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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089654
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】土壌硬度計及び土壌軟化装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
G01N3/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204281
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
(57)【要約】
【課題】干潟、沼などの水底の土壌の硬度を測定する土壌硬度計において、土壌の硬度を土壌へのガスの通り易さにより測定することにより、長期間の使用に関わらず測定精度の低下を抑制する。
【解決手段】エアポンプ11と、一端がエアポンプ11から空気の供給を受けるように連通され、他端が土壌Sの表面に当接し、若しくは土壌S内に埋設され、一端に供給された空気を他端から吐出するエアパス12と、エアパス12内の一端及び他端間の空気圧を検出する圧力センサ13と、エアパス12にエアポンプ11から空気を供給したとき、圧力センサ13によって検出される空気圧のピーク値に基づいて土壌Sの硬度を算出するコントロールユニット30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
干潟、養殖場などの水底の土壌の硬度を測定する土壌硬度計であって、
ガスを供給するガス供給源と、
一端が前記ガス供給源からガスの供給を受けるように連通され、他端が前記土壌の表面に当接し、若しくは前記土壌内に埋設され、前記一端に供給されたガスを前記他端から吐出するガス通路と、
該ガス通路内の前記一端及び前記他端間のガス圧を検出する圧力センサと、
前記ガス通路に前記ガス供給源からガスを供給したとき、前記圧力センサによって検出されるガス圧のピーク値に基づいて前記土壌の硬度を算出する硬度算出回路と、
を備える土壌硬度計。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌硬度計であって、
前記ガス通路に前記ガス供給源から一定圧力のガスを供給した状態で、前記圧力センサによって検出されるガス圧がピーク値に達する前の時点におけるガス圧の上昇勾配に基づいて前記土壌の粘度を算出する粘度算出回路を備える土壌硬度計。
【請求項3】
請求項1に記載の土壌硬度計であって、
前記ガス供給源によるガスの供給圧力、ガスの温度などのガスの性状に基づいて前記硬度算出回路により算出される硬度を補正する補正回路を備える土壌硬度計。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の土壌硬度計と、
前記土壌を攪拌するガスリフトポンプと、
を備え、前記土壌の硬度を軟化する土壌軟化装置であって、
前記ガスリフトポンプは、
一端が前記土壌の一部を吸引するように配置可能とされ、他端が前記一端にて吸引した前記土壌を吐出可能とするガスリフトパイプと、
該ガスリフトパイプの前記一端の前記他端側にガスを導入可能に連通され、前記ガスリフトパイプ内に吸引された前記土壌を導入されたガスと共に前記ガスリフトパイプ内で前記一端側から前記他端側へ流動可能とするガス導入パイプと、
前記硬度算出回路により算出される前記土壌の硬度に基づいて、硬度が高い状態で前記ガスリフトポンプを作動させる制御回路と、
を備える土壌軟化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の土壌軟化装置であって、
前記ガス導入パイプは、前記ガス供給源からのガスを供給可能に連通されている土壌軟化装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の土壌軟化装置であって、
