(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089660
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ボロンが拡散された誘電体領域を用いた単層コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20230621BHJP
H01G 9/07 20060101ALI20230621BHJP
H01G 4/10 20060101ALI20230621BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20230621BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230621BHJP
C25D 11/06 20060101ALI20230621BHJP
【FI】
H01G9/00 290A
H01G9/07
H01G4/10
H01G4/33 102
H01G13/00 371F
C25D11/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204294
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】西垣 政浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩司
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB01
5E082BC35
5E082EE05
5E082EE24
5E082EE37
5E082EE45
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG27
5E082FG44
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
5E082PP06
(57)【要約】
【課題】 絶縁領域の厚みが薄くても、高い耐電圧を発揮できる単層コンデンサ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 第1の金属領域と、第2の金属領域と、第1の金属領域および前記第2の金属領域間に位置する誘電体領域とを有する単層コンデンサであって、誘電体領域において、第1の金属領域側にボロンが拡散している構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属領域と、第2の金属領域と、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域間に位置する誘電体領域とを有する単層コンデンサであって、
前記誘電体領域において、前記第1の金属領域側にボロンが拡散している、単層コンデンサ。
【請求項2】
前記誘電体領域において、前記第1の金属領域との界面から前記誘電体領域の厚みの1/3までにわたって、ボロンが拡散している、請求項1記載の単層コンデンサ。
【請求項3】
前記誘電体領域のボロンの濃度は、SIMSデプスで測定したとき、1×1020~1×1023 atmcounts/cm3である、請求項2記載の単層コンデンサ。
【請求項4】
前記誘電体領域は、前記第2の金属領域を構成する金属の陽極酸化処理物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の単層コンデンサ。
【請求項5】
請求項4に記載の単層コンデンサの製造方法であって、
前記第2の金属領域を構成する金属の金属層を陽極としてホウ酸アンモニウム水溶液中で電圧を印加して、前記第2の金属領域と前記誘電体領域とを形成し、
前記誘電体領域上に第1の金属領域を形成し、
