(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089652
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/36 20060101AFI20230621BHJP
F16C 43/04 20060101ALI20230621BHJP
F16C 33/60 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C43/04
F16C33/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204278
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 邦彦
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117BA10
3J117HA02
3J117HA10
3J701AA13
3J701AA26
3J701AA34
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701BA69
3J701DA16
3J701DA20
3J701FA15
3J701FA31
3J701FA41
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA60
3J701XB03
3J701XB26
(57)【要約】
【課題】構成が簡易で、定格荷重の大きな転がり軸受を提供すること。
【解決手段】内周面に軌道面を有する外輪と、前記外輪と共通の中心軸を有し、外周面に軌道面を有する内輪と、前記外輪の軌道面と前記内輪の軌道面とから形成される軌道内に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受である。前記外輪は、軸方向に組み合わされた第1外輪部材および第2外輪部材から構成される。前記外輪は、周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、外周面から径方向に凹む凹部を有する。前記凹部は、前記外輪の外周面に軸方向にわたって形成された第1部分と、前記第1部分と連続し、前記外輪の端面において外周面から径方向内方に延びる第2部分と、を含んでなる。前記転がり軸受は、前記第1外輪部材と前記第2外輪部材とを互いに締結する締結部材を含む。前記締結部材は弾性を有する。前記締結部材は、前記凹部に嵌め込まれている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に軌道面を有する外輪と、
前記外輪と共通の中心軸を有し、外周面に軌道面を有する内輪と、
前記外輪の軌道面と前記内輪の軌道面とから形成される軌道内に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受であって、
前記外輪は、
軸方向に組み合わされた第1外輪部材および第2外輪部材から構成されるとともに、
周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、外周面から径方向に凹む凹部を有し、
前記凹部は、
前記外輪の外周面に軸方向にわたって形成された第1部分と、
前記第1部分と連続し、前記外輪の端面において外周面から径方向内方に延びる第2部分と、を含んでなり、
前記転がり軸受は、前記第1外輪部材と前記第2外輪部材とを互いに締結する締結部材を含み、
前記締結部材は、弾性を有し、
前記締結部材は、前記凹部に嵌め込まれている、
転がり軸受。
【請求項2】
内周面に軌道面を有する外輪と、
前記外輪と共通の中心軸を有し、外周面に軌道面を有する内輪と、
前記外輪の軌道面と前記内輪の軌道面とから形成される軌道内に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受であって、
前記内輪は、
軸方向に組み合わされた第1内輪部材および第2内輪部材から構成されるとともに、
周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、内周面から径方向に凹む凹部を有し、
前記凹部は、
前記内輪の内周面に軸方向にわたって形成された第1部分と、
前記第1部分と連続し、前記内輪の端面において内周面から径方向外方に延びる第2部分と、を含んでなり、
前記転がり軸受は、前記第1内輪部材と前記第2内輪部材とを互いに締結する締結部材を含み、
前記締結部材は、弾性を有し、