前記制御回路は、前記土壌硬度計によって測定された前記土壌の硬度が閾値より高いとき、前記ガスリフトポンプを予め決められた一定時間作動し、その後、前記土壌硬度計により測定される前記土壌の硬度が閾値より低くなるまで前記ガスリフトポンプの一定時間作動を繰り返す土壌軟化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、干潟、養殖場などの水底の土壌に適用されるのに好適な土壌硬度計及び土壌軟化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
干潟底生生物の生息環境を維持するためには、水底の土壌の硬度を適度に維持する必要があることが知られている(非特許文献1参照)。土壌の硬度を測定する機器としては、測定対象の土壌にコーンを打ち込む際に要する力により土壌硬度を測定するものが知られている(特許文献1参照)。一方、圧縮空気を使って液体を高所に揚げるエアリフトポンプが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-14683号公報
【特許文献2】特開平7-310698号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】土木学会論文集B2(海岸工学)Vol.B2-65、No.1、2009、1226-1230「多種多様な干潟底生生物の住活動性能と適合・限界場の相互関係」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の土壌硬度計の場合、長期間の使用により土壌に打ち込むコーンが摩耗劣化すると、測定精度が低下する問題がある。
【0006】
本明細書が開示する技術の課題は、干潟、沼などの水底の土壌の硬度を測定する土壌硬度計において、土壌の硬度を土壌へのガスの通り易さにより測定することにより、長期間の使用に関わらず測定精度の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本明細書に開示の土壌硬度計及び土壌軟化装置は、次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、干潟、養殖場などの水底の土壌の硬度を測定する土壌硬度計であって、ガスを供給するガス供給源と、一端が前記ガス供給源からガスの供給を受けるように連通され、他端が前記土壌の表面に当接し、若しくは前記土壌内に埋設され、前記一端に供給されたガスを前記他端から吐出するガス通路と、該ガス通路内の前記一端及び前記他端間のガス圧を検出する圧力センサと、前記ガス通路に前記ガス供給源からガスを供給したとき、前記圧力センサによって検出されるガス圧のピーク値に基づいて前記土壌の硬度を算出する硬度算出回路と、を備える。
【0009】
上記第1の手段によれば、ガス通路のガスが土壌中に吐出されるまでの間は、圧力センサによって検出されるガス圧は上昇し、ガスが土壌中に吐出されると、ガス圧が低下する。そのため、ガス圧のピーク値に基づいて土壌硬度を求めることができる。このように土壌硬度が土壌へのガスの通り易さにより測定されるため、長期間の使用に関わらず測定精度の低下を抑制することができる。
【0010】
第2の手段は、上述した第1の手段に記載の土壌硬度計であって、前記ガス通路に前記ガス供給源から一定圧力のガスを供給した状態で、前記圧力センサによって検出されるガス圧がピーク値に達する前の時点におけるガス圧の上昇勾配に基づいて前記土壌の粘度を算出する粘度算出回路を備える。
【0011】
上記第2の手段によれば、ガス通路に一定圧力のガスを供給したときに圧力センサによって検出されるガス圧の上昇勾配に基づいて土壌の粘度が測定される。従って、土壌の硬度に加えて粘土も測定することができる。なお、ガス圧の上昇勾配の求め方には種々の方法がある。例えば、ガス圧がピーク値に達する前の平均上昇勾配により求める。また、ガス圧の上昇勾配が安定した領域における上昇勾配により求める。
【0012】