前記ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度が、0.05mol/L~0.2mol/Lである、単層コンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記第2の金属領域を構成する金属の金属層を陽極としてホウ酸アンモニウム水溶液中で電圧を印加して、前記第2の金属領域と前記誘電体領域とを形成する場合には、前記ホウ酸アンモニウム水溶液の温度は、5℃~20℃である、請求項5記載の単層コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボロンが拡散された誘電体領域を用いた単層コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの小型化・高性能化に伴い、電子デバイス中に使用される電子部品(コンデンサ)も数量が増加し、軽薄短小化が求められる。また、電子デバイスに搭載されるパワーデバイスがSiからSiCもしくはGaNに変化している。これにより、動作電圧が桁違いに大きくなり、パワーデバイス周辺に使用される電子部品(コンデンサ)の耐電圧特性を向上させることが望まれている。このような流れの中で、コンデンサにおいては、より薄い絶縁(誘電体)領域を持ちながら、高い耐電圧特性を発揮しなければならないという、トレードオフ特性の両立が求められている。絶縁領域の厚みが薄くても、高い耐電圧を発揮できる絶縁領域として、陽極酸化膜がある。このようなものとして、キャパシタ内蔵基板用のキャパシタ膜であって、第1の電極膜と誘電体膜と第2の電極膜とによって形成され、該誘電体膜は第1の電極膜(弁金属)を陽極酸化した材料で形成されている(特許文献1、段落0017)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における誘電体膜は、電解液としてホウ酸アンモニウムまたはアジピン酸アンモニウムを用いて、0.8mol/Lの水溶液を作製し、温度85℃、化成電圧100V、電流0.3A、印加時間20分で陽極酸化処理して形成されているが、この処理条件は従来からの陽極酸化処理条件であり、得られる誘電体膜の耐電圧特性は高い耐電圧を示さない。また誘電体膜の膜表面に近いほど、アルミニウムが不足して耐電圧がばらつくという問題がある。
本開示の目的は、耐電圧がばらつかず、絶縁領域の厚みが薄くても高い耐電圧特性を発揮できる単層コンデンサ、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の単層コンデンサは、第1の金属領域と、第2の金属領域と、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域間に位置する誘電体領域とを有する単層コンデンサであって、前記誘電体領域において、前記第1の金属領域側にボロンが拡散している。
【0006】
また本開示の単層コンデンサの製造方法は、上記の単層コンデンサの製造方法であって、前記第2の金属領域を構成する金属の金属層を陽極としてホウ酸アンモニウム水溶液中で電圧を印加して、前記第2の金属領域と前記誘電体領域とを形成する第1工程と、前記誘電体領域上に第1の金属領域を形成する第2工程とを含み、前記ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度が、0.05mol/L~0.2mol/Lである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、耐電圧がばらつかず、誘電体領域の厚みが薄くても、高い耐電圧特性を発揮することができる絶縁体領域を有する単層コンデンサ、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態の単層コンデンサにおける誘電体領域のSIMSデプス分析の結果のグラフである。
【
図2】
図1の誘電体領域をさらにアジピン酸アンモニウム水溶液中で陽極酸化処理した誘電体領域のSIMSデプス分析の結果のグラフである。
【
図3】ドーピングしたボロンの役割を説明する概念的断面図である。
【
図4】本開示の単層コンデンサの基本構造を示す断面図である。
【
図5】本開示の単層コンデンサの応用製品の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の単層コンデンサは、第1の金属領域と、第2の金属領域と、前記第1の金属領域および前記第2の金属領域間に位置する誘電体領域とを有する。第1の金属領域は、第2の金属領域の上に形成された誘電体領域に形成される。第1の金属領域素材としては、たとえば、ニッケルめっき層、白金などの金属蒸着膜、固体金属などが挙げられる。
【0010】
第2の金属領域の素材としては、酸化されて不働態となる弁金属、たとえば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、クロム、チタン、亜鉛などやその合金が挙げられる。その中で、アルミニウムが汎用的で好ましい。
【0011】