前記締結部材は、前記凹部に嵌め込まれている、
転がり軸受。
【請求項3】
前記凹部は、さらに前記第2部分と連続する第3部分を含み、
前記第3部分は、前記外輪または前記内輪の端面から軸方向に沿って延びる部分であり、
前記締結部材は一体の部材であって、前記締結部材が有する弾性によって前記凹部に嵌め込まれている、
請求項1または請求項2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記凹部の周方向の幅W4と、前記締結部材の幅L4は
W4=L4×(1+n) (ただし、n=0.2~1.5)
の関係を満たす、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記第1外輪部材と前記第2外輪部材は同一の形状を有し、軸方向における中心を通る平面に対して対称である、
請求項1、3、4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記第1内輪部材と前記第2内輪部材は同一の形状を有し、軸方向における中心を通る平面に対して対称である、
請求項2、3、4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
クロスローラ軸受において、内輪は一体の部品で構成され、外輪は軸方向に分割された分割輪を組み合わせて構成されたものが知られている。分割輪同士を固定する手段として、分割輪の双方を貫通するねじ穴を形成し、ねじ穴に挿通したボルトとナットによって分割輪同士を締結することが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
クロスローラ軸受の分割輪を固定する手段として、U字状の締結部材を用いることも知られている(例えば特許文献2)。特許文献2では、分割輪のそれぞれに半長円状に凹んだ凹部が設けられ、この凹部に分割輪の双方を貫通する2つの貫通孔が設けられている。分割輪の一方の貫通孔にU字型のピンの先端が挿入される。続いて、他方の分割輪の貫通孔から突出したピンの先端が、折り曲げてかしめられる。これによって2つの分割輪が互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60-95228号公報
【特許文献2】特開2007-303516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より構成が簡易で、かつ、定格荷重の大きな転がり軸受が望まれる。そこで、本発明は、構成が簡易で、定格荷重の大きな転がり軸受を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った転がり軸受は、内周面に軌道面を有する外輪と、前記外輪と共通の中心軸を有し、外周面に軌道面を有する内輪と、前記外輪の軌道面と前記内輪の軌道面とから形成される軌道内に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受である。前記外輪は、軸方向に組み合わされた第1外輪部材および第2外輪部材から構成される。前記外輪は、周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、外周面から径方向に凹む凹部を有する。前記凹部は、前記外輪の外周面に軸方向にわたって形成された第1部分と、前記第1部分と連続し、前記外輪の端面において外周面から径方向内方に延びる第2部分と、を含んでなる。前記転がり軸受は、前記第1外輪部材と前記第2外輪部材とを互いに締結する締結部材を含む。前記締結部材は弾性を有する。前記締結部材は、前記凹部に嵌め込まれている。
【発明の効果】
【0007】
上記転がり軸受によれば、構成が簡易で、かつ、定格荷重の大きな転がり軸受を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に従う転がり軸受を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II断面を一部拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示に従う転がり軸受における締結部材の斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示に従う転がり軸受における締結部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示に従う転がり軸受の一部を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図6は、本開示に従う転がり軸受における第1外輪部材の一部を拡大して示す断面斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示に従う転がり軸受から一部の部材を除いて示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示に従う転がり軸受を示す平面図である。