第3の手段は、上述した第1の手段に記載の土壌硬度計であって、前記ガス供給源によるガスの供給圧力、ガスの温度などのガスの性状に基づいて前記硬度算出回路により算出される硬度を補正する補正回路を備える。
【0013】
上記第3の手段によれば、ガス供給源からガス通路に供給されるガスの性状を特定し、その性状に基づいて硬度算出回路により算出される硬度を補正する。従って、ガス供給源からガス通路に供給されるガスの性状の違いにより算出される硬度に誤差が生じるのを抑制することができる。例えば、ガス通路に供給されるガスの圧力上昇勾配が高い場合は、低い場合に比べて土壌の硬度が同じでもガス通路から土壌中にガスが吐出されるタイミングが早くなる。そのため、ガス通路に供給されるガスの圧力上昇勾配が高いほど算出される硬度が高くなるように補正する。同様に、ガス通路に供給されるガスの温度が高い場合は、低い場合に比べて土壌の硬度が同じでもガス通路から土壌中にガスが吐出されるタイミングが早くなる。そのため、ガス通路に供給されるガスの温度が高いほど算出される硬度が高くなるように補正する。
【0014】
第4の手段は、上述した第1の手段~第3の手段のいずれかに記載の土壌硬度計と、前記土壌を攪拌するガスリフトポンプと、を備え、前記土壌の硬度を軟化する土壌軟化装置であって、前記ガスリフトポンプは、一端が前記土壌の一部を吸引するように配置可能とされ、他端が前記一端にて吸引した前記土壌を吐出可能とするガスリフトパイプと、該ガスリフトパイプの前記一端の前記他端側にガスを導入可能に連通され、前記ガスリフトパイプ内に吸引された前記土壌を導入されたガスと共に前記ガスリフトパイプ内で前記一端側から前記他端側へ流動可能とするガス導入パイプと、前記硬度算出回路により算出される前記土壌の硬度に基づいて、硬度が高い状態で前記ガスリフトポンプを作動させる制御回路と、を備える。
【0015】
上記第4の手段によれば、土壌硬度計により求められる硬度が高いと、ガスリフトポンプを作動して土壌を攪拌する。従って、土壌硬度計の測定結果に基づいて土壌の硬度が高いときガスリフトポンプにより土壌を攪拌して柔らかくすることができる。ガスリフトポンプのガスリフトパイプから吐出される土壌は、土壌の上に直接戻すか、適宜の容器に一時的に貯えて必要な場所の土壌まで運んで戻される。
【0016】
第5の手段は、上述した第4の手段に記載の土壌軟化装置であって、前記ガス導入パイプは、前記ガス供給源からのガスを供給可能に連通されている。
【0017】
上記第5の手段によれば、ガスリフトポンプは、ガス導入パイプに土壌硬度計のガス供給源からガスが供給されて作動される。そのため、エアリフトポンプ用のガス供給ポンプを省略することができる。この場合、ガス供給源からガス導入パイプへのガスの供給は、ガス供給源からのガスをガス導入パイプへ直接供給するか、ガス供給源から土壌硬度計のガス通路へ供給されたガスをガス導入パイプへ分岐して供給する。後者の場合、ガス供給源からガス通路へ供給されたガスを全てガス導入パイプへ分岐して供給するか、ガス供給源からガス通路へ供給されたガスの一部をガス導入パイプへ分岐して供給する。
【0018】
第6の手段は、上述した第4の手段又は第5の手段に記載の土壌軟化装置であって、前記制御回路は、前記土壌硬度計によって測定された前記土壌の硬度が閾値より高いとき、前記ガスリフトポンプを予め決められた一定時間作動し、その後、前記土壌硬度計により測定される前記土壌の硬度が閾値より低くなるまで前記ガスリフトポンプの一定時間作動を繰り返す。
【0019】
上記第6の手段によれば、ガスリフトポンプは、土壌硬度が閾値より高いと、一定時間作動され、その後土壌硬度計により測定される土壌硬度が閾値より低くなると作動停止される。そのため、土壌硬度が閾値より高い間はガスリフトポンプが間欠的に作動され、土壌を軟化させることができる。土壌硬度計のガス供給源が供給するガスの全てをガスリフトポンプの作動に使用する構成とした場合は、ガスリフトポンプが一定時間作動後に停止したタイミングで、ガス供給源からのガスの供給をガスリフトポンプのガス導入パイプ側から土壌硬度計のガス通路側へ切り替えることで土壌硬度計を機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態である土壌軟化装置のシステム構成図である。
