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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089648
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】放熱構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230621BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20230621BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L25/00 B
H01L23/36 M
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204268
(22)【出願日】2021-12-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】尾上 祐介
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC02
5F136BC03
5F136CC12
5F136CC14
5F136DA21
5F136EA13
5F136FA01
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】半導体チップを効果的に放熱させることができ、しかも低コストで構成することのできる放熱構造および電子機器を提供する。
【解決手段】放熱構造10は、サブストレート22の表面にダイ24が設けられてその周囲にキャパシタ28が設けられているCPU14の放熱をする。放熱構造10は、ダイ24の表面に対して熱接続される伝熱板30と、ダイ24の表面と伝熱板30との間に設けられる液体金属32と、キャパシタ28を覆う絶縁材34と、ダイ24を囲うように設けられてサブストレート22と伝熱板30によって挟持される弾性材36とを有する。伝熱板30は、キャパシタ28と対面する箇所に貫通孔30aが形成されている。貫通孔30aは絶縁性のシート33aで塞がれている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブストレートの表面にダイが設けられてその周囲に電気素子が設けられている半導体チップの放熱構造であって、
前記ダイの表面に対して熱接続される伝熱板と、
前記ダイの表面と前記伝熱板との間に設けられる液体金属と、
前記電気素子を覆う絶縁材と、
を有し、
前記伝熱板は、前記電気素子と対面する箇所に凹部が形成されている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱構造において、
前記凹部は貫通孔であり、
前記貫通孔は絶縁性のシートで塞がれている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項3】
請求項1に記載の放熱構造において、
前記凹部は有底穴である
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の放熱構造において、
前記ダイを囲うように設けられて前記サブストレートと前記伝熱板によって挟持される弾性材を有し、
前記弾性材は前記絶縁材を介して前記電気素子を覆っている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項5】
請求項4に記載の放熱構造において、
前記絶縁材は前記サブストレートに対して接着されている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項6】
請求項4または5に記載の放熱構造において、
前記絶縁材と前記ダイとの間には隙間が設けられている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の放熱構造において、
前記半導体チップは基板に実装されたCPUであり、前記電気素子はキャパシタである
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の放熱構造において、
前記絶縁材は、紫外線硬化型のコーティング材である
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の放熱構造および前記半導体チップを備える
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブストレートの表面にダイが設けられてその周囲に電気素子が設けられている半導体チップの放熱構造および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器にはCPU、GPUなどの半導体チップが設けられている。CPU、GPUは基板に実装させる部分であるサブストレートと、該サブストレートの表面に設けられた矩形のダイとを有する形状になっている。また、サブストレートの表面には小さいキャパシタがダイの周囲に設けられている場合がある。
【0003】