【
図9】
図9は、本開示に従う転がり軸受の断面を一部拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示に従う転がり軸受の断面を一部拡大して示す断面図である。
【
図11】
図11は、本開示に従う転がり軸受の断面を一部拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。本開示に従った転がり軸受は、内周面に軌道面を有する外輪と、前記外輪と共通の中心軸を有し、外周面に軌道面を有する内輪と、前記外輪の軌道面と前記内輪の軌道面とから形成される軌道内に配置される複数の転動体と、を備える転がり軸受である。前記外輪は、軸方向に組み合わされた第1外輪部材および第2外輪部材から構成される。前記外輪は、周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、外周面から径方向に凹む凹部を有する。前記凹部は、前記外輪の外周面に軸方向にわたって形成された第1部分と、前記第1部分と連続し、前記外輪の端面において外周面から径方向内方に延びる第2部分と、を含んでなる。前記転がり軸受は、前記第1外輪部材と前記第2外輪部材とを互いに締結する締結部材を含む。前記締結部材は弾性を有する。前記締結部材は、前記凹部に嵌め込まれている。
【0010】
従来、外輪または内輪が軸方向に分割された2つの部材(分割輪とも称される)から構成される転がり軸受が知られている。分割輪同士を固定するために、さまざまな手段が提案されている。外輪が分割された転がり軸受では、分割輪のそれぞれにねじ穴を形成し、ボルトおよびナットを用いて分割輪同士を締結することが知られている(例えば特許文献1)。ねじ穴は、転動体の軌道との干渉を避けるために、軌道面が形成される位置よりも径方向外側に形成される。すなわち、ねじ穴の形成スペースを確保するために、外輪の径が大きくされている。このため、外径が同じで一体に成形された外輪を備える転がり軸受と比べると、分割輪で構成される転がり軸受では、転動体の軌道を形成できるスペースが小さくなる。このため、軌道に挿入できる転動体を小さくせざるを得ず、定格荷重が限られることがあった。
【0011】
ボルトおよびナットに代えてピンを挿入して分割輪同士を固定する場合、分割輪を固定する構造のために占有される領域は、ボルトおよびナットを用いる場合よりも小さくなりうる(例えば特許文献2)。ただし、凹部を形成した上に貫通孔を形成し、ピンを挿入して末端をかしめるという構成は、必ずしも簡易とはいえなかった。
【0012】
これらの状況の下、より簡易的で占有スペースの小さい分割輪の固定構造が検討された。そして、従来は分割輪同士が動かないように高い締結力をもって分割輪を確実に固定することが必要と考えられていたが、この考えは必須ではないとの発想が得られた。この発想のもと、分割輪のそれぞれに凹部を設け、その凹部に弾性を有する締結部材を嵌め込んで分割輪同士を保持する構造が検討された。そして、具体的に、凹部が、外周面の軸方向にわたって形成される第1部分と、前記第1部分と連続し前記外輪の端面において外周から径方向内方に延びる第2部分と、を含んでなる構成とすること、この凹部に締結部材が嵌め込まれた構造とすることが想到された。
【0013】
本開示にかかる転がり軸受は、分割輪の外周面および端面に延在する凹部に、弾性を有する締結部材が嵌め込まれた構造を有し、分割輪の固定構造が簡易である。また、分割輪を固定するための構造が占めるスペースが小さい。この構造によれば、ボルトおよびナットで分割輪を固定する場合と比べて、外径が同じであっても大きな軌道を形成できる。そのため、大きな転動体を挿入し、定格荷重の大きな転がり軸受が得られる。
【0014】