誘電体領域は、第2の金属領域の上に形成される。 本実施形態において、誘電体領域は、その内部において、第1の金属領域側にボロンが拡散されている。ボロンが拡散されていると、単層コンデンサが従来よりも高い耐電圧特性を得ることができる。本開示においては、ボロンとはボロン酸化物であるB2O3をいう。
【0012】
また、誘電体領域において、第1の金属領域との界面から前記誘電体領域の厚みの1/3までにわたって、ボロンが拡散されていてもよい。誘電体旅域の厚みの1/3までにわたって、ボロンが拡散されていると単層コンデンサがばらつきのない高い耐電圧を得ることができる。
【0013】
さらに、上記誘電体領域のボロンの濃度は、SIMSデプスで測定したとき、1×1020~1×1023 atmcounts/cm3であってもよい。ボロンの濃度が、上記範囲であると単層コンデンサが安定して高い耐電圧を示すことができる。
【0014】
また、誘電体領域は、第2の金属領域を構成する金属の陽極酸化処理物であってもよい。誘電体領域が、陽極酸化処理により形成されると、ボロンが誘電体領域に拡散しやく、また第1の金属領域との界面から誘電体領域の厚みの1/3までにわたって、ボロンが拡散しやすくなり、さらに拡散されたボロンの濃度を、1×1020~1×1023 atmcounts/cm3とすることができる。その結果、誘電体領域および単層コンデンサが安定して高い耐電圧特性を得ることができる。
【0015】
以下、本開示における単層コンデンサの製造方法について記載する。
本開示の単層コンデンサの製造方法は、
第2の金属領域を構成する金属の金属層を陽極としてホウ酸アンモニウム水溶液中で電圧を印加して、前記第2の金属領域と前記誘電体領域とを形成し、
前記誘電体領域上に第1の金属領域を形成し、ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度が、0.05mol/L~0.2mol/Lである。
【0016】
第1工程において、第2の金属領域を構成する金属の金属層を陽極としてホウ酸アンモニウム水溶液中で電圧を印加して陽極酸化処理すると、金属層界面で酸素が発生し、溶解した第2の金属領域を構成する金属を酸化して酸化物を形成する。金属層中の金属は消費されるので、金属層は薄くなる(第2の金属領域)が、第2の金属領域の前駆体である第2の金属の酸化物は、金属層の上に堆積して厚くなる(誘電体領域)。このようにして第2の金属領域と誘電体領域とが形成される。誘電体領域の膜厚は陽極処理条件、電圧の印加時間の影響を受けるが、ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度を0.05mol/L~0.2mol/Lとしたとき、厚みは50~600nmの範囲であると推定される。
【0017】
第2工程は、形成された誘電体領域上に第1の金属領域を形成することであるが、上記のようにめっきや金属蒸着などによって第1の金属領域が形成される。上記工程は従来の工程と同じであってもよい。
【0018】
第2の金属領域を構成する金属は、上記のように弁金属が使用できるが、アルミニウムが汎用的で好ましい。以下、第2の金属領域を構成する金属としてアルミニウムについて記載するが、上記の他の金属を排除するものではない。
【0019】
第2の金属領域を構成する金属がアルミニウムである場合、陽極では次の反応が生じ、誘電体領域にAl2O3が生じる。
Al→Al3++3e- H2O→O2-+2H+
2Al3++3O2-→Al2O3
【0020】
従来技術、たとえば、上記の特許文献1においては、ホウ酸アンモニウムまたはアジピン酸アンモニウムを用いて、0.8mol/Lの水溶液を作成し、温度85℃、化成電圧100V、電流0.3A、印加時間20分で処理しているが、本実施形態においては、誘電体領域の表面状態が平滑になる化成条件(たとえば、ホウ酸アンモニウム水溶液濃度0.1mol/L、温度10℃、処理時間10秒など)で陽極酸化処理する。そのような穏やかな条件で陽極酸化することにより、ボロンを誘電体領域に拡散することができることを見出し、そして、その結果、誘電体領域および単層コンデンサが高い耐電圧を示すことを見出したものである。さらに、ボロンの拡散範囲や量を制御すれば、耐電圧のさらなる向上ができることになる。そして、誘電体領域の膜厚を従来と同じにしたとき、単層コンデンサは従来の耐電圧、例えば40Vよりも高い耐電圧を示すことができる。
【0021】