CPU、GPUなどの半導体チップは発熱体であり、その消費電力(特に高負荷時)によっては放熱させる必要がある。CPU、GPUを放熱させる手段としてベーパーチャンバ、ヒートスプレッダまたはヒートシンクなどの放熱体を用い、このような放熱体を介してダイの表面に当接させて熱を拡散させることがある。放熱体とダイとの間には伝熱板を介在させることもある。ダイと放熱体または伝熱板との間には、熱を効率的に伝達させるために伝熱性の高いグリスや液体金属を設ける場合がある(例えば、特許文献1)。液体金属はグリスよりも伝熱性が高く、ダイから放熱体へ効果的に熱を伝えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-146819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体金属は導電性があるとともに、ガリウムを主成分とする場合があってハンダと化学反応を起こす。また、液体金属は液体であって流動性が高いため周囲の基板などに漏れ出すことがないように対策を講じる必要がある。また、液体金属がダイの周辺に流れ出た場合であっても、周辺のキャパシタなどの電気素子に触れることのないようにしなければならない。液体金属は導電性があってキャパシタをショートさせる懸念があるためである。このため、サブストレートに設けられている電気素子を絶縁性の接着剤で保護することが考えられる。
【0006】
ところでCPUのダイはGPUのダイより低い場合があり、サブストレートと伝熱板との間隔が狭くなる。接着剤はある程度の高さがあるため、そのままでは伝熱板との隙間が十分に確保されず、または干渉し得る。
【0007】
接着剤と伝熱板との間に適度な隙間を確保するためには伝熱板とCPUとの間に銅ブロックなどを介在させて嵩上げすることが考えられるが、伝熱板と銅ブロックとをハンダ付けすると、該ハンダが液体金属と化学反応を起こす懸念がある。ハンダ付け部分を含めて銅ブロックをニッケルコーティングすると化学反応は防止できるがコスト高となる。また、嵩上げをすることはそれだけ製品の厚みが増してしまい、ノートパソコンなどに適用する場合には薄型化の要請に反する。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、半導体チップを効果的に放熱させることができ、しかも低コストで構成することのできる放熱構造および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る放熱構造は、サブストレートの表面にダイが設けられてその周囲に電気素子が設けられている半導体チップの放熱構造であって、前記ダイの表面に対して熱接続される伝熱板と、前記ダイの表面と前記伝熱板との間に設けられる液体金属と、前記電気素子を覆う絶縁材と、を有し、前記伝熱板は、前記電気素子と対面する箇所に凹部が形成されている。
【0010】
本発明の第2態様に係る電子機器は、上記の放熱構造および前記半導体チップを備える。
【0011】
本発明の態様では、ダイの表面と伝熱板との間に液体金属が設けられており、半導体チップを効果的に放熱させることができる。また、凹部を有する伝熱板は製造が容易であって、低コストで構成することができる。
【0012】
前記凹部は貫通孔であり、前記貫通孔は絶縁性のシートで塞がれていてもよい。貫通孔はパンチングなどによって容易に形成可能である。また、シートで塞がれた貫通孔には液体金属が浸入することがない。
【0013】
前記凹部は有底穴であってもよい。有底穴はプレスなどによって容易に形成可能である。
【0014】
前記ダイを囲うように設けられて前記サブストレートと前記伝熱板によって挟持される弾性材を有し、前記弾性材は前記絶縁材を介して前記電気素子を覆っていてもよい。これにより、電気素子は絶縁材および弾性材によって二重に保護される。
【0015】
前記絶縁材は前記サブストレートに対して接着されていてもよい。これにより、液体金属がサブストレートの表面に沿って電気素子に接近することがなく、該電気素子は一層確実に保護される。
【0016】
前記絶縁材と前記ダイとの間には隙間が設けられていてもよい。これにより、漏れ出た液体金属は隙間に貯留され、それ以上不用意に広がることが防止される。
【0017】
前記半導体チップは基板に実装されたCPUであり、前記電気素子はキャパシタであってもよい。
【0018】
前記絶縁材は、紫外線硬化型のコーティング材であってもよい。このようなコーティグ材は絶縁材を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記態様によれば、ダイの表面と放熱板との間に液体金属が設けられており、半導体チップを効果的に放熱させることができる。また、凹部を有する伝熱板は製造が容易であって、低コストで構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態にかかる放熱構造および電子機器の一部を示す分解斜視図である。
図2図2は、CPUの斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる放熱構造の模式断面側面図である。
図4図4は、第1の実施形態における伝熱板の斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態にかかる放熱構造における構成要素の位置関係を示す模式平面図である。
図6図6は、第2の実施形態にかかる放熱構造の模式断面側面図である。
図7図7は、第2の実施形態における伝熱板の斜視図である。
図8図8は、第3の実施形態にかかる放熱構造の模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態にかかる放熱構造10および電子機器12の一部を示す分解斜視図である。