図2】上記土壌軟化装置のコントロールユニットにおける硬度演算処理のフローチャートである。
図3】上記土壌軟化装置のコントロールユニットにおけるエアリフトポンプ作動処理のフローチャートである。
図4】上記土壌軟化装置のコントロールユニットにおけるエアリフトポンプ間欠作動処理のフローチャートである。
図5】一実施形態である土壌硬度計における圧力センサの検出信号の一例を示すグラフである。
図6】上記土壌硬度計における土壌硬度の求め方を説明するグラフである。
図7】上記土壌硬度計における空気圧上昇勾配に対する圧力補正係数を説明するグラフである。
図8】上記土壌硬度計における外気温に対する温度補正係数を説明するグラフである。
図9】上記土壌硬度計における土壌粘度の求め方を説明するグラフである。
図10】エアリフトポンプの作動を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<一実施形態の土壌硬度計>
図1は、土壌硬度計10を含む土壌軟化装置の一実施形態を示す。土壌軟化装置は、土壌硬度計10からの信号を受けて作動するエアリフトポンプ20を備える。土壌硬度計10は単独で使用することができるが、ここでは土壌軟化装置のシステムの一部として使用されている。
【0022】
この場合の土壌硬度計10は、干潟、養殖場などの水底の土壌Sの硬度を測定している。土壌硬度計10は、ガス供給源としてのエアポンプ11と、ガス通路を成すエアパス12と、エアパス12の通路内の空気圧を検出する圧力センサ13とを備える。エアパス12の一端12Aは、エアポンプ11から一定圧力の圧縮空気の供給を受けている。エアパス12の他端12Bは、土壌Sの表面を貫通して土壌Sの内部に埋設されている。エアパス12の他端12Bの土壌S内部への埋設の程度は、エアパス12の一端12Aから供給される圧縮空気が土壌Sの内部に向けて吐出され、土壌Sの表面から直接大気中に漏出されない程度とされる。エアパス12の一端12Aから圧縮空気が土壌S内を通過しないで直接大気中に漏出されなければ、土壌Sの表面にエアパス12の一端12Aを当接させる形態としてもよい。
【0023】
この状態でエアポンプ11から圧縮空気がエアパス12内に矢印のように供給され、土壌Sの硬度に応じた空気圧を超えると、圧縮空気はエアパス12の他端12Bから土壌S中に気泡Bとして放出される。一方、圧力センサ13は、エアパス12内の空気圧を検出しており、その検出信号をコントロールユニット30に入力している。エアパス12内の空気圧は、図5の実線で示すように、エアパス12への圧縮空気の供給開始からの時間経過と共に上昇し、他端12Bから土壌S中に気泡Bが放出された瞬間に急降下する。この空気圧の変化が圧力センサ13により検出される。コントロールユニット30には、外気温を検出する温度センサ14も接続されている。
【0024】
<一実施形態の硬度演算処理>
図2は、コントロールユニット30で要部を成すプログラム内蔵方式コンピュータ(図示略)における硬度演算処理プログラムを示す。このプログラムが起動されると、ステップS11にてエアポンプ11が作動される。次にステップS12では、温度センサ14により検出される外気温TPを取り込む。ステップS13では、圧力センサ13により検出されるエアパス12内の空気圧Prを取り込む。次のステップS14では空気圧Prの上昇勾配Pgが算出され、ステップS15では空気圧Prのピーク値Ppが算出される。
【0025】
図5のように、エアポンプ11による圧縮空気の供給開始からエアパス12の空気圧Prは上昇し、エアパス12の他端12Bから圧縮空気が気泡Bとなって放出されると空気圧Prは急激に降下する。空気圧Prが降下し始めるタイミングのピーク値PpがステップS15にて求められる。また、空気圧Prがピーク値Ppに達する前の空気圧Prが安定して上昇している時点の圧力上昇勾配Pgが、単位時間Δt当たりの圧力変化ΔpとしてステップS14にて求められる。圧力上昇勾配Pgは、エアポンプ11による圧縮空気の供給開始から空気圧Prがピーク値Ppに達するまでの圧力変化の平均値により求めてもよい。