本実施形態においては、電解液としてホウ酸アンモニウム水溶液を用いる。ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度は、0.05mol/L~0.2mol/Lである。ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度がこの範囲内であることによって、単層コンデンサの絶縁破壊電圧(BDV)は従来よりも高い値を示し、高い耐電圧特性が得られる。従来の電解液は0.8mol/L と高い濃度で陽極酸化処理が実施されていたが、濃度をかなり下げて実施した。この点が従来と大きく異なる点である。
【0022】
また、電圧の印加処理時におけるホウ酸アンモニウム水溶液の温度が5℃~20℃であってもよい。ホウ酸アンモニウム水溶液の温度がこの範囲であると、さらに単層コンデンサの高い耐電圧化が可能となる。従来の電解液の温度は85℃と高い温度であったが、温度をかなり下げて実施した。この点も従来と大きく異なる点である。
【0023】
化成条件の内、ボロンの誘電体領域への拡散を促進する方法としては、上記のホウ酸アンモニウム水溶液の濃度、温度の調整に加えて、化成電圧、電流を高めることによっても可能である。さらには、陽極酸化処理時間の短縮、および溶液拡販速度の向上は、第2金属領域を構成する金属層を事前に酸・アルカリ処理して自然酸化膜を除去することなどによっても可能である。これにより、さらに高い耐電圧化が可能となる。
【0024】
以下に、誘電体領域におけるボロンの存在を確認した。
P型Si基板の表面に下部電極となるアルミニウム蒸着を行い(表面粗さ:0.3μm以下)、第2金属領域を構成する金属の金属層を形成し、五ホウ酸アンモニウム水溶液:0.1mol/L、温度10℃、化成電圧;350V、処理時間;10秒の条件で陽極酸化処理を実施し、アルミニウム金属(第2の金属領域)と誘電体領域を形成した。この誘電体領域の膜厚は約380nmであり、絶縁破壊電圧(BDV)は220Vであった。
【0025】
この誘電体領域をSIMSデプス分析により、ボロンの深さ方向の濃度を測定した。この結果を
図1に示した。
図1は、本開示における誘電体領域のSIMSデプス分析の結果のグラフであり、ボロンのみ記載した。SIMSデプス分析は、アルバックファイ株式会社製、PHI ADEPT-1010(D-SIMS)を用いて、1次イオン種O
2
+、1次加速電圧3.0kV、検出領域30μm×30μmの条件で実施した。
【0026】
図1において、ボロンが表面から内部に向かって拡散されていることがわかる。ボロンは表面から内部に向かって3×10
21atms/cm
3前後を維持して約140nmあたりから急激に下がり約400nmあたりからバックグラウンドになっている。この誘電体領域の膜厚は約380nmであるので、ボロンは誘電体領域の厚みの1/3を若干超えてまで3×10
21atms/cm
3前後を維持していることになる。誘電体領域中におけるボロンの拡散が確認できた。
【0027】
一方、第一金属領域を陽極酸化させる溶液を、五ホウ酸アンモニウム水溶液からアジピン酸アンモニウム水溶液0.1mol/Lに変更して、温度10℃、化成電圧;350V、処理時間;10秒の条件と、五ホウ酸アンモニウムの場合と同様に陽極酸化処理して、アルミニウム金属(第2の金属領域)と誘電体領域を形成した。この誘電体領域の膜厚は約380nmであり、絶縁破壊電圧(BDV)は180Vであった。
【0028】
アジピン酸アンモニウムの場合の誘電体領域をSIMSデプス分析により、ボロンの深さ方向の濃度を測定した。この結果を
図2に示した。
図2は、
図1の誘電体領域をさらにアジピン酸アンモニウム水溶液中で陽極酸化処理した誘電体領域のSIMSデプス分析の結果のグラフである。
【0029】
図2においても、ボロンのみ記載した。
図2において、ボロンのピークは表面から急激に下がっており、ボロンのピークは消滅していた。
図1の誘電体領域の上から陽極酸化処理すると、ボロンが消失し、内部に拡散しておらず、絶縁破壊電圧(BDV)は低下した。以上の二つのグラフから、誘電体領域の内部へボロンが拡散したことが、誘電体領域の耐電圧を向上させたことは明白である。
【0030】
上記のように、ボロンが誘電体領域に拡散すると誘電体領域、ひいては単層コンデンサが高い耐電圧を示すことができるが、その理由は以下のように考えられる。以下は、第2の金属がアルミニウムであるとして記載した。
【0031】
図3は、拡散したボロンの役割を説明する概念的断面図である。
図3は、アルミニウム(以下、Alという)を陽極酸化処理した後の領域の断面を示している。上から電解液3、陽極酸化膜(誘電体領域)4、Al金属(第2の金属領域)5の三つの領域となっている。陽極酸化膜4の領域は、Alが酸化されたAl