【0023】
電子機器12は、例えばノート型PC、デスクトップ型PC、タブレット端末またはスマートフォンなどであり、CPU(Central Processing Unit)14を備えている。CPU14は高速演算を行うことにより相応の発熱があるため放熱が必要となる。電子機器12では、CPU14の放熱手段としてベーパーチャンバ16を備えている。電子機器12は、CPU14以外にGPU(Graphics Processing Unit)を備える場合がある。以下に説明する放熱構造10,10A,10BはCPU14を対象とした例として説明するが、GPUなど他の半導体チップにも適用が可能である。
【0024】
ベーパーチャンバ16は、2枚の金属プレート(例えば銅板)の周縁部を接合して内側に密閉空間を形成したプレート状のものであり、密閉空間に封入した作動流体の相変化によって熱を高効率に拡散可能である。ベーパーチャンバ16の密閉空間内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィックが配設される。
【0025】
ベーパーチャンバ16には2本の略平行するヒートパイプ18が設けられ、さらに該ヒートパイプ18の端部はファン20に接続されている。ヒートパイプ18は、薄く扁平な金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入したものであり、ベーパーチャンバ16と同様にウィックが設けられている。
【0026】
CPU14等の発熱体の放熱手段としては、ベーパーチャンバ16以外にも、各種の放体が適用可能である。放熱体としては、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い金属プレート、グラファイトプレート、ヒートレーン、ヒートシンク等が挙げられる。
【0027】
図2は、CPU14の斜視図である。図2では放熱構造10の構成要素を省略している。なお、放熱構造10は電子機器12に組み込まれて使用される状態では、上下方向に制限はなく、例えば上下が逆の状態になっていてもよい。
【0028】
CPU14はサブストレート22と、ダイ24とを有する。サブストレート22は基板26に実装される薄い板状部であり、平面視で矩形となっている。ダイ24は演算回路を含む部分であり、サブストレート22の表面からやや突出するように設けられている。ダイ24は、平面視でサブストレート22よりも小さい矩形であり、該サブストレート22の表面略中央に設けられている。CPU14は電子機器12の中で最も発熱する部品の一つであり、その中でもダイ24が特に発熱する。
【0029】
サブストレート22の表面には複数の小さいキャパシタ(電気素子)28が設けられている。キャパシタ28はダイ24の比較的近くに数個設けられ、さらにサブストレート22の一つの縁22aに沿って多数が配列されている。縁22aに沿って配列されているキャパシタ28をキャパシタ28aとも呼ぶ。キャパシタ28の高さはダイ24よりも低い。
【0030】
図3は、第1の実施形態にかかる放熱構造10の模式断面側面図である。図4は、第1の実施形態にかかる伝熱板30の斜視図である。図5は、第1の実施形態にかかる放熱構造10における構成要素の位置関係を示す模式平面図である。図5では、ベーパーチャンバ16および基板26を省略しており、さらに構成要素の前後に関係なく全て実線で示している。
【0031】
放熱構造10は、上記のベーパーチャンバ16と、ベーパーチャンバ16に熱接続されている伝熱板30と、ダイ24の表面と伝熱板30との間に設けられる液体金属32と、キャパシタ28を覆う絶縁材34と、サブストレート22と伝熱板30との間に設けられる弾性材36とを有する。伝熱板30は液体金属32を介してダイ24の表面と熱的に接続(熱接続)されている。
【0032】
液体金属32は基本的には常温で液体となっている金属であるが、少なくとも電子機器12の基板26に通電され、CPU14が稼働した通常の使用状態の温度で液体となっていればよい。液体金属32は金属であることから熱伝導性、導電性に優れる。液体金属32は、例えばガリウムを主成分としている。
【0033】
絶縁材34は、例えば紫外線硬化型のコーティング材であって膜状に形成される。このコーティング材は、キャパシタ28を覆うように塗布された後に紫外線を照射されることによって硬化して絶縁材34を形成する。紫外線硬化型のコーティング材によれば絶縁材34の形成が容易である。絶縁材34は他の絶縁性の接着剤などであってもよい。
【0034】
弾性材36は、サブストレート22よりやや大きい矩形であり、該サブストレート22よりやや突出する。弾性材36の略中央には矩形孔36aが形成されている。弾性材36はサブストレート22および伝熱板30によって挟持されている。ただし、この実施例の弾性材36はサブストレート22の縁22a(図5参照)に沿ったキャパシタ28aを覆う部分では伝熱板30と当接していない。矩形孔36aにはダイ24が嵌り込んでいる。ダイ24と矩形孔36aの孔壁との間には多少の隙間38が確保されている。弾性材36は、平面視で同形状の粘着テープ40によってサブストレート22の表面に接着固定されている。弾性材36は外力のない自然状態ではダイ24よりも多少高く、放熱構造10の組み立て状態では伝熱板30によって適度に圧縮されている。弾性材36は、例えばスポンジ材などの絶縁材で構成されている。弾性材36は液体金属32を吸収しない材質とする。弾性材36には取り外し用のプルタブ37(図5参照)が設けられている。