また、本開示にかかる転がり軸受は、内輪が分割されていてもよい。すなわち、ころがり軸受における内輪が、軸方向に組み合わされた第1内輪部材および第2内輪部材から構成されてよい。前記内輪は、周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、内周面から径方向に凹む凹部を有することができる。前記凹部は、前記内輪の内周面に軸方向にわたって形成された第1部分と、前記第1部分と連続し、前記内輪の端面において内周面から径方向外方に延びる第2部分と、を含んでよい。前記転がり軸受は、前記第1内輪部材と前記第2内輪部材とを互いに締結する締結部材を含んでよい。前記締結部材は弾性を有し、前記締結部材は、前記第1内輪部材および前記第2内輪部材の凹部に嵌め込まれている。
【0015】
上記の転がり軸受は、外輪が分割されている場合と同様に、分割輪の固定構造が簡易である。また、分割輪を固定するための構造が占有する領域が小さい。このため、ボルトおよびナットで分割輪を固定する転がり軸受と比較して、同じ寸法であっても軌道を大きくとることができ、大きな転動体を挿入し、定格荷重の大きな転がり軸受が得られる。
【0016】
前記凹部は、さらに前記第2部分と連続する第3部分を含んでよい。前記第3部分は、前記外輪または前記内輪の端面から軸方向に沿って延びる部分であってよい。また、前記締結部材は一体の部材であって、前記締結部材が有する弾性によって前記凹部に嵌め込まれていてもよい。この構造によれば、より確実に分割輪同士を保持することが可能である。
【0017】
前記転がり軸受において、前記凹部の幅W4と、前記締結部材の幅L4は
W4=L4×(1+n) (n=0.2~1.5)
の関係を満たしてもよい。
この関係式は、凹部の幅W4が、締結部材の幅L4よりも20~150%大きいことを意味している。凹部の幅を締結部材の幅よりも大きくすることによって、分割輪同士が保持された状態で、分割輪が若干動くことができる。このため、外部部材(例えば外部装置の軸受ハウジング)に転がり軸受を設置して固定する際に、設置場所にフィットさせやすい。従来、分割輪同士は完全に固定され、動かないように設計されていた。これに対して本開示では、分割輪に若干の動きを許容する。この構成によって、外部装置に対する転がり軸受の設置を、容易かつ確実に行うことができる。
【0018】
前記第1外輪部材と前記第2外輪部材は同一の形状を有し、前記転がり軸受は軸方向に対して垂直かつ軸方向における中心を通る平面に対して対称であってよい。また、前記第1内輪部材と前記第2内輪部材は同一の形状を有し、軸方向に対して垂直かつ軸方向における中心を通る平面に対して対称であってよい。この構成によれば、上下を区別することなく使用が可能で、対称性が高く、偏心ずれの生じ難い転がり軸受が得られる。
【0019】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の転がり軸受の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本開示に従う転がり軸受である転がり軸受1を示す平面図である。
図2は、
図1におけるII-II断面を一部拡大して示す断面図である。
【0021】
図1を参照して、まず転がり軸受1の概要を説明する。転がり軸受1は、円環状の外輪10と、円環状の内輪20と、外輪10と内輪20との間に挿入された複数の転動体としてのローラ30と、を主に備える。外輪10と内輪20は共通の中心軸Rを有する。中心軸Rの延びる方向を軸方向という。ローラ30は、円筒ころである。ローラ30は、交互に配置された第1ローラ31と第2ローラ32とを含む。ローラ30は、隣接する第1ローラ31と第2ローラ32の転動軸が互いに直交するように配置されている。転がり軸受1は、クロスローラ軸受である。
【0022】
外輪10には、外周面10eから径方向に凹む凹部50が設けられている。凹部50は、周方向に等間隔に離隔して3箇所設けられている。なお、
図1に示された例では凹部50は3箇所であるが、転がり軸受の寸法等に応じて凹部の数は変更可能である。例えば2箇所~8箇所の凹部が設けられうる。凹部50に、締結部材40、400が嵌め込まれている。
図1では理解容易のために、凹部50うちの1箇所には締結部材が嵌め込まれない状態を示しているが、すべての凹部に締結部材が嵌め込まれていることが好ましい。場合によっては、
図1に示すとおり、一部の凹部には締結部材が嵌め込まれない構成であってもよい。
【0023】
図2を参照して、外輪10は、軸方向に分割された2つの分割輪である、第1外輪部材11および第2外輪部材12から構成される。外輪10は、内周面に第1軌道面11aおよび第2軌道面12aを有する。第1外輪部材11が第1軌道面11aを有する。第2外輪部材12が第2軌道面12aを有する。一方、内輪20は一体に形成された一部品からなる。内輪20は、外周面に第3軌道面21aおよび第4軌道面22aを有する。第1軌道面11a、第2軌道面12a、第3軌道面21a、第4軌道面22aによって規定される環状の空間が、ローラ30の軌道である。