2O
3の領域であるが均一ではない。この領域の下部はAl金属5側であり、Alが多いAl
2O
3の領域である。逆に電解液3側の表面に近い上部では、Al領域から離れており、酸素が多いAl
2O
3の領域となる。そして、陽極酸化膜4の領域の上部では電解液3中のボロンが酸化されたB
2O
3が生成し、多くのB
2O
3が存在する。このB
2O
3が、少なくなったAl
2O
3を補充するので、酸化物の量が増え、絶縁性の酸化物の緻密な領域を形成し、安定した絶縁領域となる。それによって、誘電体領域は高い耐電圧を示すことができる。すなわち、第1の金属領域側にボロンが拡散されていると誘電体領域が高い耐電圧を示すことになる。
【0032】
(実施例)
以下、実施例によって本開示をさらに説明するが、これに限定されない。以下の実施例は、陽極酸化処理の条件により単層コンデンサの絶縁破壊電圧(BDV)がどのような影響を受けるかを検討した。
【0033】
実験は、P型Si基板の表面に下部電極となるAl蒸着を行い(表面粗さ:0.3μm以下)Al金属層を形成し、表1記載の条件で陽極酸化処理を行い、下部電極上に誘電体領域を形成した。その後、表面に上部電極(第1の金属領域)となるPt蒸着を行った。陽極酸化処理条件は以下の範囲で実施した。
【0034】
五ホウ酸アンモニウム水溶液;0.02mol/L~0.50mol/L
五ホウ酸アンモニウム水溶液の温度;0℃~40℃
化成電圧;350V
処理時間;10秒
【0035】
【0036】
(表1における判定基準)
1.ボロン濃度:1×1020~1×1023 atmcounts/cm3
第1面からの拡散距離 1/5~1/3
2.BDVave :200V以上、BDVσ:20以下
の両方を満足するものを〇、その他は×とした。
【0037】
第1面からの拡散距離は、上記のSIMSデプス分析で測定した。BDVはKEYSIGHT製の絶縁抵抗計を用いて電圧印加時間30secで測定した。誘電体領域の厚みは浜松ホトニクス製の光学厚み測定器を用いて酸化アルミニウムの屈折率に合わせた設定で測定した。
【0038】
×については、以下の状況であった。
No.1は、水溶液濃度が低すぎてボロン拡散量が低濃度化した。
No.5は、酸化反応が強すぎ表面平滑性が悪化し、BDVaveが低下した。
No.6は、低温のため拡散が進まなかった。
No.10は、高温のため拡散が進みすぎた。
【0039】
また、この表から、誘電体領域の厚みはすべて350nm~400nmの範囲内にあるにも拘わらず、ホウ酸アンモニウム水溶液の濃度が0.05mol/Lないし0.05mol/Lであり、且つ温度が5℃ないし20℃である範囲においては、ボロンの拡散範囲は全体厚みの1/3ないし1/5となり、耐電圧も220Vと高いBDVを示し、BDVσも20以下となった。その時の誘電体領域におけるボロンの濃度は1×1020ないし1×1023 atmcounts/cm3であり、安定したBDVに繋がることがわかる。以上から、ボロンが第1金属領域側の誘電体領域に拡散していると高い耐電圧を示すことが確認できた。本開示が有効であることを確認できた。
【0040】
上記のようにして得られた単層コンデンサの構造は以下に示す。
図4は、本開示の単層コンデンサの基本構造を示す断面図である。
図4において、単層コンデンサ6は、下部電極(第2の金属領域)7と上部電極(第1の金属領域)8との間に陽極酸化膜(誘電体領域)9が位置している。下部電極7と上部電極8は導通していない。
【0041】
図5は、本開示の単層コンデンサの応用製品の構造を示す断面図である。
左側の製品においては、単層コンデンサ6自体は樹脂などの外部保護層10で囲まれており、上部電極8と下部電極7がそれぞれ外部電極(ニッケルメッキや蒸着膜など)11に繋がれて上下に引き出されている。右側の製品においては、シリコンウェハ12の上にある下部電極7が外部電極11により上側から引き出せるように繋がれている。
【0042】
本開示の単層コンデンサやその応用製品は、高容量設計ができ、部品の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1,2 ボロン
3 電解液
4 陽極酸化膜(誘電体領域)
5 Al金属(第2の金属領域)
6 単層コンデンサ
7 下部電極(第2の金属領域)
8 上部電極(第1の金属領域)
9 陽極酸化膜(誘電体領域)
10 外部保護層
11 外部電極
12 シリコンウェハ