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  • 特開-回転部材、回転部材の製造方法 図1
  • 特開-回転部材、回転部材の製造方法 図2
  • 特開-回転部材、回転部材の製造方法 図3
  • 特開-回転部材、回転部材の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089597
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】回転部材、回転部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/00 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
B25B21/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204199
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232597
【氏名又は名称】株式会社ベッセル工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田口 二郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 秀二
(72)【発明者】
【氏名】大森 義仁
(57)【要約】
【課題】全体的な破断の防止に関して改良された回転部材、回転部材の製造方法を提供する。
【解決手段】回転工具が備える軸状の部材装着部に装着して締結具を回転させるために用いられる回転部材1であって、先端側で前記締結具に係合するソケット2と、前記ソケット2の基端側で同心に接続され、前記部材装着部に装着される部分であり、前記回転工具の駆動力を前記ソケット2に伝達する軸状のシャンク3と、を備え、前記シャンク3は、径中心に基端から先端まで貫通した中空部31を備え、前記中空部31には、径内側に配置され前記シャンク3の軸方向に沿って延びる芯材4と、前記芯材を取り巻くように径外側に配置された、前記芯材4よりも軟質な材料からなる緩衝材5と、が設けられた回転部材1である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具が備える軸状の部材装着部に装着して締結具を回転させるために用いられる回転部材であって、
先端側で前記締結具に係合するソケットと、前記ソケットの基端側で同心に接続され、前記部材装着部に装着される部分であり、前記回転工具の駆動力を前記ソケットに伝達する軸状のシャンクと、を備え、
前記シャンクは、径中心に基端から先端まで貫通した中空部を備え、
前記中空部には、径内側に配置され前記シャンクの軸方向に沿って延びる芯材と、前記芯材を取り巻くように径外側に配置された、前記芯材よりも軟質な材料からなる緩衝材と、が設けられた回転部材。
【請求項2】
前記シャンクの基端寄り部分には、前記装着の際、前記部材装着部にチャッキングされるチャッキング部を備え、
前記芯材は、前記シャンクの基端から先端まで連続して設けられている、請求項1に記載の回転部材。
【請求項3】
前記シャンクの先端寄り部分には、前記ソケットに接続された状態で前記ソケットの内周面との間に空間を有するように周方向に形成された抜け止め溝を備え、
前記抜け止め溝における底部と前記中空部を連結する連結穴が設けられ、
前記緩衝材は、前記中空部から前記連結穴を介して前記抜け止め溝に至っている、請求項1または2に記載の回転部材。
【請求項4】
前記ソケットと前記シャンクとの接続部分には、前記ソケット及び前記シャンクよりも軟質な材料からなるダンパー部が介在する、請求項1~3のいずれかに記載の回転部材。
【請求項5】
回転工具が備える軸状の部材装着部に装着して締結具を回転させるために用いられる回転部材の製造方法であって、
棒状で径中心に基端から先端まで貫通した中空部と、前記中空部と外周面との間を連結する複数の連結穴とを備えたシャンク素材と、
前記シャンク素材の前記中空部に、径方向に隙間をもって通される芯材素材と、
先端に前記締結具に係合する係合部を有し、基端に前記シャンク素材を通すことのできるシャンク取付穴を有するソケット素材と、が準備され、
前記シャンク素材を、前記中空部に前記芯材素材を通した状態で成形型の内部に配置した上で、前記成形型に溶融樹脂を注入することで、前記連結穴と、前記中空部における前記芯材素材の径外側とに連続して樹脂を配置する成形工程と、