【0024】
図2に示される断面(転がり軸受1の周の接線方向に垂直な断面)において、第1軌道面11aと第4軌道面22aとを最短距離でつなぐ仮想直線と、第2軌道面12aと第3軌道面21aとを最短距離でつなぐ仮想直線とは、互いに直交する。第1ローラ31は円筒側面状の転走面31aを有する。転走面31aが第2軌道面12aおよび第3軌道面21aと接触し、第1ローラ31が第2軌道面12aおよび第3軌道面21a上を転走する。図示していないが、同様に、第2ローラ32は、第1軌道面11aおよび第4軌道面22a上を転走する。
【0025】
転がり軸受1の使用態様は制限されないが、例えば、外輪10が外部装置の軸受ハウジングに固定され、内輪20が外力を受けて回転する構成として用いられうる。また、内輪20が外部装置のハウジングに固定され、外輪10が外力を受けて回転する構成として用いられてもよい。
【0026】
外輪10の締結構造について説明する。第1外輪部材11および第2外輪部材12は、締結部材40によって、互いに分離しないように保持されている。締結部材40は、外輪10に形成された凹部50に嵌め込まれている。
【0027】
凹部50は、第1外輪部材11と第2外輪部材12とにわたって形成されている。凹部50は、外輪10の外周面10eから径方向に凹む凹部である。凹部50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを含む。第1部分51と第3部分53は軸方向に延在する。第2部分52は径方向に延在する。
【0028】
凹部50は、外輪10の軸方向にわたって形成された第1部分51を含む。ここで「軸方向にわたって」とは、「軸方向の端から端まで」、言い換えると「外輪10の第1端面10aから第2端面10bまで」という意味である。第1部分51は、外周面10eから径方向に凹む凹部である。第1部分51の両端に、第2部分52が連続している。第2部分52は、外輪10の第1端面10a、第2端面10bにおいてそれぞれ、外周面10eから径方向に内方に直線的に延びる凹部である。第2部分52の、第1部分51と接続する側と反対側の端部に、第3部分53が連続している。第3部分53は、第1端面10a、第2端面10bからそれぞれ、軸方向に内方に延びる凹部である。
【0029】
凹部50に、締結部材40が嵌め込まれている。締結部材40は弾性を有する一体の部材である。締結部材40は例えば金属製または樹脂製の部材であってよい。締結部材40は凹部50の内側壁面に沿うようにフィットしている。また、締結部材40の爪部43が、凹部50の第3部分53に係合している。
【0030】
締結部材40について説明する。
図3は締結部材40の斜視図である。
図3を参照して、締結部材40は、一定の径を有し、屈曲した円柱形の部材である。締結部材40の長さ方向に直交する断面は、ほぼ円形である。締結部材40は、直線状に延びる軸部41と、軸部41の両端から延びる係合部42と、係合部42の端部から延びる爪部43と、を含む。軸部41の長さL
1は、転がり軸受1の軸方向の寸法W
1(
図2)よりもわずかに小さい。このため、締結部材40は、転がり軸受1の端面10a、10bから軸方向に外方に突出することがない。係合部42の長さL
2は、特に制限されないが例えば1.5mm~6mm程度にできる。また爪部43の長さL
3も、特に制限されないが例えば1mm~4mm程度にできる。このような形状および長さの係合部42および爪部43によれば、第1外輪部材11及び第2外輪部材12が輸送中等に分離することがないよう、保持される。
【0031】
図4は締結部材400の斜視図である。締結部材400は締結部材40と同様に、本開示にかかる転がり軸受に含まれる締結部材である。
図4を参照して、締結部材400は、おおむね一定の外形を有する屈曲した角柱形の部材である。締結部材40の長さ方向に直交する断面は矩形である。締結部材400は、断面形状が締結部材40と異なる以外は、締結部材40と同様の構成である。締結部材400は、軸部401と、軸部401の両端から延びる係合部402と、係合部402の端部から延びる爪部403と、を含む。軸部401の長さL
10は、転がり軸受1の軸方向の寸法W
1(
図2)よりもわずかに小さい。係合部402の長さL
20は、長さL
2(
図3)と同様にできる。爪部403の長さL
30も、長さL
3(
図3)と同様にできる。
【0032】
締結部材40、400はいずれも、材料および形状に由来する弾性を有する。