【0026】
図2のステップS16では、上記ピーク値Ppから土壌Sの硬度が算出される。図6は、ピーク値Ppから求められる土壌Sの硬度の算出例を示す。例えば、ピーク値PpがP1のとき、土壌Sの硬度はH1と算出される。土壌Sが硬いほどエアパス12から空気は放出され難くなるため、ピーク値Ppが高いほど土壌Sの硬度も高くされている。ステップS16における硬度の算出は、予め設定した計算式により求めるか、予め記憶したピーク値Ppと土壌硬度とのマップから読み取ることにより求められる。
【0027】
図2のステップS17では、上記上昇勾配Pg及び上記外気温TPから上述のように求められた土壌硬度を補正する。上昇勾配Pg及び外気温TPは上記第3の手段におけるガスの性状に相当する。図7は、上昇勾配Pgに基づいて設定される圧力補正係数を示す。土壌Sの硬度が同じでもエアパス12内の圧縮空気の上昇勾配Pgが大きいほど低い圧力でエアパス12の他端12Bから気泡Bが放出されるため、圧力補正係数は「1」よりも大きい値で上昇勾配Pgが大きいほど大きくなる値に設定されている。また、図8は、外気温TPに基づいて設定される温度補正係数を示す。土壌Sの硬度が同じでもエアポンプ11によりエアパス12内に供給される圧縮空気の外気温TPが高いほど低い圧力でエアパス12の他端12Bから気泡Bが放出されるため、温度補正係数は「1」よりも大きい値で外気温TPが高くなるほど大きな値とされている。これらの圧力補正係数及び温度補正係数は、予め設定した計算式により求めるか、予め記憶した上昇勾配Pg又は外気温TPと補正係数とのマップから読み取ることにより求められる。
【0028】
図2のステップS18では、上記上昇勾配Pgから土壌Sの粘度が算出される。図9は、上昇勾配Pgから求められる土壌Sの粘度の算出例を示す。例えば、上昇勾配PgがP2のとき、土壌Sの粘度はV2と算出される。図5に破線で示すように、土壌Sの粘度が高いとエアパス12内の空気圧がピーク値に達するまでの圧力の上昇勾配が緩くなる。そのため、図9のように上昇勾配Pgが大きくなるほど土壌粘度は小さくなるようにされている。上昇勾配Pgは、ステップS14にて求められたものが用いられる。ステップS18における土壌粘度の算出は、予め設定した計算式により求めるか、予め記憶した上昇勾配Pgと土壌粘度とのマップから読み取ることにより求められる。
【0029】
なお、図2のプログラムの実行により実現される機能のうち、ステップS13、ステップS15、及びステップS16の処理は上記第1の手段における硬度算出回路に相当し、ステップS12、ステップS14、及びステップS17の処理は上記第3の手段における補正回路に相当し、ステップS14及びステップS18の処理は上記第2の手段における粘度算出回路に相当する。
【0030】
<一実施形態の土壌硬度計の作用、効果>
以上の土壌硬度計10によれば、エアパス12内の空気圧のピーク値に基づいて土壌Sの硬度を求めることができる。即ち、土壌硬度が土壌Sへの空気の通り易さにより測定されるため、土壌硬度計10によれば長期間の使用に関わらず測定精度の低下を抑制することができる。
【0031】
<一実施形態の土壌軟化装置>
図1において、上記土壌硬度計10は、エアリフトポンプ(ガスリフトポンプに相当)20と共に設けられて、土壌軟化装置を構成している。エアリフトポンプ20は、エアリフトパイプ(ガスリフトパイプに相当)21と、エア導入パイプ(ガス導入パイプに相当)22と、切換弁23とを備える。エアリフトパイプ21は、両端に開口を有するパイプであり、一端21Aが土壌Sの表面を貫通して土壌S内部に埋設されている。また、エアリフトパイプ21の他端21Bは土壌S上で一端21Aが設置された位置から離れた場所に配設されている。エアリフトパイプ21の一端21Aは、土壌Sを矢印のように継続的に吸い上げることができる程度の深さに埋設されている。また、エアリフトパイプ21の他端21Bは、そこから土壌Sが矢印のように吐出されることによりエアリフトパイプ21の一端21Aの周りの土壌Sが攪拌されるようにされている。