別途形成された樹脂からなる筒状のダンパー素材を前記シャンク素材の外周部に取り付けると共に、前記ダンパー素材を前記ソケット素材の前記シャンク取付穴に嵌め込む組立工程と、を有する、回転部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転工具が備える軸状の部材装着部に装着して締結具を回転させるために用いられる回転部材、及び、この回転部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、一体形成されたソケットと軸体とにわたって連結体が内部に設けられた構成が記載されている。この構成では、軸体が破断しても連結体が破断していなければソケットと軸体とが完全に分離してしまうことを回避できる。なお、特許文献1には、ソケットと軸体とが別体であってもよいとの記載がある。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の構成では、ソケットと軸体の内部に直接連結体が配置されている。このため、連結体自体が破断してしまう可能性があり、そうなればソケットと軸体とが完全に分離してしまうことを回避できないことから、全体的な破断の防止に関して改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-144506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、全体的な破断の防止に関して改良された回転部材、回転部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転工具が備える軸状の部材装着部に装着して締結具を回転させるために用いられる回転部材であって、先端側で前記締結具に係合するソケットと、前記ソケットの基端側で同心に接続され、前記部材装着部に装着される部分であり、前記回転工具の駆動力を前記ソケットに伝達する軸状のシャンクと、を備え、前記シャンクは、径中心に基端から先端まで貫通した中空部を備え、前記中空部には、径内側に配置され前記シャンクの軸方向に沿って延びる芯材と、前記芯材を取り巻くように径外側に配置された、前記芯材よりも軟質な材料からなる緩衝材と、が設けられた回転部材である。
【0007】
この構成によると、回転工具の駆動力を受けても、緩衝材が設けられていることによりシャンクが破断しにくく、仮にシャンクが破断した場合であっても、芯材によりシャンクの折れた部分よりも先端側が分離することを防止できる。
【0008】
また、前記シャンクの基端寄り部分には、前記装着の際、前記部材装着部にチャッキングされるチャッキング部を備え、前記芯材は、前記シャンクの基端から先端まで連続して設けられているものとできる。
【0009】
この構成によると、チャッキング部と他の部分との形状の差異による力のかかり方によって、チャッキング部に破断が発生しても、チャッキング部をまたぐようにシャンクの基端から先端まで連続して設けられている芯材により、シャンクの先端側が分離することを有効に防止できる。
【0010】
また、前記シャンクの先端寄り部分には、前記ソケットに接続された状態で前記ソケットの内周面との間に空間を有するように周方向に形成された抜け止め溝を備え、前記抜け止め溝における底部と前記中空部を連結する連結穴が設けられ、前記緩衝材は、前記中空部から前記連結穴を介して前記抜け止め溝に至っているものとできる。
【0011】
この構成によると、シャンクをソケットに接続するための差し込みに伴い、ソケットの一部が削られて生じた削り屑が抜け止め溝の有する空間を満たすことにより、シャンクの抜け止めに貢献する。そしてこの際、抜け止め溝に位置する緩衝材に削り屑が密着することから、ソケットとシャンクとの間で伝わる力を緩衝材が直接受け止めることにより、緩衝材の緩衝作用が有効に働く。
【0012】
また、前記ソケットと前記シャンクとの接続部分には、前記ソケット及び前記シャンクよりも軟質な材料からなるダンパー部が介在するものとできる。
【0013】
この構成によると、ダンパー部により、ソケットとシャンクとの接続部分に応力が集中してしまうことを回避できる。
【0014】
また本発明は、回転工具が備える軸状の部材装着部に装着して締結具を回転させるために用いられる回転部材の製造方法であって、棒状で径中心に基端から先端まで貫通した中空部と、前記中空部と外周面との間を連結する複数の連結穴とを備えたシャンク素材と、前記シャンク素材の前記中空部に、径方向に隙間をもって通される芯材素材と、先端に前記締結具に係合する係合部を有し、基端に前記シャンク部材を通すことのできるシャンク取付穴を有するソケット素材と、が準備され、前記シャンク素材を、前記中空部に前記芯材素材を通した状態で成形型の内部に配置した上で、前記成形型に溶融樹脂を注入することで、前記連結穴と、前記中空部における前記芯材素材の径外側とに連続して樹脂を配置する成形工程と、別途形成された樹脂からなる筒状のダンパー素材を前記シャンク素材の外周部に取り付けると共に、前記ソケット素材の前記シャンク取付穴に嵌め込む組立工程と、を有する、回転部材の製造方法である。