図2~
図4を参照して、外輪10に対する締結部材40,400の嵌め込みは、次のように行う。まず、第1外輪部材11および第2外輪部材12に形成された凹部の位置が揃うように、第1外輪部材11および第2外輪部材12の周方向の位置を適切に合わせて保持する。その状態で、締結部材40,400を押し開くように弾性変形させて、凹部50に嵌め込む。手を離すと締結部材40,400は元の形に復帰しようとして、凹部50の第2部分52にフィットし、さらに、凹部50の第3部分53に係合する。転がり軸受1において、複数形成される凹部50に嵌め込まれる締結部材は、すべて同じであってもよいし、異なる形状ないし寸法の締結部材が配置されてもよい。
【0033】
図5は、転がり軸受1の第1端面10aを見る平面図の一部を拡大して示す図である。
図5を参照して、外輪10の凹部50に、締結部材400が嵌め込まれている。凹部50の周方向の開口幅W
4は、締結部材400の幅L
4よりも若干大きい。
図5の例では、開口幅W
4の幅は1.5mm、締結部材400の幅L
4は1mmである。当然ながら具体的な寸法はこれに限られず、開口幅W
4は、締結部材400の幅L
4よりも20~150%程度大きくできる。すなわち、開口幅W
4と締結部材の幅L
4は
W
4=L
4×(1+n) (n=0.2~1.5)
の関係を満たしてよい。
【0034】
図2、
図5を参照して、本開示にかかる転がり軸受1は、締結部材として弾性を有する締結部材を用いる。また、凹部50の周方向の開口幅W
4は、締結部材400の幅L
4よりも若干大きい。これらの構成によって、転がり軸受1が外部部材(例えば外部装置のハウジング)に固定されるとき、第1外輪部材11と第2外輪部材12がわずかに動いて外部部材にフィットしうる。従来の分割輪を備える転がり軸受では、分割輪同士が動くことがないよう確実に締結されているものがあった。あるいは、転がり軸受を外部部材に取り付ける際には締結部材を緩めることによって、外部部材に対してフィットしやすくすることがあった。これに対して、本開示にかかる転がり軸受では、締結部材を緩める必要がなく、そのままの状態で外部部材に対してフィットさせうる。
【0035】
転がり軸受1の外輪10についてさらに詳しく説明する。
図6は、第1外輪部材11の一部を拡大して示す断面斜視図である。
図6を参照して、第1外輪部材11は、内周面に第1軌道面11aを有する。第1外輪部材11は、外周面11eに凹部50が設けられている。凹部50の第2部分52における、外周面11eから径方向に延在する長さw
2は、外輪10の径w
eの約1/2である。また、内周面11iに形成された第1軌道面11aの径方向の奥行きはw
6である。第1軌道面11aの径方向の奥行きw
6は、外輪10の径w
eの約1/2である。
図2、
図6を参照して、凹部50は第1部分51が外輪10の外周面10eに、第2部分52が外輪10の端面10a、10bに形成されている。また、凹部50の第3部分53は、締結部材40の爪部43が係合すればよい。このため、本開示にかかる転がり軸受1では第1軌道面11a、第2軌道面12aと干渉することなく凹部50を設けることができる。
【0036】
外輪10において、第1外輪部材11と第2外輪部材12は同一の形状を有してよい。このため、裏表の区別のない、軸方向における中心を通る平面に対して対称である転がり軸受が得られる。なお、転がり軸受1の製造において、第1外輪部材11と第2外輪部材12は別々に製造されてもよい。すなわち、組み合わせを特定することなく複数の(多数の)外輪部材を作製した後に、任意に2つの外輪部材を組み合わせて転がり軸受を組み立ててもよい。本開示にかかる転がり軸受は小径であること、具体的には外径が20~200mm程度のクロスローラ軸受であることが好ましい。
【0037】
(転がり軸受の製造)
図7は、転がり軸受1から第1外輪部材11を含む一部の部材を除いて示す斜視図である。転がり軸受1は例えば次の手順で作製される。すなわち、所定の形状を備える内輪と、複数のローラと、外周面に凹部が設けられた2つの外輪部材とを準備する。外輪部材は前述のとおり、組み合わせを特定することなく多数製造された外輪部材から任意の2つを選択して用いることができる。
【0038】
続いて組み立てを行う。
図7を参照して、内輪20と外輪部材の一方(
図7では第2外輪部材12)を組み合わせて、第1ローラ31と第2ローラ32とを交互に配置する。続いて第1外輪部材をかぶせて、第1外輪部材と第2外輪部材の凹部の周方向位置を合わせる。次いで、凹部に締結部材を嵌め込む。本開示にかかる転がり軸受の製造は、外輪部材を組み合わせて固定した状態で軌道面を研削する工程を含まなくてもよい。