【0032】
エア導入パイプ22は、両端に開口を有するパイプであり、各開口端部がエアパス12とエアリフトパイプ21にそれぞれ連通されている。エア導入パイプ22のエアリフトパイプ21への連通は、エアリフトパイプ21の一端21Aより僅かに他端21B側に行われている。また、エア導入パイプ22のエアパス12への連通は、エアパス12の一端12Aと他端12Bとの間の適宜の場所に行われている。エアパス12においてエア導入パイプ22の連通位置より他端12B側には切換弁23を成す一方の開閉弁23Aが設けられている。開閉弁23Aにより、エアパス12におけるエア導入パイプ22の連通位置より他端12B側の通路が開閉可能とされている。また、エア導入パイプ22には、切換弁23を成す他方の開閉弁23Bが設けられている。開閉弁23Bにより、エア導入パイプ22の通路が開閉可能とされている。各開閉弁23A、23Bは、コントロールユニット30から信号を受けて開閉作動される。
【0033】
エアリフトポンプ20は、開閉弁23Bが開放されてエアポンプ11からの圧縮空気がエアリフトパイプ21内に供給されると、エアリフトパイプ21内に他端21B側に向かう気泡Bの流れが生じて、エアリフトパイプ21の一端21Aの土壌Sの一部が吸引され、他端21Bから吐出される。他端21Bから吐出された土壌Sの一部は、一端21Aから離れた位置の土壌Sにまかれて、土壌Sの攪拌が行われる。他端21Bから吐出される土壌Sは、所定の容器内に貯えて適宜の位置の土壌Sの上に運んでまくようにしてもよい。
【0034】
<一実施形態のエアリフトポンプ作動処理>
図3は、コントロールユニット30で要部を成すプログラム内蔵方式コンピュータ(図示略)におけるエアリフトポンプ作動処理プログラムを示す。このプログラムが起動されると、ステップS21にてエアポンプ11が作動される。次にステップS22では、上述の土壌硬度計10にて求められた土壌硬度データを取り込む。そして、ステップS23では、ステップS22で取り込んだ土壌硬度が閾値より低いか否かが判定される。ここで土壌硬度が閾値より高くてステップS23が否定判断されると、ステップS24以降の処理にてエアリフトポンプ20が間欠作動される。土壌硬度が閾値より低いと、ステップS23は肯定判断され、ステップS25以降の処理にてエアリフトポンプ20の作動が停止される。
【0035】
図10は、エアリフトポンプ20の作動の仕方を示す。図10(1)のように、T1の時点で土壌Sの硬度が閾値より高くなると、エアリフトポンプ20は、図10(2)のようにオフからオンとなり、間欠作動を開始する。エアリフトポンプ20の間欠作動では、エアリフトポンプ20は一定時間TCオン、休止時間TIオフの作動を繰り返す。そのため、T1の時点でオンとされたエアリフトポンプ20は、T2の時点で一定時間TCが経過して一端オフとされる。その後、T3の時点で休止時間TIが経過するため、再びエアリフトポンプ20はオンとされる。T4の時点で図10(1)のように土壌Sの硬度が閾値より低くなると、エアリフトポンプ20は間欠作動されなくなる。休止時間TIは、土壌硬度計10が硬度の測定に要する時間によって決定される。
【0036】
図3のステップS24のエアリフトポンプ間欠作動処理が実行されると、図4のステップS31にて後述のエアリフトポンプ作動フラグがオフ(リセット)状態にあるか否かが判定される。エアリフトポンプ作動フラグがオフ状態にあると、ステップS31は肯定判断され、ステップS32にてエアリフトポンプ作動フラグがオン(セット)状態とされ、タイマのカウント値がゼロにクリアされる。エアリフトポンプ作動フラグがオン状態にされた後は、ステップS31が否定判断され、ステップS32の処理はスキップされる。
【0037】
ステップS33では、タイマのカウント値が一定時間TCより大きくなったか否かが判定される。タイマのカウント値が一定時間TCより大きくなってステップS33が肯定判断されると、ステップS34にてエアリフトポンプ作動フラグがオフ(リセット)状態とされる。タイマのカウント値が一定時間TCより小さい間は、ステップS33は否定判断され、ステップS34の処理はスキップされる。