【0015】
この構成によると、回転工具の駆動力を受けても、緩衝材が設けられていることによりシャンクが破断しにくく、仮にシャンクが破断した場合であっても、芯材によりシャンクの折れた部分よりも先端側が分離することを防止できる回転部材を容易に製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、シャンクが破断しにくく、仮にシャンクが破断した場合であっても、芯材によりシャンクの折れた部分よりも先端側が分離することを防止できる。このため、全体的な破断の防止に関して改良された回転部材、回転部材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る回転部材を後方から見た状態を示す斜視図である。
図2】前記回転部材を直径位置にて軸方向で切断した状態を示す切断斜視図である。
図3図2のIII囲み部分を拡大して示した要部拡大断面図である。
図4図3のIV-IV断面において中央部分のみ示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の回転部材1につき、一実施形態を取り上げて説明を行う。なお、以下の説明における方向(特に前後方向)は、使用状態における方向で表現している。
【0019】
本実施形態の回転部材1は、一般に「ビット」と呼ばれる部材であって、モータ等の駆動源により回転駆動される軸状の部材装着部であるシャフトを有する回転工具の当該シャフトに対して同心に装着して、ボルト、ナット等、回転により締結作用をなす締結具を回転させるために用いられる。
【0020】
回転部材1は、図1に示すように、前方部分としてソケット2を備え、後方部分としてシャンク3を備える。ソケット2とシャンク3は別々に形成され、後述するように組み立てられ一体とされている。また、シャンク3の内部には芯材4と緩衝材5が設けられている。また、ソケット2とシャンク3との間にはダンパー部6が設けられている。
【0021】
ソケット2は、図2に示すように、内部が中空とされた筒状に形成されており、先端側(前端側)に締結具に係合する締結具係合部21が設けられている。ソケット2は、本実施形態ではクロムモリブデン鋼から形成されている。締結具係合部21は、本実施形態では六角ボルトのボルト頭または六角ナットの外周形状に対応しており、先端側内周面が前方から見た場合で正六角形状となっている。締結具係合部21における内部の空洞部分にボルト頭やナットを配置し、これらが有する外周部を締結具係合部21に係合させることができる。基端側(後端側)にはシャンク3を差し込むことのできる、軸方向に延びる貫通穴であるシャンク取付穴22が形成されている。シャンク取付穴22の内面の径方向断面形状は円形であって、その直径寸法は、シャンク3の径方向断面形状である正六角形状の、径方向で対向する頂点間寸法よりやや小さく形成されている。このため、シャンク3は、ソケット2に対して圧入される。シャンク取付穴22は、前部221が小径で後部222が大径に形成されており。前部221にはシャンク3が配置され、後部222にはシャンク3及びダンパー部6の挿入部61が配置される。シャンク取付穴22と締結具係合部21の間には筒状の中間部23が設けられている。この中間部23の軸方向の長さは適宜設定できる。
【0022】
シャンク3は、ソケット2の基端側でソケット2の回転中心に対して同心に接続され、シャフトに装着される、軸状の部分である。シャンク3はソケット2よりも硬質の金属(鋼材、特殊鋼)から形成されている。シャンク3は、回転工具から入力された駆動力(回転力)をソケット2に伝達する。シャンク3は、径中心に基端から先端まで貫通した、軸方向に延びる貫通穴である中空部31を備える。本実施形態では、径方向断面形状が円形の貫通穴である。中空部31を設けたことにより、中実とした場合に比べ、回転工具の駆動力を受けた場合のねじり応力に対してシャンク3を有効に対抗させられる。シャンク3は工具鋼等の金属製とされている。また、本実施形態ではシャンク3の径方向断面形状は正六角形状とされているが、その他種々の形状とすることができる。中空部31の両端の内面にはテーパ面311が形成されており、端縁に向かうにつれ径寸法が拡大されている。中空部31には、径内側に配置されシャンク3の軸方向に沿って延びる芯材4と、芯材4よりも軟質な材料からなる緩衝材5と、が設けられている。