【0039】
(実施の形態2)
図8は本開示にかかる第2の実施の形態である転がり軸受100の平面図である。転がり軸受100において、外輪15は一体の部品で形成されている。内輪25は、軸方向に分割された内輪部材を組み合わせて構成されている。内輪25の内周に、周方向に等間隔に離隔して複数設けられた、内周面から径方向に凹む凹部500が設けられている。凹部500は、内輪25の内周に設けられている点以外は、前述の凹部50と同様の構成である。凹部500に、締結部材40が嵌め込まれている。
【0040】
(変形例)
本開示にかかる転がり軸受は、上述の実施の形態以外にも様々な変更が可能である。
例えば、凹部および締結部材の形状は変更されうる。例えば、
図9は、転がり軸受1の変形例である転がり軸受110の断面を一部拡大して示す断面図である。
図9を参照して、転がり軸受110は、凹部150および締結部材140の形状において、転がり軸受1と相違する。相違部分について説明する。転がり軸受110において、凹部150の第2部分152は、外周面から径方向内方に延びる部分である。第2部分152の内側面152aは、外周側から内周側に向かって、転がり軸受110の軸方向における中心面から離れるように延びる面である。また、凹部150の第3部分153の内側面153aは、外周側から内周側に向かって中心面に近づくように延びる面である。凹部150に、締結部材140が嵌め込まれている。締結部材140は、軸部141と、軸部141に対して斜め外方に延びる係合部142と、係合部142に対して垂直に内方に延びる爪部143と、からなる。
【0041】
図10は、転がり軸受1の変形例である転がり軸受210の断面を一部拡大して示す断面図である。
図10を参照して、転がり軸受210は、凹部250および締結部材240の形状において、転がり軸受1と相違する。相違部分について説明する。転がり軸受210において、凹部250の第2部分252は、外周面から径方向内方に延びる部分である。第2部分252の内側面252aは、転がり軸受210の端面10a、10bに向かって張り出す半円弧状の面である。第3部分253は、第2部分252と連続し、転がり軸受210の内方に軸方向に沿って延びる部分である。凹部250に、締結部材240が嵌め込まれている。締結部材240は、軸部241と、半円弧状の係合部242と、係合部242に連続し、軸部241と並行に延びる爪部243と、からなる。
【0042】
図11は、転がり軸受1の変形例である転がり軸受310の断面を一部拡大して示す断面図である。
図11を参照して、転がり軸受310は、凹部350および締結部材340の形状において、転がり軸受1と相違する。凹部350の第2部分352は、外周面から径方向内方に延びる部分である。第2部分352の内側面352aは、外周側から内周側に向かって、転がり軸受310の軸方向における中心面に近づくように延びる面である。転がり軸受310では、転がり軸受1における凹部50の第3部分に相当する部分はない。凹部350に、締結部材340が嵌め込まれている。締結部材340は、軸部341と、軸部341に対して鋭角に内方に屈曲した部分である係合部342とからなる。締結部材340では、転がり軸受1における締結部材40の爪部43に相当する部分はない。軽量の転がり軸受である場合等、外輪部材同士を保持するための締結力が小さくてもよい場合には、より簡易な構造で外輪部材同士を保持しうる。
【0043】
また、凹部や締結部材の数や寸法は、転がり軸受の全体の寸法や求める保持力に適合するよう変更されうる。また、転がり軸受はクロスローラ軸受に限られず、転動体はボールであってもよい。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1、100、110、210、310 転がり軸受、10、15 外輪、10a 第1端面、10b 第2端面、10e 外周面、11 第1外輪部材、11a 第1軌道面、11e 外周面、11i 内周面、12 第2外輪部材、12a 第2軌道面、20、25 内輪、21a 第3軌道面、22a 第4軌道面、30 ローラ、31 第1ローラ、31a 転走面、32 第2ローラ、40、140、240、340、400 締結部材、41、141、241、341、401 軸部、42、142、242、342、402 係合部、43、143、243、403 爪部、50、150、250、350、500 凹部、51、151、251、351 第1部分、52、152、252、352 第2部分、53、153、253 第3部分。