【0035】
伝熱板30は熱伝達性に優れる材質で形成されており、例えば銅板である。伝熱板30は、例えば0.3~2mm程度の厚さである。伝熱板30はサブストレート22とほぼ同じ矩形であり、ほぼ同じ面積であるが、サブストレート22の縁22aに沿ったキャパシタ28aとは対面しない形状となっている(図5参照)。したがって、当然に伝熱板30とキャパシタ28aとは干渉しない。
【0036】
伝熱板30は、ベーパーチャンバ16に対してハンダ付けなどによって固定されている。伝熱板30はニッケルメッキなどの表面処理がなされていてもよい。伝熱板30には、キャパシタ28と対面する箇所に貫通孔(凹部)30a,30bが形成されている。貫通孔30aは1つのキャパシタ28と対面する箇所にあり、1つのキャパシタ28に対応したやや小さい面積を有する。貫通孔30bは隣接する2つのキャパシタ28と対面する箇所にあり、2つのキャパシタ28に対応したやや大きい面積を有する。
【0037】
貫通孔30a,30bはシート33a,33bで覆われている。シート33a,33bは絶縁性、弾性および可撓性がある。シート33aは貫通孔30aを覆うのに適した面積を有している。シート33bは貫通孔30bを覆うのに適した面積を有しており、シート33aよりやや大きい。シート33a,33bは、例えば矩形や円形である。シート33a,33bは特殊な素材ではなく廉価である。シート33a,33bを貫通孔30a,30bに覆うように貼ることは簡単な作業であり、非熟練者でも容易に行うことができ、さらには自動化が可能である。
【0038】
液体金属32は、放熱構造10の組み立て段階でダイ24の上面に適量が塗布され、その後ベーパーチャンバ16伝熱板30が載せられることによって、該伝熱板30で押されてダイ24の表面に万遍なく広がり、ダイ24と伝熱板30との隙間を埋める。液体金属32は液体であることから流動性があって伝熱板30の押圧により十分に広がる。したがって、ミクロレベルでは伝熱板30とダイ24とは直接的に接触する箇所があり、その他の微少隙間部に液体金属32が充填されることになる。これによりダイ24と伝熱板30との間で効率的な熱伝導が行われ、CPU14の放熱性を向上させることができる。
【0039】
ところで、CPU14はGPUなどと比較して、ダイ24の高さH0が低い場合があり、サブストレート22と伝熱板30との間隔が狭くなる。絶縁材34はある程度の高さH1があるため、従来技術によれば伝熱板30との隙間が十分に確保されず、または干渉し得る。
【0040】
これに対して、本実施の形態にかかる放熱構造10および電子機器12においては、伝熱板30におけるキャパシタ28と対面する箇所には凹部としての貫通孔30a,30bが逃げスペースとなるように形成されていることから、キャパシタ28を覆う絶縁材34が伝熱板30と干渉することがなく、さらには弾性材36を介在させることも可能となっている。なお、本願における凹部とは貫通または有底にかかわらず表面よりも窪んでいる箇所を指すものとする。貫通孔30a,30bはシート33a,33bで覆われているが、伝熱板30自体は凹部を有している。そして、シート体は可撓性、弾性に富んでいることから貫通孔30a,30bの逃げスペースとしての作用が維持される。
【0041】
貫通孔30a,30bはシート33a,33bで覆われていることから、仮に液体金属32がダイ24と伝熱板30との隙間から漏れ出た場合であっても、貫通孔30a,30bにまで浸入することはなく、伝熱板30とベーパーチャンバ16との接続部であるハンダが保護される。シート33a,33bには弾性材36が当接して軽く押圧し得るが、シート33a,33bは、一般的に弾性および可撓性を有しており、適度に変形する。また弾性材36自体も弾性を有していることから、絶縁材34およびキャパシタ28に過大な外力が加わることがない。
【0042】
キャパシタ28は絶縁材34および弾性材36によって二重に絶縁されており、漏れた液体金属32から保護される。仮に、キャパシタ28の近傍の絶縁材34および弾性材36が剥がれた場合であって、キャパシタ28がシート33a,33bに接触することがあっても、該シート33a,33bは絶縁性があることから伝熱板30とショートすることはない。絶縁材34はサブストレート22に対して粘着テープ40で接着されていることから、液体金属32がサブストレート22の表面に沿ってキャパシタ28に接近することがなく、該キャパシタ28は一層確実に保護される。また、絶縁材34とダイ24との間には隙間38が確保されていることから、漏れ出た液体金属32は該隙間38に貯留され、それ以上不用意に広がることが防止される。
【0043】
伝熱板30の貫通孔30a,30bはパンチングなどによって容易に形成可能であり、低コストで構成することができる。また、貫通孔30a,30bは、伝熱板30の製造工程でパンチングなどによる外形の切り出しと同時に行うことができ、製造コストを一層低減することができる。なお、伝熱板30における中央部でダイ24との接触部だけをやや厚肉とし、それ以外の周辺部を薄肉とすると絶縁材34との隙間をある程度大きく確保することができ、干渉を避けることも可能である。しかしながら、薄板である伝熱板30の周辺部の全体を薄肉化することは精度を要し、CNC加工などを行う必要があり、製造工程数が増えてコスト高となる。これに対して、本実施例のように伝熱板30に貫通孔30a,30bを形成することは低コストである。
【0044】