【0023】
また、シャンク3の基端寄り部分には、回転工具への装着の際、回転工具のシャフトの先端に設けられた可動部(図示しない)に径外側から挟まれることで、回転部材1を前後方向及び周方向に固定するためにチャッキングされるチャッキング部32を備える。本実施形態のチャッキング部32は、周方向に形成された凹溝とされている。回転工具からの駆動力(回転力)は、チャッキングされた状態でシャフトからシャンク3の側面に入力される。そして駆動力はシャンク3からダンパー部6を介してソケット2に伝達され、締結具係合部21から締結具に対して出力される。チャッキング部32は、回転工具の可動部の形状やチャッキングの際の可動部の形態変化に合わせるため、本実施形態とは異なる種々の形状としてよい。
【0024】
シャンク3の先端寄り部分には、周方向に抜け止め溝33が形成されている。この抜け止め溝33は、本願の出願人による特許第4667026号公報において開示したものと基本的には同様の構成を有している。組み立て時にソケット2にシャンク3を先端側から差し込んでいく際に、ソケット2におけるシャンク取付穴22の内周面の一部がシャンク3における径方向断面における多角形状(本実施形態では正六角形状)の頂部の当接によって削られ、ソケット2の削り屑8が複数、この抜け止め溝33に詰まる(図3にドット表示で示す)。削り屑8の導入をスムーズにするため、図3に示すように、抜け止め溝33の底部の傾斜は、先端側が基端側よりも緩く形成されている。抜け止め溝33が有する空間は有限であるから、詰まった複数の削り屑8は圧縮された状態となる。抜け止め溝33が削り屑8で満たされた状態となることで、削り屑8がくさびのように作用し、回転部材1の使用時に回転工具から伝わった衝撃力によって、ソケット2からシャンク3が抜けてしまいソケット2とシャンク3が分離することを防止できる。
【0025】
抜け止め溝33の径内側に位置する底部と中空部31との間は、周方向において2箇所、連結穴により連通している。このため、緩衝材5の一部である樹脂がシャンク3を径方向に貫通して貫通部7を形成している。そして緩衝材5の一部により形成された貫通部7が、抜け止め溝33の底部から径外側にはみ出ることで、抜け止め溝33が有する空間に一部露出し、露出部71となっている。露出部71は抜け止め溝33に沿い、全周にわたって設けられる。この露出部71により奏される作用は後述する。なお、連結穴及び貫通部7の数量は2箇所に限らず適宜設定できる。
【0026】
芯材4は、シャンク3の基端から先端まで連続して設けられている。つまり芯材4の長さはシャンク3の長さと等しい(かしめ部41の形状により若干の寸法差はありえる)。芯材4の両端には、かしめられて径寸法が拡大されたかしめ部41が形成されており、このかしめ部41は中空部31の端部内面であるテーパ面311に当接することにより、芯材4が中空部31から抜けないようになっている。芯材4としては、径寸法が中空部31の内径寸法よりも小さな棒鋼や鋼製ワイヤーが用いられる。
【0027】
緩衝材5は、中空部31において、芯材4の設けられていない空間を埋めるように、芯材4の径外位置に配置されている。このため、緩衝材5は芯材4を取り巻くように径外側に配置される。緩衝材5には樹脂が用いられている。樹脂としては、例えば耐衝撃性を考慮して種々のものを用いることができる。本実施形態ではアイモノマー樹脂が用いられている。このようにシャンク3の内部に設けられた緩衝材5は、シャンク3の内部で軸方向に沿うことによる緩衝作用でシャンク3を破断しにくくすると共に、シャンク3から芯材4に伝わる曲げ応力やねじり応力を緩和することにより、芯材4が破断してしまうことを防止する作用を奏する。
【0028】
また、ソケット2とシャンク3との接続部分には、ソケット2及びシャンク3よりも軟質な材料からなるダンパー部6が介在する。本実施形態では緩衝材5と同一の樹脂(アイモノマー樹脂)からなる。ダンパー部6は、シャンク3における前後方向の前寄り部分で径方向に突出した部分であって、シャンク取付穴22に挿入される挿入部61と、挿入部61の後側に連続し、挿入部61よりも径外方向に拡大した部分である拡大部62とを備える。挿入部61はシャンク取付穴22に対して圧縮して挿入される。また、拡大部62はシャンク取付穴22の後端部を覆う。
【0029】