【0038】
図3のエアリフトポンプ作動処理にて、土壌硬度が閾値より高くてステップS23が否定判断されると、ステップS24の処理にて、上述のようにエアリフトポンプ作動フラグが一定時間TCだけオン状態とされ、その後休止時間TIだけオフ状態とされる。即ち、ステップS24の処理では、エアリフトポンプ作動フラグが間欠的にオン状態とされる。一方、土壌硬度が閾値より低いと、ステップS23は肯定判断され、ステップS25の処理にてエアリフトポンプ作動フラグがオフ状態とされる。
【0039】
図3のステップS26では、エアリフトポンプ作動フラグがオン状態にあるか否かが判定される。エアリフトポンプ作動フラグがオン状態にあり、ステップS26が肯定判断されると、ステップS27にて開閉弁23Aが閉、開閉弁23Bが開作動される。そのため、エアポンプ11からの圧縮空気は全てエアリフトパイプ21に流れ、土壌Sの攪拌が行われる。また、エアポンプ11からの圧縮空気がエアパス12の他端12Bに供給されないため、土壌硬度計10による土壌Sの硬度測定は停止される。
【0040】
一方、エアリフトポンプ作動フラグがオフ状態にあり、ステップS26が否定判断されると、ステップS28にて開閉弁23Aが開、開閉弁23Bが閉作動される。そのため、エアポンプ11からの圧縮空気は全てエアパス12の他端12Bに流れ、土壌硬度計10として土壌Sの硬度が測定される。また、エアポンプ11からの圧縮空気がエアリフトパイプ21に流れないため、エアリフトポンプ20による土壌Sの攪拌は停止される。
【0041】
以上のように図3、4のエアリフトポンプ作動処理が実行されると、土壌硬度計10により測定される土壌Sの硬度が閾値より高い状態では、間欠的にエアリフトポンプ20が作動されて土壌Sの攪拌が行われる。その結果、土壌Sの硬度が軟化される。エアリフトポンプ20の間欠作動の合間には、土壌硬度計10により土壌S硬度が測定され、その結果、土壌Sの硬度が閾値より低くなるまでエアリフトポンプ20の間欠作動が継続される。図3、4のエアリフトポンプ作動処理は、定期的に実行される。例えば、1日に1回の頻度で実行される。
【0042】
なお、図3、4のステップS23~ステップS28の処理プログラムの実行により実現される機能が上記第4の手段における制御回路に相当する。
【0043】
<その他の実施形態>
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、上記実施形態では、土壌硬度計及び土壌軟化装置に使用するガスとして空気を用いたが、窒素、酸素等の他のガスを用いてもよい。また、上記実施形態では、エアポンプ11からの圧縮空気をエアパス12の他端12Bかエアリフトパイプ21のいずれかに切り換えて供給したが、エアポンプ11からの圧縮空気をエアパス12の他端12Bとエアリフトパイプ21の両方に同時に供給するようにしてもよい。その場合、土壌硬度計10による土壌Sの硬度の測定をしながら、同時に土壌Sの軟化を行うことができる。更に、上記実施形態では、エアポンプ11からの圧縮空気の切り換えをエアパス12とエアリフトパイプ21にそれぞれ設けられた開閉弁23A、23Bにより行ったが、エアパス12とエアリフトパイプ21の接続部に設けた一つの切換弁により行ってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 土壌硬度計
11 エアポンプ(ガス供給源)
12 エアパス(ガス通路)
12A 一端
12B 他端
13 圧力センサ
14 温度センサ
20 エアリフトポンプ(ガスリフトポンプ)
21 エアリフトパイプ(ガスリフトパイプ)
21A 一端
21B 他端
22 エア導入パイプ(ガス導入パイプ)
23 切換弁
23A、23B 開閉弁
30 コントロールユニット
S 土壌
図1
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