図6は、第2の実施形態にかかる放熱構造10Aの模式断面側面図である。図7は、第2の実施形態における伝熱板50の斜視図である。放熱構造10Aでは、上記の放熱構造10における伝熱板30が伝熱板50に置き替えられている。
【0045】
伝熱板50は伝熱板30と大きさ、形状、材質が同じであり、上記の貫通孔30a,30bが適度な深さの有底穴(凹部)50a,50bで置き替えられている点で異なる。有底穴50aは貫通孔30aと同じ位置で同じ面積である。有底穴50bは貫通孔30bと同じ位置で同じ面積である。伝熱板50には上記のシート33a,33bは設けられていない。
【0046】
放熱構造10Aでは、伝熱板50におけるキャパシタ28と対面する箇所には凹部としての有底穴50a,50bが形成されていることから、キャパシタ28を覆う絶縁材34が伝熱板50と干渉することがなく、さらには弾性材36を介在させることも可能となっている。また、弾性材36は有底穴50a,50bに入り込み、その底面に当接し得るが、有底穴50a,50bが適度な深さを有していることから、あまり圧縮されることがなく、絶縁材34およびキャパシタ28に過大な外力が加わることがない。有底穴50a,50bは、例えば伝熱板50に対してプレス加工をすることにより容易に形成可能である。有底穴50a,50bの底面には絶縁被膜を設けてもよい。
【0047】
図8は、第3の実施形態にかかる放熱構造10Bの模式断面側面図である。放熱構造10Bでは、上記の放熱構造10における弾性材36が弾性材60に置き替えられている。弾性材60は弾性材36と外縁形状、厚み、材質が同じであり、上記の矩形孔36aが面積の大きい矩形孔60aに置き換えられている点で異なる。矩形孔60aは、伝熱板30の外縁よりもやや小さく形成されている。つまり、弾性材60は四周が伝熱板30の外周縁に沿う部分によって圧縮されており、キャパシタ28、貫通孔30a,30bおよびシート33a,33bの箇所には存在していない。このように、設計条件により、弾性材60は少なくともダイ24を囲い、伝熱板30の外周縁に沿って設けられていればよい。これにより、液体金属32が周囲の基板26などに漏れ出ることが防止される。放熱構造10Bにおける伝熱板30は伝熱板50(図7参照)に置き換えてもよい。
【0048】
なお、設計条件によっては各実施例において伝熱板30、50を省略して、液体金属32を介してベーパーチャンバ16をダイ24に熱接続させるようにしてもよい。つまり、ベーパーチャンバ16自体をダイ24に対する伝熱板として用いてもよい。
【0049】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10,10A,10B 放熱構造
12 電子機器
14 CPU(半導体チップ)
16 ベーパーチャンバ
22 サブストレート
24 ダイ
26 基板
28,28a キャパシタ(電気素子)
30,50 伝熱板
30a,30b 貫通孔(凹部)
32 液体金属
33a,33b シート
34 絶縁材
36,60 弾性材
36a,60a 矩形孔
38 隙間
50a,50b 有底穴(凹部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブストレートの表面にダイが設けられてその周囲に電気素子が設けられている半導体チップの放熱構造であって、
前記ダイの表面に対して熱接続される伝熱板と、
前記ダイの表面と前記伝熱板との間に設けられる液体金属と、
前記電気素子を覆う絶縁材と、
を有し、
前記伝熱板は、前記電気素子と対面する箇所に凹部が形成されており、
前記凹部は貫通孔であり、
前記貫通孔は絶縁性のシートで塞がれている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
サブストレートの表面にダイが設けられてその周囲に電気素子が設けられている半導体チップの放熱構造であって、
前記ダイの表面に対して熱接続される伝熱板と、
前記ダイの表面と前記伝熱板との間に設けられる液体金属と、
前記電気素子を覆う絶縁材と、
前記ダイを囲うように設けられて前記サブストレートと前記伝熱板によって挟持される弾性材と、
を有し、
前記伝熱板は、前記電気素子と対面する箇所に凹部が形成されており、
前記弾性材は前記絶縁材を介して前記電気素子を覆っている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項3】
請求項に記載の放熱構造において、
前記絶縁材は前記サブストレートに対して接着されている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項4】
請求項またはに記載の放熱構造において、
前記絶縁材と前記ダイとの間には隙間が設けられている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の放熱構造において、
前記凹部は有底穴である
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の放熱構造において、
前記半導体チップは基板に実装されたCPUであり、前記電気素子はキャパシタである
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の放熱構造において、
前記絶縁材は、紫外線硬化型のコーティング材である
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の放熱構造および前記半導体チップを備える
ことを特徴とする電子機器。