前述のように、抜け止め溝33が有する空間に緩衝材5の一部が露出部71として露出している。このように構成することで、抜け止め溝33に入り込んだ削り屑8と露出部71とが接することになる。露出部71が径内側に位置し、削り屑8が径外側に位置した状態であって、露出部71と削り屑8とにより抜け止め溝33の空間が埋められる。このような位置関係となることで、径外側においては前述したシャンク3の抜け止め作用が奏され、径内側においては緩衝作用が奏されることになる。従って、シャンク3をソケット2に接続するための差し込み(圧入)に伴い、ソケット2の一部が削られて生じた削り屑8が抜け止め溝33の有する空間を満たすことにより、シャンク3の抜け止めに貢献する。そしてこの際、抜け止め溝33の底部に露出した樹脂からなる露出部71に削り屑8が密着することになるから、ソケット2とシャンク3との間で伝わる力が貫通部7から緩衝材5に伝達されることにより、緩衝材5の緩衝作用が有効に働く。さらに、回転工具に対しチャッキングされた部分から遠い位置に緩衝材5の一部である貫通部7が位置しており、しかも抜け止め溝33の全周にわたって露出部71が存在する(図4参照)。このため、シャンク3の中心にのみ緩衝材5が設けられている構成に比べ、径方向の断面積に占める緩衝材5(本実施形態では樹脂)の割合を大きくできる。このため、例えばソケット2が首振りするような力に対して有効に緩衝作用を働かせることができ、その結果、シャンク3が折れることを有効に防止できる。
【0030】
以上、本実施形態の回転部材1では、回転工具に取り付けて例えば高所作業を行う際、もしもシャンク3が破断しても、その時点で破断していない芯材4によって、シャンク3が分離して落下または飛散することを防止できる。このため、安全性が高い。
【0031】
次に、前記回転部材1の製造方法について説明する。まず、各々金属製であるシャンク素材、芯材素材、ソケット素材が準備される。各部材に対するめっきや塗装はこの段階で行われる。また、樹脂原料が準備される。なおここでは、完成に至っていない回転部材1の構成部品に関して「素材」と称する。また、完成後の回転部材1の各部と同じ部分には同一の符号を付して説明する。
【0032】
シャンク素材は、棒状で径中心に基端から先端まで貫通した中空部31と、中空部31とシャンク素材の外周面との間を連結する複数の連結穴(貫通部7を形成するための、径方向に延びる貫通穴)とを備えたものである。シャンク素材の中空部31には、芯材素材が径方向に隙間をもって通された状態とされる。そして、芯材素材の両端がかしめられてかしめ部41が形成されることで、加工後の芯材素材がシャンク素材から抜けないようにされる。
【0033】
ソケット素材は、先端に締結具に係合する係合部を有し、基端にシャンク素材を通すことのできるシャンク取付穴22を有する。
【0034】
前記のように準備された各部材を用いて成形工程が実施される。成形工程に当たって、加熱等により流動性を有する状態となった溶融樹脂が準備される。
【0035】
成形工程では、シャンク素材を金型等の成形型の内部に配置した上で、成形型に溶融樹脂を注入することで、連結穴と、中空部31における芯材素材の径外側とに連続して樹脂を配置する。これにより、シャンク素材と芯材素材とに対して、緩衝材5と貫通部7が一体的に形成される。つまり、この成形工程で行われる成形は、成形型によって成形される樹脂にシャンク素材と芯材素材が一体化されるインサート成形である。なお、ダンパー部6の元となる筒状のダンパー素材は別途形成されて用意される。
【0036】
次に、組立工程が実施される。組立工程では、前記ダンパー素材をシャンク素材の外周部に取り付けると共に、ダンパー素材をソケット素材のシャンク取付穴22に後方から嵌め込む。これらの各工程を経て、本実施形態の回転部材1を完成させることができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0038】
例えば、前記実施形態では、締結具係合部21を、六角ボルト、六角ナットに対応した形状としていたが、対象とする締結具の形状に合わせて種々の形状とできる。例えば六角穴ボルトに対応させるため、先端部分を中実の六角柱状とすることができる。また、プラスドライバーやマイナスドライバーの先端部と同一の形状とすることもできる。これらの場合、ソケット2を前記実施形態のような中空ではなく、シャンク3を取り付ける部分を除いて中実に形成することができる。
【0039】
また、緩衝材5、ダンパー部6、貫通部7を形成するための樹脂につき、前記実施形態では同じ樹脂を用いたが、各部で特性の異なる別の樹脂や、同種の樹脂であっても配合を変えたものを用いることもできる。こうすることで、各部に応じた適切な特性を付与できる。
【符号の説明】
【0040】
1 回転部材
2 ソケット
22 シャンク取付穴
3 シャンク
31 中空部
32 チャッキング部
33 抜け止め溝
4 芯材
5 緩衝材
6 ダンパー部
7 貫通部
71 露出部
8 削り屑
図1
図2
図3
図4