など所定の角度nのテーパー面にカットして突起部45を形成した例を示している。
(d)のグリッパ43は、サイズM16の円柱形のグリッパ43の尖り先の角度nを90度の円錐形とし、先端径をΦ4mmの平坦とし、刃高hを6mmとした例を示している。
(e)のグリッパ43は、サイズM16の円柱形のグリッパ43の先端を、先端径Φ12mmの2段棒先の平坦とし、刃高hを8mmとした例を示している。
【0046】
以上のように構成されたコンクリート床版の剥離装置を用いてフランジ12に付着したコンクリート付着部17の剥離撤去作用を説明する。
図4(a)の一方の端縁部Aでの剥離作用
図4(a)において、反力受け部材35の位置を下部アーム28の先端部側の位置合わせ孔49に固定し、この反力受け部材35の垂直線と一致するように鉛直ジャッキ34の位置合わせをして2本の位置決めピン47で位置決めし、ジャッキ固定金具36とジャッキ支持金具37で上部アーム27に固定する。このとき、反力受け部材35の固定ねじ位置は、
図4(a)で示した位置合わせ孔49の黒丸位置とし、また、位置決めピン47の位置は、位置合わせ孔48の黒丸位置とする。
【0047】
図5(a)において、圧縮板41の中心部がコンクリート付着部17のAのA1に位置するように鉛直ジャッキ34のピストンロッド39を押し下げ、反力受け部材35との間でコンクリート付着部17とフランジ12を挟み付け、コ字形アーム26を固定する。
A1にコ字形アーム26を固定したら、鉛直ジャッキ34のピストンロッド39をさらに押し下げてグリッパ43をコンクリート付着部17にめり込ませてフランジ12に付着したコンクリート付着部17を斜線のように剥離破砕する。
【0048】
ここで、圧縮板41の下面からグリッパ43の先端部が突出する距離は、コンクリート付着部17の厚さ以下に調整する。このことにより、圧縮板41の下面がコンクリート付着部17の上面に接触したとき、グリッパ43の先端部がフランジ12に接触することがなく、フランジ12に損傷を与えることがない。
グリッパ43の突起部45は、小径であるから鉛直ジャッキ34の圧縮荷重がグリッパ43に伝達して高い圧縮応力が与えられ、コンクリート付着部17を剥離破砕する。また、グリッパ43の突起部45は、5~10個の複数個の4角錐からなるとともに、グリッパ43は、圧縮板41に取り付けられ、グリッパ43の突出高さをコンクリート付着部17の厚さ以下に設定することにより、突起部45がフランジ12の表面まで到達することなく、剥離破砕される。また、前記鉛直ジャッキ34のピストンロッド39を押し下げると、下部アーム28側の2個の反力受け部材35が70mm程度離れて取り付けられているが、クラックの方向は、
図5(a)に示すように、グリッパ43から2個の反力受け部材35の方向へこれらの2個の反力受け部材35の間隔を超えて大きく発生し、コンクリート付着部17の剥離作用がより効果的に行われる。
なお、グリッパ43の下降量は、フランジ12の表面までに達しないように、ピストンロッド39のストロークを設定することが望ましい。また、コンクリート付着部17には、スタッドジベル、その他のジベル14が一部残っているので、グリッパ43は、スタッドジベル、その他のジベル14に接しないように、ジベル14の周りに位置してセットすることが望ましい。
A1位置で剥離破砕されたコンクリート片は、所定間隔で連結した2個のアームの隙間であってフランジの幅方向などのコンクリート自由端側に押し出され、コンクリート付着部17の上に残ることがない。
【0049】
A1位置での剥離破砕が済んだら、グリッパ43を上昇し、グリッパ43の位置がA2の位置になるようにコ字形アーム26を移動し、前記同様にして剥離破砕する。
コンクリート付着部17の剥離位置が、A4位置のように、垂直補剛材13の真上であるようなときには、2個の下部アーム28の下部隙間33に垂直補剛材13を差し込むようにしてコンクリート付着部17を剥離破砕する。
以下、同様にした他端部のAnまで順次剥離破砕する。
【0050】
図4(b)の中間部Bでの剥離作用
図4(a)及び
図5(a)でのコンクリート付着部17の一方の端縁部Aにおける剥離作業が終了したら、
図4(b)のように、反力受け部材35と鉛直ジャッキ34の相互の位置関係は、
図4(a)と同じ位置を保ち、コンクリート床版の剥離装置を
図5(b)の中間部BにおけるB1の位置に移動する。
前記同様にして、B1から他端部のBnまで斜線部で示すように順次剥離破砕する。
【0051】
図4(c)の他方の端縁部A’での剥離作用
コンクリート付着部17の一方側A、Bでの剥離破砕が終了したら、
図5(c)に示すように、他方の端縁部A’において、A1’から他端部のAn’まで斜線部で示すように順次剥離破砕する。
以上のA、B、A‘での剥離破砕によりジベル14の周りにコンクリート付着部17が残る。
【0052】
図4(c)の中心部Cでの剥離作用
グリッパ43の位置を
図4(c)の中心部Cに設定し、
図5(d)に示すように、ジベル14の周りに残ったコンクリート付着部17をC1から他端部のCnまで斜線部で示すように順次剥離破砕する。
なお、
図4(c)のように、中心部Cの位置に設定するとき、下部アーム28の反力受け部材35は、鋼桁11の中央の腹板のために、中心線Cに一致できない。そのため、反力受け部材35をフランジ12の下側の最も深い位置まで差し込み、鉛直ジャッキ34のみを中心線Cに一致するように位置合わせ孔48の黒丸位置に移動して固定する。
前記実施例では、剥離破砕する順序を、最初に一方の端縁部側、次いで他方の端縁部側、最後に中心部としたが、これに限られるものではなく、最初に一方の端縁部側、次いで中心部、最後に他方の端縁部側とすることもできる。
【0053】
なお、
図5(a)(b)(c)(d)に×印で示した剥離破砕個所を4列としたが、これに限られるものではなく、コンクリート付着部17の幅、厚さ、ジベル14の位置と本数、グリッパ43の本数等に応じて、3列でも、5列以上でもよい。また、剥離破砕個所の間隔も図示例に限られるものではなく、コンクリート付着部17の幅、厚さに応じて、グリッパ43の本数を変えるなどして最も効率よく、かつ、確実にコンクリートを剥離破砕できる方法を見つけ出すようにすることが望ましい。
前記実施例では、鋼桁11の水平なフランジ12に残された水平なコンクリート付着部17を、鉛直ジャッキを用いて剥離破砕する例を示したが、垂直や傾斜しているフランジ12に付着している水平以外のコンクリート付着部17を剥離破砕する場合には、コ字形アーム26をフランジ12の角度に合わせてコンクリート付着部17とともに挟み込んで剥離破砕することができる。